◆−船上にて−三剣 綾香(8/5-23:06)No.7383
 ┗Re:船上にて−P.I(8/6-02:54)No.7384
  ┗多謝!!−三剣 綾香(8/7-11:26)No.7407


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7383船上にて三剣 綾香 8/5-23:06


お久しぶりの綾香です。
もうそろそろ私の駄作の影響も薄れてきた頃だと思いますので一作投じることにいたしました。
今回は、うーんと、多分「がうりな」じゃないかと……。
ゼルアメっぽい気配も漂っているような気もしますけど……
ま、まあいいや。
ちなみにアメリアはTV版の方が私の好みなのでそうしてます。
そういうわけで、い・ち・お・うガウリナご覧ください。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
船上にて

フィリアに別れを告げた帰りの船にて。

「ほんっとに解りませんよね〜ガウリイさんって。」
ゆらゆらと揺れる船室の明かり。それを見るともなく見ながらぽつりと言ったのはアメリア。
「へ?どこが?」
それを耳にしたリナは香茶を片手にしたまま、さも不思議そうに返事を返した。
二人部屋のベッドで寝っ転がっていたアメリアはぐぁばっと身を起し、詰め寄る。
「だって、だってわかんないじゃないですか!ガウリイさんて常に本音を語らないって言うか、一定範囲以上に人を近づけないって言うか…そんな所がありませんか?」
突然エキサイトし始めた妹分に面食らっいつつ、それはあるかも、などとリナは思った。
そうなのだ、大体ガウリイはいつもにこにこしているくせに、肝心の本心は他人に決して覗かせない。そういう所があるのである。
そっか、アメリアも気がついてたのか。
「ガウリイさんなんてぜ〜んぜんわかりません!!」
無反応のリナにはお構い無しにぷりぷりと怒りながら辺りを歩きまわる。
しかし…
「なんでそんなに怒ってるの?ガウリイのことで」
リナの問いかけに歩き回るのを止め、きっ!と振り返る。
「別にガウリイさんに腹を立てている訳じゃありません!!」
ふいっと拗ねたように視線を逸らす。
「リナさんにです!!」
「あたし?…なんでまた。」
「なんで…」つかつかと歩み寄りながら言う。
「なんであんなに底知れないような人と一緒に居られるんです。相手のことがわかんないなんて不安じゃないんですか?!」
ああ、そうか。
溜息と共にリナは納得した。
「ゼルとなにかあったのね?」
ぴくっ。
リナの言葉に反応して、アメリアは「図星!」という顔をした。
なにを苛立っているのかと思えばそういう事だったのか。
そういえば、本音を語らないだの底知れないだのというのはそのまんまゼルガディスにも当てはまることだ。
とすると、「不安じゃないのか」と言ったアメリアの台詞は彼女の心境なのだろう。
アメリアはゼルガディスの心が見えなくて不安なのだ、そして苛立っている。
なんで解らないのか、解ってもらえないのか、と。
けれどその時気がついたのだろう、その彼よりももっと底知れない人の存在に。
人当たりは良いのにゼルガディスよりもガードが固い、ガウリイの存在に。
その底知れない奴の隣にへーぜんとした顔で立っているあたしをみてそして更に苛立った。
なんでへーぜんとしていられるのか、なんで解っているのか。
有り体に言えば嫉妬しているのだ、彼女は。
たぶん自分よりも想い人のことを理解しているあたしに嫉妬している。
くすすっ。
思わず笑いがこぼれる。
かわいいなあ。
その笑い声を聞きつけて、ぎぎぃっとアメリアは振り返る。
「なにが可笑しいんですか?リナさん」
私は真剣なんです!!そう言いながらもとの通りにベッドに寝っ転がり、リナを見上げる。
「リナさんはガウリイさんと旅してて不安に思ったことないんですか?」
「コイツはあたしの事どう考えてるんだろう、とか?」
「そうです!!」
我が意を得たり、という顔で肯くアメリアにリナは苦笑いを返した。
「思ったわよー何度も。どういうつもりであたしと一緒に居るんだろうかってね。「保護者だから」なんて言っても、命のやり取りを迫られるような場面に何度遭遇したか知れないこのあたしの保護者なんていつまでやってるつもりなんだろ、なんて思ったりね。」
「………」
アメリアは珍しく自分のことを語るリナを熱心な瞳で見上げる。
「あたしのことをどう思っているのか、あたしの気持ちを知っていて知らん振りをしているのは何でなのか。一時期、かなり泥沼な所までいったわよ、あたし」
「あたしの気持ち」なんて、普段のリナなら照れてしまってすんなり口にはできないであろう台詞。
リナに照れなく話をさせるほどにアメリアは真剣だった。
ここでごまかしちゃいけない、ちゃんと話してあげなきゃ、かわいい妹分がちゃんと乗り越えられるように。
ある一件で自分の気持ちに気がついてしまったリナは当然の行為としてガウリイの気持ちを知りたがった。
本音を覗かせない彼に、今のアメリアと同じように苛立ったりもしたものだ。
でもそうして見ていて気がついた。ガウリイはリナが思っているよりもずっと、――ずっとリナのことをよく見てくれているということに。
そして理解した、本音を覗かせないのは正にリナの為なのだと。
「どういうことですか?なんで本音を言わないのがリナさんの為なんですか?」
リナの飲みかけの香茶をもらって一口飲みアメリアは不思議そうに言う。
リナはふと笑む。
え……?アメリアは思わず目を見張った。リナはこんなに儚げな印象の少女だったろうか、こんなにあえかな雰囲気を湛えていたろうか。
「あたしが子供だから」
「え?」
「少なくとも、ガウリイはそう思ってるんじゃない?だから言わない、覗かせない。ゼルが何にも言ってくれないのも、たぶん同じ理由だと思うけど?」
「何で子供だとだめなんですか?」
今度は枕を抱えて不満そうに言い募る。
「本音って聞こえは良いけど奇麗事だけじゃないでしょ?ガウリイは思ってる。今のあたしにはまだガウリイの過去も本音も受け止められないだろうって。彼にとってあたしはまだ傷つけない様にひたすら保護するべき存在なのよ。」
少なくとも彼はそう思っている筈だ、リナは微笑んだまま言う。
「あたしを保護することで何かしら救われてる部分があるんじゃない?ガウリイにもさ。」
そうじゃなかったらこんなにも危険に愛されている小娘に、ついてきてくれる訳ないでしょうが。
やわらかな笑み。
「すぐに、その結論にたどり着けたんですか?リナさんそれでいいんですか?」
「結論にたどり着くのにはかなり長い時間が必要だった筈よ、あたしが意識してる時もしてない時もひっくるめてね。それと…このままでいいのか?ってことだったわね。ええと……今の所はこのままで良いと思ってるわよ。あたしを嫌いだから、信じていないから本音を語らないんじゃなくて傷つけない為に黙ってるんだもの。」
そうでしょ?言ってリナはもう一度微笑む。
そう言えばそうだ。嫌いだったら離れていけば良い。言い方は悪いけど本音を言いたくない程に嫌う相手だったらとっくにはなれている筈だ、本人も言っていたがまさしく「危険に愛されている」彼女なのだから。
半ばねむたげな表情で自分を見上げるアメリアから空になったカップを受け取ってサイドボードに乗せる。
そしてそのままベッドに腰掛け、瞼を落としかけた妹分の頭をなでつつ言い聞かせるように言う。
だからね、よーく観察しててご覧。そばにいてくれるって事は少なくとも嫌われている訳じゃないから。今までの戦いは信頼してない相手とでも勝ち抜いていけるような生半可なものじゃなかったでしょ?
「リナさんは……ガウリイさんが……自分から本音を見せてくれるのを…待って…る……です…ね…――」
リナは今や完全に眠りの淵におちたアメリアを眺めながら苦笑した。
毛布を引き上げてやりながら一人ごちる。
「待ってるんだけどねえ……抜き差しならない関係になるのはもう少し先でも良いかな、なんて思ったりもするのよ。あのね、アメリア」
眠る少女に。
「本音を語るって実はとても勇気が要ることなのよ?」
いつも本音で生きている感のある彼女にはわかりにくいかもしれないが。
口で語らなくても感じる、解る。リナを包み込むような想いが。
とりあえず今はそれで満足だ。
「別に抜き差しならない関係になってもいいんだけどね、あたしは。」
壁に向かってそう囁くと、自分も眠る為に隣のベッドに華奢な体を滑り込ませた。

――一方。
リナがアメリアに不慣れな恋愛講座など開いていたその後。
隣の船室ではすっかり寝静まったらしい隣室の壁に目をやりつつ、ガウリイとゼルガディスは顔を見合わせていた。
「感想は?」
「おまえこそ。」
船の船室を区切る壁はとても薄いのである。
つまり彼女たちの会話は、彼らに筒抜けだったことになる。
そのとき。
かたん。
隣室で物音。次いで軽い足音が甲板へ続く階段へと消える。
「ちょっと行ってくる」
やれやれ、といった風情で立ち上がり、背後のゼルガディスに声をかけた。
「行くって…どこへ」
「甲板にだ」
言い捨てて返事も待たずにさっさと船室を出る。
振り向きざまに一言。
「アメリアの不安も解ってやれよ。」
ゼルガディスは静かに閉められた扉にしばし呆然とした視線を送っていたが、ふと隣室の壁に目をやる。
「この俺にどうしろというんだ。」
言って溜息をつきつつ部屋を出ていった。

――甲板。
海を渡る風が手すりにもたれるリナの栗色の髪をやさしく揺らす。
海岸から遠く離れたここへは潮の香りももはや届かない。
縁の溶けかかった丸い月がリナの華奢な体にその光を投げかけていた。
一枚の絵の様に美しいその光景に、デッキに上がったガウリイはしばし言葉を忘れたように立ち止まった。
「――ガウリイ。」
気配に振り向いたリナは淡く微笑む。
止まっていた時が動き出す。ガウリイはゆったりとした足取りでリナの隣に歩み寄った。
「どうしたんだ?こんな夜遅くに。」
「うん…ちょっと眠れなくて…ガウリイこそどうしたの?こんな夜遅くに。酔い覚まし?」
手すりにもたれかかったまま軽く上目遣いに見上げてくる少女。その額を軽く小突いてガウリイは笑う。
「あれだけ大胆に誘っておいてそういう事言うわけか?」
「へー、やっぱりわかったんだ。」
「勘はいいほうでな」
悪戯っぽく笑んで舌を出すリナを目を細めてみやる。
会話が途切れ、並んで手すりにもたれたまま二人で風を感じていた。
溶け合ってしまうような不思議な一体感が辺りを包む。
手すりに頬杖を突いたリナは、やわらかな月の光にどこかとろりとした反射を返す波を飽くことなく見つめ続ける。
隣で手すりに背中を預けたガウリイはそんな少女を見つめていた。
子供、か…。自分の中に浮かんだ単語に思わず苦笑する。
月の光の中、どこまでももの憂げなリナは「子供」とかそういった類の言葉がいかにも不釣り合いに見えた。
白い月に浮かぶ月よりもなお白い少女。その姿はもはや子供ではなかった。深遠な表情を湛える瞳、華奢な中にも女性独特の丸みを帯びた肢体。
ふいにリナが囁く、波を見つめたまま。
「きれいだねー。」
「そうか?」
「そうだよ。」
「そうか…そうかもな。……きれいだもんな」
他愛ない掛け合いに応じていたガウリイの声の調子が変わったのに気づき、海面から視線を戻す。
淡い光さえも忠実に反射する蒼い瞳。その力に捕らえられてリナは身動きができなくなる。
「きれい、だもんな」
もう一度ガウリイが言う、リナだけを見つめて。
「な、なに言って…」
「オレの本音が聞きたかったんだろ?」
自分の呼びかけに答えない少女の頬に手を掛け、顔を覗き込む。
「ちがうのか?」
「そ…う、だけど」
ん?という顔をされてやっと答えが返る。
微かに脅えるような瞳。普段は強い光を放つ彼女の双眸も、今はどこまでも深く透き通った闇に溶けてしまいそうな、そんなあやうげな雰囲気を持ってガウリイを見つめていた。
リナの頬からするりと手が滑り落ち、そのまますいっと肩を抱き寄せた。
もう片方の手でそっと細い腰を引き寄せる。
肩に回した手で顎を持ち上げた。
「ガウ…っ」
封じられる反論。ややあってリナはそっとひとみを閉じた。
それを合図にしたようにさらに深く、深く口付ける。
「すまん。」
ガウリイは自分に体を預けて息を整えている少女にそっとわびた。
「なにが?」
少女の閉じた目が開かれ、瞳が覗く。
「オレが知らない間におまえは子供じゃなくなっていたんだな。オレはおまえが大人になるのを待っていたつもりだったんだが……逆に待たせていたみたいだな。すまん、リナ。」
「いいの。もう…」
ゆるく首を振る少女。
尚も言い募るガウリイ。
「でも……」
「いいの。待ちたかったの、あたしが。」
ガウリイが言えるようになるのを待っていてあげたかった。それまでは彼の心を癒す被保護者で、子供でいてあげたかった。
それは紛れもない本心。
そう告げるリナをガウリイは眩しげな瞳で見つめる。
「あいしてる」
そっと呟く言葉。言いたくて、言えなかった彼の本心。
「うん。」
リナは微笑む。ほのかなつきの光の下でもあでやかに輝くその微笑にガウリイはもう一度キスを送った。

おしまい

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

書いて見て思ったんですが、ガウリイは難しいです。
本音を語るガウリイってどんなんだ?!とか試行錯誤です。
リナとかゼロスとかはわりと行動パターンが読みやすいのに、ガウリイとかゼルガディスとかは
どう動くのか読み切れないところが、くくうってかんじでしたさ。
そういえば、リナとかアメリアはそうは思ってないのかしら?
なんて思ったところからこの話はスタートしてます。
しかし……なんだか消化不良気味ですねえ……。
うまく書ききれなかったなぁ……
ラブシーンて書いてるこっちが照れちゃて深く突っ込んでかけなかったし……。
なんで皆さん恥ずかしくなくかけるんでしょう、不思議です。

ああっ誰かガウリナのうまい書き方を教えて下さいぃっ!!
                ――それとも企業秘密なんでしょうかねぇ。
                            綾香 拝

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7384Re:船上にてP.I E-mail 8/6-02:54
記事番号7383へのコメント

綾香さん、はじめまして。P.Iと申します。
ガウリイ&リナというと、子どものリナの成長をじっと待ってるガウリイというイメージが強かったんですが、TRY後にはリナも立派に成長していたんですねぇ。
逆にガウリイの事を見守る余裕の出てきた大人なリナ、とても新鮮でステキでした!ようやく対等な立場に立てた二人の行く末が気になります。
ガウリナの上手な書き方?十分じゃないですか〜。また書いてください。
それでは。

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7407多謝!!三剣 綾香 8/7-11:26
記事番号7384へのコメント

P.Iさんは No.7384「Re:船上にて」で書きました。
>
>綾香さん、はじめまして。P.Iと申します。
はじめまして綾香と申します。
コメントありがとうございます!!

>ガウリイ&リナというと、子どものリナの成長をじっと待ってるガウリイというイメージが強かったんですが、TRY後にはリナも立派に成長していたんですねぇ。
>逆にガウリイの事を見守る余裕の出てきた大人なリナ、とても新鮮でステキでした!ようやく対等な立場に立てた二人の行く末が気になります。
実はこの話をかくまえは私もリナが成長するのを待つガウリイの図しか持ってなかったんですけど、あの賢いリナが何も考えてないって言うのはないんじゃないか?!
なんて思い立って書いて見たんです。子供だって意外なところをよく見ているものですもの。
できればリナの葛藤部分が書きたかったんですけど今回は断念しました。
葛藤ってラブシーンよりもむつかしーです。

>ガウリナの上手な書き方?十分じゃないですか〜。また書いてください。
おおっ!!ほんとですか?!うれしいです!!
ありがとうございます。個人的にはもうちょっとラブシーンとか照れなく書きたかったなあ、なんて思うんですけどね。要努力っちゅーかんじですねえ。

>それでは。
はい、記憶が薄れる前に(笑)またお会いできると良いですねえ。

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