◆−恋人達のクリスマス−水晶さな(12/24-00:19)No.5266
 ┣―WINTER SONG―−水晶さな(12/24-00:21)No.5267
 ┃┣音のない静かな環境で読ませていただきました(^^)−雫石彼方(12/24-02:58)No.5269
 ┃┃┗ありがとうございますっ(>_<)−水晶さな(12/24-23:57)No.5276
 ┃┗凄いです………−ゆっちぃ(12/25-13:59)No.5285
 ┃ ┗ありがとうございますvv−水晶さな(12/25-21:03)No.5290
 ┗―ANGEL SONG―−水晶さな(12/24-00:24)No.5268
  ┗同じく音のない場所で読みましたっ−桐生あきや(12/24-06:06)No.5270
   ┗ありがとうございます〜(>_<)−水晶さな(12/25-00:13)No.5278


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5266恋人達のクリスマス水晶さな E-mail 12/24-00:19



 狙ったよーに登場する水晶さなです(笑)。
 実は前々から出来あがってたんですが、ここまできたなら当日に出そうと計っておりました(爆)。
 短編二本、クリスマスネタです。

 「WINTER SONG」・・・ゼルアメ
 「ANGEL SONG」・・・ガウリナ     ―です。
 
 普段ゼルアメしか書かない奴がガウリナに手を出したもんだからヒドイ事になっておりますが(汗)、お暇でしたらどうぞ。
 
 尚今回趣向を変えて、「説明文なし台詞のみ」ではなく、「台詞なしの説明文のみ」になっております。
 できれば音のない静かな環境で読んで頂ければ、一層味が深くなるかと・・・(笑)。
 それではどうぞ皆様素敵なクリスマスをお過ごし下さい。

 水晶さな

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5267―WINTER SONG―水晶さな E-mail 12/24-00:21
記事番号5266へのコメント


 気候が比較的安定している聖王都に、珍しく雪が降った。
 テラスに積もった雪をつまみ、その冷たさに思わず笑みがこぼれる。
 けれどすぐに真顔に戻った彼女は、雪を手摺りの外に放り投げると、髪に付いた雪を払った。
 城の中からは、陽気に騒ぐ人々の声が漏れ聞こえる。
 一年に一度の聖夜祭。
 白い結晶に彩(いろど)られた風景は、その時を止めたかのよう。
 つま先からくる痺れるような寒さに顔一つしかめる事なく、アメリアは空を眺めていた。
「・・・・・・・・・」
 ちらりと室内の方を見やり、誰も自分の不在に気付いていない事を確かめる。
 小脇に抱(かか)えたフード付きのコートを羽織る。
 旅装束に用いているマントではなく、防寒用にファーの付いた真っ白なコート。
 両手には厚手の毛皮の手袋。
 コートの前をきちっと止めると、アメリアは手摺りに手を置き、ひらりと飛び越えた。

 家々には明過ぎるほど灯(とも)された灯(あ)かり。
 なのに石畳のメインストリートは、積もった雪が人の居ない様子を物語る。
 聖夜祭用にと、薄青く仕掛けが施(ほどこ)された街灯代わりの魔法の灯りがちらちらと揺れている。
 白の風景に、灯(あか)りだけが違う色を放つ。
 純粋たる世界。
 アメリアは、胸に凍(し)み通るような寒さを覚え、空を仰(あお)いだ。
 雪が、さらさらとアメリアの顔に触れていく。
 ほう、と吐いた一息が白く淡く溶けていった。

=====================

The dusk is gaining ground, lights flicker all around
黄昏(たそがれ)が訪れ、街灯があちこちで揺れてる

And as I walk the lonely streets, the snow is falling ever faster
そして私は一人孤独な道を歩いてる、雪は舞い落ちてくる

Looking to the sky, I wonder where you are,
空を見上げてみた、あなたはどこにいるんだろう?

The way you came into my life, filling every day with laughter
私の人生に入ってきて、毎日を笑いでいっぱいにしてくれたあなた

=====================

 広場まで来て、彼女は足を止めた。
 凍り付いた噴水は、雪の中に埋もれている。
 その縁のレンガの雪を払い、アメリアは腰を下ろした。
 肩に、髪に、積もった雪を、払いのけようともしない。
 どこともない空間を見つめたまま、彼女は静止した。
 体が、雪と同化していくような感覚。
 ふらりとしかけて、彼女は慌てて体制を立て直した。
 しんしんと変わらず振りつづける雪。
 冷えて行く身体。
 待ち人は来ない。
 胸中の不安を振り切るように、彼女は天を仰(あお)いだ。
 そして静かに口ずさむ。
 静寂を壊さぬよう、そっと。
 もう、誰の歌かも忘れた歌を・・・

=====================

Almost blinded by the snowflakes on my face
顔に積もった雪に、ほとんど何も見えない

Despite the chill I feel the warmth of your embrace
寒さなんて関係ない、あなたが抱き締めてくれるから暖かい

Intoxicate now, I stagger like a fool
酔わされて、私は馬鹿みたいにうかれてる

I feel that surely I could float away...
間違いなく、空を飛んでると思うぐらい・・・


I want to show you everything I see, the way I'm feeling
私が見ているもの、感じているもの、全てあなたに見せたい

I need to be with you tonight, to hold your arms around me
今夜そばに居て、その腕で抱き締めて欲しい

My love for you is deeper than the deepest snows of winter
私の愛は冬の雪よりももっとずっと深いから

The greatest gift I ever had was you.
今まで一番素晴らしい贈り物は、あなただった

=====================

 昨年はどうしていた?
 視界の中に、幻が見える。
 あのメインストリートを歩く、若い恋人達。
 その中に、自分も居た。
 『彼』と一緒に。
 何故『彼』はここに居ない?
 大切な用事があるから。
 大切な、大切な―
 痛い位冷えた手で、自分を抱き締めた。
 約束した筈。
 この日は帰ってくるって。
 約束した筈・・・。

=====================

This sparkling crystal world, this magic winter land,
きらめく水晶の世界、魔法のかかった冬の国

If I could share it all with you, and make-believe forever after
架空の永遠でも、もしあなたと分け合えたら

Like a blanket over everything is sight,
漆黒のヴェールに包まれたような光景

In the hush I hear the silence of the night
静寂の中で、私は夜の静けさに耳を澄ます

The snow has covered all the streets we walked along
雪は私達が歩いていた道を、覆いつくしてく

I hope you still remember me tonight...
今夜あなたがまだ私の事を、思い出してくれますように・・・

=====================

 自分が惨(みじ)めになるだけだとわかっているのに。
 歌が止まらない。
 諦められない。
 心の葛藤(かっとう)が決着をつけないまま、
 ―あるいはわざとつけないのか―
 歌は続く。
 雪がやんだのにも気付かずに・・・。

=====================

I want to show you everything I see, the way I'm feeling
私が見ているもの、感じているもの、全てあなたに見せたい

I need to be with you tonight, to feel you all around me
今夜そばに居て、あなたを感じていたい

My love for you is deeper than the deepest snows of winter
私の愛は冬の雪よりももっとずっと深いから

The greatest gift I ever had
今まで一番素晴らしい贈り物は・・・

=====================

 歌いながら、知らず手を組み合わせていた。
 天使の真似事かと、我ながら苦笑する。
 誰に祈ってるのか、何の為に祈ってるのか。
 わからないまま、歌い続ける。

=====================

Can't remember feeling this way before
忘れられない、この気持ちは

Do you know, do you understand what's going through my heart
知ってる? 理解できる? 私の心に何が起こってるのか

Well the way that I love you, I just hope you feel it too,
あなたを愛してるってこと、あなたもそう感じてますように

Tonight wherever you are...
今夜、あなたがどこにいたって・・・


I want to show you everything I see, the way I'm feeling
私が見ているもの、感じているもの、全てあなたに見せたい

I need to be with you tonight, to hold your arms around me
今夜そばに居て、その腕で抱き締めて欲しい

My love for you is deeper than the deepest snows of winter
私の愛は冬の雪よりももっとずっと深いから

The greatest gift I ever had was you.
今まで一番素晴らしい贈り物は、あなただった

The greatest gift I ever had was you.
今まで一番素晴らしい贈り物は、あなただった

=====================

 体は、冷えきっていた。
 指先と足先には、もう感覚がなくなる程。
 貼り付きそうな瞼(まぶた)を瞬(またた)かせて空を仰(あお)ぐ。
 満天の星空。先ほどまでのスノーシャワーはどこへやら。
「・・・・・・・・・」
 世界が変わってしまった事に不満を覚えつつ、アメリアのつま先はくるりと向きを変える。
 帰ろう。
 心が告げている。
 待って、もう少し。
 もう一つの心が叫んでいる。
 帰ろう、あの人は来ない。
 待って、もう少しだけ。
 もう少しだけ・・・。
 新雪の上に小さな足跡を二つ三つ残し、彼女は立ち止まり、振り返った。
 漆黒の闇と純白の大地と、二色に塗り分けられた世界。
 その中で、違う色を主張する『あれ』は?
 新しい足跡は増えない。
 できたばかりの足跡を、再び踏み崩して行く足音。
 夜空と、雪と、『彼』と―
 腕を伸ばした彼に、指先が触れる瞬間。
 ―ずごべしゃあっ!
 何の予兆もなく、アメリアは転んだ。
 恐らくは、寒さのせいで足が冷え、もつれたのだろう。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 しばしの静寂。
 そして、彼が吹き出す音。
 半分まで雪に埋もれた彼女を抱き上げると、雪まみれの顔でアメリアが叫んだ。
「・・・・・・!! ・・・・・・!!!!!」
 わかった、悪かったと言いたげな苦笑混じりの笑みを浮かべ、ゼルガディスが雪を払う。
 肩で息をつくまで子供のように喚(わめ)いた彼女が、息を深く吐き出すと俯(うつむ)いたまま動きを止めた。
 彼は訝(いぶか)しんで、彼女の顔を覗(のぞ)き込む。
「・・・・・・・・・・・・」
 唇を噛み締めているのは、胸を堰(せ)き切って溢れるような衝動を堪(こら)える為。
 肩が震えているのは、寒さのせいだけではない。
 どん、と胸を拳で叩かれた。
 力のないその一撃が、ある筈のない痛みを伴(ともな)って胸に突き刺さる。
 彼女の全ての言葉を、代弁しているようで。
 苦笑混じりの笑みをやめた彼が、慈(いつく)しむようにその腕で彼女を包んだ。

 静寂の夜に響く聖夜の鐘。
 額が触れ合うほど顔を寄せて、囁(ささや)かれた二人だけの言葉。
『Merry Christmas』

=====================

This is my song for you...
これは、あなたに捧げる歌・・・

=====================
BY DREAMS COME TRUE:「WINTER SONG」


 和訳は作者です。私訳入りまくりです(爆)。
 うわあん英語なんて嫌いだっ(逃走)。

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5269音のない静かな環境で読ませていただきました(^^)雫石彼方 E-mail 12/24-02:58
記事番号5267へのコメント


セリフのない、説明文のみという変わった趣向、さすがですね!さなさんにはいつも「やられた!!」と思います(笑)

さなさんの情景描写の上手さとセリフなしの演出で、透明で空気の澄みきった感じのする、とても綺麗なお話でした!もうめちゃめちゃ素敵ですよぅ!!(><)ゼルが登場したところできゅん♪としちゃいましたよ(^^)
ドリカムのWINTER SONG、私もすごく好きです。いい曲ですよねー。でも、自分で和訳するなんてすごすぎです。私は英語って凄く苦手なので、尊敬しちゃいますよ、マジで。
ガウリナの方も”来年もまた二人で来よう”っていうのがすごく二人らしくてよかったです。ところで、薬指に指輪ってことは、この二人結婚してるってことですか?それともこれから結婚するのかしら・・・?

クリスマスにいいもの読ませていただきました(^^)ありがとうございました〜v


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5276ありがとうございますっ(>_<)水晶さな E-mail 12/24-23:57
記事番号5269へのコメント


 まさか環境まで用意して下さるとは・・・(涙)。ああ嬉し泣きですホント。


>セリフのない、説明文のみという変わった趣向、さすがですね!さなさんにはいつも「やられた!!」と思います(笑)

 「台詞のみ」のお話を見ていたら、逆もアリかなーと思いまして(^_^)
 良かった成功したみたい(冷汗)。


>さなさんの情景描写の上手さとセリフなしの演出で、透明で空気の澄みきった感じのする、とても綺麗なお話でした!もうめちゃめちゃ素敵ですよぅ!!(><)ゼルが登場したところできゅん♪としちゃいましたよ(^^)

 ・・・うん、誉め過ぎです(笑)。


>ドリカムのWINTER SONG、私もすごく好きです。いい曲ですよねー。でも、自分で和訳するなんてすごすぎです。私は英語って凄く苦手なので、尊敬しちゃいますよ、マジで。

 「yahoo」の翻訳に大分お世話になりました(爆)。
 いや・・・自分でもちゃんと辞書引いたんですけどね。
 何分英語苦手なので私訳入りまくりです(爆)。


>ガウリナの方も”来年もまた二人で来よう”っていうのがすごく二人らしくてよかったです。ところで、薬指に指輪ってことは、この二人結婚してるってことですか?それともこれから結婚するのかしら・・・?

 指輪のイメージは読み手さんの想像におまかせです(^^)
 作者は一応マリッジリングというよりかはエンゲージリングのイメージで書いたんですが・・・。
 

>クリスマスにいいもの読ませていただきました(^^)ありがとうございました〜v

 プレゼントの代わりにもなりませんが、頂けるコメントは何よりのプレゼントですvv 年明け頃に又お邪魔する予定ですので、その時は宜しくお願いしますv

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5285凄いです………ゆっちぃ E-mail URL12/25-13:59
記事番号5267へのコメント

久方振りに覗いて見たらクリスマスのお話いっぱい出てて、思わず大はしゃぎのおこちゃまゆっちぃです(汗笑)
お久し振りですね、さなさんv会いたかったですー♪
クリスマスのお話、しかもゼルアメ・ガウリナ両方投稿なさっててめちゃ嬉しいですよう!!
さなさんのガウリナって初めてだーvなんだか新鮮(って、当たり前やがな)
普通と趣向をかえて『台詞なし』ってところがさなさんらしくて良いですね〜(笑)
あとビックリしたのが英訳。これ、本当にぜんっぶ自分で訳したんですか?!!
……凄い………さなさん凄すぎますよ…………
ゆっちぃなんか辞書を片手に直訳するのが精一杯なのに……(泣)

作中のアメリア、切なくてとっても一途で可愛かったですv
んっとにゼルってばいっつも待たせてばかりなんだから!(むー)

ではではでは、相変わらずの乱文で申し訳ありませんでしたι
良いものみせて頂きありがとうございましたーー♪

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5290ありがとうございますvv水晶さな E-mail 12/25-21:03
記事番号5285へのコメント


 メリークリスマスですv
 クリスマスネタはやはり皆書くんでしょう(笑)。


>久方振りに覗いて見たらクリスマスのお話いっぱい出てて、思わず大はしゃぎのおこちゃまゆっちぃです(汗笑)
>お久し振りですね、さなさんv会いたかったですー♪

 いやお久しぶりです。忘れかけた頃にふらりと現れて小説残して去っていきますから(笑)。
 年明けてから又連載物なるものを置いて行く予定ですので宜しく(笑)。


>クリスマスのお話、しかもゼルアメ・ガウリナ両方投稿なさっててめちゃ嬉しいですよう!!
>さなさんのガウリナって初めてだーvなんだか新鮮(って、当たり前やがな)
>普通と趣向をかえて『台詞なし』ってところがさなさんらしくて良いですね〜(笑)

 かなーり無謀な事してしまいました(汗)。ガウリナがあんな大人しくていいのかー!?って感じで。台詞なしではツライ組み合わせでしたから(苦笑)。


>あとビックリしたのが英訳。これ、本当にぜんっぶ自分で訳したんですか?!!
>……凄い………さなさん凄すぎますよ…………
>ゆっちぃなんか辞書を片手に直訳するのが精一杯なのに……(泣)

 いやまぁ・・・日本語版の「雪のクリスマス」がほとんどベースにもありましたが・・・。でも言葉的には「WINTER SONG」の方が綺麗で好みなんですよねvv
 洋楽の和訳は初めてでしたが・・・和訳・・・できないと困る年だし(爆)。
 でももうホント英語苦手なんで時間かかりました。独語のがまだ楽しいです(逃避とも言う)。


>作中のアメリア、切なくてとっても一途で可愛かったですv
>んっとにゼルってばいっつも待たせてばかりなんだから!(むー)

 「WINTER SONG」自体切ない曲だから、シチュエーションに悩みました(^^;) 
 結局最後には魔剣士さん登場させたんですけどね(笑)。


>ではではでは、相変わらずの乱文で申し訳ありませんでしたι
>良いものみせて頂きありがとうございましたーー♪

 いえいえ、駄文ですから(日本人名物謙遜)。ゆっちぃサンのHPにあった「聖なる夜に」もかなり心にヒットしておりました(こんな所に書くんじゃねーよ)。
 それでは又お会いしましょう♪

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5268―ANGEL SONG―水晶さな E-mail 12/24-00:24
記事番号5266へのコメント


 街並みは静かに、白に彩(いろど)られていく。
 白とは違う色を、街灯の灯(あか)りだけが主張する。
 囁(ささや)きともとれる人々の―といってもほとんどが二人組―ざわめきが、街の真中の大聖堂に移動していく。
 その中で宿屋の食堂兼酒場には、まだ一人の娘が相手を待っていた。
 結い上げてもまだ垂れる栗色の髪が肩に擦れる。
 彼女によく映(は)える深紅のドレス。防寒の為に厚いショールで肩を覆う。
 空になったワイングラスをもてあそぶように指先で揺らしながら、何度目かわからない溜息をついた。
 ほんのり色づいた頬、憂(うれ)いを帯びた横顔。誰もが横を通り過ぎる度(たび)に振り返る―
 待ち続けてやっと、階段を降りる軋(きし)む音が響いた。
 喜びを表情に出さないよう、つとめて冷静に彼女がそちらを向く。
「・・・・・・」
 『彼』が、降りてきた。金色の髪に、優しい水色の瞳。
 ・・・いつもの、普段と変わらない格好で。
 そのまま、彼女の姿を認めると片手を上げる。
 いつもの、まるでこれから暇潰しの散歩にでも行くような。
「・・・・・・」
 彼女がドレスを軽くつまみながら早足で近寄り―
 ごしゃあ。
 右ストレートが決まり、彼が綺麗に弧(こ)を描いて吹っ飛んだ。

==========================

  霧の架かる空に 鐘は鳴り渡り
  夜という優しき 遠い空の恋人へ
  溜め息は今宵も 雪に閉ざされし
  薔薇の鎖を引く 聖らかな手 触れたくて

==========================

 『彼』が彼女に部屋に放り込まれてから、更に時間が過ぎて、
 ようやく聖夜に相応しい服装に着替えた彼が再び降りてきた。
 しばし首を傾(かし)げ、品物を見定めるように彼を見つめていた彼女が、やがて頷(うなず)く。
 扉の方を指差した彼女に、今度は彼が左腕を差し出した。
 小さく笑ってから、彼女が腕を絡(から)める。
 通りに出た彼らは、同じように道を行く人々の中に混じ入った。

==========================

  the angel song・・・囁いて この耳元に
  天使の歌声が この空を焦がすように
  せつなくて あなたのために
  空を見上げる度 雪の景色を想った
   「忘れない・・・」

==========================

 街の真中に聳(そび)え立つ大聖堂。鐘塔に居る機械仕掛けの天使が聖なる鐘を鳴らす。
 門前でそれを見つめていた彼女は、一年前の同じ日の事を思い出していた。
 同じ日、同じ時に、二人でここに来たあの日。
 天使の鳴らす鐘に目を奪われた。
 今宵も又、同じ場所で、
 同じ時を過ごす。同じ光景を分かち合う。
 彼と共に・・・

==========================

  翼ある手紙よ すべて預けよう!
  寒いこの夜空に 赤い月とイヴの鐘
  the angel song・・・逢いたくて 空を見上げた
  あなたがくれた羽雪(はね) 今も遠い窓辺に
  想い出は 美しいけど
  やがて溶けてしまう 雪になるなら早く
  つかまえて 抱きしめて欲しい・・・year

  数知れぬ想いを乗せ流れてく・・・

==========================

 絡(から)められた手に、少し力がこめられる感触。
 確かめるように、実感できるように、
 彼の存在を。
 表情を緩(ゆる)めた彼が、彼女の髪についた髪を払った。
 これ以上冷えない内に、と、大聖堂の中へと促(うなが)す。
 少し名残(なごり)惜しそうに天使と鐘を振り返った後、彼女は歩き出した。

==========================

  囁いて この耳元に
  天使の歌声が この胸を焦がしてく!

  蒼白い この雪空に
  X’masを告げる 天使の鐘が響く
  ここに居て 聖なる星の下・・・
  せつなくて 空を見上げた
  いつか見せてくれた 雪の景色を想った
  忘れない

==========================

 聖母像の前で、恋人達が誓いを上げる。
 もう一度、又翌年、共にこの地を訪れる事を。
 二人も又、聖母像と対面する。
 重ね合わせた左手に、彼女は緊張した面(おも)持ちで誓いの言葉を紡(つむ)ぐ。
 対照的に彼が、優しい笑みを浮かべたまま口を開いた。
 しばし静寂。
「・・・・・・」
 彼女が軽く彼の額を拳で突いた後、耳元に小声で誓いの言葉を囁(ささや)く。
 思い出したように頭を掻(か)いた彼が、今教えられたばかりの言葉を口にした。
 憎めない笑顔で。
「・・・・・・」
 彼女が苦笑した。
 重ね合わせた左手の、薬指にはめられた指輪が軽く触れて澄んだ音をたてる。
 再び腕を組んだ彼らは、聖母像に背を向けて歩き出した。
 長く居過ぎると、感動が薄れてしまう。
 又来年、同じ日、同じ時に二人で。
 白い道を歩いて、誓いをたてて、
 帰りに又、空を見上げて―

==========================

  「忘れない・・・」

==========================
 「angel song−イヴの鐘−」 song by ≪the brilliant green≫

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5270同じく音のない場所で読みましたっ桐生あきや 12/24-06:06
記事番号5268へのコメント


 お久しぶりです。桐生です。
 お元気でしたか?

 さなさんからのクリスマスプレゼント素敵すぎです!
 あんなどうでもいいものアップしちゃっう私とは大違い(笑)
 せりふなしの描写のみって、すごく良いですね。描写力がなければできることじゃないです。見習いたいわ(^−^)
 雪の降るなかって、確かに静かですもんね。
 クリスマスの雰囲気たっぷり味わわせてもらいました♪

 ブリリアントグリーンの「angel song−イヴの鐘−」
 可愛いですよね!
 聞いて私も使えないかと思っていたんですが、さなさんが素敵な小説をプレゼントしてくれました。わーい。

 それでは、どうか良いクリスマスを。

 桐生あきや 拝

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5278ありがとうございます〜(>_<)水晶さな E-mail 12/25-00:13
記事番号5270へのコメント


 毎日緑茶飲んでいるおかげか風邪もひきません、水晶さなです。
 元気でバイト三昧です(苦笑)。


> さなさんからのクリスマスプレゼント素敵すぎです!
> あんなどうでもいいものアップしちゃっう私とは大違い(笑)
> せりふなしの描写のみって、すごく良いですね。描写力がなければできることじゃないです。見習いたいわ(^−^)
> 雪の降るなかって、確かに静かですもんね。
> クリスマスの雰囲気たっぷり味わわせてもらいました♪

 ああ・・・あんなのがプレゼントになるんですか(恐縮)。
 あきやサンの児童劇(笑)も充分楽しかったですv(・・・ってコメント書いてなかった!!←爆)
 描写力? あるワケないじゃないですかv 歌に頼ってるんですヨvv(爆)
 

> ブリリアントグリーンの「angel song−イヴの鐘−」
> 可愛いですよね!
> 聞いて私も使えないかと思っていたんですが、さなさんが素敵な小説をプレゼントしてくれました。わーい。

 ガウリナで何か対みたいにできないかなーと思っていたらふと浮かびました。
 いつもゼルアメしか書いていなかったので意外と難しかったです(汗)。
 コメントのプレゼントありがとうございましたv
 貴女も楽しいクリスマスをお過ごし下さい。

 水晶さな 拝

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