◆−LITTLE MERMAID 1−水晶さな(10/6-00:16)No.4494
 ┣やたっ!一番のりだぁっ♪−ゆっちぃ(10/6-00:44)No.4495
 ┃┗おめでとうございます(笑)。−水晶さな(10/7-00:35)No.4504
 ┣2番目か・・・・・−桜井  ゆかり(10/6-23:26)No.4502
 ┃┗いやいやそれでもおめでとうございます(笑)。−水晶さな(10/7-00:41)No.4505
 ┣LITTLE MERMAID 2−水晶さな(10/7-23:36)No.4509
 ┃┣をを、また一番っ?!−ゆっちぃ(10/8-01:08)No.4511
 ┃┃┗いつもありがとうございます〜vv−水晶さな(10/8-22:52)No.4516
 ┃┗はじめまして。2番目ですぅ!−ringo(10/9-01:26)No.4517
 ┃ ┗初めまして〜vv−水晶さな(10/9-23:36)No.4522
 ┣LITTLE MERMAID 3−水晶さな(10/9-23:41)No.4523
 ┣LITTLE MERMAID 4−水晶さな(10/9-23:52)No.4524
 ┃┗一気に2個もっっ♪−ゆっちぃ(10/10-00:19)No.4525
 ┃ ┗頑張りましたよ♪−水晶さな(10/10-22:33)No.4530
 ┣LITTLE MERMAID 5−水晶さな(10/12-19:03)NEWNo.4558
 ┗LITTLE MERMAID 6−水晶さな(10/12-19:06)NEWNo.4559
  ┣にーさんがあっっ!!−ゆっちぃ(10/13-00:14)NEWNo.4565
  ┃┗クラゲにいぃっ!!(笑)−水晶さな(10/14-00:18)NEWNo.4579
  ┗水族館でクラゲ展開催中!!!−桜華 葉月(10/13-02:06)NEWNo.4568
   ┗ク、クラゲ展!?−水晶さな(10/14-00:25)NEWNo.4580


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4494LITTLE MERMAID 1水晶さな E-mail 10/6-00:16


 
 性懲りもなく又やってきてしまいました(爆)。
 前回オリキャラ混ぜ過ぎて満足なゼルアメが書けなかったので、今回二人中心に書いております。しかも初パラレルでかなり反応が恐い(小心者←嘘つけ)。
 ディズニーオンアイスの「リトル・マーメイド」を見てきまして・・・影響されました。でもそのままではつまらないので一応アレンジを加えたつもりです。
 お暇でしたら見てやって下さい。

=====================================

 それは遠い昔話。
 遥か遠い海の底では、海の世界があるという。
 陸とは違う生活を営む美しい人魚達の中に、一人陸の青年に憧れた少女がいた。
 『アリエル?』
 いいえそれは遠い語り唄。存在したけれどもう伝承歌の中の恋物語。
 けれど彼女が海の世界を変える掛け橋になったのは確かな事実。
 これから語られるお話は、そんな彼女と同じ道を歩んだ海の娘。
 たぐいまれに美しいその少女の名は、『アメリア』

「平穏と静けさに感謝を」
「今日も海の王は穏やかでおられる」
 波打ち際の海岸で、浜辺に流れ付いた海藻を拾う人々が感謝の言葉を口にする。
 日に焼けた肌。顔のしわは、笑みを浮かべると更に深く沈み込む。
 それでも人々は幸せそうだ。
 そんな彼らからは見えない岩陰に、一人の少女が貼り付いていた。
 肩までの艶やかな黒髪に、海を映したかのような蒼い双眸。
 まだ幼さを残した顔立ちながらも、誰もが溜息をもらすほどの美麗な姿。
 少女は皆が海岸から引き上げたのを見てとると、海岸に隣接した岩に登り下半身を水から完全に引き上げた。
 少女の腰から下は魚だった。
 眩し過ぎる太陽に右手を捧げるように上げる。
「暖かな陽の光に感謝しますアポロン様。願わくば私にその恩恵を」
 陽の光に当てられた魚の部分に、尾ひれから丁度縦に二等分したように割れ目ができた。
 鱗は姿を消し、色は上半身と同じく肌色に。
 尾ひれが完全に人間の足と同じになると、彼女は確かめるように足首を2、3度動かした。
「鱗は残って・・・ませんね?」
 丁寧に調べた後、ポーチに入れていた薄布の服をさっと取り出す。
 太陽に向けると、恩恵を受けて一瞬で乾いた。
 慣れたように素早く着ると、海岸へと降り立つ。黄色いワンピースが風になびいた。
 最初は足がふらつくのはしょうがない。
 それでも大地を踏み締め、海を眺める。
 それから大きく伸びをした。
「大自然に感謝ですっ」

 変化ではなく、進化。
 ここ数百年で、人魚は太陽神の恩恵を受け陸に立つ事を覚えた。
 かといってそう簡単に陸に上がっていく仲間などそうはいなかったのだが・・・
 海神の娘アメリアは違った。
 与えられたものは有効に活用するべきだと、海が穏やかな日は必ず陸にあがる。
 体がよく水分を求めてしまうのは困りものだが、それでも陸には海にはない楽しさがある。
 色とりどりの花とか、空を飛ぶ鳥とか、活気のある街だとか。
 最初はそれらに目を奪われ、一日中景色を眺めて過ごしたものだ。
 慣れた今は、少し目的が違う。
 もう既に覚えた海岸近くの街中を、ためらう事なくずんずんと進む。
 街の向こうには、小規模ながらも造形の美しい宮殿。
 正面から入らずに、わざと迂回して周囲の林に入り込んだ。
 しばらく外壁沿いに歩いた所で、一際大きい樫の木によじ登った。
 眼前に見えてくるのは、二階のテラス。
 そこで一人で優雅にお茶をしていた青年が、彼女に気付いて軽く手を上げた。
「ゼルガディスさんおはようございますっ♪」
「今、茶を入れた所だ」
 わあい、とアメリアが軽くテラスを飛び越えて中に入る。
 紺青色の短い髪を、前髪だけは右目を隠すようにさらりと垂らしている。
 深い赤色の双眸に、端整な顔立ち。服装は紺地に金の刺繍入りの王族衣装。
 王族名ではエリック7世。それとは違い親から与えられた個人名はゼルガディス。
 小国とはいえど、彼は王族であった。
 父は存命だが、老衰の為既に隠居と同じ生活を送っている。実際に政治の指揮をとっているのは彼と彼の信頼のおける臣下達である。
 多忙な毎日の中でも、せめて自分だけの時間は失わないようにと朝の二時間だけを自分一人で過ごす事を日課にしていた。
 本を読んだり、テラスでお茶をしたりと様々。そんなある日に、木登りをしている彼女を見付けた。
 聞けばこの辺りは初めてで、迷い込んでしまい上から見ればわかるだろうと木に登ってみたとか。
 この御時世女性は大人しく慎ましやかにがモットーである。思わず笑ってしまった。
 これも何かの縁と、お茶を一緒にどうかと勧めたのが始まりだった。
 それ以来アメリアはゼルガディスになつき、ほぼ毎日のように通い詰めである。
 ただし自分が海の娘であることは明かしていない。
 身の危険は自分で守れと散々海神から忠告を受けたのと、もう一つ。
 『人魚の血肉は陸の人間には薬となるらしい』という噂が、どうやら本当のようだと知ったからである。
 嫌でも聞こえてくる街中の会話。ここ近辺は人魚達の住処だから目撃話も多い。
 陸に上がれるようになったとはいえ、陸と同化した訳ではない。人間達が心暖かに受け入れてくれた訳でもない。
 ただ選択肢を一つ増やされただけである。
「今日はアールグレイですかぁ。美味しいですぅ」
 海では味わえない陸の味。アメリアが嬉しそうに紅茶を飲み干した。
 そんな様子をゼルガディスは微笑ましげに眺めている。
 いつもと同じ二人だけの茶会。
 だが、今日は少しだけ違った。
「そういえば、街の人達が今度『たいかんしき』が行われるって言ってたんですが、何なんですか?」
 海の娘は陸の行事にはうとい。
「『戴冠式』だアメリア。俺が正式な王になるんだよ」
「王様に?」
「ああ。父王がもう政治の指揮を取れないからな。年も年だし、3日後に式をあげて正真正銘の王になるつもりだ」
「でも、『せいじ』はほとんどゼルガディスさんがしてるじゃないですか」
「だが今のままでは父王の『代理』だ。務めを果たすならケジメをつけんとな」
「・・・ゼルガディスさん、これまで以上に忙しくなっちゃうんですか?」
 しゅんとした顔になるアメリアに、ゼルガディスが軽く手を横に振った。
「幸いにも家臣が優秀でな。それほどばたばたする必要はない」
 が、言い終えた後ふとゼルガディスが視線を落とした。
「・・・ただ」
「ただ?」
 ゼルガディスが前髪の下の右目の辺りに手をあてた。
「戴冠式となるとな・・・冠の為にこの前髪をあげなきゃならん」
「そういえば、いつも隠してますね。どうしたんですか?」
 覗きこもうとしたアメリアを、ゼルガディスが静かに手で制した。
「酷い傷跡なんだ。見ない方がいい」
「・・・傷?」
「昔、航海中に海の魔物に襲われてな・・・一命は取り止めたが、傷跡が癒えない」
 初めて聞いた事実に、アメリアが言葉を詰まらせる。
「人魚の血液を飲めば、たぐいまれな再生力にあやかれるという噂も聞いたんだが・・・いや、ただの愚痴だな。気にしないでくれ」
 ゼルガディスが苦笑しながら紅茶を飲み干した。
 アメリアは、笑う事ができなかった。

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4495やたっ!一番のりだぁっ♪ゆっちぃ E-mail 10/6-00:44
記事番号4494へのコメント


お久し振りですゆっちぃです〜☆
LITTLE MERMAID読みましたvvvんもうもぅ、すっっっごい!ツボでしたぁっ!!!
私のこころにクリティカルヒット☆さなさん(←図々しいι)の作品てばホントに素敵です!
ディズニーの作品大好きで、それをぜるあめに当てはめて考えるのもすっごい好きなので(をい)『リトル・マーメイド』をさなさんが書いてくださってすんごく嬉しいです〜〜〜〜(うるり)
続き、楽しみにしてますねっ♪



> 前回オリキャラ混ぜ過ぎて満足なゼルアメが書けなかったので、今回二人中心に書いております。
   前回のお話もとっても良かったですよ?オリキャラも素敵ですしv
   ―――――って、私ってば感想書いてないっっ?!!あぁっお馬鹿過ぎっ(滝汗)

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4504おめでとうございます(笑)。水晶さな E-mail 10/7-00:35
記事番号4495へのコメント


>お久し振りですゆっちぃです〜☆

 こちらこそお久しぶりです〜(^^ゞ


>LITTLE MERMAID読みましたvvvんもうもぅ、すっっっごい!ツボでしたぁっ!!!
>私のこころにクリティカルヒット☆さなさん(←図々しいι)の作品てばホントに素敵です!
>ディズニーの作品大好きで、それをぜるあめに当てはめて考えるのもすっごい好きなので(をい)『リトル・マーメイド』をさなさんが書いてくださってすんごく嬉しいです〜〜〜〜(うるり)
>続き、楽しみにしてますねっ♪

 私もディズニーめっちゃ好きなんですよ〜っ!!(ジタバタ)
 でもやはりそのままでは先が読めてしまうので、一応本人なりにヒネリを加えたつもりです(あくまでつもり)。なので展開が少し違います。楽しんで頂けると嬉しいです♪


>> 前回オリキャラ混ぜ過ぎて満足なゼルアメが書けなかったので、今回二人中心に書いております。
>   前回のお話もとっても良かったですよ?オリキャラも素敵ですしv
>   ―――――って、私ってば感想書いてないっっ?!!あぁっお馬鹿過ぎっ(滝汗)

 ああでもその一言だけで癒される・・・(うっとり←バカ)。
 とりあえず頑張って書くつもりなんで見捨てないでやって下さいっ☆(爆)

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45022番目か・・・・・桜井 ゆかり E-mail 10/6-23:26
記事番号4494へのコメント

> 性懲りもなく又やってきてしまいました(爆)。
> 前回オリキャラ混ぜ過ぎて満足なゼルアメが書けなかったので、今回二人中心に書いております。しかも初パラレルでかなり反応が恐い(小心者←嘘つけ)。
お久しぶりです!さなさん。
この頃自分も来てなくて・・・・・・・・・・・・・
それにしても、『リトル・マーメイド』から話を取るなんて・・・・・・・
考え付かなかった・・・・・・・・・・




> 眼前に見えてくるのは、二階のテラス。
> そこで一人で優雅にお茶をしていた青年が、彼女に気付いて軽く手を上げた。
>「ゼルガディスさんおはようございますっ♪」
>「今、茶を入れた所だ」
> わあい、とアメリアが軽くテラスを飛び越えて中に入る。
> 紺青色の短い髪を、前髪だけは右目を隠すようにさらりと垂らしている。
> 深い赤色の双眸に、端整な顔立ち。服装は紺地に金の刺繍入りの王族衣装。
> 王族名ではエリック7世。それとは違い親から与えられた個人名はゼルガディス。
> 小国とはいえど、彼は王族であった。
ゼルガディスさんが王族か・・・・・・・・・・・・・・
私も、ロミオとジュリエットを借りてきたからそれを元にして話作ろうかなぁ〜



> ゼルガディスが前髪の下の右目の辺りに手をあてた。
>「戴冠式となるとな・・・冠の為にこの前髪をあげなきゃならん」
>「そういえば、いつも隠してますね。どうしたんですか?」
> 覗きこもうとしたアメリアを、ゼルガディスが静かに手で制した。
>「酷い傷跡なんだ。見ない方がいい」
>「・・・傷?」
>「昔、航海中に海の魔物に襲われてな・・・一命は取り止めたが、傷跡が癒えない」
> 初めて聞いた事実に、アメリアが言葉を詰まらせる。
>「人魚の血液を飲めば、たぐいまれな再生力にあやかれるという噂も聞いたんだが・・・いや、ただの愚痴だな。気にしないでくれ」
> ゼルガディスが苦笑しながら紅茶を飲み干した。
> アメリアは、笑う事ができなかった。
確かに笑うしかないですね。正体分かったらどうなるんでしょうか・・・・・・・(考え中)
・・・・・・・・・・・・・(考え中)
・・・・・・・・・・・・・・わかんないや・・・・・・・・・(断念)


さぁてと、こんな感想(?)ですが気にしないで下さい。
続きを期待しています。
では〜☆



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4505いやいやそれでもおめでとうございます(笑)。水晶さな E-mail 10/7-00:41
記事番号4502へのコメント


>お久しぶりです!さなさん。
>この頃自分も来てなくて・・・・・・・・・・・・・
>それにしても、『リトル・マーメイド』から話を取るなんて・・・・・・・
>考え付かなかった・・・・・・・・・・

 はぅあ、たまたまディズニーオンアイスを見に行って妄想が沸き立ってしまったんですが(笑)。でも何だかタイトルパクっただけで内容は違うみたいな気がしてきました(爆)。
 

>> 眼前に見えてくるのは、二階のテラス。
>> そこで一人で優雅にお茶をしていた青年が、彼女に気付いて軽く手を上げた。
>>「ゼルガディスさんおはようございますっ♪」
>>「今、茶を入れた所だ」
>> わあい、とアメリアが軽くテラスを飛び越えて中に入る。
>> 紺青色の短い髪を、前髪だけは右目を隠すようにさらりと垂らしている。
>> 深い赤色の双眸に、端整な顔立ち。服装は紺地に金の刺繍入りの王族衣装。
>> 王族名ではエリック7世。それとは違い親から与えられた個人名はゼルガディス。
>> 小国とはいえど、彼は王族であった。
>ゼルガディスさんが王族か・・・・・・・・・・・・・・
>私も、ロミオとジュリエットを借りてきたからそれを元にして話作ろうかなぁ〜
>
 何だか逆ってのも面白いですよね〜。ロミジュリ(訳すな)? ああっいいなロミジュリ。楽しみにしてます(オイ)。


>> ゼルガディスが前髪の下の右目の辺りに手をあてた。
>>「戴冠式となるとな・・・冠の為にこの前髪をあげなきゃならん」
>>「そういえば、いつも隠してますね。どうしたんですか?」
>> 覗きこもうとしたアメリアを、ゼルガディスが静かに手で制した。
>>「酷い傷跡なんだ。見ない方がいい」
>>「・・・傷?」
>>「昔、航海中に海の魔物に襲われてな・・・一命は取り止めたが、傷跡が癒えない」
>> 初めて聞いた事実に、アメリアが言葉を詰まらせる。
>>「人魚の血液を飲めば、たぐいまれな再生力にあやかれるという噂も聞いたんだが・・・いや、ただの愚痴だな。気にしないでくれ」
>> ゼルガディスが苦笑しながら紅茶を飲み干した。
>> アメリアは、笑う事ができなかった。
>確かに笑うしかないですね。正体分かったらどうなるんでしょうか・・・・・・・(考え中)
>・・・・・・・・・・・・・(考え中)
>・・・・・・・・・・・・・・わかんないや・・・・・・・・・(断念)

 諦めが早い!?(爆笑)


>さぁてと、こんな感想(?)ですが気にしないで下さい。
>続きを期待しています。
>では〜☆

 一応足りない脳味噌ヒネって普通の昔話では終わらないよう悪戦苦闘しております。御期待に沿える確率はかなーり低いですが頑張りますね(笑)。

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4509LITTLE MERMAID 2水晶さな E-mail 10/7-23:36
記事番号4494へのコメント


 アメリアは人目がない事を確認して、岩の上から勢いよく海の中へ飛び込んだ。
 海水に触れた途端に足が魚のそれへと姿を変える。
 深く深く潜りながら、アメリアは今日の出来事を頭の中で繰り返していた。
『人間にそう簡単に正体をバラすんじゃないわよ。面白くな・・・とと、危険なんだから』
 年の離れた姉はそう自分に忠告した。
(じゃあ『たまたま手に入れました』って言って渡すのは?)
 血液を提供するとしたら自分しかいない。
 手首に包帯を巻いて『たまたま』などと言える訳がない。
「・・・バレバレですぅ」
 ゼルガディスの事を信用していない訳ではない。
(でも・・・)
 やはりまだ恐い。
 陸の人間を完全には信じられない。
 優しげな表情の中で、時折見える赤い瞳を何故か恐ろしく感じた事もある。
(怯えてるだけなのかな、それとも・・・信じていないのかな)
 自問自答しても答えは出ない。
 う〜と唸ったと同時に、頭上から雷鳴がとどろいた。
「えっ・・・雷!?」
 急激に天候が変化していた。
「アポロン様の機嫌が悪いんだわ!!」
 急いで家へと向かう。
 雷自体は恐くないが、雷雨と風のせいで波が強くなると泳げなくなってしまう。
 焦る目の前に、あらがえない水の流れが押し寄せた。
「・・・・・・!!!!」
 指先を動かす事もできない。
 アメリアはそのまま、水の勢いのままに海の奥深くへと流されて行った。

 ・・・・・・・・・・・・。
 アメリアは、ゆっくりとうつぶせの状態から上半身を起こした。
 海底の砂が埃のように舞い上がり、視界を濁らせる。
 流れに巻き込まれて、そのまま気を失ってしまったらしい。
 体のあちこちがまだ痛むので、仰向けになってそのまま痛みがひくのを待った。
 海面は見えない。どうやらかなり深い所まで押し流されたようだ。
 ここまで深海に潜ると、視界はきかなくなるし生物も可愛くないものが多い。あまり好きではない。
「・・・早く、帰らなきゃ」
 急に不安になり、まだ体は痛むが尾ひれをくねらせた。ふわりと体制を変える。
 光の届かぬ深海には、大昔の怪物がいると聞かされた。
 誰か高名な人物がそれを捕まえてその場所に縛り付けたというが、封印ではないので近付くのは危険だとか。
 しんとした深海。アメリアがぶるっと身を震わせた。
 早く帰ろうと腕を伸ばしかけた時、耳がかすかに響く音をとらえた。
 にぶく、重い、鎖のからみ合うような音。
「リ、リ、リ、リヴァイアサン・・・?」
 怪物の名を口にしてしまい、思わず口を押さえた。
 ようやく薄闇に慣れてきた目は、確かに岩にからみつく巨大な鎖を見てしまった。
 だが、恐ろしく巨体な竜の姿だと聞いたが、その鎖に縛られた生物はあまりにも小さかった。
 一般の人間と同じぐらいの。
「太陽神の恵みよ・・・深淵なる闇に一筋の光明を与えたまえ・・・ライティング」
 差し出した右手の手の上に、熱を伴わない発光球が出現する。
 岩の方へ軽く放り投げる。鎖の真ん中にいる生物を照らし出した。
 『彼』はまぶしそうに顔をそむけた。
「・・・え?」
 それは竜などではなかった。人間でもなかった。
 髪は銀に輝く針金。肌は青白い岩。衣装は長い年月を思わせるようにずたぼろに擦り切れている。
 十字を傾けたようにクロスする太い鎖が、彼の胴体を岩に固定させている。
 手足は自由だが、手かせ足かせが付いていてやはり鎖が岩へとつながっていた。
「・・・しい」
「え? ええ?」
 まさか言葉を発するとは思っていなかったので、アメリアが対応に困っておろおろした。
 『彼』はもう一度大きな声量で言う。
「まぶしいと言った。このうざったいのをどけろ」
「えっああっゴメンナサイっ」
 慌ててライティングの光を呼び戻す。
 青年が再び首を垂らし、元の体制に戻った。
 死んでいるようにも見えるその姿。
「あの・・・」
「・・・」
「あの・・・フジツボさん・・・」
 ごわしゃ。
 青年が頭を後ろの岩に打ち付けた。
「誰がフジツボだああっ!!!?」
「ああああゴメンナサイィィ!!!」
 アメリアが腕で顔を隠すようにして叫ぶ。
「だ、だってどう見てもリヴァイアサンには見えないし、岩にくっついてるからフジツボさんが進化したのかと・・・」
「勝手に推測して勝手に名前を付けるな!!」
 手をわななかせて怒っているので鎖がじゃらじゃらと音をたてた。
「・・・リヴァイアサンじゃないんですね?」
「何だか知らんが俺の名はそんなじゃない」
「じゃあ、お名前は?」
 しばしの静寂の後、青年が口を開いた。
「・・・ゼル。フルネームは覚えていない」
 アメリアが目をしばたたかせた。
 思わず危険も忘れて近寄り、がっと肩をつかむ。
 そのままじっと彼の顔を見つめた。
「おい・・・」
(似てる・・・ゼルガディスさんと同じ顔・・・)
 いきなり肩をつかみ、じっと人の顔を見つめたかと思うと急に戸惑ったような表情になる。
「何なんですか一体!?」
「いきなり人の肩をつかんでワケのわからん質問をするな!」
 怒られて、今頃気付いたようにアメリアが慌ててゼルから離れた。
 ゼルガディスとでさえここまで距離をせばめた事はないというのに。
 内心はまだドキドキしていたが、それでも彼の事が気になった。
 少し間に距離をおき、目の高さを合わせて問いかける。
「ゼルさん、どうして貴方はここにいるんですか?」
 ゼルが面倒臭そうに返答する。
「知らん、忘れた。もう昔の話だ。どうでもいいがさっさと帰ってくれ。俺は見世物じゃない」
「お腹空いた時とかどうしてるんですか?」
「腹は減らん。いいから帰れと−」
「背中がかゆくなった時は?」
「・・・お前はなぁ」
 ゼルが呆れたように溜息をついた。
「俺が恐くないのか?」
 至極最もな質問。
「恐くないです。瞳が優しい色をしてます」
 きっぱりと、アメリアが言い切った。
 深くて吸い込まれそうな鳶色の瞳。その人物を判断する時に、瞳は一番の材料になる。
「・・・」
 ゼルが反応を返せないでいると、アメリアがゼルを縛り付ける鎖に目線を移した。
 岩肌とはいえ、じかに巻き付く鎖は明らかに彼を傷つけている。
「ゼルさん、この鎖取れないんですか?」
「取れるものならとっくに取っている。普通の力じゃ無理だな」
「・・・んん」
 アメリアが腕組してうなった後、急にぽんと手を打った。
 もっとも水中なので音は出ないが。
「知り合いに頼りになる人がいるんです。相談してみましょう! 明日になっちゃいますけどいいですよね?」
「・・・変な奴だなお前は。普通初めて出会った奴にそこまでするか?」
 アメリアがびしっと人差し指を突き付けてきた。
「『変な奴』じゃありません! 私にはアメリアっていうちゃんとした名前があるんです!!」
「人のことを『フジツボ』だと言ったクセに」
「あっあれはまだゼルさんがどういうヒトだかわからなかったからですっ!」
 くるりと向きを変え、一人でうんうんと頷く。
「でわ又明日っゼルさん!」
 首だけ後ろを向いてにぱっと笑うと、泳ぎが早いのですぐに見えなくなった。
「・・・つくづく変な奴だ」
 ゼルがその後を見送って、ぽつりと呟いた。

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4511をを、また一番っ?!ゆっちぃ E-mail 10/8-01:08
記事番号4509へのコメント


今晩は、ゆっちぃですvまたもや一番に来ちゃいました☆うれしーvvv
ではでは、感想のほう行きますね〜♪


『LITTLE MERMAID 2』、UP早くて嬉しいですv
おまけに予想もしてなかった急展開で胸わくわくです〜♪


>「太陽神の恵みよ・・・深淵なる闇に一筋の光明を与えたまえ・・・ライティング」
 さなさんのオリジナルの呪文、毎回すんごく楽しみだったりします(^^;)
 素敵なんですもの、だってvv今回のライティングもいいですねぇ……(ほぅ)

に、してもしても!まさか岩肌ばーぢょん(笑)の魔剣士さんが登場なさるとは、夢にも思いませんでした!!
陸のほうのおうぢさまやってる魔剣士さんはどうなっちゃうんでしょう?
姫も、ゼルガディスさんが2人いるなんて大変ですねぇ(笑)

フジツボさんには笑わせて頂きましたvドラゴンクッキングの回、思い出しちゃったです。
あれは……怖かったです、ホントに(泣)
蹴飛ばした姫の気持ち、わかります。一番かあいそうなのはゼルなんですけどね(^^;)


ではでは。なんだか最後のほう、違う方に走っちゃってすみませんでしたι
『LITTLE MERMAID 3』、楽しみにしてますね♪

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4516いつもありがとうございます〜vv水晶さな E-mail 10/8-22:52
記事番号4511へのコメント


>今晩は、ゆっちぃですvまたもや一番に来ちゃいました☆うれしーvvv
>ではでは、感想のほう行きますね〜♪

 こんばんはーコメントありがとうございますvv やっぱり書いてて反応を頂けるのが一番の励みになりますvv


>『LITTLE MERMAID 2』、UP早くて嬉しいですv
>おまけに予想もしてなかった急展開で胸わくわくです〜♪

 おお、頑張った甲斐があった(嬉し泣き)。
 脳味噌フル活動させてヒネりまくってます。収集つくのか自分!!(爆)


>>「太陽神の恵みよ・・・深淵なる闇に一筋の光明を与えたまえ・・・ライティング」
> さなさんのオリジナルの呪文、毎回すんごく楽しみだったりします(^^;)
> 素敵なんですもの、だってvv今回のライティングもいいですねぇ……(ほぅ)

 呪文考えるのが好きなんですよ〜v(変なシュミ)
 多分1話ごとに1回は出てくると思うので、探してやって下さい(笑)。


>に、してもしても!まさか岩肌ばーぢょん(笑)の魔剣士さんが登場なさるとは、夢にも思いませんでした!!
>陸のほうのおうぢさまやってる魔剣士さんはどうなっちゃうんでしょう?
>姫も、ゼルガディスさんが2人いるなんて大変ですねぇ(笑)
>フジツボさんには笑わせて頂きましたvドラゴンクッキングの回、思い出しちゃったです。
>あれは……怖かったです、ホントに(泣)
>蹴飛ばした姫の気持ち、わかります。一番かあいそうなのはゼルなんですけどね(^^;)

 やはり魔剣士さんは岩肌バージョンも出さないと(笑)。
 「LITTLE MEAMAID」で書こうと決めた時からこのネタだけは入れようと思ってました。
 フジツボは・・・その通りアニメ版のドラゴンクッキングにちなんでます♪ しかしあん時の姫の攻撃はすさまじかったっす(汗)。


>ではでは。なんだか最後のほう、違う方に走っちゃってすみませんでしたι
>『LITTLE MERMAID 3』、楽しみにしてますね♪

 いえいえ貴重なコメントを頂いてホント嬉しい限りですvv
 楽しみにして下さってありがとうございますvv これからも頑張りますネvv

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4517はじめまして。2番目ですぅ!ringo E-mail 10/9-01:26
記事番号4509へのコメント

はじめまして、ringoといいます。
私はLITTLE MEAMAIDは見たことがないので、どんなお話なんだろう?と思ってやってきました。

さなさんの小説を読ませていただくのは今回がはじめてなんですが、
すごいですっ!!
ゼルかっこいいです!しかも王子だなんて・・・(はぁと)
人魚のアメちゃんもきっとすっごくかわいいんでしょうね(はぁと)
それにキメラのゼルが出てくるとは・・!
どういう展開になっていくのか楽しみです!

はじめましてなのにいろいろ書いちゃってすみません。
しかも全然感想になってないかもしれないです・・・(泣)
続きを楽しみにしてますので、がんばってください!!
それでは、ringoでした。

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4522初めまして〜vv水晶さな E-mail 10/9-23:36
記事番号4517へのコメント


>はじめまして、ringoといいます。
>私はLITTLE MEAMAIDは見たことがないので、どんなお話なんだろう?と思ってやってきました。

 わかりやすく言うと童話「人魚姫」のハッピーエンドバージョンです♪ 声をもらう代わりに薬をくれた魔女が最後の黒幕になっていて、王子と二人で倒して幸せになる・・・って感じでしたかね。何だか簡潔に書いてしまうと面白みが(汗)。
 でも本編わからなくても大丈夫です。そのままじゃつまらないと思ってヒネって書いてますからv ある意味タイトル借りただけのエセ話と化しておりますv(爆)


>さなさんの小説を読ませていただくのは今回がはじめてなんですが、
>すごいですっ!!
>ゼルかっこいいです!しかも王子だなんて・・・(はぁと)
>人魚のアメちゃんもきっとすっごくかわいいんでしょうね(はぁと)
>それにキメラのゼルが出てくるとは・・!
>どういう展開になっていくのか楽しみです!

 ああ・・・喜んで頂いて有り難う御座います。もうホント皆様優しくて私溶けそうです(ドロドロ←うわっ!!)
 もし宜しければ下の方にある(笑)「赤の継承者」とか(やたら長いけど)読んでみてやって下さい〜。ほとんど今まで書いたのは話によってタイプが違うので好みが分かれるかもしれませんが・・・。


>はじめましてなのにいろいろ書いちゃってすみません。
>しかも全然感想になってないかもしれないです・・・(泣)
>続きを楽しみにしてますので、がんばってください!!
>それでは、ringoでした。

 遅筆ですが頑張ります〜(^^ゞ ゼル二匹(←!?)を見守ってやって下さい(笑)。ではでは失礼致します。

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4523LITTLE MERMAID 3水晶さな E-mail 10/9-23:41
記事番号4494へのコメント


 次の朝、アメリアは又早い内に住処から出て行った。
 ゼルの居た深海とは反対方向。大海原に出る道。
 その途中にある岩山の一つに実は扉があった。
 ようく見ないとわからないほど巧妙に隠されている。
 以前探検に出た時たまたま見付けたのだが、それ以来何かといってはここに来るようになった。
 ここには彼女の『友人』がいた。
「リナさーんっ!! アメリアですーっ!!」
 気合いを入れないと開かない扉を引っ張り、アメリアが中に入ると大声で呼びかけた。
「んなに叫ばなくったって聞こえるわよ!! 耳がキンキンするからやめてちょうだい!!」
 負けず劣らずな声量で返事が返ってくる。アメリアがにぱっと笑って下降するスピードを早めた。
 しばらく通路を下ると、ぽっかりと広い空洞に出る。
 人為的に持ち込まれた珊瑚や海藻が並べてあって、なかなか綺麗な内装を保っている。
 加えてその中にまぎれているのは陸の世界の調度品。アメリアが持ち返って強奪され・・・いやいやプレゼントしたものである。
 彼女の友人は巨大なイソギンチャクの柔らかな触手の椅子に腰掛けていた。
 栗毛色の髪を腰まで伸ばし、アメリアと同じような年代とはいえどその風貌には何か威厳というか強さがある。
 彼女も又、人魚。ただし一般の人魚と違うのは、彼女の尾ひれの半分は明らかに付け足されたものである事。
 薄いブルーの綺麗な鱗が途中から、白い光沢の入った薄桃色の尾ひれとつながっている。
 昔事故で尾ひれを失い、自分で人工の尾ひれを作り上げて接着させたという。
 材料は珊瑚と真珠と月の光。月の女神ルナと大洋神オケアノスの恩恵を受けて作り上げられたそれは、今や彼女の肉体の一部と化していた。
 閑話休題。
 リナと呼ばれた少女は、手にしていた書物を放り投げた。
 周囲を旋回していた小魚達が、すっとその書物を自らの体で支えると何処かへと運んで行く。
「又何か厄介事でも拾ってきたんでしょ。目が輝いてるわよアメリア」
 頬杖をついて言ったリナに、アメリアが苦笑いを浮かべた。
「え・・・えへへ。こういう時頼りになるのはリナさんだけなんですぅ」
 両手を合わせて懇願するような姿勢を取る。
「タダじゃー動かないからね。んで、何があったの?」
「えっと・・・すごーくぶっとーい鎖を切りたいんですけど・・・」
 アメリアがもじもじしながらも伝える。リナとの距離を少しずつ縮めながら。
「それって深海にあったりしない?」
 笑みを浮かべて問うリナに、アメリアも笑顔で答える。
「はい」
「んでもってそれってもしかして何かを巻き付けて固定したりしてない?」
「はい!」
 リナの目の前でアメリアが満面の笑顔で答えた。
「そりゃ海獣リヴァイアサンでしょあほんだらああああぁっっっ!!!!!!!」
 リナの声量と気迫に、アメリアが反対側の壁まで吹っ飛んだ。
「ふ、不意打ちなんて卑怯ですリナさあああん」
 アメリアが情けない声を上げる。
「言語道断!! いくら友人のアンタでもそんな頼みは聞けやしないわね!! 大体わかってんのアンタ、海獣リヴァイアサンよ!? あんなのを世にのさばらせたらこの海は死滅するわよ!! 海だけじゃなく陸の世界もね!!」
 びしっと指を突き付けられ、たじろぐアメリア。
 しかし次の瞬間にはきっとリナを見返した。
「リヴァイアサンだと決めつけないで下さい!! 私が深海で会ったのは竜じゃありませんでした!!」
「じゃあ何だっていうのよ!」
「フジツ・・・とと、人間・・・のよう、でした」
「は?」
 急に勢いを失ったアメリアの声が聞こえなかったのか、リナが耳を寄せた。
 仕方なくアメリアが一部始終を話すと、リナが腕組をして顔をしかめた。
「針金の髪に岩肌? 純粋なキメラじゃそんなのは生まれないわよ。人為的に加工したかあるいは・・・呪いかもね」
 口元に手を当て、リナが言った言葉にアメリアが首をかしげる。
「呪い?」
「そーよ。あたし達が神の恩恵を借りて行うのが魔法。それとは違って怨念や執念、負の力を用いて行うのが呪い。自分の力で行うから脅威的な威力はないんだけど、ねちっこかったり死ぬまで解けなかったりっていうのが多いのよね」
「それじゃあ・・・ゼルさんが呪いをかけられてる可能性もあるんですか・・・」
「ところでそのゼルってのはアンタが今ぞっこんの陸の王子様とは違うのね?」
「ぞぞぞぞっこんだなんて!!」
 アメリアが顔面を真っ赤にして両手を振った。
「へーほーふーん。毎日毎日あたしにノロけまくっといて今更を何を抜かすかなこのコは」
「ひひひひひたいひたいひた」
 両頬を引っ張られてアメリアが泣きそうな声をあげる。
「違いますぅう似てるけど違う筈ですぅう。大体ゼルガディスさんは陸の人なんですよぉお、あんな深海に行ける筈がないじゃないですかあぁ」
「ふむ、それもそうね」
 リナがぱっと手を放した。アメリアが痛んだ頬をさする。
「鎖を切る手段がないわけでもないわ。ただもしそれが危険な相手だったりしたら、その責任はアンタよ。アタシはアメリアの人を見る目を信用してるんだからね。そこんとこ覚えておいて」
 アメリアがこくんとうなずくのを確認すると、リナが手の平を上にしてすっと上に差し出した。
 さきほどの小魚達がやってきて、海藻に包まれた小さな包みを彼女の手の上に落とす。
 ぱらりとほどかれた海藻の中には、白く輝く短剣が入っていた。
「これは・・・」
「特殊な『力』があってね。これなら鎖を切れる筈よ。これを貸してあげるけど、一つ条件があるわ」
「条件?」
「その鎖に縛られているゼルって奴、解放したらまずアタシの所へ連れてきなさい」
「呪いを解いてくれるんですか!?」
 アメリアが目をうるませる。
「まだ呪いって決まったわけじゃないでしょーが、見てもないのに断言できないわよ」
 リナが半眼で答え、ずずいっと寄ってくるアメリアを手で押し返した。
「アタシが気になるのはね、リヴァイアサンが居る場所に何だかわかんないのがいて、しかもそれが陸の王子と似てるって事」
「・・・何なんでしょうね?」
「それをアタシに聞いてどーするってのよ。いーから行きなさい。さっさと行ってちゃっちゃと済ませてくる!」
 短剣を握ったアメリアを、リナが容赦なく家の外へ放り投げた。
「あーそうそう、その深海の辺りサメが出やすいんだから、大丈夫だとは思うけど気を付けんのよー!!」
 後からリナが付け足すように叫んだが、既にアメリアには聞こえなかった。

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4524LITTLE MERMAID 4水晶さな E-mail 10/9-23:52
記事番号4494へのコメント


「ゼルさんお待たせしましたぁっ♪」
 眠りを妨害された為に不機嫌な表情でゼルが顔を上げた。
 向こうから猛スピードでやってくるのは、短剣を握り締めた笑顔のアメリア。
「おわああああああ!?」
 思わず腕で自分をかばうと、アメリアが1m手前でききぃっとブレーキをかけた。
「どーかしました?」
「剣持って突っ込んでくる奴があるか!!」
「あ、そーでしたね。スミマセン」
 ぺこりと頭を下げ、ゼルの体をX字に固定する鎖に手をかける。
 一番太い鎖。まずはこれを切る事に決めた。
 最初に見た時から、このきつい鎖が彼の体に食い込んでいるのが気になっていた。
「動かないで下さいねー」
 そのまま叩き付けるとずれる可能性があるので、鎖の一つの輪の中に切っ先を刺し込む。
 岩に押し付けて、そのまま短剣に全力を込めた。
 じゅばあ。
「!?」
 アメリアが慌てて短剣を引き抜いた。
 これには様子を見ていたゼルも驚いた。
 短剣が触れた鎖から、黒い霧のようなものが突然吹き出たのだった。
 海水に溶け込み、ゆっくりと消えていく。
 鎖には傷一つついていない。
 しかしアメリアの握った白い短剣は、錆付いたように黒く染まっていた。
「おい・・・大丈夫か?」
 まだ驚いて口がきけないのか、アメリアがぎこちなくうなずいた。
「な・・・何でしょうこれは・・・」
 アメリアがそっと短剣に触れる。
 するとその刃がぼろりと半分に割れ落ちた。
「!!」
「・・・割れた・・・」
 アメリアが青ざめる。
「リナさんに何て言われるか・・・」
 ゼルががくっと頭を落とした。
「おい・・・借り物かそれは・・・」
「あうううリナさん怒ると恐いんですよおぉ、『貸してあげる』って言ってたのに壊したら何言われるかぁああ」
「おおおお俺を揺らすな動けないんだあああぁ!!」
 肩を揺さぶられたゼルが情けない声をあげた。
「はっごめんなさい!!」
 アメリアがぴたりと動きを止める。
「全く・・・だがこれで諦めがついたろう。俺に構わずにさっさと行ってくれ。うざったいのが嫌いなんだ」
 アメリアが腰に手を当ててこちらをにらんできた。
「そーゆーワケにはいきません!! この私がゼルさんを見付けてしまった以上、会ってしまった以上! 助けを求める人を見て見ぬフリをするなんて私の正義心が許しません!!」
「助けてくれと言った覚えはないぞ」
「何を言うんです!! ゼルさんをつなぐその鎖!! どこをどう見てもヘルプミーオーラが出てるじゃないですか!!」
「人から変なオーラを感知するな!!」
「じゃあ縛られるのが好きなんですか!?」
「んなシュミはないっっっ!!!!!!!!」
 ゼルが肩をわななかせた。
 アメリアがふと叫ぶのをやめ、手を後ろで組む。
「・・・正直な話、ゼルさんはここから動きたいと思わないんですか?」
「動いた所で何処へ行く? 俺は自分の名前以外何も覚えていない。帰る場所も行く宛もない。この体は食料も必要としない。必然的に動く必要もない。それだけだ」
「・・・記憶を取り戻せるかもしれなくても?」
 これにはゼルも一瞬驚愕の表情を見せた。
「俺の記憶だと? お前は一体俺の何を知っているというんだ」
「名前で呼んで下さい。私はアメリアです。『お前』じゃありません」
 強い語調で言うアメリアに、ゼルが参ったというように息を吐いた。
「・・・わかった。アメリア、話してくれ」
 アメリアがほっと息をついた。認めてもらえるとは思えなかったからだ。
「・・・ゼルさんにそっくりな人が陸にいるんです」
「陸に?」
「彼の名はゼルガディス=グレイワーズ。王族名はエリック7世。人間の王子です」
「ゼルガディス・・・」
 ゼルが考え込むような表情を見せた。何かを思い出そうとするように。
「何か覚えてますか?」
「いや・・・無理だ」
「そうですか・・・」
 アメリアがしゅんとする。何かきっかけでもつかめないかと期待していた。
「お前が落ち込む事じゃないだろう」
「でも・・・」
「・・・!?」
 唐突に、ゼルが叫んだ。
「アメリア逃げろ!! サメだ!!」
「えっ!?」
 ぱっと振り向いたアメリアの後方に、突如として巨大なサメが姿を現わした。
 まっすぐに彼女の方を狙ってくる。
「逃げろ!!」
 ゼルが悲痛な声で叫ぶ。
「・・・・・・!」
 戸惑っていたアメリアの表情が、きっと何かを決意したように固まる。
 ゼルの前に立ち塞がり、折れた短剣を握り締めた。
 サメは猛スピードで突っ込んでくる。
「・・・バカ野郎!!」
 ゼルが渾身の力を込めて腕を振った。じゃらりと、重い音をたてて鎖がうねる。
 それはアメリアの横をかすめ、サメに直撃した。
 めぎゃっ!
 重量のある鎖は、易々とサメの体に食い込んだ。
 耳をつんざくような声をあげ、サメが一目散に逃げ帰る。
 呆然とそれを見送っていたアメリアが、ゆっくりとゼルの方を振り返った。
「・・・ゼルさん?」
「・・・このバカがっ!!」
 大きな声で怒られ、アメリアが身をすくめた。
「わかってんのか!? 俺の体は岩なんだぞ!! サメなんかに噛まれたって痛くも痒くもないんだ!! それをお前がかばおうとしてどうする!!」
「でもっ!! それでも噛まれたら嫌じゃないですか!! 私はともかく、ゼルさんはそこから動けないんですよ!?」
「それがバカだと言ってるんだ!!」
「ゼルさん!!・・・ん?」
 口論を中断し、アメリアがゼルに近付いた。
 鎖が体を締め付けているというのに、無理に動いた為だろう、鎖の食い込んだ腹部からうっすらと血が滲んでいた。
「・・・ごめん、なさい」
 急にしゅんとなり謝るアメリアに、ゼルもそれ以上は言えずに口を閉じる。
 アメリアが傷口に両手をかざした。
「我らを生みせし偉大なる海の王・・・生命の息吹を我が手に与えたまえ・・・リザレクション」
 ほのかに溢れた柔らかな光が、ゼルの腹部にできた傷を癒した。
「・・・魔法?」
「私、一応巫女なんです。といっても簡単な魔法しか使えませんけど」
 てへ、とアメリアが笑う。
「・・・お前は人が良過ぎだ」
「そうですかねぇ? でも、ゼルさんだからですよ」
「?」
「信用していない人には優しくはしません」
「一体どういう点で鎖にがんじがらめにされている不審人物を信用できるんだ?」
 ゼルが呆れたように問う。アメリアが笑顔で答えた。
「ゼルさん『大丈夫か?』って聞いてくれましたし、さっきは『逃げろ』って言ってくれました。名前もちゃんと呼んでくれました。名前はともかく、人を気遣う心がある人に悪い人はいません」
 優しげな笑みで断言され、ゼルが気恥ずかしいのか顔をそむけた。
「とゆーわけでゼルさん。私一旦リナさん・・・この短剣を貸してくれた人ですが、その人の所へ戻ります。きっとまだ何か方法がある筈です。こうなったら鎖が切れるまで面倒みます。自分の気が済まないので最後までやらせて下さい」
 じゃ、と片手を上げ、ゼルの返事を聞く前にいなくなってしまう。
 ゼルが苦笑いの表情を浮かべた。
 何て騒々しい来訪者だ。
 だが、笑ったのも久しぶりだ。
 今までずっと眠って過ごしていたが、次にアメリアが来る時の為に起きて待つ事にした。

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4525一気に2個もっっ♪ゆっちぃ E-mail 10/10-00:19
記事番号4524へのコメント


さなさん今晩わですvゆっちぃです☆
ひょっこり覗いてみたら3,4一気にUPされててすんごく嬉しいですーvvv
感想のほう、行きますね〜v


今回でリナちゃん登場しましたねv彼女は人間としてか、人魚として登場するのか、
想像つかなかったんですけど人魚だったんですね。しかも何か過去に曰くありげで………
陸のほうのゼルもそうですよね。これからの展開がますます楽しみです〜〜♪

>「我らを生みせし偉大なる海の王・・・生命の息吹を我が手に与えたまえ・・・リザレクション」
  出ましたね出ましたねっ!いやも〜、毎回楽しみにしてるだけありますっv
  やっぱり素敵vさなさんのオリジ呪文はvv

お話のほう進むに連れて、合成獣のほうのゼルともいい感じになってきて嬉しいです〜vvv姫庇って傷負う所とか特にv
やっぱしゆっちぃは普通の人間のゼルより岩肌魔剣士さんのほーが好み…じゃないι
好きですねvvでもホントのところ、おうぢさまゼルと繋がれゼルとの関係って何なんでしょう?
ますます目が離せないですな♪

ゆっちぃでしたっ☆


追伸:『ヘルプミーオーラ』、良かったです。笑いましたよばっちしv
   姫様の視点っていったい…………(笑) 

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4530頑張りましたよ♪水晶さな E-mail 10/10-22:33
記事番号4525へのコメント


 ゆっちぃサンいつも有り難うございますvv いやぁ何か書いてすぐに反応が頂けるのってマジ嬉しいんで幸せですvv
 でも頑張っちゃって2話UPしたんで次が大変です(阿呆)。


>今回でリナちゃん登場しましたねv彼女は人間としてか、人魚として登場するのか、
>想像つかなかったんですけど人魚だったんですね。しかも何か過去に曰くありげで………
>陸のほうのゼルもそうですよね。これからの展開がますます楽しみです〜〜♪

 ゼルガディスとアメリアだけじゃキャスティングが足りないので今回色々出てきます。今まで出した事のないあの方も(笑)今回初めて登場予定・・・う〜んいつ出てくる事やら(爆)。リナは一応「人魚姫」でいけば薬をくれる魔女の役なんですヨ、ディズニーの魔女とは違って世界は狙ってませんが(笑)。
 陸のゼルは再び出てくるのにもう少しかかっちゃいますが、過度に期待し過ぎるとアテが外れるのでお気を付け下さい(笑)。


>>「我らを生みせし偉大なる海の王・・・生命の息吹を我が手に与えたまえ・・・リザレクション」
>  出ましたね出ましたねっ!いやも〜、毎回楽しみにしてるだけありますっv
>  やっぱり素敵vさなさんのオリジ呪文はvv

 毎回脳味噌しぼってる甲斐がありますvv(馬鹿)


>お話のほう進むに連れて、合成獣のほうのゼルともいい感じになってきて嬉しいです〜vvv姫庇って傷負う所とか特にv
>やっぱしゆっちぃは普通の人間のゼルより岩肌魔剣士さんのほーが好み…じゃないι
>好きですねvvでもホントのところ、おうぢさまゼルと繋がれゼルとの関係って何なんでしょう?
>ますます目が離せないですな♪
>ゆっちぃでしたっ☆

 くっくっくっ・・・(怪しい)、ここが一応醍醐味(と言えるのか?)なので、想像を働かせながら読んでみて下さい。
 実は「リトル・マーメイド」にもう1つのディズニー作品の内容を少し混ぜております。私の一番好きな話なんですvv


>追伸:『ヘルプミーオーラ』、良かったです。笑いましたよばっちしv
>   姫様の視点っていったい…………(笑) 

 ををっ! 狙った所がウケた!!(大喜び)
 どこまでも真っ直ぐな姫にのみ感知できる「ヘルプミーオーラ」(笑)

 ではでは次に取りかかりますので失礼しますっ。
 ノっている時に書かないと停滞しちゃうんですよね〜(汗)。

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4558LITTLE MERMAID 5水晶さな E-mail 10/12-19:03
記事番号4494へのコメント


「・・・・・・」
「・・・・・・」
 差し出したアメリアの手の平に置かれているのは、半分に折れた短剣。
「これは何かな?」
「折れちゃいました、てへv」
「てへじゃなあああああああいぃいい!!!!!」
「ひたたたたたたたたたたた!!!!!!!!」
 両頬を思いきり引っ張られて、アメリアが絶叫した。
 必死の抵抗でリナの手を逃れ、アメリアがリナとの間に安全な距離をおく。
「リナさんこれなら鎖が切れるって言ったじゃないですかああぁ。でも試してみたらこうなっちゃったんですよぉお」
 痛む頬をさすりながら、アメリアが涙声で弁明した。
「そーよ白金の鎖ならこれですっぱり両断できるわよ!! 何なのよこの黒ずみは!! 直すのに金と手間がかかんのよこーいうのは!!」
「・・・白金? いえ、鎖は黒でしたけど」
 怒りにまかせて壁に八つ当たりをしていたリナが、ぴたりと動きを止めた。
「黒? 嘘、鎖の色よ? 白金でしょ?」
 アメリアがぶんぶんと首を横に振る。
「黒です。間違いありません」
「・・・・・・」
 リナが難しい表情を浮かべると、ぱちんと指を鳴らした。
 水中なのに音がする所が不思議である。
 小魚達が分厚い本を運んできた。受け取って、ぱらぱらとめくる。
「黒色・・・それが本当なら、あたしの手には負えないわね」
「ええっ!?」
「言ったでしょ、あたし達が用いるのは神の恩恵を受ける、いわゆる聖白魔法。それとは違う異質なものを破壊したり、思うように変えようとするには膨大な力がいるのよ」
「じゃあ・・・どうすれば?」
 不安げに問うアメリアに、リナがぱたんと本を閉じた。
「自身の怨念・邪念を用いる呪い・・・暗黒魔法には同等の力を持って破壊するのが基本よ。ただそれは使い手があたし達の場合諸刃の剣。聖なる者が悪しき力を使おうとすると、その反動は桁外れに大きいわ」
「でもリナさん。私暗黒魔法なんて使えませんよ」
 リナがちっちっと人差し指を動かした。
「魔法自体が使えなくても、この短剣みたいに道具を用いる事はできるでしょーが」
「あ・・・そうか。でもそんなの、あるんですか?」
 アメリアの問いに、リナが又もや表情を曇らせた。
「ある・・・というか、知ってることには知ってるんだけどね・・・なんつーか、関わりたくないのよ、アイツには」
「お願いです、何か方法があるのならリスク付きでもいいから教えて下さい!! 一旦私に関わった事を、見過ごしたくないんです!!」
 決意の固まったアメリアの瞳に、リナがやれやれといった風に肩をすくめた。
「あんたなら絶対そー言うと思ったわよ・・・ま、そーいう所がアメリアらしくてあたしは好きなんだけど・・・」
 言ってから、小魚達に何言かささやいた。小さい声なのでこちらには聞こえない。
 用件を言い付けられたのだろう、ひゅっと廊下の奥へ姿を消した。
「ただ『それ』を借りられる相手がちょっとばかし遠い所にいてね・・・こっから更に北の深海よ。んでもって、そいつと交渉するのもあんたの熱意次第だからね?」
 人差し指を突き付けられたが、アメリアがこっくりと頷いた。
「ありがとうございますリナさん! 私行きたいと思います!!」
 くるりと向きを変えたアメリアをリナが後ろから引っ張った。
「はれ?」
「遠いって言ったでしょ? 人の話は最後まで聞きなさい。『足』を貸してあげるわよ。あれならすぐに着くから」
 それから部屋の奥の方を振り返り、呼びかける。
「ちょっとまだなの? 連れてきなさいって言ったでしょ?」
 すると小魚が一匹だけふいと飛び出てきて、リナの耳元でささやいた。
「起きない? ・・・ったく、もう」
 通路の方に身を乗り出し、叫ぶ。
「ガウリイ!! 早く来いって言ってるでしょ!!?」
 リナの言う『足』が、小魚達に引っ張られて通路から姿を現わした。
「ひ、ひいいいいいいいぃっ!!!!?」
 アメリアが思わず後方の壁に貼り付いた。
 彼女の前に姿を現わしたのは、青地に白の水玉模様のある、身の丈2m程の巨大なクラゲだった。

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4559LITTLE MERMAID 6水晶さな E-mail 10/12-19:06
記事番号4494へのコメント


 見慣れた風景が、物凄いスピードで過ぎ去っていく。
 見た目とは裏腹にクラゲのガウリイは泳ぐスピードが尋常でなく速かった。
 最初は背に乗ってつかまっていたのだが、振り落とされたので触手で抱えてもらう事にしたのだ。
 リナが言うには触手に毒はなく、巻き付かれても何ら心配はないらしい。
「しかし遠いんですねぇ・・・もう大分進んだような気がするんですけど・・・」
 ガウリイは道を知っているらしく、時折進路を変えてはスピードを落とす事なく突き進んでいく。
 段々と太陽光の届かない深海に入っていき、アメリアが不安げに辺りを見回した。
 周囲をグロテスクな深海魚が泳いでいく。色とりどりの珊瑚礁もぱったりと姿を消した。
「まだです・・・」
 最後の『か?』を言う前に、ガウリイがぴたりと静止した。
 顔を上げると、岩から根付いたように生える漆黒の巨大な珊瑚。
 その真ん中には木のウロのような穴があいていた。
「この中・・・ですか?」
 アメリアが問うと、ガウリイは今度はゆっくりとその中へ入っていった。
 薄暗い通路を進むと、ぽっかりと広い部屋に出る。
 あちこちにともる紫の炎。水中の中で揺らめくそれは、怪しげな光を放って部屋を照らしていた。
「これはこれは・・・浅瀬の人魚さんがこんな所に何のようです?」
 唐突に聞こえた声に、アメリアがガウリイにしがみつきながらも目をこらして闇を見つめる。
 暗闇で見えなかった部分から、一人の青年が姿を現した。
 紫色の髪に、それと同じ紫水晶の双眸。ただし目は時折しか開かない。
 黒い法衣をまとった彼には、何故か人間の足があった。
 いびつな形をした黒い貝の上に腰かけていた彼に、アメリアが少々怯えながらも口を開く。
「あ・・・あなたがゼロスさんですか?」
「世間一般にはそう呼ばれてますけどねぇ。ところで貴女は誰なんです?」
 一見すると人懐っこい笑みを浮かべた彼が、優しげな声で尋ねてくる。
「わ・・・私はアメリアです。リナさんから貴方の事をお聞きしてやってきました」
「ほう、リナさんですか。懐かしい人の名前を聞きましたねぇ。で、何の御用件ですか?」
「・・・黒い鎖を切りたいんです。その為に貴方の力を貸して下さい」
「黒い・・・」
 ゼロスがわずかに瞳を開いた。紫水晶の冷たい瞳がアメリアを見つめる。
「随分とまぁ、思い切った事をしますねぇ。わかってるんですか? 神々の加護を受けている貴女が闇の力を用いるなんて。リスクこそあれ利益は皆無に等しいですよ」
「・・・わかってます。それでも私はそうしたいんです」
 ゼロスが軽く肩をすくめた。
「ま、貴女がそうおっしゃるんなら別に構いませんが・・・どうなっても知りませんよ?」
 そう言うと、漂う紫の炎の一つに手を突っ込んだ。
 ずるりと抜かれたその手には、刀身から柄までが漆黒の短剣が握られている。
 リナに借りた短剣を、闇で塗りつぶしたような。
 引っ繰り返して確かめてから、ゼロスがアメリアの方を見た。
「使用上の注意といいますか・・・決して手を放さない事です。中途で耐えかねて手を放したら、膨大なエネルギーが溢れ出しますよ。そうなったら手に負えません。死にたくなければ耐える事です」
 あっさりと恐い事を言うゼロス。
「あ、それと、勿論タダでは貸しませんよ。そうですねぇ、ここはやはりオーソドックスに、貴女の声と引き換え・・・」
 ゼロスの言葉を遮って、ガウリイがにゅるりと前に出た。
 触手でからんだ一枚の手紙をゼロスの前にぶらさげる。
「何ですか? リナさんから? ・・・脅迫状じゃないでしょうね」
 嫌そうに受け取りながら、ぱらりと紙面を開く。
 ゼロスの顔が明らかに青ざめた。
『監視者ゼロスへ。あたしの友人に脅し文句等は一切合切吐かない事。見返りを求めない事。今回の件はアンタの見張りサボりの件に関与していると思われる。上司にチクられたくなかったら快く応対して援助しなさい。以上。 守護者リナ=インバース』
「アアアアアメリアさんん、いやいや今言ったたた事はききき気にしないで下さいねねねねね」
 震える声でアメリアの手をつかみ、短剣を握らせ、必死に言葉をつむぐゼロス。
「さささあ早く行かないとととと、向こうの方が待ちくたびれてしししまいますからああ」
 それだけ言うとガウリイを押し付け、さっさと奥へ引っ込んでしまった。
「・・・何なんでしょう、ねぇ?」
 手紙の内容を知らないアメリアが、きょとんとしてガウリイに問いかける。
 ガウリイはまるで『俺も知らないよ』とでも言うように、触手の何本かを横へくねらせた。

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4565にーさんがあっっ!!ゆっちぃ E-mail 10/13-00:14
記事番号4559へのコメント


さなさん今晩わです♪懲りずにやってきたゆっちぃです☆

またもや一気に2個の投稿、お疲れ様&ありがとうございますーーー(ぺこり)
良いものたくさん読ませていただいてしあわせですvvv

今回はにーさん&ゼロスの登場ですねv
特に驚いたのがにーさんっ!まさかくらげで登場とはっっっ!!
いやしかし、違和感ゼロで何か不思議でした(笑)

ゼロスさん、相変わらず上司に弱いんですねぇ(笑)姫の声が採られなくてよかったですーv


次はいよいよ魔剣士さん登場っぽくてますます続きが楽しみですvvv
今回感想短くてごめんなさいιゆっちぃでした☆


追伸:お読み頂ければお分かりになるとは思いますが、ゆっちぃはガウリイさんの事を
   『にーさんv』と呼んでます。めいっぱいの愛情込めてv(込めるなι)
   半分クセのようなものなので、どうかお気になさらず〜(汗)

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4579クラゲにいぃっ!!(笑)水晶さな E-mail 10/14-00:18
記事番号4565へのコメント


 タイトルつなげて一人で笑ってました。バカ水晶さなです(ホントだよ・・・)。


>またもや一気に2個の投稿、お疲れ様&ありがとうございますーーー(ぺこり)
>良いものたくさん読ませていただいてしあわせですvvv

 良くはないです(きっぱし)。毒電波に冒されないように気を付けて下さいネv


>今回はにーさん&ゼロスの登場ですねv
>特に驚いたのがにーさんっ!まさかくらげで登場とはっっっ!!
>いやしかし、違和感ゼロで何か不思議でした(笑)
>ゼロスさん、相変わらず上司に弱いんですねぇ(笑)姫の声が採られなくてよかったですーv

 にーさんは(←うつった)最初からクラゲだと心に決めてましたっ!(んなこと決心すんなっ!!) 書いていても違和感ないから不思議です(笑)
 ゼロスは初めて書いたのでイメージ崩れてないかなーとちょっち心配だったんですが、良かったどうやらごまかせたみたい(爆) 私の書くゼロスは魔族寄りで人間にあまり興味がないみたいです。うーむ?
 

>次はいよいよ魔剣士さん登場っぽくてますます続きが楽しみですvvv
>今回感想短くてごめんなさいιゆっちぃでした☆

 いえいえ感想頂けるだけでホント励みになりますので嬉しいですvv
 もうちょっとで終わる筈なのでとりあえず頑張りますねvv

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4568水族館でクラゲ展開催中!!!桜華 葉月 10/13-02:06
記事番号4559へのコメント

はじめまして〜!!!
今日、歩道に上がろうとしたら滑って自転車ごと倒れた、クラゲ2号な桜華です。
だから雨の日は嫌いなんですぅ。(涙)
ちょっと前にも同じ事をした気が・・・。
まあとりあえず感想です。
やっぱりというか、さすがというか、クラゲが定着してますね。(笑)
更にリナちゃんにこき使われるところも一緒。
全然違和感なしです。
ところでゼロスは何を見張ってるんでしょう?ちょっと気になります。
では、次回も楽しみにまってま〜す。

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4580ク、クラゲ展!?水晶さな E-mail 10/14-00:25
記事番号4568へのコメント


>はじめまして〜!!!
>今日、歩道に上がろうとしたら滑って自転車ごと倒れた、クラゲ2号な桜華です。
>だから雨の日は嫌いなんですぅ。(涙)
>ちょっと前にも同じ事をした気が・・・。
>まあとりあえず感想です。
>やっぱりというか、さすがというか、クラゲが定着してますね。(笑)
>更にリナちゃんにこき使われるところも一緒。
>全然違和感なしです。
>ところでゼロスは何を見張ってるんでしょう?ちょっと気になります。
>では、次回も楽しみにまってま〜す。

 初めまして〜最近調子に乗りまくってる水晶さなです。
 自転車と共倒れ(解釈が違う)とはかなり痛いですね・・・。
 クラゲガウリイは、書いてて本物と大差ないというか違和感がないのがホント驚きでした(笑)。作者としてはウケが取れたみたいなのでしてやったりという感じ(爆)。
 初描きのゼロスも加え今回登場キャラがそれぞれ核心に何ら関わっているという設定で作っているので(ガウリイ除く)、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
 もうちょっとで終わる筈なので宜しければ見てやって下さいねv

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