◆−千年越しの賭 15−エモーション (2002/10/7 22:44:36) No.10377
 ┣Re:千年越しの賭 15−ドラマ・スライム (2002/10/7 22:53:43) No.10379
 ┗千年越しの賭 16−エモーション (2002/10/7 23:14:13) No.10380
  ┣Re:千年越しの賭 16−ドラマ・スライム (2002/10/8 14:30:53) No.10387
  ┃┗Re:千年越しの賭 16−エモーション (2002/10/8 22:47:48) No.10399
  ┗千年越しの賭 17−エモーション (2002/10/8 23:07:49) No.10401
   ┣Re:千年越しの賭 17−ドラマ・スライム (2002/10/8 23:27:55) No.10403
   ┗千年越しの賭 18−エモーション (2002/10/8 23:32:35) No.10404
    ┣Re:千年越しの賭 18−ドラマ・スライム (2002/10/9 13:35:31) No.10419
    ┃┗Re:千年越しの賭 18−エモーション (2002/10/9 21:33:47) No.10434
    ┗千年越しの賭 19−エモーション (2002/10/9 21:54:34) No.10435
     ┣Re:千年越しの賭 19−ドラマ・スライム (2002/10/9 22:05:14) No.10436
     ┗千年越しの賭 20−エモーション (2002/10/9 22:16:21) No.10437
      ┣Re:千年越しの賭 20−ドラマ・スライム (2002/10/10 12:35:58) No.10447
      ┗千年越しの賭 21−エモーション (2002/10/10 23:04:33) No.10492
       ┗千年越しの賭 22−エモーション (2002/10/10 23:31:40) No.10493
        ┣Re:千年越しの賭 22−ドラマ・スライム (2002/10/11 13:56:18) No.10503
        ┃┗Re:千年越しの賭 22−エモーション (2002/10/11 22:07:38) No.10543
        ┗千年越しの賭 23−エモーション (2002/10/11 22:31:15) No.10548
         ┣Re:千年越しの賭 23−ドラマ・スライム (2002/10/11 22:37:06) No.10549
         ┣千年越しの賭 24−エモーション (2002/10/11 23:00:12) No.10551
         ┃┗千年越しの賭 25−エモーション (2002/10/12 21:55:44) No.10577
         ┃ ┣Re:千年越しの賭 25−ドラマ・スライム (2002/10/12 22:07:42) No.10578
         ┃ ┃┗Re:すいません、長いです。ついでに裏話まで(笑)−エモーション (2002/10/13 01:17:25) No.10584
         ┃ ┗千年越しの賭 26−エモーション (2002/10/12 22:20:09) No.10579
         ┃  ┗千年越しの賭 27(完結)−エモーション (2002/10/12 22:32:37) No.10580
         ┃   ┗千年越しの賭 あとがき雑談会−エモーション (2002/10/12 22:56:45) No.10581
         ┃    ┣お疲れ様です♪(最後なのでレス♪まて!)−かお (2002/10/13 01:17:58) No.10585
         ┃    ┃┗Re:ありがとうございます♪−エモーション (2002/10/13 22:21:27) No.10606
         ┃    ┗Re:千年越しの賭 あとがき雑談会−ドラマ・スライム (2002/10/13 09:44:42) No.10587
         ┃     ┗Re:ありがとうございました−エモーション (2002/10/13 22:40:42) No.10608
         ┗Re:千年越しの賭 23−一坪 (2002/10/12 15:29:58) No.10558
          ┗Re:ありがとうございますー!−エモーション (2002/10/12 21:46:04) No.10576


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10377千年越しの賭 15エモーション E-mail 2002/10/7 22:44:36


 めでたくツリーが落ちました。昨日の時点で結構下でしたから、当然ですが……。
「実はこれを読んでましたが、昨日のは読んでません」と言う奇特な方が
ございましたら、とりあえず過去ログでご覧下さい。
また、今日の投稿が終わったら著者別に入れておきます。

 ……15は珍しくフィリシアの内面描写多いです。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 「千年越しの賭」 15

「──お二人をこちらに招くのは、上層部よりも、むしろ町長の説得に時間が
かかりました。
 しかし、お二人の存在を知られたうえ、女神像が絡んでいるのでは、折れるしか
なかったようです。どうにか神官様の要望通り、こちらへお二人を招くこと
になりました──」

 過去−6
 まだ本調子にはほど遠いものの、フィリシアは精神的にも身体的にも、
ある程度まで快復していた。数日前に倒れたことで、ゼロスから完全休養を
言い渡されて以来、ブラッドと会っていないからだ。
 ブラッドは「見舞いをする」等と言って、毎日やって来ては大騒ぎしていたが、
さすがに長老もこの件についてはゼロスに味方をし、ブラッドを完全に
シャットアウトしたらしい。
 ゼロスがティアと連絡を取り、ここを出る協力を得たこと。実際、神殿からの
要請で出ることが決まったのも、快復に一役買った。おかげで、もうゼロス
が結界を張らなくても、自己防御くらいできる。もっとも、ここでは普段の
状態までの快復はできそうにないが。
 フィリシアが動かせなかったことで予定が延びていたが、今日にも神殿の方へ
移動すると決め、そろそろ長老に挨拶をしようかと思っていた矢先のことだった。
「俺の許可なく勝手にこの家を出るとは、どういうつもりだっ!」
 そう怒鳴りながら、必死で止める使用人や長老を押しのけて、ブラッドが
ドアを蹴破るような勢いで、フィリシアの部屋に現れた。
 ……何故、許可なんてものを貰う必要が……? それも、この人の……。
 正直、目の前が真っ暗になったような感覚を覚えつつ、フィリシアは心の中で
そう突っ込む。言葉にしてもブラッドは全く聞いていないか、自分の都合の
いいように解釈してしまうと、知りたくもなかったが知っているからだ。
 現に、長老の説明を都合のいいように解釈したらしく、自分の屋敷に連れて
くるつもりだったのかと、唐突にそう言って笑い出し、勝手に喜んでいる。
 この数日治まっていたが、頭にズキズキと間断なく、強く鈍い傷みが起きる。
それを押し殺して、フィリシアはブラッドを睨みつけた。そんなフィリシア
にも全く気にせず、ブラッドは気味の悪いにやにや笑いを浮かべながら、
ずかずかと近づき、いきなり腕を掴む。と、
「放しなさいっ!」
 ぴしゃりと言い放ち、フィリシアが掴まれた腕を振り払って素早く身をかわす。
そのまま、体術の応用で相手を転がした。
 太ってはいないものの、軽く体重が倍以上あるだろう大柄の男性を、華奢な娘が
見事に転がしたのを見て、周囲が唖然としている中、ブラッドから軽く距離
を取って、フィリシアは誤解しようがないほど、冷たい声で言う。
「はっきり言います。私はあなたが嫌いです」
 何故か抵抗されるとは思っていなかったらしく、ブラッドはどこか呆然と
している。
「あなたの顔を見るのも、話をするのも嫌です。だから言いなりにはならないし、
屋敷にも行きません」
 冷たく、事務的なフィリシアの言葉に、ブラッドは場違いな笑い声をあげた。
「いいのか、そんなことを言って? 俺の親父は町長なんだぞ」
 ……だから何? そんなの、最初から知ってる。
「だから町の奴らは俺の言いなりだ。いざとなれば神殿もな。お前らみたいな
ぺーぺーの神官なんか、いつでも潰せる」
 ……そうでもないみたいだけど? でも、脅迫しているわけね。だから?
「分かんねぇのか! お前次第だって言ってんだよ! こっちが下手に出てれば
つけ上がりやがって! おとなしく屋敷に来れば、あの男も痛い目見なくて
すむって言ってんだ! 素直に屋敷に来いっ!」
 ……ぜぇぇぇぇぇぇったいに、嫌。だいたい、いつ下手に出たの?
「お断りです」
 フィリシアは心の中で突っ込んでいたが、この言葉にだけは迷いもせず、
勘違いのしようがないほどきっぱりと言いきる。と、ブラッドはふてぶてしい
笑みを浮かべた。
「いいのか? そんなことを言って。俺の手下が今、どこにいると思う? 
俺の命令一つであの男がどうなるか。……って、何がおかしいんだっ」
 思わずくすりと笑うフィリシアに、ブラッドが訊ねる。
「それが、脅しになると思っているからです。あなた方では、勝てません。絶対に」
 フィリシアはにっこりと微笑んだ。
「あの人は強いんですよ。ここにいる、誰よりも」
「ふん、信じているってか? ばかばかしい」
 ブラッドにはフィリシアの言葉はただの盲信にしか見えない。鼻先で笑い
飛ばした。
「信じてはいません。知っているんです」
「それは誉められていると思っていいんですか♪」
 きっぱりとしたフィリシアの言葉に、楽しげに答えるゼロスの声がして、
ブラッドの目が驚きで見開かれた。
「……いつからそこにいたの?」
「貴女がブラッドさんを転がした辺りからです」
「ほとんど最初からじゃないの。……そちらの『お客さん』はどうしたの?」
「心配なさらずとも、みんな眠っています。しばらくは起きませんが」
「な、な、何で……。あいつらは、みんな指折りの……」
 顔色を赤や青にしながら、立ち上がることもできずにブラッドが呟く。
そんなブラッドには目もくれず、ゼロスはフィリシアの側へ歩み寄り、彼女
の額に手を当てた。
「また少し、具合が悪くなったようですね。……すみません、1人で相手を
させてしまって。大丈夫ですか?」
 ひんやりとした手の感触は、頭痛を起こしている身としては気持ちがよい。
端で見ていれば、ゼロスの行動は彼女を気遣う真摯な態度に見える。が、
 ……ゼ〜ロ〜ス〜、無意味にブラッドを煽って遊ばないでよぉぉぉぉっ!!
 ゼロスの意図をしっかり読んでいたフィリシアは、1人、心の中で絶叫していた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

L.バカ息子、再び。何が嫌って、コレのグレードアップ版が現実に
  存在するって事よね。
X.書く方もストレス溜まりますからね〜。この思考にはついていけません。
  ついていきたくもないですが。
L.コレ書いてるとき「オー○ェン無○編」や「スレす○しゃる」とか
  読めなくなってたしね。嫌でも連想しちゃって……。今は平気だけど。
X.では、続きます。

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10379Re:千年越しの賭 15ドラマ・スライム 2002/10/7 22:53:43
記事番号10377へのコメント

エモーションさんは No.10377「千年越しの賭 15」で書きました。
>
> めでたくツリーが落ちました。昨日の時点で結構下でしたから、当然ですが……。
僕も極悪暴走兵器煉獄編落ちてめでたいです。(僕のは本当の喜びに近いですが)
>「実はこれを読んでましたが、昨日のは読んでません」と言う奇特な方が
>ございましたら、とりあえず過去ログでご覧下さい。
>また、今日の投稿が終わったら著者別に入れておきます。
>
> ……15は珍しくフィリシアの内面描写多いです。
>
>☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
>
> 「千年越しの賭」 15
>
>「──お二人をこちらに招くのは、上層部よりも、むしろ町長の説得に時間が
>かかりました。
> しかし、お二人の存在を知られたうえ、女神像が絡んでいるのでは、折れるしか
>なかったようです。どうにか神官様の要望通り、こちらへお二人を招くこと
>になりました──」
>
> 過去−6
> まだ本調子にはほど遠いものの、フィリシアは精神的にも身体的にも、
>ある程度まで快復していた。数日前に倒れたことで、ゼロスから完全休養を
>言い渡されて以来、ブラッドと会っていないからだ。
> ブラッドは「見舞いをする」等と言って、毎日やって来ては大騒ぎしていたが、
>さすがに長老もこの件についてはゼロスに味方をし、ブラッドを完全に
>シャットアウトしたらしい。
> ゼロスがティアと連絡を取り、ここを出る協力を得たこと。実際、神殿からの
>要請で出ることが決まったのも、快復に一役買った。おかげで、もうゼロス
>が結界を張らなくても、自己防御くらいできる。もっとも、ここでは普段の
>状態までの快復はできそうにないが。
> フィリシアが動かせなかったことで予定が延びていたが、今日にも神殿の方へ
>移動すると決め、そろそろ長老に挨拶をしようかと思っていた矢先のことだった。
>「俺の許可なく勝手にこの家を出るとは、どういうつもりだっ!」
> そう怒鳴りながら、必死で止める使用人や長老を押しのけて、ブラッドが
>ドアを蹴破るような勢いで、フィリシアの部屋に現れた。
> ……何故、許可なんてものを貰う必要が……? それも、この人の……。
> 正直、目の前が真っ暗になったような感覚を覚えつつ、フィリシアは心の中で
>そう突っ込む。言葉にしてもブラッドは全く聞いていないか、自分の都合の
>いいように解釈してしまうと、知りたくもなかったが知っているからだ。
> 現に、長老の説明を都合のいいように解釈したらしく、自分の屋敷に連れて
>くるつもりだったのかと、唐突にそう言って笑い出し、勝手に喜んでいる。
> この数日治まっていたが、頭にズキズキと間断なく、強く鈍い傷みが起きる。
>それを押し殺して、フィリシアはブラッドを睨みつけた。そんなフィリシア
>にも全く気にせず、ブラッドは気味の悪いにやにや笑いを浮かべながら、
>ずかずかと近づき、いきなり腕を掴む。と、
>「放しなさいっ!」
> ぴしゃりと言い放ち、フィリシアが掴まれた腕を振り払って素早く身をかわす。
>そのまま、体術の応用で相手を転がした。
> 太ってはいないものの、軽く体重が倍以上あるだろう大柄の男性を、華奢な娘が
>見事に転がしたのを見て、周囲が唖然としている中、ブラッドから軽く距離
>を取って、フィリシアは誤解しようがないほど、冷たい声で言う。
>「はっきり言います。私はあなたが嫌いです」
> 何故か抵抗されるとは思っていなかったらしく、ブラッドはどこか呆然と
>している。
>「あなたの顔を見るのも、話をするのも嫌です。だから言いなりにはならないし、
>屋敷にも行きません」
> 冷たく、事務的なフィリシアの言葉に、ブラッドは場違いな笑い声をあげた。
>「いいのか、そんなことを言って? 俺の親父は町長なんだぞ」
> ……だから何? そんなの、最初から知ってる。
>「だから町の奴らは俺の言いなりだ。いざとなれば神殿もな。お前らみたいな
>ぺーぺーの神官なんか、いつでも潰せる」
> ……そうでもないみたいだけど? でも、脅迫しているわけね。だから?
>「分かんねぇのか! お前次第だって言ってんだよ! こっちが下手に出てれば
>つけ上がりやがって! おとなしく屋敷に来れば、あの男も痛い目見なくて
>すむって言ってんだ! 素直に屋敷に来いっ!」
> ……ぜぇぇぇぇぇぇったいに、嫌。だいたい、いつ下手に出たの?
うんうん。
>「お断りです」
> フィリシアは心の中で突っ込んでいたが、この言葉にだけは迷いもせず、
>勘違いのしようがないほどきっぱりと言いきる。と、ブラッドはふてぶてしい
>笑みを浮かべた。
>「いいのか? そんなことを言って。俺の手下が今、どこにいると思う? 
>俺の命令一つであの男がどうなるか。……って、何がおかしいんだっ」
> 思わずくすりと笑うフィリシアに、ブラッドが訊ねる。
>「それが、脅しになると思っているからです。あなた方では、勝てません。絶対に」
> フィリシアはにっこりと微笑んだ。
>「あの人は強いんですよ。ここにいる、誰よりも」
確かにって言うか・・・。
>「ふん、信じているってか? ばかばかしい」
> ブラッドにはフィリシアの言葉はただの盲信にしか見えない。鼻先で笑い
>飛ばした。
>「信じてはいません。知っているんです」
>「それは誉められていると思っていいんですか♪」
> きっぱりとしたフィリシアの言葉に、楽しげに答えるゼロスの声がして、
>ブラッドの目が驚きで見開かれた。
>「……いつからそこにいたの?」
>「貴女がブラッドさんを転がした辺りからです」
>「ほとんど最初からじゃないの。……そちらの『お客さん』はどうしたの?」
>「心配なさらずとも、みんな眠っています。しばらくは起きませんが」
○族のわりには甘いのでは・・・。
>「な、な、何で……。あいつらは、みんな指折りの……」
> 顔色を赤や青にしながら、立ち上がることもできずにブラッドが呟く。
>そんなブラッドには目もくれず、ゼロスはフィリシアの側へ歩み寄り、彼女
>の額に手を当てた。
>「また少し、具合が悪くなったようですね。……すみません、1人で相手を
>させてしまって。大丈夫ですか?」
> ひんやりとした手の感触は、頭痛を起こしている身としては気持ちがよい。
>端で見ていれば、ゼロスの行動は彼女を気遣う真摯な態度に見える。が、
> ……ゼ〜ロ〜ス〜、無意味にブラッドを煽って遊ばないでよぉぉぉぉっ!!
> ゼロスの意図をしっかり読んでいたフィリシアは、1人、心の中で絶叫していた。
>
>☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
>
>L.バカ息子、再び。何が嫌って、コレのグレードアップ版が現実に
>  存在するって事よね。
>X.書く方もストレス溜まりますからね〜。この思考にはついていけません。
>  ついていきたくもないですが。
>L.コレ書いてるとき「オー○ェン無○編」や「スレす○しゃる」とか
おお読みたいですが、まずは○れ旅から・・・。
>  読めなくなってたしね。嫌でも連想しちゃって……。今は平気だけど。
>X.では、続きます。
それでは〜

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10380千年越しの賭 16エモーション E-mail 2002/10/7 23:14:13
記事番号10377へのコメント

 「千年越しの賭」 16

「……では、長老さん。長い間、お世話になりました」
 どことなく周囲が唖然としている間に、ゼロスは手短に長老へ挨拶をすませる。
頭痛で文句を言う気力もないフィリシアの手を引っ張るようにして、足早に
外へ出ると、そのままゼロスは振り返りもせずに、小走りで町の通りを突き進んでいく。
「体調が悪いのに申し訳ありませんが、急ぎますよ。神殿からの迎えを
待っている余裕は、なさそうですから」
「それは分かったけど……何か、注目されているみたい……どうして?」
 気のせいかと思ったが、すれ違う人々はみんな、興味深い目で2人を見て
いる。わざわざ道をあける者や、何やら声援をしている者までいる。ゼロス
は少し戸惑った口調で答えた。
「ああ……。多分、『噂』……のせいです」
「噂?」
「今回のことはけっこう噂になってまして……。こっちも『噂』を煽るような
行動してますから、仕方ないですけどね。とにかく、気にしないで急ぎましょう」

 ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン

 突然、爆発音とともに、大量の瓦礫が降ってきた。
「ふう。危なかったですねぇ。おケガは?」
「ありがとう、大丈夫よ。一体、何が……きゃっ!」
 言った途端、またすぐ近くに大きな瓦礫が落下した。舞い上がった土埃の中、
答はすぐに分かった。すぐ横の邸宅が、見る影もなく破壊され、崩れている。
そして、連鎖するように次々とその近辺の邸宅も壊れ始めている。崩落する
のは時間の問題だろう。
「失礼。急いで神殿へ行きますから、しっかり掴まっていてください」
 町の状況を見て、ゼロスはフィリシアを抱きかかえて走り出した。はっきり言えば
この方が早い。ひょいひょいと、人1人を抱えて走っているとは思えない早さで
移動している。
「ちょ、ちょっと待って! ケガをしている人たちがいるの、助けなきゃ」
「そんな余裕ありませんよ。第一、今の貴女では無理でしょう? 回復呪文
なんて使ったら命取りですよ! 死にたいんですか?!」
 ゼロスの言うことは反論のしようがないほど正しい。しかし、何も出来ない
ことが悲しい。法衣を握りしめた手を小さく震わせて、フィリシアは無言で
ゼロスの肩に額をあてて俯く。
 しばらく走っているうちに、広場だろう、かなり開けた場所に出た。
「神官様! 巫女様も! 良かった、ご無事だったんですね?」
「……ティア?」
 パステルブルーの神官服を着た少女が、そう言いながら駆けよってくる。
3年ぶりだが、フィリシアにもティアだとすぐに分かった。兵士の格好をした
青年と一緒だ。
「長老の邸宅の方で、建物が崩壊していると聞いて、急いで来たんです。
……あの、巫女様、どうかなさったんですか?」
「また少し、具合が悪くなっただけです。えっ……と、そこの兵士さん。
すみませんが、彼女をお願いします」
 そう言って、ゼロスは青年にフィリシアを預けると、踵を返して戻っていく。
「神官様、そちらは危険です! 戻ってください!」
 驚いて叫ぶティアに、振り返ったゼロスはさらりと答えた。
「厄介なものを召還した人がいるようですから、あちらを片づけてきます。
ティアさんたちは先に神殿へ。彼女をちゃんと見張っていて下さいよ。すぐ
に無茶をしますから」
「待って! いくらあなたでも、1人で全部は大変でしょう? これ、
持っていって」
 フィリシアははめていた指輪を外し、ゼロスに差し出した。
「低級魔族くらいまでなら、一気に浄化できるわ。効果範囲はホーリイ・ブレス
(浄化結界)と同じくらい。望んだ方向に投げれば発動するわ。……露払い
にはなるでしょ?」
 指輪には神聖呪文が封じられていた。この手のものは、下手をすれば自分
にもダメージが来るが、これは気をつけていれば問題ない。……その微妙な
匙加減で呪文選択をしているのが不思議だ。しかし……。
「……いつの間にこんなものを作ったんです?」
「ここに来るまでの間。このくらいなら、大丈夫だから」
「おとなしくしていると思ったら……。どうしてそう……。
 確かに、複数の人間に回復呪文をかけて回るよりはマシですけど、自分の
状態が分かっているんですか」
 受け取った指輪を見ながら、ゼロスはため息をつく。文字どおり、目の前
で神聖呪文を唱えていることを気づかせなかった彼女に感心する反面、気づ
けなかったのが悔しい。
「……ごめんなさい」
 しゅん、とした様子でそう言うフィリシアに、ゼロスは軽く肩をすくめた。
フィリシアには何の打算も思惑もない。素でこういうことをやってのけるから、
時々行動が読めず、彼女の言動に振り回されるのだと気づいたので。
「本当に……無茶はやめてください。でも今回はありがたく使わせていただきます。
……いいですか、僕が神殿に行くまでおとなしくしていてくださいよ」
 そう言い残して去っていくゼロスを見送りながら、フィリシアはぼそりと
呟いた。
「何も、そこまで念を押さなくていいのに……」

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

X.16は町の中を駆けずり回っているだけの話ですね。
L.さりげなーく、呪文については誤魔化してるよね。この話。
X.「イメージはある」そうですけどね。特に神聖呪文は、リナさん達の
  時代の「白魔法」の呪文の「神聖語」Vrは確実にあるだろうとは、
  踏んでいるようです。
  「魔族の結界」で神聖呪文が使えなくなった後、精霊魔法で近い効果の
  あるものを開発したはず、と簡単に予測できますからね。
  ただ、ネーミングなど、どう差別化するかで、検討中だそうです。 
L.「TRY」に出たものは、確実にそのまんま使うみたいだけどね。
X.えーっと、今日はこれくらいですかね。
L.下手すると明日も出番無いなあ……。明日はちょーっと、今まで伏せて
  きた(つもりの)フィリシアの基本情報公開みたいなものだし……。
X.その分、あとがきで暴れてください。では、また明日お会いしましょう。


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10387Re:千年越しの賭 16ドラマ・スライム 2002/10/8 14:30:53
記事番号10380へのコメント

エモーションさんは No.10380「千年越しの賭 16」で書きました。
>
> 「千年越しの賭」 16
>
>「……では、長老さん。長い間、お世話になりました」
> どことなく周囲が唖然としている間に、ゼロスは手短に長老へ挨拶をすませる。
>頭痛で文句を言う気力もないフィリシアの手を引っ張るようにして、足早に
>外へ出ると、そのままゼロスは振り返りもせずに、小走りで町の通りを突き進んでいく。
>「体調が悪いのに申し訳ありませんが、急ぎますよ。神殿からの迎えを
>待っている余裕は、なさそうですから」
>「それは分かったけど……何か、注目されているみたい……どうして?」
> 気のせいかと思ったが、すれ違う人々はみんな、興味深い目で2人を見て
>いる。わざわざ道をあける者や、何やら声援をしている者までいる。ゼロス
>は少し戸惑った口調で答えた。
>「ああ……。多分、『噂』……のせいです」
>「噂?」
>「今回のことはけっこう噂になってまして……。こっちも『噂』を煽るような
>行動してますから、仕方ないですけどね。とにかく、気にしないで急ぎましょう」
>
> ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
>
> 突然、爆発音とともに、大量の瓦礫が降ってきた。
えっ・・・なぜ?
代償でしょうか・・・。
それとも誰かの願い・・・?
>「ふう。危なかったですねぇ。おケガは?」
>「ありがとう、大丈夫よ。一体、何が……きゃっ!」
> 言った途端、またすぐ近くに大きな瓦礫が落下した。舞い上がった土埃の中、
>答はすぐに分かった。すぐ横の邸宅が、見る影もなく破壊され、崩れている。
>そして、連鎖するように次々とその近辺の邸宅も壊れ始めている。崩落する
>のは時間の問題だろう。
>「失礼。急いで神殿へ行きますから、しっかり掴まっていてください」
> 町の状況を見て、ゼロスはフィリシアを抱きかかえて走り出した。はっきり言えば
>この方が早い。ひょいひょいと、人1人を抱えて走っているとは思えない早さで
>移動している。
>「ちょ、ちょっと待って! ケガをしている人たちがいるの、助けなきゃ」
>「そんな余裕ありませんよ。第一、今の貴女では無理でしょう? 回復呪文
>なんて使ったら命取りですよ! 死にたいんですか?!」
> ゼロスの言うことは反論のしようがないほど正しい。しかし、何も出来ない
>ことが悲しい。法衣を握りしめた手を小さく震わせて、フィリシアは無言で
>ゼロスの肩に額をあてて俯く。
> しばらく走っているうちに、広場だろう、かなり開けた場所に出た。
>「神官様! 巫女様も! 良かった、ご無事だったんですね?」
>「……ティア?」
> パステルブルーの神官服を着た少女が、そう言いながら駆けよってくる。
>3年ぶりだが、フィリシアにもティアだとすぐに分かった。兵士の格好をした
>青年と一緒だ。
>「長老の邸宅の方で、建物が崩壊していると聞いて、急いで来たんです。
>……あの、巫女様、どうかなさったんですか?」
>「また少し、具合が悪くなっただけです。えっ……と、そこの兵士さん。
>すみませんが、彼女をお願いします」
> そう言って、ゼロスは青年にフィリシアを預けると、踵を返して戻っていく。
>「神官様、そちらは危険です! 戻ってください!」
> 驚いて叫ぶティアに、振り返ったゼロスはさらりと答えた。
>「厄介なものを召還した人がいるようですから、あちらを片づけてきます。
>ティアさんたちは先に神殿へ。彼女をちゃんと見張っていて下さいよ。すぐ
>に無茶をしますから」
>「待って! いくらあなたでも、1人で全部は大変でしょう? これ、
>持っていって」
> フィリシアははめていた指輪を外し、ゼロスに差し出した。
>「低級魔族くらいまでなら、一気に浄化できるわ。効果範囲はホーリイ・ブレス
>(浄化結界)と同じくらい。望んだ方向に投げれば発動するわ。……露払い
>にはなるでしょ?」
> 指輪には神聖呪文が封じられていた。この手のものは、下手をすれば自分
>にもダメージが来るが、これは気をつけていれば問題ない。……その微妙な
>匙加減で呪文選択をしているのが不思議だ。しかし……。
>「……いつの間にこんなものを作ったんです?」
>「ここに来るまでの間。このくらいなら、大丈夫だから」
>「おとなしくしていると思ったら……。どうしてそう……。
> 確かに、複数の人間に回復呪文をかけて回るよりはマシですけど、自分の
>状態が分かっているんですか」
> 受け取った指輪を見ながら、ゼロスはため息をつく。文字どおり、目の前
>で神聖呪文を唱えていることを気づかせなかった彼女に感心する反面、気づ
>けなかったのが悔しい。
フィリシア・・・ゼロスの事に気付いていたんですか?
>「……ごめんなさい」
> しゅん、とした様子でそう言うフィリシアに、ゼロスは軽く肩をすくめた。
>フィリシアには何の打算も思惑もない。素でこういうことをやってのけるから、
>時々行動が読めず、彼女の言動に振り回されるのだと気づいたので。
>「本当に……無茶はやめてください。でも今回はありがたく使わせていただきます。
>……いいですか、僕が神殿に行くまでおとなしくしていてくださいよ」
> そう言い残して去っていくゼロスを見送りながら、フィリシアはぼそりと
>呟いた。
>「何も、そこまで念を押さなくていいのに……」
>
>☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
おお星ですね。
>
>X.16は町の中を駆けずり回っているだけの話ですね。
>L.さりげなーく、呪文については誤魔化してるよね。この話。
>X.「イメージはある」そうですけどね。特に神聖呪文は、リナさん達の
>  時代の「白魔法」の呪文の「神聖語」Vrは確実にあるだろうとは、
>  踏んでいるようです。
>  「魔族の結界」で神聖呪文が使えなくなった後、精霊魔法で近い効果の
>  あるものを開発したはず、と簡単に予測できますからね。
>  ただ、ネーミングなど、どう差別化するかで、検討中だそうです。 
>L.「TRY」に出たものは、確実にそのまんま使うみたいだけどね。
>X.えーっと、今日はこれくらいですかね。
>L.下手すると明日も出番無いなあ……。明日はちょーっと、今まで伏せて
>  きた(つもりの)フィリシアの基本情報公開みたいなものだし……。
>X.その分、あとがきで暴れてください。では、また明日お会いしましょう。
それでは〜
>
>

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10399Re:千年越しの賭 16エモーション E-mail 2002/10/8 22:47:48
記事番号10387へのコメント

こんばんは。珍しくレス返しです。

>>
>> ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
>>
>> 突然、爆発音とともに、大量の瓦礫が降ってきた。
>えっ・・・なぜ?
>代償でしょうか・・・。
>それとも誰かの願い・・・?

どっちでしょう? この時点では、ゼロスとフィリシアは「代償」だと
思ってますが。


>>「ふう。危なかったですねぇ。おケガは?」
>>「ありがとう、大丈夫よ。一体、何が……きゃっ!」
>> 言った途端、またすぐ近くに大きな瓦礫が落下した。舞い上がった土埃の中、
>>答はすぐに分かった。すぐ横の邸宅が、見る影もなく破壊され、崩れている。
>>そして、連鎖するように次々とその近辺の邸宅も壊れ始めている。崩落する
>>のは時間の問題だろう。
>>「失礼。急いで神殿へ行きますから、しっかり掴まっていてください」
>> 町の状況を見て、ゼロスはフィリシアを抱きかかえて走り出した。はっきり言えば
>>この方が早い。ひょいひょいと、人1人を抱えて走っているとは思えない早さで
>>移動している。
>>「ちょ、ちょっと待って! ケガをしている人たちがいるの、助けなきゃ」
>>「そんな余裕ありませんよ。第一、今の貴女では無理でしょう? 回復呪文
>>なんて使ったら命取りですよ! 死にたいんですか?!」
>> ゼロスの言うことは反論のしようがないほど正しい。しかし、何も出来ない
>>ことが悲しい。法衣を握りしめた手を小さく震わせて、フィリシアは無言で
>>ゼロスの肩に額をあてて俯く。
>> しばらく走っているうちに、広場だろう、かなり開けた場所に出た。
>>「神官様! 巫女様も! 良かった、ご無事だったんですね?」
>>「……ティア?」
>> パステルブルーの神官服を着た少女が、そう言いながら駆けよってくる。
>>3年ぶりだが、フィリシアにもティアだとすぐに分かった。兵士の格好をした
>>青年と一緒だ。
>>「長老の邸宅の方で、建物が崩壊していると聞いて、急いで来たんです。
>>……あの、巫女様、どうかなさったんですか?」
>>「また少し、具合が悪くなっただけです。えっ……と、そこの兵士さん。
>>すみませんが、彼女をお願いします」
>> そう言って、ゼロスは青年にフィリシアを預けると、踵を返して戻っていく。
>>「神官様、そちらは危険です! 戻ってください!」
>> 驚いて叫ぶティアに、振り返ったゼロスはさらりと答えた。
>>「厄介なものを召還した人がいるようですから、あちらを片づけてきます。
>>ティアさんたちは先に神殿へ。彼女をちゃんと見張っていて下さいよ。すぐ
>>に無茶をしますから」
>>「待って! いくらあなたでも、1人で全部は大変でしょう? これ、
>>持っていって」
>> フィリシアははめていた指輪を外し、ゼロスに差し出した。
>>「低級魔族くらいまでなら、一気に浄化できるわ。効果範囲はホーリイ・ブレス
>>(浄化結界)と同じくらい。望んだ方向に投げれば発動するわ。……露払い
>>にはなるでしょ?」
>> 指輪には神聖呪文が封じられていた。この手のものは、下手をすれば自分
>>にもダメージが来るが、これは気をつけていれば問題ない。……その微妙な
>>匙加減で呪文選択をしているのが不思議だ。しかし……。
>>「……いつの間にこんなものを作ったんです?」
>>「ここに来るまでの間。このくらいなら、大丈夫だから」
>>「おとなしくしていると思ったら……。どうしてそう……。
>> 確かに、複数の人間に回復呪文をかけて回るよりはマシですけど、自分の
>>状態が分かっているんですか」
>> 受け取った指輪を見ながら、ゼロスはため息をつく。文字どおり、目の前
>>で神聖呪文を唱えていることを気づかせなかった彼女に感心する反面、気づ
>>けなかったのが悔しい。
>フィリシア・・・ゼロスの事に気付いていたんですか?

……変な書き方ですが、(いろんな意味で)フィリシアよりゼロスの方が
気が付いていないものが多いんです。この2人に限って言えば。
(あとはネタバレなので、パスです)

>>☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
>おお星ですね。

飾り用ラインとして自作しました。と言っても「☆」マークを一定の長さ
並べたのをメモ帳保存して、コピペしただけですが(笑)

>それでは〜

ありがとうございました〜。

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10401千年越しの賭 17エモーション E-mail 2002/10/8 23:07:49
記事番号10380へのコメント


 「千年越しの賭」 17


 町の様子は悲惨、の一言に尽きた。レッサー・デーモンやブラスデーモン
の他に、低級の魔獣の団体がせっせと町を破壊し、当然のようにアンデット
までうろついている。
「ずいぶん無節操に召還しましていますねぇ……さて、露払いと同時に、
本ボシをあぶり出しますか」
 上空で町の状況を見ていたゼロスはそう言うと、フィリシアの指輪を地上へ
投げる。指輪は一瞬キラリと光った後、爆発的な強い輝きを放った。
「……やれやれ。これで無茶していないなんて言うんですから、困った人です。
ほんとに」
 強い金白色の光が輝いている間、何重にもガードを引いた上で、アストラル
サイドから様子を窺っていたゼロスは、半ば呆れながらそう呟いた。

5.
 神殿から町の様子は一部分しか見えない。ちょうど、ティアたちに連れら
れて神殿に着いたとき、町中を金白色の光が包んだ。それ以降、町の建物が
壊れることはなくなったが、まだ神殿にゼロスは来ていない。
「……心配ですね。ゼロス様、大丈夫でしょうか」
 いつの間にか隣に来ていたティアがそう呟く。最近はあちらこちらで増え
てきたらしいが、この辺りではレッサー・デーモンやブラスデーモンなど、
実物を見たことがないという方が普通だ。そんなものを相手に戦うこと自体、
想像できない。
「大丈夫よ……多分、違うことで手間取っているだけだと思うから」
「ほんとに、ゼロス様を信じていらっしゃるんですね。フィリシア様」
「あの……だから、信じるとかじゃないの。実際にそれしかありえないだけで……」
 どこか瞳をうるうるさせながら言うティアに、フィリシアは半ばため息をつく。
 体調不良とゼロスの不在理由を盾に、とりあえず上層部にだけは軽く挨拶
をすませる程度にして、早々に用意された宿坊へ行ったが、何故か、特に
ゼロスの話になると、ティアやエリック──ティアと一緒にいた兵士──
との会話が微妙にかみ合わない。不審に思いつつ聞いていくうちに、フィリシアは
テーブルに突っ伏すことになった。
 同時に、先程ゼロスが「噂」について少し口ごもった理由と、町の人達の
視線の意味も理解した。
 2人は夫婦もしくは恋人同士だと思われていたのだ。

『町長のバカ息子が、旅の神官夫婦の奥さんの方に横恋慕して、長老を脅して
2人を家に閉じこめさせた。そして連日、旦那と別れろと言い寄っているが、
きっぱり断られている』

 どこでそう言う話になったのか、大筋は間違っていないが、一方の人間関係が
かなり違う、そんな噂が町中に流れていた。
 ティアは夫婦だとは思っていなかったが、恋人同士だとは思っているらしく、
フィリシアが違うと否定しても、「じゃあ、そう言うことにしておきます」と、
反論の間もなくこの年齢特有のテンションの高さで、そういうことにされて
しまった。
 「こっちも『噂』を煽るような行動してますから」と言ったゼロスの言葉が、
今、虚しく頭に響いている。

「私には、ちゃんと別に好きな人いるのに……2回も振られたけど」
 ティアが退出したあと、カップの中の香茶を見つめてフィリシアは呟いた。
 1回目は神殿を出奔する前。これは、正確には振られたとは言えない。
狡猾な周囲の言葉に、「彼」が上手く言い含められたようなものだ。
 2回目はついこの間。これは……決定的。消息も分からず、連絡が取れる
はずのない2年半。時間と状況は否応なく気持ちを変えていく。「彼」は
フィリシアは神殿にいると思っていたのだから、むしろ、それが自然なのだろう。
 しかし、それを頭で理解できて、尚かつ、ある程度自分の感情をコントロール
出来るのは、彼女にとって最大の不幸かもしれない。
「……でも、分かりたくなんて、なかったわ」
「でしたら、物わかりの良い態度などせずに、もっと素直になれば良かったのに」
 ぼそりと呟いた言葉に、思いもかけず言葉が返された。
「……女の独り言を立ち聞きするなんて、趣味が悪いわよ。ゼロス」
「そんなつもりは、なかったんですけどね」
 そう言って、ゼロスは苦笑しながらフィリシアの前に指輪を置いた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

L.ヒュパティアが一部分だけアメリア化してない?
X.言わないでください(滝汗)巫女ってみんなこうなんですか?
L.それは人それぞれでしょう。ところで「彼」って誰?
X.今回は関係ないので伏せました。ただ、フィリシアが神殿飛び出した
  のってそのせいなんですよね。
  だから間違っても、僕で「恋愛ネタ」にはならないんです。
  フィリシアの方で、他の男性は眼中にないですから。
L.と言うことで続きます。

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10403Re:千年越しの賭 17ドラマ・スライム 2002/10/8 23:27:55
記事番号10401へのコメント

エモーションさんは No.10401「千年越しの賭 17」で書きました。
>
>
> 「千年越しの賭」 17
>
>
> 町の様子は悲惨、の一言に尽きた。レッサー・デーモンやブラスデーモン
>の他に、低級の魔獣の団体がせっせと町を破壊し、当然のようにアンデット
>までうろついている。
>「ずいぶん無節操に召還しましていますねぇ……さて、露払いと同時に、
>本ボシをあぶり出しますか」
召還なんですか・・・このデーモン達って
> 上空で町の状況を見ていたゼロスはそう言うと、フィリシアの指輪を地上へ
>投げる。指輪は一瞬キラリと光った後、爆発的な強い輝きを放った。
>「……やれやれ。これで無茶していないなんて言うんですから、困った人です。
>ほんとに」
> 強い金白色の光が輝いている間、何重にもガードを引いた上で、アストラル
>サイドから様子を窺っていたゼロスは、半ば呆れながらそう呟いた。
>
>5.
> 神殿から町の様子は一部分しか見えない。ちょうど、ティアたちに連れら
>れて神殿に着いたとき、町中を金白色の光が包んだ。それ以降、町の建物が
>壊れることはなくなったが、まだ神殿にゼロスは来ていない。
>「……心配ですね。ゼロス様、大丈夫でしょうか」
> いつの間にか隣に来ていたティアがそう呟く。最近はあちらこちらで増え
>てきたらしいが、この辺りではレッサー・デーモンやブラスデーモンなど、
>実物を見たことがないという方が普通だ。そんなものを相手に戦うこと自体、
>想像できない。
そういえば『鋼の血涙』デーモン一匹出てきてない・・・。(というか対複数戦の戦闘自体無いです。)
>「大丈夫よ……多分、違うことで手間取っているだけだと思うから」
>「ほんとに、ゼロス様を信じていらっしゃるんですね。フィリシア様」
>「あの……だから、信じるとかじゃないの。実際にそれしかありえないだけで……」
> どこか瞳をうるうるさせながら言うティアに、フィリシアは半ばため息をつく。
> 体調不良とゼロスの不在理由を盾に、とりあえず上層部にだけは軽く挨拶
>をすませる程度にして、早々に用意された宿坊へ行ったが、何故か、特に
>ゼロスの話になると、ティアやエリック──ティアと一緒にいた兵士──
>との会話が微妙にかみ合わない。不審に思いつつ聞いていくうちに、フィリシアは
>テーブルに突っ伏すことになった。
> 同時に、先程ゼロスが「噂」について少し口ごもった理由と、町の人達の
>視線の意味も理解した。
> 2人は夫婦もしくは恋人同士だと思われていたのだ。
>
>『町長のバカ息子が、旅の神官夫婦の奥さんの方に横恋慕して、長老を脅して
>2人を家に閉じこめさせた。そして連日、旦那と別れろと言い寄っているが、
>きっぱり断られている』
>
> どこでそう言う話になったのか、大筋は間違っていないが、一方の人間関係が
>かなり違う、そんな噂が町中に流れていた。
> ティアは夫婦だとは思っていなかったが、恋人同士だとは思っているらしく、
>フィリシアが違うと否定しても、「じゃあ、そう言うことにしておきます」と、
>反論の間もなくこの年齢特有のテンションの高さで、そういうことにされて
>しまった。
> 「こっちも『噂』を煽るような行動してますから」と言ったゼロスの言葉が、
>今、虚しく頭に響いている。
>
>「私には、ちゃんと別に好きな人いるのに……2回も振られたけど」
> ティアが退出したあと、カップの中の香茶を見つめてフィリシアは呟いた。
> 1回目は神殿を出奔する前。これは、正確には振られたとは言えない。
>狡猾な周囲の言葉に、「彼」が上手く言い含められたようなものだ。
> 2回目はついこの間。これは……決定的。消息も分からず、連絡が取れる
>はずのない2年半。時間と状況は否応なく気持ちを変えていく。「彼」は
>フィリシアは神殿にいると思っていたのだから、むしろ、それが自然なのだろう。
> しかし、それを頭で理解できて、尚かつ、ある程度自分の感情をコントロール
>出来るのは、彼女にとって最大の不幸かもしれない。
>「……でも、分かりたくなんて、なかったわ」
>「でしたら、物わかりの良い態度などせずに、もっと素直になれば良かったのに」
> ぼそりと呟いた言葉に、思いもかけず言葉が返された。
>「……女の独り言を立ち聞きするなんて、趣味が悪いわよ。ゼロス」
そういえば僕、独り言の方が多いです(やばひかも)
>「そんなつもりは、なかったんですけどね」
> そう言って、ゼロスは苦笑しながらフィリシアの前に指輪を置いた。
>
>☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
>
>L.ヒュパティアが一部分だけアメリア化してない?
>X.言わないでください(滝汗)巫女ってみんなこうなんですか?
>L.それは人それぞれでしょう。ところで「彼」って誰?
>X.今回は関係ないので伏せました。ただ、フィリシアが神殿飛び出した
>  のってそのせいなんですよね。
>  だから間違っても、僕で「恋愛ネタ」にはならないんです。
>  フィリシアの方で、他の男性は眼中にないですから。
>L.と言うことで続きます。
それでは〜
もう寝ます。
お休みなさい〜
>

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10404千年越しの賭 18エモーション E-mail 2002/10/8 23:32:35
記事番号10401へのコメント


 「千年越しの賭」 18

「これ……」
 フィリシアは目を丸くして、指輪を手に取って見つめた。
「お借りした指輪です。思ったより、探すのに手間取ってしまいました。
……改めて見ると、見事な細工ですね。ドワーフ職人の細工でしょう?」
「ええ。神殿に出入りしてるドワーフのおじさんが造ってくれて。だから、
後で探そうと思ってたの。ありがとう、わざわざ探してくれて。
 それから、お疲れさま」
 フィリシアは明るい笑顔でそう言うと、指輪をはめた。指輪をくれた人達は、
理由を知れば許してくれるだろうが、フィリシアとしては、できるだけ、
なくしたくなかった。
「本ボシの魔族には強制的にお帰り願いました。マジックアイテムで召還
されたものの、召還者に力量がなかったようで、勝手に暴走していて鬱陶しい
ですし。
 ……それにしても、ヒュパティアさんまで勘違いしていると思いませんでした」
 フィリシアが入れた香茶を飲みながら、ゼロスがため息をつきながら呟いた。
 ここへ来る途中ヒュパティアに会ったが、妙に高いテンションでの短い会話で、
彼女の勘違いにはすぐに気づいた。しかし、フィリシア同様に反論すら出来
なかったのである。
「フィリシア。いっそのこと、貴女の巫女としての階級を話したらいかがです? 
少なくとも神殿の方々はこの種の誤解を解くと思いますよ」
 確かに、それなら神殿関係者は噂を否定するだろう。
「この間のこともあったし、ゼロスのことだから、多分気づいているだろうなって、
前から思っていたけど……いつ、気づいたの?」
「初めてお会いしたときから、ですよ。何となくランクの高そうな人だと
そう思いました」
 目をきょとん、とさせて絶句したフィリシアに、ゼロスはくすくすと笑って言う。
「貴女の法衣や持ち物は質素ですが、一介の神官や巫女が持つものでは
ありませんから」
 旅装の法衣だから、丈夫で汚れがつきにくく、落ちやすい加工が施されて
いるのは当然としても、上質の絹糸にネメゲトリンの糸が織り込まれた、
高価な布地を使った法衣など、ただの神官や巫女が身につけられる代物では
ない。縁取りや帯などに、さりげなく施されている金糸の刺繍や宝石の飾りも、
それだけに豪華さと品を感じさせる。持ち物についても同様だ。
 このような物を持つ者など、金持ちか貴族出身でもなければ、神殿高位の者
ぐらいだろう。
 ゼロスの説明に、フィリシアはため息をついた。
「できるだけ簡素なものを選んだと思っていたのに……。じゃあ、分かる人
にはある程度、分かってたのね」
「少し見ただけでは分かりませんけどね。目の利く方なら、おそらく。
 でも、それだけじゃありません。例え法衣や持ち物が普通の神官や巫女と
同じだったとしても、貴女の言動を見ていれば分かります。
 第一、3年近く一緒に旅をしているんですよ? いくらなんでも気づきますよ。
 まあ……決定的だったのはこの間の件で、さすがに驚きましたけど」
「驚く? どうして?」
「神殿高位の者、とは思っていましたが、さすがに『恋愛・婚姻禁止』の
ランクとは思いませんでしたから」
 一般に、神官や巫女でも恋愛も婚姻もできるが、高位の者の中でもトップ
クラスの者や、特別な地位の者となると話は別だ。地位の世襲を避けるためだが、
このクラスになると恋愛も婚姻もできない。
 そのため神殿での高い地位を望む者は独身だし、特別な地位になると、
候補に選ばれる者は大抵子どもなので、ほとんど世俗とは隔離されて育つ結果、
心身共に純粋培養種が多い。どちらにしても神殿を離れることなど、考えも
しないだろう。
 だから、ゼロスは初めてフィリシアに会ったとき、基本は純粋培養種だが、
その割に多少世間ずれしているので、若すぎるが神官長クラスのランクだと
思った。というより、この場合は候補、それも当確と思う方が変だろう。
「何にしても、就任前に出て来たから、もう関係ないわ」
「それでも、基本的なランクはここの神官長さんより上でしょう? 多少は
効果あると思いますけど?」
「……余計に面倒なことになるから、嫌」
 フィリシアは本気でうんざりした表情で言う。正式な階級を話すには、
素姓も明かさなくてはならない。そうなると「噂」以上に厄介なことになる
のは目に見えているからだ。
「それに、下手をすると相乗効果で、もっとうんざりする事になると思うん
だけど……」
 古今東西、国や身分、種族の違い等、逆境に翻弄されるカップルは、恋愛話の
定番であり、人々の萌えポイントである。
「……我慢、するしかないですね……」
 それに思い至って、ゼロスも心底うんざりして呟いた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

X.……と言うことで、軽くフィリシアの置かれている立場が分かりますよね。
  まだ伏せてる部分ありますが。
L.ネメゲトリンって一体……。
X.オリジナルの蚕のような昆虫です。魔力を持った糸が採れるので、高価
  ですが騎士や戦士のマントなどにもよく使われます。軽く魔法を防ぐ
  効果があるので。
  ただ、降魔戦争の影響で絶滅してますので、リナさん達の時代には存在
  しません。
L.こーゆー変な設定だけは細かいよね、筆者E……。
X.絶滅の理由まで設定してますからね。名前は「アクアクの夢」の時と
  同じで昔の「地○大紀行」のCDからです。ドイツにある森の名前です。
L.化石とか関係してた様な気がする。あと「おしまいのネメゲトザウルス」
  も由来のひとつでしょ。
X.加納朋子さんの小説ですね。そこから絶滅種→化石→ネメゲトリンでいいや、と。
L.あいかわらず、いい加減……。
X.次は……現在ですね。久々にリナさんの登場です。
L.そう! そういうことで、今日はここまで。また明日会いましょう!

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10419Re:千年越しの賭 18ドラマ・スライム 2002/10/9 13:35:31
記事番号10404へのコメント

フィリシア・・・位、高いのですか・・・。
ゼロス・・・もう気付いているのかな?
あの町長だかなんだかの息子への態度と関係はあるのでしょうか。(どーでもいい疑問)
フィリシア・・・実は四竜王クラスだったりして・・・
それではわけわかんないレスですみません。
ではさようなら〜

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10434Re:千年越しの賭 18エモーション E-mail 2002/10/9 21:33:47
記事番号10419へのコメント

こんばんは。
>フィリシア・・・位、高いのですか・・・。
高いです。「特別な地位」なので。
今回の話では、はっきり書きませんが(今回の話とはあまり関係ないので)、
まあ、やたらと高位なので、その気になれば、あちこちの神殿で十分顔効くよ、
と思っていただければ……。

>ゼロス・・・もう気付いているのかな?
ある一定の部分までは気づいてます。「ただの人間じゃないな」と。
でも、具体的には分からない、というところです。
この件に関しては、フィリシアの方が一枚上手なんです。

>あの町長だかなんだかの息子への態度と関係はあるのでしょうか。(どーでもいい疑問)
あれにはもう、「金輪際、関わり合いになりたくない」だけです。
普通の巫女だったとしても、バカ息子にはあーゆー態度ですね。

>フィリシア・・・実は四竜王クラスだったりして・・・
そこまで行くかな……? 基本的には人間ですよ。

>それではわけわかんないレスですみません。
ありがとうございました〜。

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10435千年越しの賭 19エモーション E-mail 2002/10/9 21:54:34
記事番号10404へのコメント


 ツリーがもつかどうか、ちょっとドキドキですが……。
 まずは久々の割に、短めの現在です。ゼロスとリナしか出ませんけど。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 「千年越しの賭」 19

6.
 現在−5
「……リナさん、どうしたんです? こんなところにいらっしゃるなんて」
 背後を振り返りもせずに、ゼロスは近づいてくるリナに声をかけた。普通
の人間なら驚きそうなものだが、リナ本人は特に気配を消す気もなければ、
ゼロス相手にそれが通用するとも思っていないので、至極当然のように言葉を返す。
「単なる気分転換の散歩。あんたがここにいるとは思わなかったわ。
 あんたこそ、何やってんのよ? こんなとこで」
「それは……」
 秘密、と言いかけてゼロスはやめた。理由は──自分でも分からない。
「ところでリナさん、文献は読み終わったんですか?」
「終わったわよ。だから、気分転換してんの。あたしにもゼルにも役に立つ
内容じゃあなかったけど、結構、面白かったかな。
 ……それで、あんたに会ったら、いくつか聞きたい事があったのよね。
聞いていい?」
「構いませんよ。何です?」
 何です、と言いつつ、ゼロスはリナの質問を予想していた。頭も勘も良い娘だ。
ヒュパティアが何をどう書いたのかは知らないが、例え誤魔化したところで、
自分の存在を知っている以上、遅かれ早かれ気づくだろう。何より、誤魔化す
意味がゼロスにはない。
「……ヒュパティアの文献には『女神像』に関わったのに、参考に見た他の
資料にすら、名前が残されていない人物が2人いたわ。行動の重要性からいって、
本当なら誰よりも、残っていなきゃいけないはずなのに、ね」
「そうですか」
 名前を他者に言うな、とヒュパティアに言ったのは自分だ。事件が終わって
しまえば、その必要がなくなる頼み事だが、彼女が名前を伏せたのは約束を
守ったと言うより、別の理由だろう。しかし、ゼロスとしてはありがたい。
「あたしたちが読んだ文献は、同じ内容だったけど、それぞれ詳しく書かれて
いることが違ったの。で、あたしが読んだのはある人物についてが詳しく
書かれてた。だから、聞くんだけどね。
 最初にあの担当の人との会話を聞いた時、あたしはあんたがヒュパティア
を知っているのは、単に聞いたことがあるからだと思ってたわ。でも、そう
じゃない……でしょ? 『黒衣の神官』さん」
「ええ、そうです。直接、ヒュパティア=バーンズ、本人にお会いしたから
ですよ」
 祠の前に佇んでいたゼロスは、やっとリナの方を振り返って、にっこりと笑った。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

L.あ゛〜、本気でみーじーか−いー(じたばた)
X.まあまあ。ほとんどリナさんの1人舞台ですし。
L.ずーっと出てるあんたに言われたくなーいっ!
  ……ところで、ようやくヒュパティアのフルネーム出たね。
X.実はこれの投稿を開始した時点でも決まってませんでしたが、やっと
  決まったそうです。仮に付けてた「ランガナタン(分かる人だけ笑って
  ください)」よりはピッタリ合いますね。
L.某英国デパートのクリスマス・テディベアの名前から取った割にね。
X.さて、再び過去に続きます。

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10436Re:千年越しの賭 19ドラマ・スライム 2002/10/9 22:05:14
記事番号10435へのコメント

こんばんは
リナ・・・ゼロスに気付きましたか。
それにしても女神像って一体(まさかL様の像とか・・・)
それでは短いですがさようなら〜
それでは風邪気味なのでそろそろ寝ますお休みなさーい。

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10437千年越しの賭 20エモーション E-mail 2002/10/9 22:16:21
記事番号10435へのコメント


 とうとう、20……。でも、30はいきません。
ようやく、山です。また、ちょっと過去が続きます。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 「千年越しの賭」 20

 過去−7
 神殿に移って3日、祀られているプラチナの女神像を見たフィリシアは、
深くため息をついた。
「まず、女神像を見せてほしい」そう頼んで、特別に女神像の前にかけている
カーテンを上げてもらったのだが、結果は予想どおり、いや、予想以上。
 本当は、ティアに女神像の封印の手順を教えるだけのつもりだった。しかし、
現状は……。封印するのであれば、すぐにでもしなければ、もう機会はない。
「これは……ヒュパティアさんの希望に添うのは、かなり難しいんじゃあり
ませんか? この状態で一時的な封印は、まず無理でしょう?」
 いつの間にか隣に来ていたゼロスが、のほほんとした口調で訊ねる。しかし、
ティアに協力する、と約束したためか、普段のからかうようなノリはみられない。
「……方法はあるわ。時間はかかっちゃうけど……」
「あんまり、長居は出来ませんよ」
 ティアと約束したとはいえ、ゼロスには必要以上に長居するつもりは全くない。
ただでさえ予定外の滞在をしているのだ。
「……よく考えなくても、本当に今更だと思わない? 今になって偉そうに
封じに来るくらいなら、3年前、もっと強く反対して、村の人たちを説得する
べきだったって……。
 ……分かっていたんだから。こうなるの……」
 フィリシアは急に話題を変えた。おそらくは、彼女の本音。表に出しては
いないものの、彼女はずっと悔いていたのかもしれない。
「3年前、確かに僕たちには、今の現状を予測できていました。でも、貴女
があの時、それを説明して、どんなに説得したとしても、誰も貴女の言うことを
信じなかったはずです。例え過去に実例があっても、こう言うことは実際に
見たり経験したりしない限り、普通は信じません。信じても、自分たちだけは
大丈夫だと、言い張ります。そう言うものです。
 何より、人間は基本的に、自分の見たいものしか見ないし、信じたいことしか
信じないんですよ。
 ……貴女は3年前、ちゃんと忠告していますし、あの時点で出来ることは
しています。責任を感じるのは勝手ですが、自分には何とか出来たはず、
なんて思うのは思い違いもいいところですよ。誰だって、出来ることには
限度があるんですから」
 ゼロスの言葉は、フィリシアにとっては意外なものだったらしい。
「もっと、キツイこと言われると思っていたわ」
「そうですか? それで……どうするつもりなんです?」
 ゼロスの問いに、フィリシアは天井を見上げて目を閉じた。軽く一呼吸の後、
目を開ける。
 目を閉じる前とは違う、覚悟を決めた瞳──。
「……結果的に、すごく意地の悪いことをする。成功すれば一番確実な方法をね」
 くすり、とゼロスは笑った。何をするつもりなのか、見当がついたのだ。
「当然、失敗する可能性もありますね」
 むしろ、その可能性の方が高い、とゼロスは践んでいる。だが、それは
あえて口にしない。分かっている相手に、わざわざ言う必要は、ない。
「ええ。フォローはするけどね……」
 分かっているから、フィリシアはどこか、悲しげに微笑する。
──これは、賭だ。あまり分の良くない、賭。
「それでも……ですか。甘いですね、貴女は。厳しくて、でも、根本的には、甘い。
 まあ、そう言うことなら、とりあえず神殿の反対派を納得させなきゃいけ
ませんね」
 ゼロスはそう言うと、会議を行う中央の礼拝堂へ戻ろうとして、足を止めた。
「……どうしたの?」
 不審に思ったフィリシアも振り返って、息をのむ。
「……まず、神殿側をこちらの味方にしたかったんですが……。その余裕も
なくなりましたね」
 神殿の封印賛成派と反対派、そして、話を聞いて押し寄せてきた町の住民
たちを前にして、ゼロスは肩をすくめて、そう呟いた。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

L.とりあえず、山。
X.山の頂上近く……ですね。ブラッドさんとは違う意味で、ストレス
  溜まった部分の始まりです。
L.また2回くらい過去が続いて、現在が入って、また過去がちょっと。
  そこからあとはずーっと、現在……。でいいのかな。構成としては。
X.そんな感じです。ラストはほとんど謎解きみたいなものですから、
  リナさんの独壇場です。
L.推理小説のノリか……この話は……(呆れ顔)
X.推理小説にしては、出来悪すぎですけどね。謎は多少残りますし。
L.ということで、今日はここまでです。また明日お会いしましょう!

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10447Re:千年越しの賭 20ドラマ・スライム 2002/10/10 12:35:58
記事番号10437へのコメント

>──これは、賭だ。あまり分の良くない、賭。
ついに出ましたね・・・賭。
どんな賭でしょうか。
そしてフィリシアの正体は?
後、女神像とは・・・
それでは期待しています。

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10492千年越しの賭 21エモーション E-mail 2002/10/10 23:04:33
記事番号10437へのコメント


 なんとかツリーがもっているので、こっちにつなぎます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「千年越しの賭」21

 たいして広いとは言えない女神像の部屋は、集まってきた人々の熱気で、
暑苦しくなっていた。
「何故、女神像の力を封印しなくてはならないのだ! 俺たちに恵みを与え
てくれる、大切なものなんだぞ!」
「女神像をなくして、私たちにどうしろというのよっ! 女神像の力を教え
てくれた恩人が、なんでそんなひねくれ者たちの味方するのよ!」
「第一、町は3日前の魔獣騒ぎで滅茶苦茶なんだ! だからこそ、女神像の力が
必要なのに、そんなことも分かんないのかっ!」
 彼らは口々に、女神像の必要性を説く。女神像の力の便利な部分を強調し、
封印をさせまいと、ある者は脅し、ある者は泣き落としをしている。
 女神像によって引き起こされたマイナスの部分は、指摘されても「取るに
足りないこと」や「封印賛成派の裏工作」だとして、耳を貸さないか、怒鳴り
散らして誤魔化す有様だ。
 ……いい加減、うんざりしてきましたね。
 相手の言い分など一切聞かず、入れ替わり立ち替わり、立て続けに文句を
言い続ける人々を、冷ややかな気分で見ながら、ゼロスはそう思っていた。
 自分に都合のいい解釈をして、相手の言い分や意思を無視したごり押しは、
あのブラッドだけのものだと思っていたが、どうやらブラッドが極端に突出
していただけで、ブラッドより低いレベルの同類項は、この町にいくらでも
いるらしい。一人一人ならまだマシなのだが、集団になるとさすがにうんざり
してくる。
 フィリシアだろうか? ビシバシと「怒り」の感情が伝わってくる。この分では、
そろそろ爆発しそうだと予測して、ゼロスは小さくため息をついた。「女神様の
カミナリ」と、フィリシアをからかってはいても、あれはどうも苦手だ。

 ふと気が付くと、やたらと甲高い声の、どうみても裕福そうで、高価な
ドレスとアクセサリーを身につけた女性が、顔を真っ赤にして喚きちらしている。
 彼女より、ほんの少し、高価な服やアクセサリーを持っている女性がいる、
だから自分は不幸だと。今までも自分は少しも幸せではなかったと、そう
言っているのだ。
「何よっ! あんた達なんてっ!!」
 不意に、興奮状態になったその女性は、近くにあった花瓶をこちらへ投げ
つけてきた。
「きゃっ!」
 花瓶は、フィリシアにぶつかり、床に落ちて砕けた。
「フィ……」
「大丈夫。たいしたことないわ」
 そうは言うものの、水で法衣が濡れているし、花瓶がぶつかった拍子に転んだ
フィリシアの足には、砕けた花瓶の破片でケガをしたらしく、血が滲んでいる。
 ……おや?
 ふと、ゼロスは今感じている「怒り」の感情が、フィリシアのものではないことに
気が付いた。さすがに軽く回復呪文をかけている、フィリシアから感じるのは
「悲しみ」だ。女神像の力に舞い上がり、欲望に踊らされている人々への、
強い「悲しみ」の感情……。
 ……では、誰でしょう? 
 フィリシアが傷つけられた事で、「怒り」の感情はさらに大きくなっている。
今、対峙している者たちに対する、純粋な「怒り」……。
「いいかげんにしなさいよっ!」
 ぴしゃり、と叩きつけるような勢いで、怒りを含んだ声が部屋に響き渡った。
「さっきから、聞いてれば勝手なことばかり! ご立派な理屈を並べてるけど、
全部、欲しいものをねだってるだけじゃない! しかも、思いどおりにならないと
癇癪起こすなんて、まるでお菓子を欲しがる子どもじゃない! いい歳をした
大人が、それでよく恥ずかしくないわね!」
 大きくはないが、よく通るはっきりとした声が、怒声で反論しようとした
人々の声を圧倒している。怒りをはらんだ厳しい顔つきで、人々を睨み、
一気に言い放ったのはティアだった。
 そのまま、ティアはつかつかと花瓶を投げた女性に近づき、真正面から
見据えた。
「ずいぶん、ふざけたこと言ってましたけど、どこまで女神像に頼れば、
満足して幸せとやらになれるんです?」
「え……あ、あの……それは……」
「自覚していないようですので、きっぱり、言ってさし上げます。おそらく、
どんなに女神像が願いを叶えても、あなたはずっと不幸です。
 だって、あなたには幸せの基準も認識もないんですもの。どんな状況にいても、
他人に、少しでも自分より勝った部分を見つけて、自分は不幸だと言い続ける
でしょうから。……今現在がそうであるように」
 反論も出来ずに、顔を真っ赤にさせている女性から目を外し、ティアは部屋に
いる人々を、さっと、見渡した。
「それは、あなた方も同じです!」
 部屋の中は、一瞬、静まりかえった。
「うるさいっ! それがなんだっ! てめえにゃ関係ねえだろうがっ!!」
 怒号が、沈黙を破った。
「……いたんですね、ブラッドさん。ああ、とりまきの方々もご一緒のようです」
「……いなくてもいいのに……」
 半ば、ティアを感心して見ていたゼロスとフィリシアは、聞き慣れてしまった
声に、思わずげんなりとした。
 無駄に気力と体力と変な行動力だけはあるブラッドは、これ見よがしに剣
を振りかざし、とりまきを引き連れてずかずかとティアの前に来ると、剣を
突きつけた。ちらり、とこちらを見て、不敵に笑う。どうやら、こちらに対
する脅しでもあるらしい。
「さっきから、何偉そうなこと言ってんだよ。てめえのどこに人のことに
口出しする権利があるんだよ、え? 
 どんだけ願おうが、こっちの勝手じゃねぇか。神官なら神官らしく、大人しく
神殿の管理だけするんだな。他人が何をしようが、てめえにゃ関係ねーんだからな!」
「バカやってる人を見たら、神官が偉そうに説教を言うのは当たり前よ! 
それにあなたも十分偉そうだわ。何の関係も権利もないのに、他人のことに
口出ししたり、相手を思いどおりにするために、脅迫や暴力を振るうだけ
じゃなく、女神像を悪用して人を傷つけてきた人の言い分とは、とても思え
ませんもの。そのくせ、自分だけは女神像の力で傷つけられたりしないように、
祈願してたわよね!」
「このっ!」 
 ガキンッ!
 誰もが知っている事実だが、面と向かって言われたことに腹を立てたブラッドが、
ティアに振り下ろそうとした剣を、エリックが止める。
「こいつ……どけっ!」
「やだね。ティア、後に下がってくれ」
 ティアが言われたとおりにしたのを確認して、エリックは難なくブラッド
の剣を弾き飛ばした。
「何で邪魔をした!」
「ティアは友人なんでね。ついでに、ここの警備兵が神官を守って何が悪い。
あんたの言葉を借りれば、あんたは何の権利があって人の仕事に口出しをする?」 
「とにかく、何をどう言われようと、女神像に他人の不幸を願う方々がほとんど
なんて状況では、神官としては見過ごせないわ。
 第一、切実に女神像の奇蹟が必要な者なんて、この町にはもういません。
これ以上は……私たちが駄目になるだけ。いいえ、とっくにそうなりかけてます!」
「うるさいっ! 俺は町長の息子だから、その権利がある! 
 お前ら、こいつらみんな、やっちまえっ!」  
 エリックとティアの言葉に、何も考えることもなく、ただ逆上しただけの
ブラッドがとりまきに号令する。が、
 バシンッ!
 こちらへ向かってきたブラッド達は、彼らから見て、一番手前にいる
エリックとティアに近づくことも出来ずに、何かに弾き飛ばされて転げ落ちた。
そして……
「レイフリーズ(光縛輪)」
 フィリシアの声と同時に、複数の光の輪が現れ、彼らを捕縛した。
「やれやれ。変に気を遣ったりせずに、彼らには最初からこうするべきでしたね」
 ブラッド達が確実に動けなくなったのを確認して、ゼロスは振りかざしていた錫杖を降ろし、にっこりと笑ってそう言った。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

L.長い……。
X.長いですね……。実は次も結構長いかも……。とりあえず、続きます。

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10493千年越しの賭 22エモーション E-mail 2002/10/10 23:31:40
記事番号10492へのコメント


 「千年越しの賭」 22

7.
 感情的に叫くだけ、という状況は、とりあえず治まった。ブラッド達は
性懲りもなく喚き散らそうとしたが、フィリシアが呪文に少々手を加えたらしく、
大声を出そうとすると光の輪の締め付けがきつくなり、大声がだせないため、
ぶつぶつ言いながらも、大人しくしている。
 人々もティアの言葉の影響か、さすがに個人的な願いを口にしての反対は
していない。が、
「しかし、やはり女神像の力はこの町の観光収入源でもありますし……」
「ヒュパティアさんの言うことは分かりますが、やはり……」
「せめて、魔獣騒ぎで破壊された町の修復や、女神像の悪用で被害にあった
方々の救済だけでも……」
 と、何とか封印をやめさせようと説得をしている。それでも、先程に比べ
ればマシなのだが。
「あの……神官様と巫女様のご意見はどうなのでしょうか……?できれば、
こちらの事情も考慮していただければ……」
 おずおずと長老が訊ねる。肩書きの割に町長が見事なほど役立たずなため、
自然と意見のとりまとめ役になっているのだ。何より、事の最初から関わって
いる人物でもある。
「冷たい言い方ですが、私たちはこの町の住人ではありません。どうするかは
あなた方──プラット・タウンの方々が決めなくては意味がないんです。
それは、長老様が一番お分かりのはずです。
 ……個人的な意見でしたら、封印する方をお薦めします」
 長老の問いに、淡々とした口調でフィリシアは答える。フィリシアの「賭」は
この町の住人の意思が前提条件だ。事の最初から強引に行えば、1年もかからずに
破綻する。
「じゃあ、自力じゃどうにもならないことだけでも願わせてよ!」
 先程の、花瓶を投げた女性が、不意にそう声を上げた。
「お金だの服なんかはしょうがないから、諦めるわよ。でもね、自力じゃ
どうにもならないことだってあるでしょ? だから……」
「……さっきから気になっていたんですけど、あなた方は代償の事をちゃんと
認識しているんですか?」
「代……償……?」
 女性は初めて聞いた言葉のように呟いた。他の者たちも同様で、その様子を
見たゼロスは呆れたようにため息をつく。
「おやおや。3年前、僕が女神像の力をご説明した後、ちゃんと彼女が忠告
したはずですよ。『願いが叶えば、必ず代償を取られます』って。お忘れに
なったんですか?」

 長老と、当時その場にいた者は、言われてやっと、思いだした。自分たち
歓喜の声でほとんどかき消されていた言葉を──。
 
『願いが叶えば、必ず代償を取られます。でも、いつ、何を取られるのかは、
誰にも分からないんです』

 ろくに聞くこともせず、そして「代償」だと、そう思ったものが取るに
足りないものだったので、すっかり忘れられていた忠告……。

「だから、この女神像に願い事をしないでほしいとも。結局、忠告は無駄に
なりましたが」
 ゼロスが事も無げにそう言うと、その場に座り込んだ女性は、半ば混乱した
ように呟く。
「代償……って……? 一体……何が代償に取られるの……?」
「さあ、それは……。願いの内容や人によって、全然違いますからね。何分
にもケースバイケースですから。まあ、相応とみなされたものでしょう。
 既に取られているかもしれませんし、これからかもしれません。何かが、
複数の願いの代償として、まとめた形で取られていることもあるでしょうね。
 ああ、3日前に壊れたりしたものの中には、魔獣とは関係のない、『代償』
だったものもあると思いますよ。正直、僕たちは当初、それで崩壊している
のだと思ってましたし」
 その言葉に、人々は愕然とした。失われたのは建物ばかりじゃない──。

 なにより、自分たちは何故あの時、取るに足りないものが「代償だった」
と思ったのか?「何を取られるのか、誰にも分からない」はずなのに。

 そう、代償が何か分かれば、まだマシなのだ。自分にとって引き替えにする
価値があるのか、考えることが出来る。だが、分からないのでは判断のしようが
ない。「代償」として失ったのかそうでないのか、分からないどころか気づかず、
例え気づいたとしても、取り返しはつかない。まして、いつなのかも分から
ないのでは……。

 何故、今までそんなことにも、気づかなかったのだろうか──?

『人間は基本的に、自分の見たいものしか見ないし、信じたいことしか
信じないんですよ』
 人々の様子に、フィリシアは先程のゼロスの言葉を思い出す。その言葉には、
確かに何一つ間違いはない。でも……。
 ……そういう存在なのは分かっているけれど、あまり、人間を甘く見過ぎ
ないでほしいわ……ゼロス。
 フィリシアは、ぎゅっと自分の手を握りしめた。

 呆然としながらも、長老が何とか声を絞り出して言う。
「あ、あなた方は、それを……」
「知っていたから、忠告したんですよ? 詳しく説明しようとした彼女の言葉を
遮ったのも、その割にきちんと意味を考えなかったのも、あなた方ですよ? 
それは、忘れないでほしいですね、長老さん」
「た……確かに……」
 事実だけに、長老たちは何も言えなかった。確かに、必死で説明しようと
する巫女の言葉を、ろくに聞かずに「もういいです」と打ち切ったのは、
自分たちだ。2人には責められる筋合いはない。
「……ねえっ! あんた、少しは分かるんじゃないの? あたしは、何を代償に
されたのか。言ってよ! ねえっ!」
 ドレスの裾を掴みながら、女性が体を震わせて言う。おそらく、何かが
あったのだろう。それは違うと、言ってほしい、何かが。しかし──
「……申し訳ありませんが、それは分かりません。分かるのは、取られるのが
『物』とは限らない、としか。
 例えば、理由もなくペットが死んだり、なんてこともあるでしょうね。
もちろん、人間も」
 静かな口調のその答えに、女性は蒼白になり、誰もが言葉を失った。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

L.あれ? 思ったより短い?
X.さっきのに比べれば、どんなものも、短く感じますよ。
L.21、22は書いていて精神的にキツかった部分だそうです。ちなみに
  22のラストは下書きにはあったけど、カットした場面ありです。
X.あの女性の「代償」になったもの、がカットされました。ほんとは僕が
  分かってて、あっさり言ってのける場面だったんですが……。
L.推敲してたら「誰にも分からないはず」なのに気が付いたのと、自分
  でも書いてて嫌になったのが理由だとか。それで、あーゆー台詞に
  なりました。それでも結構キツイよね。予想つく人、いるんじゃない?
X.そのままだったら、フィリシアに平手打ちされる場面があったんです
  けどね。台詞が無くなったので、それもなくなりました。
L.……何を言う気だった……あんた……(汗)
X.……それは秘密です。ここで言ったらリナさんにも叩かれそうですし。
L.で、次は現在、ね。
X.それでは、また明日お会いしましょう。

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10503Re:千年越しの賭 22ドラマ・スライム 2002/10/11 13:56:18
記事番号10493へのコメント

町の人々・・・人間的ですよね。
それにしてもフィリシア・・・何者でしょうか。
予想
L様=女神像のモデル=フィリシア
んな分けないですよね。
どう見ても女神じゃない・・・ぐふっ。
L:ではさようならー(手に血の付いたハンマー)

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10543Re:千年越しの賭 22エモーション E-mail 2002/10/11 22:07:38
記事番号10503へのコメント

いつも、ありがとうございます。

>町の人々・・・人間的ですよね。
ああああっ!そう思っていただけて嬉しいですっ!それが他の人に
伝わるかどうかが、すっごく心配だったんですよ。

>それにしてもフィリシア・・・何者でしょうか。
>予想
>L様=女神像のモデル=フィリシア
いえ、そんなたいした者じゃ……(汗)一応人間ですので、フィリシアは
(この話の中では)19歳です。神魔戦争の前から生きてませんって(笑)
でも、女神像のモデル=L様って言うのはいいですね。
特に女神像の形は考えてなかったんですが、それもありかも。
裏設定でモデルはL様にしよう(笑)

>L:ではさようならー(手に血の付いたハンマー)

はうっ!L様!!…………m(__)m(ガクガクブルブル)

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10548千年越しの賭 23エモーション E-mail 2002/10/11 22:31:15
記事番号10493へのコメント


 ああ、投稿ミス再び……。しかも削除依頼で記事番号間違えるし……。
既存の番号じゃなくて、未来の番号削除依頼しちゃったよ。
だからまだ、良かったけど……。
すぐに訂正してきたけれど、他の方の記事が消えたりしませんよーに(TT)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 「千年越しの賭」 23

 現在−6
 ある意味、「生きた(?)伝説の人物」であるゼロスは、小さな祠の前で、
いつもの笑顔で佇んでいる。とぼけることもなく、あっさり認めた事から
考えると、リナたちに気づかれる可能性くらい、予測済みだったのだろう。
 ……それは少し、残念かな。
 そんなことを思いつつ、リナは質問を重ねる。
「あの女神像……結局何だったの?」
「おや、書かれてませんでしたか? 神魔戦争の前につくられた神像ですよ。
ただし、片方は魔の力が、片方は神の力が込められているんです」
「それ、降魔戦争のあとでも有効だったんでしょ? 結界のなくなった今なら
ともかく、何で神の力が、魔族の結界があった間も有効だったのよ?」
「付与されたようなものですからね。女神像そのものに力がありますから、
結界の影響は受けないんですよ」
 そう言って、ゼロスは再び祠に目を向ける。リナも、何となく祠に目を向けた。
「これは、僕も後になって聞いた話ですが……
 神魔戦争が起きるよりも前、最初にルビー・アイ様の力を借りて、女神像
を創った者がいました。そうして、願い事を叶えていたわけですね」
「……ところが、女神像は制作者が予想しなかった事態を引き起こしてしまった。
千年前、この町であったような、ね。……あってる?」
「さすがリナさん。そのとおりです。それでもまだ、代償の認識をしていただけ、
千年前よりマシだったかも知れませんけど。
 とにかく、人間はそうなってから、今度は神に泣きついたわけです。普通
なら自己責任と言うことで放っておくんでしょうけど、さすがにスィーフィードも
見かねたのか、元の女神像を材質の違う2つの女神像に分け、プラチナの女神像には
元の魔の力を、オリハルコンの女神像には神の力を与えることで、力を相殺、
もしくは封じられるようにしたんです。
 まあ、元々1つだったものを分けてしまったので、2つ揃ってないと力が
発揮できなくなっちゃいましたけどね」
「それが、あの2つの女神像……」
「人間は一時的に女神像の力を封じ、スィーフィードの神殿に預け、2つの
女神像はそこで厳重に保管されました。
 その後、神魔戦争が起こり、神殿は破壊され、数千年の時間が経ち……」
「千年前、ヒュパティアの村の人たちが発掘した……ってわけね」
 数千年前の人間の欲が創った物に、後の時代の人間も踊らされた、いや、
踊ってしまったのだ。目先の欲望のために。
 忠告の意味を考えずにいたため、時間を超えて同じ過ちを繰り返してしまった
人間たちの、とても愚かで──馬鹿馬鹿しい話──。
 くすり、とリナは笑った。
 愚かで馬鹿馬鹿しい。でも、そう思うのは、リナが全てが終わった後、端
で見ているだけの無関係な人間でしかなく、だから、そんな風に偉そうに
言えるのだと気づいたからだ。
「あんたと一緒にいた巫女さんは、『一時的な封印』をしたわけじゃなかった
のよね?」
「ええ。オリハルコンの女神像を使ってできる封印は2つありますが、すで
に以前の方々が行った『一時的な封印』は、出来る状態ではありませんでした。
 それで、確実な方を選んだんです。ただし、手間と根気と時間のかかる」

 フィリシアの選んだ方法は、オリハルコンの女神像の力を、プラチナの
女神像の力と同等、または上まらせてから封じるものだった。
 力の差は、それぞれの女神像の輝きで分かる。もしオリハルコンの女神像が、
発見されたときのままの状態だったら、封印など出来なくなっていたはずだ。
それほど、力の差は大きかった。ギリギリでも封印が可能だったのは、一部
の者とは言え、オリハルコンの女神像に祈り、女神像を輝かせた者たちがいたからだ。
 プラチナの女神像に比べ、輝きが圧倒的に足りないオリハルコンの女神像
を輝かせるのは、容易ではない。それも、封印の手順として行われるものだから、
その間に誰か1人でもプラチナの女神像に祈願してしまったら……それで、
全て台無しになる。これに限り、封印のやり直しはきかない。
 何の努力も苦労もなく、望むものを手に入れる事に慣れた人々にとって、
これは苦行に近いだろう。

「片方をしばらく別の場所に保管……ってのは駄目だったわけ?」
「すぐに、同じ事が繰り返されるだけですよ。初めて代償の事を知って、
自棄になっている方もいましたから。そう言う方は自滅するために祈願しそう
でしたしね」
 リナは自分の手をぎゅっ、と握りしめた。
「自滅……ね……。
 ゼロス、あんたは最初から……鑑定の依頼を受けたときから、全部知っていた、
ううん、分かっていたんでしょ?
 女神像の力や代償のことじゃなくて、村人が女神像の力に踊らされて、結果、
どんな事態になるのか、十分に……」
 そう訊ねるリナに、ゼロスはいっそ清々しいほど、晴れやかな笑みで答えた。
「はい」
 その笑みを見て、リナは怒りを感じるのと同時に、久々に、ゼロスを怖いと
思った。全て承知の上であんな笑顔をできるのが、とても恐ろしかった。
 ゼロスは、魔族だ。時々忘れてしまいそうになるが。こんな時、それを思い
知らされる。
「この……確信犯!」
 貧しい村人が、女神像の力を聞いてしまったら、舞い上がってしまって、
ろくに忠告など聞かなくなってしまう事など、例え聞いても、代償の認識が
薄いものになる事など、ゼロスに分からないはずがない。
 巫女の方はそれを十分に分かっていたから、鑑定の後、ひどく悩み、女神像の
力のことを伏せようとしたのだ。その邪魔をしたのは……ゼロス。
 結果的にそうなったように見えて、実際には意図的に誘発された、千年前の事態……。
「確信犯じゃありませんよ。リナさんの思っている意味で言うなら、計画犯です」
「どっちでも同じようなものじゃないっ!」
「正確な意味が違います。
 まあ、それについての文句は勘弁していただけますか? 結果的にでは
ありますが、僕がこの件の後始末をしていますから。
 よりにもよって、魔族であるこの僕が、ですよ?
 本当に……彼女も人が悪い。呆れるくらい甘いくせに、容赦なく厳しいん
ですから」
 そう言いながら、ゼロスは手に持っていたアメジストを上に弾き、受け止める。
困ったような、でもどこか、楽しそうな表情で。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

L.筆者E、今回は滅茶苦茶大ポカやったよね……。
X.一坪様がすぐに気づいてくれると良いのですが……。ところで、今回は
  魂吐いてませんね、筆者E。
L.魂出す前に討ち死にしてるみたいよ。
X.……で、23は……頂上すぎたら一気に下り坂になりましたね。
L.ほとんど雪崩ね。ジェットコースターの方があってるかな?ラストに
  向けて一直線っ!ってとこね。
X.24は過去。過去は次で終わりですね。
L.では、続きまーす。

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10549Re:千年越しの賭 23ドラマ・スライム 2002/10/11 22:37:06
記事番号10548へのコメント

なるほどプラチナとオリハルコンの女神像・・・神と魔だったんですね
変な予想立ていて全く思いつきませんでした。
さていい展開になってきました。
それでは親がうるさい(当たり前な事なのですが)のでもう寝ます。
それでは〜(それにしてもオーフェン面白い)

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10551千年越しの賭 24エモーション E-mail 2002/10/11 23:00:12
記事番号10548へのコメント


 「千年越しの賭」 24

8.
 過去−8
 少し肌寒く感じる風に、コスモスが揺れる。雲ひとつない青空の下、見渡す
緑の平原いっぱいに、一斉に咲き誇っているコスモスの花は絶景だ。
 精神的に疲れきっていたフィリシアにとって、この風景は気が晴れる。

 女神像の封印と──正確には封印に必要な「形」を作ったのだが──細かい
作業等を終わらせて、2人がプラット・タウンを離れてから、もう10日ほど経つ。
 今滞在している村に来たのは5日まえだ。ここにはフィリシアの知り合い
がいるので立ち寄った。それが、この一面のコスモス畑の中心にある小さな
丘の、やはり小さな教会の主だ。
 ティア達の力になって欲しいと、頼みに来ただけなのだが、この村の、
のんびりとして落ち着いた雰囲気に、気が緩んだためか疲れが一気に出たのか、
フィリシアがダウンしてしまったので、そのままここに泊めてもらっている。

「部屋からふらりといなくなったと思ったら……。やっぱり、こちらでしたか」
「ええ。気分がいいから散歩していたの」
 探していたらしいゼロスに、フィリシアは笑って答える。その様子に、
ゼロスはため息をついた。
「まったく、少し調子が良くなるとすぐこれですか。今度は風邪をひきますよ」
「大丈夫よ」
「貴女の『大丈夫』はあてになりませんよ。
 ……よっぽど気に入ったんですね。この景色が」
「だって、綺麗だもの。今はコスモスで目立たないけど、かすみ草も植えて
いるんですって。だから春は真っ白だって、セーガン先生が言ってたけど、
見てみたかったわ」
 セーガンとはこの教会の主である神官長のことだ。フィリシアのいた神殿では、
神殿や町の子どもたちの教師等をしていたので、フィリシアにとっても恩師だ。
三十半ばで僻地に近いこの場所へ、望んで赴任していったのだと言う。
「あ、そうだわ、ゼロス。これ、ゼロスに持っててほしいんだけど……」
 そう言って、フィリシアはマスカット大のサイズをした、赤紫色のアメジストを
手のひらにのせて見せてきた。手にとって見て、意味が分かった。
「これは……」
「女神像の封印の仕上げ。私のお節介も入ってるけど」
「……どうして、そう無茶するんです? 実際に封印できるようになるのは、
もっと後なんですから、その時に封印しに行けばいいじゃないですか。何も
今の状態で、わざわざこんなものを創る必要ないでしょう?」
 呆れた顔と声のゼロスから視線を外して、フィリシアはコスモス畑を見る。
いや、それともその向こうの、遠くの空か。
「5年や10年で出来る事じゃないもの。20年、30年……もしかしたら、もっと。
 だから、ゼロスが持っててくれる?」
「つまり、何十年か経ったら、僕はまたあの町に行くことになると? 何で
そうなるんです?」
「多分、そうなると思っただけよ。だってゼロスは長生きしそうだもの。
 本当なら私がするべきだけど、基本的に私みたいなのは、あんまり長生き
できないから。
 ほら、良く言うじゃない、『良い人間は長生きできない』って」
「……貴女は長生きしますよ。それだけいい根性と性格をしていますから」
 事も無げに言うフィリシアに、さすがにゼロスは呆気にとられながら言う。
その様子に、フィリシアはくすりと笑う。
「そう? でも、実際はどうなるか分からないでしょう? だから、ゼロス
と賭をしようと思って」
「賭……ですか?」
「そう、賭。
 ゼロスは、正直に言えば今回のこと、失敗するって思っているでしょ?」
「ええ。正直に言えば。
 フィリシア。貴女がどんなにフォローしていても、時間がかかりすぎます
からね。いつか途中で挫折する。そう思っています。何故かは、貴女も十分
に分かっているでしょう?」

 人の欲望は呆れるほど尽きることがない。しかもプラット・タウンの人々は、
この3年で抑えがきかなくなっている。普通なら耐えられることに、耐えられない。

「私はね、大丈夫だって思っているの。不安はあるけど、大丈夫、成功するって、
そう思ってる」
「……その根拠は何です?」
「ティアがいるから。ティアと同じように、オリハルコンの女神像に祈ってた
人達がいて、力になってくれる人達がいるから。
 順調には行かないだろうし、大変なことの方が多いけど、それでも、大丈夫だって、
そう思えるの」
「『知っている』んですか? それとも『信じている』んですか?」
「『信じている』よ。『知って』いたら『賭』としては、フェアじゃないでしょ?」
 ゼロスの問いに、フィリシアはくすくすと笑って答えた。

 ……これから先にも、あの町にティアのような人間は必ず出てくるだろう。
だからきっと、大丈夫。
 これはむしろ祈りに近い。でも、そう信じてる。

「……『信じている』ですか。信じていて、裏切られるのは、よくあること
ですよ?」
「そうね」
 フィリシアはにっこりと笑った。
「でも、それだけの事だわ。裏切られたら、悲しいけど。ただ、それだけ」
 穏やかで、静かで、しかし突き放しているような、言葉。一度信じると、
相手をどこまでも信じる反面、どこか割り切ってもいるフィリシアに、苦笑
しながら軽く肩をすくめて、ゼロスが訊ねる。
「それで、フィリシアが負けたら、僕は何を頂けるんです?」
「それ。今渡したアメジスト。ゼロスの勝ちだったら、それをあなたの好き
に使っていいわよ」
 ──封じ込められているのは神聖呪文。神の力による封印。そして、
フィリシアの力──
「そして、フィリシアの勝ちの場合、僕はこれを使って封印の仕上げをする
わけですね?」
「そう言うこと。期間はゼロスが次にあの町へ行くまで」
「……ずいぶんアバウトな期間ですね。僕の自由でいいんですか?」
「ええ。あなたのことだから、特に用もないのに、自分から行こうなんて
思わないでしょう? だから偶然にしろ必然にしろ、次に来たときなら、
一定の期間が開いているもの。判断する時期としては十分なはずよ。違うかしら?」
 お互い様な事だが、3年と言う時間で、性格や行動が「良く分かっている」
フィリシアの言葉に、ゼロスは思わず吹き出して笑う。
「確かに、そうですね。ただ、僕があの町へ行けなくなってしまったら、
どうなるんです?」
「その時は、引き分け。できれば、それだけは、あの町へ届くようにしてほしいけど」
「他の条件は?」
「当然の事だけど、今から私たちは、あの町に、直接的にも間接的にも、
一切関わらない。あ、セーガン先生が見守るくらいは、ハンデとして認めて。
……条件は、こんなところ。
 嫌なら賭から降りていいわよ」
「いいえ、乗りますよ。これは、賭の品としては十分すぎるくらい、価値が
ありますから」
 ──力をそのまま利用して、別の使い方をすれば、人間どころか「神」の
側に対しても、かなりの驚異になる。それ程の価値──
「じゃあ、成立ね」
 澄み切った空の下、コスモスの花が風に揺れた。 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

L.コスモス畑……。
X.筆者Eが「○来○ガーデン」に行った影響で、出てきました。咲き始めかと
  思っていたら、見事に開花していてたそうで……。僕とフィリシアが賭

  するシチュエーションはどうしようかと困っていたそうですが、5万本の
  コスモスとチャペルを見た瞬間、「よしっ!これ使うっ!」となったとか……。
L.遊びに来てまでパロディのネタ探し……。何だかなあ……。
X.まあ、かなり絶景だったから使おうと思ったようですけどね。
L.とりあえず、過去はこれで終了?
X.終わりです。回想が少し入るくらいで、過去そのものはもう終わりです。
L.フィリシアの正体は?
X.本当はこの話で書くつもりはなかったそうですが、やっぱ据わりが悪いからと、
  付け加えました。25……26かな?その辺りで分かります。
L.ということで、明日またお会いしましょう。

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10577千年越しの賭 25エモーション E-mail 2002/10/12 21:55:44
記事番号10551へのコメント


 とりあえず、今日投稿分で終わり……。
ツリーは不安ですがこちらにつなげます。多分何とか持つでしょう。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「千年越しの賭」 25


 現在−7
 ゼロスの言葉に、リナは大きな目をきょとんとさせた。
「後始末? あんたが?」
「ええ。『賭』に負けちゃいまして。そう言う『約束』でしたからね」
「『賭』……って、誰と? ずいぶん変わった人もいるわね」
「伝説で言うところの『純白の巫女』ですよ。確かに、かなり変わった人です
から。彼女は」
 神に仕える巫女が、魔族と賭をする。相手が魔族と分かっていてだとしたら、
並の神経ではない。知らなかったとしても、確かに変わっているが。
「一体、どんな賭をしたのよ?」
「この町の方々が、彼女がプラチナの女神像にかけた、かりそめの封印を
解かずにいられるか? という賭です」

 フィリシアは、プラチナの女神像が人々の願いを勝手に叶えたりしないように、
像を納めた箱に簡単な結界の一種をかけた。そうして、その箱を町の人々に
渡した。だがそれは、ふたを開けてしまえば、簡単に解けてしまうものだ。
 つまり、人々は望めばいつでも、再びプラチナの女神像を使える状況に
いたのだ。それは、きちんと記録にも残っている。

「……ものすごーく、意地の悪い賭じゃない? それって」
「ええ。でも、賭は彼女の勝ちです。それにリナさんも御覧になったでしょう? 
あのオリハルコンの女神像を。僕が最後に見たときとは雲泥の差です。千年
以上経っているとは言え、正直、ああまで輝いているとは思いませんでした。
 あれなら、仕上げが必要ないくらいですよ。まあ、約束ですから、そうも
いきませんが」

 リナ達とは別に見せてもらった、神殿の記録。何度か封印が解かれそうに
なっているが、その度に必ず止める者がいる。ヒュパティア達の意思が、
しっかりと受け継がれているのだ。

『順調には行かないだろうし、大変なことの方が多いけど、それでも、大丈夫だって、
そう思えるの』
 そう言った、フィリシアの言葉どおりに。

「ゼロス、その巫女さん。やろうと思えばちゃんとした封印できたんでしょ? 
女神像を使った封印は無理でも、神の力と自分の霊力で」
 少し考えていたのか、黙っていたリナが、不意にそう言った。
「おや。どうしてそう思うんです?」
 からかうように、でも、どこか楽しそうに、ゼロスはリナに訊ねる。
「ちょっと考えれば分かるわよ。女神像を使っても、封印が出来るかどうか
分かんないはずなのに、『像を納めた箱』にとは言え、『結界の一種』を
かけるって形で、プラチナの女神像の力を結果的に封じてるのよ? 例え
『かりそめ』だとしてもね。そんなマネできるんなら、もっと強い結界で
封じることくらい可能でしょ。
 第一、ただの結界で片が付くなら、一番最初の連中だって苦労しないわよ」
「でも、一番最初の方々は、単にそんな方法を思いつかなかっただけ、かも
知れませんよ? 
 結界も、女神像の力が強くて、簡単なものにしかできなかったかも知れない
でしょう?」
 まるで、トリックを説明する名探偵の姿を、楽しんで見ている犯人のように、
ゼロスはリナに質問する。それが分かっているから、リナはうんざりしたように
言葉を続ける。
「結界なんてお手軽な手段で解決できるんなら、一番最初の連中が女神像の
ことで、スィーフィードに泣きついたりしないわよ。
 それに記録どおりなら、巫女さんの結界はプラチナの女神像の力を中和、
もしくは遮断するけれど、オリハルコンの女神像の力は、素通しでプラチナ
の女神像に届くってことになるわ。
 結界の類はあたしの専門外だけど、こんな面倒な条件の『簡単な結界』作るより、
問答無用でどんな力も封じる、単純な結界作る方が、よっぽど簡単なのは
分かるわ。女神像の力が強かったなら、なおさらね。
 千年前、巫女さんがかけたのは結界じゃない。正真正銘の封印。ただし、
誰にでも簡単に破れてしまうような、ね。……そうでしょ? ゼロス?」
「そのとおりです。
 あの時、彼女は『目の前の状況や条件をきちんと見て、判断できる人なら
嫌でも気づく』と言っていましたが……さすがはリナさん。しっかり見抜いて
いらっしゃる」
 ゼロスは楽しそうに軽く手を叩いて、あっさりと肯定した。
「もしかしてとは思ってたけど、確信持ったのは、あんたの話聞いてからよ。
あんた自身、『かりそめの封印』なんて言ってたしね」
「ああ。それは確かに、ヒントになってしまいましたね」
 ゼロスの答えに、リナは笑うと肩をすくめて祠を見る。何が祀られているのか、
もう気づいているのだろう。
「それにしても、意地が悪いって言えば、意地が悪いわね。同じように封印
するにしても、町の人達が一番苦労する方法を選んだんだから」
 リナは、そう言いながら祠に近づくと、中をのぞき込む。固く閉ざされた、
石の扉。その奥、祠のご神体として、プラチナの女神像が眠っている……。
「それが、一番確実な方法でしたからね。実際、女神像の封印が破られることは、
もうありませんよ」
 フィリシアが、どんなに強力な封印をしたとしても、それはいつか、必ず
誰かに破られるだろう。フィリシアはそれを望まなかった。だから、「意地
の悪い」手段を選んだ。 
「でも、その手段をとったのは、彼女が信じてたし、それ以上に願っていた
からでしょ? 町の人が、もう女神像に頼ったりしないことを。
 そしてその手段をとるなら、本来しなくてもいいのに「軽く封印」をしたのは、
町の人たちの気持ちを、すぐに挫けさせないため……。
 ほんと、あんたの言うとおり、『甘いくせに容赦なく厳しい』人だわ」
 そう言うリナの後ろ姿を、ゼロスは感心した面持ちで見つめた。賭をした
ときの会話を思い出して……。

「貴女は今回の件を、きちんと見抜く人はいると思いますか?」
 そう訊ねたゼロスに、フィリシアはきっぱりと言いきった。
「いるわよ、もちろん。目の前の状況や条件をきちんと見て、判断できる人
なら嫌でも気づくでしょうから。私の封印に気づいたら、さぞかし『意地が
悪い』と思うわね。自分でもそう思うもの」
「僕が言っているのは、貴女が何故、失敗の危険性を冒しても、その方法を
選んだのか、本当の意味で見抜いて、理解できる人はいるんでしょうか? 
ということですよ」
「それは……分からない……」

 ……フィリシア、いましたよ。見抜いた方が。ひょっとしたら、今までにも
いたのかもしれませんが、確実に1人、今ここに。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

L.はい、さくさく続きます。
X.今日は4つですからね。では、続きます。

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10578Re:千年越しの賭 25ドラマ・スライム 2002/10/12 22:07:42
記事番号10577へのコメント

>「結界なんてお手軽な手段で解決できるんなら、一番最初の連中が女神像の
>ことで、スィーフィードに泣きついたりしないわよ。
えっどういう事ですか?

それにしてもフィリシア何者?

それでは〜もうやめないといけない様なので・・・
お休みなさいです〜
それではさようなら〜

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10584Re:すいません、長いです。ついでに裏話まで(笑)エモーション E-mail 2002/10/13 01:17:25
記事番号10578へのコメント

>>「結界なんてお手軽な手段で解決できるんなら、一番最初の連中が女神像の
>>ことで、スィーフィードに泣きついたりしないわよ。
>えっどういう事ですか?

「一番最初の連中」=「女神像を創った者たち」です。
「結界」張ったくらいで解決するような問題なら、彼らが神に力を借りる
必要はなかった、と言う意味です。

彼らはあんなもんを創るくらいの力があるんですから、それなりの力はあるし、
ある程度の事は出来るはずなんです。
当然、出来る手段は全部取っているでしょうし、女神像を結界で覆うくらい
は考えたし、実行したでしょう。

でも、結局スィーフィードの力を借りて、やっと「一時的に」封じてますよね。

つまり、女神像の力は、人間の創った結界で覆ったくらいで、簡単に
封じられる類のものじゃなかった、ということです。
仮にも魔王の力ですから、当然ですが。
しかし、人間には無理でも、神であるスィーフィードには封印は可能です。
対等で同格ですから。

ですが、スィーフィードはあっさり「封印」はしませんでした。ほんとは
出来るんですが。

何故か……人間に、自分たちのしたことの責任をとらせるためです。
好き勝手やって、問題が起きたら他人に押しつける、そんな自分勝手な理屈
が通用すると思ったら大間違いだ、と暗に言っているんです。
神は人間の下僕でも雑用係でもありませんし、人間も神や魔より力は弱くても、
一方的に庇護されるだけの存在ではないからです。

本気で困っていること、既に人間だけでは手には余る状態だと分かったから、
力を貸したのです。でも、あとは自分たちでちゃんと片を付けさせるために
女神像を2つに分けました。
これが、神魔戦争の前の話です。

「意地の悪い手段」を決めたときの、フィリシアの心情もスィーフィードと
同じです。フィリシアも、本当ならあっさり封印できます。でも、町の人
たちに「責任」を取って貰うために「一番苦労する手段」を取りました。
ですが、彼女は神ではなく人間です。そのまま放っておく気にはなれません。
だから「箱に軽い封印」をしました。(注:女神像にではありません)
ゼロスに「甘いですね」と言われるのは、そんな行動からです。

すみません、長くなりまして(汗)では。

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10579千年越しの賭 26エモーション E-mail 2002/10/12 22:20:09
記事番号10577へのコメント


 「千年越しの賭」 26

「リナさん。僕はこれから『仕上げ』をします。立ち会っていただけますか?」
 ゼロスは祠に近づくと、そうリナに訊ねる。
「立ち会うって……何をさせる気よ?」
 振り返ったリナは二、三度、目を瞬くと、どこか警戒したように答える。
日頃、ゼロスに口先三寸で利用される事が多いので、無理もないが。
「何も。ただ立ち会うだけですよ。この件を本当の意味で見抜いたリナさんには、
その資格がありますから。まあ、僕からのご褒美だと思ってください」
「まあ、そう言うことなら……。あ、でも、あたしとしては、ご褒美だって
言うなら、巫女さんの名前が知りたいわね。あんたは当然知ってるでしょ?」
「えっ? 名前……ですか?」
 リナとしては単純に「どの記録にも載っていないんだから、知っている人
から聞けばいい」という発想だったが、ゼロスは少し困ったように呟いた。
「そ、名前。さっきの質問とかぶるけど、どうしてあんた達の名前、残って
ないの? もしかして、ヒュパティアがあんたの正体に気づいたから?」
「う〜ん、確認取れないので分かりませんが、ヒュパティアさんは……まあ、
後から気づいても不思議はないでしょうから、それもあると思いますが、
一番の理由は彼女に対して気を遣ったんでしょうね」
「……へ? 巫女さんの方?」
「ちょっと『特殊な』立場なんですよ」
「確かに何だか凄そうな人みたいだけど、『特殊』ってどう『特殊』なのよ」
「神殿での地位も、それ以外でも……です。いえ、逆ですね。『特殊』な人
でしたから、神殿で特別な地位につけさせられた、というべきでしょう。
 リナさんはゼフィーリアの出身ですから、スィーフィード・ナイトはご存じで……
 どうしたんです? 真っ青になってますけど?」
「な、何でもなひ……」
「彼女はスィーフィード・ナイトではありませんが、同じ系列の存在です。
あちらが「動」なら、彼女は「静」で、力の方向性は違うし、滅多にない、
イレギュラー的な存在ですけどね」

 あの時は冗談だと思っていた、「長生きできない」と言う言葉の意味……。
 最初から「欠片」を持って生まれることを前提にしているスィーフィード・ナイト
と違い、フィリシアのように、本当にたまたま「欠片」を持って生まれることに
なる者は、よほど運良く適合しない限り、神の力に人間の身体が耐えられない。
だから、ほとんどが短命なのだと知ったのは、フィリシアの死が避けられない
状態になってからだ。
 あの時、コスモス畑と一緒に、フィリシアには自分の寿命が見えていたの
かも知れない。

「ヒュパティアさんは彼女の名前を知っていましたから、調べればすぐに
それが分かったはずです。要するに、迂闊に書き残して、名前を利用されたら
たまらない、と言う事ですね。
 まして、僕の正体に気づいたなら尚更ですよ。僕……同行者が男性と言う
だけでも、下手をすれば、彼女の名前に傷が付きかねないのに……」
「同行者の正体が、魔族じゃね……。そりゃ、無理ないわ」
「ヒュパティアさんは、彼女をとても慕ってましたから、僕と彼女の名前を
伏せることで、それを防いだんでしょうね」
 ……噂のこともありますし、とゼロスは心の中で付け足す。だから余計に
ヒュパティアは、必死で伏せたに違いない。
「それと、僕はあの一件が終わるまで、ヒュパティアさんには、名前を他人
にいわないでほしい、とお願いしていました。
 結局、他の方々には名のらないで町から出ちゃいましたから、ヒュパティアさんが
口をつぐんだ以上、名前は分からないままで、言い伝えだけが残ったんでしょう」
「そうそう、それも疑問だったのよね。何で?」
「用心、ですよ。女神像の力で、妨害を受けないためです。あれで妨害されたら、
いくら僕や彼女でも、どうにもできませんから。妨害側が僕たちの名前を
知らなければ、まずそれを回避できます」
「……結構、つまんない理由だったのね」
「でも、僕たちはあの女神像を一番警戒していたんです」
 どこか真剣味を帯びた口調で、ゼロスは答えた。
「さて、それでは『仕上げ』をしましょうか」
 場の空気を変えるように、ぱん、っと両手を合わせてにっこりと笑うゼロスに、
リナは同じように笑いながら言った。
「あー、そう。それは分かったけど、まだ巫女さんの名前、聞いてないわよ。
誤魔化さないでね(はあと)」
「えーっ……と」
 ゼロスは固まった笑顔のまま、たらりと一筋の汗を流す。相変わらず、芸
が細かい。
「何か、問題でもあるわけ?」
「問題……ってほどのことじゃないんです。ただ……彼女は、公に名前が
知られるのは、凄く嫌ってましたからね。……他の方には、内緒にしてくださいよ」
「あんたにしちゃ、ずいぶん気を遣うわね」
「僕は彼女に憎まれるのは平気ですが、嫌われるのは御免ですから」
 リナは一瞬、きょとんとし、次に呆気にとられた。
「……どういう理屈よ、それ? あんまり変わらないじゃない」
「全然、違いますよ」
 ゼロスはそう言うと、祠の前にしゃがみ込み、地面に文字を書き出す。
「……読みは今と少し違うかも知れませんが。名前からして、僕……魔族とは
対極にいるような人ですよ、本当に。フルネームだと尚更」
 書かれた文字を、リナは口に出さずに読む。……F、e、l、i、c、i、a、
H、e、a、r、t…… Felicia Heart ……。
「えっと……姓は『ハート』でいいだろうけど、名前は……『フェリシア』
……かな? 魔族と対極な名前って、どういう意味なの?」
「それは……秘密です♪
 まあ、姓の方は神殿が付けた後付だから、狙ってつけたんだろうとは、
言ってましたよ。本当の姓は知らないそうです」
 そう言うと、祠の前にアメジストを置いて立ち上がり、 軽く印を結びながら、
何やら小声で呟く。──おそらくは、宝石に封じた力を解放するキーワード。
「リナさん、少し離れてください。今から、『仕上げ』が始まりますから」
 珍しく目を開けて、呪文を唱え終わったゼロスが言う。リナが言われるまま
二、三歩後に下がると同時に、アメジストが輝きだした。

 祠を包み込む眩しい金白色の光に、リナは思わず目を瞑った。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

L.はい、もうラストに来てます。……やっぱジェットコースターじゃない?これ。
X.フィリシアの正体……と言うほどのものじゃないですが、出ましたし。
  でも……実は前作品でこっそり先行ネタバレしてたのは、今だから言えますね。
L.ああ、あれね。「すとれす解消」で書いた「So What?」……。
  普通、今読んでる話に次作品のネタバレがあると思う人って
  いないんじゃない?
  それ以上に前作品とこれを続けて読んでる人、何人いるのよ?
X.本当にそのとおりですよねー(笑) まあ、結果としてそうなっただけで
  本気であれは「すとれす解消」で書いたものですからねー。書いたときは
  何にも考えてなかったと思いますよ。
L.……あれに書いてあった、ストレス与えた作品って……もしかしてこれ?
X.ぴんぽーん♪ だからあんな文が出てきたんですね。ほとんどプロットだけで
  ろくに下書きらしい下書きもせず、推敲一回で投稿したそうですから。
  まあ、もし、先に読んでいた場合、僕とフィリシアのお互いの共通認識と
  フィリシアの正体は分かったと思いますよ。
L.と、雑談はさておき、では、続きます。次で本編ラストです。

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10580千年越しの賭 27(完結)エモーション E-mail 2002/10/12 22:32:37
記事番号10579へのコメント


 「千年越しの賭」 27(完結)


「あれ? ゼロス?」
 頼むからもっと光量落として、と言いたくなるほどの、目を開けていられない
眩しい光が収まった時、祠の前に自分しかいないと気づいたリナは、周囲を
見回した。が、ゼロスの姿はどこにもない。
「……アストラルサイドにでも避難したのかしら?」
 まあ、確かに魔族にはキツそうな光だし、と思いつつ祠を見る。祠は、見た目は
先程と変わらない。でも、どこか不思議な空気を帯びはじめていた。
「リナさーーーんっ!」
「おーいっ! リナっ!」
 唐突にアメリアの元気な声と、ガウリイの声がリナを呼ぶ。声の方向に顔を
向けると、先頭にガウリイが、次いで弾むような勢いで駆けてくるアメリアと、
その後を少し遅れてゼルガディスがやって来る。
「ガウリイ。アメリアにゼルも。どうしたのよ?」
 やって来た3人に、リナは不思議そうに訊ねる。神殿の周囲を散歩する、
とは言ってあったが、何故揃ってここへ来たのか、分からなかったからだ。
「いや、だって、今凄い光が出たじゃないか。なんかあったのかと思ってさ」
「ああ、ガウリイの言うとおり。リナが神殿の裏の方へ行ったと思ったら、
そう時間が経たんうちに妙な光が立ち上ったんだ。何かあったと思うだろう、普通」
「そうですよ! リナさんがまた何かしたのかと……うぐぐぐぐ、ぐるぢい……」
「何ですってぇ〜、ア〜メ〜リ〜ア〜?」
「お、おい、リナ、よせ! 分かった、俺たちが悪かった! だから落ち着け、な?」
 あっという間にアメリアにヘッドロックをかけているリナを、ガウリイが
宥める。その光景をゼルガディスは呆れ半分に見ていたが、確かに、周囲に
全く被害が無い以上、リナが何かをしたとは思えない。
「……ところで、さっきの光は何だったんだ?」
「ああ、さっきのね。あれは……『封印完了』の光よ。多分」
 それほど怒ってはいなかったらしく、すんなりアメリアを解放して、リナは
ゼルガディスの問いに答えた。
「『封印』……?どういうことだ、それは?」
「この祠に、あの女神像が安置されてるの。それが、千年以上かかって、女神像が
完全に封印された……ってこと。その証の光みたいよ。神々しかったじゃない、あの光。 
 それにこの祠。今来たあんた達には分からないだろうけど、さっきと雰囲気が
全然違うわ。だから、間違いないと思う」
 事実とは微妙に違うが、リナはそう説明した。ゼロスのことを言ったら、
ややこしいことになると思ったからだ。
「……確かに、この祠を凄く神々しい気配が包んでいます」
 タイミング良くアメリアがそう言う。ゼルガディスはどこか疑問そうな
表情だったが、アメリアの言葉には納得したらしい。実際、リナと同様に彼
も祠からの、不思議な空気を感じていたからだ。
「しかし、何だってまた、今になって……」
「言っとくけど、あたしは、何にもしてないわよ」
「たまたまなんでしょうか。いいなあ、リナさん。運良く封印の瞬間に立ち
会ったんですよ! 私も立ち会いたかったです」
「ま、まあ……そうなるかな……あはは」
 心底羨ましがるアメリアに、リナは内心謝りつつ、硬く笑った。
「ん? 何だこの文字は?」
 珍しげに祠を見ていたガウリイが、半分消えかけていたものの、地面に
残された文字に気が付いて声を上げた。
「単語……ですか? この消えかけてるの、i……じゃなくて、lですね」
「こっちはaだな。後半は……消えちまってて、読めんな」
 ガウリイの声に、アメリアとゼルガディスも近寄って文字を見る。半分
消えているが、名前の方はどうにか読めるらしい。
「あ、それ……ね。多分、フェリシア……って読むのかな。昔の人の名前みたいよ」
 ゼロス……知られたくないなら、ちゃんと消していけばいいのに、と思いつつ、
リナは3人にそう言った。
 ……内緒って言ってたけど、これぐらいは、許してよね。
 そう思っていると、それを見て少し考えこんでいたゼルガディスが、訊ねてきた。
「昔って、どのくらいだ?」
「……相当、昔みたいだけど……」
 内心ひやひやしつつ、そう答えるリナを、ゼルガディスはどこか胡乱な
眼差しで見ていたが、特に突っ込んでは来ず、不意にまあ、いいかという笑みを
浮かべて言う。
「相当昔の名前か……。なら、これはフェリシアじゃなくて、フィリシアだと
思うぜ」
「……フィリシア?」
「ああ。昔は……それこそ、降魔戦争の頃くらい昔だと、今とは発音……
読み方が違うんだ。
だから昔の名前だって言うなら、フィリシアだな。ずっと昔の言葉で、
『幸福』とか『幸せ』と言う意味だ」
「……『幸せ』……?」

 フィリシア=ハート ……幸せな心……。

『名前からして、僕……魔族とは対極にいるような人ですよ、本当に。
フルネームだと尚更』

 途端に、リナは笑い出す。そんなリナの様子に、ガウリイもアメリアも
ゼルガディスも、何が何だか分からず、目を点にしている。
 ……そういう意味だったんだ。確かに魔族からみれば、対極にいる意味の
名前だわ……。
「お、おい、リナ。どうしたんだ?」
「ご、ごめん、ちょっとしたことなんだけど……ね」
 少し心配げに訊ねたガウリイに、リナは明るい顔でそう言うと、ガウリイ
の手を引っ張る。
「さて、用は済んだし! 本格的にお祭り行こっか!」
 千年かかった封印。その間、この町の人々は、幸せの名を持つ娘がそう願い、
彼らを信じた心に応えた。だから、普通なら伏せてしまうだろう「過ち」を
伝えて、自らを戒めてきた。
 そうしてこの町にある、苦労も不幸もあるけれど、確かで、あたりまえの幸福。
 
 ゼロスは気づいているのだろうか? 何故、フィリシアがゼロスと賭をしたのか。
 ただ封印をするのなら、別にゼロスに頼む必要はないのだ。
 フィリシアは見せたかったのだろう。
 今のこの町を。脆くて弱い人間の持つ、神や魔とは違う種類の強さを。
 もちろんそれは、フィリシアにとっても、大きな賭だったのだけれど。

 リナは、自分でも不思議なほど、それが嬉しくて駆けだした。
 
「……ひどいなあ、リナさん。そんなに笑わなくたって、いいじゃないですか」
 その様子を、神殿の屋根の上に座って見ながら、ゼロスは拗ねたように呟く。
 リナが推測したように、封印の光が出ると同時に、ゼロスはアストラルサイドに
移動し、そこで様子を見ていた。フィリシアの呪文が、自分に害がないように
計算されていることは分かっていたが、それでも間近にいるのは避けたかったのだ。
 これはもう、本能的なもの。相反する立場なのだから、仕方がない。
「文字を消し忘れたのは僕のミス。でも、ゼルガディスさんが正確な読み方と
意味を知っていたのは、予想しませんでした。
 予想外と言えば……これもですね」
 ゼロスは握っていた手を開く。乗っているのは、マスカット大のアメジスト。
ただし、もう何の力も持たない、ただの宝石だ。
「普通は砕け散ったりして、無くなってしまうものなんですが……。残って
いるなんて思いませんでしたよ。だから……つい、持ってきてしまったじゃ
ないですか」
 光の収束をアストラルサイドから見ていたとき、アメジストが残っている
のに気づいた。だから、弱まった光とは言え、危険を承知で回収した。
 何故アメジストが残ったのかは、分からない。フィリシアがそう細工したのか、
もともと石自体に力があったのか、それはもう謎のままだろう。
「フィリシア、これは僕が貰っておきます。ただの宝石ですが、記念に……ね」
 日の光を反射して、ゼロスの手の中で赤紫色のアメジストは、フィリシア
の瞳を彷彿させる色に輝く。真紅に近いその色に。
 それは問いかけを肯定するように、輝いた。

              ──「千年越しの賭」・終──

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 以上で、「千年越しの賭」本編終了です。
中編のつもりで書き始めた話が、いつの間にやら長編になっていて、
実際投稿する前は「いいのか……?(汗)」と言う気分でした。
登校前に既に完結していたとは言え、いま、ほっとしています。
やたらと長い文章と話におつきあい下さり、ありがとうございました。

最後の記事はあとがき雑談大会です。もしよろしければ、こちらも
おつきあいくださいませ。(ただの裏設定暴露会ですが)

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10581千年越しの賭 あとがき雑談会エモーション E-mail 2002/10/12 22:56:45
記事番号10580へのコメント

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 「千年越しの賭」 あとがき代わりの雑談会(ただの裏設定暴露大会)

E.……と言うことで、「千年越しの賭」、連日のUP終了しました。文章量は
  多いわ、話数は多いわ、投稿ミスはするわで、とんでもない代物でしたが、
  読んでくださった方々に感謝いたします。m(__)m
  特にドラマ・スライム様、ほぼ毎日、コメントをいただきまして
  ありがとうございました。
L.毎日2話ぐらいづつUPしてて、それでも軽く10日以上かかってんだから、
  本気でとんでもないよね。
X.完成して推敲も終わってるはずなのに、誤字脱字ならともかく、投稿しつつ
  修正加えたりもしてましたよね。そのせいでコピペをして投稿している割に、
  投稿時間に間が開いてましたし。
L.コピペじゃないゼロスとあたしのコメントにも、無意味に時間かかってるしね。
E.ちゃらら、りらりら、りーらーらー、(渡鬼のテーマ)
X.渡鬼が流れてますね……(汗)遅筆で長文体質なのを指摘されただけなのに……。
L.まあ、いいか。えっと、最初に書いてますが、この話はちゃんと元ネタ
  あるんだよね。
X.筆者Eが小学生の頃読んだ創作童話……だと思う、だそうです。
L.だと思う? 自分でも分かんないの? 確か当時小学校高学年だったんでしょ?
E.読んでいたときは、ふつーの民話か昔話だと思ってたの! でも今考えると、
  どーも普通の民話や昔話にしては、変だなーと……。作者名もタイトルも
  全然覚えてません。覚えてるのは内容だけ。
X.大筋は同じなんですよね。確か。
E.そう。旅のお坊さんと、願いを何でも叶えるお地蔵さんと願いを叶えない
  お地蔵さん。そして欲に目がくらんだ結果、自ら不幸を招いちゃった村人の話。
  昔話や民話にしては結構きっつい、というか上手く言えないけれど、
  ノリが日本の昔話や民話にしては違うの。話の展開とか。どっちかというと
  ヨーロッパ的なキツさ。だから、今思うと創作童話だったのかな、と思うのね。
  そして「スレ」のパロディにする、と決めたとき「お地蔵さん」じゃ
  世界観に合わないから「女神像」になって、そのまんまじゃ、どうしようも
  ないから色々規制と設定(願いが叶う条件・2つ揃ってる理由等)つくって、
  村人の中にも色々動くキャラつくって……で、こうなりました。
L.あと元ネタは謎の坊さんは正体が謎のままだったのよね。
E.絶対、その正体は弘○大師とか日○とか言う展開だと思ってたんだけど、
  ラストで村人を諭して名も告げずに去っていくという終わり方で……。
L.だから作中では「神官と巫女の名前は謎のまま」の言い伝えにしているわけね。
X.でも、このお坊さんがいなかったら「スレ」パロにしようとは
  思わなかったんでしょう?
E.読んだとき、このお坊さんの言動が謎だったのよね。作中のリナの意見
  「使わせたくなかったら言うな、嫌がらせだろそれは」というのは、
  当時の私の意見です。今もそう思う。
  この辺りがゼロスで使えるな、と。自然にその反面、お坊さんが忠告してる
  部分なんかはフィリシアに回る(笑)

L.……フィリシア、今回作った単発じゃなかったの?
X.僕がメインの過去シリーズを考えた当初からいましたよ。初めて考えたのは
  アニメの「NEXT」の頃ですから、5〜6年は経ってますね。頭で
  考えている時点では名前貰ったキャラ同様に完璧な「天然ボケお嬢様」
  でしたけど。あのままだったら、アニメ版のゼルガディスさんが
  めちゃめちゃ弱いタイプのキャラになってたと思います。
E.性格まで同じにしたら話が全く動かないので、天然は多少にとどめました。
  それで新しく作っていった訳ですが……。
  ……実は今のフィリシアの性格の雛形って……ゼロスです(爆)
L.…………はい?(汗)
X.…………(何か思うところがあるらしい)
E.基本的な性格は同じ。ゼロスから魔族の要素を全部取って残った性格に、
  年齢や性別、育った環境による物の見方、考え方、最後に神の側の要素
  を加えて……ああなりました。
  ここ最近になって、個人的には瀬在丸紅子(森博嗣.作「Vシリーズ」)
  並のつかみどころのないキャラにもしたいと思いはじめていたので、
  そう見えていれば、成功だと思ってます。
X.何で僕なんです?別にリナさんでもアメリアさんでも、それこそ正反対な
  フィリアさんとか、いろいろいるでしょうに……。
E.正反対って言うのはやりたくなかったの。誰でも考えつくから。ついでに
  言えば、フィリシアの基本コンセプトは「ゼロスをある程度抑えられる」だから、
  正反対では無理。それは「TRY」のフィリアを見ればわかると思うけど。
  基本は同じ性格でも、立場や環境が違えば大分変わってくるしね。
  もっとも、頭で考えててても、実際に下書きするとさらに変化するから、
  同じとは言えなくなってきてるけど。

L.そういえば、実は前作品(短編)でこっそり先行ネタバレしてたフィリシアの
  設定。作中のゼロスの説明と微妙に違うわね。
X.ああ、そういえばそうですよね。ルナさんの視点だと「欠片」は案外
  多いような書き方でしたが。
E.あれはどっちも正しい。視点の違いです。「欠片」は結構いるけど、
  フィリシアレベルは滅多にいない。滅多にいないタイプは短命なの。
  魔族が認識できるのは滅多にいないタイプのみだから
  「欠片」持ち=「短命」と思ってるわけ。
  ……ついでに言うと私の書く話には「欠片」持ちはもう1人いるよ。
  こちらは無自覚タイプで、たいして影響受けないから、普通に年取って
  長生きしてるけど。
L.……もう出てきたキャラ? そっちは暴露しないの?
E.話はいくつか書いたかな。主役じゃないよ。でもここに投稿はしてない。
  あ、名称(?)だけ以前の投稿作品に出てます。本気で裏設定だから、
  「欠片」を持っててもそれだけの意味しかないよ。本人無自覚だから、
  フィリシアみたいなマネできないし。
  ……まあ、頭は良いけど性格が変で、神託がほいほい落とされるから、
  困惑してるキャラでした(笑)

L.と言ったところで、長くなりましたし、これでお開きにします。
X.ひたすら無駄に雑談してましたが、ここまで読んでくださって
  ありがとうございました。
E.中編の予定で書いていて、思いっきり長編になったこの話。雑談あとがきまで
  含めて、何とか終了できました。また、何か投稿しているのを見かけたとき、
  再び読んでいただけたら、いいのですが。
  読んでくださいまして、ありがとうございました。m(__)m

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10585お疲れ様です♪(最後なのでレス♪まて!)かお E-mail URL2002/10/13 01:17:58
記事番号10581へのコメント

こんにちわ。
エモーションさん。
おそらく初めての書き込みです(まてこら!)
毎日、楽しみに読ませてもらいました(はあと)
おお!?
次がでてる!?
どうなるんだ!?とかいつつ(ならレスしろ!!)
ゼロス君。
・・・千年後に封印。
ということは、あの当時。
降魔戦争が終わった直後くらいですね。
フィリシアは、ゼロスの正体。
獣神官ってわかったのでしょうか?
だから、わざと人の心の強さをみせたかったのでは?
などと、一人妄想していた私です♪
人は、弱くなく、その過ちを二度と繰り返したりはしないのだ。
と。
フィリアが短命だったのには悲しいですけど・・。
たしかに。
ただの人間の肉体には、魔の力にしろ、神の力にしろ。
負担が大きいでしょうねぇ。
(ルナやリナは特別だと思う・・・まて!)
ナイトとしては、それように生まれてくる。
この設定。
おおおお!
ともだえておりました!(かなりまて!)
・・・・でも、ゼルやん・・。
多分、知ったら・・・。
なぜはやく言わない!?
無駄足だったじゃないか!?
といいそうですねぇ(まてまて!)
残った宝石。
それはそれで、フィリシアが確かに。
生きていて、人の心のすばらしさの証でしょう(はあと)←こら!(まて!)
それでは、本当にお疲れ様でした(はあと)
次回作も楽しみにしております♪
ではでは♪



>L.毎日2話ぐらいづつUPしてて、それでも軽く10日以上かかってんだから、
>  本気でとんでもないよね。
・・・・・なら、私はどうなるのでしょぅ・・・(汗)
あぅあぅあぅ・・・。
せめて五十話にいかないといいなぁ・・・(まて!)
ここに、一人、一年かかってまだ完結してない人がいますので(かなりまて!)
気にしないでおきましょう!!(だからまて!)
・・・・私も見習って早く打ち込まないとなぁ・・。
なんか、本気でそう思わされた投稿スピードでした・・・(事実)
それでは、本当にお疲れ様でした!
(私のボヤキは気にしないでくださいね←ならかくな!)
それでは♪

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10606Re:ありがとうございます♪エモーション E-mail 2002/10/13 22:21:27
記事番号10585へのコメント

こんばんは。
レスありがとうございます。
楽しんで読んでいただきまして、とても嬉しいです。(感涙)

>降魔戦争が終わった直後くらいですね。
便宜上、千年と言ってますが、ほんとは降魔戦争の前です。
この件の1年後くらいに降魔戦争、と自分では設定しています。

>フィリシアは、ゼロスの正体。
>獣神官ってわかったのでしょうか?
>だから、わざと人の心の強さをみせたかったのでは?
>などと、一人妄想していた私です♪
これ、正解です♪ フィリシアはゼロスの正体を知っています。
知ってて、知らないフリをしていました……タヌキですよ、フィリシアは(笑)
また、「イレギュラー的」とはいっても「格」では彼女の方が上ですから、
ゼロスの方は「NEXT」のアクア婆ちゃんの時と同じで、「本人が隠してる限り、
気づきたくても気づけない」という状態でした。

>ルナやリナは特別だと思う
ルナは元からですけど、確かにリナは、「滅多にないタイプ」だったとしても
「運良く適合したさらに稀なケース」になりそうです(笑)
ただでさえ最強の姉妹なのに(笑)

>女神像の力とゼルのこと
この話を書くとき、一番頭にあったのが、ゼルと何よりレゾのことでした。
こんな話、目の治療にこだわってたレゾがほっとくわけないんですよ。
だから「レゾにとって役に立たないもの」にする必要がありました。
それなら、ゼルにとっても「役に立たないもの」になりますから。
「失ったものを元に戻す事は出来ない」と設定したのはそのためです。
ゼロスは単純に分かり易くするため「死人を生き返らせたり出来ない」と
説明してますが、基本的に病気・怪我の治癒などはあの女神像にできません。
作中に、ちゃんと書いてないうえに、分かりにくいのは私のミスですが、
病気や怪我等の治癒は「失ったもの=『健康や身体』を元に戻す」行為に
あたります。
レゾの場合は生まれつきですが、資料をあたれば「治療行為はできない」と
すぐに分かりますので、興味をなくしたと思います。
また、ゼルは内心「これが本当ならレゾがこんなのほっとかない」と思って
ましたので、あんまりあてにはしてないです(苦笑)
それでも「観光モード」なリナ達にイライラしているのは、真面目なゼルだから、ですが(笑)

ああ、長くなってしまいました。では、この辺で。
ありがとうございました。

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10587Re:千年越しの賭 あとがき雑談会ドラマ・スライム 2002/10/13 09:44:42
記事番号10581へのコメント

全部読みました〜
フィリシア・・・欠片?
前回の作品読もうかとも思ってます。
なるほど元ネタがあったんですね。
スレっていろんなもののパロになるんですね。

それでは〜

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10608Re:ありがとうございましたエモーション E-mail 2002/10/13 22:40:42
記事番号10587へのコメント

本当に、毎日コメントをくださり、ありがとうございました。

>フィリシア・・・欠片?
欠片です。あんまり芸のない正体ですが(苦笑)
ゼロスが気づけなかったのは「NEXT」のアクア婆ちゃんのときと
同じ理屈です。
「自分より格上の存在ことは、良く分からない」という……。(実際に
そう言うもんです、こーゆーのは……)
当人に隠す気がなければ別ですけど、フィリシアは隠してましたから。
あと、力の序列でいえば
ゼロス≦フィリシア<スィーフィード・ナイト≦五大魔族<赤眼の魔王1/7<四竜王
<<<<<<<<<<<L様
と、こんな感じです。

>なるほど元ネタがあったんですね。
大筋以外はいろいろ加えて遊びましたけどね♪
あれ、ほんとに印象強いんですよ。昔話風なのに強烈で辛辣という……。

それでは、この辺で。
コメント、ほんとに励みになってました。では。

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10558Re:千年越しの賭 23一坪 E-mail 2002/10/12 15:29:58
記事番号10548へのコメント

こんにちはー。

とりあえず他の人の記事は削除してないです。(笑)
もし、また依頼があるときは作品タイトル名も書いてくださいね。
そうすれば私も安心して削除できるので。

では、これからもよろしくお願いしまーーす!

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10576Re:ありがとうございますー!エモーション E-mail 2002/10/12 21:46:04
記事番号10558へのコメント

一坪様、ほんとにご迷惑をおかけしました。m(__)m
しかもわざわざご連絡していただきまして……。

>もし、また依頼があるときは作品タイトル名も書いてくださいね。

はいっ!できるだけミスしないように心がけますが、もしまたポカを
してしまった時は、作品タイトル名を書くようにします。
……って、はじめからそうすれば良かったんですよね(←おバカ……)

本当にお手数をおかけしました。ありがとうございました。

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