◆−JUNI BRAUT(ゼルアメ)−水晶さな(6/19-21:28)No.3252


トップに戻る
3252JUNI BRAUT(ゼルアメ)水晶さな E-mail 6/19-21:28



 物凄く久しぶりに書き込ませて頂きます。6月が終わる前に・・・ということで、やっぱりゼルアメです。稚拙ですが読んで頂けると嬉しいです。因みにタイトルは又ドイツ語です。<ジューンブライド>と同義語です。

=====================================


 JUNI BRAUT −六月の花嫁−

 降り注ぐ雨よ、今だけはやんでおくれ
 苦しみよ痛みよ、喜びに変わり祝っておくれ
 時の翁(おきな)よ、今日という日を永久(とわ)に刻んでおくれ
 今という時をもち、結ばれる私達の為に
 女神の祝福があらんことを

 二人で旅立つ事になってから、一ヶ月程たったある日。
 烏の濡れ羽色の短い髪、透き通った青い瞳の少女が、村に到着するなり走り出した。
 アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。幼い容姿と言動でそうは見えにくいが、これでも一国の王女である。
 銀の針金の髪に青い岩肌、なるべく顔が隠れるようにフードをかぶっている男が首をかしげて見送る。
 通称残忍な魔剣士、ゼルガディス=グレイワーズ。別称王女の子守り役(苦笑)。
 「?」と思いながら見ていると、村の通りを歩いている女に近寄っていく。
 白い衣服に身を包み、左手に篭を持ち、白砂を撒きながら歩いている女に。
 アメリアが声をかけると、女は振り返った。
 二、三言会話を交わしていたが、時折女が照れ笑いを浮かべていた。
 しばらくして駆け戻ってきたアメリアが、差し出した両手には女から分けてもらったらしい白砂が握られていた。
 「はいっ。ゼルガディスさんも半分撒いて下さい。できるだけ広い範囲にですよ」
 そういって半分をゼルガディスの手に渡すと、自分もさらりと白砂を地面に撒き散らした。
 「これは何のまじないだ?」
 とりあえずアメリアと同じように白砂を撒いてから、しごくもっともな疑問を口にする。
 アメリアが何故か嬉しそうに答えた。
 「あの女性は三日後に結婚するんだそうです! それで、この砂は結婚式の当日に雨が降らないようにって、一週間前からああやって白砂を地面に撒いてお願いするんですよ。加えてこの砂は吸水性が高くて、雨で濡れた地面を乾かしてくれるんです」
 「よく知ってるな」
 手に残った砂をはたいて落とし、ゼルガディスが再び歩き始めた女を見やる。
 通行人が彼女の姿を見かけると、進んで歩み寄り砂を分けてもらってはアメリア達と同じ事を繰り返す。
 「で、他人に砂を撒かせるのは?」
 「幸せのお裾分けっていう意味もありますし、他の人にも一緒にお願いしてもらうって意味もあります」
 女が通った後にできた白い道を眺め、アメリアが羨ましげに目を細めた。
 白く彩られたヴァージンロードを歩く、幸せそうな女性を見つめて。

 「お待たせしましたー」
 元気良く部屋の扉を開けて、紙袋を胸に抱えたアメリアが入ってくる。
 宿屋の、ゼルガディスの部屋。外に出るのを嫌がるゼルガディスを気遣い、アメリアが買い出しを担当している。
 「・・・又引っかかってたのか?」
 「あれ、バレちゃいました?」
 アメリアが頭を掻いた。ただの買い出しにしては時間がかかりすぎていた。
 「さっきの花嫁さんと又会ったんですよ」
 テーブルの上に買ってきたものを並べながらアメリアが嬉しそうに報告する。
 「つい相手の方とか、馴れ初めとか聞いてたら長くなっちゃって・・・」
 「まぁ、別に構わんがな」
 アメリアがいれた茶を受け取り、ゼルガディスが窓を開けた。
 この時期、気候は少し蒸し暑い。
 「それにしても、何故こんな雨の時期に結婚式をあげたがるんだ?」
 「この地方で6月はJune・・・ユーノーっていう女神様の名前にちなんでるんです」
 ぽんとベッドの上に飛び乗り、ゼルガディスの横にきたアメリアが得意げに話し始めた。
 「その女神様は主に女性の勝利や、結婚を司ってるんです。だからこの時期に結婚式をあげると、女神様の祝福が得られるっていわれてるんです!」
 「ほう」
 意外と物知りなアメリアに驚いたが、すぐに口を開く。
 「俺は6月の時期に結婚したら、作物の実りの時期に出産が重ならず農作業に困らないからっていう説を聞いたがな」
 「ひどーい!! ゼルガディスさんロマンスを壊さないで下さい!!」
 「おおおっ!? まっ待て本気で怒るな!!」
 両手を合わせて牽制するゼルガディス。アメリアは尋常でなく力があるから恐い。
 らちがあかないので、ゼルガディスが唐突に力を抜いた。
 「うきゃあっ!?」
 自分の押す力が止められず、そのままゼルガディスを押し倒して突っ伏すアメリア。
 「うーむ。腕相撲したら勝てんかもしれんな」
 冷静に寝転んだまま呟く。アメリアがゼルガディスの胸で打ったのか鼻をさすりながら起き上がった。
 「ふえぇ、鼻が痛いですぅ」
 「それで? いつだった?」
 「へ?」
 「その結婚式だ」
 「・・・三日後ですけど」
 「それぐらいなら構わんだろう。滞在を伸ばしたいか?」
 「・・・・・・・・・???」
 「結婚式、見たいんだろう?」
 アメリアがぱっと表情を輝かせた。
 「はいっ!!」
 嬉しそうに頷き、それからそっとゼルガディスの肩に身をもたせかける。
 「あ、ゼルガディスさんほら。雲が晴れてきたみたいですよ・・・」
 アメリアが差した空には、星空が顔を覗かせ始めていた。

 降り注ぐ恵みの雨よ、今だけはやんでおくれ
 女神の道をあけておくれ
 今日は素晴らしい日、至福の喜び溢れる日
 今もて結ばれる私達の為に、女神の祝福を届けておくれ・・・

 HAPPY WEDDING ・・・ AND,I LOVE YOU FOREVER・・・

=====================================

 「ジューンブライド」の由来と起源についての情報提供→takuh、ご協力感謝♪

 水晶さな拝

inserted by FC2 system