◆−紫煙の幻影 16−とーる (2009/7/19 14:29:05) No.34214
 ┣紫煙の幻影 17−とーる (2009/7/19 14:41:24) No.34215
 ┣あとがき−とーる (2009/7/19 14:47:54) No.34216
 ┣Re:紫煙の幻影 完結おめでとうございます!−のこもこ (2009/7/19 16:30:23) No.34218
 ┃┗Re:ありがとうございます−とーる (2009/7/20 15:31:24) No.34220
 ┗うお!?ドラ○ゲーム三昧してたら!?−かお (2009/7/20 18:41:41) No.34222
  ┗Re:お久しぶりです−とーる (2009/7/21 20:23:50) No.34228


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34214紫煙の幻影 16とーる URL2009/7/19 14:29:05


 




―終止―





次の日。

リナ達が宿屋から出て森の方とやって来る。
広場の手前で待っていたのはリヴィ、そして結局
アストラル・サイドに戻ろうとしなかったゼロスだった。
さも当たり前のように立っているゼロスに
リナは不審そうな目を向けた。
しかしゼロスはまるで気がつかないというフリをして
飄々とした体でリヴィに話しかける。


「それで、どうするんです?」

「まあ少しは骨身に染みたかなと思うことにしようか」


リヴィは杖を出現させる。
一歩前に出る際に隣から甘いですねえ、と呟く声が
聞こえてきたがそれには何も答えない。

軽く杖を回してからトン、と静かに地を打つと
竜達を覆っていた紅の濃霧が散っていく。
現れた竜達は本性の姿をさらけだし、
全員が目を回して、口から泡を吹いて倒れていた。


「リ、リヴィオル殿、何をしたのですか?」

「ん?」


恐々問いかけてくるミルガズィアに
リヴィは苦笑して肩をすくめた。


「うーん、少し幻を見せていただけなんだけどね」

「幻……ですか?」

「神魔戦争時代の私の記憶をちょっと」



どしゃっ!!



大きな音にリヴィが振り返る。
リナとミルガズィア、メフィの三人が地面にコケている。
ガウリイはやはりきょとんとしていて、
ゼロスは盛大に顔を引きつらせて固まっていた。
確かに経験はない戦争ではあるが、
ゼロスとしてもあまり見たくはないものだろう。


「し、神魔戦争て……」

「本当にちょっとなんだけどね。私が最終地で
 ルビーアイと戦っていた時のことしか」

「充分大事でしょうがあああああああ!!!!!!」


首を傾げるリヴィに思わずといったようにリナは叫んだ。
ぜえぜえと肩で大きく息をつくリナに、
リヴィは少しだけ不思議そうにしながら首を傾げる。


「本当にちょっとだけなのにね」

「……そういう問題ではありませんよ」

「あれ? ゼロスも見たかった?」

「…………はあ。ご遠慮申し上げておきます」


ましてスィーフィードの記憶であるなら余計に。
ゼロスの丁寧な言葉の裏にある本音に、
もちろんリヴィは気づいている。
気づいていてわざと問いかけたのだ。
ゼロスもリヴィがからかっている事にすぐ気づいて、
じろりと睥睨してみせる。
だが、リヴィはただ声なく微笑んでみせただけだった。


「さて。私はもう十分なんだけどリナさんはどうする?
 成敗しとく?」

「え? そうねえ……」


杖を回しながらリヴィがリナの方を振り向く。
多少リナは考え込むような顔をしたが、
すぐに溜息をついて首を横に振ってみせた。


「何かリヴィの事でどうでも良くなっちゃったわ。
 そいつら、すぐには復活出来ないんでしょ?」

「うん、この様子では、とてもね。まったく……
 昔より根性がなくなった気がするよ」

「神魔戦争の記憶など容赦なく見せられたら、
 誰もがこうなるに決まってますよ」


リナの問いかけに不満そうに声を上げたリヴィに
顔をしかめたゼロスは即座につっこむ。
何度か瞬きをしてからリヴィは肩をすくめた。


「まあ、また何かあればまたお仕置きにくるからいいけど」


彼らとしてはあまり良くないだろうなと
リヴィを除くリナ達全員は思った。
人間側からすれば、そうまずい事ではないが、
多少同情を覚える光景ではある。


「ここに寝かせておくのも邪魔かな」


リヴィはぽつりと呟くと、
回していた杖を止めて軽く地を叩く。
すると転がっていた竜達の周りを淡い赤の光が囲い、
一瞬強く光った次の瞬間には
地面にもう何も倒れてはいなかった。

虚空に杖を消したリヴィにミルガズィアは尋ねる。


「彼らをどこに送ったのです?」

「とりあえずゼフィーリア」

「え゛」


リナがぎくりと肩をこわばらせる。


「……に、送ろうと思ったんだけど。ルナのバイトの
 邪魔をしたくはないからね。彼らの神殿に送り届けたよ」

「そ、そう」


あからさまに、ほっと肩から力を抜いて
安堵するリナの様子にリヴィはくすりと笑う。
飄々とした笑みを浮かべて明後日の方を見るゼロスは、
リナの感情をちゃっかり食事しているのだろう。

リナが知ったらただじゃすまないと、目を細める。
そんなゼロスの姿も見てみたいと思ってしまうリヴィ。


「私もまだまだ子供という事かな」


誰にも聞こえないように小さく笑った。





NEXT.

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34215紫煙の幻影 17とーる URL2009/7/19 14:41:24
記事番号34214へのコメント

 




―エピローグ―





「……さて。私はそろそろ行こうかな」


朝食を終えて食後の紅茶を飲み終え、
一息ついたリヴィは静かにそう切り出した。

その言葉に驚いたのはリナとガウリイ、
そしてミルガズィアとメフィ。
ゼロスはどこかで予想していたのか少しも驚かず、
ちらりとリヴィを見ただけだった。

驚くリナ達の表情を見てリヴィは苦笑した。


「本当はもう少し一緒に旅をしよかと思ったんだけどね」

「別にあたしは構わないわよ。ね、ガウリイ」

「ああ、もちろんだ」

「ありがとう」


二人の言葉にリヴィはとても嬉しそうに微笑む。


「だけどね、しばらく一人で旅してみようかと思うんだ。
 以前やれなかった事も色々とやりたいし」

「……そう」


緩やかに首を振るリヴィにリナはもう何も言わない。
穏やかに浮かべられた微笑みが、
確固たるものだとすぐに分かったからだ。
ミルガズィアは深々と頭を下げる。


「このたびは本当にありがとうございました」

「嫌だな、僕は自分がしたいからしただけだよ。頭を上げて」


くすくすと笑うリヴィ。
しかしその顔は少しだけ赤みがさしている。


「何ですリヴィさん。照れてるんですか?」


とても面白いものでも見つけたかのように、
ゼロスがここぞとからかってみせる。
目に見えて意地悪そうな笑みを浮かべているのは
リヴィがきちんと自分から正体を明かすまで
ゼロスをからかっていた事を彼なりに
根に持っているせいだろう。

リヴィは何か言いたいような視線をゼロスに向けてから
ひょいっと肩をすくめてみせた。
それぐらいなら甘んじて受けるという意思表示らしい。

カタリと席を立つ。
すると五人も店の外まで見送りに出た。


「もう少しお話を伺いたい所ですが、お気をつけて下さい」

「ありがとう、メフィさん。
 いつか君の村にもちゃんと行かせてもらうよ」

「はい! 楽しみに待ってますわ!」


にっこりと笑うメフィにリヴィも微笑み返す。
ふとリヴィはその手に杖を出現させてリナを振り返る。


「リナさん、両手を出してくれませんか?」

「いいわよ」


リヴィの前にリナは両手を差し出す。
その手に杖をかざして、周りをぐるりと一周させる。
すると宝玉が光ってリナの両手を包んだ。

ふわりと光が消えるとリナの両手首には
紅の宝玉がついたアミュレットがはめられていた。


「これって…まさかデモン・ブラッド!?」

「ちょっと違うかな。それは私の力が入ったブースト。
 でも色々と改良してあるから、デモン・ブラッドにも
 負けないぐらいの力はあるよ」


リナは驚いてまじまじとアミュレットを見やる。
デモン・ブラッドはゼロスが昔リナに奪われ……
いや、買い取られたものだ。
それに匹敵するとは、とゼロスの顔が多少ひきつる。

リヴィの力が入っているというのも、
聞き逃したいが聞き逃せない言葉だった。


「発動させる呪文は特には決めてないから、
 リナさんが考えて使うといいよ」

「そう……。どうするかちょっと考えてた所なのよね、
 ありがとリヴィ。大切に使わせてもらうわ」

「いえいえ。きちんと加護もこめてあるから、
 いついかなる時も二対でいるようにね」

「ええ」


頷いたリナの姿にゼロスは内心で大笑いした。

リナは気づいていないのだろう。
リヴィの言った “いついかなる時も二対で” という言葉が、
アミュレットだけにかけられたものではないと。

傍に立つガウリイはいつもの涼しい顔をしていて、
彼が気づいているかは読み取れない。


「それじゃあ、私は行くよ」

「お元気で」

「お気をつけて下さいね」


杖を虚空に戻したリヴィに、
ミルガズィアとメフィが声をかける。


「ええ、また逢いましょ」

「またな、リヴィ」


リナとガウリイも思い思いの言葉をかける。
ふわりとリナ達に微笑んで頷いていたリヴィは
最後にゼロスに顔を向けると、晴れ晴れとした笑顔を見せた。

それは、彼がルヴィリオであった時には
一度も浮かべる事のなかった笑顔。

ゼロスは試すように開眼してくすりと笑ってみせる。
それだけでリヴィは充分だったのだろう。

その笑顔のまま、踵を返すと
手を振る事も振り返る事もなく。
ゆっくりと歩き出した。





「さあ、どこから行こうかな――」





END.

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34216あとがきとーる URL2009/7/19 14:47:54
記事番号34214へのコメント

 

皆さん、こんにちは。
どうもお久しぶりなとーるです。

オフが学校だの課題だのバイトだのと
色々忙しくて長らく間があいてしまいましたが、
『紫煙の幻影』 はこれにて終幕となります。
長い目で 『幻想』 からお付き合い下さった皆様、
『幻影』 からお付き合い下さった皆様、
本当にありがとうございました。

多分これからはオフが一段落するまで
長編を投稿する事はなくなってしまうと思いますが、
短編などは投稿していきたいと思っていますので
見かけた時はどうぞよろしくお願いします。

最後にもう一度。
ここまでお付き合い下さり、
本当にありがとうございました。
またお会いしましょう!

それでは。


とーる
 

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34218Re:紫煙の幻影 完結おめでとうございます!のこもこ 2009/7/19 16:30:23
記事番号34214へのコメント

はじめましてとーるさん!!
のこもこといいます!!
『幻想』から始まっての長編投稿お疲れ様でした。

ゼロスとリヴィのつかず離れずの関係とか見ていてとても楽しめました!
火竜族のかたは…相手が悪かったということで♪
オブとか学会のレポートとか、とーるさんも多忙な中忙しい毎日を送っていると思います。
体の体調管理とか、お気をつけてお過ごしください。

のこもこでした!!

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34220Re:ありがとうございますとーる URL2009/7/20 15:31:24
記事番号34218へのコメント

 
こんにちは、のこもこさん。
どうも初めまして、とーると申します。
もっと頻度を保って投稿したかったのですが
結局何度も間があく事になって申し訳なかったです。
けれど最後までお付き合い下さって嬉しいです。

>ゼロスとリヴィのつかず離れずの関係

この二人の関係は近すぎず遠すぎずの距離を
適度に保ちながら書いていこうと思っていたので、
そんな関係に見えたようで安心しました。

まだまだ暑い日が続きますし、
のこもこさんも体調にはお気をつけて下さいね。
コメントありがとうございました。

とーる
 

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34222うお!?ドラ○ゲーム三昧してたら!?かお 2009/7/20 18:41:41
記事番号34214へのコメント

こんにちわ。とーるさん。おひさしぶりです。お忘れかもしれませんがかおです。
紫煙完結、おめでとうございます!
この11日からずーとドラ○エ三昧してて見逃してた私です(まて
しかし、リヴィ…神魔戦争の記憶って(汗
それはたしかにみたくないようで怖いもの見たさでたいようで・・・
ゼロスの内心の心情がちらっとかいまみえたようでおもわず爆笑
ついでに気付いてないリナに(ニ対で、ということはガウリ込、というのにきづいてるのか?)にこれまたリナらしくて爆笑ですv
ともあれながらくおつかれさまでしたv
何やらたいへんそうですがあまりむりはなさらないでくださいねー
ではではv
またいつかーv
byかお

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34228Re:お久しぶりですとーる URL2009/7/21 20:23:50
記事番号34222へのコメント

 
どうもこんばんは、かおさん。
お久しぶりです。もちろん忘れてませんよー。

ド○クエいいですね、楽しそうです!
でも私、ド○クエって弟が友人から借りた 8 ぐらいしか
実際にはプレイしたことがないんですよね。
9 が出るという情報を聞いた時には
少しやってみたいとは思いましたけれども……。

リヴィはもちろん色々と分かっててやってます。
確信犯というより、今は開き直っている状態なので (笑
この連載のリナはリヴィが言ったように遠回りに言われると
さらっと流しちゃって気づかない方ですが、
ガウリイは……さてどうでしょうねえ♪

本当に長い間、お付き合い下さってありがとうございます。
かおさんも無理はせず、体調にはお気をつけ下さい。
コメントありがとうございました!

とーる
 

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