◆−遠い日の約束−雫石彼方(4/3-11:09)No.2880
 ┣Re:遠い日の約束−千恵風味(4/3-12:45)No.2881
 ┃┗はじめまして−雫石彼方(4/10-14:42)No.2919
 ┗Re:遠い日の約束−斉藤ぐみ(4/3-18:59)No.2886
  ┗誤解だあーっ!−雫石彼方(4/10-15:02)No.2920


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2880遠い日の約束雫石彼方 E-mail 4/3-11:09


 いつもはゼルアメばかり書いているのですが、今回はアメリアとアルフレッドのお話しを書いてみました。――と言っても、アルフレッドが死んだ後のお話なので、彼は回想でしか出てきませんが・・・。それにしても、こんなマイナーな組み合わせのお話、読んでくれる人がいるんだろうか・・・(汗)そういう奇特な方がいることを祈りつつ・・・


**************


 フィリオネル王子暗殺未遂事件は、リナ達によって一応解決に至った。
 魔族の裏切りに合い、殺されたアルフレッドの葬式は、謀反を起こした張本人ということで、セイルーンの城の者だけで形式的にひっそりと行われた。
 式の最中、アメリアは泣き出すのではないかと思われたが、硬く強張った表情からは何も読み取ることはできず、その瞳からは涙が流れることもなかった。
 そんなアメリアを心配してか、彼女の周りには常に誰かが傍にいた。
 ところが、ふと気を抜いた瞬間に彼女の姿が見えなくなったのは、葬式から一週間ほど経ち、国も落ち着きを取り戻し始め、そろそろ出発しようか、という時だった。



「アメリアー!どこにいんのよー!?」
 リナが、叫びながら城のあちこちを探し回る。
 姿が見えないといっても、大したことではないのかもしれない。一人になりたい時だってあるだろう。けれど、普段必要以上に騒がしい娘が無理して明るく振舞っている姿はあまりに痛々しくて、どうしても放っておけなかった。
「おーい、リナー!アメリア、いたぞ!」
 そこへ、ガウリイが駆けて来た。
「本当!?どこに!?」
「裏庭の隅の、でっかい木の下」
「なに、昼寝でもしてたわけ!?」
 ”人が必死に捜してたってのに”と、こめかみに怒りマークを浮かべるリナに、ガウリイは慌てて付け加える。
「いや、なんか穴掘ってた!」
「はあ?なにそれ」
「さあ・・・?」
 それ以上ガウリイに聞いても無駄だと踏んだのか、ため息一つ付くと、リナはその場所へと駆け出した。



 裏庭には、既にゼルガディスが来ていた。
「ゼル、アメリアは?」
「見ての通りだ」
 ゼルガディスの指し示した方向には、ガウリイの言った通り、一生懸命穴を掘っているアメリアがいた。
「何やってんのかしらね?」
「生ごみを埋める穴を掘ってるんじゃないか?」

 ごん

「あんたは黙ってて!」
「はい・・・(涙)」
「・・・とにかく、ここでこそこそと見ていても埒があかない。別に隠し事という感じでもないし、直接聞いた方が早いんじゃないか?」
 二人のどつき漫才に呆れながら、ゼルガディスは提案する。
「それもそうね。――アメリア!」
 声をかけると、アメリアは穴を掘る手を止め、こちらに振り向いた。
「あれ、リナさん。ゼルガディスさんにガウリイさんまで。どうしたんですか、みんなそろって」
 いたってのほほんとしたアメリアに苦笑するリナ達。
「どうしたもこうしたもないわよ。あんたが急にいなくなるからみんなで捜してたんでしょ」
「え?そうなんですか?すみません、心配かけてしまって・・・」
 申し訳なさそうなアメリアに、リナはパタパタと手を振った。
「ま、いいけどね。ところで、穴なんか掘って一体何やってんの?」
 誰もが気になる疑問である。
「あ、これは・・・」
「生ごみを埋めるんだろ?」
「それはもういいっちゅうに!!」
 
 ばき

「ぐはあ!!」
 リナのすーぱー突込みが炸裂する。ガウリイはもんどり打って倒れた。
「ふう・・・(爽)で?何やってんの?」
「はあ・・・(汗)ええと、タイムカプセルを掘り起こしてたんです」
『タイムカプセル!?』
 三人の声が見事に重なる。――あ、ガウリイ復活してる。
「・・・・アルフレッドと。小さい頃に埋めたんです。――でも、もう二人で見ることもできないし。出発したらしばらく戻って来れそうもないし。だから、その前に掘り起こしちゃおうと思って・・・」
「アメリア・・・」
「そうだ、リナさん達も手伝ってくれませんか?なんか、小さい頃に埋めた割に結構深く掘ったみたいで、なかなか出てこないんです。後もう少しだと思うんですけど・・・」
 沈みかけた空気を盛り上げるように、アメリアは明るく言った。心配をかけたくないというアメリアの気持ちが分かったから、リナもそれに合わせた。
「よっしゃ!あたしにかかればそんなのちょろいちょろい!んじゃ、べフィス・ブリン・・・」
「きゃあーーーっ、やめてくださーい!!そんなことしたら、タイムカプセルまで粉々になっちゃいますうっ!!」
 アメリアが涙ながらに訴える。
「えー、だってシャベルで地道に穴掘るなんてめんどくさいじゃん」
「だからって目的の物破壊してどうする(汗)」
「ったく・・・しょうがないな、オレがやるよ。アメリア、貸してくれ」
 見かねたガウリイがアメリアからシャベルを受け取って、掘り始める。さすが肉体派だけあって、すぐに目的の物に到達した。
「お、今何かにあたったぞ!」
「ほんとですか!?ガウリイさん、後少し、頑張ってください!」
「おう!」
 数分後、それは掘り出された。



 箱自体は、宝物庫からいらないものを持ってきたのだろう、本当に宝が入っているのではないかと錯覚するほど、豪華なものだった。それとは対照的に、中身はおもちゃの短剣であったり、そこらへんで拾った綺麗な石であったりと、他愛のない物ばかりだった。
 しかし、幼い二人にとってはとても大切な宝物。たくさんの思い出が詰まっている。
 アメリアはそれらを懐かしそうに眼を細めては、”これは一緒に勇者ごっこをした時の物だ”などと話して聞かせ、リナ達もそれにきちんと耳を傾けた。
「あれ、この紙なんだ?」
 と、ガウリイが箱の底に隠すように入っていた紙を取り出す。それをリナが覗き込んだ。
「どれ?――こんいんとどけ、あるふれっど、あめりあ。・・・って、婚姻届!?」
「あ、それ・・・!」
 アメリアが慌てて紙をひったくる。
「・・・実は小さい頃、大きくなったら結婚しようねって言ってたんです」
 そう言って、恥ずかしそうに笑った。
「何、じゃあアメリアの初恋の人って、アルフレッドなの?」
「はい。年の近い男の子はアルフレッドだけでしたからね、他に選びようがなかったっていうのもあるかもしれませんけど・・・」
 それでも、アルフレッドのことは大好きだったし、あの頃は何の疑いもなく、大きくなったら結婚するんだと思っていた。
 それが今では・・・
 ともすれば暗くなりそうな気持ちを振り払うように、アメリアはつたない字で書かれた手作りの婚姻届に目をやり、遠い昔に思いを馳せた。
 しばらくそれに目を通していたアメリアの視線がふと、一箇所で止まった。そしてそれきり動かなくなる。
「?どしたの?アメリア」
 リナの呼びかけにも答えない。
 アメリアが見ていたのは紙の一番下、隅っこに書かれた文字。上のつたない字とは明らかに違う、几帳面な字で一言、こう書いてあった。


          ”ごめんね”




              *




「アメリア、僕のこと好き?」
「うん、好き!」
「僕もアメリアのこと、好きだよ。ねえ、僕たち、結婚しようか」
「うん!じゃあ、教会に行かなきゃ!」
 言うが早いが、アメリアは駆け出そうとする。それをアルフレッドが慌てて呼び止めた。
「あ、アメリア、まだ駄目だよ!」
「どーして?」
「ほうりつで決まってるんだ。大きくならないと結婚できないんだよ」
 分かっているのかいないのか、アメリアはちょこんと首を傾ける。
「ふーん。じゃあ、どうすればいいの?」
「うーん・・・そうだ!いいこと考えた!」
「なあに?」
「アメリア、こんいんとどけって知ってる?」
「ううん、知らない」
「結婚する人は、それを書いて役所に出さなきゃならないんだ」
「へええ」
「だから、僕たちも今のうちに書いておこう!」
「うん、そうしよう!」
 二人は”こんいんとどけ”を書くべく、白い紙を求めて駆け出した。
 
 休憩中で誰もいないクリストファの執務室に入り込み、ちょうど良さそうな紙を探す。
「ええと、紙は・・・あった!これに、”こんいんとどけ”っと・・・。後は名前だ。”あるふれっど”・・・できた!アメリアも自分の名前を書くんだ」
「うん。”あーめーりーあ”。書いたよ!」
「よし、これで完成だ」
 傍から見ればどこが”完成”なんだ、という感じだが、彼の基準では完成らしい。
「これ、どうするの?」
「ほら、この前言ってたろ、タイムカプセル埋めようって。その中に一緒に入れるんだ。それで、大きくなってタイムカプセルを開けたときに、この婚姻届を役所に出して、結婚すればいいんだよ」
 自信満々に言うアルフレッドに、アメリアは瞳を輝かせて感心した。
「そっか。すごいね!!」
「うん!だから、大きくなるまで、絶対に一人で勝手に開けたりしちゃ駄目だよ!」
「わかった!」
「一緒に開けて、結婚するんだ。絶対の絶対に約束だからね!」
「うん!じゃあ、指きり!!」
 アメリアが小さな小指を差し出す。アルフレッドがそれに自分の小指を絡めた。
『ゆーびきーりげんまん、嘘ついたら針千本のーます、指きった!』




              *




「・・・・嘘つき」

 雨が一粒落ちて、地面に深く深く染み込んでいった。
 果たされることのなかった、約束を抱いて。




 それは、どうしようもないほど穏やかな、よく晴れた日の出来事。





END





*************

 なんか、思いっきりアルアメっぽいですね(汗)そういうつもりはなかったんですが・・・。一応、今のアメリアのアルフレッドへの気持ちは、あくまで従兄弟としての好きであって、恋愛感情はありません。ゼル一筋だし(笑)
 で、アルフレッドなんですが。自分がどんなに望んでも得ることのできない王位継承権をやがて得るだろうアメリアが羨ましくて、憎くて、でも真っ直ぐで純粋な彼女をどこかで求めてる―――その矛盾した感情の葛藤の結果、アルフレッドは権力を選び、魔族と契約して謀反を起こすことにつながった、と。で、最後の良心が、あの婚姻届に書かれた”ごめんね”に表れた、というわけです。まあ、すべては私の”こういうのがいいな”という妄想に過ぎないんですけどね(苦笑)

 では、ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございました。
 
 











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2881Re:遠い日の約束千恵風味 E-mail 4/3-12:45
記事番号2880へのコメント

こんにちは、はじめました、千恵風味です。
アルフレド、結構好きなんですよね・・・。

アメリアがアルフレッドを好きなのは、至極自然で、当たり前のこと
なんですよね・・・・。
従兄のお兄ちゃんってポジションは、彼女を羨む彼には、ちょっとキツ
かったのかも、とか、読んでおもいました。

でも、

> アメリアが見ていたのは紙の一番下、隅っこに書かれた文字。上のつたない字とは明らかに違う、几帳面な字で一言、こう書いてあった。
>
>
>          ”ごめんね”
には、泣けます!!
きっと、アルフレッドも、タイムカプセルのことを憶えていたんですね!
んで、事を起こす前に、ひとり掘り起こして、アメリアに伝言を書いた。
そして、以前よりもっと深くに、埋めた。
かなしい、です。
几帳面な字ってひとことがまた、涙をさそうんですよ!
アル!!
そして回想の、「うん!だから、大きくなるまで、絶対に一人で勝手に開けたりしちゃ駄目だよ!」って。
それでもアルは、“セイルーンの王位”の方を選んだんですね。
セイルーンの、ふたりの悲劇、みたいな。

>
> なんか、思いっきりアルアメっぽいですね(汗)そういうつもりはなかったんですが・・・。一応、今のアメリアのアルフレッドへの気持ちは、あくまで従兄弟としての好きであって、恋愛感情はありません。ゼル一筋だし(笑)
> で、アルフレッドなんですが。自分がどんなに望んでも得ることのできない王位継承権をやがて得るだろうアメリアが羨ましくて、憎くて、でも真っ直ぐで純粋な彼女をどこかで求めてる―――その矛盾した感情の葛藤の結果、アルフレッドは権力を選び、魔族と契約して謀反を起こすことにつながった、と。で、最後の良心が、あの婚姻届に書かれた”ごめんね”に表れた、というわけです。まあ、すべては私の”こういうのがいいな”という妄想に過ぎないんですけどね(苦笑)
>
> では、ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございました。

おもしろかったです。
あ、そぐわない感想かもしれないけど、でもおもしろかったです。
アルフレッドの冥福を祈ってます(笑)。
でわ。千恵。


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2919はじめまして雫石彼方 E-mail 4/10-14:42
記事番号2881へのコメント

 はじめまして。返事が遅くなってしまいましてすみませんでした。
 それにしても、こんなマイナーな組み合わせの話にまさか感想がいただけるとはっ!!


>きっと、アルフレッドも、タイムカプセルのことを憶えていたんですね!
>んで、事を起こす前に、ひとり掘り起こして、アメリアに伝言を書いた。
>そして、以前よりもっと深くに、埋めた。
>かなしい、です。
>几帳面な字ってひとことがまた、涙をさそうんですよ!
>アル!!
>そして回想の、「うん!だから、大きくなるまで、絶対に一人で勝手に開けたりしちゃ駄目だよ!」って。
>それでもアルは、“セイルーンの王位”の方を選んだんですね。
>セイルーンの、ふたりの悲劇、みたいな。

 そうなんです!!アメリアが掘り起こしたときになかなか出てこなかったのは、アルフレッドが前より深く埋めたからなんです。彼は、タイムカプセルと一緒に自分の良心も、アメリアへの思いも、謀反を起こすのにためらってしまう原因となる感情はすべて深く深く埋めてしまいたかった、という風に考えて書きました。

>おもしろかったです。
>あ、そぐわない感想かもしれないけど、でもおもしろかったです。
>アルフレッドの冥福を祈ってます(笑)。
>でわ。千恵。

 深い感想、どうもありがとうございました。
 では、私もアルフレッドの冥福を祈りつつ・・・(笑)

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2886Re:遠い日の約束斉藤ぐみ 4/3-18:59
記事番号2880へのコメント

おひさしのぐみです^^

いやぁ・・・
いいはなし書きますねぇ…
私も、書ければ良いんだけど、なんか、カッコ良く書けない…

>「嘘吐き」

良いですねぇ…
でも、結婚したかったんだろうか?
アメリア?
と思っていると…

>「ゼル一筋ですし…」

はいっ!!
思いっきり賛成です
アメリアには、ゼルです^^

では、つたない感想ですが…
また書いてくださいね^^
(ゼルアメ^^)

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2920誤解だあーっ!雫石彼方 E-mail 4/10-15:02
記事番号2886へのコメント

 こんにちは、ご無沙汰してますが、元気ですかー?
 感想、どうもです。”いいはなし”と言って頂けてうれしいです。

>>「嘘吐き」
>
>良いですねぇ…
>でも、結婚したかったんだろうか?
>アメリア?

 ちがーうっ!ちがうんだあーーっ!!
 自分でも書いてて、間違われそうだなー、とは思っていたんですが・・・。
「嘘つき」のセリフは、あくまで「一人で勝手に開けたりしちゃ駄目だよ」に対しての「嘘つき」です。だから、アメリアは別にアルフレッドと結婚したかったわけじゃないです。

>>「ゼル一筋ですし…」
>
>はいっ!!
>思いっきり賛成です
>アメリアには、ゼルです^^

 実は、「小さい頃、大きくなったら結婚しようねって言ってたんです」辺りでゼルがジェラシーでぴしいっ(怒)となってるのを入れようとしたんですが、彼が動いてくれませんでした。くそう、この甲斐性なしめ・・・!!(笑)

>では、つたない感想ですが…
>また書いてくださいね^^
>(ゼルアメ^^)

 ”ゼルアメ”と何気に付け足されてるところが笑えます。同時に愛も感じましたが(笑)
 そうですね、今度はゼルアメがんばります。
 では。

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