◆-スレイヤーズSTS第1話ついに完成-猫斗犬(9/15-15:58)No.4581
 ┣1−1-猫斗犬(9/15-16:01)No.4582
 ┣1−2-猫斗犬(9/15-16:04)No.4583
 ┣1−3-猫斗犬(9/15-16:06)No.4584
 ┣1−4-猫斗犬(9/15-16:09)No.4585
 ┣1−5-猫斗犬(9/15-16:13)No.4586
 ┣1−6-猫斗犬(9/15-16:16)No.4587
 ┣1−7-猫斗犬(9/15-16:18)No.4588
 ┣1−ラスト-猫斗犬(9/15-16:20)No.4589
 ┃┣Re:1−ラスト-秋永太志」(9/15-22:16)No.4593
 ┃┃┗…う…もうコメントが…-猫斗犬(9/16-09:19)No.4602
 ┃┣2話目を楽しみに-たんか(9/16-20:31)No.4612
 ┃┃┗おおう…仲間や!-猫斗犬(9/17-09:36)No.4637
 ┃┗Re:1−ラスト-MONAKA(9/17-00:31)No.4629
 ┃ ┗うるうる…こっぱずかしいですう…-猫斗犬(9/17-09:38)No.4638
 ┗スレイ〜STS第2話・開始-猫斗犬(9/20-16:06)No.4728
  ┣2−1-猫斗犬(9/20-16:09)No.4729
  ┗2−2-猫斗犬(9/20-16:12)No.4730


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4581スレイヤーズSTS第1話ついに完成猫斗犬 E-mail 9/15-15:58

 はい、長らくお待たせしました(ハート)
 『スレイヤーズSTS』第1話。
 サブタイトル 
  ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”
 ついに完成です!!!
 …っえ?やっぱし待ってない?…しくしく…

 ……………………………
 …って前にもこんなネタやっていたような…
 ……………………………
 …まっいいや!気にしない、気にしない。

 前回、中編を掲示し、『スレイヤーズしゃどう』、そして『BOOKクエ
スト』を掲示してから1ヶ月……1ヶ月?
 …あ、あかん…ホンマに待たせ過ぎたかもしれへん……いや…それよりも
待っていてくれた人がいてくれたのかどうか……

 ……う゛……考えるのは止めておこう…

 ま、まあ、それだけ、時間がかかったのには訳があるんやけど…いいわけ
はしまへん!ホンマにすんまへん!!!!

 さて、それだけ空白があいてしまったと言うことはやはり前編や中編も忘
れてしまっているっと言うこともあるでしょう。

 そこでその二つも再掲示する事にしやした。

 前編は1−1に、中編は1−2に………ってことは1−3〜1−7、そし
て1−ラストって全部後編?前編や中編に比べて6倍以上の長さ……
 ………………………………
 ………………………………
 …自分で書いといてなんだが…後編だけ長すぎんとちゃうやろか…
 ………………………………
 ………………………………
 ………………………………
 …ま、まあ…いいか…っと言うわけで(何が?)…

 第1話お楽しみ下さい!!!!!

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45821−1猫斗犬 E-mail 9/15-16:01
記事番号4581へのコメント
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 『スレイヤーズSTS』
  第1話 ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”1回目
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**** TATUYA ****

 ずううぅぅーん!
「ちいっ!」 
予想外の衝撃に、チェアから壁に跳ね飛び背中を打つ。
そこにすかさず電子で作られた女性…アインの声がオレに向けられる。
<警告。確認未定のミサイル4。Dブロック1被弾。Dブロック隔壁閉鎖>
「じょ、状況は!?」
 背中の痛みをこらえながらオレがいうと、それに答えるようにメインスクリー
ンの片隅に船体図が表示され、被害部が赤丸で囲まれる。反対側にはミサイルの
線図。
<右尾翼予備エンジンルームに火災。消化開始。ミサイルの形式143型αと判
明。1、艦底を通過。のこり2…>
「…143型α…くそっ…あいつの仕業だな。なぜ事前に察知できなかった、ア
イン」
<周辺の隕石群内にランチャーをカモフラージュしてたようです…残り2基。上
空を通過。火災消化完了>
「よし、すぐにここから離脱。またミサイルを食らうのはごめんだからな」
<了解。緊急離脱>
 エンジン出力メータが赤々と灯り、
 ぐうん!
 船のエンジン全開をしらせると、
「うぎいぃやあぁっ!」
<…あっ……しまった……>
 いきなしとんでもねえ強力なGがオレを襲った。


 数秒後──
 どおおぉん!
 後ろから前へと押し出す激しい衝撃がオレの体を突き飛ばし、そのまま床に顔
から落ちた。
<……えっと……地域離脱完了し……たんだけど……達也生きてますう〜>
 すこしおびえの入った声が部屋内にいるオレにかけられる。
「……」
<…達也…>
「……」
<たっつやくうーん…あり?>
「……」
<おおーい、もしもーし>
「……」
<おうおう…シカトかい、にいちゃん>
 つり上がったサングラスをかけ、デホォルメバージョンの可愛いアイン…オレ
が乗っている船…がメインスクリーンの中央に表示される。
 しかもたばこを吹かし正面を人間の顔に見立て、ちょうどほっぺた辺りに×の
傷跡を付けると言う凝り性。
<うーむうぅ…死んだかな…惜しい人を無くしたものだ。なんまんだぶナンマン
ダブ>
 ぽく、ぽく、ぽく、ぽく…
 またまたモニターに、今度は手がはえたアインが木魚をたたく。サウンドス
ピーカーから音声まで流してるし…
「…勝手に殺すな…」
<ちっ、生きてたか>
「なんだ、そのちっ、てーのは」
<…別に…>
 アインの場合、飛行速度は最高で音速を超えることが出来る。
 もちろんそれには物凄いGがかかるわけで、その問題を解決するために重力を
緩和する装置はちゃんと備わっていたのだが…
「…てめぇ…またやりやがったな…」
 …ぼそっ…きっちり、ちゃっかり、忘れてしまっていたようである。
<…あ、あははははは…>
 笑ってごまかそうとしているアイン。
 今は真っ黒で何も映っていないそのモニターには一滴、大粒の汗が流れる…も
ちろん映像でしかないが…
 彼女はオレの相棒で名をアイン。
 正式名を201型感情登録知性体DWSMM(ディダブルストゥーエム)変船
『アイン』。
 縦幅48メートル、横幅15メートル、総重量42トン、矢尻型の形をしたブ
ルーメタリック色…この色はアインの趣味&ラッキーカラー(機械にもラッキー
カラーとかってあっていいんだろうか)…の中型宇宙船。
 現在は船と一体になっているため姿を見せていないが、船外では20前後の人
型(女性)アンドロイドボディで行動をとっている。
 性格はお茶目でいたずら好き。
 過去、キレた…ぷっつんした…回数多々。
 これさえなきゃいいやつなんだが…
 趣味は、機体にはデリケートに撤し、くもり一つないボディにうっとりするこ
と…趣味と言うのかな?これ…
 オレ、田中達也。
国家認定・次元セキュリティ会社『S.T.S』──のトラブルコンサルタン
トである。
次元は科学の発展した近未来(21世紀中旬)。この世界の一人の科学者が異
次元航行を可能にした。
そしてそのテクノロジーの発展により、さらなる発見もあった。
それは『魔族』の存在────
魔族は異次元と異次元との境目に発生する磁場の中に生息する種族たちである。
元々、彼らは各世界の微妙な歪みを回復させる種族(以下、純魔族と呼称)
だったそうだが…と、いってもぴんとこない者もいるだろう…
…えーと…ようするに……一つの次元の存在はメビウスの輪みたいなものだと
思ってくれればいい。過去、現在、未来すべてが一つの道につながりそれが一つ
のメビウスの輪。その輪の中で時間がぐるぐる回っているのだが、その時間が何
度も何度も回り続けると少しずつずれが生じてくる。例えばどんなに精巧にでき
た時計でも必ず遅れたりするだろう。それが次元の歪みになるんだ。
さて、話はそれてしまったが、とにかく彼らがその歪みを治しているのだが…
人間同様、悪いやつはいるものでその仕事をほっぽりだして、いろんな世界でい
たずらをするものもいる(以下、不魔族と呼称)。
たとえば無理矢理神隠しを起こしたり、ある世界でやりたい放題あばれまくっ
たり、神になったり魔王になったり…等々…ちなみに似たようなことをする人間
達もいる…
 最近、そういう奴らが増えてたりする影響のため歪みがひどくなり、異次元と
異次元とをつなぐトンネル(通称インフェイルホール)…俗に言う神隠しやタイ
ムトラベルとかの原因…が自然に開く回数が増えるつー厄介なことまでおきるし
…そこで、始まったのが国家認定・次元セキュリティ会社『S.T.S』──
実はこの会社、国家認定だけのことはあり、どんなところでも強制捜査がで
き、警察からの介入もシャットアウトできる。つまりは国家権力なみの力を持っ
ていることになる。ただ、多種多様の次元が存在するため、力が及ばない場所も
あるのだが…
この会社のメインは魔族や人間たちによる次元を狂わせる犯罪者の逮捕、およ
び歪みの修正処理…と言ってもこの魔族ってーやつは、頭はいいは、人間たちよ
りも体が丈夫やら、長生きやら、おまけに魔法まで使えるときた。
そんなんこんなで、普通の人間が奴等を捕まえられるのかっつーとはっきり言っ
て無理。それを会社は各次元からの対抗しえる者たちをスカウトし…魔族専属の
トラブルコンサルタントで…彼らと対抗した。
 ちなみに、S.T.Sとは『星とセキュリティ』の略…と言うのが、おもて
じょう、組織の定説だが、実は”stange to say(不思議なことに
は〜)”の略であるとも聞いている。
「…………」
<…………>
 しばらく、沈黙が続いていた。
 次々とモニターに増えていく汗。
「……でっ……」
 沈黙を破ったのはオレ。
「…ゼオのヤツの居場所はちゃんとつかんであるんだろうな…もし逃してたら、
オレはその辺に転がって火炎球、ぶっ放しまくるぞ」
<きゃーだめだめだめだめ。達也、お願いだからそれだけはやめて(泣)………
ちゃんとトレースしてあるから。ゼオがここの世界にある、一つの星へと向かっ
ってったのを確認しているって>
 その言葉と同時に泣きじゃくるアインの姿。
「その星ってーのは?」
<ここから120光年離れた星。達也の世界と同じで魔法が存在してるのね。科
学はそれ程発展していないようだけど…14世紀辺りの世界じゃあしょうがない
か。えっと…神の名前は赤の龍神・スィーフィード。魔王は赤目の魔王・シャブ
ラニグドゥっと…>
「ゼオはそこに何故向かったんだ?」
<それは特定不能ね。昔の彼だったら高い確率で特定することができたけど…現
在のゼオの情報は一切ないひ…>
 …ふむ…
「じゃあ、一番高い確率は?」
<9パーセントで魔王を吸収すること>
「…9か…ヤケに低いな…」
<チーフに連絡を入れておく?休みをくれーってコメントつきで…>
「…んなもんはいらんって…それに、この任務は極秘行動だぞ」
<そんな情報、記憶メモリからすでに消去してまーす♪>
「こらこらこらこら…」
<まあ、まあ、いいじゃないこのぐらいの娯楽。それよりどうする?>
「…こ、このぐらいの娯楽って…」
モニターにはゼオが向かったとされる星が映し出されている…地球に似ている
な。
「…アイン、ゼオに気付かれずにその星へ行くとしてどのくらいの時間がかかる」
<2時間25分23秒>
 2時間ほどか…
「じゃあ、とりあえず向かってくれ。後は……情報の収集とお金の用意。オレは
トレーニング室に行ってくる」
<…了解……てっまた、あれの特訓なの?…>
「…ああ…」
<あんまり無茶はしないでよ…>
「お、珍しいな。心配してんのか」
<当ったり前よ。達也が無茶するとあたしのボディに傷が付くんだからね!>
 アインはきっぱりはっきり言いきった…右手を握り締めたアインがモニタに…
「……そうか……じゃあ、無茶するとしよう……」
<……だから…それだけはやめて……お願い……ぷりぃーじゅ〜……>
 再び泣きじゃくるデフォルトアインの姿が。
 そして船は一つの星へと向かう──




**** RINA ****


「爆煙舞っ!」
 ぼぼぼぼぼぼおおぉぉーん!!
 あたしの口から紡ぎ出された呪文が発動し派手な爆発音と煙が上がり、
「ひ、ひいえぇーーー!」
 ずざざざざ…
 その見た目の派手さに驚いたか、乾いた悲鳴を上げ、周りの連中は慌てて後ずさ
る。その中の一人が叫ぶ。
「な、なななな…なんだ、てめえは!」
 …ふっ…
 あたしは1つ含み笑い。やはりどこの盗賊だろうとあたしが登場するたび、どこ
でもここでもあそこでも、セリフが決まっている。
 あたしは、ふさっと赤に近い栗色の髪をかき上げると、
「誰が言ったか騒いだか、天才美人魔道士と言われるこのあたし…」
「…いや…おれが思うには…恐れおののいた…という方が似合うと思うんだが」
「ふんっ!」
 めしっ!
 問答無用の左アッパーが、あたしの横に立つ見るだけなら美形な兄ちゃんの顎を
見事にとらえ、彼は勢い宜しく吹き飛ぶ(ちなみに盗賊の方へ)
「いてー、いてー!リナ!なにすんだよいきなり!!」
「やっかましい!せっかく人が格好よく登場している所を、妄想こみのつっこみで
ちゃちゃを入れるんじゃないの、ガウリィ!!」
「…妄想って………リナっ!」
「なによ…」
「…妄想って…何だっけ?」
「炸弾陣!」
『どうわあああぁぁぁー!』
 吹き飛ぶガウリィくん…ついでの盗賊ご一行様…であった。


「う〜ん(ハート)久しぶりにいい収入したわあ」
 ほくほく顔であたし達は…ガウリィは多少、呆れ果てた目であたしを見てはいるが
…帰路へと進む。
 もうこれだけ言えば解っていただけるだろう。
 そう、盗賊・い・じ・め(ハート)
 魔法を問答無用でぶっ放せて、懐は暖かくなる。しかも今回は依頼込みでの盗賊い
じめだから一石三鳥てーやつなのよ。
「…すごく嬉しそうだな…リナ…俺まで吹き飛ばしておいて…」
「あったり前じゃない(ハート)それにガウリィを飛ばすのはいつもの出来事だし…」
「…………」
 呆れ顔であたしの横を歩いていた、自称・天然おおぼけ剣士、及びあたしの保護者、
ガウリィ=ガブリエフはとりあえず沈黙した。
 金色の長髪に整った顔立ち。一見、気の良さそうな兄ちゃんだが、実はただたんに
何も考えていないクラゲ兄ちゃん。
 こんなんでも光の剣の戦士の末裔で、半年前までは光の剣を持っていたりしてたの
だが、どこで捨てたか忘れたか…いや、ホントはある人物に返しちゃったんだけど…
今は持っていない。
 てな訳でしばらくは彼の剣を探してうろちょろしてたんだけど、これがまたなかな
かいい剣が見つからない。
 やっとこさ、最近になって無銘の魔力剣を2つ見つけたのだが…逸品とはいえ光の
剣ほどの物ではないだろうし…ある一つは…レッサーデーモンあたりを難なく切り倒
せるのにゴーストあたりが倒せない…普通は逆だろ!…つー訳のわかんない代物だっ
たし…なんだかねぇ〜
 さて………そしてこのガウリィと並んで歩く絶世の美人。世紀の天才美人魔道士リ
ナ=インバース…18にもなって『美少女』じゃあ、なんかこっぱ恥ずかしいから
『美人』に変更…
 誰が言ったか怯えたか………『盗賊殺し』……や……『ドラまたリナ』………とも
……呼ばれいる。
 …が、実は最近『魔を滅する者(デモン・スレイヤー)』と言う名で呼ばれ初めて
たりするのだ。
 しかもその呼び名を広げたのが、何をかくそうあのアメリアだったりするわけなん
だなこれが…
 半年ほど前にダークスターとの戦いを終えて、王宮に帰宅したアメリア。そのとた
ん、王宮に使える者達に今までどこに行っていたのかと追求されたのだ…ようするに
連絡をおこたっていたのね、あの子は…その前に連絡の方法がなかったと思うし…そ
れに港町を破壊してそのまま逃げたからなあ…あえて誰のせいだかは言わないけど。
 そして、その執拗な追求についこらえきれなくなったアメリアは話してしまったの
だ。あのダークスターとの戦いのことを…しかもあろう事か…調子に乗ってガーブや
フィブリゾの時の戦いまで話す始末。
 と、言うわけで今やあたしは…いや…あたし達は…ガウリィとゼルガディスも…一
躍有名人になってしまったわけである。
 ……………目立ってるだろうな……ゼル……特徴ありありだし……今頃、「…目
立ってる…目立ちまくっている…」とかぶつぶつ言いながら、あっちの世界に行っ
ちゃってるとか…
 …ガウリィは……ちらっ…ガウリィの顔を見てみる……相変わらずのほほんとした
顔………多分、なんも解ってないな…
「…それにさ、これからは当分、盗賊いじめ出来そうにないし…このぐらいあっても
いいじゃない」
「…ああ…えっと……やっぱりセイルーンにいくせいだからか…」
自信なく言うガウリィ。
 そうあたし達は今、セイルーンへと足を運んでいる。セイルーンの近くでは盗賊な
んぞほとんどいないから…盗賊いじめができる今のうちに懐を暖めておかなければい
けないわけ…ちかっても、向こうではストレスがたまりそうだから今のうちに発散さ
せておこうと言うわけではないからね…お願い、信じて(ハート)
「…そういや…リナ…アメリアにあうの何年ぶりだけか?」
 …おい…
「…ちょっと…何言ってんのガウリィ。アメリア達とわかれてからまだ半年しかたっ
てないでしょうが!」
「…え?……そうだっけか?」
 …ったく…
「…で、セイルーンに何しに行くんだ?」
 ずべしっ!
「…どうしたんだ?リナ」
「このクラゲ!3日前、連絡が来たとき散々話したでしょうが…セイルーンのエルド
ラン先王が亡くなって、フィルさんが即位することになった。そこで是非ともあたし
達にも即位式の出席をお願いしたいって!アメリアから!!」
 その言葉をきいて、ガウリィはぽんと手をたたくと、
「おお〜そうだったそうだった、覚えてる覚えてる…」
 これである…さっきまで忘れてただろうが、あんたは…
 たぶん、この連絡はゼルにも届いているんだろう…あの子が一番合いたがっている
人だと思うし…
 この連絡によって、今回の即位式はかなり盛大な式になることは明白だ。
 なにせアメリアの友人であり、フィリオネル新王にも面識があり、かつてのお家騒
動での尽力な功績…まあ…ちょぴっとセイルーンのある一角を吹き飛ばしちゃった事
もあったけど…
 それにもまして──
今や『魔を滅する者』として名を発している大魔道士である、このあたし。
 そして『魔を滅する者』の相棒であり、なおかつ『光の戦士』の末裔であるガウ
リィ。
 『魔を滅する者』と共に戦った魔剣士にして、あの五大賢者の一人・赤法師レゾの
血を受け継ぐ者、ゼルガディス。
 ──という、ネームバリューバリバリの3人が出席するとなると、即位式に箔がつ
くてー物だ。
「けどよ…リナ」
「うん?」
「アメリアのヤツ。おまえさん見たら驚くんじゃないか。背、伸びたもんな」
「うん、まあね……」
 この時期があたしの成長期だったのか、アメリア達とわかれて急に延び出した。
 前までのあたしはガウリィと比べると彼の胸よりちょい下ぐらいだったが、今では
ガウリィの肩にまでに達している。
 たった半年でここまで延びるなんて、はっきし言って思ってもいなかった…
 まさか、呪いでもかけられたかな…あっ!もしかしてマルチナの仕業…
「けど…あいかわらず胸はぺったんこだ…」
 ずべしっ!
「色気もないし…」
 お、おにょれ、ガウリィ。
 その後、怒りをやどしたあたしがどの様な行動をとったのかは言うまでもない。


 ざわっ
 あたしたちがセイルーンのある飯屋に入ると、店の中にいた連中がいっせいに振り
向きざわめきだした。
 その顔にはある種の驚きの入った表情。全員が全員、あたし達二人を見ている。
 …ふっ…さては美男美女のカップル…いかに頭がスライムでもガウリィはハンサム
の部類…に目を奪われたか……
『…なあ、似てないかあの二人…』
『…ああ…似てる似てる…』
 ……って…かんじとはちょっと違うな…はて?いったい、なんだろう?
 手配をかけられたときの雰囲気にも似てるが……けど…ここセイルーンであれば、
あのアメリアの目に真っ先に止まり「こんな手配書、嘘です。正義の仲良し4人組が
こんなことするはず…いや…リナさんなら何となく…いえ、やっぱりあるわけありま
せん」とか何とか言って手配書を破り捨てると思うし…途中の「リナさんなら何とな
く」って所、ホントに言っていたら体裁を加えておかなければ…
「さあ〜て、メシメシ。おいリナ、あそこの席が空いてるぞ」
 そんなことにはミジンコ並にも気付いていないガウリィは、鼻歌交じりでさっさと
指さした席にへと足を運ぶ。
 ざわざわざわざわ…
 更に店内が騒ぎ始めた。
『……リナ?……』
『……まさか……』
 ……はて?……ま、いっか……考えてもしょうがないし…それよりご飯ご飯…ん?…
「あ〜こらっガウリィ!あたしをさしおいて先に注文してるんじゃない!!」
 …いつの間に席についた…言いながらあたしはガウリィのいる席に慌てて…
 どおぉぉぉぉっ!
『…ガウリィ…』
 店内に更なるざわめきが起こる。
 なんだなんだなんだなんだっ!
 あたし、なんか変なこと言ったか?
「え〜っと、とりあえずオレはこのチーズあえ平目のムニエルを4人前に…」
 にこにこ顔でウエイトレスのねーちゃんに注文を続けるガウリィ。
 …をひ…これだけ騒がれてもまだ気付かんのか、おまいは…
「…………」
「…あれ…お姉さん聞いてる?」
「…え?…あっ…す、すみません。えっと注文は…」
 この姉ちゃんガウリィの注文聞いてなかったのか?ぼーっとしちゃって…もしかし
てガウリィに見とれてた?
「…………」
 ……ああ〜っ……なんかむかむかしてきたぞ……
 席につき、ガウリィの注文の後にすかさずあたしも…多少無骨な表情で注文を入れ
る。
「…は、はい…ご、ご注文は、い、以上で…えっと…」
 なんかやけに緊張しまくっているウエイトレスさんである。
 むかむかする胸がいっそうひどくなる。
「…………」
 注文を聞き終えてもまだそわそわしながら無言で立ちつくしている彼女…あのねぇ
…さっさと厨房に行きなさいよね…
 ごくっ
 姉ちゃんが喉をならすと、
「あ、あの…す、すみません。じ、実は一つ、お尋ねしたいことが…」
『?』
 ウエイトレスの姉ちゃんが息咳きって口を開く。
「お二人方はもしや、リナ=インバース様とガウリィ=ガブリエフ様では…」
『え?』
 あたし達はそのセリフにしばし呆然。
 そして沈黙──
 店内にいる全ての人たちがあたし達の返事に注目しているみたいだった。
──手配書──いや、なんか違うか…あたしはありありといぶかしげな表情をしな
がら、
「…ええ…………そだけど…」
「ああ…確かに俺はガウリィ=ガブリエフだって…なあ…リナ。俺たちこの人と合っ
たことあるけか?」
「ないわよ」
 おおおおおおぉぉぉぉっ!!!!
 そのあたし達の返事に、この店に入って一番大きなざわめき…いやもうこれは歓声
と言うべきか…そして津波宜しくほとんどの人たちがこちらに押し寄せ、あたし達の
席を中心に囲い込んだ。
「…あわわわわわわわ…」
「ななななな…なんだなんだなんだ!リナ!いったいみんなどうしちまったんだ!」
「…あ、あたしが解るわけないでしょ!」
 一人の女性があたしの目の前にまで顔を近づけ…なにかその目は微妙に潤んでいた
りする…
「あああああ〜ほ、本物のリナ=インバース様。あたしもう感激ですう〜」
 と言いながら手を胸元で組む…
「…あ…あのおぉ…」
「…あぁぁ〜…もう死んでもいい…」
 …あっちの世界に行っちゃってるよお…
「え?なんだ…」
 一人のがたいのいい傭兵らしいオッちゃんがガウリィの肩をたたき、それにガウ
リィは反応していた。そして、
「うおおおぉぉぉぉぉおー!光の剣士様に俺さわっちまったよ。俺、もうぜってい手
を洗わん」
 肩をたたいたその手を天にかかげ、涙流して吠えまくる。
 いや、一生洗わないってのはどうかと思うよ、あたしは。
「くうううぅぅぅぅ〜やっぱしリナちゃんは可愛い〜」
 …え?か、可愛いって?
「ほんとほんと、すげー可愛いー!」
 なんか次から次と見も知らぬ男どもが、あたしを見て「可愛い」という単語を連発
してくれるが、この勢いに押されて何が何だかもう訳がわからない。
「リナ様、ガウリィ様」
 あ…ウエイトレスの姉ちゃん。
「あたしお二人方の大ファンなんです」
 え?大ファンって?…いや…ちょとまて…いくらファンだからとはいえ、あたし達
の顔を知ってる風なんだけど…どこで知ったんだ、おまいら…
「何いってんのファンていうのはねえ、プロマイド全シリーズに写真立て、等身大ポ
スター、なんかを全て揃えていなけりゃだめなのよ!」
 と彼女の反対側にいた女性が言う。
「そのくらい持っています!!」
 プ、プロマイド?写真立て?等身大ポスター!!…をひをひ…なんなんだそひは…
「ふっ、あまいな…」
 いつの間にかあたしの隣の席に座っていた一人の男が髪をかき上げながら言い、一
本のバラをあたしへと差し出す。
…あ、どうも…
「…私ならそれに限定品の4人全員が書かれた超特大ポスターに、今では入手困難な
ぴこぴこリナちゃんを加えるがね…」
 …げ、限定品…超特大…ぴこぴこリナちゃ…あ!これはかすかに覚えが…
 ……てっんなもんはどうでもいいよの……これって一体全体、なにがどうなって
んのよーーーー!!!!



 既に日は沈み、街の店にはちらほらと灯りがつきだした頃である。
「…ぜい…ぜい…ぜい…ぜい…な、何とか逃げ切ったわね…」
「…な、なんとかな…」
 あたしとガウリィはとりあえず街の裏道で珍しくへばっていた…………それに……
………………

 ご飯食べられなかったのよー(泣き)

 どっぱーんっ!
 津波をバックに涙流しつつ拳を握りしめるあたし。
 ……むなしい………ううううぅぅぅっ……お腹しゅいたよおおぉぉぉ………
 あの後、あたし達は延々と1時間、ファンの人たちに握手を、サインを求められた。
 いつものようにあたしが呪文の一つ唱えて沈黙させればいいのだが…いや…一様、
3、4回ほどやってみたんだけど…ただあたしたちがここにいますよーって知らせて
いるだけのようで、魔法で黒こげになった人数の3倍が別なところからやって来て増
えてしまうだけだった…
 そこで否応なしにあたしとガウリィはその場から退散したわけ…そして3時間後…
その間中、ファンというやからに追いかけ回された…そして今に至る。
 …くそお…なんかよく考えたらあたし達が何で逃げなきゃならないのよ…だんだん
腹がたってきたぞ…
「しかし…どういうことなんだ…あれは…」
「…さあ…」
 少なからず、あそこの食堂で聞いたことは…あたし達4人(あたしにガウリィ、ア
メリアにゼルガディス)のプロマイドに写真立て、ポスターにゴーレム印の『ぴ
こぴこリナちゃん』シリーズ、リナちゃん・アメりん・ガウくん・ゼルやんの各種大
中小のぬいぐるみ、子供達に大人気・『爆裂戦隊・ドラグレンジャー』の人形&変身
セット(なんじゃ…そりは…)……etc,etc…
 それに加えて…「リナ様がお書きになられている自英伝。毎週欠かさずに読んでい
ますわ!」………って……あたしはんなもん書いた覚え、ないぞ…
「なんなら僕が教えて差し上げましょうか」
 その声に慌ててあたし達は声の方へ振り向く。その先には上空でたたずむ黒影一
つ。そいつは──
「お久しぶりです。リナさん。そし…」
 いつも絶やさぬにこにこ顔に──
「炎の矢」
──黒髪のおかっぱ頭──
「…てガウ…わわわ…」
 ちいいぃぃぃー…よけたか…
──そして黒い神官服を──
「…ち、ちょっと、リナさん、いきなり何をするんですか!」
 ──まとった獣神官ゼロスだった。
「あ、気にしないで(ハート)たんなる憂さ晴らしだから」
 あたしは手をぱたぱた仰ぎ、
「…あのですねぇ…リナさん…僕のこといったいなんだと…」
「たんなるマト」
 きっぱり言い放つ。
「…しくしく…」
 その辺の家の壁に『の』の字を書くゼロス…いじけるなよ…
 この一見、何が楽しいのかわからんくらいに、四六時中にこにこ顔の兄ちゃん。こ
う見えても赤目の魔王の腹心、獣王ゼラス=メタリオムに仕える高位魔族である…ち
なみに強引な交渉にはめっぽう弱い。
「…ゼロスいつまでいじけてるんじゃないの…それよりも…さっき、なんか教える言っ
てたけど…あんた、この騒ぎの原因知ってるの?」
そのあたしの言葉に何事もなかったかの様にすくっと立ち上がったゼロスは…やっ
ぱひ嘘泣きかい…
「ええ…実はですね…」
「お待ちなさい!!」
と言いかけたゼロスの声をふさぎ、朗々と響く──

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45831−2猫斗犬 E-mail 9/15-16:04
記事番号4581へのコメント
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 『スレイヤーズSTS』
  第1話 ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”2回目
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**** RINA ****

「ええ…実はですね…」
「お待ちなさい!!」
と言いかけたゼロスの言葉を遮るかのように朗々と響く──
………やっぱし出たな………鉄筋コンクリート……
「悪があるとこに正義あり!正義があるから世は平和!」
上を見上げれば、人1人。眩しく輝く太陽を背に屋根の上で何か叫んでい
る。その顔は影がかかって見えないが…金色の長い髪が風に揺らめく………
あれ?金色の長い髪?
「…世にある悪を滅するため……ため……えっと……何だったかな?…」
そう言って彼女は懐から何かしらの本を取り出した。
…ぺらぺらぺらぺら…(ページをめくる音)
「………心の…闇を…懲らす…たあ…め…っと…」
その本を読みながらぎこちなく朗読する…誰だあれ?
「…なあ…あれってアメリア…じゃないよなあ…」
「おもいっきし違うわ」
声も違うし、結構背も高いし…
「…天に代わってあたひの裁きを受けなさい!」
ぽひっ!
彼女が本を投げ捨てる。
 それがあたしの足下に落ちてくる………その本にはアメリア名言集と表紙
に書かれていた…
「とおうっ!」
掛け声一発、屋根から飛び降りる。
 その時、あたしは呆れながらこりこりと頭をかき…屋根から飛び降りた彼
女が空中の3分の1で1回転、後は着地へいく──そこへすかさず。
「炎の矢」
「火炎球」
ぎゅおおーん!じゅぐおぉおがびごしゃ!
どごがぎゃあぁん!
「ぷぴぎぃやあーー!」
あたしともう一人が放った攻撃魔法を食らい、その人物は悲鳴を上げ、
ぺちっ…
地面と同化──
「…お、おい。リナ。今のはちょっとひどくないか」
青ざめて言うガウリィ…ちょっとなのか…
「だあってぇ〜こういうシュチエーションに1回だけでも茶々入れてみたかっ
たんだもん…アメリアじゃあ絶対抗議がかえって来るし…」
「アメリアじゃなくても抗議されるって…」
「さすがリナさんですね、容赦がありません」
「…なによ、そのさすがってーのは…」
あたしはぎろりとゼロスをみすえる。
「…あ…いや…えっと…あの…」
「…それにあたしは炎の矢しか使ってないわ…」
「それでも十分ひどいと思うが…」
「びえええぇぇぇー。いたいーよおおー」
うわ!もう復活した…こういうやつって全員、体が丈夫なのか…
「…なら…よし…ここでもう一度火の矢でとどめをあげて…」
「…リナ…悪人かお前は…」
ガウリィが突っ込む。
「…お気に入りの洋服がすすだらけですう〜」
なかなか珍しい服…今のをくらってすすだらけ?…普通はボロボロになるだ
ろ…を眺めながら1人明後日の方をむく彼女。
年の頃は二十歳前後か…あたしと似たような癖を持つ金色の長髪。なかなか
の…いや…かなりの美人である…胸は…結構あるな…くそっ…やっぱし…もう
一度、炎の矢で…
「…ほお…そうかほうか…まだそんだけの余裕があるなら、もう数発くらって
も大丈夫そうだな…」
奥の方から一つの男の声が彼女にかけられた。
「…どきしーん…」
何じゃ、その「どきしーん」ってーのは…
男…いや少年が現れる。
年の頃は14、5か…黒髪で女の子みたいなショートカットの髪型。結構細
身の体格だが、要所要所が鍛えられているし、弱々しい雰囲気も感じられない。
顔は…女の子?と疑問に思える程の美少年だったりする。
青に紺が混ざった少し暗めのズボンに真っ黒なアンダーシャツ。そしてシャ
ツの上にボタンがごじゃごじゃとくっつく、ズボンと同色の服を羽織っている。
こちらもまた彼女と同じく珍しい服と言えよう。そして……
「………あ…あははははは…た、達也じゃない…偶然ねぇ、こんなとこであえ
るなんて……」
「言う事はそれだけだな…んじゃそういう事でもうイッチョ…ファイヤー…」
「…きゃー!!ちょっとまって、ちょっとまって。あたしが悪かったです。誤
ります。ごめんなさい。ついつい、ボディ磨きに夢中になってゼオのトレース
を忘れていました。すみません!ゆるしてっ!お願い(ハート)」
 早口で平謝りする彼女。白旗もふってたりするし、最後には「アブラカタブ
ラ」…とわけのわかんないことをぶつぶつ唱えてたりするひ…
「…………」
「ね、ね、ね、ね(ハート)」
 両手を眼前で合わせ片目をつぶりながら言う彼女に、
「…やだ…」
 少年一言。
「…え…」
「…つー訳でさらばだアイン…火炎球!」
ぶどおぉぉぉーん!
少年の放った一撃は、彼女を中心に紅蓮の炎と化した。



「…あんた誰…何もんなの…平謝りする人物に容赦のないその攻撃魔法…」
「リナさんも似たようなことを、よくなさっていると思うのですが、僕は…」
「あたしは悪人にしかやらないからいいの!」
「…そうかあ…」
 ガウリィが首を傾げる。
 少年が作り上げた、人火事も収まりつつあるところで、かすれたような声で
あたしは彼に問いかけていた。
 極微量だったが彼からは障気を感じていたから…ただし魔族にしてはものす
ごく低級の部類に当たる障気だったが…そういう低級魔族程度ならあたしにとっ
てたいしたことはない…が、低級魔族はここ聖王都セイルーンの結界に阻まれ
て入れるはずはないのだから、多分こいつは中級、またはそれ以上の魔族なの
だろう…
「え?何者って…」
 少年はあたしのセリフに言葉を濁し、人差し指でほっぺた辺りなんぞをぽり
ぽりかいたりする。
「……あ…そうだ…」
 そう言いながら、ほっぺたをかいていた指を彼は前へ向け…
「それは秘密です…なんて言ってはいけませんよ。それは僕の十八番なんです
から」
 …るが、胸をはるゼロスが彼のセリフをさえぎるとともに、
「……えっと……」
 おったてた人差し指をくるくる回し、腕組みして再び何かを考える。
 …こいつ、本気でそうやって誤魔化そうとしたな…
「…魔族ね…あなた…しかも中級の…」
「魔族?……それって…」
 彼はいぶしかげな表情をする。
「…親父とかお袋とか、姉貴とか兄貴とかの…」
「それは家族じゃ…こいつみたいな解りづらいボケをかますなあ!」
 あたしはガウリィを指さして笑…じゃなかった…叫ぶ。
「…んなことより…魔族なんでしょ…あんた。精巧に隠してんのかわざと出し
てるのか知んないけど、ほんの少しだけあんたから障気を感じんのよ」
「…障気って…もしかして…」
「ここでまたアホなボケかましたらガウリィ、投げ飛ばすぞ…」
「…う゛…」
 あたしは彼の次の言葉をさえぎり、拳を握りしめて言い放つ。もう一方の片
手ではガウリィの襟首をつかみ…
「…リナ…なんで俺が投げられなきゃならないんだよお〜」
「この辺に手頃な石がないんだもん」
「俺は石以下か…」
「あっ、ついにガウリィの頭でも解っちゃったんだ!」
「…しくしく…」
 その場に立ちつくして涙涙のガウリィ。
 まっ、冗談はこの辺にしてっと…
「さあ、きりきり白状してもらいましょうか魔族さん」
「あのお〜リナさん…」
 ゼロスが申し訳なさそうな感じであたしに話してくる。
「何よ!いいところを邪魔しないで」
 あたしが向けた美貌に一瞬くらっと来たか…別名・怒気のはらんだ顔…ゼロ
スは1歩後退し、
「…あ…いや…そのですね…中級以上の魔族のかた達であれば、僕、ほとんど
存じているんですが…」
 …だから何よ…
「…この人、僕の存じ上げてるかたの中にはいらっしゃらないのですけど…」
 …え゛……
 しばらくの沈黙──
「ずずずずずううぅぅー」
 その間に、ほのぼのとお茶をすするガウリィ。
「ずずずず…結構なお手前で…」
 ガウリィに向かってお辞儀をする金髪姉ちゃん。
 やっぱしこのねーちゃん、早くも復活してるし…ナーガとためはれるわね…
「…そう…だったら低級魔族ね。そう決めた。あたしが決めた。今決めた!」
 青春カンバック!あたしの指さす方向には、太陽が赤々と燃えながら沈みか
ける姿は…見えなかった…くそ…沈む方向は逆だったか…




**** TATUYA ****

 オレは少しいらだっていたのかも…せっかくこの世界まで来たっていうの
に、アインのヤツがゼオのトレースを忘れて、せっせとボディ磨きにせいを出
していただけでは飽きたらず、ここセイルーンと言うところで『王国美味しい
物食べ歩き』をするとだだをこねられたせいかもしんない…
「…魔族ね…あなた…しかも中級の…」
 とかなり赤みの強い茶髪のねぇーちゃんがオレに向かっていぶしかめな表情
で言う。
「魔族?……それって…」
 …オレの知っている魔族とは多分、違うよな…えっと…たしかこっちの世界
にいる魔族ってーのは…………どんなんだっけ?アインの説明そっちのけで、
あの術の特訓にいそしむべきじゃなかったな…
 …いや…それ以上に…特訓してた術の制御をまともに失敗して、生死の境を
はいかいしまくっているのに、それに気付かず、にこにこ顔で世界の説明をす
るアインも悪い気がするんだが………ふむ…よおし…
「…親父とかお袋とか、姉貴とか兄貴とかの…」
 …とりあえず低次元なボケで…
「それは家族じゃ…こいつみたいな解りづらいボケをかますなあ!」
 …てっ本気でんな低次元なボケをかますやつがいたのか……うむ…あの金髪
兄ちゃんか…何となくそれっぽいな…
「…んなことより…魔族なんでしょ…あんた。精巧に隠してんのかわざと出し
てるのか知んないけど、ほんの少しだけあんたから障気を感じんのよ」
 …障気ねえ…しょうき…しょうき…賞味期限?…将棋に…賞金…ふむっ…
「…障気って…もしかして…」
「ここでまたアホなボケかましたらガウリィ、投げ飛ばすぞ…」
「…う゛…」
 そう言う彼女は金髪の兄ちゃんの襟首をつかんで投げる体制を取る…それっ
て結構やだな…兄ちゃん…ガウリィって人も涙流して嫌がってるし…
「あのお〜リナさん…」
 おかっぱの兄ちゃんが彼女に話す…ふう〜ん…リナっていうのかあの人…
「何よ!いいところを邪魔しないで」
 彼女の、魔王でも1歩後退しそうなほど怒気がはらんだ顔に彼は後退しなが
ら、
「…あ…いや…そのですね…中級以上の魔族のかた達であれば、僕、ほとんど
存じているんですが……」
 なんか訳のわからんことを言っている。
「ずずずず…結構なお手前で…」
 ガウリィに向かってお辞儀をするアイン…っち、やっぱし復活してやんの。
アンドロイドのあいつにはあの程度の攻撃じゃこたえなかったか…
「…いえいえ…」
 正座でお互い向き合って座るガウリィとアインの間に茶釜がチンチンと音を
出している…ちょっとまて…どっから出してきた…それ…
「そう…だったら低級魔族ね。そう決めた。あたしが決めた。今決めた!」
 そう言い放つリナはどっか訳のわからん方へ指を差し…

 …………しばし……………

「…と言うわけだからあんた今から低級魔族に決定。さあ、白状した方が身の
ためよ」
 指をすっと、オレに向け直し言った。
「…いや…言うわけだから…と言われても…」
「ふっ…どう、のらりくらりとゼロスのように誤魔化そうとしても、あんたか
ら発しているその障気が何よりの証拠」
 …発してるねぇ……ん?まてよ……あっ…もしかして…ごそごそごそごそ…
Gジャンから、一つのカプセルを取り出す。
 大きさはピンポン球程度。
 そん中には人間ともおぼつかない変なちっちえ爺ちゃんが入っている。
「もしかして障気ってーのはこいつから出てる気か?」
「…あん…これ?…って……あっホントだこれから感じる…」
 と言いながらリナはいぶかしげな表情。
「…確かに…低級ですね…」
 と……えっと…誰だったかな…おかっぱ頭の兄ちゃんはオレの手元をニコニ
コしながら見て言う。
「へえ〜魔族ってこんな小さいのもいるんだ」
 と興味津々のガウリィ。
「いや…元々は普通の大きさだったんだけど…」
「…元々?…」
 リナがオレの言葉に、ありありと疑問を持つような顔を作る。
 まあ…それが普通の反応だろう…このオレの手のひらにあるカプセル。
 つい最近、会社のほうからトラ・コンである社員全てに支給されたアイテム
で、簡単に言うと捕獲器みたいなもんである。
 なんでも捕獲する物体を一度、電子情報として分解し、その情報を圧縮して
そのままカプセル内に具現化させるらしい…そういや、なんかのマンガに似た
ようなもんがあったような…ほいほいカプセル……いや…ポイ捨てカプセルだっ
たかな?
 まあ…とにかく…このアイテム。ちょっとおもしろそうだなあ…って言う好
奇心も手伝って、このセイルーンに入る前にちょっくら使用してみたんだけど
…どうやら、彼女らが言う魔族というヤツを捕まえてしまったようである。
 なかなかの邪悪な気を発していたから…この気を障気と言うんだなきっと…
見せ物になるかなあ…っと思って捕まえちゃったんだけど、やっぱまずかった
かな?
「…もしかして、それってそん中に取り込む物を小さくしてしまう魔法アイテ
ムとかなにかなんじゃあ…」
「…ん…まあ…そう言うようなもんかな…」
 魔法じゃなく科学だけど…
「…へえ…」
 リナが指でカプセルをつんつんと突っつく。
「僕も始めて知りまたね。こういう物があったと言うことを…」
「なんだ…ゼロスも知らなかったんだ…」
 おかっぱ兄ちゃんがゼロスか…
「…あ…でもさ…その取り込まれたのが内側から攻撃魔法とか使って出ようと
かしたりしないの?」
「…へぇ〜…」
 この姉ちゃん…案外鋭いんだな…うちの開発部でも、捕獲器を作り出してか
ら一週間してやっとそのことに気付いて、慌てて改良を加えたっていう実例が
あったのに…それとも…向こうとこっちとでは感性の違いでもあるのかな?
「…………」
「…な、何よ…人の顔じっと見つめて…」
「…あ…いや…別に…」
 お互いが赤くなりながらそっぽを向く。
「…で、どうなのその辺のとこ…そうじゃなきゃ使えないじゃな…」
「…ああ…それなら心配ないですよ…」
 リナのセリフを遮って口を挟んだのはアインだった。
「…心配ない?…それってどうして?」
「結界を利用していると説明した方があなた方にはわかりやすいでしょうかね
…えっと…リナさんと言いましたっけ?」
「そうよ…」
「結界を造りだした時、中と外とは違う状態になりますよね」
「それって……………中と外では全く異質な物体として存在するとか…時間経
過の違いとか…そういうこと?」
「はい」
 リナの言葉に満足したか、にっこりとアイン。
「その捕獲器はリナさんが2つ目に言われた『時間経過の違い』を利用してい
ます…ここまでで何か気付きません?」
「…気付きません…って言われても…待てよ………いや…でも………」
 結界の中では数分間なにか行動をとっていたとしても、外では時間が全然経っ
てないってことがある…ま…どういう経緯でそんな風になるのかはオレも詳しい
ことはしんないから説明は省くが…それを利用していると言うことだ…
「…ねぇ…どうやって時間の流れを止めるのよ…」
 好奇心かアインに疑問の念を問う。
「…残念ですが…それは企業秘密ですね」
「けち…」
 リナがぷうっとほほを膨らます。
「…っと言うことは解ってくれたようですね。リナさんが考えたとおり…結界
の反作用…結界内では時間が止まるようにしてるんです」
 真顔で説明するアインの表情は、知理的な雰囲気を周りの者たちに感じさせ
るが…
「ずずずずずずううぅぅ…」
 …座布団を敷いて正座しながらお茶を飲む姿は…なんとも異様な光景である…
「…う〜ん…ホントにそんなことが出来るのかなあ…」
 リナは顎に手をおきながら首をかしげ…
「……おおー!それよそれ」
 …る、前にめっちゃ明るい声を出しながらカプセルをびしっと指さす。
「…な…なんだよ…いきなし…」
「あんた、たしか…達也って言ったっけ?」
「…あ…ああ…そうだけど…」
「…お願いがあるの達也…」
 リナが、オレの手をつかみ、少し潤みのかかったその綺麗な赤い瞳でオレを
見つめてくる。
 …う…いや…なんかそんな風に美人に見つめられると…目のやり場に困るん
ですけど…
「…達也…」
 優しく静かな声で再びオレの名を呼ぶ彼女。
『…………』
 ──沈黙が続く。
「それちょうだい(ハート)」
 どうしゃあっ!
 きゃぴきゃぴぜんとしたその声と、彼女のセリフにオレはその場でずるこけ
た──




**** RINA ****

 ──沈黙が続く。
「それちょうだい(ハート)」
 どうしゃあっ!
 あたしの誠意ある『ぷりちぃーお願い』モードに、なぜか彼はまともにこけ
ていた…失礼なやつ…
 ころころころころ…
 …おっ…カプセルがあたしの足下に。
「らっきぃ(ハート)ひいろった!もうこれはあたしのもん!超らっきい!!」
 ぴょこぴょこ、ぴょんぴょん、Vサインをしながら跳飛ぶあたし。
「…おい…おい…」
「なによガウリィ。世の中にはその辺に落ちていた物は拾った人のもんになるっ
ていう法律がちゃんとあるじゃない」
「…あったか?そんなの…」
「ガウリィは忘れているだけ」
 はっきり言い放つ。これでガウリィの方は丸め込んだ。
「…あ…あんたなあ…」
 あっ達也がおきだした。
「ずずずずず…まあ、いいじゃないですか達也…カプセルの1個や2個ぐらい」
 とアイン…あんたまだお茶のんでんの…
「だいたい、あのカプセル。そんなに高くはありませんし」
「…いや…まあ…そだけど…」
 おっいいぞアイン。もう少しだ。達也を丸め込め!
「それに…拾われてしまったのではしょうがありません…彼女の言う法律に従
わなければ…」
 …あっ…いや…彼女ってば…あたしの法律に素直にしたがってるんだけど。
ガウリィじゃないんだから相簡単に納得しなくても…まあ、その方がこっちに
は都合がいいけど…
「…………」
「…………なるほど…………あげるのはともかく…落としたという理由なら誤
魔化せる…ってわけか…」
「はい」
 アインが達也に笑顔でうなずく。
「…しょうがねぇか…」
 ため息の彼。
「…もってってよし…」
 よっしゃあ!商談成立!!
 そこらでガッツポーズ。
 …でも…誤魔化すって一体、誰を誤魔化すんだろ?
「それはそれはありがとうございます」
 そう言いながらひょいとあたしの手からカプセルを奪ったのは、ゼロス──
「ちょ、ちょっとゼロス。勝手に人のもん持ってくな!」
 いつの間にかあたしからゼロスは距離を開けていた。その彼にあたしは叫ぶ。
「あんたもある意味では勝手に持っていったようなもんだけど…」
 とジト目で言い放つ達也。
 無視───
「ゼ〜ロ〜ス〜……一体どういうつもりよお〜」
「いや〜はっはっはっは…僕もこれ、欲しくなっちゃいましたもんで…」
「だからって人のもん持ってくのは悪人よ」
 びっとゼロスを指さす。
「…リナ…おまえが言うなよ…」
 ていっ!
 ガウリィに蹴り一発。とりあえず彼は沈黙する。
「…と、とにかく…だいたいあんたがそれを欲しがるってことはまた何かあるん
でしょ。例えばその魔族を捕まえてこいとか言われていたとか…」
「それは…」
「秘密です…なんて言ったら崩霊裂ぶち込むわよ…」
 ゼロスの十八番の前にあたしが静かに言い放つ。
「…り…リナ…さん…」
 指さすその手は凍り付いている。
「…崩霊裂って…いつ…覚えたんですか…」
「ついこの間よ。なんなら見せてあげよっか?タリスマン込みで…」
 口調は軽いがあたしの目は笑っていない。
「…い…いえ…いいです…結構です…ちゃんとお話しします!」
 よろしい…
「いや〜、実はある人に、あることを頼まれちゃいまして…」
 そんなゼロスの一言に、あたしは下を見ながら頭をかき、
「やっぱし仕事絡みなのかい…」
「ええ…それが中間管理職の辛いところですね…それでですが…実は頼まれた事っ
て言うのが、リナ=インバースの捕獲だったりするんですよこれが…」
 ぴしっ!
「…い〜や…ほんとまいっちゃいました僕…はっはっはっはっはっは…」


 
 ぎぎぃっ、と下を向いていたあたしはゼロスへとむき直す。
「…をい…ゼロス…あんた…今なんて言った…」
「…リ…リナの捕獲だって…言ってたぞ…」
 ゼロスではなくガウリィがつぶやいてあたしの問いを返した。
「…ええ…そうですよ…」
 あくまでも笑顔のゼロス。
「誰よそんなことを頼んできたのは!」
 ゼロスは指を口元に当て、
「それはもちろん秘密です(ハート)」
 …やっぱし…
「…おい!正気かゼロス!」
「おや?ガウリィさん…もしかして怒ってます?」
「当たり前だ!」
 ガウリィが怒ってる?
 いつもとの穏やかな笑顔とは違って真剣になったその表情。
 …あっ…やだ…そんなガウリィの顔を見てたら、心臓がドキドキしてきちゃった
じゃない…
「…もしそんなことをするとしたら…」
 ……ガウリィ……
「…リナが暴れて、街中が火の海になっちまうじゃないかー!」
 こけけっ!!
「あっガウリィさんもそう思います…僕なんかその人に…もしかしたら街なんかが
消滅すると思いますよって…説明しておいたんですけど…」
「おお〜なるほど。それは言えてる」
「それにですね…無傷でという条件まで入ってるんですよ…本当に不可能への挑戦
ですよね、これって…」
「ゼロス。おまえも苦労してるんだな」
 困ったような困っていないような顔のゼロスに、しみじみのガウリィ。
「あ〜ん〜た〜ら〜あ〜」
「わあああ〜、リ、リナ。何そんなに怒ってんだ」
「あのねぇ、ガウリィ。そんなの怒るの当たり前でしょう…って…………あっそう
か…それでカプセルなのね、ゼロス!」
「へっ?なんでそれでなんだ?」
 相変わらず理解してないガウリィ。
「ぴんぽお〜ん。当たりです。さすがはリナさん」
 そんなもん当たっても嬉しくないやい…
「と、言うわけで…」
 そして突如、殺気ともとれるあの魔族独特の障気がゼロスからあふれ、いつもの
笑顔で、
「さあ、リナさん。大人しく捕まってもらいましょうか」
 芝居かかったようなセリフを吐き出す。
「冗談。あたしが、はいそうですかって一つ返事で大人しくすると思ってんの」
「思ってませんよ。だから僕、これが欲しくなっちゃったんじゃありませんか」
 カプセルをあたしに見せびらかす。
「…くっ…」
「おおっと、その前に…」
 すらっ!
 ガウリィが剣を鞘から抜き放つと、そのままその剣を肩に乗っけて、あたしの横
で立ち構える。
「俺を倒してからにするんだな。何度も言ってるが俺はこいつの保護者なんでね」
「…ガウリィ…」
 こういう時のガウリィって頼もしく見える…けど、今ガウリィが持つその剣では
ゼロスを…
「…うわああぁー…よくまあ恥ずかしげもなく、んなセリフを言えるもんだ…」
「…ほんと、ほんと…」
 うっさい、外野!
「安心して下さいガウリィさん。リナさんが寂しくないようにあなたも取り込んで
あげますから…」
「…なっ……」あたし。
「…………」にこにこゼロス。
「……でも取り込むって?……」?のガウリィ。…あんたなあぁぁぁ…
「ずずずず…ああ…おいひ(ハート)」
「ずっ…なあ…アイン。お茶菓子かなんかねえのか?どうもお茶だけじゃ物たりな
くって…」
「お茶菓子ねぇ…持ってきてたかなあ?」
 こいつら何をのんびりと…だいたい、あんたらが持ってきたこのカプセルのせい
であたしは………ん…………あれ?
「…………」相変わらずにこにこゼロス。
「…………」剣を構えるガウリィ。
「…………」ぶつぶつとあたし。
「…………」ゼロスそのまま。少しほほの辺りに汗が流れる。
「…………」ガウリィもそのまま。
「……なるほど……」あたし。
「…………」ゼロス動かず。なんか汗が多くなったか…
「…………」ガウリィも動かず。
「…をひ…ゼロス…」あたし。
「…さあ…お二人方、さっそくこの中に入っていただきま…」
「どうやって…」
 ゼロスのセリフを遮ってあたしは一言つぶやいた。
「…………」腰に手をおくあたし。
「…………」固まるゼロス。
「…………」ガウリィ…何も考えてない。
「…ああー!気付かれたあ!!」
 ばかめ、あのカプセルの使い方も聞かずに盗むから…
 ダッシュ!達也へ駆け寄るゼロス。そして──
「達也さん!今からでも遅くはありません。これの使い方を教えて下さい」
 ──泣きつく…おまい…魔族だろ…情けないぞ…
 あたしがつかつかとゼロスへと歩み寄り、
「お願いです。達也さん(泣)」
「いいよ」
 なにいいいいぃぃぃー!
 ちょ、ちょっと待てあんたは悪人に力をかすんかい!
「教えてやってもいいけど…」
「お礼はします!」
 そんな暇与えるわけ…
「…いや…そうじゃなくて…使い方を知ってもそれは使いもんにならないんだけど…」
『………は………?』
 あたしもゼロスも、かなり間の抜けた声を出す。
 …使い物にならないって一体?…
「それ使い捨てなんだ…ようするに、そいつ自体には、収納する物を小さくするエネ
ルギーと、結界を張るエネルギー、そしてそれを維持するだけのエネルギーが1回分
づつしか持ってねえんだ…だいたいこれだけを使用するエネルギーをそんな小さい物
に…ほこほこほこほこ…何回も使える程、蓄えられるわけないだろうが…」
 …た、確かに…
「じゃ…じゃあ…その力の蓄え方を…」
「ちなみに1度、中に収納しっぱなしにしてれば別の物を収納することは出来ないぞ」
「で、では…まず、取り出し方を…」
「ああ…そんならそのカプセルを壊せばいいんだ…」
「…それでは意味がないじゃないですか…」
「そんなとこまで面倒見る気ないぞ…俺は…」
「…………」
 完全な沈黙のゼロス。
 …なるほど…それでこいつあたしが欲しいって言ってもすぐにおれたのね…まっ…
それは後で問いつめるとして…まずは…
 ぽんっ!
「…ゼロス(ハート)」
「は、はひっ」
 肩に手をおきながら呼ぶあたしの声に、ゼロスは引きつりながら振り向いき──瞬間、
 みしっ!
 あたしの右拳は見事にこいつの顔をとらえてた。



 地面にはいつくばっているゼロスの背にあたしは馬乗りになっている。
 ──さあ〜て…どうしてくれようか…
「リナさん、許して下さい。今のは単なる冗談なんです!」
 …ふむ…
「──四界の闇を統べる王──」
「そ、それは増幅呪文──まさか…リナさん…あれを…」
 ふっふっふっふ…そのまさかよ…
「あれってなんだ?」
「しんない…でも楽しみ(ハート)」
 と達也&アイン。結構無責任なヤツ…ゼロスも可哀相に…
 増幅呪文が終わるとすかさずあの呪文の詠唱に入る。
「──悪夢の王の一片よ──」
「わあーやっぱり神滅斬!きゃーやめて。それを受けたらいくら僕でも滅んじゃ
いますう〜!!!」
 もとより承知のこと。
「わあああ…あっそうだ…ガウリィさん。お願いです。リナさんを止めて下さい」
 ガウリィに助けを求めるとは…魔族として嘆かわしいぞゼロス…
「と言われても……俺がリナを止められると思うか?」
「ああぁぁぁぁぁー!そういえばああぁぁぁ!!!」
「さらばだゼロス………………化けるなよ…」
 ガウリィが両手をあわせこっちを向いて拝む。
「南無っ…」
「…知り合ってすぐになくなってしまうとは…おしいことだ…」
 アインと達也もガウリィのまねをする。
「きゃーやめて下さいリナさん!お願いです!ぷりぃーずううううぅぅぅ!!!」
 だあーめ(ハート)
 後は『力ある言葉』を唱えるだけ。
「ラブナ──」
「緊急警告!」
「──ブレ…あん?」
 あたしはアインが叫ぶ一言で呪文を中断してしまった。
 なになになに、なんなのいきなり…
「…た…助かった…」
 ぽつりとほんとに小さい声でゼロス。
「どうしたアイン?」
「北東20000にミサイルを感知。形式は…」
 彼女がしばし黙る──
「143型α!」
「な、なんだって!」
 その2人の叫びと緊張する姿をあたしは始めて見たかもしれない──
 …でも…その143型αってなんじゃろか…

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45841−3猫斗犬 E-mail 9/15-16:06
記事番号4581へのコメント
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 『スレイヤーズSTS』
  第1話 ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”3回目
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**** RINA ****

「ラブナ──」
「緊急警告!」
「──ブレ…あん?」
 神滅斬の『力ある言葉』を唱えようとした時。
 あたしはアインが叫ぶその一言で呪文を中断してしまった。
「どうしたアイン?」
「北東20000にミサイルを感知。形式は…」
 彼女がしばし黙る──
「143型α!」
「なんだって!」
 その2人の叫びと緊張する姿をあたしは始めて見たかもしれない──
「…ちょっと…その143型αってなんなの?」
「アイン…デルスターの反応は?」
「ありません」
「…ねえったら…」
「探知範囲を最大にしてるのか?」
「もちろん」
「…………」
…むかっ!………
 達也がいきなりこっちを振り向く。
「後で話す!」
……ちぇっ…達也のやつ、あたしが火炎球を唱えていたのに気付いたか…
「もしかしたら…ミサイルだけを転移させたんじゃ…」
「なるほど、ミサイルだけ送って後は高みの見物って訳か…あいつらしいな
…アイン、ミサイルの到着までは?」
「…あの…あいつって…」
「だから後!」
…う〜っ!達也の意地悪…
「約5分ですね」
「わーた…」
だっ!
と返事と共に達也はいきなり駆け出した。
…ちょ…ちょっと…
「説明してくれるんじゃなかったのー!」
「だから後!」
振り向かずに、大声で叫ぶあたしの問いに答える彼。
「後っていつよー!」
「1億5千万年後ー!!」
「んなに待てるかー!」
あたしの叫びは周囲の壁に吸い込まれていった。



走る、走る、走る、走る、走る、走る、あたしは走る。ガウリィも走る。
ゼロスも走る。アインも走る。達也は先行を走る。
あたしは走る。走る、走る、走る、ガウリィぼける。あたしはこけた。ゼ
ロスは笑う。
あたしは起きる。再び走る。ガウリィも走る。ゼロスも走る。
あたしは走る。ガウリィまたぼける。あたしは蹴る。どつく。殴る。吹き
飛ばす───
こうして、やんやかと騒ぎながら、あたしたちはセイルーンの外れまでやっ
てきた……………………………が……
「…をひ…」
「…なんだ…あれ…」
「いや〜はっはっはっはっ…これは、これは…」
…な…なんなのよ…あれは…
すでに日も暮れ真っ暗な闇から一つだけ赤赤と燃えながらそれは飛んでき
た。
あたしはあれを指差しながらアインの方を向いて聞こうとしたが、みっと
もなく口をぽかーんと開けているだけ…言葉が出てこない…
そのあれとは───
不思議な物だった…細長く…たとえるなら丸太みたいな物で、長さは大の
大人5人分ほどある…そいつが後ろから火を吹きながらとんでもないスピー
ドで飛んでくるのだ。
驚かない方がおかしいだろう。
ガウリィもゼロスさえあたしとおんなじく口を開けっぱなし…いや…ゼロ
スは笑っているから口を開けてたりするんだけど…
「な、なあ…リナ…あれっていたいなんなんだ?」
「…しるわけないでしょ…ゼロス、あんた知ってる?」
「…はっはっはっはっはっ…あっ?いえ…僕もあれは見たことありませんが
…」
「…そう…でも…どっかで見たこ…と…が…あるんだけど……」
え〜と…あれは確か…ダークスターの武器を捜す………ジラス…そう言え
ば…あいつが火薬と言うやつでドラスレ並みの爆弾を作った物と……え?…
まさか………
「…ジラスの爆弾……」
思い出したっ!あれとまったくとまでは言わないが、そっくりだ。
「まあ…確かに爆弾の様な物ですね…一様…ミサイルって言うんですけど…」
アインがにこにこしながらあたしに言う。
「だああああ〜こんな時にのんきに名前の訂正なんてしなくていい…それよ
か、あの爆弾どうすんのよ!!あれっ!あれっ!あれっ!!」
指差すあれは依然としてこちらに…
「そりゃあ…何とかするっきゃないだろう…」
と達也。
「何とかって簡単に言うけど…」
「…アイン…R<IN>(アール・イン)キャノン、転送してくれ…」
「了解っ!転送します…」
その直前、達也の目の前の空中に閃光とともにある物が現れた。
それは大筒のようなそんな…
「どわあぁ!…り、リナ…あれ…あれ、あれ!いきなり現れたぞ!」
「…現れたわよ…」
まともに驚きの声を上げたのはガウリィだけ。そのガウリィに冷たく言い
返すあたし。
「驚かないのか?いきなり現れたんだぞ!あれっ!」
「あのミサイルって言うのを見てからじゃなんも驚かないわよ…ゼロスだっ
て消えたり現れたり魔族だったり…あたしの忠実なアイテムだったりするし
…」
「おぉっ!」
やおらぽんっ、と手を打つガウリィ
「言われてみれば…」
「…リ、リナさん…忠実なアイテムって…」
「それがいやなら、フィリア命名『生ごみ』なみのアイテムにしてもいいわ
よ(ハート)」
「…忠実でいいです…」
よろしい…ってそれよりも…
「ねぇ…アイン。あれっていったい何なの?まさか大砲みたいに鉄球が出て
くるとか…」
「そうね。基本的にはそれから発展したといえばいいのかな…出てくるのは
…結構強力なエネルギーだけど…ずずずずうぅぅ…」
……………をひ…ちょっとまてえい…
 ぐわあしいぃ
 っと彼女の首を絞めあたしは叫ぶ。
「あ・ん・た・あ・ね・えぇぇぇー!んなもんを使おうとすんなあっ!!」
「…ぐ、ぐるじいぃ…」
「…おーい…」
「んなことしたら、この辺もセイルーンも爆発に巻き込まれるでしょうがあ
ああぁぁぁーーーーーー!」
 彼女の首を絞めながらぐいんぐいんと振り回す。
「…リナ…」
「お茶なんぞ飲んでないでさっさと達也を…」
「リナ!」
「…とめな…なによ!ガウリィ!」
「あいつ何やってんだ?」
「あん?何って?」
ガウリィの指さす方へ振り向……うげっ!
達也はあの大筒を肩に乗っけミサイルの方に狙いをつけている。
あのバカ、撃とうとしとるやんけ!
「…ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと…」
「いっけええぇーい!!!」
かあああぁぁぁぁー!
大筒から一瞬、強力な光が発したと思うといっきに光の柱が伸び、ミサイ
ルへと向かった。
「ひぴいぃやあああぁぁぁぁー!」
おとうちゃん、おかあちゃん。先ゆく不幸をお許しくだしゃい
いぃぃーーーー!!
 …………………………………
…………………………………
…………………………………
…………………………………
…………………………………
…………………………………
…………………………………
……………………あれ?……
「…リナ……」
え?
目の前にガウリィ……
「いや〜リナさんも大胆になりましたねぇ〜自らガウリィさんに抱き着くん
ですもん」
………あ゛…あ…あ…あ……ぁ………ぁ……………
「ああぁぁぁ〜達也!未成年が見てはいけませんっ!」
 アインが達也の目を両手でふさいでいる。
「…おまいさんの方が年下だろうが…」
「体は立派な大人だもん!」
「精神年齢は赤ん坊だが…」
ガウリィがあたしを抱きしめて…じゃなくて…あたしがガウリィに抱きつ
いてる……いる…いる…いる…い…
あたしは顔に血がのぼるのを感じ…
「…○×△÷/□※◇Ω…」
…もう、訳のわからぬ言葉を言いながら、ガウリィをぶん投げたのはその
あとのことである。



「…ぜい…はあ…はあ…ぜぇい…」
肩で乱した息を整える。
「いやあ〜見事な暴れっぷりですねぇ…先生」
眼鏡をかけたアインと付け髭をつけた達也がどっからだしたか、長いテー
ブルに銀色の鉄らしい物で作られた何かの手前に肘をつき、椅子に座ってい
る。
「あ〜あ〜、マイク、ちゃんと入ってます?入ってる…こほん…ええ〜そう
ですね。最初に見せたスクリューパンチ、そこにすかさずバックドロップ。
最後におきて破りの火炎球と爆裂陣。いや〜見事な連続技です」
腕を組み、うんうん、うなずく達也。
「あのねぇ、あんたたち。誰のせいでこんなことになったんだと…」
『リナが勝手に勘違いをして、勝手にガウリィに抱き着いて、勝手に暴走し
ただけ』
ときっぱり言う達也とアイン。見事にハモっている。
「なーんーでーすーてぇーーー!」
ずかずかと達也まで近づく。
 その剣幕にびびり、眼鏡がずり落ちるアイン。
 そしてひげが取れかかる達也が叫ぶ。
「ちょ、ちょっとまった、リナ!おまえさんのその目、すんげえ怖いって」
「やかましい!!」
 ばんっ!
 両手でテーブルをたたき、
「だいたいあんたがあんなことをするのが悪いんでしょうが…そのせいで…」
 その勢いに1歩後退する達也だが、そこで踏みとどまり、
「…ま、まあ…んなことより…ほり…そっち見てみりょよ…」
「………ああん…」
達也の指差す方を何気なく振り向いて…………
「………………………どっしぇーーー!」
ずざざざざざざざざざざああああああぁぁぁぁぁっ!
あたしは悲鳴とともに慌てて後ろに後ずさり、
「…みみみみみみみみ…みさみさみさみさみさ…」
「みさ?ミサって…カトリック教会の祭典の?」
「そうじゃなくって…ミサイルって言いたいんだよ…」
「…そのとおり…訂正ありがと(はーと)」
あたしは達也に笑顔でお礼を言…って…うわああああああぁぁ…自分で言
うのもなんだが動揺してんのがわかるうぅぅ…
あたしは若干、数メートル先のこいつを指差して、
「な、な、な、なんで、こ、こ、こ、こんなとこに、ミサイルが止ま、止
ま、止ま…」
…………止まってる?……
「…なんで…?」
「あのなあ…」
 あきれ果てた声を出し達也は言葉を続ける。
「…俺だってバカじゃないんだから…迎撃すれは爆発に巻き込まれるぐらい
わかるぞ。だから結界を張ったんだろうが…」
「…結界………」
 ……そっか…あたしは確信した。
「魔族を閉じ込めた時のあのカプセルと同じ方法なのね」
「ぴいぃんぽおぉーん」
にこにこ顔でアインは指を立て…やっぱりね…その正解にあたしは自慢げ
に胸を張ろうと…
「おおはずれえぇ(ハート)」
どしゃあっ!
 …してそのまま後ろに倒れ込んだ。
「ありぃ?どうしたの?」
「どうしたのじゃなああーい!はずれてるんならピンポンなんて言うなあぁ
!!」
「…だあって…たまには『ピンポンはずれー』とか『ブブーあったりー』と
かって逆をついて、その当人の人を暴走させてみたいっていう気分になっちゃっ
たんだもん。それも乙女心のなせる技ってーやつよ!」
「んな乙女心があるかあーーーー!」
「え?そうなの?」
 達也に問うアイン。
「俺に聞くなよ…女じゃねえんだから…」
 ぼつりつぶやく彼。
「あっそういや、街の中で男にナンパされかけた事もあるけ(はーと)」
「…う、うるせい…」
 明後日の方向を向いて口をとがらせる達也。
「…で…どうすんだあれ…」
 ガウリィが口を出した。あれとはミサイルのことを指すのだろう。まあ、
ガウリィだったら全く関係ない物をしめしそうな気もするが…
「さて…どうしようかねえ…爺さんや…」
「…アイン…何で俺がいきなし爺さんにならなあ、あかんのだ…」 
「…うふっ…ひ・み・つ(ハート)」
 アインは口元で握り拳を作り体をひねる。
 あたしの『必殺ぶりっこ攻撃』にそっくひだ。
「…いつも言ってるだろ。そういう不気味なことをすんなって…」
「そんな…こんなカワイ子ちゃんを捕まえて不気味だなんて…しくしく…お
母さん、悲しくなっちゃいますわ」
「…また…一人で訳のわからんことを言ってるし…」
「…なあ…どうすんだ?」
 そんな掛け合い漫才など無視して…もしかしたら意味がわかってないのか
もしれない…ガウリィが再び聞く。
「ん?ああ…それなら…」
 ぱんっ、と手をたたき彼は小さな声で呪文を唱え、少しずつ両手を開いて
いくとそこには青白い光の球が生まれどんどん大きくなっていく。
 マニュアルどおりの火炎球の作り方ね…………おや……
「もしかして…あれを結界の中に放り込むのかな?」
「ええ…そうですよ…」
「どうやって?あの中は時間が止まってるから中に入ったら当たる前に止まっ
ちゃうんじゃないの?」
「止まってませんよ…だから、はずれって言ったんじゃないですか…」
「えっ!あれってたんなるおちゃっぴーのいたずらじゃ…」
「違いますよ。あたしはそこまでバカじゃありません!」
 アインがはっきり言い放つ。
 …ホントか…をい…
「あたしがリナさんに聞きましたよね。結界を造りだした時、中と外とはど
んな風に違う状態になるのかって…」
「ええ…だから時間経過の違いでしょ…この結界…」
「もう一つは全く異質な物体…じゃあ…結界の出入口はどうなります?」
「…出入口……あ!そっか…そういう事ね」
「なるほどそう言う使い方もあるんですね…」
 どうやらゼロスもわかったみたいだ。
「え?どういうことなんだ?」
 問うガウリィを見てみると、『?』マークを書いた札らしき物を、頭の上
辺りに出していたりする。
 このクラゲは…あっいや、いつものことか…無視っ無視…あたしはアイン
の方へ再び顔を向けて、
「…合わせ鏡…つーか…無限空間をあそこに作りだしたのね」
 …そういや…フィブリゾもサイラーグで同じような、ねじ曲げた空間を作
ってたっけ…
 つまりあのミサイルは前にある入口に入って、後ろにある出口に出てくる。
それが何回も繰り返されてるって訳だ…止まって見えるのはそういう風に、
見える結界にしているんだろう…何となくこの人達ならそのぐらい出来そう
な気もするし…よくよく見てみればミサイルが吹いている火が揺らめいてい
る。もっと早くそのことに気付いていれば止まっていないと解ったのかもし
れない。
「ブブー」
あたしのセリフに彼女は言いながら、にこにこ顔で指を立て…
『おおあたりいぃぃー(ハート)』
 …先を見越して言ったあたしとアインの声は見事にハモリ、
『あははははは…』
そしてその後2人一緒に笑った。



**** TATUYA ****

『あははははは…』
 二人が笑っている。
 何で笑ってんのかしらねぇが…仲良くしているのは良いことである。
 生まれたばかりのアインなんて、おもいっきし真面目で感情なんてほとん
どなくて笑うことをしないヤツだったからなあ…
 まあ…今の性格も、ちと、問題があるとは思うが…
 オレの両手の間に生まれる青白く輝く光の球が完成した。そして──
「火炎球っ!」
 力ある言葉と同時にそいつを結界に閉じこめたミサイルに軽く放り投げる。
 火炎球はかなりの速度で結界を通り抜けミサイルとぶつかりあって。
 ぼおんっ
 結界内で派手な爆発が起こるが、その見た目とは裏腹にあまりにも小さな
爆発音が俺達の耳に届いく。
 しばらくして──もうもうと煙が立ちこめる。
 だが、それは結界内で起こっている出来事でしかない。
『……………』
 球体のスクリーンで、映画を初めて見せられている状態か、言葉さえ忘れ
見入っているリナにガウリィ、ゼロス。
 そりゃまあ、初めてあんな物を見せられたら言葉を失うのはわかるが…こ
の後に起こることを見れば更に驚くことになるんだぞ!
 そして3分ほど──
 っと、突然、煙が薄くなる。
 だんだんと結界内の景色が見えると、3人は絶句した。
 真っ黒い穴がその煙を吸い込む。風船のように浮かびそのまま闇に吸い込
まれる巨大な岩。
 岩と岩がぶつかり合い砕かれ、その破片が勢いよく穴に吸い込まれる。
 オレもあれを初めて見せられた時は似た反応をしてたな…
 143型αミサイル──それは爆発数分後、その場にブラックホールを発
生させる兵器。そしてこれを開発し唯一作ることのできる者がゼオただ一人。
 この星に来る前にも一度、こいつを食らってきたが、ブラックホールが発
生する前にその場から撤退してきたから、とりあえずそん時の被害はなかっ
たが、あのまま居座っていれば俺達はこの場にはいなかったであろう。
 俺達の乗る船のエンジンを全開にしてもブラックホールからは逃げ出すこ
とはできないのだから──
「…リナさん…あれはどうみても…」
「…うん…重破斬に似てるわ…」
 ゼロスの言葉にリナがぽつりとつぶやいた。
「重破斬?」
「え?あっ!いや…なんでもない…あっそうだ。ねぇ達也…あれが143型
αっていう物なの?」
「ん…うん…まあ…そういうもんだな…」
 こんなんで理解してくれるんならそれでいいか…ブラックホールの説明な
んぞするのも面倒だし…
「で…もう一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「あんた…どこの世界から来たの?」
 リナがはっきりと言い放った。


 …………………
「……はあぁ?……」
 オレはそうとう、間の抜けた返事をしていただろう。
 それは十分、自分でも解っているつもりだ。
「だから、達也たちって異界からやってきたんでしょ」
 …………………
「…ちょっとまて…なんでいきなりそういう結論がでるんだ…」
「あんたが唱えた火炎球とあたし達のしってる火炎球の呪文とは全然違うか
らよ」
「…う゛…」
 …図星…
「……もしかして……聞こえてた……さっきの呪文……」
「まあね」
 ばれないように小声で唱えといてたんだけどなあ…
「ま、他にもそれらしい行動はあったしね」
「他にも…」
 リナがアインの方へ振り向き、
「例えばアイン。あなたはどうやってあのミサイルの存在を確認したのか。
探索をおこなってたふうには見えなかったけど…それって異界の知識による
探索の仕方じゃないかしら?」
 ──あっ──
そう言えばそんなことも…
「…あっ…で、でも…そ、そうだ…神託ですよ!神託。あたしこう見えても
一様巫女なんですよ。あの時、突然、神託を受けたんです!」
 苦しい言い訳のアイン。その彼女にジト目のリナは、
「でも、確か達也は、デルスターの反応は?とか、探知範囲を最大にしてる
のか?とかって聞いてたじゃない…そうなると神託は変だと思うけど…」
「……えっと……」
 言葉に詰まるアイン。
「もう一つあるわよ…」
「…まだあんのかよ…」
 後、何があるっつーんだ…
「ガウリィ!」
「あん?なんだリナ」
 おもむろに彼女はガウリィへ振り向き、親指で俺達を指し示すと、
「この2人を見て何者だと思う?」
「え?何者って…いきなりそう言われても…」
「カンでいいわよ。カンで…」
ほっぺたの辺りを彼はぽりぴりかきながら、
「カンでねぇ…う〜ん…とじゃあ…まず、達也は…」
ガウリィはオレを指差し、
「確かに人間だと思うけどニオイが違うっていうか…何って言うか…それに
…えっとお…アインだっけ?おまえさん人間じゃないだろ…魔族って訳でも
なさそうだけど…」
「そうですね…魔族なら僕がいち早く気付いてたでしょうし…」
 2人のセリフにリナがうんうん頷き、こちらを見ると、
「とっ言うわけで決定ね…でっ反論はある?」
「いや…反論って言われても…最後のガウリィのかんっつーのは…」
「だよねえ…」
オレの言葉に同意して口を尖らすアイン。
「甘いわね…ガウリィのカンをあなどちゃあいけないわよ。こう見えても人
生の3分の2はカンだけで過ごしているんだから」
「リナ…おまえなあ…」
「なによ、ガウリィ。あんたカンだけでゼロスの正体を見抜いたことだって
あるじゃない。それに比べればこんなの些細なことよ」
「そうかあ…」
「それに何より…」
 リナは顎で結界を示し、
「あんな物を見せられちゃったらねぇ…」
そう言い放った。


『………………』
しばし無言が続いた。
さてどうする、このままごまかすか。それとも腹をくくって全てを話すか。
いや…もう一つ…
「あっ!ちなみにここで逃げるという手ー使ったら、問答無用で後ろから攻
撃魔法を叩き込んであげる(ハート)」
ぱたぱた、手を振りながらあっさり言う笑顔のリナ。
ちぃっ、見透かされたか。
となると、やは…………っ!!!!
突如、感じる異様な気配──
それと同時にガウリィが腰の剣を鞘から抜き放つ。
「どしたの?ガウリィ?………まさか敵!」
リナの問いに、彼は一つ首を縦に振り、
「あぁ…多分な」
と言いながらオレたちの方へ身構える。
「多分?」
いぶかしげに問い直すリナ。
「人間とも、そこにいるゼロスとも違う気配だからな…殺気も感じないだろ
う?そのために敵かどうかも判断できな。そうだろ?ガウリィ?」
「そうだ…」
オレのセリフに一言ガウリィ。
「だったら教えてやろうか。それは感情を持つ人形みたいな者だ。殺気なん
かで敵か味方かを判断しようとすれば命取りになるぜ」
感情を持つ人形…つまりアインと同じ者…かすかに動く気配…
「人形?それっていった…」
「来るぞ!」
リナの言葉をオレの一言が遮り──
どぐぅん!
そんな爆発音はセイルーンの町中で聞こえた。

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45851−4猫斗犬 E-mail 9/15-16:09
記事番号4581へのコメント
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 『スレイヤーズSTS』
  第1話 ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”4回目
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**** RINA ****

「──えっ!?」
それはセイルーンの中心地辺りだろうか、すでに陽は沈み辺りは暗くはっ
きりとは断定できないが、そこから煙が立ちあがっているのがわかる。
「くそっ!こっちはおとりか」
達也が叫び、そしてセイルーンの街中に向かおうとする。
「まって、達也。あいつはどうすんの?」
「ちっ」
アインの一言に舌打ちの達也は再び、彼とガウリィが言っていた…人間と
もゼロス=魔族とも違う気配の…方へ険しい顔を向ける。
………………
暗闇に佇む人1人。
う〜む、これではどんなやつなのか全然解らんな…
「明り!」
あたしが生み出した光の球、数個を空へと放り上げると、ここら一帯を光
が灯し、その光が闇にすむ者を浮かび上がらせた。
黒くショートカットの髪。男とでも女とでも見て取れる美形。
結構細身だが、要所要所が鍛えられている体。
そこには──
「…そんな…」
アインがぼつりとつぶやいた。達也の表情がさらに険しくなる。
──もう一人の達也がいた──
あたしたちと一緒にいる達也と、もう一人の達也はうりふたつといえよう。
いや、どちらかというとあちらの達也の肌が多少白く見えるだろうか…
「コピー?」
あたしたちと対峙する達也…仮に影・達也と呼ぶ…があたしのつぶやきに
答える。
「コピーとは心外だな。あんな感情も持たない人形と僕を一緒にしないでほ
しい」
 影が言い返す。
そりゃまあ、確かに…感情のないコピーとは違う風には見えなくはないけ
ど…
「…ゼオの命令か?」
「まあね」
 達也の質問におちゃらけて答えるコピー。
 しばらくは沈黙が入る。
「アイン…」
「はい?」
「リナたちと一緒に先に行ってくれ。こいつを片付けたら、オレもすぐにか
けつけるからよ…」
「…ちょ、ちょっと勝手に決めない…」
「片付ける?この僕を?」
抗議しようとしたあたしの言葉を遮り、影=達也の声が響く。
「そうだ…」
「くふっふ…あははははははは…この僕を…この僕を倒そうだなんて…面白
いはったりだよ…あははは…」
達也の返事を聞くと彼は哄笑をあげ、さらには腹を抱えその場で転がりま
くる。
あたしならここで否応もなく攻撃魔法で吹き飛ばすんだけど…やっちゃっ
てもいいのかな?
「精王雷輪(アスルトグ・ファーリング)!」
いつのまに唱えていたのか、いきなり達也が仕掛けた。
彼の手から青白い五方陣が描かれ、そいつがリング形の武器となって影=
達也を襲う。
おおー!あたしの意志が達也に届いたのか?
まさしく影=達也を捉えた瞬間──
空間がきしんだ悲鳴を上げると同時に
ヴオォーン!
爆発と大音響、そして衝撃波と熱風があたしたちを薙ぐ──
煙と粉塵が辺りを覆い尽くす。
「…うぷっ…」
精王雷輪…な…なんて…威力なの…竜破斬、並みじゃない…
「今だ!はやく行け!!」
達也があたしたちに向け叫び、
「なんで…あんなものを食らったのよ…」
「ばかやろう、あんなんで倒せるんならくろうしねえよ。いいから、さっさ
と行け!!」
疑問を言おうとしたあたしの言葉を遮り、達也は叱責する。
「そうはいかないよ」
 ──なっ!
「ちぃっ」
声が煙の先から聞こえ、達也が舌打ちする。
 そして煙の中から、数十個の光球が飛び出しあたしたちを襲う。
やばいっ!
かあああぁぁぁぁー!
いつの間に持っていたのか、達也の持つ大筒から光が発し、すべての光球
を包み込み、すべての光球が結界の中に閉じ込められた。
「ちぇっ…R<IN>キャノンか…不意をついたつもりだったんだけどなあ」
影=達也の声がこちらにかけられる。爆煙の中から。
──まさか──でも──
ゆっくり薄れ出す煙の中で佇む人影一つ。
 あれをくらって生きてた。なんなのあいつ──
「はやく、行け…アイン。こいつは多分おとりだ!つまりこんな事をするっ
て事はあのやろオレたちの存在に気付いてる。んなら手加減するな。リナた
ちをできるだけバックアップして…もしもの時は船を使ってもかまわん」
「…………」
「アイン!」
「あ!えっ?あっうん…わかった」
達也があたし…いや、ガウリィを見て、自分の左手首のリストバントを外
すとそれが光り輝き一本の光の剣に変わる。
そしてそれをガウリィに放り投げた。
「こいつを仕えガウリィ。今お前さんが持ってる剣では奴には傷も付けられ
ないからな…」
「へえぇ…」
ガウリィが興味深げに渡された光の剣を眺める。
「そいつに魔法をかければ増幅もしてくれる。リナとのコンビネーションで
うまく利用しな」
「ああ…サンキュー」
剣を見せて言うガウリィの返事に彼は一つうなずくと今度はこちらに顔を
向け、
「リナ。向こうで暴れてるやつも手強いヤツかもしれん。気を付けろよ」
「解った…でも後でちゃんと説明してくれるんでしょうね?あんたたちやこ
いつらのこと」
「ああ…後でな…”魔を滅する者”さん(ハート)」
そのセリフにくすっと一つあたしが笑うと,
「一億五千年後に?」
「望んでるんなら…」
その答えに、まるで悪戯坊主のような笑顔で答える達也。
「んなもん望んでないわよ…と、それよりも…さあ、行くわよガウリィ。こ
こでぐずぐずしてらんないわ」
「おう」
あたしは笑顔とともに走り出した。達也の言葉を信じて──
「気を付けて達也」
 そう言い残してアインも走り出す。
何故だろう…あたしは彼の言葉を信じられる気がした──


あたしたちは街中で起こる爆発へ向けひたすら走る。
そういや…ゼロスの姿が見えないが…ま、いつもの事か…
爆発が起こるそこでは赤赤と輝いているのが見える。
あたしたちが走る場所まで飛び火し、逃げまどう人々。
「リナ、達也のやつ大丈夫かな?1人で」
ガウリィが時々ちらちらと達也がいる方向を見たりして走っている。
その先でも光の線が空を飛び交い、爆音がこだまする。
「大丈夫なんじゃない。あんな魔法も仕えるんだし…そうでしょアイン」
「…………」
が、返事がない。
「アイン?」
「え?」
何か考え事をしていたのか突然、振られたあたしの言葉にきょとんとする
彼女…あんまし、考え事をしながら走ると危ないぞ…
「だから、達也なら大丈夫でしょあんなやつ…」
「ええ…多分…」
「多分?」
「相手の力が未知数なんです。いえ、達也の方が不利という可能性もありま
す」
「でも…あれって達也のコピーでしょ。だったらオリジナルのほうが」
「ただのコピーじゃありません!…あっ!いえ…その…ただの…コピー…じゃ
…ないんです…」
そう言って彼女はそれ以上は口を開かなかった。




**** TATUYA ****

「お前さん…なんでここに残ったんだ?」
リナ達の姿が完全に見えなくなってからオレはゼロスに問いた。
「いや〜、なかなか、面白い勝負が見れそうでしてね(ハート)もちろん見
せてくれますよね」
「……それだけか……」
「いいえ、実を言いますと僕はあなたの秘密を知りたいんです。あなたは人
間であり、魔族のような力を持っているような気がしたもので」
「…ふ〜ん、面白い事を言うな…」
 そうゼロスにこたえながら肩に担ぐ物のエネルギー残量を確認する。あと
1回だけか…
「もちろん、完全に見切れていませんからね。だからこそ今ここで見学させ
ていただきたいのですよ」
言いながら彼は、ちょこんと近くの岩に腰を下ろす。
「ほんとに見学だけか…襲ったりしないだろうな…ホモになる気はないぞ。
オレは」
彼に向けて殺気を放つ、
「むろんです」
がそんな殺気にも何事もなくへーぜんとするゼロスは、あっさりと首を縦
に振る。
「ま、邪魔しないなら別にいいけど…流れ弾にあたってもしらねぞ…」
「ええ…気を付けることにいたしましょう……それにしても…ホモになる気
はない…ですか……ふ〜む…もしかして一度、そういうお方に襲われたこと
があるとか…」
「……………………」
 …う…余計なことを言ってしまった…
「あはははははは…図星ですか」
 腹を抱えて笑うゼロス。
「…うるせいほっといてくれ…」
 くそー、だからあんな潜入捜査はいやだってチーフに言ったのに…
 …おかまバーの潜入捜査だなんて…それにあのやろう…う〜今思い出して
も腹が立つ!
「あははははははははは…」
「……と、とにかくだ…」
顔を赤らめながら声を張り上げ、オレはやつを睨む。
「始めようか、兄ちゃん」
やつは無邪気な笑顔で開始の合図を掲げた。
「…ああ…」
 小さく返事を返すと、オレは静かに目を閉じ、精神集中するため一つ長く
息を吐き、目を開く。
 そして名乗る。
「正心気孔流14代目、田中達也。まいる!」
 ──と──

「先手必勝っ!」
躊躇もなく、R<IN>キャノンの引き金を引く。
光の帯はそのままやつを捕らえ…瞬間、そいつが消える。
ちいぃっ、あいつ体の中に転移装置を組み込んでるのか!
エネルギーの全てを打ち尽したキャノンを捨てる。
やつはどこから来る──
「!?」
慌てて横っ飛びしてその場から離れる。
ずががががが…
オレが体制を立て直すと、ちょうど先いた場所に光の矢が雨あられと降り
注ぐ。
 小降りの威力だろうが、打ち所が悪ければ普通の人たちなら致命傷になる
だろう…かわされるのは目にみえてるけど……オレはお返しとばかりに天に
一発、気孔弾。
 そしてワンステップほどその場を動くと、
ぶうんっ
という音と共に…いつのまに後ろにいたのか…そいつからの鋭い蹴りがオ
レを襲い、それを紙一重でかわす。すぐさま脇腹狙いの右フックに左の正拳
突き──どちらも肘でブロックされるが、んなの無視。
ごっ!
タックルの形でオレの頭突きがやつの顔を捕らえた。
「ぐっ…」
小さくうめき体制を崩したところを──
撃つべし──ごぶ
 撃つべし──ずぐ
 撃つべし──ばきい
ごがああぁぁぁーっ!
オレの拳の2連打に最後の蹴りで、そいつを近くの木にたたきつける。
 口と両手を動かす。
 右手で前部の呪文を描き──
 左手で中部の呪文を描き──
 口で後部の呪文を紡ぎ──
「精王雷輪っ!」
立て続けの魔法攻撃!
ガグオーンッ!
リナたちがいた時よりもさらに魔力を込めた一撃が見事にヤツを直撃する。
「おみごと」
ゼロスが三唱する。いや──まだだ──
「もうイッチョ…精王雷…」
ずうがっ!
「…がっ!」
だがその時、背に一つ、いきなしの攻撃を食らいオレは前のめりに倒れた。





**** RINA ****

「あそこだ、リナ!」
ガウリィが爆発の起こる方を指差してあたしたちの行き先を教える。
するとその先から、
「氷の矢いきます!」
「火炎球っ!」
2つの聞き覚えのある声がする。
「リナ、今の声…」
「解ってる」
 あたしは走りながらも内心、喜んだ。
 こんな状況にしろあの2人に再び会えるのだ。
 仲間として信頼できるあの2人に──
 走る速度を上げた。
 あたし達は一つの道を曲がり──そして開けた場所に出る。
 セイルーンでも1番の待ち合わせスポットになっている、ここ噴水のある
広場は戦場になり果てていた。
 見事な鎧を身にまとった騎士らしき者達が、のっぺらぼうの人間大の人形
と剣を打ち合わせるのがあちらこちらで見かける。
「アインあれはなに?」
「操り人形です…ただの…」
「強いのか?」
「いいえ…並の剣士程度の実力しかありません。けど、その体は鉄の鎧よう
な物で覆われています」
「…なんだ…そうか…だったら簡単だな…」
 ガウリィならそうでしょ…けど、ここにいる騎士達はどう見ても…
 がちぃん!
「うおっ」
 騎士が振り下ろした剣はノッペラボウの体を切り裂けずそのまま弾き返さ
れるのが目に映る。騎士にしてはちとばかし弱すぎるんじゃないか…
「…ただ…」
「ただ、なに?」
「これらを操っているのはとても強いヤツのはずです…人形以外の敵に出く
わしたときには気を付けて下さい」
『わかった』
 アインの説明に一つ返事で頷くあたしとガウリィ。
『炎の矢っ!』
 見事なぐらいにハモる男女1組の声。そこに目を向けると…いた!
 男性の名はゼルガディス。
 長旅でかなり変色してしまった白い貫頭衣を身にまとった、銀の色の髪の
美青年。
 かつてある魔道士に、石人形、邪妖精と融合させられ、その肌は青黒い岩
と化している。
 女性の名はアメリア。
 肩で切りそろえてるはずの艶やかな黒髪は今はのばしているのか後ろ手で
結びポニーテールにしている。やや童顔で大きな瞳は全然変わってない。
 ここセイルーンの元第一王位継承者、そしてこのたび国王に即位すること
になっているフィリオネル=エル=ディ=セイルーン様の二番目の娘である。
 かつて、あたしと数ある魔族を討ち滅ぼし、旅を共にした仲間──アメリ
アいわく、『正義の仲良し四人組』。
「正義は我にあり。もしおとなしくするならそれでよし、抵抗するのであれ
ば私たちが容赦しません。このセイルーンの名にかけて!!」
 拳を天に掲げ朗々としゃべくるアメリア…かわっとらんなあの子…
「ただの人形だからあんなこと言っても、何もならないんですけどね…」
 とアイン。その彼女の言葉どおり、アメリアのセリフなどいにかえさず、
騎士達と剣を組交わすノッペラボウ。
「あくまでも抵抗を続ける気ですね。仕方ありません。みなさん、こうなっ
たら私たちの力を見せて上げましょう」
『おおうっ!』
 怒りの拳を…よくよく見ると船に取り付けられている錨の絵が描かれてた
りする…振り上げながらのアメリアのセリフに意気揚々と上がる騎士達の声。
 その光景に一時酔いしれる彼女。
「バカっ!アメリアっ!後ろだ」
 ゼルが叫ぶ。
 アメリアの後ろで剣をまさに今、振り下ろそうとするノッペラボウ。
「あ…」
 突然のことで彼女は動けない…が、
「黒妖陣っ!」
 あたしの放った呪文でそいつは塵と化す。
「助太刀に来たわよ。アメリア。ゼル」
 ぱさっと髪をかき上げ、言うあたし。
 ざあうんっ!
 ガウリィが持つ、達也から借りた光の剣で異ともたやすく切り裂かれるノッ
ペラボウ。
「よう…久しぶりだな…2人とも」
 剣を肩に置き2人へ声をかけるガウリィ。
『リナ(さん)!ガウリィ(さん)!』
 そして4人から、笑顔がこぼれた。





**** TATUYA ****

「くはあ…」
 背中の痛みをこらえ立ち上がろうとした。
 …ばかな…
 オレの目の先にヤツが何事もなかったかのように平然としている。
 精王雷輪とは風と雷の精霊全てを統べる精霊王・雷聖鳳から力をかりる呪
文だ。
 オレの世界では精霊王から力をかりる物は秘技中の秘技と昔から言われて
いるが、それは精霊王を表す言葉のみで呪文は一切伝わっていない。
 では、どうやって呪文を覚えるのか…それは自分で開発するしかないのだ。
 オレも偶然に六精霊王から力をかりるとんでもない威力のある呪文を完成
させた一人…それの全力による一撃を確かにくらったはず…それなのに…
 …くそ…あのやろう…転移装置だけじゃなくバリアー発生装置まで持って
やがるな。
 だったら、ただの精王雷輪じゃあ歯がたたねぇ…
「ぐっ…」
 横からヤツの蹴りをくらいそのまま吹き飛ばされる。
 地面にたたかれ、何度か転がり止まる。
 ずきん!
「いてててて…」
 あばらの辺りが痛み出す。やべ…2、3本はいちゃったかな?
「なんだ…つまんないや…」
 おもむろに彼は言う。
 急いで、回復呪文を唱える。回復力のスピードを上げる呪文を。
 こちらの世界で言えば治癒と同じような物だ。
「ゼオの話じゃめちゃくちゃ強いって聞いてたけど…お兄ちゃんって、たい
して強くないや」
 やかましいっ!
「それに何だい、最初のあの魔法弾は。もしかしてあんなので僕を牽制しよ
うとでもしたのかい」
 …最初の魔法弾?…魔法ならわかるが…それってもしや…
「僕としても期待はずれですね…それとも…本気で戦ってないんですか?」
 ゼロスもため息混じりな声でオレを挑発する。
「えー!そんなのダメだよ。人生何事も一生懸命が大事なんだよ」
「その通りです」
 その場にそぐわぬおちゃらけた声にゼロスも頷く。
 …おいおい…
「魔族が人間の人生を語るな…」
「いや〜はっはっはっはっはっ…痛いところつきますねぇ…これは一本取ら
れました」
「…たくっ…」
 呪文を中断し、おられた脇腹辺りを突っついてみる。
 …よし!痛みが完全になくなったぞ。どうやら回復は完了したようだ。
「…さて、どうするんだい…このまま僕に殺される方がいい?」
 そのセリフにオレは立ち上がりながら頭をかく…ふむ…
「………しゃーねえな…本気でやってやるよ…」
「やったね(ハート)」
 言いながらバク転して喜ぶ彼。
 …しかし本気でって言っても…肉弾戦ではこちらが不利だな。
 スピードもパワーもこっちが上でもあの転移とバリアーがあるんじゃ…効
き目ウスだし…
 だったら精霊王・光聖龍からの力で…いや…いくら六王の中でいっちゃん
強いと言っても、かりる力は限られてるし…多分効かないか…となると…あ
れしかないか……ちぇっ…ゼオ用に取って置いた技の一つだったんだけど…
「…さてと…そういやおまえさんの名前、まだ聞いてなかったな。なんて名
だ?オレと同じ達也って訳じゃないんだろう」
「ライクっていうんだ。気楽な性格だからこういう名前が付いた」
「軽い性格だから…Liteがライクか…なんて単純な…どうせゼオが付け
たんだろ?」
「あれ?何で解ったの?」
「昔っからそういうヤツらなんだよ、あいつも妹も…」
「妹?」
 ゼロスが問う。アインのことなんだけど…
「…じゃ…戦闘の再開といくか」
「OK」
 いきなりオレは2つの力を高め、そのまま1つの力・魔力を使い呪文詠
唱に入る。
 そして右手にもう1つの力・気を溜め始める。
「またあ…そんなの僕には効かないよ…」
 ライクは呆れた声を出す。
 やっぱり、こいつ気付いてない…どうやら生まれたばかりだから、気孔の
感知能力がなってないようだ…魔力も気孔も一つの魔力として見てやがる。
 しかし何故だ?
 疑問を抱えつつも、かまわず呪文を続ける。
 精王雷輪と呪文の構成は同じだが力をかりる精霊王を変えることにする。
 精霊王・闇聖蛇に──

 ──黒き影を統べし者
   六精の 闇を統べる王
   明と陰を渡りし時 時を渡りし者
   我が力 我が身となりて 無とかえし
   紅蓮の炎も 冷たき炎のリングとなりて
   全ての視界を踊りつくせ──

「精王闇輪(アスシャグ・ファーリング)っ…」
 『力ある言葉』を解き放つ。
「だから…無駄だってば…」
 ライクが言う。もとより承知のこと。
 オレの目の前に黒き五方陣が描かれ…ここで一気に右手の気を開放する。
「なんだ?」
 右手が気孔によって神々しい光を放ち、コントロールするオレの意志にそ
れは答え、徐々に一つの形に形成する。キャノン砲の形に──
 それが完成するとおもむろに弾を詰め込む。その弾となるのは先ほど唱え
終えた、精王闇輪。
「…これはまた…おもしろい手を…」
 驚き半分、興味半分でゼロスが歓喜する。 
 そうこれこそ、オレがゼオ専用に開発した、魔法と気孔の混合術。
 そのまま、ライクに照準をあわ…
「ぬうわっ!」
 オレの手に収まる大筒が暴れ出す。
 やべ…光と闇じゃあ相性が悪すぎたか…光聖龍や雷聖鳳なんかではこんな
ことはなかったんだが…
「…こんにゃろ…収まれ…暴れんな…」
 体中の気という気を全てを使って振動を止めようとしてみるが、なかなか
言うことを効かない。
「…ふっははは…なんだ…はったりか…」
 ライクが邪気を含んだ顔で笑い。
 そして両の手を上にかかげると、その両手のこうからは強大な魔力弾が姿
を現す。
 まずいっ!こんな時にっ!
 ヤツが静かに言う。
「…それともまだ未完成なのかな?」
 ちゃうわいっ!ただたんに精王闇輪で使うのは初めてなだけだいっ!!
 と言いながら中指を立てたい衝動を何とかこらえながら、両手を踏ん張っ
て照準を合わせようとしてみる。
 が、依然として暴れる。
「…死ね…」
 ライクが魔力弾をほうり放つ。
「くっ…」
 だめだ…まだ、照準があわせられない…
 迫る魔力弾──
 ええーい!!!!
 こうなりゃ神頼み…
「なむさん!!」
 精一杯の力を込めて言いながらオレは精王闇輪をぶっぱなし──
 ぐうかあかあぁぁぁーーーーっ!!!!
 ──その反動はオレの予想を遙かに超えていた。

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45861−5猫斗犬 E-mail 9/15-16:13
記事番号4581へのコメント
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 『スレイヤーズSTS』
  第1話 ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”5回目
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**** RINA ****

「黒妖陣っ!」
 あたしが放つ呪文は見事に敵を粉砕する。
「氷の矢」
 アメリアが作り上げた6本ほどの氷の矢で次々と敵を凍らし、
「炎の矢っ!」
 ゼルが凍って脆くなったそいつら全てを粉砕する。なかなかいいコンビネ
ーションをするもんである。
 ざうんっ!
 ガウリィの剣が閃く。
 ぱしゅうっ!
 アインの持つケンジュウとかというアイテムから光の帯が飛び出し、敵の
胸元…強いて言えば心臓当たりか…を貫く。
 今やあたし達の活躍により敵のほとんどは姿を消していた。その数は数十
にもあたるだろうか…にしても…
「…アイン…」
「はい?」
「変だと思わない?」
「変?」
「あっけなすぎるのよ…それに…こいつらを操っているヤツがいるってあん
た言ってたじゃない…そいつはどこ言ったの?」
「それはあたしも気になってました…けど…どこかにいるはずです…今探索
中ですから…もう少し…」
ヴオォーン!
 そしていきなりとも言える爆発音は遠く離れた場所から聞こえた。

「なに?もしかして新手?」
「…見てください、リナさん。あれ…」
「え?」
 アメリアの指さす方を…爆発音が聞こえた方向…見やると、神々しいまで
に輝く光と、夜の闇より暗い光がとぐろを巻いて天を貫いていた。
 それはまるで光の塔のような光景。
 そう言えばあそこは達也がいたはずの場所──
 ごおうっ
「うぶっ」
 あの爆発の影響か、突然、強い風が吹き付けて体がもって行かれそうになっ
た。あたしの髪とマントが激しくはためく。
「ぴいぃやあぁっ」
 強風で飛ばされてきた桶を、かろうじてよけ──
 ばきいっ
「あう」
 あ。飯屋の看板がアインの顔面にあたった。
 …よけろよ…少しは…
 ぱくっ
 今度はトマトが飛んできてそれをガウリィが口でキャッチする。
 ぎしっ
 今度はすぐ近くの、大きくもないが小さくもない樹木がこちらに倒れかか
る。
「わわ…で、魔風っ!」
空気を凝縮した、突風があたしの手から生み出され樹木を吹き──飛ばせ
ないっ!
 しまった、この強風でかき消された。
 ──やばっよけれない!
 ぱしゅう!
 …え?
 一本の光の剣が樹木にかすり一瞬にして灰と化す。
「大丈夫かリナ」
「…今の…ガウリィが…」
「ああ…とっさに剣を投げた時、はずれそうだったんでひやりとしたけどな…」
 そんなやりとりをかわし、やがて光の塔は徐々に消えていき…あたし達を
吹き付けていた強風がおさまっていく。
「何だったんだ今のは…」
「さあ…でも多分、達也がやったんでしょうね…それか…」
 …あの男がやったのか…
 その言葉は心の中に押しとどめた。
「達也?誰なんだそいつは」
 ゼルガディスが聞く。
「アインと一緒に………そういやあんた彼とはどういう関係なの?」
「パートナーです。まだ半年ほどですが…」
「そう…ま、そういう子でね…14、5のなかなかの美少年よ」
 そして異界から来た少年…
「とにかく…彼の所に行ってみましょ。何かが解るかも…ここもあらかた片
づいたし…」
「まだ片づいてないわよ」
 意外な返事は別の所から聞こえた。

「上だっ!」
 ゼルが叫ぶ。
 ゼルの言うとおり空を見上げると、空中に浮かぶ女の姿。
 魔道士!
 そしてその容姿には見覚えがあった。
「何者です、あなたは」
 アメリアが叫ぶ──ただし、桶をかぶったまんまでまったく彼女とは違う
方向へ指を指し示していたりするが──
 静かにしてるかと思ったら、あんなもんかぶって遊んでるし…
「………………………………」
 しばし沈黙が続くと、がばっと桶を脱ぎ捨てきょろきょろ辺りを見回し女
魔道士の姿を見つけると、再び、びしっと指をさす。
「もう一度聞きます。何者ですあなたは!!」
「………………………………」
 また、沈黙が訪れる。
 …アメリア…少しはテンション下げなさいってば…こっちが恥ずかしいで
しょ…
「コピーのサイボーグ…さっきの子と同じですね…」
 アインがつぶやいた。
「サイボーグ?アインそれって何なの?」
「あたしの世界の常識知識によって生まれた改造人間です。こちらの世界に
とっては非常識な知識ですけど…」
「ようするに?」
「う〜ん…説明がむずかしんですよねぇ…………まともな人間じゃないって
言えばいいでしょうか…」
「ようするにゼルみたいなもん?」
「おいこら…俺をたとえにするな…それに何故、まともな人間じゃないっと
いうことで俺の名が出る」
「え?だって…キメラだし…岩の肌だし…」
「…う゛…」
 きっぱりはっきり言い放ち、ゼルは言葉につまる。
 ありゃ…ゼルったら、完全にいじけちゃったよ…ま、ほっぽいてもすぐに
復活するか。
 あたしはゼルへ向けていた顔をアインへ向き返し、
「ようするにコピーのサイボーグてーのはコピーのキメラなのね…」
「ええ…まあ…ちょこっと違いますけど…だから…ただのコピーとは違って
オリジナルより強いんです」
「なるほど…それでただのコピーじゃないって、あの時、言ったのか…」
「…はい…」
 …ふ〜ん……コピーのキメラねえ…そういやレゾのコピーもキメラ…魔族
との合成体…だったわよね…
 あたしは女魔道士の顔を見つめる。その顔は達也の顔とそっくりだった。
 多分、彼女は達也から生まれたコピーなんだろ…ってちょっとまってよ…
…………なんか…嫌な予感が…
「…ねぇ…あんたってさ…達也のコピー?」
「さあ…どうかしら…」
 あたしの質問にさらりと誤魔化す彼女──
「……………………」
 …コピーって物は男の細胞を使えば男が生まれるし、女の細胞を使えば女
が生まれる。
 …つまり…こいつが達也のコピーであったとすると………
「…もう一つ聞いていい?」
「いいわよ(ハート)」
「…も…もしかして…あなた……お、と、こ…かな?…」
「……………………」
 あたしのとぎれとぎれの言葉に彼女は…いや、彼はただ妖艶な笑みを浮か
べ沈黙するだけ。
「……ようするに…おか…ま、さん……」
 アメリアがあたしの後を引き継ぐ。
 ………………………………………………
 ………………………………………………
 ………………………………………………
 ………………………たりっ………………
 その場にいる全員が全員頬に背中に、有りとあらゆる場所に冷や汗をかい
たことだろう。
『どおおうううええええぇいいいぃぃぃぃっっっっ!!!!!!!!!!!』
 ずざざざざざざざざざ…
 そして、アイン以外が悲鳴上げ思い切り後ずさる。そしてみんなで円陣を
組み、
「やだよおー、あたしあーいうタイプすんごい苦手…」
「でもでも、やっぱりあの人も悪人ですよね。でしたら…」
「…そ…そうよね…それに達也の所にも急いで駆けつけたほうがよさそうだ
し…そ…そうだ、ガウリィ!!あんた、その剣でぱぱーっと行って、ぱぱーっ
とあいつをぶったぎってきてよ!!!」
「でえええぇぇぇぇー!ちょ、ちょと待てリナ!!」
「なによ、あたしの言うことが聞けないわけ」
「んなむちゃいうな…あんなヤツに近づいてうつったりしたらどうすんだ!」
「うつるわけないでしょ」
「そうです、百害あって一理なし。さあ…ガウリィさん!正義の名の下に、
彼女に…じゃなくて彼に鉄柱を!」
「…だったらアメリアがやれよ…」
 そう言いながらガウリィがアメリアの背を彼へと押し出す。
「ええぇぇぇー!いやですよおぉ〜…ちょっと…ガウリィさん…ええ〜ん、
ゼルガディスさん、助けて下さあ〜い…」
「…お…俺にふるな!」
「………あのお………」
 アインが申し訳なさそうにあたし達の会話に入ろうとするが、みんな聞く
耳無し。
 そして、しばらくは誰があいつを倒すかと言う、問題で戦いは静止してし
まった──




**** TATUYA ****

 ごすっ
 とてつもない衝撃で吹き飛ばされ一つの大木にオレは背中を打ち付けた。
 …なんだ…今のはいったい…何が起こった…
 たしか…気孔砲で精王闇輪を撃ちだし、それが激しい光を放ったんだよな
…そうだライクは…
 慌てて、ある方向へ目をやる………
 ……………………………………………………
 ………………おひ…なんじゃこりは…
 目の前で光の龍と、闇の蛇がとぐろを巻きながら上へ上へと上り詰めてい
る。もちろん龍とか蛇とかは、たとえとして言っているだけなのでそれが本
当に龍や蛇だったとは言い切れないだろう。
 …いや…そんなことよりもだ……何故オレはその中心地にいるんだ…
「見事な光景ですねぇ」
「ぅどうわ!」
 突如、オレの真横に現れて感想を述べるゼロス。
「…って、脅かすなよゼロス…それにしてもおまえさん…よくあれに巻き込
まれなかったな…」
「ええ…それが精神世界面に逃げようと思っていたのですがなぜか達也さん
のすぐ近くに出て来ちゃいまして…まあ、それでも一様助かったようですが
…さすがの僕もあれに巻き込まれたらただじゃ済みませんでしたね…ははは
ははははははっ…」
 ちっ…運のいいヤツ…
「今、舌打ちしませんでした?」
「してない、してない」
 手をぱたぱた振りながら何気なく誤魔化す。
「そうですか?まあ、それよりもです…何故…精神世界面に逃げようとして
こちらに出て来ちゃうんでしょうかねぇ…ご存じありませんか達也さん?」
「…そうなるようにしむけたんだもん…」
「…は?」
「…いや…だから…あっ、そうか…こっちの世界には精霊王とかは知られて
いないんだっけ…えっと…ゼロスさ…オレが唱えてた呪文聞こえてたか?」
「ええ…まあ…」
「だったら話は早いな…あの呪文は、オレがいる世界で伝わる六精霊王の中
の闇を統べる王から力を借りた呪文なんだけど…」
「待って下さい、その六精霊王とはなんですか?」
「それはパス…知る必要はないし、教える気もないから…」
「…はあ…」
「…でだ…その闇の王の呪文の中に『明と陰を渡りし時 時を渡りし者』っ
てあっただろ?」
「…ええ…あります…ありましたね…」
「実はあそこの部分はな、空間移動のことを表してるんだよ」
「え?」
「要するに、今ここにいる場所が明だとすれば、ゼロスが言う精神世界面は
陰となるし…その逆にもなるな…じゃあ…明と陰の間には何があると思う?」
「…いえ…突然言われても…」
「明が+(プラス)で陰が−(マイナス)。差し引き0だ。何も無い…つま
り闇…」
「…ああ…なるほど…」
 無感動に相づちを打つゼロス。
 周りでとぐろを巻く光と闇が消え始めた。
「そのためにその闇の王の呪文を使い、空間をわたるための通り道を遮断し
たわけなのですね」
「そういうこと〜…あいつも空間をわたれたからな…だから、わたれなくし
てやったんだ…とりあえずバリアも張れるから、気の力で魔法を倍増させて
ぶっ放してみたんだが…ま、直撃すれば跡形もな………げっ!」
 オレの目の先で、消えた光と闇から一つの影が見え隠れする。
 そしてそいつの姿が完全に現れた。
 彼は左腕半分を失っており、そこから火花が散り、幾数のコードが見え隠
れしている。足の所々からもバチバチと火花がちり、顔に至っては左上半分
の皮膚がそげ落ち、鉄色の骨格が現れている。
 …やっぱり…コピーサイボーグか…
「…やってくれるじゃないか…」
「…直撃しなかったんだ…」
「まあね…さっきのがバリアを難なく貫いて、左腕を吹き飛ばしてくれたけ
どね…確かに直撃したら、僕は消し飛んでいただろうね…僕なら…」
 意味ぶかめな言葉をライクが吐く。
「ずいぶん余裕だな、その体で」
「そりゃあ、まだこちらが勝てる要素が残っているからね。知ってるんだよ
お兄ちゃんが魔力のほとんどを使い切っちゃったことを…使えても火炎球4、
5発くらい…最初に僕にかけた精王雷輪だったっけ、それが1回ちょっとか
な…」
「………………」
 おいおい…探知装置まで持ってんのか…他にもまだなんか、やっかいなも
ん、持ってんじゃないだろうな。
「…と言っても、僕の方もさっきのをこらえるためにほとんどを魔力障壁に
使っちゃったけど…」
「なるほどそれなら5ぶ5ぶだな…いや…6:4か…5体満足でいるオレの
方がまだ有利かな?」
「いいや、7:3で僕の有利さ」
「…ほおぉう…」
「転移のほうは壊れちゃったけど、バリアはまだ使えるからね。だから7:
3」
 なるほど…それで7:3か…ふう〜ん…
「さてと…」
 突然ライクの左腕のコードが生き物のように激しく動き出す。腕の肉が異
様な動きをし、伸び、膨らみ、全ての動きが止まると、左腕は1本の剣と生
え変わっていた。
 …おいおいおい…んな裏技まで持ってんのかよ、はっきり言ってずるいぞ、
それ…
 一歩前に進み出て、
「…今度は本当に死んでもらおっかな(ハート)」
 笑顔でそう言うとライクが脱兎の如く駆け出す。オレの方へと──


 剣が上から縦に一閃する。オレはそれを右横へとステップしかわす。すぐ
に横凪の一閃が襲い、更に右横に数歩のステップでかわし、彼との距離を開
ける。
 攻撃は一切しない、ただオレはよけるだけ。
 ついでに余裕の笑みを浮かべてやる。まあ、実際に余裕でかわせているの
で素直な表情を見せていることになるのだが…
 そう言っても、ライクの剣技はなかなかのものだ。いや…実際に強い。ラ
ンク付けすればパワー・スピードとも上級者レベルだろうか。
 ただ、剣より拳に優れていたためなれていないのか…間隔がつかめないの
か多少ぎこちないが…最初っから拳で戦った方がいいんでないの?
「この!」
「ひゅっ」
 叫びながら振るうライクの一振りを、口笛を吹くような感じで鋭く息を吐
きオレは空高く跳ね上がる。
 空中で2回ほど前転を加え、ライクを飛び越えそのまま2メートルほど離
れた場所へ着地すると、すかさず3回のバク転で更に間を開ておく。
「ちょこまかと逃げるな!やる気があるの!」
「まったくない」
 彼の叫びに軽く言い返す。
 ライクはぱっくりと口を開け、徐々に顔色が変わっていく。
 怒気をはらんだ顔に。
「もお、絶対に怒った。何がなんでも怒った。とにかく怒った」
 言いながら地団駄を踏むライク。
 その彼の内側に気がどんどんと膨らんでいくのが解る。
 多分、その気は火炎球数個分の威力になっているだろう。
 本当ならこれだけの気を上げるに、かなりの修行を行わなければ出来ない
のだが…多分無意識でやっているのだろう。さすがオレのコピーだけのこと
はあるぜ。
 だっ!
 ライクが駆け…おっ、一瞬でオレは懐に入り込まれる。
 ──速いっ──
 ひゅんっ!
 剣筋も速くなっているな…それをよける。今度は蹴りが来る…それを蹴り
返…蹴りがとまる。なにい!フェイントっ!
 うわっ
 慌てて後ろに飛び下がるとオレの鼻先を剣先が通り過ぎる。
 ライクがそのオレを追い、その場でくるりと横に一回転しその反動で拳を
飛ばす。それをかろうじて受け止め、一瞬の蹴りがオレの頬をかする。
「くっ!」
 今度は上から剣を振り下ろされ…
 このっ!
 ばちいぃ
「ちいぃ」
 繰り出した拳がバリアに阻まれる。
 そして剣がオレの肩をとらえ──
「──る!わきゃねえだろおー!!」 
 と叫び、バリアに阻まれた腕に力を込めそのまま吹き飛ばす!
「うわああああああーっっっ!」
ごろごろごろごろごろ…
 バリアを張ったまま悲鳴を上げボールのように弾み転がっていくライク。
 …目、回してなきゃいいけど…
「いってー」
 そう言いながら彼がムクリと起き、頭をさする。何故か、彼のその表情と
仕草がとてもほほえましくも見えるのは気のせいだろうか…
「………………」
 …っにしてもだ…おっでれいたよな…こいつ…今の組み手だけでスピード
が数段上がりやがった…将来にはいい武道家になれるぜ…
 ライクが叫ぶ。
「バリアごと拳で殴り飛ばすなんてっ非常識だあー!詐欺だー!クレーム付
けてやるっ!金返せえー!!」
「やっかましい!そんなグチをこぼす余裕があるならとっとと、かかってこ
ーい!」
 それを大声で叫び返す。
「達也さん…あなた、もしかして楽しんでいません?」
「気のせい!」
 ゼロス…まだいたのかあんた…の疑問に一徹の如く言い切ったオレだが、
多分、武道家としての血がこの試合で高揚してきたのかもしれないな。
 そして、二人は再びぶつかり合う──




**** RINA ****

 戦闘が停止して早12分──今だに再開されていない。
 それで今何をやっているのかというと、
『じゃあーんけーん…』
 ジャンケンで誰があのおかまと戦うのか決めていた。
 それをアインが呆れながら、わきで見学している。
『…ぽん!』
 あたしはグー。
 ガウリィがチョキ。
 ゼルもチョキで。
 アメリアがパー。
『……………………』
 また勝負がつかない。
「まだ、勝負がつきませんね」
 アメリアがため息混じりにそうつぶやく。
「ふっ、まだまだあー!」
「なあ…りな。いい加減に別な手で決めないか?俺あきちまったぜ」
「なによガウリィ。言い出しっぺのあんたが最初に諦めてどうすんのよ」
「でもよお…」
「…あのお…」
 アインがおそるおそるあたしとガウリィの会話に割り込んでくる。
「何?」
 あたしの一言に、彼女はかすかに怯えの表情を浮かべ、ゆっくりとガウリ
ィの背に隠れる。
 ──あっ──いかんいかん。つい、気合いが入っていたせいか語気が荒かっ
たみたい。別に彼女は悪くないもんね。
「ごめんごめん。脅かしちゃって。それで何なのアイン」
 ビクビクしながら顔だけを背中から見せ、
「…その…あの人は達也のコピーじゃないと思うんです…」
 …じゃない…?
「どうしてそう思うの?」
「…え〜っと、実は知り合いに達也と顔のそっくりな女性を知っているんで
すけど…」
 ぴきっ
 眉が引きつるのがわかる。
「へ、へえ〜」
 それを何とか冷静に保つ。更にアインは言葉を続ける。
「…その人って言うのが達也の妹さんで…あ、それで2人は双子で…そっく
りで…とても瓜二つなんです…」
「…ふ、ふう〜ん…」
 変な文章説明にあたしは返事をなんとか返す。
 ぴくぴく──眉が痙攣する。
「…だから…その人のコピーで多分、女ではないか…と…」
 …ふ…ふふふふふふっ…
「…だったらやっぱりおかまでもないんですよね……あははははは…って…
あ…あの…リナさあ〜ん…………………ひぃっ!」
 あたしの両手に魔力光が灯り、その姿に恐怖を覚えたアインが短く悲鳴を
上げ、再びガウリィの背に隠れる。
「リ、リナさん。目、目が怖いですう〜」
 そんなアメリアの言葉など無視して、キッと、あいつをにらみつける。
「ちょっとどういうことよ。あんたが達也のコピーじゃないなんて!話が違
うじゃないの!!」
「あら?あたしはひとっことも彼のコピーだなんて言っていないわよ。ただ、
おもしろそうだから黙っていただけ…」
「……う……」
 …確かにそうだけど…
「まったく、勘違いもいいところよね。強くもない人間が、この美しいあた
しに喧嘩を売ろうとする事じたい間違っているわ…」
「一つ聞いていいアイン。オリジナルのその妹もあんな性格なの?」
「…いいえ、素直ないい子ですけど…ちょっとおてんばで…」
 更にコピーは言葉を続ける。
「…醜い岩人間にならないと強くなれない男に…」
「ほおおう〜…俺のことか…」
 ゼルの瞳が鈍く光る。それに気付かないコピー。
「…愛とか正義とか口先だけのお子さまに…」
「…お子さま……ぶう…」
 アメリアの頬が膨らむ。それにも気付かないコピー。
「…なにも考えていないぬぼーっとした男…」
「…えっと…なあ、リナ。それって誰のことだ?」
 ?マークのガウリィがあたしに聞く。
「…そして何より未熟児胸の女…」
 ぷちっ
「…そんな人たちが…」
 気付いていないコピー。あたしたちが何をしているのか──
「火炎球っ」あたし。
「炎の矢っ」アメリア。
「炎の槍っ」ゼル。
 どぐがしいかごぐおおぉーん!
 3人の同時攻撃をくらい爆発する、口先コピー。
 そう…これで戦いの幕はあっさりと下りたのだった──

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45871−6猫斗犬 E-mail 9/15-16:16
記事番号4581へのコメント
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 『スレイヤーズSTS』
  第1話 ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”6回目
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**** RINA ****

「火炎球っ」あたし。
「炎の矢っ」アメリア。
「炎の槍っ」ゼル。
 どぐがしいかごぐおおぉーん!
 3人の同時攻撃をくらい爆発する、口先コピー。
 そう…これで戦いの幕はあっさりと下りたのだった──
──いや、はずだった。
あたしたちの呪文によってもうもうと立ち込める煙がやみ始めると、そこ
には何事もなかったかのようにその場に浮かんでいた。
あの女が──
「バカな…全く効いてないだと…」
「まさか…魔族…」
「いいえ──」
 ゼルとアメリアの言葉に静かな声であたしは否定する。
「──効かないんじゃなくて、防がれただけよ。防御結界でね。それだけの
魔法容量を持っているってことにもなるんだろうけど…」
 そう、たしか…達也と別れた場所に現れたあいつも…精王雷輪だったかな…
をくらって無事でいた…彼女も同じようにそのくらいのやつは防げると考えた
方が妥当だろう。
 竜破斬あたりじゃ通用するとは思えない…竜破斬なみの威力だったもんな
…あの精王雷輪って…
 となると、決定打を決めるのには、やはりあの魔王から力を借りる神滅斬
…でも、このあとに敵がまだいるという可能性もあるから無理は出来ないし
…あ〜、こんな時に光の剣さえあれば、そいつに竜破斬ぶちかけて…………
増幅…し…て…………
「おーっほほほほほほほほ…」
 …うぐ…突然の彼女の甲高い笑い声に一瞬、ある顔が頭に浮かんで立ちく
らみを起こすが何とかこらえる。
「ほほほほほ…その程度の魔法であたしを倒せると思ったの?浅はかな子た
ちねぇ…ほほほほほ…」
 …うっ…だからその高笑いだけは、やめて…お願い…
 沈みがちな気分を吹き払いあたしは叫ぶ。
「ガウリィ、久しぶりにあの手を使うわよ。援護して!」
「おうっ」
 あたしが何をするのか、解ってるのか解ってないのか、子供のように元気
に駆け出すガウリィ。
「ゼルとアメリアもお願い」
「わかった」
「はい…でもリナさん…あの手っていったいなんなんです?」
 …そうあの手…光の剣があった時に使ったあの手…う〜ん…大丈夫かな…
暴走しなきゃいいんだけど…
「あれよ」
「あれ?」
「あれっつったらあれしかないでしょ…その程度の魔法…じゃなきゃいいも
の…よ…」
「…リナさん…それって…まさか…」
 アメリアの顔色が変わる。何かに気付いたようである。
「…ダメですリナさん、そんなの。こんなところで使ったら!セイルーンが
!!」
「そうだ、リナ。そんなことをすれば街だって…」
 アメリアもゼルも慌てて反対抗議。
 ちょっと待て…おまいら、何を勘違いしている。
「もし、それでも使うというのなら、あたしは正義の名の下にリナさんを倒
してでも止めなければいけません!!」
 津波をバックに燃える拳を天にかかげるアメリア。
「…ああ…なんて燃えるしゅちえーしょん!」
 …陶酔すんなよ…
「あのねぇ〜アメリア…」
 あたしはアメリアの両肩をがっしりとつかみ、
「よく聞いて!」
 真剣な目でアメリアを見つめる。
「いやです!」
 同じく真剣な目でアメリアがきっぱり言い放つ…………おい……
「今あたしがリナさんに説得させられたらセイルーンはもう、おしまいです。
だからこそあたしは断固として首を縦に振りません!!」
「そこまで言わなくても…第一、あたしが所かまわず呪文をほいほい使うよ
うな人間に見える?」
「見えます」
「…いや…そんな…はっきり言わなくても…」
「例えばゾアナ王国!!!!」
「……う゛……」
 …そ…そりは…
「俺達も何度か吹き飛ばされたしな…」
 それはゼル達だから…大丈夫だと思って…
 そんな会話をしているのに、気付いているのかいないのか、ガウリィが雄
叫びを上げて女魔道士に剣を振るう。
 だが、見えない結界に剣は阻まれる。
「わかったから、アメリア。そんな目くじら立てないで…よく見て、あの手っ
て言うのはこういう手なの…………烈閃咆!」
 間髪いれずに呪文をガウリィに向かって放つ。
 それに気付いたガウリィが慌てず騒がず剣でそれを受け止め、
「うりゃあっ」
 一声叫び。結界に向け剣を振り下ろす。
 剣の先から飛び出る、あたしの烈閃咆より威力のある烈閃咆が結界にぶち
当たる。
 おおーっ、偉いぞガウリィ。あたしのやりたいことを野生のカンで理解し
てたな。
 2人に顔を向け、
「解ったわね。2人とも。あの剣は多分、光の剣と同じ性質を持っているわ」
「そう言うことか…」
 ゼルが頷く。
「アイン!竜破斬を知ってる?」
 彼女のケンジュウが光を放ち、ガウリィの援護をする。
「知ってます」
「もつの?」
「もちろんです。達也もよく利用してました」
 彼女がこちらに笑顔を見せる。そのまま、ケンジュウが光を放つ。一寸違
わず結界へ。
 どうやら、あたしの考えを理解しているようである。
 それに達也もよくやってるのか…となると…
「…わかった…」
 …遠慮しなくても良いわね。
「いい…2人とも、あたしは竜破斬を唱える。だからそれまではガウリィと
一緒に、援護をお願いね(ハート)」


『火炎球っ』
 ゼルとアメリアが呪文を解き放つ。
 2つの火球が彼女に向かい、結界の手前でぶつかり合い誘爆する。
 今だ!
「竜破斬っ」
 その時──
 彼女を光が襲い、大きな爆発が包み込んだ。
 竜破斬には、ほど遠い威力だが──
 光が飛んできた方向を見やる。
 大筒1つを肩に掛け…またいつの間に、どっから出したんだ…あたしと目
が合うとウィンク一つ投げかけるアイン。
 ナイスフォロー!
 これで、あいつがあたしの竜破斬をくらったと勘違いしてくれれば…
もうもうと立ち込める煙がやみ始めると、やはりあの女は何事もなかった
かのようにその場に浮かぶ。
「そんなっ!」
 その姿を見てあたしは驚愕な声を出す。
「まさか…今のが竜破斬とかと言う物かしら…だとするとずいぶんと低レベ
ルな呪文ねえ」
 女は言う。完全に小馬鹿にしたセリフで。
「…リ、リナさんの…竜破斬が…」
「…効かないだと…」
 アメリアはその場に崩れ落ちながら、ゼルは唖然とした表情でつぶやく。
 うむうむ、いい芝居じゃのう二人とも。
 何となく2人の目が笑っているように見えるのは、あたしの気のせいでは
ないのだろう。
「この程度じゃあ、お遊びにもならないわね…そう言うわけだからあなたた
ちさっさと死んじゃいなさい」
 彼女の手から何とも巨大な魔力光が灯る。
 まずい!あんなのを受けたらいくらなんでも…
 突如、影が彼女を被う。
 空高く、彼女よりも更に高く上を行く、ガウリィの影。
 慌てず、彼女は口を開く。
「1匹足りないと思えば…それに、そんな剣などあたしに通用……なに?」
 やっと気付いたらしい。ガウリィが持つ剣が金色に輝く剣では無く、赤く
燃える光の剣に変わってたことに。
「うおおおおぉぉぉーっ!」
 剣が振り下ろされる。
「くうっ」
 嫌な予感をもったか、慌てて避けようとする女魔道士。
 だがおそい。
 剣が結界に触れ、
 ぎちいぃぃーっ!
 赤き剣は見えない壁に遮られる。
 ──そんな、これでもだめなの?
 女が歓喜に近い表情でガウリィに手を向ける。
 その手は魔力が込められ…
「崩霊裂っ」
 唐突にゼルが『力あることば』を解き放つ。
 ガウリィの持つ光の剣が同時に青白き光をまとい、次には赤き、そして青
白き光が混じり合う。
 竜破斬がかかっている光の剣に崩霊裂をかけた──なんて無茶を。昔の光
の剣じゃないんだから。
 容量をオーバーして爆発したらどうすんのよ!!
 あたしの心配をよそに唐突に剣が、光が大きくなる。
 2つの光が渦をまく。
 もしかして、2つの魔法が何らかの相互干渉を起こしたのか──
 ぴしっ
 2人の間から小さな音がした。
「崩霊裂っ」
 アメリアが叫ぶ。
 だあああああって、だからちょっとまてい──
 そんな、簡単に強力な呪文を、ぽこぽこ、ぽこぽこ、剣にかけるなあー!
 更に光が大きくなる。
 びぎいぃぃーんっ
 そしてそんな音と同時に光は全くの抵抗もなく、彼女の左腕を──

 地面に着地──
「うおおおおおぉぉぉぉー!!」
 ──したガウリィが吠え、走り、近くの瓦礫を踏み台にして再び飛ぶ。
 左腕を失った女魔道士へ──
 その彼の手にはあたしの竜破斬とゼルとアメリアの2重の崩霊裂が干渉し
あい、渦が舞う光の剣。
 魔道士は慌てて手を天にかかげ、火球を作り出す。
 させるかっ!
「炎の矢」
 がうううぅぅーん!
 あたしの一本の矢が火球をとらえ、誘爆させる。
 彼女がその爆発に視界を遮られる。
「ちぃっ」
 煙の先から舌打ちがする。
 ガウリィが煙の中に吸い込まれ、
 ずうんっ!
「うぎゃあああああああっー!!!」
 女の絶叫が周りに響く。煙がはれる。
 攻撃魔法の誘爆が勝負の勝敗を決めることとなり、ガウリィの手に輝く剣
は見事に視界をさいぎられた彼女の胸を貫いていた。
 血が流れる。緑色した不気味な血が。
 そして、悲鳴がやむと彼女の頭がたれ落ち、長き髪が顔を覆い隠す。その
彼女の最後の表情はあたし達には見えない。見えるのはガウリィのみ。
 不気味な静けさが当たりに漂う。
 これで終わっ──
「──ま…だ──」
 女がつぶやく。
 ──なっ──まさか!──
「ばかなっ!」
 ガウリィが叫び、驚愕の顔のまま目を見開く。
 彼女の右腕がガウリィに向かって大きくなぐ。
「くはあっ」
 彼女のパンチをもろにくらい吹き飛び、大地に落ちる。
 剣を彼女の胸に残したまま。
「ガウリィ!」
 あたしは思わず、叫びながら彼に駆け寄り、
「いてててて…」
 そう言いながらムクリと起きあがる彼に、しばし、胸をなでた。
「大丈夫ですか?ガウリィさん」
 アメリアの心配する声に、
「くわあ〜女のくせになんてバカちからだよ…」
 答えず殴られた頬に手を当て、そう言いながら渋い顔をする。
 そして、握り拳を作り、力強く叫ぶ。
「…まるでリナじゃねぇか!!」
 すぱあぁぁぁぁぁんっ!
 そしてあたしの手に持つスリッパがガウリィの頭をはり倒した。
 こんな時にまでボケをかますんじゃないいぃぃっ!!!!


「しかし信じられん」
 とゼル。
 確かに…人間が左腕を失い、胸に剣を突き立てたまま緑色の血を流し、憎
悪のまなざしでこちらを睨み付ける姿なんぞ、はっきしいって不気味この上
ない。
 これで首が吹っ飛んでもまだ動けたりしたら、あんたゴキブリだぞ。
 もしそうなったら、熱湯でもぶちかけるか…
「…はあ…ゼ…ゼオ様の…はあ…た…めに…はあ…はまだ…」
 ゼオ?そう言えば達也がそんな名前を言っていたような…
「…全員…殺して…あげるわ…」
「その体で?無理なんじゃないの?」
「…それ…は…どう…か…しらね…」
「どういうこと?」
「…こう…いう事よ…」
 おもむろに手を上げ、振り下ろす。
 ……?……
「いけない!」
 何かに気付いたのかアインが叫ぶ。
 かあっーーー!
 瞬間、あたし達はまぶしく輝く、何かに包み込まれ、焼け付くような衝撃
波が真上から襲いかかった。
 その衝撃波と地面とでサンドイッチ状態で押しつぶされる。
 そしてその後に爆発が起こりあたしは宙へ投げ飛ばされ、地面にたたきつ
けられる。熱とショックで息が止まる。痛みで意識が失いそうになる。
「……くうっ……」
 今のはいったいなにが…あたしは何とか痛みに耐えて、上体を起こす。
 そして空に。あたしの目に映ったものは…
 異様な形をしたどでかい物──あたしの知る限りそんな風に形容するしか
なかった。
 大きさは山一つ分はあるだろう。鳥が羽を畳んでいるようなそのような形。
 その表面は黒く光り輝き。それは空中で浮かんでいる。
「…少し…標準が…甘かっ…はずし…」
 女が静かに言う。
「まさか、あれもあいつのか…」
 少し離れてゼルが瓦礫に埋もれた体を起こす。
「ああ〜んっものすごく痛いですう〜」
 とアメリア。さすがさすが鉄骨娘。
「おわああー、びっくりした」
 首から下がすべて瓦礫に埋もれるガウリィ。
 ほっ…とりあえず無事…
「アイン…そうだ。アインは?」
「…こ…ここです…」
 声にあたしは振り向く。そこには右腕のない女性が右足を引きずりながら
やってくる。
「アインその腕…」
「…あはは…直撃くらっちゃいました…」
「アメリア!治療呪文を…」
「は、はい」
「あ、いいんです。あたし。人間じゃないですから(はーと)」
『はっ?』
「あたし、感情を持つ人形なんです。ほら、血なんかでてないでしょ?」
 そういって彼女は自分の右腕の傷口を見せる。確かに血は出ていない。そのかわり火花がばちばちと音をあげていたりする。
 そうか…ガウリィが言っていた「人間じゃない」とはこういうことだった
のか。
「じゃあ…まって…それじゃあ達也も…」
「いいえ…達也はれっきとした人間ですよ」
 笑顔のアイン。
「…やはり…全員…生きて…いたか…」
 ちいぃぃ…
「火炎球!」
 アメリアの放った光の玉は女魔道士に直撃する。
 吹き飛ぶこともせず、女はその場にたたずむ。
 彼女が腕を振り下ろす。
 空に浮かぶ物体から一条の光が落ち襲う。
 再びあの焼け付くような衝撃が襲う。
 …………………
「…リナ…」
「どういうつもりです。ねらいはあたしと達也のはず…」
 一瞬気を失っていたのかそんな、あたしを呼ぶガウリィの声と叫ぶアイン
の声でふと気がついた。
「…ガウリィ…あたし…いったい…」
 その返事とともに上半身を起こすあたしにガウリィは安堵のため息をはく。
 ゼルとアメリアもそこにいた。
 まだ、頭の中がもやがかかっているようにはっきりしない。
「…関係ないさ。あたしはここにいる害となす者の排除を任されている…」
 その声にあたしの意識はしっかりした。勢いよく立ち上がる。
「…この者は…ゼオ様に…害となす者とみた…だから殺す…」
 女魔道士の手が上がる。
 またくる!!
 全員が身構える。あわてて呪文を。
「…だめ…このままじゃ…みんなが…」
 叫びながら両手を広げるアインの周りから風が巻き起きる。
 いったいなにを…
「…あら…アインたら…こんな所に船を転移させる気かしら…」
 船?
「…………」
「出来ないわよねえ…こんな場所に中型艦とはいえ、あんな物を転移させた
ら…」
「…転移による衝撃波でこの一体残らず吹き飛ぶ…」
 不気味な微笑を見せる彼女にアインが答える。
「…今から船を呼び寄せても5分はかかる上に…大気圏を突破するには…あ
たしが戻らなければならない…けど、今のあたしの体では…転移で発生する
磁場に耐えられない…それで船を動かせず…ジ・エンド…」
 アインの体から火花が散る。
「…そういう事ね…今のあなた達では打つ手は無いのよ…これでゼオ様に…」
 女魔道士の手が…
「…今度はフルパワー…で打ってあげるわ…」
「まって!…そんなことしたら…」
「…あたしも…吹き飛ぶ…でも、そんなの関係ない…」
 …このっ!
 すでに呪文はできあがっている。
「獣王牙操弾っ!」
「烈閃咆っ!」
「青魔烈弾波っ!」
 あたし、アメリア、ゼルの順に呪文を解き放つ。
 ──が、それら全てを受けながらも、そこにはうつろな目をした彼女が立
ちつくす。
「そんな…なんで…たおれないんです?結界は張られていないのに…」
「ろうそくの最後の炎だ…最後の燃えかすが勢いよく燃えているんだ」
「まずいわ、ああいうのが一番、倒しにくいのよ…2人共、とにかくありっ
たけの呪文で彼女を止めるのよ!!」
 次々と繰り出される3人の呪文。
 だが、それら全ての呪文を受けてまだ立ちつくす彼女。
「このままじゃ…街が、セイルーンがあ〜」
 泣きながらも次々と攻撃魔法を繰り出すアメリア。
 まずい、このままじゃ…あたし達の方が先にまいってしまう。
「この!」
 アインが彼女に向けて、大筒を構える。
「…あたしは…ゼオ様を…愛している…」
 攻撃をくらいながらの彼女の言葉に、動揺したのか一瞬、アインの眉が揺
れる。
 彼女がアインの方へ顔を向け、
「…アイン…あなたなら…この気持ち…解るでしょ…う…」
「…あ…」
 悲しい目に惚けるアイン。解るって…どういうことよ?
 それじゃあ…まるで…
「撃て!アイン」
 ゼルが叫ぶ。
「アインさん!」
 アメリアも叫ぶ。
「…ねぇ…アイン…一緒に…ゼオ…様の…ところ…に…」
「うわあああああぁぁぁぁー!」
 アインが吠えながら大筒の引き金を引く。
「…ア…イ…」
 そして、光が彼女を包み込んだ。
 一時、静寂が入る。
「…ま…間に合った…の…か?」
 あっけに取られながらガウリィがその場所を見つめて問いていた。
 光がやむとそこには女魔道士の姿はない。
「ああ…どうやら…」
「…間に…合いませんでした…」
『──なっ──』
 ゼルの言葉を遮る、空を見上げるアインの言葉に全員の声が重なった。
「どういうことですか。アインさん」
 涙声で叫ぶアメリア。
「…ふ、船の暴走…」
『!?』
 全員が彼女の言葉に絶句する。
「主砲のエネルギーが…ほんの少しずつですが…上昇してます…100%ゲ
ージまで後12分。こうなってしまえばもうだれも止められません…そして
その一撃だけでセイルーンは完全に崩壊します…」
 そんな彼女の言葉にあたしの頬に一筋の汗が流れた。


「どうしたらいいんですう」
 アメリアが叫ぶ。
「…こ…こうなったら、あたしの竜破斬であの船を吹き飛ばす!」
 少しの沈黙を破ってあたしが言う。
「無理ですよリナさん」
 が、それを静かなアインの声が冷たくあしらった。
「不可能ですよ…リナさんだけでは…」
 むかっ
「あんたねぇ!」
 思わずアインの襟首をひっつかみ、
「無理?無理だろうと、なんだろうと、そんなのやって見なきゃわかんない
じゃない。ただの竜破斬じゃあだめだって言うんならタリスマンでも何でも
使ってやるわよ。重破斬でも成功させてみせるわよ!」
 怒気があらくアインの首を締めかけている。
「どういう理由があろうとなかろうと、これ以上あたしの目の前で人を殺さ
せない。見殺しにはしたくはない。サイラーグのようにしたくない!!」
 あたし手に力がこもる。強く彼女を締め上げる。
「バカっ、やめろ!リナ!」
 ガウリィが割ってはいり、あたしの手からアインをひっぺがそうとする。
「バカってなによっ、バカって!」
 あたしの手から彼女が離れる。
 悔しいっ、こんなのあたしじゃない!
 頬に熱いものが伝った。
「泣いてるんですか?リナさん…」
「泣いてないわよ…こ、これは目にゴミが入っただけ…」
 あわてて手で涙をふき取る。
「…せめて…もう一人いれば…」
 しばらくの沈黙の後にアインがぼつりとつぶやいた。
 全員の目が彼女に注ぐ。


「あの船にはバリアが張ってあります。みなさんにわかるように言うなら防御結界のようなものです。その防御力はリナさんの竜破斬でも防げます」
「だからタリスマンこみの…」
 アインが手であたしを言葉をせいする。
「話は最後まで聞いてください…」
「…う、うん…」
「とりあえずバリアを破る方法があったとします…けど、あのバリアにはも
う一つの特徴があり、それがリナさん一人では無理だという結論なるんです」
「どういうことだ?バリアを破りあの船もろとも吹き飛ばせばいいんじゃな
いのか?」
 ゼルガディスが質問する。
「いいえ、それができないんですよ」
「できない…?」
 あたしの眉間にしわがよる。
「バリアを破れるエネルギーを感知し、接触した時、バリアはそのエネルギ
ーとともに誘爆して船への衝撃を最小限に抑えるようになっているんです。そして再びバリアが張り直される…」
 …………………
「あのバリアがある限り、ただのいたちごっこなんでえす。いかにリナさん
が竜破斬を増幅したとしても、バリアと船を丸ごと吹き飛ばすことは出来な
いと思います。せめてもう1人…もう1人…バリアを破壊する者と、船を破
壊する者の2人がいれば…」
「もう1人いればいいんだな…」
 不意に後ろからかけられる声。
 慌てて振り向き、ゼルとアメリアは思わず身構える。
「ずいぶん遅かったじゃないか達也」
 ガウリィが振り向きもせずにそう言った。

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45881−7猫斗犬 E-mail 9/15-16:18
記事番号4581へのコメント
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 『スレイヤーズSTS』
  第1話 ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”7回目
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**** RINA ****

「よっ!」
 片手をあげ、笑顔で挨拶する達也。
 その笑顔とは裏腹に服はかなりぼろぼろで埃まみれ、体はところどころに
かすり傷をおっている。
「達也、あんた今までどこに…って、あっゼル、アメリア。この子は敵じゃ
ないわ。アインの相棒の達也よ」
「この人が?」
「まだ、子供じゃないか…」
 アメリアとゼルが互いの感想を述べる。
「言ったでしょ、まだ14、5の少年だって。っと、それより達也、あんた
今までなにやってたのよ…」
「え?あ!うん…ライクと戦ってた」
「ライク?」
「ん?…あっ…そっか。ほら、あん時のオレのコピー…」
 …ああ…あの…あれね………って、ちょっと待てえ……
「戦ってたって…今までずっと…」
「え?うん、まあ…」
 頬の辺りをぽりぽりかく達也。そして大きく息を吸い、大きく吐く。
 その彼の背後から、怒気をはらんだアイン…あんた…いつの間に彼の後ろ
に回った…
「…達也…」
「ぎくっ」
「また相手と試合と言う考え方で格闘技を楽しんでましたね…」
 半眼の目を達也に向けながらアインがぼつりとつぶやく。
「…え?…え〜と…」
「いっつも強い人と戦うとそうなっちゃうんだから…そのためにあたし達が
どれだけ苦労を…」
「…いや…その…な…」
「まあまあ、いいじゃないかアイン。どうせここに来たってことはあいつを
倒してきたってことなんだろ…」
「んにゃ…逃げられた…」
 楽天的なガウリィの言葉に意外な言葉の達也。
「…ああぁ…やっぱひ…」
「…にっ…逃げられたあ」
「うん(はーと)」
 …うんって、笑顔であっさり頷くなよなあ…
「しかもさあ…泣きながら…おまえなんか大っ嫌いだー!おまえの母ちゃん
でえべえそー…とか何とか言って、ぱあーっと消えちまうんだもんなあ…あ
んな風に言われると追っかける気にもならんよ」
「…それって、子供の喧嘩じゃないか…」
 呆れた顔のゼル。
「まあ…コピーってーのは元々、見た目より精神面が子供だし…」
 ゼルの言葉に腕を組んでうんうん頷く達也。
「あんただって子供でしょうが…」
 つぶやくあたし。
「…まあ、それはそれでこの辺に捨てといてさ…」
 無邪気な顔で彼が船を指さす。
「…あっち何とかした方が…」
 全員の目が半眼で彼を見つめる。
「…えっと…」
 指さした状態で固まり、彼から汗がにじむ。
 あたしは一つため息をつき、
「…そうね…達也。あんた、あの結界を破れる?」
 そんなあたしの質問に達也は大きく息を吸う。
 と突然、子供とは思えぬしっかりした表情に変わる。
「ああ…多分な。アイン。その体でなんだが…あの船のバリアに干渉できそ
うか?」
 多分?
「うん…ちょっとやってみる…」
 そう言って彼女は目をつぶりなにやら小声でぶつぶつと独り言を始める。
 何をしてるんだろうか…
「…ダメ…完全には消しきれない…」
 数秒ほどで彼女がそうつぶやいた。
「ごめん…なんとか通常の50%までは低下させることが出来たんだけど…
船が暴走してるからバリアの方も150%までアップしてるみたいで…」
「…50か…全力でやればそのくらいのバリアならオレが吹き飛ばせるだろ
うが…2撃目で船を吹き飛ばす前にバリアが回復か…」
 顎に手をやりながら息を大きく吸いそして吐く達也。
 そしてこっちを見て、
「…やっぱり…リナに頼るしかないか…」
「あの結界の中でまず、達也がそのバリアを破る。そしてすかさずあたしの竜破斬で船を撃沈する。そういう事ね」
「…ああ…だが、チャンスは一回だけだ。バリアの方も暴走してるんなら…
一度壊され次に張り直されるバリアはたぶん強固されちまうだろう…」
「…なるほど…」
「それと言っておくが…オレの精王雷輪でもあの船は一撃では倒せないぞ。
それ以上の攻撃魔法でぶちこわさなきゃな。できるのか?リナ」
「ふっ、誰に物言ってんの?このあたしは世紀の天才美人魔道士リナ=イン
バースよ。あんなのタリスマンこみの竜破斬でちょちょいのちょいよ」
「そいつはすごい…」
 大きく息を吐き、心の底から驚きの声を上げる達也に、あたしはジト目で、
「あら…達也こそ、ホントはものすごい裏技でも持ってんじゃないの?」
「…さあ…て…何のことか…」
「とぼけんじゃないの…」
 そう言いながら左腕で、あらぬ方向を向いて誤魔化す達也の首を締め上げ、
「見たんだからね、あの光の塔。どうせ、あんたの仕業なんでしょ」
 右の拳をぐりぐりと彼の頭に押しつけてやる。
「とっととその呪文教えなさい。あたしがちゃんと効率よく使って上げるか
ら」
「はて?呪文?最近、記憶力がとぼしくって、全然覚えちゃいないんだが」
「ええーい!ガウリィみたいなボケをカマすんじゃない」
「あははははは…」
 笑って誤魔化す達也に、笑顔を保ちながらあたしは更に右手でぐりぐりぐ
りぐり…
「まあ、お遊びはこの辺にして…」
 達也がするりとあたしの腕から抜け、
「…アイン…もしかしたら衝撃波が襲ってくるかもしれん。きついだろうが、
街全体にバリアをはっといてくれ…」
「了解!」
 空に浮かぶ船をにらみつける。
「確かに遊んでる場合じゃないわね…ゼル、アメリア。敵がまだいるかもし
れないからあたし達の呪文が完成するまで防御結界でのサポートお願い」
 2人が頷く。
 それを確認してから、ちらりと達也の方を盗み見る。大きく息を吐く彼…
これで何度目だろう…
「ガウリィ…」
 あたしはこっそりとガウリィに聞こえるくらいの声で呼ぶ。
「ん?なんだリナ」
「あんたはあの子について上げて。きっとあの子…」
「…ああ…へとへとに疲れてるな…」
 さすがガウリィ。気付いてたか…
「でも…リナは…」
「大丈夫よ。この程度じゃ怪我にはいんないし。彼に比べればたいして疲れ
てないわ」
「…わかった…無理するなよ…」
「うん…」
「…本当にたのむぜ…」
次の瞬間、生暖かい何かが頬に触れ…………………かああああああああっ
ものの見事に真っ赤になるあたしの顔。
「……なっ、ななななななっ、なっ……」
なっなっなっなんちゅうことをっ!!!!!!
耳が、顔が熱い。心臓が高鳴りをあげる。
「ちょっと、ガウリィ。あんた、今、なにしたああーーーー!!!」
あたしは恥ずかしさも加わって一気にしゃべくった。
 そんなセリフに後ろ手でぱたぱたと振りながら、ガウリィがゆっくりと達
也の方へ進んでいく。


 少しの距離をあけあたしと達也は空に浮かぶ船をにらんでいる。
「…ふう…そういやよ…」
 達也が大きく息を吐き、おもむろに言葉を吐く。
「お互いまだちゃんとした自己紹介してなかったっけ?」
「あははは(はーと)そう言えばそうだった」
 そして互いの顔を見つめ、
「んじゃまあ…」
 彼のその言葉に一つほほえみ、
『やってみますか』
 2つの声が見事にはもると全員がその場で力強く頷いた。
 あたしが腕を十字に切ると、タリスマンに光が灯る。
 魔力増幅の呪文──

 ──四界の闇を統べる王──

 呪文を唱えながらもあたしの目は達也の方を向いている。
 足下がふらついて危なっかしい。
 突然、彼の足が崩れた。近くで立っているガウリィが慌てて捕まえる。
 あんた、そんなんで本当に大丈夫なの?

 ──汝の欠片の縁にしたがい──

 アメリアに頼んで、先に復活の呪文でもかけてあげたほうがよかったのだ
ろうか…
「…ああ…大丈夫…やれる。それによ──」
 ガウリィに支えられている彼は、うつむきながら、再び目をつぶり、深く
息を吐き、深く息を吸う。
 そしていきなり顔を上げると、

 ──汝らすべての力もて──

「ここでやらなきゃ男がすたるってね!」
「よく言った!」
 達也が叫びガウリィが言う。
 その通り!!
 彼から一陣の風が舞う。
 ここであたしは達也を信用し呪文だけに専念することにした。




**** TATUYA ****

 足がふらついている。
 今までは、気か魔力、どちらか一方だけつきかけた事はある。
 だが、両方というのは今回が初めてだ…これで気も魔力も使いきっちまえ
ばオレはどうなるんだろうな…
「おおっと…」
 崩れかけたオレの体をガウリィが慌てて支える。
 リナは既に呪文の詠唱に入っている。目だけがこっちを見つめ、その瞳が
まるでオレを「大丈夫?」っと心配しているかのようだ。
「…わりいなガウリィ…」
「なあに…いいって事よ。それに今の俺はこんな事ぐらいしか手伝えんから
な。おまえさんぐらいは俺が支えてやる」
「…サンキュー…」
 目をつぶり、深く息を吐き、深く息を吸う。
 目を開く。
「大丈夫か?」
「…ああ…大丈夫…やれる。それによ──」
 うつむいて、再び目をつぶり、深く息を吐き、深く息を吸う。
 目を開き、勢いよく顔を上げ、
「ここでやらなきゃ男がすたるってね!」
 叫ぶ。
「よく言った!」
 握りしめた左手を額にあて、精神を集中する。
 体中にあるありったけの気を全て右手にかき集める。
 本日、2度目の混合術。
 精霊王・光聖龍から力をかりる呪文──

 ──眩く全てを照らす者
   六精の 光を統べる王
   全ての夢をかなえし時 時に迷わぬ者──

 オレのあの叫びでリナも心配するのを止めたのか、もう彼女の目は標的の
船だけしか見ていない。

 ──我が力 我が身に答え 無とかえし
   紅蓮の炎も 力と未来のリングとなりて
   全ての闇を輝き染めよ──

 歯を食いしばる。どんどんと消耗していく魔力。
 力ある言葉を悲鳴を上げるかのように叫ぶ。
「精王光輪(アスレイン・ファーリング)っ…」
 そして前へつきだしたオレの左手に黄金の光の五紡星が姿を現した。




**** RINA ****

 増幅呪文を終え、すぐに竜破斬の詠唱に入る。
 お互いどちらかの呪文が速くても遅くてもそれでアウト。
 けど、ここで焦るわけにはいかない。

 ──黄昏よりも昏きもの
   血の流れより紅きもの──

「精王光輪っ…」
 達也が叫んだ。
 だめっ達也、まだ速すぎる。あたしの呪文が完成してない!
 あたしは達也の方へ思わず目をやる。
 輝く黄金の光の五紡星が彼の前に姿を表す。

 ──時の流れに埋もれし──

 焦るあたしの口調が速くなる。
「まだです。リナさん。達也のはまだ完成してません」
 アインがあたしの心を見透かしたのか声をかける。
 完成してない?それってどういうこと?
 だってあれが…
「うおおおおおおぉぉぉぉぉー!」
 吠える達也。その彼の右手が。

 ──偉大なる汝の名において──

 なに?
 突如、光り輝く。
「なんだあれは」
 ゼルがつぶやく。

 ──我ここに闇に誓わん──

 それはゆっくりと何かの形に変わり、光の大筒へと変化した。
『あれは達也さんの大技ですよ』
 その声はゼロス。あんた、今までどこに行ってた!
『みなさんも見たんでしょ。あの光の塔を。あれは達也さんの仕業ですよ』
 姿は見えないが…精神世界面から声だけを飛ばしているのだろう。
『彼がやろうとしているのは、気と魔法をあわせた混合術…』

 ──我等が前に立ち塞がりし──

 達也が目の前に浮かぶ光の五紡星を光の大筒に詰め込む。
「…けど、今の達也では半分も威力は出ないでしょうね…」
 アイン?
 その顔には悲しげな表情が浮かんでいる。
「いつも…1人だけで無茶をするんだもん…何度言っても…」

 ──すべての愚かなるものに──

 痛みをこらえるような顔で、達也はふるえる手でそれを構える。
『その威力はこの僕でさえ討ち滅ぼせます』
 …ゼロスさえ討ち滅ぼせるですて…
『かつてダークスターを倒すきっかけとなった、カオス・ワーズ』

 ──我と汝が力もて──

 彼を手伝うかのようにガウリィが彼の後ろから手を伸ばし、光をつかむ。
 …混合魔法…まさかあれって…
『あの時に使った、魔と神の力を合わせた混合魔法。それと似たような方法
なのでしょうね』
 …あっ!まってそれじゃあ…
『しかし、彼のは自ら作り上げた暴走せし、巨大な力。1人の人間にはとて
もあつかえられぬ力。そしてそのダメージの蓄積も、力を抑えるために削ら
れる精神力も多分…相当な物…』
 …やっぱり…

 ──等しく滅びを与えんことを──

 ここであたしの呪文が完成する。
「やれっ達也!」
 ガウリィが叫ぶ。
「おうっ!」
 かああぁぁぁーっ!
 光の大筒から眩き光る巨大な帯となって船に突き進む。
 その反動に、歯を食いしばる2人の足が地面を滑らせ、少しだけ後退する。
 風が激しく、暴れ。光が力強き熱を、優しき温もりを。
 風が優しく頬をなで、皆の髪やマントを激しくなびかせる。
 光が船と接触する。光はバリアと呼ばれる物に阻まれ…
 ぴきいぃぃーんっ!
 …ず見え無きクリスタルの音をたて砕け散る。
「バリアの消滅、確認!…今です!リナさんっ!!!!」
「竜──」
 光の大筒が消滅すると、そのまま前のめりに倒れかかる達也。
 そんな彼を慌ててガウリィが抱き止める。
 その光景をあたしの目がうつす。
 吹き飛べっ!!!!
「──破斬!!!!」
 がぐおおぉーん!
 そしてあたしの放った増幅版・竜破斬が見事に空飛ぶ船を吹き飛ばした。


「終わったのか?」
 ゼルがつぶやいた。
「ええ…何とかね…とっそれよりも達也…」
 あたしはある方向へ目を向ける。そちらからガウリィがゆっくりと歩いて
くる。達也を抱き上げながら。
「ガウリィ。達也は?」
「寝てる。よっぽど疲れたんだな。それでも、あの船がリナの呪文で吹き飛
んで完全に消えたのを確認するまでは必死になって凝視したたぜ。その後は
安心したまま寝ちまった」
「…そう……アメリア…疲れているとこ悪いんだけど…この子に…」
「はい!復活ですね」
 あたしの意図をはかったアメリアが、地面におろされる達也に向けて、呪
文を唱え始める。
「…それにしても…大した子よねこの子…」
「…ああ…」
 あたしの言葉に返事を返しながら、優しい顔で達也の頭をなでるガウリィ。
「どうしたんですかガウリィさん?何か懐かしげな表情で達也さんを見てま
すけど」
「…ああ…似てるんだ…」
「似てるって誰に?もしかして弟かその辺?」
「いや…弟はいない…」
「じゃあ…誰に似てるの?」
「忘れた」
 …おい…
 ガウリィの言葉に全員が脱力する。
「…いや…多分、俺が小さい頃に近所にいた子だと思う」
「ふう〜ん」
 そういや…あたしってガウリィの事に関しては何も知らないのよね…家族
の事だって効いたことないし…ましてや故郷がどこかさえ知らない…
「はい。とりあえず怪我はふさぎました」
 とアメリア。
「大丈夫なのかこいつ?」
「大丈夫ですよ。まだ若いんですし。体力もすぐに戻りますって」
 アメリアの言葉に安堵のため息のガウリィ。
「…さてと…んじゃあ後は…い〜っぱい…ご飯を食べて…食べて食べて食べ
まくって…」
「おう…飯か!」
 ガウリィがあたしの言葉に反応しガッツポーズする。
「…後はふっかふかの布団で…」
「変わってないなおまえら…」
 ゼルが小声でぼやく。でも無視。
「あっ!そうだガウリィ」
「ん?なんだリナ」
「ちょい、ちょい」
 あたしは彼を手招きする。それに疑問も持たずに近寄る。
 …ふっ…かかった…
「ていっ!」
 ごっ!
 見事にあたしの上段蹴りが頭部をとらえ、そのまま彼は大の字に倒れる。
 そしてしばしたってからムクリと置きだし、ぶうたれる。
「いてーな、リナ。いきなりなにすんだよお〜」
「やっかっましい!あんたが達也の方に行く前にあたしに何をしたのか、忘
れた、なんて言わせないわよ!!」
「…あっ…………いや…それは…あのな…」
 あたしのセリフにとまどい、まったく言葉になっていないガウリィ。
 よっぽどあたしの顔が怖いらしい。
「うふふふふふ…」
「ま…まて…リナ。落ち着け。よお〜く、話し合おう。なっ!」
 不気味な含み笑いでじりじりとガウリィに近づく。
 同じ距離間を開けながらじりじり後退するガウリィ。
「問答無用!」
「うわあああああぁぁぁぁっ!」
「この関係も、変わらずじまいか…」
「…そのようですね…」


「…さて…帰ろっか…」
「そうだな」
 ぽつりとつぶやいたあたしの言葉にガウリィが答え達也を抱え上げる。
「歩けますか?アインさん」
「…ええ…なんとか…」
 アメリアの問いに静かに彼女は答える。
 からんっ
 近くで小石が弾ける音がした。
「…この…まま…で…は…」
『?!』
 全員がその声の方に振り向き、一斉に凍り付く。
「…あんた…」
 あの女魔道士が瓦礫の山から這い出してくる。
 切り裂かれた左腕はなく、髪の毛はすすだらけでちりぢりになり、右足を
引きずり、体中から火花を上げ、顔の半分がはげ落ち鉄色の骨が露出し、そ
してなにより今だ胸に突き刺さる光の剣。
 …なんちゅう執念…
「こいつ」
 ゼルが構える。
「…その男を…置いて行け…そいつだけは…ゼオ様に…」
 彼女から紡ぎ出される、男よりも更に野太い声。
 その声で更にあたし達は硬直する。
「…そ…そう言うわけにはいかないわ。人間としてね。そして何よりあなた
のためにもね…」
 あたしは睨み付ける。彼女を。そしてある物を…まだ使えるか…
「…そうか…ならば…おまえ達も…」
 両手をあわせあたしは呪文を唱える。
「火炎球?」
 アメリアがつぶやく。
 いぶしかめな表情を今彼女はしているだろう。
 この魔法では倒せないと思っているからこそ…
「…抵抗…するのか…」
 女魔道士の手から光が灯り始める。
 その光は弱々しく頼りない…風前の灯火…消え始めた炎…
 あたしは慌てない。ゆっくりと呪文を紡ぐ。
 あなたはある人のために…自分の命を懸けてまでこんなことをしている。
 あなたがしたことは許せる事じゃない…
 許せる事じゃない…けど…あたしにはそれをとやかく言える権利は無い…
 あたしだって、ガウリィを助けるために世界さえ犠牲にしようとした…
 …いえ…実際にしてしまった…そして自分も犠牲にして…
 だから、あなたの気持ちはわからないでもない。
 …でも…全く違う気持ちもある!!!
 女魔道士の魔力光が強く輝き出す。
 あたしの両手の間から生まれた青白き炎。
「火炎球っ!」
 先に仕掛けたのはあたしの方。
 放り投げたそれは頼りなく彼女へ向かい、突如、彼女の前でかき消える。
「消えたなんで?」
 アメリアが不審な表情であたしを見る。
 この場の状況にあたし以外は誰も理解出来ずにいる。
 それでもあたしは勝ち誇ったように、そして悲しい表情でその場に立ちつ
くす。
「あっ!」
 アインが何かに気付く。
「…な…何を…しようとしていたのか…しらないけど…これで──」
「まずい!リナっ!!」
 ゼルが叫ぶ。何かの呪文を唱え、それをアインが腕でせいする。
 女魔道士は手に灯る赤き光を解き放とうと…
 だが──
「ブレイク!」
 …ごめんね…心でわびながら、あたしはゆっくりとした動作で指をパチン、
と…そう…火炎球は消え、無くなったわけではない。
 鳴らした同時に──
「──え?──」
 自分に何が起こったのかも解らないまま彼女の胸が大きくはじけ飛び散る。
 あの胸に刺さっていた光の剣に増幅され、内側からはじけたあたしの火炎
球によって──

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45891−ラスト猫斗犬 E-mail 9/15-16:20
記事番号4581へのコメント
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 『スレイヤーズSTS』
  第1話 ”迷惑千万 ざわめく人々 不思議な二人に謎の船?”ラスト
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**** TATUYA ****

「…あぐ、うぐ、んぐ…あーガウリィそれはあたしがキープしてた物でしょ
…んぐ…」
「…あがぐ、もぐ…何言ってんだリナ…うぐ…こう言うのは食べたもん…ん
ぐ…勝ちだろ…あぐ…」
 次々とテーブルの横に空になる料理皿が積み上がっていく。
「よく喰う奴らだな…」
「ほんと…」
 オレとアインはリナとガウリィの喰いっぷりに目をまん丸にしながら見入っ
てしまっている。
 ガウリィはともかく…あのきしゃな体つきのリナのどこに、あれだけの飯
が入るんだろう…
「気にするな、いつものことだ…」
「そうです…こういう食事をしない2人は2人らしくありません…」
 コーヒを飲みながらのゼルガディスに、頬杖をかきながらため息混じりの
アメリア…さん。
「いつもなんですか…」
 アインが言う。
 その言葉に1つ、首を盾に振る2人。
 ちなみにリナとガウリィ以外のみんなも一緒に飯を食っているのだが…はっ
きしいって2人のペースで食い散らかせるわけがない。
 ちらりと横を見ると空になった皿をせっせと運び、料理を乗せた皿を持っ
てくる人たちが忙しげに動き回る。
 しかも空になる皿の方が多少ペースが速いようだが…
 今日の騒動も何とか収集がつき、オレ達はここセイルーン国・王宮内にあ
る来客用の食堂にやって来た…いや〜…それにしてもあの戦いの中で一緒に
戦ってくれたアメリアさんがお姫様だったなんて……あん時、呼び捨てで呼
んじまったんだけど…
 そして、落ち着いたところで「さて、どうやって彼女たちに説明をするか
…」といきこんでみたものの──
「お腹空いたああぁぁぁーっ!」
 ──と言うリナの一喝のもとに先に食事をとると言うことにあいなった…
………なんだかなあ………………ん?……
 ………………………………かたんっ…
 オレは立ち上がった。
「ん?どうしたんだ達也?」
 その行動にふと手を止めたガウリィが問いかける。
「…ああ…ちょっとな…」
「…ふ〜ん…………おお!そうかトイレか!!」
 ぱかっ!
 リナの拳が彼のほほをとらえる。
「いてっ…なにすんだよリナ…」
「うるさい…食事中にんなことを大声で言うんじゃない!」
「…ああ…そっか…」
 ……恥ずかしいやつ…
 多少顔を赤らめながらオレは部屋をあとにした。


 静寂と闇夜が廊下を包みオレはその中を歩く。
 静寂の中にオレの足音だけが響き、開け放たれた窓から冷たい外気がほほ
にあたりとても気持ちいい。
 ふと、ある窓のところでオレの足が止まる。
 外の方へ目を移す。
 月の光に照らされ、そいつは空中にたたずむ。
 真っ黒なスーツに身を包み、アインやガウリィと同じ金色の長髪。
 容姿はアインとうり二つだが、鋭い眼光にあの体つきでそいつは男性だと
はっきり見て取れる。
 食事時にある気配を感じていたんだが…どうやら気のせいではなかったよ
うだ…

 かつて『S.T.S』のトラコンとして、オレが初めてコンビを組んだ人
物──
 アインの兄──
 オレと気が合った最高の親友──
 『S.T.S』のトラコン数名を殺戮した犯罪者──
 オレの気功術の師匠を殺した者──
 邪悪な心に魅入られた感情登録知性体──

「…ゼオ…」
 あいつがオレのつぶやきに気付いたのか、ゆっくりと近づく。
 そして2分間という長いような短い沈黙をへて、彼は2メートルぐらいの
距離を開け、お互い同じ目線の高さになるとその動きを止めた。
 相変わらずとてつもないプレッシャーを感じる…いや…もしかしたら前以
上なのかも…
「お久しぶりですね。達也」
 ゼオが口を開く。
「…何しに来た…ゼオ…」
 言葉を出したことによって、自分の口の中がからからになっていたのがわ
かる。
「…ちょっとしたご挨拶ですよ。どうでした先ほどのパーティの趣向は?」
「パーティ?」
「ええ…とても楽しいパーティだったでしょ?とくにライクとの試合は堪能
したようで…」
 …パーティだと……
「…あれがパーティだっていうのか…」
「ええ…そうですよ…でも、ライクにはもう少し期待してたんですが…やは
りまだまだ子供だったんでしょうね。わがままな子でしたし…」
 …でした?…その言葉だけ何故か彼は強調して言った気がするが…
「…おまえ…ライクをどうした…」
 嫌な予感がする。
「ああ…あの子なら…」
 ゼオが一瞬だけ、鋭い眼孔でをオレ睨む。
 そして何事も無かったように、にっこりと微笑むと言う。
「…私が殺して差し上げました」
「…!?」
 ライクの笑顔が頭をかすめる。
「てめぇっ!」
 一気に頭に血がのぼり、叫んだときには怒りにまかせ気を開放していた…
が、
 …とす…
「…え?…」
 突然、ゆらりと視界がぼやけオレはその場に崩れ落ち、
「…なんだ?何が起こった…」
 何がどうなったのか解らずに、小さく自分に問いかけていた。
 目をやれば、ゆっくりとこちらに近づいてくるゼオ。
 呼吸が荒くなる。
 まさか…こいつが何かやったのか?
「無茶はいけませんよ達也。先ほどのパーティであなたは魔力も気も使いきっ
てるんですから」
「──あっ──」
 そーだった…パワーを使いすぎて、今は常人以下のレベルでしかないんだっ
た…
 ゼオがオレの目の前に立ち構える。
 ゼオの右掌がオレの目の前にかかげられ、その手に光が灯り出す。気とい
うエネルギーによって。
「…くっ…」
 慌てて、立ち上がろうとするが体に全くと言っていいほどに力が入らない。
 更に掌に集まる気。
 …うそだろう…なんだよこの膨大なエネルギーは…以前にあったときより
数倍の容量じゃねぇか…
 頬に汗が流れる。体がふるえる。
 蛇に睨まれた蛙の様に動けず、目は右掌から離せない。
 今ここでゼオが気を放出すれば……間違いなくオレは消滅…死ぬだろう。
 更に光り輝く。まだ膨らむ。
 と、思えば不意に掌の気がかき消える。
「──!?──」
「安心して下さい。達也をどうこうする気はありませんよ」
「…なん…だと…」
「…今はね…後5、6日もすればまたパーティを始めますからそれまでには
体力を回復して置いて下さい。達也…」
「…てめぇ…今度は…何やらかす気だ…」
 ゼオが邪気のない笑顔を見せる。
「…穴ですよ…穴を開けるんです」
 …穴?……まさか………イン…フェ…イ…ル…ホールか?…
「……あな?……」
 その問いかける声は俺達から少し離れた場所から届いた。


 オレは慌てて声のした方へ顔を向ける。
 誰かがいる?
 よっぽど疲れていたのか、それともゼオに意識が向いていたのか、まった
く気配を悟れなかったらしい…
「そんなところでかくれんぼですかお嬢さん…」
 ある方へ顔だけを向けて、静かな声でゼオが言う。
 その方向の暗闇から一人の女性が1歩進み出る。
 そして更に1歩。月の光で彼女の顔が照らし出され──
 ──リナ──
「…これは…これは…確か…リナ=インバース殿…でしたか?」
「…ええ…そうよ…」
「…リナ…おまえ何でこんなとこに…」
「女の直感ってヤツよ。何となく気になったんで達也の後を付けさせてもらっ
たの…そしたら案の定…」
 言い終えると彼女はその燃えるような赤い瞳でゼオをにらみつける。
「で…聞かせてもらえるかしら…その穴っていったい何なの?せっかくのご
飯を不意にして来てあげたんだから、教えてほしいんだけど…」
「それはゆっくりと達也に聞いていただければ解ることでしょう?」
 ……うっ……こらっゼオ…こっちにふるんじゃない!
 だいたい、インフェイルホールのことは話す気はなかったんだぞ!!
 リナが肩をすくめ、
「…なるほど…それもそうね…」
 …ああ…彼女も納得してるし…
「…じゃあ…質問を変えるわ…多分これは達也も聞きたかったことだろうけ
ど…」
 彼女は一度目を閉じ、少しの空白を開け再び目を開ける。
 彼女の表情が硬くなる。
「…あんた、その穴で何をやらかすき?」
 凛とした声でゼオに問いた。
「別にたいしたことではありません。ある物をこちらに持ってくるだけです」
『ある物?』
 オレとリナの声がハモると同時に、数人が走り来る音がオレ達のいる場所
にまで響いてきた。
「…リナ…」
「…リナさん…」
 みんなの声が聞こえてくる。
 多分、膨らましたゼオの気にガウリィかアインあたりが気付いて、駆けつ
けてくれたのだろう。
「…さて…向こうがなにやら騒がしくなってきたようですね」
 そういうとゼオの姿がとけ込み始め、
「…まて…ゼオ…」
「やめなさい…達也」
「…わかってる…」
 立ち上がろうとするオレをリナが静止するが、既にオレはここで戦うつも
りはみじんにも思っていなかった。それに──
「…ただ、オレはまだ聞きたいことが…ライクのことだ…」
「………………なんでしょう?」
 消えかかったゼオの姿が再びもとに戻る。
「あいつは気功術のことは一切知らなかった。何故だ?おまえなら教えるこ
とが出来たはずだ」
「ええ、出来ましたよ」
「じゃあ…何故?そうすれば…」
「あなた達はやられていたでしょう」
「………………」
 次の言葉をゼオは軽く言い放ち、オレたちは言葉を失う。
「けど、あなたを殺すというのは私の意志ではないのでね…あくまで彼はあ
なたのアイテムとして作り上げたまでです」
「オレのためのアイテム?」
「そう…あれと戦ったおかげであなたは経験値を上げ、更に強くなったはず
です。そうでしょ?」
『──なっ──』
 オレとリナの声がはもる。
 ここで、ガウリィ達が到着した。
「…まって…まさか…彼女も…そのために…」
「その通りです」
 リナの言葉に満足そうにヤツは答えた。
「…そんな…彼女はあんたのためにあれほど…」
「…それでは…これで…」
 叫ぶ、リナの言葉を遮り、ゼオはこの場を去った──
 消えた跡を見つめるオレたちにゼルガディスがぼつりとつぶやく。
「…消えた?…リナ。今のヤツはいったい何者だ?ただ者じゃないことは確
かのようだが」
「…今回の黒幕よ…」
「なに!」
 リナの一言にガウリィが驚きの声を上げる。
「…ちょ…ちょっとまって下さい…じゃあ…リナさんたちはあの人が悪だと
解っていて、見逃したんですか…そんなの正義じゃありません」
 アメリアさんが、わなわなと拳を振るわしながら握りしめ、バックに炎を
携える。
 …いや…別にオレは正義の味方をするつもりはないんだが…
「あのねえ、アメリア。言っとっくけど、今のパワーダウンしたあたし達
じゃ、
あいつに勝てるみこみなんて、蟻の触覚もなかったのよ」
「…え?…」
「じゃあ、なにか?あいつが何もせずに引いてくれたのは、俺達にとって助
かったってことか?」
「──いいや──」
 ガウリィの言葉をオレが否定する。
「──どういうことだそれは?」
 ゼルガディスの質問にリナが口を開く。
「…勝てなかったのよ…あたし達が完全の状態で全員が束でかかっても──
あいつは…強いわ──」
「…ああ…」
 勝てなかった…ゼオのやつはオレの想像以上に強くなっていたから──

                         <第2話へつづく>



*****************************************************************

 と言うわけで第1話やっと終了です。
 こんな長ったらしい作品を最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
 あいも変わらずへたくそな文章で…あっちこっち遠回りして、キャラ達
を遊ばせとるし…

 『にしても…いったいぜんたい…この話…意味が分からないぞ』と言う
人もいるとお思いでしょうが、今回の第1話はテレビの第1話と同じよう
なものですんで…ただただ、どたばたさせた話にしたかったという作者の
意志表示だと、思っておいて下さい。
 もちろんこのスレイヤーズSTS全体にちゃんとかかるように作っては
いるのですが…
 …そういや…ゼロス君…達也とライクの戦いの後…には声だけでしか出
てこなくなっちまったな……まあ…本当の計画では1話では出さないつも
りだったんだから、こんなんでも十分かな?
 まあ…ほかにも…ちっちゃい謎を残したまんまだし…たとえばなぜ、リ
ナたちのグッツが出てきちまったのか、リナの名を語り小説を書いている
のはいったい…とかね(ハート)


 さて次回作だが、第2話のサブタイトルは……

   ”舞い降りた者 運命の異界の天使”

 ……でお送りいたします。

 2話目では、いきなし達也側でのキャラクターが2人増えることになり、
多分、2話目の1回目がそいつらが登場するシーンを書くことになるのだ
が…そん時、他のオリキャラ達もほのかに友情出演するのでよろしく!!
(でも…友情出演すると言っても、私のオリキャラだからなあ…)
 あっ、ちなみに2人のうちの1人は今回の1話でほのかに話されています。
まあ、それでだいたいは誰なのかがわかっちゃうと思うけど…

 では、では!
 このへんで…次回の第2話でお会いしましょう!!!!!!



 あ、そうだ!
 ご感想、憤慨意見、こんなキャラも出してくれー、などなど(『などな
ど』しか書いてないものは却下…いないか…そんなヤツ)お待ちしており
ます…もしかしたら多ければ多いほど、意気消沈…じゃなくて…意気投合
して書き上げるスピードがパワーアップするとか……う〜ん…そうなって
くれりゃあ、私としてもすごく嬉しいんだが…


                          by 猫斗犬

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4593Re:1−ラスト秋永太志」 E-mail 9/15-22:16
記事番号4589へのコメント
読ませていただきました。なかなか面白いですね。これからもがんばって下さい。

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4602…う…もうコメントが…猫斗犬 E-mail 9/16-09:19
記事番号4593へのコメント

>読ませていただきました。なかなか面白いですね。これからもがんばって下さい。


 どうも…秋永太志」…さん…この最後の鍵かっこ、いれていいの?

 …まあ、いいや。それよりも…………………もう読んじゃったんですか…
 こんなにはやくコメントが来るとは思わんかったなあ…

> 登録時間:1998年9月15日22時16分

 …夜の10時過ぎか……くーぴか、くーぴか…寝とった時間かなこの時は
…いや…月曜の夜に最後のしめだからずっと起きて書いてたもので…眠かったんす…


 …と、とにかく『これからもがんばって下さい』と言うコメントに、

   意気消沈!!!…………い…いかん…また書いた……

 …こほん…失礼…

   意気投合してかき上げるスピードを上げることを!……こ、と、を……
  …誓えると…思います…多分……

 いや…あのさ…よく考えたら、今回掲示した1話って結構長いんだよね…

 たしか1つの掲示につき原稿用紙で30枚以上で…てーことは……

  30 × 8 = 240

 ……それに少しオーバーしてるので全体的に10枚……合計…250………
こりって…小説、1冊分の量にあたるやんけ…

 次回の2話ってドンくらいで完成するんやろ…1話で約1ヶ月とちょいってーとこか…

 …う゛…やっぱひ…気長に待ってもらうというのはダメなんやろか…しくしく……

 …それに自分のオリジナルの方も本格的にやろうと思ってたんだっけ(今気付いた)…STSの話なんだけどね…

 …しくしく…しくしく…それではまたいつか……しくしく…なんか…お礼の言葉を忘れているような…

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46122話目を楽しみにたんか E-mail 9/16-20:31
記事番号4589へのコメント
おもしろかったです!!
本来あんまり、コメント付けないタイプの私なんですが、思わずコメントつけちゃいました(笑)
2話以降も期待しちゃいます。
・・・・・・・・プレッシャーに感じてしまうかもしれませんが・・・・
がんばってくださいませ。

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4637おおう…仲間や!猫斗犬 E-mail 9/17-09:36
記事番号4612へのコメント
> おもしろかったです!!
> 本来あんまり、コメント付けないタイプの私なんですが、思わずコメントつけちゃいました(笑)
> 2話以降も期待しちゃいます。
> ・・・・・・・・プレッシャーに感じてしまうかもしれませんが・・・・
> がんばってくださいませ。



 どうも…たんか…さん。ありがとうごじゃいますう。

> 本来あんまり、コメント付けないタイプの私なんですが、思わずコメントつけちゃいました(笑)

 …ですか…いやあ…気が合いますねえ…あっしも実はあんまひコメントをつけないほうなんですよ(はーと)


 登録時間は?

> 登録時間:1998年9月16日20時31分

 …夜の8時過ぎですか………う〜ん…あん時は……おおーっ!(ガウリィ口調で)
 クッキーを真っ黒焦げにして、悲しみを吹き飛ばすかのように、その場で盆踊りかましてたな…
…涙流しながら…しくしく…


> 2話以降も期待しちゃいます。
> ・・・・・・・・プレッシャーに感じてしまうかもしれませんが・・・・

 …………けっこうプレッシャーに弱かったりして………

 …と、とにかく…
> がんばってくださいませ。
 …と言うコメントに、

   意気消沈!!!…………じゃないって……

 …こほん…失礼…

   意気投合してかき上げるスピードを上げることを!……こ、と、を……
  …誓えると…思います…多分……


 秋永太志」さんのコメントお礼にも書いたことなんやけど…いや…あのさ…今回掲示した1話ってほんと長いんだよね…

 たしか1つの掲示につき原稿用紙で30枚以上で…てーことは……

  30 × 8 = 240

 ……それに少しオーバーしてるので全体的に10枚……合計…250………
こりって…小説、1冊分の量にあたるやんけ…

 ホンマに次回の2話ってドンくらいで完成するんやろ…1話で約1ヶ月とちょいかかったけど…

 …う゛…やっぱひ…気長に待ってもらうというのはダメなんやろか…しくしく……

 …それに自分のオリジナルの方も本格的にやろうと思ってたんだっけ(掲載した後気付いた)…STSの話なんだけどね…

 …ああ…やっぱひ…期待されてると…こっちを優先にしておきたいし…しくしく…

 …一様、2話の1回目は出来上がってんすよ…ただし…『1−ラスト』でのコメントで掲示したとおり…
STS側での話(リナちんたちは全然出てこない)だけど…

 …しくしく…それではまたいつか……しくしく…なんか…またお礼の言葉を忘れているような…

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4629Re:1−ラストMONAKA E-mail 9/17-00:31
記事番号4589へのコメント
 とっても小説書かれるのがお上手で、尊敬します。
 内容はものすっっごく!! 面白かったです。
 これだけ長い話だと書くのも大変でしょうが、続き楽しみに
待っています。

                BY:MONAKA YHE03430@nifty.ne.jp

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4638うるうる…こっぱずかしいですう…猫斗犬 E-mail 9/17-09:38
記事番号4629へのコメント
>  とっても小説書かれるのがお上手で、尊敬します。
>  内容はものすっっごく!! 面白かったです。
>  これだけ長い話だと書くのも大変でしょうが、続き楽しみに
> 待っています。



 どうも…MONAKA…さん。ありがとうごじゃいますう。

>  とっても小説書かれるのがお上手で、尊敬します。

 …ですか……えっと…旨いのかなあ…でもでも…変な文章もあるでしょ。
 もうすこし、じっくりと書く時間さえあればいろいろ回収…あっ間違い…改修していけるんですけど…


 え〜と…登録時間は?

> 登録時間:1998年9月17日00時31分

 …夜の0時過ぎですか………う〜ん…あん時は……おおーっ!(ガウリィ口調で)
 2話の1回目をとりあえず出来上がったんで…お経唱えてまひたな…木魚の音はサウンドスピーカーで…
…って、アインじゃないっつーの…


>  内容はものすっっごく!! 面白かったです。

 これを言ってくれるだけですんごく嬉しい(はーと)苦労したかいがあったぜえい…うるうる…

 とにかく…
>  これだけ長い話だと書くのも大変でしょうが、続き楽しみに
> 待っています。
 …と言うコメントに、

   意気消沈!!!…………じゃなくて…コメント書くたんびにやってるな…

 …こほん…失礼…

   意気投合してかき上げるスピードを上げることを!……こ、と、を……
  …誓えると…思います…多分……


 MONAKAさんのおっしゃるとうり…実は…大変だったんす…いや…今回掲示した1話って…
原稿用紙で250枚以上はいってるんだよね…てーことは……こりって…小説、1冊分の量?…

 それに何をかくそう…戦闘シーンは何よりも苦手…ええーい…ギャグをぽこぴこぽこぴこ、書い
ているほうがまだましでい!!!
 何故こんなことをせにゃあー!
 非常識だあー!
 詐欺だああー!
 責任者出てこーい!!!!!
 クレーム付けてやるっ!
 金返せえー!!
 ……ぜい…ぜい…ぜい…………………………………………………………………………………………………
 ……………………………………………………………………………………………………………………………
 ……………………………………………………………………………………………………………………………
 ……………………………………………………………………………………………………………………………
 ……………………………………………………………………………………………………………………………
 ………って…あっしのせいか…すいません…暴走してしまいまひた…しかもライクがのりうつってるひ…
…結構、この時のライクの性格が一番好きだったんす(殺しちゃったけど…しくしく…)



 …そうだ…ここだけの話なんすけど…この『スレイヤーズSTS』の物語が完結してもいないのに、既に
続編を考えてたりするんです。
 その布石が次回の2話で明らかになると思います…なるかな…なったら嬉しいな(はーと)

 ではではこれにて…ご感想ありがとうごじぇいます。

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4728スレイ〜STS第2話・開始猫斗犬 E-mail 9/20-16:06
記事番号4581へのコメント
 はい、どうも猫斗犬す(ハート)
 4日ぶりかな?
 『スレイヤーズSTS』第2話。
 サブタイトル 
  ”舞い降りた者 運命の異界の天使?”
 とりあえず1回目と2回目、開始します!!!

 ほんとは2話目が全部完了してからの方がいいかな?
 なんて思ったりもしましたが、「いーやいーや。とりあえず掲示しちゃえ」
 てなことにしやした。

 にしても今回の2話だけど…はっきり言って…展開をまるっきし考えてい
まへん…どないしよ…

 実は話のながれを2通り考えているんです…けど…どちらがいいかなあ…
なんてまとまんなくって…

 まあ、それは後で考えるとして…前回の1話目の反響ですが…うむ…3人…
 1話の前編、中編を掲示していたときよりは多いか…

     秋永太志」  さん
     たんか    さん
     MONAKA さん

 ご感想ありがとうううううっ!!!!!!!


 では、では…第2話・1&2回目をお楽しみ下さい!!!!!

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47292−1猫斗犬 E-mail 9/20-16:09
記事番号4728へのコメント
予告どおり、この回は自分のオリキャラ(STSの)たちだけです。
しかも展開が急に変わったりするし…

////////////////////////////////////////////////////////////////////
 『スレイヤーズSTS』 
  第2話 ”舞い降りた者 運命の異界の天使”1回目
////////////////////////////////////////////////////////////////////


**** MEGUMI ****

「あったく、何を好き好んでこんな格好をせにゃあ、ならんのだ」
 あた…じゃなく…僕はぶつぶつと愚痴を言いながら道の真ん中を堂々と歩
き、学校へ向かう道を進んでいた。
 僕の名前は今居恵美。但し、現在は日高…母の旧姓…恵で名乗っている。
 ショートカットより短く、ダブダブの学ランを着たこの僕はれっきとした
女の子。
 「そんな格好をした女の子がどこにいる」と言われてしまうと、もともこ
も無いのだが、理由なんぞを述べようとすればするほど、ばかばかしくなり
そうなので、省略させていただきたい。
 まあ、趣味を聞くと「やっぱり男の子じゃねぇのかあ」とかって言われそ
うだけど…
 さて、今、僕が向かっている学校は流東学園と言う所。この学園がまた、
なかなか面白い学園で……小等部(小学校)・中等部(中学校)・高等部(
高校)のエスカレータ式の学園。
 まあ、それだけじゃあ別にたいしたことはないのだが…実はこの学園、
コース選択があり、中等部になると午後の授業から、自分の目指したいコー
スを選び、勉学にいそしむことが出きる。
 いわば中学盤の大学方式てやつ。
 コースは数種、情報から建築、医学や教師、警察に弁護士、etc……
 そうそう、芸能界コースとか、スポーツ選手コースとかもあったっけ。
 もうここまでくると、なんでもありって感じだよね(はーと)


「喧嘩だ、喧嘩だ!」
 何!喧嘩?
 慌てて、校門をくぐり抜ける。
「ふふふ、あなたたち、このあたしに喧嘩をうろうなんて、一億五千万年は
早いわよ」
「おい、茜。いくらにゃんでも一億五千万年もこいつらだって生きていたく
にゃあぞ」
「そうそう、それにもしかしたら、その間にこの星が無くなっている、と言
う考え方もあるしい」
「にゃるほど」
「二人とも、お願いだから、そういう突っ込みの仕方は、やめて頂戴」
「なんで?」
「にゃんで?」
 野次馬のほうから、クスクスと笑い声が聞こえ始める。
「いい加減にしろ。いいか浅城。今度という今度こそ、てめぇに痛い目を味
あわせてやるからな」
 まあ、そういう奴に限って、すぐにやられてしまう役どころ。
 かわいそうに。
 なんまんだぶ、なんまんだぶ…あれ?なんまいだぶ、だったかな?
「なにせ今回オレ様は物凄い術を修得してきのだか……」
「ゆうむを言わずの火炎球」
 きゅぐうおおぉぉーーん!
『ひぃよぇー』
 吹き飛ばされる数人の悲鳴と爆発音が響きわたる。
『おおぉう』
 野次馬たちからの盛大な歓声。
 お見事。
「て、てて、て、てめぇ、卑怯だぞ。いきなり火炎球をうってきやがって」
 お、生きてる、しぶとい…
「先手必勝、てやつよ」
「やかましい、あさっての方向を向いてガッツポーズをとるな。だいたい男
なら正々堂々と素手で勝負しやがれ」
「あたし、女だもん」
「…う゛…」
 あ、言葉に詰まった。
「……お、女だろうと、普通は正々堂々と素手で勝負てーのが人生ってもん
だろうが」
「後ろに三十人も引き連れて、正々堂々も、あったもんじゃないわ。それに
そんなことで人生を棒にしたくないもん」
「そうそう、それに物凄い術を修得してきた、て言ってたよねぇ。てこと
は、やっぱり魔法で勝負しようとしてたんじゃない?そうなると、素手で
勝負ってのはおかしいと思うしぃ……」
「…う゛…」
 またまた、言葉に詰まる。
「まあ、舞ちゃんったら良く覚えていたわねぇ、いーこ、いーこ」
「茜〜子供扱いはやめてよおう」
「…ふ…ふざあけるなあー!」
「え?シュウちゃん、あたしふざけてる?」
「さあ、いつもよりかは、まじめに相手してると思うんにゃけど」
「あたしも絶対にそう思う」
『ドッ!』
 爆笑。男の部下の何人かも、肩を震わせて笑いをこらえている。
「こ、このあまあー」
「ねえ?この辺にお寺なんてあったっけ?」
「う〜む…今のギャグは及第点!」
 舞ちゃんの言葉にシュウちゃんと呼ばれる彼が人差し指を立てて言う。
「やっかましい!」
 そう叫ぶと男は呪文を唱え始める。
「やかんが欲しい?」
「それ…じぇんじぇん、おもしろくにゃいぞ…舞…」
「ちぇっ」
 口をとがらせる舞ちゃん。
「やれやれ…」
 続いて浅城さんだったかな、彼女も呪文を唱え始める。
 まわり全てが静かになり、二人だけが唱える呪文が響きわたる。
 そして、何故か後から唱え始めた浅城さんの呪文が先に完成する。
「くらえ、愛と正義の……」
「え?愛?」
「にゃ?正義?」
『どこどこどこどこ……』
 ぴたっ、
 彼女の動きが止まる。
「……」
 無言のまま、二人をにらむ。
「今だあ!」
 男が叫ぶ。
 ぽいっ
「へっ……」
 きゅうぐうおおおぉぉーん!
「るどうるわあぁ!」
 先に彼女が投げ捨てた呪文で吹き飛ぶ。
 どおぐうおおぉぉーん!
「ひょでぇー!」
 自分で作った呪文が暴走する。
 うーむ、こりは二次災害てーやつですなあ。
 それより、あいつ生きてるかな…


 午後───
 ……さて……人の気配は無し……
「ところで」
 おおおぉぉーう───
 いきなり、づづいっと、顔を目の前にまで迫られたので、言葉を失った。
「午後の授業は決まったのかにゃ」
「え、あ、えっとその」
 顔を寄せ付けた主は、今朝、浅城さんにシュウちゃんと呼ばれていた男。
 実はあたしが編入してきたクラスの生徒だった。
 偶然というか何というか…どっかの誰かが物語の本筋をおもしろくするた
めだけに、勝手に同じクラスにしたというむちゃくちゃな設定が神から授かっ
たのかもしれない…
 本名は広野秀一。ボクシングの学科を受けているそうだ。
 ……にしては、あんまり強そうには見えない。まあ、見かけで判断しては
いけないのだろうけどさあ……て、そういえばさっきまで気配はなかったは
ずなんだが…
「にゃあ、決まってるのか」
「え、えっとおー」
 彼の顔はまだ目と鼻の先。
「もし決まってにゃいなら、ボクシングに入らにゃいか」
「…は…はい?」
「よおうしい、きまったあ」
と、僕の手を引っ張りながら教室を出ようとする。
「ち、ちょ…」
「おいこら……」
 でっ!
「……でぇ!……現れたな、破壊と殺律の女魔道士……」
 すぼ!
 おおー、見事な左ストレート。
 そのパンチで広野くんはひっくりこける。
「…あ…あたたたたたた……」
「まったく?」
 浅城茜さん……い、いつの間に……
「だめよ、日高君。こいつの力ずくの勧誘に誘われちゃあ」
「え?」
「ど、どこが、力ずくだよう、ちゃんと返事だってしたにゃろうが」
「あれは疑問用の返事でしょうが。ほら、ここを呼んでみなさい。疑問符、
クエスチョンマークが付いてるでしょう」
 浅城さんが一冊の本を懐から取り出し、あるページを開くと広野くんに見
せる。
「はにゃ、ほんとだ」
 おいおいおいおい、どこにあるの、そんなの。
「ところで……」
 ぽいと本を捨てて浅城さん。笑顔を振りまき。
 ………
「柔道やらない?」
「…はい?」
「よっしゃあー、きまったあー」
「え?え?え?」
「ちょーとまてぇ、それだって疑問符が付いてるじゃにゃいかあ」
 先ほど浅城さんが投げ捨てた本を片手に叫ぶ広野くん。
「ちっ、ばれたか」
 …な…何なのこの人たち…いったい……
「ま、冗談はこの辺にしてっと…日高君は何がやりたいのか決まってるのか
な?」
 と、笑顔でまたまたいきなり。
 実は彼女もまた、同じクラスだったりする…やはり、神のいたずらか!
「え?あ、いや、えっと、あの……あ、そうか!午後の授業のこと?」
「そうそう」
 彼女は首を縦に振る。
「それなんだけど…実は…午後は受けないことにしているんだけど…」
「えええー、どおひて!」
「ここ、拳法なんかないでしょ」
「拳法?」
「うん。実は僕、最近、中国拳法にはまっちゃって…」
 て…結構前から趣味としてはまってるんだけど…しかも、自分でも自慢で
きる程の腕前だし…
「ふうーん…」
「だから、午後の授業は受けないでどこかの道場にでも入門しようかなあ…
なんて…」
 信じるかな…
「なあーん、だあ、やりたいものがあるんだあ。じゃあ、勧誘はむりねぇ」
「…ふにいぃ〜…」
 がっくりと肩を落とす二人。
 あ、信じた…
「あははははははは…ごめんな」
「まあ…しゃーない。あきらめるとしますか…あ、いっけないもうこんな時
間。行かなきゃ。それじゃ、日高君いいところ見つかるといいね」
「あ、ありがとう」
 とそして浅城さんたちは教室を出ていった。


 そして、5分後…
 教室のドアから顔だけを出し、廊下をきょろきょろと確認。
 今度こそ人の気配は無し…本当にいないよな…ついでに教卓の下も確認。
 …さてと…それじゃまあ…
「変身!?」
 僕はさっと変身ポーズをとると、そのままの状態で体中が光輝きレオター
ド姿…
「てっんなわきゃない…」
 自分一人でボケと突っ込みをして、机の上にスポーツバックを置き、その
中をあさり始める。中からまずは女子用の制服を取り出しそれを着る。そし
て次に眼鏡。まん丸であたしの顔の半分以上は被い隠せる程のでかでか眼鏡。
最後にかつら。かつらは被るとあたしの腰あたりまで届きそうなロング型。
これで準備完了──
びいぃしいぃぃ!
再び最初の変身ポーズに…
「………………」
 …自分でやっておいて情けなくなってきたわ…
 まあ…それはそれで、気を取り直して…
潜入捜査、女子の部開始!
あたしは女性にしか入れない場所いたるところへ動きまわることにした。
事件が起こったのは、約二週間ほど前。その事件は一人の女子生徒の消失
事件から始まる。
 最初はたんなるいたずらか何かかと学校側は判断し、そのままにしてしまっ
たのだが、この後にも次々と行方不明者が続出。現在に至っては8名程の不
明者が出ているのである。
 と言うことで、あたしの父がスポンサーとなっている探偵局に捜査の依頼
がきたのだが、ただ困ったことに転校生として編入できる者がいなかったの
である。
 で、急遽あたしがこの捜査を担当するはめに…教師ってー手もあったんだ
けど…ちょっとした理由があった物で………ストップ!これ以上は聞かない
で…お願い(はーと)
 え?でも何故男の子の格好をしていたのかって?
 …あ…あはははは…そ、そりは……その…おぉ…父の言いつけでね…
「こんな可愛い娘が男子との共学なんだぞ。万が一の事があっては…うるる
るるるるるるうううぅぅ…」
 …だ…そうである……………なんだかなあ…しかも、泣くんだもん…

「…うむ…」
 学園中をしらみつぶしに確認していったがこれと言った物はなし…ただし
若干入れない場所もあったが…
 あたしは人気のない廊下をひたすら歩く。
 教室からはいっさいの声も人の気配も感じられない。
 だがどの教室もある種の専門の教室として使わされているはずである、な
のに…
「異空間でも利用してるのかな?」
 その答えを口に出す。
 実は魔道歴(魔法学の歴史)の中に載ってる物なんだけど、随分昔、魔道
の研究をおこなうために異空間を作って、研究室にしたっていう人がいたそ
うである。どうやって異空間を作るのかは分野外だからしらないけど…で、
その空間の広さは個々の作り方によって、どんな広さにでも調整できるらし
い。
 だから、広いグランドとかが必要になる野球やらサッカー等々も教室しか
渡されてないわけだ…なるほど…納得…

「あれ?」
 屋上への入口であるドアノブを取りゆっくりと開けたときである。
 一人の女性の歌声が耳に届いた。
 歌声が風に乗り、一面を弾み、踊り、駆け回る。
 戸を開き声の主を捜す。しばし目で辺りを見回し…いた!…軽やかなステッ
プを踏みながら、口ずさむ歌にあわせて踊る、一人の少女──
 あっ…あの人は…たしか…舞ちゃん…
 えっと…本名は………知らない……違うクラスだもんなあ……
 だいたい、普通は『仲良し三人組』ってーのは…彼女に浅城さんに広野く
ん…必ず同じクラスでなければならないという、マンガとか小説でありえる
設定があるはず。何故…彼女たちにはそれがないのだ!!!
 どんがらびっしゃーん!
「あり?今、雷が鳴ったような…」
 と舞ちゃん。
 そして、その3人組と出会う主人公のこのあたし!
 問答無用に4人が巻き込まれる大事件!!!!
「…………………」
「……あのぉ……」
「…………………」
 …………………………………って…すみましぇん…冗談ですうぅ…
「……大事件ってなんです?」
「……へ?……」
「……だから、大事件ってなんですか?」
 いつの間にか舞ちゃんがあたしの目の前でそう問いていた。
「…え?あたし口に出してました?」
「…ううん…ここに書いてある」
 いつの間に持っていたか彼女の手の中には一冊の本。のぞいてみる。
 ──真っ白──
「…全然、書いてないじゃないですか…」
「…まあ、それはそれで、その辺に捨てといてっと…」
 こらこら。話を、捨ててごまかすな。
 そりゃあ…横においといたらまた話をぶり返されるので、捨てたくなる気
持ちはわかるけどさあ…
「…あたしは…香純舞よろしく!」
 と、突然、そう言いながら手を差し出してくる。
 …浅城さんといい広野くんといい…こいつら突然に違う話をするのが好き
なのかい…
「…えっと…あたしは……今居恵美…です…よろしく…」
 一瞬、どちらで名乗ろうか迷ったが、すぐに本名が口を出た。
 そして彼女の手を取り握手を交わす。
「…って、香純って言うのは芸名だけどね…」
 彼女がそう言いながら、握手を交わしたその手で拳銃の形をとり顔の横ま
で持っていくと舌を出す。
 その仕草がとてつもなく可愛かったりする。
「芸名?」
「うん(はーと)」
「…ってことは…」
 一時黙る。
「…コメディアンですか?」
 どしゃかっ!
 ひっくり返る舞ちゃん。
「うわあ…派手なリアクション。さすがコメディアン」
「誰がコメディアンだああ」
 叫ぶ彼女。
「え?違うんですか?でも、今朝の浅城さんと広野さんとの絶妙なコンビネェ
ーション。見事だと思ったんですけどねぇ…」
「…う…見てたの…あれ…」
「はい(はーと)」
「…でもでも…あれはあたしの姿じゃないわ。誰がどう言おうとも!!」
 拳を握りしめ言い放つ彼女。
 絶対、嘘だ。
「…いや…でも…いろんな人から…『元気なやかまし3人組』とか『学園の
名物トリオ』って呼ばれているとか…」
「嘘よ!デマよ!でたらめよ!そんなのたった一人のあんちゃんから出回っ
た、ただの噂に過ぎないわ!!」
 …そ…そうかなあ…それにあんちゃんって、誰だい?
「ええーい。ちくしょおー!たっくん出てこーい!勝手に広めて、あたしが
学校に出てくる日に限って授業ふけるなあーーーーっ!!!!!」
 天に向かって吠える舞ちゃん。
 …たっくん…ねぇ…それがあんちゃんのことかな…とりあえずメモっとこ
…小さなことから…こつこつと…探偵には大切な事よね(はーと)
「…はあ…ぜえぃ…ふう…ぜい…」
 肩で息をする。
「気が済みました?舞ちゃん」
「…うん…」
 とりあえずは落ち着いたようである。
 ──瞬間──目眩が起こった。
 視界が歪む──
 空気が粘りをみせ、まるでその粘りで自分の体の動きがにわかに遅くなっ
た気がする。
 突然、足下から青白い光が発光し、
「なああーーっ!」
「ぴみぃやあ〜何、何っ!」
 あたし達の悲鳴に反応するように、発光体が円を描くように、真っ暗な闇
を広げてあたし達を吸い込んだ。
 ごおおーっと言う風の音と共に、落ちていく間隔に襲われる。
 それをたとえて言うなら急降下するジェットコースター。
 けど、体は固定されていないし、足を踏ん張れる場所もない。
 ただの、自由落下──
 闇で周りは見えない。真っ暗──
 長い長い落下が続く。
 目が闇になれ始めた。舞ちゃんがかすかに見える。
 そして──ふいに光が包み込んだ──

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47302−2猫斗犬 E-mail 9/20-16:12
記事番号4728へのコメント
はい、リナとガウリィの登場です。多少はわかりずらい文章もあるけど…

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 『スレイヤーズSTS』 
  第2話 ”舞い降りた者 運命の異界の天使”2回目
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**** RINA ****

「へぇい、いらっしゃい、いらっしゃい。今日の品は安いよお!」
 そんな道を歩く人々達に声をかける、いろいろな店屋のおやじたち。
 そんな中にまざってあたしとガウリィも街中を歩いていた。
 あのコピーサイボーグと呼ばれる2人と、空飛ぶ船との激闘から4日。
 破壊された家々はいつの間にか復急され…戦いのあった後、陽がのぼって
いたら既に元通りに直っていたそうだ…もしかしたらあの2人がなにか…
「なあ…り…」
 ぱかあ!
 あたしの問答無用のアッパーが彼の顎をとらえる。
「…じゃなくてミリィーナ…」
 ガウリィがあたしへと言いかけた名前を訂正した。
 これで既に11回目──
 あたしの目指す場所はここからもう少し先。
 あたしとガウリィは現在、変装をしている。その理由は言わなくてもわか
るであろう。ファンに追っかけられるから。
 この美貌と魔道士として天才的な頭脳と実力を兼ね備えるあたしのファン
達に…まあ、多少は…あたしと並んで歩く、脳味噌クラゲのガウリィファン
もいるかもしれないが…
 そこで変装と一言で言っても、生半可なことでそういうファン達をごまか
せると思えないので、徹底した変装をおこなうことにした。
 あたしの格好というと、まず街娘の服を着こなしバンダナは付けていない。
茶色のくせ毛は今やまったくなく、ポニーテールにした金色。そしていつも
の赤い瞳は淡いグリーン。
 一方ガウリィというと、上から下まで黒一色。黒いシャツに黒いズボン。
黒色の軽鎧に後ろ手で縛る黒色の長い髪の毛。そしていつものブルーの瞳も
黒。
 ようするにあたし達の、体格以外の特徴は全て変わっていたのだ。
 服装や髪型はどうとでもなるが、いかんせん一番の特徴である髪と瞳の色
は、いかに天才魔道士のこのあたしと言えどどうすることも出来ない。
 そこで達也とアインが手伝ってくれることになる。
 まず髪の色は達也がしっている魔法を使った。なんでも光の精霊を使って
屈折を起こし、見た目の色を変化させるという方法らしい。何とも理解しに
くい簡単な説明だったが、虹が発生する原理と似たような物だ、とも言って
いたけど。
 ちなみにあたしのくせ毛はアインが持っていた『へあーすぷれ』…「女性
の必需品よ」とのこと…とか言う物で髪に吹き付けブラッシングすると、さ
らりとしたストレートに変化した。
 そして瞳の方だが、これはさすがに光で屈折させようとすると、視力をだ
めにするらしく別な方法をとることになる。
 それは色が付いた『こんたくとれんず』と言う物を目に入れると言うこと。
 これがまた、目に入れると何となくかゆいし、瞬きする時が痛いし、目に
映る物が全て『こんたくとれんず』の色と同じで、すんごい違和感があるひ…
 なれれば大丈夫っとアインは言ってくれたが…あたしもガウリィもあんま
しなれたくもないと言う意見が一致していた。
 さて、あたし達が何故こんな変装までして街へ繰り出したかというと、一
誌の雑誌『ドラゴン・マガジン』に掲載されているあたしの自英伝。
 それが事の発端である。
 毎週、掲載されているその小説はあたしたちが係わった事件をかなり詳し
く、正確に書かいており…そして何より読者達に楽しめるように作風が工夫
されていたりしている。もちろんあたしには身に覚えの無いこと。
 しかも、よっぽどあたしのことを知っている者でなければかけない事まで
載っている。そうなると、犯人は絞られる。
 ゼルかアメリア、シルフィールにフィリア…そして…ゼロス…
 一番詳しく書けるだろう、ガウリィは…こいつに文彩としての才能がある
とは思えないし…まして書いていたとしても身近にいたあたしが気付かない
はずがない…と、言うわけで問題外。
 まず、連載されたのはダークスターとの事件。その連載が終了すると否や
ガーブとフィブリゾとの事件の連載が開始され、現在に至る。
 その2つの事件に係わっているとすれば、ゼル、アメリア、ゼロスの3人
だけになる。
 フィリアもガーブとフィブリゾとの事件を多少は知ってはいるだろうが、
いくらなんでも詳しく書けるほど知ってはいないだろう。
 シルフィールはダークスターとの事件には全然係わっていないし…
 その連載が大ブレイクすると、その連載にあわせてあたし達のグッツが出
回るようになったわけである。
 そのグッツはもう…簡単に聞いただけでも覚えきれないほどだった…
 まず一般的だったのが、あたし達4人(あたしにガウリィ、アメリアにゼ
ルガディス)のプロマイドに写真立てにポスター。それが1人につき何十種
類もあるらしい。
 あたしやガウリィもここの道を通る前にそのようなグッツを売っている店
を見てきたが…なんじゃ、あの膨大な数は…しかもひっきりなしに客が溢れ
かえってたし…あたしのプロマイドを買っていったちょっと小太りの兄ちゃ
んがそれにキスしていたのを見たときは背筋に悪寒が走りまくったわい…正
体をバラス訳にはいかないし…とにかくその時の我慢する姿と言ったら…珍
しく、そのことに気付いてくれたガウリィがその場からあたしを抱えて去っ
てくれなければ、今頃どうなっていたことか…
 他にもゴーレム印の『ぴこぴこリナちゃん』シリーズやリナちゃん・アメ
りん・ガウくん・ゼルやんの各種大中小のぬいぐるみ、子供達に大人気・『
爆裂戦隊・ドラグレンジャー』の人形&変身セット(聞くとアメリアが広め
たグッツらしい)……etc,etc…
 それにしてもどうやってこの写真とかを撮ったのだろうか…撮られた覚え
は記憶に一度も無いのだが…
 てな訳で、その雑誌社に乗り込みあたしの名をかったって作品を載せてい
るヤツをとっつかまえようとかんがえているのだ。その時、そいつをどうす
るのかはご想像に任せた方が無難だろう。
 ま…犯人のだいたいの検討はついてるんだけど…なにせ連載の中に決定的
な文があったし…

 ──ドラゴン・マガジン セイルーン本社──
 その立て看板を横目にあたし達は建物の中へと入り込む。
「すみませ──」
 開口一番の挨拶をあたしは絶句しながら飲み込んだ。
 十数人の目。全てがあたし達にそそぎ込まれていた。
『…似てる…』
『…けど…髪が…』
『…目も違うし…』
 ……………………………ましゃか…こいつら…あたし達の…ファン…か…
「…あ…あの…」
 顔が引きつっているのがわかる。
「…ち…ちょっとお聞きしたい…」
「いやあ。すみません。お待たせしちゃいまして…リナ先生がお書きになら
れた…」
 と言う声と共に、あたしが先ほど通った戸から現れたやつは、
 どげしいぃっ!
「ぐうはああぁぁっー!」
 あたしのいきなりの蹴りに、おかしな声を上げて倒れる。
 ふ、ふふふふふふ…やはり、あんたかい…
「あいたたたた…な、なにをなさるんですお嬢さん。もう少しレディはおし
とやかでいないと…」
 みしっ!
 言いながら立ち上がったところを今度はアッパーがきまる。
「…あ…あのですね…」
 おお…やっぱし立ち上がるか…なら…
「烈閃槍、10連発!」
「がはあっ!」
 一様、倒れる。
「…そ…そのですね…」
 …いやいや…ほんと丈夫なやつ…さて、お次は…
「崩霊裂っ」
 こうっ
 青い火柱が彼を包む。
 …火柱がやむと、少しぐしゃぐしゃになった髪のままよろよろ立ち上がり
あたしへと指さし、
「…あ…あの…あなたは…もしかして…」
 …うむ…やっぱりダメか…じゃあ…最後…
「神滅斬っ」
 あたしの手から黒き刃が生まれる。
「ひいぃえええぇーやっぱりリナさん!!!!」
 そしてここ『ドラゴン・マガジン セイルーン本社』の屋内ではしばらく
はゼロスの悲鳴が響いた。


「おうらあ!…とっとと歩かんかい!!」
 どげしいっ
 後ろから、とぼとぼ歩くゼロスの背を蹴りつける。
「…しくしく…」
「…おいおい…それじゃあまるで、やくざのセリフじゃないか…リ…」
 ばきっ!
 頭へ肘鉄!
「…じゃなくてミリィーナ…でした…しくしく…」
 ガウリィがあたしへと言いかけた名前をまたまた訂正する。
 これで12回目──
 なお、犯人がゼロスだと気付いたのは、セイルーンでの事件であたしがあ
の魔族マゼンダに魔力を封印された時のシーン。
 封印を解くためある賢者様のところへ向かう道中が事細かく書かれていた
から。つまりその時のことをしっているのはゼロス、またはあのマルチナだ
けになる。
 そして話の全体を考えれば、自動的に犯人はゼロス──
 さあって…みんなの所に戻ったらどういう風に料理してあげようかしらね
えぇ…うふふふふふふふ…
「…あの…その含み笑いがすごく怖いのですけど…リナさ…」
 どげしいぃぃっ!
 問答無用で蹴り飛ばす。
「…い…いたいです…リナ…」
 まだ言うか…手に魔力光を灯す。
「…………………」
 静かになるゼロス。
「…い〜い。ゼロス。今のあたしは、ミリィーナよ。ミ・リィー・ナ!」
 ゼロスに笑顔で親切に教えて上げる。
「…は、はひ…」
 それにしっかりと返事を返すゼロス…断じて…魔力光が灯る右手をかざし
て、殺気を携えながら引きつる笑顔が、怖かったと言うことでの返事ではな
いだろう。
「おやあ〜リナじゃないか!」
 ていっ!
 ごっ!
「あう…」
 条件反射で手近にあった桶を投げ飛ばし、それが見事にあたしに声をかけ
てきた人物の顔面へとクリーンヒット…
 あっ…後ろの人にあたった…てめぇ、よけるな…
「何するんですかあ。いきなりいぃぃー!」
 桶をぶち当てられた20前後の美人金髪ねぇちゃんがあたしに抗議する。
「あっ…なんだアインだったんだ…らっきい(はーと)」
「なんでらっきいなの?」
「…いや…その…」
「知り合いだから慰謝料払わなくて、ラッキー(はーと)ってとこじゃねぇ
の…」
 あたしの桶攻撃をよけた14才の美少年・達也がぶりっこポーズ…男の子
がそんなポーズをとるな…で答える。
 …図星…達也なぜわかった…
 達也&アイン。実はこの2人、異界からやって来たでこぼこ漫才コンビ…
じゃなくて…国家認定・次元セキュリティ会社『S.T.S』──のトラブ
ルコンサルタント、という者達らしい。
 彼らの話では、あたし達の知るあと3つの異界の他にもまだまだ数多くの
世界が存在するそうだ。
 そのような数々の世界で犯罪を犯す者達を、取り締まるのが彼らの仕事。
 そんなある日、同じトラブルコンサルタント…略してトラコン…であるゼ
オという男が突如、本社で仲間を次々殺し、ここあたし達の世界へと逃げて
きた。そして、2人はゼオを捕まえにここへやって来た。
 ま、彼らから聞いたのは概ねこの様なことだけなのだが…あたしが思うに
そのゼオがただ逃げるだけでここへやって来たとはとても思えない。
 その疑問もぶつけてみたのだが、この2人もまだゼオのたくらみを把握し
ていないようで、あたしの問いには答えてはくれなかった。
 どちらにしろ、明日か明後日にはそいつの計画の一部が見れるんだし…し
かもそれがゼオ本人からの予告だからね…
「ところでよ…そこに転がってるゼロス…どうしたんだ?鎖に繋がれて散歩
にさえ連れていってもらえない、子犬のような顔してるけど…」
「なによそれ」
「いや何となく…」
「いいんです…僕なんて…いつも獣王様の使いっ走りですし…リナさんには
言いようにあしらわれますし…しくしく…」
「あ〜こらこら…ゼロス。そんなとこで『の』の字書いてんじゃないの。あ
んたの上司、ゼラス=メタリオムも草葉の陰で泣いてるわよ」
「いいえ多分…この姿を見て指さして笑っていると思います…しくしく…」
 …おいおい…それって…どういう上司なんじゃい…
「…だいたい…僕がリナさんの自英伝を書くことになっちゃったのも獣王様
の…いじいじ…」
 なに…!
 あたしの目が光る。
「ゼロス。それってどういうこと。詳しく話しなさいよ」
「…実はですね…かくかくしかじか…」

 ゼロスの話だとこう言うことだった…
 獣王ゼラス=メタリオムは、ことあるごとにセイルーン印のソフトクリー
ムが食べたいとか、ゼフィーリアのぶどう酒が飲みたいとかだだをこねるら
しい。その数は尋常じゃなく、しかもお金は全部ゼロス持ち。
 つーわけで、懐もそこをついてきたゼロスは、あたしの話で盛り上がるこ
こセイルーンで出来心も手伝ったかちょこっとした事件を…どうやらフィリ
アと初めてであった港での事件、その時からゼロスはあたし達を見ていたら
しい…小説にして投稿したそうだ。
 ところがその小説が大当たり、あれよあれよと連載になって大人気をはく
してしまったと──そしてゼロスの懐は暖まった──
「…ゼロス…」
 ガウリィがつぶやきながら彼の肩を両手でぽんと軽くたたく。
「…おまえ、むちゃくちゃ苦労してたんだな…」
 …いや…まあ…苦労はしたんだろうけど…魔族の苦労話っていうのも…な
んか…
「…そんな苦労なんて顔に出さないから俺、全然知らなかったぜ…大変だっ
たな…」
「…はあ…どうも…」
 何と言ってしまえばいいのかわからない状態のゼロスくん。困った顔であ
たしの方に助けを求めてたりする。
「はいはい…ガウリィ。感動はその辺にしてそろそろ戻るわよ…ほら…ゼロ
スも来る」
「…はい…」
 再びとぼとぼと歩くゼロス。
 そんな彼に更に言葉をかける。
「ところでゼロス」
「…な…なんでしょうか…」
 多少、声が裏返っている。
「あたし達のキャラクターグッツ。あれもあんたが売り出したんでしょ」
「…え…」
 あたしの言葉にまともに顔色を変えるゼロス…当たりか…
「…な…何故…そのようなお考えを…」
 しばらくして、このすっとこ神官の口から出てきたセリフはふるえていた。
「そんなの簡単よ」
 指を一本おったてる。
「あの程度のアルバイトで懐が潤うわけないでしょ…だいたい…あたしはゼ
フィーリアの出身よ。ぶどう酒1本の金額、知ってるわ」
「…えっと…」
 頬の辺りをぽりぽりかくゼロス。
「獣王が買わせているその本数。はっきり言って、その程度の原稿料じゃと
ても補えるもんじゃないわ」
 それに…
「いや〜参りました、あの程度でぼろが出るとは僕もまだまだです」
「なにがまだまだなのかはしんないけど…言っとくけどねゼロス…あたしが
このことに気付いたのは雑誌社に向かう前からだから…」
 ぱたぱた、手を振り言ってやる。
「…またまたあ…そんなにはやくわかるわけないじゃないですか、リナさん」
 そのあたしのあっけらかんとしたセリフに、いつものにこにこ顔でゼロス
が言う。
「簡単よそこはそれ。あたしたちにはいつ撮られたのかだなんてさっぱりわ
からないあのプロマイドとか写真とかポスター。あんなに撮られておきなが
ら全員が全員、気付きもしなかったし…そこで考えてみたのよ。あたし達に
気付かれずに、なおかつあたし達4人、全員を知っている人はいないかって
ね…だいたい、この人がリナ=インバース。こいつがガウリィ=ガブリエフ
だ。って顔を知らなきゃ、こんなの売り出せないじゃない…で、全てから答
えを導き出すと…ゼロス…全部にあてはまんのは、あんたしかいないのよ…」
 あたしの説明を、にこにこ顔で黙ったまま聞いていたゼロス。
 お互いが黙ったまま見つめ合う。
 彼がふと口を開き、
「いやー、はっはっはっはっはっは…さすがわリナさん。名推理!」
 ぱちぱちと拍手までする。
「それ程のもんじゃないわ。こんなん、ちょっと考えれば誰だって……ガウ
リィは除くけど…とりあえず…わかるわよ…」
「…リナ…なぜ俺が除かれるんだ…」
「だったらガウリィ。さっきのあたしの説明、ちゃんと間違えず言える自信
ある?」
「…すまん…先、続けてくれ」
 素直でよろしい。
「さて、この落とし前の方はどうつけてくれるのかしらねぇ…ぜ・ろ・す!」
「そうですねぇ…」
 何かを考えるように頬に手を置き、
「それとではこんなのはどうでしょう…リナさんには今までの収入の半分を、
そしてそれ以降は収入の3分の1ほど…お払いする…それで機嫌を直しても
らうと言うことで…」
 …ほお〜う…半分ねぇ…
 …たしかあのグッツとかって、かなりの売上高のはずなのよね…相当な収
益か…むふ(はーと)
「…じゃあ…聞くだけ聞いて上げるけど…その収入…いったい、今、どんく
らいにまでなってんの?」
 わくわく…顔には表さずに胸を膨らまし、懐からそろばんを取り出す。
「ええ…実はこのくらい…」
 ぱちぱち…ゼロスがそろばんの弾をはじく…
 おおー!!!目がハート。
「きゃぴぃ!こんなにい(はーと×5)………許す!絶対、許す!!ゼロス。
あんた、これからも一生懸命頑張りなさい!!!」
「…おいおい…リナ…」
 ガウリィが呆れる声をあたしに向ける。
「なによ?ガウリィ」
「いいのかあ、そんなので片付けても…」
「いいのよ」
 きっぱり言い放つ。
「…いや…でも…せめてゼルやアメリアにも相談してから…」
「なにいってっかなあ…だってそうじゃない。今更、ゼロスのこの行動を止
めたってあたしの懐はうるおんないもん。それだったら、収入の半分をくれ
ると言うゼロスの好意に素直にしたがった方が得策だと思うのよ、あたしは」
「リナらしいと言うか…何というか…」
「でも、アメリアさんあたりが知ったら、『魔族の計画にのるだなんて…リ
ナさん。あなたのそれは正義じゃありません』とか何とか指をさしながら言っ
て、高いところから、とおう…って飛び降りたりしません?」
「大丈夫、大丈夫。そんなん、ばれなきゃいいのよ(はーと)」
「そうそう…ばれなきゃ良いんだよ」
 達也があたしのセリフにうんうんと頷く。
「ひねくれた人生おくってんな、おまえら…」
「生活力があるって言ってよ」
「生活力があるっと言ってくれ」
 ガウリィの一言にあたしと達也の言葉は重なった。


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 はい、第2話最初の掲示はここまでです。
 事件という事件はおこってはいませんが1話で残った謎の一つが説けたと
言うことで…我慢してくり…
 さて次回の3回目がとにかく今悩んでいるところなので案外、時間がかかってしまうかもしんない…そん時はごめんなさい。
 で…いまは…うっ…『フルメタル・パニック!』にはまって読書中…すみ
まへん。すぐに読んで作成に取りかかるから…ではでは
                             by 猫斗犬

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