◆−39.ポルガラ・シティ−星野 流 (2009/1/4 00:08:25) No.33894
 ┣40.大会−星野 流 (2009/1/25 14:15:37) No.33910
 ┣41.ガードとイアン−星野 流 (2009/3/14 00:06:48) No.33963
 ┣42.アストラル・サイド−星野 流 (2009/3/31 14:11:37) No.33977
 ┗43.我が友、シャブラニグドゥ−星野 流 (2009/5/10 00:04:56) No.34008


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3389439.ポルガラ・シティ星野 流 2009/1/4 00:08:25


39.ポルガラ・シティ

 久しぶりにやって来たポルガラ・シティ。8年前と少しも変わらぬその景観にほぅっと息を吐く。

リナにどんどん離されて行く実力差を何とか縮めたいとの思いから出発したあの時が昨日の事のように思い出される。

ここへはL様に連れてこられたのだった。

あの時はL様に初めて会ったにも関わらず、自分の身が勝手に動き、困惑した。

自分が竜神と魔王からちぎりとられたものの集合体であると聞かされて不安だった。

何者かを知って、それでも自分は自分なのだと達観した。……13で達観というのも可笑しな話だが。

あの村からの道筋は、その頃の私にとって理由は分からなかったが至福の時だった。

L様といて幸福だった理由は、今なら分かる。敬愛しているのだ。


 ここでは催し物が開かれていた。四人一組のサバイバル・マッチ。それでゼルガディスさん達に出会った。

二人の最期を思い出し、気が沈む。ゾルフさんはカオス・ワードを訂正してくれ、ロディマスさんは開幕の時に肩車をしてくれたのだったか。

〈ゼ〉「どうかしましたか?」

ゼロスに声をかけられ、過去への思いが断ち切られる。彼ら二人は足を止めてこちらを見ている。

〈G〉「ああ……昔の事を、思い出してね」

心配ない、と笑った。


 街の入り口。そこに一際美しく輝く金色の髪の美女がいた。――L様だ。

〈G〉「お久しぶりです」

一目がありますので、見下ろすご無礼、お許し下さい。 と、心の中で呟く。

コクリと頷かれ、許可が下りる。

改めてL様を見る。昔は綺麗なお姉さんだなと思っていたのだが、今では私の方が年長のようだ。

思い返してニッコリと笑む。


 宿の一室。中に入ってL様にお茶とお茶請けを用意して、二人と共に居住まいを正す。

〈L〉「この前連れてきたときは催し物だったけれど。3年ほど前から格闘場ができたの。やってみる?」

〈G〉「是非もございません」

〈S〉「それって、強制じゃないですか……」

ゴッ

L様の鉄拳が飛ぶ。Sさんは倒れふした。ゼロスの顔が蒼白になる。

〈G〉「では、格闘場の事を聞いてきますね」

あの時、説明を全く見ていなかった私に『参加するなら説明を見ること』と教えられた。

〈ゼ〉「僕も行きます」

〈L〉「あ。ガード。財布二つ頂戴」

〈G〉「二つで良いのですね?」

〈L〉「ええ。二つで足りるはずよ」

Sさんをベッドに置き去り、宿を出る。

〈G〉「ついていきましょうか?」

〈L〉「一人でいいわ。でも。そのカバン貸してね」

〈G〉「喜んで」

外套のベルトごとカバンを取り、外套を入れて渡す。

受け取ったL様は上機嫌に歩み去る。ベルトとカバンがアンバランスだ。しかし、いつも通り町行く人々が彼女を振り向くので心配はないようだ。


 苦笑した私はゼロスに向き直る。

〈G〉「さて。情報収集にあたろうか」

〈ゼ〉「はあ」

気のない返事に首を傾げる。

〈G〉「どうした?」

〈ゼ〉「その……カバンと外套の中に財布が入っているのでは?」

硬直

〈G〉「しまったあああああっ!」


 情報収集はゼロスに渡してあったお金で何とか事足りた。最も、冷や汗物だった。

〈G〉「今度からは……財布の確認もしよう」

〈ゼ〉「そうしてください。僕のお金がなくなっちゃうじゃないですか」

〈G〉「元々私の財布だろうが」

声に怒気を含ませる。この金は渡してあるだけで全部あげたわけではない。

欲しい物が手に入らないでは話にならないので渡してあるだけだ。

〈ゼ〉「違いますよ。財布はガードさんのですが、盗賊から奪ったお金なので僕のです」

ゴン

私はよろけてレンガの家に頭をぶつける。……レンガをへこましてしまった。

〈G〉「旅の傍ら、そんな事をしてたのか」

油断ならないな。

〈ゼ〉「魔王様もしてますよ」

Sさん……

二人の所業に頭を抱えつつ、宿の一室に帰ると、中でSさんが不貞腐れて呪いの言葉を呟いていた。

急いで謝り倒し、呪いを消してもらうよう頼み込んだ。



         ―登場人物―   (特別バージョン)

   L様
ロード・オブ・ナイトメア。全ての王と渾名される創造者。通称・L様。
長くてサラサラな金髪美女。あらゆることでNo.1!

   ガード=ワード
L様の命により、面白いことに首をつっこむことになった。

   S
北の魔王。

   ゼロス
獣神官。


〜あとがき〜
 新春 明けましておめでとうございます。

久しぶりに投稿させていただきます。始めの頃とは打って変わったように8月の末から全く音沙汰していません。

ガード共々、初心に帰ってこれから頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それと、USBに保存しておいた小説以外の話が消えてしまいました。これから復習してみる事にします。

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3391040.大会星野 流 2009/1/25 14:15:37
記事番号33894へのコメント

40.大会

 何とか呪いを中止してもらえた。魔王だけあって、かなり怖かった。今度からSさんの機嫌にも注意しようと決める。

〈G〉「さて。格闘場の説明をします」

格闘場は 肉弾戦 魔道戦 おためし 団体戦 がある。おためし以外はトーナメント戦だ。(そもそも おためし というのが分からない)

相手の戦意喪失、気絶等で勝敗が決まる。賞金はそれぞれ1万枚。賞品もそれぞれつくそうだ。

団体戦は2人から8人までとかなり幅がある。

〈G〉「団体戦は3人で出るとして、誰がどれにでますか?」

うつむく二人。Sさんが口を開く。

〈S&ゼ〉「じゃ。魔道戦に出ますね」

二人が同時に言う。見詰め合う、二人。

〈G〉「じゃあ、私は肉弾戦で」

驚いてこちらを向く。

〈ゼ〉「肉弾戦って……できるのですか?」

〈G〉「ま、薬を飲まなかったら何とかなるんじゃないかい?」

〈S〉「薬って……子供の頃から飲んでるアレでしょう? 飲まなくて大丈夫なのですか?」

〈G〉「魔力や筋力を押さえ込む薬だから大丈夫。……なはず」

〈ゼ〉「アレで抑えてたんですか!?」

アレとはどういう意味だ?

〈S〉「まあ、それはまあ、置いておきましょう。それで、ゼロス」

〈ゼ〉「何でしょう?」

〈S〉「譲りなさい」

ゼロスは沈黙し、コクリと頷いた。人となった今では対等であるはずだが、やはり逆らえないらしい。ま、そういうものなのだろう。

〈S〉「出場手続きしてきてください」

Sさんはゼロスを見る。

〈ゼ〉「え。僕ですか?」

自分に回ってくるとは思わなかったのだろう。不思議そうな顔をする。

〈S〉「ええ。今、ガードさんを使うわけにはいきません」

何で? 私たちは揃って彼を見る。

〈S〉「L様が戻ってきます」

〈ゼ〉「行ってきます」

ゼロスは颯爽と出て行った。

〈G〉「ははは……行動が、早いなぁ」

〈S〉「じゃ。お茶下さい」

L様待つんじゃあないのか?


 L様が帰ってきた。という事で、今夜は高級レストランだ。

いやぁ、皆食べる食べる。どうしてそんなに食べれるのか不思議だ。

コース料理を一気に食い尽くした。私の食べ残しまで、全部。いやいや、こんな所で食べ残しを食べるのははしたないよ?

会計はやっぱり私だった。そして、ここで気がつく。L様……2つも財布を空にしたのですか?

今日この日。私は3つの財布を空にした。ああ……一刻も早く、ゼフィールに行かないと。

この頃お金が全く貯まっていない私は早くゼフィールに行って、研究成果を発表しようと決意する。

大丈夫。2年間溜めた研究成果は100に上る。何とかなるはずだ。

懐が寂しく、涙ながらに酔っ払い二人を抱え、私は宿屋へとL様をエスコート――というのもおかしいが――した。(L様が一番酒を飲んでいたのだが、酔う事はないようだ)


 大会が始まった。一日目の午前中は『おためし』だ。ゼロスら選手5人――何と選手は5人しかいなかったのだ――は横一列に並ぶ。

魔法で声を大きくしているのであろう。審判の声が会場に響く。

「今回の『おためし』は、『大食い大会』です!」

ええええええっ!

〈G〉「そ、そういう、おためし、何ですねぇ」

〈S〉「昨日あれほど食べさせたのは失敗でしたね」

Sさんも真っ青だ。

〈L〉「驚くにはまだ早いわよ」

L様は本当にご機嫌がよさそうだ。一体、何がこれから起こるのか……。

「そして、彼ら5人に食べていただくのは――ウェディングケーキです!」

うわぁ。凄いのが出た。1ホール食べるのでさえ辛い私にとって、ウェディングケーキを食べろというのはかなり難関に感じる。

いや、当たり前か? リナやナーガじゃあ、あるまいし。


 ゴロゴロと各選手の前に大きなウェディングケーキが運ばれてくる。

「このウェディングケーキ。生クリームではなくバターであるというのが何とも困難な壁となります。しかも、これを食べきらなければ何も出ません。では、選手の皆さん。12時までに完食してください。それでは、スタートです!」

バターケーキ、なのか。それは無理だろう。ゼロスら選手に同情の眼差しを向ける。

いかほどの時間が経っただろうか。一番上のケーキを食べつくした選手5人。いやぁ、本当によく食べた。その内二人が棄権すると宣言した。

そりゃあ、そうだろう。ウェディングケーキ全部食べられるわけがない。

ゼロスも可哀想に。彼には止めるに止められない事情があるのだ。

その後、もう一人が倒れた。担架で運ばれていく。その間も一心不乱に食べ続けるゼロス。

彼のために、よく効く胃腸薬を準備しておこう。

二人の選手は食べ続ける。そして、一番下の、一番大きなケーキに差し掛かり、一人が倒れた。担架で運ばれていく。

運ばれていく彼女をちらりと見るだけに止め、ゼロスは目の前にあるケーキを見て、ふぅ……と息をつき、気を取り直して再び食べ始めた。

そして、11時。私は肉弾戦があるため、席を立つ。Sさんに薬と食事を手渡した。


 女性用控え室。ウェディングケーキを食べ続ける光景を見て胸焼けするのを我慢してサンドウィッチを頬張る。

少しでも食べておかなければ。

しかし……気持ち悪い。

広々とした女性用控え室で軽くストレッチをして体をほぐす。

男性用控え室にはぞろぞろと選手たちが混み合っていたが、この部屋は私一人だ。何だか悪い気もするが、それはまあ、仕方あるまい。

そして、その事実は、肉弾戦に出場する女性は私一人であることを物語っていた。

         ―登場人物―   (特別バージョン)

   L様
ロード・オブ・ナイトメア。全ての王と渾名される創造者。通称・L様。
長くてサラサラな金髪美女。あらゆることでNo.1!

   ガード=ワード
L様の命により、面白いことに首をつっこむことになった。

   S
北の魔王。

   ゼロス
獣神官。

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3396341.ガードとイアン星野 流 2009/3/14 00:06:48
記事番号33894へのコメント

41.ガードとイアン

 名前が呼ばれた。立ち上がってコートに向かう。

ルールは簡単。5m四方の白線の外側に出たり、意識を失ったりしたら負け。

出た瞬間、声援が飛ぶ。頭上から聞こえて方向感覚が少し狂う。

対戦者は短髪の大柄な男。筋肉隆々で辺りに見せびらかしている。

うわぁ。嫌だなぁ。こんな奴と戦うの。

「ハハハハ! 初戦で俺に当たるとは不運だったな!」

〈G〉「運が悪いのは元々だ」

私の一言に、男は同情の眼差しを向ける。そして、試合が始まった。

「とおおおおっ!」

勢い良く走ってくる男。私は3歩後ずさる。

力強く足を踏んで高く飛ぶ男。どうやらとび蹴りのようだ。

あと少しというところで私は斜め前に避ける。

「勝者、ガード!」

「何いいいいっ!」

〈G〉「ええっ?」

男と私は同時に振り向く。男は、少し線を越したところにいた。

「しまったあああああっ!」

私は審判に手を上げられながら、地面を殴りつける男を呆然と見ていた。

とりあえず、突進だけはやめといたほうがいいようだ。



 2時間、私は退屈に身を任せて本を読んでいた。すると、係員に呼ばれてカバンの中に入れる。

さあ。第2試合の始まりだ。

今度の対戦者は先程の男とは正反対。長い金髪をなびかせて、観客に手を振る。

どうやら、余裕綽々のようだ。

「どうやら、やっと好敵手が出てきたようだね」

〈G〉「は?」

どこかで会ったのだろうか?

「意味が分かってない、か。僕のような美形のライバルには君のような美男子にしかなれないのだよ!」

美男子? 私が?

〈G〉「へえぇ……」

試合開始とともに男に向かって詰め寄り、全力で殴りつけた。

〈G〉「誰が美男子だああああ!」

男は5m吹き飛び、動かない。あれ? 動かない男を見ながら冷や汗を流す。

審判に手を上げられても嬉しくもなんともない。ただただおろおろするだけだ。

〈G〉「大丈夫か!?」

審判に放されて、駆け寄る。ざっと見た所、脳震盪で目を回しているだけのようだ。ほっと息を吐く。

……聞く所によると、フィル兄さんはブラスト・デーモンの肋骨をへし折ったと言うし、殴りつけてから不安だったのだ。

人殺しにならなくて、良かった。


 その日はこの試合で終わる。観客も大分減っている。それにしても……女性客も多いんだな。格闘場なのに。私だったら寄り付きもしないのだが。

対戦者は上半身裸の男。何故だかお面を被っている。素顔を見られてはまずいのか、それとも単なる恥ずかしがりやなのか。まあ、どうでもいい。

とりあえず、開始早々懐に踏み込み、腕で腹を叩く。ひるんだ隙に腕を掴んで場外に投げ飛ばした。


 試合も終わり、いい汗をかいた宿に向かう私たち3人。ゼロスはやはり宿に戻っているようだ。

新開発の下剤入り胃腸薬はどうだっただろうか、と楽しみにしながら帰路に着く。と、一人の女性に声をかけられた。

〈G〉「はい。何でしょう?」

うつむきながらか細い声で呟く女。全く聞こえないので更に近づき、腰をかがめる。

「実は      です」

ごめん。聞こえない。

更に顔を近づけた。

直後

「好きです!」

彼女は大声で言い放ち、私の頭を強い力で引き寄せ、口つけた。

って、え?

「さようなら!」

彼女はぱっと身を翻して駆け去った。残された私は途方に暮れる。

この感情を、どうしろと? というより、誤解されたまま?

〈G〉「どうしようもない。か」

はあぁ……と、長い溜息を吐く。L様とSさんの許に足取り重く、歩み寄った。


 宿に着けば、青い顔をしたゼロスが待っていた。

〈ゼ〉「ガードさん! 下剤なら下剤だと言ってください!」

〈G〉「大丈夫だ。元々は胃腸薬だから。それでどうだった?」

〈ゼ〉「はらわた煮えくり返ってます」

〈G〉「……ごめん」

〈ゼ〉「じゃ、ここの勘定、ガードさんが払ってくださいね」

〈G〉「ああ、うん。ここに財布置いておくよ。じゃ、私、もう行くから」

〈ゼ〉「へえ。疲れたのですか?」

〈G〉「試合後にね」

外套だけ脱いで風呂場に行く。今更になって気付いたのだが、外套さえ脱げば体の線が分かって間違えられる事はないのだ。


 風呂から出て、ベッドの上に転がる。今日は研究をする気にもなれない。

〈G〉「美男子……か」

そんなに私は、男にしか見えないのだろうか? これでも女性に見えるよう髪も伸ばしたし、ダルフィンに嗜みも教わった。

どこをどうすれば女として見てもらえるのだろう。そりゃあまあ確かに、女物の服を着たり薄手の生地で作られた服なら分かるだろうけど……

〈G〉「恥ずかしいもんなぁ……」

体の線を見られるのが恥ずかしいと思ってしまう。だから厚手の外套を羽織る。男に間違われる。……ということだろうか。

それと、逆に何故男に見られるのだろうか。そりゃあまあ、確かに父親と瓜二つだと言う。しかし、父は祖母と瓜二つなのだそうだ。

本当に何でだろう。もう……

〈G〉「いっそのこと、男として生きるか?」

言葉に出した瞬間、涙が零れる。どうやら、言ってみたものの、嫌なようだ。

ああ、もう……

〈G〉「無理だ!」


 朝。僕は目を覚ました。えーっと?

とりあえず、状況を確認しよう。

僕は新緑の守護者、名はイアン。

この体はガード=ワード。

ここはおそらくどこかの宿屋のベッドの上。

……これで、どうしろと?

見回せば隣のベッドにL様がいて更にびっくり。

……心臓に悪い。

〈L〉「失礼ね!」

どうやら声に出ていたようだ。天の裁きが下ってじわりと涙がにじむ。

〈I〉「ガードぉ……何がどーなってんの?」

返答は返らなかった。なにが、どおなってんのおおおっ!

〈L〉「うるさい!」

あうう……また出てた。とりあえず、着替え……どうすんの? え? 僕が着替えていいもの?

軽く錯乱状態になっていた僕は見るに見かねたL様に昏倒させられ(一言も言わずにだよ。ひどいと思わない?)はっと気付けば着替えられていた。

白いワンピース。へぇ。ガードこんな服持ってたんだ。知らなかった。

確か髪を後ろで一つにまとめていたはず。リボンを探してカバンを探る。

赤いリボンと翡翠のブローチを発見! 髪を一つにまとめてブローチを左胸につけた。

鏡台に向かっておかしくはないかを確認する。うーん……化粧もしたほうがいいのか?


 L様と一緒に朝食! いやあ、幸せ! こんな事って初めて! 今日は朝から良い事が満載!

「おはようございます」

挨拶されて振り向く。そこにはシャブラニグドゥさんと誰かがいた。

〈I〉「おはよう! 久しぶりだね! シャブラ

〈S〉「Sですううううっ!」

僕の口を塞ぐ。どうやらSと呼ばねばならないらしい。まあ、魔王の名前で呼んだらだめか。

〈S〉「で、どうしたんです?」

不審そうに僕を見て、口を塞いだ手を見る。ああ、口紅がついたのか。

〈I〉「朝起きたら僕だったんだよ。事情を説明してくれない?」

互いに互いの事情――僕にとっては自分のことの事情も――分からないため、事情の説明をしあった。


 どうやらガードは今、闘技場で肉弾戦トーナメントに出場しているらしい。……僕、肉弾戦したことないよ?

〈I〉「どうしよう……死ぬ……殺される!」

〈ゼ〉「それはないでしょう。仮にもガードさんの体ですし」

〈I〉「それでも、無理だよ。戦い方知らないもん!」

Sさんとゼロス君は机につっぷして笑いを堪える。そんなに戦い方を知らないのがおかしい?

〈I〉「何さ何さ! そもそも女の子のガードに何で肉弾戦を任せてるのさ!」

〈ゼ〉「僕たちが魔道戦を選んだから、それじゃあ私が肉弾戦をする。と」

〈I〉「……なんてことを」

だったら逃げないでほしい。

〈L〉「戦いから逃げたんじゃないわよ」

どういうことかとL様を見る。

〈L〉「ガード、男と間違われる事が相当嫌だったみたい」

〈I〉「男と間違われる?」

ガード。君、どういう生活を?

〈L〉「あ、そうそう。アタックも出てるわよ。肉弾戦」

〈I〉「ええええっ! そ、そんな。僕の場合、初戦でアタックに当たるに決まってるよ! Sさん! ゼロス君! どっちか変わって!」

〈ゼ〉「ぜ……ゼロス君」


 イアンが完全に錯乱状態に陥り、自分の体であんな情けない事を口走り、行動するのに見るに見かねて表に出た。

〈G〉「イアン……自分で情けなくないか?」

錯乱状態の時に絞めていたSさんの首を放し、硬直する。

〈G〉「わあああああっ!」

私は部屋に駆け戻り、紅潮する。イアン! お前、なんつう格好で人前に! しかも、このワンピース一体どこから!? というより、何で化粧の仕方を知ってるの? 私知らないのに!


 いつもの上下に茶色のコートを羽織り、階下に赴く。

〈G〉「先程は、どうもすみません」

恥ずかしさで自然、うつむく。

〈L〉「何だ。もう普段着に替えちゃったの?」

〈G〉「あんな格好で人前に出れませんよ。今でも恥ずかしくて人の顔をまともに見られないのに」

〈S〉「へぇ」

〈ゼ〉「そういうことですか」

その後、格闘場で別れるまでからかわれた。ううう……墓穴掘った。


 イアンの予言? 通り、今日の初戦はアタックだった。

ちなみに、今日は時間制限も行動範囲の制限もない。

〈G〉「やあ。久しぶり」

〈A〉「おう。準備はいいか?」

〈G〉「そう簡単にやられないようにはするよ」

〈A〉「そうか。無理すんなよ」

〈G〉「無茶はやめろよ」

〈A〉「俺は無茶しない」

いいや。お前は無茶苦茶だ。


 アタック相手に防戦するのは不利すぎる。私は始まりの合図と共に飛び掛る。攻撃は最大の防御だ!

余裕の表情でかわされ、何度も空を切る拳。フレア・アロー一発でやられた奴とは思えない。

やはり、武王の名を冠しているだけはあるようだ。

そして、アタックの左手が私に伸びる。瞬時に私は後ろに身を

ドゴォッ

いやに速い攻撃に、私は避ける事もせず、急所を外すくらいしかできなかった。

今の音……まだ感覚は無いけど、もしかしたら、肋骨がおれてるかもしれない。

つまり、急所に入ったら……

考えるだけで血の気が引く。冗談じゃない! これは早目に終わらせないと。

はっと気付けば右の掌が飛んできていた。


 目を覚ます。胸部に痛みを感じて触診する。これはもしかすると……

〈G〉「粉砕骨折か?」

嫌だなぁ……と思いながらもちょっと楽しみができたと思ってしまう自分は末期だ。完全に変質者だ。

作った魔法を試すときが来た。骨折を治療するためだけの魔法だから試すことなどなかったのだ。

……自分にリカバリィすることもないけど。

とつとつと呪文を唱え、唐突に来た激しい痛みに絶叫した。


 僕は再度目を覚ました。今度は何? きょろきょろと見回すと、朝見た宿の一室のようだ。

バタン! と勢い良く、息を切らせてアタックやSさん達が来た。

〈A〉「目、覚めたか」

〈I〉「うん。何かあった?」

〈S〉「覚えてないんですか!?」

〈I〉「……僕、何かやらかした?」

〈三人〉「はっ!?」

〈L〉「ところでイアン。ガード怒ってたわよ」

え? 何か怒らせるようなことしたっけ?

〈L〉「人前であんな格好するなって」

どんな格好をすればいいんだ?


         ―登場人物―   (特別イアンバージョン)

   L様
ロード・オブ・ナイトメア。全ての王と渾名される創造者。通称・L様。

   イアン
僕のこと! 役職名は「新緑の守護者」何をどう守ればいいのか未だに分からない。森を守れ! とか?

   ガード=ワード
L様の命により、面白いことに首をつっこむことになった。僕とガードは二心同体と思っていいよ。

   シャブラニグドゥさん
赤眼の魔王の7分の1なんだって。北の魔王と言われているらしいよ。愛称? は、Sさん。

   ゼロス君
獣神官。何でも、魔王の下に五人腹心がいて、その中の獣王の側近? みたいな立場らしい。

   アタック
役職名は「白銀の武王」その名の通り、強いんだよ。打たれ弱いけど。ああみえて、妻子持ちらしい。

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3397742.アストラル・サイド星野 流 2009/3/31 14:11:37
記事番号33894へのコメント

42.アストラル・サイド

 気付けば見知らぬ場所にいた。

いや、見知らぬ場所というのも少し違うようだ。

色んな色をごっちゃ混ぜにしたような感じの空間。

周りを見回せば私の周りに得体の知れないぐにゃぐにゃした物体がたかっていた。

寄ってくるな! と、右手で払う。しかし、右手は右手ではなかった。

緑色の羽毛に覆われた翼だった。

〈G〉「何っじゃこりゃあっ!」

〈L〉「アストラル・サイドにようこそっ!」

びくっと体がはねる。驚いた。何故かL様が現れた途端、周囲の空間がガラリと、本当にガラリと変わったのだ。

私は今、豪華な謁見の間にいた。L様はスポットライトに当てられている。

〈L〉「と、冗談はここまでにしておいて」

ふっと掻き消える謁見の間。再びよく分からん空間となった。

〈L〉「さあ、ガード! 自分の力で空間を居住空間にするのよ!」

と言い残してL様は消えた。

L様! どうやって変えるんですか!? 自力で到達できるもんですか!?

そういう様々な疑問もかの方は答えずににこにこ笑って楽しんでいるのだろう。

とにかく―― 何が何でも変えなければ!


 どれほどのときが経っただろうか? 私はようやっと空間の色を変える事ができた。

やっと! やっと変える事ができた! さあ、頑張れ私! 居住空間にするんだ!

自分で自分を励まして泣きたくなった。

それでもやるしかない。


 居住空間成功! と同時にL様が再び現れた。

〈L〉「じゃ、次はこいつらを倒してね」

と、再び現れるわけの分からん物体達。これは何だろうと思いながらも 叩き潰す 。

他にも色々と技を試してみた。

ドラグ・スレイブみたいなのをやってみて緑光線になって失敗した。

破壊ではなく押し潰すみたいになった。これ、おそらく元は結界だ。

まあ、そんなこんなで初めは真面目に取り組んでいたのだが、徐々にお遊び半分という形になり、終いには 触ってみたい という欲求が生まれる。

自分自身が分からなくなるのはこういう時だ。

触るにはまず自分が鳥だというのがネックになる。やはり、自分を変えるしかないようだ。

空間を整えることができるのだから自分くらいできるだろうとやってみた。

できた! 髪の毛緑っぽいとか、服装がかなりシンプルだとかあるけど。

触ってみる。なかなか肌触りが良く、つるつると滑らかだ。

さあ、残りのやつらも倒そう!


 息苦しさに目覚めた。軽く咳き込んで状況を見る。

ここはベッドの上。こちらをSさんとゼロスが見ている。アタックが倒れている。何故?

〈S〉「良かった! ガードさん!」

何故かSさんが泣き出した。え、何があったの?

〈G〉「ゼロ――って、お前もか!?」

こちらは真っ青になって身動きせずに――いや、小刻みに震えながら涙を流すだけだった。

二人が泣いて、一人が倒れて―― 一体どうせぇと?

〈G〉「Sさん。何があったのです?」

とりあえず、アタックをベッドに寝かせ、声を出せる状態のSさんに尋ねる。

〈S〉「それが……勢い余って、イアンの首を絞めて、L様が現れて『死んだらあんたたち滅ぼすわよ!』とおっしゃって……それで!」

〈G〉「あー……」

私死にかけていたのかとか、L様滅ぼすは言いすぎだろうとか、それでも心配して怒ってくれた事が嬉しいだとか、いろいろあるけど……

何と言えばよいだろうか。とりあえず、泣くほど怖く思い、反省しただろうから何首絞めてんだとか怒らないでおこう。

〈G〉「私生きてるから滅ぼされないよ。だから、泣き止んでよ。ね?」

二人の頭を撫でながらあやす。――年上をあやすというのも変だが。


 二人は泣きつかれたのか眠り込んだ。どれだけ怖い思いをしたのか。

ま、そこらましの疑問は闇に葬った方がいいだろう。

二人をもう一つのベッドに寝かせ、コートを羽織り、壁にもたれる。

明日の朝にはいつも通りに戻るだろうか? そんな事を思いながら、意識をアストラル・サイドに向けた。


 朝、目が覚めた。昨日は遅くまで叩き潰していたのでちょっと寝不足だ。

三人は未だに目覚めぬまま、ぐっすりと眠っている。今日はもう少し、眠ろうか。

しかし、むっくりとアタックが起きた。

〈G〉「や、おはよう。まだ寝ていていいよ。二人とも寝ているから」

〈A〉「いや、俺は精神体だから寝ない」

なるほど。しかし、今まで寝ていなかったか? 疑問をぐっと飲み込む。

〈A〉「だから――ベッドで寝なさい」

〈G〉「いい。しわがつくし」

〈A〉「全く、お前は……子供を壁にもたれさせて寝かせて平気な奴がいるもんか」

〈G〉「私、21……」

〈A〉「俺の娘は27だ」

なるほど。

〈S〉「27の子がいるんですか!?」

Sさんがすっとんきょんな大声を出す。って、おい。

〈G〉「Sさん、ゼロスが寝てるんだから声を

〈S〉「起こしましょうか」

〈A&G〉「おいおい。そりゃあないだろう」

部下扱いの酷い上司だ。


 ゼロスも起きて、下の食堂で朝食を摂る。

〈S〉「そうそう。これ、あげます」

と、差し出される本。

〈G〉「え、これって……」

〈S〉「優勝賞品です」

そうか。私がアストラル・サイドにいる間に大会終わったんだ。

〈G〉「しかし、賞品はSさんのものでしょう?」

〈S〉「そうですけど……昨日の事もありますし」

〈G〉「首絞めたのあんたか」

〈S〉「うっ」

視線を逸らす。そうか。謝罪の品か。

〈G〉「ま、反省してるんで怒りませんよ。ありがとうございます。それと、試合応援できなくてすみません」

〈A〉「俺もこれやるよ」

と、差し出される剣。

〈A〉「肋骨のことがあるし」

〈G〉「……ありがとう」

肉弾戦の賞品は私の作った魔道剣だった。懐かしい。確か5年前に作ったものだったか?

〈A〉「Sとのその差は何!?」

あまりうれしくないからだよ。

〈G〉「Sさんと会ったのは丁寧語の時期だからね」

〈ゼ〉「でも、たまに抜けていますよね」

ゼロスは茶化す元気も取り戻したようだ。そういえば、ゼロスはかなりとばっちりを受けたんだなぁ。

〈G〉「……お前も大変だな」

〈ゼ〉「ガードさんに同情されたら僕の人生お終いです」

何で!?


 皆が食事をしている間に部屋で先程の魔道書をめくる。そこに書かれていた事に、目を見開く。

〈G〉「Sさーん!」

喜びに舞い上がり、駆け下り、食べている彼に抱きつく。ごヴッという異様な音がした。

〈G〉「ありがとう! 本っ当に、ありがとう!」

〈S〉「ど、う……いたしまして」

〈G〉「ゼロスー!」

ゴッ

ゼロスの杖が私の顔面にぶち当たった。

〈ゼ〉「落ち着きましょうね」

〈G〉「あ、ああ。すまない」

平静を取り戻す。

〈ゼ〉「何があったんです?」

〈G〉「実はだな。さっきSさんから貰った魔道書、そこにキメラ分解術が記されていたんだ!」


         ―登場人物―   (特別バージョン)

   L様
ロード・オブ・ナイトメア。全ての王と渾名される創造者。通称・L様。
長くてサラサラな金髪美女。あらゆることでNo.1!

   ガード=ワード
L様の命により、面白いことに首をつっこむことになった。

   S
北の魔王。

   ゼロス
獣神官。

   アタック=ホワイト
白銀の武王を称号とする神魔。L様の命により、物事をさらにかき回すことになった。

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3400843.我が友、シャブラニグドゥ星野 流 2009/5/10 00:04:56
記事番号33894へのコメント

43.我が友、シャブラニグドゥ


 分解術にどうしても必要なもの。それは――

器具と薬草、直径500mの魔法陣。

魔王、五人の腹心の力。竜神、四方の竜王の力。そして、守護者の力を持つ実行者。

総勢12人分の力を与えられる実行者。その者の負担は大きい。

〈G〉「私がやる方がいいだろう。が、問題は……」

〈I〉「何? 何て書いてあるの?」

ゴッ

〈G〉「邪魔をするな」

〈I〉「うう……ついに、ガードまで邪険に……」

……やりすぎたかなぁ。

〈G〉「イアン。聞きたい事が

〈I〉「何何!? 何でもやるよ! 何だった?」

ああ、この反応が可哀想……

〈G〉「水竜王と魔竜王と冥王がいないんだけど、彼らの力を手に入れるにはどうすればいいと思う?」

〈I〉「さあ? L様に頼むしかないんじゃない?」

〈G〉「L様か……」

しかし、こんな事を頼んでもいいものだろうか?

〈L〉「そのくらいOKよ!」

〈I〉「あ、L様!」

〈L〉「その代わり、あたしをもっと出しなさい!」

出す?

私とイアンは目を丸くし、顔を見合わせる。

意味が分からない。

〈L〉「……分からなくていいわ」

〈I〉「そう、ですか? じゃあ、そうします」

それでいいのか?


 翌日の夜。宿の一室でSさんを引っ張り込む。

〈S〉「あの、こんな時間は、まずいんじゃぁ」

〈G〉「昼間は歩かなければなりませんからね。ま、座ってください。 律(ゼナファ)」

外界から遮断する。

〈S〉「それで、何のようですか?」

椅子に座り、向かい合う。平静を装っているが緊張している事がありありと見える。

無言で魔道書を差し出す。彼は受け取り、中を見る。

〈G〉「友人に、合成獣となった人がいます。そして、その本は合成獣分解術について記されている」

〈S〉「みたいですね。……懐かしい文字です」

こういう所で世代格差を感じる。

〈G〉「私が用意でき、自分だけでできることなら頼みません。しかし――」

一度言葉を区切り、 必要な力 について書かれた貢を開ける。

〈G〉「他人の力は借りなければなりません。Sさん、シャブラニグドゥの力、貸してください」

じっと、彼の瞳を見る。その名の通り、赤い瞳。その両眼は私を見つめ返す。

〈S〉「ご存知ですか? 過度の力は身を滅ぼすということを」

〈G〉「それはもちろん。肉体が己の魔力に耐えられず、若くして死ぬという病気もありますから」

〈S〉「これは、過度の力――というより、致死量の力と言えます」

〈G〉「だから、私が術者になる事を決意したんです」

〈S〉「死ぬのは怖くないんですか?」

怖いとも。

にっこりと微笑む。

〈G〉「怖いですよ。しかし、物怖じして何もできないまま死を待つより、何かを成し遂げて死ぬ方が達成感、ですか? そういうものが、えられると思いません?」

〈S〉「……何か、説得したのに決意させましたね」

落胆の溜息を吐く。

〈G〉「死ぬ覚悟は遠の昔にしてあります。後は、力を貸してもらえるか、最後まで成し遂げられるか、だけです」

〈S〉「ガードさんが死んでも、何のメリットもありません。デメリットばかりです」

〈G〉「そうですか? 私が死んだら復活するんでL様からのお仕事が減って、一緒にいる時間が増えますよ」

〈S〉「ああっ! 気持ちが傾いていく!?」

苦悩! という表情を見せる。

〈G〉「とどめに、L様もこの事にご助力してくれるそうです」

〈S〉「決定打っ! 選択の余地がないのに選択させられてません?」

哀しそうに眉根を寄せる。

確かに、選択の余地、ないかもしれない。

〈G〉「ええと……L様の力をお借りするのは今現在存在する王達の力を借りてからなので、選択はできますよ」

〈S〉「先延ばしって言いません?」

〈G〉「……おっしゃるとおりで」

〈S〉「ほら見なさい!」

肩を落として身を縮めた。


 最終的に、力を貸してくれることになった。

〈S〉「ただし、私のお願いも聞いてもらいます」

〈G〉「お願い?」

また服の材料とか、そういう類だろうか?

〈S〉「私と契約してください」

契約。

その言葉に息を呑む。

〈G〉「分かりました。内容は?」

笑みを浮かべるSさん。中々楽しそうだ。先程追いつめた仕返しなのだろうか?

〈S〉「力を貸し出す代わりに、大きな街、おいしい名産物がある場所で召喚をしてください」

は?

〈G〉「Sさん、それって」

〈S〉「私だって色々見てまわりたいんです!」

全く、この人は……

〈G〉「分かりました。契約成立してください」

〈S〉「では早速――ガードさんに魔王の力を貸し与えます」

重圧が身体を襲う。激しい痛みをきつく目を閉じて耐える。

〈S〉「魔王だけでもこれです。更に増えると、もっと厳しいですよ? もう、止めませんか?」

〈G〉「いえ、まだまだ」

呆れたように見て溜息を吐く。

〈S〉「分かりました。でも、死なないでくださいね」

〈G〉「ふふ。私はかなりしぶといのです」

〈S〉「それはそうですけど、ね」

〈G〉「今の私にはL様と魔王様の加護がついているのですからね」

ニッと笑みを深くする。

〈G〉「そうだろう? 友人」

芝居がかった口調で語りかける。

〈S〉「もちろんだよ。ガード」

しばし目を丸くして呆然と見つめ、ようやっと破顔して同じく芝居がかった口調で話す。

その後、私達は腹の筋肉が痛みを覚えるまで笑い続けた。


―登場人物―

   ガード=ワード
L様の命により、面白いことに首をつっこむことになった。

   S
北の魔王。


あとがき

 このまま続けると100話を超えそうなので急遽進展を早めました。

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