◆−Lunatic Night−水晶さな (2003/4/20 18:00:03) No.14034
 ┣ルーさん(汗)−猫楽者 (2003/4/22 12:59:32) No.14052
 ┃┗消えては登場するキャラです(爆)−水晶さな (2003/4/22 22:27:28) No.14067
 ┣Lunatic Night 2−水晶さな (2003/4/22 21:55:30) No.14066
 ┣Lunatic Night 3−水晶さな (2003/4/24 22:40:40) No.14092
 ┣Lunatic Night 4−水晶さな (2003/4/26 23:36:47) No.14106
 ┗Lunatic Night 5−水晶さな (2003/4/29 01:41:01) No.14123
  ┗まさかそう来るとわ・・・!(笑)−雫石 彼方 (2003/4/29 16:14:51) No.14126
   ┗アメリアらしさを追求しまして(爆)−水晶さな (2003/4/29 22:55:41) No.14128


トップに戻る
14034Lunatic Night水晶さな URL2003/4/20 18:00:03



 ス、スローペースにも程が・・・(泣)。
 泣き言は置いといてアルカトラズ3話目です。

 ===================================


 赤月が、妖艶な輝きを放つ夜更け。
 先日の雨が残りまだぬかるんだ道に、足跡が残されていく。
 息を切らせ駆けていくその様相は、土にめり込むように残った穴が如実に示す。
 背中を這い上がる不安感と恐怖が、思考を停止させ足に走る事だけを強要する。
 逃げる先を選択する事も、逃げきれる可能性を計算する事も今の彼女には無理だった。
 気配はぬかるみに足跡を残す事もなく、首筋に忍び寄り、
 風に乱れる髪をかき分けて、彼女の項(うなじ)に触れた。
「・・・・・・・・・・・・・・・!!」
 白い指は闇に伸ばしても、虚空を掴むだけで、
 細く響く悲鳴も、夜の静寂(しじま)に溶け消えた。


「あの東側に見える塔の名残。今は廃城ですが、全盛期は大陸の3分の1近くを支配していたといわれるヴィルストア城です」
 数歩先を歩く黒髪の娘が、ガイドが楽しいのか人差し指を立てて説明を続ける。
「宗教国家だったので、兵達も皆敬虔な信者。その為結束が強く、並の軍隊では太刀打ちできなかったそうです」
「死を恐れないってことか?」
 意外と博識な娘の説明が面白かったのか、後方を歩く男がフードを直しながら尋ねた。
「えーと、どちらかというと逆ですね。神がついているから絶対に負けないと信じているんです」
「思い込みは強いな」
「ゼルガディスさん、その一言で片付けちゃ身もフタもないですよ」
 自身も聖職者であるが故か、さらりと流された事が不満だったらしく、アメリアが口を尖らせる。
「で、続きは?」
 怒らせるつもりはなかったのか、ゼルガディスが話を促して怒りをそらそうとする。
「軍の中心、最強を誇るのが神聖騎士団(ホーリーナイツ)。彼らは騎士であり司祭でもあったそうです」
「ほぅ、そりゃ大変そうだな」
「ヴィルストア王国は長い戦いの末に、その当時大陸を支配していた帝国を滅ぼし、広大な領地を手に入れましたが、後は急速に衰退していきます」
「信仰を広める暇もなかったのか」
 アメリアが残念そうに首を振った。
「危機的状態に陥っている時ほど信仰心というのは増大します・・・平和が訪れた事により信仰が薄れ、信者達が離散してしまったんです。故に国家を維持する事ができなくなり、結果的にヴィルストア王国も、帝国が滅びた数十年後に滅びました」
「今は瓦礫の山と成り果てたか」
 ゼルガディスが地図付きのガイドブックを1枚めくった。
「歴史では有名ですから、遺跡としては人気ありますね。観光地に仕立て上げて周辺の宿泊施設が異様に増えたとか」
「・・・人間はいつまでもたくましいな」
 嘆息すると、遠くなり始めた廃城をちらりと見やった。
「そろそろ見えていい頃だな」
「はい。ヴィルストア王国全盛期時代に、聖堂が建てられた」
 ばっと進行方向へ身をひるがえしたアメリアが、街の方角を指差した。
「――アズシヌの街」


「旅人は久方ぶりです。皆観光名所のヴィルストア遺跡へ行ってしまいますからね」
 街の真中に建てられた、古風な石造りの教会。
 ヴィルストア全盛期の名残か、聖殿といっていいほど建物は巨大で部屋数も多い。
 過去修道員達が使っていた部屋を改装して、宿を兼ねているという。
 この街に宿を作らないのは、こうして教会の維持費を稼ぐ為らしい。
 アメリアより少し年上の頃であろうか、アッシュブラウンの髪に緑の双眸の神官が頭を下げた。
「わたくし神官のシスリア=ヴィヴィニスと申します。普段は教会で祈りを捧げながら、宿の仕事も慈善事業の一端として行っております。勿論無償という訳にはいかないのですが・・・」
「歴史価値ある建築物を守る為です、正当な行いですよ!」
 アメリアの返事に、シスリアが微笑んだ。
 笑顔を浮かべると年頃の娘らしく、若さが表出する。
「それにしても、神官装束が赤とは珍しいな」
 横を通り過ぎて行くシスターと、シスリアを見てゼルガディスがつぶやく。
 思い出したくない人物の好んだ色だった事を思い出して、わずかに顔をしかめた。
「赤は血液の色。血液は生のシンボルです。我らが神の教えは『よく食(は)め、生を育(はぐく)め』ですから」
「だから赤い色の神官装束をまとっているんですか」
 シスリアがうなずいた。
「人の子は誰しも血の祝福を受けて誕生します・・・いえ、怖い想像をしないで下さい」
 青ざめたアメリアを見てシスリアが苦笑する。
「子が母の胎内から生まれる時、血を浴びているでしょう? 生のシンボルである血液に祝福を受けているという意味です」
「・・・ああ」
 ぽんと手を打って、アメリアが恥ずかしそうに頭をかいた。
「すみませんイメージが単純で」
「いえ、一般的に『血』と言ってあまり良いイメージは浮かびませんからね」
 部屋まで案内すると、シスリアが最後の忠告を付け加えた。
「地下室は管理の手が回らない為封鎖しております。御手洗いと間違えてよく入りこんでしまう人が多いのでお気を付け下さい。蜘蛛の巣だらけになってしまいますから」
 想像したのか、アメリアが身震いした。


 ヴィルストア城が観光地として管理がされるまでに盗掘が相次ぎ、
 貴重な資料その他諸々は持ち去られ、今では崩れかけた城が残っているに過ぎない。
 故に過去ヴィルストアの支配化にあった街に、分散した資料かもしくは写本を当てにして探しにきた。
 ――が。
「・・・思ったよりも蔵書は少ないですね」
「ヴィルストア本国があるのに、重要書物はそう置けないだろう」
 本を書棚に戻して、ゼルガディスが答えた。
「それにここは教会が図書館代わりだ。聖書や宗教史が優先されるのは当たり前だろうな」
「・・・あれ? この聖書、魔物の記述もありますよ。珍しくないですか?」
 アメリアが広げた本を差し出してきた。
「・・・・・・・・・クドラク・・・【血を食らう者】?」
 本を受け取って、ページをめくる。
「・・・宗教だと善と悪の対立の記述は珍しくないが・・・これは、実在する魔物だな」
「実在するんですか? クドラクなんて聞いた事ないですよ?」
 ゼルガディスが広げた本を覗き込みながら尋ねる。
「この地方の言葉で発音が変わっているだけだ。聞き慣れた言葉に言い換えると『ヴァンパイア』」
「吸血鬼!?」
 言葉を口にしてから、気付いたのか口に手を当てる。
「生のシンボルである『血』を食らう者・・・だから天敵なんですね」
 納得したようにうなずき、返された本を閉じた。
「・・・クレアバイブルらしい物も見つからないし、アルカトラズの気配もさっぱりしませんね」
「長期戦だ。そんなにぽこぽこ重要物が出てきたら大変だろうが」
「・・・まぁ、ゼルガディスさんから前向きな言葉が」
「・・・・・・」
「あ、嘘です怒らないで下さいぃ」
 アメリアが慌ててゼルガディスの袖を掴もうとした時、廊下からざわついた声が聞こえた。
「道を開けて! 聖堂に寝台を用意して!!」
 荒々しい足音と共に叫んでいるのは、シスター・シスリアの声のようだった。
 アメリアがそっと図書室の扉を開けると、シスリアが視界を横切り、その後を担架を持った男二人が続いた。
 ざわついていたシスター達も、シスター長の命令で各自の場所へ戻っていく。
 静けさの戻った廊下に出て、アメリアとゼルガディスがシスリアの消えた方向を見やった。
「何でしょう。ちょっと行ってみます?」
「病人か何かじゃないのか」
「お手伝いできるかもしれませんから」
 ゼルガディスが少し迷った時、シスリアの消えた先からシスターが一人駆けてきた。
「アメリアさん! お願いです手伝って下さい!!」
 アメリアが人差し指で自分を指した。
「・・・はい?」


 清浄な空間の中に、逃げ場を失った不浄の気が出口を求めて暴れている。
 ――そんな風に感じたのは、強(あなが)ち間違いでもなかったらしい。
 狭い個室の寝台に、縄で縛り付けられた若い娘が転がされて、
 暴れてもがくその娘を大の大人が二人がかりで押さえつけていた。
 猿ぐつわを今にも食いちぎりかねない勢いに、アメリアがたじろぐ。
「・・・な、何ですかこれは」
 寝台の枕もとに居たシスリアが、先のとがった十字架を手にして聖詞を唱えていた。
 アメリアを連れてきたシスターが小声で耳打ちする。
「シスリア様の浄化が終わるまで、何か捕縛となる魔法をかけて頂きたいのです」
 『浄化』というからにはこの娘をトランス状態から治めるのだろうと、アメリアが判断して呪文を唱える。
「光の戒め、意のままに糾(あざな)え・・・ラファス・シード!」
 アメリアの両手から放たれた光が、ねじれて綱を形成し娘の体を覆い尽くす。
 人の力では抗(あらが)えない圧力にねじ伏せられて、娘が猿ぐつわを噛み締めた。
「赤き雫に宿りたし、祝福されし命の源」
 十字架を両手で持つシスリアが、落ち着いた様子で聖詞を呟く。
「聖なるかな、生なるかな、食(は)む喜び、育(はぐく)む喜び」
 杭(くい)のように尖った十字架の先で、シスリアが自らの腕に傷をつける。
「赤き血潮、万物にも代えられぬ命の源」
 滲み出た血が、横たわる娘の額に落ちて、
 耳をつんざくばかりの絶叫が響き渡った。
「我らが聖の導きにて、生よ目覚めん」
 額に落ちた血が、蒸発するように煙を上げて。
 激しく身をよじっていた娘が、糸が切れたように気を失った。
 その様子を見ていた男達が安堵の息を吐く。
「空き部屋で寝かせましょう。お二方、お願いします」
 シスリアに声を掛けられて、男が再び娘を担いだ。
 気を失っているだけ先程よりも運びやすいのだろう、すぐに聖堂から出て行く。
「アメリアさん、お手をわずらわせて申し訳ありません」
 慣れた様子で手首に包帯を巻くシスリア。
「いえ・・・でも、一体あれは?」
「・・・・・・」
 シスリアがしばし考え込む様子を見せてから口を開いた。
「クドラクをご存知ですか?」
「クドラク?」
 耳にしたばかりの単語に、アメリアが驚く。
「ヴァンパイアの事ですよね?」
 聞き返すと、シスリアがうなずいた。
「・・・クドラクの・・・仕業ではないかと思うのです」
 ためらいがちに呟くシスリアに、アメリアを首をかしげる。
「断定ではないんですか?」
「誰も目撃者がいないのです。それに」
 包帯の巻かれた手首をさすり、
「被害者は一滴たりとも血を抜かれてはいません」
 アメリアが額に指先を当てて考え込んだ。
「じゃあ、先程の洗礼儀式は?」
「あれは祓(はら)いの儀ですが、娘達は数時間も眠れば再び目を覚まします。そして自分の身に何が起こったのか全く覚えていないのです」
「・・・・・・・・・」
 知識を総動員させても、こういう場合に納得のできる意見を口にするのは大抵ゼルガディスで。
 連れてくれば良かったと思った時、足音が響いた。
「アメリア! いるか!?」
 ノックとほぼ同時に扉を開いたゼルガディスが、息せき切って駆け込んでくる。
 アメリアが、彼の腕でぐったりとした灰色の猫を認めて悲鳴をあげた。
「ブルーフェリオスさん!!」

トップに戻る
14052ルーさん(汗)猫楽者 E-mail 2003/4/22 12:59:32
記事番号14034へのコメント

> ス、スローペースにも程が・・・(泣)。
> 泣き言は置いといてアルカトラズ3話目です。

こんばんは、水晶さなさん。
こちらでは、はじめまして。お元気ですか、猫楽者です。
アルカトラズの続き♪お待ちしておりました〜♪

楽しそうにガイドをする、アメリアさんのお話を聞いているゼルガディスさん。
今回の冒険の舞台は、遺跡の街なのですね。

>「人の子は誰しも血の祝福を受けて誕生します・・・いえ、怖い想像をしないで下さい」
> 青ざめたアメリアを見てシスリアが苦笑する。
>「子が母の胎内から生まれる時、血を浴びているでしょう? 生のシンボルである血液に祝福を受けているという意味です」
>「・・・ああ」
> ぽんと手を打って、アメリアが恥ずかしそうに頭をかいた。
>「すみませんイメージが単純で」
>「いえ、一般的に『血』と言ってあまり良いイメージは浮かびませんからね」

すいません(汗)、自分も怖い想像・・・・・してしまいました。

>「それにここは教会が図書館代わりだ。聖書や宗教史が優先されるのは当たり前だろうな」
>「・・・あれ? この聖書、魔物の記述もありますよ。珍しくないですか?」
> アメリアが広げた本を差し出してきた。
>「・・・・・・・・・クドラク・・・【血を食らう者】?」
> 本を受け取って、ページをめくる。
>「・・・宗教だと善と悪の対立の記述は珍しくないが・・・これは、実在する魔物だな」
>「実在するんですか? クドラクなんて聞いた事ないですよ?」
> ゼルガディスが広げた本を覗き込みながら尋ねる。
>「この地方の言葉で発音が変わっているだけだ。聞き慣れた言葉に言い換えると『ヴァンパイア』」
>「吸血鬼!?」
> 言葉を口にしてから、気付いたのか口に手を当てる。
>「生のシンボルである『血』を食らう者・・・だから天敵なんですね」
> 納得したようにうなずき、返された本を閉じた。

吸血鬼!?スレの世界(特にSPの方)では、変な感性を持ったヤラレ役というイメージですが
アンテッドの中でも、実力、知名度はトップクラスの存在ですね。

>「・・・クレアバイブルらしい物も見つからないし、アルカトラズの気配もさっぱりしませんね」
>「長期戦だ。そんなにぽこぽこ重要物が出てきたら大変だろうが」
>「・・・まぁ、ゼルガディスさんから前向きな言葉が」
>「・・・・・・」
>「あ、嘘です怒らないで下さいぃ」

アメリアさん(汗)、その発言は、リナさんの影響を受けてしまった為でしょうか(笑)
ゼルガディスさんも、まさかアメリアさんから、そんなふうに言われるとは思ってもいなかったのでしょうね。

>「クドラクをご存知ですか?」
>「クドラク?」
> 耳にしたばかりの単語に、アメリアが驚く。
>「ヴァンパイアの事ですよね?」
> 聞き返すと、シスリアがうなずいた。
>「・・・クドラクの・・・仕業ではないかと思うのです」

吸血鬼が、アメリアさん、そしてゼルガディスさんと戦うことになってしまうのでしょうか。
謎の敵は、吸血鬼のように血を吸う代わりに、生体エネルギーを吸うのでしょうか。

> 知識を総動員させても、こういう場合に納得のできる意見を口にするのは大抵ゼルガディスで。
> 連れてくれば良かったと思った時、足音が響いた。
>「アメリア! いるか!?」
> ノックとほぼ同時に扉を開いたゼルガディスが、息せき切って駆け込んでくる。
> アメリアが、彼の腕でぐったりとした灰色の猫を認めて悲鳴をあげた。
>「ブルーフェリオスさん!!」

ああああああああ、ルーちゃん。猫さん、お怪我をしてしまったのでしょうか。
吸血鬼に攻撃されたのですか。

ルーちゃんは、ご無事でしょうか。
吸血鬼・・・・・アルカトラズの技術で作り上げた、なにかの道具で
手にした『力』維持する為に、他の方からエネルギーを奪うのでしょうか。
続きが、とても気になります。

あと少しで、ゴールデンウイークですね。
新生活は、如何でしょうか。
まだ風邪も流行っているようですので、お体にお気を付けて、お元気で。
では、失礼します。

トップに戻る
14067消えては登場するキャラです(爆)水晶さな URL2003/4/22 22:27:28
記事番号14052へのコメント


 コメントありがとうございます。リアルタイム(と言うんでしょうか)では初めてですね。連載なのに遅筆というアイタタな状況で申し訳ないです(泣)。
 
 全身赤の神官装束は想像すると異様なものがありますが(汗)、書いてて自分も嫌な想像に向くので(安直)、シスリアに軌道修正をしてもらいました。

 ヴァンパイアの存在は仰る通り原作の中だとヒドイ扱いをされているようなので(汗)、敢えて違う名称で用いました。なので一応原作内のヴァンパイアとは違う存在になっています。「クドラク」の出典はスラヴ神話ですが名前を借りただけなのでそちらの設定もどうかお気になさらずに(汗)。
 
 2話目をUPさせてきましたので、ぐったりブルーフェリオス(妥当な呼称思いつかず)も登場しております。内容に触れるとさっぱり面白くなくなってしまうので言及は控えますが(汗)、一応5話完結の予定です・・・いつもよりは短かめでしょうか。
2日に1話のペースを目指しているのですが、どうなることやら(汗)。
 
 御配慮ありがとうございます。新生活は所々いっぱいいっぱいながら(既に駄目なような気が)何とか無事に過ごしております。
 小説もマイペースですが(汗)、宜しければ気長にお付き合い下さると嬉しいです。

トップに戻る
14066Lunatic Night 2水晶さな URL2003/4/22 21:55:30
記事番号14034へのコメント


 衰弱して荒い呼吸を繰り返す「彼」は、子猫そのものだった。
「リザレクションは効きましたけど、ひどい怪我でしたから・・・目覚めるのに時間がかかるかもしれません」
 暖炉の前に座り、毛布にくるんだ猫を膝の上に乗せてアメリアが言う。
 裏庭に猫が倒れているのを見つけたシスターが、治療できるかと教会内に持ち込んだ所をゼルガディスが見つけたらしい。
「一体どうしてこんな・・・」
 エルンゼアの港で別れてから、しばらく姿を見ないとは思っていたが。
 背中を撫でると、指先に何かが引っかかった。
「・・・?」
 糸くずと思ってつまみあげたそれは、ピアノ線のように細く透明な糸だった。
「・・・クモの糸?」
「何だと?」
 覗き込むゼルガディスに、アメリアがつまみあげたそれを見せる。
「・・・船でもクモが出たな」
「ええ、普通のクモじゃありませんでした」
 手首に傷を負わされたのを思い出したのか、アメリアが無意識にその個所をさすった。
 その姿――本体さえも垣間見る事が出来なくて、悔しさに唇を噛む。
「魔族もアルカトラズを狙っている事に、間違いはなさそうだな」
「じゃあ、例え不完全でもアルカトラズは、魔族にとって脅威と成り得るものだという事ですよね」
 探しているものの存在の巨大さを、改めて身に重く感じる。
 二人共繋げる言葉が見つからなく黙り込んだ所に、遠慮がちなノックの音が響いた。
「シスリアさん、どうしました?」
 扉を開けたアメリアが尋ねる。
「あの・・・猫の具合は」
「傷は癒しました。ただしばらくここに寝かせておいてあげたいんですが・・・動物は禁止ですか?」
「本来はお断りしているのですが、今回は別です」
 アメリアがほっと胸を撫で下ろしたのを見て、シスリアが微笑む。
 それから又表情を引き締めた。
「お忙しい所に立て続けにお願いをするのは大変心苦しいのですが」
 たとえ断りたくなるような面倒な用件でも、アメリアが勝手に引き受けてしまうだろう事がわかっていたゼルガディスは何も言わなかった。
 いや、言った方が面倒な事になるのがわかっていた。
「お二人共魔法を得手としているように見えます。郊外の丘の上まで、護衛をお願い頂けませんか?」
「護衛? 丘が危ないんですか?」
「たまに、なのですが、狼が出ると言われているので・・・」
 シスリアが語尾を濁したのを、ゼルガディスは聞き漏らさなかった。
「丘に何があるというんだ?」
 場所の意味を聞いた方が早いと思ったのか、シスリアの説明の前に質問を投げかける。
「それは――」
 しばしためらった後、シスリアが口を開いた。
「過去栄えたヴィルストア王国の、葬送地です」


「何故墓地ではなく『葬送地』なんだ?」
 場所に相応しく、天候は雲が棚引き薄暗さをもたらしていた。
「墓石や十字架を置く習慣がないんですか?」
 アメリアがゼルガディスの質問に言葉を継ぎ足した。自身も不思議に思っていたのだ。
「いえ・・・そうではなく」
 伏し目がちに唇を噛んだシスリアが、口を開こうとした時、
 視界の半分近くを覆っていた枝葉が途切れ、開けた丘の上に出た。
「・・・・・・」
 唐突に、シスリアが走り出した。
「シスリアさん!?」
 アメリアがただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、慌てて後を追う。
 ゼルガディスが周囲を見回した後走り出し、二人の後を追った。
 目的地を違(たが)う事なく、シスリアが走って――。
 眼下の光景に、足を止められた。
 数秒後に追いついたアメリアとゼルガディスも又。
「これは・・・」
 本来ならば整地されていたであろう地面は掘り返され、
 へし折られた十字架が、骸(むくろ)の代わりであるかのように累々と横たわっていた。
 そして、蓋(ふた)に穴を開けられた棺桶は、
 その中に何かを収納するという役目を放棄していた。
「何故これだけ荒らされて死体が無い」
 呆然として膝を付いたシスリアに、ゼルガディスが問う。
 ショックを受けている今なら、何かをためらう余裕もないと踏んでいたからだった。
「・・・・・・」
「答えろシスリア。隠し事をされると協力する気も失せる」
「・・・・・・」
「そのシスターにも多分、わからないんじゃないかな?」
 後方から聞き知った声が聞こえ、三人が一斉に振り返った。
 灰色の髪に、金と青のオッドアイの少年。
 紫と黒で統一した小奇麗な衣装に身を包んでいる。
「ブルーフェリオス!」
「ブルーフェリオスさん!」
 アメリアとゼルガディスがほぼ同時に名前を呼んだ。
「もう大丈夫なんですか?」
「ありがとねアメリア。治癒してくれて」
 ブルーフェリオスが微笑んだ。
「シスリアにもわからない事態とは、どういうことだ?」
 ゼルガディスの問いに、ブルーフェリオスが視線をシスリアに移す。
「丘の上には過去、神聖騎士団によって滅されたクドラクの死体が眠っている・・・観光案内にも書いてある周知の事実だよね」
「ヴァンパイアの死体?」
「神聖騎士団(ホーリーナイツ)により特殊な聖結界を施された遺体です。けして目覚める事はないと言われていました」
 眉をひそめたアメリアに、シスリアが弁解するように付け足す。
「それに・・・それは言い伝えであって、本当であるかどうかはわかっていません・・・掘り返した人もいませんから、判別はつきませんが・・・」
「それでも気になって見にきたという事は、少なからず信じているという事だろう」
 ゼルガディスの言葉に、シスリアがうつむいた。
「もしこの墓が本物で、クドラクが何らかの事態で甦ったとしても、目撃すらされていないんじゃ対処のしようもないですね」
 アメリアが腕組みをした時、ふもとの森から足音が響いた。
「シスター!!」
 それは、先程も教会の中で見た街の男で、
「シスター! まただ! 今度は二人だ!!」
 既に何度目からわからないその救助要請の声に、シスリアが青ざめて額に手を当てた。


「一体誰に襲われたんですか?」
 戻った教会の一室で、アメリアが尋ねた。
「マスターを襲った奴の仲間みたい。ちょっと油断したらやられちゃって」
 少し不服そうにブルーフェリオスが答える。
 この場にシスリアが参加していないのは、連続で二人の娘の祓(はら)いを行い、
 憔悴しきった様子の彼女に声をかける事すらできなかった為である。
「その敵に蜘蛛はいたのか?」
 ブルーフェリオスの体に蜘蛛の糸が巻き付いていたのを思い出し、ゼルガディスが言う。
「いたよ、クモ女。上半身人間で下半身土蜘蛛なの。気持ち悪いったら」
 想像したのかアメリアが青くなった。自分で自分を抱き締めてから、再度口を開く。
「・・・アルカトラズはどうしたんですか?」
 猫の姿で現われた時から、既に剣を持っていないのが気になっていた。
「ちょっと死に物狂いで逃げたから、置いてきちゃった」
「置いて・・・ってお前!!」
 思わず椅子から立ち上がったゼルガディスを、ブルーフェリオスが片手で制す。
「目くらまし代わりに結合解除をくらわせたから、奴らは回収できないと思うよ」
 目をしばたたかせて黙った二人の男女に、ブルーフェリオスが「ゴメン」と呟いた。
「説明が足りなかったね。アルカトラズの刀身は、全てアルカトラザイトっていう魔力結晶体からできてるんだ」
「全てだと? 金属も混ぜずに硬度が保てるというのか?」
 ブルーフェリオスが、ためらう事なく頷(うなず)いて肯定を示した。
「魔鉱石から長い時間をかけて抽出された魔力結晶体、アルカトラザイト。お互いがお互いを引き合う性質を利用して、微小な正三角錐が何万個と密集して刀身を形成してる。最後に凝固の魔術で仕上げて、出来上がり」
「その解除の魔法を、ブルーフェリオスさんは使えるんですね」
 何万の結晶体が撒き散らされれば、相手も戸惑うし魔法を知らなければ回収も出来ようがない。
「そゆこと」
「健常体に戻ったのならさっさと回収に行ったらどうだ?」
「どーしてそう厄介ばらいしたがるの? ねぇ?」
 いじけたようにブルーフェリオスが呟き、助けを求めるように椅子ごとアメリアの近くに移動した。
「ゼルガディスさん? 一度私をキズモノにした事忘れてませんよね?」
「・・・誤解を招くような言い方はやめろ」
 アルカトラズに操られてアメリアに怪我をさせた負い目がある為、それ以上の事は言えずゼルガディスが渋々黙る。
「・・・・・・それにしても」
 アメリアが扉の方に目を向けた。
 その奥が見通せる訳ではないが、彼女を思い浮かべた為に自然と目線が動いた。
「敵の姿も正体も判明しないんじゃ・・・このままじゃシスリアさんが倒れちゃいますよ」
 ゼルガディスは腕組みをしたまま何も答えない。
「あのシスターさぁ、何か隠してる気がしない?」
 思考を読み取ったかのようなブルーフェリオスの発言に、ゼルガディスが目を見開いた。
 全く同じ事を考えていた。
「『何か』って・・・何ですか? シスリアさんだって毎回祓(はら)いの儀で大変なんですよ」
 シスリアの心身疲労を目の当たりにしてか、アメリアが彼女の肩を持つ。
「たとえば、封鎖されてる地下室とか」
「地下室? あれは使ってないってシスリアさんが・・・」
「あのシスターが下りてくの見たんだよね。人目を避けるよーに」
「追いかけなかったのか? 猫だったら怪しまれずに済むだろうに」
 少し皮肉めいた口調でゼルガディスが口を挟む。
「入ろうとしたらはじかれちゃったんだよ。使い魔じゃ入れないみたい」
「はじかれ・・・結界!?」
 アメリアが思わず腰を浮かしかけた。
「・・・何にしても、シスリアが後ろめたい隠し事をしているのは明らかだな」
 立ち上がったゼルガディスが、腰掛けていた椅子を元の位置に戻す。
「今夜、少し調べてみるか」


「・・・あのですね、自分の行動にも少し後ろめたさを感じるんですが」
 心中で葛藤しているのか、アメリアが何ともいえない表情で告げた。
 それでも灯りをつける事の出来ない状況の中、はぐれないようにゼルガディスのマントの裾はしっかりと握っている。
「俺達は金を払って滞在している客だ。大体同じ建物の中で不法侵入にもならん」
 納得がいかないのか後ろで「正義じゃない・・・これは正義じゃない・・・」と呟き続けるアメリアを無視し、ゼルガディスが足を進めた。
 数分前に灯りを持ったシスリアが消えた地下への階段。
「・・・何かある事は確かだな」
 階段を下りきった後の鉄製の扉に、ゼルガディスが耳を近付けた。
「・・・会話?」
 ゼルガディスの言葉に、アメリアも聞きたくなったのか自分も耳を扉に当てる。
『・・・やっぱり出た方がいいんじゃない?』
『でも、貴方の事を明かす訳には・・・』
 アメリアの耳に感じていた扉の冷たさが、不意に消えた。
「・・・え?」
 何の前触れもなく、ゼルガディスが扉を開け放ったのである。
「・・・え?」
 アメリアと同じ反応の声が扉の奥から聞こえて。
 薄暗い部屋の中には、棺桶から半身を起こした男と、その傍らに立つシスリア。
 黒塗りの棺桶から上半身を出している男は、状況から見てもまともな人間とは思えなかった。
 半ば予測した光景に、ゼルガディスが溜息をつきつつ抜刀した。
「まぁ・・・こんな事だろうとは思ったがな」
「・・・クドラク?」
 アメリアが口元を押さえる。
「ち・・・違いますこの人は、この人はクドラクじゃありません! 関係ないんです!!」
 血相を変えたシスリアが、両腕を広げて棺桶の前に立ちはだかった。
「クドラクだろうがヴァンパイアだろうが、そいつが元凶なんだろう。庇いだてするのはヴァンピスト(噛まれ人)の証拠だぞ」
 顔をしかめたゼルガディスが、柄を握った手を持ち上げて――
「こっ・・・この人は・・・レンフィルドは、ただの・・・ただの変態なんですっ!!」
 静止の言葉が思いつかなかったのか、
 それとも本当にその言葉しか妥当なものがなかったのか、
 シスリアが絶叫した瞬間、
 ゼルガディスとアメリアはその場にくずおれ、
 棺桶の人物は再び棺桶の中に昏倒(こんとう)した。

トップに戻る
14092Lunatic Night 3水晶さな URL2003/4/24 22:40:40
記事番号14034へのコメント


「レンフィルド=クリーヴです」
 銀の短髪に、蒼の双眸。身にまとう衣(きぬ)は黒一色。
 色白で、細い体型の眼鏡の彼はそう言って会釈した。
「・・・あの、クドラクではないんです・・・か?」
 アメリアが恐る恐る尋ねると、彼は「これ?」と自分の長い犬歯を指した。
「正式なクドラクではないよ。間違ってクドラクの血飲んだら歯が伸びちゃって」
 シスリアが額を押さえながら説明を付け加えた。
「・・・レンフィルドはクドラクの研究者だったんです」
「個人的趣味の研究だったんだけどね」
「人が必死にフォローしてるのに口を挟まないで下さい!」
「変態と言われた時点でフォローも何もあったもんじゃないと思うんだけど」
 脱力しきっていたゼルガディスは、ツッコミを入れる余裕もないのか傍聴者に徹していた。
「まぁ物理的証拠を見せるなら、コレ」
 まだ疑わしげな目をするアメリアに、レンフィルドが念押しのつもりか襟を広げて首飾りを見せた。
「・・・ロザリオ!」
 覗き込んだアメリアが驚いた声をあげる。
「国言葉ではローゼン・クランツ」
「十字架ではないのか」
 遠目に見ていたゼルガディスが呟く。
「5個の親玉とその間に10個ずつ挟まる小玉50個からなる、魔除(よ)けの中では最強といわれるものですよ」
 ここまで完全な物は見た事がないと、アメリアが興味深々に顔を寄せた。
「しかもこれ、浄化の力を高める為にクリスタルを使ってます」
「あれわかるの? 傍目から見てわからないように色は被せてあるんだけど」
「聖の気にカモフラージュは通用しませんから」
 今度は逆にレンフィルドが感嘆する番だった。
「・・・で、クドラクもどきがこんな薄暗い所に何故こそこそ隠れている?」
 本題に戻したかったのか、ゼルガディスが口を挟む。
「この地下室は元々僕の家のものだったんだけどね。冬眠してる間に上に教会が立っちゃって」
「・・・クドラクの血液で半分クドラク化したので、寿命が延びているんです。私も祖母から彼の話を聞かされましたから・・・」
「研究が続けられるに越した事はないし。別に地上に出る必要もないから居候してるんだ」
 シスリアが再び額を押さえた。
 生真面目な彼女には、前向き過ぎるレンフィルドの性格が堪えられないのだろう。
「でも、何で地下に結界を張ってるんですか?」
「結界? 一応防衛の為」
「連れが地下には入れないって言っていたんです。人じゃなくて使い魔なんですけど・・・」
 レンフィルドがしばし考え込む仕草を見せた。
「聖結界はクドラクその他の魔物を入れないようにしているだけだよ。元々人々の避難所(アジール)の為の地下室だったから。でも使い魔って人に仕えてる場合は性質が同じになるから、入れる筈だけど?」
「え?」
 アメリアとゼルガディスが顔を見合わせた瞬間、
 上階から悲鳴が響き渡った。


「一体何!?」
 シスリアが血相を変えて階段を駆け上がり、硬直した。
 青白い肌と、瞳孔の無い瞳。
 尖った耳と、異様に伸びた犬歯。
 生気の微塵も感じられない、
 目撃すらされる事のなかったクドラクが、その存在をあらわにして教会内を闊歩していた。
「エルメキア・フレイム!」
 後方から響いた声と共に、シスリアの頬を熱がかすめた。
 部屋の端でシスターの肩を掴んでいたクドラクの上半身が、光に打たれ溶け消える。
 眼前の光景によろめきかけたシスリアを、駆け上がってきたアメリアが腕を伸ばして支えた。
「しっかりして下さいシスリアさん!」
 肩を掴んで、活を入れるように揺さぶる。
「クドラクは何とかします! 教会内に居る人達を避難させて下さい!」
「あ・・・」
 それでもまだ恐怖で足がすくんでいるシスリアに、ゆっくりと階段を上ってきたレンフィルドがシスリアに微笑んだ。
「護衛するよ。ゴタゴタの最中なら誰も僕を気に止めないだろうし」
 いつの間にか腰に下げていたブロードソードを抜くと、シスリアの肩を叩いて歩き出させた。
「すぐ戻ってくるから」
 肩越しにレンフィルドが振り返った。
「・・・学者さんに見えたんですけど、戦えるんでしょうか?」
 見送ったアメリアが呟いたが、クドラク達の視線がこちらに向き始めたのを見て戦闘態勢をとった。
「剣を持っている以上一般人は気取れんだろう。任せるしかない」
 ゼルガディスも抜刀し、刀身に赤い光を這わせる。
 合図の声と共に、双方が同時に駆け出した。


「・・・・・・」
「・・・そっちは?」
「もういないみたいです。ヴァンパイアというより、ゾンビみたいでしたね」
 自我が無く、数が多いというのに連携しようとはしてこなかった。
 故に思ったよりも短時間で駆逐に成功した。
「でも、何故突然姿を現したんでしょう?」
 アメリアが辺りを見回した時、不意に後方から突き飛ばされた。
 前面の床に転げながら、視界の端に映ったのはわずかに光を反射してその姿を見せた白い糸。
 先程まで居たアメリアの位置に突き立ち、その数秒後にゼルガディスの剣によって切断された。
 体制を立て直したアメリアが反射的に天井を見上げる。
「気付いたか。運の良い事」
 天井画の天使達を踏みつけるように、蜘蛛が張り付いていた。
 その上半身は人間の女と同じで、結(ゆ)わえていない銀髪が重力のままに垂れ下がっている。
「・・・貴女ですね、沈没船からアルカトラズを持ち去ったのは」
 アメリアが睨み付け言うと、女は妖艶な笑みを浮かべたまま、その両腕を床へと差し出した。
 周囲の空気がよどんだように重くなり、床から石を枯葉でこするような音が響いた。
「・・・っ!!」
 青ざめたアメリアがゼルガディスの袖を掴んだ。
 何処から涌き出たのか、人間の頭ほどもある蜘蛛が床に蠢(うごめ)いている。
「妾(わらわ)はフルーレティ。アルカトラズを求める者」
 天井から脚(あし)を放し、宙で一回転して床に着地する。
「邪魔立てをするなら、ここで始末してくれる」
「邪魔はどっちだ」
 剣を構えたゼルガディスが一歩前に進み出る。
「アメリア、周りを片付けてくれ」
 周りとは勿論、今も床に犇(ひしめ)いている巨大な蜘蛛達の事で、
 一瞥して思わず身を震わせたアメリアが、覚悟を決めたように戦闘態勢を取った。
「・・・わかりました」
 ゼルガディスが走り出すのと同時に、アメリアも床を蹴る。
「バースト・ロンド!」
 こちら目掛けて噴射する糸を避けながら、密集している所を狙って衝撃波を投げ放つ。
 爆発の威力に蜘蛛が宙を舞ったが、消滅させるまでには至らなかった。
 ――これも魔族!?
 部屋の端まで来て足の向きを変え、慌てて詠唱していた呪文を変える。
「エルメキア・ランス!」
 天井から落下してきた蜘蛛に一撃。
 甲殻を貫いて、四散した蜘蛛が蒸発した。
 威力はあるが、これでは数の多い敵をあしらうには面倒過ぎる。
 ――地面に居るから逆に狙いにくい・・・
 顔を上げたアメリアが、剣戟を繰り返しているゼルガディスの後方目掛けて走り込んだ。
「ゼルガディスさん伏せて!」
 丁度間合いを取り直したゼルガディスが、言葉に反応したように身を屈(かが)める。
「ダム・ブラス!」
 アレンジを加えた不可視の衝撃波が、ゼルガディスとフルーレティの中間の床にはじけた。
 壁が悲鳴をあげる程空間を震動させ、体重の軽い蜘蛛を床から跳ね上がらせる。
 自身でもバランスを崩しかけたアメリアが、慌てて踏みとどまって即座に詠唱を繋げる。
「――聖清滝流(フロウ・フォリア・バース)!」
 掲(かか)げた両手が、光を放って。
 空中に不規則に出現した光球が、宙に浮いた蜘蛛を飲み込んで消滅した。
 敵の動揺を逃さず、ゼルガディスが剣を振りかぶってフルーレティに肉薄する。
「アストラル・ヴァイン!」
「!」
 剣先は、それでも咄嗟に身をよじったフルーレティの脇腹をかすめただけで、
 反り返った体勢から硬質な爪の伸びた腕をゼルガディスに伸ばした時、アメリアの詠唱が終了した。
「ヘル・ブラスト!」
 渾身の魔力を注ぎ込んで放った一撃が、フルーレティの肘を貫いた。
「――うあぁっ!?」
 分断された腕が床に落ち、蜘蛛の脚へと変化して動かなくなる。
 フルーレティを挟んだゼルガディスとアメリアが、同じ間隔で間合いを詰める。
 挟み撃ちのそのどちらを攻撃対象にするか迷った瞬間を逃さず、ゼルガディスが剣を構え、
 その動きに対応するようにアメリアが印の姿勢を取る。
 ――その連携を乱したのは、アメリアの後方から響いた足音だった。
 歩幅の狭い軽い足音。レンフィルドのものでもシスリアのものでもなく、
 覚えのある人物の中から当てはまる該当者は一人しかおらず、
 詠唱を中断して振り返ったアメリアが見たのは、予想通りの顔だった。
「ブルーフェリオスさん!?」
「ゴメン、変な化け物いっぱいいたから手間取っちゃったよ!」
 加勢すると言わんばかりに駆け寄ってくる彼に、アメリアが行動を止めた時、
 頬の横を熱が通り過ぎた。
「!?」
 後方のゼルガディスが放ったエルメキア・ランスの光はフルーレティを狙ったものではなく、
 アメリアに向かって駆けてくるブルーフェリオスに一直線に突き進んだ。
 まともな反射神経では避けられないだろうそれを、彼は表情を変える事もなく片手で受け止めた。
 痛みを与えるといった効果を何ら発揮する事もなく、握り潰されて無残に光が散る。
「危ないなぁ、何するのさ」
 平然と呟く彼の姿に、アメリアが奇妙な恐ろしさを覚えて一歩退(しりぞ)いた。
 ゼルガディスが戦闘態勢を解かないままブルーフェリオスを睨みつける。
「・・・さっさと逃げたら?」
 嘆息しつつブルーフェリオスが言葉を投げた相手は、失った片腕の個所を押さえているフルーレティだった。
「・・・恩には着ん!」
 苦々しく呟くと、フルーレティの足元の影が広がり一瞬でその姿を飲み込んだ。
「あっ!」
 事態を飲み込めないままに敵を逃し、対処の判断のつかないアメリアがゼルガディスを振り返る。
 抜刀したまま歩みを進めたゼルガディスが、アメリアの腕を掴んで後方へと移動させた。
 ブルーフェリオスは面白そうに腕組みをしてこちらを見つめている。
「・・・いつから気付いたの?」
「お前はアルカトラズの力で人間変化していると自分で言っていた。アルカトラズを持たないお前が人間の姿で現われる筈がない」
『不完全アルカトラズをちょっと改良して、蓄えた力で形状変化してみただけだけど』
 アメリアが思い出したように目を見開いた。
「おや、そりゃ初聞きだよ。ズルィねぇあの猫も。小技ばっかり堪能で」
 失態が面白いのか声を立てて笑い、それからふと真顔に戻る。
 その表情が無機質になり肌が血色を失うと、瞬(まばた)きをした瞬間に白い硬質の仮面へと変化した。
 道化師のような気味の悪い笑みを浮かべたままの仮面へと。髪も仮面と同化するように白へと。
 屈み込んだ体勢から伸び上がると、身長が伸び細く長い体型に変化し、
 肩の下からは一対の腕が余分に生えた。
「それと、もう一つ」
 アメリアと違い驚愕を見せないゼルガディスが淡々と呟く。
「お前は敵の事を『奴ら』と複数形で言っていた。あの化け蜘蛛と、『お前』の事だ」
「知恵が働くようで。嫌いではないよ、その減らず口を聞けないよう叩きのめすのは」
 声が、魔族独特の耳障りな音域へと変わる。
 四本の腕に、それぞれに武器を握り、
「仮面(ペルソナ)のマステマ。褒賞として名を教えてあげよう」
 虫の如く細い足で床を蹴る。
 ゼルガディスが応戦の為に走り出した。
「右上腕に魔剣アンサラー、左上腕に不敗の剣クラウ・ソナス」
 ほぼ同時に振り下ろされた二本の剣を、ゼルガディスが剣を横にして受け止める。
「右下腕に光槍ブリューナク」
 剣を受け流せないでいる内に、ゼルガディスの背中を激痛が走った。
「ブラム・ブレイザー!」
 ゼルガディスの斜め後方から、アメリアが照準を定めて解き放つ。
 剣を交えたままのマステマが、四本目の腕を上げた。
「左下腕にダグダの大釜」
 その手に握られた黒い壷のようなものが、アメリアの放った衝撃波を跡形も無く吸い込む。
「・・・え?」
 突然魔法が消失したようにしか見えなかった彼女が戸惑った時、ダグダの大釜から同じ光が放たれた。
「――っ!!」
 予想もしていなかった衝撃波が腹部を貫いた。
 床に打ち付けられ、全身を痺れが襲う。
「アメリア!」
「お遊びはここまで」
 防いでいた剣をはじかれ、足がバランスを保つ事が出来なくなり後方に転倒した。
 咄嗟に身を起こしたゼルガディスが再び戦闘体勢を取ろうとした時、
 眼前の光景に硬直した。
 マステマの1本の腕が気を失ったアメリアを抱えていた。
「・・・やめろ」
 知らず、声が震える。
「交換条件はあの小賢しい猫」
 ダグダの大釜から濃霧が溢れた。
「ヴィルストア廃城で待つ」
「やめ・・・!!」
 腕を伸ばしても、肌に触れたのは冷たい霧だけで、
 その腕を湿らせて、空中に溶け消えた。
 数秒後に2つの足音が響き、シスリアとレンフィルドが姿を現す。
「ゼルガディス! アメリアは!?」
 レンフィルドの問いかけにも答える余裕がなかった。
 何故か体が動かない。
 徐々に視界が暗くなっていく。
 ゼルガディスの背中を見たシスリアが悲鳴をあげた。
「治癒魔法の使えるシスターを集めて! 早く!!」
 その後も続く足音、ゼルガディスの意識はその辺りで途切れた。

トップに戻る
14106Lunatic Night 4水晶さな URL2003/4/26 23:36:47
記事番号14034へのコメント


「気がつかれましたか? まだ体が重いようでしたら無理に起き上がらないで下さい」
「・・・重いのは元々だ」
 言葉が時間を要せずに出てきたのは、実際目を覚ましていたのは大分前の事で、単に体が動かなかった為である。
 ようやく痺れの消えてきた腕を突っ張り、ゼルガディスが上半身を起こした。
「何時だ?」
 朝だろう事はわかっていたが。
 ぶれる視界に瞼(まぶた)を押さえる。
「・・・もうすぐ、9時になります」
「これ以上無駄には出来んな」
 掛け布団を退けて床に足を着ける。
「まだ動いては・・・」
「時間がない。ブルーフェリオスは何処だ」
「ブルー・・・? あの、少年ですか?」
 戸惑ったシスリアに、急(せ)き過ぎた自分に気付きゼルガディスが言い直す。
「違う、灰色の猫だ。金と青のオッドアイ。誰か目撃してないか?」
「こんなの?」
「そう、それだ」
 レンフィルドの腕に抱かれていた灰猫を認めて、ゼルガディスが指差す。
「・・・・・・」
 しばし、瞬(まばた)き。
「・・・おーまーえーはーっ!!」
「何だか、知らない内に僕の棺桶に入ってたんだよねー」
「偽者が地下に行きたがる筈だ!!」
 思わず詰め寄って首根っこを捕まえると、驚いたように身をすくめてベッドの上へ逃げた。
「動物虐待は良くないよー」
「ただの動物じゃないコイツは!! いいかアメリアが人質にされてお前と交換だと言われたんだ、問答無用で連れて行くからな!!」
 ベッドの上で座り込んでいたブルーフェリオスが驚いたように目を見開いた。
「ニャー?」
「遊んでいる場合か!!」
 ブルーフェリオスの事をよく知らないシスリアが、妙なものを見るようにゼルガディスを見ていた。
「あのねシスリア。一応フォローの為に言っておくと、この猫使い魔だから人の言葉がわかるんだよ」
「ああ良かった。傷のショックでどうかしたのかと思ってしまいました」
「勝手に人のイメージを上下させるな!!」
 苛立ちの治まらないゼルガディスが振り返って叫ぶ。
「他の人達の事もあるでしょ。シスリアはお仕事に戻った方がいいよ」
 レンフィルドに押されて、シスリアが部屋を出て行った。
 ようやく落ち着いた雰囲気の中、ブルーフェリオスが改めて口を開く。
「にゃーん」
「いつまで猫のフリしてるんだ!!」
 怒りがぶり返したゼルガディスが叫ぶが、当人は自分で自分の事態に驚いているようだった。
「にゃ、にゃー、にゃにゃー、にゃー、にゃーん」
 歯に詰まったカスが取れないかのように、筋肉を酷使して発声するが鳴き声が響くだけ。
 しばらく鳴いた後、唐突にベッドの上を転げ回り始めた。
「おお、猫が苛立った時にする転移行動だね。実際に見るのは初めてだよー」
 レンフィルドが変な事に感動し、ゼルガディスが肩をわななかせた。
「やかましいしゃべれないならもういい黙ってろ! 転がるな! サカリついたよーに鳴きわめくな!!」
「猫に鬱憤晴らすのは大人げないよー」
 あくまでマイペースを崩さないレンフィルドにゼルガディスが脱力する。
 その通りだとでも言いたげにブルーフェリオスが鼻を鳴らした。
「あーもういいお前は会話に参加するな。人質交換で投げれば終わりだ。猫パンチするな!!」
「ここまで猫と真面目に喧嘩できる人も珍しいね」
 レンフィルドが眼鏡の曇りを拭きながら至極のんびりと突っ込みを入れる。
「で、行くんでしょ?」
「ん?」
 先を促そうとしたレンフィルドに、ブルーフェリオスの首根っこを掴んで持ち上げていたゼルガディスが振り返る。
「ヴィルストア廃城だよ。ガイドくらいならできるよ」
 ゼルガディスが目を瞬(しばたた)かせても、レンフィルドは相変わらずの笑みを浮かべていた。


「そういえばお前、クドラクの血のせいで寿命が延びたとか言ってたな」
「もう何百年だか忘れたけど、ヴィルストア王国がまだ栄えてた頃も生きてたよ。懐かしいなぁ」
 先頭に立つレンフィルドは、迷う事なく道を選んでいく。
 来た時は廃城を遠巻きに眺めるルートを通った為、実際に城へ行く道は調べていなかった。
「信者が離散して、国が廃(すた)れたから生まれ故郷に戻ったのか」
 行き道でのアメリアの講義を思い出し、呟く。
「そんなものかな。廃れたというよりは滅びたんだけど」
 肩越しに振り返ったレンフィルドの笑みには、わずかに哀れみが含まれて。
「滅びた・・・? 敵国は掌握した筈だろ?」
「いわば内部崩壊だよ」
「・・・・・・」
 ゼルガディスが再び質問を重ねようとした時、レンフィルドの荷物に入っていたブルーフェリオスが顔を出した。
「にゃーん」
「何だい?」
 ブルーフェリオスの視線に自分の視線を重ね、同じ方角を見やる。
「・・・・・・」
「どうした」
「あそこへ行けって」
 レンフィルドの指した先は、城と繋がる聖堂らしき建物だった。
 城本体に比べて骨組みが頑強なのか、天井部分まで風化せずに残っている。
 意思が伝わった事に満足したのか、ブルーフェリオスが再び荷物の中に身を潜(ひそ)める。
「・・・確かに広くて戦い易いだろうけど、やっぱりあそこか・・・」
「何だ?」
 懸念の残るレンフィルドの言い方に、ゼルガディスが訝(いぶか)る。
 レンフィルドが振り返り、しばしゼルガディスを見て考え込む。
「無駄なおしゃべりはしない方かい?」
「生憎、雑談も閑談も好きではない」
 即答したゼルガディスに安心したのか、レンフィルドが再び足を進めながら口を開いた。
「ヴィルストアが精鋭部隊として神聖騎士団(ホーリーナイツ)を抱えていたのは知ってる?」
「既知だ。十人から結成されていたんだったな」
「別名『クルースニク』と呼ばれていたのは?」
「・・・?」
 聞いた事の無い単語にゼルガディスが眉をひそめた。
「『クルースニク』。クドラク退治の専門家。その当時大陸ではクドラクが横行していて、人々はヴィルストアの庇護下に逃げ込む事でクドラクの脅威から守られていたんだ」
「・・・敬虔な信者は、建前か」
「クドラクは元々いたんだ。クドラクの『巣窟』と呼ばれていたものも実際に神聖騎士団が破壊した。ただ」
「ただ?」
「クドラクは普通ヴァンパイアと呼ばれる魔物とは生態が違う」
 しばし考えてからゼルガディスが口を開く。
「自我が無い事か?」
「それもあるよ。あとはね、生まれる時に繭(まゆ)から生まれるんだ」
「繭?」
「神聖騎士団が証拠として持ち帰ったその繭はね、自然の蚕(かいこ)が編む繭よりも上質だったんだ」
 振り返らずに話すレンフィルドの表情は窺(うかが)えなかったが、その声色は落胆を含んで。
「・・・・・・・・・・・・まさか」
「王は、極秘に『養蚕』を始めた。戦いが長引いたから、国家を維持する予算にまで防衛費が食い込んだ」
 紡ぐ言葉は、あくまでも淡々と。
「結果的に、うまくいかなかった。ただそれだけだ」
「・・・・・・」
 『それを目の当たりにしたのか』と言葉を投げかける前に、既に足は扉の前に至っており、
 振り返ったレンフィルドが変わらぬ笑みを浮かべていた為、質問を飲み込んでゼルガディスが扉に手を当てた。

トップに戻る
14123Lunatic Night 5水晶さな URL2003/4/29 01:41:01
記事番号14034へのコメント


「来たぞ」
 聖堂の天井は半分崩れかけ、割れ目から暮れかけた陽の光がわずかに差し込んでいた。
 薄暗闇の中、オブジェと錯覚しそうなほど溶け込んだ配色で、女神像の前に立っていたマステマが歓迎の礼をする。
「アメリアは何処だ」
 言葉で返さず、マステマがただ天井を指差した。
「――!!」
 亀裂の入った天井と梁に蜘蛛の糸が張り付き、もつれたハンモックのようなその真中にアメリアが絡めとられている。
 再び視線を戻すと、マステマが握ったクラウ・ソナスの剣先をアメリアに向けていた。
 その剣からアメリアの距離は遠く、届きそうにもないが恐らく糸を切るぐらいは容易なのだろう。
 床までの距離を考えると、まともに叩きつけられれば骨程度では済まされない。
「こちらの要望は?」
 剣を微動だにさせないまま、マステマが尋ねる。
 レンフィルドが歩み出て、荷物袋を前に抱え直した。
 ゼルガディスが腕を突っ込み、ブルーフェリオスを掴み出す。
 首根っこを掴まれたせいか、足がだらしなくのびた。
 レンフィルドに待機するよう指示した後、ゼルガディスが一歩ずつ足を進める。
 マステマが一本の腕をこちらに差し出した。
 ――あと数歩で手渡せる位置に来た、その時。
 唐突にゼルガディスがブルーフェリオスを投げ放った。
 それは差し出されたマステマの手よりも上を行き、頭上よりも上を越し、
 その視線がブルーフェリオスを追った一瞬、ゼルガディスが詰め寄った。
「アストラル・ヴァイン!」
 全速力で打ち込んだ一太刀は、横にした槍で防がれる。
 四肢を伸ばしてマステマの手から逃れたブルーフェリオスが、女神像の肩をよじ登って避難する。
 剣を持ったマステマの腕が、ブルーフェリオスを追って伸び――
 遠くから放たれた黒い衝撃波にはじかれた。
「!?」
 マステマのみならず、ゼルガディスも後方を振り返る。
「あれ、砕くまではいかなかったか」
 剣を両手で持ち、切っ先をマステマに向けた状態のままレンフィルドが肩をすくめる。
 武器を持っている以上多少なりとも武の心得はあるのだと思ってはいたが、魔法まで扱えるとは考えてもいなかった。
「じゃあ、直接行くよ」
 いまだ微笑を浮かべたまま、レンフィルドが剣を構え直す。
 湧き上がり始めた魔力が色を成し、その刀身にまとわりつく。
「――アルティカル・クロス!」
 言霊にはじかれ、魔力が具現化する。
 刀身を骨軸に、言霊で紡がれた黒い光が翼を広げる。
 鳥が首をもたげ拡翼するように。
「――何!?」
 マステマの驚愕の声に、ゼルガディスが首の向きを戻す。
 その声は、明らかに動揺していた。
 ゼルガディスがその一瞬を逃さず剣を振った。
 慌てて牽制したマステマの剣は咄嗟の為はじかれ、
 その攻防の間に詰め寄ったレンフィルドが、剣を振り下ろした。
 刀身をかわせても、その後を追った翼の刃が逃しはしない。
 切断されたマステマの腕が、密集した蜘蛛となり糸が抜かれたように離散していく。
「・・・道理で。動きが稚拙だと思った」
 教会で戦った時の、圧倒的な強さがまるで感じられなかった。
 しゃがみこんだマステマの仮面が笑みを深くすると、本体も又ざらりと崩れ落ちる。
 背後の気配に二人が振り返ると、部屋の真中の床から這い出るようにフルーレティが出現した。
 切り落とした筈の片腕は復活している。
「悪戯もこれまで」
 苦々しく呟いたフルーレティに呼ばれ、蜘蛛の群れが床を埋め尽くす。
「小娘の命が惜しくば大人しく猫を差し出せ」
 見上げると、天井にも蜘蛛が徘徊していた。
 徐々にアメリアへと近付いて行く。
「妾(わらわ)の糸はそう易々と切れん」
「・・・・・・・・・」
「ゼルガディス」
 レンフィルドが名を呼んだのは、思案顔のゼルガディスを非難した訳ではなく、
 心中で何かと戦っているような、必至な形相の彼を心配した為だった。
「さっさと・・・」
「・・・・・・・・・」
 ――これしか、ない。
 ゼルガディスが懸命に心中の葛藤を堪えながら、覚悟を決めたように息を吸った。
 室内に響き渡る音量で、叫ぶ。 
「――天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ!!」
 ゼルガディス以外の誰もが、その行動の意味を理解できなかった。
 ――が、
「悪を砕けと我を呼ぶ!! 燃えよ闘魂正義の炎!!」
 げに恐ろしきは身体に叩き込まれた条件反射。
 煽(あお)り文句に奇跡の如くアメリアが開眼した。

「ジャースティースファイヤーッ!」

 決め台詞と共に振り回されたアメリアの拳が、蜘蛛の糸を問答無用で引き千切る。
 そのまま空中で見事なまでの3回転を見せると、何事もなかったかのように床に着地した。
 ――それから、おもむろに周囲を見回した。
「・・・って、え? 何処ですかココ? え? ゼルガディスさん何で床に突っ伏して震えてるんですか?」
 ゼルガディスだけにとどまらず、アメリア以外の全てが(隠れていたブルーフェリオスさえ)床に突っ伏している状態ではあったが。
 あまつさえ蜘蛛は腹を見せて引っ繰り返っていたが。
「・・・いや、もういい。お前は良くやった・・・もうそれ以上聞くな・・・」
 剣を杖のようにして、ゼルガディスがふらつきながらようやく立ち上がる。
 フルーレティが怒りに肩をわななかせた。
「この・・・非常識な娘が・・・」
「それが強みだ」
「ゼルガディスさん悟ったように言わないで下さい!」
 ようやく自分の立場を理解したのか、アメリアが叫ぶ。
 それから――猫の鳴き声に気付いて走り出した。
「エルメキア・ランス!」
 放った衝撃波が道を作る。
 蜘蛛の群れから逃げるように右往左往していたブルーフェリオスを掴んで、肩の上に乗せた。
 戦闘時なのに猫の姿のままの彼を、戦えない状況なのだと取り敢えず判断した。
「しっかり掴まってないと落ちますよ!」
 足を止めず、魔法を連打しながら蜘蛛をはじく。
 教会と同じ劣勢になりかけると、フルーレティが床に手の平を当てた。
「使う気か・・・」
 レンフィルドが呟いたのを、ゼルガディスは聞き逃さなかった。
 「何を」と言いかけた時、足元をすくうような地震が走る。
 アメリアが転びかけて、慌てて壁に手をついた。
 床の中心、一点に穴が開き即座に割れ目が広がり、
 その縁に何かが貼り付いた。
 ――茶色く変じた、人間の手だった。
 床に手をつき、足をかけ、這いずるように。
「――っ!!」
 アメリアが思わず口を押さえる。
 腐臭を漂わせながら穴から涌き出る、クドラクの集団。
 その頭には兜のように一匹ずつ蜘蛛が張り付いていた。
「地下に、繭のまま封じたクドラク達」
 レンフィルドが表情を変えずに呟く。
「封・・・じた?」
 ゼルガディスが繰り返す。
 『養蚕』に失敗したヴィルストア王国は、クドラクの暴走で滅びたと思っていた。
「王国に失望して『養蚕』を阻止し、内側から王国を滅びさせたのは」
 眼鏡を外して胸ポケットに納めたレンフィルドが、もう一度剣を構え直す。
「他ならぬ神聖騎士団(ホーリーナイツ)だ」
 切っ先を天に向けると、魔力で構築された翼が横に広がり、
 十字架を掲げたような構図に、フルーレティが顔をしかめた。
「貴様は・・・」
「第四位神聖騎士、又の名をクルースニク、レンフィルド=クリーヴ」
 常に浮かべていた微笑は、消えていた。
「いつかこんな日が来るんじゃないかと思って、ね」
「レンフィルド・・・さん?」
「クドラクは引き受けるよ」
 それだけを言うと、レンフィルドが走り出していく。
 真正面のクドラクに、一太刀。
 一瞬姿を消した翼が、刀身がクドラクを貫いた直後に復活し、刃となって体内から切り裂く。
 横薙ぎに剣を払うと、その勢いで右方向から来ていたもう一体を攻撃し、
 それだけでは倒れなかったクドラクを、更に一歩踏み込んで拳で打ち抜いた。
 その右手には先程までは首に掛けていたロザリオが握られている。
 崩れ落ちるクドラクからは既に視線を移し、密集している所を狙ってレンフィルドが更に猛攻を続けた。
「・・・強い」
 アメリアが思わず呟く。
 眼前の光景に舌打ちしたフルーレティが、攻撃対象をアメリアに移した。
 ――正確に言えば、アメリアにしがみついているブルーフェリオスに。
 接近する殺気を感知して、アメリアが即座に身構える。
 伸びる爪を上体を反らして避け、下から光をまとわせた拳を突き上げる。
 肘を狙った一撃は、威力を殺(そ)ぐ事はできてもダメージを与えるまでに至らなかった。
 元より片腕を簡単に再生させられる敵に、一撃でどうにかなるとは思わない。
 更にもう一本の腕が伸びてきた所で、アメリアが言霊を発した。
 周囲に立ち昇る魔力で感付いたのか、攻撃の手を止めてフルーレティが飛び退(の)いた。
 逆にアメリアが拳を固めて踏み込んだ。
 応戦の為に、フルーレティが両腕を伸ばし、
 頭上で交差させたその腕を振り下ろそうとした時、アメリアが突然視界から消え失せた。
「――!?」
 代わりに現われたのは、アメリアの真後ろに移動していたゼルガディスの姿。
「「ラ・ティルト!!」」
 床に膝を付いた姿勢のまま、アメリアがゼルガディスと合わせて印を結ぶ。
 間髪入れずに放たれた魔力は、相乗効果をもたらして凄まじい勢いで燃え上がる。
 悶えるように頭を振ったフルーレティが、蒼い炎の奥に影として映った。
 アメリアが立ち上がろうとして、後方から伸びた手に思い切り突き飛ばされる。
 直後に炎の奥から伸びた糸が、ゼルガディスの突き出した刀身に絡まった。
 床を転がってから身を起こしたアメリアが、フルーレティを見て青ざめた。
 炭と化した上半身が崩れながらもまだ動いている。
 糸を吐いたのは、下半身の土蜘蛛だった。
 剣に巻き付いた糸に手間取っていると、物言わぬフルーレティの腕が炭を散らしながらこちらに伸びた。
「ゼルガディスさん!」
「――」
 柄から片手を放し、腰の袋に手を突っ込んだかと思うと、フルーレティ目掛けて投げつける。
 ――それは、鼠の形をした小さな人形だった。
「ニャーーーーーーーーーーーーッ!」
 アメリアの背中に居たブルーフェリオスが、肩を蹴って飛び上がる。
 人形は腕に当たって力なく落下するが、直後のブルーフェリオスの勢いは止まりはしない。
 既に半分崩れかけていたフルーレティの頭部を完全に砕いて、後方の床に転がった。
「――あだぁ!! ちょっと人の習性を乱用するのやめてくれない!?」
 体勢を立て直したブルーフェリオスが叫んでから、
 自分で自分に驚いた。
「うっそ! こいつに封じられてたの!?」
 気付いた後の行動は決まっていた。
 フルーレティとの間に割り込むように援護しにきたアメリアの背中を駆け上って、空中に跳躍する。
「破を紡ぎ滅を誘(いざな)う、深奥に眠り抱(いだ)くもの、従いて定めの地へ!」
 教会内の至る所から唐突に光が溢れた。
 色を特定しないその光が、何十万もの結晶が、言霊の元へと収束する。
 形成されたその柄に触れた猫の手が、人間の掌へと変わり、
 フルーレティを越えてゼルガディスの隣へと着地したのは、短剣を握る灰色の髪の少年だった。
「まったく、散々な目に遭ったよ」
 ブルーフェリオスの手にした剣を目にしてか、フルーレティが向きを変える。
 ――もっとも上半身は既に崩れていた為、土蜘蛛が動いたに過ぎないが。
「下が本体か」
「みたいだね」
 アルカトラズの刃で、ゼルガディスの剣に絡んだ糸はあっさりと両断される。
 剣を強く振って糸を振り払ったゼルガディスが、鬱憤を晴らすように前に出た。
「そろそろ、とどめでいくか」
「蜘蛛は見飽きたしね」
 ブルーフェリオスが走り出す。
 吐き出された糸をはじき、片脚を切り落とす。
 平衡を保てず体を傾斜させた蜘蛛の上から、ゼルガディスの剣が突き立った。
 それでもまだ逃げようとする相手に、呟く。
「移ろいたり深淵の、遥かな閨(ねや)にまどろみたり」
 更に攻撃を加えようとしていたブルーフェリオスが手を止めた。
「目覚める事なき滅びの灯(ひ)、御手に昇りて悪夢を此方へ――」 
 柄から伸びた光が、切っ先に達して魔力を解放する。
「冥十字斬(アルティカル・クロス)!」
 言霊にはじかれて、浮遊していた魔力が収束し、瞬間的に具現化する。
 刀身を縦軸に、広げた翼を横軸に、
 土蜘蛛の体を切り裂いて、その剣は十字架を形成した。

 丁度その時、クドラクの最後の一体も部屋の端で崩された。


「小声の上に早口で唱えてたのに、よく覚えたねぇ」
 眼鏡を掛け直し、いつもの笑みが戻ったレンフィルドがのんびりと感心した。
「何となくな」
 まだ粘着した糸が残るのが気になるのだろう、ゼルガディスが布で刀身を拭いた。
「でもゼルガディスの構築した翼は鳥じゃなくてコウモリみたいだったね」
 よっぽど鬱憤がたまっていたのか、ブルーフェリオスはいつもに増して饒舌だった。
「人の魔力によって具現化する形は様々だよ。聖騎士団以外が用いるのは初めて見たけど」
「それにしても、レンフィルドさんが聖騎士団の一人だったなんて驚きです」
 アメリアが今更と思いながらもまじまじとレンフィルドを見つめる。
「クドラクの血を誤飲したのも、聖堂下のクドラクを監視する為だったんですか?」
「いやあれは、本当にうっかり」
 聞かなければ良かったと、アメリアが後悔した。


 教会で一行を出迎えたシスリアは、無事を喜ぶ前にレンフィルドを地下室に押し込んだ。
 今だ彼の存在は他シスターに知られていないので、シスリアが教会前で帰りを待ち構えていたのだ。
「ここに来る前に寄ったのがあの聖堂でさ」
 宿の寝台に腰掛け、ブルーフェリオスが話し始める。
「ボロ負けした時か」
「余計な事言うと説明やめるよ」
 アメリアの片手がゼルガディスの口を塞いだ。
「あそこでアルカトラザイト散らして撤退したんだ。教会に来てからは、地下室に結界が張ってあるのがわかって避難したんだけど」
「それで偽者が『地下室が怪しい』って言ったんですね」
「クドラク騒ぎが起きてたのはそれよりも前だよ。聖堂で見たんだけど、あのレンフィルドって人が使った剣に魔力の翼を生やす魔法、あれアルカトラザイト結合に魔力構成要素が似てるんだよね」
「似てる・・・?」
 アメリアの言葉に、ブルーフェリオスがうなずく。
「多分奴らは僕が教会に行くよりも先に、地下室にそれらしい何かがあるって思ったんじゃないかな。結界のせいで行けないから、地上でクドラク騒ぎをして引っ張り出そうとしたんだと思う」
「掘り返された墓場は、クドラク騒ぎの為に?」
 やっとアメリアの手を外したゼルガディスが口を挟む。
「あれはクモ女が騒ぎの為にクドラクを出したんじゃないかな。でもあんまり派手にやり過ぎると逆に人が地下室に逃げ込むって考えたのか、極力姿を出さないようにして気を引いたんだと思う。勿論吸血もさせない程度で」
「・・・そこまでして魔族がアルカトラザイトを探す理由って何なんでしょう? 不完全でも脅威となり得るんですか?」
「そこなんだよね。不思議なのは壊してるんじゃなくて、どうやら集めてるらしいって事」
 ブルーフェリオスが参ったように肩をすくめた。
「プライドだけは一人前だから、人間が作ったものなんて利用はしても自分の武器にはしない筈だよ」
「利用か。不完全作に利用価値なんてあるのか?」
「剣じゃ無理だね。結晶体に戻して別の物作るにも危険過ぎるし」
「危険?」
 アメリアが首を傾げたので、ブルーフェリオスが説明を付け加えた。
「アルカトラザイトって、微小な結晶で構成されてるんだ」
「偽者が話してたな」
 化けていたマステマが話した内容を伝えると、ブルーフェリオスが不機嫌そうな顔をした。
「そーやって人の顔で自慢げに語られると、僕の印象悪くなるじゃない」
「元々わ・・・ぐむ」
 再びアメリアの手が俊敏に伸びた。即座に外されはしたが。
「じゃあ知ってるものとして話を続けるよ。その微小な結晶が、何故剣以外の形にされなかったと思う?」
「え・・・? アルカトラザイトが・・・・・・そうですよねすごく小さいなら別に何の形にだって出来そうな気が・・・」
 アメリアが考え込む仕草を見せる。
「絶対的な破壊力を持つアルカトラザイト。それを剣以上の大きさにするには危険が伴う」
 ブルーフェリオスが一度目を伏せて、それから又二人を見上げる。
「壊れちゃうってことですか?」
 アメリアの問いに、少し首を傾けてから口を開いた。
「剣の形状を紙袋だと考えて。その中に入れる砂をアルカトラザイトだとして、少しずつ少しずつ丁寧に入れれば紙袋は破けずに満タンになるけど、ちょっとでも強引に詰めたら破れるよね。恐いのは、破れるどころではなく膨大な熱エネルギーを発するってこと」
「つまりは爆発か」
 ゼルガディスの言葉に、今度は頷(うなず)く。
「もし魔族が結晶を利用する方法を得ていたら・・・その威力を知って集めてるなら」
「巨大な爆弾を作ってるようなものじゃないですか!」
 慌てふためきかけたアメリアの肩を押さえて、宥める。
「そんな単純な真似しないと思うんだけどね。大体アルカトラザイトの結合の魔法さえ知らない奴らが、早々巨大なもの作れない筈だし」
「『筈』でも、可能性はある訳だな。そうなるとますます先手を打たなきゃならんな」
 ゼルガディスとしては、試せるかもしれないアルカトラズを先に奪われるのが癪なのだが、敢えて口にはしない。
「そうですね。敵の全貌だってまだ知れてないんですし」
 アメリアが気合を入れる為に拳に力を込めた時、ノックされた扉が開いた。
 シスリアがレンフィルドの汚れたマントを脇に抱えたまま顔を出す。
「お風呂が沸きましたので、皆さんどうぞ」
 言われてからアメリアが、戦闘で大分汚れている衣服に気付いた。
 おもむろに手を打ち、話を終結させる。
「とりあえずは、一戦終了って事でさっぱりしましょうか」
 シスリアについて行こうとしたアメリアの後ろで、猫の鳴き声が響く。
 何故か猫の姿に戻っているブルーフェリオスが、ゼルガディスに尻尾を掴まれていた。
 どうやら進行を阻止されているようだが。
「猫は風呂嫌いだろ。大体お前はほとんど戦闘に参加しなかった」
「ニャー」
「誤魔化すな!」
「じゃあ、お先に」
 部屋の中で暴れ始めたゼルガディスと猫を振り向きもせずに、
 ――アメリアが、あっさりと部屋の扉を閉めた。


 ==================================

 中編後続話、四話予定・・・。
 全く別の物が、混じる可能性も無きにしもあらず(爆)。

トップに戻る
14126まさかそう来るとわ・・・!(笑)雫石 彼方 URL2003/4/29 16:14:51
記事番号14123へのコメント

さなさんこんにちは。
レスしようしようと思いながらずるずると遅くなり、結局最後になってしまいました、すみませぬ〜(^^;)

ルーちゃんが喋れなくなっちゃった時は、『魔女の宅急便』でジジが喋れなくなった時と同じくらいの衝撃を覚えましたが、無事言葉を取り戻せたようで良かったですvルーちゃん、いつまでも普通の猫には戻らないでねー!!(><)
そして攫われてしまったアメリア、なんて美味しい展開なの!!と握り拳作りつつ読んでいましたが、ゼルのアメリア救出法がまさかあんな形で来るとわ。それまで緊迫した展開だっただけに「うそーん!!」とびっくりした反面、「アメリアだし」と納得もしました(笑)相変わらず読者を躍らせるのが上手くていらっしゃるわー(^^)
あと、ゼルが投げた鼠のぬいぐるみに条件反射で飛びついちゃうルーちゃんが最高に可愛かったですvゼルは一体どういう思惑があってあんなものを持ち歩いていたのか…というかそもそもあれをどうやって手に入れたのか、謎ですね(笑)買ってるところを想像すると非常に笑えます。…それとも手作り!?(笑)
最後のお風呂云々でのドタバタは、見てて楽しくて嬉しかったですvいいトリオですね♪

シリアスもほのぼのもギャグも無理なく盛り込めるさなさんはやっぱり凄いです。アルカトラズやクドラクの細かい設定とか魔法とか、ただただ感嘆するばかりです。
これからどんな展開になっていくのか、とても楽しみにしてます。またお話をアップされた際には飛んできますので、頑張ってくださいねー(^^)

トップに戻る
14128アメリアらしさを追求しまして(爆)水晶さな URL2003/4/29 22:55:41
記事番号14126へのコメント


 彼方さん今晩和。コメントありがとうございます(^^)
 お忙しい中読んで頂けるだけでも本当有り難いので、無理なさらないで下さいね。

 姫はここしばらく正義を説いていなかったので、そろそろ鬱憤が溜まるだろうと・・・げふ。あのノリが好きなので戦闘中だというのに混ぜてしまいました(爆)。
 どうもゼルガディスはブルーフェリオスを好きになってくれそうにないので、コケにできる時は散々コケにします(爆)。手作りは無理かと思われるので、何処かで購入したのかと・・・(苦笑)。
 
 タイトルが同じ話の連話でなく、独立した話の中にもう一本筋を含ませるのは予想以上に難しくて毎回四苦八苦しております(@_@;)。自分が始めた事なので最終章までは仕上げるつもりですが、ペースがどのようになるかはちょっと・・・(汗)。
 長期戦のアルカトラズシリーズですが、次回もお付き合い頂けると嬉しいです。

 コメント有り難う御座いましたv(^^)
 
 
 

inserted by FC2 system