◆−HAPPY DREAMS 7−水晶さな(2/21-21:43)No.5766
 ┣電柱の陰から(笑)−あごん(2/22-05:37)No.5782
 ┃┗更にその後ろから(笑)−水晶さな(2/22-14:41)No.5785
 ┣HAPPY DREAMS 8−水晶さな(2/23-21:38)No.5790
 ┣HAPPY DREAMS 9−水晶さな(2/26-21:56)No.5810
 ┃┗ガールズ・ブラボー(笑)!!−あごん(2/28-00:19)No.5816
 ┃ ┗女は強し(爆笑)−水晶さな(2/28-23:28)No.5823
 ┣HAPPY DREAMS 10−水晶さな(2/28-23:11)No.5822
 ┣HAPPY DREAMS 11−水晶さな(3/2-19:32)NEWNo.5843
 ┣HAPPY DREAMS 12−水晶さな(3/2-22:41)NEWNo.5845
 ┃┣翌日は、誰が掃除するのだろう。−みてい(3/2-23:08)NEWNo.5846
 ┃┃┗・・・多分、ゴンザレスさんとか(爆)−水晶さな(3/3-23:59)NEWNo.5859
 ┃┗私も舞柳に行きたいです(笑)−あごん(3/3-00:04)NEWNo.5850
 ┃ ┗一般人が行くと帰ってこれないですよ(笑)−水晶さな(3/4-00:24)NEWNo.5860
 ┗HAPPY DREAMS 13−水晶さな(3/3-23:44)NEWNo.5857
  ┣おつかれさまでした!−桐生あきや(3/3-23:56)NEWNo.5858
  ┃┗ありがとうございます〜!!(>_<)−水晶さな(3/4-00:33)NEWNo.5861
  ┗お疲れ様でした!!−あごん(3/5-03:53)NEWNo.5873


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5766HAPPY DREAMS 7水晶さな E-mail 2/21-21:43



 ちょっと心配だったので上に来ました(^_^;)

==================================

 翌日、公演中。
「開演中控え室への通路に警備を回してくれ」
「・・・んじゃと〜? これ以上人を増やせんと何度言うたらわかるんじゃ」
 眠たそうな顔で答えるディドロウ。
「別に雇わんでいい。俺が行くから」
「お前さんがいなくなったらここは誰が見張るんじゃい」
「・・・・・・」
 ゼルガディスがつかつかとディドロウの前に歩み寄り、彼の頭を握った拳の先で挟む。
 俗に言う「うめぼし」である。
「昨日あんだっけぐーすかぐーすか眠りこけといて、人に二倍の時間働かせたのは誰だぁ?」
 ぐりぐりぐりぐり。
「やめぇえい生い先短い老人に何て事しよるんぢゃああぁ」
「安心しろじーさんみてーな奴はしぶとく生き残るタイプだ」


「メルテナ・・・じゃない、アメリアちゃんどしたの?」
 公演の合間の小休憩。次の衣装に着替えながらベルベットが言う。
「トイレよトイレ。この休憩逃(のが)したら二時間抜けられないし」
「・・・意外と根性のある娘だと私は思う。メルテナよりも働くのではないか?」
 ちらりとアズリーが目をやる。
「聞くまでもないわよ。よっっっぽどアメリアのが働くに決まってんじゃない」
「・・・でも、そろそろ戻ってくる頃合じゃないかしらん? 港街ルストハイムでしょ? 幼馴染みとの再会の場所」
「一般人なら片道1週間。メルテナなら3日で行ける」
 わざわざ指折り数えてアズリーが数を示す。
「さてさてハッピーエンドになるかアンハッピーエンドになるか・・・メルテナじゃ穏(おだ)やかな話し合いはできないわよねー」
 腕組みをして、セリィ。
「まあったくぅ、どうしてあたしんところみたいに仲良くできないのかしら」
 薬指の指輪に軽く口付けして、ベルベット。
 セリィとアズリーが顔を寄せ合って手を横に振った。
「ベルのとこと同じように・・・?」
「不可能に値する」
「二人共失礼しちゃうわんv」
 ベルベットが肩を竦(すく)めた。


「・・・ん?」
 控え室の通路の前に立ったゼルガディスが首を傾(かたむ)ける。
 奥から衣装を着たアメリアがぱたぱたと走ってくる。
「アメリア? いつの間に奥に・・・?」
「どいてっ!」
 キンキンする声と共に、思い切り突き飛ばされて壁に激突するゼルガディス。
 黒髪を靡(なび)かせた少女は、勢い良く廊下を駆けて行った。


 舞台の袖に立ち、出番を待つアメリア。
 握り締めた小さなクッションから、ラベンダーの香りが漂った。
 乾燥させたラベンダーをポプリにし、お守りの代わりに持っていた。
 元々沈静作用もある、気休め程度だが心が落ち着く。
 今日は公演の中間日。
 メルテナの作詞した曲の初公開日でもあるのだ。
 この日の為に毎日猛練習はこなしたが・・・。
(・・・歌手が作詞をしたものって、その人の想いが一杯詰まったもので・・・)
 そんなものを自分が歌い切れるのかどうか、正直不安だった。
 ぎゅっと拳を握り締める。
(だって・・・この歌は・・・メルテナさんが作詞したこの歌は・・・)
 震える足を叱り付け、舞台の中央へと歩み出る。
 無色のスポットライトがアメリアに当てられた。
 眩(まぶ)しさに目を窄(すぼ)めないよう、ライトを直視しないよう僅(わず)かに視線をそらす。
 前奏のピアノの音が流れ始めて、アメリアが歌い出しの為に息を吸った時―
 ぱきん、と軽い音がして、ピンが飛んだ。
 一瞬何が起こったか判断ができずに、アメリアが目を瞬(しばたた)かせる。
 数秒後にばさりと、何かが落ちた感覚がした。
 頭の重量が自覚できる。涼しくなる程(ほど)に軽くなっている。
 会場内に誰も人がいないと錯覚する静寂(せいじゃく)。
 顔から体温を伴(ともな)って血の気がひいていくのがわかる。
 ―・・・・・・・・・・・・・・・・・・カツラ・・・・・・・が・・・・・・・・とれ・・・た?
 悲鳴を上げそうになった瞬間、視界が真っ暗に塗り潰(つぶ)された。
 アメリアが昏倒(こんとう)したのではない。ライトが全て消されたのだ。
「!?」
 急激な明暗変化にまだ目がついていかない間に、アメリアは唐突(とうとつ)に肩を引っ張られた。


 再びライトが灯(とも)されて―
 その光の下に、純白のドレスを着た一人の少女が顔を上げた。
 流れ出すピアノの音に、静かに桃色の唇を開く。

 ―花の色が 過ぎ行く時を告げる 貴方の居ない季節が 又過ぎて行く―

 声量は本物。
 腰まである艶(つや)やかな黒髪は健在。
 一瞬ざわめいた観客も、彼女の歌声にすぐに引き込まれた。
「・・・アメリア」
 舞台袖に立っていた、カツラを手にした少女を見て、ゼルガディスが声をかける。
「・・・ゼルガディスさん」
 足音をたてないよう、こちらへやってくる。それから、舞台の方を振り向いた。
「本人が・・・メルテナさんが戻ってきて・・・」
 やっと安心したのか、今更ながら深く息を吐き出した。
 まだ早まる鼓動がおさまらない。
「・・・わかってる。思いっきり突き飛ばしてくれたからな」
 よくよく見るとゼルガディスの顔が何かに当たったように赤くなっていた。

 ―約束だけが ただ心に残されて 私は今でも 望みを捨てられず―

「幼馴染みの・・・キャズさんに、会えたんでしょうか・・・?」
 返事がないのにアメリアが後ろを振り返ると、初老の警備主任に引きずられて行くゼルガディスの姿。
「お前さん仕事中じゃろーが!!」
「起きてたのかじーさん。珍しい事だ」
「・・・・・・」
 アメリアがしばらく見送った後、再びメルテナに視線を戻した。

 ―わかってる 夢は夢で 私は独(ひと)り 貴方はいない・・・―

「・・・メルテナ」
 セリィの声が聞こえた。
 いつの間にか後ろに残りのメンバーが来ている。

 ―それでもいい 一時の安らぎ 泣かないように 夢を見させて―

「・・・!」
 アメリアが息を飲んだ。
 横顔のメルテナ。ライトに照らされて見えにくいが、目元が光って見えたのは・・・
「・・・泣いてる?」

 ―幸せな夢を・・・happy dreams・・・―

「会えなかった・・・のかしら」
 ベルベットが沈痛な面持ちで呟(つぶや)いた。

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5782電柱の陰から(笑)あごん E-mail 2/22-05:37
記事番号5766へのコメント

こんばんは〜一度レスすると後はストーカーの如くレスし続ける事で有名なあごんです(笑)!

アズリーへの想いが断ち切られた今(笑)、次の標的(爆)はメルテナに決定しました。
パワフルなお嬢様ですが、ただいまの心境がいかがなものなのでしょう?
うぅん、気になります。
キャズとは会えたのでしょうか?
ううっ、色々と謎が多いですねぇ。
気になりすぎて夜眠れません。
ので今から寝ます(をい)。

7時に起こして下さい。

ああ、でもアイニィさんの謎が一番気がかりです。
やっぱりこれが物語の鍵なのでしょうか?どきどき。

ではでは。続きを楽しみにお待ちしております。
あごんでした!

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5785更にその後ろから(笑)水晶さな E-mail 2/22-14:41
記事番号5782へのコメント


>こんばんは〜一度レスすると後はストーカーの如くレスし続ける事で有名なあごんです(笑)!

 こんにちわ〜(現在昼)。水晶さなです。レスは大歓迎なので両腕広げて待ってます(爆)。


>アズリーへの想いが断ち切られた今(笑)、次の標的(爆)はメルテナに決定しました。

 あ、諦めてしまったんですね(笑)。


>パワフルなお嬢様ですが、ただいまの心境がいかがなものなのでしょう?
>うぅん、気になります。
>キャズとは会えたのでしょうか?
>ううっ、色々と謎が多いですねぇ。
>気になりすぎて夜眠れません。
>ので今から寝ます(をい)。
>7時に起こして下さい。

 低血圧なんで私が起こして欲しいくらいです(爆)。
 メルテナ戻ってきたので一気に解決編まっしぐら・・・になるといいなぁ(爆)。
 とりあえずやっと後半に差し掛かってきたところです(^^ゞ


>ああ、でもアイニィさんの謎が一番気がかりです。
>やっぱりこれが物語の鍵なのでしょうか?どきどき。
>
>ではでは。続きを楽しみにお待ちしております。
>あごんでした!

 きゃあどきどきされちゃったからには気合入れて書かないと(汗)。
 もう少しで終わる筈(爆)なのでお付き合い下さいませv
 ではでは。

 水晶さな拝

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5790HAPPY DREAMS 8水晶さな E-mail 2/23-21:38
記事番号5766へのコメント


 ゼルガディスが持ち場に戻ると、何だか騒がしい様子。
「何じゃ、何事じゃ?」
 ゼルガディスから手を離して、ディドロウが若い警備に声をかける。
「あ、主任。先ほど不審者がこの辺りを・・・」
「捕まえてくれ!」
 廊下の先から声が聞こえた。
 別の警備兵と、その5m先を走るやたら細い男。
 情けない悲鳴を上げつつよたよたとこちらへ逃げ走ってくる。
「あ・・・」
 ディドロウが半開きに口を開きかけた時、ゼルガディスは既に剣の鞘(さや)で男の足を打っていた。
「うああああああ・・・」
 宙で手をかき、見事な程に無様に前にぶっ倒れた。
「何だこい・・・づっ!?」
 ゼルガディスが屈(かが)んで覗(のぞ)き込もうとした時、後ろから思い切り後頭部を小突かれた。
 真後ろに警棒を持ったディドロウがしかめっつらをして立っている。
「何すんだじーさん!」
「少しは状況を見てから判断せい!」
「・・・・・・」
 ゼルガディスがディドロウの顔をじっと見つめ、それから男へ目線を移した。
 痩(や)せた体格と、面長(おもなが)の顔、瞳の色はチャコール・グレイ。
「ええ・・・と、まさか・・・」
「こりゃワシの息子の『ろびぇるぢょ』じゃっ!!」
「・・・ロヴェルトだよ父さん・・・」
 男がうつ伏(ぶ)せのまま悲しげに呟(つぶや)いた。 
 まさか主任の息子だとは知らなかったのか、警備兵達が慌てて自分の持ち場へ逃げ帰って行く。
「・・・そりゃ悪かったが、ここは一般人立ち入り禁止だぞ?」
 ゼルガディスが悪びれた様子もなく言いながらロヴェルトを立ち上がらせる。
「関係者もかい?」
 鼻を擦(さす)りながらロヴェルトが尋(たず)ねる。
 ディドロウよりも痩(や)せている。突いたら折れそうな体つき。
「・・・誰の?」 
 ディドロウがにまーっと、意地の悪い笑みを浮かべた。
「こいつは婿(むこ)入りしててのー、苗字変わっとるんじゃ、『ろびぇるぢょ=ふりゃんぐるちょ』じゃ」
「ロヴェルト=フラングルトだよ父さん」
 間髪入れずにしっかりとツッコミを入れるロヴェルト。
「・・・フラングルト?」
 ゼルガディスの脳裏にトゥインクル・スターズの一人、天然色香100%の金髪美女がぱっと浮かぶ。
 加えて彼女の薬指に、色褪(あ)せた銀の指輪を見たような。
「ベルベット=フラングルトの旦那!!!!!?」
 ゼルガディスが卒倒した。


「だぁりぃーん!!!」
 ベルベットの声が全ての雑音をかきけした。
 ゼルガディスはロヴェルトを連れてメンバー全員の合同控(ひか)え室に入った途端、押しのけられて壁に激突した。
「ああんダーリンったら1週間もアタシを一人にしてぇー! ベルさみしかったぁー!!」
 ベルベットがこれでもかというぐらいロヴェルトの細い体を抱き締める。
 べき。
 イヤな音が聞こえた。
 ロヴェルトの青白い顔がますます血の気を失っていく。
「ベルベット、旦那殿がそろそろ死の境を彷徨(さまよ)っている」
 アズリーが冷静にツッコミを入れる。。
 顔を擦(さす)りながらゼルガディスが体勢を立て直すと、ロヴェルトが丁度ベルベットの腕の中でぐったりした所だった。
「・・・救護室、かしらん」
「アンタ片手で15kgのバーベル持つ人間だってこと忘れてるでしょ」
 セリィがぞっとしたように自分で自分を抱き締めて言う。
「強過ぎる愛ってもの問題アリかしらん・・・」
 ベルベットがロヴェルトを抱(かか)え上げて部屋を出て行った。
「・・・やっぱりあれは夫婦か」
 ゼルガディスがやや呆然と出て行く二人を見送った後呟(つぶや)く。
「見てられないくらいお熱ーい夫婦よ。しっかしあんな細いののどこがいーんだか」
 セリィがソファーの肘掛けに肘を置き、ふーっと息を吐いた。
「・・・彼女は昔肥満気味で、その頃から旦那が求愛していたらしいからな」
「あー、舞踏武術習ったのも痩(や)せる為だって言ってたわねーそーいえば」
(その時はこうも化けるなんて誰も想像してなかったって事か・・・)
「アメリアとメルテナは?」
 ひとしきり話がやんだ後、ゼルガディスが室内を見回して言う。
「多分まだ舞台じゃない? 特にメルテナはまだ・・・その・・・落ち込んじゃってるから・・・」
 セリィが言葉を濁(にご)す。
「はっきり聞く機会を失っていたんだが・・・」
 ゼルガディスがセリィとアズリーの向かい側に座った。
「メルテナは幼馴染みに会いに行ったんだったな?」
 セリィとアズリーが同時に頷(うなず)く。
「ただの幼馴染みじゃないんだろ?」
 答えに困ったのか、セリィとアズリーが顔を見合わせた。
「えっとね・・・」
 気まずそうにセリィが、口を開いた。

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5810HAPPY DREAMS 9水晶さな E-mail 2/26-21:56
記事番号5766へのコメント


「メル・・・結局・・・いいように振り回されてただけだったのかな・・・」
 がらんとしたステージに一人、白いライトの下で板張りの床に直接腰をおろしたメルテナが呟(つぶや)いた。
 ぎし、と床が音をたて、驚いたように顔を上げる。
 髪が短いだけで、同じ顔、同じ瞳の色の少女が前に立っていた。
「・・・あの、こんにちわ」
 アメリアが緊張を必死に抑えながら言う。
 自分と瓜二つの少女を目の前にして、今だ信じられない思いである。
「・・・メルの代わりをしてたんだって? 御苦労サマ、中途半端に戻ってきちゃって悪かったわね」
 スネた子供の態度そのままで、抱(かか)えた膝に顔を埋(うず)める。
 アメリアが隣に並んで腰を下ろした。
「・・・メルテナさんの歌は、やっぱり私には歌えませんでした。戻ってきてくれて助かりました」
 メルテナが自嘲気味に笑った。
「メルの歌・・・ね。ふふ・・・バカみたい、ホントに歌の通りになっちゃった・・・」
「・・・キャズさんに、会えなかったんですか・・・?」
 ためらいがちにアメリアが問う。
 メルテナがあさっての方向を向いて答えた。
「来なかったわよ・・・・・・・・・・・・」
 ぎし、と床板に爪を立てた音が響く。
「・・・何だってのよ! 毎回毎回ラベンダー送ってきて思わせぶりな事して! メルに何がしたいのよ!!」
 胸元から白い封筒を取り出し、荒々しく客席に向かって投げ捨てる。
(ラベンダー・・・やっぱりキャズさんから・・・)
「・・・・・・・・・・・・?」
 二人のものではない足音に、アメリアとメルテナが同時に客席を振り返った。
 ライトの外に薄暗く見えた、男物の靴―
 三秒後に白い光の下に歩み出たのは、金に近い茶色い髪を首元で一本に束ねた長身の若い男性。
「キャ・・・ズ?」
 メルテナが、ふらりと立ち上がる。
 灰色の瞳が優しげに微笑んだ。
「メルテナ・・・久しぶり・・・」
 ぱちんと聞こえた音にアメリアが振り返ると、メルテナが自分で自分の頬をひっぱたいていた。
 夢かどうか確かめようとしたのだろう。
 それから、キャズに向かって駆け出した。
 ステージから客席に跳躍(ちょうやく)して飛び降り、通路を走って―
 キャズが一瞬怯(おび)えたような表情を見せたのは気のせいか。
 目の前まで詰め寄ったメルテナは―彼の胸に飛び込むような真似はせず―その場にしゃがみこんだ。
「!?」
 キャズが一瞬彼女の姿が見えなくなって戸惑(とまど)う。
 しゃがみこんだ体勢から上半身を捻(ひね)り、勢いで体を回転させ―重心を左足に移して右足を伸ばす。
 後方から見ていたアメリアが青くなった。
「まさか―」
 回転の勢いを殺さぬよう軸足で立ち上がりながら、右足を思いきり振り上げる―
 ―ごがあっ!
「・・・・・・・・・・・・・・・メルテナさんの得意技、【黒鶴の舞い】・・・・・・」
 加えて言えば、自分もアズリーから教わったが、マスターする事はかなわなかった必殺技。
 キャズの体が綺麗に弧(こ)を描(えが)いて吹っ飛んだ。

「せめて・・・まだ・・・離れた恋人を想っている方が・・・」
「マシではあったな」
 セリィとアズリーの意味ありげな返答に、ゼルガディスが眉を顰(ひそ)める。
「どういう事だ? 恋人じゃなかったっていうのか?」
「率直に言うと、手酷くフラれて恨んでいる相手だと私は聞いている」
 すっぱりとアズリーが言ったので、ゼルガディスがしばらく固まった。
「・・・・・・は?」
「相手が引っ越す時に告白したら、何かヒドイ事言われたらしーの。んで有名になった今手紙が届いて・・・」
 セリィが沈痛な表情を浮かべた。それからぱしっと片手でもう片方の手の平を殴る。
「あの時の恨みを晴らしてやるんだってさ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ゼルガディスは今度こそ何も言えなくなった。

「ざまぁ見なさいよ!! アンタなんか大っキライ!!!!」
 既(すで)に意識の無いキャズに向かって吐き捨てると、メルテナが踵(きびす)を返して走り去った。
「リカバ・・・」
 アメリアが客席通路でノびているキャズに向かって魔法を唱えようとし、
「・・・・・・・・・リザレクション」
 思わず呪文を変更した。
「もう・・・どうなってるんですか?」
 手の平から光を発しながら、アメリアがなげやりな気分になって舞台の方を振り返った。
 先程(さきほど)まで膝を抱(かか)え、泣きそうになっていた少女の行動とは思えない。
「・・・ん?」
 客席の下に、メルテナが舞台の上から投げ捨てた茶色い封筒が見えた。
 光を絶(た)やさないよう気遣いつつ、右腕を精一杯伸ばして封筒を掴(つか)む。
 ぱらりと出た便箋(びんせん)にはたった1行。
「もう一度会いたい。君に詫(わ)びたい。港町ルストハイムに明日(みょうにち)着く。 キャズ=グレオリー」
「俺・・・そんなの書いた覚えないけど」
 読み上げた文章にツッコミを入れられ、驚いて下を見ると、床に仰(あお)向けになったキャズの瞳がアメリアを見つめていた。

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5816ガールズ・ブラボー(笑)!!あごん E-mail 2/28-00:19
記事番号5810へのコメント

こんばんは!ストーカー法ぎりぎりのあごんです(笑)。
訴えないでくださぁぁぁぁぁぁぁい(号泣)!

ああああ、最初は
「メルテナ・・・会えなかったんだ」
としょんぼりしてましたが(笑)、まさかこーゆーオチとは(笑)!!
あああっ!メル最高ですっっ!
さすがはトップアイドルですね!
黒鶴の舞にはびっくりです(笑)。
す・・・素敵やっ!
水晶様には一生付いていきます(付いていくのか・爆)!

しかも理由がっ!
ハライセですか(笑)!
女の子万歳!です!!

しかし、謎が謎を呼ぶ次回ですねぇ。
どきどきっ!
誰が手紙を出したのか!?
緊迫の次回をお待ちしております!
ではでは!あごんでした!!

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5823女は強し(爆笑)水晶さな E-mail 2/28-23:28
記事番号5816へのコメント


 こんばんは話が大詰めになってきて一人でパニクっているさなです(笑)。


>ああああ、最初は
>「メルテナ・・・会えなかったんだ」
>としょんぼりしてましたが(笑)、まさかこーゆーオチとは(笑)!!
>あああっ!メル最高ですっっ!
>さすがはトップアイドルですね!
>黒鶴の舞にはびっくりです(笑)。
>す・・・素敵やっ!
>水晶様には一生付いていきます(付いていくのか・爆)!

 喜怒哀楽が一番激しいキャラです。
 黒鶴の舞は必ずやどこかで一発かまさせようと心に決めてました(爆)。
 ああっ付いてきちゃうんですかこれから地獄に行くのにいいんですか!?(爆)。
 

>しかも理由がっ!
>ハライセですか(笑)!
>女の子万歳!です!!

 いい意味で読者様を裏切れたようで(笑)。
 何気にこっちの理由の方が会いに行くのにも気合が入ると思うんですが(笑・爆)。


>しかし、謎が謎を呼ぶ次回ですねぇ。
>どきどきっ!
>誰が手紙を出したのか!?
>緊迫の次回をお待ちしております!
>ではでは!あごんでした!!

 とうとうネタバレの回に踏み込んでてツジツマ合わせるのに必死です(爆爆爆)。
 ホホエマシク見守ってやって下さい(笑)。
 水晶さなでしたっ。

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5822HAPPY DREAMS 10水晶さな E-mail 2/28-23:11
記事番号5766へのコメント


「ゼルガディスさんここにいますか?」
 メンバー全員の控(ひか)え室の扉を開けると、舞台後の打ち上げ話に盛り上がっているアズリーとセリィ。
 ・・・とその前のソファーで頭を抱(かか)えているゼルガディス。
「・・・どうかしたんですか?」
「あー、人間関係に嫌気が差したみたい」
 セリィが首を半分だけこちらへ向けて答えた。
「・・・キャズ、さん?」
 アメリアの後方に居る男に気付いたのか、セリィが首を傾(かし)げる。
「初めまして・・・」
 キャズが頭を掻(か)いた。
「メルテナとはもう会われたのか?」
「・・・一応」
 アメリアがステージであった事をざっと報告して、ゼルガディスの前に一枚の便箋(びんせん)を出して見せた。
「俺手紙なんか書いた事ないんです。筆下手で、いつも書こうとして書けなかったから・・・」
 試(ため)しにとそこらにあったメモ用紙に文字を書かせてみたが、
「今時古代文字を書けるとは珍しい御方だ」
「アズリー!」
 セリィが慌ててアズリーの肩を掴(つか)む。
「・・・いいんです、俺、字下手だから・・・」
 ゼルガディスが眉を顰(ひそ)めた。
 メモを見ているのではなく、アメリアが渡した手紙の文字を見つめている。
「あの、この文字見た覚えありませんか?」
 隣に腰かけたアメリアが唸(うな)りながらこめかみに手を当てる。
「どっかで見たな・・・」
 ゼルガディスががりがりと頭を掻(か)き、思考を巡らせる。
 どこかで、そう・・・自分達の目の前で忙(せわ)しげにペンを走らせていた・・・
「おい」
 顔を上げると、キャズがセリィとアズリーの質問攻めにあっていた。
「・・・おい」
「何よぅ今いい所だったにぃ。早く言ってよ何でメルテナふったの?」
「いやだからあの・・・」
 キャズが言葉に窮(きゅう)して頭を掻いている。
「待てセリィ。ゼルガディス殿が何か気付いたようだ」
 アズリーが制す。しんとした所でゼルガディスが口を開いた。
「・・・アイニィはどこに」
「アイニィはどこに行ったんだ!?」
 ゼルガディスが言葉を中断されて、不機嫌な顔で声のした方を見やる。
「「・・・誰だアンタは?」」
 思わず同時に言っていた。
「マネージャー!!」
「目が覚めたのか!」
 セリィとアズリーが同時に席を立つ。
「・・・・・・・・・ゴンザレスマネージャー・・・?」
 ゼルガディスが恐る恐る指で示した。
「いかにも」
 襟元を正し、背筋を伸ばす。
 不精ヒゲを剃(そ)り、身なりを整えただけでこうも変わるものか。
 体格がいい事に変わりは無いが、それでも最初の印象が鮮(あざ)やか過ぎた為に違和感が拭(ぬぐ)えない。
「・・・ってこんな事を言ってる場合ではない!」
 ゴンザレスが再び慌てながら胸元から一枚の封筒を出した。
「さっき私の机の上に置いてあったんだ!」
 ゼルガディスが持っていた手紙と同じ綺麗な字で、
『辞職届  アイニィ=ザズラム』
 その場にいた全員が言葉を失った。



「・・・どこに行くんですか?」
 声をかけられて、身を竦(すく)めた後に振り返る。
「貴方達、どうしてここに?」
 いつもの旅装束に着替えたアメリアとゼルガディスがそこに居た。
「あなたの故郷のワーズハイムへ行く馬車は、この停留所しかないから」
 アメリアが何ともいえない表情で静かに告げた。
 セリィとアズリーは町中を歩くと目立つ為、キャズはメルテナを探させる為、ゴンザレスはまだ傷が癒(い)えぬ為置いてきた。
 ゼルガディスとアメリア二人だけでアイニィを探しに出た。
「ごめんなさいね挨拶(あいさつ)もしなくて、もう馬車がきちゃうから」
「どうして逃げるように仕事を辞めていくんですか?」
「少し前まであくせく働いていたあんたらしくない行動だな」
 アメリアとゼルガディスに問われ、アイニィが少々苛(いら)立ったように答える。
「・・・どうだっていいでしょう?」
「あなたが仕事を辞める事に対しては私には何を言う権利もありません。けれど、去る前に一言、メルテナさんに謝って下さい」
 アイニィがびくりと肩を震わせる。
 アメリアがいつになく冷たい声で言い放つ。
「キャズさんの名を使ってメルテナさんを遠くに行かせ、彼女のステージを台無しにしようとしたのはあなたですね」
「・・・何を・・・言って」
「おかしいとは思ったんだ。町への買い出しはほとんど下っ端(したっぱ)にやらせているあんたが、何故あの時だけ町中を歩き回ってたのか。まさか本当に行くとは思わなかったせいで、パニックになって探しに出たんだろ」 
 ゼルガディスが嘆息(たんそく)混じりに呟(つぶや)いた。
「たまたま見付けた私を代わりに仕立て上げれば何とか乗り切れるかもしれない・・・でもそれから又悪意が沸き起こった」
「メルテナの代わりを難なくこなす『代役』がいたと発覚すれば、メルテナの面目は丸潰(つぶ)れだ。下手すりゃ歌手人生だって終わり」
 じり、と下がったアイニィに、アメリアが一歩踏み出す。
「カツラが取れた日、わざとピンを少なくしましたよね。ステージ中に取れるように」
 カツラを装着するのが初めての体験だったので、大量のピンを使う事に驚き、つい数を数えていた。
 ただの偶然だが、それが思い出すきっかけとなった。
「証拠が欲しいってんなら、キャズ御本人がいるから奴の筆跡いくらでも確かめな。今時希少価値があるくらいの古代文字だ」
「・・・まぁ、あの、えと・・・少々習字が苦手みたいで・・・」
 アメリアがどもりながらも付け足す。
 つまりは字が汚いのだが、ストレートに言うには気が引ける。
 はっきり言ってしまうゼルガディスと、このあたりが性格の違いである。
 アメリアが感情を切り換えようとして、強く頭を左右に振った。
「・・・どうしてそこまでメルテナさんを嫌うんですか? 何故(なぜ)ですか?」
 メンバーの為に真剣に衣装を選び、化粧を施(ほどこ)し、何事にも手を抜かなかった彼女が仕事を嫌がっていたとは思えない。
 だからこそアメリアは、犯人がアイニィだとわかっていても信じたくなかった。
「・・・・・・・・・」
 アイニィが唇を噛(か)んでいるのを見て、ゼルガディスが口を開いた。
「・・・男がメルテナのファンだったんだろ」
「!?」
 ばっとアイニィが顔を上げる。驚愕(きょうがく)の瞳は、ゼルガディスの言葉を無意識の内に肯定してしまっていた。
「・・・聞くつもりはなかったんだがな、前に痴話喧嘩(ちわげんか)してるところに遭遇(そうぐう)しちまってな」
「だから、なんですか? だからメルテナさんを逆恨みしたっていうんですか!?」
 アメリアが感情の波を抑えきれないのか、拳(こぶし)を強く握り締める。
「それ以外何があるっていうのよ!! あたしはあの人の為にあれだけ尽くしたのに!! 他に何をしろっての!? あたしが何をしても無理だったなら、メルテナがどんな子か知らしめるしかあたしに手はないじゃない!!」
 アイニィが激昂(げっこう)したように叫ぶ。
 何も考えていない、何も努力していないのに簡単に人の心を掴(つか)む彼女が許せなかった。
 何をしたってかなわない自分が嫌いでたまらなかった。
 だからこそ自分だけに目を向けてくれる恋人に全てを注いだのに。
『メルテナ、偽(にせ)の手紙書いたらいなくなっちゃったわ。結局彼女も自分の事しか考えられないのね』
 メルテナの失踪(しっそう)の事を告げると、彼はあっさりと自分に背を向けた。
『お前にはもう、呆(あき)れたよ。そんなに人を束縛(そくばく)しないと気が済まないのか』
「いい気味なのよ!! たまにはこんな気持ち味あわせてやらないとあんなワガママな子は・・・!!」
 言葉を中途で切れさせて、アイニィが横に吹っ飛んだ。
 凄(すさ)まじ過ぎて轟音(ごうおん)にしか聞こえなかった音は、アメリアの平手打ちだった。
「見返りを求める愛なんて愛じゃないです!! そんなのただの傲慢(ごうまん)です!! 好きな人に喜んで欲しいから尽くすんでしょう!!?」
 頬(ほお)を押さえて呆然(ぼうぜん)と見上げるアイニィに、アメリアが感情にまかせてまくしたてる。
「自分と人を比べるのは自分が人より優位に立っている気分を味わいたいだけでしょう!! 自分から卑屈(ひくつ)になってメルテナさんを逆恨みするなんてバカバカしいにもほどがあります!!」 
 ゼルガディスがアイニィと同じくらい呆然とアメリアを見つめていた。
 ここまで激しくキレたのは見た事がない。
「あなたが恋人を大事に想っていたように、メルテナさんだってキャズさんの事をずっと大事に想ってたんです!! あなたはそんなメルテナさんの心を利用したんですよ!!?」
 アメリアの言葉に身を竦(すく)ませるアイニィ。
「・・・・・・・・・・・・」
 まだ怒りがおさまらないのか、肩で息をしながら、アメリアが自分で自分を抱き締める。
 深呼吸を、二つ、三つ。
「さ、行きましょう。手荒な真似をして申し訳ありませんでした」
 ころりと普段のペースに戻り、アイニィの腕を掴(つか)んで立たせる。
 ゼルガディスが斜(なな)め後方でかくっと肩を落としていた。
「どこへ・・・」
「決まってるじゃありませんか」
 アメリアがアイニィの目を見つめながらきっぱりと言う。
「皆の所へ帰るんです」

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5843HAPPY DREAMS 11水晶さな E-mail 3/2-19:32
記事番号5766へのコメント


「アメリア!! ゼルガディス!!」
 メンバー全員の共同控(ひか)え室へ戻ると、残りのメンバーが全員揃(そろ)っていた。
「大変だったのよー? メルテナが暴れないようにしてキャズの話を聞かせるの」
 ソファーの上にはアズリーにしっかり間接技をきめられたメルテナがいた。
 少しでも逃げ出そうとするとアズリーが容赦(ようしゃ)無く締め上げている。
「もう逃げないってば!!! ついでに暴れない!!」
 メルテナが散々騒ぐので、アズリーがちらりと向かい側のゴンザレスに目をやった。
 ゴンザレスが鷹揚(おうよう)に頷(うなず)く。
「次暴れたら私が10m空に放り投げるから覚悟しなさい」
 怯(おび)えたようにメルテナが激しく頷(うなず)く。
 聞けばゴンザレスは舞踏武術『舞柳(まいやなぎ)』の師範代(しはんだい)を務(つと)めていた事があるとか。
 このメンバーの全員の面倒を見ている人物だけはある―ゼルガディスが内心冷汗をかきながら思った。
 ようやくメルテナが普通にソファーに座る。
 アズリーが長時間同じ体制だったので痺(しび)れたのか、こきこきと手首を鳴らした。
「結局さぁ昔のフったフラれたって、メルテナが話を最後まで聞かずにキャズを意識不明にのめしちゃっただけなんだって」
 セリィがつまらなそうにひらひらと手を振った。
「何年も待ったあげくにオチがこれっつーのは・・・期待外れというか何というか」
 彼女にしてはもう一波瀾(ひとはらん)くらい欲しかったらしい。
「だってあれはキャズが悪い・・・!」
 ゴンザレスに睨(にら)まれて、腰を浮かしかけたメルテナが再びソファーに座り直す。
 反射的に逃げかけていたキャズも、その様子を見て恐る恐る姿勢を戻した。
「素直じゃなかったのよね、二人共v」
 隣に座った夫にしなだれながらベルベットが笑った。
 ロヴェルトが折れそうになりながら堪(た)えている。
 再会の時に痛めた腰はギプスで固定されていた。
「それで、だ。そこまではいいとして、あの手紙はアイニィが書いたものだったという事を、頑(がん)として聞き入れなくてな」
 アズリーが手の平を上にしてメルテナに向ける。
「あのねぇ、アイニィがメルにそんな事するわけないでしょ!? デビューの時から一緒だったのよ!?」
 苛(いら)立ったようにメルテナが叫ぶ。
 アメリアとゼルガディスが、お互い左右に距離をとり、間に隙間を空けた。
 今まで二人の影になっていて見えなかったが、後ろにもう一人居た。
「・・・・・・アイニィ」
 メルテナが呟(つぶや)く。
 大荷物をひきずって、うな垂(だ)れた専属スタイリスト。いつもの毅然(きぜん)とした彼女はどこへやら。
「ウソ・・・でしょ?」
 思わず立ち上がって、アイニィに駆け寄る。
 自分の顔を見ようともしない。
「ウソでしょ? ねぇ、アイニィ!!」
「・・・ったわよ」
 消え入りそうな、声で。
「・・・・・・・・・・・・あなたが羨(うらや)ましくて、妬(ねた)ましくて、私・・・」
「・・・・・・アイ、ニィ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・私がやったのよ!」
 針が刺すかの如(ごと)く突き刺さる静寂。
 覚悟していた罵詈雑言(ばりぞうごん)も、激情に任せての暴力も何もなかった。
「・・・・・・・・・?」
 訝(いぶか)しげに顔を上げて、アイニィの瞳が見開く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 見つめる瞳はそのままに、ただ浮かぶのは大粒の涙。
「・・・ぅ・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・・っ、ん・・・」
 唇を噛(か)み締めて、堪(こら)える嗚咽(おえつ)も止めようがなく。
 膝(ひざ)をついて彼女は、泣きじゃくった。
 例(たと)えば抱き締める事を母親から拒絶された子供のように。
「・・・メルテナさん、あなたに裏切られた事が一番辛(つら)いんですよ・・・」
 アメリアが一言一言を噛(か)み締めるように呟(つぶや)く。
「何よりも、信頼していたあなたに。あなたに裏切られて・・・」
「メル・・・テナ・・・・・・・・・」
 胸の奥に突き刺さる、鈍(にぶ)く尾を引く痛み。
 今更気付いたのだ、自分が何をしてしまったのか。
「ごめんなさい・・・ごめんなさいメルテナ・・・!!」
 メルテナの頭を強く抱き締める。
 謝罪は、メルテナが泣き止むまで続けられた。


 ―結局、アイニィはメンバーの強い要望によって辞職を取りやめた。
 ただ少し気持ちの整理をつけるために、二日間の休暇をとる事になった。
 その間何処(どこ)へ行くのかは誰も問い詰めなかった。
 ただ次の公演場所に移る二日後に戻ってくる事だけは固く約束させた。
「彼女は生真面目な性格ですから・・・少し思い詰め過ぎたんでしょう」
 ゴンザレスが言った言葉を、否定する者は誰もいなかった。
 誰もがまだ彼女を、必要としているから。
 勿論(もちろん)、メルテナも。


 そして―
「ねぇ、このポテトチップス平皿に出した方がいい?」
 聞いたはいいが返事をする者がいなかったので、ベルベットが勝手に平皿の上にポテトチップスをあけていく。
 動くと誰かにぶつかって倒れる夫のロヴェルトはもう定位置に座らされていた。
「ちょっとぉメルテナ、乾杯するまでつまみ食いするんじゃないの」
 セリィに叱咤(しった)されて、つまみに手を伸ばそうとしていたメルテナが頬(ほお)を膨(ふく)らませた。
「違うもんキャズがお腹空いたって言うから、優しいメルがね」
「俺一言もそんな事言ってなごげふ」
 鳩尾(みぞおち)に指先を差し込まれ、キャズが体をくの字に折り曲げた。
 アズリーが一人坦々(たんたん)と買ってきた食材をテーブルの上に並べていく。
 ゴンザレスもこの日ばかりは「働くな」とメンバーに許してもらえない。
 メンバー全員の控(ひか)え室は、食材と色とりどりの酒瓶で溢れ返っていた。
 『トゥインクル・スターズ』恒例の内輪による打ち上げ。
「私達も混じっちゃっていいんですか?」
 アメリアが遠慮がちにグラスを並べる。
 大勢で騒ぐのが苦手なゼルガディスも、皆に押し切られて渋々席についていた。
「何言ってんのアメリアもゼルガディスも頑張ってくれたんだから、参加してくれなくちゃあたし達がつまんないわよ」
 セリィがウィンクしながら片手でワインの栓を抜いた。
 栓抜きを使わないあたり既に普通とはかけ離れている。
「あらん上物vv」
 ベルベットがワインのラベルを見て嬉しそうな声を上げる。
「お待たせしました!」
 若い娘の好きそうな菓子を大量に抱(かか)えた男が一人よたよたと入ってきた。
「うん?」
 ゼルガディスが彼を見て首を傾(かし)げる。確か警備の仕事をした時に同僚にいたような。
 茶髪に褐色(かっしょく)の肌の真面目(まじめ)そうな好青年。
「ヨルン、ごくろーサマ!」
 セリィが敬礼の真似事をして袋を受け取る。
「あの人セリィのカレシ」
 メルテナがそっとアメリアの袖(そで)を引っ張(ぱ)って告げる。
「・・・警備の方が?」
「地方の警備アルバイトだったのに、今じゃ専属護衛。スゴイよねー」
「・・・はは」
 アメリアが返事に困って乾いた笑いで返すと、セリィがあっさりとヨルンを送り出して扉を閉めた。
「・・・あれ? ヨルンさんは参加しないんですか?」
「警備は後片付けもする事になってるの。悪いけどそこまで特別扱いはできないからねー」
 好物の菓子が嬉しいのか、セリィがやたら笑顔でテーブルの上に並べていく。
「あ、アメリアとゼルガディスはそこのソファーね。丁度二人がけだからいいでしょ」
 メルテナが指さし、自分はぽんとお気に入りのピンクカバーのソファーを占領する。
「アメリア、ゼルガディス殿。ワインが苦手であれば申告は今の内だ」
 アズリーがグラスにワインを注(そそ)ぎながら言う。アメリアもゼルガディスも首を横に振ったのでそのまま動作を続けた。
 見事なまでに同じ量。
 ふとメルテナが思い出したように呟(つぶや)いた。
「ねぇところでメルの部屋からブラシ持ち去ったの誰?」
 一瞬皆が静まり返った。
「・・・ヘラにマチ針付けて置いといたのはあたしだけど、捨ててはないわよ」
 セリィがあっけらかんと言い放つ。
「・・・え?」
 ゼルガディスが思わず声を上げた。
「あれー? じゃあ、あたしの部屋にやったのは?」
 ベルベットが首を傾(かし)げると、アズリーが静かに手を上げる。
「あ、やっぱりぃ? あたしがセリィの所にやったから、絶対回ってると思ったのよねー」
「となると、私の部屋にやったのは貴女(きじょ)か」
 アズリーが振り返ると、メルテナが頭を掻(か)いて笑った。
「てへ、いなくなる前にちょっと」
 隣のキャズが青い顔をしていた。
「・・・な」
 ゼルガディスが震えた声で言う。
「何をやってるんだお前らは・・・・・・」
「何って・・・ちょっとしたお茶目」
 セリィがきょとんとして言う。
「有名人は色々あるとか言ってなかったか」
 ベルベットを睨(にら)むと、わざとらしく目を反(そ)らす。
「うーん、あの時は外部の人にそこまで漏(も)らさなくてもいいと思ったからぁv」
 ゴンザレスが恥ずかしいのか顔を手で覆(おお)っていた。
「あの・・・シャワーにケチャップを仕掛けたのは・・・」
 アメリアが恐る恐る手を上げる。
 今度は誰も手を上げなかった。
「・・・アイニィじゃない?」
 セリィがぽつりと呟(つぶや)く。
「あたし前に間違ってアイニィの部屋に同じイタズラやっちゃった事あるのよね。アイニィもたまに皆に混じってやってたし」
「・・・イタズラされ損?」
「何なら帰る前に誰かの部屋にやってったら?」
「・・・セリィ、頼むからそれ以上品のない事を外部の方にさらすのは・・・」
 ゴンザレスが泣きそうになりながら哀願した。
「まーまーまー、今日はそういう事言いっこナシ! 準備も終わった事だし! では皆さんグラス持って! OK?」
 セリィが皆を見回してから、咳を一つ。
「では皆様、お疲れ様でしたー!!」
『かんぱーい!!』
 かち合ったグラスが、賑(にぎ)やかな音をたてた。

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5845HAPPY DREAMS 12水晶さな E-mail 3/2-22:41
記事番号5766へのコメント


「いー具合に皆様飲んでいる所で、ここらで芸をお一つ!」
 空(から)のワイングラスを片手に、セリィが赤い顔で声を張り上げた。
 徐(おもむろ)に立ち上がり、ワイングラスから手を放す。
「あっ!」
 アメリアが反射的に身を乗り出そうとしたが、セリィのつま先がワイングラスを跳(は)ね上げた。
 普通の威力で蹴ればたやすく割れてしまうほど脆(もろ)いワイングラスが、軽やかに宙を舞う。
 ワイングラスの底の、芯(しん)を正確に突いている為割れないのだ。
「おおーセリィの得意技ぁ!」
 メルテナがきゃっきゃっと子供のように手を叩いて喜ぶ。
 セリィが2・3度ワイングラスを宙に浮かせてから、ほいと人差し指の先に乗せた。
「二番手は誰?」
「ゴンザレスしゃ〜ん、腹踊りやんないの?」
 メルテナが舌っ足らずな調子で言う。
「誰かさんが腹に青痣(あざ)を作ってくれたおかげでね」
「?」
 メルテナ以外の三人が一斉に視線を反(そ)らした。
 師範代(しはんだい)を務(つと)めた事もあるゴンザレスも、三人がかりで不意打ちをくらっては勝てなかったらしい。
「・・・では、私が」
 かなり飲んだというのに顔色一つ変えないアズリーが席を立つ。
 ソファーの後ろの荷物袋から、太目の反(そ)り返った曲刀(きょくとう)―シミターを取り出す。
 鞘(さや)から無造作に引き抜くと、刃の背中を頭に乗せた。
 微動(びどう)だにすることなく、その状態でゼルガディスに向かって片手を差し出す。
「失礼ゼルガディス殿、腰の剣を貸して頂きたい」
「ん? ああ・・・」
 酒のせいか少々ゆっくりした動作で、ゼルガディスが剣をアズリーに渡した。
 同じように鞘(さや)から引き抜き、更にシミターの上に乗せる。
 そしてそのまま―優雅に一回転。
 刃の上に刃を乗せて、危なっかしい事この上ない。
 見ている方が恐いのか、アメリアがゼルガディスのマントの端を掴(つか)んだ。
「アズリーの得意技、【剣の舞】v」
 ベルベットがぱちぱちと手を叩いた。
 短い舞いを踊った後、唐突(とうとつ)にアズリーが頭を下げる。
 滑(すべ)り落ちかけた剣を見もせずに、両手でそれぞれの柄(つか)を掴(つか)んだ。
「ご声援、感謝」
 剣を鞘(さや)に戻して、ゼルガディスに丁寧に返す。
 席に戻りかけたアズリーが、ちらりと時計を見やった。
 それからアメリアに向かって目くばせ一つ。
「・・・あ」
「ん?」
 アメリアが何かを思い出したように目を見開き、それに気付いたゼルガディスが首を傾(かし)げる。
「そろそろ零時(れいじ)だ」
 アズリーの一言で皆が急に静まり返って時計を見つめた。
 秒針が時を刻むごとに、ごそごそと各自服のポケットを探り出す。
「3・・・2・・・1!!」
 メンバーが一斉にゼルガディスに向かって小さな円錐の筒を向けた。
 やかましい音をたてて筒の底が破裂し、細く長い色とりどりの紙テープを噴射(ふんしゃ)する。
 俗(ぞく)に言うクラッカー。
 確か人に向けて発砲するなとか注意書きにあったよなと思いつつ、痺(しび)れる鼓膜を押さえるのに手一杯。
「HAPPY BIRTHDAY !!」
「・・・は?」
 ゼルガディスがいまだ事態を飲み込めずに、呆然(ぼうぜん)と皆を見つめる。
「手拍子、さん、ハイ!!」
 セリィが両手を上に上げて手を打った。
「午前0時を過ぎたら イチバンに届けよう」
 メルテナがいつのまにかおもちゃのマイクを握り締め、やたら陽気な声で歌う。
『Happy birthday,Happy birthday』
『Happy birthday to you』
 ご丁寧にハモりつきのコーラス。
 歌手だけはあって、アカペラとはいえ声量は流石(さすが)というべきか。
「今日はあなたを取り囲む すべての人達にも」
 メルテナが歌詞に合わせて空いている片手を広げる。
 メンバー全員がおどけたように笑みを浮かべた。
 あのアズリーでさえ唇の端に僅(わず)かに笑みを含(ふく)んでいる。
『Very special,Very special』
『It’s a very very special day』
「出会えて良かった 素直に言える一年に一度の日」
 アメリアがいつの間にか同じくおもちゃのマイクを手にして、メルテナと一緒になって歌っていた。
『You’re my precious』
『Have a super great extra good time !』
 ベルベットのソプラノボイスがやけに高く上機嫌に響く。
「たくさんの素晴らしい出来事が
まだまだ あなたに訪れるように 祈りながら」
『Happy birthday to you !!』
「BA−BA−BA−BA−BANG!!!」
 最後の歌詞と同時に、思いきり上から黒幕を被(かぶ)せられた。
 ステージの何かに使われたのだろうが、とにかく重い。
「だあっ!? 何をする!!」
 驚いたのが先行して、思わず力任せにはねのけた。
 視界を確保して更に驚いた。
 目の前に、二人のアメリア。
 いや―同じステージ衣装を着たアメリアとメルテナ。
 先ほどまでアメリアはいつもの服装だったのだが、恐らく下に着込んでいたのだろう。
 カツラを付ける時間はなかったのか、深く被(かぶ)る帽子でヘアスタイルをごまかしている。
 ゼルガディスが眉を顰(しか)めた時、セリィがそれ以上近付くのを止めるかのように後ろから肩を掴(つか)んだ。
「クイズターイムv」
 ベルベットが明らかに酔った声で言う。
「アナタの愛(いと)しのアメリアちゃんはどっちだー?」
「・・・何の真似だこれは」
「ただのクイズよう、気にしないで」
 セリィがぐっと指に力を込める。
 答えるまで放す気はないらしい。
 キャズは片方を見ないようにか、完全に二人から目を反(そ)らしていた。
「こりゃあ難しいなぁ」
 ゴンザレスが横から見て唸(うな)る。
「・・・・・・・・・・・・」
 ゼルガディスが左のアメリアから右のアメリアにゆっくりと視線を移す。
 そして―右のアメリアに手招きをした。
 『わたし?』と言うように右のアメリアが自分で自分を指差す。
 ゼルガディスが頷(うなず)いた。
 右のアメリアがとてとてとゼルガディスの前まで歩く。
 ゼルガディスが立ち上がり、アメリアの頬に手をかけて、
「こっちが―」
 素早く帽子を掴(つか)み、ぱっと取り払う。
「ニセモノだ」
 ばさあっと、豊かな黒髪が溢れ出した。
「きゃあっ!!」
 反射的に髪を抱(かか)えて、メルテナが声を上げる。
 左のアメリア―本物―が呆然とこちらを見つめて突っ立っていた。
「・・・フェイントですか?」
「スリルあっただろ」
 ゼルガディスが意地悪げな笑(え)みを浮かべた。
 つかつかつか。
「見よう見真似【黒鶴の舞】っ!!!!」
 ごぎゃあっ。
 ゼルガディスが弧(こ)を描(えが)いて吹っ飛んだ。
「腰のヒネリが足りない。77点」
 メルテナが神妙(しんみょう)な顔つきで言い放った。

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5846翌日は、誰が掃除するのだろう。みてい 3/2-23:08
記事番号5845へのコメント

こんばんは、さなさん。
レスめぐり中のみていです。
飲み会の次の日、ふと惨状に目をやって、もう一度寝たくなることありませんか?
みていはこういうときに限って早く目が覚めてしまいます…

> 確か人に向けて発砲するなとか注意書きにあったよなと思いつつ、痺(しび)れる鼓膜を押さえるのに手一杯。
> メンバー全員がおどけたように笑みを浮かべた。
> あのアズリーでさえ唇の端に僅(わず)かに笑みを含(ふく)んでいる。
おおっ、自然な笑顔が出るようになりましたかっ!
>「アナタの愛(いと)しのアメリアちゃんはどっちだー?」
>「・・・何の真似だこれは」
否定しませんね、ゼル。
>「こっちが―」
> 素早く帽子を掴(つか)み、ぱっと取り払う。
>「ニセモノだ」
> ばさあっと、豊かな黒髪が溢れ出した。
>「きゃあっ!!」
> 反射的に髪を抱(かか)えて、メルテナが声を上げる。
> 左のアメリア―本物―が呆然とこちらを見つめて突っ立っていた。
>「・・・フェイントですか?」
>「スリルあっただろ」
> ゼルガディスが意地悪げな笑(え)みを浮かべた。
> つかつかつか。
>「見よう見真似【黒鶴の舞】っ!!!!」
> ごぎゃあっ。
> ゼルガディスが弧(こ)を描(えが)いて吹っ飛んだ。
>「腰のヒネリが足りない。77点」
> メルテナが神妙(しんみょう)な顔つきで言い放った。
このシーンが好きだなぁ。やられっぱなしじゃないです、アメリア。
ゼル、災難。

途中はどうなることやらと思ったメルテナちゃんもどうにかこうにか治まってよかったです。まだまだ大変そうですが。
それにしても、名前だけで異様な迫力のあるゴンザレスさん。やっぱしつおい方でしたかぁ。

なんか感想というより、たらたらと文並べてるみたいになっちゃってすみません。
また寄らせてください。
ではではみていでした。



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5859・・・多分、ゴンザレスさんとか(爆)水晶さな E-mail 3/3-23:59
記事番号5846へのコメント


 こんばんはさなです。
 今最終話をつなげてから来ました(笑)。
 こんなに長くなるなんて思ってもみませんでした(汗)。
 飲み会の次の日は別の世界に飛び立ちたくなります(爆)。


>> 確か人に向けて発砲するなとか注意書きにあったよなと思いつつ、痺(しび)れる鼓膜を押さえるのに手一杯。
>> メンバー全員がおどけたように笑みを浮かべた。
>> あのアズリーでさえ唇の端に僅(わず)かに笑みを含(ふく)んでいる。
>おおっ、自然な笑顔が出るようになりましたかっ!

 練習の成果ですかね(笑)。
 アズリーも無理しなくても、笑う時は自然に笑えるんだって事で。
 本人が笑っている自分を自覚できないだけなんです(^_^;)


>>「アナタの愛(いと)しのアメリアちゃんはどっちだー?」
>>「・・・何の真似だこれは」
>否定しませんね、ゼル。

 とりあえずその言葉に嘘偽りはないって事ですね(笑)。


>>「こっちが―」
>> 素早く帽子を掴(つか)み、ぱっと取り払う。
>>「ニセモノだ」
>> ばさあっと、豊かな黒髪が溢れ出した。
>>「きゃあっ!!」
>> 反射的に髪を抱(かか)えて、メルテナが声を上げる。
>> 左のアメリア―本物―が呆然とこちらを見つめて突っ立っていた。
>>「・・・フェイントですか?」
>>「スリルあっただろ」
>> ゼルガディスが意地悪げな笑(え)みを浮かべた。
>> つかつかつか。
>>「見よう見真似【黒鶴の舞】っ!!!!」
>> ごぎゃあっ。
>> ゼルガディスが弧(こ)を描(えが)いて吹っ飛んだ。
>>「腰のヒネリが足りない。77点」
>> メルテナが神妙(しんみょう)な顔つきで言い放った。
>このシーンが好きだなぁ。やられっぱなしじゃないです、アメリア。
>ゼル、災難。

 クイズを出されてただ答えるだけじゃ面白くないと思ったんでしょうね(^_^;)
 コメントの通りやられっぱなしじゃないのがアメリアだと思ってます作者(笑)。
 でもメルテナ曰く77点だからキャズがくらった程のダメージは受けてません(笑)。


>途中はどうなることやらと思ったメルテナちゃんもどうにかこうにか治まってよかったです。まだまだ大変そうですが。
>それにしても、名前だけで異様な迫力のあるゴンザレスさん。やっぱしつおい方でしたかぁ。
>
>なんか感想というより、たらたらと文並べてるみたいになっちゃってすみません。
>また寄らせてください。
>ではではみていでした。

 いえいえレスを入れて頂けるだけでもう嬉しくて。
 ゴンザレスさん強いんですが不意打ちには弱いと(笑)。
 メルテナとキャズはこれからもまだドタバタやらかしそうですね(笑)。
 NO,13でやっとこさ最終話です。宜しければお付き合い下さいませv
 ではではさなでした(^^)

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5850私も舞柳に行きたいです(笑)あごん E-mail 3/3-00:04
記事番号5845へのコメント

こんばんは!あごんです!

なんだか大円団でいいですねぇっ!!
キャズとのことも誤解だったようですし(一体どんな誤解があったんです?)最後まで聞かずに殴打するあたりが実にメルテナらしいです!!
アイニィさんは、可哀相ですけど、でも恋愛ってむずかしいですからねぇ(遠い目)。
ちょっとした恋愛依存症に陥るところだったのでしょうか?
でも、謝るシーンが胸に響きました。シーンだけにジーンと(蹴)
 
ゼルは誕生日だったのですねぇ。
それを最初にお願いしてたのですねv
アメリアいじらしい!!

アメリア当てクイズ、やっぱここは愛(笑)の力ですよねっ!!
いやいやゼルのアメリアスコープの力は凄いですね(謎)。
 
打ち上げはとっても楽しかったですっ!
さすが!舞柳の生徒ですわ!
私も習いに行かないと(笑)。
そして是非「黒鶴の舞」を覚えたいものです。
日本にも「舞柳」支部とかありますか?

ではでは!最終回と銘打っていらっしゃらないので、もう少し続きますよね?
次回が最終回なのでしょうか??
どきどきしつつ、ちと寂しい気持ちでお待ちしております!!
あごんでした!!


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5860一般人が行くと帰ってこれないですよ(笑)水晶さな E-mail 3/4-00:24
記事番号5850へのコメント


 こんばんは〜さなです。
 いつもありがとうございます(^^ゞ


>なんだか大円団でいいですねぇっ!!
>キャズとのことも誤解だったようですし(一体どんな誤解があったんです?)最後まで聞かずに殴打するあたりが実にメルテナらしいです!!
>アイニィさんは、可哀相ですけど、でも恋愛ってむずかしいですからねぇ(遠い目)。
>ちょっとした恋愛依存症に陥るところだったのでしょうか?
>でも、謝るシーンが胸に響きました。シーンだけにジーンと(蹴)

 メルテナは自分の中で結末を作ってしまって暴走するタイプですから・・・(笑)。
 本当は過去話も入れようかと思ったんですが、そこまで入れるとあまりにも長くなってしまうので省きました。面倒臭かったという説も(爆)。
 犯人・・・というか張本人アイニィも、全ての原因の悪者・・・というわけではないんですよ。
 人が多いと自然複雑な感情も生まれるかなーと・・・ああ女の集団は恐い(爆)。
 最後のギャグはご自分でツッコミを入れられているのでツッコミ用のハンマーはしまっておきます(爆)。


>ゼルは誕生日だったのですねぇ。
>それを最初にお願いしてたのですねv
>アメリアいじらしい!!

 「忘れてた・・・この日は!」の遅いネタ晴らしです(笑)。
 覚えている方いるんでしょうか(爆)。


>アメリア当てクイズ、やっぱここは愛(笑)の力ですよねっ!!
>いやいやゼルのアメリアスコープの力は凄いですね(謎)。

 アメリアスコープ(爆笑)。
 素敵です。ゼルの特殊能力ですな。
 1km先でも姿が判別できると(いい加減にしろ)。

 
>打ち上げはとっても楽しかったですっ!
>さすが!舞柳の生徒ですわ!
>私も習いに行かないと(笑)。
>そして是非「黒鶴の舞」を覚えたいものです。
>日本にも「舞柳」支部とかありますか?

 ゴタゴタ続きだったので最後は少しぐらい楽しくと思いまして。
 出し物も多くてさぞや賑やかでしょーねぇ(笑)。
 「舞柳」はマイナー武術ですのでゼフィーリア地方に彼女らのお師匠様が小さな道場構えているだけです(笑)。
 後【黒鶴の舞】はメルテナオリジナルの技なので、メンバーか本人に教えを請わないと難しいかもしれません(笑)。


>ではでは!最終回と銘打っていらっしゃらないので、もう少し続きますよね?
>次回が最終回なのでしょうか??
>どきどきしつつ、ちと寂しい気持ちでお待ちしております!!
>あごんでした!!

 次の13話で一応シメさせて頂きます。不吉な数字だ(爆)。
 作者としても完結は嬉しさ半分寂しさ半分。
 だからって続き書けと言われると吐血(爆)。
 ではでは宜しければ最終話までお付き合い下さると嬉しいです。
 水晶さなでしたv

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5857HAPPY DREAMS 13水晶さな E-mail 3/3-23:44
記事番号5766へのコメント


 ステージ裏の通路を歩きながら、ゼルガディスが首を擦(さす)った。
「・・・首が曲がるかと思ったぞ」
「『本物』が決まってたら曲がるどころじゃすみませんよ」
 アメリアが前を向いたまま答える。
「キャズさん、顎(あご)の骨折れてましたもん」
「・・・・・・・・・」
 さーっと顔から血の気が引いた。
「頼むから習得するなよ。【黒鶏の舞】とかゆーの」
 ゼルガディスとしても、アメリアがこれ以上強くなるのはちょっと。
「【黒鶴の舞】です」
 ぽりぽりと頬(ほお)を掻(か)いて、ゼルガディスが話題を転換する。
「・・・にしても、よく承諾したな奴らが」
「はい?」
「バースデーソング」
 アメリアがぽむと手を叩いた。
「ああ、あれですか。皆さんにお願いしたら快(こころよ)く承諾してくれました。条件と引き換えに」
 条件付きでは快くとはいかないのでは、と思いながらもゼルガディスが口を開く。
「条件?」
「さっきやったクイズです」
「・・・ふーん」
 曖昧(あいまい)に頷(うなず)きながら、ゼルガディスがふと思い出した。
 過去まだ四人で騒(さわ)がしく旅をしていた時、アメリアが自分の誕生日を尋(たず)ねてきた事を。
 聞いた途端リナに引きずられていって、次にもう一度目の前に来て、神妙(しんみょう)な顔の後に突然笑顔。
『あのですね、ゼルガディスさんの誕生日、今日にしませんか?』
『・・・は?』
『ゼルガディスさん、ご自分の誕生日好きじゃないみたいですから、この際変えちゃいましょうよ』
 その時はすぐに身を翻(ひるがえ)していなくなってしまったので、真意を聞けなかった。
 その夜宿屋の食堂で頼んでもいない巨大なバースデーケーキが出てきて、かなり恥ずかしい思いをした。
 しかもチョコレートプレートにはリナが図(はか)ったらしく、『はっぴーばーすでーぜるちゃん』とか書いてあってかなり逃げたかった。 
 つられた野次馬を巻き込んで深夜まで続けられたバカ騒ぎをようやく逃げ出し、部屋に戻ろうとしていたリナを捕まえた。
『お前一体アメリアに何を吹き込んだ?』
『吹き込んだとは失礼な。アンタが自分自身の誕生日を好きじゃないって事、アメリアに教えただけよ』
 前にまだ三人だった頃、酒が入ってうっかり漏(も)らしてしまった事がある。
 過去自分の姿を合成獣に変えられた時、その日が自分の誕生日だったと。
『だからアメリアが変えろって・・・? けど何で今日なんだ』
『・・・アンタそれアメリアに聞いてないでしょうね!?』
 睨(にら)み付けられて、ゼルガディスが思わず一歩退(ひ)いた。
『・・・聞いてない。というか聞けなかった』
 それを聞くとリナがほっとしたように溜息(ためいき)をつき、腕を組んで言った。
 反応をうかがうように、少し意地悪げな笑みを含んで。
『アンタとアメリアが初めて会った日よ。一年前の今日』


 アメリアが突然、廊下にあった客席に通じる扉を開けた。
 飲み会も終わり、部屋に戻ろうとしていた所だったので、ゼルガディスが驚く。
「何だ? 帰らないのか?」
「まぁ入って下さい」
 薄暗いホールに押し込まれる。
 そのままゼルガディスの手を引っ張り、アメリアがずんずんと客席の真中へ向かう。
「アメリア、何もこんな所でなくても」
「何の事を言ってるんだかわかりませんが、不穏当な発言は控(ひか)えて下さい」
 引きつった笑みを浮かべたアメリアに、ほとんど力づくで席に座らされた。
 それから自分はステージの方へ走り、軽く跳躍(ちょうやく)して上に登る。
 くるりと一回転して、ゼルガディスに向き直った。
「バースデーソングは皆さんがサービスしてくれたんです。私の本当のお願いは、公演が終わった後のステージを借りる事」
 ライティングの光球を真上に放り投げ、壇上(だんじょう)のアメリアが柔らかい白のスポットライトに包まれる。
「一生懸命練習したんですよ。難しかったんですから!」
 ピアノの前奏が流れ始めると、急にしゃんと背筋を伸ばす。
 いつの間にかピアノの席にはベルベットが、その傍(かたわ)らにバイオリンを持った夫のロヴェルトが居た。
「今までと、これからの想いを込めて・・・HAPPY BIRTHDAY TO YOU・・・」
 メルテナとは違う微笑(えみ)を湛(たた)えながら、その唇から少しだけ震えた声が漏れた。


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 夜空には 永遠の愛
 ほら 見えるでしょう
 おとぎ話じゃない
 信じてた 子供のわたしは
 コンパクトばかり覗(のぞ)いては 夢みてた

 いくつかの恋を知り
 たくさんのウソ覚え
 迷ったり 探したり
 守るべきもの なかったけど

 今なら言えるかしら
 私の大事な人
 ずっとそばにいて あなたを照らすのよ
 I’ll Be Your Search−Light

========================

 鍵盤(けんばん)の上の指先が軽(かろ)やかに滑(すべ)る。
 ベルベットが嬉しそうな表情でアメリアを見やった。
 ―いい表情(カオ)してるわ、アメリアちゃん
 それから、隣に立ちバイオリンを演奏している夫に視線を移す。
 ロヴェルトが微笑(ほほえ)み返した。
 腰に巻かれたギプスが何とも痛々しかったが・・・

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 きまぐれな 永遠の愛
 ユラユラゆれて 滲んで
 たまに涙ぐむ
 信じてる 大人のわたしは
 ワインのように 愛は熟成させ育てるものだと

 新しい日々が来て あふれる希望かかえ
 走ったり 飛ばしたり
 守るべきもの 増えてくけど

 今なら言えるかしら
 私の大事な人
 ずっとそばにいて あなたを照らすのよ
 I’ll Be Your Search−Light

======================== 

 客席の後方で薄く開いていた扉が閉まった。
「いい歌だな」
 閉めた扉に額(ひたい)を当て、アズリーが呟(つぶや)く。
「そうねー」
 頭の後ろで手を組んだセリィが答える。
「私もこんな歌を歌いたいものだ」
「メルテナみたいに作詞する?」
「悪くない考えだ」
「一人一人テーマソング持つのもいいかもね」
 廊下の方へ足を向けながら、セリィ。
「ゴンザレスさんは?」
「次の公演の手配に忙しいらしい。後で差し入れでも持って行く」
「おぅ、お熱いことで」
 セリィがわざとらしく肩を竦(すく)める。
「貴女(きじょ)は? ヨルンの仕事はもう終わったのではないのか?」
「警備仲間と飲み会だから今夜は無理だって、これだから男の付き合いってのは!」
 愚痴(ぐち)をこぼしながらも表情に笑みが浮かんでいるのは、
 何だかんだ言いながら大切な人にかわりないから。
 ―アメリアと同じように。
「又飲むか? 酒は残っている」
「いーねぇ、ヤケ酒しよ!」

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 Search−Light  フワフワ銀の羽根ひろげ
 Day & Night ジンジン痛むキズ癒(いや)しましょう
 The Way Is Right やわらかな陽光(ひかり)のさすあの空へ 明日へ
 Follow

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 舞台の袖(そで)で幕を掴(つか)み、メルテナが呟(つぶや)く。
「いい歌ね」
「・・・そうだな」
「メルの歌とどっちがキレイ?」
「難しい事聞くなよ」
 がっと襟首(えりくび)を掴(つか)まれた。
「暴力反対!」
  慌てて小声で叫ぶと、ピアノを演奏中のベルベットから「黙れ」と睨(にら)まれた。
「人それぞれの想いがこもった歌は比べるものじゃないだろ?」
「・・・それもそうね」
 メルテナがぱっと手を放す。キャズがまだ青ざめながらも服を直した。
「人の話は最後まで聞くようにしてくれ。昔っから・・・」
「差出人不明の花束はもういらないからね」
 くるりと向きを変え、メルテナが歩き出す。
「・・・悪かったよ」
 ぽりぽりと頭を掻きながらキャズが後を追う。
 廊下まで出てぴたりと足を止めたメルテナが、前を向いたまま口を開いた。
「・・・メルも」
「?」
「・・・メルも悪かった。ゴメン・・・」
 静寂が恐かったのか、もう一度早口に。
「ごめんなさい・・・」
 返事の代わりに、後ろから優しく包まれる感覚。
「・・・わかった。もういい・・・」
 目頭(めがしら)が、熱くなった。

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 いくつかの恋を知り
 たくさんのウソ覚え
 迷ったり 探したり
 守るべきもの なかったけど

 今なら言えるかしら
 私の大事な人
 ずっとそばにいて あなたを照らすのよ
 I’ll Be Your Search−Light

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「やり直したいなんて言うつもりじゃないから、安心して」
 歌の届かぬ町の片隅。
 呼び出した昔の恋人は、少々戸惑(とまど)った表情をしていた。
 冷たい風にアイニィの髪が揺れる。
「最後にどうしても言いたかったの」
 顔を上げ、自分でも驚くほど穏(おだ)やかな笑(え)みを浮かべる。
「今までごめんね、そしてありがとう」
 ―そう・・・そんな簡単な言葉をずっと忘れていた・・・

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 そっと抱きあって 心で歌いましょう
 I’ll Be Your Search−Light

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「何だか急に静かになっちゃいましたねー」
 メンバー達と別れて町を出、数分も立たない内にアメリアが呟(つぶや)いた。
「やーっと騒(さわ)がしい連中と別れられた」
 反対にゼルガディスが清々(せいせい)したように言う。アメリアが膨(ふく)れっ面(つら)をしてゼルガディスの背中を叩いた。
「そんな事言っちゃ失礼ですよぅ。頑張ったからって結構多目に報酬(ほうしゅう)もくれたじゃないですか!」
「マネージャーがぶっ倒れてる間にアイニィが勝手に決めた契約(けいやく)だろ。本当に貰(もら)えるかどーか冷汗(ひやあせ)ものだったんだぞ」
 ゴンザレスが誠実な人間だったから助かったが 。
「でも、今日アイニィさんが戻ってくる日ですよね。私達会えなかったけど、ちゃんと戻ってくるんでしょうか?」
「・・・さぁな。それは本人が決める事だろ」
 ふっと一度町の方を振(ふ)り返ったアメリアが、肩を竦(すく)めて又歩き出した。
「そうですね。これ以上は私達が干渉できる問題じゃないですもんね」
「・・・そういう事だ」
「あのですね、再来月(さらいげつ)私の誕生日なんですよ」
 ゼルガディスが無言でアメリアを振(ふ)り返る。
「催促(さいそく)は喜ばれるもんじゃないぞ」
「言わないとゼルガディスさん忘れるじゃないですか」
 3度自分の誕生日を繰(く)り返して、脳髄(のうずい)に叩き込ませようとしてくるアメリア。
「あーもーわかったわかった。何が欲しいんだ金額は考えろよ一般市民の年収を思い浮かべて言ってくれ」
 ゼルガディスが片手を上げて棒読みで言い放つ。
 アメリアが満面の笑(え)みを浮かべた。
「モノじゃないです。ゼルガディスさんに歌って欲しいんです」
「ぶ」
 思わず吹いてしまった。
「おあいこでしょう? 私もゼルガディスさんの前で歌うなんてすっごく緊張したんですよ」
「お・・・お前・・・なぁ・・・」
 道端(みちばた)で脱力したゼルガディスを、アメリアが不思議そうに見つめる。
「えー? そんな難しい事頼みました私?」
「んなこっぱずかしい事できるかああぁっ!!!!」
 ゼルガディスが頭を抱(かか)えて絶叫した。



「メルテナは? もうすぐ仮設会場の解体始まっちゃうわよ」
 剥(む)き出しになった鉄骨の柱に寄りかかりながら、ベルベットが煙草をふかした。
「荷物はもうまとめてあるわよ。出発時間も伝えてある。ギリギリまで入り口で粘(ねば)るつもりだわ」 
 セリィが旅用のマントを肩に掛(か)け、ベルトの長さを調節する。
「メルテナにとってアイニィは、実の姉同然だったからな」
「それがアイニィには辛かったとは、【可愛(かわい)さ余って憎さ百倍】って言い得たものよね・・・」
 青空に溶け込むように、濁(にご)った煙が散っていった。
 

 喧(やかま)しい音を立てて、仮設会場の解体が行われていく。
 キャズは今朝早くに家へと帰って行った。
 父親の事業が上手くいったおかげで、来年は故郷へ戻って来れるらしい。
 今までずっと父親の仕事を手伝い、旅費を貯めていたのだと言う。
 そこまで知ってしまっては、帰るキャズに渋(しぶ)る様子を見せる訳にはいかなかった。
 見送って入り口で、その脇の柱にもたれたまま座り込んだ。
 見送ったのは一人、これから迎えるのも一人。
 迎える人物は本当に帰って来るのかはわからないけれど。
 それでも待つ他(ほか)は無い。
 信頼していた人に裏切られて、それでもまだ信じているのは馬鹿と言われるかもしれないけど。
「それでもいい 一時の安らぎ 泣かないように 夢を見させて・・・」
 呟(つぶや)いた歌声は、かすれて音にならなかった。
 ざり、と土を踏む足音。
 いつまでたっても戻ってこない自分を呼びに、メンバーが来たのだろう。
 わかっている、そろそろ次の公演場所に移る為に出発しなければならない事など。
「・・・メルテナ」
「わかってるわよ・・・だからもうちょっと待って・・・」
 顔を上げて、太陽の日差しに眩(まぶ)しくて目を窄(すぼ)めた。
 影になってよく見えない彼女の顔は、メンバーの誰でもなかった。
 驚愕(きょうがく)に目を見開く。
 彼女の足元に置かれた紺のボストンバッグ。
 誕生日に、メルテナがプレゼントしたもの。
「・・・・・・・・・・・・」
 口が言葉を求めてかすれた音を発する。
 違う、言いたかった言葉は、真っ先に伝えたかった言葉は。
「・・・・・・・・・・・・お帰りなさい」
「・・・・・・・・・・・・ただいま」
 

 花の色が 過ぎ行く時を告げる 
 そして貴方は ここに居る・・・
 
  END.


*************************


 ・・・お疲れ様でした。
 今回オリキャラを沢山登場させたので自分で自分の首を絞めかなり大変な事になりましたが(爆)、
 何とか終わらせる事ができました。
 今回話に使わせて頂いた曲は以下の三つです。

 ★モーニング娘:「I WISH」
 ★Dreams Come True:「HAPPY BIRTHDAY」
 ★広瀬香美:「Search−Light」

 お付き合い有り難うございましたv 

 水晶さな拝

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5858おつかれさまでした!桐生あきや 3/3-23:56
記事番号5857へのコメント


 こんばんわ。桐生です。

 やっぱりさなさんは、歌を小説に絡ませるのがすごく上手です! いちばん受けた歌はモーニング娘のでしたね〜(笑)
 魔剣士殿に歌を歌ってあげる姫がどうしようもなく可愛かったです。逆に歌をねだる姫のぼけっぷりも最高でした。歌を唄うゼルってどうしてもあのNEXTのアレしか思い浮かばないんですが(笑)

 連載終了おめでとうございます。
 お疲れさまでした〜〜、
 ではでは、アズリーをひそかに気に入っている桐生でした(ぺこり)

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5861ありがとうございます〜!!(>_<)水晶さな E-mail 3/4-00:33
記事番号5858へのコメント


 こんばんは〜さなです。
 別のレスを書いて戻ってきたらあきやサンのお名前が!!
 ナイスタイミングでびっくりしました。
 最終話だけやたら長かったのに御苦労様です(汗)。


> やっぱりさなさんは、歌を小説に絡ませるのがすごく上手です! いちばん受けた歌はモーニング娘のでしたね〜(笑)
> 魔剣士殿に歌を歌ってあげる姫がどうしようもなく可愛かったです。逆に歌をねだる姫のぼけっぷりも最高でした。歌を唄うゼルってどうしてもあのNEXTのアレしか思い浮かばないんですが(笑)

 広瀬香美嬢の新曲を聞いてから「これはアメリアがゼルガディスの為に歌う曲だ〜!!」と暴走しまして(爆)。
 モーニング娘のは途中で浮かんだんですが、これも姫にピッタリで笑えました。
 逆のお願いは果たして受け入れられるんでしょうか・・・是非緑川ボイスで歌って頂きたいものです(笑)。あ、選曲どうなるんだろう・・・。


> 連載終了おめでとうございます。
> お疲れさまでした〜〜、
> ではでは、アズリーをひそかに気に入っている桐生でした(ぺこり)

 ああっここにもアズリーファンが・・・彼女って結構やりますね・・・(謎)。
 次の話が珍しくもう浮かんでいたりするので(爆)、近い内に又ひょこっと出てくるやもしれませぬ。
 お付き合い有り難うございました〜(^_^)

 水晶さな拝

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5873お疲れ様でした!!あごん E-mail 3/5-03:53
記事番号5857へのコメント

こんばんは!あごんです!!
お疲れ様でした、そしてありがとうございました!
とても素敵なお話でした。
こんな素敵な話を書かれて、私に読まさせて下さった水晶様に、もう一度。
ありがとうごさいました!
大円団でよかったです!!

それぞれのエピソードがとってもらしくって微笑ましかったです。
歌は・・・すみません。
私、音楽はヒップホップ系の人なので、よくは知らないのですが。
でもとても素敵でした!
話と合ってて、お互いがお互いを高め合う、そんな雰囲気でした!

もう次のお話がお有りだとか。
嬉しいです!
心を弾ませ、お待ちしております!

ではでは!あごんでした!
ツリー、落ちないかどうか心配です(笑)。

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