◆−Precious Memories 1−水晶さな (2003/9/10 23:43:15) No.15076
 ┣Precious Memories 2−水晶さな (2003/9/12 10:08:30) No.15090
 ┃┗Re:Precious Memories 2−祭 蛍詩 (2003/9/13 15:55:16) No.15093
 ┃ ┗ありがとうございます−水晶さな (2003/9/13 23:11:31) No.15098
 ┣Precious Memories 3−水晶さな (2003/9/13 23:21:56) No.15099
 ┃┗Re:Precious Memories 3−祭 蛍詩 (2003/9/14 02:00:16) No.15103
 ┃ ┗ほぼ予想通りかと・・・。−水晶さな (2003/9/14 22:49:22) No.15117
 ┗Precious Memories 4−水晶さな (2003/9/14 23:08:48) No.15119
  ┣Re:Precious Memories 4−祭 蛍詩 (2003/9/15 00:49:28) No.15124
  ┃┗ありがとうございました−水晶さな (2003/9/15 22:45:31) No.15129
  ┗読みました!−R.オーナーシェフ (2003/10/3 15:05:06) No.15248
   ┗ありがとうございます−水晶さな (2003/10/5 22:11:24) No.15262


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15076Precious Memories 1水晶さな URL2003/9/10 23:43:15



 アルカトラズシリーズ、5話目です。


 ==================================


 足音が聞こえた時、彼女は駆け寄るどころか遠ざかる為に走り出した。
 適当な物陰まで来ると、慣れた動作で身を伏せる。
 近付く足音に、聞き慣れた呼び声が混じった。
 もう少し。
 もう少しくらい「父」には心配をさせた方がいい。
 時間が無いといって、先に自分だけ送り出した当人は彼なのだ。
 顔を出して、人影が通り過ぎたのを確かめると、彼女はそっと足を進めた。
 「父」が去った逆方向へと。
 僅かなスリルの混じる行動を、楽しみ始めていたその時、
 石畳の凹凸に、爪先が落ちてつんのめった。
 手が宙をかいて、無意識に壁を掴む。
 指先が、壁に描かれた紋様をなぞった。
 本人の意図しない――しかし紋様にとっては正しい順番で。
 彼女が目を向けた時、既にその手は浮き上がったおぼろな光の中に消えていた。
 驚きに声をあげる暇もなく。
 光が、瞬(またた)いた。
「・・・・・・?」
 かすかな気配を感じて、父親が振り返っても、
 長く伸びる通路は無人だった。



 それは、世界から隔絶された文明の残骸だった。
 自然崇拝として、かつて此処に居た人々が崇めたのは「風」。
 今はその風によって、遺跡は徐々に崩壊していく。
「風を抱(いだ)く街・・・ウィド・ディ・カリス」
 古文書から顔を上げた黒髪の娘が呟いた。
 眼前に広がる光景に、まだ実感が沸かないといった風にも見える。
「街の最北端にある台座」
 隣に立つベージュのマントをまとった青年が指差す方向に、アメリアも目を向ける。
「面影すらないが、昔はあそこにポールが立ち、街を横断するほどの布が下がっていたそうだ」
 その布は風を表すとされた柔らかな萌黄色で、
 絶えず吹く南風に、布はその先を地面に触れる事なくなびき続けた。
「街の中心地を風の象徴である萌黄色の布が横切る。だから風を抱(いだ)く街だ」
 アメリアが感嘆の溜息をついた。
「そっくりなんですよ」
 唐突に呟かれた娘の言葉に、ゼルガディスが訝しげな目を向けた。
 それに気付いたアメリアが、慌てて説明を付け足す。
「昔読んだ小説です。『風の都』から来た女の子の話」
 両手の指先を合わせた格好で、記憶を手繰るかのように目を閉じた。
「羊飼いの男の子の前に、ある日異民族の格好をした女の子が現われるんです」
 牧場と小さな村しか世界を知らない彼に、娘は世界中のありとあらゆる出来事を話し、
 それでもまだ見ぬ世界があると言う彼女に、彼は共に旅をする。
「女の子は『風の都』から来た子でした。そこに住む人々にとって風は自身の一部で、流れに身を委ね空を舞う事ができたそうです」
「信仰的には似つかんこともないな」
 ゼルガディスがアメリアから、再び前方の遺跡に目を移した。
「――『風を己の一部と為す』。ウィド・ディ・カリスの別の意味だ」
「薀蓄(うんちく)が豊富だね。そろそろ行こうよ」
 ゼルガディスの神経を苛立たせた一言は、アメリアの背袋の中から聞こえた。
 すぼめられた口が開き、灰色の猫が顔を出す。
 その双眸は金と青のオッドアイ。
「そろそろ自分の足で歩け」
 首根っこを掴んで、ゼルガディスがブルーフェリオスを放り投げた。
 空中で回転すると、猫が器用に地面に着地する。
 顔を上げると同時に――その背が盛り上がり、伸び、人間の少年を形作った。
 二本足で立ち上がると、紺が基調の服装を正す。
「カッコつけてないでさっさと歩け」
 不機嫌さを隠そうともしないゼルガディスが前方を歩きながら告げた。
「やだねー常時ストレスためてる人は」
 近寄ってきたブルーフェリオスが小声でささやくと、アメリアが苦笑した。
 振り返ったゼルガディスが口の端をひくつかせる。
「・・・何で手を繋ぐ必要がある?」
「あ・・・」
「仲良しさんだから」
 この後アメリアが割って入るまで追いかけっこは止まらなかった。



 いがみ合いがやっと終了したのは、遺跡に入ってゼルガディスが辺りを調べ始めたからだった。
 少し離れた所を歩き回っていたブルーフェリオスに、アメリアが近寄る。
「あの、さっきはすみません」
「いいよ、別に」
 壁の装飾を指先でなぞる彼は、振り返りもせずに言った。
 ブルーフェリオスが近寄ってきた時、無意識に手を繋いだのはアメリアの方だった。
 ゼルガディスがそれを見て不機嫌になると、矛先をわざとそらす発言をしたのは彼だった。
「・・・・・・」
 左手を、見下ろす。
 手の平は、小さな手の温もりをまだ覚えていた。
 その手の持ち主の、声も、微笑みも。
「無理に話さなくて、いいよ」
 幼い声に不似合いなほど、深い優しさ。
「・・・はい」
 アルカトラズの気配は消えた。
 彼にはそれだけで充分だった。
 それからアメリアの方を向く。
「・・・アメリアは、銀色の精霊を見た?」
「え?」
 『扉』の向こうの出来事を思い出していたアメリアは、思考を読まれたかのような発言に驚いた。
「銀の長い髪で、空に浮いてたの。頭上かすめて突っ切られたから、思わず転倒しちゃったよ」
「ブルーフェリオスさんも見たんですか?」
「まぁ、ちらっとね」
 転倒させられたのが不愉快だったのか、顔をしかめたまま肩をすくめた。
「・・・あの人は精霊なんですか?」
「近いものだと思うよ。アメリアはトレントやウンディーネを見た事ある?」
 思考をめぐらせたアメリアが呟く。
「・・・ドリアードなら。物質に魔力が満ちた時生まれるんですよね?」
「それが自然的でも、人工的でもね。珍しい事じゃないけど、気になるのは・・・」
 離れた所で作業を続けているゼルガディスを一瞥してから、声をひそめる。
「アルカトラズの魔力を感じた事」
「え・・・!?」
「しーっ」
 アメリアが慌てて口元を押さえた。
「まだ確実な事じゃないから。ゼルガディスにも言わないでおいて。でも、もし本当なら」
 ブルーフェリオスが鎮痛な面持ちで呟いた。
「アルカトラザイトが結集化されて、精霊が生まれた可能性が高い」
「・・・・・・」
 返す言葉を思いつかない内に、ブルーフェリオスが背を向けて奥の方を調べに行った。
 『巨大な爆弾を作っているようなもの』――その発言をしたのはアメリア自身だった。
 その言葉を思い出し、アメリアが自分で自分を抱き締めた。



 地面に触れる足が、静電気のような刺激を感じる。
「磁力が変動してるな、ここは」
 ゼルガディスが顔をしかめた。
 魔力の制御と集中が乱されるのが不快なのだろう。
「魔法的要素を持つ建築物が始末されずに放置されたからね。そりゃ管理がなけりゃ狂うよ」
「魔法?」
「建築資材そのものに微量ながらミスリルが練り込まれてるよ。壁に描かれた紋様に魔力を注ぐ為に」
 ブルーフェリオスが先ほど調べていた紋様を指差す。
「これの効能は、風の流れを変える事」
「だから壁一面に描かれてるのか」
「あとは・・・記録だね。書物の代わり。風は情報の流出を防ぐから」
「風が?」
 アメリアが問うと、ブルーフェリオスは順に方角を指し示した。
「どの方向から風が吹いても、それは一回りして必ずこの街に戻ってくるよ」
 たとえば――と指先で壁の紋様をなぞる。
「これはごく簡単なもの」
 一定の形を描いた指先が壁から離れると、軌跡が淡く光を放った。
 首を傾げたアメリアの、その黒髪が揺れる。
「・・・風が」
 吹き抜ける空間などないのに、そこには確かに風が吹いていた。
 磁力が再び変動する。
 吹く風の中にも、紋様が放つものと似た光が散らばった。
「これが『記録』か?」
 触れようとしてもそれは、指先をからかうようにすり抜けるだけ。
「そう、読むには又手順が必要だろうね。残念だけどそこまではわからないよ。でも記録自体も壊れてる可能性が高いね」
「探せば無事なのもあるかもしれませんよ。幸い盗掘の跡は見られませんし」
 そう言って、何気なく壁に手を置いたアメリアがつんのめった。
「うひゃあっ!?」
 2秒後に、消える上半身。
 転倒した残りの足だけが、壁から出現していた。
「・・・幻影の壁か」
「お見事」
 ブルーフェリオスが手を叩いた。



「どうして『大丈夫か』の一言もないんですか」
「いつも顔面から落ちて無事だろう」
「それとこれとは話が別です!!」
「あーほら何か見えるよほら」
 憤慨したアメリアの矛先をそらすかのように、ブルーフェリオスが間に割って入った。
 視線をやると通路の先に、狭い部屋の空間をほぼ占める石碑。
 ――だが、その巨石には斜めに大きく亀裂が入っていた。
「・・・割れちゃってますね」
「風化にはかなわなかったって事だ」
「まぁ見てみようよ。どれどれ?」
 ブルーフェリオスの指先が石碑に触れるか触れないかの所で、
 それは唐突に「作動」した。
 驚愕の表情を浮かべる暇もなく、少年の姿が消える。
「え?」
 傍らから覗き込むように身を乗り出していたアメリアも、吸い寄せられる感覚に抗う余地も無く。
 石碑の亀裂が眼前に迫り、
 衝撃を予想して腕で頭をかばったものの、
 予想された痛打も何もなく、奇妙な浮遊感の後意識が揺らいだ。

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15090Precious Memories 2水晶さな URL2003/9/12 10:08:30
記事番号15076へのコメント


「――!?」
 眼前に居た筈の人間が二人も消えて、
 ゼルガディスが慌てて足を踏み出した時、それは起きた。
 吸い込んだ後は吐き出すかのように、亀裂から光が溢れ出て、
 身構えた瞬間、予想よりも早く突撃してきた。
 対応を誤り、勢いに負けてそのまま後方へと転げる。
 幸い頭を打つのだけは免れ、ゼルガディスが攻撃に転じようと咄嗟に相手の身体を掴んだ。
 それは、少女だった。
 アメリアと同年代にも見えるが、顔つきがどことなくまだ幼さを感じさせる。
「いったぁ!」
 おもむろに顔をしかめ、ゼルガディスの上で打ったらしい肘をさすっている。
 それ以上に不機嫌な顔で起き上がったゼルガディスに、少女がバランスを崩してさらに転がった。
「痛がるのは人の上からどいてからにしろ」
 こちらも痛そうに――背中をさすってから起き上がる。
 尻餅をついた少女がゼルガディスを見上げて――挙動を止めた。
 アッシュブラウンの髪を肩の上で切り揃えてはいるが、毛先がはねて外に広がっている。
 大きな瞳は深い海の色。但しアメリアのよりも暗みがかっている。
 緑色のカシュクールに似た裾の長い上着に、ショートパンツを履いていた。
 行動的な服装だが――意外に上質な布地を使っている。
「・・・・・・」
 容貌に驚く周囲の人々とは、違った驚愕の顔。
 それに気付いてゼルガディスが眉をひそめると、少女が勢い良く立ち上がった。
「ね、貴方名前は?」
「人に名を尋ねる時は」
「自分から名乗れ、ゴメンナサイ」
 少女が口を挟んで謝罪した。
「あたし、フェルティア」
 屈託の無い笑みで、首を傾けた。
 ゼルガディスがその態度にまだ訝りつつも自分の名を告げる。
「・・・へぇ」
「何が珍しい?」
「ううん、いい名前だよね」
 体の後ろで手を組み、フェルティアが興味深げに見つめてきた。
 平然と凝視してくる娘に奇妙な既視感を覚えるが、記憶とは結びつかない。
「・・・何処から来た?」
「遺跡歩いてたら迷っちゃって、親とはぐれたの」
 肩をすくめ、平然と言う。
「・・・親と来た?」
「うん。ホントはとーさんと来る筈だったんだけど、仕事が忙しいから先行ってろって放り出されて。ヒドイと思わない?」
 親の記憶もなく子を持った経験もなく、ゼルガディスが答えられずに聞き流した。
「連れがいるなら早く帰れ、こっちも忙しいんだ」
「紋様が勝手に作動して勝手に連れてこられたのに、帰り方がわかる訳ないじゃない」
 悪びれた様子も無く言い放つが、至極もっともな意見。
「ねぇ、貴方の連れもいなくなっちゃったの?」
 不本意ながらもそうだと告げると、何故か微笑んだ。
「探してあげる。どうせあたしも帰り道探さなきゃいけないし」
「大体お前が出てきたのはここだろ。ここを調べれば又戻れるんじゃないのか?」
「そう簡単にいくかなー」
 フェルティアが渋々と石碑に触れようとした時、後ろから唐突に引っ張られた。
 眼前を放射線が通り過ぎる。
 それは壁を貫き、たやすく溶解させた。
「――え?」
 石碑から又光が溢れ、
 黒い昆虫の足が宙に突き出た。
 地面を掴むと、その巨躯を大儀そうに抜き出す。
 黒い――男2人分はありそうな体格の甲殻虫。
 その顎には虫にはあり得ない鋭利な歯が剥き出している。
 背には不可思議な魔術の文字が、発光塗料のように光っていた。
「・・・お前のペットか?」
 後ろからフェルティアを引っ張ったゼルガディスが、うんざりした顔つきで剣を抜いた。
「知らないわよこんなの!!」
 憤慨したらしいフェルティアが、戦うつもりでいるのか身構える。
 ――しかし、反対を向いていた。
「いいから下がれ、この通路じゃ戦えん」
「だから、下がれないのよ」
 フェルティアの言葉に振り向くと、何故か通路を塞ぐようにもう一匹が前進してきている。
「いつの間に・・・」
 舌打ちして向き直ると、先に片付けようと石碑の前の虫に切りかかった。
 赤い光をまとわせたそれは、脚を狙ったにも関わらず跳ね返された。
「!?」
 はじかれた剣の反動で、ほんの数秒無防備になる。
 その瞬間を狙ったかのように、虫が光線を放とうと口を開けた。
 その喉の奥が見えた時、虫の体が痙攣して崩れ落ちる。
 後方の石碑から、短剣を握った少年の手が突き出ていた。
 ゼルガディスが咄嗟にその手首を掴むと、勢いをつけて引っ張り出す。
 アルカトラズを握ったままのブルーフェリオスが床に転がった。
「ぶはっ!!」
 水中から上がったかのように頭を振ると、立ち上がる。
「アメリアは!?」
 ゼルガディスの問いに、ブルーフェリオスは力なく首を横に振った。
「『扉』が一杯あり過ぎて、ここを探すのだけで精一杯だったよ」
「何だと!?」
「それよりこいつらだよ!! 変な『扉』も開いちゃったせいでこっちにまで流れ込んできたんだ!! 早く潰さないとこっちの『扉』までやられるよ!!」
「無駄話してないでさっさと出てきなさいよ!!」
 怒気をはらんだ声に二人が振り向くと、
 狭い通路の出口でフェルティアが睨みつけていた。
 その間に居た筈の虫はおらず、壁一面が黒く焦げている。
「・・・・・・」
「・・・誰、あれ」
「知るか」
 苦々しく呟くと、ゼルガディスが歩き出した。



 重力に逆らう滝。
 光景は、そんな風にも見てとれた。
 ただし流れ落ちるのは水ではなく、光。
 時折虹のように色を変え、強弱をつけ、何処へともなく消え失せる。
 その真中に居て、心地良いとも言える熱に包まれていた。
 最初飲み込まれた時は、もがくブルーフェリオスが必死に何処かの方向を目指して昇っていくのが見えたが、
 ついて行こうとした矢先、全く別の方向へ引っ張られた。
 不可思議な力ではなく、確かに手首を掴まれた感触。
 相手の手は見えなくとも、導かれていくのがわかった。
 抗おうとしなかったのは――それに全く瘴気も邪気も感じなかった事。
「何処に・・・」
 行くのかと言いかけて、言い直した。
「何をしたいんですか?」
 見えない相手に、呟く。
 滝の表面に、女のシルエットが浮かんだ。
『やっと話が出来る』
 長身の女性の体型。
 不透明な灰色だったその影は、足元から彩られていった。
 健康的に日焼けした肌と、身にまとう赤い衣装と、腰まで伸びた金の髪と。一房だけ混じる赤い前髪。
 開いた紅玉石色の双眸が、アメリアを見つめた。
 その目には、既視感を覚えた。
「・・・あなたが、ブルーフェリオスさんの御主人様ですか?」
 答えの代わりか、笑みを浮かべた。
『サラマンディラよ。サラと呼んでちょうだい』
「サラさん、ここは何処なんですか?」
 見回すが、別段何が見えるという訳でもない。
『アストラル・サイドに似たようなものかしら』
 単語に無意識に身を竦めたアメリアを見て、サラが苦笑して手を上げた。
『似たようなもの、よ。危ないものは入ってこないわ』
 心底安堵の表情を浮かべるアメリア。
 それから――思考が正常に働いたのか、質問が口を突いて出た。
「貴女は今何処にいるんですか。アルカトラザイトは結集化されてしまったんですか!?」
 ――私が見た銀の精霊は――
『後者の質問から先に答えるわね。そうよ』
 アメリアの目が驚愕に見開いた。
『どうして魔族がそれを可能にしたか――私の力を利用したからよ』
「貴女は・・・今」
『端的に言うと、敵の手中』
 憤りを抑えるかのように、サラが腕を組んだ。
『だから貴女の手を借りなければならないの。でもそれは今の力じゃ足りない』
「足りない?」
『一本のアルカトラズを砕くなら、貴女のホーリィ・ブレスで事足りるわ。でも結集化したアルカトラザイト――奴らは「破界結晶」と呼んでいたけど、それを砕くにはもっと大きな力が要る』
 サラが組んでいた腕を下ろし、真正面からアメリアを見つめた。
『貴女には更に高度な浄化魔法を会得してもらわなきゃならない。それを私が教える事ができても、使いこなせるようにならないと意味が無いの』
「高度な・・・でも、一日二日で会得できるようなレベルじゃないんですよ。ホーリィ・ブレスだって何年もかかって・・・」
『貴女の道は今アルカトラズに導かれている。その前段階は既に終えたわ』
 アメリアが眉をひそめた。
『カオス・ワーズを変えたホーリィ・ブレス。それを貴女は完璧に発動した』
 開いた唇から、言葉を発する事ができなかった。
 喉が震える。
 水を失ったかのように、ひりつく。
 憤りが全身を突き抜けた。
 押し込めていた心が、吠えた。
「貴女は・・・貴女は私をわざとハクヤと出逢うように仕向けたんですか!? ああなる事がわかっていて!!」
 掴みかかろうと伸ばした手は、何故かサラに触れられなかった。
 それが悔しくて顔が歪む。目頭が、熱くなった。
『アルカトラズが関与しなければ、あの少年も白夜もさまよい続けてい事に変わりはないわ』
「貴女が軽々しく言う資格なんてない!!」
 昂ぶった言葉に、自身が驚いた。
 咄嗟に胸を押さえても、動悸は治まらない。
「・・・貴女には、運命のほんのひとかけらでも」
 開いた手を握り締めて、
 覚えている温もりを確かめるように、
「私には忘れられない記憶になったんです。忘れちゃいけないんです」
『全ては必然のまま。アルカトラズの存在を正当化する権利も必要もない』
 それでも、とサラは続ける。
『貴女にしかできない事が、まだあるから』
 私は貴女を導く――



 扱う魔術は、年齢にしては上等。
 動作が荒っぽく見えるのは、戦闘経験の乏しさだろう。
 それでも個所個所動きを間違えていないのは、それなりの素質と教えがいいのか――
 それ以上フェルティアの考察を続けられないのは、彼にも少々手に余る相手だった為。
 剣をはじく上に、特定の魔術しか効果が無い。
 ブルーフェリオスの持つアルカトラズは何とか効くようだったが。
 別の個所にも『扉』が開いたのか、虫は先程よりも数を増していた。
「殲滅なんぞできるかこの数は!」
 ゼルガディスが苛立って叫ぶ。
 近くで駆け回っているブルーフェリオスが嫌そうな顔で振り向いた。
「僕のせいだって言わないでよ。僕だってこいつらと又出くわすなんて思わなかったよ」
 思わず足を止める。
「『また』?」
「また。もう何百年だか忘れたよ。もう1ランク上の奴が来たらアルカトラズも役に立たないから」
「どういう意味――」
 ゼルガディスが振り返ろうとした時、上空から影が差した。
 見上げた瞬間に、地に降り立つ。
 体積は、『虫』の三倍。
 背に並んだ、半透明の昆虫の羽根。
 その鱗の一つ一つが、昆虫の甲殻で形成された――竜。
 黒だけで彩られた、影のような姿が不自然に存在していた。
「アポクリファ・・・」
 ブルーフェリオスが呟いた。
 少し離れていたフェルティアが異変に気付いて振り向き、
 初めて目にした異形過ぎる物体に悲鳴をあげた。
 その声に反応してか『竜』の口らしき部分がフェルティアの方を向き、
 口腔に青い光が発された瞬間、ゼルガディスが前に飛び出した。
「と――」
 フェルティアが何か言いかけ、爆発した衝撃波に2人の姿がかき消される。
「ゼルガディス!!」
 叫んだブルーフェリオスの前に、研がれた尻尾が振り下ろされた。

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15093Re:Precious Memories 2祭 蛍詩 2003/9/13 15:55:16
記事番号15090へのコメント

 お久しぶりです〜! 祭だったりします。 テスト前なので時間がなくて遅れてしまいました;
 アルカトラズシリーズですねっ! ゼルさんとルー君のじゃれ合いがみれて幸せを感じていましたv ―と思ったらアメリアちゃんとルー君どこかにとばされちゃいましたーー?! ゼルさん置いてけぼりくらってますねv
 ―というわけで、レスさせて頂きます!

> それは、少女だった。
 あれま、違う世界から飛んできちゃったんでしょうか?

> アメリアと同年代にも見えるが、顔つきがどことなくまだ幼さを感じさせる。
>「いったぁ!」
> おもむろに顔をしかめ、ゼルガディスの上で打ったらしい肘をさすっている。
> それ以上に不機嫌な顔で起き上がったゼルガディスに、少女がバランスを崩してさらに転がった。
>「痛がるのは人の上からどいてからにしろ」
 そりゃま、そうですねv

>「ね、貴方名前は?」
>「人に名を尋ねる時は」
>「自分から名乗れ、ゴメンナサイ」
> 少女が口を挟んで謝罪した。
>「あたし、フェルティア」
> 屈託の無い笑みで、首を傾けた。
> ゼルガディスがその態度にまだ訝りつつも自分の名を告げる。
>「・・・へぇ」
>「何が珍しい?」
>「ううん、いい名前だよね」
> 体の後ろで手を組み、フェルティアが興味深げに見つめてきた。
 うわぁv すごく良い娘ですねv可愛いですvv

> 親の記憶もなく子を持った経験もなく、ゼルガディスが答えられずに聞き流した。
 そうですよね、ゼルさんが知っているのは赤いじいさんだけですもんね。

> 石碑から又光が溢れ、
> 黒い昆虫の足が宙に突き出た。
> 地面を掴むと、その巨躯を大儀そうに抜き出す。
> 黒い――男2人分はありそうな体格の甲殻虫。
> その顎には虫にはあり得ない鋭利な歯が剥き出している。
> 背には不可思議な魔術の文字が、発光塗料のように光っていた。
 ぎゃぅーーっ!! なんか不気味ですよぅ!!

>「・・・お前のペットか?」
 んなわけないでしょーがっ!(笑)

> フェルティアの言葉に振り向くと、何故か通路を塞ぐようにもう一匹が前進してきている。
>「いつの間に・・・」
> 舌打ちして向き直ると、先に片付けようと石碑の前の虫に切りかかった。
> 赤い光をまとわせたそれは、脚を狙ったにも関わらず跳ね返された。
>「!?」
> はじかれた剣の反動で、ほんの数秒無防備になる。
> その瞬間を狙ったかのように、虫が光線を放とうと口を開けた。
 うわわわっピンチじゃないですか!

> その喉の奥が見えた時、虫の体が痙攣して崩れ落ちる。
> 後方の石碑から、短剣を握った少年の手が突き出ていた。
> ゼルガディスが咄嗟にその手首を掴むと、勢いをつけて引っ張り出す。
> アルカトラズを握ったままのブルーフェリオスが床に転がった。
 ルー君は戻って来れたんですねv

> 滝の表面に、女のシルエットが浮かんだ。
>『やっと話が出来る』
> 長身の女性の体型。
> 不透明な灰色だったその影は、足元から彩られていった。
> 健康的に日焼けした肌と、身にまとう赤い衣装と、腰まで伸びた金の髪と。一房だけ混じる赤い前髪。
 誰なんでしょう?

> 開いた紅玉石色の双眸が、アメリアを見つめた。
> その目には、既視感を覚えた。
>「・・・あなたが、ブルーフェリオスさんの御主人様ですか?」
> 答えの代わりか、笑みを浮かべた。
 あぁ、成る程! ルー君の御主人様でしたか。

>「貴女は今何処にいるんですか。アルカトラザイトは結集化されてしまったんですか!?」
> ――私が見た銀の精霊は――
>『後者の質問から先に答えるわね。そうよ』
> アメリアの目が驚愕に見開いた。
>『どうして魔族がそれを可能にしたか――私の力を利用したからよ』
>「貴女は・・・今」
>『端的に言うと、敵の手中』
 んで、力をりようされてるんですか。

> サラが組んでいた腕を下ろし、真正面からアメリアを見つめた。
>『貴女には更に高度な浄化魔法を会得してもらわなきゃならない。それを私が教える事ができても、使いこなせるようにならないと意味が無いの』
 そういうわけだったんですか。

>「高度な・・・でも、一日二日で会得できるようなレベルじゃないんですよ。ホーリィ・ブレスだって何年もかかって・・・」
>『貴女の道は今アルカトラズに導かれている。その前段階は既に終えたわ』
 前回の事ですか?

> アメリアが眉をひそめた。
>『カオス・ワーズを変えたホーリィ・ブレス。それを貴女は完璧に発動した』
> 開いた唇から、言葉を発する事ができなかった。
> 喉が震える。
> 水を失ったかのように、ひりつく。
> 憤りが全身を突き抜けた。
> 押し込めていた心が、吠えた。
>「貴女は・・・貴女は私をわざとハクヤと出逢うように仕向けたんですか!? ああなる事がわかっていて!!」
 あれはすごく可哀想でした…。

> 掴みかかろうと伸ばした手は、何故かサラに触れられなかった。
> それが悔しくて顔が歪む。目頭が、熱くなった。
>『アルカトラズが関与しなければ、あの少年も白夜もさまよい続けてい事に変わりはないわ』
>「貴女が軽々しく言う資格なんてない!!」
> 昂ぶった言葉に、自身が驚いた。
> 咄嗟に胸を押さえても、動悸は治まらない。
 怒るのも無理ないですよね、今回は本当に。

>「・・・貴女には、運命のほんのひとかけらでも」
> 開いた手を握り締めて、
> 覚えている温もりを確かめるように、
>「私には忘れられない記憶になったんです。忘れちゃいけないんです」
>『全ては必然のまま。アルカトラズの存在を正当化する権利も必要もない』
> それでも、とサラは続ける。
>『貴女にしかできない事が、まだあるから』
> 私は貴女を導く――
 頑張れ〜アメリアちゃん!

> 扱う魔術は、年齢にしては上等。
> 動作が荒っぽく見えるのは、戦闘経験の乏しさだろう。
> それでも個所個所動きを間違えていないのは、それなりの素質と教えがいいのか――
 素質と教え…つまり、親御さんが良かったと。 誰なんでしょうね。

> それ以上フェルティアの考察を続けられないのは、彼にも少々手に余る相手だった為。
> 剣をはじく上に、特定の魔術しか効果が無い。
> ブルーフェリオスの持つアルカトラズは何とか効くようだったが。
> 別の個所にも『扉』が開いたのか、虫は先程よりも数を増していた。
 うぁ、最悪です。

> 近くで駆け回っているブルーフェリオスが嫌そうな顔で振り向いた。
>「僕のせいだって言わないでよ。僕だってこいつらと又出くわすなんて思わなかったよ」
> 思わず足を止める。
>「『また』?」
>「また。もう何百年だか忘れたよ。もう1ランク上の奴が来たらアルカトラズも役に立たないから」
 そうか、そういえばルー君は何百年も生きてるんですね。

>「どういう意味――」
> ゼルガディスが振り返ろうとした時、上空から影が差した。
> 見上げた瞬間に、地に降り立つ。
> 体積は、『虫』の三倍。
> 背に並んだ、半透明の昆虫の羽根。
> その鱗の一つ一つが、昆虫の甲殻で形成された――竜。
> 黒だけで彩られた、影のような姿が不自然に存在していた。
>「アポクリファ・・・」
> ブルーフェリオスが呟いた。
 アルカトラズでも倒せない1ランク上の敵さんのようですね。

> 少し離れていたフェルティアが異変に気付いて振り向き、
> 初めて目にした異形過ぎる物体に悲鳴をあげた。
> その声に反応してか『竜』の口らしき部分がフェルティアの方を向き、
> 口腔に青い光が発された瞬間、ゼルガディスが前に飛び出した。
 フェルティアちゃんをかばってるんですね!! かっこいいなぁvv

>「と――」
> フェルティアが何か言いかけ、爆発した衝撃波に2人の姿がかき消される。
 『と』のあとはなんでしょう? ってそれよりも二人はっ?!
  
>「ゼルガディス!!」
> 叫んだブルーフェリオスの前に、研がれた尻尾が振り下ろされた。
 うわぁ、ルー君までピンチです!

 続きがすごく気になります〜。
 そういえばふと思ったんですけど、『仕事が忙しいから先行ってろ』なんて言って娘を一人で放り出しちゃうあたり、ゼルさんと似てますね、フェルティアちゃんのお父さんv
 ルー君もピンチっぽくて、続きが待ち遠しいです!
 では、今回はこの辺で。




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15098ありがとうございます水晶さな URL2003/9/13 23:11:31
記事番号15093へのコメント

 祭さんお久しぶりです。忘れかけた頃に(苦笑)再開するシリーズですが、お付き合い頂けて嬉しい限りです。
 今回含みが多過ぎてあまりコメントを返せないのが辛いのですが、フェルティアを気に入って頂けたようでほっとしました。今回アメリアが欠場なので代わりにゼルガディスと行動します(ブルーフェリオスもおりますが)。
 シリーズ全体の主軸がアメリアに移行中なので、事態把握の為にどうしても単独行動せざるを得ない状況です。本当はゼルガディスと一緒に動かしたいのですが(泣)。
 そして遅過ぎるような気もしますがブルーフェリオスのマスターも出しました。名前すら出してなかったので印象が薄いのですが(汗)。ネタ晴らしの段階に入ってきたので迂闊に辻褄の合わない事を書いてしまわないか物凄く心配しております(阿呆)。
 「Precious Memories」は全4〜5話ほどの短編になります。「Night with a midnight sun」よりは明るくなりますので、宜しければ最終話までお付き合い下さい。コメントありがとうございました(^^)

 
 
 
  

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15099Precious Memories 3水晶さな URL2003/9/13 23:21:56
記事番号15076へのコメント


 サラの姿が、おぼろげに霞んだ。
 周囲の光が消え、その奥から大理石の壁が浮かび上がった。
 見回すと、その視線を追うように風景が広がった。
 城の装飾と似た内装。但し、あまり華美なものは無い。
 調度品が無く実験道具や本で埋められた室内は、研究室だと判別がついた。
 ――何処ですか、ここ――
 呟くが、音にはならない。
 上から見下ろすような姿勢で、眼下の光景は展開していく。
 歩き回る白衣を着た男達だけが、時の移り変わりを告げる。
 扉が開く音がして、せわしなく動いていた研究者達の足が止まった。
 部屋の真中へ歩み出てくる、一人の娘に視線が注がれる。
 腰まで流れる豊かな黒い髪、威厳を湛えた深い海色の相貌。
 上質の緋色の衣装をまとった娘が、真中で立ち止まると一同を見渡した。
 その全員が――彼女に恭しく礼をした。
「パリス」
「はい」
 名を呼ばれた責任者らしい初老の男が、一歩前に出た。
「他の者はいいわ。仕事を続けなさい」
 その言葉に、一斉に再び行動を始める。
「パリス、どういう事かしら。三日も待っているのにブレイカーの案が全く出されないというのは」
「サラ様。我々も懸念してはいるのですが、ブレイカーに今力を割く訳にはいかないのです。魔族の動きが穏やかでない情報も入ってきておりますし。急がねば・・・」
 サラと呼ばれた娘が顔をしかめた。
「事態を理解していないのはどっち? アルカトラザイトを扱うという危険を、わかっていないとは言わせないわよ」
「しかしサラ様。後の事態を危惧し過ぎては前進すら出来ません」
「全く心配もなく、作るだけ作ればいいとでも思っているの?」
「本国から、その為に守護聖獣を二体も」
「主人を持たない使い魔が、どれほど意味がないかわかって言っているの!?」
 態度を改めない研究員に、娘が語調を強くした。
 その毅然とした物言いに威圧され、男が押し黙る。
 うんざりしたように肩をすくめた娘が話題を変えた。
「・・・コア・アルカトラザイトの抽出は?」
「終了しております。あとは守護聖獣に接触させるだけで」
「それは必要ないわ」
 腕を振って行動を制止した娘が、巨大なガラスの筒の前に歩み寄る。
 その中央には、微小な結晶が揺らめきながら球体を保とうとしていた。
「コアは私が受け持つ」
「サラ様!?」
 聞き捨てならないとばかりに、己の仕事に戻っていた研究員達も振り向いた。
 振り返った娘の眼差しは、有無を言わさぬ力を備えて。
「誰に頼まれた訳でなく、自分達の勝手で始めた研究よ。魔族討伐の為と崇高な理由をかかげて、それが失敗した時の事態を全く重く見ていない。恥を知りなさい!」
 圧倒的な、威圧。
 大の男達が自分の年齢の半分にも満たない娘に気圧(けお)されている。
「これは私の命令です。納得しないならば陛下の勅命を頂いてくるまで」
 男達の顔を端から端まで見渡して、娘が告げた。
「王位継承権を持つ者として、セイルーンの誇りは汚(けが)させない」
 ――セイ・・・ルーン?――
 疑問符を浮かべた瞬間、光景が消えた。
 再び、光が巻き上げられる空間へと戻される。
 アメリアの前には、サラマンディラが浮かんでいた。
 その金髪を黒に変えて、
 瞳の色を海色にしたなら、
 それは、先程サラと呼ばれていた娘と同じ姿だった。
「あなたは・・・」
 戸惑うアメリアの前で、サラは微笑んだ。
 何処となく、物悲しさを含んだ笑みで。
『貴女が出会うもの、得るもの、全ては必然のままに。それが貴女を傷つけたとしても、恨むのは私だけにして』
 視線を外す事なく、真正面から見据えて。
『滅びたエヴェレーンの為に、生き残る本国の為に。私の力が尽きる前に、やり遂げねばならないの』
 伸ばしたサラの両腕が、アメリアの頬に触れるか触れないかの所で止まった。
 急激に体内で膨れ上がった力に、アメリアが身を震わせた。
「な――」
『使いこなせるかどうかは、貴女次第』
 指の末端まで、髪の毛の先まで焦がすように通り抜けた熱が、心臓の位置に凝縮し、固まる。
 唐突に消えたように感じられたその力の、余熱だけが皮膚を撫でていた。
『待っているわアメリア。アルカトラザイトの大樹が育つ場所。私の半身が貴女を導く』
「――待って、あなたは本当に、『セイルーン』と・・・」
 声は音として発せず、視界が白濁した。



「ぶはっ!!」
 再び水中から脱出したように――彼は息を吹き返した。
 鋼鉄の尾で切断される前に、アルカトラズを構えられたのは不幸中の幸いという所か。
 それでも勢いに勝てる訳はなく、剣共々後方にはじかれた。
 ガラスを失い四角の穴だけとなった窓から建物の中に落ち、
 その衝撃でようやく均衡を保っていた家具調度品が全て崩れた。
 頭を振ってから身体を抜き出し、隙間に落ち込んでいた尻尾を救出して埃を払う。
 アルカトラズも、部屋の何処かにある筈だった。
 その力を引き出して人間の形体を保っていた為、手から離れた瞬間猫へと戻ってしまう。
「もーこんな時に!」
 ヤケになり積み上がった本の隙間に顔を埋めた時、頭上から光が差した。
 もう敵が来たのかと慌てて顔を抜くと、勢い余って後方に転がった。
 壁に背を痛打して、ようやく止まる。
「あつつ・・・」
「何してるの、ブルス」
 呼び掛けは、懐かしさと切なさを同時に蘇らせた。
 予想もしない声色に――だが忘れはしないその声に、ブルーフェリオスが顔を上げる。
 耳の前にだけ長く垂れた若草色の髪。
 その荘厳な色とは対照的に、穏やかで涼しげな金の瞳。
 まだあどけなさの残る少女の顔には、一見不似合いに見える憂いの笑みが何故か定着していた。
 その爪先は床に触れておらず、
 背中に生えた鳥の翼もはばたいている訳でもなく、
 ただ、其処に揺らめいている。
「・・・レディス」
 名を呼ぶと、かすかにうなずいた。
「一人で、奔走してるみたいね」
「奮闘と言ってくれないかな」
「どっちでもいいわ。貴方が一人で背負っている事に代わりは無いもの」
「それはもういいよ。ここの特殊な磁場のおかげで出てこられたんでしょ? 今ちょっと急いでるから、用件があるなら早く――」
 その姿が、ブルーフェリオスが話す間にも陽炎(かげろう)のように揺れた。
「励ましにも慰めにも来たんじゃないわ。ただ伝えに来たの。もうすぐ終結が来るって」
「いつから予言が出来るようになったの?」
「貴方と違ってもう『砕けた』私だから感じ取れるものもある。それを見誤らない限り、もうすぐ」
 唇が最後の言葉を告げ終わる前に、ゆらりと輪郭がゆがんだ。
「レディ・・・」
「又磁場が変化してる。もう姿をとどめるのも無理ね。ブルス、私はいつだって貴方と共にあるから」
 笑みだけが、最後まで浮かんでいた。
 ――マスターを、助けて。
「・・・・・・」
 何もなかったような静寂の中、
 ただ一人残されて、左眼にそっと前脚を当てた。
「・・・必ず。この金の眼がある限り」



「・・・・・・・・・」
 次におぼろげに見えたのは、小さな娘の姿。
 陽光を受けて照り返す優しいアッシュブラウンの髪。
 フレアスカートが地面に擦れるのも構わず、庭で猫を追いかけている。
 幾分か減速して走っている猫の方が、遊んでやっているという様子だった。
 ――が、油断をしたのか子供の手が猫の尻尾を掴み、
 引き寄せるともつれ合いながら地面を転がった。
 それをテラスから眺めていた女性が手を口元へ持っていった。
 後ろ姿しか見えないが、笑っているのは震える肩でわかる。
 その後方から女性に近付いた男が、彼女に声をかけ、
 黒髪の女性が振り返った所で、再び視界が白濁した。
『未来を守りたいなら、未来を信じること』
 声が聞こえ、
 銀の光が、アメリアの手を掴んだ。

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15103Re:Precious Memories 3祭 蛍詩 2003/9/14 02:00:16
記事番号15099へのコメント

 こんにちは〜!祭です! イエ、このシリーズを忘れた事なんて有りませんよ! なんかだんだん謎が解明されていって、とても楽しいですv
 ―というわけで、レスさせて頂きます!

> 上から見下ろすような姿勢で、眼下の光景は展開していく。
> 歩き回る白衣を着た男達だけが、時の移り変わりを告げる。
> 扉が開く音がして、せわしなく動いていた研究者達の足が止まった。
 研究者?何の研究なんでしょう?

> 部屋の真中へ歩み出てくる、一人の娘に視線が注がれる。
> 腰まで流れる豊かな黒い髪、威厳を湛えた深い海色の相貌。
> 上質の緋色の衣装をまとった娘が、真中で立ち止まると一同を見渡した。
 サラさん…ですよね?

> その全員が――彼女に恭しく礼をした。
>「パリス」
>「はい」
> 名を呼ばれた責任者らしい初老の男が、一歩前に出た。
>「他の者はいいわ。仕事を続けなさい」
> その言葉に、一斉に再び行動を始める。
 一番偉い人なんでしょうか、サラさん。

>「パリス、どういう事かしら。三日も待っているのにブレイカーの案が全く出されないというのは」
>「サラ様。我々も懸念してはいるのですが、ブレイカーに今力を割く訳にはいかないのです。魔族の動きが穏やかでない情報も入ってきておりますし。急がねば・・・」
> サラと呼ばれた娘が顔をしかめた。
>「事態を理解していないのはどっち? アルカトラザイトを扱うという危険を、わかっていないとは言わせないわよ」
 アルカトラズの研究ですか。 ブレイカーってことは壊す物…でしょうか?

>「コアは私が受け持つ」
>「サラ様!?」
> 聞き捨てならないとばかりに、己の仕事に戻っていた研究員達も振り向いた。
> 振り返った娘の眼差しは、有無を言わさぬ力を備えて。
>「誰に頼まれた訳でなく、自分達の勝手で始めた研究よ。魔族討伐の為と崇高な理由をかかげて、それが失敗した時の事態を全く重く見ていない。恥を知りなさい!」
 かっこいいです!サラさん。 全然悪い人には見えないんですけどね。アメリアちゃんにやらせた事を考えると……う〜む。

> 圧倒的な、威圧。
> 大の男達が自分の年齢の半分にも満たない娘に気圧(けお)されている。
>「これは私の命令です。納得しないならば陛下の勅命を頂いてくるまで」
> 男達の顔を端から端まで見渡して、娘が告げた。
>「王位継承権を持つ者として、セイルーンの誇りは汚(けが)させない」
> ――セイ・・・ルーン?――
 王位継承権ってことは姫なんでしょうか。セイルーンの。

> 疑問符を浮かべた瞬間、光景が消えた。
> 再び、光が巻き上げられる空間へと戻される。
> アメリアの前には、サラマンディラが浮かんでいた。
> その金髪を黒に変えて、
> 瞳の色を海色にしたなら、
> それは、先程サラと呼ばれていた娘と同じ姿だった。
 でも色が違うんですよね。どうしてなんでしょう?

>「あなたは・・・」
> 戸惑うアメリアの前で、サラは微笑んだ。
> 何処となく、物悲しさを含んだ笑みで。
>『貴女が出会うもの、得るもの、全ては必然のままに。それが貴女を傷つけたとしても、恨むのは私だけにして』
> 視線を外す事なく、真正面から見据えて。
>『滅びたエヴェレーンの為に、生き残る本国の為に。私の力が尽きる前に、やり遂げねばならないの』
 やっぱり悪い人じゃないですね! よく分かんないけど。

>「ぶはっ!!」
> 再び水中から脱出したように――彼は息を吹き返した。
> 鋼鉄の尾で切断される前に、アルカトラズを構えられたのは不幸中の幸いという所か。
 良かった〜v ルー君怪我してないようでv

> それでも勢いに勝てる訳はなく、剣共々後方にはじかれた。
> ガラスを失い四角の穴だけとなった窓から建物の中に落ち、
> その衝撃でようやく均衡を保っていた家具調度品が全て崩れた。
> 頭を振ってから身体を抜き出し、隙間に落ち込んでいた尻尾を救出して埃を払う。
 尻尾ってことは猫さんになっちゃったんですね。

> アルカトラズも、部屋の何処かにある筈だった。
> その力を引き出して人間の形体を保っていた為、手から離れた瞬間猫へと戻ってしまう。
 あぁ成る程です。

>「もーこんな時に!」
> ヤケになり積み上がった本の隙間に顔を埋めた時、頭上から光が差した。
> もう敵が来たのかと慌てて顔を抜くと、勢い余って後方に転がった。
> 壁に背を痛打して、ようやく止まる。
 ちょっとおどじさんな所もかわいいですv

>「あつつ・・・」
>「何してるの、ブルス」
 ブルス? ルー君の略ですか。

> 呼び掛けは、懐かしさと切なさを同時に蘇らせた。
> 予想もしない声色に――だが忘れはしないその声に、ブルーフェリオスが顔を上げる。
> 耳の前にだけ長く垂れた若草色の髪。
> その荘厳な色とは対照的に、穏やかで涼しげな金の瞳。
> まだあどけなさの残る少女の顔には、一見不似合いに見える憂いの笑みが何故か定着していた。
> その爪先は床に触れておらず、
> 背中に生えた鳥の翼もはばたいている訳でもなく、
> ただ、其処に揺らめいている。
 ほぇ? 翼? しかも違う扉から来たのにルー君のお知り合いですか?

>「・・・レディス」
> 名を呼ぶと、かすかにうなずいた。
>「一人で、奔走してるみたいね」
>「奮闘と言ってくれないかな」
 あははは;

>「励ましにも慰めにも来たんじゃないわ。ただ伝えに来たの。もうすぐ終結が来るって」
>「いつから予言が出来るようになったの?」
>「貴方と違ってもう『砕けた』私だから感じ取れるものもある。それを見誤らない限り、もうすぐ」
 砕けた? 人間でいうと亡くなっちゃってるんですね。 それに、終結?アメリアちゃんが何かするんでしょうか?

> 唇が最後の言葉を告げ終わる前に、ゆらりと輪郭がゆがんだ。
>「レディ・・・」
>「又磁場が変化してる。もう姿をとどめるのも無理ね。ブルス、私はいつだって貴方と共にあるから」
> 笑みだけが、最後まで浮かんでいた。
> ――マスターを、助けて。
 レディスちゃんも良い女の子です!でも『砕けた』んですよね…。かわいそうです。

>「・・・・・・」
> 何もなかったような静寂の中、
> ただ一人残されて、左眼にそっと前脚を当てた。
>「・・・必ず。この金の眼がある限り」
 金の眼…ルー君はオッドアイですもんね。 金の眼って、レディスちゃんも金の眼なんですよね。 関係が有りそうです。

>「・・・・・・・・・」
> 次におぼろげに見えたのは、小さな娘の姿。
> 陽光を受けて照り返す優しいアッシュブラウンの髪。
> フレアスカートが地面に擦れるのも構わず、庭で猫を追いかけている。
> 幾分か減速して走っている猫の方が、遊んでやっているという様子だった。
> ――が、油断をしたのか子供の手が猫の尻尾を掴み、
> 引き寄せるともつれ合いながら地面を転がった。
> それをテラスから眺めていた女性が手を口元へ持っていった。
> 後ろ姿しか見えないが、笑っているのは震える肩でわかる。
> その後方から女性に近付いた男が、彼女に声をかけ、
> 黒髪の女性が振り返った所で、再び視界が白濁した。
 微笑ましい光景ですねv アッシュブラウンの髪の娘に黒髪の女性…んでもって猫さん…尻尾はひっぱっちゃぁいけませんよ!っじゃなくて、男の人は黒髪の女性と夫婦で女の子は二人の娘でしょうか? んでもってその女の子は『フ』の音から始まったり……? 夫婦は……。

>『未来を守りたいなら、未来を信じること』
> 声が聞こえ、
> 銀の光が、アメリアの手を掴んだ。
 やっぱり未来なんですね、さっきの光景は。

 謎が少し分かり、また謎が増えました; そしてその謎を、勝手に想像してみたりしてます;
 続きが楽しみです〜vv そういえばゼルさんとフェルティアちゃんは無事なんでしょうか?無事な事を祈りつつ、今回はこの辺で失礼させていただきます!

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15117ほぼ予想通りかと・・・。水晶さな URL2003/9/14 22:49:22
記事番号15103へのコメント

 有り難い御言葉を頂いてしまいました。水晶です。
 次作でサラ本体(この言い方もどうかと・・・)が登場する予定なので、彼女のネタばらしに入りました。セイルーンとの関係は次作に持ち越しですが(引っ張り過ぎ)。
 最終段階に近付きましたので、レディスも登場しました。ブルーフェリオスがオッドアイなのと関連していますがそれは最終話で(持ち越し過ぎです)。
 フェルティアに関しましてはもう何も言わずとも・・・(苦笑)。
 続けて4話目をUPしていきますので、答え合わせにもならないかもしれませんが、どうぞ(笑)。
 

 水晶さな拝.
 

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15119Precious Memories 4水晶さな URL2003/9/14 23:08:48
記事番号15076へのコメント

「ねぇ起きて! ねぇ!!」
 意識を覚醒させたのは、不本意ながらも頭上から響く声だった。
 あまりの声量に頭痛を覚えた。
「お願いだから・・・ごめんなさい!! あたしが隠れなきゃこんな事にならなかったのに・・・!!」
 無造作に起き上がると、上から被さるようにしがみついていたフェルティアが転がった。
「・・・そう思うならリカバリィぐらい使ったらどうだ」
 こういう時ほど己の身体構造に感謝しない時はない。
 ――それ以外に別段喜ばしい事など、何も無いのだが。
「う、うわっ!? 生きてるの!? ホント大丈夫なの!?」
「二度も言わせるな」
「うわぁん良かったあぁ!!」
 フェルティアが突然涙ぐみ、彼に飛びついた。
 無傷では済まなかった個所に手が置かれ、ゼルガディスが激痛にうめく。
「ごめん!!」
 その反応に、咄嗟にフェルティアが治癒魔法を唱えた。
 その呪文がリカバリィではなくリザレクションだった事に、ゼルガディスが驚いた。
 ――何処で習得した?
「ね、さっきの男の子無事かな」
「ブルーフェリオスか? 奴の事を心配してる暇なぞない」
 フェルティアがはたと回復の手を止めた。
「ブルーフェリオス? あの男の子が?」
 知っているかのようなフェルティアの物言いに、ゼルガディスが眉をひそめる。
「・・・それがどうした?」
「道理で腕輪が反応しない筈よ!!」
 思わず耳を塞ぎたくなる声量で叫ぶと、フェルティアが踵(きびす)を返して走り出した。
「おい!!」
 物陰になっていた為「虫」からは死角になっていた場所だった。
 そこから一人で飛び出しては――
「ヴィスファランク!!」
 ――聞き慣れた、詠唱だった。
 だがその声は、紛れも無くフェルティアのもの。
 追って物陰から出たゼルガディスが、唖然とした。
 進行上に居た虫達が、フェルティアの一撃で潰れていた。
「・・・何だ、あいつは」



「・・・銀の精霊」
 絶えず揺らぎ、視界の確保もままならない状態で、色だけが判別出来た。
 自分の手を掴む、その色を。
「貴女が、私をサラさんの所へ連れて行ったんですね」
 銀の目が、見つめ返したような気がした。
 だがアメリアには――その奥の、青が見える。
 彼女がサラの半身だという証拠が。
『「扉」が開いた衝撃で、ウィド・ディ・カリスに魔物が流れ込んだ』
「・・・え?」
『かつて、エヴェレーンを滅ぼした、漆黒の虫』
 自らの体の感覚もないのに、強張ったような気がした。
『知識の庫とする為に、エヴェレーンとウィド・ディ・カリスは「扉」で繋がれていた。貴女を導く為に、全ての「扉」を開けねばならなかった。過去の魔物達が今、ウィド・ディ・カリスを襲っている』
「そんな・・・ゼルガディスさんとブルーフェリオスさんは!?」
『そして偶然が一つ・・・未来との「扉」が開いた。彼女が今加勢している』
「・・・未来?」
 アメリアが尋ね返した瞬間、唐突に手を放された。
『未来を守りたいなら、未来を信じる事』
 落ち込んでいく感覚と、浮かび上がる感覚と、
 「扉」に吸い込まれる衝撃に、意識が揺らいだ。
『我はピリオド、終止符を打つ者』



 地が揺らいだ時、ブルーフェリオスが「アポクリファ」と呼んだ怪物がもう一体出てきたのかと思った。
 振り向いて――それがフェルティアが消えた方角だったと気付く。
 舌打ちして走り出そうとした時、地響きと共にそれは姿を現した。
 銀の毛並みに、青の双眸。
 精悍な顔つきに、雄々しい咆哮。
 背に一対の翼の生えた、巨躯の銀獅子――
 更にゼルガディスを当惑させたのは、その背に堂々と跨(またが)るフェルティアの姿だった。
 左手首の腕輪から伸びた、光状の手綱が獅子の首に巻きついている。
「行きなさいブルス!!」
 命令に応えて、獅子が咆哮する。
 翼を広げて跳躍すると、頭(こうべ)を巡らせて口腔から炎を吐いた。
 魔法的な光を放つ黄金の炎が、虫達を焼き尽くす。
「あっちもよ!!」
 無造作に鬣(たてがみ)を掴むと、フェルティアが獅子の首の向きを変えた。
 動作は少々荒々しいが――手綱さばきは見事と言うべきか。
 ゼルガディスが突っ立っているのを見ると、炎に巻かれたくなければ下がっていろと怒鳴られた。
 別段フェルティアにこれ以上の加勢は必要なかったが、姿の見えない相手が気になっていた。
 いくら巨体の獅子でも、先ほどの「アポクリファ」と比べると体格差があり過ぎる。
 それを懸念しているのか、銀獅子が忙(せわ)しなく辺りを見回した。
 既に虫の姿は見えなくなっていた。
「・・・何処行ったの、さっきのでっかい・・・」
 フェルティアの言葉は、中途で途切れた。
 頭上から差した影に、振り仰ぐ暇もなかった。
 押し潰されるのだけは免れたが、尻尾にはじかれて獅子と共に地面を転がる。
 フェルティアの手綱が離れた途端、銀獅子は猫の姿に縮んだ。
「・・・ブルーフェリオス!?」
 驚愕に叫んだが、呻いたフェルティアが身を起こしたのを見て、慌てて駆け寄ろうとする。
 ――が、鋭く尖った尻尾が邪魔をした。
「フェルティア!!」
 射程距離から逃げるにはフェルティアの動作が遅過ぎる。
 アポクリファが口を開けた。
「――!」
 フェルティアが無駄だと知りつつ、反射的に手で頭を覆う。
 口腔に、青い光が灯った。
「――ファイアー・ボール!」
 アポクリファの頭上を飛び越えた炎の玉が、急激に方向を変えた。
 口腔に誘われるように飛び込み、今しがた吐かれようとした光を押し返し、爆発する。
 爆炎に包まれたアポクリファの頭部がのけぞった。
 その体勢で後方の視界が開け、
 フェルティアは――真正面の遺跡の上に威風堂々と立つ、少女の姿を見た。
 白い法衣をまとった、黒髪に深い海色の双眸の少女を。
「あ――」
「フェルティア!」
 名を呼ばれ、フェルティアが反射的に身を竦めた。
 その視線に射抜かれ、目で伝えられた言葉が、脳内を回り始める。
 ほとんど無意識に、フェルティアの手が持ち上がった。
 膝を立て、足を踏ん張り、まだ煙に巻かれているアポクリファから少しずつ離れながら。
 呪文詠唱が双方から始まったのを見て、ゼルガディスが走り抜けざまにブルーフェリオスを拾い上げ、遠くへ放った。
 転がった灰猫が不平の鳴き声をあげたが、無視して岩陰に飛び込む。
「永久を彷徨う悲しきものよ、歪みし哀れなるものよ」
 アメリアの指先が、規則正しく印を刻む。
 開いた双眸は、数時間前に見た少女とは思えないほど深い憂いを秘めて、
 研ぎ澄まされた精神力に、光が応じた。
「我の浄化の光もて、世界と世界を結ぶ道、歩みて永久に帰りゆけ!」
 謳(うた)い返すように言霊を紡ぐフェルティアの、動作は全くアメリアと同じで。
 鏡に映る虚像のように、正対称の二人は完璧にその呪文を完成させた。
「「ホーリィ・ブレス!」」
 二人を間にした中心――アポクリファの足元に瞬間的に描かれた魔法陣が光を放ち、
 ルーンの全てが応えるように力を放った。
「――!!」
 その衝撃音とアポクリファの断末魔の叫びに、ゼルガディスが思わず耳を塞ぐ。
 真下から噴き上げた聖なる光が、恐ろしいほどに猛り狂い、
 アポクリファの中枢をもぎ取ると、抱え込んだまま空中に消失した。
 衝撃波だけが轟音を響かせて四散する。
「・・・・・・・・・」
 フェルティアは呆然と、
 自らの手から発された呪文の効果と、体の大半を奪われて崩れ落ちていく魔物を見ていた。
「・・・ふえ」
 今更ながら腰が抜けたのか、その場にへたりこむ。
 アメリアが遺跡の上から飛び降りると、落ち着いた様子で歩いてきた。
 今しがた放った自分の魔法に、驚いた気配も見せない。
「ゼルガディスさん、大丈夫ですか?」
「・・・・・・ああ」
 爆風で被さった砂埃を払いながら、ゼルガディスが立ち上がった。
 一目見てゼルガディスの無事を確かめると、アメリアがそのままフェルティアに近付き、腕を取って起き上がらせた。
「あ、あの・・・」
「フェルティア」
「わっ!」
 少し強めの呼びかけに、フェルティアは驚くというよりも条件反射的に身を竦めた。
 近付いていたゼルガディスの後ろに回りこみ、横から顔を出す。
「・・・何で知ってるんだ?」
 ゼルガディスが訝しげに眉をひそめても、アメリアは無視して同じ口調で続けた。 
「ゼルガディスさんに迷惑かけちゃ駄目ですよ」
 フェルティアに敬称を付けない呼び方と、その言葉の意味がわかっていないのはゼルガディスだけだった。
「・・・はぁい」
 一転して素直に返事をしたフェルティアが、ゼルガディスの腕から手を放す。
「ご両親が心配してるから、そろそろ帰りなさい」
「はーい」
 アメリアが使ったという「扉」の場所を指示され、フェルティアが二人に背を向けた。
 ――が、ゼルガディスの方を振り返ると、小走りに近寄って耳元に囁く。
「未来に希望はあるから、諦めちゃダメよ」
「はぁ?」
 ゼルガディスが訳がわからず尋ね返すと、フェルティアが微笑む。
「バイバイ、またね」
 それだけを言うと、あっさりと走り出した。
「気を付けて帰るんですよ」
 残されたゼルガディスが、少女の消えた地面の上にリボンが落ちているのを見つけた。
 赤に近い、濃い桃色のリボン。
 確か少女が飾りの為か腕に巻きつけていたもの。
 その中央に白い糸で刺繍がされており、
 その文字を目で追ったゼルガディスは、更に眉をひそめた。
『フェルティア=リル=グレイ=セイルーン』



「いつまで丸まってるつもりだ」
「感傷に浸ってる所を掴まれて酷使されたあげく、更に放り投げられたら誰だって人生イヤになるよ」
 地面に丸まった猫の、尻尾だけが投げやりに左右に振られた。
「最近僕の扱いがひどくなる一方だよ」
「まぁまぁ。見つかりましたよ、ホラ」
 近寄ったアメリアがアルカトラズを差し出す。
 その柄に触れた手が五本の指を持つ人間の手に変わり、
 手を起点にして体の全てが変化した。
 腰を伸ばして、少年が億劫げに起き上がる。
「サラさん、見つけましたよ」
 立ち上がったのを確認してからアメリアが告げると、ブルーフェリオスが目を見張った。
「・・・マスターを?」
「何?」
「銀の精霊が導いてくれるそうです」
 二人が同じように眉をひそめたのを見て、アメリアが思わず吹き出した。
  


「・・・だから、勝手に歩き回るなと言っただろ!」
「だぁーってぇ、とーさん来るの遅いんだもん」
「元々最初から一緒に来る約束をしてたのはあなたでしょう? それなのに仕事があるからって先に行かせて」
「・・・急な仕事だったんだ」
「また仕事のせいにするー」
「・・・・・・」
「フェルティア、その辺りで許してあげなさい。父上も忙しい中時間を作ってきたんだから」
「母さんがそう言うなら仕方ないけどー」
「さ、日も暮れてきた事だし帰りましょう」
 背中を押されて、フェルティアが歩き出す。
「ね、かーさん」
 先を歩く父親に気付かれないよう、小声で。
「とーさんって、昔っからヒネた心配性なんだね」
 前方の背中を指差して言う娘に、母親が笑いを堪えきれずに吹き出した。
「ええ。昔からですよ」



 銀の光に導かれ、旅路は続く。

「それはそうと・・・アメリアどうしてお前フェルティアを知ってたんだ?」
 初対面のフェルティアを、ためらう事なくその名を呼んだ。
「フェルティア。空から来た『風の都』の少女。」
 ゼルガディスが拾ったリボンは、アメリアの左腕に巻きつけられていた。
 その感触をいとおしむかのように、右の指先が生地を撫でる。
「あの・・・昔読んだ小説のか?」
「いつか私に娘が生まれたら、そう名付けようと思ってたんです」
 先を歩くアメリアが、振り返って微笑んだ。
「未来を守りたかったら、未来を信じることだって教わったんですよ」 
 サテンの生地が、風の名残に吹かれたようにたなびいた。


 ================================

 シリーズ最終章まであと1話。
 次作、「Coppelia Requiem」

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15124Re:Precious Memories 4祭 蛍詩 2003/9/15 00:49:28
記事番号15119へのコメント

 こんばんは!祭です!
 いきなりですが、レスさせて頂きます!


> その反応に、咄嗟にフェルティアが治癒魔法を唱えた。
> その呪文がリカバリィではなくリザレクションだった事に、ゼルガディスが驚いた。
> ――何処で習得した?
 すごいですよね、その年でリザレクションとは!

>「ブルーフェリオス? あの男の子が?」
> 知っているかのようなフェルティアの物言いに、ゼルガディスが眉をひそめる。
 やっぱりお知り合いですか?! じゃぁ、ひょっとしてアメリアちゃんの見た光景の中の猫さんはルー君?!

>「・・・それがどうした?」
>「道理で腕輪が反応しない筈よ!!」
 腕輪…?

>「ヴィスファランク!!」
> ――聞き慣れた、詠唱だった。
> だがその声は、紛れも無くフェルティアのもの。
> 追って物陰から出たゼルガディスが、唖然とした。
> 進行上に居た虫達が、フェルティアの一撃で潰れていた。
 つ、強いです! さすが鋼鉄正義娘さんの娘さん!(多分;)

>「・・・銀の精霊」
> 絶えず揺らぎ、視界の確保もままならない状態で、色だけが判別出来た。
> 自分の手を掴む、その色を。
>「貴女が、私をサラさんの所へ連れて行ったんですね」
> 銀の目が、見つめ返したような気がした。
> だがアメリアには――その奥の、青が見える。
> 彼女がサラの半身だという証拠が。
 そうなんですか?! 気づかなかった…。


>『そして偶然が一つ・・・未来との「扉」が開いた。彼女が今加勢している』
>「・・・未来?」
 未来…とするとやっぱり!

> 地が揺らいだ時、ブルーフェリオスが「アポクリファ」と呼んだ怪物がもう一体出てきたのかと思った。
> 振り向いて――それがフェルティアが消えた方角だったと気付く。
> 舌打ちして走り出そうとした時、地響きと共にそれは姿を現した。
> 銀の毛並みに、青の双眸。
> 精悍な顔つきに、雄々しい咆哮。
> 背に一対の翼の生えた、巨躯の銀獅子――
 かっこ良さそうですけど、誰ですか?!

> 更にゼルガディスを当惑させたのは、その背に堂々と跨(またが)るフェルティアの姿だった。
> 左手首の腕輪から伸びた、光状の手綱が獅子の首に巻きついている。
 フェルティアちゃんのペットですか?!

>「行きなさいブルス!!」
 ほえ? ブルスってことは……ルー君っ?!

> 命令に応えて、獅子が咆哮する。
> 翼を広げて跳躍すると、頭(こうべ)を巡らせて口腔から炎を吐いた。
> 魔法的な光を放つ黄金の炎が、虫達を焼き尽くす。
 をを!すごいです!!

>「あっちもよ!!」
> 無造作に鬣(たてがみ)を掴むと、フェルティアが獅子の首の向きを変えた。
> 動作は少々荒々しいが――手綱さばきは見事と言うべきか。
 かっこいいですね! ルー君もフェルティアちゃんも!

> ゼルガディスが突っ立っているのを見ると、炎に巻かれたくなければ下がっていろと怒鳴られた。
 女の子に怒鳴られてますよゼルさんv

>「・・・何処行ったの、さっきのでっかい・・・」
> フェルティアの言葉は、中途で途切れた。
> 頭上から差した影に、振り仰ぐ暇もなかった。
> 押し潰されるのだけは免れたが、尻尾にはじかれて獅子と共に地面を転がる。
> フェルティアの手綱が離れた途端、銀獅子は猫の姿に縮んだ。
 フェルティアちゃんもルー君もピンチです! というか、やっぱルー君だったんですね!

>「フェルティア!!」
> 射程距離から逃げるにはフェルティアの動作が遅過ぎる。
> アポクリファが口を開けた。
>「――!」
> フェルティアが無駄だと知りつつ、反射的に手で頭を覆う。
> 口腔に、青い光が灯った。
 ぎゃーーっ!! やばいじゃないですか二人とも(一人と一匹?)!

>「――ファイアー・ボール!」
> アポクリファの頭上を飛び越えた炎の玉が、急激に方向を変えた。
> 口腔に誘われるように飛び込み、今しがた吐かれようとした光を押し返し、爆発する。
 危機一発ですね!

> 爆炎に包まれたアポクリファの頭部がのけぞった。
> その体勢で後方の視界が開け、
> フェルティアは――真正面の遺跡の上に威風堂々と立つ、少女の姿を見た。
> 白い法衣をまとった、黒髪に深い海色の双眸の少女を。
 救世主はアメリアちゃんでしたか。
 
> 呪文詠唱が双方から始まったのを見て、ゼルガディスが走り抜けざまにブルーフェリオスを拾い上げ、遠くへ放った。
 あぁ!酷い扱いです!

> 転がった灰猫が不平の鳴き声をあげたが、無視して岩陰に飛び込む。
 ルー君、災難ですね。

>「永久を彷徨う悲しきものよ、歪みし哀れなるものよ」
> アメリアの指先が、規則正しく印を刻む。
> 開いた双眸は、数時間前に見た少女とは思えないほど深い憂いを秘めて、
> 研ぎ澄まされた精神力に、光が応じた。
>「我の浄化の光もて、世界と世界を結ぶ道、歩みて永久に帰りゆけ!」
> 謳(うた)い返すように言霊を紡ぐフェルティアの、動作は全くアメリアと同じで。
> 鏡に映る虚像のように、正対称の二人は完璧にその呪文を完成させた。
>「「ホーリィ・ブレス!」」
> 二人を間にした中心――アポクリファの足元に瞬間的に描かれた魔法陣が光を放ち、
> ルーンの全てが応えるように力を放った。
 かっこいいです!! 親子ホーリーブレスですね!!(←勝手に親子って決めてるし;)

> アメリアが遺跡の上から飛び降りると、落ち着いた様子で歩いてきた。
> 今しがた放った自分の魔法に、驚いた気配も見せない。
 なんか、成長しましたね、アメリアちゃん。

>「あ、あの・・・」
>「フェルティア」
>「わっ!」
> 少し強めの呼びかけに、フェルティアは驚くというよりも条件反射的に身を竦めた。
 いつもそんなに怖いんですか、アメリアちゃん;;

> 近付いていたゼルガディスの後ろに回りこみ、横から顔を出す。
 あ、なんか可愛いですv

>「ゼルガディスさんに迷惑かけちゃ駄目ですよ」
> フェルティアに敬称を付けない呼び方と、その言葉の意味がわかっていないのはゼルガディスだけだった。
 蚊帳の外ですね。

> 残されたゼルガディスが、少女の消えた地面の上にリボンが落ちているのを見つけた。
> 赤に近い、濃い桃色のリボン。
> 確か少女が飾りの為か腕に巻きつけていたもの。
> その中央に白い糸で刺繍がされており、
> その文字を目で追ったゼルガディスは、更に眉をひそめた。
>『フェルティア=リル=グレイ=セイルーン』
 をを!ちゃんとグレイって入ってます!!

>「いつまで丸まってるつもりだ」
>「感傷に浸ってる所を掴まれて酷使されたあげく、更に放り投げられたら誰だって人生イヤになるよ」
> 地面に丸まった猫の、尻尾だけが投げやりに左右に振られた。
 その動作、可愛すぎですvv それにしても、今回は結構酷い扱い受けられてましたものね、ルー君。

>「最近僕の扱いがひどくなる一方だよ」
 前回は突き飛ばされた挙句、ゼルさんに踏まれ、尻尾で吊り下げられてましたしね;

>「・・・だから、勝手に歩き回るなと言っただろ!」
 おv ゼルと―さんですねvv

>「だぁーってぇ、とーさん来るの遅いんだもん」
>「元々最初から一緒に来る約束をしてたのはあなたでしょう? それなのに仕事があるからって先に行かせて」
>「・・・急な仕事だったんだ」
>「また仕事のせいにするー」
>「・・・・・・」
 なんか性格変わってませんねぇv

>「フェルティア、その辺りで許してあげなさい。父上も忙しい中時間を作ってきたんだから」
>「母さんがそう言うなら仕方ないけどー」
>「さ、日も暮れてきた事だし帰りましょう」
> 背中を押されて、フェルティアが歩き出す。
>「ね、かーさん」
> 先を歩く父親に気付かれないよう、小声で。
>「とーさんって、昔っからヒネた心配性なんだね」
 ヒネた心配性…(笑) 昔っからってことは、やはり今も…vv

> 前方の背中を指差して言う娘に、母親が笑いを堪えきれずに吹き出した。
>「ええ。昔からですよ」
 妻と娘にこう言われてるゼルさんって…v

>「それはそうと・・・アメリアどうしてお前フェルティアを知ってたんだ?」
> 初対面のフェルティアを、ためらう事なくその名を呼んだ。
 あ、それは不思議でした。

>「フェルティア。空から来た『風の都』の少女。」
> ゼルガディスが拾ったリボンは、アメリアの左腕に巻きつけられていた。
> その感触をいとおしむかのように、右の指先が生地を撫でる。
>「あの・・・昔読んだ小説のか?」
>「いつか私に娘が生まれたら、そう名付けようと思ってたんです」
> 先を歩くアメリアが、振り返って微笑んだ。
 私はてっきり正義パワーで分かったのかと、または愛の力。(←冗談です;)

>「未来を守りたかったら、未来を信じることだって教わったんですよ」 
> サテンの生地が、風の名残に吹かれたようにたなびいた。
 良い終わり方ですねぇ。(しみじみ)

> シリーズ最終章まであと1話。
> 次作、「Coppelia Requiem」
 次の作品も楽しみにさせて頂きます!
 
 それにしても、今回は結構謎が解明しました! 少し増えましたが。(レディスちゃんの事とか。)
 とても楽しかったですvv

 では、今日はこの辺で!

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15129ありがとうございました水晶さな URL2003/9/15 22:45:31
記事番号15124へのコメント


 コメントありがとうございます、水晶です。
 見た目と行動でバレるバレないの問題どころはなかったのですが(笑)、未来の娘フェルティアが今回だけ加勢しました。ミドルネームに父親の家名入りです。
 含みを明かしつつ更に含みを加えたら結局スッキリしないんじゃと思いつつ(爆)、あとはネタばらしのみになっていくので少しは読み易いかと・・・。
 シリーズにすると他の物が書けなくなるので辛いのですが(不器用)、最終章まであと1話挟むだけですので何とか頑張ります(^^;)
 お付き合いありがとうございました。 

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15248読みました!R.オーナーシェフ 2003/10/3 15:05:06
記事番号15119へのコメント

うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!
叫びたくもなります。そ、そうくるのかあああっ、と。
え?セイルーン?え?え?え?と読んでいる途中では思いましたが。未来の娘ですか。正義のヴィスファランクもしっかり受け継がれていますね。最後のシーンで、アメリアの言葉を聞きながら、ゼルはどう思ったんでしょうね。
さて、次回作がコッペリア・レクイエム!?うわぁ、なんか意味深だな。鎮魂歌?コッペリアって、確か少し前のテレ東深夜アニメのオープニングで歌ってたなぁ。コッペリアの柩って。なんか、古典でそういうのがあったんですか?よくは知らないんですがね。すいません。勉強不足。

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15262ありがとうございます水晶さな URL2003/10/5 22:11:24
記事番号15248へのコメント

 レスが遅くなりました。水晶さなです。
 話の軸がアメリアに移りつつあるせいか、主体がアメリア寄りになってきました。娘もゼルガディスと行動するのに父親似だと非協力的になってしまうので(苦笑)、母親似になりました。正義の口上をさせると一発でバレてしまうのでさせなかったのですが(笑)。
 次作ですがイメージソングとして「コッペリアの柩」が丁度良いかと。私も歴史的知識はほとんど無いので大抵名称だけ借りております(要勉強)。
 ネタバレになってしまうので多くは語れないのですが、今回が短かったので次はもう少しじっくり書きたいと思っております。
 コメントありがとうございました。

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