◆−青い鳥−雫石 彼方 (2002/3/24 15:55:28) No.8221
 ┣青い鳥感想です。−穂波 (2002/3/31 01:43:26) No.8247
 ┃┗ありがとうございますv−雫石 彼方 (2002/4/1 22:04:22) No.8249
 ┗素晴らしいお話でした。(感動)−ザズルア=ジャズルフィードゥ (2002/4/3 15:19:11) No.8252
  ┗いやぁ///(てれてれ)−雫石 彼方 (2002/4/8 12:51:11) No.8265


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8221青い鳥雫石 彼方 E-mail URL2002/3/24 15:55:28


こんにちは、雫石です。
今回、久しぶりにまたアル→アメ書きたい病が発病した為に、やってきました(^^;)
アル→アメと言っても、前に書いた2作品はむしろアメ→アルみたいになってしまい見事に失敗してましたが、今回は3度目の正直で、ちゃんとアル→アメしてます!!しかもちょこっとゼルアメ←アルっぽいかも☆(と、自分では思っている)

では、あまり見ない組み合わせですが、お好きな人は見ていってくださいな♪




*************************************



「今日はここで野宿だな」
 それまで延々と続いていた木々が途切れ、森と森の境目に当たるちょっとした空間に出たところで、ゼルガディスはそう言って立ち止まった。
「・・・・え、もっと先に進まないんですか?」
 かなり日は傾いてはいるものの、辺りはまだ十分にその明るさを保っている。いつもならもっと遅い時間帯になるまでなるべく先を目指すのに、今日に限って早めに足を止める理由が見えず、アメリアは決断を下したゼルガディスを不思議そうに見上げた。
 が、何故か彼は視線を合せようとはせず、だんまりを決め込んだまま。
 代わりにリナが口を開いた。
「仕方ないのよ。次の街までは半日以上は歩かなきゃ着かないし、少しでも距離を稼いでおくにしても、ここから先はデーモンだの野生動物だのの出没率が高めの危険区域だしね。野宿するにはあんまし適してないってわけ。――――ま、高めっつーても平和〜なところよりちょっぴし危険かなー、程度だからあたしは別にいいんだけどね」
 “誰かさんは、可愛い可愛いアメリアちゃんを危険な目に遭わせたくないみたいよ〜?”
 余計なことを付け足してにへらと笑いを浮かべるリナを、ゼルガディスが睨みつける。しかしこの泣く子も黙るリナ=インバースが、そんなものに屈するはずもなく。
「はいはい、図星だからって怒らな〜い。怒ってる暇があるなら水汲みにでも行く!アメリア、あんた薪広いね。あたしはここで野宿の準備してるから、ガウリイは他に何か食べられるものがないか探してきて。OK?」
『は〜い』
 ガウリイとアメリアが声を揃えて頷く。
 一方ゼルガディスは、ちゃっちゃと話を進めるリナの弁舌に先程のことに反論を唱える隙を完全に塞がれ、今更言い訳を並べ立てて話を蒸し返すわけにもいかず。 不満そうな顔をしつつも、結局溜息をつくに留まった。
 そして、それぞれの役割を果たすべく散っていく4人。






 それは柔らかな風が吹く、とても天気のいい日のことだった。












青い鳥











 色とりどりの花が咲き乱れ、ぽかぽかと暖かい陽射しが肌に心地良い。
 まさに楽園と呼ぶに相応しいこの地に、僕はいた。

 ここは、一生を終えた者が次の生を迎えるまでの僅かな時間を過ごす為に存在する、仮初めの地。
 次の生に向けて心をまっさらに戻す必要がある為だろう、全ての環境が完璧に整えられ、幸せを絵に描いたようなこの場所は、人の心を穏やかにするらしい。実際とても、気分がいい。
 ただ一つ、周りの人間達を見ていて気になるのは。ここに長くいればいるほど――――言い換えれば、転生が間近になればなるほど、どうやら生きていた時の記憶がどんどん曖昧になってきているらしいということだった。
 ・・・・まあ、次の生には前の記憶は持っていけないのだから、当然と言えば当然なのかもしれないけれど。決して胸を張って“幸せだった”とは言えない人生だったから、いっそ忘れてしまった方がいいのかもしれないけれど。
 それでも、忘れたくない思い出というのもやはりあるわけで。
 何より自分が自分でなくなっていく感覚は、思ったほど恐怖は感じないもののあまり気持ちのいいものでもない。
 だから今日は、僕が“アルフレッド”として生きたことを再確認するという意味でも、少し昔話でもしてみようと思う。
 独りよがりな僕の話は、つまらないかもしれないけどね。
 君に心の余裕があったなら、聞いて欲しいんだ。








 昔―――って一口に言っても、曖昧でわかりにくいか。僕達がまだ、小さかった頃―――は良かった。
 いつだって元気すぎる彼女には随分振り回されたけれど、彼女の笑顔は僕だけに向けられていたから。彼女の瞳は、僕だけを映していたから。
 朝起きてから夜日が暮れるまで、それこそ周りの大人たちが呆れるくらい一緒に遊んだ。
 かくれんぼ、鬼ごっこ、木登り。彼女の好きなヒーローごっこには、正直辟易したけどね。それでも、彼女といるだけで無条件に楽しかった。
 絵本で見た、幸せに導くという青い鳥を探して、城の庭中を探し回ったりもした。
 結局、一度も見つけることはできなかったけれど。
 子供にとっては広い城の庭も、所詮は限られた空間でしかない。
 城の敷地内が僕達の世界のすべてで、言ってみれば籠の中の鳥のようなもので。

 でも、僕はそれでもいいと思っていた。
 籠の中の世界が、永遠のものであるのなら。
 二人でいることが当たり前の現実が、これからも当たり前であるのなら、それで――――








 それが当たり前のことじゃなくなり始めたのは、彼女が伯父さんにくっついて城の外に出かけるようにようになった頃だったと思う。
 城の中にいては見、聞き、感じることのできなかった様々なものが、城の外にはごろごろと転がっている。
 好奇心旺盛な彼女は、あらゆるものに興味を示してはその大きな瞳を輝かせた。

 “美味しい食べ物があった”
 “面白いものを見つけた”

 楽しそうに話す彼女。
 その対象が物であるうちはまだよかった。彼女が笑顔であることが僕の何よりの幸せで、楽しさを共有することができた。
 けれど、そのうちに。

 “リナさんが”
 “ガウリイさんが”
 “ゼルガディスさんが”

 旅先で出会った仲間だという、知らない名前。
 増えていく、僕の知らない彼女。
 幸せの源だったはずの彼女の笑顔が、だんだん僕の苦痛になっていった。


 ―――キミハ シラナイヤツノコトヲ オモイナガラ ボクニ ワライカケルトイウノカイ?―――


 自分の中で、何か黒いものが生まれるのがわかった。
 けれど日増しにどんどん輝いて綺麗になっていく彼女を見ながら、それが育っていくのを止めようともせず。
 僕はただ、虚ろな瞳でそれを眺めていた。
 為すがまま、流れるままに。
 ただ、ずっと。
 眺めていた。





 外の世界を知った籠の鳥は、籠の中の退屈さを知ってしまった。
 外の世界を知った籠の鳥は、大空を羽ばたく楽しさを知ってしまった。
 そして僕は、籠の中に一人取り残される、果てしないほど大きな恐怖を知ってしまった。
 次に旅立ったら、彼女はここへは戻ってこないかもしれない。僕のことなど忘れてしまうかもしれない。
 ――――怖かった。
 実際にそうなると決まったわけじゃない、けれど『もし』、そう考えると狂いそうになるほど怖かった。
 どうしたらまたここに戻ってきてくれるだろうと、次第にそればかりを考えるようになって。
 窮屈な心でやっと思いついたのは、権力に縋ることだけだった。
 彼女の信念である“正義”とは真逆に位置する、卑劣な行い。
 知っていたのに、分かっていたのに。彼女を取り戻したい、その想いにどうしても逆らえなかった。
 魔族の囁きに耳を貸し、伯父さんの暗殺を企て、ただひたすら求めた王位の座。
 本当に、がむしゃらだった。
 あまりにがむしゃら過ぎて、そしていつしか。
 手段に囚われるばかり、僕は本当の願いを忘れていたんだ。



 それに気付いたのは、魔族の放った凶弾にこの身を貫かれ、地に倒れた時だった。








『アルフレッド!!』

 彼女の声が僕の名を呼び、駆けてくる気配。
 何度も、名前を呼ばれた。それが単純に、嬉しくて。
 そして、気付いた。


 ――――僕は、ただ彼女と共に在りたいだけだったんだ――――


 けれど気付くのが、遅すぎた。


 ――――もっと、傍に――――


 そう望む心とは裏腹に、だんだん彼女の声は遠のいていって――――







 この世で最後に感じたのは、どうしようもないほど温かかな、涙の雫だった。



























 今だから、分かること。
 ――――ああ、僕は。
 どうして、彼女を籠の中に連れ戻すことしか思いつかなかったんだろう。
 どうして、自分も籠の外へと飛び出してみようとはしなかったんだろう。
 そうしたら、何か変わっていたかもしれないのに。
 例え彼女が愛してくれなかったとしても、それを受け入れる強さを持つことができたかもしれないのに。






 ――――僕は、甘えていたんだね――――






 生きていた時は、自分の幸せしか考えられなくて。そして、彼女を不幸にしようとした。
 もう、同じ過ちは犯さない。
 今度は彼女の幸せを、心から願いたい。
 だから次に生まれ変わるなら、僕は。

 彼女を幸せに導く、青い鳥になりたい。












 それくらい、願ってもいいだろうか。





 ねぇ、アメリア――――

































 空がほんのりと、茜色に染まり始める頃。
「・・・・綺麗・・・・」
 野宿に必要な薪を拾っていたアメリアは、下ばかり見ていた為に疲れた身体を起こしてう〜んと伸びをして、ふと目に飛び込んできた、山間に沈みゆく太陽の美しさに小さく声を上げた。
 茜色の光はすべてのものに等しく降り注ぎ、温かな気配で以って世界を包み込む。
 空も、木々も、大地も、そして自分も。
 太陽の光をその身に受けて、それはまるで一色の絵の具で描かれた絵画のよう。
 城の外に飛び出して、こうして旅をしているからこそ目にすることができた美しさ。

 バササッ

「―――っ!?」

 いつしかうっとりとその光景に見入っていたアメリアは、ふいに頭上でした物音にはっと我に返った。
 反射的に音のした方を見上げて――――
「―――あ・・・・!?」
 飛び立っていったのは、一羽の鳥。
 茜色の光でよくは分からなかったけれど、もしかして、もしかしたら――――
「・・・・青い、鳥・・・・?」

 カラ カランッ

 抱えていた薪が一本、その腕から滑り落ちた。
 けれど彼女はそのまま、呆然と鳥の飛んでいった方を見つめ続けた。







 どれくらいそうしていただろうか。
「アメリアーーーっ!?何やってんのよもう、薪がないといつまで経っても火が熾せないでしょーがっ!!」
 リナの苛々とした怒鳴り声が容赦なく飛んできて、アメリアは慌てて足元に転がった薪を拾い上げた。
「はーーいっ、今行きますーーーーーっ!!」
 おそらくお腹が空いて苛立っているのであろう栗毛の少女のご機嫌がこれ以上悪くならないうちに、早く戻らなくては。
 夕日を受けて美妙な色合いを放つ黒髪をふわりと靡かせて、アメリアは弾かれた小石のように駆け出した。







 両手一杯に抱えた薪を落とさないように気を付けながら、森の中を走る。
 茜色の世界の中、アメリアは静かに微笑んだ。
 
 さっきの鳥が飛んでいった方向が、仲間達が待っているのと同じ方向だと気付いて。



 ――――アル・・・・幸せの青い鳥は、本当にいたよ――――
























『アメリア、青い鳥を探しに行こう!』

『青い鳥って、ほんとにいるの?』

『いるさ!世界のどこかで、誰かに見つけられるのをずっと待ってるんだ。僕が見つけてあげるよ。見つけて、アメリアを幸せにしてあげる』
























 ――――ねぇ・・・・君は今、幸せ?――――




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8247青い鳥感想です。穂波 2002/3/31 01:43:26
記事番号8221へのコメント

今晩は、雫石さん。
お久しぶりです、穂波です。

アル→アメですか。ストーリの展開上パラレル、或いは過去話じゃないと、片思い、もしくは悲恋になってしまいますよね……。

幸せだった子ども時代から、縋り付くことしかできなくなる、そして手段を間違えてしまう最後までのアルフレッドの心情が、物悲しいです。
なんと言うか、切ないお話でした。特に、最後の一文が。

よませてくださり、ありがとうございました。また何か書かれるのを、楽しみにしています。

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8249ありがとうございますv雫石 彼方 E-mail URL2002/4/1 22:04:22
記事番号8247へのコメント

穂波さん、お久しぶりです。
まさかアル→アメ話でレスをいただけるとは思ってなかったので、かなり嬉しい不意打ちでしたv
ありがとうございます!


>アル→アメですか。ストーリの展開上パラレル、或いは過去話じゃないと、片思い、もしくは悲恋になってしまいますよね……。

それもあるんですけど、単純に私がアルフレッドの片思いが好きなだけってのも原因だったりします(^^;)
なんていうか、私の中でのこの2人のテーマ(?)が『切なさ』とか『届かない思い』とかいった、ちょっとマイナスっぽいんだけどでもどこか温かい、みたいなイメージなもので・・・。


>幸せだった子ども時代から、縋り付くことしかできなくなる、そして手段を間違えてしまう最後までのアルフレッドの心情が、物悲しいです。
>なんと言うか、切ないお話でした。特に、最後の一文が。

上にも書いた通り、切ないお話が書きたかったのでそう言っていただけると嬉しいです。
最後の方は、かなり難産だったんですよー。納得のいくラストが書けなくて、随分ほったらかしにしてました。なんで、最後の一文で切なさ強調できていたら、ほんとにガッツポーズです(^^)


>よませてくださり、ありがとうございました。また何か書かれるのを、楽しみにしています。

こちらこそ、読んでくださって本当に感謝感謝です!!
また何か思いつきましたら投稿させていただきたいと思います。
どうもありがとうございました!!

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8252素晴らしいお話でした。(感動)ザズルア=ジャズルフィードゥ 2002/4/3 15:19:11
記事番号8221へのコメント

 どうも、はじめまして。あたしはゼルアメ中心だかオリキャラ中心だか分からない小説を連載しているザズルア=ジャズルフィードゥというものです。

 今回の「青い鳥」、素敵な話でしたよぉ〜。でも、最初に読もうとしたときに
>君に心の余裕があったなら、聞いて欲しいんだ。
の一行を見て「あ、今心に余裕ないから。また今度♪」と本気で後回しにした悪人です。あたしは。(爆)
 だけど、心の余裕がなかったその時に読んでいたとしても絶対感動したとても面白い話だと思います。思わず泣きそうになりました。寸止めしたけど。(爆)

 それでは。

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8265いやぁ///(てれてれ)雫石 彼方 2002/4/8 12:51:11
記事番号8252へのコメント

ザズルアさん、はじめまして。
感想、どうもありがとうございます!

>>君に心の余裕があったなら、聞いて欲しいんだ。
>の一行を見て「あ、今心に余裕ないから。また今度♪」と本気で後回しにした悪人です。あたしは。(爆)

あら、素直なんですねぇ、ザズルアさんてば(笑)
でも、その後心にも余裕ができたようで、読んでいただけて良かったです(^^)

> だけど、心の余裕がなかったその時に読んでいたとしても絶対感動したとても面白い話だと思います。思わず泣きそうになりました。寸止めしたけど。(爆)

ありがとうございます、とても嬉しいですv
忘れた頃にやってくる神出鬼没な私ですが、またきっと何か投稿させていただきにやってくると思いますので、その時はどうぞ見てやってくださいね♪

では〜。

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