◆−冥王の騎士4:祈りの結末−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:44:54) No.13310
 ┣冥王の騎士4:祈りの結末:序章:狂気が始まり−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:46:12) No.13311
 ┣冥王の騎士4:祈りの結末:第一部:運命巡る−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:49:03) No.13312
 ┃┗冥王の騎士4:祈りの結末:1章:運命の虚ろな糸−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:50:29) No.13313
 ┃ ┗冥王の騎士4:祈りの結末:2章:紡ぐは二十五の天命−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:51:14) No.13314
 ┃  ┗冥王の騎士4:祈りの結末:3章:だが時は流れゆく−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:52:23) No.13315
 ┃   ┗冥王の騎士4:祈りの結末:4章:そんな世界に立ち向かわんも−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:53:38) No.13316
 ┃    ┗冥王の騎士4:祈りの結末:5章:弱きもの汝の名相応しくなき−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:55:16) No.13317
 ┃     ┗冥王の騎士4:祈りの結末:6章:世界の狭間に脅えるのだから−D・S・ハイドラント (2003/2/22 17:59:03) No.13318
 ┃      ┗冥王の騎士4:祈りの結末:7章:闇に蠢くもの達も−D・S・ハイドラント (2003/2/22 18:00:18) No.13319
 ┃       ┗冥王の騎士4:祈りの結末:8章:すでにすべて知りしこと−D・S・ハイドラント (2003/2/22 18:01:12) No.13320
 ┃        ┗冥王の騎士4:祈りの結末:9章:だが光はいつの時にも−D・S・ハイドラント (2003/2/22 18:05:40) No.13321
 ┃         ┗冥王の騎士4:祈りの結末:10章:真の闇すら恐れずに−D・S・ハイドラント (2003/2/22 18:06:42) No.13322
 ┃          ┗冥王の騎士4:祈りの結末:11章:運命の名の元奮い立たん−D・S・ハイドラント (2003/2/22 18:07:21) No.13323
 ┃           ┣一部の後書き−D・S・ハイドラント (2003/2/22 18:08:10) No.13324
 ┃           ┗Re:冥王の騎士4:祈りの結末:11章:運命の名の元奮い立たん−りおん (2003/2/24 21:44:40) No.13364
 ┃            ┗Re:冥王の騎士4:祈りの結末:11章:運命の名の元奮い立たん−D・S・ハイドラント (2003/2/24 22:16:43) No.13365
 ┣一気に……−エモーション (2003/2/23 22:15:59) No.13352
 ┃┗Re:一気にいけました−D・S・ハイドラント (2003/2/24 13:03:52) No.13357
 ┣冥王の騎士4:祈りの結末:第二部:創造の怨嗟−D・S・ハイドラント (2003/2/26 20:41:45) No.13387
 ┃┣冥王の騎士4:祈りの結末:12章:太陽と月の別離−D・S・ハイドラント (2003/2/26 20:43:50) No.13388
 ┃┃┗冥王の騎士4:祈りの結末:13章:物語それにより始まりた−D・S・ハイドラント (2003/2/26 20:46:46) No.13389
 ┃┃ ┗冥王の騎士4:祈りの結末:14章:闇は静かに−D・S・ハイドラント (2003/2/26 20:50:03) No.13390
 ┃┃  ┗冥王の騎士4:祈りの結末:15章:風は激しく−D・S・ハイドラント (2003/2/26 20:59:21) No.13391
 ┃┃   ┗冥王の騎士4:祈りの結末:16章:焔は強く−D・S・ハイドラント (2003/2/26 21:01:26) No.13392
 ┃┃    ┗冥王の騎士4:祈りの結末:17章:一寸先などけして恐れぬ−D・S・ハイドラント (2003/2/26 21:03:18) No.13393
 ┃┃     ┗冥王の騎士4:祈りの結末:18章:輝き鳴く声−D・S・ハイドラント (2003/2/26 21:05:35) No.13394
 ┃┃      ┗冥王の騎士4:祈りの結末:19章:再会も晴れ−D・S・ハイドラント (2003/2/26 21:07:58) No.13395
 ┃┃       ┗冥王の騎士4:祈りの結末:20章:光は絶頂−D・S・ハイドラント (2003/2/26 21:12:38) No.13397
 ┃┃        ┗冥王の騎士4:祈りの結末:21章:終わりて哀しき−D・S・ハイドラント (2003/2/26 21:16:47) No.13398
 ┃┃         ┗冥王の騎士4:祈りの結末:22章:だが暁は来る−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:23:28) No.13411
 ┃┃          ┗冥王の騎士4:祈りの結末:23章:それも過ぎゆき−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:25:25) No.13412
 ┃┃           ┗冥王の騎士4:祈りの結末:24章:冥き黄昏−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:38:13) No.13413
 ┃┃            ┗冥王の騎士4:祈りの結末:25章:雨音激しき−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:43:58) No.13414
 ┃┃             ┗冥王の騎士4:祈りの結末:26章:呪いの歌−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:46:44) No.13415
 ┃┃              ┗冥王の騎士4:祈りの結末:27章:祈り届かぬ−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:49:10) No.13416
 ┃┃               ┗冥王の騎士4:祈りの結末:28章:照らされし肖像−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:51:22) No.13417
 ┃┃                ┗冥王の騎士4:祈りの結末:29章:断罪の前に−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:54:59) No.13418
 ┃┃                 ┗冥王の騎士4:祈りの結末:30章:震えは激しき−D・S・ハイドラント (2003/2/28 12:59:24) No.13419
 ┃┃                  ┗冥王の騎士4:祈りの結末:31章:だが温もりは−D・S・ハイドラント (2003/2/28 13:02:25) No.13420
 ┃┃                   ┗冥王の騎士4:祈りの結末:32章:始まりのさだめ打ち破らん−D・S・ハイドラント (2003/2/28 13:05:28) No.13421
 ┃┃                    ┗二部の後書き−D・S・ハイドラント (2003/2/28 14:31:14) No.13423
 ┃┗ネージュさん、エル様に感化されたの?−エモーション (2003/2/27 20:49:09) No.13408
 ┃ ┗Re:ネージュさん、エル様に感化されたの?−D・S・ハイドラント (2003/2/28 11:13:07) No.13409
 ┗冥王の騎士4:祈りの結末:第三部:救済への道−D・S・ハイドラント (2003/3/2 17:42:34) No.13436
  ┗冥王の騎士4:祈りの結末:33章:雪が降り−D・S・ハイドラント (2003/3/2 17:45:09) No.13437
   ┗冥王の騎士4:祈りの結末:34章:輝き埋もれし−D・S・ハイドラント (2003/3/2 17:49:29) No.13438
    ┗冥王の騎士4:祈りの結末:35章:戦慄近付き−D・S・ハイドラント (2003/3/2 17:52:32) No.13439
     ┣ネージュさん、サイコロくん……。−エモーション (2003/3/2 22:22:23) No.13445
     ┃┗Re:ネージュさん、サイコロくん……。−D・S・ハイドラント (2003/3/2 22:53:32) No.13446
     ┗冥王の騎士4:祈りの結末:36章:凄まじき震え−D・S・ハイドラント (2003/3/3 10:57:03) No.13448
      ┗冥王の騎士4:祈りの結末:37章:だが光は闇打ち砕き−D・S・ハイドラント (2003/3/3 11:04:21) No.13449
       ┗冥王の騎士4:祈りの結末:38章:物語は終わりへと−D・S・ハイドラント (2003/3/3 11:13:57) No.13450
        ┗冥王の騎士4:祈りの結末:39章:そして最後の激闘−D・S・ハイドラント (2003/3/3 11:17:14) No.13451
         ┗冥王の騎士4:祈りの結末:40章:けして救われずとも−D・S・ハイドラント (2003/3/3 11:19:35) No.13452
          ┗冥王の騎士4:祈りの結末:41章:この道歩む−D・S・ハイドラント (2003/3/3 11:24:26) No.13453
           ┗冥王の騎士4:祈りの結末:42章:どんな絶望にもけして負けずに−D・S・ハイドラント (2003/3/3 11:28:41) No.13454
            ┗冥王の騎士4:祈りの結末:決章:狂気に終わる−D・S・ハイドラント (2003/3/3 11:41:38) No.13455
             ┗冥王の騎士:最終章:物語は……終えた−D・S・ハイドラント (2003/3/3 11:50:21) No.13456
              ┗最果て書き−D・S・ハイドラント (2003/3/3 12:35:20) No.13457
               ┗いろいろ募集−D・S・ハイドラント (2003/3/3 12:57:55) No.13458
                ┣Re:いろいろ募集−gure-to masa (2003/3/3 14:27:31) No.13459
                ┃┗Re:いろいろ募集−D・S・ハイドラント (2003/3/3 18:09:41) No.13461
                ┣お疲れさまでした−エモーション (2003/3/4 22:24:14) No.13470
                ┃┗どうもありがとうございました。−D・S・ハイドラント (2003/3/4 22:49:51) No.13471
                ┗奈落の果て書き−D・S・ハイドラント (2003/3/5 12:54:53) No.13473


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13310冥王の騎士4:祈りの結末D・S・ハイドラント 2003/2/22 17:44:54


 冥王の騎士4――祈りの結末――
 本日は、第一部公開します。
 グラウシェラーは活躍するのか、カシフォードは忘れ去られてしまうのか。グルダスさんはやはりマツタケ・シティ崩壊で死んでしまったのか。・・・とそんなものはどうでも良く。
 シェーラは無事フィブリゾを救出し、悪魔復活を食い止められるのか。そしてエル、ガーヴ、アイン、ネージュと彼ら、彼女らはどうなるのか・・・。
 ・・・近日じゃなくて今公開。

 ちなみに読み方としては、
 1、速読する。
 2、何日かに分けて読む。
 3、敢えてじっくり読む
 4、食事などの合間に読む
 5、寝ながら超能力で読む。
 6、私の文を歌詞にして曲を作る。
 
 個人的には、6をお薦め。(いや待て)
 ・・・でも5も捨てがたい。
 いや正直、1か2が良いと思います。じっくり読んだところでボロが出るだけですから・・・。

 まあとにかくこの辺りで開幕します。
 それではごゆっくり・・・

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13311冥王の騎士4:祈りの結末:序章:狂気が始まりD・S・ハイドラント 2003/2/22 17:46:12
記事番号13310へのコメント

 「じゃあしばらくここで寝ていてくださいね。」
 返事はなき、横たわる骸は3つ・・・。だが一瞥くれずに寒く暗き部屋後とせん。
 (明日も忙しくなりそうですねえ。)
 呟き残る。すぐに消えたが・・・。

 回廊渡る足取り重くあろうも漏らす情なき。平静なりて笑顔すら浮かびし
 「ゼ〜ロ〜ス〜!」
 突如に聞こえし声に、瞬き1つにして振り返らん。映るは黄金の獅子思わす美女、姉ゼラスなり。
 「おや、何か御用ですか?」
 その声、冷たき、ゼラスは動揺見られるも、気にすることなく、
 「お前絶対何か企んでるだろう。もう誤魔化すことは出来んぞ。アプロス様を裏切る可能性も捨て切れんからな。」
 だがゼロスは思うほどに動じず。そこに闇灯るの見えし。
 「やはり・・・あなたの弟であるのは・・・これまでのようですね。」
 暗く、哀しげ、それでありながら、仮面に覆われし如くの動かぬ顔にひび入りて、見えしは――笑顔。それも邪悪なる。
 恐怖が渦巻く。その神官にかくも闇は強く宿り、ゼロスは笑いていた。脅えを堪えるゼラスに冷笑、嘲笑、狂気の笑い。様々なるものに見せたであろう。
 「お前・・・」
 戦慄強く感じて、それに対する心に、焔燃やし対抗しつつに・・・。
 「冥将軍と冥神官・・・本当ならたとえあなたと僕が本気でぶつかっても少なくとも相撃ち・・・でも僕にあなたより強い力があることは薄々感ずいていたはずです。」
 冷静にすべて読み取りつつに笑わん。恐ろしき神官。邪悪なる弟。
 「・・・なぜそんな力がある!?」
 震えはすでに露になりて紡ぐ声も不安定すぎし。
 「・・・それは秘密です♪」
快笑、始めて晴れて――しかしさらなる雨降らん。
 「お前!」
 腰に携えし魔術具である轟焔の剣(ウェルダン)、焔の魔剣へ今手を伸ばし、
 「くくく・・・追い詰められた羊は果敢にも立ち向かうようですね。まあ仕方のないことです。」
 斬撃放たれんとせし瞬間すら、余裕めいて一分の動揺すらあらぬ、
 「何だと!」
 剣走りて、紅蓮虚空に舞いた。
 「ですが、結局どう足掻いても獅子にはかなわないんですよ。」
 錫杖鳴らす。激しく静かなる音響けば、消え去るは赤き焔。
 「っ!」
 歯噛みし、恐怖より逃げんとするゼラスに、
 「恐れるから牙を剥く・・・姉であっても、保護者であってもあなたは羊でしかない。・・・僕は獅子。かなうはずがない。」
 暗黒強まりて冷気放たれん。ゼラス沈黙に凍りゼロスの足音――死神の足音聞きて無情に流れる時、かくも緩慢なることに小さき幸い覚え、この時永遠であって欲しきと相手なくして祈りた。届くはずなどけしてなく・・・。
 「冥将軍・・・その名はあなたには相応しくありません。」
 今も一歩、一言とともに刻まれん。
 「・・・・・。」
 震え、返す言葉あれど、声はけして出ぬ。
 「狼が率いた羊の軍は、羊が率いた狼の軍に勝ります。・・・羊である器のあなたではなく獅子である僕がその将軍の地位にむしろ相応しいではないですか。」
 震えは時と――ゼロスが近づくとともに強くなりて、術も心も機能せぬ・・・。
 闇――自ら持つ半端な闇など平気で喰らわん真なる闇。冥王――悪魔の欠片が持ちしそれに近しもの。遠く及ばずともそれ同種なり。
 「初めから僕の方が上だったんですよ。・・・分かりますね。」
 接近――足音止まりて、恐怖最高潮に募りきりた。――絶叫すら上げんとさせるほどに・・・。それこそ声なきためにかなわぬも、震えは絶頂、極寒まだ温かし・・・。
 「そういうわけで・・・ご協力ください。」
 笑みは異様に残虐な悪鬼の如くでなおある品。狂気と理性の狭間にいながらに惑わぬに両者受け入れしもの。それゼロスなり。
 「・・・ゼラス姉さま♪」
 衝撃――走る。錫杖はゼラスの胸部貫きていた。
 「大丈夫ですよ。今までの記憶も戻して差し上げますし・・・」
 苦痛――だがそれ以上に恐ろしきは次なる声。だがそれほど無情に思える時はまさにこの今。
 「・・・死んでください。」

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13312冥王の騎士4:祈りの結末:第一部:運命巡るD・S・ハイドラント 2003/2/22 17:49:03
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というわけで第一部全11章、連続でいきます。

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13313冥王の騎士4:祈りの結末:1章:運命の虚ろな糸D・S・ハイドラント 2003/2/22 17:50:29
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 静寂――その名の幕降りて、世界沈黙。輝きすらも哀しくて、降る雪もまた声忍ばせん。
 境界は虚ろでありて、内外の変化はあまりに大けど、事実何も違いなき。人が行き交おうも、賑わいでいれど、寂しげであること変わりなき。
 吐息は白く暗闇に吸われ、最期見せずに消え去らん。涙すらも溢れん如し、焦り忘れんとせしも、なだらかなる感傷響きて痛まんのみ。
 時は速くとも、遅くとも、哀しすぎて、冷酷なる。過ぎぬ時すら辛きもので、それ救われることなき暴君だろう。ありてもなくても哀しき流れ。逆巻くことすら願いと違う。今、望みすら見つけられずに時を恨みて、自ら責めし。刹那、緩慢、不動、逆流、どれも望みでなきのならば。自ら選びし果てがそれなら。この身など・・・いらぬ。
 流れん涙のその兆しに、かぶり振りて激流塞き止め吐息再び。
 紡ぐは言葉――紡ぐは構成。
 気持ち内に閉じ込めて、今行わんはそれ1つ。
 真昼の内より小さき努力せし、その結晶、容易くあれどもだが辛くなきわけでなし、直接通話。
 「通話(コール)」
 選びし音はかくも単純――魔法発生音声は魔法を使用する時のパスワードに等しく、契約時に自由に設定可能――。
 混濁せし意識保ちて世界2つ――やがて1つへ。慣れぬもの擬似なる世界に意識喰われ、混沌へ堕ちん。
 光、闇、虚無、物質、過去、未来、今、そして我。混じり合いしそんな世界、混沌の海。何度もたゆたうことあれど、それとは違いた今日の海。向かう、なお向かう。新たなる世界へただ向かう。
 この魔法、ただ音声行き交わすだけではけしてなき。それならばいくつもの構成必要となろう。互いの言葉行き交わんほどに精神近づけん。慣れねば世界1つ――慣れしものであればその今見つつに声だけ伝えん。無論彼女前者なり。
 「ダイ・・・殿?」
 見知らぬ虚空に今1人いて、震え、脅え、そしてそれ隠さんとす。
 1人だけ・・・まだ1人だけ。不安あれども確かに編み込みしアドレス。誤記入ありただろうか。戦慄に近きほどに冷たき風、凍れん風が撫でれば、むしろ身体熱気に・・・。
 だがそこにてすべて終え、余計なる不安すべて恥じに・・・。
 「あっシェーラ様。」
 届きた声、向かいた声、見えし姿、映りしダイ。
 だが声はどこか虚ろで空に明るき。少なくしも別れと違い明らかなる。
 「こんな真夜中に失礼します・・・。」 
 遠慮がちて言葉発す。さほどに普段の会話と変わり感じぬ。
 「あっいえ、全然良いんですよ。」
 それ本心。伝わりあい会話にほぼ等しきもそれが事実歓迎でありたのは確かに受け取れん。だが微かではなき焦りもまた・・・。
 「・・・ところで何かあったんですか?」
 そっと・・・訊ねん。後悔浅く走りてそれ消すことに時稼ぎし。
 「えっ・・・何のことでしょう。」
 沈黙――打ち破らんとせしまでに長きはいらぬはずだが、その停滞はかくも長き。
 ・・・。魔力薄れゆかんこと分かりて焦りやや浮かべしも進軍の士気足らぬ。
 だが奮起など一瞬。
 「隠す必要はないですよ。仮にも私は公爵の娘ですから、迷うことはないですよ。」
 強き――かくも強き。良き強さでなく。ただ強き・・・。
 観念――それ正確であろうか。むしろ安堵でなかろうか。
 「実は・・・・」
 だが沈黙、それを急かしたりはけしてせぬ。
 時は短くなきも、人の心に時は短き。
 世界は薄れん。含みし魔力はやがて食い尽くされんとするだろう。だが切れてしまえば良きでなかろうか。そうにまで思えたりせん。
 「・・・公爵様が」
 紡がれし声に決意あり。そして背負わされし暗き闇強き。
 長き停滞――だがそれ許せれず。時は長くも人の時短き。
 「公爵様が・・・」
 そして最後の言葉発す。
 「・・・お亡くなりになられました。」
 そこで通信途切れ、戻る世界は狭き暗闇。寝台に座りて眠れぬ夜、窓の外より世界観ていたそんな自分。
 再び魔法使うことはなしに、眠ることなく布団そっとはおる。
 苦しみ抑え、疑問抑え、時巡りて、欲しき、時に望みついに見つけん。

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13314冥王の騎士4:祈りの結末:2章:紡ぐは二十五の天命D・S・ハイドラント 2003/2/22 17:51:14
記事番号13313へのコメント

 「ヒムド様!」
 静寂が途切れ響きた声に兵、声上げん。
 (私なんぞに会ったから何だと言うのだ。全くやかましい。)
 強き容貌の長髪なる男、狂戦士ヒムド。
 だが思い表わすことなどけしてなく。
 「公爵様にお会いしたい。即座に謁見させろ。」
 有無を言わさぬままに白き衣なびかせ、踵返さん。惑いし兵など見ることなしに・・・。

 見えし空退屈すぎて、美しきなど今や理解出来ぬ。
 時流れん。幾度もの白き息吹、昇りて消えて、還らぬ時をただ捨てゆかん。だがそれに思うことなど何もなき。
 (ふん、グラウシェラーめ。どれだけ時間を掛けるつもりだ。)
 思いた途端に静寂途切れん。
 「ヒムド様、ご用意が出来ました。」
 声が入り込まん。
 「分かった。」
 応え立ち上がらんと、狭き待合室後にした。
 不変なる夜空も同時に掻き消えん。気にせしことでもなきでありたも・・・。
 足音も自らのそれでなきように放心せん我、不動なるままに殻へ還さん。そこにて仮面、微かに崩れん。
 ――しかし歓びだけでなきこと確か。
 
 赤き道、だがかくも長きでありたろうか。広き虚空だがそれすらも重さ持ちて・・・。
 沈黙のままに見つめんは主の尊顔。グラウシェラー・グレープ・ダイナストそこに――若き身に宿りし老練なる覇王。すべてに反旗翻さん最強なる男。
 「公爵様、ただいま帰還致しました。」
 強き声、だが従うものなる仮面は忘れぬ。だが真に仮面でありたか。震えは紛れもなくに走りつつあらん。
 「それはご苦労であった・・・で、どうだったのだ。」
 優しくして、それでいてなお冷たく強き。覇者たる声上げんとせんばヒムド動揺なお巡らせし。
 だが重き歩進めつつに、
 「どうやら辺境伯はシャーベット王国との接点があったようです。」
 そして歩、なお進めん。グラウシェラー顔しかめんもそれ見て見えぬが如くに・・・。
 「それで、どうしたのだ?」
 多少の笑みもらしヒムドは邪悪なる仮面の下見せんとしつつに、
 「全軍、殲滅という形を取らせていただきました。」
 歩は重くなれど止まりはせぬ。
 「私にはその権利はあるはず。」
 不服に思うもも公爵頷き、
 「だが証拠不充分だろう。私は内外よりの不評を得てしまいかねない。」
 だがついにヒムド仮面破りて、
 「あなたにそのようなことを考える必要はありません。」
 笑みは邪悪なりて狂気混じり、そして白刃抜き払いて・・・構えん。
 「・・・そうか。」
 だがグラウシェラーもらすはただ溜息。先見るのみの眼差しにて、脅えなくば逃避もなき。その死なる名の事実受け止めんとしていた。
 それにロマネコンティ握りし手、震えん。 
 「どうした・・・?」
 挑発せんほどなる声、震えなどなくして落ち着きあるのみ。
 「死が・・・恐ろしくはないのか?」
 むしろ追い詰められしはヒムドなりた。
 「お前が私を殺したいと思っているのは承知だ。理由は知らぬがな。」
 その刃震え、首筋には虚ろの壁。
 「どうしたのだ・・・?早く殺せ。」
 震えはなおも強まらん。脅え、脅えているのか?
 「貴様っ!!」
 怒り――見えぬ侮蔑の声に逆らわんとし、白光見ん。
 そして鮮血・・・。
 (終わった。)
 グラウシェラー死した。
 (何もかも終わった。)
 そう終わりた。すでに――。
 「なぜそんな目で私を見る。」
 (なぜ死しても私を嘲る?)
 脅え、屍に脅えし自分。
 「すでに終わった。終わったはずなのだ。」
 (そう――終わった。)
 哄笑――いつしか笑わん。
 「そうだ。終わった。私は貴様を殺したのだ。そうだすべて終わった。・・・すでに終わった人生などむなしきものだ!」
 狂えるままに自ら断ち切らん。覇なる剣濡れし――2つの赤。2人の勇者の聖なる血。
 (全く馬鹿な2人ですねえ。)
 そして2つの骸に第三の影。
 (でもこれで終わらせては差し上げませんよ。)

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13315冥王の騎士4:祈りの結末:3章:だが時は流れゆくD・S・ハイドラント 2003/2/22 17:52:23
記事番号13314へのコメント

 脅えているのか?
 躍っているのか?
 冷たき風が頬切り裂いて、震わすこの身。
 脅えているのか?
 躍っているのか?
 冷たき世界に捨てられて、震える左手。
 脅えているのか?
 躍っているのか?

 白き吐息舞い上がりては見つめて消える。
 遠き空を眺めては哀しげに、懐かしげに・・・。溜まりし疲れ圧し掛かりては、吐息深く沈みてゆいた。
 「3年か・・・」
 漏らす言葉、聞くものおらぬ。
 握りし銀、輝くは獣――悪しきなるそれ。
 細工は端正なりて、美しくもあれどやはりは禍々しき。
 「お前との旅も随分経ったな。」
 聞く耳持たぬ獣への声。
 だが静寂はすぐに訪れん。しかしその静寂も、偽りでしかなかろう。
 「ぐがあああああ、ごおおおおおおおおお」
 響くはその音、普遍的なる。
 「ああうるせえ。」
 ガーヴの寝息に妨げられつつアイン眠れぬ夜過ごさん。

     ◇◆◇◆

 目覚めは唐突なる。まどろみたことに気付くより早くに・・・。
 静寂が声持ちて、麗しき朝伝える音奏でん。
 目覚めし後に入り込みしはまず虚空、そして白きその天井、起き上がりては、卓上に眠る黒の太陽――そして魂の翼。
 (そういえばアインに渡さないと・・・)
 思いしても焦りのみが募りて、固まらぬ心。それ揺さぶるのは何であろうか。
 今だ掴めぬ運命――ひどく脅えしは未来になのか?
 
    ◇◆◇◆

 「遅いわね。」
 声もらさん。だがなお静か。
 「・・・・そうね。」
 だが2つの声美しき、温かき金なる月夜霊、冷たき銀なる飛輪。天上なる超越者達。
 (にしても3年振りね。)
 「何か言った?」
 脆くも麗しき声突き刺さり、
 「あっいや、何でもないわ。」
 強く輝かしき声返さん。
 黄金と白銀の流れ。停滞した中で、時刻みし月と太陽の女神。構図はかくも芸術なりて、そして描くこと許されぬそれ。
 朝の調べはすべて2人惹き立てんのみ。静寂、醸し出すメロディに沈黙は歌う。
 魅せられしもの少なくとも、それ、見ゆるものすべてなり。虚空にて、美の流れに咲いた花園に驚嘆覚えしは銀の女神。そこに絶望の果て過ぎしこと悟らん。
 微笑みいつまでも絶えぬこと願いた。
 「ねえ、何笑ってるの?」
 破りし流れにも消えることなどけしてなくして、
 「ふふふ何でもないわよ。」
 ただ笑顔終わらせぬよう。
 そこに陽射し熱持ちゆかんこと、今感じ始めん。
 「あっおはようシェーラ。」
 月もまた日輪の如しに輝き始めん。
 「おはようエル。」
 返す少女も強く美しき。
 「後はガーヴ様とアインね。」
 吐いて視線、絵画壊せし少女へと、
 「シェーラ、あなたも何か注文したら?」
 微笑みて、
 「そうね・・・。」
 すると、女神、同時に立ち上がり、
 「じゃあたし、ガーヴ様起こしにいくわ。」
 「私はアインを・・・。」
 風、迅速なりた。それ過ぎたりて、
 「あっすみません。」
 「はい何でしょう。」
 通り掛らん店員捕まえ、
 「これと、これと、これお願いします。」
 新たな世界の始まりは寂しくありて、爽やかなる。

     ◇◆◇◆

 一行、先日の黄昏にはこの街泊まりて、夜明かさん。
 北向かわんば極光見えんこの街ユグルム。
 だがその一時すらひどく惜しみて、向かうは聖都。サンチーンミ教総本山でありて、豪雪なりし千獣山脈の麓に位置する巨大都市聖都フォアグーラ。
 今駆けん速き馬達。

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13316冥王の騎士4:祈りの結末:4章:そんな世界に立ち向かわんもD・S・ハイドラント 2003/2/22 17:53:38
記事番号13315へのコメント


 冷厳なりて風などなく停滞。
 沈黙に支配されし空間そして砕けるは・・・。
 「このような早朝よりお集まりいただいたのにはわけあってのことです。」
 美しき声――時に等しき風化感じさせんも、それ思わすことけしてなき。 
 ダイナスト公爵夫人ダルフィンの声に集まりたノースポイントの騎士貴族達、一斉に注目せし。
 「昨夜、夫が謁見の間にて殺害されておりました。」
 哀しみなきわけでなかろうが、その歳不相応なる美女にそれ見せる気配などなき。
 不意に、飛び込まん混濁せし声に、
 「静粛に!」
 無情なるほどにも強き声、空間に冷気膨張し、この会議室静寂と化さん。
 「骸は夫のもの1つ・・・ですが鑑識の結果、血は2種類、明らかに違うものです。」
 魔法の性質上『知る』ことはまずに不可能であろうも、発達せし魔道技術それを可と成せし。国内有数の大貴族でありた彼の下にそのような技術者、皆無なことけしてあるまい。
 「犯行はまず、魔道騎士ヒムド・ベーコン・エッグのものとして間違いないでしょう。ヒムドもまた死亡したようですが遺体は見つかりません。」
 「どういうことです!死体が消えるって・・・まさか伝説のネクロマンサーがいると言うんじゃないでしょうね!」
 愚かなる言葉むなしく消え尽きた後、沈黙、動揺湛えつつにそれのみが走らん。
 「夜間、夫は彼と謁見を行なったそうです。立会いのものはおらず、ですが入り口を固めていた兵がすぐに気付いたようです。」
 淡々と紡がれゆく。ただ微かながらも哀しみの闇覆いゆかん。
 「近衛騎士団長ダイ・ス・ステーキ。」
 名呼ばれんと途端に、水浴びし如くの驚き浮かべ、
 「はっはい!」
 声上げん。
 「政治面は私が執りますが、軍事面はそなたに御任せします。」
 その時視線は若き騎士へ集中。栄光湛えんが中に冥きそれ混じり合い。
 そして1つ声。
 「公爵夫人様!」
 老いし声。立ち上がるは福与かなる体躯のその男。
 「何でしょう?前軍務大臣。」
 挑発的にも取れん声に怒り堪えつつにダルフィン睨まん前軍務大臣。
 「私はステーキ卿の才を推します。事実この国の情勢は芳しくありません。次記王位継承予定者であった夫の死亡により混乱がまた起こりうることでしょう。国家分裂や他国の浸入などの危険が充分にある今、人の上に立つ人間の能力が問われるのではないですか・・・。」
 冷たくありて強き声なり。
 「ダイ・ス・ステーキ、そなたを新軍務大臣に任命致します。」
 前大臣は歯噛みしつつに背を隠さん。
 「グランバード副騎士団長は今日限りにて≪ヴァン・レイル≫騎士団長とします。」
 風格持ちし老練なる騎士、双眸の蒼にて指さん。
 「光栄でございます。・・・公爵夫人様。」
 その騎士立ち上がりて頭下げん。
 「ではステーキ卿・・・1度私の部屋に来てください。」
 「はっはい。」
 頷けば・・・。
 「では短いですがこれを持ちまして終了とさせていただきます。」
 そして春風やがて流れん。だが心にのみで、空白き・・・。
 
 「公爵夫人様。」
 扉、叩かん音――それは不快なる音波届けんもそれけして悪しきに思わず。むしろ微かなる歓び。そのようなもの感じさせし。
 「ちょっと待っててください。」
 腰掛けたソファーより立ち上がりて、上等なる衣服引きずりつつに、扉へ向かわん。
 そして世界開ければ、黄金の髪に白き肌の好青年――ダイ。
 「来たのね。」
 先ほどの冷たさなど何も持たぬ暖かなる声。
 惑い震えるダイを優しく見詰めつつに・・・。
 「どうしたの?」 
 哀しみと――それ越えし歓びと・・・。
 「あっいえ・・・。」
 黒き髪も艶やかなりて、全身の体躯も魅力的なりて人誘わんもの。
 「ほら・・・こっち座ってくれない?」
 素早くソファーに掛け、手招き。
 「あっあの・・・。」
 動揺に揺さぶられしダイ。
 「遠慮しないで・・・。」
 優しき――哀しき。強き――だが弱き。
 儚き心――あまりに移ろいやすき。
 「あなたの才能は認めるわ・・・。」
 すでに飲まれた心。やはりは弱き。
 「あなたに第2のグラウシェラーになって欲しいの。」

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13317冥王の騎士4:祈りの結末:5章:弱きもの汝の名相応しくなきD・S・ハイドラント 2003/2/22 17:55:16
記事番号13316へのコメント

 響き渡りし足音が2つに増え、そしてどれだけ経たんか・・・。
 「軍務大臣殿。」
 聞き慣れし名、不意に掛かりて、歩速く止め、2色の溜息吐き出さん。
 見渡さんば虚空は暗く、寒気は今にようやく感ずる。気配は希薄でそれで鮮明、背後より来るそれ1つが・・・。
 思えば声女のもの。ほの暗くとも麗しく、冷たく美しき。
 「軍務大臣殿。」
 再度響かん。雪解けに凍結、ともに感じて息刻み、鼓動数えし。
 それ、強く弱き剣に思えし。張りた声、響き誘う。
 やがて気配最高潮に達せし今に、
 「何の用かな。」
 曖昧なる口調。笑顔浮かべんわりに強し。
 「大臣殿にお話がありまして・・・。」
 恐る恐るに振り返りては、脂肪に満ちし老人はその眼差しにやがて捉えんその姿。
 端正なりし白き肌、青銀なる輝けし短髪に使用人風のやや上質なるドレス身に付けし20過ぎほどの美麗なる女。
 「わしは忙しいんだ。早急に言ってくれ・・・。」
 女は言葉受けて微笑み浮かべ、
 「分かりました・・・前軍務大臣殿。」
 怒り煽るも前大臣、歯噛みし耐えん。
 女はなお笑み絶やさずに・・・。
 「大臣殿には私達に協力してもらいたいんですよ・・・。」
 怜悧なる美貌に反せし笑顔、また美しくば、愛らしき。
 「どういうことだ?」
 険悪生まん兆しありても、それあくまで飲み込まんとす。だが見るに笑顔変わりゆきて、
 「ふふふ訊くからには引き受けていただきますよ。」
 悪魔めいたる笑みは妖しき。美貌讃えしそれでありたも、恐怖誘いてそれ忘れん。
 「どうせ断れば消すつもりだろう。」
 だが臆して初めて研ぎ澄まされん。たとえ無能と呼ばれんも、事実はそうではけしてあるまい。彼、惑うほど弱くなき。
 「ご名答・・・では答えは1つですね。」
 陽光灯るも笑みに意味は変わることなき。
 沈黙なりて頷かん。動揺抱え恐怖帯びて、時待つのみに等しく重き。だが冷静。
 「辺境伯は魔道騎士ヒムドの凶刃に倒れました。こちらの都に何人か忍ばせているあなたにはお分かりでしょう。」
 怪しき笑み交えつつ、冷淡なりし口調にて紡ぎゆかん声。
 「グラウシェラーの倒れた今、兵の士気は落ち始めるでしょう。この機にグラウを墜とします。」
 「何だと!」
 声振り上げんも、静寂に消え、
 「公爵が倒れ理由なくに大臣の座を剥奪されたあなたにこの城への忠誠心などありますか?」
 微笑みつつに迫らん言葉に、事実迷い生まれ始めん・・・。焦りも疾駆し、思考は急速すぎて掴めぬほどになりゆきた。
 「もしわしがこのことを公爵夫人様に知らせた場合はまずいのではないか・・・。」
 そう言葉漏らさん。答え探しつつに・・・。
 「大丈夫ですよ。」
 声と姿に反せし笑顔。頂点に思えんほどに高まりて・・・。
 「どうせいずれ知られることでしょうし・・・死体が1つ増えるだけでしょう。」
 笑顔のみで口調は冷たく。そして平静。それがむしろ震え引き立てん。
 「どうします?八魔卿に協力してみませんか・・・。」
 決断は重くして、なお出でることなし。回転続くもそれも希薄にのみ取れゆきて、無思考に何ら変わりなきまま連なる。
 「あっすでに各地方領主達の半数は私達の方についていますし、心配ありませんよ。」
 「だがノースポイントに戦いを挑む理由などあるのか?」
 すると笑顔なお強め、
 「ノースポイントを陥落させれば、後は国をまとめるのも容易いことです。有力な王侯貴族の大半が死した今。カンヅェル様のご子息であられるアルフレッド様を新たなカタート王とすることも可能でしょう。」
 「それで≪雷剣将≫辺りが政治を乗っ取るというわけだな。」
 明暗、どちらと取れぬその表情。移ろいやすき容貌に薄笑み浮かべ、相手小さく頷くの見れば、
 「わしは何をすれば良いのだ。それと見返りはあるのだろうな。」
 思い切りて言葉切り出さん。
 「ええ・・・お金はそれなりにお支払い致しますし、成功の暁には、高い地位をお約束できます。」
 そして表情変えぬままに、
 「あなたがやることは簡単。・・・ダイナスト公夫人の暗殺です。」
 ただ笑み妙なほどに邪悪でありた。
 「それでは作戦を説明致します。・・・ちなみに私のアドレスは****です。作戦開始は今夜ですので・・・。」

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13318冥王の騎士4:祈りの結末:6章:世界の狭間に脅えるのだからD・S・ハイドラント 2003/2/22 17:59:03
記事番号13317へのコメント

――希薄な世界は鮮明すぎし――

 吹雪などなき。それが歩を向かしたのやも知れぬ。惑う心振り払わんための、意志なるものでありたが、天なる輝き起こせし運命。その意のままでありたやも知れなき。
 思いと運命どちらが重きでありたか知れぬも、それ問うことなかれ。
 歩は進みゆかん。意志であろうとなかろうとも・・・。風吹きたりて、頬撫でん冷たくも温かき身体迷いて、後に感じんは温もり。
 連なり響かす足音は微かなりて余韻のみ静かに鮮明。そしてやがては停滞せし。短き間でなくともいつかは必ずに来るそれ今訪れん。
 風の匂い。ただそれだけでなきこと感じ、浴びし感覚研ぎ澄ましゆく。虚無の歌――響きたそれ何意味しようか。だが気にせしことなき、掻き消さんば歩進めん。微かに霜降る大地、すでに渇きし草鳴る音のみ。
 囲い、それ見ることなしに感慨もなく境界越えん。
 歩はけして直進でなくとも、思考など皆無に等しく、哀しみ覚えし双眸もむしろ枯渇。
 やがて視線に現れし、暗きあの日の天の如し、虚ろ感じさせん石見えんも潤い起こらず、それなお哀しみ蒔かん。純粋なる悲哀でなくに喪失混じりのむなしさ含み。虚ろなる涙何度も流さん。奔流積りに積もりて、身濡らし溺れさせし。だがそれすべて幻、またの名望み。近くともかなわぬそれに歯噛み浮かべんも取り繕うは瞬に満たぬ間。
 「だんちょ・・・いえ軍務大臣殿。」
 結果、慌てありたも声色は冷静なりた。紛れなくそれ不意に届き、すべて吹き飛ばん。葛藤掻き消し戻らぬように、強く心固め、そして振り向きし。
 石へ背けることに抵抗も感じ突き刺さりたも、砦は崩れぬ。
 「そうか・・・そうだったよな。」
 声は揺らめき、移ろいに満ちし。弱さ脆さ固まりてあまりに暗き、沈みた口調。
 「どうなされました・・・?」
 ――。言葉、声にならぬ。
 「いや・・・何でもないよ。」
 病みた太陽、そんな微笑み。発せぬ言葉、反芻せんば始めの惑い蘇らんとす。熱気と悪寒に侵されゆく心。救う葛藤覚られんこと拒み。
 「そうですか・・・。」
 反応に対し沈黙。だがこちら背向けることかなわず、蒼穹眺め、捕らえられ離せぬ。
 風の寒気思い出しては浮かび消えし別れの言葉。沈黙、永遠に続かんこと不安にありて心澱むも、声1つ切り出すこと出来ぬ。
 「父の墓・・・まだ参られていたのですか。」
 先に沈黙破られん。だがむしろ憤り浮かばん。映せばそして隠せし。
 「・・・。」
 言葉望まず、黙せんも、焦りに加え身を焼く焔、滑稽に感じんその今に、
 「・・・ああ。」
 小さく答え怒り飲み込み。
 「君は何しに来た?」
 口調強きことに後悔覚えんも変えられることなどなくに、覚られんこと祈る。冷たく見らば、祈るべきことでなきとすぐに気付くはずであろうも・・・。
 「カシフォード・ピグマリスタ。」
 ふと出ん言葉。むしろ今優位なり。だがそれ良きに感ず。むしろ罪悪すら覚えん来ん。
 「・・・すみません。」
 出でし言葉それ。微かにて鮮明。安定なりて激震。鮮やかなりて醜し。
 返す言葉などあらぬ。
 「軍務大臣殿の跡をつけさせていただきました。」
 それ意味せんものに棘感じせぬ。むしろ棘は虚ろに潜まん。
 だがなお言葉出ぬ。ただ出来る限りに怒り消さんも、だが内心雄弁すぎて不快心流れ出でん。それに気付かんば慌て、
 「いやそんなことはどうでも良い。」
 だがなお強き口調。後悔心に恥すら感じて、静かに去らん。
 (僕は・・・馬鹿か!)
 それもなお熱煽りて、胸中にて毒づかん。
 そして何気なしに、視線と心のみにて、存在せぬ墓探した。
 (ノースト・・・。)
 見ることなきものの、望みたそれではけしてなし・・・。
 (・・・ヒムド。)
 次なる言葉、むしろ強くも、むなしき強さ。
 (僕の目的は終わらされた?)
 生きる意味失いしでなきか。
 苦の波、闇への誘い。
 それら生けゆかんための道の欠片であるのみ。苦しかなきなら道必要か?
 (だめだ。・・・僕は城を、そして国を護らなければ・・・。)
 揺るぎ易く弱き決意。
 だが今立ちはだからん苦ほどならば乗り越えよう。
 ――思いの中、時過ぎゆかん。

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13319冥王の騎士4:祈りの結末:7章:闇に蠢くもの達もD・S・ハイドラント 2003/2/22 18:00:18
記事番号13318へのコメント

 ――今始めるつもりだ。
 こもりし声、だがけして静かでなき。
 ――あっ・・・ええ。
 むしろ動揺は返らん女の声。

 世界より光失われ、やがて天幕降りん。
 そして無明とついになりて、静寂は恐ろしきほどに鮮明なり。
 闇は不完全でありたとて、薄闇にうごめきし気配感じられず、見ることもかなわず。
 足音は尊大なりたもの打ち消さん努めは絶頂なり・・・。
 その音止まりて石の感触冷たく染みゆく。それ感じんも気取られしことけしてなき。
 薄明かり覗かん。息吹流れ、浅き動揺生むも、眩む瞳、光得んば、安堵以上。そこには幻1つ見えぬ。
 溜息天に昇りてそれ見るものなし。再度のそれは堪え、なお足音立てずに向かわん。
 希望と不安、震え、躍りて、だが求めんは遂行なり。けして焼かれんこと望まぬ。
 (わしはやる。)
 決意固め、頷かんとともに惑い掻き消けせし。新たに芽生えんとす、それら防ぎつつ。
 足音不完全に響きてむしろ怪しきも、それ聴くものなくば同じなり。
 不快なる歌、やがて止まらん。不意に冷気強まりて不安に脅え生まれ出でし。
 その腕は拒まん、銀に輝きし刃それが今にも滑り落ちん。蒸れし両手心地悪く、憤りすら覚えしほど。そんな我が身、叱責せんは心。
 だが構成固まらぬ。揺蕩(たゆた)うそれを定めんと、だがその努め今も出来ぬ。
 葛藤焦り、その中で思うは過去の光の虚像なり。輝けん栄華、さらに昇りた至福の時々。
 枯渇の瞳潤いて、涙けして流れぬも、哀しみ強く鮮明なりて心、身体、ともに震わす。
 だが沈黙の棘に耐えられはせぬ。
 かぶり振りてすべて打ち消し、絶望、後悔、すでに覚悟。
 その輝き、再び握り絞めん。沈黙の中、誰にも届かぬ殺気放ち、時に乗りてそれ連ねゆかん。
 そして吐息1つの後、
 「音よ。」
 声に合わせ展開されし世界。
 ――準備は出来たぞ。
 世界は沈黙。だが声強き。
 ――分かりました。
 震え混じり、むしろ彼以上やも知れぬ。
 そして世界途切れゆきた。

 扉へ手伸ばしゆく。彼の渇きし拳、小さく木の板打たん。
 その音色響き渡らんと同時に緊張、冷や汗滴りそして後悔。だが結果出ぬ。
 後悔しつつも思い切りて踏み込まんば、さらなる大音、鼓動に拍車、追われんものの如くに視線、定まらずに焦り最高潮。
 そして――。
 「何でしょう。」
 美しき女の声。
 「夜遅く失礼致します・・・公爵夫人様。」
 震えつつの声。
 「その声・・・前軍務大臣ですか」
 「その通りです・・・公爵夫人様。」
 声、平静保たんと思えど、より震えん。
 金鳴りし音、そして光漏れん。
 瞬間に腕伸びん。白銀なる短刀は――。
 「きゃっ!」
 現れし女の頬掠め空切らん。力強くに扉開きて、倒れ脅えつつに後退りせし公爵夫人。それ緩慢なる歩にて追わん老人。
 「前軍務大臣・・・何様のつもりです。」
 去りて向かうは天蓋付きなる寝台。それより取り出せしは長き剣。同時に立ち上がらんば、黒き夜着のまま剣構えん。
 老人、動揺走りし。だがそれでも心整え、
 「今だ!」
 大声、そして突如にさらなる轟音。鋭く激しき音なりた。
 突如に硝子窓粉砕し、影現れん。その破片の1欠片夫人へ襲い掛かりた。
 「あなた達・・・。」
 歯噛みせん夫人。賊たる女にもまた剣握られ・・・。
 寝台に乗り上げ、近寄る2人へ白刃払い向けつつ恐怖増幅させゆく。
 哄笑――不意にそれ浮かべん欲求に駆られん。だがそれも振り消して、間合いなお詰めゆく。白刃届かぬその辺りに・・・。
 「公爵夫人様・・・もう逃げられません。おとなしくしてもらいましょう。」
 短刀ながらもすでに威圧に充分すぎた。夫人はかくも脅えに震えし。
 そして女、飛び掛りし瞬間。
 「きゃああああああ」
 悲鳴――そして・・・。
 「ぐっ・・・。」
 だが不意に感じんは衝撃なりた。疑問感じつつも意識潰え去る。銀に輝かんは剣なり。そしてそれ続きて賊の女へ疾駆せし。
 衝撃、轟音、すべて終わりて、
 「大切なお部屋を血に汚してしまい大変失礼致しました。」
 温かき声。金色の短髪に蒼穹の瞳、滲み出ん強さ。
 ――現れしはダイ。

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13320冥王の騎士4:祈りの結末:8章:すでにすべて知りしことD・S・ハイドラント 2003/2/22 18:01:12
記事番号13319へのコメント

 まだ昼間なり、ノースポイント揺れんより遡りし時。

――調子はどうだったかな?
 口調と裏腹に声は冷たき。

 ――まあ、あの男が上手く動くかは分かりませんけど・・・私もおりますし・・・。
 いくらか控えた笑み浮かべつつの言葉返さん。

 ――まあ任務の成否も大事だが初めからそこまで期待はしていないよ。
 そして微笑みもらせし。

 ――どういう・・・ことです?
 驚愕に不安走る声。それ見つつに笑み拍車掛けんば、

 ――確実性を求めるならば、むしろ君1人に任せた方が成功率は高いのではないかな。・・・成否は別としてだがね。
 悪魔の如き声紡がん。

 ――では何のためにあのような命を・・・。
 動揺は抑えられぬ、それもたらす益などなきと真になき分かるものの・・・。

 ――それは君の知ることではない。知ったところで何も変わらない。君が任務に失敗するという事実はな。
淡々とせし声、笑み消えんも不快なる声に変わりなき。

 ――・・・。
激しき沈黙そして走らん。見えぬ世界の向こうにて・・・。

 ――さて君はどうする?
なおの沈黙確認せんと、

 ――まさか帰還するわけにはいかないだろう。任務を無視するか?それとも反逆でも企むかな?
笑う。すべて見下し、その苦悩に笑い向けん。さながら神か――悪魔であるかの如く。

 ――今そこで僕と僕達の計画をすべて露にするのも良いだろう。それでも充分に 動揺を与えることは出来るはずだ。特に彼女が死ななくても士気を挫くことが出来れば幸いだ。奮起でもされたらやはり困るし本来ならば、死なれてくれた方が良いんだがな。
 言い終え再び笑わん。それは強まりゆきて哄笑へと変わりゆかん。
おぞましき笑い声は長く続きやがて途切れん。世界が両断されんとともに――。
 
 「少々寒くなったな。」
 岩壁は見目にも暖かでなく、停滞する寒気をより強く思わせし。湿気帯し風、吹き刺し熱気覚えん。なお悪寒が身に降り掛かりては震え起こせし
 「・・・風邪か。」
 喉や鼻に相応なる不快感。頭痛もまた感ずる。
 「だから北は嫌だ。」
 両手に漏らせし溜息、白く消え去らん一瞬、同時に温もりもまた夢と化す。
 毛布に身を包みし美しき白に覆われしなお白き身体見回し、不意に立ち上がらん。
 暗闇は強く、薄く見えんかがり火に揺らめく風再び届かん。だが主は寒気にありて凍結せんがほど・・・。足音は残酷なるほどに響き渡りて頭部へ突き刺さらん。
 「だが僕に風邪をひかせた罪は償ってもらう。・・・そしてそれももう少しだ。」

 時は過ぎん。だがそれ感ずることなき世界にて知ること出来ようか、それ以上に知る意味あろうか・・・。
 だが今は流れゆかん時、その細かで確かなるそれ掴み。安息と薄き歓喜に身躍らせん。
 同時に見えぬ一寸の先脅えつつ、隠しつつに・・・。
 「やはり・・・僕の思う通りか。」
 時過ぎ去りて旅立つ命に哀哭なくし、ただ笑うのみでしかなき。
 「・・・さて後どれくらいかな。」
 次なる瞬間、ただ刻まん。脅えあれど歓喜やはりは強きなり。過ぎゆく時間は優しく、今はそれ翼であろう。
 「僕を・・・裏切らないでくれよ。」
 狂気――空を愛でん如くの、視線、腕、吐息。等しき意味思いての笑み浮かべんとともに・・・。
 「時の女神・・・僕だけが認める人。」
 呟きし言葉――意味持たずに、消え去らん。
 返るものなく、ただ寂し。
 「他の神など信じはしない。僕は僕だけの君を愛するよ。」
 ただ大空愛撫。むなしき感触に気付かずに・・・。
 「君のために剣を振るおう。君が望む僕の生きる時のために・・・。」
 静寂などすでに感じぬ。孤独などすでに終わりし、女神に話し掛けん男、見るものなどなし。
 「だから君は僕の翼となってくれ。」
 なお語り掛けん。それこそ祈り。悪寒などすでになき。
 虚像のために戦わん剣。狂気なる幻に戦わんが剣。すなわちはそれ狂気なり。
 狂えし――刃なる男、イソロイシン。
 今、ただ時待たん。
 ――くしゃみが響き渡りた。

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13321冥王の騎士4:祈りの結末:9章:だが光はいつの時にもD・S・ハイドラント 2003/2/22 18:05:40
記事番号13320へのコメント
 震撼は激しき。ノースポイント揺れん。
 暗殺へと走りし前軍務大臣。新軍務大臣任命、それ失策とも思えして動揺強き。
 さらに八魔卿の影垣間見えて、それに拍車掛からん一方。

 「この国はどうなるのですか!」
 「今さらですがダイ殿を任命したのは間違った判断ではないでしょうか!」
 「そもそも夫人様に経済を任せて本当に大丈夫なのですか!」
 会議室――飛び交わん声、世界が震え、轟音が沈黙なり。互いの声掻き消しあう中、歯痒さにやがて怒り生まれ、
 「静粛に!」
 公爵夫人響かせし声、透き通りて美しくも刃の如くに研ぎ澄まされし今、飛び交う騒音、両断にせし。
 「私の政治の才覚は少なくとも夫より上と思っております。現軍務大臣の才については言うまでもありません。迫る八魔卿との戦いには作戦全体と総指揮を御任せするつもりです。」
 沈黙はなお続かん。ダイはただ戸惑い浮かべんのみ。
 「とにかく私を信じてください。」
 近衛、幻影、剣――幻影は少数精鋭、剣は膨大なる人数が揃う――の各騎士団長、ノースポイントの高官、北方の領主達など多数集まる中、静寂は最高潮に達し、視線のみが雄弁。
 「敵の数についてはまだ不明ですが、王都崩壊、フレア候制圧、マツタケ・シティ陥落、辺境伯の死亡とフラッペ砦の陥落、これらの事態の続く今、北方と中央の――つまりは夫を支持してきたもの達の勢力は国の半数をゆうに占めるでしょう。東方の辺境軍など恐るるに足りません。」
 だが言葉通りの自信は表情に浮かぶことなき。
 「ですが、中央付近の領主方は公爵様が倒れた今も支持を続けてくれるとは限らないのではないですか?」
 どこよりか声。だが主など探すことなく、
 「こちらには今、夫の代わりにと言っては何ですが、フィブリゾ殿下と私の―― つまりは公爵家の娘シェーラがいます。問題はないかと思います。」
 「ですが、フィブリゾ殿下は実際のところ行方不明だと聞いておりますけど・・・。」
 なおも声は返らん。憤り覚えつつも、
 「殿下は聖都にいると、シェーラが言っておりました。根拠はないですが可能性は高いでしょう。」
 「それはブリアン子爵殿が八魔卿側についており、北を墜とすための誘拐ではないでしょうか。」
 「誘拐の後、殺害されている可能性も否定出来ません。」
 声は勢力増しゆく一方。
 「・・・それについては祈るしかないのが現状です。しかし私はシェーラを信じます。」
 「そのような望みの薄いことをあてには出来ません。この戦いには確実に勝たねばならないんですよ。」
 「そもそも今回の問題を引き起こすことになったヒムド殿、彼をもう少し監視することが重要だったはずです。」
 「グラウシェラー様が公爵であったのもまず間違いではないでしょうか。その点の見直しなども大事なのではないでしょうか。」
公爵夫人の声は飲まれ消え、飛び交うのみの声。溜息昇らん。
出んとする言葉すべて崩れ、ただ流れ受けんまま・・・。
 だがその瞬間・・・光降りん。
 「八魔卿への勝利については絶対の約束を致します。僕にチャンスをください。」
 突如上がらんダイの声。明らかなる自信に満ちたる瞳。
 静寂は鮮やかでありた。
 「僕が作戦と指揮を執る上、絶対に敗北などさせません。」
 奮起発され輝き戻らん。
 「だから僕に任せてください。」
 多くはいらぬ。伝えるは言葉でなき。
 「それと僕は公爵夫人様を信頼致します。皆様のご支援があればカタート復興は確実となることでしょう。」
 若き軍務大臣。彼かくも光持ち、眩きほどにそれ放たん。
 (見込み通り・・・いやそれ以上かも知れないわ。)
 沈黙の色は穏やかなりて、黄金の希望。
 「僕はけして負けません。・・・いざとなればこの剣を振るって僕も戦います。ですから皆様、希望を持ってください。輝く未来はすぐそこにあるのです。」
 まさにその姿。王たるものの資質、神なるものの気高さ。獅子の強さ持つ覇王。

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13322冥王の騎士4:祈りの結末:10章:真の闇すら恐れずにD・S・ハイドラント 2003/2/22 18:06:42
記事番号13321へのコメント

 「調子はどうなんだい?」
 気配なお強烈にて、なお暗闇に映りし像は何ら変らぬ。無明すら凌ぎし真の闇持たん少年。けして衰えなどなき。
 だが――。
 (でも以前ほどに恐ろしくない。)
 その意味模索せんほど余裕ありた。
 しかし沈黙の空気重すぎて、それ霧散させし。
 「ええ蘇生は可能です。」
 出でし言葉に笑みすら溢せし余裕ありたも、それ憚られん。
 「それは当然のことだろ。」
 優位でなくとも、けして震えることなくその眼前の吹雪の闇見つめ続けしこと恐れぬ。
 「確かに・・・そうですね。」
 笑顔浮かべし、相手にむしろ動揺走りた。それすら見えん。この今は・・・。
 冥神官のその背大きく、今や冥王飲み込みているのでなかろうか。
 「あなた様に吸収出来るほどになるにはまあ数日あれば出来ることでしょう。」
 「そっ・・・それなら任せるよ。」
 ゼロス今や、アプロスよりも輝き強し。
 (本当に・・・信じて良いのかな?)
 むしろ動揺は主の方に・・・。逆転、その予感に焦り生み出されゆかん。
 「後・・・その前に彼女が来るはずです。」
 微笑みは圧倒的にゼロスが凌駕。
 「どういうことだ。ここが分かるっていうのか?」
 驚愕させ笑うその男へ殺意走らん。だがただ歯噛みし耐えんのみ。
 「根拠はないですが・・・必ず来ます。」
 「それで・・・大丈夫なの?」
 すでに翻弄させたと覚りしも、だが抜け出すことけしてかなわぬ。
 「ええ・・・大丈夫ですよ。」
 そしてより邪悪に微笑まん。

    ◇◆◇◆

 風脅え、空震え、闇躍らん。
 風止まり、空歪み、闇生まれん。
 老人は何することなく、ただ眺めん。
 黒幕より漏れしほの赤き輝き、老いた白銀照らし、その先の闇掻き消した跡をただ変わらず。生まれし像に驚くことなく。ただ見やるのみ。
 「こんにちは・・・スターゲイザーさん。」
 現れし神官ゼロス。薄笑み始まりより絶やさずに・・・。
 「ああ・・・こんにちはゼロス殿。」
 枯れし声、むしろ活力込めつつ放ち出さん。
埃舞いし陰気なる空間やその風貌すべてに似合わぬほどに・・・。
 微風は暖かし、無意味なる思考。だが時の流れ緩慢なる。
 対し沈黙続けんゼロスの笑みも、すでに飽きたる頃、
 「何の用ですかな。」
 耐えかねしか、言葉早くに出さん。
 微笑み強まりし、だがそれのみで今何も変わらぬ。やがて動かん口、だがそれだけで、機械的なり笑顔に反せし冷気。気配はそして強まらん。
 「簡単なお仕事を御任せしたいのですが・・・。」
 口調と笑顔に隠れし何か・・・。
 「ああ・・・私にしか出来ないことでしょうか。」
 だが老人の声など聞かぬよう。
 「いえ・・・」
 声途切れ、それ暗き。
 「・・・2つありまして」
 口調は端正なりて宵闇思わせん。笑顔も張り詰め、静寂醸し出せしそれ。
 「2つは・・・あなたに出来ること」
 いかなる悪魔より恐ろしき。魔などかくも知らぬ彼でありたが、思えしはその言葉なり。
 脅えゆくその身。救いなしに・・・。
 「もう1つは・・・今のあなたには恐らく出来ないことです。」
 そこで止まらん。浮かぶは笑み、すでに見飽きし情景など隅にも映らぬ。
 「そう今のあなたでは・・・。」
 再び間なくに紡がれん声。笑み混じりでそれに過去なる輝き微かもなき。
 妖しき闇――老人、悪魔の笑みにただ脅えん。もはや真の悪魔よりなお恐ろしきでなかろうか・・・。
 言葉などすでに出せぬ。気付けばゼロス近寄らん。
 相違――あまりに違いた。いくども合わせし顔と同じで違いし。
 「どうしました・・・?」
 震え、露骨にそれ浮かべん。
 「僕が怖い・・・ですか?」
 その美貌闇纏いて、狂気に笑わん。
 「・・・そうだとしても、これが僕何ですよ。」
 そしてその錫杖、1鳴り、それに静寂の音重ねんば、
 「・・・あなたも僕の駒になってください。」

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13323冥王の騎士4:祈りの結末:11章:運命の名の元奮い立たんD・S・ハイドラント 2003/2/22 18:07:21
記事番号13322へのコメント

 寒気は風とともに強まりゆき、雪原疾走させん馬達の吐息も冷たく。僅か先すら白幕に隠れ、世界に境界など1つもあらず。
 猛吹雪、ただ馬の背に保たれん熱を感じ、息詰まらんほどなる疾風浴びゆかん。
 (フィブリゾ・・・様・・・。)
 煌く白に埋め尽くされし昏き世界にあらんもけしてその名忘れぬ。他のすべてが消えてもけして消えぬ優しき強き輝く少年。
 肖像が浮かんで消えて、それだけが彼女。
 輝きは遠くも届く、どこよりも吹く。
 それだけが彼女。
 そして願わくばそれだけが彼女。
 迷い、惑い、不安、焦り、そして虚ろな今の飛輪さえもすべて消えてしまうが良い。
 ただ進まん。すべて消してただ彼想い・・・。

     ◇◆◇◆

 白き竜と赤き竜、互い消しあい、終わりなく哀しき不毛なるその戦い。だが感慨覚えしものでなき。
 吹雪に吐息も塞がれて、映らぬ怒涛の咆哮も、出でし激しき焔雄弁で、すべての音を伝えゆく。
 進撃連ならん。背に何も見ず、背に何も感ず。不死鳥は舞う。「赤いキツネ」よりの焔が永続的に雪引き裂き、寒気とともに熱が煽らん。
 風に逆らいただ駆けん。沈黙なる世界も美女は至福。優しき熱常に感じ・・・。
 想いは今も浸透しゆくか・・・。声1つなくとも浸透しゆくか・・・。
 (ガーヴ様ぁ)
 その力不意に強まりて、
 「おい馬鹿、やめろ。」
 その声届かず、夢心地にただ抱き寄せん。
 世界震撼、恐怖覚醒、それかくも恐ろしきのみ。幻想奔流、意味現実、それ浸透せずにただ震わせんのみ。
 「おい、だからやめろつってんだろうが!」
 衝撃最も受けしは魔道馬なり。狂わん如しにただ左右へ揺れつつそれでも走らん。ただ速きは颶風の如し・・・。
 黄昏には早くもすでに天地の境界などあらず、常に白闇ただ連ならん。

     ◇◆◇◆

 同じ風、同じ雪、同じ世界、同じ境遇、すべて同じで相違あらぬはず、だが見えし背かくも強く、見えぬ自らかくも弱き。
 「大丈夫か!」
 すでに規則、そうにまで思えし声に、
 「大丈夫よ・・・。」
 返す叫びすら身刻まんこと伝えられず。
 だが悔しくなどなくただ辛きのみ。
 馬はただ走りゆく。それ実感出来ず。
 永遠の連なり、かくも恐ろしき。吹雪息詰まらせ、内なる思いなお拍車掛けん。
 その身、冷気に侵され、吹雪に侵され・・・。すでに熱の障壁失いつつあらん。
 魔力すべて喰い尽くされんも近き時、秒刻はなお進み。
 「そろそろか・・・。」
 呟き掻き消されずに確かに残り、彼女へ届かん。
 「熱呪停札(ヒート・シール)!」
 吹雪など気にさせぬ声、今響きて熱伝わらん。
 「ありがと・・・。」
 漏れし声、届くか知れぬ。
 すでに目指せし地近しものの神、奈落に堕ち闇、浸食始めん刻。
 だが彼らには今の連なり、思う世界はそれ永続。
 
     ◇◆◇◆

 猛攻なる吹雪すでに止みて、温かき風やがて吹かん。ゆく先に巨大なる影聳え、その膝元眺めんば、白き輝き。
 離れつつも沈黙と静寂の歌届かん。
 白き巨人の腕(かいな)覆い、輝く白は無数なほどに、巨大な館中心に見え、最奥部、千獣山脈麓に微かに光らんは何より聖なりしもの。
 偉大なる領主、ビーフ・シャトー・ブリアン子爵の治めしカタート西部最大の都市であり、カタート国教たる三神崇拝のサンチーンミ教本拠地でもありし、聖都フォアグーラ。
 すでに先の辛きもすでに忘れ、彼ら不気味なほどに静かなりて輝かしき聖なる地見つめん。
 「ふふふ、ついにここまで来ましたね。」
 姿捉え、青年笑う。
 「なかなかの芸術品でしたからねえ。」
 暗闇に独り心地た後、不意に姿掻き消えん。
 「そろそろ・・・僕の真骨頂を知る時ですよ。」
 冷たくも温かくもなき夜風に神官衣はためかせ、青年は再び笑う。
 「――。」
 そして発されし音の意味は・・・。

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13324一部の後書きD・S・ハイドラント 2003/2/22 18:08:10
記事番号13323へのコメント

序章、ゼロス本領発揮編?
ちなみにゼロスの言ってる獅子やら羊の話、あんまり関係ない気もしますけど・・・。

1章、通話魔法が大体どんなものなのかってことくらいかな。

2章、前から考えてたグラウシェラー殺しと、ヒムド自殺話。大体思う通りに出来たかな

3章、夜と朝編、ただの繋ぎですね。

4章、会議編、ダイとヒムドのフルネーム登場。

5章、新キャラっぽいの登場編、すぐ退場になりますけど・・・

6章、読み返してわけの分からなかった章。描写が複雑で手直しもいい加減です。やはり自分には伝わる程度じゃないと・・・

7章、暗殺話、あっさりダイが完結。これで・・・良いのか。

8章、イソロイシン編、ノーストより狂ってるかも・・・。

9章、会議編2、今度はダイが活躍しました。

10章、ゼロス2回目、書かれてないですけど時間遡ってます。

11章、雪の中疾駆編、ただの繋ぎですけど一応一部完結編。

総合、ここに来て唐突な感じに・・・まあ1でいきなり城燃える辺りから唐突ですけど・・・。

この後は主人公なのにメインキャラで一番地味かも知れないと思うシェーラちゃんとその仲間達編です。アイネジュやガーエルそれに・・・まあそんな感じでシリアスやらギャグやらほのぼのやらハードやらまあとにかく展開していったような気がします。

そーいやメッキーって話、重いのかな?境遇的には不幸なキャラ多いけど、結構明るいし、話だって悪の組織に狙われたり、愛と憎悪の戦いを観戦したり、自分達を始末しにきた刺客を退治したり、復活した魔王を退治しにいったり(ちょっと違うけど)、襲い掛かる盗賊団を退治したり、悪魔に魂を売った極悪人(一応、監禁罪は決定なノースト君)を退治したり、攫われた王子を助けにいくなど、ごく普通の内容ですし・・・。
 
この話の魅力って何だろう。・・・ないかも。それは哀しいけど・・・。
欠点はやはりいい加減さですかね。見直し嫌いだし後先考えずに書くし、設定忘れても読み返さずにうろ覚えで書いてるから・・・。
文体も変化しすぎ・・・。
このいい加減さに一時、自信完全に失いました。こうやってまとめて書いてるのもそれが理由かも・・・。

最後に・・・シェーラちゃん可愛い。最初の方は格好良い方だったかも知れないけど・・・。
18シェーラも良いけど虚像編の16シェーラの2人に迫られてるところが・・・。でもあれは辛いですね。やはりシェイドさん諦めましょう。
シェーラ何かどちらかというと男性側にいそうなタイプのキャラかも・・・。でも男で、あれだと何か歯痒くて腹立ってくるだけかも知れないですけど・・・。
にしても約14シェーラ(本編)って全然違うキャラだったような・・・。

随分長くなりました。
それではこの辺りで失礼致します。
あっ本日の虚像編はお休みです。そろそろネタ切れそうです。(というか短編に収まる面倒じゃないということを前提にしたネタが)
神魔弁当も書かないかも知れません。
後・・・明日は休養取る可能性も高いです。

それでは〜

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13364Re:冥王の騎士4:祈りの結末:11章:運命の名の元奮い立たんりおん 2003/2/24 21:44:40
記事番号13323へのコメント

はじめましてv読ませていただきましたぁ!!はじめから・・長かったけどおもしろかったですv

> 白き竜と赤き竜、互い消しあい、終わりなく哀しき不毛なるその戦い。だが感慨覚えしものでなき。
> 吹雪に吐息も塞がれて、映らぬ怒涛の咆哮も、出でし激しき焔雄弁で、すべての音を伝えゆく。
> 進撃連ならん。背に何も見ず、背に何も感ず。不死鳥は舞う。「赤いキツネ」よりの焔が永続的に雪引き裂き、寒気とともに熱が煽らん。
> 風に逆らいただ駆けん。沈黙なる世界も美女は至福。優しき熱常に感じ・・・。
> 想いは今も浸透しゆくか・・・。声1つなくとも浸透しゆくか・・・。
> (ガーヴ様ぁ)
> その力不意に強まりて、
> 「おい馬鹿、やめろ。」
> その声届かず、夢心地にただ抱き寄せん。
言葉が日本風?でガーヴの言葉が入るとおもしろい・・

> 白き巨人の腕(かいな)覆い、輝く白は無数なほどに、巨大な館中心に見え、最奥部、千獣山脈麓に微かに光らんは何より聖なりしもの。
> 偉大なる領主、ビーフ・シャトー・ブリアン子爵の治めしカタート西部最大の都市であり、カタート国教たる三神崇拝のサンチーンミ教本拠地でもありし、聖都フォアグーラ。
ビーフ・シャトー・ブリアンとか、聖都「フォアグーラ」。。ごめんなさい・・・
一瞬、笑いがはいっちゃいましたv・・だって食べ物の名前ばっかりなんだもん。
それにまじめが入るから。。

おもしろかったですvv食べ物の名前ばっかりでなのにまじめにお話が進む。。
すごい!!と思います。はい。
というかグラウシェラーの奥さんって海王でしたね。
貴婦人というかんじがしますー。

読ませていただきありがとうございましたぁ!!ツボにはまって・・微妙に。
また読ませていただきたいと思います!!

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13365Re:冥王の騎士4:祈りの結末:11章:運命の名の元奮い立たんD・S・ハイドラント 2003/2/24 22:16:43
記事番号13364へのコメント


>はじめましてv読ませていただきましたぁ!!はじめから・・長かったけどおもしろかったですv
はじめましてラントことD・S・ハイドラントです。読破・・・大変お疲れ様です。
>
>> 白き竜と赤き竜、互い消しあい、終わりなく哀しき不毛なるその戦い。だが感慨覚えしものでなき。
>> 吹雪に吐息も塞がれて、映らぬ怒涛の咆哮も、出でし激しき焔雄弁で、すべての音を伝えゆく。
>> 進撃連ならん。背に何も見ず、背に何も感ず。不死鳥は舞う。「赤いキツネ」よりの焔が永続的に雪引き裂き、寒気とともに熱が煽らん。
>> 風に逆らいただ駆けん。沈黙なる世界も美女は至福。優しき熱常に感じ・・・。
>> 想いは今も浸透しゆくか・・・。声1つなくとも浸透しゆくか・・・。
>> (ガーヴ様ぁ)
>> その力不意に強まりて、
>> 「おい馬鹿、やめろ。」
>> その声届かず、夢心地にただ抱き寄せん。
>言葉が日本風?でガーヴの言葉が入るとおもしろい・・
そうですね口悪いですけど。本来のガーヴと違ってるかも知れませんけど・・・。
>
>> 白き巨人の腕(かいな)覆い、輝く白は無数なほどに、巨大な館中心に見え、最奥部、千獣山脈麓に微かに光らんは何より聖なりしもの。
>> 偉大なる領主、ビーフ・シャトー・ブリアン子爵の治めしカタート西部最大の都市であり、カタート国教たる三神崇拝のサンチーンミ教本拠地でもありし、聖都フォアグーラ。
>ビーフ・シャトー・ブリアンとか、聖都「フォアグーラ」。。ごめんなさい・・・
>一瞬、笑いがはいっちゃいましたv・・だって食べ物の名前ばっかりなんだもん。
>それにまじめが入るから。。
・・・この話の世界は高級食材の存在がかなり大きく占めてますし・・・。
>
>おもしろかったですvv食べ物の名前ばっかりでなのにまじめにお話が進む。。
>すごい!!と思います。はい。
すみません・・・書いてて慣れました。
最初はさすがにふざけすぎだと思ってましたけど、最近普通に赤いキツネとか書いててもシリアス気分保てます。
>というかグラウシェラーの奥さんって海王でしたね。
そうなります。覇王さん死んじゃいましたけど・・・
>貴婦人というかんじがしますー。
そうですね。まあ適当に書いてたりはするんですが・・・
>
>読ませていただきありがとうございましたぁ!!ツボにはまって・・微妙に。
>また読ませていただきたいと思います!!
本当にどうもありがとうございます。

それではこれからも機会があればよろしくお願い致します。
>

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13352一気に……エモーション E-mail 2003/2/23 22:15:59
記事番号13310へのコメント

こんばんは。

予告通り、一気にUPなさったんですねー。2日かけて読みました。
全体的な印象としては「ゼロス大暴れ」ですね。
いつでも動けるように暗躍していたけれど、ここにきて、ある意味何かが
プツンと切れてしまったようにも見えます。
状況とそれがなければ何事もなかったんじゃないかと言う感じが。
蘇生させると言っても、ゼロスにとってはゼラス様殺害は、もう後戻り
できなくなるために必要な「儀式」だった気がします。

グラウシェラーとヒムド君の退場。何やら静かに不気味なダルフィン様。
シェーラちゃんとは違う意味で、突き進んでいくしかないサイコロ君。
……このシリーズ、いろんな思惑が複雑に絡んでますね。
書くのが大変だと思います。

とうとう舞台は聖都フォアグラ。フィブリゾ君とは無事に再会できるのか、
ガーヴ様とエル様、アインとネージュさんはどうなるのか。
そしてゼロスがどう動くのか。
楽しみです。

では、短いですがこの辺で失礼します。
本気で複雑な話になってきているので、書くのが大変だと思いますが、
がんばってくださいね。

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13357Re:一気にいけましたD・S・ハイドラント 2003/2/24 13:03:52
記事番号13352へのコメント


>こんばんは。
こんばんは
>
>予告通り、一気にUPなさったんですねー。2日かけて読みました。
やはり出来る限りは予告通りにしないと・・・信用が大事な世の中ですからねえ(?)
お疲れ様です。
>全体的な印象としては「ゼロス大暴れ」ですね。
陰ながら結構登場してたり・・・。表も2回ありますし・・・
>いつでも動けるように暗躍していたけれど、ここにきて、ある意味何かが
>プツンと切れてしまったようにも見えます。
まあ姉弟、だとどうしても弟は狂う(?)
そう思います。
>状況とそれがなければ何事もなかったんじゃないかと言う感じが。
そうですね。
>蘇生させると言っても、ゼロスにとってはゼラス様殺害は、もう後戻り
>できなくなるために必要な「儀式」だった気がします。
まあそんな意味も強くあるでしょう。
>
>グラウシェラーとヒムド君の退場。何やら静かに不気味なダルフィン様。
ヒムド君にとってグラウシェラーは人生の中でかなり大きな存在だったっぽいですねえ。どんな因縁があるのやら・・・。一目みて殺したくなったって説を私はとりますけど・・・。
ダルフィン様・・・ダイ君を狙っている危険あり。
>シェーラちゃんとは違う意味で、突き進んでいくしかないサイコロ君。
そうですね。
>……このシリーズ、いろんな思惑が複雑に絡んでますね。
むしろ主人公側は振り回されてますけど・・・
>書くのが大変だと思います。
私にはすぎた話、ともとより理解しています。
途中から、あえて難しいものに挑戦してみようと思いました。
最初はもっと単純な話の予定でしたので滅茶苦茶複雑ってこともないでしょうけど・・・。
>
>とうとう舞台は聖都フォアグラ。フィブリゾ君とは無事に再会できるのか、
>ガーヴ様とエル様、アインとネージュさんはどうなるのか。
>そしてゼロスがどう動くのか。
>楽しみです。
どうなるのでしょうかねえ。
第2部は聖都編のほとんどなので、1部の倍以上あるかも知れないです。(多分2回以上に分けると思います。)
まあ
>
>では、短いですがこの辺で失礼します。
>本気で複雑な話になってきているので、書くのが大変だと思いますが、
>がんばってくださいね。
まあもうクライマックス2、3歩前くらいに到達してますし、見直しも書いた量の半分は(いい加減だけど)終えてますし、大丈夫です。

それではどうもありがとうございます。

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13387冥王の騎士4:祈りの結末:第二部:創造の怨嗟D・S・ハイドラント 2003/2/26 20:41:45
記事番号13310へのコメント

こんばんはラントです。

今回は第二部の前半戦を・・・。
ここのサブタイトルは内容と関係ないです。
後半に関わってるような微妙に違うようなです。

今回、今までのが読みにくかったような気がしましたので改行を結構してみました。
お試しください。

それでは開始です。

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13388冥王の騎士4:祈りの結末:12章:太陽と月の別離D・S・ハイドラント 2003/2/26 20:43:50
記事番号13387へのコメント

 猛風すらも今や消えゆき、希望の灯は輝き始めん。
 冷気すらも今や優しき、終わりの刻みは止まり始めし。
 白き息吹なお吹きた。
 世界洗い、煌きなお増し。
 聳えし白壁、巨人の如し、境界小さくも新たなる世界は光強し。
 美しく聖なるかな。
 その門より知れし聖都のその色。
 1対なる嫌悪の視線も感じることなし・・・。
 付近の小屋へ馬預け、白雪畳踏み締めし。冷たき覚えず、ただ歩かん。
 雪削られ、震えし足音消し去りゆく。
 誰も気付くことなき内なる焔。
 凍てつく焔、燃え上がらん。
 沈む日に強く隠れそれ見ゆるものなき。
 白き世界、輝き薄くも明るき感じん。
 武骨な門番一瞥もせず、足音連ねゆく。
 背後に何感ぜんと振り向かずにただ進みし。
 
 新しき世界昏くもなお明るし、向かう先に輝き。
 聖なる輝き遠くも強し。
 雪ずくめの建造物の狭間、神の御元へ続かん小坂。
 黄昏の焔、白き聖光、その2つに彩られし、美しき静寂、だが人々無感動。
 まずその数、多数と呼べしほどおらぬ。
 「静かだな。」
 漏らせし呟き白く天駆け、彩り変えて消えて儚し。
 「どうしたんだおっさん。」
 ガーヴに反応せんアイン、しかし彼なお世界見渡し。
 「何でもねえよ・・・不良坊主。」
 その震えし視線定まりて睨み付けしは小さき我が身。
 互い見据え威圧せん2人。
 「てめえとは決着付けなきゃならねえな。」
 「それは俺の台詞だろうが!」
 だがゆく人去る人、彼らの痴態気にせしことなき。
 どこか暗き美貌達。
 だが彼ら気せずに2人で燃えゆく。
 「今日こそぶち殺す。」
 「てめえに俺が殺せるって・・・まるで俺が猫に噛まれたくれえで死んじまうみてえじゃねえか。」
 冷たき世界に拍車なお掛かり、 
 「やめて!」
 声1つに・・・。
 「あっ、悪りい。」
 舌打ちしつつにアインの視線、猛きガーヴより美しきネージュへ・・・。
 「全く、すぐけんかするんだから・・・。」
 溜息混じりの動揺せし顔、誘うほどにアイン酔わせん。
 「へん、良い彼女持ってんじゃねえか。」
 「なっ何言ってやがる。」
 裂けし世界の声追いてガーヴ睨まん黒き双眸。
 背後より笑み漏れし。
 ネージュ微笑みにほお赤く染め、
 「全く・・・ガーヴったら」
 幸せのみをただ湛えん。
 「ガーヴ様、いつまであんな愚弟のカップルに関わってんのよ。いきましょ。」
 不意にガーヴに生まれし気配。
 蚊帳へ入りしエルの微笑み。
 歳重ねしものにはけして思えず。
 むしろ今の時より幼き輝き。
 「ほらアインにネージュもいくわよ。シェーラが困ってるじゃない。」
 1人佇む陰気なシェーラ、美しくもあまりに儚き。
 5人歩き出し・・・。

 「・・・ってどこいくんだ。」
 正面の坂、過ぎ去る人々、白き壁面気にもならぬ。
 「ふふふ、あなたのよく知ってる場所よ。」
 アインに思考巡りゆかん。
 シェーラ暗く、ガーヴ淡々、ネージュ薄笑み浮かべし今に・・・。
 だが到着は瞬間に、そして溜息天に消えゆき。
 「って、おいあそこかよ。」
 表情曇らん。
 そして歩止めし。
 初めに気止めしエルまた止まり。
 「だって里帰りしたんだし。」
 続けて歩止めし他の3人。
 「俺は絶対に嫌だからな。」
 「ちょっとアイン・・・」
 微笑み消えてエルに焦り。
 「ネージュ・・・俺達は俺達でいくぞ。」
 美しき腕引き、ネージュ無理矢理引き抜かん。
 「俺は帰る気はねえよ。絶対にな・・・。」
 吐き捨て、坂降りゆかん。
 輝き後光とし歩き出せし。
 エル舌打ち1つ怒り湛え、
 「もう勝手にすれば!・・・いきましょガーヴ様。」
 「どこか知らねえが。酒があるんだろうな。」
 半ば不機嫌、半ば期待。
 「もちろんよ♪」
 ガーヴ嬉々隠してエルに連ならん。
 2人歩かん。
 ただ止まりしはシェーラのみ。
 だがやがて・・・。
 「アイン・・・」
 小さき声、届いたやも知れぬ。
 「あっ何だ?」
 並ぶ2人の内、アイン気付きて振り返りし。脅えすら生みしほどの威圧に優しさ。
 「えっと・・・これ。」
 小さき輝き差し出せば、シェーラ素早く坂駆け上がりゆく。

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13389冥王の騎士4:祈りの結末:13章:物語それにより始まりたD・S・ハイドラント 2003/2/26 20:46:46
記事番号13388へのコメント

 闇と光のその狭間に、生まれし影を引き連れて、2人哀愁の風切り進まん。
 すべてが重く、身に染みて、ただ変わらぬはその歩のみ。
 沈黙重く、世界静寂。
 風音のみが行き交わん。
 「ねえ・・・アイン。」
 表情天に逆らいて、かくも明るき。
 「どうした?」
 その声、呼び水となりて返らん声。
 静かの波紋打ち砕きて、そして見上げんその天に、
 「夕陽・・・綺麗ね。」
 輝く飛輪赤く燃えし。
 世界に反してかくも極彩。
 街の魔力に儚く消えゆく金銀の雪のそのさらに天。
 「そうだな・・・。」
 漏らせし言葉に光戻りしすべての古傷癒されゆきし。
 「・・・さっきまでとは全然ちが・・・」
 言い掛けんと突如に放つは激しき吐息。
 「大丈夫か!」
 魔力によりてか街暖かし、だが黄昏の風無情に冷たきなり。
 そこに生まれしは咳。
 「ええ・・・まあ。」
 その腕、強く太く頼もしき、微熱伝わり、春風のよう。
 肩支えし若き両腕、ネージュの吐息彼へと走り、優しき時に生まれししじま。
 だが疾風一陣。
 「じゃあいくぞ。」
 「ええ。」
 輝きの中歩進めゆかん。
 
 静寂・・・不気味なほどで不快でありたも、すでに彼ら闇に堕ちん。
 輝く瞳に導かれ・・・。
 吹く風、温かくしてネージュ風邪の余韻、もう見せぬ。
 寂しき喧騒の歌。
 だがそれら気にせしことはなし。
 食卓に並びし世界美しく儚く、美味しきなり。
 紅蓮、黄金、新緑、白光――数多の食材。
 「アイン・・・」
 微笑み湛えし優しきその声。
 不意に停滞せん腕、金音鳴りて、
 「何だ?」
 アイン返せば、ネージュに微笑み強まりゆき。
 「・・・また訊くけど・・・お金は?」
 「・・・。」
 沈黙流れん。
 食材豪勢。
 「・・・で?」
 その声すでに悪魔の如し、ただし清き聖なる悪魔。
 それ何と問うなかれ・・・。
 「・・・食い逃げってわけにもいかんな。」
 悪魔象りし像、握り締め、輝き受けん。
 だが変わることなき。
 「・・・どうするの?」
 美しき顔、億千の価値。
 だが今や無一文に等しきなり。
 「いや正直・・・宿代も払えるか・・・」
 呟きし声震えに満ちし・・・。
 「でも・・・本当に困ったわね。」
 曇りし声も麗しき。
 絶世の美女、ネージュの視線。
 それ振り撒かんも何ら変わりなき。
 「仕方ねえ・・・。」
 視線、見るは開きし扉、唾飲みて、表情張り詰め、
 「いくぞ!」
 その声・・・そして高級料理に満たされしは――その魔力質。
 それ、颶風の如くに魔力へと・・・。
 熱と香り内より鮮明、胎動は時刻む間もなきに・・・。
 「・・・烈風陣(ニャイン・カム)」
 重き枷より剥がれし世界、駆けん虚空。
 白きのみの無明の空間、かくも長くも時刻めずに・・・。
 疾風迅雷すべて巻き込み怒涛の猛進。
 それすら感じん、心でのみ。
 やがて晴れゆくその世界。
 静寂戻りて天には飛輪、微かに覘かんまさに屋外。
 「・・・どうなった・・・の?」
 驚愕っしてかくもの重圧、倒れ込みて視線巡らす。
 だが人々は気に止めぬ。
 やがてアイン、ネージュ引き上げ、
 「擬似空間転移ってやつだよ。」
 つまりは風より速きに天駆けし魔法。
 「ぎじくうかんてんい?」
 だが魔道知らぬネージュ疑問のみ。
 「まあ瞬間移動ってやつだよ。」
 声は同じでそして笑顔。
 「ねえ・・・アインって結構凄い魔法使いなの?」
 輝きは幼き如き。
 齢に似合わず瞳潤い。
 「・・・まあ俺より凄えやつが周りにいるけどな。」
 その姿、過ぎし時、忘れし少年。
 そして少女。
 沈みゆく陽、それも忘れ聖なる闇へ・・・。
 誰も一瞥せぬ中、2人そして身体重ね・・・。
 だが瞬間気配。邪悪なるそれまさしく殺気。
 「ネージュ気をつけろ!」
 不意、立ち上がり視線疾駆。そして捉えしその像は・・・。
 黒き礼服、慎ましやかなりて、それにて巨体。黒き髭、黒き髪、黒き双眸。
 まさしくそれ闇。
 歳40ほど、だが若き力なお持ちて、腰には巨大なる剣には帯し燐光。
 そしてどこかに強き違和感。
 だがそれ気付くも忘れ・・・。
 (まさか・・・。)

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13390冥王の騎士4:祈りの結末:14章:闇は静かにD・S・ハイドラント 2003/2/26 20:50:03
記事番号13389へのコメント
 混濁せし世界。
 混沌の冥き闇。
 眩き光。
 それ初めの神の救済か・・・。
 どうであれ安らか。
 邪なる我が身も救われし・・・。
 そしてそれ永遠に続くこと確信せしもけして苦でなき。
 だが・・・。
 (メザメロ)
 声とともに何度も襲いし苦痛、激痛。
 それらの正体掴めずに、気付けば覚醒、それは苦なり、果てしなき絶苦なり。
 (メザメロ、サアハヤク)
 やがて光――禍々しき。
 そんな輝き駆けゆかん。
 虚ろなる身体、極悦なる魂、やがて1つになりて――暁の極光降り注ぎ。
 (メザメルノダ。)
 ――優しき朝の風。
 心地良く心身ともに疲労なき。
 重き闇振り払わん。

 「ん・・・ここは?」
 ゼラスの声儚き。天井暗し。
 暗黒世界、冷たき石台に伏せし女。
 それこそ我が身。
 「・・・おや、お気づきになられましたか。」
 そして声、死に伏せし身にも鮮明なりた。それに輝けん希薄なる瞳やがて捉えん。
 それは闇。
 否、闇よりなお暗きもの。
 「ゼロス!」
 声、光なくに昏き焔。
 「おはようございます・・・ゼラス姉様。」
 だが返り来るは微笑みなり。
 それ油帯し刃となりて・・・。
 「何がおはようございますだ!」
 起き上がりて、そして黄金抱きしその拳。
 颶風の如くに天駆け出して、佇む青年それに衝突――せしはずでありた。
 「・・・なっなぜだ?」
 驚愕せし。
 ゼロスの美貌、その眼前に猛き拳、激しく震えん。
 青年、邪悪に笑み浮かべ、
 「ふふふ、無駄ですよ。」
 暗闇に映えし容貌ゼラスへ近づけゆく。
 「この!」
 左の一撃、だがなお当たらず。
 「ふふふ・・・」
 瞬間に指音鳴りて、走らん大気、そして・・・。
 「きゃあああああああああああああああ」
 ゼラスへ雷撃、震えなお強まりゆきて・・・。
 「だから無駄だと言いましたよ。これに懲りたら僕に手は出さないことですよ。」
 そしてやがて男の細腕、ゼラス抱き寄せ、
 身捩らんも抵抗とならず。
 邪悪な仮面、ゼラスの口元・・・果実の交差、ゼラス嫌悪。
 長き時・・・抵抗せしもだが逆らえず。
 だが恐怖のみではけしてなきはず。
 やがてその時終わり告げ、
 「ゼロスお前・・・」
 怒りと戦慄混じりて美麗。
 刃の影もゼロスに通じず。
 その拳握り絞め、
 「まあ簡単には悪い癖は直せませんね。まあ、無理に直せと言いもしませんけど・・・。」
 紫紺の双眸、世界巡りて、けれど変わらぬゼラスの容貌、
 「・・・怒りや誇りに任せた暴力はいけませんよ。脅えを紛らわすため振るうのもね。」
 睨み据え、やがて狂気渦巻きゆかん。
 ゼラスは刻々と脅え、震え・・・。
 「・・・それは身を滅ぼすだけです。」
 その恐怖強まりゆく。
 だが同時に生まれし熱き烙印。
 震え絶頂そしてやがて・・・。
 「きゃあああああああああああああああ」
 拳・・・それより振動。
 「諦めてください。今のあなたは僕の玩具同然なんですよ。」
 戦慄、怒り、なお煽られん。
 屈辱煮え滾りて、誇りうずきて、形相なお激しく敵意。
 「・・・貴様!」
 すでにそれ弟見る目にけしてあらぬ。
 怒らせてならぬそんな存在。
 怒気身焼くほどに伝わらん。
 「言っておきますが・・・魔術の場合も同じですよ。」
 動揺の線、かくも透明。
 ゼラスに集まる邪悪な欠片。
 「きゃああああああああああああああ」
 だが瞬間絶叫、その集めし魔塊牙剥きゆきて・・・。
 「全く、学習能力のない人ですねえ。」
 ゼロスなおに冷ややかなり。
 「こんなのが姉とはね・・・。」
 ゼラス怒り、ゼロス笑わん。
 「なぜ・・・お前はこうなった?」
 だが突如に怒り堪えし声。
 だがゼロス沈黙、表情固まる。
 「私の・・・せいなのか?」
 震え止まらず、声も細く。
 「私が・・・悪かったのか?」
 やがてのその目に潤い――落涙。
 「違いますね。」
 ゼロスその声。
 だが笑みすでに消え去りて、
 「姉様には感謝していますよ。理不尽な暴力はやはり困るのでこうさせてもらいましたが・・・。」
 そして天仰ぎて、
 「・・・僕の野望のためです。」
 呟き――その後に溜息。
 それ深く虚ろなり。
 「この僕、冥神官ゼロスの野望のためです。」

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13391冥王の騎士4:祈りの結末:15章:風は激しくD・S・ハイドラント 2003/2/26 20:59:21
記事番号13390へのコメント

 沈黙停滞せん中、ゼロスかぶり振らん。
 普遍なる笑み湛え、
 「まずは・・・種蒔きですね。」
 ゼラス首傾げんば、
 「・・・面白いドラマが出来上がると思いますよ。ゼラス姉様も観ます?」
 ゼロス狂気の笑み。
 それよりやがて・・・
 「高き空 走る風 仰ぎて見えん天上よ 世界のすべて 今映りたまえ」
 速き言葉、激しく静かに空間鳴動。
 やがて生まれし闇の力、固まりて、そして輝きへと――それは1つの光球生み出せし。そこに映りしは・・・。

    ◇◆◇◆

 夕刻に風吹きて、照らせし男、睨み強き。
 「ただもんじゃねえな。」
 横目に見やらん美女は脅え、アイン、踏み出し優しく背後にかばい立てん。
 それ見やりて男微動。
 「少なくとも、給食の焼き飯とかいう輩じゃなさそうだな。」
 「それは救済の宿し身のことか・・・」
 鉄の如き強さ持つ声、しかし笑み堪えし節確かなり。
 「そうだ。そのちょっと大司教とかいうじじい殺して教主とかいうの殺し掛けたくれえで命狙ってきやがる短気な野郎どものことだ。」
 怒りと嘆き湛え放たん。
 そしてネージュ微笑せして、
 「それって当たり前だと思うけど・・・」
 また男も笑み湛えつつ、
 「なかなか殺すに惜しいやつだな。」
 口元震え、漏れし快笑、反面冷たき形相生み出す。
 だが微笑ましき時の欠片、アイン、睨み放たん殺意。
 「で、てめえはその関係者ってわけだな。・・・よし死ねや。」
 恐ろしきは全身より、ネージュにすら伝わりゆく。
 微かな震え拍車とその歯止め。
 「・・・面白いやつだ。ますます殺すのに惜しい。」
 動揺せずに表情昏め、
 「だが我はあの組織との関係はない。ただの基礎知識を言ったまでだからな。」
 さすらば抜き身の剣へ片手伸ばし、
 「やるか?」
 そしてアインの手、首元へと・・・。
 瞬間巨大な影、生まれん。
 蒼き輝き燃やしつつに・・・。
 退歩の瞬時に鎖、輪解け、
 一撃、衝撃、かわすも伝わり、
 (何て力だ・・・)
 思い込めて、
 「ネージュ!離れろ!!」
 接せし肌、叫びてそれ消えんことに安堵。
 「そこで止まってろ!」
 斬撃かわし背後へ呼び掛け。
 「よそ見を・・・するな!」
 凄まじき膂力、突き刺さりし大剣、切り返し。
 速く強きその一撃。
 (はっきり言って並の傭兵や警備兵ってレベルじゃねえな。)
 退歩埋めしその一撃、跳躍にかわし、
 「てめえ何者だ!」
 そして息吐き、鎖構えん。
 「名を問うときは自らから名乗るべきだな。・・・アイン・オーフェン。」
 右手片手の一撃は、強靭なりてそして鮮やか。
 力強さと鋭き技にアインただ避けゆくのみとなりし。
 「我が名がリシン・・・八魔卿≪剛鉄≫のリシン。」
 瞬時の一撃頬掠め、身捩りかわすも出血確か・・・。
 「へん、騎士サマかよ。それも天下の八魔卿とはな。・・・魔道騎士でもあるんだろ。」
 「魔法は苦手だが・・・けして使えぬわけではない。」
 瞬間、リシン剣へ左手添え、
 「蒼き焔よ!」
 燃えし燐光アインへ飛ばん。
 同時に巨体で地駆けゆき。
 「やるな!」
 焔彼のみ襲い来ん。
 だが瞬時アインも黙り、
 「烈風陣(ニャイン・カム)」
 音声響き、世界混濁――リシンより掻き消え見えぬアインの姿。
 瞬に立ち止まりて見回し。
 「敗因その1」
 突如に声、現れしは正面に・・・だが鎖、それ巻き付けし蒼き大剣。
 「俺は飯食ったばかりで調子も良いし魔力もある。」
 戦慄、切れぬ鎖、軋みむしろ剣の方。
 「敗因その2・・・てめえは八魔卿を名乗るほどに強くねえ。」
 歯噛みし男、力込めん、だが微動だにせず。
 「敗因その3・・・の前に・・・とりあえず寝とけ。」
 飛翔・・・その拳巨体揺るがす。
 「ちなみにその3はてめえの剣が高く売れそうってことだ。」

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13392冥王の騎士4:祈りの結末:16章:焔は強くD・S・ハイドラント 2003/2/26 21:01:26
記事番号13391へのコメント

 「なっ何だと!」
 衝撃に転倒せしリシン叫びて寂しき音色奏でつつに風吹きゆかん。
 その間置きて、
 「ああ・・・今金に困ってるからな。」
 哀愁語り、涙の余韻。
 「だがこれは・・・我の大切な・・・」
 「大丈夫だ。」
 遮りし声、冷酷なりし輝く飛輪。
 沈み掛けしそれより若く淡きなり。
 「・・・てめえはここで死ぬからな。」
 不意に消えん感触に、リシンの両手宙泳ぎ、浮遊せんは燐光の剣。
 それ右に持ちて、巻き付く鎖、瞬時に消えん。
 それ螺旋描き昇りゆきて、
 「じゃあな。・・・おっさん。」
 旋風の如く振り回されし悪魔そして低空切り裂き、上がらん鮮血、絶叫なくにリシン息絶え。
 「・・・爆裂弾(メガ・バースト)」
 呟き寂しく、轟音単調。
 即座に消え去り噴煙去りては骸残らず。
 「ふうこれで終わったな。」
 踵返しペンダント掛け直しつつネージュへ向かう、血吐く悪魔気留めることなしに・・・。
 「ネージュ・・・れで宿泊まれるぜ。」
 笑顔、骸すでに構うことなき。
 それ見しネージュ確かな震え。
 寒き風のそれではなき。
 「風邪っぽいからなゆっくり休まねえとな。」
 だが輝き反して昏きネージュの瞳。
 「アイン・・・」
 声も震え哀しきその熱。
 「どうした?」
 アインやがてに表情張り詰め・・・そこへ衝撃、激しく冷気、やがて燃えて冷めしは極寒。
 ネージュの平手、アインへ届きし。
 赤き宝玉、双眸より漏れゆく中。
 「ネージュ・・・」
 アインの左手、空に震え、視線、虚空常に微動。
 「・・・殺す必要なんて・・・・」
 声途切れ、涙輝く。
 大粒なりしそれ紅玉すらも越えし美麗。
 アイン薄笑み、それ必死に消さん。
 だがネージュ俯き見しことなき。
 すべての声出ぬ。
 アイン沈黙。
 ネージュも同じく。
 風吹かん、なお吹かん。
 閑静なりし街並みにそれ見やるもの1人もおらぬ。
 吐息のみが白く昇りて、やがてそれも憚らん。沈黙の中思索の迷路。
 ただ連なりて光見えぬ、時流れ・・・。
 「・・あ・・」
 やがて言葉・・・漏れ、光灯らん。暗き顔、緩みゆきて、
 「・・・アインは・・・私のために・・・やってくれたのよね・・・。」
 小さく、か細く脆きその声、風にすらも消し去られんほど。
 赤き輝き余韻残りて、天なる最期の焔に映えん。
 魅了せし、だが今は・・・。
 「・・・悪かった。」
 俯き、昏くだが笑み漏らさん。
 「いえ、良いのよ。」
 微笑み、すでに太陽ありた。
 「・・・そうか・・・」
 表情上げてネージュ覗かん。
 高揚抑え、笑み殺し・・・だがネージュのその笑み、アインの容貌跳ね返し。
 「アインは・・・私を護ってくれるのよね。」
 それとともに見しはなぜか天。
 光薄く闇浸食。
 アインそれに頷くもネージュの視線そこにあらず。
 だが顔起こせずに石畳見る。
 (昔のノーストみたいね。)
 と、虚空に笑顔。
 アインそれさり気なく観ん。
 「そうよね・・・アイン。」
 唐突なりて震えんも、
 「ああ。」
 短く答え、そして歩進めんとせし。
 「ありがと・・・」
 ネージュ連ならん。
 夕陽は背なり。
 「そんなアインが大好きよ。」
 不意に漏らせしその言葉、背後に捉えしアイン微動。
 「なっ・・・何言ってんだよ。」
 声には動揺、視線は遥か。
 「あら・・・私のこと嫌い?」
 アイン風帯びそして振り向き、
 「ちょっとエルに似て来てる辺り以外は・・・結構好きだぜ。」
 張り詰めやがて笑み。
 「あら?エルさんって結構素的な女性だと思うけど・・・。」
 互い普遍なる笑みすでに戻りし。
 なお出会いて2日過ぎであろうに・・・。
 彼ら距離の遥かに近き。
 それアイン思いつつに、世界へ戻され、
 「・・・そうか?」
 言葉返さん。ネージュ変わることなく。
 「まあ私には劣るけど・・・」
 「・・・あんた・・・そんな台詞吐くキャラなのか?」
 だがその声に言葉返らず。
 風来るのみ。

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13393冥王の騎士4:祈りの結末:17章:一寸先などけして恐れぬD・S・ハイドラント 2003/2/26 21:03:18
記事番号13392へのコメント

 「邪魔するぜ親父!」
 衝撃含みし声、天地鳴動。
 静寂は研ぎ澄まされ、なおそれ拍車掛かりゆかん。
 「いらっしゃいませ。」
 昏き声、薄光のみの店内、そして背に吹く風消え去らん。
 「早速なんだがこれ買い取ってもらおうか。」
 頭髪薄き、澱んだ顔付きなる男へアイン歩み寄りゆかん。
 古びし木の床、盛大に鳴らしつつ・・。
 溜息・・・老年に至らんほどのその男、深き息吹、天へ運ぶ。
 鋭き眼光も今や悲観のみに思えんほど昏き。
 形相は重く、絶望に浸食されしものの、それでありつつに強さ持ちたる。
 「で、どうなんだ・・・」
 声上げんば、男、店奥へ去りて、アイン溜息。
 背後見れば、ただ立つネージュ、彼女へ向けし微笑み、それ煌き増して彼に返らん。
 ただの時すら幸福なり。
 隙間風すら想い煽る・・・。
 枷断ち切り、アイン踏み出し。
 だが直前に足音、それの接近に視界、店奥に向け来る男に笑み隠せし容貌見せん。
 「いくらだ?」
 訊けば、袋取り出し、それ置かんば金鳴りし音。
 視界瞬間歪むも、動揺抑え、確認もせず、素早く掴みて、
 「感謝しとくぜ。」
 微笑み掛けし。
 男無愛想なるままでありたも、
 「ありがとうございました。」
 その声・・・微かなる輝き。
 だが見もせず踵返し、ネージュに一触れ、ともに宵闇に消えゆかん。

 「よしこれで飲めるな!」
 すでに闇浸食強し、青黒きその空へ叫ばん。
 「あれ・・アインってお酒飲めるの?」
 その闇に映え、優しき声はなお輝かし。
 「当然だろうが、蠎蛇(うわばみ)小僧って言われた俺が飲めねえわけねえだろうが・・・」
 張り上げし声、闇の胎動に掻き消されゆき、そしてネージュ光浮かべん。
 「ふふふ、面白い名前で呼ばれてるのね。」
 細き笑みはいつも魅力、だが無性に今、美しきなり。
 「まあ俺もそんな名で呼んだやつはぶちのめすがな。」
 間置きて白き吐息とともに吐かん。
 「じゃあ私が言ったら、アインにやられちゃうのかしら・・・。」
 ネージュの影は大きくありてアイン包容せんほどなりた。
 (エルよりもずっと・・・)
 その間に沈黙走りゆく。
 「どうしたの?」
 気付けば、視線正面に、背丈彼、上であろうもネージュの視線確かに見下ろし、
 「あんたは例外だよ。俺が護るって約束しただろ・・・。」
 その顔付き張り詰めゆく。
 「って何言ってんだ俺。」
 瞬時に歪み熱浮かべ、軽く笑みせし、かぶり振らん。
 「とにかく飲むぞ・・・。」
 暗き世界――だがそこいかなる光より眩き世界、優しき薄光何ものよりも・・・。

 黄金の世界、寂しく静かで、それでも熱はけして冷めなき。
 「おらおらネージュもっと飲め!」
 だがアインの容貌、明らかに白。
 「むにゅにゅ・・・もう飲めなあい。」
 黄昏よりも焼けしネージュ・・・だが彼女に夜は到来。
 「おいおい、この程度で倒れんじゃねえぞ。」
 昏倒・・・その瞬間すら彼捉え、そして疾駆。
 倒れゆく椅子瞬時に受け止め、優しく寝かさん。
 「仕方ねえ。親父、銅酒3本追加!」
 
    ◇◆◇◆

 「やはり・・・彼は強いですね。」
 光に生まれし1つの世界、幼き蠎蛇そこに映らん。
 同時に見やる女は沈黙、それに何思うか・・・。
 「そろそろ覚醒させてしまっても問題ないですよね。」
 呟きはどこへ向かおうか・・・。
 だがそれ知れぬ。
 答え求めしものもおらぬ。
 「次のショーはいつにしましょうかね。」
 邪悪なる笑み、狂気なお増し・・・。
 その手、虚空もてあそびし。願えば世界も同じく動かす。
 そんな彼の手、女やがてそれ見ん。
 「ゼロス・・・。」
 そして漏らせし声・・・。
 「どうしました・・・ゼラス姉様。」
 だがそのままに沈黙の流れ・・・。

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13394冥王の騎士4:祈りの結末:18章:輝き鳴く声D・S・ハイドラント 2003/2/26 21:05:35
記事番号13393へのコメント

 黄昏の色、やがて闇に飲まれゆかん。
 神の眠り、神の雌伏、邪なるものに喰われゆく世界。
 だが聖都の夜、天に負けじと輝く彼方。白く聖なるかな。
 風吹きたる間に微かに近づきゆく極光。
 だがなお遥かなりて、行き交う人々の不思議なるまでな無機質さ、それすら凌げぬ 薄き印象。
 だが・・・。
 影、背に生やし、歩く3者の視界に広がるは白黒赤、いくつもの光織り成す幻想。
 「素的ね・・・。」
 神殿の輝き、宵闇の浸食、黄昏の焔。
 それらの交ざりに感嘆の声漏らせし。
 絶世の美女なる彼女でありても・・・。
 「そうだな。」
 返す声も冷たく研ぎ澄まされ、風思わせん。
 「きゃああガーヴの方が素的ぃ〜♪」
 だがエル瞬間に輝き浮かべ、飛び掛らん。
 「やめろ。」
 ガーヴ瞬時に飛び退きて、エルのその腕空切りし。エル墜ちゆく。
 浅き恐怖、それ風とともに拍車掛かり、大地鮮明。
 「きゃあああああああ」
 衝突――衝撃。だがなお訪れぬ。
 「へ?」
 容姿に似合わぬ叫び上げて、遠き大地、さらなる天、それら見ん。
 さすらばそこに腕、頼もしき腕ガーヴのものなり。
 「全く、危なっかしいやつだな。」
 溜息混じりに声出さんば、引き上げそして距離取らん。
 エル、熱の余韻に手震わして、惑いつつに幸せ噛み締め、
 「で、後どれくらいで着くんだ?」
 瞬時にただ歩くシェーラ盾にし、ガーヴ声吐く。
 疲労なお増し。
 「もうすぐよ。・・・ほらあれだし。」
 指差し、指輝きて、視線に誘うは、脇に垣間見えし赤き尖塔。
 シェーラとガーヴ、煌き受けてなお進みゆく。空はなおも多彩なり。
 
 歩止まりて、風重く、そして寂しき。
 生まれし路地のすぐ脇に立ちし、無数の白の無機質の中、異彩放ちし潤う翠緑。
 黒き鉄門雄々しきて、赤屋根なりし尖塔構えん。
 生気に満ちし白亜の豪邸。
 「おい、ここ何なんだ?」
 感嘆と疑惑、怒りも混ざりて視界不動なるまま、吐き出されし声。
 「どう気に入ってくれた?」 
 極彩浮かべ、エル寄り縋らん。
 ガーヴ、それ払いのけ、
 「あん、何の話だ?」
 平静なるまま言葉返さん。
 昏き空になお暗く映えし。
 「あたしとあなたの新居よ。旦・那・様♪」
 風吹きて惑い消し去り・・・。
 「おい今何つった!」
 怒り込めしなお驚き。
 「・・・だからもうすぐあたし達結婚するでしょ♪」
 「誰がするか!」
 背の白刃、抜き取らんば妖しく輝き、その刃空切り裂きつつにエルへ一閃。
 だが即座に見えし跳躍の像。
 刃至るより速き表情変化。
 そして剣、空中静止せし。
 「くっ・・・。」
 「ふっ甘いわね。」
 バックステップにて、かわせし斬撃、
 「甘いのはそっちだ。」
 「えっ!?」
 だが剣止まらず、それエルの視界突き刺して、暗闇・・・遅れし衝撃。
 冷気の激突に開けし視界、そこに映りし剣翳さん。
 その先は――エルの首、大剣の平当たるまま。
 「だが一撃目をかわしただけでも褒めてやる。」
 笑み、勝利に煮え滾りしそれ浮かべん。
 「・・・負けたわ。」
 項垂れんエル。
 その微笑ましき図、シェーラただ見るのみなり。
 だが浅き微笑み素早く走らん。
   
 「ところでここは何なんだ?」
 剣戻し、表情引き締め、ガーヴ訊ねし。
 すべて忘却せしに思えしエルへと・・・。
 「・・・え、あたしのおうちよ。」
 平静に流さん。
 「てめえ、何でてめえみてえな馬鹿屑女がこんなでけえ家に住んでんだ。」
 「あら、ガーヴ様もっと馬鹿なのにもっと良いところに住んでいたんじゃないの?」
 即座に返らん。
 無邪気なる笑み、怒り煽り、  
 「誰が馬鹿だ!」
 「やあねえ、親しき仲に礼儀なしって言うじゃない。」
 風一走りのその後、
 「どこの諺だそれ。」 
 「・・・うちの家訓。」
 ガーヴ溜息1つ、さすらばかぶり振り、
 「とにかくもういくぞ。」
 「そうね。」
 門脇、赤き出っ張り、手伸ばし――そして鳴響きし音。
 「ニャーン。」

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13395冥王の騎士4:祈りの結末:19章:再会も晴れD・S・ハイドラント 2003/2/26 21:07:58
記事番号13394へのコメント


 響きし音やがて静寂打消しゆく。
 「ニャーン・・・?」
 声とともに音、消え去りすでに余韻も残らず。
 なおエル、突起押し続けん。
 「指紋照合中・・・ニャーン♪」
 無機質なる音、それも消え、反復せし電子音。
 そこより感じし魔力なり。
 「こいつぁすげえシステムだな。・・・なぜニャーンなのかは知らねえが・・・。」 
 素直でなくともガーヴ驚嘆。
 その中唐突に・・・揺れし衝撃に開きゆくは黒き鉄門。
 続くは白亜の道なりた。
 生い茂りし緑に生まれし一条の白、巨大なる屋敷へただ続かん。
 「これで良いわ。」
 突起に手放し、息吐き笑顔。
 「じゃあいきましょ。」
 2人避けて、エル踏み出さん。
 連なるシェーラ、そしてガーヴ溜息1つに歩き出さん。
 石音鳴るのみ、大地は整い、白襲いし緑なき。
 左右に見えし白き溝より噴出す白水夕陽に燃えん。
 夜色混じりなお幻想的。
 一瞥しつつにただ歩かん。
 屋敷見えん他、すでに草のみ。
 「ニャーン♪」
 屋敷眼前、扉のその脇、エル指触れんば再び猫鳴き。
 「だから何でニャーンなんだ?」
 答えずなお押し続けん。
 「指紋照合中・・・ニャーン♪」
 「ったくまたかよ。」
 溜息ガーヴ、すでに何度か?
 開きし扉、闇差し込まん。
 すでに暗き空、エル消える後、雄弁ガーヴ、沈黙シェーラ、ともに後追い薄明かりへと・・・。
 
 薄闇の連なり先は輝き、それ見えやがて光差せし。
 出でし場そこホールなり。
 左右に扉、前方階段。
 「エル・・・か。」
 突如に開かん、漏れし声枯れし。
 だが風化でなしに見えしは感激。
 1人の老人、白き法衣纏いて、厳しき面、強さ秘め、永遠思わす。
 白髪輝き、髭も威厳あり。赤き眼激しく鋭き。
 そして滲むは魔なる力。
 「・・・父さん。」
 その声、裏に悠久思わす。
 「3年・・・振りね。」 
 「そう・・・だな。」
 駆け出さんエル。
 地蹴りて、進む輝き絶頂。
 老人もまた走り出さん。
 そこには若さ、秘められし・・・。
 やがて宙にて身体交わし、地に落ち抱きあい。
 「・・・何だ?」
 「・・・さあ?」
 すでに2人蚊帳の外なり。
 それ永遠なりてもまた良きかも知れぬ、だが抱擁――輝き消えて天舞うエルは奥方向へ煌く星に――着地は的確。
 「失礼した。わしは・・・ブリガミア。この家の主人でエルの父に当たる。まあブルとでも呼んでくれ。」
 威厳持つ声、すでに光は影へと変わりし。
 「はっはい・・・初めまして私、シェーラと申します。」
 気圧されつつもシェーラ返答、惑い視線も定まらぬ。
 熱き表情震えつつあり。
 「シェーラ殿・・・もしやあのシェーラ殿では・・・。」
 シェーラ俯き。
 「・・・多分そのシェーラです。」
 「俺はガーヴ・・・よろしくな爺さん。」
 老人驚愕抑えつつに、
 「もしやフレア侯爵殿でありますかな。」
 ガーヴ視線避けつつに、
 「まあ、今となっちゃあ貴族でも何でもねえよ。気にするこたあねえぜ。」
 視界戻しブルへ微笑み。
 「ではそうさせてもらうよ・・・ガーヴ君。」
 微笑みもまた風格ありし。
 「ところで父さん、使用人とか消えてるみたいだけど・・・。」
 唐突にエル背後より声。
 「ああ事情があってな、今はわし1人になるな。」
 「あの・・・」
 「ほうでけえ屋敷に1人かよ。」
 シェーラの言葉掻き消され、ブルの視線ガーヴへと・・・。
 「まあ大した広さではない。正面からは少々広く見えてしまうがな。」
 シェーラの声、ついに出ず。
 老人の視線戻るもまた去る。
 「ところで料理とかはあるの?」
 さすらばブル俯き、明暗露にせし顔付き、張り詰めそして、
 「手伝ってくれ。」
 沈黙――間流れ。
 「分かったわ。・・・ガーヴ様、シェーラ、あっちのドア開けて廊下の2番目の部屋で待ってて。」
 言い終えんとエル、反対なる扉へ走りゆかん。

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13397冥王の騎士4:祈りの結末:20章:光は絶頂D・S・ハイドラント 2003/2/26 21:12:38
記事番号13395へのコメント

 暗闇漏れし小さなる部屋、月明かり未だ差すことなき。
 それ待つ自分ひどく不思議。
 かぶり振りてシェーラ見渡す。
 静寂の色は明白なりて、純白のソファに映りし姿。
 ガーヴひどく眠たげなり。
 寒さ、さほどに感じぬもの。
 沈黙重く、さながら氷中。
 吐息のみが刻まれて、そしてそれ呼び水とならなき。
 単調なる時緩慢なりてなお終わりし気配あらぬ。
 ただ刻まん。
 今のその時。
 鳴り続けるは柱時計。
 それ魔道具などであるのか。
 小さき考えすぐに霧散。
 だが凍える中でシェーラ紡ぐは1つの言葉。
 凍える心、煉獄に焼かれ、熱き思い漏らせば震え、小さく儚き、けして届かぬ。
 世界は無情に消し去りた。
 一瞬のその視線に焼かれしそれのみ。
 だが震えに負けぬ強き心。
 やがて生まれし灼熱の波。
 「・・・ガーヴ。」
 同時に吐き出されしは儚き声。
 「・・・何だ?」
 怒気か嫌気か、そんな感情押し寄せし。
 心の震えとその刃。
 逃避は出来ぬ。
 焦りうずきて葛藤始まる。
 沈黙の重みあまりに激しき。
 「・・・私達・・・」
 止まり、焦りと熱気なお強まらん。
 沈黙続く、刺さん如くに・・・。
 「・・・私達、何で一緒にいるのかな?」
 激しき焔、シェーラ炎上。
 沈黙の糸不意に断たれ、
 「何だ・・・城燃やしたことか?あの記憶は少しだが戻り掛けてる。確かに俺はやったな。」
 向かうガーヴ、あまりに巨大。
 シェーラは震え、熱気は薄まり、輝き微かに得た気せし。
 「・・・いえ、あれは・・・」
 だが惑い生まれ葛藤。
 数多の思いは剣と化さず、主君のことすら今は離れ。
 ただ感情、争うのみなり。
 「良いんだよ・・・。」
 だが漏れし声、あまりに哀しげ。
 不意に沈黙持たされし。
 「・・・あれは俺がやった。やったはずだ。」
 だが風吹くままに歩く強さ。
 強き男とシェーラ思う。
 罪の重きに耐えられずに、罰すら求めし自らよりはと・・・。
 「正直、てめえと俺は仲間じゃねえのかも知れねえな。・・・まあ俺は独りでもかまわねえけど・・・。」
 漏らせし溜息、だがその震え、虚ろの涙。
 「違う・・・少なくとも私は、今のあなたを仲間だとは思っているわ。それに甘んじるつもりはないけど・・・。」
 「そうか・・・。」
 ガーヴ、見回す小さき世界、早くも慣れし単純空間。
 かぶり強く振り、
 「だが俺を斬りたくなったら、いつでも言え。」
 「・・・え・・・。」
 衝撃すらもそこに感じた。
 だが一分の動揺ガーヴにはなし。
 「当然、ただで斬られてやる気はねえが、斬られても文句だけは言わねえよ。」
 強きも弱きもなく不変。
 不屈の戦士強きガーヴ、思えば熱きシェーラの頬。
 「でも・・・私は・・・。」
声、半ば意思無視し・・・。
 「未来は分かんねえだろうが、もし俺が斬りたくなったらいつでも言えよ。」
 黙せしまま頷かん。
 熱の余韻はかくも激しき。
 「まあそれ以上に大切なことなんざいくらもあるだろうがな・・・。」
 シェーラなお昏きなり。
 だが俯くそのまま光差込み。
 「まあ王子サマを助けるとかいうのがあるが・・・焦るんじゃねえよ。正直よく分からねえが、てめえ1人で思い詰めるのと、てめえ1人で先駆けするのはやめろ。・・・弱え、てめえは弱すぎだからな。」
 「・・・・・。」
 シェーラ沈黙。
 「1人で王子サマ助けられるほど強くねえよ。あいつの方が・・・フィブリゾの方がよっぽど強え、余裕持てよ。あいつが簡単にくたばったりしたりしねえよ。てめえより強えんだからよ。」
 「・・・そうね・・・。」
 輝き・・・やがて頭上げ、
 「・・・ありがとう・・・ガーヴ。」
 微笑み、微かなるもの絶頂の光。
 「礼はいらねえよ。てめえは少し危なっかしいんでな。」
 ガーヴにも笑み。
 違えど同じその輝き。
 やがてシェーラに熱帯びゆく。
 視線そらさんそのそれもすべて見やりてガーヴ沈黙。
 優しさすべてに拍車掛けゆかんのみ。
 「2人とも〜ご飯出来たわよ。」
 声に砕かれ、同じく立ち上がりて、笑み交じわせし、ともに歩かん。
 「どうしたの?・・・2人とも。」
 エルの声に答えるものなし。
 「まあとにかく、いきましょ♪」
 戸惑い即捨て、微笑み掛けん。
 輝き満面曇りなき、颯爽と歩進めゆかん。2人と笑顔で連なりゆきし。

 廊下抜け、ホール越し。
 さらに歩進め1つの扉、木板の隅より漏れし光は暖かな焔、黄金の色なり。
 それ開かんば木ずれのその音、放ちし閃光、眩く。
 そして遅れて襲う芳香。食欲激しく今生まれん。
 だが反して部屋静寂、長き卓、白き布、立つ蝋燭に彩られ少なくも並ぶ料理豪勢。
 だがけして座るは老人1人。
 それ寂しさ重さ誘い出さん。
 最奥のブルへ無言のままにエル中入りて、振り向かんば、
 「じゃあガーヴ様はこっちね。」
 ガーヴの腕引き、卓の左へ・・・。
 「シェーラはあっちね。」
 シェーラ沈黙、惑い浮かべ、ただ言われるままに席に向かわん。

 「ぷはあ、やっぱ酒だな。そしてつまみ♪」
 ガーヴ嬉々露とせん。
 「ガーヴ様、ほらお口開けて、」
 エル、銀に輝くフォークに肉刺し、ガーヴの顎門(あぎと)へ持ち運びゆく。
 「あ〜ん・・・って何でそんなことしなきゃなんねえんだ。」
 慌てて憤慨、だが微笑まし。
 エルそれなお突き付けしまま、
 「でもご自分の分だけでは満足しないんじゃないの・・・。」
 と言い肉震わせん。
 「んぬぬぬぬぬぬ。」
 唸りしガーヴ、明らかな迷い。
 ただ食進めしシェーラとブルもそちら見ること多しなり。
 「おとなしくお口開けた方が良いんじゃないかしら。」
 微笑み浮かべさながら小悪魔でありし。
 「・・・ふふふ早く決めた方が良いわよ。」
 悪しくもそれ一瞬一瞬幸せなり。
 シェーラと吐息、安堵の煌き。
 「んぬぬぬぬぬぬぬ。」
 ガーヴに焦り拍車掛かりて、
 「早くしてよ。腕が疲れちゃう。」
 空腹忘れ睨み合わん。
 だが不意変化、ガーヴ伸びる腕、向かうは彼の背。
 煌く大剣、踏み出せして、山颪(やまおろし)、今激しく駆けゆく。
 だが瞬時に飛び退き、エル無事、肉無事。
 「くっ・・・。」
 舌打ち、悔やみ、だがなお睨むは肉なり。
 「ふふふ・・・最後のチャンスよ。あ〜んしなさい。」
 邪悪なる笑み輝き明暗。
 「くっ・・・。」
 歯噛みせんも、鳴りし空腹、告げん鐘。
 席座り直し、エルも同じ、変わらぬ状況ガーヴ窮地。
 「ふふふふふ。」
 「んぬぬぬぬ。」
 魔竜も今や堕ちたるもの。
 震え強まり砲口開き・・・震えし顎門。
 「さあ早く。」
 すでに呆れしブル溜息、食事も終わり冷めし皿見る。
 ガーヴ今にも誘惑へ堕ちん。
 そんな瞬間シェーラ動きて、
 「ガーヴ・・・これ食べて良いわ。」
 咄嗟に動かん白き細腕、純白の皿、冷たき肉皿擦らし、それ魔竜の元へと・・・。
 「良いのか?」
 エルの肉より視線外し冷肉の皿凝視せん。
 「良いわ・・・だからつまらないことしないで・・・。」
 微笑みに混じる刃喰らうは、エルの心なり。
 「・・・シェーラ、あなたこのあたしにたて突くつもり?」
 怒りに燃えし獣の形相。
 唸り上げ、今にも飛び掛らん。
 「良いわ。あたしとシェーラどっちがガーヴ様に相応しいか、決闘ね!」
 指先輝く。
 シェーラへ向けて・・・。
 勇ましき姿、さながら戦士、もしくはナーガ。
 「いや・・・私は・・・別に・・・」
 勝気な瞳、美しくも若さ宿り、女神の強さ、激しく放ちし。
 逃げることなどすでに出来ぬ。
 「あたしが軽く勝利するついでにあなたのその根性叩き直してあげるわ!」
 そんな中にガーヴ漏らせしその溜息。
 「ガーヴ様、素的な男性を巡って女1人争うのは世の常。見ていて辛いかも知れませんが、これはあたし達のこと。情などに流されず、勝者を選び出すことをお願いいたします。」
 ガーヴ感じんは違和感にて、シェーラ感じんは既視感なり。
 「それでは始めるわよ。」
 そして開始のその鐘の音。
 「いい加減にしろ!」
 ブルの叫び放たんば、そしてすべて沈黙しゆく。

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13398冥王の騎士4:祈りの結末:21章:終わりて哀しきD・S・ハイドラント 2003/2/26 21:16:47
記事番号13397へのコメント

 輝き消えた後――残りしは静寂、ひどく寂し気。
 光の去りた夜――残りしは時、それひどく眠れぬ長き時なり。
 小さくも輝けし時はすぐに去りて寂しき夜、ただ独り過ごさん。
 狭き部屋は残酷に静か。
 吐息昇りて、消えては昇る。
 むなしき循環。
 哀しき輪廻。
 敵意なき沈黙なる温もりはなお感傷誘わん。
 上辺のみの煌き残して風化せし部屋、不意に歴史すらも数えてしまいし。
 だが風冷たきこと変わらず、温かな中でその身凍てつきし。
 激情に堕ちぬようただそれ意識し停滞。
 だが天秤止まらず、傾斜贖えず。
 その手すら伸びては止まる。
 どこへいくのか?
 「コー・・・」
 放つ言葉もどこよりか途切れ・・・。
 すべてに躊躇い。
 狭き部屋にて・・・。
 家具は少なし、寝台1つと棚いくつか、すべて隅で空間広き、使用の形跡少なきものの白きカーテンそれのみ鮮やか。
 すべて寂しき、風に逆らい、世界に逆らい、彼女は1人歩き出す。
 止まりた歩、同時に映りしその夜景。
 そこに輝く白き光さえ、寂しきものなり他思えぬ。
 窓へと軽く触れし細腕、力宿りて、窓両断、否、開放なり。
 生まれたリアルの夜風浴びんば、瞳に涙、浮かび掛けん。
 躊躇い忘れて魅入らん世界。
 感傷抑え、思い留まり、生まれし焦り増やさぬよう。
 ただ空のみ見詰め続けん。
 長き時は無情に流れゆく。
 だがそれに思うことなき。
 だが意思はやがて反して涙誘うと分かりていようが、なお反せしてそれ紡ぎ始めん。

 ――静かな夜に瞬くは星
 終わらぬ夜を見詰めるは僕
 彼方に見えるあの綺麗な花
 どうして僕には届かないのか
 輝く視線はどうして濡れてる?
 見えない涙流れて欲しいの?
 彼方に見える思い出の星
 どうして僕から逃げていくのか――

 紡ぎた。古き歌を・・・懐かしき歌。
 僅かに苦笑、それも枯れゆく。
 涙は生まれぬ。
 だが哀しみ確か、思うは輝き。
 それ求めし、だが近寄れぬ。
 逃げていくのみ、去りゆくのみ。
 それ運命だろうか。
 運命とは何?
 運命とは抗うものなり。
 その教え間違いだろうか・・・。
 連絡魔法も使うことなく、ダイと話すことはなく。
 シェーラは今も長き夜刻み続けし。
 だがいつしかまどろみ襲い来る。

     ◇◆◇◆

 静寂、安息なり。
 感傷など何も襲わぬ。
 風すらも今は感じずにおこう。
 安らかに揺れし哀しげなる空気の微動など・・・。
 感慨なきわけであらぬ。
 だがすでに慣れし、若きに身浸透せしそれ、いつも求めしわけでなき。
 混沌振動、だが心地良き。
 冷たき風も、まどろむ世界も、浮かびし幻影も・・・。
 何も恐れることなどなき。
 亡霊であろうがすべて断ち切る。
 夢ならなおさらなり、そんな威勢に今包まれし。
 恐れはすべて消し去りた。
 そんな強き1つの心。静寂、安息なり。
 だがまどろみやがて覚醒促がしゆく。
 閃光が世界覆いて、微音等しく滅びん。
 消え去る睡魔、不思議な覚醒。
 研ぎ澄まされし感覚達、そして始めに捉えし異変。
 気配に即座、立ち上がらん。
 思えば肌冷気帯びてあまりに冷たき、奮起、喝、布団より出で、見詰めん正面。
 捉えしそれはまさしく人影、否、まさしく人のその姿なり。
 白銀の輝き極限に秘めし髪流し、紫なる杉石(スギライト)の輝き放つ白肌の女。
 歳、20過ぎか・・・それら鮮明に見とれし。
 暗闇に覆われしこの空間に置きて・・・。
 「てめえ何もんだ!」
 覚醒直後であろうに、威勢欠けし隙あらぬ。
 アインは――跳躍。
 寝台よりのその落下。
 風となりて、素早く打撃浴びせゆかん。
 だが女、それ背後へ身かわし。
 アイン歯噛みし、追撃掛けん。
 だがその拳、当たらん瞬間、女、姿霧散。
 疑問覚えし。
 だがそれすらも即に打ち消し、歩み寄らんは違う寝台。
 「ネージュ・・・大丈夫か?」
 小さき声、届かぬこと願わん。
 思う通り美女ただ眠りし。
 御姿美し。
 だがかぶり振り、足音すらも強く抑え、戻らん自分の寝台へ・・・。
 「ったく・・・何て狂った街だ。」
 小さき呟き、だが声強し。
 無機質なる人々、襲撃者達。
 だが疑問すべて消し去りそして眠りへただ着かん。
 どこよりか微笑み届きた気した。
 熱持ちゆく太陽の微笑み。
 不意に生まれし幸福感。
 それ安堵に拍車掛けん。
 
    ◇◆◇◆

 流れ落ちるは涙であろうか。
 崩れ消えるは涙であろうか。
 傷付けるは涙であろうか。
 優しき光、金色でありて、淡く優しき。
 燐光帯し闇達の宴、その主冥きもの達の王。
 神の雌伏、悪魔の天下、夜意味せしはそうであろうか。
 世界のすべてがそうでありても、この街果たしてそうであろうか。
 妖しき月光、彼女は好みし。
 むしろ聖なる輝き疎し。
 神殿の光、明らかに避け、ただ月見やらん。
 それのみだ。
 空鮮やかで、地の輝き単純過ぎし、聖とは思えぬただの光なり。
 むしろ聖なるその月であり。
 だが涙は変わらず常に流れし。
 月読みの歌、その旋律にて・・・。
 「何で・・・。」
 月に問いかけ、当然不変。
 淡き光線降り注がん。平等の慈愛、それ思わせん。
 「何で・・・なの?」
 空に反して彼女に叢雲、夜雨冷たし。
 「何で・・・あたしは・・・泣いてるの?」
 答えなどなき、探すことなき。
 涙に理由は付けられぬ。
 哀しきこと些細しかなき。
 なぜ泣くか――理由付けなどしたりせぬ。
 綺麗な月世霊(つくよみ)、それ泣かすか・・・。
 答え否なり、ならなぜ泣くか・・・。
 部屋は沈黙、寂しき空間、牙剥くものなき。
 静寂の坩堝。
 静かは踊る、叫ぶ、泣く、そして笑い狂う。
 白きカーテン揺れるのみ。
 暗く古きそんな部屋。
 すべて同じ質素倹約。
 「・・・。」
 ついに黙し、ただ見詰めん。
 時流れゆく。
 だが惜しむことなどけしてあらぬ。
 彼女エルの生きし時間、生きゆく時間。
 それに比較せしば些細なる一欠片に過ぎぬのだ。
 涙は始終止まらずに、弱き彼女映す光へ捧げられゆかん。

    ◇◆◇◆

 安堵、それに包まれし、安息、それが彼護る。
 それのみでありて何ら変わらぬ。
 すべて激変せしようが、彼変わることなどけしてなかろう。
 闇――ただ踏み入れし愚かな自分。
 魔――拒むわけなど、どこにもあらず。
 「さあ、闇に身を任せ、身を託すんじゃ。」
 邪悪なる魔、それそして浸透しゆく。
 ――拒むわけなど、どこにもあらぬ。
 「うわあああああああああああああああ」
 叫び、襲い来る闇。
 だが不明瞭。
 彼まで脅えんことなかれ。
 「これが・・・力?・・・これが力?」
 次瞬には輝きたのだから。
 鮮明にあらずとも記憶残りし、力得しこと始まりなりた。
 脅えなどなき。
 不透明な世界進展始めし。
 だがさらなる透明。
 消えゆく世界。
 感覚のみ残りて、すべて見ゆる。
 世界はなくもすべて映りし。

 ――赤いキツネ。
 猛きものの鎧。

 ――神滅刃。
 世界滅ぼせし風の刃。

 栄光の日々それ連ならん。
 侯爵でありて輝く毎日。
 だがやがて至るは焔、記憶は火焔呼び出さん。燃えしは巨城、苦しむ人々。
 ――あれは・・・何だったのか?
 変わりしはあれよりだ。
 あれより・・・記憶は途切れ消え去らん。
 だが今となりては滲み出て来んも・・・。
 「がはははは〜、てめえじゃ俺には絶対に勝てねえんだよ。」
 「だが今のを受け止めたのは褒めてやるよ。」
 「さてと王子様・・・死んでもらうぜ。」
 「ほう、いつまでもあがくか。」
 歪みし自分、伏せし少女、見えぬとも分かりし。
 だがそしてそこで途切れ・・・。
 消えゆく世界。
 「ゼロス・・・なぜだ。答えろ!」
 最後に残るはその叫びなり。
 ――ゼロス?
 最後に浮かびしそんな単語。
 つまりはその名、敵の名なのか?
 瞬間なお未来へと・・・そこに映るは1人の青年。
 ゼロス――それ敵の名か?
 記憶過去に落ちん。
 そこに浮かびし青年の像。
 ゼロスつまりは冥神官ゼロス。
 突如に光――閃きなり。
 (撲殺人参ソード・・・今回はやつらが敵なのか?)
 それも夢の中、忘れるやも知れぬもの。
 優しく包み言葉保存。
 覚醒の日まで消えぬように・・・。
 それ湛えガーヴ眠るのみ。
 安堵はありて安らぎ充分。
 撲殺人参ソード、恐ろしきもの達。
 なおも名の意味常に知れぬ。
 しかし最凶の敵、魔人の集団。
 だが彼には戦慄すらも子守歌なり。

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13411冥王の騎士4:祈りの結末:22章:だが暁は来るD・S・ハイドラント 2003/2/28 12:23:28
記事番号13398へのコメント

 「で、あんたに訊きてえことだあるんだが・・・」
 朝食、すでにその刻なり。
 目覚めは不思議と鮮明で朝早くより覚醒果たせし。
 彼には稀なることなりた。
 「よかろう・・・だがその前にお前とお前の旅の経緯のことも聞いておきたいな。」
 対峙せしブルとガーヴ。
 厳しき睨みにガーヴ薄笑み浮か返せして、
 「良いぜ・・・ただし今さら何聞いても怒んなよ。」
 「・・・約束しよう。」
 重き返事。
 静寂薫る食卓の間、緩慢な空気今も流れし。
 ――まずは自ら語らん。
 輝き終わり、闇に堕ちること、悪しき魔の術。爵位得しこと。
 ――続きてカタート墜とせしこと、記憶薄き中、それ語りた。
 そして至りしは・・・。
 「ゼロス・・・だと!」
 そこにてブル声強く上げん。
 驚愕もしくは恐怖だろうか。
 「ああゼロスって野郎だ。」
 「ゼロスか・・・」
 曇りし声は憂いであろうか。
 「で、どうかしたのか?」
 「いや・・・続けてくれ。」
 
 一部始終話し終えん。
 事実グラウより向かいた理由は「フィブリゾが攫われた」程度にしか知らぬ。
 だがゼロスの一言にやはりブル驚きし。
 「やはりゼロス・・・となるとな。」
 溜息昇りて消え去りゆかん。
 朝風冷たき身震わせし。
 「とにかくこっちの質問に答えてもらおうか。」
 ガーヴはそれに気することなく、その暗雲を打ち破りゆく。
 「そうだな・・・まずあんたは何もんだ?」
 吐きて虚空見、ただ時刻まん。
 「わしはブリガミア、エルの父・・・後は神殿魔道教師をやっておる。それくらいか。」
 「それだけじゃねえだろう。」
 終えん瞬間ガーヴ放つ声。
 だがブル動ぜずに溜息1つ。
 「他に何か言うことがあるとは思えんが・・・。」
 「・・・あんたただの人間じゃねえだろ。」
 半ば浮かべし、ガーヴは笑顔。
 「それはお互い様だろう・・・。悪魔の力を手にした君もただの人とは違うだろう。」
 「トリュフは・・・絶滅したと聞くが?」
 ガーヴの言葉刃でありた。
 だがブル刺されし気配なき。
 「真実を言おう・・・トリュフは絶滅などしておらん。神に加護を受けれぬものは隠者となる他道はなかったのだ。」
 重く紡がれゆく言葉達。
 「全然意味が分かんねえんだが・・・あんたがトリュフだってこと認めんだな。」
 「違う・・・わしはトリュフではない。」
 反論、疾風(はやて)の如しなり。
 ・・・だが焦り澱みなどけしてあらぬ。
 「わしは・・・半(ハーフ)トリュフ、黒トリュフとも呼ばれるトリュフの力を奪った人間だ。」
 口調緩慢、だが漏れし感情、変化感じぬ。
 「親子揃って黒トリュフか・・・」
 「呼ぶなら半トリュフの方にしてくれ。」
 その声聞くことなくに、
 「トリュフなら魔人の敵だな。俺と同じだ。」
 「いや・・・違う。」
 初めてガーヴに走る戦慄。
 「どういうことだ!」
 ブルの鉄面なお変わらずに・・・。
 「神に忌み嫌われしものと言っただろうが、トリュフは神の敵、純粋な敵ではないが密かに反旗を目論んでいる。」
 口調強きも感情同じ。
 ただガーヴのみ暗く変化せし。
 だがそれ、かぶりとともに振り払いて、
 「で、あんたは協力してくれるのか?」
 輝き戻りし不変の老人。
 「無論だ。冥王アプロス、冥王フィブリゾ、この2人を出会わすことは世界の滅びを意味する。死力は尽くそう。」
 初めて浮かびし笑顔。
 ガーヴもそれに連なりし。
 「そうか・・・感謝するぜ。」
 笑顔はやがてブル越えん。 
 「だが・・・なぜお前が感謝などするのだ。あの少女と関係などなかろう。」
 「いや・・そいつぁ・・・」
 言葉詰まり、視線激動。
 焦り浮かべて、頬に熱。
 ブルそれ見て笑みに拍車掛けん。
 「まあ・・・んなことどうでも良いだろうが・・・。」
 そして虚空一見せして、
 「それより飯はまだなのか?」
 「・・・ステーキとビーフシチューとカレーくらいならわしにも作れるが・・・。」
 「・・・酒とかは?」
 「朝から酒は飲まさんぞ。」
 軽き言葉、だが返りし表情恐ろしき。
 「分かった・・・エル起きるの待つことにしとく。」

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13412冥王の騎士4:祈りの結末:23章:それも過ぎゆきD・S・ハイドラント 2003/2/28 12:25:25
記事番号13411へのコメント

 「シェーラ・・・。」
 呼ぶ声。
 優しく温かき。
 どれだけ味あわぬものだろうか。
 「シェーラ!」
 求めん声。
 震え脆き。
 この血燃え上がりゆくこと鮮明。
 「シェーラ。」
 その声。
 弱くて強く、脆くて頑丈、頼りなくて心強き。
 「・・・シェーラ。」
 それこそ探せし声、自ら求めしその声。
 やがてその像明らかとならん。
 少年の姿そこに鮮明。
 他は無明。
 不意に駆け出す、少年の元へ・・・。
 闇さえ恐れんことなきに・・・。
 だが崩れゆく世界。
 消えゆくフィブリゾ。
 世界混濁、意識混沌。
 そんな中に差し込みし光。
 だが受け入れんばすべて捨ててしまいし。
 哀しき光。
 むなしき虚像抜け出すための。
 偽りだろうと輝き捨てんがための・・・。
 だが手伸びのゆく。
 風は強く吸い込まれんほど・・・。
 やがて世界虚ろと化してそして光覆い尽くさん。

 白きカーテン微かに揺らせし寒気と温気。
 意識はあれど思考は回らず、朦朧とせしその中で世界のみは鮮明でありた。
 微かに漏れし光は強き、朝の淡光ではけしてなき色。
 その輝きは無言に奏でる。
 睡魔誘わんその歌を、だがむしろ眠気さほどなきなり。
 白き大地に細腕立たせ、世界上昇そして走るは頭痛なり。
 だが小さき刃の蠢動などは彼女にならば苦ではなき。
 立ち上がりかぶり振りて、目覚め促がす。
 寝台に寝かせし黒き上着羽織て、静寂なる部屋過ぎ去らん。
 
 扉開く音、それすらも不明瞭。
 広がる空間幻だろうか、幻想捨て去り、世界見やれば、食卓囲う3人の姿。
 「あっシェーラおはよう。」
 「おはよう・・・エル。」
 小さくそして届きし声にて。
 痛み走るも構いせぬ。
 重く震えし足取りにてシェーラ3人の元へ歩きゆく。
 席は昨夜と同じくにエルやガーヴと向かい合う位置。
 ブルは変わらぬ最奥部。
 ただ食事など比較的豪勢。
 朝食のものでけしてなかろう。
 「で・・・今・・・何時?」
 シェーラ呟きし声、エルは笑顔にて、
 「時計見れば分かるでしょ、1時半よ。」
 見やれば古時計差す刻と同じ。
 「全く寝すぎだな。」
 「そういうガーヴはいつ起きたの?」 
 怒り切れずどこか収まり。
 「俺ぁエルよりゃあ早かったな。エルが9時頃くれえかな。」
 虚空見やる。
 箸(一応存在)は止まりし。
 「本当、今日のガーヴ様ったら凄いわ♪」
 「やめろ!」
 寄り来るエル払いのけしガーヴに浮かぶは確かな熱気。
 焦り・・・突如にシェーラそれ感じ。
 だが否定せん心。
 それが葛藤。
 冷気と熱気争う中でなお暗くなりゆく暗黒の未来。
 「・・・。」
 だが声は出ぬ。
 先日の言葉強く残りて、
 「全くガーヴ様ったら照れちゃって・・・」
 「・・・てめえ殺すぞ。」
 だが声にも覇気明らかに欠け、エルの喜悦深まりゆくのみ。
 「ああんっガーヴ様ぁ」
 なお寄り掛かり来るエル、艶やかなりた。
 「本気で殺すぞ!」
 だがガーヴ叫び、背後へ手伸ばし、
 「お前はうちの娘を殺すつもりか?」
 「あっいや・・・」
 不動の視線、ブルの睨みにガーヴ震え、
 「冗談でもそのような行為はやめてもらおうか。」
 「・・・はい。」
 静かなる威厳、刃よりもなお恐ろしき。
 ガーヴですらも頷くのみだ。
 「エル・・・お前もいつまでもこんな男にくっ付く歳でもないだろうが・・・。」
 その視線エルへと移らん。
 「・・・父さんでも歳のこと言ったら容赦しないわよ。」
 だがエル静かな視線にて睨み返せし。
 「・・・さすがだ、女に生まれただけある。」
 ブルのその瞳微かな震撼。
 だがエルも同じく震え。
 光景見ればなおシェーラ焦る。
 「おい・・・。」
 だが不意に声。
 独り進めし食事、手止めん。
 ガーヴに振り向く。
 視線は合わせぬ。
 「また焦ってんじゃねえだろうな。」
 「いえ・・・あの・・・」
 「何の話?」 
 「何でもねえよ。」
 やがてブル1人蚊帳の外なり。

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13413冥王の騎士4:祈りの結末:24章:冥き黄昏D・S・ハイドラント 2003/2/28 12:38:13
記事番号13412へのコメント

 ――0:夢――

 揺れし波紋、見えるは嵐か。
 視界薄くも鮮明に取れし冷たき冬風。
 それ逆風となる。
 苦境の中心、小さき自分。
 容易く吹き消されゆくそんな命か・・・。
 だが輝き、笑い。
 そんな自分。
 強きその風、順風と成さん。
 辛く苦しくも輝き強き。
 幸せな虚像。
 だが――今止まる。
 逆巻く世界そして光――終わり告げし今。
 飲まれゆく身――幸せ剥がれそして還る。
 昏き今へと・・・。

 ――1:目覚め――

 「ん・・・・・。」
 静かな世界絶望生まれし、だが瞬時消える。温かき気配に・・・。
 「アイン・・・。」
 飛輪めいたるそんな声、天のそれより輝かしきほど。
 太陽の女神ネージュなり。
 「ネージュ・・・。」
 熱気走りて覚醒促がす。
 椅子に座りて純白の服纏う麗しき美女視界へ移し・・・。
 「・・・今何時だ?」
 「もう2時よ。」
 即座に返らん刃なる声。
 「うわっ本気かよ。」
 舌打ち、そして頭痛襲い来ん。
 「おいネージュいくぞ飯だ!」
 叫び上げ、上着纏うと、ネージュの腕引き部屋の外へと・・・・。
 「きゃっ、ちょっと・・・」
 ネージュの声など今は聞かぬ。
 
 ――2:始動――

 午後の人通り僅かなり、すべて無機質にありて石造りの街、人形の世界に思えゆかんほど。
 天なる飛輪の輝きただ受け、光と影、生み出せし街。
 それ沈黙過ぎた。
 泊まりし宿に食堂はなき。
 そのため2人、寒暖の狭間、ただ道歩みし。
 「全くアインったら、焦ることもないのに・・・。」
 溜息吐くも笑みは残りた。
 アイン俯き、
 「・・・すまん。」
 声、行き交う人に負けず陰気。
 「別に謝らなくても良いけど・・・。」
 陰はネージュに至らんほどに。
 沈黙一時流れ、淡々と歩むのみ。
 視線は絶えず両脇走るも、表情変えしことはなき。
 「ねえアイン・・・ここの辺りそういうお店なさそうだけど・・・。」
 それ破るはネージュのそんな声。
 小さく儚き。
 だが届かぬこともまたあらぬ。
 「そういやそうだな。」
 暗くなりゆくその世界は、天井石壁、活気はあらぬ古商店街。
 寂れ、すでに虚像生まんほど。
 「道迷ったりしない?」
 弱き声にアイン笑顔返し、
 「それなら大丈夫だ。俺に任せろ。」
 振り向き放たん。
 そして瞬時に向き直り、視界の一画過ぎ去る人影。
 アインその姿、的確判断。
 (あいつは!)
 思考の瞬間、すべての邪念打ち払い、アイン地蹴り駆け出さん。
 「ちょっとアイン!」
 アインの疾駆追うネージュ。
 「ネージュ危険だ!その辺で待ってろ!!」
 「でも・・・。」
 アインそして沈黙なりた。
 過ぎ去るその歩あまりに速き。
 ネージュ追えずに、商店街の一画にて立ち止まり溜息吐かん。

 ――3:激突――

 アイン駆けゆく。
 間違いあるまい。
 恐れや躊躇いすでに消し去り。
 ただ一心に追い続けん。
 その距離やがて近まりゆきて・・・。
 商店街越え、路地に逃げ込むその人影をなお地蹴りアイン横へと跳躍。
 風帯びつつに精神集中――描きし構成。
 「火焔針!(フレア・ニードル)」
 小さき焔の針の進撃。
 人影の足元小さく焼かん。
 躊躇し立ち止まる人影にアイン追いつき。
 「見つけたぜ。てめえ球界の疫病神の一味か!」
 その人影、銀髪の美女なり。
 振り向き杉石(スギライト)の輝き浴びせしその美女。夜間現れし女そのものなり。
 「違います。・・・私は救済の宿し身ではありません。」
 その声、美しくもどこかに殺気。
 「まあ良い。てめえも俺を狙ってやがるんだな。」
 不敵に笑み放ち、首の鎖、素早く外さん。ペンダント構え、
 「死ぬ前に名乗っとけ。さもねえと、読者に覚えてもらえねえぜ。」
 僅かな動揺女浮かべ、
 「何のことを言っているのか今ひとつ分かりませんけど、私はメチオニン。八魔卿、≪魔蝶≫のメチオニン。」
 そして殺意なお滲み出ん。
 アイン戦慄に笑い、
 「また八魔卿か・・・だが昨日の力馬鹿の実力見るに大したことなさそうだな。」
 脅えすべて捨て去らん。
 「甘く見ないでください。リシンは八魔卿では最下、私の方が強いです。」
 そして抜き取る細身の剣、帯し輝き紫なりた。
 風吹きし路地、広さ剣振るうに充分なり。
 「そうか・・・だが俺もあいつより強えだぜ。それもよっぽどな。」
 笑顔のその意味変わりゆかん。
 微風(そよかぜ)が今、力持ちて暴風へと――。
 「冬風のラプソディ!」
 逆風、感じしは恐ろしき殺意なり。
 「ぐわっ!」
 激痛。鮮血舞わん。
 瞬間に終わる狂いし風のその宴。
 膝付き、息吐き出して苦痛に歯噛み。
 「どうですか・・・リシンとは違うでしょう。」
 慇懃な中に誘いし感情。
 それ含めすべて振り払い。
 「ああ全然違うぜ。その臆病なところとかな!」
 アイン叫びそして飛翔。
 刃傷が風受け鮮明に響かん。
 飛輪の輝きより見下ろす地にメチオニン。
 光とともに降り注ぎしは、それ反射せん白銀の悪魔。
 美女へと走る邪悪なる蛇。
 彼女跳躍かわすも、
 「光翼翔!(シャイン・ソニック)」
 光の如くに飛び迫らん。
 「冥き闇のプレリュード!」
 放なたれん闇。
 蠢くそれ1つとなりてアインへ疾駆。
 黒き弾丸それ死意味せし。
 (確かにあの力馬鹿よりゃ強えな。)
 だが笑み浮かびし。
 ともに止まる時、構成鮮明。
 「・・・祝福!(ブレス)」
 光現れ打ち消す常闇。
 笑み鳴らし、なお追撃。
 輝く鎖そしてメチオニンへと・・・。
 弾く音、金鳴り。
 飛び散る紫の光の色消え、巻き付く悪魔。
 女驚愕、恐るべき力なり。
 「こいつに砕けねえ剣ははっきり言えばねえんだぜ。」
 軋む魔の剣、震え激しき。
 輝きすらもどこか薄き。
 「剣じゃあ俺には勝てねえよ。それにてめえ如きの魔法には負ける気はねえ。」
 風の悪魔――アインの威圧拍車掛かりゆく。
 「胡蝶のベルスーズ!」
 「鏡よ鏡よ!」
 刹那放たれし声重なり・・・。
 「そっそんな・・・」
 倒れゆくメチオニン。
 アイン満開の笑み。
 「魔力さえあれば魔法は万能。・・・型にはまった魔法だけで通用すると思うなよ。」
 堕ちゆくは闇、耐える心に無明染みゆき。
 「永遠に眠れ・・・爆裂弾(メガ・バースト)。」
 寂しげなる声――≪魔蝶≫メチオニンも去りゆかん。
 「・・・逆痛流!(アンチ・ペイン)」
 その魔法に痛む傷塞がりゆいた。
 「ったく魔力の無駄遣いさせやがって。」
 吐き捨て踵返さん。
 穏やかなる風、順風なりし。
 (ったく、あの馬鹿といい、この女といい、八魔卿とやらもただの馬鹿だな。)
 背後より香る消えし骸の匂い。
 (だが・・・あいつら何か変だ。)
 だがかぶり振り、笑顔浮かべ、
 「まあ良い。ネージュ終わったぜ!」
 なお風優しくそう感じん。
 
    ◇◆◇◆

 「これは失敗ではないのか!」
 怒りいくばか噛み殺しそれでも声は激しくならん。
 「まさか?・・・予定の通りですよ。」
 そんなゼラスに微笑むゼロス。
 優しき仮面いつ剥がれんか・・・。
 「彼女は餌に過ぎませんよ。彼を相手に勝てるはずがない。そう彼女如きではね。」
 闇照らし世界映す光球。
 それに突如に映像途切れん。
 だがそれ一瞬にありて、
 「これは・・・・」
 「本当のショーはここからですよ。」
 そこに映りし1つの悪夢。

 ――4:黄昏――

     ◇◆◇◆

 「っ!」
 煌き、そして一筋の焔走り舞わん。
 「きゃああ!」
 激痛、苦痛、意識鮮明、それでいて混沌。
 「あああっ!」
 颶風、風は切り裂く、狂気持ちて。
 「きゃあああああああ!」
 連なり苦悶、それ嘲笑う1人の青年そこに・・・。
 水のせせらぎ湛えし双眸、照る黒き髪なる白き肌の好青年。
 だが表情ひどく狂気に侵されし。
 傷付くネージュにそれ浴びせん。
 「ふふふ綺麗、綺麗ですよ。あなたのような美女にこそ血は相応しい。」
 歓喜、恍惚、歪み露に剣振るう。
 「っ!」
 笑みの邪悪さに思わず悲鳴噛み殺されん。
 滲む苦痛、屈辱。
 強き熱気が絶え間なく襲う。
 疲労、視界霞み歪み朦朧なりた。
 「おっと・・・まだまだ終わってもらうわけにはいきませんよ。」
 「っつ!」
 赤き風なお駆け、生まれるは美血。
 「ああああああっ!」
 まさしく颶風、その右手に握られし赤き光の剣。
 天より至りなお地より駆け上がること刹那なり。
 「まだまだですよ。これでは足りない。まだまだ不充分だ!」
 白き衣服すでに赤き流れに浸食され、地にもなお溜まり生まれんほど。
 「きゃあああアイン〜!」
 叫ぶも痛み煽るのみ。
 青年笑みなお強めゆいて、
 「ふふふふふ無駄だ。無駄ですよ。誰が来ようと斬るのみだ。」
 なお放つ斬撃、一撃浅くもその傷数多なり。
 意識逃れんためか浮遊しゆき。
 世界闇に侵食されてゆく。
 だが苦痛に覚醒、激しく嗚咽。
 「良い。最高だ。もう少し、もう少しで楽にしてあげます。そうもう少しで・・・。」
 狂気高まり、美しくもそれすら嫌悪へと・・・。
 なお走る一条の風。
 重き一撃、ネージュ倒れ伏す。
 「さあ・・・終わりですよ。」
 その煌きひどく脅えし震える瞳に赤き輝き、血よりも、剣の焔よりなお美しき。
 「おおっ・・・女神。まさしくあなたは女神。・・・そんなあなたの最期が見たい!」
 やがて絶頂、貪り喰らう獣の如くその一突きに極限の震え。
 両手に握りし光の剣。
 「終わり・・・終わりですよ。」
 吐息激しき美麗さあらぬ。
 ネージュ恐怖の中、ただ後退り。
 だが逃げられぬ。
 獲物追い詰めし狼なり。
 そして焔の柱、地に墜ちゆくその時。
 突き落とされし刃、空にて横走り、奏でしその音。
 ネージュの顔より絶望消え去り、瞬間笑顔。
 「変態野郎!ネージュに何してやがる。」
 鋭き叫び、怒り凝縮。
 そしてその主アインなりた。

 ――5:抵抗――

 「・・・アイン。」
 声美しく、だがそれにて闇に閉ざされん。
 「随分と良いところで邪魔されたものですね。」
 青年、瞬時に振り返り、赤き剣なお振るう。
 アインの悪魔それ弾き凄まじき音奏でられん。
 空切る剣、宙舞う悪魔、アイン鎖手繰り寄せ、
 「次は・・・殺す!」
 殺意込めしその激流。
 だが青年容易く受け流し、
 「あなたが私を殺す?愚かなことを!」
 そして疾駆、風切り斬撃、迎え撃つ鎖、だが瞬間焦燥生まれん。
 かわす剣、蛇の妄執、すべて振り切り、
 「≪美血公≫ロイシンがこの程度の輩に敗れるはずはない!」
 ペンダントすべてより逃げ踏み込む一歩、顔そらすアインの頬に一筋の真紅。
 激痛の刻印。
 「っ!」
 風に映えし鮮明な傷。
 ロイシン続けて飛翔。
 追うペンダント。
 だが速き鎖、容易く掴みて、狭間潜り、剣一閃。
 「ぐああああああああああ」
 衝撃、激熱、凄まじき苦痛。
 アインよろめき背後へ跳ばんも、しゃがみ込みとなり。
 歯噛みし見据える高きロイシン。
 「・・・この程度の力にリシンやメチオニンが倒されるとは・・・。」
 近づく足音、死神のそれ。
 「火焔針!(フレア・ニードル)」
 小さき焔、飛び掛らん。
 「小賢しい!」
 だが剣の一閃すべて弾く。
 そして生まれしロイシンの笑み。
 先ほどと同じ狂気のその色。
 「あなたの方の血も味合わせてもらいましょうか。」
 歪みし顎門。
 美は欠け恐怖芽生え来ん。
 「黙れ!」
 跳躍、同時に振るいし悪魔。
 それ素早く剣へ巻き付きて、
 「剣なしじゃてめえも無力だ。」
 軋むその剣、輝き薄れし。
 「私が外すのとあなたが砕くののどちらが速いか、ということですね。」
 だが研ぎ澄まされゆくロイシンの顔。
 瞬間走る彼のその指、端正なりて美しき。
 アイン力込めしも、それより速くに返されん。
 対峙せし2人、凍てつく焔と燃えし風なり。
 「さて・・・そろそろ俺は本気出す。」
 アインの叫び沈黙破らん。
 さすらばロイシン冷笑浮かべ、
 「・・・本気?傷付いたあなたに何が出来るというのですか。」
 「なら一生笑ってろ!」
 アイン鎖戻し、そして駆ける。
 ロイシンの刃走る瞬間、悪魔盾となり、鳴りし金音、ロイシン動揺。
 「焔よ叫べ!」
 ロイシンの左手より生まれし紅蓮の焔。
 魔獣の如くに吠え襲い掛からん。
 「防火封陣!(ヴァイス・シールド)」
 即座、焔消え、そして伸びし銀の輝き。
 風より速き、その輝きの如く。
 「よくもネージュにあんなことしてくれたな!」
 怒気込めしそして迫りし悪魔。
 鮮血それが視界覆いた。
 怒り映す鏡の如く。
 「ぐああああああああああああああ」
 断末魔、その響きむなしく消え去る。
 怒り消えずにそして戦慄の余韻明らかに・・・。
 だがそれらすべて振り切りて、
 「ネージュ!」
 美女へと駆け寄る。

 ――6:夜に――

 焦り絶頂。
 美しき園だが目の意味せしこと今は気せずに・・・。
 「大丈夫かネージュ!」
 圧迫、重圧、ネージュ揺する手最後の希望。
 「ネージュ起きろ!」
 だが反応なき、焦燥熱き。
 だがそれアイン凍らせんもの。
 「逆痛流!(アンチ・ペイン)」
 魔力浸透せんも波紋あらぬ。
 「治療!(リカバリィ)」
 むなしく消えゆく。
 「治療!(リカバリィ)」
 「治療!!(リカバリィ)」
 「治療!!!(リカバリィ)」
 だが変わらぬ彼女の明鏡止水。
 やがて上気は涙と変わりゆき。
 「・・・治療(リカバリィ)」
 静寂鮮明、風強きなり。
 「・・・ネージュ。」
 熱失いゆく美女すでに還らぬ。
 「・・・俺のせいだ。」
 天に呟く。
 むなしく消えんも、
 「・・・俺が・・・俺が・・・追いていかなければ・・・少なくとも・・・こうは・・・。」
 涙とともに流れ消えんのみ。
 無情の空間。
 そこ彼罰するものすらなき。
 「ネージュ・・・俺は嘘つき野郎だ。俺はお前を護れなかった。」
 激しき呼び掛け。
 だが答えなき。
 熱き焔。
 アインの身焼き苦痛に悲鳴すらけして出でぬ。
 変わらぬ街並み見上げれば、すべて夢の如しなり。
 だが儚き幻容易く崩れん。
 視線再びネージュへと・・・。
 寂れし通りただ伏せし屍。
 否、ネージュなり。
 涙の雨に再び濡れつつ、アイン腰手へと手を伸ばしゆき。
 「せめて・・・安らかにな。」
 輝くそれこそ魂の翼。
 手の平に乗りし小さき神像。
 それ彼女へとただ近づけゆいて、
 「って・・・何やってる。」
 涙声で小さく苦笑、だが思考流れ出し容易く雨降らす。
 「・・・・・・・・。」
 沈黙の中、巡る思考すべて自ら滅ぼせしもの。
 アイン暗闇に捕らえられ魔へと堕ちゆくそれだけのみ。
 だが絶望時折、光生み。
 掴むか否かはけして分からぬ。
 小さく儚きその光。
 アインの心、光へ疾駆。
 そこにて生まれし速き閃光。
 涙止まりその先見やる。
 だが曇りゆくのもまた瞬時。
 (今さら・・・頼るってのか。)
 光は惑いそれになりた。
 (だが・・・仕方ねえ。)
 ネージュへ歩み寄る。
 だが壁重き。
 「仕方ねえだろうが!」
 叫び自ら戒めそのためのみに・・・。
 「そうだろうがいくしかねえんだ。」
 叫びと裏腹、身体動かぬ。
 心の虚勢誰も聞かなき。
 「ふざけんじゃねえ。ネージュが助からねえだろうが!」
 奮起、逆流、そして相殺。
 それに怒り芽生え出さん。
 「ふざけんじやねえ俺の大馬鹿野郎!」
だが声、心のみなり。
 葛藤激しき身体は硬直。
 「いい加減にしろ。俺はネージュを助けてえ、約束を果たせなかった俺を罰してもらうため、いや第一にネージュが好きだ。俺はネージュが好きだ。そうだ会って3日なのに愛していた。」
 叫び上げん。
 誰も聞かぬ声。
 だがそれ幸いとは思えぬ。
 「・・・これで良いだろうが!」
 その腕ネージュ強く抱えん。
 重く伝わる冷たき身体。
 それが絶望煽りゆく中、力込め持ち上げんば、ただ疾駆。
 走る激痛忘れただ疾駆。
 「待ってろ・・・絶対助けてやるからな。」
 すべての邪念振り払いつつにただ前見て走る。
 そして精神集中させゆきて・・・。
 「光翼翔!(シャイン・ソニック)」
 放つ言葉・・・だが、構成霧散。
 「くっ・・・」
 だがなお駆けゆかん。
 止まることなど出来しわけなき。
 再び感情捨て去りて、
 「光翼翔!(シャイン・ソニック)」
 だが崩れし構成、魔力のみが流れゆく。
 「畜生、何で出来ねえんだ。」
 荒れた息にて天へと叫ぶ。
 儚く消えて重き一撃跳ね返るのみ。
 「・・・光翼翔!(シャイン・ソニック)」
 だが消え去りゆくのみその魔法。
 「ええい焦るんじゃねえ。」
 だが立ち止まれず同じ街ただ駆けゆくのみなり。
 行き交う人はなお無表情。
 それすら怒りに拍車駆けん。
 再び構成、だが今度容易く消えん。
 震え走るつつにそれ鮮明なり。
 「ええええいふざけんじゃねえ。この俺が何で魔法を使えねんだ!!!」
 だがその焦りなお構成荒く、使い慣れた魔法だろうとも紡ぎ上げることすら今は出来ぬ。
 「えええふざけんじゃねえ!!!」
 圧迫感も、汗も足の苦痛もすべて忘却、走る中、叫びのみ止まらず。
 「いい加減に・・・しろ。」
 捨て去り芽生えること必死に否定。
 そんな葛藤、すでに構成の余裕すらけしてなき。

 ――7:光――

 (我の名を呼べ・・・)
 「うるせえ!」
 突如聴こえしその声否定。
 (我の名を呼べ・・・)
 「ん・・・。」
 だが2度目に怒り冷めゆかん。
 だがなお残る微かな負の気。
 それかぶり振り捨て、地蹴り飛び上がる。
 風感じし鳥、自由なる鳥、今羽ばたかん。
 光の翼、それを背に付け、今天疾駆しゆく。
 瞬間輝き、白き聖なるその光。
 神殿の今や儚きそれでなくに、小さくそれでも激しく強き。
 そんな白き輝き生まれん。
 紡ぎ上げ掛けし構成――それは今消え去りて、新たなる魔法へ昇華せし。
 (ネージュを助ける。・・・そうだ。それにはこうするしかねえ。)
 大空、アインは今そこにいる。
 遥かな天、何よりも眩き、そして昏き。
 聖なる次元のその御空。
 「魂の翼よ!救済神コノワタよ!!」
 唱えた。
 否定せし神の御名を、拒絶せし神の御名を・・・。
 「ネージュを・・・俺を救う翼を出しやがれ!!」
 救いの神――死を・・・三神の最後を司り最下にありて頂点なる神。
 だがその救い死だけだろうか・・・。
 風は鮮明なままに現実(リアル)へと・・・。空のその下、街が見えし。
 無機質な街だが輝き残る街。
 「感謝するぜ、コノワタ君よ。」
 握り絞めし、≪魂の翼≫。
 それ輝かん。
 虚ろなる翼、だが安堵な何より強く占めし。
 すでに受けし傷も不思議と消え去りた。
 凄まじき魔力のその奔流。
 凄まじき気遣い。
 ・・・それにもまた救い覚えし。
 「ワレハ、コノワタデハナイ。タマシイノツバサダ。」
 「分かったよ。魂の翼君。改めて感謝するぜ。」
 その翼、風の如くにそして向かう。
 消え去り、地に墜つる。
 それすらも優しきなりた。
 覚醒よりも遥かに優しき。
 「さて・・・着いたな。」
 だが輝きに再びヒビ生まれ始めし。
 その黒き門、白亜の館、それ眼前にし・・・。
 「ココカラハ、ソナタニマカセル。」
 「おいっ!」
 魂の翼、それ光消えし・・・。
 「おいっ!」
 ネージュ持つ手もいつの間にかかくも疲弊。
 千切れんほどに張り詰めし。
 寒風すらも今や鮮明、小さく震え掻き消して踏み出す一歩だがそれ止まる。
 震え・・・それこそ脅えなり。
 怒り半ばも事実受け止める。
 だがその感情も即吐き捨てし。
 (親父が恐えわけねえだろうが!)
 かぶり振り進まん。
 赤き突起に伸びゆく腕。
 だがしかし激しく震え拒絶せし。
 「ええいいい加減にしろ!」
 小さく遠きそんな境界。
 虚ろな壁面それでも明白。
 「ふざけんじゃねえ。」
 吐き捨てる間もネージュの魂削がれゆかん。
 「えええい、もういい加減にしろ!!」
 叫び上げ、腕伸ばし。
 心臓凍りつき、串刺しされしよう。
 震えは強く思考は希薄なり。
 「ニャーン♪」
 そして脅え終わり、恐怖より逃げられぬそんな狭間。

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13414冥王の騎士4:祈りの結末:25章:雨音激しきD・S・ハイドラント 2003/2/28 12:43:58
記事番号13413へのコメント

 静寂――今はそれ浸透し、4人ともただ腹部の重きに耐えしのみ。
 だが安堵に焦りも消え去りゆき、安らぎに目蓋も閉ざさん願い。
 だがそれ破る声、
 「ニャーン♪」
 彼方より響きし猫鳴くその声。
 だが鮮明すぎてけして獣にあらぬその音。
 「誰か来たようだな。」
 静かなる声。
 だが明鏡止水に波紋浮かばせ、立ち上がる音冷たくも強きなり。
 「誰かしら。」
 連なる波音。
 微かな輝き。
 「まさか・・・あの坊主だったりしてな。」
 続きて笑み浮かべんはガーヴなりた。
 「まさか・・・あの子、ここ父さん嫌ってるみたいだし・・・。」
 「ほう・・・まあ俺も苦手だがな。」
 どこよりか来る殺意感じずにガーヴなお笑み強めゆかん。
 エルも同調。
 震えつつにも・・・。
 「俺達も見にいくか?」
 「そうね。」
 ブルに連なり、ガーヴ、エル立つ。
 「ほらシェーラもいくわよ。」
 眠りの境地に見えしほどに虚ろな視線のシェーラ水浴び、
 「えっあっ・・・はい。」
 惑いつつに立ち上がりて、2人とともに小走り始めん。
 
    ◇◆◇◆

 冷たき視線。
 定まらず揺蕩(たゆた)う。
 対峙せし視線は同じながらも安定せした。
 沈黙張り詰め、呼吸の音すら互い鮮明。
 静かな吹雪絶え間なく吹かん。
 (・・・あれってもしかして)
 (・・・まさかこんなことになるとはな。)
 密やかな声出せし2人。
 そしてシェーラ陰にて見詰めし光景――。
 「・・・アインか。」
 止みた風のその後に放つは明らかなる侮蔑。
 抱えるものすら眼中になき。
 「・・・親父。」
 返す言葉。
 だがアインのそれ、隠そうとも脅えは強き。
 震える全身押し込め全力。
 視線移ろうその中の激しき戦い。
 否、一方的。
 「なぜ今さら戻ってきた!」
 叫び激しき。
 余波なき刃、静かなる声。
 だがどこか哀しき。
 首振るう。
 そこより発する声への躊躇い。
 すべて打ち消し、
 「わしはお前を神殿に突き出さなければならないのだぞ。」
 アイン言葉返せずに打たれしそれのみ。
 哀しむ声に・・・。
 「そんなことは・・・したくない。・・・したくないんだ。だが今は・・・」
 涙はなくとも確かな哀しみ。
 声は重くもどこか震えあり。
 「・・・ネージュを・・・」
 そんな中に小さく返す声。
 震え。
 それあろうとも、波紋残す明白なる声。
 ただ脅えに小さく萎縮され。
 「・・・何か言ったか。」
 穏やか取り戻せし。
 だがすべて拭い去ることけして出来ぬ。
 哀しみの隠れ家、それ明白なり。
 だがなお声、煌く刃の如く射抜く。
 「・・・ネージュを・・・ネージュを助けてくれ。」
 震撼せしはアインより世界へ――凍れる沈黙辺りへ浸透。
 そして輝き、だがそれ曇り。
 そう確かなる雨、明らかなる落涙始めし。
 「・・・ふん。」
 ブルただそれ振り捨てん。
 シェーラもガーヴもエルすらも震え、そんな世界に置かれしつつに・・・。
 「・・・なあ助けてくれ。親父・・・こいつを助けてくれ。」
 縋る思いで激しく泣かん。
 熱き落涙。
 儚く散りゆく。
 そんな中もブル冷たく見詰めんのみだ。
 「・・・わしにどれだけ迷惑が掛かったか分かっているのか。」
 なお冷たき。
 むしろ哀しみさえ消えし。
 「それは・・・」
 詰まるアインを心で嘲笑い。
 「死んだ人間は還らない。大司教様は還らない・・・。あの方ははまともな人間だった。」
 冷酷に染まりしブルの眼光。
 アイン震えなお増すそれのみ。
 「分かったか。それが定命のものの掟だ。」
 瞬間伝わる戦慄。
 それ、エルとシェーラに襲い掛かりし。
 「それは罪だ。だからわしは出来ん。分かったな。」
 踵返しブルは去らん。
 アイン、ネージュ抱かえただ呆然と立つ。
 そしてブルの言葉を何度も反芻。
 「畜生!」
 そして虚空へと叫びした。
 生まれるは涙。
 熱き雨、降り注ぎし。
 「・・・ネージュ・・・」
 なお抱えしままの冷たき美女。
 その重みにて自らへ罰。
 だが羽毛ほどの苦にもならぬ。
 「ネージュ!!」
 嘆き叫ぶも静寂覆いむなしく消えんのみ。
 その連なりも貴重なる時裂きゆくのみなり。
 「ネージュ・・・・・。」
 涙、声とともに拍車掛かりて、
 「・・・やっぱり俺はお前を護れなかった・・・」
 アイン倒れ込む。
 ネージュ寝かされ、その頬熱き涙打ち付けし。
 彼女のそれと違いてただ虚ろなる水。
 アインの涙はけして止まらず。
 ネージュの魂けして還らず。
 それが隠れし3人の心打たんばその瞬間。

 (あの馬鹿!)
 沈黙重き凍れる世界、エルは駆け出し始めん。
 ガーヴの腕も捕らえられず。
 「アイン!」
 叫びた。
 泣くのみのアインへ叫びた。
 強き激情一度にぶつけ。
 「アイン!」
 「ネージュ!」
 そして叫び重なり。
 共鳴の瞬間アイン半ば晴れ、そして見上げんエルの美貌。
 それ美しきと感じんことはけしてなかれども。
 「・・・エル・・・。」
 小さく儚き震えし声、だが幼き頃ほど輝いていた。
さながら雨上がりの天に咲く虹なり。
 「・・・私がやるわ!」
 光あれど極寒なる弱き弟眼前にし、100歳違いなる義姉エル、ネージュの脇に屈み込みし。
 アインと向かい合うように・・・。
 「・・・エル。」
 震え半ばアインより去る。
 エル笑顔満面にし、
 「お姉様に任せなさい。絶対に生き返らせてあげるわ!」
 輝く白光。
 月の優しきその慈愛。
 悪魔でなくに聖なるその月。
 さながら運命神の聖筆なりた。
 「出来なかったら・・・殺すぞ!」
 涙堪えつつその一言、だが言葉終わりて輝き地へと――。
 「・・・出来なかったらなんて考えちゃだめ。」
 優しく叱り表情激変。
 「還らざる汝の御霊、まだ救いは早く、それはむなしい、還るがいい、それが汝の救いなり。」
 優しく激しきその呪文。
 凄まじき力、そして優しきその力。
 内にて胎動。それ鮮明になりゆきて――。
 「魂還!(リヴァース)」
 四方八方より光、その空間にそれは満ちゆき、輝き絶頂。
 恐るべき量の魔力。
 アインのすべてより遥かに強き。
 「・・・えっ・・・」
 だがその光消え去る瞬間、震えし声。
 不意に焦燥。
 エルに見し女神そこにて崩れ去らん。
 「・・・失敗しちゃった。」
 笑顔。
 満面の笑顔。
 上辺だけだが輝かしき笑顔。
 哀しみ誤魔化す凄まじき笑顔。
 「・・・あれ?殺さないの・・・」
 挑発的にも思えしもアインそれに左右されずに、
 「・・・死にてえのか?・・・」
 冷たき眼光。
 だが侮蔑などなき。
 「・・・ネージュみてえに哀しまれてえのか・・・」
 だが不意に生まれし疑問。
 エル沈黙の中、アイン向き変え、そして駆け去らん。
 その背小さくなりゆくは早き。
 エルただそれ見詰めんのみ。
 「・・・無理だった・・・」
 ネージュの傍ら虚空見呟く。
 そこへ駆け寄る2つの影、だがけしてその側いけぬ。
 「・・・助けられなかった・・・」
 涙それすらエルにはありた。
 「・・・あたしもまだまだなのね・・・」
 溜息とともに流れ始まり。
 シェーラ達との狭間の障壁、今、鮮明となりゆく。
 それ以上にシェーラに刺さるは、烙印たる虚ろな刃。
 生き返りしものそんな烙印。
 「・・・エル!助けられないの!?」
 そう思いた瞬間にシェーラ飛び出し、自らでもそれ信じられぬ。
 「・・・シェーラ・・・」
 振り向くエルはなお涙。
 そこにて勢い憚られしも、それでも離れること出来ず。
 そして瞳は訴え止めることあらぬ。
 「・・・無理・・・なのよ・・・」
 震えなお増し視線すらシェーラ見れぬ。
 「・・・魂は・・・すでに消えてるわ・・・だから無理なのよ・・・」
 衝撃なお打つ言葉出ぬも表情雄弁。
 自らのみ生き返りたその罪悔いた。
 「・・・でも・・・私は・・・」
 ・・・小さく儚き弱き声。
 「・・・分かるわよ・・・それくらい・・・だけどあなたには・・・やることがあるでしょ・・・」
 だがそれもエルの言葉に崩れ去り。
 「とにかく今は弔いとアインを連れ戻すことが先決よ。」
 シェーラ、エルの変化に素直に笑いた。
 「でもアインがどこにいったか・・・」
 恐る恐る声・・・エルの輝きに気圧されか、そうでなくば自らの愚かさに気付きしゆえか、否、言葉紡ぐのが苦手でありた。
 そうそれなり。シェーラ思い捨て去りて、エルの視線光に満ちゆくことただ眺めん。
 一瞬でありながら長き時。
 「心配いらないわよ。それよりあなた何か隠してるんじゃない?」
 優しき蛇、穏やかながらもそれは蛇なり。
 だが笑顔のその妄執けして不快に思えなき。
 「そっ・・・それは・・・」
 「ふふふ結構可愛いわよシェーラ・・・ほんと、苛めがいのある娘ね。」
 と、凍る少女軽く小突かん。
 困惑にシェーラ震え逃げることかなわず。
 蛇と蛙、だがそれもまた輝きし世界の中では、微笑ましきこだりた。
 だがそれ不意に曇り、
 「てめえはアホか!」
 暗き影、巨大な剣、エルへと吸い付く。
 衝撃音。
 それ鮮明なり。
 「いった〜い。何するのよ!」
 憤慨浮かべ振り向かんば、呆れ顔にて棒立つガーヴ、剣空中制止せし。
 「てめえらアイン追うのが先だろうが!」
 叫びにエル顔落とし、吐息1つ。
 「・・・ごめんなさい・・・。」
 昏き声にて一言放てば、頭そして上げ、そこには笑顔。
 「でもさすがガーヴ様ってところね・・・きゃあああ素的♪」
 飛び掛るエルが見えしは冷めた床。
 それ急接近にて、叫びの間もなく素早く激突。
 「とっ・・・とにかく・・・アインは・・・」
 立ち上がりつつ言葉紡ぎゆく。
 「アインは・・・神殿にいったわ。」
 「神殿だと!」
 すかさずガーヴ返し放ちし。
 「そうサンチーンミの総本山、『セント・フカヒレ大神殿』に向かったはずよ。・・・あの子の性格からして多分間違いないわ。」
 「間違いねえのか多分なのかはっきりしやがれ!」
 ガーヴにあるは確かなる焦りなり。
 シェーラだが心になぜと問いて見るも、返りし言葉。
 幻想か現実、極端すぎて満足できぬ。
 「間違い・・・ないわ。」
 首元掴み掛かりしガーヴへ苦しげに答え、
 「あの光ってた場所よ。街の一番奥、分かるわね。」
 「ああ。」
 ガーヴ素早く踵返さん。
 焦りの色は隠せど隠れぬ。
 「あたしは・・・この娘の方をやっとくわ。」
 いつしか焦り自ら薄きと、それに気付きし。
 アイン思えど、フィブリゾ想えど、それ遥か遠きなり。
 「とにかくいくぞ。」
 だが葛藤する中、ガーヴの腕触れ、熱伝わらん。
 上気せんこと確かなりてもガーヴ想うほどにはけして至らぬ。
 (・・・何で?)
 先ほどよりのすべての焦りすでに消え去り研ぎ澄まされん。
 そして疾駆、足取り軽く焦るガーヴに比べ遥か。
 冷たき風すら1つ1つ感じし・・・。
 (そうか・・・私強くなったんだ。)
 思わぬでなく思いてもそして冷静とならんその心。
 はや自ら手にしたであろうか。
 すべて遠き、光と闇ともつかぬもの。
 すべてしまいただ駆けん。
 「ちょいと飛ばすぜ。」
 ガーヴのその声、シェーラ頷く。
 「飛べ闇の翼よ!」
 魔力の匂いどこか邪悪で漂う違和感。
 だがそれすらも今は優しき。
 浮遊感――だが恐れはけしてなき。
 街並み、やはり無機質、不気味で不可解。
 そんな街並み見下ろしつつに白銀の飛輪目指して駆けゆく。
 「あれ・・・だな。」
 その前方同じく飛びし影、黒き人影降り立ちし。
 そして消えゆくは銀の白亜の神殿。
 「急ぐぜ!」
 風なお強まり、彼ら蹂躙。
 だがけして苦でなく。
 躍動に希望思うのみ。
 ガーヴは焦りいくばかありたもの・・・。
 千獣山脈――始まりの山。
 その小さき山の半ばに聳えし魔力の輝き持ちし神殿。
 『セント・フカヒレ大神殿』彼らの前にそれはありた。
 巨大なりし聖なるその地。
 静寂の歌、今も聴こえし。

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13415冥王の騎士4:祈りの結末:26章:呪いの歌D・S・ハイドラント 2003/2/28 12:46:44
記事番号13414へのコメント

 静寂、荘厳――今それ疎し。
 空間は白き、ただ白き。
 そのホール、すべてが白に染まりし不気味な空間。
 氷よりなお心冷まさす。
 「出てきやがれ狂信者ども!」
 叫ぶも沈黙覆い隠せし。
 アイン、瞬時に地蹴り駆け出す。
 正面の階段、石化受けし如きの白石細工。
 淡々と音たて風の如くに駆け上がらん。
 正面の扉、開けしそのまま疾駆続けし。
 白き廊下ただ闇のみ見、走り。
 重き両開きの扉開きて広がる空間。
 蘇りし光景。
 3年前なる赤きその色。
 だが動ぜずに幻払わん。
 「奇遇だな・・・。」
 静寂――まさしく歌う如きの静寂そこに、数多なる席。
 すべて白く無機質なりて、最奥の教壇、そこにのみ気配。
 「我は・・・運命だと思いたいがな。」
 昏く、重く、枯れて、風化せしその声。
 1人の老人――。
 しわがれし白面、美しき赤眼。
 輝く乳石の如き髪左右に流せしその老人。
 純白の法衣、そこには黒、金、乳白の3つの輝き。
 そして背には巨大なる紋章、サンチーンミ教三神のシンボルたるそれ――。
 「運命だとか救いだとか残念だがてめえの教えは全然意味が分かんねえんだよ!」
 アイン、叫び散らすも容易く絶えし、
 「そんなことはどうでも良い。我にも分からぬことだ。」
 溜息。
 ひどく疲れ感じられん。
 「俺はただ3年前に殺し損ねたてめえを殺しに来たんだよ。もっとも理由なんぜねえけどなあ!」
 叫び消えるのみ。
 壇の老人かくも不動。
 「それも・・・運命、努力が報われここで再び会えたのは神の御力、教えではそうなるな。まあ努力したのは我等の方だがな。」
 視線より感じし魔力。
 刃の如くとそう思えし。
 「てめえやっぱり人間じゃねえな。」
 「当然だ。ただの人に神を崇めることが出来ようとも神の存在を知ることは不可能。」
 突如に感ずる魔力それ現実へ・・・。
 「**天駆けし翼なき光の鳥**」
 響き渡る音声。
 それアインの脳内より生まれ出し。
 そして彼の元へと走る光線。
 一条の光、跳躍にかわし、
 「光翼翔!(シャイン・ソニック)」
 叫び姿飛び立たん。
 それ風の如くに虚空より老人の眼前に至り。
 即座に外すペンダント。
 「そうだ。そのそのために救済の宿し身は待機させた。アイン・・・お前と戦うために・・・。」
 「そうかよ。」
 吐き捨て鎖の一撃繰り出す。
 「**始まりの民の残せし剣**」
 音声響きしその直後、鋼衝突し合わん。
 「てめえ!」
 老人の両手に掲げし剣、虚ろに近き輝き放つ光。
 棒状となりアインの鎖叩き落とせし。
 「トリュフ・・・それも生粋のやつだな。」
 悪魔の鎖なお振るわん。
 白銀の風、虚ろに消え去りし。
 そしてそれ蛇となりて巻き付かん。
 だが輝き消えてすり抜けゆく。
 老人背後へ跳躍しかわす。
 「そうだ・・・我は、サンチーンミ教、教主キャビアは高貴なるトリュフ族だ!」
 虚ろの刃走り、踏み込む。
 アイン背後へかわし鎖にて払いし。
 「爆裂弾!(メガ・バースト)」
 「**常闇の王の吐き出せし焔**」
 強烈なる焔ぶつかり合いて世界震撼。
 だが明らかに底見えて来んアインの魔力。
 「アイン!」
 遠くより声。
 主、見知る少女。
 だが振り返ることなく。
 「援軍が来たようだ。てめえの負けだな。」
 勝ち誇りし笑顔。
 教主キャビアへ浴びせ掛けん。
 「そうか・・・面白い。アインよもう1度訊く、我とともに生きぬか。神の道でなく背約の闇の道を・・・」
 「だからその意味が分かんねえんだよ。教主なら神信じんのが常識だろうが!」
 剣と獣ぶつかり合いて激しき悲鳴。
 「我が・・・トリュフでなければそうしたかも知れんな。」
 「おい2人ともこいつは敵だ。援護しろ!」 
 剣再び受け止め、背後振り向き叫ばん。
 だが2人惑い立つのみ。
 「トリュフ族が神信じんのは法律にでも反するってか。」
 だがそれもすぐに諦め、さらなる教主の一撃受け止めん。
 「違う・・・神は我等を・・・我等を許さないと・・・だから我等は罪を少しでも・・・とあの男が・・・ゼロスが・・・」
 巨大な構成。
 それ予感させし。
 戦慄駆け抜け、反射に飛び退く。
 「**祈らぬものへの罰よりの怨嗟**」

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13416冥王の騎士4:祈りの結末:27章:祈り届かぬD・S・ハイドラント 2003/2/28 12:49:10
記事番号13415へのコメント

 教主のその背に燃え上がる焔。
 揺らめくそれはまさしく竜なり。
 幻想の獣。
 すべて焼き尽くせし焔吐くもの。
 圧倒的なるその力。
 燃え滾るそれ今解放されん。
 赤き光全土を覆う。
 焦燥。
 戦慄。
 恐怖。
 絶望。
 ・・・安堵。
 巡りゆかんアインの感情。
 やがてそれすら受け入れんほど。
 熱き風が駆け抜けゆきて、そして蝕まれゆく儚き身体。
 (ネージュ・・・早く会いてえぜ。)
 熱にすでに侵されし。
 死にゆくも一瞬、苦も同じくだろう。
 「透明の異空。」
 だが不意に響くその声冷たきなりた。
 世界に紅蓮瞬時に終えん。
 そして白取り戻せしその世界に映るは1人のその背なり。
 夜色の髪、黒き法衣。
 「「ゼロス!」」
 叫びはアインでなくに背後の2人、主シェーラとガーヴ。
 「ゼロス・・・なぜ我の邪魔をする。お前の主人の望む通りのことをしたつもりだが。」
 驚愕せし教主。
 ゼロスは浮かべしままの笑み絶やさず、
 「アプロス様の命は僕のお願いとは違いますよ。彼等を下手に殺されては困ります。」
 指立て。
 無邪気でそして邪悪な言葉終えん。
 「お前・・・何を企んでいる!」
 焦り強まり叫び上げん。
 だが裏腹に激しき戦慄。
 そしてそれ隠すの必死。
 「大丈夫ですよ。僕がやるのはもっと完璧な方法ですから・・・。」
 「お前如きを信じられるというのか・・・。」
 瞬間ゼロスの視線刺さる。
 薄笑み浮かべし紫紺の瞳。
 だが同時に強大な殺意。
 「そうですか・・・。」
 溜息1つ・・・そして消え去り。
 「ぐっ・・・」
 教主の背後、微笑むゼロス。
 そしてゼロスの腕生やせしキャビア。
 「どうせ・・・あなたに価値なんてないですね。」
 吐き捨て、そして強く笑わん。
 3人ただそれ見やるのみ。
 戦慄の逆風に立ち向かうこと出来ず。
 逃げゆくこともまた不可能。
 「・・・神に救われないのは自業自得。そして僕が助けてあげたのは善意・・・」
 「ぐっ・・・何だと・・・」
 ゼロスのその笑み、邪気の根源。
 そして教主見る目は侮蔑なり。
 「・・・僕は捨て猫を拾っただけ、そうあなたという捨て猫を拾っただけ・・・」
 「**大地の底の狂える巨人よ!**」
 叫び。
 万物に伝わりしトリュフの言葉による魔法。
 「透明の異空。」
 錫杖が鳴る。
 静かな金音。
 激しく即座に消えし音波。
 胸部貫かれつつ生きるトリュフに絶望。
 それ真に浸透させし。
 「・・・飼い主に牙を剥く獣はやはり始末せねばなりません・・・」
 「うっ・・・」
 戦慄き。
 怯み。
 脅え。
 恐れ。
 負の感情が激痛に耐えし教主の構成容易く消し去り、
 「燃える風に 大地は紅。」
 「ぐぎゃああああああああああああ」
 赤く。
 ただ赤く。
 染まりし教主キャビアのその全身。
 それ黒く染まりそして崩れん。
 灰の欠片も宙にて消滅。
 「全く・・・これだから老人は嫌いなんですよ。考えが理解出来ません。」
 そして視線アインへと、瞬間震え伝わり来る。
 「てめえ・・・何もんだ!」
 だが怯まずアイン、その怒声。
 だが所詮はそれ虚勢でしかなき。
 「そうですねえ・・・冥神官ゼロス。伝説の悪魔を復活させる企みを持っている。いわばあなた方の敵・・・になりますね。」
 そして込められし殺意。
 それに沈黙。
 ガーヴやシェーラもそれに同じき。
 以前よりなお放つ恐怖増す青年。
 「とりあえず・・・あなた方には明日の朝もう一度ここに来て欲しいのですよ。あっお仲間皆さんでね。」
 微笑み浮かべんも威圧は消えず誰も反論許されぬ。
 「あっ一応言っておきますけど、この街の人全員、マツタケ・シティの事件と同じ方法で壊滅させた人達を僕が屍操の術で操った・・・可愛い人形みたいなものです。まあノースポイント攻略に向かった騎士団とかキャビアさんみたいなトリュフ、ブリガミアさんみたいな半トリュフは例外ですけど・・・。」
 そして視線、虚空見上げ、即座に素早く見下ろして、
 「逃げ出そうなんて考えた場合、彼等にあなた方を襲わせます。それにどうせあなた方が赴かなくても、世界は確実に滅びます。悪魔は数日で復活しますよ・・・。まあそんなわけで、明日午後までに来てくださいね。」
 ゼロス消え去り残るは静寂。

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13417冥王の騎士4:祈りの結末:28章:照らされし肖像D・S・ハイドラント 2003/2/28 12:51:22
記事番号13416へのコメント

 黒き陰。
 風は荒涼ながらも、濡れた心渇かし。
 潤いと渇きの争いにて哀しみ強く意識させし。
 「本当に・・・良いの?」
 細き弱き脆き声。
 届くあても半ばの希薄なるそんな音だが、
 「・・・何のことだ。」
 返る言葉は刃の如くと彼女思えし。
 それに唐突なりて衝撃。
 震え。
 「それは・・・」
 「わしがこんな女を弔ってやっていることか、それともこんな粗末な方法で良いのかということか?」
 言葉途切れし。
 エルに向けし老人の視線ひどく凍てつき。
 「直接ではないがわしは神殿の人間だ。慈悲を平等に与えるのは当然だろう。それにサンチーンミならば土葬だ。わざわざ業火に焼かれる必要はない。マツタケの 神の教えのようなくだらないものに従うつもりは毛頭ないしな。」
 「・・・そう。」
 その言葉に含まれし強さ。
 それ察知せしブルの視線ひどく恐ろしく思え始めし。
 「まあ良い。適当に墓標でも立てておけ。本当ならそれもいらんのだがな。」
 ブル踵返し去りゆく。
 残されしエルただ埋められし跡見やるのみ。
 その連なりの中、涙は見せぬ。
 だが瞳に映るは確かな追憶。
 短き間でありたろうとも・・・。
 「・・・さよなら・・・」
 聞くものおらぬ寂しき声に、風は吹きて無情に掻き消す。
 「・・・あなたの方が・・・」
 震え・・・。
 ひどく激しく瞳震え、
 「・・・ずっと・・・綺麗だったわ・・・」
 輝き。
 笑顔。
 そして震え増し、零れ落ちゆく美しき雨。
 やや移ろい始めしも、確かな蒼穹。
 それ恨めしき。
 「・・・さよなら・・・ネージュ・・・」
 涙流しつつ、何度反芻せしかその名。
 それ意味するが如くにその涙儚き。
 やがて長き時を生きし大岩。
 長くも儚き彼女と違いし悠久なる岩。
 それへと近づき慈愛と償いの顔見せそして、
 「空裂く翼 風魔の剣よ 切り裂け 闇と光の道を」
 溢れ出し魔力。
 これありても救えぬ命。
 「斬空剣(スカイ・ブレード)」
 呟きは響き渡りて飛びゆく。
 それ永久の巌容易く引き裂きし。
 崩れ落ちんその一画。
 「これ立てておけば大丈夫よね。」
 岩石の欠片。
 その重みも今や何とも感ずることなき。
 裏庭に墓標は・・・1つ増えし。
 
 「・・・ここにいたの?」
 狭き空間。
 虚空見やる老人。
 だが視線は定まりて移ろうことなき覚醒せし眼。
 椅子に座りたブルは唸り浮かべつつエルに一瞥。
 だがそれのみで視線戻し、ただ時流さん。
 「隣座るわね。」
 椅子は2つ。
 窓辺に向かい合えば優しき感触。
 「・・・どうしたの?」
 涙終わりし。
 エルの輝き小さきながらもそれ鮮明なりた。
 涙腺の残る渇きた双眸、その真紅のみ色褪せぬ。
 「いや・・な。」
 小さき返事だがどこか震え、それ受け取りエル口噤まん。
 沈黙流れひどく重き。
 浮かぶはアインとネージュのことと、そして未来。
 後残りしは確かなる違和感。
 「良いたいことがあるなら、言えば良いだろう。」
 ブルとエルの真紅の瞳互い交差。
 そこにて沈黙破れ去り、
 「・・・あっアインのこと・・・許してあげられない?」
 震え。
 脅え。
 そして慌てしその言葉。
 動揺増しゆく。
 それ冷たき視線で見るのみ。
 終わりてエル微かなる上気。
 ブル逃さずそれ笑み。
 「・・・許す許さないもわしはもとより勘当のつもりも何もない。」
 輝き満ちしそんな声。
 昏き闇はそれにて晴れゆく。
 「えっ・・・」
 「わしは蘇生を断ったのみで、アインの帰還を拒んだわけではない。・・・確かに大司教様を殺しはしたが、あいつの帰りは歓迎すべきだ。わしの言えることではにないが、お前はそのために家を出たのだろう。」
 「・・・そう・・・だったわね。」
 笑顔、そして白きし笑顔。
 「・・・まだ帰らないのか?」
 溜息。
 昇り焔の如くの揺れと短き命。
 容易く散らして天に消さん間に、
 「せっかち過ぎるわよ・・・父さん。」
 「・・・そうだな。」
 ブルも輝き強まりゆきてまさしく家族それ思わせし。
 長きの風化の果てに取り戻せし家族の温もり。
 そんな構図。
 優しき停滞は長く続き。
 そして今・・・。
 「ニャーン♪」

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13418冥王の騎士4:祈りの結末:29章:断罪の前にD・S・ハイドラント 2003/2/28 12:54:59
記事番号13417へのコメント

 食卓の席、新たに増えしはアインなり。
 遥かなる昏き陰。
 それでもなお強く内に隠し、
 「本当に・・・良いのか?」
 なお冷たきその声にブルどこか哀しげに、
 「当然だろう・・・。」
 「そうか感謝するぜ。」
 そして笑顔、
 「親子だろうが・・・」 
 微笑み返さん。
 シェーラ、アインにひどく近きも、その境界かくも鮮明。
 それ無情なり。
 家族の温もりそこにありし。
 だが寒風どこよりかそして感じん。
 「どうした?」
 突如届く声。
 向けられしはシェーラなりと彼女瞬時に察知せして、
 「いえ・・・何でもないわ。」
 「そうか・・・。」
 ガーヴの声は温かくも心の冷気なお解けぬ。
 「ところで・・・さっきは何しに家を出たのだ?」
 虚ろの壁越し。
 届きた温風も今はどこか吹雪混じり、
 「それは・・・」
 アイン口篭る。
 シェーラそのこと話さんと思いしも、心のどこかで掻き消されし。
 「まあ良い・・・教主様と決着でも付けにいったとか、そんなところだろう。」
 刃混じりた一陣の風。
 颶風の勢い持ちて滑らか。
 アインの容貌、暗雲満ちゆき。
 「・・・降参だ。」
 それにブル笑み浮かべし。
 だがどこか作りたそれなり。
 沈黙流れし。
 シェーラどこか輝き戻るの感じて安堵。
 「ところで・・・教主が背約とか何とか言ってたな・・・それにゼロスってやつが・・・。」
 突如に語られんアインの言葉。
 それ悲哀内に押し込めんためか。
 だがそれにシェーラ刃の如くに集中させし。
 「・・・ゼロスか。」
 溜息。
 熱くも冷たくもあらぬ渇きし溜息。
 虚空に生まれ虚空に帰す。
 そして遅れて震え。
 激しき戦慄外に漏れしほど。
 「何なんだ?そのゼロスってのは?」
 恐るべき力持つの分かるもその脅えそれのみと思いがたし・・・。
 「・・・ゼロスはな・・・」
 躊躇い生まれし。
 言葉を堪えつつ沈黙と放出との葛藤。
 短き戦火のその果てに――。
 「ゼロスは・・・120年前の大魔王出現時に1人で数百にも及ぶトリュフを倒した男だ。」
 戦慄――恐ろしき力なり。
 エルですらも苦戦せした魔道士種族。
 その数百を倒せし力。
 「おい、ゼロスはアプロスの手下じゃねえか。確か大魔王バナナプリンとは敵対してるはずだが・・・トリュフ倒す意味あんのかよ。」
 その力に震撼せしシェーラ。 
 だがガーヴ平然と言葉返せし。
 「それにトリュフとつるんみてえだぜ。仲間の仇に力貸すとは思えねえけどな。」
 アインもなお強き反論。
 「ゼロスの意思は知らんよ。・・・ただやつはサンチーンミ教の裏の教主だ。」
 「何だと!」
 アインの散らせし声。
 父への畏怖も消え、ただ驚愕。
 「トリュフはもともと神の敵なのだ。悪魔の僕ではないがな・・・。」
 「ところで何でトリュフが神の敵なんだ?」
 すでにシェーラ蚊帳の外なり。
 だが食い入る隙なくただ言葉訊く。
 絶望打ち消しつつに・・・。
 「・・・アイン、カタート神話は知っておるな。」
 「あっああ」
 慌てしも即座に肯定し、
 「悪魔に襲われた大昔の種族の生き残りが精霊王に祈りまくって、三神になって悪魔を倒すんだよな。」
 淡々と話し終え。
 吐息の後ブルの瞳に半ば脅えん。
 さすらば言葉の兆し・・・。
 「概ねそんなところだ・・・だがその大昔の種族、本当に絶滅したのかね。」
 シェーラにも届きしブルのその声。
 思考巡れば、閃光煌き。
 ・・・だが言葉出ぬ。
 それにより沈黙。
 「・・・まあ良い。大昔の種族その生き残りは確かにいた。だが生き残りがいるとしたらどうなのだ。」
 「・・・そうか。」
 アイン頷けばブル視線そこ向け。
 黙せしのみで語れと訴え、それ伝わりゆき。
 「つまりは逃げ延びたやつがトリュフなんだな。」
 さすらばブルに輝き生まれ。
 「そうだ・・・そして戦わずに生き残ったトリュフ族を三神はひどく恨んだ。」
 「まるで事実みてえだな。」
 アイン微笑まんばブルにも伝わり、
 「これは事実だ。・・・恐らくな。」
 「それより話大分ずれてるんじゃねえか。」
 ガーヴの槍になお2人笑み連ならせ、
 「そうだったな・・・。」

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13419冥王の騎士4:祈りの結末:30章:震えは激しきD・S・ハイドラント 2003/2/28 12:59:24
記事番号13418へのコメント

 「ところで明日の朝、ゼロスが俺達に神殿に来いって言ったんだが・・・」
 輝きに拍車掛かり、それに便乗。
 「そうか・・・相変わらずわけの分からねえやつだ。」 
 吐息昇らせしその表情は複雑怪奇なり。
 動揺。
 戦慄。
 恐怖。
 ありつつ。
 覚悟。
 決意。
 それでいて安堵。
 悲哀は表にけしてなき。
 「わしもいかせてもらおう。」
 そして出でん言葉に残るは戦うもののその感情なり。 
 「でも親父いくつだ。外見通りじゃねえだろ。」
 ブル薄笑み上塗りて、
 「トリュフになった時の外見がこれだからな。100はとうに越えておる。まあ教主様などに比べりゃまだまだ若いがな。」
 「そういやあの爺さんいくつくれえだ?」
 訊きつつアイン、悪魔握り絞め、そして時刻みゆかん。
 「・・・・・少なくとも1000は越えておるな。悪魔の時代からとは言わんも 第2、第3世代・・・白トリュフと呼ばれる長寿のトリュフだな。」
 それに感嘆アイン浮かべ、
 「凄えな1000年以上生きてあれかよ。」
 「まあわしらのような半端もののメッキは200年と持たんだろうがな。」

 シェーラなお入れぬこと悔やみつつ、それでも心落ち着け快方に思い。
 そして焦り沈めゆく。
 だがそれもなお誰も気付かぬ。
 アインもガーヴもただブルのみへ・・・。
 やがてはその感情こそ不可解に思えし。
 思考続けんば、上気昇りて即座に打ち消し。
 だが初めの思い止まず・・・。
 瞬間1つの足音に神経鮮明。
 顔を上げんば、
 「ほらシェーラ、何どんよりしてんのよ。これ食べなさい。」
 卓に置かれしティーとクッキー。
 「はっはい。」
 だがその腕進まず、時折エルの方向見つつに、時刻みゆかん。
 安堵と脅えを常にあわせ持ちつつに・・・。

 「おいエル・・・俺のところのこのわけ分からねえの何なんだ?」
 ガーヴ自らの席に置かれし虹色に染まりしクッキー指差す。
 不安と恐怖抱きつつに・・・。
 「ああガーヴ様特別用の秘密のクッキーよ、食べて見て。」
 だがガーヴそれ不安気に見詰めんのみ。
 「ところで父さん・・・。」
 エル、ブルに視線変えんば、ブル緩慢ながらも速くに振り向き、
 「何だ?」
 「・・・街の人何か変だとずっと思ってたんだけど何か知らない?」
 言いつつ自らのクッキー貪る。
 不意にシェーラに悪寒吹き、アインとガーヴより憤り生まれん。
 世界が暗く寂しく冷たき。
 そして何より恐ろしき。
 「あれ?どうしたのみんな。」
 外した視線3人へと疑問投げ掛けし。
 だが同じく沈黙。
 どこか安堵ありたもの。
 (恐えからそれ訊きたくなかったんだよ。)
 (ったく、無神経馬鹿女が!)
 (・・・・・。)
 三者の思いこれなりた・・・。
 「で、どうなの父さん?」
 沈黙・・・。
 長き沈黙。
 光なきその世界の沈黙重きと感じしはエルでなくに他の3人のみ。
 「・・・実は昨日突然、使用人達が全員死んでしまってな。どうやら強力な精神魔法か心術を街単位で受けたようだ。すぐに埋めておいたが・・・」
 驚愕。
 恐怖。
 既視感。
 そして理解。
 ただアインのみ内に輝き。
 シェーラ逃さぬ。
 「まさかマツタケ・シティと同じみたいに?」
 「そうだな。」
 震えつつもエルより冷静なる声にてブル頷かん。
 シェーラ含む3人に同時に感じし。
 ――それは恐怖。
 「おい、親父・・・ってことは・・・ここ幽霊とか出たりしねえよな・・・。」
 震えつつもそれ隠さん努め。
 それのみはありてそして微笑み・・・。
 そしてガーヴも沈黙ながら確かなる震え。
 シェーラ2人ほどに恐れられぬものの、なお戦慄身体駆け巡る。
 「安心しろ・・・霊は存在しない。すべての魂はコノワタ神の御元へいく。救う救われぬは別だがな。」
 「・・・その思考が危ねえ気もしないでもないが・・・」
 だがそれ聞きもせず。
 ブル、クッキーへと手伸ばせし。
 それにエル笑い、そして連なりゆかん。
 シェーラすらも微笑みありた。
 「とにかく・・・明日は決戦だな。」
 「ああ坊主、オネショするんじゃねえぜ。」
 「誰がするか!」
 「はははせいぜい努力しろや。」
 闇との戦い。
 その兆しはかくも輝かしきなりた。

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13420冥王の騎士4:祈りの結末:31章:だが温もりはD・S・ハイドラント 2003/2/28 13:02:25
記事番号13419へのコメント

 恒星でなくとも輝く一時。
 至高の安堵なりた。
 だがやがて闇沈み来るより。
 どこか震えに侵されゆきし。
 昏き世界。
 輝きは戻るであろうか。
 無力な自分。
 戦うこと出来ようか。
 消え去りたい。
 消え去りてすべてなきことにしてしまいたい。
 そんな思い必死に掻き消し。
 それでも輝き常に浮かべゆく。
 だが光そのままに受け入れられず。
 すべて偽りの光なり。
 黄昏が終わりて、世界暗闇。
 彼女の心も反映されし。
 「お風呂沸いたわよ。」
 聴こえし音すら希薄なりて、いつしかただ存在せしのみ。
 「よし俺一番だ。」
 喧騒。
 彼女の耳に届くとも崩れ去りゆくそれのみなりた。
 「何言ってるのアイン。女が先よ・・・。」
 光などもう還りはせぬ。
 黒の太陽握り締め、ただ自ら悔やみた。
 かなうはずなき。
 戦慄やがて絶望へ・・・。
 「シェーラ先入って良いわよ。」
 その声疎し、消えて欲しき。
 一瞬後には愚かな思いと掻き消し去らんも・・・。
 「シェーラ入らないの?」
 震え。
 脅え。
 時経つこと恐れ。
 そして望まん。
 「じゃああたし入るわね。・・・ガーヴ様もどう?」
 輝き一層増したることに憤る自分。
 そして恥じし。
 「・・・誰がてめえなんぞと入りたがる?」
 だがそれもまた楽しげ。
 それ不可解なり。
 震え。
 戦慄。
 脅え。
 恐怖。
 彼女にあるもの彼らになきのか?
 「・・・まあ照れ隠しにしてもひどいわ。」
 やはりは先に待つ闇、感じぬでなきか。
 「何が照れ隠しだ。領にいたガーネットとかならともかくてめえ何かと・・・」
 「まああなた愛人作ってたの?」
 激しさ増しゆく。
 それすべて幸せに思いて、シェーラ複雑。
 「ガーヴよ。今こそ1人に絞るべきでないか?」
 ブルでさえも微笑み浮かべし。
 最期となるやも知れぬ戦い。
 なぜそうまでいられるか。
 「違うっての。俺が侯爵やってた時代の話だそれは・・・にしてもあいつどうしてるかな?そーいや姉貴にルビーっていう全く女の色気のねえやつが・・・」
 不意にシェーラにも生まれし笑顔。
 だがそれ素早く振り払わん。
 今は輝く時でなかろう。
 そうすら思え至りて、
 「まあ良いわ。じゃあアイン、あたしと入らない?」
 「ふっ、ふざけんじゃ・・ねえ、誰がてめえ、みてえな・・・」
 それ見てエル笑い。
 アイン上気明白なり。
 やはりは輝かしき幸ある光景。
 「ふふふ、お姉様の肌見るのがそんなに嬉しいの?」
 「誰が姉だ・・・このバアアが!」
 叫びに一瞬沈黙、世界震撼。
 だがそれに安堵覚えしシェーラ。
 「あっ・・・」
 エルの表情曇りゆきて、
 「ひっひどいわ・・・あたし哀しい!」
 シェーラ、踵返し去りゆくエル見て、それ嬉と思う自らに激しき嫌悪。
 「じゃあ、シェーラはあたしの後でね。」
 だが瞬時に笑顔戻りて言葉放つエルに対し、シェーラ少なからず赤味帯びゆく。
 そしてそれも冷め再び常闇へ沈みゆかん。
 「・・・おい、どした?」
 不意に声。
 どこか優しきそんな声。
 「・・・ガーヴ・・・」
 昏きその顔小さく上げん。
 反応。
 それを恐れつつに・・・。
 「・・・昏えな。」
 その声やはりは温かき。 
 「どうした?おっさん。」
 アイン横槍すかさずいれんば、
 「それへわしに向けてのことかね。」
 ブルそれ反応。
 意味引止めとシェーラ思えし。
 「なっ何言ってんだよ親父・・・あんたはおっさんじゃなくてじいさんだろうが。」
 「宣戦布告か・・・息子よ。」
 冷たく張り詰めせしその声。
 「ああ上等じゃねえか。やってやるよクソ親父!」
 ブル氷ならば、アイン焔なり。
 互い激突だが彼女それ見ぬ。
 ガーヴとシェーラ、向かい合う2人。
 互いのその息鮮明とならん。
 熱同士も伝わり合い。
 近づきゆく2つの美貌。
 ――そして絶頂への瞬間。
 シェーラ激しく燃え盛りし。
 傍より見んば滑稽なれど、2人真剣。
 別世界。
 「・・・欲しいか?」
 「・・・・・・・・。」
 シェーラ沈黙、だがすべて見透かされせし如くに・・・。
 「・・・だめだ。」
 走りし冷気、不安に顔曇りゆき。
 「てめえには王子様がいるだろうが。」
 だがその言葉にすべて掻き消され、それに不思議と安堵生まれし。
 そしてアイン達の言葉、恐れつつ素早く席へと座りて、薄笑み放たん。


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13421冥王の騎士4:祈りの結末:32章:始まりのさだめ打ち破らんD・S・ハイドラント 2003/2/28 13:05:28
記事番号13420へのコメント

 「ゼロス!」
 脅えは変わらず。
 屈辱も変わらず。
 誇りも変わらず。
 ただ怒り強きなり。
 「どうしました・・・姉様。」
 不動の青年の顔は彼女にとりて恐怖の根源。
 「・・・お前、なぜあいつらの始末をしない。アプロス様を倒しかねないのだぞ。」
 さすらば青年邪悪に笑いて、
 「それで良いんですよ。アプロス様は・・・もう生きている必要はない。」 
 「・・・貴様っ!」
 憤怒。
 構えんとせし拳。
 ひどき震え。
 「おや・・・また暴力ですか。学習能力のない人ですねえ。いや・・・獣同然。それ以下かも知れませんね。」 
 「くっ・・・」
 震え怒り。
 内部で増殖。
 だが恐れが拳止めし・・・。
 「・・・僕を殴れなくて悔しい。そうですね。」
 歪みし青年に彼女、思わず退歩せし・・・。
 「ならば・・・僕が変わりに殴ってあげましょう。」
 「なっ・・・」
 驚き焦燥。
 そして向かい来るは、か細き拳。
 「っ!」
 走りし激痛。
 それに耐えんば、
 「きゃああああああああああああ」
 突如電撃走り来し。
 「ふふふ、姉様。今のあなたは無力です。見苦しく僕にたて突くのはもうやめてください。」
 悪魔の形相。
 ゼラスは震えるそれのみと化せし。

    ◇◆◇◆

 すべての光が逆巻き襲う。
 すべてが彼を傷つけし。
 その柔らかなる風ですらも・・・。
 暗黒世界すべてが敵なり。
 (・・・ネージュは・・・)
 輝かせした。
 煌かせした。
 だが離れぬは呪われし宝石。
 美しくそして哀しき1つの記憶。
 (・・・やっぱり・・・)
 訊けぬ言葉、言わぬ言葉。
 優しきか?
 (・・・ネージュ・・・)
 窓より空見上げ。
 そして優しく地へ降ろしゆかんば、見えん輝き。
 月光に映えしそれは墓標。
 (・・・ネージュ・・・)
 何度も呟く儚きその名。
 すでに意味持たぬ哀しき言葉。
 虚ろなる涙。
 美しくなきただの小石。
 紅玉の美麗思いなお拍車掛かりゆきし。
 
 ――アイン。

 不意に聴こえし優しき、儚き、そして美しき声。
 そして彫像思わす絶対の美貌。
 映りて儚く消え去りゆきて、

 ――そんなに哀しまないで

 そして戻らん。
 ただの世界へ・・・。
 (・・・分かったぜ。ネージュ。)
 虚空へ向けて、微笑み放たん。

    ◇◆◇◆

 輝きすべて終わりて、戦うのみなり。
 そしてかならず生き残り。
 そして――フィブリゾ。
 それ最大の輝きなり。
 (勝つ・・・。)
 そして取り戻す最愛の人。
 ・・・考え生まれし激しき熱気。
 (フィブリゾ・・・様。)
 輝き――。
 昇る吐息は自信に輝く。
 (必ず助けます。)
 振り返りはせぬ。
 それ哀しきのみなりし。
 だが明日にならんばすべて還り来る。
 言いようもなき輝きに満ちしシェーラ、暗き世界にただ光見ん。
 心壊さぬよう入り来る魔。
 撃退しつつに時流さん。
 焦りも脅えも恐怖もなき。
 旋律さえもまた心地良きなり。
 勇みし勇者。
 それ今自分と、確信せしは太陽に握りて・・・。
 いつしか世界混沌と化し、生まれし世界は嫌にもリアル。
 眼前にゼロス。
 そしてアプロス。
 すべて斬り伏せん破邪の剣にて・・・。
 グリル持つシェーラ。
 無敵なりて、そしてフィブリゾ救い上げし。
 すべて終わりた・・・。
 シェーラ安堵。
 そして2人見詰め合いて・・・。
 (・・・シェーラ。)
 (・・・フィブリゾ様。)
 少年と少女。
 そして肌寄せ合いゆき・・・。
 幸福の絶頂シェーラ至高の輝き見せし。

 そして幸せいつまでも――END(嘘デス)
 まだまだ続きます。

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13423二部の後書きD・S・ハイドラント 2003/2/28 14:31:14
記事番号13421へのコメント

 こんばんはラントです。
 ついに第二部投稿完了しました。
 そして投稿って結構大変だって分かりました。全部一行開けで揃えることが面倒。
 
 12章、グループ別け(?)編。
 ついにシェーラ、『魂の翼』渡すことに成功。
 こういうことってなかなかしにくかったりするように思えますけど、結構あっさり 出来たりするような気がします。

 13章、食い逃げ編。
 ちなみにニャイン・カムというのはベトナム語か何かで『速い風邪』という意味。
 ・・・これはアインじゃなくて私の間違いですけど、結構魔法の名前はいい加減なものが多いような気がします。
 この国の国民性かな?

 14章、ゼラス復活編。
 ここに来てゼロス逆転か?

 15章、アインVSリシン編。
 一応ヒムド達に殺されたはずなのに出てきたのはゼロスのせいというか、・・・私のせい

 16章、アイネジュ編。
 アインが押してるようだけど、結構ネージュに翻弄されているようなアイネジュとはそんな感じですかねえ。
 やはりネージュはお姉様?
 
 17章、はっきり言ってどうでも良い話。
 でもアイン達にはどうでも良くない。

 18章、シェーラ達編。
 シェーラは蚊帳の外だけど・・・。
 ちなみにサブタイトルは猫の鳴き声を表わしてます。
 
 19章、ブリガミアついに登場編。
 ブルで書かれているのはリズムのため。

 20章、量が2倍編。
 前半はシリアス的なガーシェラ、後半は賑わい系なガーエル←シェーラ。
 ガーシェラ対談は1度やりたかった。

 21章、夜編。
 賑わいが終わると寂しいものです。
 
 22章、ガーヴVSブリガミア編。
 半トリュフが黒トリュフと呼ばれるのは、黒髪の人間って結構いるかららしいです。

 23章、シェーラ遅起き編。
 最初の方は夢。

 24章、ついに激動編。
 一番長い回。原稿用紙28枚にも及ぶ量。過去最高かも知れないです。
 八魔卿との戦いが2つもあってお得。1対1の武器戦闘って書くの好きです。結構短く終わりますし
 ちなみに黄昏とか夜とかは比喩みたいな感じです。
 実際は昼間ですから・・・。

 25章、アイン帰宅編。
 今回も長い。
 ブルの言う、大司教様は前代です。

 26章、アインVS教主編。
 一体3年前に何があったのでしょう。
 それを明かすつもりはないです。(実は面倒なだけ)

 27章、ゼロス出現編。
 やはり強いゼロス。でも教主も結構しぶとい。
 ついに明らかになる街の秘密。
後、後半のセリフが長い。
 
 28章、エル&ブリガミア編。
 ブルはアインを見るとどうしても叱ってしまうのかも・・・。
 やはり最後は猫声でシリアスぶち壊しに限る。

 29章、謎(?)語り編。
 事実、ゼロスの考えはわけ分からなかったり・・・。まあそんなものです人間(?)って・・・。

 30章、29章の続き(当たり前なんだけど)
 結構人は恐がりなものなのでしょうか。
 
 31章、エル×アイン、ガーヴ×シェーラな編。
 フィブシェラも良いけど、ガーシェラもまた良いですねえ。このままシェーラちゃん総受け派になっちゃうかも・・・。
 ちなみに最初の『星でなくとも輝く一時』というのは人の笑顔とかで幸せになるとかそんな感じの意味。こういう表現、どこまで相手に伝わるか全然分からないです。

 32章、またもや夜編。
 ゼロスが問題発言、しかもお姉様を殴る。
 アイン、昼間は隠してたけど(宗教の思想上、哀しむものではないから?)やはり哀しい。
 さらにシェーラ大活躍。・・・夢の中で。
 
 ・・・ついにメッキー完結致しました。(私の方では)後は直して3部を投稿するのみ。
 3部は1部より少し長い程度ですしまあすぐにいけると思います。
 にしても、メッキーで結構いろいろ学びました。
 次はより良いものを書きたいです。
 
 ちなみにメインキャラの戦闘能力としては、

 武器戦闘
 ネージュ<<<フィブリゾ<エル<シェイド<ダイ<アイン<ガーヴ<シェーラ
 で良いのか正直分からない。
 シェーラは1位確実。ヒムドが入ったらどうか分かりませんけど・・・。
 ガーヴは1人で赤いキツネとか併せれば相当強いでしょうけどアインもやはりかなりの強者かと・・・。
 ダイは順位低いですけど、相当強い騎士です。三滅鬼クラスは凌ぐほどに・・・。
 なぜかシェイドも入ってます。剣は大したことないかと・・・。
 エルは一応戦えますけどさほどでない。
 フィブリゾ王子はシェーラから剣習ってる分ネージュを越えてます。
 ゼラスやゼロスは未知数です。

 魔法戦闘
 ネージュ=フィブリゾ<<<シェーラ<ダイ<アイン<シェイド<エル<ガーヴ
 実はガーヴが最強なんです。あれは魔法ではなく魔術ですけど・・・。動き止める技はゼロスやラルターク級の敵や精神攻撃の効かないデーモン系やノースト以外には無敵でしょう。
 でもエルの魔力は相当なもの。詠唱を行なわないと集中出来ないという欠点を除いてもかなりの凄いです。半分トリュフですから・・・。
 シェイド君は魔法の天才、アイン君も結構得意でしょう。
 ダイさんもシェーラちゃんよりは魔法上手かと・・・。
 ああ主人公のシェーラちゃん、でも実際魔法は使えるだけでも凄い。
 ネージュさんやフィブリゾ君はまず使えない。

 精神的面
 シェーラ<ダイ<シェイド<エル<アイン<ネージュ<ガーヴ<フィブリゾ
 やはり1位は冥王様、恐らく彼が最強だと思います。シェーラに依存していますけど、シェーラよりよっぽど強いかと。
 血に飢えた孤独な将、ガーヴ様もやはり強靭な精神を持っているでしょう。
 ネージュさんは恐怖の監禁生活に耐えたお方。
 アイン君は平気が人殺しとかしてますし、
 エル様は普段は最強ですけど、裏で泣いてたり・・・でもこれも強いとは言えますね。
 シェイドさんやダイさんは普通かと・・・。
 シェーラちゃんは私に似て(?)弱いと思います。でもフィブリゾ様が絡めば最強に・・・。

 総合
 難しい。
 だって、シェーラはガーヴ以外には絶対勝てそうもないし。
 アインは絶対エルとネージュには絶対かなわない。
 まあ何にしろ結局最強なのはフィブリゾ様冥王ヴァージョンなんですけど・・・。

 それでは、第三部『救済への道』(予定)
 ――近日公開予定。
 さようなら〜

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13408ネージュさん、エル様に感化されたの?エモーション E-mail 2003/2/27 20:49:09
記事番号13387へのコメント

こんばんは。

また、一気に……ですね。
どんどんゼロスが不気味になっていく、というか……
変な風にノースト化しつつあるような(滝汗)

それにしても……ネージュさん、微妙にキャラ変わってきたような(笑)
エル様の影響でしょうか? 
完璧にエル様化したら、アイン君泣くでしょうねぇ……(爆笑)

いちいち「にゃーん」と鳴る、ブリガミアさんちの確認用のボタンが
面白かったです。誰の趣味ですか、誰の(笑)
「にゃんこスイーパー」を思い出しました。←しょっぱなから「猫」引き当ててた奴

今回、戦いに燃えているわけでもない、怒っているわけでもない、普通状態の、
落ち着いた(?)ガーヴ様を初めて見たような気がしました。いい男です、本当に。
そしてフィブリゾ君。久々、ですよね。虚像編で見ているので、
そんな気はしないのですが。
どういう状況なのでしょう。ゼラス様と同じ場所にいるのでしょうか?

ゼロスの野望……なんでしょう。続きが楽しみです。
では、この辺で失礼します。

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13409Re:ネージュさん、エル様に感化されたの?D・S・ハイドラント 2003/2/28 11:13:07
記事番号13408へのコメント

>こんばんは。
こんばんは
>
>また、一気に……ですね。
これからも一気かと思います。
>どんどんゼロスが不気味になっていく、というか……
>変な風にノースト化しつつあるような(滝汗)
まあ姉弟の弟という同じ属性(?)ですし・・・
アインは狂わなかったですけど、代わりにグレましたし・・・。
>
>それにしても……ネージュさん、微妙にキャラ変わってきたような(笑)
そうですね。
>エル様の影響でしょうか?
1度同じ部屋で寝ていた時がありましたし、その時かも知れません。
または・・・今まで本性を隠していた、とか 
>完璧にエル様化したら、アイン君泣くでしょうねぇ……(爆笑)
未来はどうなるのでしょう(待て)
>
>いちいち「にゃーん」と鳴る、ブリガミアさんちの確認用のボタンが
>面白かったです。誰の趣味ですか、誰の(笑)
・・・私。(爆)
猫好きなんですよ。
特にデブ猫。
飼った猫、全部消え去りましたけど・・・。
>「にゃんこスイーパー」を思い出しました。←しょっぱなから「猫」引き当ててた奴
へえマインスイーパーの猫版ですか(検索してみました)
全然知らなかったです。
>
>今回、戦いに燃えているわけでもない、怒っているわけでもない、普通状態の、
>落ち着いた(?)ガーヴ様を初めて見たような気がしました。いい男です、本当に。
スレ本編とは違うかも・・・。
どうも書いてる内にオリジナル的に思えてきて・・・。
アイン君とキャラや口調は似てますけど、こちらは『本物』って感じにしたいと思ってました。
>そしてフィブリゾ君。久々、ですよね。虚像編で見ているので、
あれ?・・・出てましたっけ(待て)
ここまでで出した記憶が本気でないんですけど・・・
>そんな気はしないのですが。
まあ最近出まくってますし
>どういう状況なのでしょう。ゼラス様と同じ場所にいるのでしょうか?
・・・それは秘密です。

>
>ゼロスの野望……なんでしょう。続きが楽しみです。
また連発になるかと思います・・・。
ここから一気に進展していくはずです。
>では、この辺で失礼します。
ご感想どうもありがとうございます。

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13436冥王の騎士4:祈りの結末:第三部:救済への道D・S・ハイドラント 2003/3/2 17:42:34
記事番号13310へのコメント

こんばんはラントです。
本日は3話、4話投稿するくらいですけど・・・。

・・・にしても、上から運命、創造、救済、とちゃんとあそこの宗教の紋章と同じ順番に出来た。

それではいきます。

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13437冥王の騎士4:祈りの結末:33章:雪が降りD・S・ハイドラント 2003/3/2 17:45:09
記事番号13436へのコメント

 風は明白なる白き。
 遥かな虚空。
 吹雪包みし静寂なる夜。
 それに安堵深く覚えし。
 遥かなる北。
 今宵は極光見ぬとも美しき構図。
 白雲。
 蒼闇。
 金色の髪、白き服映え、携えし剣も映えし白銀の薄照り。
 昇りゆく吐息。
 焔の揺れ見せ、希薄に消え去るその繰り返し。
 安堵の傍ら、どこか胸騒ぎ。
 それ打ち消さんことにただ時流せし。
 孤独は感じぬ。
 1人を恐れぬ。
 空の美しき、ただ見やるそれのみ。
 だが真に見しは自らなり。
 解放されし時間にて悩まぬことに強く努めし。
 浮かびゆく苦悩達押さえしことに・・・。
 だが魍魎の如く這うそれ強き。
 消しては生まれ、そして増えゆく無限の妖魔。
 焦り浮かびてかぶり振り、かわし、頭痛起きんばそれも忘却。
 だが終わらぬ闇の行進曲に心蝕まれゆくこと近き。
 「だめだ!」
 だが不意に強き否定。
 それ魔物無数に消し去る。奮起強烈。
 「シェーラ様も戦うんだ、僕も負けていられない!」
 寒き天へ向け、強き一言。
 焔舞い上がり心の闇振り払わん。
 すべての邪念払い落ち、残るは輝く1つのみ。
 「そう・・耐えることも強さだ。」
 1人ただ叫ぶ若き男。
 だが不意に感じる邪気。
 言いようもなき不安そしてその悪魔――響きし音、焦りに満ちし不規則なる音。
 ――具現せし。
 素早く振り向く。
 テラスより部屋へ明らかなりた扉叩きし音。
 「何だ!」
 警戒浮かべなお迅速に鍵外し、強く見据えん。
 「ぐっ・・・軍務大臣閣下。」
 1人の兵なり、若きその兵。
 鎧より探らば城外監視なり。
 焦りに満ちし、その容貌。
 動揺に震え、そして脅えし。
 「どうした。なぜ僕を頼ったんだ。」
 その焦り彼へも伝わりゆきた。
 「そっそれは・・・」
 自らよりも果てしなき弱き。
 「まあ良いよ。何があったんだ?」
 なだめしその声、だが兵の動揺増す一方なり・・・。
 「雪影賊が・・・」
 震え、絶頂。
 それ見やり優しき視線保つこと努めん。
 「雪影賊がどうしたんだい?」
 兵は震え落ち着かせ、そして・・・
 「突然、街を急襲したようで・・・。」
 移りし震え。
 動揺。
 惑い・・・。
 生まれしそれら一網に取り払い、
 「分かった。僕は・・・入り口を護る。」
 「えっ閣下自らが・・・」
 兵も動揺、だがどこか輝きありた。
 「そうだ。盗賊程度なら僕1人50人はいける。それより君は各騎士団長を呼んでくれ、」
 そして部屋の内に焦りつつ下がり、そして一瞬に、
 「夫人様の名前を使って起こすんだ。その後はこれを見せてくれ。」
 震える手にて取り渡し輝き、金色の獅子と白銀の双剣。
 ダイナスト公の紋章なりた。
 「えっ・・・」
 惑う兵に憤慨覚え、
 「良いからいくんだ。君に国が懸かっているかも知れない。絶対に今の内に騎士団を整えさせろ。」
 言い捨て素早く彼越え走らん。
 ダイ消え去りた後、兵戸惑いつつの確かな希望。
 
 月夜霊(つくよみ)淡く空暗きて、白雪彩る幻想世界。
 光と闇が入り混じりて寂しく賑わし2つの顔持つ。
 風の寒きは気にならぬ。
 さらに魔力の熱そこにあり。
 石橋響く音鮮明で希薄。
 「こっちに来る様子はある?」
 煌く鉄鎧、それに話し掛け、
 「・・・今のところはありません。」
 沈みしその声。
 希望半面、絶望半面。
 溜息昇るその意味分からぬ。
 それでも憤慨、来ぬ好機に・・・。
 自らの時間それのみ速し。
 「・・・仕方ない1人だけど出向くしかないか。」
 再び溜息そして歩き出す。
 眼はむしろ冴え、獣思わせし。
 そう自らも思えて来ん。
 「・・・それは・・・いけない。」
 だが不意なる声に歩凍りつかん。
 先ほどと変わりなきその声――しかし殺気。
 振り返り見んば兵の顔邪悪に白きなり。
 そして輝く真紅の血眼。
 「・・・君は・・・いってはいけない。」
 殺意・・・そして抜き放ちし剣の輝きそれは――黒き光纏う見知りし剣。
 「・・・八魔卿・・・。」

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13438冥王の騎士4:祈りの結末:34章:輝き埋もれしD・S・ハイドラント 2003/3/2 17:49:29
記事番号13437へのコメント

 戦慄せし心。
 覚醒に研ぎ澄まされ、その兵を見し眼差し張り詰めゆかん。
 暗闇に紛れその全貌翳り。
 見せぬも、その長き白銀の髪鮮明なりた。
 そして見張り兵に似合わぬ痩身でありしことも・・・。
 「・・・時間がない・・・」
 だが焦りなど微塵もなき声。
 ダイ剣へ手伸ばし。
 激しき震え抑えつつに・・・。
 「・・・ダイ・ス・ステーキ・・・」
 そして向かい合う男は、地蹴りて、
 「・・・君を始末する!」
 夜空に暗き光舞いた。
 響きし音、静寂へ戻さんとせし世界。
 だがダイ退歩せし瞬間にも再び金音。
 黒き光帯し剣。
 その勢いは激しく強き。
 斜めに踏み込まん。
 刃噛み合うそのままに進みて、
 「疾風(はやて)の強く吹くこの道!」
 響きとともに賊飛び退きて、速き風が遅れて一閃。
 だが生まれし隙にダイ駆けん。
 再び煌く輝きの中、噛み合う獣互いに威圧。
 ダイの剣は銘ありたもの、八魔卿の魔剣それ生む力。
 それ強き。
 ダイ押され飛び退く、素早き攻め受け。
 「少々手ごわいな。・・・僕が傷1つ付けられないとは・・・。」
 呟く声は白き息吹へ、振るいた剣、ダイかわし反撃。
 瞬間賊へ向けし突き。
 それと同時に、
 「速き風よ 翼となれ!」
 唱えし魔法、一陣の風。
 瞬間疾駆。
 頬切り裂きつつ城へと駆け抜く。
 立ち止まらん素早く振り向き、冷静に見詰め。
 「僕は絶対に負けられない。」
 「そうか・・・」
 だが返るは不気味なる笑み。
 動揺掻き消し素早く地駆け、振るう一撃――。
 だがそれ勢い強く。
 賊に当たらぬ。
 焦燥に視界惑い、
 「甘いと思おもうのだが・・・」
 冷たき声ととも切り上げし一撃。
 頬より頭部へ激しき烈風。
 「くっ!」
 燃え上がる痛みに歯食い縛り次瞬に耐えん。
 冷めし風。
 さらなる苦痛。
 「どうだ・・・痛いだろう。」
 繊細なる声美しくもどこか崩壊。
 さらなる一風。
 剣構え止めんも衝撃伝わり苦痛なお増す。
 「三滅鬼よりも強いと言われるダイ・ス・ステーキ・・・だが本当ならヒムドと戦いたかったよ。」
 ダイ退けば、追撃なお来ん。
 (騎士団は・・・まだなのか・・・)
 歯痒さしかし同時に恥気。
 かぶり振り歯噛みそして消し去らん。
 「焦り・・・どれだけ隠そうとしても隠し切れないだろう。」
 さらに退歩。
 追撃。
 繰り返し。
 黒き獣と銀の獣。
 何度もぶつかり、光散らしゆく。
 「八魔卿ナンバー3、≪狂刃≫のイソロイシン・・・これが僕の名前だ。最期に覚えておきたまえ。」
 笑み。
 そこに笑み。
 血滴らせ闇に映えし恐ろしき笑み。
 人でなくに闇なる魔人。
 「僕を傷つけた罰だ・・・眠るが良いよ。」
 賊、飛び退き。
 ダイ苦痛堪え踏み込み。
 研ぎ澄まされゆくさらなる意識。
 鮮明に刻まれし永き永き時。
 「死神!(リーパー)」
 瞬間戦慄。
 赤黒く燃えし剣。
 過ぎゆく時。
 だがそれも脅えし・・・。
 死の焔に彩られし剣。
 イソロイシン持ちし闇の魔剣。
 今や圧倒。
 刃すれ違う。
 それすら明白。
 だが還らぬ。
 時は還せぬ。
 流れ出せしままに焦りも脅えも恐怖も後悔もなくに進み刻まれん。
 退歩せし賊・・・。
 そして振り払う。
 剣は的確にダイ薙ぐそのはず・・・。
 だがダイのその剣けして届かぬ紙一重。
 黒き焔のその長さダイの命喰らうであろう。
 ――だが退かぬ。ダイそれでも踏み込まんとせし。
 激痛。
 激熱。
 激焔。
 激情――激しき咆哮。
 「うわああああああああああああああああ」
 震え叫びけして止まらぬ。
 それ自らでなきが如くに・・・。
 (シェーラ様・・・すみません。)
 声にならず。
 天に届かず。
 暗闇で消え去りそして終わり去る。
 「・・・・・・・・ラ様。」
 ダイの意識そして途切れし。
 
 その最期見下ろしイソロイシン美貌歪めん。
 「・・・ダイ・ス・ステーキがこうも簡単に倒せるとは・・・」
 むしろ驚愕。
 震えし細腕。
 恐ろしき死神。
 それ自らなり。
 「・・・騎士団が来ると厄介になるな。」
 踵返し雪に消え去る。
 だが見えしはなおも笑み。
 「・・・だが夜明けには終わるかも知れない。」

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13439冥王の騎士4:祈りの結末:35章:戦慄近付きD・S・ハイドラント 2003/3/2 17:52:32
記事番号13438へのコメント

 重き空。
 昏き世界。
 極寒の暁。
 だが意識鮮明なりて不思議と目冴えし、不意に立ち上がる。
 なお拍車掛かりゆく彼女の覚醒。
 逃避望まぬその自分。
 不可解に思いつつ着替え終えん。
 部屋より出でて、なお増す寒気。
 しかしもはや彼女止められず。
 輝きに満ちた双眸。
 遥かを常に明白にしゆきし。
 
 「シェーラ・・・おはよう。」
 「あっおはよう・・・エル。」
 微笑みつつに挨拶返し、瞬時に見取れしエルの動揺。
 見渡す食卓、全員揃い。
 「遅えな、おい。」
 からかうガーヴのその口調も、明らかな震え視線定まらず。
 シェーラそれに微笑み浮かべ、即座に視線映しアインへ、
 「おはよう・・・」
 脅えつつに声放たんば、
 「おお、おはよう・・・シェーラ。」
 内なる感情、渦巻き見えし。
 そして視線移すは卓へ、朝ながらもそれ豪勢なり。
 フォークが貫き、黄金の汁溢れ出さん。
 白き世界は汚れ始め、やがて宙舞い。
 そして伝わる。
 微かな熱に、その優しさ。
 「・・・おいしい。」
 沈黙破るは不思議とシェーラ。
 「おい、てめえ大丈夫か?」
 貪るガーヴ不意に声出し。
 シェーラ微かな悪戯笑い。
 「何が?」
 ガーヴ揺れ消し、食事へ戻らん。
 垣間見し視線。
 優しき感動。
 熱も冷もなく平穏の激情。
 涙はけして出ぬ。
 沈黙のそんな白き世界。
 停滞の構図。
 常に動けど不動に変わらぬむなしき世界。
 世界は安定。
 沈黙なりて時のみ刻まれん。
 そしてその時、それのみ鮮明。
 鮮明すぎし死神の足音。
 「アイン・・・」
 ふと出るは別方向。
 「何だ?」
 アイン向くはエルの方角、不思議とシェーラそれ追わん。
 そしてそれに感慨、欠片なき。
 「・・・好きよ♪」
 不意に儚さすべて消え去り、飛輪の輝き散りしものより・・・。
 「なっ何言い出すんだ・・・」
 動揺、思わずシェーラ笑顔。
 「何笑ってる!」
 アイン怒鳴りてシェーラ止ますも、続けてブル薄笑み浮かべん。
 「おっ親父まで・・・」 
 憤慨の赤。
 動揺の紅。
 どちらが真なる色彩だろうか。
 「良かったじゃねえか、彼女募集中だろうが!」
 「おっさん、てめえまで!」
 虚ろなる糸のその先見詰めシェーラなお笑み続けん。
 「ふふふ、良いじゃない。あなたもあたしのこと好きなんでしょ♪」
 「だっ誰が・・・」
 だが確かなる惑い。
 凄まじき震え、
 「それにネージュいなくなって寂しい・・・」
 その言葉放つ。
 その瞬間――突如の暗天、黒雲うごめき・・・。
 沈黙還りそして雷鳴、
 「・・・ネージュは・・・」
 震えし声舞い降りて、すべて暗く澱みに覆われ、
 「あっ・・・アイン・・・」
 紡ぐ声にも激しき障害。
 拍車掛かりしアインの雨空。
 「・・・ほっ・・・本当に・・・ごめんなさい・・・」
 エル曇りゆき。
 引き攣りて、脅えにも近き美貌見せん。
 それに輪掛けなお昏きアイン。
 「・・・ネージュ・・・」
 白き息吹さえ繊細なりた。
 消えゆく様は美しきなり。
 激しく震え、双眸潤み。
 「・・・ほっ本当に・・・そんな気は・・・」
 エル追い詰めゆくアインの悲哀。
 「ごめんなさい、ごめんなさい、キスしてあげるから許して!結婚してあげるから許して!・・・っていうか結婚して〜!!」
 卓越え、飛び掛るエルかわし、
 「・・・ふざけるな!」
 強き刃。
 エルに放ちて、伏せし彼女、ひどく涙。
 「・・・そうね。ごめんなさい。」
 声響き、世界快晴。
 「・・・まあ、あれ全部わざとだし、良いんだがな・・・。」
 「「「えっ!」」」
 重なる衝撃。
 「わしは気付いてたがな。」
 ブルそして連なり、
 「・・・とにかく全部演技だ。ネージュにゃ悪りいが今はあいつの死を哀しんでる場合じゃねえ。」
 「・・・アイン。」
 強き男、戦場への道は僅かなり。

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13445ネージュさん、サイコロくん……。エモーション E-mail 2003/3/2 22:22:23
記事番号13439へのコメント

こんばんは。

続きが出ている〜と読みはじめて……前回の感想記事投稿の後に、まだ続きが
書かれていたことに気が付いた私です……早く気づけよ、私……。

ネージュさんが……おいたわしい(泣)ノーストが三途の川から手招きしたんでしょうか。
しかもよりにもよって、変質者リストNo.1な弟と似たタイプの変態に……。
必死になって助けようとするアインくんがもう可哀相で(うるうる)

トリュフ族って生き残り種族だったんですね。
神に従わないトリュフ族を教主に仕立て上げるゼロス、真綿で首絞めてるように
追いつめていってますね……。
……冗談抜きで、ゼロス、何歳なんだろう……120歳以上、もしかして
1000歳近いのでは?

悲しい結末だけれどネージュさんの件で和解した感じのブリガミアさんとアイン君。
何となく、ネージュさんの最後の贈り物のような気がしました。

サイコロ君があっさりと……最後にシェーラちゃんを思うところが泣けます。
彼の死を知ったら、シェーラちゃん、泣くだろうなあ……フィブリゾ君とは
違う意味だろうけれど、それなりに好意を持っていた相手ですし。

神殿へ来るように支持したゼロス。大詰めですね。
続きを楽しみにしています。

では、これで失礼します。

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13446Re:ネージュさん、サイコロくん……。D・S・ハイドラント 2003/3/2 22:53:32
記事番号13445へのコメント


>こんばんは。
こんばんは〜エモーションさん。
>
>続きが出ている〜と読みはじめて……前回の感想記事投稿の後に、まだ続きが
>書かれていたことに気が付いた私です……早く気づけよ、私……。
というか私が投稿しすぎです。ちょっとペース早すぎたかも知れません。
>
>ネージュさんが……おいたわしい(泣)ノーストが三途の川から手招きしたんでしょうか。
ううむちょっぴり歪んだ姉弟愛は片方の死を持っても切り離せない、と・・・。
>しかもよりにもよって、変質者リストNo.1な弟と似たタイプの変態に……。
なぜ強い人に変態が多いのか・・・。
いや強くないと目立てないだけで変態はこの世界に多数存在するのかも・・・。
>必死になって助けようとするアインくんがもう可哀相で(うるうる)
最期のアイネジュです。
本当ならもっと書きたいのにこれのせいで・・・。
でもストーリー上仕方ないという部分もあります。
・・・つまりアインをキレされる必要があったからです。
>
>トリュフ族って生き残り種族だったんですね。
そうなります。
>神に従わないトリュフ族を教主に仕立て上げるゼロス、真綿で首絞めてるように
>追いつめていってますね……。
ゼロス・・・随分悪人(というか非道?)化?
>……冗談抜きで、ゼロス、何歳なんだろう……120歳以上、もしかして
>1000歳近いのでは?
かなり前の人間でしょうからねえ。
宗教としてサンチーンミが出来たのはいつと書かれていませんが少なくとも、120年よりずっと前だと思います。
>
>悲しい結末だけれどネージュさんの件で和解した感じのブリガミアさんとアイン君。
何とか・・・アインは滅茶苦茶哀しさ隠してると思いますけどそれなりに明るいし・・・。
>何となく、ネージュさんの最後の贈り物のような気がしました。
うわっ・・・凄いです。私は浮かびませんでした。
>
>サイコロ君があっさりと……最後にシェーラちゃんを思うところが泣けます。
人って実際、結構しぶといけど死ぬときはあっさり死ぬものと思います。
この話は、現実的じゃない感じの現実を描いた場面も多分いくつかあったような気がしますし・・・。
>彼の死を知ったら、シェーラちゃん、泣くだろうなあ……フィブリゾ君とは
>違う意味だろうけれど、それなりに好意を持っていた相手ですし。
そうですね。
>
>神殿へ来るように支持したゼロス。大詰めですね。
後もう少しで終わります。
後、7章ですかね。
・・・一個だけ2倍のがありますけど・・・。
>続きを楽しみにしています。
どうもです。
>
>では、これで失礼します。
では、ご感想どうもありがとうございます。

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13448冥王の騎士4:祈りの結末:36章:凄まじき震えD・S・ハイドラント 2003/3/3 10:57:03
記事番号13439へのコメント

 静寂。それの渦巻く世界抜け、沈黙のままたどり着きし祈りの間。
 長き時の幸せはここにすべて砕け散らん。
 最奥に――ゼロス。
 恐るべき恐怖のその根源。
 今、瘴気に満ちし汚れた聖域。
 「おはようございます・・・皆様。」
 張り詰め。
 震え。
 視線困惑。
 滅殺者のその威圧感。
 刃なりて波でありた。
 「・・・あっお久しぶりですね。ブリガミアさん。」
 「・・・ゼロス。」
 笑み浮かべしゼロスに対し、強く睨み利かせしブル。
 「いやあ恐いですねえ。この前、犠牲になったミックスさんとは大違い。」
 恐ろしき牙。
 ゼロス表情曇りて、闇の獣の漏らす笑み。
 「貴様!」
 ブル、白き法衣開(はだ)けさせ、瞬間生まれし黄金の光。
 「透明の異空。」
 だが同時に静寂の金音。
 光消え去り現れし世界。
 蒼き宝玉掲げし杖持つブル。
 赤き宝玉抱えし錫杖持つゼロス。
 「・・・危ないところでしたねえ。」
 余裕めいたる口調。
 真意は掴めずブル唸り上げ、
 「・・・もう少しであなたの首が・・・」
 対峙せし2人。
 だが違いすぎしその力量。
 ブルの輝かしき魔力。
 それすべて吸い尽くさん如くなるゼロスの禍々しき魔力。
 すでに他の4人、言葉闇へと吸い消されし。
 「まあそんなことは置いといて・・・」
 笑顔強めそして近寄りゆかん。
 その道程止められしものおらず。
 淡々と一歩連なりゆきし。
 その一瞬一瞬。
 凄まじき戦慄生まん。
 「高き空 走る風 仰ぎて見えん天上よ 世界のすべて 今映りたまえ」
 そして紡がれゆきしゼロスの呪文。
 やがて闇生まれ、それ形成し――光へと・・・。
 光球そこに生まれん。
 吸い込まれんほどの輝き秘めそして巨大。
 そこに映りしは・・・。

 「うおおおおおおおおおおおおお」
 絶え間なく連なる叫び、雄々しきなりた。
 白刃煌き、天なる輝き越えんほど。
 そして焔、数多に見えん破壊者の影。
 激しくも美しき激闘の陰には多くの絶望渦巻きし。
 「ぎゃああああああああああ」
 何度も響く苦痛と怨嗟のその叫び。
 深き紅。
 おぞましき肉塊。
 それもはや蹂躙なりた。
 「・・・ここは」
 シェーラ見る地、北のその果て、美しき地。
 だが今は崩れ・・・。
 「・・・あいつはまさか!」
 ガーヴ捉えし、光湛えし赤き輝き。
 そして赤き龍。
 彼知るそれこそ侯爵の旗。
 戦慄走りし恐怖の光景。
 猛き兵士、その凄まじき剣舞。
 踊るが如きに切り裂くは騎士達。
 だが突如に現れし金髪の男、自信に満ちしその碧眼。
 抜きし剣、黄金の輝き。
 「・・・雷剣将か。」
 凄まじき一撃。
 その兵――三滅鬼、容易く屠らん。
 雷鳴の如くのその速度。
 威力。
 ≪八魔卿≫の頂点、その実力。
 猛攻震う鉄仮面の男。
 赤く輝く斧手にせし。
 緑の輝き持つ鉤爪、それにて吹く烈風。
 20過ぎしほどの2人の女。
 銀の輝き持つ剣、華麗に振るいし美しき男。
 乱戦の中、≪八魔卿≫の実力、圧倒的なり。
 公都グラウ・・・蹂躙受けしはその街なりた。
 焔と鉄の破壊はなおも拍車掛かりゆき、確かな絶望。
 兵達の士気明らかな欠如なり。
 瓦礫に押され伏せしただの人。
 その苦悶より・・・。
 震え。
 哀しみ。
 なお伝わりし。
 
 「いかがですかこのショーは・・・」
 笑顔なるゼロス。
 5人嫌悪し、
 「てめえ、ふざけてんのか!」
 アイン飛翔。
 鎖外し、悪魔斬り掛かる。
 だが瞬間。
 焦燥。
 疾風吹きてアイン吹き飛ばされ。
 「暴力を振るわれる筋合いはありませんね。」
 その表情にアイン凍結。
 「さて・・・他の皆さんはどうでしたか?」
 崩さぬ笑顔。
 向けられし意味1つ・・・。
 だがシェーラのみそれに悲哀浮かべ、
 「・・・ダイ殿は・・・」
 紡がれし細き声・・・。
 「・・・ダイ殿はどうなったの?」
 涙の兆しすらあらん。
 ゼロス薄笑み、
 「・・・えっと、ダイ・ス・ステーキ、なら・・・夜明け前に≪八魔卿≫の1人に殺害されてますね。」
 淡々とせしことひどく残酷なり。
 「・・・そんな・・・」
 喪失に焔と氷。
 同じく生まれし。
 双子争い決着付かぬ。
 震え涙、激情堪えつつ・・。
 「ふふふふふ・・・」
 それ見て笑うゼロス恨みつつ。

 「それで・・・これだけなのか?」
 ブル放ちし冷たき一言。
 ゼロス首傾げ、
 「何のことです?」
 「わしらをここに呼んだ理由のことだ。」
 さすらばゼロス、なお邪悪なる笑み。
 その絶頂に冥き口開け、
 「・・・まだまだこれからですよ。」
 言わんば突如、世界暗転。
 うねり続けそれ永遠のよう。
 だがやがて光差す。
 否、輝く闇なり。
 1つの空間。
 5人辿りつくその空間に――1つの気配。
 そして鮮明となりて・・・。
 (・・・フィブリゾ様?)
 1人の少年、象りし。
 だがそれどこか邪悪。
 (違う・・・冥王アプロス。)

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13449冥王の騎士4:祈りの結末:37章:だが光は闇打ち砕きD・S・ハイドラント 2003/3/3 11:04:21
記事番号13448へのコメント

 常闇の中、なお冥き闇。
 それが照らせし無明の世界。
 存在せし命のみが見え、その他、暗黒。
 虚無の世界であるやも知れぬ。
 「着てしまったようだね。」
 響きし声も闇持ちて5人震わす。
 「・・・冥王アプロス。」
 シェーラ呼ぶは強大なる悪魔のその名。
 「そうだ・・・僕はアプロス。闇の王さ。」
 凍てつきし、真なる闇。
 冷たき闇持つ少年の威圧。
 だが不思議とさほどに動じることなき。
 心の支え輝き感じ。
 だが他4人激しき動揺。
 動けぬ氷、それに飲まれし。
 シェーラのみ。
 他停滞。
 既視感、だがそれは違いし。
 今は輝き、それ持つ自分。
 けして極寒に独りでなき。
 「・・・ゼロスは失敗したのかな?正直あんまり僕は分かっていないけど」
 そして降り注ぐ邪悪な視線。
 だがなおシェーラ凍らず。
 そして見据える主君の映し身。
 「君は・・・強いね。でも僕なら簡単に消せる。」
 手伸ばし。
 戦慄。
 震え強まり。
 「でも・・・やっぱり弱い。このまま彫像にして飾っておくのも良いかな?」
 「いえ・・・それはいけません。」
 突如響く声。
 生まれしは気配。
 「・・・ゼロス。生きていたのか?」
 心より安堵。
 だが徐々に生まれゆく疑問。
 些細でしかなきものの。
 「・・・ええ、ですがそろそろお別れですね。」
 暗黒に映えしその笑みはアプロスの力越え、そして彼に動揺植付けし、
 「どっどういうことなんだ?・・・ゼロス」
 それ隠せぬ。
 必死で打ち消しそして生まれし。
 ゼロス始終笑み絶やさぬ。
 「・・・すべての闇よ 秩序ある光に消え去らんことを」
 輝き極限へと昇り。
 それ暗きを取り払いゆく。
 「・・・それでは僕はこの辺りで・・・」
 「まっ待て・・・ゼロス。」
 そして極限。
 さすらば薄れゆき。
 黒き1つの空間現す。
 すでにゼロスの姿なき。
 「・・・裏切るつもりか・・・」
 怒り燃やせし冥王アプロス。
 そして眼前に見るは5人の人間。
 正しきは人でなきものいるも・・・。
 「さあアプロス、フィブリゾ様をおとなしく返しなさい。」
 その手には剣。
 輝く光――。
 それこそグリル。
 「そうよフィブリゾ君を返さないと殺すわよ。」
 細身の剣構えしエルもまた勇ましく美しき。
 「アプロスよ、悪りいが俺はてめえをぶち殺すぜ。」
 コート脱ぎ捨て赤き鎧、剥き出しにせして、大剣構えしガーヴ。
 「・・・てめえに恨みはねえけど。事情があってな。」
 アイン鎖より外せし悪魔、構え隙けしてあらぬ。
 「悪魔も・・・もう滅びる時だ。」
 ブル杖掲げ冷たく睨まん。
 魔人の王を・・・。
 「そうだ。それだ。・・・人間とはいえ勇者の剣みたいなのがあるし、なかなか楽しめそうだ。」
 さすらば闇の弾丸、正面のシェーラへ生み出し放たん。
 だがグリルの眩き輝き、容易くその闇、切り伏せん。
 「やるね・・・ならば今度は全員まとめて・・・」
 左腕、右へ向けて軽く振らんば、腕より闇の雨生み出されし・・・。
 だがシェーラ、グリルですべて切り裂き、
 「・・・・・・・・・・無の盾!(アストラル・ゲート)」
 呪文唱えエル、闇掻き消して、
 「魂の翼君よ、よろしく頼む。」
 アイン掲げし小さき紋章、光輝き闇消し去らん。
 「こんなもん消えちまえ!」
 魔術練りて、闇相殺させし。
 「・・・・・・・・。」
 沈黙のままにブルへ届かぬ闇達、消え去り。
 その雨ついに闇ゆきし。
 「・・・面白い。やっぱりこれくらいじゃないと張り合いがないね。」
 だがアプロス余裕の無邪気な笑顔。
 そしてそれ研ぎ澄まされゆき。
 「・・・でも僕も負けるわけにはいかないんだ・・・。」
 瞬間掻き消え、アプロス見失い。
 そしてその直後に具現。
 その位置シェーラの正面なりた。
 「きゃっ!」
 その細き腕、グリルと打ち合い光の欠片散る。
 そして吹き飛ばされしシェーラ転倒。
 「てめえ!」
 ガーヴ放つ、紅蓮の焔。
 「・・・大気の王よ、大地・・の姫って・・・間に合わないから喰らいなさい。 久しぶりの緑のタヌキを」
 素早く懐より出でし小手。
 それ強き風生み出せし。
 「何これ?」
 向かう焔と風見やりて、アプロスからかう如きの笑み。
 だが瞬間轟音。
 凄まじき大爆発、世界包まん。
 「ぎゃああああああああああああああああ」
 アプロス鳴動、凄まじき轟音に飛び散るは闇。
 「おい何か凄えぜ。」
 噴煙上がる中、立ち上がるアプロス。
 そこに確かなる苦悶。
 「おいエル、こいつ貸せ!」
 「えっあっ!」
 ガーヴの腕伸び、エル腕に持ちし小手奪い去らん。
 さすらばそれ前方に掲げ、
 「喰らえ〜!!」
 風と焔、同時に生み出さんば、それら融合。
 そして爆砕。
 「うわあああああああああああああ」
 「ついでに魔竜烈風衝(ガーヴ・トルネード)アーンド魔竜烈火砲(ガーヴ・フレア)!」
 さらなる旋風と焔、生まれ出で、爆発へ拍車。
 「うぎゃあああああああああああああああ」
 「よし今の内だ。全員でフクロにしちまえ!」
 ブルより放ちし、杖の光。
 噴煙の中に素早く駆けゆく。
 「わああああああああああああああ」
 「魂の翼君よ。俺に力、貸してくれ〜!」
 さすらば、小さき翼輝き。
 同時に光は彼のの胸元。
 光互い引き寄せあいて、1つとなりゆく。
 (我が名はレンジ・・伝説の獣、レンジ)
 「こいつは良いぜ。」
 それ魂の翼生やせし解語の悪魔。
 鎖断ちて、激しく振り下ろす。
 白き輝き、真の悪魔切り裂かん。
 「ぐわあああああああああああああああああ」
 「・・・断罪!(ペナルティ)」
 魔力、邪気となりアプロスへ向かわん。
 「こんなものおおおおおおおおおおおおお」
 絶対なる死、耐えつつ苦悶。
 シェーラ立ち上がり駆け出さん。
 輝き戴く剣、一閃。
 「調子にのるなああああああああああああ」
 瞬間、焦燥。
 巨大なる闇の弾丸、シェーラへ迫り来る。グリルそれ受け止めんも、あまりに強烈、光むしろ消え去りゆきしほど。
 無心に押し合う。
 シェーラとその闇。
 歯食い縛り絶え間なき衝撃にすべて耐えん。
 だが明らかに劣勢なり、シェーラ闇に浸食されゆく。
 (・・・もうだめなの?)
 直進し来るその闇はすでにかわすこと不可能なり――。
 そんな状況。
 突如、浮遊感。
 そして見るは・・・。
 「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお」
 強大なる闇、それ受け入れし老人。
 ブル仁王立ち、闇へ消えてゆく。
 「・・・エル・・・このオーブンは・・・運命の・・・」
 エルへと放りし宝玉の杖、慌てつつに何とか受け取り、同時にブル安らかに消滅せした。
 「・・・・・父さん。」
 言葉温もり強く帯し、
 「・・・仇は討つわね。・・・通過点だけど・・・」
 強く握り締めん。
 その『運命』を・・・
 (我が名を呼べ・・・)
 「運命の聖筆♪」
 笑顔。
 そこには笑顔あり。
 哀しみなどなき。
 暗闇の中の一輪の花。
 それ世界へ広がりゆきて・・・。
 「親父・・・俺も絶対あいつ倒すぜ。」
 アインそして言葉反芻。
 その度、心へ光満ちゆき・・・。
 「・・・あんたとは短かったがまあ仇くれえならやってやる。」
 赤き鎧と緑の小手持ちしガーヴ不敵に笑み始めし・・・。
 (・・・本当にありがとうございます。ブリガミアさん。)
 シェーラの容貌それも晴れゆき。
 「ふふふふふ、君達を侮っていたようだ。だけどもう終わりだね。」
 アプロス闇帯び、容貌狂気。
 だが怯まずに・・・
 「・・・終わるのはあなたの方よ。」
 「・・・よくも親父をやってくれたな。」
 「・・・絶対に許さない。」
 「・・・俺もな。」
 シェーラの剣、グリル――放ちしすべての始まり司りし黄金の光。
 エルの杖、オーブン――放ちしすべての運命司りし赤と蒼混ざり合う光。
 アインのペンダント、レンジ――放ちしすべての終わり司りし白き光。
 ガーヴの鎧、小手、赤いキツネと緑のタヌキ――放ちしすべて変える人の力持ちし爆発。
 「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 荒れ狂う光に飲まれゆきて、冥王アプロス闇へ堕ちゆかん。

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13450冥王の騎士4:祈りの結末:38章:物語は終わりへとD・S・ハイドラント 2003/3/3 11:13:57
記事番号13449へのコメント

 消え去りゆく響き。
 冥王アプロス――その少年の姿すでになき。
 跡には安堵、4人溜息。
 「・・・いやあさすが皆さん。その強さに僕は感服しましたよ。」
 不意に声、走るは戦慄。
 そして振り向かんば・・・。
 神官衣の青年――ゼロス。
 「僕が陰で力を貸したとはいえ、あの冥王アプロスを倒したのは素晴らしいことです。」
 笑み――純粋なる笑顔。
 主倒されし焦りなどなき・・・。
 「・・・お前。」
 呟きもらせしアインも一瞬後には激しく身震い。
 「・・・さて、僕はこれから滅びたアプロスの力を集めなければ・・・」
 「・・・ゼロス!それよりフィブリゾ様を返しなさい。」
 遮り勇ましき叫び上げん冥王の騎士。
 「ああ、フィブリゾというのは・・・」
 虚空歪みて1人の少年。
 それ落下。
 「これのことですね。」
 フィブリゾ・・・。
 だが動かぬ1つの骸なり。
 「・・・貴様!」
 シェーラ、グリル翳すもゼロス臆せず。
 なお笑み湛え、
 「・・・勘違いしないでください。人間としてのフィブリゾを殺したのは僕ではなくミックス・ジュースですよ。」
 衝撃。
 惑い。
 怒り。
 憎しみ――。
 それらぶつけし場所なくただ苦しみ。
 「とにかく、僕が『悪魔』になるまでには時間が掛かりますので、その間皆さんには遊んでいてもらいます。」
 淡々と言えば怒り煽るのみ、
 「ふざけんじゃねええ、くそゼロスが!!」
 赤いキツネと緑のタヌキ、その爆発ゼロスへ至らんも、
 「透明の異空。」
 錫杖鳴りて、それ打ち消さん。
 「・・・ふう、全く、この武器は危ないから嫌いなんですよ。」
 溜息の後に微かなる笑み浮かべ、
 ゼロスの指先、そこに黒き球。
 それ生まれ空駆けんば2つになりて・・・。
 「っ!」
 ガーヴ驚愕。
 崩れゆく小手。
 剥がれ落ちん鎧。
 露となる赤き衣服。
 「・・・。」
 言葉詰るもなお睨まん。
 だが脅え内にて増しゆく。
 「・・・さて、ではいい加減に皆さんのお相手に登場してもらいますか。」
 指鳴らさんば虚空歪み、
 ガーヴの眼前。
 銀の長髪なる強き威圧持ちし男。
 アインの眼前。
 黄金の髪持つ、獅子思わせん女戦士。
 エルの眼前。
 黒き鎧に身包みし白髪の老人。
 「あっシェーラさんには特別ゲストがいますよ。」
 さすらばゼロス、大空なぞらん。
 「縛魔封陣 異空の果てに眠りしもの達・・・」
 指先より蒼き光。
 空に張り付きゆきて、それやがて星描き出せし。
 「解魔降陣 深淵の闇より今出でて・・・」
 それに手翳しやがて蒼――。
 赤く染まりゆき、 
 「放魔破陣 我との契約により彼のもの滅ぼせ!」
 そして魔方陣、崩れ去らん。
 恐ろしき力、そしてそれ具現。
 「・・・ふふふ、冥王フィブリゾの力を得た僕の最強技・・・召喚魔法≪魔界≫の力を思い知ってください。」
 無数の輝き、無数の闇。
 惑わせ喰らう魔性の獣。
 常闇の果て、記憶にのみ残りし暗黒の魔物。
 赤き山羊の姿せし魔獣、蒼き蜥蜴の巨大な魔獣。
 人の形持ち、なお邪なるもの。
 レッサーデーモン。
 グレーターデーモン。
 無限の闇に封ざれし本当の魔族。
 その姿今ここにあらん。
 さらにそれ数、無数なり。
 「これはラルタークやヴォルフィードが魔術で創り出した偽物のデーモンではなく、本物の異世界の魔族(デーモン)ですよ。」
 恐怖、それ伝わり来ん。
 巨大なるグレーターデーモン。
 それよりもなお強き恐怖感。
 広き世界に進撃しゆく。
 他3人、逃げゆくも構わず彼らシェーラへと・・・。
 グリル構え、なお後退り。
 同時に、フィブリゾへと至らせぬように斜めへと・・・。
 その甲斐あってか幸運にも少年の骸、デーモンの蹂躙受けずに済むも、シェーラ取り囲む魔のもの達。
 焦りと恐怖に視界歪みて逃避思い、それ打ち消し去りて、デーモンの時間なお与えゆきし。
 「¥cd・*fdgk@v、hf¥^@@」
 その叫び奇怪、聞き取れぬ音。
 シェーラ脅えんもいつしか張り詰め、研ぎ澄まされゆく猛き心。
 (・・・ゼロス、貴様は絶対に許さない。)

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13451冥王の騎士4:祈りの結末:39章:そして最後の激闘D・S・ハイドラント 2003/3/3 11:17:14
記事番号13450へのコメント

 風帯し銀の一撃激しく駆け抜けん。
 だがそれ遮るも銀の刃なり。
 「やっと本気で戦えるな。」
 「忘れていた。すまない私はこんなに面白い戦いを忘れていたようだ。」
 生まれし衝撃。
 それに耐えんば、後跳びて、同時に一撃。
 獣の領域抜け、肉切り裂く爽やかなる音。
 銀髪の男の膝に、一条の赤。
 「我は撃つ断滅の魔弾!」
 「魔竜烈火砲!(ガーヴ・フレア)」
 2つの魔術。
 衝突せして消え、再びぶつかる2つの白刃。
 「やるな!」
 「てめえこそ!」
 だが思い越え襲い来る強烈な衝撃。
 それに焦燥。
 軋む剣。
 瞬時ガーヴ、剣捨て跳躍し、
 「我は駆ける星空の銀鱗!」
 「フレイム・ソード!」
 焔の剣生み出せして、素早き追い込み受け止めん。
 だが衝撃やはり強く吹き飛ばされ、さらなる追い討ちそれ止められず。
 身捩り、深き傷辛うじて脱す。
 だが状況変わらず、倒れしままのガーヴに迫らん。
 跳躍、激しき衝撃覚悟で受け止め、響く激痛それに耐えんば、
 「魔竜烈風衝!(ガーヴ・トルネード)」
 「我は見る落陽の足掻き!」
 暴風に立ち向かうは強烈な焔。
 気圧されしことなくガーヴへ走りし。
 「とにかく消えろ!」
 素早く生み出せし魔塊にて、空間焼く焔も容易く消し去らん。
 颶風の如きガーヴの斬撃、そして狂戦士ヒムドへ迫りゆく。
 「てめえも・・・気配からしてゾンビか何かか?」
 速き焔の風。
 受け止めしロマネコンティ、魔力吸いつつに、
 「・・・その呼び方は気にいらないが、その通りだな。」
 「魔竜烈火砲!(ガーヴ・フレア)」
 至近距離にて放つ火焔弾。
 しかしヒムド容易くかわし、距離置かんば、
 「我が息吹よ獣と化せ!」
 声終わりなお沈黙――
 と思えば刹那に・・・
 「ぐっ!」
 胸元に生まれん赤き傷痕、
 「我は撃つ断滅の魔弾!」
 疾駆とともに放つ魔力、焔の魔剣ガーヴ走らせ、
 「失せろ!」
 魔弾掻き消し絡み合う剣。
 風の如く光の如くに斬撃交じわし、そして両者浮かぶ苦悶。
 肩裂けしガーヴ、膝斬られしヒムド。
 互い息吐き同じく打ち出す。
 交差し。
 離れ。
 再び交差。
 瞬間同時に飛び退きて、
 「我は抗う滅びへの秒刻!」
 「とにかく治れ!」
 同じく癒す、自らの負いし傷。
 さすらば獣再び駆けゆき。
 鋼の音、なお鳴り出さん。
 「我は震う死神の大鎌!」
 瞬間ガーヴに斬撃走らん。
 ロマネコンティのその切り傷なり。
 受け止めしままにて傷負わせしは剣のその影なりた。
 「面白れえ。」
 見破りしガーヴ息吐きつつに、湛えるは笑みなり戦士のその笑み。
 魔剣衰弱。
 今のこの時も・・・。
 覇剣に吸われ消え去り掛けんも・・・。
 「本気で面白れえ・・・」
 そして失われし焔、ヒムド笑み浮かべん。
 邪悪なる狂気のその笑み。
 死の淵に笑うガーヴに向けて・・・。
 「・・・あなたを忘れ勝手に死んでしまった罪は、私の勝利で晴らそう。」
 そして翳す。
 ――至高なる剣。
 魔竜へ向けて・・・。
 「私の・・・」
 「・・・てめえの負けだ。」
 振り下ろす瞬間、ガーヴ不敵に笑み浮かべんば――その刃、そして止まりゆかん。
 「・・・動けねえだろう。」
 刃震えず。
 空中制止。
 「・・・フレイム・ソード」
 「我は撃つ断滅の魔弾!」
 魔術放つもガーヴの剣に弾かれ消え去らん。
 「・・・終わりだな。」
 惜しげなく切り裂きしヒムドの首元、
 「うぎゃああああああああああああ」
 最後の叫びに溜息捧げ、
 「・・・俺の勝ちだ。」
 そしてその言葉、幾度と反芻。
 だが満たされぬ。
 かぶり振りて、
 「俺の勝ちだ!」
 暗き天へ独り叫ぶ・・・。
 だがむなしきなり。
 虚ろなる涙こぼれしそれのみ。
 「やっぱり・・・あんな卑怯技で勝つもんじゃねえな。」
 魔なるもののその力。
 だが彼それ好まぬ。

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13452冥王の騎士4:祈りの結末:40章:けして救われずともD・S・ハイドラント 2003/3/3 11:19:35
記事番号13451へのコメント

 大地を速く駆けし風。
 輝き持つ剣放たれし、
 「っ!」
 エル歯噛みし衝撃耐えんば、
 「大気の・・・以下略、焔滅破!(フレア・バースト)」
 強烈なる焔の一撃――燃えゆく老人。
 即座飛び去り余裕の笑み。
 だが遅れず煙より出でしスターゲイザー。
 エルのレイピアへ剣一閃。
 烈光の牛尾(ゴルン・ノヴァ)のその一撃。
 激しく砕かん細身の刃。
 「・・・・・断罪!(ペナルティ)」
 膨大な魔力出で滅びの一撃放ち出す。
 だが腹部の輝き、破神腹(ボーディガー)すべての魔法消し去りし・・・。
 「っ!」
 さすらばエル杖翳し、一振り、
 「ぐおっ!」
 生まれし衝撃。
 老人吹き飛ばし、
 「・・・これは効くようね。」 
 勝利のその笑み。
 そして突撃。
 「・・・あたしの勝ちよ。」
 飛翔し素早き一撃。
 老人に強烈なる打撃放たん瞬間に――空切りしオーブン。
 「きゃあああああああ!」
 突如その背に走る激痛。
 それに耐えつつ振り返らんば、苦悶浮かべ立ちしスターゲイザー。
 「・・大気の王よ・・大地の姫よ・・何でも良いからあいつを燃やして・・・焔滅破!(フレア・バースト)」
 激しき焔放つとともにオーブン握る手なお強め、背後の傷に耐えつつもなお疾駆。
 焔の中にて転移の瞬間。
 「何でも良いからあいつ倒して〜!!」
 輝き――運命紡ぐ上天の聖筆、その力帯し神の杖。
 オーブン突如輝き出さんば、赤と蒼の凄まじき輝き。
 「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお」
 魔人スターゲイザー貫き滅ぼす。
 「・・・ふう」 
 昇る吐息、暖かく優しき。
 戦いの終末、勝利の余韻。
 それらにエル夢の境地。
 だが激痛走りて即座に覚醒。
 「痛いから治って・・・・・・・・・治療!(リカバリィ)」
 自らの背に腕伸ばさんば、注ぎし燐光苦痛消しゆく。
 
 見回す世界――。
 激闘の渦巻き。
 「・・・ガーヴ様はどうせ勝つし、アインも強いから大丈夫♪」
 そして目止まる激しき殺戮。
 数多の魔物切捨てゆく騎士。
 「・・・シェーラにしよっと♪」
 軽やかに駆け出す。
 数多の魔族の連ならんばへ・・・。

    ◇◆◇◆

 2つの吐息。
 不協和音、そこにありて他はなきなり。
 「・・・どうした?」
 鎖の一撃、それなぶる美女。
 鮮血舞いて苦痛にうめきし女が見るは、どこか遥か・・・。
 「ぐっ・・・。」
 対峙の度に覚まされ、そしてゆく。
 戦場でなき場所。
 アインは知れぬ。
 「本気出せ!・・・出来ねえなら帰れ!」
 幼き威圧はそれで強きなり。
 だがゼラスうめくのみ。
 剣と悪魔交差せんもば、生まれし轟焔。
 「防火封陣!(ヴァイス・シールド)」
 だが魔力に消え去り。
 魂の翼、持ちし悪魔、切り裂きなお激痛もたらさん。
 ただ強きは生命力のみ。
 どこか安らぎ。
 どこか怒り。
 どこか憎しみ持ちし美女。
 満身創痍でなお飛び掛らん。
 「・・・いい加減・・・殺すぞ。」
 だがアインの瞳、瞬間覚醒。
 激しき鎖の一撃ゼラス蹂躙。
 墜ちゆくゼラス・・・。
 どこかに安らぎ。
 「・・・死ねる。」
 漏らせし呟き、儚き消えん。
 黄昏――。
 赤き雨の降りし眼。
 「・・・これで・・・死ねるのだな。」
 安らぎ浸透しゆかん。
 怒りも憎しみもすべて終わりて、死せゆくこの身。
 ゼラス笑顔。
 「・・・殺せ。」
 そして投げ掛けんば、アイン頷き、
 「レンジ君よ・・・優しく送ってやってくれ。」
 優しき言葉紡がんば、悪魔輝き、慈愛の白光。
 ゼラスへと走りゆきて・・・、
 「ぐあああああああああああああああ」
 だが瞬間闇渦巻きて、ゼラス浸食。
 「・・・おのれ・・・ゼロス!」
 叫びし時にも苦悶、強まりゆき、
 「・・・ゼロス・・・・・・・・。」
 苦しみつつに目蓋閉じんば、灰燼と帰す――。
 むなしき最期。
 「・・・すまん。」
 アインの呟き、ゆく先あらぬ。

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13453冥王の騎士4:祈りの結末:41章:この道歩むD・S・ハイドラント 2003/3/3 11:24:26
記事番号13452へのコメント

 常闇の世界も今は輝き。
 暗黒の絶望はすでに果て。
 苦しき枷より解き放たれし。
 天へと昇りゆく光の翼。
 魂そして救われるか。
 絶望的だが今は思考なき。
 煉獄待とうと、恐れんことなき。
 救済の神に乞うことなき。
 晴れやかにて安らか・・・。
 ただ昇りゆくも、 
 (・・・逃がしませんよ。)
 突如、翼重くなりゆき。
 世界は暗黒。
 おぞましき混沌。
 (・・・僕を壊した罪は・・・まだ残ってますヨ。)
 邪悪なる笑み全土より届き、無力なる魂。
 ただ脅えんのみ。
 吸い寄せられゆく。
 激動なる真の闇へ――。
 その混沌へ引き寄せられゆく。
 恐怖。
 焦燥。
 必死に抵抗。
 だが変わらず映るはあの笑顔。
 黄金の聖錫握りしめ、ただ笑う悪魔――。
 ――ゼロス。
 (・・・ふふふ、永遠に可愛がってあげますからね。)
 その手へ抵抗むなしく吸い寄せられゆく。
 やはりは抵抗けして出来ぬ。
 抗えずに恐怖の底へただ堕ちゆきて・・・。
 声なき苦悶続けしのみ。
 悪魔の左手に握り締められ・・・。
 (・・・逃がしませんよ。ゼラス姉様。)
 そんな中。
 なお闇吸い続けし背約の冥神官。

    ◇◆◇◆

 無数に飛び交う咆哮。
 そして数多の焔と闇の弾丸。
 研ぎ澄まされゆく感覚凄まじく、すべて鮮明。
 舞う速さ誰も捉えられぬ。
 覚醒せしシェーラのその速さ、数多のデーモン切り裂きて、その数ただ減らしゆかん。
 「シェーラ援護するわ。」
 エルの言葉も捉え頷き、笑顔見せつつ、魔族打ち倒す。
 闇の刃向い来ん。
 さらに背後に邪悪なる気配。
 刃切捨て瞬間跳躍、足元に至るは無数の弾丸。
 焦燥浮かべつつ、裏腹、構成頑強なりて、
 「浮遊!(レビテーション)」
 空へ逃げ切り、解除とともに巨大なデーモン一刀両断。
 闇と化す愚かなる獣。
 さらに剣、一振り。
 弾丸無数に弾き消さん。
 余裕に見やりしその先に、
 「・・・・・・ギガ・ブレス〜!!」
 魔力とともに消え去る魔物達。
 エルの活躍に心躍らせ、正面なるレッサーデーモン、切り裂きし。
 そして火焔弾、背後へ飛びかわす。
 無駄な感情浮かびて消えるも残る痛みまるでなき。
 レッサーデーモン。
 グレーターデーモン。
 恐ろしき魔族も彼女の敵でなき。
 だがレッサーデーモンなお屠る。
 瞬間焦燥。
 グリル横へ翳さんば、闇の衝撃掻き消えん。
 だが残りし衝撃、シェーラ吹き飛ばし。
 転倒しつつも素早く立ち上がり、見据える魔族、人の姿なり。
 白き衣に蒼白き肌、アークデーモンそこにあり。
 疾駆し斬撃、だが消え去りて、
 衝撃、死角より小突かれしそれのみなりて、激しき一撃、吐息噴出す。
 「天龍舞!(マイティ・サイクロン)」
 巨大なる構成。
 風の乱舞。
 アークデーモンうめき退歩せし瞬間駆け出し。
 風切り先て消え駆けしデーモンへ向けるは光。
 黄金の光素早く駆けんば、
 「dls;bd@@@sdw;fdh〜!」
 断末魔響かせ消え去るデーモン。

 「シェーラ・・・お疲れ様♪」
 「エルこそ・・・。」
 微笑み合いたそこに魔なき。
 そこへ近づき来る気配は・・・。
 「アイン♪」
 エル振り向きてアインに微笑み。
 彼薄くもそれ返し。
 「・・・あんたのガーヴ様も終わったようだぜ。」
 さすらばエル、視線巡らせ、
 「きゃあああああガーヴ様やっぱり無敵ぃ♪」
 歳に似合わぬその声にアイン溜息吐きて苦笑。

 「どうやら片付いたようですね。」
 集まりた瞬間掛かるは笑み湛えしゼロスの声。
 そこ視線皆合わせんば、同じく戦慄。
 ――強大な闇そこに渦巻きし。
 「・・・ふふふ、僕の方の準備もこれで整いました。」
 恐怖。
 それなお放つゼロスの杉石。
 「伝説の悪魔スィーフィード、僕はその力を手に入れました。」
 淡々と語る中に凄まじき喜悦。
 「・・・僕はこれで・・・無敵です・・って・・・・・・・・ぐっ・・・なっ・・。」
 だが突如浮かびし苦悶。
 「ぐおおおおおおおおおおおおおお」
 叫びゼロス放ち。
 焦燥。
 苦痛。
 怒気。
 怨嗟。
 そこ闇取り巻きゆかん。
 さらにその闇世界覆いゆきし。
 シェーラもエルもガーヴもアインも・・・。
 等しく闇に捕らえられん。
 「ぐふふふふふふふ我が名はスィーフィード。悪魔(ハルマゲドン・ビースト)なり。」

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13454冥王の騎士4:祈りの結末:42章:どんな絶望にもけして負けずにD・S・ハイドラント 2003/3/3 11:28:41
記事番号13453へのコメント

 ――悪魔――

 漆黒、暗闇、ありて無明なり。
 見えぬ世界に1人孤独。
 世界滅ぼせし伝説の悪魔。
 その一部にありて、そのすべてなりし。
 あらゆる輝きすでに見えず、心にのみ哀しく鮮明。 

 ――苦痛――

 内外に蠢きし何かはすべて苦痛となり、這い回らん。
 嗚咽と吐気の音も出ず、苦しみ悶え、絶望後悔。
 求めるは・・・滅び。
 安らかなる最期。
 等しく滅び終わり迎えんばそれ至上の幸福なり。
 それと抗いし最期の一線。
 あまりに儚き。
 ガーヴその意識薄れゆかん。
 輝き美貌に宿しつつに・・・。
 
 ――孤独――

 輝き――すでになき。
 光――すべて闇に消え。
 孤独――生き延びようと他すべて滅ばん。
 「・・・いや・・・」
 抗う心はむなし過ぎんと分かれど止まらぬ。
 「・・・ガーヴ様・・・アイン・・・シェーラ・・・」
 すべてなき光景――。
 風化せしエルのみ腐敗せし地へ歩み持つ。

 ――忘却――

 苦しみの中に記憶は鮮明。
 それなお心踏み躙らん。
 「・・・ネージュ・・・」
 哀しみの涙。
 それは浮かばぬ。
 心にすらも・・・。
 「・・・俺は忘れたんじゃねえ・・・」
 平静。
 どれほど哀しきと思えど、心動かぬ。
 「・・・俺は哀しい・・・」
 虚偽でしかなきこと哀しきか。
 忘れしこと哀しきか。
 「・・・俺はあんたが好きだ・・・」
 それすら闇に儚く侵され、消えゆく感情。
 ネージュは微笑み、そして苦しみて死せゆく。
 それに感慨浮かばぬこと痛み。
 ――忘却せしこと。
 悠久に哀しみ続けんこと。
 ――どちら、なお哀しきか・・・。
 アイン苦しみし。闇の中にて・・・。

 ――罪悪――

 すべて滅ぼせし。
 すべて掻き消しし。
 すべて招くは自らの歩み。
 「・・・フィブリゾ様・・・ガーヴ・・・エル・・・アイ・・・兄さん・・・」
 無力、無知、重なりた自分。
 それ罪とならん。
 停滞それ苦痛となりゆかん。
 求めし疾駆。
 その先は煉獄。
 だがすべて無明なり。
 終わらぬ激痛。
 見えん光景すべて心焼き、身に苦なきことシェーラ恨まん。
 
 ――絶望――

 人、あまりに弱きなり。
 その身の強さに心追いつかぬ。
 人、あまりに弱きなり。
 すべての邪念心に迎えし。
 人、あまりに弱きなり。
 心容易く移ろいゆきし。
 だが絶望の淵こそ、最大の輝きなり。
 それ掴みし人、強き人かな。

 ――希望――

 さらなる苦痛、襲い来ん。
 苦しみ悶え、続けし中に――安堵の輝き白き光。
 「・・・ってふざんけんじゃねえ・・・」
 死――。
 目の当たり、生まれし憤怒。
 「・・・どうせ死ぬなら・・・」
 躍りし心――。
 表情に生気。
 「・・死ぬなら戦って死んでやるぜ!」
 そして咆哮。
 闇に負けじと吠え上げん。
 さすらばその身、光となりて・・・。
 「・・・どうせ命なんぞ惜しくねえ!!」
 それ闇巻き込みて絶頂の輝きガーヴ生まん。

 「・・・絶望の未来なんて・・・あたしは・・・見たく・・・ないけど・・・それでも・・・生きていたい人・・・だって・・・いるはず・・・だから・・・アイン達を・・・助けて・・・。」
 エルもまた輝き生み出させし。
 それ彼女包みて光と化さん。
 「・・・さよなら・・・」

 (・・・ネージュ・・・)
 虚像は鮮明・・・。
 そして死にゆく。
 それに凄まじき心の痛み。
 そして望む滅びの光。
 「・・・って・・・俺は・・・あほか!」
 涙流しつつに言い聞かせし言葉。
 「・・・俺の命くれえならいらねえ。」
 涙虚ろながら鮮明。
 「・・・エル・・・それにあいつら・・・俺が助けてやりてえ・・・」
 生まれゆき光・・・。
 「・・・助けてやってくれ・・・」
 その光。
 世界のすべて覆い尽くさん。
 その火種こそアインなり。

 シェーラ苦しみ続けし、永久に続かん暗黒の罪。
 死――。
 それ救いにあれば、今死せよう。
 だがそこに光・・・。
 3つの輝き
 創造神――。
 光恐れぬその心
 運命神――。
 すべて想わん慈愛の心
 救済神――。
 優しく強く貴き心
 3つの輝き剣に宿りて・・・。
 そして裂くは無明の世界。
 シェーラ無心に駆け出さん。
 それ無限なる闇打ち砕きて・・・。
 光戻さん。自らの世界の――。

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13455冥王の騎士4:祈りの結末:決章:狂気に終わるD・S・ハイドラント 2003/3/3 11:41:38
記事番号13454へのコメント

 「ぐおおおおおおおおおおおおおお」
 咆哮鳴りし、それすら普遍に思おうも、明らかなりし高揚感。
 崩れゆく悪魔――。
 あまりに巨大で、あまりの恐ろしき。
 終わりの獣(ハルマゲドン・ビースト)たるものなりた。
 グリル――いや今それでなき。
 強き心、それ意味せし剣。
 悪魔とともに崩れ去りて、神話によりて古くより語り継がれし戦いに終止符打たれし。
 溜息1つ――。
 巡らん光景。
 あまりに鮮明なりて思わず笑み浮かべん。
 だが波紋静かに消えゆきて、見えし光景――あまりに寂しき。
 「・・・フィブリゾ様!」
 叫ぶ声は呼び水とならぬ。
 「・・・ガーヴ!エル!アイン!」
 だが返事なく空間静寂。
 ただ暗く暖かき。
 「・・・フィブリゾ様!!」 
 見回し見つけし。
 1つの影。
 「フィブリゾ様!!」
 素早く駆け寄る。
 少年の元へ・・・。
 「・・・フィブリゾ様・・・しっかりしてください。」
 だが冷たき・・・。
 あまりの冷たきその身体。
 命失いしもののその証明・・・。
 「・・・フィブリゾ・・・様・・・」
 死した。
 すべて失いたのだ。
 ――愛する主君フィブリゾも
 ――運命に隠されし兄アインも
 ――優しき姉たるエルも
 ――愛すら感じたガーヴも
 ――そしてダイも
 ――父グラウシェラーも
 ――公都グラウも
 ――王都カタートも
 すべて失いた。
 (これが・・・罰だっていうの?)
 寂しき歌のみ聞こえし世界に、ただ独りすべて消されただ立たん。
 恐るべき喪失、恐るべき絶望。
 ――罪に勝りし罰あらぬ。
 だが勝りし罰そこにありたか。
 「すべての・・・力の・・・源よ・・・」
 自らに言い聞かせし負け犬の宣言。
 淡々と紡ぎゆきしその構成。
 「・・・輝き・・・燃える・・・赤き焔よ・・・」
 果ては恐ろしき。
 だが止められぬ。
 「・・・我が手に・・・」
 脅え。
 震え。
 だが壊れぬ強き構成。
 「・・・集いて・・・」
 終わる――。
 だがそこにも輝きあらぬ。
 「・・・力と・・・」
 (やめて!!!)
 叫び――
 輝き。
 構成――
 霧散。
 笑顔湛えつつ視線下げれば、高揚増しゆく。
 希望を抑え、絶望と言い聞かせ、
 それでも期待し緩慢に降ろす。 
 
 ――だが何も変わらぬ。
 
 ――伏せしのみのフィブリゾ。

 ――蘇ることけしてなき。

 ――涙、再び思い出し。

 ――それ少年に降る雨となりた。

 ――それでも変わりしことはなき。

 ――現実の前で弱すぎし自ら。

 ――あまりに深く強く知りて・・・。

 「・・・火焔球。(ファイアー・ボール)」

 ――愚かなる弱き人。

 ――死せゆきた。

 ――死せし命は還らぬはず。

 ――ならば自らすでに死せしもの。

 ――死にゆくこと、なお罪なるか?

 ――訴え、そしてこの世去らん。

 ――あまりに儚きその一瞬。

 ――自らも狂いしとそう思いて

 ――そして少し、後悔せした。

 ――狂気に終わる。

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13456冥王の騎士:最終章:物語は……終えたD・S・ハイドラント 2003/3/3 11:50:21
記事番号13455へのコメント

 創造に祝福を――

 運命に忠誠を――

 救済に希望を――

 彼女は救われたのだろうか――

 彼女は望んでいたのだろうか――

 この貧しい大地に生きるものの――

 小さな小さな一雫――

 朝露のような儚い一生――

 神は救っただろうか――

 そして神はいたのだろうか――

 果てた命に護られた命――

 冥王の騎士は今――

 冥王とともに果てた――

 それが正しいのかは――

 誰が知るのであろうか――

 弱くて強かった――

 愚かな1人の人間――

 せめてここに――

 ささやかな弔いを――











 ――誇り高き冥王の騎士シェーラ――

 ――この辺で眠ってるよぉな気がする――
















 物語は偽りの命を終えた――

 冥王の騎士(完)

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13457最果て書きD・S・ハイドラント 2003/3/3 12:35:20
記事番号13456へのコメント

こんばんはラントです。
もうメッキー最後の後書きですし最果て書きです。

33章、ダイ編にりたぁん
やはり悩みはつきもの。それを振り払うのも大変

34章、ダイVSイソロイシン
イソロ君、身体弱そうなのに滅茶苦茶強い。
ダイ君がこんなところで・・・っていうか偉いのに無用心すぎる。
やはりまだ大臣の職には馴染んでいない、と

35章、シリアスかギャグか?編
まあ繋ぎです。繋ぎ。

36章、公都グラウ蹂躙編
ちなみに八魔卿の強さ順は、
バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、トレオニン、メチオニン、リシンの順です。
ちなみにこの順番は、私が辞典で必須アミノ酸を調べた時に、表がありまして、その表の上から順番がこの強さの順番です。
ちなみに基本的に強い方が偉い。

37章、VSアプロス編
世界2位の実力者である冥王アプちゃん。
だけど12枚ほどで即退場。
私の戦闘シーンってちょっと短いかも知れない。

38章、ついにゼロスとの戦い・・・の前に編。
デーモンの泣き声は意味不明ということであんなものにしました。
それにしてもガーヴ対ヒムドなんて随分前のことだし忘れてた。
ヒムドもグラウシェラーのことで一杯になって忘れてたんだと思います。
そんないい加減な、と思うかも知れませんけど実際人間、そんなもんだと私は思います。

39章、ガーヴ対ヒムド編
あれだけ激戦激闘して、ページ数ではたったこれだけ?って感じに思います。
でも読むとそうでもないけど・・・。

40章、エル対スターゲイザー、アイン対ゼラス編
スターゲイザーさんは街単位で人滅ぼす力あるけど、それ使わなかったために敗北?
ヒムドはともかくゼロスには恐らく効かないだろうしなあ。
ゼラスは当初、ガーヴとやらせるつもりだったけど、ガーヴ対ヒムドを思い出して変更。
でもこれは戦いじゃなく殺戮?
ゼラスは死を望んでいたのでしょうか。

41章、ついにスィーフィード復活編
ゼロスがまずひどい。
逝かせてあげないなんて・・・。
にしてもゼロスの野望は何だったんでしょうか。
膨大な力を使って何かをしようとしていたのでしょう。
でもスィーフィードの意識にやられちゃった、と・・・。

42章、最終決戦編
でも精神的な決戦ですねえ。
まあ『人の心の強さと弱さ』みたいなテーマが一部微量にブレンドされてますし・・・。

決章、決章ってもしかして私の造語?
検索で調べてみたら、厚生省の決章?決章化する?後、私のツリーが出てきました。
決着がつくとかそんな感じで付けました。
物語が完結してないのに終章とか付けたくなかった。(付けた頃もあったけど・・・)
でもメッキー3は確実に決着もついてなかったなあ。
何にしてもだめだよシェーラちゃん編。

最終章、感動のエピローグ?
一部それをぶちこわしかねないところが私が私たる所以でしょう。
だって泣かしちゃあ可哀相でしょ(待て)
まあまずあれで泣かれる方がいるとは思えないですけど
・・・私如きのくだらん話で・・・。
でもいつか泣かすよ。(神魔弁当のポルテ君風に)

総合的に見て、唐突度が高いかも知れない。
見所は・・・ゼラゼロの逆転ですかねえ。
というか、攻撃は最大の防御の意味も含めて、ゼロスに暴力振るい続けたゼラス様の末路?
やはり人間って難しい。
あれっ話のテーマってこれかも。

単純な苦痛、哀しいことを忘れてしまうこと、孤独、罪悪感。
いろいろありますねえ。
と言ってもこんな感情は、私の経験と想像によるもので正しいかは分かりません。
まあどうでも良いです。どうせ異世界の人間と魔人と黒トリュフですから・・・。

それではこの後、いろいろ募集などがありますので、気が向きましたらよろしくお願いいたします。

それでは〜

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13458いろいろ募集D・S・ハイドラント 2003/3/3 12:57:55
記事番号13457へのコメント

というわけで募集企画開始します。
・・・結構無茶なものもありますけど

1、総合的な感想募集。
冥王の騎士1〜4までの総合的な感想。
良い面(あるのか)悪い面(多そう)どんどん書いちゃってくださいませ。
普通のレスと同じ感じで・・・特に制限はないです。

2、○○なキャラベスト○募集。
・・・人気投票をまたやるという手もあるのですが、恐らくそれほど票は集まらないだろうと悟り、こんな企画に・・・。
説明が難しいという神託が降りました(嘘)ので例を載せておきます。

好きなキャラベスト10
1位シェーラ
2位ガーヴ
3位フィブリゾ
4位エル
5位アイン
6位ネージュ
7位ゼラス
8位ゼロス
9位アプロス
10位ノースト

とか

弟にしたいキャラベスト3
1位フィブリゾ
2位アイン
3位ゼロス

とか

お友達になりたくないキャラベスト5
1位ノースト
2位ロイシン
3位イソロイシン
4位ヒムド
5位シェイド

とか

兄貴にしたいキャラベスト4
1位ガーヴ
2位アイン
3位ダイ
4位ヒムド

とか

愛してるキャラベスト1
1位シェーラ

とか

好きなカップリングベスト7
1位ガーヴ×エル
2位フィブリゾ×シェーラ
3位アイン×ネージュ
4位ガーヴ×シェーラ
5位ダイ×シェーラ
6位エル×アイン
7位アイン×シェーラ

とか

そんな感じです。
どんなランク付けでも構いませんし、どれだけの数でも構いません。
上の感想と一緒にしてくださると嬉しいです。

3、イラスト募集
・・・無茶かも知れない企画。
・・・少々無謀すぎるかも知れません。
・・・冥王の騎士に関わるイラスト(話中の場面やイメージイラストなど)
・・・描いてくださった方には短編小説リク権差し上げます。
・・・絵板に投稿・・・で良いのかな?

それではこれで・・・。
冥王の騎士を終了します
まあ最後に何か書くと思いますけど・・・

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13459Re:いろいろ募集gure-to masa E-mail 2003/3/3 14:27:31
記事番号13458へのコメント

募集ですか……うまく書けるか分かりませんが……

1:感想ですか……おもしろかったですよ。
ガーエルと言う新しいカップリングを生み出されましたしね。
良い点と言いますと、自分には分かりやすい表現方法でしょうか。
悪い点はさしてありませんでしたよ。

2:ではえらそうな人ベスト5
1位 名前が長すぎなカタート国王(ホント、名前長すぎ)
2位 グラウシェラー(威厳がありすぎ)
3位 スィーフィード(最後でかなりインパクトがあった)
4位 シェ―ラ(やはり主人公として)
5位 ガーヴ(えらそうと言うより強かった)

3:すいません、そこまで技術が無いのでできません。

こんな物で宜しいでしょうか?
では、改めてお疲れ様でした

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13461Re:いろいろ募集D・S・ハイドラント 2003/3/3 18:09:41
記事番号13459へのコメント


>募集ですか……うまく書けるか分かりませんが……
こんばんは・・・大丈夫です。
>
>1:感想ですか……おもしろかったですよ。
そっそれが一番嬉しいです。
>ガーエルと言う新しいカップリングを生み出されましたしね。
まあなりゆきとして・・・
>良い点と言いますと、自分には分かりやすい表現方法でしょうか。
そうでしたか・・・。
>悪い点はさしてありませんでしたよ。
どうもありがとうござます。
>
>2:ではえらそうな人ベスト5
>1位 名前が長すぎなカタート国王(ホント、名前長すぎ)
確かに長い。半分というか完璧ギャグのつもりでしたが・・・
>2位 グラウシェラー(威厳がありすぎ)
まあ覇王ですし
>3位 スィーフィード(最後でかなりインパクトがあった)
本当にちょっとですけど最強キャラですしね
>4位 シェ―ラ(やはり主人公として)
まあ主人公ですし・・・しかも王子様に抱きつきましたし・・・
>5位 ガーヴ(えらそうと言うより強かった)
まあ強いですね。でも結構偉そうではあると思います。
偉いですけど・・・
>
>3:すいません、そこまで技術が無いのでできません。
まあこれはもしも的な感じですから。
>
>こんな物で宜しいでしょうか?
ええこんな感じでございます。
>では、改めてお疲れ様でした
どうもありがとうございました。
そちらこそこんな長文を読んでくださって・・・本当にお疲れ様です。
それでは本当にありがとうございました。

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13470お疲れさまでしたエモーション E-mail 2003/3/4 22:24:14
記事番号13458へのコメント

「冥王の騎士」終了、お疲れさまでした。

何だろう、こうなったかあ、と言う気分です。悲劇……ですね。

最後まで読んで、ゼロスの根本にあったのって、「姉」というより「母」を
独り占めしたいっていう感覚、シスコンというよりは重度のマザコンに近い
感覚のような気がしました。
虚像編の方にあった過去からも分かりますけど、ゼラス様はゼロスにとっては
「姉」だけどほとんど「母親」的存在でもあったわけですから、そんな感覚を
持っていてもおかしくないですし。人里離れて暮らしてたのが、余計に拍車
かけたのかな。
まったく自覚していないけれど「親離れ出来ないまま」変に歪んじゃった、
と言う感じですね。
……ゼラス様はアプロス君に会った途端、さっさと「子離れ(笑)」してましたが。

スィーフィードとの戦いの部分。ガーヴ様たちは最後にシェーラちゃんに
全てを託した、のでしょうか。
多分、世界は無事だったのでしょうけれど、たった1人取り残されて、結局
自らの死を選んでしまうシェーラちゃんが、本当に悲しいです。
シェーラちゃんには酷だと思うけれど、できれば、生きてほしかったなと
思いました。

では、○○なキャラベストを(笑)

勝手に精神分析してみたいキャラ(爆)
1.ゼロス(とっくにやってるけれど)
2.ノースト(データは足りないけれど、やったら面白そう)
3.エル様(ノーストと同じくデータが足りないけれど、かなり複雑で意外な
  結果がでてくると思う)
4.心の魔王ヒムドくん(すでに個人的には平口君扱いですが)
5.シェイド君(虚像編でのあの思考パターンは、分析してデータとして
  残すのに値します(爆))

では、変なコメントになってしまいましたが、この辺で失礼します。
本当に、楽しく読ませていただきました。
お疲れさまでした。次の作品と他の作品も楽しみにしていますね。

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13471どうもありがとうございました。D・S・ハイドラント 2003/3/4 22:49:51
記事番号13470へのコメント


>「冥王の騎士」終了、お疲れさまでした。
ついに完結しました。
嬉しいような寂しいような気分です。(今となれば後者が強い)
>
>何だろう、こうなったかあ、と言う気分です。悲劇……ですね。
そうですね。
・・・あれだけ引っ張って悲劇というのは問題あるかも知れませんけど、結局、人は弱いんだということで・・・
>
>最後まで読んで、ゼロスの根本にあったのって、「姉」というより「母」を
>独り占めしたいっていう感覚、シスコンというよりは重度のマザコンに近い
>感覚のような気がしました。
そうかも知れませんね。
>虚像編の方にあった過去からも分かりますけど、ゼラス様はゼロスにとっては
>「姉」だけどほとんど「母親」的存在でもあったわけですから、そんな感覚を
>持っていてもおかしくないですし。人里離れて暮らしてたのが、余計に拍車
>かけたのかな。
確かに意識はしてないですけど、そうかも知れないです。
>まったく自覚していないけれど「親離れ出来ないまま」変に歪んじゃった、
>と言う感じですね。
まさにその通りですね。
・・・私よりこの話を理解されているような気が・・・
>……ゼラス様はアプロス君に会った途端、さっさと「子離れ(笑)」してましたが。
そうですね。
それにゼラス様には行動はともかく母的な意識は薄かったのかも知れません。
>
>スィーフィードとの戦いの部分。ガーヴ様たちは最後にシェーラちゃんに
>全てを託した、のでしょうか。
そうですね。まあ他の3人に託したって感じかも知れませんけど・・・。
他の3人は苦境を乗り越えましたけど、シェーラちゃんだけそれは出来なかったというのもあるかも知れませんけど・・・。
>多分、世界は無事だったのでしょうけれど、たった1人取り残されて、結局
>自らの死を選んでしまうシェーラちゃんが、本当に悲しいです。
>シェーラちゃんには酷だと思うけれど、できれば、生きてほしかったなと
>思いました。
すべてを失って立ち上がれるか?
そんな感じですかねえ。
ガーヴ様、アイン君、ならば大丈夫でしょうけど、やはりシェーラちゃんは弱い。
そう思います。
>
>では、○○なキャラベストを(笑)
>
>勝手に精神分析してみたいキャラ(爆)
>1.ゼロス(とっくにやってるけれど)
こちらは少々ゼロス度を残しつつ、一般人ではないけど人間的って感じにしたいと思いましたから・・・結構良い結果(?)が出ると思います。
>2.ノースト(データは足りないけれど、やったら面白そう)
ちょっと私には理解し辛いキャラかも知れないです。
>3.エル様(ノーストと同じくデータが足りないけれど、かなり複雑で意外な
>  結果がでてくると思う)
結構意外に複雑だと思います。
昼のは演技というか哀しさをごまかすためという可能性もありますし・・・。
>4.心の魔王ヒムドくん(すでに個人的には平口君扱いですが)
この方は実はさほど重要ではないですねえ。
でも初めて、本当の人間性(のような気がするもの)に挑戦してみたりしました。
ちょっと過剰でおかしくなりましたけど、心の中はあんなもんとは言いませんけど、そういう部分を含んでいるんじゃないかって思うわけです。
>5.シェイド君(虚像編でのあの思考パターンは、分析してデータとして
>  残すのに値します(爆))
・・・どちらかというとギャグキャラ?
・・・人間性無視してると思います。
>
>では、変なコメントになってしまいましたが、この辺で失礼します。
いえもの凄く素晴らしいです。
エモーションさんにこれだけのご感想を頂けたことを誇りに思います。(いや本気で)
>本当に、楽しく読ませていただきました。
それは何よりです。
>お疲れさまでした。次の作品と他の作品も楽しみにしていますね。
・・・後は虚像編で後一作ほどやって、後は適当に短編書きつつ、HP作成に向けてがんばろうと思います。
新作はHPの方になるかも知れません。

それでは、本当にありがとうございました。

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13473奈落の果て書きD・S・ハイドラント 2003/3/5 12:54:53
記事番号13458へのコメント

こんばんはラントです。
メッキー完結としてまだまだ後書きは続きます。
あっでもこれで本当に終わる予定なので御安心を・・・


というわけで、キャラのレシピ。

メッキーのキャラクター達を私がどうやって作り上げたか(作成過程ではないです。)

シェーラ:覇王将軍シェーラ(スレイヤーズ)+私

フィブリゾ:冥王フィブリゾ(スレイヤーズ)を勘で再現。

ガーヴ:魔竜王ガーヴ(スレイヤーズ)を勘で再現して微妙にアレンジ

エル:L様(スレイヤーズ)を勝手に想像

アイン:オーフェン(魔術士オーフェン)をアレンジ

ネージュ:名前はフランス語で雪 の精。その他はオリジナル

ブリガミア:過去のオリジナルキャラクター、ブリガミアを勘で再現

アプロス:フィブリゾをアレンジ

ゼラス:獣王ゼラス(スレイヤーズ)を勘で再現しつつアレンジ

ゼロス:獣神官ゼロス(スレイヤーズ)を勘で再現しつつアレンジ

ヒムド:名前は、ヒムズ(ウィザードリィ)をアレンジ

ノースト:ジュリオ(ホルス・マスター)をアレンジ

ダイ:ユーグ(ホルス・マスター)をアレンジ

ラルターク:ラルターク(スレイヤーズ)を勘で再現。

ジェイナス:コルゴン(魔術士オーフェン)を微妙に意識

マイナーキャラや、参考のないキャラは無視します。
ちなみに参考にしたキャラは初期としてであり、アレンジは相当掛かっていると思います。
基本はスレイヤーズですね。
世界設定はむしろオーフェンに近いですけど(魔法のシステムとか・・・)
というか事実、3種類からしかキャラは参考に取ってない。

ちなみにお気に入りはノーストのモデル白面のジュリオさん。
結構普段、慇懃にしてるけど本性現したような時が最高。
 ホルス・マスター2巻の、
 「貴様のような鼠輩に呼び捨てにされる覚えはない。」
 辺りのセリフは強く残っている。(似たようなのを使った覚えが・・・)
 このシリーズ、キャラクターが個性的(ちょっと異常?)で面白くて、戦闘シーンが凄い。
読めて本当に良かったと思ってます。
今じゃ入手も難しいでしょうけど・・・。

後、コルゴンは魔術士オーフェンでは最高。
スレイヤーズではカップリングフリー(最近ではメッキー版のガーシェラなんか良いなあとか思ってますけど←スレカップリングじゃないなあ)ですけどオーフェンなら間違いなくコルゴン系カップリングを推します。
アインがオーフェン風になったのはまあカオレジェからのことですので・・・。

スレイヤーズでは、ガーヴとゼルかな。

男ばっかりですねえ。
でもメッキーではシェーラちゃんが最高。
フィブシェラ、シェイシェラ、ダイシェラ、ガーシェラ、アイシェラ、どれも良いですねえ。
まあ2つ以上重なると争いがおこるか、双方から睨まれる不幸なキャラかも知れません。
初期は完全なフィブシェラですけど、最後はガーシェラも入ってます。
アイシェラはなかったですけど、実はシェーラちゃんは気にしていたかも知れない。

シェーラちゃんは結局自殺という形に・・・でも私に自殺願望なんて全然ないですよ。
確かに私が+されてますけど・・・。
「どうせ死ぬならいつ死んでも同じ」とか聞くこともあるけど私は、「どうせ死ぬなら、一秒でも長くそして楽しく生きていたい」って思いますね。
生は死への猶予でもあるでしょうから
まあ若いからか・・・。
 って全然関係ない話に・・・。

 さて、そろそろHP作りたいです。
 何とかがんばりたいです。
 後、現在新作書き中。
 タイトルの予定は、『魔王探偵エル』
 やっと60枚ほどいきました。
 まだまだ終わらない・・・。

 それと別に書いてみたい話。
 スレイヤーズのキャラ達がメッキーキャラに・・・。
 リナ=フィブリゾorエル(どっちにすべきか微妙)
 ガウリイ=ガーヴ
 アメリア=シェーラ
 ゼルガディス=アイン
 レゾ=ノースト?
 ゼロス=ローザリア・ラ・トゥール・ポルテ(虚像編に出てました)
 フィルさん=グラウシェラー(なりゆきで)
 シャブラニグドゥ=ヒムド(心の『魔王』だから・・・)
 でもガーヴとかフィブリゾとかになると困るか・・・。
 でも実際にこの話書くか分かりません。
 気力と時間とやる気がある状態でかつ、これより書きたい話がなかった場合くらいしか・・・。
 後、キャラをすべてオリジナルで埋めた神魔弁当も書きたいですねえ。
 でも掛け持ちすると悪夢なので、やめとこうかな・・・。
 気がむいたら(確率は低い)連載するかも知れません。
 
 それではほとんど独り言的な感じになりましたけど、この辺りで・・・近日(今日かも)虚像編投稿予定です。
 後、神魔弁当の平和な時代の短編を書くかも・・・。

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