◆−crystal〜2〜−海月    水 (2002/11/23 17:14:52) No.11627
 ┣Re:crystal〜2〜−渚 (2002/11/24 08:40:31) No.11645
 ┃┗ナイスなゼロスさん(ぇ−海月    水 (2002/11/26 22:34:45) No.11715
 ┗crystal〜3〜−海月    水 (2002/11/30 01:57:38) No.11787
  ┗Re:crystal〜3〜−渚 (2002/11/30 09:57:47) No.11790
   ┗番犬ルナティックさん(笑−海月    水 (2002/12/1 04:13:16) No.11820


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11627crystal〜2〜海月 水 2002/11/23 17:14:52


はぉ。です(誰
久しぶりにご登場♪ み──
「ルナですわ♪」
て、こら。人の自己紹介部分を勝手に取らないで。
「いいじゃありませんの。このところ、私の出番がめっきり減ってるじゃありませんの。
それでも、貴方、私のファン?」
違う。
「即答Σ(゜Д゜;;」
こんなエルフに構わないで、先に進みましょう。
2話目。どーぞ^^






「お目覚めですか?」
問われた問いに対してこくり、とだけ頷く小さな闇。
気を失う前に言われた言葉が重く圧し掛かり落胆せずにはいられない。
「やれやれ…本当に精神力だけは強いですね…」
どういうことだとばかりに首を傾げる。
「僕達ですらここに来れば小さき者は消え去ってしまう」
「そんな場所に私を落としてどうする気だったの!?」
「無論のこと、消すつもりでした」
「でした?」
「今は再利用でもしてあげようかと思いましてね」
「再利用? 私を不良品みたいにいわないでっ!」
「どう考えても不良品です。
アナタの器はまがい物。器と内容の許容量があってない者でしょう?」
器は創られた存在。だが、元々の体よりも器は小さく精神が大きさに付いて行けない。
「私は私。キチンとした名前だってある!」
「もういらないでしょう」
パチンと指を鳴らすと、小さな闇は再び気を失った。



私という存在はなんなのか教えて欲しい。

私はつかの間に全てを失い生きている。

こんな存在をなんと罵ればいい?

私は…このまま生きていなければいけないの?

出来るならこの世界から私を消して。

出来ぬのなら、せめてこれから起こす行動を止めて。

もう自身では制御できないから。





即座に遺跡の外へと出て来たリナをのほほんとした顔でガウリイが出迎えた。
「リナ、預かり物だ」
はい、とばかりにリナの短剣を手渡し、

ドガッ!

その柄でガウリイの頭を弾き飛ばす。
「いってぇぇぇぇぇっっ!?
なにするんだ! リナッ!!」
「ここからアメリアが出て来たでしょ!? どっちに行ったの!?」
「あ、あっち…」
力なく指差し、リナはガウリイを掴み引きずって駆けていく。いくらなんでも置いていく行為はしない。だが、力尽きたのかガウリイは自分から駆けることはせず引き摺られていく。
走り続け、前方に黒い人影とユナ、倒れているアメリアを発見してリナは足を止めた。
どんっとガウリイをその場に置き去り、ゆっくりと歩み出る。
黒い人影もリナに気付いたのか顔を上げ、にっこりと微笑む。
「おや、リナさんではありませんか」
最も闇を崇める神官、自称謎の神官(プリースト)ゼロスは切羽詰まった状況だというのにも関わらず、親しげに話し掛けてくる。
長年(?)の経験を生かし、リナもにっこりとした笑みを浮かべた。
「あらぁ、ゼロスじゃない。こんなところで会うなんて奇遇だわ。
今回はなにを企んでるの?」
すっと目線をゼロスの後ろに向けて、
「その娘を使ってなにしようとしているの?」
先程の楽観的な口調とは違い、真剣みを帯びた口調で言い放つ。
ゼロスの後ろには自称悪魔の申し子であるユナ=サンドラースが立っている。
「それは秘密です」
口元に人差し指を当て、お得意のポーズ。
「私はただ、クリスタルを集めるだけ。
悪魔は関係ない。全て私の意志」
そういうユナの瞳はあまりにも無機質で不気味なくらいなにを考えているのかわからない。見ただけで寒気がするような瞳。
リナでさえ直視することを避けた。
「そこの女の子にとってはゼロスが悪魔ってことか…。なら、殆ど魔族と変わらないわね」
「だから、魔族じゃない。私はこんな奴に良いように使われてない」
余程嫌みに聞こえたのか身を乗り出し、顎でゼロスを指しながらユナは言った。
「全ては私の意志」
にこりと笑う。
「例え、クリスタルが集る前に死んでしまっても…誰かに継いでもらおうとは考えない」
「魔族の目的は知ってるでしょう? 殺されるわよ?」
「……十分。殺されても悔いはない」
ぽつりと呟く。
「私は殺され本物の悪魔の袂に還える。それこそ私の理想…」
薄気味悪い笑みを携え虚空へと手を伸ばす。
空の彼方にいるとされる悪魔に触ろうとしているかのように。とても正気を持っているようには思えない異常な状態だ。
あまりの不気味さにリナとガウリイですら怖さを覚えて後ろへと一歩下がった。
リナは目で合図を送り、ガウリイに倒れているアメリアを移動させてもらう。安全とはいかないものの、少し離れた場所まで移動させたのを確認してから口を開く。
「…ねぇ、ゼロス。なにをしようとしてるの?」
「それも秘密です」
「私を殺してクリスタルを奪うこと。その力を使って新たな能力をつけること」
「そう…」
即答したゼロスは、茶々を入れるように言ったユナの言葉に大きく顔を顰めた。
先程の質問はゼロスに対してではなく捨て駒として使われているユナへと聞いたもの。まんまと企んでいることを聞き、リナはにんまりと笑う。
「今回は敵関係ね。ゼロス。隙あらば速攻で行くわよ」
「おや…では、寝首をかかれないようにご注意しましょう」
「ちょっと。魔族の寝首なんてかけるわけないじゃないのよ!」
「気に入りませんでしたか? 一種の言葉の替えでしたが」
言われてハッとする。隙を寝首を置き換えたのだろう。それならば意味も通る。「言葉のかえ…?」
一人判ってない者もいるようだったが、その言葉だけが耳に入らなかったように、あるいは聞き流したかのように彼等は無視を決め込む。
「悪魔、私は先に行く」
「分かりました。すぐに追い付きましょう」
この状況に飽きたのかユナは一人スタスタと歩いていく。
そして、ゼロスの真剣な言葉を聞いた直後、彼女の姿は世界に溶け込むように消え去った。魔族ならではの空間移動能力。それをユナも使えるというのか?
悪魔の申し子という言葉が不意に頭を過ぎる。到底信じることなど出来ぬ言葉。だが、目の前で消え去る彼女を見て、どう思うか。魔族か、それとも本物の悪魔の申し子か。どちらにしろ、一筋縄では敵いそうのない相手。
リナはごくりと唾を飲む。
「驚きましたか?」
「驚かなきゃオカシイでしょ」
「そうでしょうか? 魔族と言っていれば驚きは半減しましたか?」
「魔族なの!?」
悲鳴に近い声で問いただす。
なにぃっ?と後ろでガウリイの声が上がる。野生の勘を持つ者が…ゼロスを魔族だと一瞬で見ぬける彼が驚きの声を発している。これは、気付かなかったなによりもの証拠。
では矢張り、魔族ではないのか?
「彼女の正体は───」
ごくりと息を飲む音が如実に伝わってくる。
それほどまでに緊張したこの場で彼が言った言葉は簡易だった。
「秘密です♪」
これ以上追求されぬようにか、直後、リナやガウリイが口を開くよりも早く闇の神官は消え去った。
なにかを言うために開けた口が塞がらない。
諦めに似た表情でガウリイがリナのショルダーガードに手を置いた。ゆっくりと振り向く悲しみにも似た表情のリナに首を横に振った。追えないとばかりに。
途端に顔を下に向け、わなわなと震える。泣いているのか? 慰めた方がいいか。自問している隙だらけのガウリイにリナの一撃は確実にヒットした。
泣いていたのではなく、悔しさに打ち震えていたのだ。その悔しさからか、リナは八つ当たりを刊行した。近くに居た、やり場に向って。どこからともなく出したスリッパは赤ゼロス仕様ににか、魔王霊斬(アストラル・ヴァイン)が掛かった状態のようで、薄っすらと赤い光を帯びている。
「どうしてくれんのよっ! 逃げられちゃったじゃないのよっ!!」
「オレのせいじゃないだろーっ!?」
「ンなことは分かってるわよ。単なる八つ当たりなんだから気にしないで♪」
「気にするに決まってるだろうがっ!!」
「器の小さい奴め…」
っち。渋々リナは凶器(?)であるスリッパを懐に仕舞い込んだ。
「ふつーは怒るぞ…」
「ふん。心のひろーい人はこんな些細な事は気にしないのよ!」
「“恐ろしい人種”だな…」
少しリナは考えてみた。
喧嘩をし、謝る代わりに「どうぞ、気が済むまで殴りなさい」なら分かるが、なにもやっていない善良な市民が「僕は気にしない。さぁ、好きなだけ殴ってくれ」と言われたら寒気が走る。決定的なマゾ人種。
恐ろしい想像に思わず怖気が走った。
「と、とりあえず、ゼロスには逃げられちゃったか…」
「クリスタルがどうとか言ってたが…」
一刻も早く恐ろしい話題から違う話題に変えたい。その一心で適当な、しかも今にぴったりの言葉を捜しあて話題を逸らす。例の心のひろーい人がどんな者達か分かっていたのか、ガウリイも話に乗ってくる。
「確か──祝福という滅びを捲くって。クリスタルがあれば、全てを滅ぼすことはた易いって…」
「げ…それじゃあクリスタルってのを渡すことは出来ないなぁ」
そう、渡すことなど出来ない。だけど、肝心なある場所が分からない。
遺跡荒らし紛いのことをやりつつ強行突破でユナも全力をあげて探している。
どちらもある場所は分からないのだ。これでは手の打ちようがない。
「──ところであのユナさんってどこかで見た事ありませんか?」
「どこかでって言われても…見覚えないわよ」
「じゃあ、私の気のせいでしょうか…」
「既視感(デジャ・ヴュ)でしょ」
呆れたように呟く。
そして、2人はどうして気付かないのか。とばかりに同時に口を開いた。
『リナ(さん)』
二重に重なる声を聞いてようやく理解したのかリナはハッと驚きの顔を見せる。何時の間に気がついたのか、そこには元気いっぱいのアメリアが立っていた。
「アメリア、いつ目が覚めたの?」
「リナさん達が夫婦漫才してる時ですよ」
頭を抱え言う。いつもいつも何度やれば気が済むんですか…と、何気に愚痴をこぼす。
「ところでクリスタルって何度か聞きましたが、世界を滅ぼすほどの力を持っているですか? このクリスタルが…」
言い、目線の高さで握っていた手をゆっくりと開く。手の中には正五面体の石。緑色をしていることからみれば、これはまごうことなき『風のクリスタル』。先程ユナが必死になって捜し求めていたクリスタルの一つだと簡単に想像はつく。
だが、なぜ遺跡にあるはずのクリスタルをアメリアが持っているのか?
謎は謎を呼び寄せる。分かる謎よりも分からない謎の方が多く困惑させるには十分だ。
「なんで…持ってるの?」
「…私…まだルナさんに会ったばっかりの頃にあるお守りを貰ったんですけど…その中にそのお守りの中に入ってました…。
目が覚めた時に分かったんです。すっごく固い物が当たってたんでなにかなっと思ったんです。暴くのは良くないと思ったんですが、どうも呪符系が入っているようにも思えなくて…」
おずおずと言う申し出にリナは諦めに似た表情をしながらアメリアの肩を叩く。
「“盗賊姫”」
びくびくぅぅぅぅ。
一瞬にして笑みが凍り付く。
正義を貫くアメリアがこんな台詞に反応しない訳がない。先程の夫婦漫才という言葉に対する仕返し的な意味が含まれていた。
「ちっ、ちがいますぅぅっ!!
その…えと! とにかく盗賊じゃありませんっ!!」
「一番最初に見た時から才能があるんじゃないかなっと思ってけど、プロね」
にやりと笑う。からかいの口調が含まれていることに気付き、アメリアはふてくれたように頬を膨らまし、さっさと歩いていってしまう。
からかい過ぎたかな? と反省しながらリナとガウリイも彼女の後を追っていった。







ルナー。クリスタルとは?
「さぁ、忘れましたわ(遠い目)」
まぁ、年齢が百───
「射られたい?(弓を構え)」
い、いえ…(汗
てか、脅すのは卑怯千万っ! 正々堂々戦いなさいっ!!
「誰デスカ。貴方ハ(汗」
貴方コソ誰ダ(爆
「真似しないでー(><;;;;」
なんて、言い合いしてても意味はありませんね。
今回はこれにて。
3話はいつ投稿できるでしょう^^;;

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11645Re:crystal〜2〜2002/11/24 08:40:31
記事番号11627へのコメント

>「やれやれ…本当に精神力だけは強いですね…」

精神力だけって・・・・ほめてるの?けなしてるの?

> どんっとガウリイをその場に置き去り、ゆっくりと歩み出る。

さっきから、ヒデー扱い、ガウリイ。

> あまりの不気味さにリナとガウリイですら怖さを覚えて後ろへと一歩下がった。

ガウリイも状況はつかめてるのか。よかった、よかった。

>「彼女の正体は───」
> ごくりと息を飲む音が如実に伝わってくる。

・・・・・。期待させといて、いつもの言葉だったりして。

>「秘密です♪」

あらら・・・・。やっぱ、ゼロスだ。

>「──ところであのユナさんってどこかで見た事ありませんか?」

あれ?アメリアだよね。

>3話はいつ投稿できるでしょう^^;;

面白かったー。
リナには、ガウリイとの夫婦漫才が必要だね。
それでは。

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11715ナイスなゼロスさん(ぇ海月 水 2002/11/26 22:34:45
記事番号11645へのコメント


>>「やれやれ…本当に精神力だけは強いですね…」
>
>精神力だけって・・・・ほめてるの?けなしてるの?

まぁ、誉めてるかな?
役立つものをみつけたっところなんでしょうがね。


>> どんっとガウリイをその場に置き去り、ゆっくりと歩み出る。
>
>さっきから、ヒデー扱い、ガウリイ。
嫌ってるわけじゃないんですけどね。こうしないと私の場合なかなか出番がないんですよ^^;;


>> あまりの不気味さにリナとガウリイですら怖さを覚えて後ろへと一歩下がった。
>
>ガウリイも状況はつかめてるのか。よかった、よかった。
>>「彼女の正体は───」
>> ごくりと息を飲む音が如実に伝わってくる。
>
>・・・・・。期待させといて、いつもの言葉だったりして。
>
>>「秘密です♪」
>
>あらら・・・・。やっぱ、ゼロスだ。
この秘密です攻撃が一番のお気に入りっ!
ゼロスさんナイスだっ!(誰


>>「──ところであのユナさんってどこかで見た事ありませんか?」
>
>あれ?アメリアだよね。
>
>>3話はいつ投稿できるでしょう^^;;
>
>面白かったー。
>リナには、ガウリイとの夫婦漫才が必要だね。
>それでは。
超合金娘と称される名はだてじゃありませんね!(ぇ
夫婦漫才は一番楽しく書いてます。シリアス路線になってくるとギャグがそれしか書けないから随分と重宝してます(笑
毎回感想をありがとうございます。
出来るだけ早く続きが書ける(というか、直す)ようにしますね。


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11787crystal〜3〜海月 水 2002/11/30 01:57:38
記事番号11627へのコメント

こんばんわです。
3話目を投稿しにきました。
「全く、時間がかかりすぎですわ。
いっそのことクラゲもユナみたいに悪魔の申し子になればどうですの? 移動方法が楽ですわよ」
移動を早くしてどうするのっ!
「鈍い鈍いって有名じゃないですの。ですから、その鈍さを改善しようと言う計画ですわ」
(無視して)さてと3話目どーぞ。






───遺跡荒らしは進行!
誰か止めれる勇者を求む───

確実に荒らしの被害は増大していく一方だった。
『風のクリスタル』を意外な形で発見してから丸1日。たった1日で3つの遺跡が壊滅、2つの遺跡がいつ崩壊してもおかしくない状態になってしまったそうだ。
1日でどれだけクリスタルを自称悪魔の申し子は見つけたのか。ビラだけでは矢張り判らない。
なす術がなく、今遺跡に行ったとしてももう破壊されている後かもしれない。クリスタルを抜き去られた後かもしれない。そう思うと腰は重くなる一方で足も棒のようになり歩く意欲さえ湧かなかった。
クリスタルを見つけさせてはいけないということは判っているのだが、肝心のクリスタルがいくつあるのかが不明だ。もうアメリアの手元にある『風のクリスタル』以外見つけているというならば、出向く必要はない。相手は確実に彼等を狙いに来ることになるのだから。
「ねぇ…」
沈黙の続く昼食時、リナが突然口を開いた。
「『風のクリスタル』はなんでシャドゥールが持ってたんだろう?」
「昨日も考えて、ルナに聞かなきゃ判らないってことで終わったんだろ? 今更考えてもなにも出てこないぜ?」
ぐすりと昼食にしては割と豪華なお肉をフォークで刺しながらガウリイはリナに訊ねる。
「そうじゃないのよ。持ってるってことは、クリスタルを見つけたことになるわけでしょ? つまり──」
ガウリイが突き刺し、口に持て行こうとするお肉をナイフで斬り、豪華な肉を2/3ほど奪い取った。
そして、味わうように噛みながら続ける。
「クリスタルの何かを知ってるんじゃないかってこと」
「それって…遺跡探索で見つけたとか言われたらどうするんですか…?」
リナとガウリイよりも先に食後のデザートを食べているアメリアが茶々を入れる。
「多分、あの遺跡を護っていた雷のようにどの遺跡にも属性に関係する力で護られてるんだと思うの。
で、シャドゥールは魔術には疎いわ。それなのにわざわざ危険を冒してまで遺跡探索をする?」
「まぁ、普通に考えれば、危険を冒すようなことはしないよな…」
元は傭兵として暮していたガウリイの言葉。のほほんっとしているが言葉に少々の重みがある。
「でしょう?」
ぴっとナイフで人を指す。危ないことこの上ないが、距離は十分にあるから間違えて刺すなどという間抜けなことはないだろう。
「つまり、シャドゥールはなにかを知ってるわね。このクリスタルに関わる秘密を。
ちぇ…。番犬なんてさせるんじゃなかったわ」
「いまさら悔やんでも遅いだろうに…」
「分かってるけどさ…」
フォークでにんじんをズブッと刺し、口に運ぶ。
それを見ながらしょうがないか。という諦めの表情に変る2人。
リナのお宝への執念を知っているからこその反応なのだ。そう、彼女をよく知らない人物ならこんな表情はしないだろう。
「だからと言ってこのままルナさんとゼルガディスさんが帰ってくるのを待ってたら全部の…この『風のクリスタル』以外取られちゃいますよ?」
「…………そうなのよね」
はぁっとため息を吐き、ずっと握り締めていたフォークとナイフを置いた。まだ食事の残りがあるというのに。
ここぞ!とばかりにガウリイが残った食事に食いついた。
「笛かなんかで呼び出せればいいのに…」
「…リナさん…2人は魔道の道具(マジック・アイテム)じゃないんですよ!?」
「分かってるってば!
でも、どうにかしないとクリスタルは取られる。秘密は判らないになっちゃうのよ」
「やるべきことをやりましょう。遺跡を探しましょうっ!」
ガッツポーズを作り、バックに炎を燃やしながら勢いよく立ち上がった。そして、びしぃっと遠くの方を指差しながら言うアメリア。これだけ熱が篭っていると止めるのさえ難しい。
が、リナは至って平然な様子で一言だけ告げる。
「どこの遺跡かも判らないでしょうに。まだ見つかってない遺跡だったら調べられないのよ?」
あ、そっか。彼女はすぐに納得してすとんっと腰を下ろした。
行き詰まり、やる気のない表情でだらりとする。そんな状態の2人など気にせずにがちゃがちゃと食事だけに専念するガウリイに対し、リナがキレた。
ガウリイが狙いを付けた料理を皿ごとテーブルの上から取り去った。
すると、食べ物に狙いを付けていたフォークがテーブルにぐさりと刺さってしまう。
「りぃなぁ…なにするんだよ!」
「アンタねぇ、少しは話し合いに参加しなさいよっ!」
「オレなんかが参加しても意味がないだろ!?」
自分の頭の弱さを開き直っているのか堂々と恥ずかしげもなく叫ぶ。
「使ってないから腐れていくのよ! ちっとは頭を動かしなさい! そうしたら少しは回復するかもしれないわよ?」
「甘い! 難しい話を聞いていたら即眠くなって落ちるぞ!」
突っ込みをする暇も、止める事も出来ないような白熱した喧嘩の両サイドに挟まれ、アメリアは肩を落とした。
どこかに行こう。そう考えて、コップに注がれていた水を含み、少し落ち着く。
「!」
と、何気なく視線を外にやって言葉を失った。
一人の女の子がいきなりその場に現れた。若草色の髪に白のワンピース。そして、夜の闇よりも深い漆黒のローブを纏っていた。
間違いなく遺跡荒らしの女の子だ。
まさか、こちらがクリスタルを持っていると判って取りに来たのか? もう『風のクリスタル』以外見つけてしまったのか。
不安が過ぎるが、こちらを見ることなくユナ=サンドラースはゆっくりとした歩調で歩いていく。
ほっと安堵の息を吐き、追うことを決心した。一度リナ達のことを見たが、今話し掛けてもまともに聞いてくれる状態ではない。アメリアは一人立ち上がり食堂屋から出て追った。
ゆっくりと歩いている筈だ。すぐに見つかる筈。
だが、食堂屋から出た時には既に小さくなって、捕らえるのも難しいほど遠くにいた。
「待って、待って下さいっ!!」
たたっと駆け出し黒い姿を追う。
「ユナさん、待って下さいっ!!」
黒い姿が急に止まった。
遠くからの声に反応した──わけではなく、誰かにぶつかられて荷物を落としたようだ。
ぶつかった相手はガンを付けたようだが、ユナの取り巻く雰囲気に驚いたのか、びくりと体を震わせ捨てぜりふを破棄逃げ帰っていく。
ユナの独特の雰囲気は言い表わせるようなものではない。悪魔のようで子供だというのに不気味さと幻想のなかで創り出された魔界と言えるべき空気をまとわせている。ユナ=サンドラースは尋常ではない者だ。
「ユナさん!」
ふと、自分を呼ぶ声に気付いたか、ユナ=サンドラースはこちらを振り向いた。
「…何か用?」
敵同士なのにあっさりとした問い。その言葉にもなんの感情も込められてはいないだけに、突然アメリアが声をかけた事に対する感情も読み取れない。
「もう…クリスタルは全部見つけたんですか?」
「…新しく土と水、光を見つけただけ。風だけが見つからない」
びくっとアメリアは怖さに震えた。
“風だけが”ということは、言換えれば風以外のクリスタルは揃っていることになる。そして今、ここの空間には全部のクリスタルが揃っている。
『風のクリスタル』をリナに預けてくればよかったかもしれない。そう思いながら、表面上だけは平然を装いながらも少しでも多くの情報を得ようと慎重に会話を進めた。
「1日で3つも見つけたんですか?」
「クリスタルは魔法の攻撃に強い。焼き払っても無事な場所、そこにクリスタルは存在する。だから、簡単に見つけられる。流石は世界を破壊させるほどの力を持つクリスタル…」
だからこそ遺跡荒らしと称されるぐらいに破壊の限りを尽したということなのだろう。
かちりと謎を解くためのジグソーパズルのピースが頭の中で音を立ててはまる。
「でも、ユナさんに見せてもらったクリスタルに世界を滅ぼさせるほどの力があるとは思えません」
思ったことを口にした直後、ユナは不気味な笑みを浮かべた。
その笑みだけで周りの温度がどれほど下がったか。それは判らなかったが、歩いていた人達は変化を感じ取ったのかその場から退く。
「だったら試してみる?
『光のクリスタル』がある今、全部の力を『融合』する事が出来るのだから」
くすくすくす。含み笑いをしながら布袋から取り出した4色のクリスタルを浮かび上がらせる。
クリスタル同士が火花を散らし合い力の流れが感じ取れる。
なくさないようにと袋に入れ首から下げていた『風のクリスタル』が力に反応しているのかすごく痛く熱い。
「『融合』…?」
「個々では変哲もないエネルギーだけど、全てを纏め上げればどうなる?」
「…!」
膨大な力は一個にまとめられるとより強大になるのは扱く当然。そして、『融合』から世界が破壊されるほどの力を生み出す。
5つのクリスタルで世界が破壊されるほどの力。では、4つのクリスタルの『融合』だとどれほどの力が創られるのか?
「クリスタルよ! 世界を揺るがすほどの力よ、ここに集えッ!」
バチバチ…バチバチ!
クリスタルから火花が出て、突如地面が揺れる。轟音が鳴り響く。
突然の出来事に驚き、悲鳴を上げ、逃げ惑う人々。
そんな状況にも関わらず、原因を作り出した10歳ぐらいの女の子はくすくすと無邪気に笑うだけ。
「止めて…下さ…い!」
揺れ動く地面に手を付き、舌を噛まないように注意しながらアメリアは叫んだ。
「なぜ? 形あるものは滅ぶもの。今滅ぶもあとで滅ぶも変わらない」
ユナの後ろで建物が到壊し、埃が巻き上がる。
なにかを言うために口を開きかけ──ユナはひょいっとその場から跳ぶ。完全に飛び退いたあとに炎の球体が地面に接触し爆発した。
すとんっと近くの建物に着地しクリスタルを手の中に納め布袋に仕舞い込む。それと同時に地震も収まった。
「なにをするの? 危なかった」
彼女の視線の先には自信満々の笑みで立っているリナとのほほんっとした顔で立っているガウリイがいた。
だが、ユナの言葉に答えることなく、リナはすっと手を出す。
「そのクリスタル渡しなさい! でなければ──」
「でなければ?」
心底恐いと思っているような口調ではなく、むしろ嬉々している。追いつめられているような状況であるにも関わらず、今の状況を楽しそうに過している。彼女にしてみればこれが当たり前なのかもしれないが、不気味さがあった。
「アンタを倒してクリスタルを奪うわ」
「そんなこと出来る? 貴方に出来る?」
「出来るわ。アンタが敵である以上わねっ!」
ジャキっと音を立てながらガウリイが剣を引き抜く。
「あぁ、それと5対1ですわよ? 貴方に勝ち目などありませんわっ!!」
ユナの丁度後ろ、リナたちとは正面に向き合う形で彼等は現れた。先程戻ってきたのか、ルナとゼルガディスが立っていたのだ。
「話は後だ」
口を開きかけるアメリアを牽制し、ゼルガディスはユナを睨む。
「…何か用? 貴方に恨まれるようなことはなにもしてない」
「目の前で写本を燃やしただろうッ!」
「それは悪魔がやったこと。私とは無関係。それに、アレは写本じゃない。クリスタルを創った者が残したただの資料」
怒鳴り散らす声を平然と受け流しながらもユナは全員を見た。
全員、一度会った事のある者。その強さも把握しているつもりだ。勝てなくはない人数。だけど──。
少々考え、不敵に笑った。
「なぜ、そんにもクリスタルにこだわる?」
「それはこっちの台詞よっ!!」
「私の目的はとうに告げた。あなた達はクリスタルを持っても使い方を知らないのにどうして手に入れようとする?」
「オレたちがか──」
本当の事をぽろっと漏らしそうになったガウリイの口をばしっと顔面を叩くように封じた。
だが、遅い。たったちょっとの言葉で理解してしまったようでユナはくすくすと笑い出す。
「どこにもないと思ったら、あなた達が持ってたんだ」
「正確に言えばあのおかまよ」
と、女性よりも家庭的で健気な男性であるルナを指差した。正確には合っているのだが、勿論怒り出す。
どうやらもう心も完全に女性のつもりなのだろう。
「かまじゃありませんわよっ!
それよりも、クリスタルが私の持ち物…?」
余程記憶が曖昧になっているのか、腕を組み真剣に考え始めてしまう。
どうやらクリスタルのことを聞き出すのは至難の技に近いだろう。
「どこで手に入れた? 『風のクリスタル』を?」
「分かりませんわよ。全くもって覚えがありません」
何度も言うようだが、エルフの最大の特徴は忘却。頭を働かせなければどんどんと記憶は忘れ去られていく。その忘れた記憶の中にクリスタルの記憶があるのだろう。
忘れてしまった記憶を思い出させるのは言葉だけでは無理だ。
ユナは素早く飛んだ。まだ視線が思い悩むルナへと向いているその時に。
「暫く預けておく。早く思い出せ」
待って。と止める寸前、くすくすくす…笑いながら小さな女の子の姿をしたユナは姿を消した。
呆然とする皆をまとめたのはルナの一言だった。
「とりあえず、状況説明しましょう」
一致で彼等は原点となった食堂へと向っていった。









ユ「クリスタル…」
ル「ユナ!? どうしてここに??」
ユ「こんな手紙を海月から預かった」
ル「なになに? 『旅に出ます。探さないで下さい』…逃げたなっ!?」
ユ「逃げる足だけは持っている。まともに戦ってもルナティックの勝利確立は4割。それでも追う?」
ル「せめて一発だけでも矢を当ててくるわ。幕切れをよろしくお願しますわ」(猛スピードで駆けていく)

ユ「…落ち着きのない。
さて、ここから先の物語はクリスタルの謎に迫っていく。闇と小さな闇もだれだか予想は付いてくる。先にはなにが待つのか。
このくらいでいいだろう。次も楽しみ」


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11790Re:crystal〜3〜2002/11/30 09:57:47
記事番号11787へのコメント

>こんばんわです。

おはようございますです(笑)

> 『風のクリスタル』を意外な形で発見してから丸1日。

確かに意外だった・・・・。

>「つまり、シャドゥールはなにかを知ってるわね。このクリスタルに関わる秘密を。
> ちぇ…。番犬なんてさせるんじゃなかったわ」

まだ、番犬扱いですかい。

>「笛かなんかで呼び出せればいいのに…」
>「…リナさん…2人は魔道の道具(マジック・アイテム)
>じゃないんですよ!?」

・・・・、リナは二人を、便利なマジック・アイテムとして見てそー。

>「オレなんかが参加しても意味がないだろ!?」
> 自分の頭の弱さを開き直っているのか堂々と恥ずかしげもなく叫ぶ。

はっきりと・・・・・しかも自分で言うなよ。

>「使ってないから腐れていくのよ! ちっとは頭を動かしなさい!
>そうしたら少しは回復するかもしれないわよ?」

回復とかっていうレベルじゃ・・・・。

>次も楽しみ。

はい!楽しみにしてます!!


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11820番犬ルナティックさん(笑海月 水 2002/12/1 04:13:16
記事番号11790へのコメント


>>こんばんわです。
>
>おはようございますです(笑)
こんばんわです(笑
活動時間が正反対ですね(笑


>> 『風のクリスタル』を意外な形で発見してから丸1日。
>
>確かに意外だった・・・・。
ルナティックのお守りの中。これ以上意外な発見はないでしょう(ぇ


>>「つまり、シャドゥールはなにかを知ってるわね。このクリスタルに関わる秘密を。
>> ちぇ…。番犬なんてさせるんじゃなかったわ」
>
>まだ、番犬扱いですかい。
ルナはいつまで経っても番犬は番犬。変る事はありませぬ(マテ



>>「笛かなんかで呼び出せればいいのに…」
>>「…リナさん…2人は魔道の道具(マジック・アイテム)
>>じゃないんですよ!?」
>
>・・・・、リナは二人を、便利なマジック・アイテムとして見てそー。
絶対に見てると思う(ぇ
小説でもTVでも便利なマジックアイテムって言葉が出てきてたし。まぁ、──(以下、何者かによって瀕死状態になり紡げず)


>>「オレなんかが参加しても意味がないだろ!?」
>> 自分の頭の弱さを開き直っているのか堂々と恥ずかしげもなく叫ぶ。
>
>はっきりと・・・・・しかも自分で言うなよ。
こうするしかこの場を切り抜けられなかったんだわ!(爆
一応は知恵があるのね・・・ガウリイ(笑


>>「使ってないから腐れていくのよ! ちっとは頭を動かしなさい!
>>そうしたら少しは回復するかもしれないわよ?」
>
>回復とかっていうレベルじゃ・・・・。
>
>>次も楽しみ。
>
>はい!楽しみにしてます!!
>
あはは。じゃあ、回復不能レベルで(またんかい。
どうしてもガウリイはクラゲ、ガウリイの頭は温泉卵とぐらいしか思い付かないんですね〜。
だから、少しでも回復させようと努力・・・なに、無理だって?(爆

次も頑張らせてもらいますね。
すこしづつ続けていきますので。



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