◆−「知らん!自分で考えろ!」−くみ (2008/8/11 22:03:48) No.33642
 ┗Re:「知らん!自分で考えろ!」−ミーナ (2008/8/11 23:02:22) No.33643
  ┗ミーナ様−くみ (2008/8/21 07:32:20) No.33652


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33642「知らん!自分で考えろ!」くみ URL2008/8/11 22:03:48


前回出来なかった二人の掛け合いと、アメリアと不幸なゼルが出せた事だけで
満足してしまいました。

酢豚を食べながら考えた話です笑










■■「知らん!自分で考えろ!」■■





咥内で噛み締める玉葱が、しゃくしゃくと心地良い音と食感を生み出す。
栗毛の少女は僅かに眼を見開き、感嘆の表情を作った。


素晴らしい。
絶妙な火加減だ。
ごりごりと歯ごたえの良い竹の子に、僅かに芯を残し、しっかりと素材を活かした人参。
多めに入った豚肉も柔らかく、噛み締めると肉汁がじわりと溢れる。
これにパイナップルが入っていれば、絶妙なバランスも台なしだったろうが、あの邪魔な存在は
何処にも無い。


ここ数日で最大の当たりだ。



至極満足して咀嚼すると、彼女の二倍はある太い腕がにょきりと陣地を侵した。


幸せ気分に浸っていた彼女が気付いた時には遅かった。

この戦場で油断していた。


それは今、正に、彼女を幸せに導いた酢豚を、彼女の元から奪い去ると、迷うことなく自分の口へ
と運び込む。


「あああああ!!!」
「うん、美味い」


こちらの怒りなど露知らず、満足そうに笑う相棒に殺意を覚える。

「あたしの!大事な酢豚さん!!」
「いや〜だってお前さん、あんまり美味そうに食うもんだから」
「そうよ!美味しかったのよ!美味しかったでしょ?!」
「うん、美味かった」

にんまりと邪気なく笑う金髪の美人。
自分よりも年上だというのに、こんな表情をされると可愛いと思ってしまう自分はもう駄目なのだ
と思う。


だが。
人間やっていい事と悪い事、許せる事と許せない事がある。
今回は、どちらも後者だ。
その顔に免じてなど、かけらも思ってやるものか!

「おにょれガウリイ!!」
 
ギリギリとねめつけたまま、手元も見ずに相棒の皿からチキンソテーを奪い取る。

「ああー!俺のチキンソテーがあぁ!!」
「あふぁひのふぶひゃにへをふぁひたふみよ(あたしの酢豚に手を出した罪よ)」
「ならば…てい!」
「あひゃい!!(甘い)」

彼女の皿を狙ったフォークが、寸前で彼女のフォークに阻止される。
ンフフと笑い合う二人からはピリピリとした空気が流れているが、その隣のテーブルでは、姫巫女
と白いフードの陰気な男がランチを終えて、優雅に食後のお茶を口にしていた。
かなりの温度差である。
いつもの光景に毎度よくやるものだと呆れはすれど、動揺などは微塵も見せない。

「お二人とも、行儀が悪いですよ」
「ガウリイが仕掛けてきたのよ!」
「リナの取ったチキンは、最後に食べようと大事に取ってたんだぞ!!」
「あらぁ〜残してるのかと勘違いしちゃた」
「嘘付け!!」
「なにおう!!」

フォークを絡ませたままのやり取りに、アメリアは嘆息する。
嗜める為に使った口調を戻し、鼻を鳴らして言った。

「取り合いなんてしなくても、もう一皿頼めばいいじゃない」
「酢豚はこれで最後なのよっ!!」

お手上げだ。
アメリアは肩を竦めて、向に座る男にどうにかしてと視線だけで訴える。
男は首を振るだけで「放っておけ」と答えた。

「毎回毎回、喧嘩になるくらいなら、二人とも同じメニューにすればいいのに」


ぽつりと言った言葉に、金髪の美人はやおら「おお!」と声を上げフォークを下げた。
何気なく言った愚痴が思わぬ成果を上げたようだ。

「だな!違うの食べてるから欲しくなるんだ」
「まあそうだけど…あたしはあたしが食べたい物を食べるわよ?」

あんたに合わせてやらないんだからと言うと、金髪の美人はそれで良いとニコニコと笑いながら
頷いた。



「これからはずっと、俺の物をリナが選んでくれるんだな」


やたら機嫌良く言う相棒。


「ちょっと…汚いわよ」

横のテーブルでお茶を啜っていた二人が、同時に吹き出したのを見て、リナは眉を寄せた。
ごほごほとむせるゼルガディスとアメリア。
先に復活したアメリアが、頬を引き攣らせながら二人を見遣ると口を開いた。

「ガウリイさん…それって……」
「ん?あ、回りくどいか?」
「リナは気付いてませんよ?」
「あーほんっと、鈍いなあ」
「…なによ?アンタ達、何が言いたい訳?」

一人取り残された感のあるリナが、憮然として腕を組んだ。
ガウリイは頬を掻きながら、ううーんと唸る。

「いや、だからさ」
「なによ」

「…これからはリナが、俺の飯を用意してくれるんだよな?」
「何か変な言い方ねえ」

憮然としたまま首を傾げる彼女に、ガウリイはがしがしと頭を掻いた。

「ガウリイさん、リナにはそんな言い方じゃ伝わりませんよ」
「でもなあ…」
「旦那、ここはドーンと砕けろ」
「……何で砕けるんだよ」

「ちょっと!さっきからなんなの?!」

さっぱり見えない会話に何時までも蚊帳の外。
リナは三人をギロリと睨んだ。
その口からは、今にも呪文が聞こえてきそうである。


「えーとだな!」

ガタリと立ち上がったガウリイを、何故だかリナも立ち上がって見上げる。
横では二人が「いけ!」「ファイトです!」等と言っているが、じっとリナを見詰めるガウリイの
耳には届いていないようだ。



澄んだ碧の真剣な眼差しに鼓動が跳ねる。


「死ぬまで俺と一緒に飯食ってくれって言ってるんだ」
「は?」
「出来れば、毎日リナの手作りが良い」




ぽかんと。
目も口もだらし無く開けられたまま。

彼女は彼を凝視していた。



二人からは「よくやった」と彼の偉業を讃える声。
周りの野次馬からも、冷やかしの声が飛ぶが彼女の耳には入ってこない。







目の前で照れた笑顔を浮かべるこの男。

なんと言った?
これはもしかして、世間一般に言うプロポーズとかいうものではないか?


そこまで理解して、彼女の思考は急速に動き始めた。




「リナ?」

子犬の様に首を傾げて返事をねだる。
だが、栗毛の少女は俯いて両手をわななかせていた。

「ば…」
「ば?」

ん?と更に首を傾げる金髪の美人。
大人の男だというのに、妙に可愛らしのはどういう事だろうか。
周囲は未だに冷やかしの声を送ってくる。






「爆煙舞!!」









彼女が放った魔法は、食堂兼宿屋の建物と、そこに居た全員を飲み込んだ。

























「ぶはっ」


暫くして。

瓦礫の山から最初に顔を出したのは金髪の美人であった。
続いて黒髪の姫巫女と、陰気な男が顔を出す。

魔法を放った少女の姿は見えない。
早々に逃げ出したらしい。



「ん〜何がいけなかったんだろ」
「やっぱりシチュエーションですよ!
ご飯の奪い合いをしながら言うべき事ではありませんでしたね」

話しながらも二人は(ゼルガディスはもくもくと無言で作業している)手元ではひょいひょいと
瓦礫を退かし彼女の魔法に馴れていない一般市民たちの救出を進めた。


「「なあ(ねえ)どうしたら良い(と思います)?」」


全く同じタイミングでこちらを振り返り、同じタイミングでこちらに意見を仰ぐ。


全く。
勘弁してくれ。


ゼルガディスは雲一つない真っ青な天を仰いで小さくごちた。
こいつらに巻き込まれるとロクな事がない。


「なーゼルーー?」




「知らん!自分で考えろ!」



今日もいい天気だ。

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33643Re:「知らん!自分で考えろ!」ミーナ 2008/8/11 23:02:22
記事番号33642へのコメント

はじめまして。こんにちは。

ガウリイの(プロポーズの)言い回しとそれに対するリナの反応がすごく楽しかったです。
なかなか伝わらなくて、分かった瞬間にてれ隠しで呪文を打つところなんて、
私が思っていたリナそのものでした。

題名のセリフはゼルのだったのですね。
ゼルのその巻き込まれ度と不幸っぷりが大好きです。
きっとこのセリフ言いながら額に手を当ててる気がします。
そして再度二人に泣きつかれ仕方なく、面倒を見る羽目になるんだろうなぁと想像してしまいました。

最後に、二人の食事シーンの白熱度とか、酢豚のおいしそうな感じとかがひしひしと伝わってきて、私までお腹がすきました(笑)

楽しく美味しいお話を読ませていただきありがとうございました。


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33652ミーナ様くみ 2008/8/21 07:32:20
記事番号33643へのコメント

こんにちは初めまして!!
感想ありがとうございます〜
嬉し恥ずかしです。。


リナはとことんにぶちんで居てほしいやら、実は全部分かってて欲しいやら。
ご想像に近いのなら嬉しいです〜

私もお人よしで不幸なゼルが好きです!
なんだかんだで、面倒見ちゃうんでしょうねえあの人は。
そこが不幸体質の理由だと思うんですけどー


実は。
食事シーンに一番力を入れたのです!(間違ってる…)
酢豚食べたくなった…お腹空いた…と思って頂けたら、満足です!笑



感想、本当にありがとうございました!!!
幸せですっ(p>∧<q)

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