◆−Strawberry candle 〜小さな羽 飛んだ〜−雫石彼方 (2001/12/22 23:45:28) No.7911 ┣続きが読みたいヒト、挙手!!−白河綜 (2001/12/23 01:08:52) No.7916 ┃┗ありがとうございます〜(><)−雫石彼方 (2001/12/24 02:53:51) No.7918 ┗初めまして−とーゆ (2002/1/14 17:49:30) No.7961 ┗初めまして!−雫石彼方 (2002/1/16 22:13:09) No.7967
7911 | Strawberry candle 〜小さな羽 飛んだ〜 | 雫石彼方 E-mail URL | 2001/12/22 23:45:28 |
前回の投稿から3ヶ月弱ぶりくらいでしょうか。 雫石です。 今までの私の作品の例に漏れず今回もゼルアメなのですが、今回のコンセプト(?)として。 読み切りの、長い話が書きたかったんです。 冬の空気みたいな、透明な話が書きたかったんです。 で、この話ができました。 パラレルで、スレのキャラはゼルとアメリア、そして初書きルーク、この3人しか出てこなかったりしますι あとルークなのですが、私、原作はゼルとアメリアが同時に出てる5巻〜8巻までしか持ってなくて、2部は遥か昔に友達に借りて9巻〜11巻までを1回読んだだけなので、はっきり言ってルーク、よくわかりません(爆) しかも、それさえあればどんなに変でもルークに見えると言っても過言ではないであろう、「ミッリィィィィィィナァァァァっ!!!Vv」が(ミリーナとはまだ出逢っていないという設定なので)ない為、更に誰だかよくわからないかも・・・・・; ・・・・・こ、こんなんですが、読んでもらえたら嬉しいです(^^;) ********************************* 秩序など存在しない、混沌の街。 殺人や麻薬、武器の売買など日常茶飯事に起き、己を主張する最大の手段は『金』と『暴力』のみ。街には人の命を何とも思わない人間の皮を被った獣が溢れ返り、警察も彼らの脅威に恐れをなし、横行する犯罪にも見て見ぬ振りをする。 そんな腐れきった環境の中に身を置き、染まり、生きて尚。輝きを失わない、忘れられない日々がある。 ――――そう。5年も前の、あのたった1週間の出来事が、俺は未だに忘れられないんだ―――― Strawberry candle 〜小さな羽 飛んだ〜 それは灰色の空から真っ白い、天使の羽にも似た雪が舞い落ちる、とても寒い日だった。 うっすらと道路を白く染める雪の上に足跡を刻みながら、どこか覚束ない足取りで歩を進める。 (・・・・・くそ、俺としたことが油断した・・・・・・) チーム同士の争いの帰り道。 左肩がズキズキと痛んで、彼はその端正な顔を苦痛に歪ませた。 この街では、気の合う者同士でチームを作ってその強さを競い合うのが常であり、怪我はおろかそれで命を失うことすら、ここの住人にとっては珍しくもなんともないことだった。 そしてその15、6歳くらいの銀髪の少年――――ゼルガディスは、この街でもトップクラスの強さを誇るチーム『トラッシュ』のリーダーであった。しかしまだ年若く、綺麗に整った顔立ちと一見華奢なその外見から、付け入る隙が他の者よりも多いに違いないと思われがちで、彼を倒して名を挙げようとする者が後を絶たなかった。 もちろん、そんじょそこらのちんぴらどもが束になっても敵わぬほど彼の強さは半端ではなく、今日喧嘩を売ってきた『ドルム』というチームもいつもなら足だけでも軽く倒せるような連中だったのだが、今日ばかりは少々分が悪かった。 朝からの高熱。 吐き気。 眩暈。 普段滅多に風邪など引かない人間がたまに風邪を引くと、とんでもなくひどいものになるらしい。 体調も気分も絶不調、しかも一人のところを襲ってきたのは偶然か、はたまた狙ってのことだったのか。総勢20人をたった一人で相手にするのはさすがにきつかった。 それでもすべて返り討ちにして一人残らず血祭りに上げる辺り、彼の実力がどれほどのものなのか、窺い知れるだろう。 しかしさすがに無傷というわけにもいかず、左肩に受けた鉄パイプでの打撲傷が鈍く重い痛みを放っていた。 そこに風邪の症状も加わって、朦朧とする意識。 目の前が白く霞むのは降りしきる雪のせいなのか、それとも・・・・・・ (・・・・あと少し、なんだ・・・・・) ここをあと少し行けば、彼と彼の仲間達がいつも溜まり場にしている廃屋へと辿り着く。そこまで行けば、後は悪友であるルークあたりがどうにかしてくれるだろう。目付きも口も態度も悪い奴だが、仲間に対しては意外と情に厚い奴だから。 「・・・・・く・・・・・・そ・・・・・・・・」 けれどあと少しと思う頭とは裏腹に、身体が言うことを聞かない。ついにそこまで辿り着くことかなわず、ゼルガディスが意識を手放しかけた瞬間。 「・・・・・・・・?」 歌が、聞こえた。 高く、澄んだ綺麗な声。 歌を歌うことなどとうの昔に忘れ去られたこの街で、一体誰が歌っているのだろう。 声の聞こえた方へと意識を向けて。 黒、 白、 そして、深い蒼――――――― それを認識した直後、彼の意識は闇の底へと沈んでいった。 「・・・・う・・・・・・・」 意識を取り戻したゼルガディスが目を開けると、そこは―――――真っ暗だった。 「・・・・・・・?」 起き掛けなのと熱のせいではっきりしない頭を働かせて、ようやく目の上に何かが置かれているのだと気が付く。手に取ってみると、それは湿ったタオルだった。 なるべく頭に振動が伝わらないようにゆっくりと起き上がる。 全く見覚えのない部屋だった。 今自分がいるベッドの脇にサイドテーブルと椅子が置かれ、壁際には暖炉、その他には窓辺に小さな鉢植えが置いてある以外は何もない、至って簡素な部屋。 自分が置かれている状況がよく掴めずに、ぼうっと暖炉の火を眺めていると。 唐突に、ドアが開いた。 「っ・・・・・・!!」 毛布を跳ね除け、眩暈を堪えて即座に身構える。 例え本調子でなくとも、易々と殺られる自分ではない。勝利は望みが薄いとしても、せめて相討ちに――――― 幾つもの罪を重ね場数を踏んだ裏世界の人間ですら凍りつくような殺気を放つ彼に、しかしその殺気を向けられた当の人物は至ってほのぼのと微笑んだ。 「わあ、よかった!!気が付いたんですね♪」 そして何かを思いついたようにぱんっと手を打ち合わせると、 「ちょっと待っててくださいね、すぐ戻りますから!!」 そう言うと、自分と同じくらいの年と思われるその少女はもう一度にぱっ♪と能天気な笑顔を浮かべて、慌ただしく部屋を出て行った。 そして間髪置かずに聞こえてきたのは、 「うきゃわ〜〜〜〜〜〜〜っ!?」 ずどどどげべごがしゃ〜〜〜〜んっ けたたましい悲鳴とおそらく階段を転がり落ちたのであろう、聞くのも哀れになるような騒音。 「・・・・・・・・・何なんだよ、一体・・・・・・・・・・」 完全に殺気を削がれて拍子抜けしたゼルガディスは、そう呟いてようやく緊張の糸を緩めた。 あの様子からすると、自分に敵対する人物ではなさそうである。もちろん完全に警戒を解くつもりはなかったが、何となく彼女は信用してもいいような気がした。 「・・・・・・・?」 ふと感じる違和感、そして一瞬の後、彼は愕然とした。 「・・・・・・・“信用してもいいような気がする”、だと・・・・・・?――――何を考えているんだ、俺は・・・・・・・・!!」 初対面の、しかもまだろくに話すらしていない相手をすぐに信用できるような、幸せな人生は送ってこなかった。裏切りなど、それこそ数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほど経験した。 『人に会ったら、まず疑え』 それが今までの経験から得た、彼のモットー。 一見人当たりのいい好人物を演じている者ほど、裏では何を考えているかわからない。 出逢ったばかりの人間に心を許すなど、有り得るはずがなかった。 それなのに、彼女が見せたあの―――荒んだ生活に身を置く彼が今まで見たことのなかった―――温かな笑顔が、瞼に焼き付いて離れなかった。 頭と心が上手く噛み合わない、そんな状況を持て余して顔を顰めて――――ふと、思い出したように疼き出した肩の痛みに、ゼルガディスは思わずベッドに引っくり返った。 「わたし、アメリアっていいます」 パンとかぼちゃのポタージュスープ、それにスクランブルエッグという簡単な食事を持って戻ってきた少女は、それを半ば押し付けるようにゼルガディスに勧めてから、そう名乗った。 どうやら彼女は、道の真ん中で気を失ったゼルガディスをここまで運び、看病してくれたらしい。しっかりとこの腐れ切った街の生活に順応している癖に妙なところで几帳面なゼルガディス、世話をかけた上に食事までご馳走になったのではこのままだんまりを決め込むのもなんだと思い、簡潔極まりないながらも一応“ゼルガディスだ”と答えると、彼女は肩の少し上で切り揃えたその豊かな黒髪を揺らして、嬉しそうに笑った。 まったくよく笑う奴だ、と思いながら改めて彼女を眺める。 襟ぐりの大きく開いた白い長袖のシャツ、その首元には銀細工の十字架のチョーカー、グレーのミニスカート、黒のハイソックス。 おおよそこの街にはそぐわない、まだ幼さの残る“世間知らずないいとこのお嬢さん”的少女。 「あんた、ここの人間じゃないだろう」 彼の問いに、少女は目を見開いて、感心したように言った。 「よくわかりましたね!昨日、越してきたんです」 「あんたみたいな無警戒な人間は、この街にはいない」 もし、俺がいきなりあんたを襲うような奴だったらどうするつもりだったんだ、と続けるゼルガディスに、しかしアメリアは自信満々に胸を叩いてみせた。 「大丈夫です!それは有り得ません!!」 「なぜそう言い切れる」 「だってゼルガディスさんは、わたしに気が付きましたもん」 「・・・・・・・?」 「声が、聞こえるでしょう?」 「誰の?」 「わたしの」 「・・・・・そりゃ、声ぐらい誰だって聞こえるだろうさ」 ゼルガディスの言葉にアメリアは無言で首を振り、そして顔を俯けた。 「――――ここは、わたしの声が届かない人が多すぎる・・・・・・この街自体、病んでいるのかもしれませんね・・・・・・」 それは、小さな小さな呟き。 ゼルガディスに言って聞かせるというよりは、独り言と言った方が正しいかもしれない。 そっと伏せられる、愁いを帯びた深蒼の瞳。 惹き込まれるように見入って、そしてふいにゼルガディスは思い当たった。 意識を手放す直前に見た、3つの色。 黒は、漆黒の髪。 白は、透き通るような白い肌、そして白い服。 深い蒼は、その、瞳。 「そういや、あの時歌っていたのは・・・・・・あんたか?」 「あ、はい。そうですけど・・・・」 その答えを聞いて、しばし考え込むゼルガディス。 一体何なのかときょとんとした顔で彼を見つめるアメリアに、やがてゼルガディスは顔を上げ、やや躊躇ってから――――― 「・・・・・もう一度・・・・・・・歌ってくれないか?」 「・・・・・・・・・・・・はい!!」 一瞬驚いた表情を浮かべ、そしてアメリアは花の綻ぶような笑顔を見せた。 前方に見知った後ろ姿を見つけて、黒髪の少年は弾かれたように駆け出した。 「あンの野郎っ・・・・・!!」 その差が10m、5m、3mと徐々に縮まって、1m手前まで来た時に彼は左足で思いっきり踏み切り、その背中目掛けて飛び蹴りを放った―――――が、肝心の標的がまるで後ろに目が付いているかのように絶妙のタイミングですいっと横に避けた為に、彼の身体はそのまま空を飛び、自然の摂理に従って、落ちた。 何故かそこにはご丁寧にバケツが置いてあったりして。 派手な音を撒き散らしながら、彼は地面と仲良くなった。 「〜〜〜〜いってーーーーーっ!!おいコラゼルっ!!何しやがるっ!?」 「それはいきなり飛び蹴りかまされそうになったこっちのセリフだと思うが」 「るせぇなっ!!結果的に痛いのはこっちなんだから悪いのはお前なんだよっ!!」 「へーへー、それは悪かったな」 おざなりに返事をして、ゼルガディスはそのつんつんと髪の逆立った目付きの悪い少年が立ち上がるのを待って改めて声を掛けた。 「・・・・・で?一体何の用なんだ?ルーク」 ルークと呼ばれた少年はその質問に大きく頭を振り、大袈裟に溜息をついてみせた。 「あのなぁ、“何の用なんだ?”じゃねーだろ!?3日前に風邪でふらふらのくせに出かけてったっきり溜まり場にも姿見せねーで行方不明、しかも噂じゃ『ドルム』の連中相手にたった一人で喧嘩したらしい、とくりゃ誰だってどっかで野垂れ死んでんじゃねーかと思うだろが!!」 「・・・・・つまり心配して探し回ってる最中に俺の姿を見つけて、安心のあまりつい飛び蹴りを放ってしまった、と。こういうわけか?―――ルーク・・・・・・・」 「な、なんだよ・・・・・」 急に真剣な表情で自分の名を呼ぶ銀髪の少年に、らしくもなく心配なんぞというものをしてしまった照れ臭さみたいなものを見透かされたような気がして頬を掻いていると。 「俺にそういう趣味はないぞ」 「おれにだってあるか馬鹿たれぶっ殺すぞラァ!!(怒)」 瞬時にぶちキレたルークが怒りに任せて咄嗟に足元に転がっていたバケツを投げ付けると、今度こそゴーンといい音を響かせて、それはゼルガディスの頭に命中した。 「・・・・・・・で?結局どこに行ってたんだよ」 「さあ・・・・どこだろうな」 「なんだよ、勿体つけやがって。・・・・はは〜ん、さては女でもできたか?あれだけひどかった風邪もすっかり治ってるみたいだしぃ?」 “愛しのマイハニーの看病の賜物か?”と薄ら笑いを浮かべながらデバガメじじぃのような目をして詰め寄るルークの顔面をばべんと叩いてから。 「アホ。――――まぁ、強いて言うなら・・・・・」 「強いて言うなら?」 「天使の棲む家、かな」 「・・・・・・・はぁ!?」 この上もなく真面目な顔でこの上もなくこっ恥ずかしいセリフを吐くゼルガディスに素っ頓狂な声を上げて眉を顰めながら、ルークは先ほどのバケツの当たり所がよほど悪かったのだろうかと、本気で心配になるのであった。 溜まり場にしている廃屋のある通りから1本外れた通りを、ゼルガディスは歩いていた。やがてある一軒の家が見えてくると無意識のうちに少し速度を上げ、迷うことなくドアを叩いた。 「は〜〜〜いっ!!」 元気な声と共に顔を覗かせたのは、黒髪の少女。ゼルガディスの姿を認めて、その表情が嬉しそうに輝いた。 彼女と出会って6日。 ゼルガディスにとって、ここへ来るのが既に当たり前のことになっていた。まるでずっと昔から、そうしていたように。いつの間にか、彼女は彼の心の奥まで自然に入り込んでいた。 そしてゼルガディスも、それを不快と感じなかった。他人と必要以上に関わることを極端に嫌う彼が。誰よりも人を信じることを拒否していた彼が。 緩やかに、けれど確実に、彼は変わり始めていた。 鼻歌など歌いながら紅茶を用意しているアメリアをなんとなく眺めていたゼルガディスだったが、ふと思い出したことに口を開く。 「そういや表に鉢植え置きっ放しだったが、いいのか?」 雪の帽子を被った鉢植えが、軒先でぽつんと佇んでいたのを思い出す。 植物のことなど全くと言っていいほど詳しくないが、冬の寒い空気に触れさせておくのは良くないのではないかと思ったのだ。 「ああ、いいんです。冬の低温に十分当てておかないと花が咲かないんですよ、あれ」 「ふーん・・・・花なんてここじゃ滅多にお目にかかれないからな。育て方なんぞわからん」 言わなくてもいいことを言ってしまったと、どことなく拗ねたように頬杖をつくゼルガディスにくすりと笑いながら、アメリアが淹れたての紅茶を差し出す。 気持ちが和らぐ優しい香りがふわりと広がった。 「ゼルガディスさんも育ててみませんか?良かったらお裾分けしますよ♪」 「・・・・・俺が?花を?」 「だ〜いじょうぶ!!愛情を注いで育てれば、花は絶対想いに答えてくれますから!!」 「・・・・・愛情云々という時点で、既にどうかと思うが・・・・・ι第一、俺が花を育てるって柄でもないだろう」 「そんなことないです!!ゼルガディスさんはとっても優しい人です!!花が似合わないなんて、そんなことないです!!」 拳をいっぱいに握り締めて自分を見つめてくるアメリアを、ゼルガディスはなんとも不思議な気持ちで見つめ返した。 花を育てる。 自分で言うのもなんだが、これほど自分に似合わない行為もそうそうないだろう。彼の仲間達にうっかり話そうものなら、大爆笑が巻き起こること必至である。 それを、この少女は真っ向から否定する。 優しい人だ、と言い切る。 今まで、お世辞にも穏やかとは言えない日常を過ごしてきた。くだらない諍いで人を殺したことなど一度や二度ではない。 そんな自分の何を見てそう思うのかはわからないが、彼女がそう思うのなら。 せめて彼女の前だけでも、そう在りたいと思った。 「・・・・・・・そうだな・・・・・・・・貰おうか」 彼の言葉を聞いて、蒼の瞳が柔らかい光を帯びる。 その瞬間が。 何より、好きだった。 次の日彼女の家に行くと、約束通り彼の分の鉢植えが用意されていた。 一通りその花の育て方を教わって、改めて眺めた彼女の鉢植えより一回り小さなそれには、クローバーのような葉のついた茎が真っ直ぐに伸びている。 そしてはたと気付いた。 「・・・・・そういやこれ、一体何の花なんだ?」 本人としては至って何気ない質問だったのだが、アメリアは一瞬きょとんと目を瞬かせてから、堰を切ったように笑い出した。 「な・・・・なんだよ?」 「だ・・・・・・だって、ゼルガディスさんてば・・・・・・・ぷふっ、何の花かも知らないで、育てようとしてたんですか・・・・・・?」 「うっ・・・・・ιうるさいな、昨日も俺は花のことはよくわからんと言ってただろうがっ!!」 思わず喚きながらアメリアを睨むゼルガディスだったが、赤くなった顔で睨まれてもちっとも怖くない。 ・・・・・・もっとも、出逢ってすぐ、物凄い殺気と共に睨みつけてきたゼルガディスにも全く動じなかった彼女である。例え顔が赤くなくても、きっと毛ほども怖がらなかったであろうが。 ひとしきり笑った後、アメリアは笑いすぎでその瞳の端に滲んだ涙を拭ってから、その鉢植えの小さな葉を人差し指で優しく撫でながら言った。 「“ストロベリーキャンドル”って言うんです、この花。名前の通り真っ赤な苺のキャンドルみたいな花で、すっごく可愛いんですよ」 そしてテーブルに置いた腕に顔を預けるようにして、鉢植えを見つめる。その仕草が子供っぽいと思う反面、その清廉で、けれどどこか艶っぽい表情にどきりと胸が高鳴るのを感じた。 「灯火みたいなんです。この花を見ていると正しい方向に導いてくれる、そんな気がする・・・・・・」 「・・・・・・よっぽど好きなんだな」 「はい!!・・・・・・・大切にしてくださいね」 そう言って微笑った彼女の瞳が一瞬、なぜか哀しそうに見えて。 何かを言おうとして、けれど結局言うべき言葉が見つからなくて、彼は彼女の髪をくしゃりと撫でた。 その手にそっと、彼女の手が触れる。 伝えられる温もりが、なんだか嬉しくて。 強く、握り返した。 「・・・・・・・ありがとう」 突然感謝の言葉が口を突いて出たのは、なぜだったのだろう。 自分でもよくわからなかったけれど、今。 言わなければいけない、そんな気がした。 その日は、朝から変だった。 何がと言われると答えられないのだけれど、漠然とした不安のようなものが胸の中を犇(ひしめ)いていた。 仲間といてもすべてが上の空で、落ち着かない。 「・・・・・で、『ドルム』のビンツって野郎の従兄が『フォックス』のリーダーらしくてな。仇を取ってくれって泣きついたって話だぜ」 「『フォックス』か・・・・・・。やべーな、『フォックス』っていやぁかなりの強者揃いだ。おいゼル、おまえ気を付けた方がいいぜ。あんまり一人で出歩かない方が・・・・・・」 忠告するルークだったが、その言葉を最後まで聞かないうちにゼルガディスは立ち上がった。 「・・・・・っておい、どこ行くんだよ」 「ん、ああ。ちょっと」 「ちょっとって・・・・・あのなぁ!!言ってる傍から出かけるってか!!人の話聞いてんのかてめぇは!?」 「・・・・ああ、気を付けるんだろ」 本当に分かってるのか分かってないのか判断に困るような答えを残して、ゼルガディスはさっさと出て行った。その後ろ姿を皆呆気に取られて見送る。 「・・・・・駄目だな、ありゃ」 「・・・・・どうしたんだ、あいつ?」 「さあ、恋煩いでもしてんじゃねーの?」 『恋煩いぃ!?』 その後巻き起こった大爆笑は、幸いゼルガディスの耳には届かなかった。 外に出ると、いつの間にか雪が降り出していた。 大きな牡丹雪が頬を掠める。そのまま肩に落ちた雪が融けて消えていくのを見つめて、また一つ、不安が大きくなった。 ――――無性に、彼女に会いたくなった。 駆け出す彼を、降り積もった雪が邪魔をする。足を取られて上手く進めない。 心の中でくそったれと毒吐きながら、ここ数日通い慣れた道を走る。 この時ほど雪を忌々しいと思ったことはなかった。 と――――― ビュウッ 突然、空を切る音と共に強烈な殺気を感じて、横に飛び退る。 石造りの壁に突き当たった小さな矢が、雪の上に音もなく落ちた。 「・・・・・・どういうつもりだ」 剣呑な光を孕んで睨みつけた先には、10人ほどの男達の姿。その先頭に立つ筋肉隆々の男には、見覚えがあった。 『フォックス』のリーダー、ブラント。 各チームを束ねるリーダーにはそのチームの強さに見合っただけの賞金がかけられ、街の至る所に手配書が貼られている為、会ったことはなくとも各チームのリーダーの顔ぐらいは皆知っているのだ。 「貴様が『トラッシュ』のゼルガディス、だな?」 「・・・・・『フォックス』のブラント様直々のお出ましか。・・・・・で、俺に一体何の用だ?」 『フォックス』と言えば、かなり上位のランクに入るチームだ。そのチームのリーダーである自分を前にして、少しも怯まないゼルガディスの態度が気に触ったのか。 ブラントの眉が片方、ぴくりと跳ね上がった。 「何の用か、だと?これはまた随分と余裕綽々だな。それとも単に鈍いだけか?」 ブラントとその腰巾着と思しき連中の間に笑いが沸き起こる。 くだらないやり取りに嫌気が差し、軽く舌打ちしてからゼルガディスは苛々とその視線を巡らせた。 まずは、偉そうに踏ん反り返っているブラント。 (『フォックス』のリーダーだというからどんな猛者かと思えば・・・・・。見かけだけのまるっきりの雑魚だな。まるでオーラを感じない) 次に、その周りを取り囲んでいる連中へ。 (こいつらは問題外。メンバー全部が全部、強いわけじゃないってことか・・・・・。それより要注意なのは―――――) そして更に視線を巡らせ、後ろの方でニット帽を目深に被り、ガムをくちゃくちゃと噛んでいる男と、苦虫を噛み潰したような表情をしてブラントに一瞥をくれている黒髪の男を目で捉える。 (あいつと・・・・・・・・あいつか) 「・・・・・戯言はいいから用件を話せよ。こっちは急いでるんだ」 ゼルガディスの問いにやたらもったいぶったような間を空け、ブラントは決してお世辞にも魅力的とは言えないような歪んだ笑顔を見せた。 「・・・・・・・『ドルム』は知ってるな。お前が1週間前に叩き潰したチームだ。そこの一人が俺の知り合いでな」 そういやルーク達がさっきそんなようなことを話していたな、と今更ながら思い当たったが、それを表には出さずに口の端を少し上げて不敵に笑ってみせる。 「敵討ちか。ご苦労なことだ」 「ぬかせ」 「その厚い友情に免じて相手をしてやる、と言いたいところだが・・・・。さっきも言った通り急いでるんでな。またにしてくれ」 「はっ、大口を叩いていても所詮はガキだな。怖気づいたか?」 「何とでも言え。悠長にお前らの相手をしているほど暇じゃない」 そう言い放って、敢えて背を向ける。 するとやはり予想した通り、その隙を突くようにブラントは雄叫びを上げながら背を向けたゼルガディスに――――正確に言えば1週間前痛めた左肩目掛けて、鉄パイプを振り下ろした。恐らく『ドルム』の連中から、彼が左肩を負傷していることを吹き込まれていたのだろう。 だが、ブラントが“殺った!”と確信した瞬間。 世界が反転した。 「?」 状況を理解する間もなく、激痛が背中に走った。 雪が舞い上がる。 気が付けば、仰向けに転がっていた。 何の事はない。ブラントの動きを予測していたゼルガディスが振り下ろされた鉄パイプをすんでで受け止め、その勢いを利用して鉄パイプを反転させて彼を投げ飛ばしたのだ。 「悪いな。回復力は異常に早い方なんだ」 そう吐き捨て、嘲るような冷笑を浮かべてこちらを見下ろすゼルガディスに恐れを感じる暇もあらばこそ。 鳩尾に強烈な膝蹴りを容赦なく叩き込まれ、ブラントは泡を吹いて呆気ないほど易々と気を失った。 「・・・・・・・・!!」 自分達のリーダーが一見華奢な少年にあっさりと地に沈められたのを見て、ざわめく腰巾着たち。その間を縫うようにしてゆっくりと前に出てきたのは、やはり先ほどゼルガディスが要注意だと感じたあの二人だった。 「・・・・・・やれやれ、我らがリーダーながら実に情けないことだ」 「まあそう言うなって。こいつが弱っちぃのはハナっからわかってたことじゃねーか」 「それはそうなのだが・・・・・・お前はこの失態を見て何も思わないのか?」 「べっつにぃ?だって恥ずかしいのは俺様じゃねーもんよ」 自分達のリーダーが呆気なく負けたというのにまったく動揺すら見せず、放っておけばそのまま世間話にでも突入しそうな二人をしばし見比べて、ゼルガディスは納得したように片頬を上げた。 「――――なるほどな。そこに転がってるのは形だけのリーダーで、実質的な実権はあんたら二人が握ってるってわけか。どうりで『フォックス』のリーダーにしちゃ弱すぎると思った」 「まあな♪ま、正確には俺様達の他にもう一人いるんだけんどもよ。“大昔のドラマじゃあるまいし、敵討ちなんて僕の美意識が許さないんです”とかなんとかほざいて女引っかけに行っちまったから、今日は来てねんだ」 あともう一人は女ったらしらしい。 「なんであんたらがリーダーにならないんだ?」 もっともな疑問である。チームを仕切れる実力を持ちながら、なぜあんな勘違い野郎の好き勝手にさせているのか。 その問いに、へらっと笑って答えるニット帽曰く。 「めんどくせーから」 「・・・・・・・・」 至極単純明快な答えに返す言葉も出ない。 沈黙する彼らの後ろでは、黒髪の男が腰巾着共を撤収させ始めていた。そして図体だけはでかい(えせ)リーダーを軽々と担ぎ上げる。 「リオス、もう行くぞ」 「おお。んじゃ、世話かけたな」 あっさり引き上げていくところを見ると、この二人は『敵討ち』には全く興味がなかったのだろう。とりあえず暇だから付き合ってやった、といったところか。 軽く手を上げた、リオスと呼ばれたニット帽の男にこちらも同じように手を上げることで返して、ゼルガディスは踵を返した。 気が付けば、雪は更にひどく降り出していた。 彼女の家の前に立って、ゼルガディスは大きく深呼吸をした。 なぜ、こんなに緊張しているのか。 いつも表に置いてあったあの鉢植えがない、それだけで更に強く、不安が煽られた。 髪や肩に降り積もった雪を叩き落とし、一呼吸置いて、ドアを叩く。 返事は―――――――返ってこなかった。 いつまで待っても家の中からは物音一つせず、恐る恐る押してみたドアは拍子抜けするほど簡単に開いた。 ひんやり、と。 外と何ら変わりのない、冷たい空気が肌を刺す。心まで凍り付いてしまうような錯覚を覚えるほど、彼女のいないその空間は、寒かった。 「・・・・・・アメリア?」 彼女の名を呼んでみても、彼の声が哀しく響くだけ。 すべての部屋を廻ったけれど、テーブルも、椅子も、ベッドも、暖炉の火も、そしてあの鉢植えも。 昨日までは彼女と共に確かにそこにあったはずのそれらはすべて、この家から忽然と姿を消していた。 (先ほどの一悶着がなければ、間に合っていただろうか?) ふと浮かんだ後悔の念は、けれどこの家から人がいなくなってからかなりの時間が経っていることを示す寒さによって、幸か不幸かすぐに打ち消された。 彼女は一体どこに行ったのか、なぜ何も言わずに行ってしまったのか、それに答えてくれるものは何もなく。 ただ一つわかったことは、ここに彼女はもういない、それだけ。 彼は為す術もなく、からっぽな部屋で呆然と立ち尽くし――――やがて、弾かれたように家を飛び出した。 部屋の寒さからして、彼女がまだこの街にいる確率は極めて低いだろう。 わかってはいたけれど、認めたくなかった。探さずにはいられなかった。 まずは一週間前、彼女と出逢ったところへと急ぐ。意識が朦朧としていた為に定かではなかったが、だいたいの見当はつく。 ――――が、その場所には他のチームの連中が喧嘩をしているだけで、彼女の姿はどこにも見当たらなかった。 (ここじゃ、ない) では他に、思い当たる場所へ。 そう思って駆け出そうとして、ゼルガディスは愕然として足を止めた。 ここ一週間、彼女と会っていたのはもっぱら彼女の家で。 一緒に外に出たことは、一度もなかった。つまり、他に思い当たる場所などどこもないのだ。 心臓の音が、どんどん大きくなっていく。 どこか痛みすら感じる心臓を落ち着けるように胸元を掻き掴んで、大きく息を吸い込んだ。 (ダイジョウブ、ゼッタイニ アエル。) 自分に言い聞かせるように繰り返して、何度も繰り返して。 ゼルガディスは、無我夢中で街中を探し回った。 「おーい、ゼル」 ふいに後ろからよく聞き慣れた声に呼び止められたのは、空が雪雲の暗さとは違う、夜の暗さを徐々に帯び始めた頃だった。 「――――ルーク・・・・」 「どうしたよ、血相変えた顔して」 滅多に見せない必死の形相をした彼を、ルークが珍しそうに眺める。 その視線から鬱陶しそうに顔を逸らして、“別に”と突っ撥ねようとして。 「・・・・ちょっと来てくれ」 ふと思いついて、ゼルガディスはルークの後襟を引っ掴んで駆け出した。 「ぐえっ・・・・ぐ、苦じっ・・・・・・!!ごらでめぇゼル、おれを゛殺す気がっ!?」 「今死んでもらっちゃ困る!死ぬなら後にしてくれっ!」 「んな無茶苦茶な・・・・・!!」 後襟を掴まれて首が締められる形になっている為、息ができずに顔を青くしながら喚くルークを引きずるようにして、ゼルガディスは目的の場所――――彼女の家を再び目指した。 「―――――で!?一体なんだって!?」 やっとこさ解放されて、不足していた酸素を補うべく大きく深呼吸を繰り返していたルークがようやく落ち着いたのか、顔を上げて半眼でそう訊ねた。 こめかみに青筋が浮かんでいるような気もするがとりあえず気にしないことにして、ゼルガディスはここ数日ですっかり見慣れた家に目を向けた。その表情があまりに真剣だったので、ルークも気を取り直してそちらを見上げる。 雪化粧を施されて真っ白に染まりつつある、小さな家。 これがなんだと言うのか? 黙ったまま、ゼルガディスが口を開くのを待つ。 「一週間くらい前にこの家に越してきた、俺たちと同じくらいの年の女を知らないか?」 「女?・・・・どんな?」 「――――黒髪で背の低い、蒼い瞳の・・・・・」 「ふむ・・・・黒髪、ねぇ・・・・・・」 チームのリーダーでありながら他のチームの動向や街の様子など、自分の興味のないことにはあまり関心のないゼルガディスと違って、意外とマメに情報収集して現状を把握しているルークならば、何か知っているのではないか、と。 そう考えての、ゼルガディスにしてみれば最後の賭けだった。 あれだけ必死に探し回って見つからなかったのだ。これで手掛かりが見つからなければ、完全に希望は絶たれるだろう。 半ば祈るような気持ちで、ゼルガディスはルークの答えを待った。 後から考えてみれば、神など信じたことのない自分が一体何に祈っていたのかと、嘲笑ってみたくもなるけれど。 その時は、真剣だった。 強いて言うなら、きっと。 “彼女”に祈っていたのだろうと、思った。 そして、彼の答えは。 「知らねぇな」 今、最も聞きたくなかった言葉。 これが常日頃自分がしてきたことの報いだろうか。 「・・・・・本当に、知らないか?白い服着て、呑気そうにいつも笑ってる世間知らずそうな女なんだが・・・・・・」 「んー、同い年くらいの女だろ?この荒れ様だ、あんまり人の出入りのないこの街で見慣れないやつがいれば、普通どっかしらで話題に上るはずだ。それでおれの耳に入ってこない筈がねぇ。けど、ここんとこ新入りを見かけたなんて話は全くなかったぜ?」 「・・・・・・・」 「それに確かこの家、なんとかってやつが一ヶ月くらい前に夜逃げしてからは、空家になったまま誰も借り手がいないって話だ。 ――――夢でも見てたんじゃねーの?」 何も、言えなかった。 そんな筈はないと、言い返すだけの根拠が見つからなかった。 本当に、穏やかで幸せな一週間だった。あんなに心休まる時間を過ごしたのは、生まれて初めてだった。 そう、まるで“夢のように”。 「――――“夢はいつか醒める”・・・・・・・か」 力なく呟いて、ゼルガディスは空を仰いだ。 雪が、休むことなく降ってくる。 そっと手を差し出すと、掌に雪がふわりと舞い降りて。 消えて、なくなった。 本当は、わかっていたのだ。 この家の中に、彼女の姿がなかった時から。 それとも朝、起きた瞬間から。 ――――いや、もしかしたら。 『はい!!・・・・・・・大切にしてくださいね』 ストロベリーキャンドルのことを心底嬉しそうに話して、そして彼女が哀しそうに微笑った時から。 わかっていたのかも、しれない。 ――――もう、会えなくなると。 「うう、寒くてかなわねーよ。ゼル、おれはもう帰るからな」 「・・・・ああ・・・・・」 「・・・・お前も早いとこ帰った方がいいぜ」 「・・・・ああ・・・・・もう少しだけ・・・・・・・」 空を見上げたまま全く動きそうもないゼルガディスに呆れたように肩を竦めて、ルークはその場を後にした。 雪が、どんどん降り積もる。 屋根に、道に、彼に。 雪の融けて消えた手をきつく握り締めて、ゼルガディスはいつまでもその光景を眺めていた。 いつまでも、いつまでも―――――― 東向きの窓から差し込む、溢れんばかりの眩しい光で目を覚ます。 冷たい水で顔を洗って眠気を吹き飛ばし、手早く着替えてから鉢植えの花に水をやる。 それが、朝起きてする俺の日課。 ――――そう、鉢植えに水を。 そこには赤い、苺のような花がある。 飽きることなく雪を眺め続けたあの夜、ようやく家に帰った俺を出迎えたのは、この小さな鉢植えだった。 ――――嬉しかった。 我ながら情けないことだが、涙が出るほど嬉しかった。 それくらい、彼女との想い出は俺にとってかけがえのないものだったのだ。 あの一週間が夢ではなかったことを証明するこの鉢植えが、どれだけ俺に救いを与えてくれたか・・・・・。 それからこの鉢植えが、俺の宝物になった。 初めて花が咲いた日の喜びは、とても言葉に表しきれるものではない。 コツン 窓に小石の当たる音。 ・・・・・来たか。 窓を開けると、予想通り黒髪の男がこちらを見上げていた。 「うぃーっす。行くぜー」 「・・・・・相変わらず早いな」 「いい若者がダラダラしとるのはいかん」 「ジジィかお前はι」 「るせーよ。減らず口叩いてる暇があるなら早く下りて来いっつの」 無駄に早起きなルークに急かされて溜まり場へと行くのも、ずっと変わらない日常。 あれから5年の月日が経ったけれど、俺の生活は大して変わっちゃいない。身体に染み付いたモノがそう簡単に消えるはずもなく、相変わらず人に胸張って自慢できないような生活を続けている。 けれどそれは、彼女との日々が何も意味を持たなかったというわけではない。決して。 あれから俺は、無意味な暴力、殺しは絶対にしなくなった。 平和な人生しか送ってこなかった人間は意味のある暴力や殺しなど、と批判するかもしれないが、ここにはそうしなければ理解できない大馬鹿者が大勢いるのだ。 彼女が言ったように、この街は病んでいる。 この街の病気を治そうなどと、御大層なことは思わない。できるとも思わない。 ただ、二次感染――――病んだ者によってもたらされる被害――――を、できるだけ防げたらと思う。俺なりのやり方で。 彼女がこの街からいなくなって、一時抜け殻のようになった俺がこんな風に考えるようになったのは、やはりあの鉢植えによるところが大きいだろう。 『灯火みたいなんです。この花を見ていると正しい方向に導いてくれる、そんな気がする・・・・・・』 “灯火”。 確かに俺は、導かれているんだろうな。あの花に。 ――――そして、彼女に。 腐れ縁と肩を並べて歩く、街の雑踏の中。 ふいに、振り返る。 「・・・・・相変わらず抜けねーのな、お前のその癖」 からかうような視線を送ってくるルークに、苦笑で返して。 「仕方ないだろ。もう既にライフサイクルの一部にしっかり組み込まれてるんだ。どうしようもない」 それなりに、充実した日々を送っているけれど。 一つだけ、明らかに足りないものがあるのも現実で。 言うまでもない、何よりも大切な――――― 「あ〜あ、おれにも人生変えちまうような天使が現れねーかな〜」 「そんなに簡単に現れりゃ苦労はしないだろ」 「ま、そりゃそうだ」 取り留めもない話をしながら、いつもの道を歩く。 見上げた空の蒼が眩しくて、少し。 目を、細めた。 今も彼女は、元気でいるだろうか? 今も彼女は、あの微笑みを絶やさずにいるだろうか? 風のように現れ、風のように去っていった彼女のこと。 もしかしたら、またひょっこり現れるのではないか、と。 街を歩く度に、人込みの中にその面影を追ってしまう。 ――――そう、どんなに時が経とうとも。 今でも俺は、探しているんだ。 蒼い瞳の、白き天使を――――― fin. ****************************** 私にしては珍しく、ちょっぴり切ない系の話でした。 で、結局アメリアは何者だったのか。 ゼルが言ってる通り、そのものずばり天使だったりします。 ・・・・なんかこう一言で言うと身も蓋もないというか、嘘くさいですね(苦笑) アメリアについてはいろいろ裏設定があるのですが、書こうと思うと余裕で一つの話が出来上がってしまうので、いつか気が向いたら書けたらいいな、と(^^;)(←つまりあまり書く気がないらしいι) それよりこの話の続きを書きたいと思うんですけど、これもいつになることやら・・・・; |
7916 | 続きが読みたいヒト、挙手!! | 白河綜 E-mail | 2001/12/23 01:08:52 |
記事番号7911へのコメント 雫石彼方さんは No.7911「Strawberry candle 〜小さな羽 飛んだ〜」で書きました。 はーい!!(↑のタイトルの続き) はじめまして♪ 小説1の方でしばしば出没している白河綜ともうします♪ 雫石さんのすばらしー作品達は著者別で読ませていただきましたvv ふふふっ♪ こぉんなところに進行形のゼル君がvv うれしいのです! さっそくいくのです!! > 秩序など存在しない、混沌の街。 > 殺人や麻薬、武器の売買など日常茶飯事に起き、己を主張する最大の手段は『金』と『暴力』のみ。街には人の命を何とも思わない人間の皮を被った獣が溢れ返り、警察も彼らの脅威に恐れをなし、横行する犯罪にも見て見ぬ振りをする。 ここ読んで、ふいにオランダを思い出しました。友人に、オランダではあまり身体に害を及ぼさない麻薬なら普通に売り買いされていると聞かされたせいでしょうか…………。 それにしても、ゼルガディスさん。エライ処に住んでるんですね。 > ――――そう。5年も前の、あのたった1週間の出来事が、俺は未だに忘れられないんだ―――― いいなぁ、こういう感情…………v > それは灰色の空から真っ白い、天使の羽にも似た雪が舞い落ちる、とても寒い日だった。 > うっすらと道路を白く染める雪の上に足跡を刻みながら、どこか覚束ない足取りで歩を進める。 うう、読んでて寒くなってきました。 そういえば今年は雪が多いらしいですね。白河の学校、昨日吹雪きました(汗) > 朝からの高熱。 > 吐き気。 > 眩暈。 > 普段滅多に風邪など引かない人間がたまに風邪を引くと、とんでもなくひどいものになるらしい。 あああああっ! よくわかりますっ! この前なりました、その状態に!! > 体調も気分も絶不調、しかも一人のところを襲ってきたのは偶然か、はたまた狙ってのことだったのか。総勢20人をたった一人で相手にするのはさすがにきつかった。 > それでもすべて返り討ちにして一人残らず血祭りに上げる辺り、彼の実力がどれほどのものなのか、窺い知れるだろう。 血祭り…………。…………お強いのです。しかし…………『ドルム』というチームの方々…………20人がかりでたった一人に襲いかかるとは…………(汗) しかもやられてしまうなんて…………。…………はっきりいって、格好悪いのです。 > 歌が、聞こえた。 > > 高く、澄んだ綺麗な声。 > 歌を歌うことなどとうの昔に忘れ去られたこの街で、一体誰が歌っているのだろう。 何の歌を歌っていたのでしょう? やはり、あれでしょうか? “正義の仲良し五人組”(笑) > 幾つもの罪を重ね場数を踏んだ裏世界の人間ですら凍りつくような殺気を放つ彼に、しかしその殺気を向けられた当の人物は至ってほのぼのと微笑んだ。 >「わあ、よかった!!気が付いたんですね♪」 アメリアですから♪ ちょっとやそっとじゃ動揺なんてしません♪ > そして何かを思いついたようにぱんっと手を打ち合わせると、 >「ちょっと待っててくださいね、すぐ戻りますから!!」 > そう言うと、自分と同じくらいの年と思われるその少女はもう一度にぱっ♪と能天気な笑顔を浮かべて、慌ただしく部屋を出て行った。 > そして間髪置かずに聞こえてきたのは、 > >「うきゃわ〜〜〜〜〜〜〜っ!?」 > > ずどどどげべごがしゃ〜〜〜〜んっ > > けたたましい悲鳴とおそらく階段を転がり落ちたのであろう、聞くのも哀れになるような騒音。 …………アメリアですから(苦笑) >「・・・・・・・“信用してもいいような気がする”、だと・・・・・・?――――何を考えているんだ、俺は・・・・・・・・!!」 > 初対面の、しかもまだろくに話すらしていない相手をすぐに信用できるような、幸せな人生は送ってこなかった。裏切りなど、それこそ数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほど経験した。 >『人に会ったら、まず疑え』 > それが今までの経験から得た、彼のモットー。 > 一見人当たりのいい好人物を演じている者ほど、裏では何を考えているかわからない。 > 出逢ったばかりの人間に心を許すなど、有り得るはずがなかった。 やはり、なかなかに大変な人生を歩んできたのですね。確かに、彼の言っていることはわかりますが、何だか寂しいのです…………。 > それなのに、彼女が見せたあの―――荒んだ生活に身を置く彼が今まで見たことのなかった―――温かな笑顔が、瞼に焼き付いて離れなかった。 一目惚れよ!!(待て) ゼルガディスさん、それは一目惚れなのです!!(落ち着け、自分) >「――――ここは、わたしの声が届かない人が多すぎる・・・・・・この街自体、病んでいるのかもしれませんね・・・・・・」 …………きっと天使であるアメリアの声は、ゼルにしか聞こえてなかったんでしょうね…………。他の、心の病んだ人達には、姿が見えないどころか声も聞こえなかったのではないでしょうか? >「そういや、あの時歌っていたのは・・・・・・あんたか?」 >「あ、はい。そうですけど・・・・」 > その答えを聞いて、しばし考え込むゼルガディス。 > 一体何なのかときょとんとした顔で彼を見つめるアメリアに、やがてゼルガディスは顔を上げ、やや躊躇ってから――――― >「・・・・・もう一度・・・・・・・歌ってくれないか?」 >「・・・・・・・・・・・・はい!!」 > 一瞬驚いた表情を浮かべ、そしてアメリアは花の綻ぶような笑顔を見せた。 ……………………vv > 前方に見知った後ろ姿を見つけて、黒髪の少年は弾かれたように駆け出した。 >「あンの野郎っ・・・・・!!」 > その差が10m、5m、3mと徐々に縮まって、1m手前まで来た時に彼は左足で思いっきり踏み切り、その背中目掛けて飛び蹴りを放った―――――が、肝心の標的がまるで後ろに目が付いているかのように絶妙のタイミングですいっと横に避けた為に、彼の身体はそのまま空を飛び、自然の摂理に従って、落ちた。 万有引力の法則なのですね!!(腐っても受験生←文系だし) > 何故かそこにはご丁寧にバケツが置いてあったりして。 > 派手な音を撒き散らしながら、彼は地面と仲良くなった。 ナイス♪ 美味しい構図なのです…………って、ああ!? なにやらルーク君が殺気を振りまきつつこっちに………… >「あのなぁ、“何の用なんだ?”じゃねーだろ!?3日前に風邪でふらふらのくせに出かけてったっきり溜まり場にも姿見せねーで行方不明、しかも噂じゃ『ドルム』の連中相手にたった一人で喧嘩したらしい、とくりゃ誰だってどっかで野垂れ死んでんじゃねーかと思うだろが!!」 >「・・・・・つまり心配して探し回ってる最中に俺の姿を見つけて、安心のあまりつい飛び蹴りを放ってしまった、と。こういうわけか?―――ルーク・・・・・・・」 >「な、なんだよ・・・・・」 ををっ! 男の友情か!?(待て) > 急に真剣な表情で自分の名を呼ぶ銀髪の少年に、らしくもなく心配なんぞというものをしてしまった照れ臭さみたいなものを見透かされたような気がして頬を掻いていると。 >「俺にそういう趣味はないぞ」 >「おれにだってあるか馬鹿たれぶっ殺すぞラァ!!(怒)」 あはははははははっ!! ゼルガディスさん、ナイスボケ!! >「・・・・・・・で?結局どこに行ってたんだよ」 >「さあ・・・・どこだろうな」 >「なんだよ、勿体つけやがって。・・・・はは〜ん、さては女でもできたか?あれだけひどかった風邪もすっかり治ってるみたいだしぃ?」 > “愛しのマイハニーの看病の賜物か?”と薄ら笑いを浮かべながらデバガメじじぃのような目をして詰め寄るルークの顔面をばべんと叩いてから。 >「アホ。――――まぁ、強いて言うなら・・・・・」 >「強いて言うなら?」 >「天使の棲む家、かな」 >「・・・・・・・はぁ!?」 > この上もなく真面目な顔でこの上もなくこっ恥ずかしいセリフを吐くゼルガディスに素っ頓狂な声を上げて眉を顰めながら、ルークは先ほどのバケツの当たり所がよほど悪かったのだろうかと、本気で心配になるのであった。 いえいえ。これ以上無いほど適切な表現ですよvv > ゼルガディスにとって、ここへ来るのが既に当たり前のことになっていた。まるでずっと昔から、そうしていたように。いつの間にか、彼女は彼の心の奥まで自然に入り込んでいた。 > そしてゼルガディスも、それを不快と感じなかった。他人と必要以上に関わることを極端に嫌う彼が。誰よりも人を信じることを拒否していた彼が。 > > 緩やかに、けれど確実に、彼は変わり始めていた。 ふふふっ♪ なにやら暖かい気持ちになってきますね♪ >「ゼルガディスさんも育ててみませんか?良かったらお裾分けしますよ♪」 >「・・・・・俺が?花を?」 …………花? …………ゼルガディスさんが?(瞬時に彼がピンクのエプロンを身につけて、小さなジョウロを持ち、花に水をあげている場面を想像) …………ぶっ!! ……………………って、は!? ちょっとゼルガディスさんっ! その手に持った金属バットはいったい………… めこ。(何かが潰れる音) >「・・・・・・・そうだな・・・・・・・・貰おうか」 > 彼の言葉を聞いて、蒼の瞳が柔らかい光を帯びる。 > > その瞬間が。 > 何より、好きだった。 (復活)…………愛ですねv >「“ストロベリーキャンドル”って言うんです、この花。名前の通り真っ赤な苺のキャンドルみたいな花で、すっごく可愛いんですよ」 > そしてテーブルに置いた腕に顔を預けるようにして、鉢植えを見つめる。その仕草が子供っぽいと思う反面、その清廉で、けれどどこか艶っぽい表情にどきりと胸が高鳴るのを感じた。 こらこら! 君はまだ15歳でしょ!!(何の話だ) >「・・・・・・よっぽど好きなんだな」 >「はい!!・・・・・・・大切にしてくださいね」 > そう言って微笑った彼女の瞳が一瞬、なぜか哀しそうに見えて。 > 何かを言おうとして、けれど結局言うべき言葉が見つからなくて、彼は彼女の髪をくしゃりと撫でた。 > その手にそっと、彼女の手が触れる。 > 伝えられる温もりが、なんだか嬉しくて。 > 強く、握り返した。 > >「・・・・・・・ありがとう」 > > 突然感謝の言葉が口を突いて出たのは、なぜだったのだろう。 > 自分でもよくわからなかったけれど、今。 > 言わなければいけない、そんな気がした。 あああっ…………別れの予感なのです。 >(ここじゃ、ない) > > では他に、思い当たる場所へ。 > そう思って駆け出そうとして、ゼルガディスは愕然として足を止めた。 > ここ一週間、彼女と会っていたのはもっぱら彼女の家で。 > 一緒に外に出たことは、一度もなかった。つまり、他に思い当たる場所などどこもないのだ。 きっとアメリアは意図的に家以外では会わないようにしてたんでしょうね…………。 > 本当に、穏やかで幸せな一週間だった。あんなに心休まる時間を過ごしたのは、生まれて初めてだった。 > > そう、まるで“夢のように”。 > > 本当は、わかっていたのだ。 > この家の中に、彼女の姿がなかった時から。 > それとも朝、起きた瞬間から。 > ――――いや、もしかしたら。 > >『はい!!・・・・・・・大切にしてくださいね』 > > ストロベリーキャンドルのことを心底嬉しそうに話して、そして彼女が哀しそうに微笑った時から。 > わかっていたのかも、しれない。 > ――――もう、会えなくなると。 うううううううううううっ…………(><) > 東向きの窓から差し込む、溢れんばかりの眩しい光で目を覚ます。 > 冷たい水で顔を洗って眠気を吹き飛ばし、手早く着替えてから鉢植えの花に水をやる。 > それが、朝起きてする俺の日課。 > ――――そう、鉢植えに水を。 > そこには赤い、苺のような花がある。 アメリアはいなくなってしまったけれど、彼女との想い出はちゃんとここに残されているのですね。 > あれから5年の月日が経ったけれど、俺の生活は大して変わっちゃいない。身体に染み付いたモノがそう簡単に消えるはずもなく、相変わらず人に胸張って自慢できないような生活を続けている。 しかし…………ふと疑問に思ったのですが、こんな治安の悪い街で、彼らはどうやって生活費を得ているのでしょう? う〜ん……(悩) >「あ〜あ、おれにも人生変えちまうような天使が現れねーかな〜」 >「そんなに簡単に現れりゃ苦労はしないだろ」 >「ま、そりゃそうだ」 あえます♪ ミリーナがルークの天使になってくれるはず♪ > 今も彼女は、元気でいるだろうか? > 今も彼女は、あの微笑みを絶やさずにいるだろうか? > 風のように現れ、風のように去っていった彼女のこと。 > もしかしたら、またひょっこり現れるのではないか、と。 > 街を歩く度に、人込みの中にその面影を追ってしまう。 > > ――――そう、どんなに時が経とうとも。 > 今でも俺は、探しているんだ。 > > 蒼い瞳の、白き天使を――――― あうううううううううううう(涙) 切ない! 切ないのです!! お願いします! これで終わりにしないですださい〜〜〜〜(涙) そしてアメリアの裏設定!! 気になります! 書きましょう! ね!!(死) ああ、すみません、とりみだしましたです。 感想とも言えない感想ですが。 これにて失礼させていただきます。 白河綜でしたvv |
7918 | ありがとうございます〜(><) | 雫石彼方 E-mail URL | 2001/12/24 02:53:51 |
記事番号7916へのコメント 白河さん、はじめまして〜!! ああもう、こちらこそこっそりとお話拝読させていただいてますよ!! まさかレスいただけるとは思ってなかったのでかなり嬉しいです!!(><) >> 秩序など存在しない、混沌の街。 >> 殺人や麻薬、武器の売買など日常茶飯事に起き、己を主張する最大の手段は『金』と『暴力』のみ。街には人の命を何とも思わない人間の皮を被った獣が溢れ返り、警察も彼らの脅威に恐れをなし、横行する犯罪にも見て見ぬ振りをする。 > > ここ読んで、ふいにオランダを思い出しました。友人に、オランダではあまり身体に害を及ぼさない麻薬なら普通に売り買いされていると聞かされたせいでしょうか…………。 > それにしても、ゼルガディスさん。エライ処に住んでるんですね。 ふえ〜、オランダってそんな物騒なとこだったんですか〜。知らなかった・・・・。オランダっていうと、風車とチューリップがあってのどか〜ないめーじが・・・・・。(とことん陳腐な想像力ですみませんι) >> それは灰色の空から真っ白い、天使の羽にも似た雪が舞い落ちる、とても寒い日だった。 >> うっすらと道路を白く染める雪の上に足跡を刻みながら、どこか覚束ない足取りで歩を進める。 > > うう、読んでて寒くなってきました。 > そういえば今年は雪が多いらしいですね。白河の学校、昨日吹雪きました(汗) そうですねー。私が住んでるところも時々吹雪いてます。 雪が降るのは大好きなんですけど、そうすると車の運転が大変になるのがちょっと嫌ですねー・・・・。なんせ若葉マークドライバーなもので。 >> 朝からの高熱。 >> 吐き気。 >> 眩暈。 >> 普段滅多に風邪など引かない人間がたまに風邪を引くと、とんでもなくひどいものになるらしい。 > > あああああっ! よくわかりますっ! この前なりました、その状態に!! ありゃ〜、受験生なのに大変でしたね。もう大丈夫ですか? この時期は特に気をつけなきゃですからね。あったかくして寝ましょう♪ >> 体調も気分も絶不調、しかも一人のところを襲ってきたのは偶然か、はたまた狙ってのことだったのか。総勢20人をたった一人で相手にするのはさすがにきつかった。 >> それでもすべて返り討ちにして一人残らず血祭りに上げる辺り、彼の実力がどれほどのものなのか、窺い知れるだろう。 > > 血祭り…………。…………お強いのです。しかし…………『ドルム』というチームの方々…………20人がかりでたった一人に襲いかかるとは…………(汗) しかもやられてしまうなんて…………。…………はっきりいって、格好悪いのです。 そう、ゼルさんは強いのですv『ドルム』の方々はあくまでゼルの強さを強調する為の雑魚キャラですからね、格好悪くて大いに結構なんです(笑) >> 歌が、聞こえた。 >> >> 高く、澄んだ綺麗な声。 >> 歌を歌うことなどとうの昔に忘れ去られたこの街で、一体誰が歌っているのだろう。 > > 何の歌を歌っていたのでしょう? やはり、あれでしょうか? “正義の仲良し五人組”(笑) この場面で”正義の仲良し五人組”は、かなり間抜けですね(笑)・・・ていうか一人増えてるし(笑)+αはゼロスさんでしょうか? ここ、ほんとは歌詞も載せようと思ってたんですけどね。いいのが思いつかなくて結局やめちゃいました☆ >> 幾つもの罪を重ね場数を踏んだ裏世界の人間ですら凍りつくような殺気を放つ彼に、しかしその殺気を向けられた当の人物は至ってほのぼのと微笑んだ。 >>「わあ、よかった!!気が付いたんですね♪」 > > アメリアですから♪ ちょっとやそっとじゃ動揺なんてしません♪ その通り♪ >> そして何かを思いついたようにぱんっと手を打ち合わせると、 >>「ちょっと待っててくださいね、すぐ戻りますから!!」 >> そう言うと、自分と同じくらいの年と思われるその少女はもう一度にぱっ♪と能天気な笑顔を浮かべて、慌ただしく部屋を出て行った。 >> そして間髪置かずに聞こえてきたのは、 >> >>「うきゃわ〜〜〜〜〜〜〜っ!?」 >> >> ずどどどげべごがしゃ〜〜〜〜んっ >> >> けたたましい悲鳴とおそらく階段を転がり落ちたのであろう、聞くのも哀れになるような騒音。 > > …………アメリアですから(苦笑) ・・・・・・その通り(同じく苦笑) >>「・・・・・・・“信用してもいいような気がする”、だと・・・・・・?――――何を考えているんだ、俺は・・・・・・・・!!」 >> 初対面の、しかもまだろくに話すらしていない相手をすぐに信用できるような、幸せな人生は送ってこなかった。裏切りなど、それこそ数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほど経験した。 >>『人に会ったら、まず疑え』 >> それが今までの経験から得た、彼のモットー。 >> 一見人当たりのいい好人物を演じている者ほど、裏では何を考えているかわからない。 >> 出逢ったばかりの人間に心を許すなど、有り得るはずがなかった。 > > やはり、なかなかに大変な人生を歩んできたのですね。確かに、彼の言っていることはわかりますが、何だか寂しいのです…………。 そんなゼルも、アメリアのおかげでだんだんと・・・・・Vv >> それなのに、彼女が見せたあの―――荒んだ生活に身を置く彼が今まで見たことのなかった―――温かな笑顔が、瞼に焼き付いて離れなかった。 > > 一目惚れよ!!(待て) ゼルガディスさん、それは一目惚れなのです!!(落ち着け、自分) 一目惚れ♪う〜ん、いい響きですねぇ(^^) >>「――――ここは、わたしの声が届かない人が多すぎる・・・・・・この街自体、病んでいるのかもしれませんね・・・・・・」 > > …………きっと天使であるアメリアの声は、ゼルにしか聞こえてなかったんでしょうね…………。他の、心の病んだ人達には、姿が見えないどころか声も聞こえなかったのではないでしょうか? そうなんです!!悪ぶってはいても根は優しいゼルだからこそ、アメリアの姿を見、声を聞くことができたんです〜!!(どりーむ) >> 前方に見知った後ろ姿を見つけて、黒髪の少年は弾かれたように駆け出した。 >>「あンの野郎っ・・・・・!!」 >> その差が10m、5m、3mと徐々に縮まって、1m手前まで来た時に彼は左足で思いっきり踏み切り、その背中目掛けて飛び蹴りを放った―――――が、肝心の標的がまるで後ろに目が付いているかのように絶妙のタイミングですいっと横に避けた為に、彼の身体はそのまま空を飛び、自然の摂理に従って、落ちた。 > > 万有引力の法則なのですね!!(腐っても受験生←文系だし) ニュートンです!!ルークはりんごなんです!!(←?) >> 何故かそこにはご丁寧にバケツが置いてあったりして。 >> 派手な音を撒き散らしながら、彼は地面と仲良くなった。 > > ナイス♪ 美味しい構図なのです…………って、ああ!? なにやらルーク君が殺気を振りまきつつこっちに………… 注意警報発令っ!!ただちに非難せよ〜〜!!(何気に楽しそうな雫石さん^^) >>「あのなぁ、“何の用なんだ?”じゃねーだろ!?3日前に風邪でふらふらのくせに出かけてったっきり溜まり場にも姿見せねーで行方不明、しかも噂じゃ『ドルム』の連中相手にたった一人で喧嘩したらしい、とくりゃ誰だってどっかで野垂れ死んでんじゃねーかと思うだろが!!」 >>「・・・・・つまり心配して探し回ってる最中に俺の姿を見つけて、安心のあまりつい飛び蹴りを放ってしまった、と。こういうわけか?―――ルーク・・・・・・・」 >>「な、なんだよ・・・・・」 > > ををっ! 男の友情か!?(待て) 男の友情、と見せかけて―――― >> 急に真剣な表情で自分の名を呼ぶ銀髪の少年に、らしくもなく心配なんぞというものをしてしまった照れ臭さみたいなものを見透かされたような気がして頬を掻いていると。 >>「俺にそういう趣味はないぞ」 >>「おれにだってあるか馬鹿たれぶっ殺すぞラァ!!(怒)」 > > あはははははははっ!! ゼルガディスさん、ナイスボケ!! 単なる前振りでした、と(笑) ゼルには真面目な顔で冗談言って人をからかうような、余裕のある男であって欲しいです。 >> ゼルガディスにとって、ここへ来るのが既に当たり前のことになっていた。まるでずっと昔から、そうしていたように。いつの間にか、彼女は彼の心の奥まで自然に入り込んでいた。 >> そしてゼルガディスも、それを不快と感じなかった。他人と必要以上に関わることを極端に嫌う彼が。誰よりも人を信じることを拒否していた彼が。 >> >> 緩やかに、けれど確実に、彼は変わり始めていた。 > > ふふふっ♪ なにやら暖かい気持ちになってきますね♪ ゼルガディスさん、幸せ絶頂期です(^^) >>「ゼルガディスさんも育ててみませんか?良かったらお裾分けしますよ♪」 >>「・・・・・俺が?花を?」 > > …………花? …………ゼルガディスさんが?(瞬時に彼がピンクのエプロンを身につけて、小さなジョウロを持ち、花に水をあげている場面を想像) > …………ぶっ!! > ……………………って、は!? ちょっとゼルガディスさんっ! その手に持った金属バットはいったい………… > > めこ。(何かが潰れる音) ああぁぁぁっ!!白河さんが潰されたぁぁぁっ!!!(><) ・・・・・・・でも、想像しちゃいますよねぇ。 水を上げながら、「さあ、早く育って綺麗な花を咲かせておくれv」とか話し掛けちゃったりして(笑) ・・・・・・・はっ!?どこからか殺気が・・・・・っ!? めこ。(同じく何かが潰れる音) >>「・・・・・・・そうだな・・・・・・・・貰おうか」 >> 彼の言葉を聞いて、蒼の瞳が柔らかい光を帯びる。 >> >> その瞬間が。 >> 何より、好きだった。 > > (復活)…………愛ですねv 愛なんですv >>「“ストロベリーキャンドル”って言うんです、この花。名前の通り真っ赤な苺のキャンドルみたいな花で、すっごく可愛いんですよ」 >> そしてテーブルに置いた腕に顔を預けるようにして、鉢植えを見つめる。その仕草が子供っぽいと思う反面、その清廉で、けれどどこか艶っぽい表情にどきりと胸が高鳴るのを感じた。 > > こらこら! 君はまだ15歳でしょ!!(何の話だ) 思春期の少年はとても多感なのですよ・・・・・(^^) >>「・・・・・・よっぽど好きなんだな」 >>「はい!!・・・・・・・大切にしてくださいね」 >> そう言って微笑った彼女の瞳が一瞬、なぜか哀しそうに見えて。 >> 何かを言おうとして、けれど結局言うべき言葉が見つからなくて、彼は彼女の髪をくしゃりと撫でた。 >> その手にそっと、彼女の手が触れる。 >> 伝えられる温もりが、なんだか嬉しくて。 >> 強く、握り返した。 >> >>「・・・・・・・ありがとう」 >> >> 突然感謝の言葉が口を突いて出たのは、なぜだったのだろう。 >> 自分でもよくわからなかったけれど、今。 >> 言わなければいけない、そんな気がした。 > > あああっ…………別れの予感なのです。 アメリアと交わした、最後の会話。 ありがとうを言わせたのは、せめてもの救いになるように、と。これで言えなかったら、ゼルはきっとすごく後悔したでしょうから。 >>(ここじゃ、ない) >> >> では他に、思い当たる場所へ。 >> そう思って駆け出そうとして、ゼルガディスは愕然として足を止めた。 >> ここ一週間、彼女と会っていたのはもっぱら彼女の家で。 >> 一緒に外に出たことは、一度もなかった。つまり、他に思い当たる場所などどこもないのだ。 > > きっとアメリアは意図的に家以外では会わないようにしてたんでしょうね…………。 会わないようにしていたというか、会えなかったというか・・・・・ふふふ・・・・(謎) >> 本当に、穏やかで幸せな一週間だった。あんなに心休まる時間を過ごしたのは、生まれて初めてだった。 >> >> そう、まるで“夢のように”。 >> >> 本当は、わかっていたのだ。 >> この家の中に、彼女の姿がなかった時から。 >> それとも朝、起きた瞬間から。 >> ――――いや、もしかしたら。 >> >>『はい!!・・・・・・・大切にしてくださいね』 >> >> ストロベリーキャンドルのことを心底嬉しそうに話して、そして彼女が哀しそうに微笑った時から。 >> わかっていたのかも、しれない。 >> ――――もう、会えなくなると。 > > うううううううううううっ…………(><) ああっ、泣かないでください〜〜〜; >> 東向きの窓から差し込む、溢れんばかりの眩しい光で目を覚ます。 >> 冷たい水で顔を洗って眠気を吹き飛ばし、手早く着替えてから鉢植えの花に水をやる。 >> それが、朝起きてする俺の日課。 >> ――――そう、鉢植えに水を。 >> そこには赤い、苺のような花がある。 > > アメリアはいなくなってしまったけれど、彼女との想い出はちゃんとここに残されているのですね。 そうで〜す!!あれが本当に現実だったのかどうかわからないままでは、ゼルが可哀想すぎますもの。 >> あれから5年の月日が経ったけれど、俺の生活は大して変わっちゃいない。身体に染み付いたモノがそう簡単に消えるはずもなく、相変わらず人に胸張って自慢できないような生活を続けている。 > > しかし…………ふと疑問に思ったのですが、こんな治安の悪い街で、彼らはどうやって生活費を得ているのでしょう? う〜ん……(悩) げふがふがふっ(吐血) さ・・・・さぁ・・・・・・どうしてるんでしょうね・・・・・・?(滝汗) ・・・・・・・・あう、ごめんなさい・・・・・実は深く考えてませんでしたι 確かに謎ですね。(←ダメ作者) >>「あ〜あ、おれにも人生変えちまうような天使が現れねーかな〜」 >>「そんなに簡単に現れりゃ苦労はしないだろ」 >>「ま、そりゃそうだ」 > > あえます♪ ミリーナがルークの天使になってくれるはず♪ そう、安心するんだルーク、君の未来は明るいぞっ!! >> 今も彼女は、元気でいるだろうか? >> 今も彼女は、あの微笑みを絶やさずにいるだろうか? >> 風のように現れ、風のように去っていった彼女のこと。 >> もしかしたら、またひょっこり現れるのではないか、と。 >> 街を歩く度に、人込みの中にその面影を追ってしまう。 >> >> ――――そう、どんなに時が経とうとも。 >> 今でも俺は、探しているんだ。 >> >> 蒼い瞳の、白き天使を――――― > > あうううううううううううう(涙) > 切ない! 切ないのです!! > お願いします! これで終わりにしないですださい〜〜〜〜(涙) > そしてアメリアの裏設定!! 気になります! 書きましょう! ね!!(死) ありがとうございます(><)そう言っていただけるとほんとに嬉しいです!! アメリアの裏設定話は、流れ的にこれの続きの話を書いてから番外編みたいな感じで出した方がいいかな〜と思うので、続編ができたら書こうと思います。 > 感想とも言えない感想ですが。 > これにて失礼させていただきます。 いえいえ、ちゃんと立派な感想ですよ♪ ほんとにどうもありがとうございましたっ!! |
7961 | 初めまして | とーゆ | 2002/1/14 17:49:30 |
記事番号7911へのコメント なんか、いい話ですね。 俺はこのての話好きなんですよ。 次回作、期待してます。 では。 |
7967 | 初めまして! | 雫石彼方 E-mail URL | 2002/1/16 22:13:09 |
記事番号7961へのコメント とーゆさん、初めまして!! レス、どうもありがとうございます。 >なんか、いい話ですね。 >俺はこのての話好きなんですよ。 たまにはこういうちょっと切ない系の、余韻の残るようなのもいいかなーと思って書きました(^^) >次回作、期待してます。 はい、頑張ります!! どうもありがとうございました。 |