◆−新連載について−とーる (2009/11/22 16:08:30) No.34866
 ┣ドラスレ! 0−とーる (2009/11/22 16:44:47) No.34867
 ┃┗Re:ドラスレ! 0−kou (2009/11/22 21:10:00) No.34870
 ┃ ┗こんばんは−とーる (2009/11/28 20:50:18) No.34893
 ┣ドラスレ! 1−とーる (2009/11/28 21:54:48) No.34895
 ┣ドラスレ! 2−とーる (2009/12/10 00:20:14) No.34934
 ┗ドラスレ! 3−とーる (2009/12/13 20:40:13) No.34943


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34866新連載についてとーる URL2009/11/22 16:08:30

 
どうも皆様、こんにちは。
以前ここでゼロス連載をしていた者です。
今回、久々に連載をすることになりました。

本当は時々密やかに出没して短編などを更新していこうかと
ぼんやりと思ってなどいたのでですが、思わぬ所で
これは書きたい!という衝動が出てしまい、
こうして連載をすることに踏み切ってしまいました。
夢見さん、元ネタ提供ありがとうございます!

一応、スレイヤーズ一巻の原作沿いとなります。
しかしながらそれだけでは味気ないと思い、
オリジナルの展開を交えていこうと思っております。

ここで一つ注意。
新連載は“性転換パロディ”です。
主役メンバー四人ほど性別が逆転しています。
苦手な方がいましたら、申し訳ありません。



いつものごとく、のろのろとした亀更新となるでしょうが、
良ければのんびりと付き合って下さると嬉しいです。
『ドラゴン・スレイヤーズ・クエスト!〜略してドラスレ!〜』、
お楽しみ頂ければ幸いです。



とーる

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34867ドラスレ! 0とーる URL2009/11/22 16:44:47
記事番号34866へのコメント






プロローグ





俺の家族構成は、父ちゃん、母ちゃん、そして兄ちゃんだ。

兄ちゃんは……まあちょっとした称号を持ってて、
めちゃくちゃに強い。
そこらへんの中級魔族とかだったら、にこにこ笑ってどつけるぐらい。
兄ちゃんがどんだけ強いか――。
それは、きっと兄ちゃんに向かってくる挑戦者よりも、
生まれた時から一緒にいる俺の方がよく分かってると思う。

何せ昔から、色々と叩き込まれてきたからだ。
料理が毒入りか調べる方法、小さい短剣だけで
長剣を持った相手に挑んでいく方法などなどなど。

思い出したくない過去にはキリがない。

笑いながら俺を鍛える兄ちゃんは……ほんっと……。
いや、何も言うまい。
兄ちゃんなら俺が何を思ったかぐらい、勘で分かりそうだからな。

絶対に絶対に絶対に、逆らってはいけない存在である。

何とか兄ちゃんが知らないことで一番になりたいと、
俺が目をつけたのは魔道だった。
兄ちゃんは魔道よりも剣術の方が主にしてたから。

努力ってのがあんまり好きじゃない俺でさえ、
けっこー必死こいて頑張って研究して。
まあ、やってみると魔道の研究は面白かったし、
嫌いじゃなかったんだけどな。

つまり俺にとって兄ちゃんっていう存在は畏怖の象徴であり、
また目標であり、一番に越えたいと思う相手なわけだ。



そんな兄ちゃんから『世界を見て来い!』って言われたら。
――行くしかないだろ?
その後に『伝説の勇者になれ』とも言われたけど。



勇者はともかく。
もちろん俺もそろそろ旅に出てみたいとも思ってたし。
意気込んで郷里を後にしたね。

最初は色んな国を見て歩き、漫遊しながら、
無謀にもわらわら狙ってくる盗賊どもを相手にしてた。
そして見つけたのは、アジトにある持ち主がまったく分からない財宝。
こりゃこのままあったら何かとマズかろーと思い、
俺が丁寧に丁寧に保管してやってた。

きっと他の盗賊のアジトもそーなんだろーと思った俺は、
他の盗賊どもをこっちからいぢめ……
いやいや、相手にしてやって、逆恨みの盗賊どもの復讐などを
たびたび蹴散らし、財宝を保管してやっていた。

俺って何ていい奴っ!

そしたら、誰だ。
いつのまにか『ロバーズ・キラー』なんて称号をつけやがった。
俺の善行をそんな言葉で片付けるとは、不届きな奴だな!

いつまでたっても「それはうちから盗まれた財宝です」なーんて
言ってくる奴がいなけりゃ、そりゃ何割かは拾ってやった奴、
この場合は俺の所有物になるって決まってるもんだろう。
うむ、世の中の理ってもんだ。

そんな素晴らしい善行をしている俺の行く手、
少し前に盗賊どもがうろついていた。

だがそれは俺を追ってきたわけじゃなく、
どうやら誰かを取り囲んでねちねち絡んでいるらしい。
ちらりと見えた女性の影に俺はニヤリと……
いやいや、助けなければと意気込んだ。





NEXT.

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34870Re:ドラスレ! 0kou 2009/11/22 21:10:00
記事番号34867へのコメント

 はじめまして。とーるさん
 kouと、申します。
 スレイヤーズの性別転換の話ですか……。
 おもしろそうでわくわくしています。
 ……でも、魔族って性別は正確に言うなら無いような……?
 一応変えたりするんでしょうか? 名前とかも変わるんでしょうか?

>俺の家族構成は、父ちゃん、母ちゃん、そして兄ちゃんだ。
 一人称は俺なのか。 まぁ、僕という感じではないな。
>兄ちゃんは……まあちょっとした称号を持ってて、
>めちゃくちゃに強い。
>そこらへんの中級魔族とかだったら、にこにこ笑ってどつけるぐらい。
>兄ちゃんがどんだけ強いか――。
>それは、きっと兄ちゃんに向かってくる挑戦者よりも、
>生まれた時から一緒にいる俺の方がよく分かってると思う。
 なにしろ、スイフィードナイトと呼ばれていますからね。
>何せ昔から、色々と叩き込まれてきたからだ。
>料理が毒入りか調べる方法、小さい短剣だけで
>長剣を持った相手に挑んでいく方法などなどなど。
 普通なら死にます。
>思い出したくない過去にはキリがない。
>
>笑いながら俺を鍛える兄ちゃんは……ほんっと……。
>いや、何も言うまい。
>兄ちゃんなら俺が何を思ったかぐらい、勘で分かりそうだからな。
 まるで、L様……。そういや、L様の性別も変わるのかな?(ちょっとした疑問)
>絶対に絶対に絶対に、逆らってはいけない存在である。
>
>何とか兄ちゃんが知らないことで一番になりたいと、
>俺が目をつけたのは魔道だった。
>兄ちゃんは魔道よりも剣術の方が主にしてたから。
>
>努力ってのがあんまり好きじゃない俺でさえ、
>けっこー必死こいて頑張って研究して。
>まあ、やってみると魔道の研究は面白かったし、
>嫌いじゃなかったんだけどな。
>
>つまり俺にとって兄ちゃんっていう存在は畏怖の象徴であり、
>また目標であり、一番に越えたいと思う相手なわけだ。
 しかし、超えられる日は遠い
>そんな兄ちゃんから『世界を見て来い!』って言われたら。
>――行くしかないだろ?
>その後に『伝説の勇者になれ』とも言われたけど。
 言ったんですか? なんで?
>勇者はともかく。
>もちろん俺もそろそろ旅に出てみたいとも思ってたし。
>意気込んで郷里を後にしたね。
 ようするに、兄の目の届かないところでやんちゃしたかったと
>最初は色んな国を見て歩き、漫遊しながら、
>無謀にもわらわら狙ってくる盗賊どもを相手にしてた。
>そして見つけたのは、アジトにある持ち主がまったく分からない財宝。
>こりゃこのままあったら何かとマズかろーと思い、
>俺が丁寧に丁寧に保管してやってた。
 一般的に言うなら、盗賊ぶちのめして金品を奪った。
>きっと他の盗賊のアジトもそーなんだろーと思った俺は、
>他の盗賊どもをこっちからいぢめ……
>いやいや、相手にしてやって、逆恨みの盗賊どもの復讐などを
>たびたび蹴散らし、財宝を保管してやっていた。
 盗賊をぶちのめして財宝をかっぱらった。と、言うべきでは?
>俺って何ていい奴っ!
 そーか?
>そしたら、誰だ。
>いつのまにか『ロバーズ・キラー』なんて称号をつけやがった。
>俺の善行をそんな言葉で片付けるとは、不届きな奴だな!
 無理ないと思いますが?
>いつまでたっても「それはうちから盗まれた財宝です」なーんて
>言ってくる奴がいなけりゃ、そりゃ何割かは拾ってやった奴、
>この場合は俺の所有物になるって決まってるもんだろう。
>うむ、世の中の理ってもんだ。
 こうして、有名になって挑戦者が現れて、ナーガみたいなやつも現れたんでしょうな。
 ……ナーガの男バージョンって………、考えないでおこう。
>そんな素晴らしい善行をしている俺の行く手、
>少し前に盗賊どもがうろついていた。
>
>だがそれは俺を追ってきたわけじゃなく、
>どうやら誰かを取り囲んでねちねち絡んでいるらしい。
>ちらりと見えた女性の影に俺はニヤリと……
>いやいや、助けなければと意気込んだ。
 ガウリィ女性バージョンでしょうか?
 そういや、男バージョンのリナの名前出てないな。
 一体どんな名前なんでしょうか?
 早く知りたいです。
 以上、kouでした。

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34893こんばんはとーる URL2009/11/28 20:50:18
記事番号34870へのコメント

 
どうも kou さん、こんばんは。
こちらこそ初めまして、とーると申します。
お返事が遅くなり申し訳ありません。

一応、性別が変わるのはメインメンバーとなります。
なので魔族などはストーリー上やキャラなど、
その時々によって変わっていきます。
ですので、名前も全員そのまま、変わりません。
女性名でも男性名でも、名前は一緒でいくつもりですよ。

>まるで、L様……。そういや、L様の性別も変わるのかな?(ちょっとした疑問)

L 様の出番を楽しみに待っていただければ光栄です (笑
もちろん L様 の出番もちゃんとありますので!

これからお付き合い頂ければ嬉しいです。
コメントありがとうございました。



とーる

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34895ドラスレ! 1とーる URL2009/11/28 21:54:48
記事番号34866へのコメント

 




第一話





「それぐらいにしておけよ」


俺は朗々と声を上げた。
一応女性の影はあるものの、一斉に振り向く
盗賊どもの影に隠れて顔は見えない。

まあ、ちょっと見てた限りじゃあ一人旅っぽいし、
腕前には結構自信があるんだろ。

何せ強面の盗賊どもに囲まれてるにも関わらず、
怖がる様子なんて微塵もなかった。
これが戦ったこともない、まったく普通の女性だったら
悲鳴を上げたり、すぐ泣いてるだろうし。


「お前らじゃ何人いても話にならないぜ。
 すぐにシッポまいて逃げれば、命だけは助けてやるよ」


盗賊どもが逃げ帰る先にあるのは、もちろんアジトだ。
これで今日もほくほくの路銀……いやいや、
今日の善行として財宝の保管が出来るも当然だな。


「やかましいっ! いきなり出てきやがって……
 てめえ、何もんだ!!」

「お前らなんぞに名乗る名前はないっ!」


そうそうこれこれ!!
一度でいいから、こういうのやってみたかったんだよなー。

誰かが、こういう場合は女性のピンチに決まって
脈絡なく現れる、結構強くてカッコイイ謎の旅人っての?
安っぽい物語のワンシーンみたいな。
人が言うのを聞けば寒くなるだけの台詞とか。
俺が言うのはともかく、俺に対してそういうのを言われたら、
目を点にするどころか大爆笑するだろうけどさ。

本当に一度だけな、一度だけ。
俺だってこういうことを、そう何度もやる気は毛頭ないし。
ってか、寒い人間になりたくもないしな。
どっかの金魚のフンみたいな感じのはごめんだ。


「しゃらくせえ!! やっちまえっ、野郎ども!!」

「ファイヤー・ボール」



ちゅどごむっ!!



「……あ……」


地面に転がってぴくぴくしてる焦げつく
盗賊どもを見下ろし、俺はポリポリ頬をかいた。

……あいやー、しまった。
いつもどーりに、ついつい一撃で沈めちまったな。
もうちょっと焦らして焦らして、ちょちょっとチャンバラを
するような感じで遊んでやろうと思ってたのに。

つーかもしかして、こいつらもう立ち上がれないんじゃ?
やっちまった、アジトの場所が分からないじゃん!!
まあ、昨日の保管分があるから、当分の路銀には
困らないっちゃ困らないけど。

うーむ……。
何かこう、もったいない気がする。


「……あの……」

「ん?」


おそるおそる遠慮がちな声がかけられて、
俺は絡まれてた女性の存在をようやく思い出した。

くるり、と振り向いた俺は――しばし絶句した。

さらりと流れる絹糸みたいな金の長髪に、
澄んだ空を思わせる大きな青い瞳。
少女と女性のちょうど中間ぐらいにあるような、
愛らしく美しくも整った顔立ち。
いかにも保護欲だの母性本能だのがくすぐられる、
ちょっと小柄で華奢な体躯。

――こういう場面で助けるにはありがちな、
かなりの美少女だった。

旅の途中に、結構色んな奴と知り合った俺ではあるが、
ここまでの美少女は初めて見た。
本当にそんな人間って世の中にいたのかとすら、
ちょっと真面目に思ってしまうほどである。

だが、その格好は鎧と長剣を装備している剣士だ。
俺の目端に映る長剣は、美少女が持つには無骨なデザイン。
でも腰に下げる姿はかなり自然。

ということは、持ちなれてるってことで。


「あの、本当にありがとうございました」

「……やー、別に改まって礼を言われるほどじゃないって」


何せこの美少女を助けるための大元の理由が、
“ちょっと寒い登場をやってみたかった” ってのと、
“盗賊どもの財宝の保管” だったし……。

それに、別に俺が助けなくっても、
あの様子だったら多分大丈夫だったろーしさ。


「それより怪我はない?」

「はい」


ないことは分かってるものの、一応流れ的に訊いてみる。
すると美少女はこくりと頷いた。

……さて?
俺がやってみたかった寒い物語のオーソドックスから言えば、
ここで俺とこの美少女の二人は恋に落ちるんだが……。

恋愛ごとよりも、何より財宝を魅力に思う俺。
ま、オーソドックスに関係のないことだな。





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34934ドラスレ! 2とーる URL2009/12/10 00:20:14
記事番号34866へのコメント

 




第二話





俺は気づかれないように注意しながら、
美少女をよくよく観察してみた。
いくら細身であるとはいえ、それなりの長さがある
剣を腰に携えてても、ふらつかない立ち姿に感心する。

鞘の無骨なその長剣は、俺ぐらいの身長であれば
振るうのにはちょうどいいサイズだ。
もし俺がこの美少女であれば、普通は短剣とかダガー、
レイピアとか、軽さを重視して選ぶ。
俺は 『自分の道具にこだわらない奴は二流であり、
また道具に当たる奴は三流以下』 であると普通に思ってる。

それこそ、そんなレベルにも到達しない話ってのが、
『自分の道具に振り回される』 って奴だ。

自分の性分に合う道具を選び抜き、それを使いこなせて
初めて一流だの二流だのって話になるからな。
きっと素人目じゃ分からないだろう。

その細腕で、どんだけこの剣を扱ってきたんだか。
まったく恐れ入るな……。


「仲間とはぐれたりでもした?」

「いえ、一人旅です」


うーん……。
これが明らかに旅行中の美少女とかだったら、
家まで届けて謝礼金を受け取るって寸法になるんだが。
この美少女じゃ無理だな……それは……。

俺は内心で深く溜息をついた。
美少女は俺の心境も知らず話を続ける。


「別に何かのアテがあるわけでもないんですけど、
 とりあえずこの先にあるテルモードにでも
 行ってみようかと思ってまして」

「……テルモード?」

「そうです」

「……えーと……あのさ、俺の間違いじゃなければ、
 さっき向こうへ歩いてなかったっけ?」


美少女の言葉に、俺は思わずポカンとした。

道の先の方を俺が指さす。
すると美少女は、とても可愛い笑顔で頷いた。
……あのなあ……お嬢さんよ。


「ええっとな、向こうはテルモードじゃないぞ?
 向こうの道はアトラスで、そっちの道がテルモード。
 まるっきり逆方向だ」

「ええ?」


俺はアトラス方面に指をたてたまま、
空中ですいっと右から左へと平行線を描く。
思いきり呆れた表情をしてやろうかとも思ったが、
さすがに初対面でそれもどうかと思う。
何とか表情を心の内だけに押しとどめてみせた。

だって何せ、少し戻った分かれ道に、
町の名前がしっかりと書かれた看板があったはずだぞ。
ここからでもひょいっと後ろを振り返ってみれば、
少し戻った所に看板があることが分かる。


「あら? 看板通りに歩いてきたつもりなんですけど」


いや…… 『あら?』 じゃなくて。
看板見たのに何で逆方向を歩いてるんだ……。
かなりの方向音痴なのか……?

どうしてだろうかと、すっごく不思議そうな顔をしながら、
ことりと美少女は首を傾げてる。
結構旅慣れしてると思ったけど何か旅慣れしてないように
見えるのは何でなんだ……。


「おかしいですよね。この間もちゃんと町の方へ
 向かってたのに、いつのまにか町の名前を忘れちゃってて
 海辺の村にいたんです。私ったらそそっかしくて!」


てへっと可愛らしく笑う美少女。
いやあの、それって方向音痴とかそそっかしいとか、
そういう問題じゃない気がするんだけど。
俺としては。


「あの、どうかしましたか?」

「いや……」


俺が黙り込んでるのを不審に思ったのか、
問いかけてくる美少女に俺はのろのろ首を振る。

確かに容姿は目の保養にはなるだろうけど、
これ以上この美少女と関わっても俺の得にはならない。
そう判断した俺は、にっこりと笑顔を浮かべた。


「とにかくテルモードは向こうです。それじゃあ、
 俺はこの辺――」

「あ!」

「えっ」


いきなり声を上げた美少女に、俺はぎくりとする。


「そうですかー、はい、そうだったんですねー。
 あの、すみません、大変ですね」

「へ?」

「分かってます分かってます。色々あったんですよね、
 色々と」

「……いや、俺は……」

「あーっ、何も言わなくても大丈夫ですよ。分かってますから!」


初対面の俺の、何を分かってるんだ。
思わず俺はそう言いたくなった。

ただ単に呆れて黙りこんでいた俺のことを、この美少女は
どうやら “テルモードの名を聞きたくない” という
リアクションだと勘違いしたらしい。
多分美少女の中の俺は 『何かの事情で町を離れなければ
ならなくなった謎の美青年』 になってるんだろう。


「それじゃあ、アトラスに行きましょう!」


おいおいおいおいっ!!
どうしてそうなる!!


「いや、だって君はテルモードに……」

「さっきも言いましたけど、私には特に旅のアテは
 ありませんから。ああ、それじゃあ、アトラスまでの
 護衛も兼ねてっていうのはどうでしょうか?
 私はガウリイ、見ての通りの傭兵です。貴方は?」

「…………。」


話し合いをする気力もなくなった俺は肩を落として、
リナ、と答えた。





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34943ドラスレ! 3とーる URL2009/12/13 20:40:13
記事番号34866へのコメント

 




第三話





何だかんだでガウリイってお嬢ちゃんの
護衛をすることになってしまった俺。

……っていうか、このお嬢ちゃんに護衛なんてものは
そもそも必要ないはずなんだ。
もちろんそんなこと、お嬢ちゃん本人が分かってるだろう。
それでも強引に俺を “護衛” と呼び、つれてきたのは、
ひとえに俺をテルモードから遠ざけようとしてのこと。

つまりお嬢ちゃんは、いい人、善人なのである。

これが無理にコビ売ってくるようなねーちゃんであれば、
俺としてはコナをかけるという行為も思いつかず
速攻シカトしてただろう。
しかしこのガウリイお嬢ちゃんは、何の詮索もせず、
真剣に俺の心配をしてくれているらしい。
……断れるわけがない。





「あ、宿屋があるわ」

「……んじゃー、今日はあそこに泊まるか」

「ええ」


アトラスの途中にある宿場町。
昼食を取ってからそれぞれの部屋に入ると、ようやく
一人になれた俺はさっそく重たいマントを外した。
そこにつまったお宝をいそいそと検分し始める。

さすがにあのお嬢ちゃんがいる所で、
堂々とお宝検分するわけにもいかないからなあ……。


「んーと。お、このオリハルコンの神像は結構出来がいいな!
 高く売れそうだ。……何だ、このナイフ。たちの悪い
 魔法がかかってんな……解除して別の魔法をかけとくか」


あとは滅びた公国の金貨やら、宝石類がざっと二、三百。
宝石はキズモノもあるから、そのまま売るのと
ジュエルズ・アミュレット用に作り直すのとに整理するか。

そんな風にせっせと宝石の仕分けをして、
あらかたジュエルズ・アミュレットを作り終えた所で、
ひかえめにドアがノックされる。


「リナ、そろそろ夕食の時間だけど?」

「ん」


ガウリイの声に窓を見やると、とっくに太陽は地平に
沈もうとしていて夕闇に染まりつつある。
あれま……久々だったんで思わず熱中しちゃったか。


「荷物片付けてから行く。さきに食べてていいぞ」

「ええ、分かったわ」


あ、今の会話からも分かったように、
ガウリイお嬢ちゃんはここ数日で俺への敬語をやめている。
というよりも、俺がむずがゆいからやめてくれと頼んだ。
敬語がクセだっていうんならまだしも、
あきらかに気を使って敬語を使われているとなると
俺としても何だか、居心地が悪いからな。

待たせるのも悪いと思い、てきぱきと荷物を片付けて
宿屋の一階にある食堂へと降りていく。
ガウリイお嬢ちゃんを探すと、窓際の奥の席に座っていた。

きっといちいち頼むのは面倒だろうからと思ったのか、
俺が自分で頼むメインの料理は除いて、テーブルの上には
すでにサラダやスープ、いくつかの小皿の料理が運ばれてる。
本当にこういう気配りは上手いんだよなあ。
このお嬢ちゃんって……。

俺は店のおばちゃんにチキンソテーセットを頼んで
お嬢ちゃんの座る向かいの席についた。


「リナ、さっき部屋で魔法をつかってたの?
 かすかに呪文みたいなのが聞こえてきたけど」

「あー、まーな」


俺はサラダをぱくつきながら、曖昧に頷く。
きっとジュエルズ・アミュレットの話をした所で、
このお嬢ちゃんが喜ぶとは思わない。


「へええ。それじゃあリナって魔道士か何か?」



ずべべっ!!



思わずテーブルに突っ伏した俺を、
ガウリイお嬢ちゃんはきょとんとした顔で見てくる。
あのなあ、お嬢ちゃんよ!!
あんたは常識の抜けたどっかの箱入り娘か!?


「一体今まで俺を何だと思ってたんだ? この俺の格好、
 マントやらローブやらショルダー・ガードとかで
 分かるだろう、普通!!」

「確かにそれらしいと思ってだけど……。いや、私はてっきり、
 魚屋さんかウエイトレスかと」



ずばべしゃっ!!



起こしかけた体がまた突っ伏し、
思わず近くのスープ皿をひっくり返す。

うわあ、もったいないことをした!
俺、そのポタージュまだ一口も飲んでなかったのに。


「……冗談よ、冗談……」


ぽつりと呟くお嬢ちゃん。
あんたの場合、冗談が冗談に聞こえないんだよ!
真面目な顔して言ったくせに!

俺が口を開きかけた時。
けたたましい音を立てて宿屋のドアがけり破られた。


「あの男だ!」


ドアを蹴破った声の主と、俺の目がばっちりと合う。
ちなみにそいつが指差す先には俺。
あっちゃー……まーた面倒なことになった。

何故だか包帯ぐるぐる巻きのミイラ男の後ろから
なだれ込んでくるのは、トロルの群れ。
うーむ、どうするかな。





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