◆−てな訳で−三剣 綾香(10/1-01:47)No.7964
 ┣想う心 前編−三剣 綾香(10/1-01:53)No.7966
 ┣港への馬車は(再掲示)−三剣 綾香(10/1-01:54)No.7967
 ┣街角にて−三剣 綾香(10/1-01:55)No.7968
 ┃┗街角にて そのに−三剣 綾香(10/1-01:57)No.7969
 ┃ ┗街角にて そのさん−三剣 綾香(10/1-01:57)No.7970
 ┃  ┗街角にて そのよん−三剣 綾香(10/1-01:58)No.7971
 ┃   ┗街角にて そのご−三剣 綾香(10/1-02:00)No.7972
 ┃    ┗街角にて そのろく−三剣 綾香(10/1-02:01)No.7973
 ┃     ┗街角にて そのなな−三剣 綾香(10/1-02:02)No.7974
 ┃      ┗街角にて そのはち−三剣 綾香(10/1-02:03)No.7975
 ┃       ┗街角にて そのきゅー−三剣 綾香(10/1-02:04)No.7976
 ┃        ┣あうあう、続きがぁ〜!−P.I(10/1-04:30)No.7985
 ┃        ┃┗Re:あうあう、続きがぁ〜!−三剣 綾香(10/3-00:21)No.8001
 ┃        ┣ドキドキしました...−NAOMI(10/3-14:51)No.8004
 ┃        ┃┗Re:ドキドキしました...−三剣 綾香(10/5-23:11)No.8017
 ┃        ┗Re:ガウリイ、素敵すぎ・・・−馨迦(きょうか)(10/4-00:22)No.8006
 ┃         ┗Re:ガウリイ、素敵すぎ・・・−三剣 綾香(10/5-23:22)No.8018
 ┗街角にて そのじゅー−三剣 綾香(10/8-01:02)No.8023
  ┗街角にて そのじゅーいち−三剣 綾香(10/8-01:03)No.8024
   ┗Re:街角にて そのじゅーに−三剣 綾香(10/8-01:04)No.8025
    ┗街角にて そのじゅーさん−三剣 綾香(10/8-01:06)No.8026
     ┗街角にて そのじゅーよん−三剣 綾香(10/8-01:07)No.8027
      ┗街角にて えぴろーぐ?−三剣 綾香(10/8-01:08)No.8028
       ┣じゅ〜ぶんっに甘いですよ〜♪−もりへゆ(10/8-03:21)No.8029
       ┣にゃあ♪甘いです〜♪−MIGU(10/8-05:48)No.8030
       ┣わんおぶぜむ!の喜び−P.I(10/9-01:00)No.8036
       ┣リナ、かわいい〜〜〜っっ!!−馨迦(きょうか)(10/9-01:47)No.8039
       ┗とろけて悶絶死寸前−みる(10/13-16:52)No.8053


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7964てな訳で三剣 綾香 10/1-01:47


お久しぶりです。
綾香です。

今回はファミリー編のラストを乗せようと思います。
裏「もり」の続編はまだ仕上がってないんですけど。

その上性懲りもなく違う話も書いてみました。
てな訳で

余裕のある方
気持ちの広い方
読んでやってくださいませ。

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7966想う心 前編三剣 綾香 10/1-01:53
記事番号7964へのコメント
皆さんこんにちこんばんわ。
三剣 綾香です。
今回は、裏「もり」の続き。旅の空のリナちゃんです。
旅に出て約2年半(細かいな)くらいたった頃の話です

この森の巫女にまつわる話はこれがラスト。
裏編はやっぱりちょいと重めのお話です。
しかも裏「もり」を読んでないといまいち前後の脈絡がつかめません。
今まではちょこちょこ説明しながら書いてたんですが、だらだら長くなっちゃう為、リナがなんで一人旅なのかとかの背景は今回割愛してますので。
と、言う訳でそれでもなおかつ読んでくださるという、寛大なそこのあなた!!
寛大ついでに裏「もり」から読んでくださるとしやわせです。


そんでは

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「想う心」   前編



紅い瞳、栗色の髪。
覚えているのはただそれだけ。
遠い記憶――あれは誰?


少年は視線を感じて立ち止まった。
――誰かが見ている。誰が?
「誰も見てる筈なんか無いのに」
そう。誰も自分なんか見ない、誰も。
十日前に死んだ母親だけが彼のたった一人の家族だったのだから。

――?
また。

くるりと振り向いた先にいたのは一人の少女だった。といっても少年よりは大分年長のようだったが。
「おねえさん。誰?」
「え?」
少女はびくっと身じろいだ。まさか気付かれるとは思っていなかったようだ。ましてや声を掛けられるなどとは。
声を掛けた少年のほうも驚いた。声を掛けるつもりなど無かったのに。
「あたしは……」
少女の異様な緊張が彼にも伝わる。気を飲まれて思わずじっと見詰めた。
「……ただの旅人よ」

――?

少年の視線を避けるように目を伏せながら少女は呟くように答えた。
その仕種にも言葉にも覚えがある様な気がして少年は激しく瞬く。
「いつから……気付いてたの?あたしが見てた事に」
「いつからって……あそこのかどの所におねーさんが来た時から。」
微かに感心したような気配が伝わって来て、少年は心持ち得意そうにした。
気配を感じたり、勘を頼りに動いたりするのは彼の才能だったから。
「もう遅いよ。おねえさんが送ってって上げるから、早くおうちに返りなさい?ぼうや。」
うち……今は誰もいなくなってしまったあの家。
母さんと過ごした小さな家。出来れば返りたくなかった。夕闇迫るこの時間には特に。
明かりの点いていない家には帰りたくなかった。
「どうしたの?ぼうや、家出少年かなんかなの?」
不思議そうに問いを重ねる少女に心の内を悟られまいとするように叫び返した。
「ぼうやじゃない!!僕はもう12なんだから!!それに、僕がぼうやならおねーさんだって子供じゃないか!!」
少女は苦笑する。瞳に痛そうな光が射して、少年はどきりとした。かなしげな雰囲気が少女を儚げに見せていた。夕闇にとけそうなほどに頼りなげに。
「コドモ、ねえ……そう言われるのも久しぶりねぇ……」
言って遣る瀬無さげに髪を掻き揚げる。
子供の目にもどきりとするような艶めかしい仕種だった。
「ね。おねーさんいくつに見える?」
一瞬の内に今までの雰囲気を変える少女。悪戯っぽく少年を見据えた。
その突然の変化に少年はついて行けずに戸惑う。
「ね。」
「い、いくつって……じ18くらい?」
恐る恐る答える。
女の人って年を聞かれると怒る者なんじゃないのかなぁ?
……母さんも嫌がってたし。
しかし少女は楽しそうに人差し指をピコピコ振って見せた。
「ぶっぶー!はっずれでーす!! 答えはぁ」
「答えは?」
「今年で118才でーす。」
「はぁ?」
少女の物言いにとことん胡散臭げに少年は問い返した。
「うそつきぃ〜」
「あら、ばればれ?」
心底信じていないという目でにらまれてくすくすと少女は笑い、口元に握りこぶしで少女は少年を見下ろす。
「当り前だよ!!」
からかわれたと肩を怒らせてつんっとそっぽを向く
くすくすと笑いながら少女は謝った。
「ごめんって。ホントのホントは28」
少年は目を見開く。
「おば…」

どこっ!!

「それ以上は言っちゃだめ♪」
年を聞いてつい禁句を口走りそうになった少年を少女はいや、その女性はげんこつと共ににっこりと遮った。
身を屈めるように少年の顔を覗き込む。
今の一撃、気配を感じられなかった……。しかも彼女の目は少しも笑っていない。
「い・い・わ・ね?」
「は、はい!」
痛む頭を押さえて少年はこくこくと肯いた。その瞳に脅えの色が浮かんでいても誰も彼を責められないだろう。

「さて」
「?」
彼女は勢いを付けて屈めていた上体を起す。疑問符を載せて見つめ返してくる少年に微笑みかける。
「帰りなさい?まさかホントに家出少年な訳けじゃないんでしょ?」
反抗するように下を向いた少年の頭を彼女はそっと撫でる。
やわらかな手つきはまるで母親にそうされているような錯覚を起させた。
と同時に違和感を覚える。
この手を知ってる……?
伏せていた顔をがばっと上げる。
「おねえさん!!僕に会った事ありませんか?!」
「ない……と思うけど?」
なんで?
聞き返されて首を振る―――わからない。

「もう遅いわよ?」
再び促される。
「帰りたくないんだ」
少年はうつむいた。
半ばからかうように少年を見詰めていた少女はその様子に表情を改める。
「どうしたの?」
声の調子が変化する。少女のものから、母親特有のやわらかな響きに。
「帰りたくなくても帰らなくちゃ。もう暗いよ?」
「おねえさん今晩はどこに泊まるの?」
唐突な問い。
泊まるとこ決まってないなら僕んちに来てよ。
縋るように見詰められて少女は困った顔をする。
「突然行ったらお家の人に迷惑でしょう?」
諭すような声音に少年は寂しそうに首を振る。
「いないよ、だれも。もう、だれもいない。」
一言一言区切って自らに言い聞かせるように答える。
母さんは10日前に死んだから。
その言葉に少女は察する。ああ、この子は明かりの点いていない家に帰りたくないんだ、と。
一人の部屋で眠りたくないんだ、と。――あったばかりの人間にこんな事を言ってくるほどに。
うつむく少年の姿に微笑みが浮かぶ。どことなく寂しげな微笑みが。
母親を亡くした少年の姿に彼女は今は亡き自分の子供たちの姿を重ねていた。
あたしがいなくて、あの子達もこの子みたいな思いをしたのかしら……。

小さな溜息。
普段の彼女なら初対面の人間――たとえ子供であっても――にここまで心を許す事はない。
けれど目の前にいる少年には不思議なほどに警戒心は起こらなかった。
亡くした子供を重ねていたからかもしれない。
ああ、あたしはあの子達がこの子くらいの頃を見ていないのだ、寂しくて泣いた事もあっただろう小さな肩を抱いてやる事もかなわなかったのだ、と。
罪滅ぼし、そう明確に思った訳ではない。けれど、子を亡くした母親と、親を亡くした子供の間にはなにか通じるものがあったのかもしれない。
「じゃあ今日はお世話になろうかな?」
「ほんと?!」
ぱっと顔を輝かせる少年の姿に一瞬誰かのイメージがダブる。
あれ?
少女は瞬く。
「僕はガイア=ルー。お姉さんは?」
無邪気な問いかけ
「リナ。リナ=インバースよ。」
ぴくっ
少年の肩が小さく震える。
次いで不思議そうに首をかしげた。
「どうしたの?」
ふるふる
少年は首を振って笑う。
「なんか思い出しそうだったんだけど……いいや。忘れちゃった。」
えへへ。
ガイアはかしかしと頭を掻いた。
そして気を取り直したようにリナの手を引っ張る。
「――こっちだよ!!おねーさん!!」

かくして。
子を亡くした母親と、親を亡くした子供の奇妙な共同生活は始まった。
瞬く間に一週間の時が流れる。
ガイアはまるで母親に甘えるように何の衒いも無くリナに甘えた。
リナもまた、我が子に注ぐ事のかなわなかった愛情を注ぐかの様にガイアに接した。
二人はまるで本物の親子のように暫しの時を共有していたのだった。
けれど夜になり、間借りしている部屋に戻るとリナは思うのだ。
こんな生活をしていて良いのかと。このまま共に暮らしていたらガイアの寂しさを冗長させるだけなのではないかと。
彼女にはガイアを夫や子供たちの代わりのはけ口にしているのだという罪悪感があったのだ。
「――さん。おねーさんてば!!」
「え?」
食事中、ぼんやりとしていたリナは心配げなガイアの声に我に返った。
「あ?ああ…なんでもないの」
いって安心させるように笑ってみせる。そこに射す微かなかげり。
「そう?」
尚も心配そうにリナを見詰める蒼い瞳。
「――え?」
リナは瞬く、慌てて見直すと少年の瞳は間違いなく琥珀色だった。
目の錯覚かな?
一瞬蒼く見えた。心配そうに自分を見る目はすべて蒼く見えるようにできてんのかしら、あたし。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
と、ここできります!!

何やら前中後編の様相……おとなしく第一話!!とかにしておけば良かったかもです。

つつきは書き途中なんですが、自分を急かすために載せてみました。

では
綾香でした。

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7967港への馬車は(再掲示)三剣 綾香 10/1-01:54
記事番号7964へのコメント

皆さんこんにちこんばんわ。お久です!!という前にお会いできました。
三剣 綾香です。
今回はガウリナファミリー編のラスト!!って感じでかいてみました。
あまり含みのない、本気で軽いお話に仕上がっていると思います。
シルフィールが出したくて書いたのに、最初の方しか出てきていないという……^^;
ガウリナ、ゼルアメ、そんでシルフィールとロキとファリル。
子供を除けば無印メンバーほぼ勢揃いのお話です。
そんでは。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『港への馬車は』

軽い足取で町を駆け抜けるのは紅い瞳の少女。
好奇心に満ちた瞳で辺りを眺めながらもその足は止まることがなかった。――ここはセイルーンシティである。

「こら!!」

突然響いた声にシルフィールは思わずびくりと立ち止まり、声を振り返った。

どんっ
「きゃあ」

身体を反転させた瞬間、走り込んできた少女とぶつかってしまったのだ。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?ちょっとよそ見をしてしまって……」
突然聞いた声に聞き覚えがあるような気がして思わず振り向いてしまった。突然立ち止まってしまった為に少女とぶつかってしまったのだ。
しかしぶつかった少女は、彼女の詫びなど聞いてはいない様子で、また走り出そうとしていた。

「だいじょうぶです。それじゃあ」
軽く頭を下げて駆け出そうとした少女の襟を掴む手があった。
「やあんはなしてってば!!」
ぢたばたぢたばたっ
少女は紅い瞳を睨むように光らせる。
「こら!!ちょこちょこあっちこっち行くなってば」
手の持ち主は慣れた様子で抗議を無視する。

え…?

シルフィールは思わず瞬きをした。
二人に見覚えがあるような気がしたからだ。

少女の紅く輝く瞳に。
少年の流れるような金髪に。
何より二人の雰囲気に。

「ガウリイ様…?」

その呟きを耳にして目の前の二人は騒ぎを一旦収める。
「なんで知ってるの?」
栗色の髪を束ねた少女は不思議そうに見上げてきた。
「じゃ、じゃあやっぱりガウリイ様なんですか?」
シルフィールの目の前に居る二人はどう見ても子供に見える。
少女は五つ六つ、金の髪蒼い瞳の少年はせいぜい十くらいにしか見えなかった。
「小さくなっちゃったんですか?」

……………

呆然とした呟きに沈黙が降りる。――と、

きゃはははははは!!

少女の笑い声が返された。
子供特有の甲高い声が響く。
「おもしろい!!お姉さんおもしろい人だねえ!!」
「こら、失礼だろそんなに笑ったら。知らないんだから仕方ないじゃないか。」
少女の襟を放して(今まで掴んだままだった)少年はぺこりとこちらに頭を下げる。
「ごめんなさい失礼な事言ってしまって。」
僕はガウリイ=ガブリエフではないんですけど、実は…
少年の言葉の途中で隙を突いた少女が再び走り出す。

「じゃーねーおねーさーん」

「あ!!こら!!もう帰るって言ってるだろう?!」

少年の制止にも止まる気配はなく、元気に口答えしてくる。
「ひぐれまで好きに見てきていいっていってたもん!!」
「だぁぁっ!!ちがーう!!日暮れまでには帰って来いって意味なんだよあれは!!」
「しらなーい」
少年はもう一度シルフィールに会釈して少女を追い始めた。

二人を唖然として見送ったシルフィールは溜息を付いて後にくすくすと笑い出した。

「それは笑われますよね」
リナとガウリイが小さくなったなんて、いくらなんでも突飛過ぎる発想だ。子供に笑われても仕方ないかもしれない。
「でも、あのお二人を見ているようでしたわね。」
ガウリイの事を知っている様子でもあったし。

もしかしてあの二人は…?
そうだとしたら素敵だ。シルフィールは素直にそう思っていた。

……追いかけてみましょうか?
今なら追いつけるかも知れませんし。
そう思いながら振り返ったシルフィールは次の瞬間信じられないものを目にする事になった。

『レイウィング』!!

可愛らしい声で力ある言葉が叫ばれ、先程の少女が空中を飛んでこちらへ逃げてきたのだ。
少女は五つか六つ。魔法が使えるような年ではない筈だ。なのに……!
少女は制御の難しいレイウィングを見事に操っていた。

「うそ……!!」

「へへーんだこれで追いつけないでしょうー?」

得意げに笑いながら少女が飛び去ろうとした、その時。

『マジックシール』!!

日暮れの喧燥をすり抜けて澄んだ声が呪文を唱えた。
するとまるでその声に断ち切られたかの様に少女を取り巻く風の結界が割れ、少女が空中に放り出された。

やぁ―――――――――――――――

叫び声を上げながら少女は屋根ほどの高さから真っ直ぐ落っこちてくる。
「危ない!!」
辺りの人々は目を覆った。もちろんシルフィールも。

―――――――――――ぽすっ。

少女が叩き付けられる音にしては軽いその音に、シルフィールはそっと両手を下ろした。
少女は無事だ、男の腕に受け止められたようである。
「おまえなあ。ちょっと乱暴だそ。」
怪我でもしたらどうするつもりだったんだ。
男は目をぱちくりさせる少女を腕に乗っけたまま肩越しに後ろを振り返った。
「ちゃんと計算してたもん、大丈夫よ。ちゃんとあんたが受け止められるようにさ」
声と同時に人垣が割れて栗色の髪の美しい女性が姿を現した。

ほぉ〜っ

騒ぎのなかに現れた美男美女の二人に、周囲から溜息が漏れ聞こえる。
「そんなもんじゃないと思うんだがなあ……って、あれ?シルフィールじゃないか?」
呆れたように溜息を付いた男は、呆気に取られてこちらを見ている彼女にようやく気が付いた。
「あっれー?ホントだー。シルフィール、おっひさしぶり♪」
軽く片手を上げて挨拶をしてくる二人をシルフィールはまじまじと見詰めてしまう。
「あの…ガウリイ様と、リナさん…ですよね?」
ガウリイはわかる、十年前の記憶と殆ど変らないその姿で。

けれど…
「リナさん…なんだか凄く変られましたね。奇麗になられて…」
久しぶりに会ったリナは格段に美しくなっていた。
手足はすらりと伸び、バランスの取れた華奢な体つきをしている。自慢の髪はますますつややかさを増しているようだ。
幼さの抜けた表情には、神秘的な雰囲気と不思議な色香が漂う。造形の美しさもさる事ながら、その内からの輝きが彼女を彩り、世にも希なる美人に仕立てていた。

絶世の美男子といっても過言でないガウリイと並んでも全く遜色がない。それどころか、完成された一枚の絵の様に調和された感すらある。嫉妬や羨望を感じる事ができないほどに完膚なきまでにお似合いの二人になっていた。

「そ、そう?……なんでか皆そういうのよねー、あたしそんなに変ったかな。」
小首をかしげる仕種すら人を惹き付ける。

「自覚がないって罪ですよねえ…」
はふ
シルフィールは溜息を付いてしまう。
「シルフィールだって相変わらず楚々としてて奇麗じゃないの」

「なにお互いに誉め合ってるんだか」
ガウリイが呆れたように呟いた。――もちろん二人に聞こえない様にではあるが。

「ちちさまこの人だれ?だあれ?」
ガウリイの腕の中から上がったその声にシルフィールは微笑む。
「お二人のお子さんですね?かわいいですわ。もしかしてあの男の子も息子さんですか?」
子供たちのやり取りは昔の二人を見ているようで懐かしかった。
そう言われてはリナとガウリイは苦笑するしかない。

「やっぱり父さん達の知り合いだったんだね」
人込みを掻き分けて少年が歩いて来る。
「ロキ、ご苦労様」
リナに労われてロキは肩を竦める。
「まあね。だけど母さん」
「ん?」
「ファラに魔法教えるの、やっぱりまだ早かったんじゃない?」
どこにでも飛んでっちゃうから危なくてしょうがないよ。
息子の訴えにリナはおんなじ仕種で肩を竦めてみせる。
「しょうがないでしょ。戦闘になった時ファラにできるのは巻き添えにならない様に逃げる事だけだもの。」
逃げる手段は必須でしょうが。
「それになぁ、おまえだって十分ちょこちょこ飛んで歩いてたぞ」
場所が森だったから大事にはならなかったけどな。
「そ、それは……そうだったけどさ」
父親に指摘されてロキは顔を赤らめる。

それにしても目立つ一家である。揃って立っているだけで注目を集めているのがわかるのだ。
刺さるような好奇の目にシルフィールは溜息を付く。
「皆さんここじゃなんですからわたくしの家にいらっしゃいませんか?」
辺りはすでに薄暮の闇に覆われている。にもかかわらず一向に減る様子のない視線にシルフィールは耐えられなくなってきていた。
注目を集めている一家はそれを毛ほども気にしてはいない様だったが。

「やっぱりここにいたんですかぁ」
突然声が割り込む。
人垣がさっとわかれる。声の主は先ごろ婚約の儀を済まされたばかりのプリンセス・アメリアだった。
その後ろに婚約者の君もいる。

リナは軽い調子で答える。
「はい、アメリアゼル。おっ久しぶりぃ〜」
「おー、お前らも久しぶりだなあ」
「あーアメリア姫さまだぁ」
「相変わらず元気そうねえ。あんたたちも」
「はいっ」
「ところでアメリア、さっきのやっぱりってのはなんで?」
「人だかりがしてるとそこに必ずリナさん達が居るんですもん。」
「べつに暴れてる訳じゃないんだけどねえ。」
リナは理由がわかるだけに苦笑いだ。
他の三人は本気で気にしていないらしくきょとんとしている。

いまや辺りは祭りの賑わいの様相を呈していた。
人々の目にはこう写っていた。
美しいこの家族はどこかの国の王家の人間か名のある貴族に違いないと。
国の第二王女アメリアが未来の夫君と共に迎えに出ている事実も彼らの妄想を裏付けているようだ。
流石に王族の方々は違う、と言う声高な囁き(笑)。

「迎えに来てくれたんでしょ?早く行きましょ。」
リナが溜息と共に促した。
どうやらリナは周囲の無遠慮な視線を気にしていないのではなく我慢していただけらしい。

「はい!!――あ、シルフィールさん。リナさん達今日は王宮に宿泊されるんですけど、シルフィールさんも一緒にいかがですか?」
にっこりと振り向く。王族の姫君らしい心配り。
シルフィールは苦笑する。
「わたくしはご遠慮いたしますわ。王家の方にご迷惑をおかけしては叔父に叱られてしまいますもの」
「いいじゃないシルフィール。せめて夕食くらい付きあったって。」
グレイさんにはあたしからゆったげるし。
断りを述べるシルフィールにリナが重ねて誘う。
「でも……」
戸惑った表情を見せるシルフィールにロキが近寄ってそっと囁いた。

「一緒に来たほうが良いですよ」

「え?」
驚いて見下ろすとロキはこちらを見ないまま、シルフィールにしか聞こえない声で再び囁く。
「このまま僕らと別れると、お姉さん皆に取り囲まれて質問攻めにあいます。一緒に来たほうが良いです」
ね?
にっこり。
最後の所でこちらを見上げて笑ってみせる。

改めて周囲に目をむけると、確かに凄い人だかりである。それに見知った顔もいくつかある。このままリナ達と別れればこの人だかりによってたかってもみくちゃにされるのは目に見えて明らかだった。
「わかりました。お供しますわ、皆さん」
諦めと共にシルフィールは肯いた。
同時に周囲から残念そうな溜息が漏れる。
危ない所でしたのね……
危機を脱したのを感じてシルフィールは安堵の溜息をもらした。


王宮の門をくぐっても王宮の建物までは暫く歩かねばならない。

歩きながら自己紹介をしあい、シルフィールと子供たちはすっかり仲良くなった。
ロキは期待のこもった瞳でシルフィールを見上げた。

「シルフィールさん。」

「はい?」

「僕と父さんって見間違えるほどそっくりなんですか?」
わくわくと見詰められてシルフィールは微笑んだ。
ロキを見ていれば、父親を深く尊敬しているのがわかる。その父親に似ていると言われるのが小さな息子にとって誇らしい事なのだろう。
「ガウリイ様のお小さい頃はこうだったのだろうな、と思うほどに良く似ていらっしゃいますわ」
「大きくなったら僕も父様のように……っと、違うや。父さんのようになれるかなあ?」
「はい。きっとなれますわ」

微笑み交わす二人に、幼い娘の手を引くリナから茶々がはいる。
「頭の中身まで父様の様になったら困るけどねー♪」
「おまえなぁ……」
隣から彼女の夫の溜息交じりの声。
「事実だもーん」
「じじつー?」
「“本当の事”って意味よ」
「ふーん。じじつだもんねーちちさまぁー♪」
ぽふっ
抱き着いてきた娘を肩の上に掬い上げながらもう一度溜息のガウリイだ。

「あんまり余計な事を教えるんじゃない。」
「良いじゃない、そうじゃなくてもこの子ロキよりものんびり言葉を覚えてるみたいだし」
ファリルと同い年の頃のロキは、かなりの語彙力を持ち、大人顔負けの攻撃呪文まで操っていた。
そんなロキと比べるのがそもそも間違いなのだが(呪文が使えるだけでも十分凄いし)、それでもリナは心配らしい。

彼女の言葉の覚えが遅い原因は明らかだ。
ガブリエフ家の男二人が寄って集って少女を甘やかしているからである。
父親の保護者体質は息子にもしっかり受け継がれているのだろう。

「リナさんも苦労なさっているんですねえ…」
シルフィールはそう言いながらくすくすと笑う。
「まったくよ。うちの男ども来た日には……」
「でもお幸せそうですわ」
くすくす笑いで指摘され、ふと顔を赤らめる。
そんな所は昔とあまり変っていない様だ。
「ま、まあね」
あさってのほうを見てしぶしぶという振りと共に認める、その姿が愛らしい。
その姿に笑みが深くなる。
姿が変っても中身は昔のままだ。それがなんだか嬉しい。

「けど、結婚なさった事くらいわたくしにもしらせていただきたかったです。」
「私も同じ事言いました。水臭いですよね、リナさんてば。」
リナは苦笑だ。
「うちの両親にも事後承諾だったんだもの、知らせてる暇なんてなかったのよ。」
だから子供たちの顔見せにも来たじゃない、それで勘弁してよ。
「事後承諾って……まさかリナさん、ガウリイ様を押し倒したんですか?!」

ずべっ!!

リナがその場に転ぶ。
「なんでそうなるのよ?!」
「あら、違うんですか?」

じゃあ、なんで?

軽く聞いた言葉には沈黙が返ってきた。
「あ、あの……?」
とまどった声を上げるシルフィールにガウリイは苦笑を向ける。
「オレのほうの事情でちょっとな」
どういう意味でしょうか?
気にはなったがリナの瞳に痛そうな光が宿るのを見て口に出すのは控えた。

代わりに疑問を口にして話題を変える。
「今回こちらにいらしたのは、お子様達を紹介してくださるためだったんですか?」
シルフィールが気を使ってくれたのがわかってリナは微笑む。

「それが一つ」
「一つ?他にもあるんですか?」
不思議そうなシルフィールの前でリナとガウリイは微笑んだ。
「今回はフィルさん直々のご招待なのよ。それが二つ」
「父さんじゃなくて、セイルーンとしての正式な招きなんです。」
セイルーンとしての招き?
「どういう事です?」
「そのうちわかります」
うっすらと頬を染めてアメリアが言葉を遮る。
「リナさんが出張っていらっしゃるようなごたごたが起きたと言う話は聞いてませんけど……」
言われたリナは苦笑するふう。
「あたしが関わるのは何もごたごただけじゃないのよ。――いまはね。」

「ははさまお歌歌うの!!」
「お歌?」
「もうすぐアメリア達の結婚式があるのよ」

「リ、リナさん!」
「いいじゃない、直ぐにわかる事だしさ。」
顔を赤くして抗議するアメリアと、この話題に入ってから一度も振り向かないゼルガディスを笑って見やりつつリナは種明かしをし始めた。

「結婚式ですか!?」
話を聞いてシルフィールは驚く。
確かに、婚約の儀を済ませた二人は結婚式をするのには支障がないと言えばない。
けれど、王族の結婚式と言うのは何年も前から準備を重ね、国内国外を問わず大々的に知らせを出した後、さまざまな仕来りの下執り行われるものなのではないだろうか?
リナ達のような一般人と違い、王族のアメリアには電撃結婚のような事は許されないのではないだろうか?

「そんなことが出来るんですか?」

「フィルさんはやるつもりらしいわよ?」
その為に呼ばれたのだ、とリナは答える。

何でもここ数年、リナ達一家はセイルーンの田園地方に居を構えていたのだが、末のファリルがどうやら旅に耐えられる程度に成長したので、また旅に出る事にしたのだそうだ。
結界の外の世界を見て回ろうと思う。そう連絡した所、アメリア達が(たぶんアメリアのほうが熱心だったろうが)同行を申し出たらしい。
だが、正式な婚約式を経てしまった二人にはもはや自分の独断で旅に出るような事は許されない。
そこでフィリオネル国王は、二人の結婚式を行い新婚旅行として、また国の将来のための勉強と称して二人の旅を許可しようと言い出したのだ。

「あいかわらず無茶する人だよなぁーフィルさんてさ。」
「電撃結婚にすればお供も揃わないし新婚の二人の邪魔も少ないだろうって事らしいわよ」
「そ、そんなこと……」
「違うの?フィルさん手紙でそう言ってたわよ?」
「と、父さんてばぁ〜なんて事言うんですぅ〜」

王族の、しかも第二王位継承者に対するものとしてはいささか常軌を逸した采配にシルフィールは驚きを通り越して呆れてしまった。
現国王は豪気な気質で知られているが、ここまでとは………

「じ、じゃあリナさん達はアメリアさんたちを迎えにいらしたんですか?」
「それもあるけど、それだけじゃないのよ。」
「それだけじゃない?」

父親の腕の中からこちらへ手を伸ばしてくるファリルを抱き取りながらリナは肯く。
「ファラが言ってたでしょ?歌を歌うって。」
「歌…ですか?」
「そ。しきたりなんだってよ?セイルーン王家の。」
お祝いの歌という事なのだろうか?
それでもなぜその役がリナに振られるのかがわからず、シルフィールは戸惑う。

「精霊の森と言うのをご存知ですか?」
唐突に隣でロキが問いを発する。
「ええ、一応……」

精霊の森とは、強い魔力によって意志を持った不思議な森だと聞いた事がある。
セイルーンにあると言う話を聞いたような気もするが、不確かだった。
そう答えたシルフィールにロキは肯いた。
「精霊の森には、森の意志と魔力を司る巫女が居るんです。」

巫女は歌によって森と語り合い、歌によって森を守る。

歌…って、え?
「え、じゃあまさか…」
「はい。」

にっこり。

ロキは誇らしげに片手でリナを示す。
「王家の人間が婚姻をする時、“森の巫女”が祝福の歌を贈る習わしがあるんだそうです。で、お察しの通り母さんが、当代の“森の巫女”なんですよ。」

つまりはそういうことなのだ。
結婚する王族の姫君に、森の巫女が祝福の歌を贈る。
その習わしのためにリナ達、と言うよりもリナは呼ばれたのだ。
そもそも旅立ちの連絡をしたのもアメリア達の結婚の時期を把握しておく必要があったからなのだ。

だが,幼い娘を抱いて微笑む彼女からはその片鱗も感じられない。
シルフィールは純粋に驚いていた。

「シルフィールさん」
声もないシルフィールに気を取り直したアメリアが声を掛ける。
「あの、もしよければ私達の結婚式に出席してくださいませんか?」
シルフィールはその言葉にまた驚いた。

「そんな、王族でも貴族でもないわたくしが第二王女の結婚式に出るなんて…」
恐れ多いと断ろうとするシルフィールの手をはしっとにぎってアメリアは言い募る。
「急な話ですみません。でも元々シルフィールさんには私達の結婚式にご出席いただくつもりだったんです!!」
だって、一緒に旅をした仲間じゃないですか。
なかば縋るような視線でこちらを見詰めるアメリアにシルフィールはいつの間にやら笑みを浮かべていた。
嬉しかった。王家の姫が自分を仲間だと言ってくれた事も、自分にも祝って欲しいのだと願ってくれた事も。

「わかりました、出席させていただきます。わたくしも心から祝福を差し上げたいですもの。」

で、式はいつなんですか?
何気ないその問いに、ロキとファリル以外の全員から“やれやれ”と言うようなリアクションが返る。

「え?え?どうしました?わたくし、なにか可笑しな事でも言いました?」
シルフィールは思わずきょろきょろと辺りを見回してしまう。
「あ、いいえそうじゃないんです。式なんですけど、じつは……」

明日なんです。

「え?いつですって?」
聞き間違いかしら?
「ですから、式は明日なんです。」
半ば呆れたような力ない声が教えてくれる。

アメリアはやれやれと言うように首を振る。
「父さんが無茶な人だって言うのは重々承知してましたけど、今回のこれは飛びっきりですよねぇ……」

ふっ

あらぬ方を見て溜息をひとつ。
「そう言う訳で、準備もありますし今夜はこのまま王宮に泊まっていってください、シルフィールさん。」
そう言われても驚き続きですっかり毒気を抜かれたシルフィールは肯くのがやっとだった。


――明けて翌日。

宮殿内は大騒ぎだった。
やれ衣装だ、会場整備だ、お客様はどうなった、舞踏会の準備はどうなったと侍女侍従たちが廊下を走っている音がここまで聞こえてくる。

ガウリイ達男性陣も夜の明けきらない頃からたたき起こされ、上から下まで散々に洗い擦られた挙げ句に正式な衣装を着せられて、すっかりくたびれていた。
元気なのは子供たちだけだ。

「式は正午からなんだろ?なんで今からこんなカッコしなきゃならないんだ。」

帯剣を禁じられてガウリイは不満そうだ。
「すまんな、ガウリイ。だが仕方ないだろう、女の支度には時間がかかるものと相場は決まっているじゃないか。」
そう言うゼルガディスはまだ支度半ばだ。豪奢なマントや冠などは式の直前に着けるとかで比較的楽な格好をしている。
それを見て居るからこそガウリイは不満なのだ。

やや青みの強い紺色の式服に身を包んだガウリイはもう一度溜息を付いた。
同時にゼルガディスも胸の内でこっそり溜息を付く。
“何をやっていても様になる奴だな”
溜息を吐く仕種すらも人目を引く。
今日の主役を取られない様に頑張らなくては。

「――アメリアのためだからな。」

「なにか言ったか?ゼル」
「いや?なんでもない」

くすり。
笑いを漏らしたゼルガディスをガウリイは不信そうに見返した。

「ちちさまーっ」

ばたんっ!!

勢い良く扉を開けてファリルが飛び込んで来る。
彼女も可愛らしいピンクのドレスを着せられている。
そのまま飛びついてくるのを受け止めて、ガウリイは微笑んだ。
「どうした?」
不満そうな顔はどこへやら、優しく娘の頭を撫でた。
「ははさまとシルフィールさん準備できましたって!!」
嬉しそうに報告する向こうに追いかけてきたらしいロキの姿が見える。子供たちは女性陣の準備状況を偵察しに行っていたのだ。
「ファラ!!そういうカッコしてるしてる時くらい大人しくしとけってば!!」
黒い式服を見事に着こなす長男が扉によりかかってあまり効果のなさそうな注意を投げる。
その後ろからやっと準備を終えた女性陣が入場しきた。

ゆっくりと入ってきたリナは巫女の正装。シルフィールはシックな濃紫のドレスだった。
とたとたと座っているガウリイの前まで歩いてきたリナは、くるっと回ってみせると心なしか嬉しそうに夫の顔を覗き込んだ。

「似合う?ガウリイ。」

彼女の着ているのは深い碧のゆったりとした巫女の衣装である。本来森の巫女の色は白なのだが、結婚式の時に限り碧の衣装が用意されるのだ。
これも習わしである。

「ああ。――転ぶなよ。」
眩しげに見上げた直後にそう言ってからかうガウリイにリナは不服そうにする。

「ちゃんと誉めてくれたって良いのに。」
「そうですよ?ガウリイ様。女性が着飾ったら誉めなくては。殿方の勤めですもの。」

「とっても奇麗で、どきどきします。」
寄りかかった扉から身を起したロキがにこにことシルフィールを見上げた。

「先の思いやられる息子だな」

ゼルガディスがぼそりと呟く。
「にいちゃま、ファラは?ファラは?」
ちょこちょこと走り寄って可愛らしくしななど作ってみせる妹に、ロキはあま〜い微笑みを見せた

「とっても可愛いよ、ファラ」
「どきどきする?」
「ああ、どきどきするよ」

「大丈夫なのかあの兄妹、ほっといても。」

ゼルガディスがまたぼそりと呟く。
リナは苦笑だ。
「ちょっと危ないかなーとか思うけど、ま、大丈夫でしょ。」

横目でちろっとガウリイの顔を盗み見て囁く。
「少しは息子を見習って奥さんを誉めなさい」
ふっと笑って肩など引き寄せつつガウリイも囁き返す。
「水を滴らせる必要もないほど、お美しい奥さんをこれ以上誉めるにはどうしたら良いんだ?」
いってこっそりとキスを贈る。

「それに」
「それに?」

くすぐったそうに微笑んでリナは上目遣いにガウリイを見る。
「女って誉めると奇麗になるんだろ?お前にこれ以上奇麗になられると、オレは心配でしょうがないよ」
「やきもちやきねぇ」

くすくすくす。

顔を見合わせて笑いあう。とそこに呆れたような声が割り込んだ。
「父さん母さん、今日の主役はアメリアさんとゼルガディスさんなんだよ?わかってる?」

はっとしてガウリイから体を離しつつ見やれば、ロキが溜息でも吐きそうな風情でこちらを見詰めていた。
見ればその場の全員が二人の様子を観察していたらしい。侍女たちが慌てて視線を逸らすのが見える。

夫婦のじゃれあいも、傍目には清く美しい巫女に言い寄る青年貴族の図にしか見えない。
彼女らの妄想を掻き立てそうな妖しい構図だ。

「「はーい」」

息子に訳知り顔でお説教され、両親は素直に返事をしたのでした。


やがて、呼びに来た侍従にゼルガディスが引っ張って行かれ、暫しの後。

正午の鐘と共にようやく式は始まりを告げた。

巫女でもあるアメリアは、式の初めに俗世に戻るための儀式を執り行う。
神官長の祝福の言葉と共にアメリアは巫女から普通の女性に戻り、いよいよ婚姻の儀式へと移っていった。

スイフィードの像の前、設けられた祭壇のまえでゼルガディスが待つ。
純白のドレスを纏ったアメリアは鮮やかに裾を裁いて進む。

「きれいだね、アメリア姫さま」
ね?おにいちゃま。
「そうだね、でも」
ははさまはもーっときれいだったよ?

隣で幼い兄妹は囁きあう。
それを耳にしてリナは苦笑する。
「やっぱり息子のほうが口が上手い様よ?どうするガウリイ?」
「先行き不安だなあ」
答えるガウリイもやはり苦笑。
「いやぁ有望有望。」

くすくす。
微かな笑い声と共にリナは言い返した。

式は滞りなく進んで行く。

そして式の終り。客たちはぞろぞろと神殿を出て神殿のやや奥にある記念樹の前に移動した。
神官長の目配せに答えてリナが進み出る。

庭師以外は国王ですら近寄る事を許されない神聖な記念樹にリナは恐れげもなく近寄り、幹に手を掛けた。
くるりと振り返ったリナの瞳が鮮やかに色を変える。
澄んだ紅から深い碧へと。
場を埋める客たちから微かな溜息がもれる。

「当代の巫女はまた美しい」

「抜けるように色が白くて」

「儚げな雰囲気がまたなんとも言えないですな」

誉め言葉とはこんなにバリエーションがあったのかとガウリイは嫉妬するより先に感心してしまう。
一つ二つ覚えとくとリナも喜ぶんだろうけど、などど気のない事を考えていた。

そんな些細なざわめきもリナが歌い始めると潮が引くよりはやく消えていった。

空気の質すらも変えてしまうようなやわらかな、静寂の歌声。
新しい道を歩み始める若い二人に贈る、神聖なる巫女の歌。
二人に対する巫女の心が周りを囲む人々の心にも届く。

“あたしの可愛い妹分。アメリア、貴女がいつも笑っていられるように”
“どうか、どうか幸せに”

“あたしの大事な二人目の仲間。ゼルガディス、貴方が常に前を見て歩めるように”
“精一杯の祝福と、祈りを”

言葉ではなく心が、そっと相手の心にしみこむ。
押し付けがましくなく、でも確かな力をもって。

歌が止んでも暫くの間動くものはなかった。
フィルでさえも我を戻すのに時間を要した。

アメリアは嬉しそうに微笑みながら、ぽろぽろと涙を流した。
ゼルガディスはそんなアメリアの肩をそっと引き寄せた。
彼らが常々感じていたよりももっと深く、リナは彼らの事を思っていてくれた。その事が今の歌ではっきりと伝わってきた。
何の衒いもなく、掛け値なしの心でリナは彼らの幸せを祈ってくれたのだ。――どうか、誰よりも幸せに、と。

こんなに嬉しかった事は初めてかもしれません。
涙を押さえながらアメリアは囁いた。
リナさんに、ここまでの祝福をもらって結婚できる私達はとんでもなく幸せ者ですよね?!
目を赤くしながらもにっこりと自分を見上げる妻を愛しげに見やってゼルガディスは肯く。
常日頃、斜に構えたような所のある彼にしては珍しい反応だった。
あそこまで純粋な心を見せられては、彼も素直に反応を返すしかなかったのだ。


瞳が元の澄んで輝く紅色に戻る。ゆったりとした動きで新しい夫婦に歩み寄る。
「リナさん!!」
ぱっとアメリアが飛びつく。
「ありがとうございます!!」

もっと、もっとなにか言いたかった。
お礼の言葉も、感じた事も、もっといっぱい言いたかった。

でもどの言葉もリナの心に準じる重さを持つものはない様に感じられた。

だから抱き着いた。
自分は歌う事が出来ないけれどこの心が少しでもリナに伝わる様にと。

リナは優しく抱きしめ返して頭を撫でる。
「アメリア、抱き着く相手間違ってるんじゃな〜い?」
そしてちょっと悪戯っぽくゼルガディスを見やった。
「ねー?ゼルガディス?」
ごめんね花嫁取っちゃって。
優しいからかいにゼルガディスは苦笑する。
「まあ、いいさ。」
あんな歌を聴かされたらな。

微笑みを返してリナはもう一度アメリアの頭をなで、囁いた。
「幸せにならなかったら、承知しないから。」
「はい……!!」
いつもの口調に込められた優しい思いが今はわかるから。
アメリアは抱き着いたまま深く肯いた。


――翌日
この日は昨日にも増してあわただしかった。
セイルーンの第二王女夫妻が新婚旅行に出立する日だったからだ。
何の前触れもなく執り行われた結婚式だっただけに、見送る人の数もそう多くはない。
けれど見送る人々の顔からは笑みが絶えなかった。
――これは新しい門出なのだ。

港に向かう馬車は二台。子連れの若い夫婦と、昨日夫婦になったばかりのどこか初々しい夫婦がそれぞれ乗っている筈だ。
彼らが向かう先に何があるのかはわからないが、今はただ祈る。
―――――――幸せに、と。

おしまい

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
てなわけでファミリー編ラストでした。
もともとファミリー編は“軽い話”を合い言葉に書き始めたものだったので、
最後の最後で軽く出来たかなぁと思います。
ファミリー編書いててわかったのは「軽い話」と「内容のない話」は違うんだという事。
内容のある軽い話って非常―に難しかった。
ラストの話はわりと軽く出来たと思いますけど、そのぶん内容がないよう……ってギャグじゃないんですが。
森の巫女にまつわる話は残す所後一本。
裏「もり」の続編があります。内容はそこそこある分そこそこ重めの話になりそう。
読みたい人はいるのかしら……。
と、いうところで後書きも長くなってきたので私は退散します。

では。
綾香 拝

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7968街角にて三剣 綾香 10/1-01:55
記事番号7964へのコメント

こんにちこんばんわ。三剣 綾香です。
ツリーもめでたく落ちて、新しい話を書いてみようかなっと思い立ったのですわん。
今ちょーっとハードな生活送ってるので私は壊れ気味。
と言う訳で文章も少々…いや、違うな。
かなり壊れ気味。
そういう訳で裏もりの続きは進捗率60%でとまってましゅ。
気分を変えないと残り40%は出来そうに無いので別の話に手を染めてみようと思います。
ここは一発この妙な勢いに乗って甘党な人に喜んでもらえる話を書いてみよう……と前にも言って失敗しましたが。
目標は高いほうが良いし…
ガウリナです。
ほんじゃ

例によって題名にはあんまり意味はありません。
フィーリングで付けてます

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『町角にて』 第一話


虹のさとの別称で知られるここセシリアシティは繊維工業が盛んな街だった。
目抜き通りには沢山の工房とそこで作られた品物を売る店が軒を連ねていた。

「ガウリイ!!こっちこっち!!」
急かすように後ろの男を振り返りながら栗色の髪の少女はいたくご機嫌だった。
殆ど小走りであちこちの店を物色して歩いている。
彼女の後をややのんびりとした足取で追う青年は思わず苦笑を浮かべた。

「リナも女の子なんだな、やっぱり」
普段の彼女からは想像できない。
洋服の「ういんどうしょっぴんぐ」とやらをはじめてもうずいぶん経ったような気がするが前を歩く少女の足取にはいささかの陰りも見え無かった。

紅い瞳が印象的な小柄な少女。
彼女が上機嫌な笑顔で目抜き通りを歩くと、いくつもの視線がその華奢な体に絡み付くのがわかる。
傍目にも美しい少女だ。
波打つように流れる艶やかな栗毛も、それに縁取られた白く小さな顔も、薄暮の闇の中でも尚輝く瞳も。

保護者を自称する青年は一見のんびりとついて歩きながらも、辺りに気を配る事を怠らない。
もう何年も、ずっと側で見てきた大切な少女なのだ、不心得な視線からも守らなくてはならない。
少女に声を掛けようとしたものは後を追う青年の視線にことごとく追い払われる。

当の少女は如何なる視線にも反応しない。
気配に聡いリナが気がついていない筈はないのだが、いちいち振り返って確かめるような事はしない。
答えは簡単だ――きりが無いからである。

年頃を迎えた少女は時折はっとするような色っぽい表情を見せるようになった。
その上近頃とみに美しくなったような気がする。
保護者の欲目だとリナ本人は謙遜して認めようとしないが。

誉められれば嬉しそうにするものの、あまり言うと返って怒る。
照れているのかと思ったらどうやら本気で自覚が無い様だ。
『天才美少女魔道師』なるものを自称しているくせに自分が奇麗だという事を本当の所で認めていないらしい。
よって、

「ホントの事言って怒られるって割に合わないよなぁ」

などとガウリイは思うのである。
「まあ、自覚してたらあんなにサービス良く笑顔を振り撒いたりはせんわな」
溜息をつきながらも自分に突き刺さる嫉妬の視線を心地よさげに受け流した。

と、ふいに今まで走る様にして先を歩いていた少女が縫い止められたかのようにショーケースの前で立ち止まった。
「どうしたリナ?」
立ち止まってしまった為に少女に絡み付いてくる視線の密度が増す。
どこか不機嫌そうな問いかけになるのもやむおえないだろう。

「………………」
ガウリイの問いかけにも少女は無反応だった。
唇に淡い微笑みを浮かべて見入っていたのは美しいドレス、どうやら花嫁衣裳らしい。

一見純白に見えるドレスはその実、白に限りなく近い淡い淡い桜色だった。
花びらのように透ける布が幾重にも重ねられ、一枚一枚に施された刺繍がその繊細さを引き立てている。
この染めは虹のさとの特徴的な染めの一つだ。

「リナ?」
「素敵……」
言ってはじめてリナは視線をガウリイに向けた。
「凄い、素敵な服だね」
にこっ
微笑みながら同意を求めるように彼を見上げてくる。
あどけなくさえ見える微笑み――目が離せなくなる。

「……欲しいのか?」
「え?」

同意の代わりに投げかけられた問いに驚いたように目を見開き、溜息をついて下を向く。
頬が心なしか赤い。

……いけないいけない。
こいつは一見思わせぶりな事言ってるように見えても、実際はなにもかんがえてないんだから

「そおゆう意味じゃなくて」

どきどきするだけ損ってものよね。つまんない。

「そうなのか?」

声質が変る。顔を上げずに要られないような誘うような甘い声に。
最近のガウリイは時々そう言う話し方をする。
そんな時、ガウリイ瞳は大抵からかうような光を浮かべているのだ。
こちらの反応を楽しむように。

からかわれているのがわかっているので、リナは一生懸命動揺しない様にしているつもりなのだが、ガウリイにはそうは見えないらしく、時折こうしてからかってくるのだ。
あたしの気持ちがわかってるんだかわかってないんだかわかんない。
からかう瞳の輝きの奥に揺らめく微かな火影に気付くほどには、リナは男女の機微に明るくないのだ。

――――今は、まだ。

思わせぶりな事を言えば驚くような素直な反応が返ってくる。
惹き付けられる。そう思う裏で少女の危機意識の薄さを再確認する。
いやがうえにも人目を引く少女。集まる視線に無関心でいられる原因は、正にその危機意識の低さにあるのだとガウリイは思っている。

洒落にならないよなぁ…
自分に向けられる絶対の信頼。
心地よいものではあるけれど、それは同時に一種のバリアのようにガウリイには働く。
だからこそガウリイはからかうようなポーズを取るにとどめているのだ。
はっきりと好意を向けられているのはわかるのだが、その種類が問題なんだとガウリイは溜息を吐くのだった。


一方リナは。
自分を見詰めたまま、動かなくなってしまったガウリイのいつもと違うその様子に戸惑いを覚えていた。
軽い溜息。同時にからかうような色が瞳から抜け落ちる。
甘い眼差しはそのままに、じっと自分を見詰める蒼い眼。
その奥に何かが見えそうで、リナはじっと見詰め返した。

「ガウ……」

「見つけた!!この子だ!!」

呟くように呼びかけるリナの声を掻き消すように突如大声が上がる。
周囲に全く注意を払っていなかった二人はびくっと大きく反応して振り返った。
視線の先には一人の男。十人中まあ七、八人は振り向くんじゃないかと言うハンサムだった。
何やら感極まった様子でリナを見詰めている。

自分に向けられるその特異な視線にリナは無意識にガウリイの後ろに隠れるようにする。
普段の彼女にしては珍しい行動だ。
現在リナは呪文が使えない時期に当たっているため、体が無意識に身を守る行動を取るのだろう。
魔力の守りが無い分身の危険には敏感に成らざるを得ないからだ。

それがわかっているガウリイはリナをさりげなくかばいつつ男を正面に見詰める。
「こいつに何の用だ」

やや鋭い問いに男は我を取り戻したようだ、リナに向けていた視線とは違い、探るような視線を無遠慮に注いでくる。

「あなたは……?」
「この子の保護者だ。」

胸の痛む即答。
ガウリイにとっても――リナにとっても。

「保護者!!そうですか、そうでしょうなあ!!うんうん、それなら問題ありますまい」
男は一人でうんうん肯きながらすたすたと歩み寄ってきてガウリイの手をぐっと握る。
涙を流さんばかりの男の様子にガウリイも一歩引く。

「お願いします!!」
「な、なにをだよ」
聞きながら背筋を嫌な予感が走る。

「妹さんを嫁に下さい!!」
「え……?」

一瞬の空白。
いもうと……ってだれだ?
オレに妹なんていたっけ……?
ああ、もしかしてリナの事なんだろうか…
――って、おい!!
こいつ今何か聞き捨てならない事言わなかったか?!

「嫁って……こいつを……か…?」

呆然とした表情をしたガウリイに男は慌てて言い足す。
「あ、もちろん私ではなく、ご当地のロードの御子息の嫁御に、です。」

「………………」
「………………」

なおも反応が無い二人に向かって男は一人悦に入ったように喋り捲った。

「当地のロードは国王からの信頼も厚くまた繊維産業に加えそれに伴う莫大な観光収入もある当地のロードの一族に入れば生涯何の不自由も無く暮らせますそれに当年とって25におなりの御子息もそれはそれは貴女を気に入っていらっしゃいますやはり望まれ愛されてこそ女性の幸福とはあるのではないでしょうかもちろん魔道の研究はお続けになってかまいませんし貴女の御一族にもそれなりのご挨拶はさせていただきます結婚式には街一番の職人の手による花嫁衣裳を用意させますし新婚旅行は約一ヶ月かけての各国の観光地巡りを予定しておりますそう言った訳で御子息との婚姻に御同意いただけましたご様子ですので早速ロードの城までおいで頂き……」

「ちょーっとまてぇーい!!」

もはや完全にとーすいの域に達してしまっている男の襟首を我に返ったリナが締め上げる。
「どーゆーことよっ!!なんであたしがロードの息子と結婚しなくちゃならないわけ?!」
「そうだぞ!!こいつみたいなじゃじゃ馬がロードの息子の嫁になんぞなれる訳無い!!後悔するぞそいつ!!」

ばぐっ!!

「…ってー何すんだリナ!!痛いじゃないか!!」
振り返って絶句。
怒りとは違う種類の色を浮かべた瞳と視線がぶつかる。
言い得ぬ妙な感覚に捕らわれてガウリイは慌てて視線を外した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第一話〜
長くなりそなのでここで切ります〜
ああでも、ふつーのラヴラヴにはならなそう……
すみませんです……

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7969街角にて そのに三剣 綾香 10/1-01:57
記事番号7968へのコメント

てなわけで
第二話です〜
前回に惹き続いて書き手は壊れてますんで読み手の皆さん
広い心でよろしくです!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第二話


「――しかし……なんだってその息子って奴リナを嫁にしたいなんて言い出したんだ?」
一見のほほんとガウリイが問う。
けれど普段の彼とは雰囲気が異なる事にリナは気が付いた。
それはあまりに微妙で彼女ですら見落としてしまいそうな変化。



何だろう?
ガウリイ……なんか変じゃない?
呆れてるんでもないし、怒ってるんでも無い。
……?
リナは混乱した。
と同時に、ある種の期待が芽生える。
……まさか…ね。

ガウリイは心配してるだけだ。
被保護者のあたしが変な奴にからかわれてるんじゃないかって、そう警戒してるだけ。
嫉妬してるなんて、そんな事あるわけない……よね。

心の中で小さく溜息を付く。
そうだったら良いのに、なんてほんの一瞬考えてしまった。
一瞬で切実なその望み。

そんなリナの様子に気付く事無く二人の会話は続いていた。
「御子息が――リュセイラ様といわれます――そのリュセイラ様が先日、狩りで付近の山にお出かけになられた折り、悪漢どもを成敗しておられるリナ様を見初められ、この方こそ自分の探していた女性だと天啓のごとき感銘に捕らわれたとか」
つまり。狩りの途中道に迷ったロードの息子――リュセイラが、いつもの如く盗賊いじめにいそしむリナを見ていたく衝撃を受け、この人こそ理想の女性だとえらく盛り上がってしまっているらしい。
彼女以外の人とは結婚しないとまで言い放ち、今や完全に恋煩いにかかってしまっているのだそうだ。
そこで慌てたのはロード夫妻だった。――何しろ一人息子なのだ。
リナを想うあまり、枕から頭を上げる事も出来なくなってしまった息子の姿に、もはや身分がどうの家柄がどうのと言っていられなくなったらしい。
息子の話から似顔絵を作り、手の者を放って探させたのだそうだ。



「そしてついに!!リュセイラ様の想い人を見つける事が出来たのです!!」
感極まったように再びそいつは叫ぶ。
自己とーすいの気があるんじゃないだろうか、こいつ。
「おいリナ」
隣から声。
見上げるとガウリイが目を半開きにして見下ろしていた。
今度は呆れ、かつ怒っているのがわかる。……さっきのは何だったんだろ?



「なによ」
「何よじゃない。そのリュなんとかってロードの息子がお前を見初めたのって盗賊いじめの時みたいじゃないか。」
「らしいわね。――それが?」
気の無い様子でリナは問い返してくる。
「それがって……そのお前さんの厄介な趣味が夢も希望もある若者の未来に暗雲、いや雷雲をたち込めさせたんじゃないのか?」
わざとリナじゃない側についた言い方をする。――わかってるさ。これは嫉妬ってやつなんだろう。
オレみたいな制約も足枷も無しに軽く想いを伝えられるやつに対する嫉妬。
そいつに味方するような言い方するのはたぶん、彼女の否定が聞きたいだけだ。

たぶん、言い訳して欲しいんだオレは。
違うんだ、そんなんじゃないんだ、ってリナの口から聞きたいだけなんだろうさ。

しかし……盗賊いじめに行く時にはオレを連れて行くようにって前から言っといたのに、こいつまた黙って行ったんだな。
「人聞き悪いわね、あっちが勝手に道に迷って勝手にあたしを見初めたとかほざいてるんじゃないの。あたしの所為じゃ無いわよ」
オレの苛立ちをごまかすように語気も荒く囁き返してくる。どうやらさっきの気の無い返事は盗賊いじめをどうごまかすか考えていただけらしい。
――ったくごまかすくらいならやらなきゃ良いのに。そう思うのはオレだけじゃない筈だ。

ふぅ
小さく溜息を吐く声が聞こえた。
傍らを見下ろして思わず息を呑む。
考え深げな紅い瞳に切なげな光。圧倒的に前向きな普段のリナからは見出せないものだ。

胸がどきりと鳴る。
時折見せるそう言った表情がどれだけ人の……違うな、オレの心を惹き付けるのかこいつはわかっちゃいないんだろう。
普段瞳に灯ってる、年の割に大人びたその光がわずかに揺らぐこういう瞬間に、オレがどんな想いを抱いているのかなんて考えちゃいないんだ。

リナはなぜこんな顔をするのだろう。――リュセイラとか言うやつの所為なのか?
リナはリュセイラとか言うやつの所に嫁に行く気があるんだろうか?
なんせ“王子様に見初められて玉の輿に乗る!!”なんて言ってたくらいだし。――あれ?そう言や最近言ってるのを聞かないような気がするなぁ。
けど……どうするつもりなんだろう。
――リナは。



止めては……くれないでしょうねぇ………やっぱり。

ふぅ
溜息がついて出る。
溜息に反応して降ってくるガウリイの視線をあたしは受ける事が出来なかった。
もし……あたしが“嫁に行く”って言ったら、こいつどうするつもりだろ?
まあこいつの事だからすんなりと受け入れて、あげくに祝いの一つも言いかねない。
そんで…そんで“保護者はもういらないだろ”とか言って、あたしと別れてどっかに行っちゃうかもしれない。
もちろん、自分で告白にも来ないよーなやつの所になんぞ嫁に行く気も無ければ“一目お会い”なんてのもする気はない。

けど……ガウリイが一言“やめろ”って言ってくんないかなーなんて思ってる。
あたし、ガウリイに止めて欲しい。
などと、じつにあたしらしくない乙女チックな考えが浮かんでた。


自嘲の溜息。
“自分で告白”してないのはあたしも同じなんだよね。
何にも言ってないのにそんな乙女チックな事考えても無駄ってもんだわ。

取敢えず思考を打ち切って視線を正面で延々喋り続ける男に戻す。
今は……どうやらロードの息子の経歴か何かをくっちゃべってる所らしい。
早口な上に文章に途切れ目が無いから、いまいち何言ってんのか良くわかんないけど。



「――と、そういうわけで、リュセイラ様がいかに優れた方であるかおわかいただけましたねそろそろあの方に興味が湧いてきたのではありませんかいいえおっしゃら無くともこの私には手に取るようにわかりますこのまま会わずにおかれては夜も眠れないとおっしゃりたいのでしょう未来のロード夫人のお心など私にはつぶさにわかるのですさあその心の憂さを取り払いあなたのハートを掴んでお放しにならない愛しの殿方の元へお連れ致しましょうああなんと言う忠誠心溢れた言葉なのでしょうリュセイラ様御婚姻のあかつきには奥方を見出した忠臣として重く用いられるでしょうなどという俗物の考えなど持ち合わせておりませんのでご安心いただきまして早速城のほうへおいで頂きましょうあちらに馬車など用意してございましょうほどに……」

ばぐっ!!

……どさっ

うっとーしくどーでもいい事をしゃべり続ける男を優しく押しとどめてあたしはガウリイを振りかえった。
「いこ」
「あ、ああ…」
歩き出したあたしに慌てて付いてきながらガウリイは溜息を付く。
「お前さん呪文が無くてもやってる事は変らんなー」
ほっといて。
「しかし……良かったのか?あいつ、あのままほっといて。せっかくの玉の輿だったんじゃないのか?」

ちくん

胸が痛む

「いーのよ」
わざと雑な言い方をする。胸の痛みを知られない為に。

恋愛しなれた女の子達はああいう場面でさりげなく相手を試したりするんだろうか。
けど、ガウリイを試すなんて出来なかった――怖くて。
あたしが“行く”って言った時にもし、“おめでとう”とか言われたらあたし立ち直れないかもしれないじゃない。
女として扱われてないのがわかるから、怖くてとても試せない。

ガウリイってよくわからない。
保護者ぶって叱ったり、それこそ子供みたいに絡んできたりするくせに本心を覗かせない。
注意深くあたしと距離を取ってる――そんな気がする。

振り返るといつでも静かにあたしを見てる。
あたしには読み切れない、深い色の瞳で。



「いいって……」
何がいいんだろう。
こっちの話を振り切るように、おーざっぱな物言いをするリナ。
その瞳が痛そうな辛そうな光を放つ。

え……?

もしかして、止めて、欲しかったんだろうか――リナは。

………オレに?

いや、そんな事はないだろう。うぬぼれたくない、リナに関しては。

オレに向けられるのは絶対の信頼と。
無邪気なほど無防備な親愛の情。
リナは女としての危機意識がひどく希薄だ。――そーいう所を指して“子供だ”って言ってるんだが
そうじゃなければああいう顔を保護者とは言え男に垣間見せる様なまねはしない筈だからな。

リナは今回全然その気はないみたいだったけど、もしこの先誰かと結婚するなんて言い出したら、オレはやっぱり離れなくちゃならないんだろうなあ……。

――!!
音にならない痛みが胸を突きぬける。

そ…か。オレは保護者って言っても自称でしかないんだったな。
こいつがホントに落ち着いて身を固める決心でもした日には、オレはお払い箱だろう、やはり。
実際血が繋がってる訳じゃないし。
いつか……大人になる日に、別れなきゃならなくなるんだろうか、リナと。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
てなわけで第二話でした。何人称なんだかわけわからん文章です。
しかも前シリーズと違ってがうりんも思考ぐるぐる?
泥沼にならないといいですけどねぇ……


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7970街角にて そのさん三剣 綾香 10/1-01:57
記事番号7969へのコメント

という訳で
第三話!!
……読んでる人はいるんでせうか……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第三話



離れたくない、って言ってみようか。



側にいて欲しい。――そう言ってみようか。



それは叶わない望みなんだろうか。



叶わない、と諦めなくてはならない想いなのだろうか。



「―――イ」

「ん……?」
小さく、そっと呼びかけられる。

「――リイ」

優しく、けれども覚醒を促すやわらかな声

「―ウリイってば!!」

微かにじれったそうな響き。
愛しい娘の表情さえも思い浮かぶような。

「起きなさいガウリイ!!」

え?

耳元で突如響いた大音量の呼び声に、オレは慌てて身を起した。
頭がぼんやりする。
ああ、オレ眠ってたのか。



あの後、二人は互いに黙ったままなんとなく物思いに沈み、ぎこちなく宿に戻ってそれぞれ部屋で休んでいたのだった。
夕飯時が迫り、何時の間にか眠ってしまっていたガウリイをリナが起しに来たのだ。
明かりも何も点けていない部屋はうっすらと薄暮の闇が片鱗を見せはじめている。
目覚めたは良いが、いまだ意識の半分以上を雲の上に取られたままのガウリイはぼんやりとリナを見やった。

軽く目を見開く。

「リナ…その格好…どうしたんだ…?」

「宿のおかみさんに借りたのよ」
微かに頬を染めてスカートの裾をちょいっとつまんでみせる。
白いエプロンドレス。華奢なリナに驚くほどに良く似合う。
白い少女、そう言うイメージがぴったりな可憐な娘。

「へ、変かなぁ……?」
照れたような愛らしい仕種にガウリイは微笑んだ。



ぴく

肩が軽く震えるのがわかる。
惹き付けられる。ガウリイの瞳に、その微笑みに。
いつもと微笑み方が違う。
穏やかな微笑みは変らないのにその瞳が、いつものガウリイじゃなかった。

―――こわい、ただ微笑んだだけなのに。
纏う雰囲気が一変する。差し込む夕日に紫色にさえ見える瞳が、誘うように甘く輝く。
強い視線。見詰められていると、それだけで背筋がぞくりと震えるのがわかった。
ガウリイってこんな、こんな人だったっけ?!
やだ、怖い、視線に絡め取られて自分が保てなくなる。

かた

扉を背にして初めて自分が後ずさりしてた事に気付いた。

こと
ふとガウリイが寝台に横になる。

「ガウリイ?」

すよすよ。
――…ね、てる?
え?
もしかして、まさか、ひょっとして、ガウリイ寝ぼけてたの?
な、んだ…そっかぁ……

ふぅ〜っ
大きく息を吐く。肩をぐりぐり動かす。緊張の所為か変な風に力が入っていたみたいで痛かった。

でも、なんだ、寝ちゃったのか。折角可愛いカッコ見せに来たのに。
夕方一人で出歩くなって言うから誘いに来たのに。

つまんない。

……でも、ちょっとほっとした。さっきのガウリイ、変だったもん。なんか……殺されそうだった。
ガウリイに脅えるなんて、思わなかった。
呪文が使えない事であたしも神経質になってるのかな……?

けど…ちょっとマジックショップに行きたかったんだけどな。
でもガウリイ起すのなんかコワイし。
へーきだよね少しくらいなら。
呪文使えなくても、素手でも大抵の人は何とかなるし。
うん、へーきへーき。

「ちょっとだけだから、ね?」
つんつん
頬をつつく。
「……ん………」
よし!!返事したね?
「お土産買ってくるし。」
大人しく待っててね?

寝顔はなんだか可愛かった。
ふふふ。
笑みが浮かぶ。

――暫く後。あたしはガウリイを起さない様にそっと部屋を出たのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
短いかな?でもここで切らないと
切れ目が変になるんですよねぇ。
ここで切っても切れ目は変なんですけど。


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7971街角にて そのよん三剣 綾香 10/1-01:58
記事番号7970へのコメント

第四話。
ちょこっとシリアスの気配。
だんだんっつーか甘いほうに話がいかない(;;)
なんで……?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第四話



「ふっふふふ〜ん♪」
あたしは鼻歌を歌いながら紙袋を抱きしめた。
お宝は高値で売れたし、珍しい果物もこーんなにいっぱい買っちゃったし。
早く帰ろ〜っと。
ガウリイもそろそろ目が覚める頃でしょう。



「う……ん………」
ゆるゆると意識が浮上する。
頭にかかったもやが薄れる。
オレはゆっくりと寝台の上に体を起した。
えーと……
何だっけ?どうしたんだっけ?
……さっきリナが起しに来なかったっけ?
じわじわと記憶が蘇る。
――――まづい。
リナの事脅えさせたな、あれは。
可愛かったけど。格好も、仕種も、表情も。
でも、あんな目で見詰められれば怖くもなるだろう。
そういう事に幼いリナならなおさらだ。
今まで見せた事はなかったからなああいう所。
うーんどうすっかなー……?
あれ?
そういやあいつはどこ行ったんだ?



「おじょうさん」
突然響いた声。男だ。
あたしは取敢えず無視をする。
こんな裏路地で、夕暮れに一人歩きの娘に声を掛けるってのは真っ当な用事とは考えづらい

「未来のロード夫人」
無視。

ぐいっ
不意に腕を引かれる。
よその家の塀に押し付けられる。

ふぅ、わざとらしい溜息が届く。
あなたのような美しい娘をロードの馬鹿息子が手に入れるなんて私は許せない
私のような者にこそあなたはふさわしいのです。
半ばうっとりと先刻リナに“優しく”押しとどめられた男は囁いた。

―――やっぱ自己陶酔の気があるんだわ、こいつ。
肩を押さえられたまま男の目の前で指をぴこぴこ振ってみせる。
「いい?あたしはね。リュセイラとかゆう人の嫁になる気も無ければ、あなたのモノになる気も無いの。」
男が笑う。

ぞく

突然抱きすくめられる。
「……ひ…――」
――――ひくっ
体が強張る。

ぞわぞわと悪寒が体を駆け上がる。
血の気が引くのがわかる。

やだ、やだやだ気持ち悪いぃぃ―――!!!

振り払うその手を掴まれる。



「――放してっ!!」

人通りも乏しい夕闇の町角。
両手で紙袋を抱えたリナは叫んだ。
その瞳にわずかな脅えが含まれる。

「そんなに脅えないで下さい、お嬢さん。」
対している男はハンサムな顔に下卑た笑いを浮かべている。
もっとも、そうでなければリナも逃げ出そうとしたりはしなかったろう。

リナは男の腕を何とか振り切ると、急いで歩き出す。
彼女の着ている白っぽいエプロンドレスが、走り出そうとする少女の動きに逆らうようにゆったりと風になびいた。
着慣れていないのだろうと言う事が直ぐにわかる。

行く手を阻む様に男の腕が少女の行く手の壁につかれた。
たおやかな髪をなびかせて少女が反転させた体の先にも腕。

こんな事は初めてだった。
ここまであからさまな欲望を突き付けられたのは。

毎月の事とは言え呪文が使えない自分が苛立たしい。服装もいつもの魔道師姿と違って動きにくいし。
捕まったら逃げられない。
ぞくりと背筋が震える。

やっぱりたたき起こしてくれば良かった。
ちらりと脳裏に浮かんだ姿にそんな後悔の念が浮かぶ。

纏わりつくような視線が気持ち悪い。
肩に触れた手が舐めるように肩を滑る。

――――怖い

「強引な男はもてないわよっ!!」
どこかの家の壁を背にして立ったままリナは真っ直ぐに男を睨み付けた。
その語尾がわずかに震えている。
脅えた表情が余計に人目を惹く事に気付いていない様だ。
微かな震えと共に返ってくるその抵抗さえも楽しむように、男は再び少女を抱きすくめようとする。
紙袋を相手に押し付ける様にして男を押しのけながらリナは叫んだ。

「いやっ!!――ガウリイっ!!」

瞬間、少女の肩に手を掛けていた男の体が宙に浮き、次いではじかれるように離れた。
一瞬前まで肩を掴まれていた彼女はそのまま引き摺られる様にしてたたらを踏む。
その腰をそっと支えるように引き寄せたのはくだんの男よりも数段整った顔立ちの男だった。

「へーきか?リナ」
こくりと肯いた少女は紙袋をほおり出してガウリイの腕の中に逃げ込んでくる。
引き寄せた体が小刻みに震えている。
少女の赤い瞳にうっすらと浮かんだ涙に気がついた彼は、不愉快そうに眉を寄せて地に這う男を睨み付けた。
痛む肩をさすりながら身を起した男は、自分を殴り倒した男の切れるようなその視線をまともに受けて凍り付いた。
そして次の瞬間には声にならない叫びを上げつつ逃げ去っていく。
自分の一睨みで逃げていく男を彼は追おうとした。が、少女から手を放そうとしたとたん彼女が脅えるようにびくりと震えたので、通りの向こうに苛たしげな視線を向けるだけにとどめた。

「すまん、怖かったか?」
怖かったに決まっている。
日ごろどんなに強がっていても、大の男の力には敵わない非力な少女なのだ。

「おそいよ、ガウリイ」
やっとそれだけ言って再びしがみつく。

「すまん」
しがみついてくる体の震えは未だ止まっていない。
無意識に掴んでいるらしい彼の服を放そうとしない。
人通りが無いとは言え抱き寄せても怒らない――人一倍照れ屋な少女にしてはきわめて珍しい事だ。

相当怖かったんだな。

心の中で呟いてガウリイが震えるリナの背をゆっくりと撫でると、腕の中の少女はほーっと溜息のように息をついた。

「ありがとガウリイ。もう平気」
暫くしてリナはちょっと恥かしそうに微笑んだ。
その声にガウリイはそおっと腕を解く。
ガウリイの腕が離れる瞬間、リナはぎゅっと目を閉じた。
何かをこらえるように。

もう平気?……とてもそうは見えない。
ガウリイは苦笑しつつもう一度抱き寄せた。

「ガ、ガウリイ?」
「もうちょっとこうしててやるよ、リナ」
「う、うん……」

そのまま壁に寄りかかる。

「ごめん……ね?ガウリイ」
心配かけて。
言外に含まれた意味に気付きガウリイは笑みを作る。

「何がごめんなんだ?」
知っていてとぼける。――照れ屋な少女のために。

「ん……いいの。なんでも。」
「そっか?」

「ん……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ちょ、ちょっとは甘くなったかなぁ……?

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7972街角にて そのご三剣 綾香 10/1-02:00
記事番号7971へのコメント

第五話は甘く……なるかなあ…
という訳で
駄文は続きます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第五話



灯ともし頃をとおに過ぎ、辺りははや夜の気配が漂い始める。
黙ったまま優しく背中をさすっていたガウリイが不意に声を上げた。

「な、リナ」

「なーに?」

「オレの事もう怖くないのか?」
「え……?」
そっと抱き寄せた腕を伝ってガウリイの声がリナに届く。
「怖い?……ガウリイが?――なんで?」
声の振動が心地よいのかリナは目を閉じてガウリイに擦り寄る。
「だってお前、宿でオレの事起しに来た時、」



ああ、あの時ね―……
「怖かったわよ。」
殺されるかと思ったわよ。
でもさっきのあの男みたいな気持ち悪さはなかった。
見詰められて悪寒が走ったりしなかったし。

でも……怖かった。人を動けなくさせる瞳だった。
ぞくり
さっきとは違う意味で体の心が震えるのがわかった。

あのままガウリイが寝なかったら、あたしどうなってたんだろう。



思いのほか素直な答えに驚く。
やっぱ怖かったのか。
思い出したのかきゅっとしがみついてくる。

あの時、微笑むリナが可愛くて、愛しくて、いとおしくて、思わず見詰めずにいられなかった。
脅えさせるつもりは全く無かったんだが、なにぶんオレも完全に寝ぼけてたから、いつものブレーキが全くかかってない、素のままの視線を向けてしまった。
こいつが後ずさりしてなかったらそのまま引き寄せて押し倒してたかも知れない。

危なかったよなぁ……あん時は。お互いに、さ。

しかし…
オレが怖かったのにそれ思い出してオレにしがみ付くってのはちょっと違わないか?
ま、いいけどなー



ガウリイは、思わずぎゅっとしがみ付いたあたしの背中をそっと引き寄せてゆっくり撫でてくれる。
何にも言わないまま、何度も何度も。
ふ……
笑みが浮かぶ。
気持ちいい……

でもよく考えるとあの時が初めてだったんだなぁ……
ガウリイが“男”の目、してる所見たのは。
保護者でも、仲間でも、友達でもない、“男”の目のガウリイ。
もっとも“男の目”の意味をあたしが理解したのはさっきの男の所為なんだけども。
ああいう視線を向けられるのが“大人の女”だって言うんなら、大人の女って結構大変なんだな。

ガウリイは普段そういう所を見せない。
あたしに合わせてくれてるのかもしれないけど。
ガウリイがそんな一面を垣間見せるのは、あの時みたいな緊張が途切れた、ホンの一瞬無意識の時だけなんだ。
だって、こうやって脅えるあたしを抱いていてくれるガウリイは、包み込むような優しい気配をしてる。
――まあ、実際包み込むように抱きしめられてるんだけどさ。
どっちがホントのガウリイなんだろ?
寝起きに見せたあの瞳と、今こうやってあたしの頭を撫でてくれてる優しい手と。
どっちがホントのガウリイなんだろ。

聞いてみたい。あたしの事をどう思ってるのか。
何であんな目であたしの事を見たのか。
――なんでこんなにも優しく頭を撫でてくれるのか。

でも、ちょっとわかった。
あたしってまだ“大人の女”じゃないんだって。
いまのあたしじゃ、まだガウリイの“男の目”を受け止めきれないから。
ああいう目で見られるにはまだちょっと足りないなぁって、そう思った。
だから急いで答えを求めなくても良い。
ちょっとずつ近づいていければそれでいいかも。

ま、だからと言って子供扱いに甘んじる気はないけどね。
取敢えず焦って答えを求める事も無いだろう。

――――だって
ガウリイはずっと一緒にいてくれるんだもの―――――
なんにも言わなくても、言われなくても、それだけは確信がある。
一緒にいるのに理由はいらない、そうわかったから。



「――――で?」
ガウリイが突然問う、鋭く。
「で?」
きつい声に驚き、おうむ返しに問い返しながらそっと見上げると、ガウリイは道の向こう側に視線を据えていた。
なに?どうしたの?
顔を上げる。
珍しくシリアスな顔。
怒ってる?
でもこっちは向いていないってことは路地の向こうに誰かいるのかな?
「?」
なんだろ?リナはきょとんとする。
道の向こうの角に向かって声を投げつける。
「いつまで隠れてるんだ?出て来いよ!」
あれ…?この気配……。
「いるのはわかってるんだぞ。――何時まで隠れてるつもりだ、お前ら!」
誰?
ガウリイがこんな風に声を荒げるのはひどく珍しい事だ。

その声に引かれるように出てきたのはリナもよく見知った二人だった。
「ゼル……に、アメリア……?」
いつからいたのだろう、二人とも何やらばつが悪そうに佇んでいる。
壁に寄りかかった姿勢はそのままのガウリイは皮肉げな声を投げる。
妙に静かなその声。

「いい趣味だな。お前ら」
ここまで脅えてる娘を助けもしないで黙って見てるなんてさ。

「それは……!!」
「なんで助けなかったんだ。」

オレが間に合わなかったらどうするつもりだった?
アメリアの言葉を遮るように更に問う。
普段飄々としている彼からは想像できない様な冷たい怒りが全員に伝わる。
「……何かの依頼の途中かと思ったんです。」
いつもと違う格好をして、人通りの無い道を歩いていた上に、絡まれても呪文の一つも唱えなかった。
だから何かの依頼の遂行中なのかと思って声を掛けなかった。
様子がおかしいと気がついたのは、リナが保護者の名前を叫んだ時だったのだ。

ごめんなさい、リナさん。
アメリアはガウリイの腕の中のリナに向かってぺこりと頭を下げた。

「そうじゃない事くらい見ればわかるだろう?」
尚も責める言葉を重ねるガウリイに二人は返す言葉が無い。
ただ謝るだけだ。

「すまん」
「すみません、リナさん」

「謝れば済むって――……って、リナ?」
そんなやり取りを止めたのは彼の腕に囲われたままの当のリナだった。
小さな人差し指がガウリイの唇に当てられている。
「もういいよ、ガウリイ」
あたしは無事だったんだし。
「ね?ガウリイ」
ありがとね。
助けてくれて。
あたしのために、怒ってくれて。

「二人とも、もう気にしないでいいよ?平気だったんだからさ」
普段のあたしを知ってる人なら二人と全く同じ事を考えると思うし。
にっこり微笑むリナの顔を見てガウリイはやっと安心した。
衝撃が去ってリナもすっかり落ち着いたようだ。

ぽんぽん
リナの頭を優しく撫でる。
「ま、リナがいいならいいさ。」
微笑んだ彼はすっかりいつもののほほんとしたガウリイだった。

ガウリイにご寛恕いただけて、ゼルガディスはほっと溜息をつく。
リナが止めなければ腕の一、二本も折られていたかも知れない。
あの時ガウリイが間に合わなかったらきっと殺されてたな。

アメリアは半ば恨めしそうにリナを見上げる。
「リナさんなんでそんな格好してるんですかぁ?」
「のんびりするため」
最近世界は物騒で、呪文が使えない状態で旅をするのはリスクが大きい。
だから魔力が回復するまでの間町に留まる事にしたのだが、いつもの格好だと何かと依頼が舞い込む。
呪文の使い手には何かと忙しい御時世なのだ。
魔力が無いままで依頼を受ける訳にはいかないのだが、依頼人は引きも切らない。
以前、試しに普通の格好をしてみた所依頼人の影がぱたりと止んだので、以来こういう時には普通の村娘の格好をする事にしたのだそうだ。

「ま、この格好はちょーっと失敗だったみたいね?ガウリイ?」
まだ自分の肩を抱いたままのガウリイを溜息と共に見上げる。

リナの着ているのエプロンドレスは全体的に白いイメージだ。
フリルの縁取りを施したエプロンは蒼く見えるほどに白く、淡い淡い桜色のワンピースドレスはフレアースカートでゆったりとしたカーブが華奢な身体を包み込んでいる。
くだんの男ならずとも思わず声を掛けそうだ。

「そうじゃなくても、お前は目立つからなぁ」
「目立つ?――あたしが?あんたじゃなく?」
言われてきょとん、と紅い瞳が彼を見上げた。

目尻にはまだ光るものの残滓が残っている。
僅かに上目遣いの瞳は、頼りなげでひどく愛らしい。
ほっそりとした小柄で華奢な肢体は世の男性達の保護欲をそそるだろう。
数年前と違い、年頃を迎えた彼女には“匂い立つ”と言っていいような、なんとも言えない色香が備わっていた。
そして何より、実力に裏打ちされた自信が彼女をより美しく輝かせ、その瞳は多くの者の心を惹き付けて止まない。
特に着飾らなくても、何も話さなくても、ただそこに居るだけでリナは人の目を集めてしまうのだ。

ガウリイは何もわかっていないらしい彼女を見て、密かに溜息をつく。
こいつ、最近俺が一人で出かけないのはなんでだと思ってたんだ!?
全部お前を一人にしないためなんだぞ!?
今まで今回みたいな事にならなかったのは俺がそばに居たからなんだからな。
自覚して気を付けろよ、少しは。

「どうしたの?ガウリイ。ねえって。お〜い、ガウリイく〜ん。」
リナは黙り込んでしまったガウリイの顔の前ではたはたと手など振っている。
ゼルガディスとアメリアはなにやら気の毒そうにガウリイに視線を送る。

「なんでもない」
半ば不機嫌そうに一言だけ答えると紙袋を道端から拾い上げ、リナの肩を抱いたまま歩き出した。
「戻るぞ。」
「う、うん」
「ゼルもアメリアも宿が決まってないなら付いて来いよ。」
「はーい。行きましょうゼルガディスさん」
「ああ」

ガウリイはこちらを見ない。
どうしたんだろう、ガウリイは。
なんで怒ってるのかな。
はっきり言ってくれなきゃわかんないよ。

…じゃなきゃ、気付いちゃう。
気付いちゃいけないことに、あたし、気付いちゃうじゃない。

……あ、言うって言えば…まだガウリイに言ってなかったや、ちゃんとは。
「ガウリイ?」
「ん?」
「えと……」
口篭もる彼女にガウリイは立ち止まる。
「なんだ?」
うつむいたまま上目遣いでそっと彼を伺うようにする。
微かに赤い頬。
「あの……ありがと……ね?助けてくれて。」
一瞬驚いたように目を見張ったガウリイは次の瞬間輝く様な微笑みを浮かべた。
「いや。お前が無事で良かったよ。これに懲りたら不用意に一人で出歩くなよ?」
「ん、わかった」
ぽんぽん
頭を軽く叩くように撫で、人差し指の背で目尻に残っていた最後の一滴を掬い取る。
少女はくすぐったげに肩を竦めて笑った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第五話完!!
でも話は続く〜
ゼルアメ悪者にしちゃったよ^^;
ま、悪者っつーよりも深読みし過ぎな早とちり二人組にしちゃったんですけど。
ふぁんの貴方、どうぞおこんないで下さいませ。
怒るガウリイ書きたかったんだもん話の筋とはあんま関係ないんですけど。
ごめんなさ〜い

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7973街角にて そのろく三剣 綾香 10/1-02:01
記事番号7972へのコメント

第六話〜
なーんかだれてきた〜様な気がしますぅ
気を抜くとシリアスに話がいっちゃいます。
ってなわけでややシリアス。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第六話



「――なあ、リナ」
夕食も終り、部屋に引き揚げようとしていたリナをガウリイは呼び止めた。
「はい?なに?」
くるっと振り返る。
見上げる長身は頬をかしかしと掻く。
「ちょっと……いいか?」
微かに困ったような、戸惑うような微妙な表情でリナを見る。
「?」
可愛らしく首をかしげる。
無意識にやっているらしいその仕種にガウリイは内心溜息を吐いた
「……いいけど?」
言ってリナは自分の部屋の扉を大きく開き扉を押さえたまま入るようにガウリイを促した。
部屋に入ると、ガウリイはどこに腰掛けるでもなくゆったりと窓辺に佇む。
「座れば?」
「いや、いい」
「?」
なにやらガウリイは、緊張しているように見えた。
リナは鏡台の椅子に腰掛けてガウリイを見上げ、もう一度首をかしげて見せた。
「どしたの?」

―――沈黙。

「ガウリイ?」

―――更に沈黙。

「? ガウリイ?」
「―――どう思った?」
不意にリナの言葉を遮るようにガウリイが口を開く。

「どう……って、何が?」
かろうじて返事をする事に成功する。

どきん

心臓が緊張を伝える。
窓辺からこちらを見詰めるガウリイの瞳に、夕闇の中で見たあの輝きがあるのに気付いたから。

ガウリイが身じろぎをする。
窓枠に手を掛け、半身をひねるように振り返っていた体を視線はこちらに据えたまま、窓を背にするように体ごとリナの方に振り返えらせた。

ぴくっ
リナの肩が小さく跳ねる。
それを見てガウリイは苦笑を浮かべた。
視線の圧力がふと和らぐ。

「だから」
「だ…から?」
和らいだ視線に何とか返事を返す。

ガウリイは更に苦笑を深くする。
「この手の色事に鈍いお前さんでも流石にわかっただろ?」
―――オレの気持ちが。

“オレの気持ち”?!
頭の中が混乱する。
「えと、それってつまり、だから、その……」
「ん?」
優しく促されてもその先が言葉にならなかった。



――そう。わかった。
あたしわかっちゃった。
ガウリイの気持ちが。
あの時怖いと感じたのは、自分が大人の女になりきれていないって自覚したのは、彼の気持ちに触れたからでもあったから。

深く考えないで流したのはあたしの気持ちとガウリイの気持ちの間に差がある事に気付いたから。

あたしは、その……ガウリイの事、嫌いじゃない。
たぶん好き……なんだと思う。
でもこれは最近気付いた事。
恋に毛が生えたようなものだと自分でも思う。

あたしはガウリイの事“好き”より“大切”っていうスタンスで見てるらしい。
でもガウリイは違う。
確かに保護者として守ってくれてる。
相棒として信頼をしてくれてる。
でもそれだけじゃなかった。
夕闇の部屋であの瞳を見た時それに気付いた。

この人はあたしを愛してるんだなって。
“好き”とか“好意”とかそんなんじゃなく、“愛”しているんだとわかった。
それは“恋”なんてものよりも数段激しい感情。
憎しみに近いと思えるほどの強い心。
あの一瞬でまっすぐあたしの心に射し込んで知らしめた。
―――怖いって純粋に思った。
戸惑うよりも先に怖いと。

穏やかに見えるその向こうで、どれほどの想いであたしを見てたのか。
それに気付いたらたちまち流されるってわかってた、わかりきってた。
あたしの気持ちも感情も、ガウリイの前では太刀打ちできない。
あたしにはまだガウリイのあそこまで重い、そして深い感情を受け止める事が出来ない。
気付いてしまったらあたしは自分が保てなくなるだろう。
あたしをそしてガウリイ自身をも壊してしまいそうなあの瞳にかかっては。
だから気付かない振りしたのに。
芽生えたてのこの気持ちを大切にしたいと思ったから。
だから気付いちゃいけないってブレーキ掛けたのに。



優しく促されてもリナは答える事が出来なかった。
ガウリイを見返す瞳が揺れる。
泣きそうな顔でガウリイをみる。
縋るような眼差し。
そのままふるふると首を振る。
どうして良いかわからない、とでも言うかのように。



まだ聞かないで―――
リナの声無き声が届く。
気付かせないで、のほうが正しいかな。

オレはリナに知って欲しいと思った、オレ行動の根本にあるのが何なのか。
でも同時に気付かれたくなかった、激し過ぎるこの想いには。
奔放な、自由なリナをこそ愛していたから。
幼いほどに純粋な想いを壊したくなかったから。

今のリナにはオレの想いは受け止め切れないだろう。
言えばこいつを壊しかねない。
出来れば気付かれないうちに離れたほうが良かったのかもしれない。

でももう遅い、この反応からするとリナはわかってしまったみたいだしな。
リナは怖がってる、オレの感情が重過ぎて。

脅えてる。それが望みなわけじゃないのに。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第六話でした。
あまあまよりか重い話かも……
前作とまた違った重さの話になってます。
おかしい、甘党の人が喜びそうな、チョコパに黒蜜かけたような話にする予定だったのに……
人生って何があるかわからないものですね……(などとげんぢつとうひ)


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7974街角にて そのなな三剣 綾香 10/1-02:02
記事番号7973へのコメント

七話です。
甘く甘くって呟きながら執筆開始です
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 最終話




溜息がリナに届く。
顔を上げるとガウリイの瞳とぶつかった。
優しい、いつもの瞳。
「ガウ……リイ?」
歩み寄ってくる。ふと手をあげてリナの目尻に溜まった涙を拭いた。
「すまん。お前を困らせるつもりはないんだ。」
怖がらせたいわけじゃない。
壊したいわけじゃない。
――――ただ。
ただ側にいたいだけだ。
同じ景色を見ていたい、
同じ道を歩いて行きたい、
同じ時を過ごして行きたい。
―――そして何より。
その存在をいつでも感じていたい。

ただ、それだけ。



ガウリイはあたしの頬に手を添えて微笑む。その瞳にあるのは深い慈しみだった。
「急がなくてもいいさ。ただオレが待ってるってコト、許して欲しいだけだ」
だめかな?
ガウリイはそっと伺うようにあたしの瞳を覗き込んだ。




リナがオレに追いついていない事はわかってるさ。
そういう意味でもこいつはまだ子供なんだ。
ただ、オレに対するこいつの気持ちがどういう種類の好意なのか知りたいだけだ。
焦るつもりはないけど、そのくらいは待つ身のオレには知る権利があると思わないか?



愛しい。唐突にそう思った。
ガウリイに追いつきたい。
ガウリイがあたしを見るほどに深く彼を理解したい。
あたしのために、あたしを急がせずに待っていてくれるガウリイのために。
けど……今はだめだ。ガウリイに迫力負けしちゃう。
こういう事は対等じゃなきゃ。…そう思うから。



「迷惑……かな?」
微かに脅えに似た色を浮かべた瞳。

「好き……」
「こんなやり方じゃ昼間のあいつと大差ないか――え?」

ガウリイの頬に両手を添えて、リナは微笑んだ。
「ちゃんと好きだよ、ガウリイ」
だから大丈夫。追いつくまで待ってて?
「そ……か。…そっ…か――」
ふわり
ガウリイは微笑みを返した。
リナが今まで見た事が無い満ち足りた微笑み。
彼にそういう表情をさせたのが自分だという事に、リナはどこか誇らしげに微笑む。

そっと抱き寄せられた腕の中でリナはゆっくりと目を閉じた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
七話でした。
ラストはちょこっと甘いかな?
これで最終話にしようかと思ったんですけど、ロードの息子が恋煩いで寝込んでるの思い出しちゃったんでも少し続きます。

みじかいですねこれは。

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7975街角にて そのはち三剣 綾香 10/1-02:03
記事番号7974へのコメント

八話です。
恋煩いの息子登場?!
あんま待ってる人いないと思いますけど、ちゃんと帳尻合わせないと御都合主義なラストになっちゃうので……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第八話


「表敬訪問?」
「はい、そうなんです」

翌朝、いつものように勃発した争奪戦の締めくくりのお茶をすすりながら、
あたしは同じくお茶を口に運ぶアメリアを見返した。
「ここのロードとは長年の付き合いだそうで、付近を通る際にはきちんと訪問するよう父さんから申し付かってるんです」
「ふーん」

「ふーん、てリナさん達も来るんですよ?」
へ?!
「なんで?!」

ロードっていったらリュセイラとかいう迷惑恋煩いの息子の父親よね。
冗談じゃ無いっつーの。
昨日の自己とーすい男にも会っちゃうかもしれないし、さっさとここをでるつもりだったんだから。

「いくらお忍びの諸外国視察の途中だと言っても、供の者が一人もいないのは具合が悪いんです。リナさん達に会えて良かったですよ」
具合が悪いって……そんじゃあたし達とあえなかったら“付近を通る際にはきちんと訪問するように”なんて最初から無理だったんじゃないの。

「あのねーアメリア、あたしは……」
「お願いしますリナさん!!私達を助けると思って!!私達はかつて一緒に生死を乗り越えた“正義の仲良し四人組み”じゃあありませんか!!」
言いかけたあたしの言葉を遮り、ぐわしっとあたしの両手を握った。
言いかけていた反論が途切れる。

……おそるべし、“正義の仲良し四人組み”攻撃!!
久々とは言え抵抗力が落ちてんのかしら…

「わかった。わかったからだからテーブルに足のせんの止めなさい」
アメリアは、溜息と共に返したあたしの了承に嬉々として椅子に座り直した。
「は〜い!!ありがとうございますリナさん!!」
やれやれ。

「おいおい、いいのかリナ。ロードの城ってリュ何とかってやつとか、昨日のあいつとかいるかもしれないんだろ?お前平気なのか?」
ガウリイが気遣うようにあたしに囁く。

―――実をいえばあんまし大丈夫じゃない。
でももう良いっていっちゃったんだからしょうがない。
このリナ=インバース、一旦引き受けたからにはちゃんとする。
それに、もしかしたらいい魔法剣があるかもしれない、そしたら部下の責任ロードに取らせるって名目でもらってくるのも悪くないかもしれない。
ああ、そう言う手があったじゃない!そうしよう。

「しょうがないじゃない?」
ふっ
笑みを唇の端に乗せ、肩を竦めてウインクしてみせる。
ガウリイはまだ何か言いたそうだったが、あたしの笑みに沈黙した。

…にしてもなんでここまで熱心に訪問したがってるのかし………はは〜ん、そゆことか。
にまにま
「な、何ですかリナさん。何でそんな嬉しそうな顔で私とゼルガディスさんを見るんですか?」
あたしの視線を受けて居心地悪そうに、なにかをごまかすように下を向くアメリア。
ゼルガディスはすでに明後日のほうを向いてしまっている。
「べ〜つにぃ〜?虹の里の織物は世の乙女の憧れだもんねぇ」
くすくすくす。
ここセシリアシティは織物のさと。
その優美かつ繊細な技術は広く知れ渡っているのだ。
その中でも華やかで美しい婚礼衣装は各国の王室御用達だと聞いた事がある。
アメリアがここまで熱心に行きたがるという事は、つまりはそういう事なのだろう。
「よかったじゃないの、ゼ〜ルちゃん?」
「ほっとけ!!」
お、そういう反応が返ってくるって事は本決まりなんだな。

自然と笑みが浮かぶ。
この二人も長かったもんねぇ。
「――おめでとう、って言っていいの?」

あたしの言葉に二人は目を見開いて沈黙した。
あたしが素直にお祝い言ったら可笑しいんかい!!

「あのぉ…」
おそるおそる、といったふうにガウリイが口を挟んだ。
「オレには何がなんだか……」
「いいんです!!わからなくっても!!」
アメリアはあたしが答えようとしたのを強引に遮る
あたしの事照れ屋だなんだって言うけどアメリアだってじゅーぶんてれてるとおもう……
とにかく、アメリアの妙な気迫に押されてガウリイはコクコク肯いた。
「あ、ああ。別にいいんだけどな。」
わけがわからないのはいつもの事だし、たいして気にもならないだろう。

かくして、表敬訪問は執り行われることとなった
あたしが従者役だってのはひじょーに気に食わないが、これもアメリアの婚礼衣装のため。
ベッドから出てこないリュセイラはともかく、昨日のあの男に会わないように祈るばかりである。



「ようこそ御出でくださいました。アメリア様、ならびにゼルガディス殿。御婚約おめでとうございます。」
アメリアの訪問を自ら出迎えたロードは細面のすっきりとした美丈夫だった。
二人だけではなく、お供のオレ達にまで礼を尽くした態度を崩さない所は、さすが商業地のロードと言った所か。

城門での事なので双方立ったまま目礼を交わし合う。
視線がオレの上を通過してリナに向けられた直後、微かに見開かれたような気がしたが………気のせいか?

事前に何の連絡もしていなかったのにも関わらず、ロードは歓迎のための晩餐会をすると言い出した。
アメリアの婚礼衣装のデザイン選びも兼ねてということらしいが。
リナがアメリアをからかってたのはこの事だったんだな―――ったく、他人のことだと変に勘がいいんだからな。

「―――では、アメリア様のお支度は公にお願い申し上げます。わたくしたちは別室に控えておりますので」
従者の服に身を包んだリナが、頭を下げる。
リナやつ、いったいどこで宮廷の作法なんか身に付けたんだ?
立ち居振舞いが妙に洗練されていて、普段とまるで雰囲気が違った。
リナの向こうでゼルが目を見開くのが見える。
そうしてアメリアの横に立っていると、従者だの侍女だのって言うよりは学友がわりの貴族の娘って感じだよな。

「いや、従者殿お二人にもご出席願おう。衣装のデザインは一つではないゆえ。」
「そうですね。そうしてください、お二人とも。」
「いえ……ですが、わたくし達では役者不足かと…」
ロード夫妻の勧めにリナは恐縮したように答えているが、その真意は明らかだ。
目立つことはしたくない。
リナが思っていることが手に取るようにわかる。

が、何故オレが口も挟まず見ているだけなのかといえば、ずばり、ここに来る前にリナから言い含められたからだ。――曰く“あたしがOK出すまでは口をきいちゃだめ。アメリアよりもあたしを優先させちゃだめ”って。
じゃなけりゃとっくに割って入ってる。……まあ、オレが入った所でどうなるものとも思えないけどな。
「いいじゃありませんか。私も見知った顔のあるほうが落ち着けますし、こうして直々にお招きいただいているのですから、お断りするのは失礼ですよ、リナ」
今回オレ達はアメリアの従者だからその言葉とゆうか命令は絶対だ。
「―――はい、アメリア様。………では、僭越ながらわたくし達もアメリア様にお供させていただきます」

リナの承諾と共に交わされる視線。
―――やはりコイツらおかしい。なにかやな予感がするんだが。
ロード夫妻の瞳の奥を見透かそうとしたが、従者にはそこまでする権利はない。あとで注意するようにリナに言っておいたほうがいいな。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
短い……しかも恋煩い息子出てこないし……。

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7976街角にて そのきゅー三剣 綾香 10/1-02:04
記事番号7975へのコメント

第九話。
晩餐会編
今度こそ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第九話


ざわざわざわざわ……
町の喧燥とは趣が異なる上品なさざめきと静かな興奮が城を包んでいた。

控えの間ではとうに支度を終えたガウリイとゼルガディスがぼんやりと喧騒に聞き入っていた。
「――ゼル」
「なんだ」
「お前らいよいよ結婚するのか」
ガウリイの言葉にからかわれているのかと振り返ったゼルガディスはまじめな視線に表情を改めた。
「ああ、まあな」
照れもせずに答える。
ガウリイはふと目を細めた。
「――そうか、よかったじゃないか。祝いを言うのが遅くなってすまなかったな」
ガウリイの瞳には微かな羨望の色。
“お前達はどうなんだ”問い返そうとした言葉は瞳に宿る色に断ち切られた。
「―――いや、いいさ。」
ゼルガディスは緩く首を振る。

「―――アメリア姫様、ならびにリナ様、御準備整いました。」

侍女長の声と共に侍女達にかしずかれた少女達が入ってきた。
「――――?!」
ゼルガディスは言葉を無くした。

先に入ってきたのは当然アメリア。
アメリアは瞳に合わせたのだろう海の色のドレスを纏っている。
歩みに合わせて色みを変える織りはこの里独特のもの。
胸元に真珠のネックレスをあしらって、いかにもお姫様!!といった豪奢な雰囲気を漂わせていた。
表情も普段の幼さが吹き払われて、ぐっと大人の雰囲気に近い。
言葉の無いゼルガディスに向かって微笑んでみせる。
「ゼルガディスさんどうですか?似合います?」
その場でくるっと回ってみせる。
姿を変えても普段通りのあどけない仕種にゼルガディスはようやっと返答を返した。
「良いんじゃないか?良く似合うぞ」
初めて会った頃とは別人のように穏やかな表情。
人の身に戻った所為だけではあるまい。

望む返答に満足したアメリアは、今度は感心したような目でしげしげと自分を見ているガウリイにいたずらっぽい視線を向けた。
「リナさんとぉーっても奇麗ですよガウリイさん。」
ガウリイが、え?という顔をするまもなくリナが入ってくる。
しずしず、というよりはおそるおそるといった感じの足取り。
「―――ほう。」
ゼルガディスの感心したような溜息。
言葉を無くすのはガウリイの番だった。

リナが纏っているのは桜色のドレスだった。
昨日の昼間、リナの見つけたショウウィンドゥに飾られていたものに近い繊細なドレス。
華奢なリナの肢体をふんわりと包む花びらのようなデザインが、なんとも幻想的な美しさを醸し出していた。胸元に瞳の色の大振りのブローチを止めている。それがかえって全体的に華奢なイメージを引き出していた。
やや緊張した面差しとあいまって儚げな少女に仕上がっていた。

「ね?ね?奇麗でしょ?リナさんてば初め地味なのでいいなんて言ってたんですけど、ロード夫人のすすめでこのドレスにしたんです!!なんだかすっごい似合ってますよね!!」
「ああ。なんだか“馬子にも衣装”とさえ言えないほど良く似合ってるな。しとやかな姫君に見えるぞ」
アメリアに続いてゼルガディスも賛辞を贈る。
「どういう意味かな〜?」
リナはゼルガディスをちろりと見やったがそれ以上は言わず、ガウリイを振り返った。

ガウリイはやや呆然としたようにリナを見詰めている。
「ね。ど……かな。」
似合う?
困ったような笑みを浮かべてドレスの裾をつまんでみせた。
「―――」
ガウリイは答えない。まぶしげに目を細めたまま固まってしまっているようだ。
「ガウリイ?」
リナはやや心配そうに彼の顔を覗き込み、その頬に手を伸ばした。

ぴくり
ガウリイが身じろぎをする。
軽い溜息と共に数回瞬きをした
頬に触れた小さな手を掴んでそこに口付けて微笑む。
「似合ってる。お前のためのドレスみたいだよ」
リナはガウリイに手を預けたまま微かに頬を染めた。
「そ、そう……?」
「ああ。――けど……」
「なに?」
「お前、目立ちたくないって言ってたくせにそのカッコは絶対目立つぞ。」
苦笑と共に返る忠告にリナもまた苦笑する。
「あたしもそう思う――――けどまあいいわ。いざとなったらアメリア達に責任とってもらうもの」
ロード夫婦はなんだか企みがあるみたいだしね。
すいっと肩を竦めてみせるリナの物言いにガウリイは溜息を吐く。
リナもやはりロード夫妻の妙な雰囲気に気付いていたようだ。気付いていながらのんきにこんな事してるあたり、やはり危機意識が足りてない様な気がするが。
―――離れ無いようにしておいたほうがいいな。
ガウリイは一人ごちる。

「――――皆様お揃いになりました所で会場までご案内いたします。」
侍女長は室内の雰囲気が一段落した所を見計らい、先頭に立って部屋を出て行く。

「いきましょうゼルガディスさん!!」
「ああ」
差し出された腕にそっと自らの腕を絡めてアメリアは幸せそうに微笑んだ。

「しょうがないからあたし達もいきましょうか?」
リナは座ったままのガウリイの手を引っ張る。
ガウリイは立ち上がりながらリナを引き寄せて耳元に囁く。
「オレの側から離れるなよ」
お前呪文使えないんだろ。
耳へのキスと共に囁かれる言葉。
一瞬くすぐったげな顔をしたがすぐに表情を引き締める。
「うん。わかってる」

廊下を歩き去る二人の背を一対の目が見詰めていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
九話終り!!

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7985あうあう、続きがぁ〜!P.I E-mail 10/1-04:30
記事番号7976へのコメント

三剣綾香様
お久しぶりです。うわぁ〜いっぱいある〜(はぁと!)
ガウリナファミリー、やっぱりラストはこーでなくっちゃ!ってくらい
ハッピーエンドでしたね!アメリア&ゼル、結婚おめでとう!末永くお幸せに!
森を出た一家の行く手には何が待っているんでしょう?何があっても彼らなら
きっと大丈夫ですよね。(もはや無敵の一家だ)
あと個人的に、ガウリイゆずりの美貌に達者な口を兼ね備えたロキくんの将来が
とっても気になったりして・・・(^^;)
「街角にて」は「船上にて」とは逆の、ガウリイが待つお話。も〜どきどきしま
したよ〜!・・・ガウリイ、君はほんとにいい男だ!ここまで大事にされてリナ
ちんは幸せですね〜羨ましい!(はふっ)
物陰から見つめる妖しい一対の目・・・これからまだまだ波乱がありそう?
続きがすごく気になります!
裏もりの続き共々お待ちしてますよ。大変でしょうが頑張って続きをUPして
くださいね!
それではまた!!

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8001Re:あうあう、続きがぁ〜!三剣 綾香 10/3-00:21
記事番号7985へのコメント

P.Iさんは No.7985「あうあう、続きがぁ〜!」で書きました。
>
>三剣綾香様
>お久しぶりです。うわぁ〜いっぱいある〜(はぁと!)
どうもです!!
綾香です!!

毎回コメントありがとうございます!!

>ハッピーエンドでしたね!アメリア&ゼル、結婚おめでとう!末永くお幸せに!
私がゼルアメを絡ませるとなぜか必ず結婚とか婚約とか安直なほうに行っちゃうんですよ。私がゼルアメ単独の話を書かないのはその辺に原因が……(^_^;)

>森を出た一家の行く手には何が待っているんでしょう?何があっても彼らなら
>きっと大丈夫ですよね。(もはや無敵の一家だ)
リナをちょーっと持ち上げすぎかなーなんて思ったんですけど。
綺麗さの描写が楽しくってついえへへ(はーと)
何にしても家族が一緒ならどんなところでもそれなりに楽しく生きて行けるんでしょう。

>あと個人的に、ガウリイゆずりの美貌に達者な口を兼ね備えたロキくんの将来が
>とっても気になったりして・・・(^^;)
そう!!実はこの話で真に無敵なのは彼だったりするのです(妹以外にはと言う注釈付き)!!最初は素直な良い子だったはずなんですけど……良い子は良い子なんですけどねー……ま、当分は仲良い両親の代わりにかわいい妹の保護者してるんでしょう。
父親を上回る過保護な兄であることは間違いないっす(^_^;)

>「街角にて」は「船上にて」とは逆の、ガウリイが待つお話。も〜どきどきしま
>したよ〜!・・・ガウリイ、君はほんとにいい男だ!ここまで大事にされてリナ
>ちんは幸せですね〜羨ましい!(はふっ)
甘く……甘くしたかったんです、ホントは。
十話以降は甘く……なるかな……?

>物陰から見つめる妖しい一対の目・・・これからまだまだ波乱がありそう?
>続きがすごく気になります!
>裏もりの続き共々お待ちしてますよ。大変でしょうが頑張って続きをUPして
>くださいね!
>それではまた!!
ありがとうございます。
がんばって書きます。
しかぁ〜し!!ここで一つ問題が。
私今月お引越しするです。
だからお引越しする前に書きあがれば良いんですけどそうじゃなかったらアップが半月先になっちゃうですよ。
そうならないように祈っててください〜(T_T)

では。
綾香 拝


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8004ドキドキしました...NAOMI 10/3-14:51
記事番号7976へのコメント

「街角にて」読ませていただきました。
はあ〜.......(浸っている)

もう、ガウリイってホントにいい男ですね〜!!
三剣さんのお話は、ガウリイとリナの(特にガウリイ)
隠された気持ちの揺れが書かれていて、切ないけど
色っぽいですね(←いい表現が出てこなくてスミマセン)
キスシーンとかでなくても、ホントにドキドキします。

これからまだまだ一波乱ありそうですが、楽しみにしてます。
(も少しガウリイにご褒美があると..ごにょごにょ)
こんな「かなり壊れ気味」ストーリーなら大歓迎です♪
ハードな生活をされているということですが
お大事になさってください。変な感想で失礼しました...

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8017Re:ドキドキしました...三剣 綾香 10/5-23:11
記事番号8004へのコメント

NAOMIさんは No.8004「ドキドキしました...」で書きました。
>
>「街角にて」読ませていただきました。
>はあ〜.......(浸っている)
>
>もう、ガウリイってホントにいい男ですね〜!!
>三剣さんのお話は、ガウリイとリナの(特にガウリイ)
>隠された気持ちの揺れが書かれていて、切ないけど
>色っぽいですね(←いい表現が出てこなくてスミマセン)
>キスシーンとかでなくても、ホントにドキドキします。
>
>これからまだまだ一波乱ありそうですが、楽しみにしてます。
>(も少しガウリイにご褒美があると..ごにょごにょ)
>こんな「かなり壊れ気味」ストーリーなら大歓迎です♪
>ハードな生活をされているということですが
>お大事になさってください。変な感想で失礼しました...
>
感想ありがとうございます!
綾香です。

今回はガウリイの内面に迫ってみようと思った……訳ではなかったんですけどね、ホントは。
砂糖砂糖……とか思いながら書いてたのに、なんだかがうりんてばしりあすに悩んでくれて………ふふふふふふふ。

甘くする予定が………いんですけど。
前回は割とリナにスポットな話だったので今回はがうりんにスポットなお話ですってことで、勘弁していただこかと……ふふふふふ。

また読んでいただければ幸いです。


では。
綾香でした

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8006Re:ガウリイ、素敵すぎ・・・馨迦(きょうか) E-mail 10/4-00:22
記事番号7976へのコメント

初めまして。『街角にて』を読んで、
こんな素敵なガウリナに、もう、すごく感動しました。
私が思い描いている、理想の二人の気持ちの変化のしかたにぴったりなんです。続き辺りから、かなりシリアスな展開になっていきそうな気配ですね。
色々と、大変な時期に重なってしまっている様ですが、続きを楽しみにしています。
でも、季節の変わり目でもありますから、あまり無理しないで下さいね。

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8018Re:ガウリイ、素敵すぎ・・・三剣 綾香 10/5-23:22
記事番号8006へのコメント

>初めまして。『街角にて』を読んで、
>こんな素敵なガウリナに、もう、すごく感動しました。
はじめまして
三剣綾香です。感想寄せていただいてありがとうございます!!

>私が思い描いている、理想の二人の気持ちの変化のしかたにぴったりなんです。続き辺りから、かなりシリアスな展開になっていきそうな気配ですね。
あああ。
そう言って頂けるとうれしいです………ここまではともかく、この後の変化が重要なんですよね……たしか息抜き的な意味合いで書きはじめた話だったはずなのに何でわざわざ難解な方に話を進めているんだろう……
ぢつわ苦労が……
ぼんやり打ってると話がダークになっちゃうんですよ。
ふふふふふふ。実は投稿した分の倍くらいのダーク没の山があるんです……
歯が溶けそうな甘い話になる予定だったのに……へんですねぇ。

>色々と、大変な時期に重なってしまっている様ですが、続きを楽しみにしています。
>でも、季節の変わり目でもありますから、あまり無理しないで下さいね。
ありがとうございます!!
引越しすると職場が近くなるんですよ。
でも残業時間が延びるだけで帰宅時間は変わらないのかもしんないんで、文章の壊れ具合はさほど変わらないかも……とほほ。

秋になり、馬鹿じゃなくても風邪引く季節です。
お互いがんばりましょう。

では。
綾香 拝。


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8023街角にて そのじゅー三剣 綾香 10/8-01:02
記事番号7964へのコメント

十話。
二桁に乗ってしまった……。
でも一話一話の長さはさほどじゃないから意外に短い話なのかなぁ……?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第十話



大広間の入り口でアメリアの名が読み上げられると、広間全体を支配していたざわめきが一掃される。
やがて姿を現したアメリアに感嘆の声があちこちで上がり、辺りは再びざわめきに包まれた。
大国セイルーンの第二王位継承者、人々はその可愛らしい姫君に賞賛を送ると共に、その彼女と共にあることを許された、ただ一人の男に対する羨望の視線をゼルガディスに送っている。

「アメリアは大人気みたいね」
ガウリイの腕に手を掛けたままのリナが囁いた。
ガウリイは僅かに身を屈めてその囁きを受け取り、苦笑を返す。
「ああ、ゼルも苦労するだろうなこれから」
「そりゃそうよ。アメリアを手に入れるためだもの、そのくらいの苦労はしなきゃ」
当然。そう言いたげなリナの様子にガウリイは苦笑を深くする。
ゼルの何が大変ってリナみたいな小姑を持っちまったことだよな。

「―――どうぞお入りを」
入り口で立ち止まったままこそこそ囁きあっていたリナとガウリイに、アメリアの名を読み上げた衛兵が慇懃に声を掛けた。
はっと我に返る。そうだった今日の役割は二人の侍従、二人の側にいなくてはならないのだ。
「い、いこ。ガウリイ」
リナは慌ててガウリイの腕を引っ張る。
対するガウリイは悠然としたものだ。
「落ち着けよ。ほれちゃんと腕に捕まれ、この城に来た時みたくお嬢してろ。」
リナの腕を逆に引っ張って、自分の腕に捕まらせてウインクする。
リナはそのウインクに反応して頬を赤らめ、らちもないことを考え始めた。
何やっても様になる奴ってこれだから嫌よね。
やっぱあの時ガウリイの表情にほだされて余計な事言うんじゃなかったなぁ……。
なんだか調子狂ってばっかりだし、ガウリイにいいようにあしらわれてるし……しかも!!自分が嫌がってない所がすごーく悔しいのよっ!!ガウリイに負けてるみたいでっっ!!
でも!!あたしってば前はガウリイとどういう風に接してたんだかわかんなくなっちゃったんだもん!!
普通に普通にって思いながら行動してるから、なんか調子狂っちゃって……あああガウリイに良い様に扱われるのって悔しい〜〜!!
「どうした?」
うつむいてしまったリナを優しく促す声。
「………なんでも無い。―――いこっ」
「あ、ああ」
なにやら不満そうな声色に戸惑いつつも、ガウリイはリナに合わせてゆったりとエスコートした。

広間に入った二人は礼儀にのっとって一礼。
その瞬間、二人を中心にさやさやという忍びやかなざわめきが波紋のように広がった。
プリンセスアメリアに続いて現れた美しいカップルに、人々は興味津々、といった視線をこっそりと、でもその実かなり無遠慮に注いでいた。
その痛いほどの視線の中、二人は悠然と歩みを進める。
ガウリイはもとより、リナも開き直ったのか落ち着いたものだ。
道を開ける人々に上品な仕種で会釈などしている。
「そういやお前、宮廷の作法なんて良く知ってたなぁ」
「昔ねーちゃんに仕込まれたの」
「ほー…なんかなんでも出来るねーちゃんだよな。―――会ってみたいなあ」
「ホンキ………?」
ぢごくの底から届いたようなリナの視線にガウリイは首をふるふると振った。
二人は真っ直ぐアメリア達に近寄って合流を果たした。
「遅かったですね、二人とも」
「ごめん。なんだか人がいっぱいいすぎてなかなか思うように進めなくって」
小さな声でやり取りされる会話は周りのざわめきで当人同士にしか聞こえないが、もし聞こえていたら周りの人達は不思議に思うだろう。何しろ主が侍従に向かって敬語で話し、侍従のほうは全く敬語を使っていないのだから。
王女とやけに親しげに話すその様子にますます視線は集まって、さすがのアメリアも苦笑するふうを見せる。
「目立ってますねえ、お二人とも。私達の立場がないですよ」
この晩餐会はアメリアの歓迎と彼女のドレス選びのために開かれたものだ。
主役よりその侍従のほうが目立つのは確かに立場がないだろう。
もっとも、アメリアも別の意味でしっかり目立ってはいる。
デザイン選びの為に彼女以外の女性は皆、それぞれ贔屓の工房の婚礼衣装を着ている。
着ていないのはアメリアだけなのだ。
彼女はこれから皆からの挨拶を受け、彼女たちのドレスを見、その中から気に入ったデザインをピックアップしてドレスを注文することになる。
王族のドレスを作る際にはこういう晩餐会兼舞踏会のような催しが良く開かれるのだそうだ。
デザインの違いこそあれ、殆どの色は白に近い桜色の一色のみの中でここまで目立たれればだれしも苦笑の一つもしたくなるだろう。
「……あたしだって目立ちたくなんかなかったわよ」
ぼそりとリナが答える。
「え?なんですって?」
「うううん、何でもない。…それよか良さそうなデザインはあった?」
聞き返した言葉に逆に問い返され、一瞬不満そうな顔をしたアメリアだったが、直ぐに顔を輝かせて肯いた。
「はいっ!!えっと、さっき挨拶した侯爵夫人の妹さんが着てらしたのと、あそこの紫の服着た男の人のパートナーの女性の服とそれから―――リナさんが着てるやつですっ!!」
喜色満面、と言った様子のアメリアにゼルガディスが水を差す。
「他はともかく、リナが着てるやつはお前に似合わんと思うぞ」
「えーっ?!なんでですかゼルガディスさん!!すっごく奇麗じゃないですか!!」
泣きそうな顔で詰め寄られてゼルガディスは苦笑。
「奇麗は奇麗だが……ああいう繊細なデザインってお前のイメージじゃない」
ま、これは俺の個人的な認識だけどな。
ゼルガディスの言葉にアメリアは不満そうだ。
「でもでもっじゃあリナさんは“繊細”なイメージなんですか?」
「全然」
ゼルガディスの即答にガウリイは思わず深く肯き、次の瞬間みぞおちに見事な肘鉄を頂戴した。
「おまえなぁ…そう言うカッコしてる時くらい大人しくしとけよ」
ぜんぜん効いていない様子で溜息と共に諭され、リナはいまいましげに囁き返した。
「あんた達が失礼な事言うからでしょうが!!」
「オレは言ってないだろ?」
「肯けば言ったも同じよ!!」
「はいはい。」
その様子を呆れたように見守っていたゼルガディスは気を取り直したように咳払いを一つする。
「まあ、リナが繊細かどうかはともかく」
「ともかくって何よ失礼ね」
「リナは華奢だからな。旦那も言ってたがこのドレスはまさしくリナのためにあつらえたようにリナに似合ってるだろ。お前達二人はタイプが違うってのに、リナに似合うドレスをお前が着てどうする?」
このドレスは華奢な者に似合うようなデザインなんだろう。
ゼルガディスの解説にアメリアはなおも、名残惜しげにリナのドレスを見詰めた。
アメリアにとってリナはある種憧れの女性なのだ。同じ服を着てみたいと思っても不思議はないだろう。
ガウリイはけらけら笑いながらリナの頭に手を置く。
「こーゆうドレスはリナみたいに胸のないやつのほうが似合―――」
どがっ!!
先程の肘鉄よりも数段強い一撃がガウリイを見舞う。
「……ってー……――何するんだよリナ」
「余計な事言うからでしょ!!」
ふん!!とばかりにそっぽを向いてしまった栗色の頭にガウリイは苦笑する。
魔力が回復していないとはいえ、普段だったらもっと大騒ぎする所だ。
が、この程度ですんでいるのはやはりアメリアのためなのだろう。
“ちょっと妬けるかな”
ガウリイは苦笑を浮かべた。
なんだかんだ言ってても、相変わらずアメリアにはとことん甘いリナである。
「な〜に怒ってるんだぁ?」
「知らない!!」
そっと腰を引き寄せれば、抵抗しない代わりに顔はそっぽを向いたままだった。
「拗ねてるんだろ」
「拗ねてないもん」
くっくっく
ガウリイは堪えるように笑いを漏らして細い腰を更に引き寄せた。
「やっぱ拗ねてるじゃないか」
笑みを含んだ声が耳元に。
「拗ねてないってば」
リナはガウリイの腕の中で身体を反転させ、きっと言う感じで彼を見上げた。
不満気なその様子はどう見たって拗ねてるようにしか見えない。
くすくすくす。
ガウリイは今度ははっきりと笑い声を立てた。
そしてウインク。
「いいじゃないか似合ってるんだから」
「う………」
リナは言い負けた格好で黙り込む。
頬を染めて顔を逸らした先にアメリアが顔を突きつけた。
「リナさん!!」
「ひぃっ!?」
見るとアメリアは目に星を浮かべてリナ達二人を見ている。
「私は嬉しいです!!リナさん!!ガウリイさん!!」
「な、なにが?!」
ずずいっと迫ってくるアメリアに思わず一歩引きながらのリナの合いの手は、アメリアには全く届いていないようだった。
「ああっ!!」
「は…はい?」
「リナさんとガウリイさんが恋人同士になるなんて!!まるで正義が貫かれた後のように感動的です!!」
怪しげな(彼女らしいとも言うが)言いまわしで感激を伝えてくるアメリアに、リナはしかし顔を真っ赤にして反論した。
ガウリイの腕を押しのけてアメリアに向かって小声で(?)怒鳴る。
「な、何言ってるかなこの子は!!違うって!あたし達まだそんなんじゃないってば!!」
「“まだ”って事は進行形であることは認める訳だな」
ぼそり
ゼルガディスが突っ込む。
「う゛………そ、それは……」
「それは?」
口篭もるリナをガウリイは心底たのしげに促す。
「あんたはいいの!!黙ってなさい!!」
「はいはい」
くすくすくす
ガウリイは押さえ切れないように片手を口元に当てて笑っている。
リナは身体の両側で握ったこぶしをふるふると小刻みに震わせた。



う〜〜〜〜っ!!
く・や・し・い〜!!
何であんなに余裕しゃくしゃくなわけ?!
「あ〜、わかりました」
アメリアが溜息と共に遮った。
「な、なにがよ」
真っ赤な顔を身体ごと背けていたあたしは振り返った。
まだ頬が微かに熱いのがわかる。
「なんとなく二人の今の関係が、です」
こそこそっ
アメリアが顔を寄せてくる。
「リナさんガウリイさんにリード取られるのが悔しいんでしょ」
「え、や、なに、そんなこと……」
「隠したってわかります。……そうなんでしょ?」
「……だって、クラゲにリード取られるなんてなんかしゃくなんだもん。」
「りなさん」
はぁ〜っ
腰に手を当ててわざとらしい溜息。
そしてもう一度身を屈めるとひたとこちらを見詰めた
「甘えさせてくれるうちに甘えといたほうがいいですよ?」
女の子の特権なんですから。
ね?
ウインクを一つ。
はぁ……
今度はあたしが溜息。
「そういうのってあたしのキャラクターじゃないんですけど……」
「キャラクターなんかこの際いいんです!!リナさんとガウリイさんがラヴラヴになるのを待ち望んでいる人がでぃすぷれいの向こうに(少なくとも一人は)いるんですから!!」
握りこぶしで力説をはじめるアメリア。
男達はそそくさとその場を離れ、遠巻きに様子を伺っている。
ちっ、押し付けていったな。……まあかといってこんな話を聞かれるよりはましだろうが
「でぃすぷれい?……ま、まあいいわ。―――あのねアメリア」
「はい?」
演説を中断されてやや不満気に返事をする。
「さっきあんた“甘えさせてくれるうちに甘えといたほうがいい”っていったわね?」
「はい。言いました」
「まあ、ね。あたしが甘えたくないってのも確かにあるんだけど、それよりも、よ?あ・の!!ガウリイが甘えさせなくなるなんてこと、あると思う?」
「え……そ、それは……」
否定の言葉が思い浮かばなかったようだ。…普段のあいつを見てればムリもないけど。
「ガウリイはあたしを甘やかしたくってしょうがないのよ。弱みを見せたら最後なの。わかる?そんな事になったら箸の上げ下ろしまで世話される羽目になりかねないのよ!!」
んなことじょおだんではない。
その……こ、告白したからってそこまでされるいわれはない。
「わ、わかりました……」
なにやら打ちひしがれた様子でアメリアはゼルの元へと戻っていった。
入れ替わるようにガウリイがこちらに来る。
「何話してたんだ?」
ちらりと後ろを振り返る。
視線の先にはゼルに何やら一生懸命訴えているらしいアメリアの姿―――何を言ってるのかは大体想像が付くけど。
「ないしょ」
言えるわけない、あんな事。
しかも、うああああああっ!あたしってばあんな言い方したら“恋人同士”って言うのは認めた事になるじゃないっ!!――――ち、違うとは言わないけど、なんかそこまではっきり断定できる関係では…ない、と思う。
「“おとめのひみつ”ってやつか?」
「そゆこと」
だからごまかすに限る。
ゼルとアメリアは後で脅しかけて口止めすればいいけど、ガウリイには知られないようにごまかすのが一番。―――もっともガウリイにはあたしがなにか隠してるなんてことはお見通しなんだろうけど。
ああ〜っ!!やっぱ悔しい!!
「ふーん」
つまらそうに呟いて、不意に悪戯っぽく微笑む。
「な、なによ」
妙に楽しそうにこちらに手を差し出す。
「わたしと踊っていただけませんか?お嬢さん」
にっこり。
「う……」
「踊れるんだろ?」
そ、そりゃまあ一応そういった事もねーちゃんに仕込まれてるから……
「一応……」
「だったら行こうぜ、ほら手」
目立ちたくないって言った気がするんですけど………あたし……
「ゼルガディスたちはもう行っちまったぞ」
見れば広間の中央にある輪の中に二人も混じっているのが見える。
ゼルはまだなれていないのか、アメリアがリードしているようだけど。
「リ〜ナ」
ねだるように見詰めてくる。
その奥に今までだったら気付かなかった、甘い光が小さな炎のようにちらちらと揺らめくのが見えた。
ずきっ
痛みが走るほど大きく心臓が脈打つ。
「―――っわかったっ、わかったわよ。ったくもう……!」
あたしはその動機をごまかすように目の前に差し出されたガウリイの手に片手を預けた。
手を引かれて人波を抜ける。
「そんなこと言って、あんたこそちゃんと踊れるんでしょうね?」
「当然。―――昔こういう場所の護衛をやった時に仕込まれたんだよ。よく覚えてないけど
多分踊れるぞ」
流石に踊れなきゃ誘ったりはしないさ。あたしを誘導しながら苦笑する。
ふむふむなるぼど、体が覚えてるってやつだ。なんかそういう所はガウリイらしいけど。
曲の変わり目にあたし達はダンスの輪の中に入る。
ワルツのステップが懐かしい。これが出来るまで何度ねーちゃんに夕食を抜かれたことか。



リナを抱き寄せるようにしてステップを踏む。
リズムに合わせて自然に体を動かしながらリナをリードする。
「―――へえ」
本人は一応などと言っていたが、リナはダンスが上手かった。
オレの動きにもちゃんとついて来るし、逆にオレの事をリードしたりもする。
この手の駆け引きが上手い奴って恋の駆け引きも上手いって聞いた事あるけど、リナに関しては当てはまらない様な気がするなぁ。
「やるじゃんガウリイ。やっぱりあんたの筋肉ってのーみそより賢いんじゃないの?」
感心したような瞳。感心されても嬉しくないぞ、なんちゅう誉め言葉だ―――まあ、こいつらしいっちゃらしいが。
オレはそれに答えず更にリナを側に引き寄せた。
「ちょっ、ガウリイ!くっつきすぎよ?」
リナが頬を染めて抗議してくる。
それでも抱き寄せられた身体をもぎ離そうとはしない。
夕べの宿屋での告白とキスからこっち、リナはこのくらいの事では怒らなくなった。
オレの事を警戒してないのは相変わらずだが。
抱き寄せても割とへーぜんとしてるのは、オレが待つって言っちまったからなんだろうな、きっと。
あん時はまさかリナが逃げずに受け止めてくれると思わなかったからなぁ……
まあ何にしてもリナにとって、オレはこの世で一番安全な男である事には代わり無い――少なくともリナはそう思ってる筈だ。
「なにが?」
オレは意味ありげな笑みと共に囁き返した。
「…………………っ!!」
リナはちょっと見でわかるほどに顔を赤くして絶句した。
待っててやってるんだから、ちょっと意地悪したくなったって仕方ないよな、うん。

なんだか楽しくて仕方が無かった。
今までこいつに知られちゃいけない、押し付けちゃいけないってそればかり思ってたから。
リナを相手に、この手の話題で話しが出来る日が来るとは思わなかった。
突然突きつけられたオレの想いに、脅えながらも撥ね付けることなく認めてくれた。
オレの思いを知って尚当たり前のことのようにオレのそばにいてくれている。
その気持ちが愛しいと思う。
その想いごと守ってやりたいと、本気でそう思った――――誰に誓う訳でもないが。

でもまあ……ちょっと位はスキンシップを楽しんだって…いいよな?



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
十話終了!!………って本気で話が進まない……

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8024街角にて そのじゅーいち三剣 綾香 10/8-01:03
記事番号8023へのコメント

十一話。
いよいよ長い……。
いつ終るんだろう……
やっぱり八話でおわらしとくんだったかも……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第十一話


踊っていた曲が終って輪を抜ける。
一休みしながら、ワルツを踊る二人を眺ていると思わず溜息が漏れた。
「リナさんとガウリイさんてなんでも出来るんですね」
二人が宮廷作法知ってたって言うのでも十分驚いたけど(以前セイルーンに来た時はぜんぜんやってませんでしたし)まさかダンスまで出来るなんて。
リナさんはともかく、ガウリイさんまでが………人生って奥が深いって言うけど、本当なんですね……
なにか囁きあいながら優雅にステップを踏む。
「しかし目立つなあの二人は」
ゼルガディスさんは苦笑を隠せないようだ。
うんうん、私もそう思います。
白一色の女性の代わりに、今夜の晩餐会は男性の衣装がカラフルになっている。
その中でガウリイさんの着ているのはごくベーシックな黒のそろいだ。
服だけ見れば決して目立たないだろう二人。
「どんな衣装でも、あの二人の存在感は隠せないって事なんてしょうか?」
人より数段秀でた者だけが持つ、独特の存在感。
それは望むと望まざるとに関わらず人の目をひいてしまうものらしい。
思えば最初からリナさんには敵わなかったし。
そう言いながら隣を振り返ればゼルガディスさんもあっさりと肯いてくれる。
「ああ、そう言えば俺もそうかも知れん」
アイツ等には振り回されてばかりだからな。
ガウリイさんがリナさんをすいっと抱き寄せる。
リナさんってやっぱいいなぁ、頬を染めたりしてかあいい。
恋人同士じゃないなんて、勿体無さ過ぎます!!
周りからほうっという溜息が聞こえてきた。
嫉妬と感嘆が半々の溜息。
今夜の主役は私達の筈なのに腹も立たないのはいつもの事だからなのかな?
周りと一緒になって感嘆の溜息を漏らしてたら腹立ててる暇なんてありませんけど。

「美しい侍従をお持ちでいらっしゃいますのね」
「はい?」

不意に声を掛けられて振り向いた先にさっき紫の服の人と踊ってた女の人だった。
ああ、やっぱり近くで見ると素敵なドレスだなぁ……。
ちょっと胸元が開き過ぎかなとは思うけど、そこはアレンジしてもらえばいいし。

「アメリア様?」
「あ! は、はい。ありがとうございます。ごきげんよう、失礼ですけど貴女は」
ぼんやりとしていた私は自分を呼ぶ声に我に返り、慌てて返事をする。
氏素性を尋ねる私に、その女の人は穏やかに微笑んで名を名乗りました。
「わたくしは――――」



曲が終って一息つくまもなくあたしとガウリイは周りを人に囲まれた。
「私と踊ってください」「いいえ僕と」
「わたくしのお相手をお願いします」「いいえわたくしの」
口々に言う声がかますびしい。
断るだけでも大変そう。
いっそ無視しちゃいたい所だけど、アメリアの顔を立てるなら、めんどくさいけど片っ端から適当に断るしかないんだろうなぁ。
うんざり。

そう思った時不意に後ろからくいっと肘を引っ張られた。
ガウリイじゃない、女の人の腕。その腕は驚くべき力であたしを引っ張りバルコニーに連れ出した。
すわロード夫妻がなにかやってきたのかと思いきや、あたしの腕を引っ張っていたのはさっきアメリアが目を付けたと言っていたドレスを着てた人だった。

「大丈夫でしたか?」
濃紫の扇で口元を隠しながら上品に尋ねてくれる。
「あ、はい。ありがとうございました」
全く、ひどい目にあった。
お礼を言いながらそっと相手を観察する。
あたしが連れ出された瞬間に上がった不満そうな声は彼女の微笑みにあっという間に霧散した。
少なくともあの場の誰よりも上の人物なんだろうけど……?

「貴女は、広間に入っていらした時からひどく目立ってらしたもの。ダンスが出来ると知れればああいった事態になるのも致し方ございませんわ。―――けれど」
主人の側を離れたり、主人より目立ったり、そう言った事は侍従としてはしてはならない事ではありませんか?
やわらなかな声でもっともな事を言う。……確かに、アメリア達をほっぽっといたり、アメリア達よりも目立ったりなんてのはもってのほか。やっちゃいけない事だった。
早く戻らなくちゃ。
「お心使い、感謝いたします。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。では、わたくしは姫の元に参らねばなりませんので失礼いたします。お助け頂きありがとうございました」
そそくさと身を翻すあたしに控えめな制止がかかる。
「お待ちになって」
「はい?」
「この曲が終るまではよろしいじゃありませんか」
さりげなく振られる視線の先には再び踊り始めたアメリア達の姿。
「ですが……」
「わたくしのお相手の殿方もダンスに駆り出されてしまって一人なんですのよ。その間だけでもお話しいたしませんこと?」
「はあ……」
あたしの曖昧な答えを聞いて彼女は扇をそっとかざした。
それが合図だったのか、バルコニーにベンチが運ばれてくる。
彼女はさっさと腰掛けるとあたしにも座るように進めた。
「お掛けになって」
合図一つでロードの城の人間を使うって事は結構えらい人だってことだ。
ここで断るのもアメリアに迷惑がかかるかも知れない。
「ではすこしだけ」
あたしは大人しくベンチに腰を下ろした。
「貴女、侍従と言うのは嘘なのだそうね?」
「はい?」
こそこそっ
楽しくてたまらないと言った風情で彼女が囁いてくる。
一瞬質問の意図が計り兼ね、あたしはきょとんと彼女を見やった。
「アメリア様に先程ご挨拶申し上げた時に、伺ったんですの」
あんのばか!!自分から言い出しといて自分でばらすか!?普通!!
「貴女を誉められたのがよほど嬉しかったご様子でしたわ。“自慢の友人で憧れの人なんです”などとおっしゃっておいででしたわ」
………はずかし――。どこで何言ってまわってるんだ、あの子は。
でもそうか。
あんだけの人を微笑み一つで黙らせる権力者が、なんで侍従ふぜいのあたしに馬鹿丁寧に話すのかと思ってたけど、“アメリアの友人”としてだって言うなら納得できるかもしれない。
「あの、申し訳ありませんがその事は内密にしていただけませんか?」
一応ロードのほうには“侍従”として紹介されているわけだし……
あたしの口止めに彼女はころころと笑って肯いた。
「もちろんですわ!!わたくし達だけの秘密ですもの」
ほっと息をついたあたしの前で彼女はもう一度扇をかざす。
それに答えてグラスが二つ運ばれてきた。
その片方を彼女は取り上げ、あたしにくれる。
「下々で言う“誓いの杯”ですわ」
もう一方を取り上げて軽く掲げてみせるとすいっと飲み干した。
あたしは手の中のグラスを見詰める。
お酒……だよねえ、これ。
結構強そうなんだけど、大丈夫かなあ。
「この地方特産の果実酒ですのよ?お試しくださいな」
そっと香りをかぐと、昨日あたしが買ったあの果物の匂いがした。
おいしそう。仕事中なんだけど……大丈夫だよね、ちょっとだし。
「はい。頂きます」
あたしは微笑んでグラスを軽く掲げ、彼女のしたようにすいっと喉に流し込んだ。
爽やかな香り、甘い舌触り。すごく口当たりが良くておいしいお酒だ。
でも予想通り―――すんごく強い。
「いかが?」
あたしが飲んだのを見計らって彼女が問い掛けてくる。
「とてもおいしいです。これはどちらかで手に入るものなのでしょうか」
ガウリイもきっとおいしいって言うだろう、そう思って入手経路を聞いとこうと思った。
あああ、こんな事してるなんて絶対あたしらしくないって自分でも思うけどさ。
昨日からこっちガウリイのこと考えてる時間が長いような気がする……

ああそれでしたら。
彼女はぱちんと手を打ち合わせる
「お土産に差し上げますわ」
え……いいのかな?
飲んだ感じではかなりいいお酒だぞ、これ。
「いいんですか?」
「ええ」
「ありがとうございます」

ダンスの曲が終る。
「終ってしまったようですわね。わたくしたちの秘密のお話しもおしまいですのね」
ちょっと残念そうに彼女は言う。
「ご馳走様でした。おいしかったです―――失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
名を聞いていなかった事を思い出して立ち上がりながら問う。
「ええ。わたくしは―――――」

くらり。
不意に視界が揺れる。
え?
「どうかなさいまして?」
酔っちゃったのかな…………?

すうっと辺りに闇が落ちる。

や、違う。
なにか………おかしい。これは、もしかしなくても、まずった、かも、しんない……―――

お酒に……何か、が――――………

あたしの意識は暗転した。
彼女の扇の紫が目に残っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
十一話終り
あらあら。ってことで続きます。

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8025Re:街角にて そのじゅーに三剣 綾香 10/8-01:04
記事番号8024へのコメント

十二話。
やはしながい話……引っ越す前までには終らなひなこれは。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第十二話


遠くで音楽が鳴っている。
開け放たれた大きな窓からは
満月にわずかに足りない十三夜の月。
天蓋の付いた大きなベッドに沈む少女を蒼く冷たい光で彩る。
半ば闇に支配された部屋に眠る少女はひどく儚い幻を見ているようだった。



おん…がく……?
あれは―――
早く……起きなきゃ。
眠い……

何を…………あたし……?
頭の奥で警鐘が鳴る。
意識がゆっくりと浮上して来る。

やわらかな肌触りのベッド。
眠りを誘うハーブの香り。
瞼を開くのに努力を要する。
射し込む月光に照らされた豪奢な作りの部屋。

「ここ……どこ…?」
あたしどうしたんだっけ?
「………………?」
頭が働かない……くらくらと目眩がして半身を起すことも出来なかった。
うつ伏せていた身体を仰向けにする。そんな些細なことがひどく億劫だった。
「え―――と……」
窓から見える月を見あげる。
月が出てるってことはまだ夜なんだな。
……じゃなくて。

…………思い出した。

バルコニーで変なお酒飲んだんだ。
何か入ってた。この妙な頭痛のしかたからすると即効性の睡眠薬。
ねーちゃんに鍛えられてなかったらまだあと数時間は寝てたろう。
とりあえず心の中で感謝しておこう。
いつもだったら気が付かない筈無かったのに、油断があったのかなぁ……
ロードに何か、多分リュセイラとかって息子の為の企みがあるってのは予想付いてたけど、ここまで直接的な方法で来るとわ……なめられたもんね…………。
ああだめだ目を開けてるだけでも目眩がする。
目を閉じて耳を澄ます。
音楽が聞こえるって事は広間からさほど離れてないんだな…………ってことは城内。

しばらく目を閉じていると目眩がだんだん収まってくるのがわかる。
ディクリアリィでも使えれば良いんだけど……
ま、いいか。
多分まだ無理だと思うけどものはためしってね。
あたしは呪文を唱える。
『ディクリアリィ』
――――――
“力ある言葉”に反応してじわとじわと体内の薬が中和されていくのがわかる。
………でもまだいつもの三分の一も回復できない。
やっぱりタリスマン持って来れば良かったかなぁ……

コンコン
控え目に扉を叩く音がしてそっと細身の影が滑り込んできた。
「――――お気が付かれましたか」
静まり返った部屋の入り口付近から聞きなれない声。
「………」
答えないあたしにかまわず、こちらに歩み寄ってくる気配がする。
月光が指す位置まで来て立ち止まりこちらに笑いかけた。上品な微笑み。
「あんた……リュ…セイラ…………?」
「……はい」
あたしの問いにリュセイラは嬉しそうに肯いた。
似てる、ロードに。
リュセイラのほうが小柄で、抜けるように色が白いけれど。

「僕を知っていてくださったんですね。光栄です。気分はいかがですか?聞いていたのよりも目が覚めるのが早いみたいですから御気分が優れないのではありませんか?」
ベッドの側まで来てあたしの顔を覗き込んでくる。

「最悪に……決まってるでしょ……」
このあたしにこーんな大それた事した落とし前はつけてもらいますからねっっ!!
とはいえ今のあたしは多少回復したとは言ってもフルパワーには程遠い。
無論、こんな弱そうなにーちゃんに負けるつもりなどないが。
あたしの答えにリュセイラは心配そうにあたしの額に手を触れる。
振り払いたいのに腕が鉛のように重たかった。
僅かに首を振って手から逃れる。
口の中でもう一度中和の呪文を唱えた。
回復の度合がさっきより良い―――魔力が戻ってきてる。
いけるかも。

「何で……こんな事……するわけ……?」
「僕貴女にお会いしたかったんです。凄く凄くお会いしたかったんですよ?」
ホントに会いたかったんです。

「だからって……」

ここまでするか?

「領地内の山で貴女を初めてお見掛けした時、心が震えるのを感じました。悪漢どもを瞬く間に打ちのめすお姿はまるで女神のように凛々しくて美しかった。」
ベッドの脇に立て膝をしてベッドに頬杖を突いてうっとりとあたしのことを見詰めて話し続けている。
こっそり唱えてる呪文に気づかないあたりそういう知識はないようである。

「その時わかったんです。貴女が僕の伴侶となるべき人なんだと。でも、貴女と僕では身分が違いすぎる。わかりますか?リナ。その時の僕の悲しみが。リナと僕は互いに引かれあい、結ばれることになっているのに、身分、ただそれだけのことで結ばれないなんて僕にとっても、リナ、貴女にとっても最大の悲劇と言わなくてはならないと思いませんか。」

思わない。

家臣も家臣なら、主も主だ。

自己陶酔は主従共通のものらしい。
しかも主のほうはさらに輪をかけておかしい。

何でちらっと(かどうかは知らないけど)見ただけで話しもしてないあたしが自分のこと好きだなんて思い込めるんだろう。

少なくともこいつと結ばれなくってもあたしはぜんぜん悲しくないぞ。
むしろほっとするくらいのもんである。

あたしは昨日の男同様とりあえずほっとくことにした。

口の中で繰り返し回復呪文を唱える。
ゆっくり体が回復してくる。
よしっっあと少し!!

「貴女を想って眠れぬ夜をいくつ過ごしたことか……すみません貴女にもそんな辛い夜を過ごさせてしまいましたね。でも!!喜んでください、僕らのそんな絆が父上と母上に届いたのです。両親はリナと僕の婚姻を認めてくださったんです。」

変。

絶対変。

こいつ変だ。

あたしが自分のこと好きだって信じてる、いや、まるで決まったことであるかのように思ってる。


―――――気持ち悪い。


「なのにやっと探し出した貴女は僕の所に来てくださらなかった。僕との身分の違いを慮って身を引かれたのですね?僕に迷惑をかけまいと結ばれる運命に逆らってまで僕を思ってくださったのだと知って僕は神の声を聞いた様な気分でした。」
リュセイラはあたしの頬に手を掛ける。
ぞくぞくと悪寒が走る。
「さわら……ないで」
「大丈夫です。ここには誰もいません。身分のことなど忘れて素直になってください。」
愛してます。そう言いながらあたしの髪に触れる。

なにこいつなにこいつなにこいつうぅぅ!?
何でこんなふうに考えられるんだろ。
怖いとか何とかって言うよりもただただ気持ち悪かった。
想われてるって事がこんなに気味の悪いことだったなんて知らなかった。

ガウリイがあたしの事想ってくれてるって知った時はそんなこと思わなかったのに。
―――ガウリイ……どうしてるだろ?
あたしがいないことに気が付いて探してるんじゃないだろうか。

「あいしてます」
「あたしは…あんたなんか好きじゃない。さわんないで!!」
「ああ、やはり。そこまで僕を想ってくれるんですね……。そんなリナの鎖を解き放って上げるのが、夫たる僕の役目ですよね。」

ぎし

ベッドに片膝を乗せてにじり寄って来る。
だああぁっ
うっとーしーっ!!

「ふざけんなぁぁぁっ!!」

どかばきっ!!

あたしからの反撃は予想していなかったのかあっさり吹っ飛ぶ色ボケ男。
おお、結構回復してたのね。
よしこの隙に………
「何するんですか」

さっさとベッドを降りて部屋を出ようとしたあたしに伸びてたとばかり思っていたリュセイラがすがり付いてくる。

だああっ
うるさーいっ!!
気持ち悪いからくっつかないでっての!!
「あたしは!あんたと!結婚する気もなければ!それを前提にしたお付き合いとやらもする気はないの!!」

ふっ飛ばそうが何しようがすぐに回復してきて部屋から出られない。
それをかれこれ十数回繰り返したころ。
あたしはいいかげん力尽きていた。
体じゃなく精神面での打撃が大きい。
十数回繰り返す間中ずーっと、とーすい入った自己完結な愛の言葉を呟き続けてるんだこいつわ!!

もうやだ。
たすけて。
自分のことで誰かに助けを求めるなんてしたくない。だけど思わず呟いていた。

「――――助けて、ガウリイ」

こんなの愛の告白とは認めないぞあたしは。
あたしの気持ちなんかまるっきり無視。
自分さえよければそれで良くて、しかもそれを人に押し付ける。
この気味の悪い愛の言葉の山もあたしに言ってるふりして自分に向かって言ってるんじゃないだろうな。

“愛”ってのはもっと…………――――――!

あ………
そのときわかった……ような気がした。
ガウリイとリュセイラの“愛”の違いが。
ほんのちょっとだけだけど。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
十二話終り。
気持ち悪いぃ―――――っ!!
十二話は、じつわ実話。自己体験を元に書いてたりします(ここまでひどくなかったですが)。
……リナちゃん可哀相。問いう訳で間髪入れずヒーローに出張ってもらいます。

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8026街角にて そのじゅーさん三剣 綾香 10/8-01:06
記事番号8025へのコメント

十二話の“Re:”とるの忘れちゃいました。
ごめんなさい。

十三話。
続きもこの辺で終る予定だったのにやっぱ終らなそうです。
文章が無意味に長いような気がしてならない今日このごろです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第十三話


「ガウリイ?―――ああ。貴女の保護者を気取る不貞の輩ですね」
リュセイラは微かに不満そうにする。
「そんな者の名より僕の名を呼んでください、リナ」

あたしは目を閉じて首を振る。
こんな奴の顔も見たくなかった。

「ガウリイじゃなきゃヤダ」
あたしが会いたいのも、
あたしにさわっていいのも、
愛してるって言っていいのも、
あたしが自ら助けを求めるのもあんたじゃない!!

やだ。やだやだやだ!!
助けて。
ガウリイ。

「ガウリイ!!」
精一杯の大声で叫ぶ。
瞬間、扉の外に生まれる殺気。
暗闇に閉ざされた部屋に廊下のライティングの明かりが差し込む。
大きな音を立てて扉が床に倒れるよりも早く金色の影が飛び込んでくる。
影はそのままあたしにしがみついているリュセイラをベッドの反対側まで殴り飛ばした。
冷たい月光よりなお冷たく輝くアイスブルーの瞳。
抜き身の剣をリュセイラに突き付けたままこちらを振り返る。
気遣わしげな瞳が優しくあたしを見る。あたしの周りにあった緊張が見る見るとけていくのがわかった。
ガウリイだ。
ガウリイだ。
ガウリイだ。
――――本物の

「へーきか?リナ」
昨日と同じ問い。

こく
あたしは肯く――――これも昨日と同じ。

ガウリイってなんであたしが来て欲しいって想う時に来てくれるんだろう。
不思議。

でも、来てくれたんだ―――よかった。
急に大声を出した所為で急激に貧血がおこってるらしい。
すうっと血が下がるのがわかる。
ああ、あたし回復しきってなかったんだな。……どおりで何度ふっ飛ばしても回復してくると思った。
それに加えて気味の悪い奴の手か逃れられた安堵感が、あたしの意識を闇に沈め始める。

「リナ!!」
崩れ落ちるあたしの体をガウリイの腕が支えてくれる。
でも、さっきリュウセイラに触られたときとは全然違う。

大丈夫。
眠っちゃっても平気。
ガウリイが来てくれたから。
ガウリイが助けてくれたから
もう…へい……き―――

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
かなり短いですけど、場面転換ってことで切ります。
ってなわけで十四話に続く!!

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8027街角にて そのじゅーよん三剣 綾香 10/8-01:07
記事番号8026へのコメント

十四話。
多分ラスト
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 第十四話


窓の外にはまだ、眠たげな十三夜の月。
前と同じ宿屋の部屋ベッドの上。
横たわっているリナはゆっくりと目を開けた。
「………………」
緩慢な動作で上半身を起してぼんやりと辺りを見回す。
「……アメリア……?」
今にも泣き出しそうな表情で自分を見詰める妹分をリナは不思議そうな顔で見詰めた。
膝の上で両手を握り締めている。
「ごめんなさいリナさん。私、私の我が侭でリナさんを城に引っ張って行ったから………」
そこまで言って涙をこぼす。
握った手の上にぽたぽた涙が落ちた。
「…………」
無言でアメリアの頭を撫でながらその後ろに立つゼルガディスに視線を送る。
“説明しろ”リナの瞳は語っていた。
「お前がいなくなったってガウリイの旦那が気が付いて直ぐにロード夫妻を問い詰めたんだ。」
そうしたらリナはロードの姪、つまりリュセイラの従姉弟が連れていったと言う答えが返ってきた。
リナの所へ行こうとしたアメリア達は、そこで懇願されたのだ。
“どうかあの娘をリュセイラの嫁に”と。
当然アメリア達は相手にはしなかった。それは彼女たちが答える筋の話ではなかったから。



「そこへ一足先にリナを探しに行ったガウリイがリュセイラを引き摺ってもどってきたんで、親子共々リナ=インバースには二度と手出しいたしませんと誓わせたってわけさ。」
セイルーン王家の友人に手出し無用。
アメリアがはっきりそう宣言したのだそうだ。
こんな騒ぎになったんじゃ当然ドレスはおじゃんになったんだろう。
「―――なんか返って迷惑掛けちゃったみたいで、ごめんね、アメリア」
あたしの言葉にアメリアは脳震盪をおこしそうな勢いでぶんぶか首を振る。
「謝らなくちゃならないのは私なんですってば!! 昨日も、一昨日も」
何の役にも立てなかった。
あたしは苦笑する。
「大丈夫だよ、アメリア。あたし、平気だよ?」

あの時、ガウリイが来てくれたから平気だよ?
大丈夫。だから気に病まないでもいいのに。

………―――って、

「ガウリイは?」

気付けばガウリイは部屋にいなかった。
「もうすぐ返ってくると思います」
涙を拭きながらアメリアが答えた所にガウリイがなにか紙袋を抱えて戻ってきた。
「おおリナ、目が覚めたのか」
ガウリイがとたとたこちらに近づいて来るのと入れ違いにアメリアとゼルが部屋から出て行く。

なんだか思いっきり作為的に二人きりにされた気がする………

「―――で?大丈夫なのか、もう」
「ん。お世話掛けたけど、一応ね」

「そうか――ほら、もう少し寝てろ。」
「ん」
くしゃ
あたしの頭をなでてくれる。
あたしを見つめる瞳が心地良い

「ね、あたしの事――――好き?」
唐突なあたしの問いにガウリイは面食らった表情で、でも即答してくれる。
「ああ」


思わず微笑が浮かぶのがわかる。
「―――で、あたしの事待っててくれるんだよね?」
照れた様子のないあたしにさらに驚いた様子で目を見開いてたガウリイはあたしの言葉に苦笑した。
「ああ、まあな」

あの時、あのリュセイラの戯言聞いているときに、気がついた。
ガウリイはあたしを“愛”してくれてる。
でも、あたしその意味が本当のところで良くわかってなかったらしい。
それが、あの時リュセイラを見ててそれがちょっとだけわかったような気がするのだ。

前にアメリアに言ったことは半分嘘だった。
たしかにガウリイはあたしが甘えれば甘やかすだろうと思う。
あたしがあたしらしくある限りそれこそ底無しに。
風にも当てないように守りたがるに違いない。……あたしはそんな大人しい性格してないから彼もそんなことしないと思うけど、心情的にはそうなんだろう。

それはホント。

じゃあどこが嘘なのかって言うと。
“あたしが甘えたくない”ってトコ。

あたしはガウリイが甘やかすのに付け込んでガウリイの気持ちに待ったをかけていたのだ。

もう少し
後少し
今はだめ…って

それは一番残酷な甘え方かもしれない。
ガウリイが待ってくれるってわかっててそう言ったあたしってとんでもなく我が侭だ。
ガウリイがどんな気持ちでいたのかなんて考えてなかった。

彼があまりにも自然にあたしの気持ちの方を優先させてくれるもんだから気づこうともしてなかった。
リュセイラの一件がなかったら今も気がついてなかったかもしれない

「ごめんね……ガウリイ…」

溜息のようなあたしの謝罪にガウリイの顔が真顔に戻る。
「何が?」
怖いくらいに真剣な顔。
「オレに謝らなくちゃならないようなこと、されたのか?―――あいつに」

え?

あたしは体を起しながらぶんぶか首を振る。
―――何の心配をしてるんだ、いったい!!
「……違うのか?…じゃあ何を謝ることがある?」
あたしの頭に手を伸ばしながら不思議そうにガウリイは言う。
瞳にはあの輝きが灯り始める。
――あれ?
見つめられるとやっぱり動けなくなる、でも――――――怖くない。
なんで?

ふわりと引き寄せられ、そっと唇が触れたときも、あたしはガウリイの瞳を見つめつづけていた。

強い瞳。
あたしを怯えさせた激しい想いのさらに奥にあたしを包み込むような深い心が見えるような気がした。
その心こそが――――――愛。

背中に再びやわらかなベッドの感触が戻る。
真上から覗きこんでくるガウリイの瞳に、あたしはそっと目を伏せた――――――






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
てなわけで
えんど………と、思ったんですけど、一応エピローグを付けることにしました。
ってプロローグは付いてませんけど。

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8028街角にて えぴろーぐ?三剣 綾香 10/8-01:08
記事番号8027へのコメント

最終話です。
またの名をエピローグ。
終りよければ全てよし!!
ここだけほのぼの。………かな?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『町角にて』 エピローグ


「――やっぱりこの格好のほうが落ち着くわねー♪」
手折ったねこじゃらしを指先でくるくるとまわす。
たのしげに鼻歌など歌いながらリナは上機嫌だ。

あれから二日が経っていた。

諸外国をお忍びで視察中だと言うアメリアとゼルガディスを加えた四人は、街道を歩いていた。
結局、リュセイラは僻地の温泉地に療養に出かけたらしい。
ロード夫妻が寄越した詫び状に、そう書いてあった。

空を行く風さえも微笑ませるような表情。
その様子をにこにこ見守っているのはガウリイだけ。
後の二人は数歩後ろでこそこそ囁き合っている。

「ゼルガディスさん」
「なんだ?」
「元々顔の造作の良い二人が、あそこまで上機嫌でにこにこしてるのって、なんだか罪作りって言う以前に怖くありませんか?」
「まあ、旦那は元からだが、リナまでああだとな。旦那が独りで歩かせたくないって言うのもわかるって言うものだ。」
「ですね……」
ちらり、前方の二人を伺う。

楽しそうなリナにねこじゃらしでくすぐられていたガウリイは、リナの手を掴んで引き寄せ、耳の後ろに口付ける
次の瞬間アメリアの視線の先でガウリイはいつものようにリナにスリッパでどつかれていた。
けれど、つたわってくるリナの上機嫌な気配は変らない。
ああ、アメリアは思う。
こういうの“幸せそう”って言うんだろうな。
ふふふっ
思わず声を立てて笑ってしまう
「やっと恋人同士らしくなって嬉しいんだろ」
呆れたように二人の様子を見詰めながらゼルガディスは溜息を吐いてみせた。
「ですね……」

ひそひそ。
囁きあう言葉にリナは苦笑して振り返った。
「なにやってんの?!置いてくよ!!」
リナの声に顔を突き合わせる様にして話していた二人は慌てて顔を上げた。
「あ、はーい!!」
行きましょう!!
アメリアは掛け声と共にゼルガディスの腕を思い切り引っ張った。
「わかったわかった」
二人は小走りで前方の二人に追いついた。

木の葉を揺らしてたのしげな笑い声が響く。

輝き照らす太陽よりもなお輝く二組の恋人達の行く道は、いったいどこまで続いているのやら。




おしまい

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
はぁ。ながかった……
甘い?甘い?甘いですか?
難しい…砂糖吐く話って、ひじょーに難しい。
結局シリアスに走りそうになったり不安定な話になっちゃいました(T_T)
愛をテーマにした筈なのにどことなく重いのは何故……?
ふふふふふふふふふ
所詮私はこの程度ってことですかねぇ?

と、言う訳でここまでお話読んでくださったあなた!!
ありがとうごさいました。

では。
綾香でした。



さとう……眺めながら書いたのになぁ…


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8029じゅ〜ぶんっに甘いですよ〜♪もりへゆ E-mail 10/8-03:21
記事番号8028へのコメント

三剣さん、はじめまして。もりへゆと申します。
「書き殴り」にコメントつけるのはぢめてで、かなりどきどきしてます。
以前からこちらのサイトには顔を出して、少しずつ少しずつ、寝る間を惜しんで
読みまくっていたのですが、小説の膨大な量に圧倒され、レスをつけずにいたの
ですが、三剣さんのガウリナに見事ハマってしまい、感想を書かせて頂いており
ます。

『街角にて』もうすっごい面白かったです!
なんと言っても、ガウリイが。ガウリイがめちゃ格好いいっっ!!!
やっぱしエエ男ですね〜♪ガウリイさんってば。
顔良しスタイル良し性格良し。そのうえ天然まで入ってさらにお徳♪(何が?)
そしてリナが可愛いっっ!!
自分の気持ちに気づいて、ガウリイの真心に気づいて。
素直になったリナがとっても自然で良かったです。
長い・・・と何度も言っておられましたが、読んでいてとても自然に、ゆっくりと
二人の感情(特にリナ)の変化が感じ取れて、私は良かったと思います♪
ほのぼのとして、読後に幸せな気持ちになりました。有難うございました。

別ツリーのシリーズも面白かったです!
ファミリーシリーズ大好きです♪ほのぼのしてて暖かくて。少しだけ色っぽい(笑)
三剣さんのお話は、読んでて優しい気持ちになりますね。素敵だ〜♪
裏森の続き楽しみに待ってます。ええもう、私は待っていますよ〜?
次回作、楽しみにお待ち致しております。それでは長々と乱文失礼致しました。

PS.砂糖眺めながら書いてんですか?(笑)ちゃんと努力は実ってます。絶対甘い♪

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8030にゃあ♪甘いです〜♪MIGU E-mail 10/8-05:48
記事番号8028へのコメント

きゃあ〜〜〜〜♪はじめまして、MIGUといーます。
甘いです〜〜〜〜さいこ〜〜〜です!!!
甘えてじゃれるリナとか、かっこいいガウリイとか
も〜すごくいいです〜〜〜〜〜!!!
(テンション高くてすひません〈−−; )
これからもがんばってください〜〜〜〜♪

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8036わんおぶぜむ!の喜びP.I E-mail 10/9-01:00
記事番号8028へのコメント

三剣綾香さん、こんばんは。
「街角にて」完結、お疲れさまでした〜!
ふみゅ〜。ゼルアメの目の前でねこじゃらし♪とろける甘さだぁ〜(はぁと)
リナも成長しましたね〜!まさに雨降って地固まる。ガウリナらぶらぶを望む
でぃすぷれいの向こうのわんおぶぜむとしてはも〜大満足です!
・・・とはいえ、リュセイラの奴、も〜ちょっとぎったんぎったんにして
やっても文句はなかったですよ(>鬼!)だって気持ち悪かったです〜!
あーゆー手合いは元から断たないと・・・(−−;)

また素敵なガウリナのお話を読ませて下さいね!
それでは!

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8039リナ、かわいい〜〜〜っっ!!馨迦(きょうか) E-mail 10/9-01:47
記事番号8028へのコメント

綾香様。
 前回、初めて書いたので、タイトルの『Re:』を消すのを忘れてしまいました。(^^;)ごめんなさい。
続きを読んでもう、嬉しくて×2。ガウリイにいいようにあしらわれてるリナがかわいくってもう・・・(^0^)
 それにしても、リナが気絶した後のロード一家って、リナ以上に恐い目にあってるんじゃ・・・(特に馬鹿息子ね。)ガウリイの視線を、何時ものようなあったかい眼差しに戻せる人間いないんだもん。
ゼルとアメリアにはムリだしね。(せいぜい、斬ることを土壇場で留めるので、精一杯じゃないかと……)
 とても甘い、素敵なガウリナのお話を有難うございました。
        

                              馨迦 拝

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8053とろけて悶絶死寸前みる 10/13-16:52
記事番号8028へのコメント

三剣 綾香さま♪

 はじめまして。ココを見つけて思わず一気に読んだは良いものの、
学校で読んでたものですから、すぐ顔に出る私は、火照った頬をハンカチで
隠しながら(←かえって怪しかったかも^^;)読んでしまい、
不気味な笑いを浮かべて、もう少しで悶絶死寸前でした(実話)。
「あぁ、恥ずかしい!!でも、読まずにはいられない!!」って感じでした。

>楽しそうなリナにねこじゃらしでくすぐられていたガウリイは、リナの手を掴んで引き寄せ、耳の後ろに口付ける
>次の瞬間アメリアの視線の先でガウリイはいつものようにリナにスリッパでどつかれていた。
>けれど、つたわってくるリナの上機嫌な気配は変らない。
>ああ、アメリアは思う。
>こういうの“幸せそう”って言うんだろうな。
>ふふふっ
>思わず声を立てて笑ってしまう
あぁ、私も周りに人がいなかったら、「し・あ・わ・せ〜〜〜」と
声を立てて笑いたひ・・・
>
>結局シリアスに走りそうになったり不安定な話になっちゃいました(T_T)
>愛をテーマにした筈なのにどことなく重いのは何故……?
>ふふふふふふふふふ
>所詮私はこの程度ってことですかねぇ?
そんな事ないです!!すご〜く甘かったですよぅ。
愛はこれくらい不安定だからこそ面白いんだろうし(レンアイ経験なぞ
21にもなって一つもないが、そう思ふ)。

>さとう……眺めながら書いたのになぁ…
砂糖を摂ると、エネルギーを代謝する為に、水が必要に・・・・って訳で、
私は読んでて、ものすご〜く咽喉が乾いてお茶をいっぱい飲んでた事実から
みても、とっても甘かったですぅ!!
・・・・・さとう、眺めながらって・・・・・(笑)。ほんとですか?!
その砂糖、いつもより甘くなってた、なんて事はなかったですか(笑)。
オチまでついてて、もー最高でした!!

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