◆−蒼の記憶−フィーナ (2008/2/4 15:39:24) No.33480
 ┣蒼の記憶2−フィーナ (2008/2/4 16:54:04) No.33481
 ┣蒼の記憶 3−フィーナ (2008/2/6 01:28:28) No.33482
 ┣蒼の記憶4−フィーナ (2008/3/28 01:31:59) No.33501
 ┣蒼の記憶5−フィーナ (2008/3/29 14:55:48) No.33502
 ┣蒼の記憶6−フィーナ (2008/4/5 18:18:54) No.33503
 ┣蒼の記憶7−フィーナ (2008/4/11 23:22:51) No.33506
 ┃┗はじめまして! レスします!−のこもこ (2008/4/12 22:38:43) No.33507
 ┃ ┗Re:はじめまして! レスします! のこもこさんへ−フィーナ (2008/4/16 22:56:21) No.33530
 ┣蒼の記憶8−フィーナ (2008/4/17 22:29:08) No.33532
 ┣蒼の記憶9−フィーナ (2008/4/26 01:47:50) No.33548
 ┣蒼の記憶10−フィーナ (2008/4/29 00:09:40) NEW No.33558
 ┗蒼の記憶11−フィーナ (2008/4/29 23:41:22) NEW No.33562


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33480蒼の記憶フィーナ 2008/2/4 15:39:24


それは、ある日常のひとこま。

「ファイヤー・ボール!」

ちゅごどごお〜〜ん!!!!

あたしの放った攻撃呪文で吹っ飛ぶ野盗連中。

時刻は夕方を少し過ぎた頃だろうか、あたしたちの前にお決まりの登場で現れこれまたお決まりの台詞をほざいた連中にあたしは歩み寄る。

「さてと・・・と、よっと」

念には念を、あたしは盗賊の懐から襲う人間を縛るためだろう、一本のローブを見つけて気を失っている盗賊その一の後ろ手首にきつく縛ってから喝を入れる。

「う・・・ぐっ」

うっすら目を開けると、自分のおかれている状況がわかったのか途端に動こうとする。

「くそ!」

身動きできないことを悟ったのか、舌打ちして黙り込む。

「んじゃはじめましょうか」

「はじめるって・・・・・・なにを?」

明るい声を上げるあたしに、そう答えたのは依頼人のマリル=ラーズさんである。

年はあたしと同じくらいだろう。ウェーブのかかった明るい金髪と、パッチリとした目元が印象的な美人さんである。

「この人がやる事といったらひとつしかないだろう」

どこか疲れたような様子で、隣にたたずむ青年がマリルさんに説明する。

「え?リナさんはなにをするつもりなの、シーゲル?」

シーゲルと呼ばれた青年は、ちらりと盗賊に同情した視線を一瞥くれてからいった。

「・・・・・・盗賊いじめ」

「・・・・・・ちょっとまて」

あたしたちの会話に、ふんじばった盗賊が恐怖に満ちた視線をあたしに向けた。

「今・・・あんたこいつ・・・・・・いえ、この方のことを『リナ』と呼びませんでしたか?」

敬語でマリルさんに尋ねる盗賊その一。

「ええそうですけど?リナ=インバースさんがどうかしました?」

小首をかしげながら答えるマリルさん。

「・・・・・・・・・・・」

しばしの沈黙の後



















『んどぎゃわあーーーーっ!!?』



















盗賊の悲鳴があたりに響き渡ったのだった。

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33481蒼の記憶2フィーナ 2008/2/4 16:54:04
記事番号33480へのコメント

「・・・・・・しっかしここら辺の奴らあんまりためこんでないわね〜」

森に囲まれた街道を歩きつつ、あたしは少し暖かくなった懐を見ていった。

あのあと、改心した盗賊その一にアジトまで案内させて少しばかり慰謝料と迷惑料を頂戴したのだ。

アジトまで案内させた盗賊その一は、最初あたしを連れて行くのに渋っていたが、

『仲間にいじめられるのとあたしにたっぷりといじめられるのとどっちがいい♪』

という親切なお願い(一般では脅迫とも呼ばれている)に感動の涙を流しながら案内してくれたのである。

「とても犯罪者まがいのことをやったあとの台詞とは思えないな」

明りの呪文を手ごろな棒に宿し、シーゲルはあたしに言った。

シーゲル=クラウン。年は二十歳そこそこ、少し伸ばしたブラウンの髪を後ろに束ね、黒い魔道士のローブを羽織っている。

「なにいってんのよ!あいつら盗人よ?
罪なき旅人襲って身ぐるみはぐそんな連中なんかよりあたしが有意義に使ってあげたほうがよっぽど世のため人のためになるじゃないの!」

あたしの台詞に、シーゲルは考え込んだ後

「・・・・・・どちらかというと『世のため己がため』じゃないのか?」

「んっふっふ。シーゲルあんた今夜包帯持参であたしの部屋にきてね」

「ああ聞こえてた!?」

エルフ並みのあたしの耳は、ぽつりと呟いたつもりの彼の言葉を正確に聞き取っていた。

「おいおいリナよ。あんまりそいついじめてないで早く飯食いにいこうぜ」

あたしのたびの連れで、なかなかの顔と、超人的な剣技を誇る。
けれど残念ながら普段は頭を使わないくらげ頭のガウリイ=ガブリエフ。

「・・・・・・・・・・・・今いく」

のほほ〜んとしたその声に、短くそう言い放ち、足早にかけるあたし。








目指すはカルマートとゼフィーリアのちょうど中間に位置しているであろうレイスン=シティ。

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33482蒼の記憶 3フィーナ 2008/2/6 01:28:28
記事番号33480へのコメント

事の起こりは、あたしたちが立ち寄ったクロサウロの村の食堂で、少し遅めの昼食をとるためメニューをオーダーした後のことだった。

「失礼ですが、旅の魔道士さんですよね?」

「そうだけど・・・・・・」

振り返り、声の主に視線を向ける。

年の頃は17・8だろう。軽くウェーブのかかった明るい金髪と、目元がパッチリした
なかなかの美人である。

白いガウンを羽織っているが、注意深く観察してみると、服の生地はなかなかいい素材を使っているようである。

服のしたの部分に縫いつけられている装飾品には、蝶をかたどった宝石にルビーやサファイア、エメラルドが施されており、職人が丹精込めて作り出した芸術品がそこにあった。

無論のこと、このような代物を持ち歩けるのは、世間知らずのどこぞのお嬢様以外の何者でもない。

「・・・・・・立ち話もなんですからどうぞ」

あたしは彼女を見て、微笑みながら席を譲った。

「よろしいのですか?ありがとうございます!」

会釈して、あたしの隣にちょこんと座る彼女。

「・・・・・・なあリナよ。お前さん何たくらんでるんだ?」

あたしの前に座っていたガウリイが、いらん突っ込みを入れた。


















がすっ!


















彼女からは死角になるテーブルの下から、ガウリイの脛の辺りを蹴飛ばす。

余計なことは言わなくてよろしい。

あたしは彼女と、『商談』にはいりたいのである。

そんなことを言っては、折角の金づる、

・・・・・・もとい、依頼人が怖がるではないか。

「・・・・・・あのう・・・・・・・・・・・・どうかしたのですか?」

「なんでもないですよ」

言い切るあたし。

「それよりも、あたしになにか用事があるんじゃないですか?」

ここで話題を彼女にふる。

「・・・・・・そ・・・・・・それ・・・は」

彼女は、一瞬何かを躊躇したように黙り込むが、やがて意を決したように言った。

「・・・・・・はい。
あの・・・・・・実はあなたに頼みたいことがあるんです!」

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33501蒼の記憶4フィーナ 2008/3/28 01:31:59
記事番号33480へのコメント

「あなたに頼みたいことがあるんです!」

「おまちどうさまでした!Aランチセット五人前です」

彼女の言葉をさえぎるように、ウェイトレスの姉ちゃんが料理を運んできた。

「話は後よ」

次々と運ばれてくる料理に細心の注意を払いつつ、相手の隙をうかがう。

フォークとナイフで牽制しつつ、ガウリイのふところにあるエビフライさんにてをのばす。

「あまいっ!」

きいぃんっ!

「・・・・・・っく!?やるわね・・・・・・と、みせかけて」

ひょい

「ああっ!?本命の鳥のから揚げが!」

秘技!三段フェイント!

「ならば!」

右手から来た強襲をとっさに受け流す。

「隙あり!」

「ぬあぁぁっ!?」

左右から展開された鋭い連打を凌いだとおもったが、どうやらそれは陽動だったらしい。

気づけば海老のフリッターがうばわれていた!

をのれえぇ!

きいぃぃんっ!!

ナイフとフォークがかちあう。

きいぃん!

きききいぃんっ!

しばらくのせめぎあい。火花さえちらしつつ、再び相手の出方をうかがう。



















からら〜ん

「いらっしゃいませ」

かつかつかつ

「・・・・・・やっとみつけたぞ」

「あら。みつかっちゃいました?」

きいぃんっ!

「ああっ!?あたしの愛しいカニクリームコロッケさんが!」

「・・・・・・どうしてここにいる?」

「お昼食べたかったから食堂にいるのは当然じゃない」

「せめて伝言をよこせ。宿からお前が忽然と消えてあせったぞ」

「・・・・・・もしかして心配かけちゃった?」

「ああ」

「ごめんなさい」





















ざくっ!

「をい!ピーマン身代わりにするなんて卑怯だぞ!?」

「この場では卑怯もなにもないわ!弱肉強食の掟、知らないとはいわせないわ!」

「焼肉定食ならおれがもらう!」

「・・・・・・ところで、こちらでものすごい勢いで食べ物の争奪戦をしているこのひとたちは?」

「わたし、そろそろ町に帰らないといけないから、護衛の人も雇おうと思ったの」

「・・・・・・なるほど」

「でも・・・・・・別の人を探したほうがいいかしら?」

「そのほうがいいかもな」

「ちょっと待った!」

あたしは慌てて待ったをかけた。

「その話、詳しく聞かせてくれる?」

「え?ええ・・・・・・べつにいいですけど」

あたしの迫力におされてか、あっさり首を縦に振る彼女。

食事に熱中するあまり、依頼人を逃がしてしまうところだった。

「・・・・・・・・・・・・不安だ」

あたしと彼女のやりとりを見守っていた青年がぽつりと呟いた。

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33502蒼の記憶5フィーナ 2008/3/29 14:55:48
記事番号33480へのコメント

一通りの食事が済んで、あたしたちは彼女たちが滞在している表通りにある宿に連れて行かれた。

どちらかの部屋の一室を借りて、手近な椅子に腰掛けるのを待って彼女が話し始めた。

「依頼の内容は私の護衛です」

「護衛・・・・・・ですか?」

あたしは彼女がそういうことを言うとある程度予想していたが、今知ったという態を保った。

「ええ。いちおう彼も魔道士なんですけど、実戦経験はあまりないですし」

「おれはどちらかというと研究に打ち込んでいたいからな」

彼女が目でさした青年は、あっさりと肯定した。

黒いローブの魔道士姿で、歳は二十歳そこそこ。少し伸ばしたブラウンの髪といかにもまじめそうな顔立ちの青年である。

「話を戻しますが、ここから表街道を挟んだ場所にあるレイスン・シティまでの護衛を頼みたいのです」





















レイスン・シティ

ゼフィーリアとカルマートをつなぐ道にある町で、交易も盛んにおこなわれているまちである。

そのため、旅の商人や魔道士などが立ち寄り、賑わいを見せている町でもある。

あの町の魔道士協会に、挨拶がてら顔を出すのもいいかもしれない。











「わかりました。その依頼引き受けましょう」

「ありがとうございます!」

嬉しそうに笑う彼女を見て、ふと、隣にたたずむ青年を見る。

目元がすこしさがり、優しいまなざしになっている。

・・・ふむ。

「では依頼料についてなんですけど、食費と宿泊費はそちらが立て替えていただくとこちらは嬉しいんですけど」

彼女の提案にあたしは苦笑する。

どうやらあたしとガウリイの、食事の争奪戦を見ての判断なのだろう。

「かまいませんよ」

「では、それをぬきにして移動の日程と必要経費をふくめて・・・・・・」















彼女が提示した金額は、あたしが予想していたものよりかなり多目だった。

・・・・・・あたしの予想ではおそらくこの値段の中には・・・・・・

「そういえば自己紹介がまだでしたね」

いって視線を意味ありげにむける。

・・・・・・どうやらあたしの意図を察したらしい。

「私の名前はマリル=ラーズ。レイスン=シティの商人、オリヴァー=ラーズの娘です」








オリヴァー=ラーズといえば、屈指の商人として有名な人物である。

商品の中では、マジックアイテムも多く取り揃えられており、そのいずれかが世に出ていない珍しい品も多いと聞き及んでいる。

魔道士協会と、裏でつながっているともっぱらの噂である。

『裏で』というと聞こえは悪いが、詳しい説明は省くが要は魔道士協会のスポンサーである。








「おれはシーゲル=クラウン。
マリー・・・・・・いや・・・・・・マリルのまた従兄妹(いとこ)、幼馴染にあたる」

「そんなあらたまっていわなくても、今までどおりマリーでいいのに」

彼女、マリルさんはなぜか呆れた口調だ。

「仕方がないだろう」

憮然とした様子の彼は、微妙に視線をそらす。

「・・・・・・もうすぐお前は結婚するんだから」


















・・・・・・は?

「結婚なさるんですか?マリルさんとシーゲルさん」

「おれじゃない」

あたしの問いに、シーゲルは反射的に否定した。

「シーゲルではなく親の決めた相手とですよ」

「・・・・・・なるほど」

親が決めた相手と結婚する。いわゆる『政略結婚』というやつである。

貴族や王族の間でも度々行われているという話を、
以前共に旅をした、とあるセイルーンの少女が口にしていたのを思い出す。

そういえば彼女は元気だろうか。

・・・・・・いや。

あの娘なら今日も高いところに登って、正義について拳を強く握り締めて熱く演説していることだろう。

・・・・・・・・・・・・その姿を容易に想像できてしまうのもどうかとおもうが

















「・・・・・・そういえば!」

場の空気を変えるように、明るく声を上げるマリルさん。

複雑そうな表情の彼に気づかないのか、あるいは気づいていない振りをしているのか。

「あなたと・・・・・・」

すこし言いよどみ、あたしの隣を少し困った表情で見る。

「・・・・・・そこで気持ちよさそうに眠りについている方の、お名前をまだ聞いていませんでしたね」

みるとすぴょすぴょと壁に腰掛け、眠りについているガウリイの姿。

・・・・・・こいつは〜!

「こいつのことは気にしないでください。腕だけなら問題はありませんし」

「・・・・・・つまり、腕以外は・・・・・・問題があると?」

うくうぅっ!?

マリルさんの突っ込みに、内心冷や汗を流すあたし。

否定しても、いずれはわかってしまうことだから言わないほうがよかったか!?

先ほどの話に動揺しているらしい自分に気づき、さらに動揺する。

あたしは一体『何を』考えていた!?

「ま・・・・・・まあ、それはともかく」

言葉を濁し、こほんと咳払い。

「あたしの名前はリナ。リナ=インバース
それでとなりのがガウリイ=ガブリエフ」

「・・・・・・リナ=インバースだと!?」

シーゲルさんはあたしの名を聞いて、大きく目を見開いた。

「しっているの?」

マリルさんの問いに、彼はやや視線を泳がせた。

「・・・・・・魔道士うちでもかなり有名な魔道士だ」

「有名って?」

「・・・・・・それは、おいおい説明する」

あたしのネームバリューは、何故か悪名のほうが広く知れ渡っている。

本人を前にして悪口にしか聞こえないことを教えるのは悪いと思ったのか軽く受け流した。シーゲルはそのへんをわきまえているようである。

「だが一言言うなら兄貴が一目おいている魔道士だ」

「まあ!アレン兄さまが!?」

途端相好を崩し、あたしの手を握ってくるマリルさん。

はしゃぐその姿は、年相応の少女らしくあどけない。

「あの、アレンって」

「おれの兄貴」

「いや、それはわかるけど」

今まではこのマリルさん。自分の名前をかたるときでさえ、どこか一線距離を置いた雰囲気をただよわせていた。

それは商人の娘ゆえ、いろいろ苦労していることがあるからなのだろうが。

それをシーゲルのおにいさんが、あたしを一目置いている魔道士の名前だと言っただけで、こんなにうれしそうにするなんて。

「私はアレン兄様とシーゲルがすきよ」

あたしの手を握ったままだが、はっきりといった。

おそらくは、伝えたいのだろう。あたしではなく目の前にいる青年に。

「きょうだいがほしかったけど、お父様は家の都合上、私しかこどもはつくらなかったから」

だからかしらと、彼女は微笑を浮かべた。

「とおい親戚でもまたいとこでも、それだけの理由だけじゃないんだけど
・・・・・・私と血がつながっているアレン兄様とシーゲルには本当に救われたのよ?」

「・・・・・・しってるよ、それぐらい」

そっぽをむいた彼の耳は、ほんのり赤く染まっていた。




















すぐに旅立ちたいという彼女に言われ、ロビーで待つあたしとガウリイ。

割と早く身支度を済ませたマリルさんとシーゲルは、あたしたちに気づき声をかけた。

「さあ、いきましょう」

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33503蒼の記憶6フィーナ 2008/4/5 18:18:54
記事番号33480へのコメント

レイスン=シティまでの道のりは、順調だった。

ちなみに、途中襲い掛かってきた盗賊の残党からアジトを聞きだし、壊滅させたのは良いのだが、

その余波が近くにあった民家を運悪く直撃して、その近隣にいた民家の皆さんがたから苦情が殺到するという恐ろしい精神攻撃にあったというのは全くの余談である。



















あたし達が、表街道に連なる場所に入ると、鬱蒼と生い茂った森が姿を現した。

日の傾き加減から、どうやら時刻は夕方から夜に差し掛かろうとしているようだ。

「もうこんな時間か」

シーゲルは暗く染まりつつある空を見上げて呟いた。

「どうガウリイ、何か見える?」

あたしは、隣にいる彼に意見を促す。

「う〜ん・・・・・・おっ!?」

「どうした?」

「あそこに明りが見えるぞ」

あっさりとあたしのやや右手後方の方角を指差して言い切る。






・・・・・・相変わらず人間離れした視力をしている男である。





「あそこって・・・・・・どこにあるんだ?」

怪訝そうな顔で、ガウリイに問い掛けるシーゲル。

まあ、彼が怪訝そうになる気持ちはわからないでもない。

薄暗くなり始めた道の中、ただでさえ視界が余りよくない道の中に、遥か遠い場所にある明りを見つけるのは難しいことなのだから。

「リナさんは見えるんですか?」

「や、まったく」

マリルさんの問い掛けに、あたしは素直に首を横に振る。

「けど、ガウリイの目は異常に発達してるのよ」

「・・・・・・なあリナよ、けなされてるように聞こえるのはオレの気のせいか?」

「褒めてるのよ」

「本当に、明りなんてあるのか?」

疑惑の声を上げるシーゲル。

「とりあえず行ってみましょうよシーゲル。ここで野宿するのも御免だし」

「・・・・・・そうだな」

マリルさんに言われ、シーゲルは頷いたのだった。



















「・・・・・・本当にあるし・・・・・・」

ガウリイの指示の元、あたし達が辿り着いた先には木造建ての宿屋が存在していた。

半ば呆然とした様子で、シーゲルは目の前にある宿屋とガウリイを見比べた。

「・・・・・・何で、こんな遠い場所にある宿を見つけられるんだ?」

「え、普通に見えるぞ?」

いや、それはあんただけだってば。

しかし、こんな人里はなれた場所にあって、どうやって生活を営んでいるのだろうか?








「いらっしゃい」

ドアをくぐって中に入ると二階建てになっており、どうやらここは宿屋と食堂を兼用しているらしい。




「・・・・・・おや?あんたたしか」

カウンターにいた宿の親父さんは、シーゲルの顔を見て何かを思い出したかのように手を打った。

「おおっ!思い出した。あんた確かアレンさんじゃないか!」

「「・・・・・・えっ?」」

親父さんの言葉に、シーゲルとマリルさんが反応した。

「アレンは俺の兄だ」

シーゲルの返答に、親父さんはしげしげとシーゲルを見た。

「いやあ。よく似てるよ」

「そりゃ双子だから」

ぽつりと呟くマリルさん。

「・・・・・・え?なに・・・・・・ってことは、あんたとアレンさんってば双子だったの!?」

シーゲルを指差して問い掛けるあたしに、マリルさんはきょとんとした。

「・・・・・・いってませんでしたっけ?」

「聞いてないわよ」

「・・・・・・聞かれていませんでしたから」

むぅ、そう切り返すか。










「あんたの兄さんには、滞在している間に色々と世話になってねぇ」

「そうですか。ところで」

長話に発展しそうな雰囲気を察したのか、シーゲルは会話をさえぎった。

「それで、兄は何か言ってましたか?」

「う〜ん・・・・・・そういえば、レイスン=シティにいる親戚のうちに顔を出すといってたよ」

「「レイスン=シティへ?」」

シーゲルとマリルさんは顔を見合わせた。

「他にはなにかいってましたか?」

「いや、特には」

マリルさんの問いに、親父さんは首を横にふった。

「では、なにか気づいた事とかありませんか?」

マリルさんの無茶な質問に、親父さんは低く唸った。

「・・・・・・気づいた事と言われても、ここにアレンさんが来たのは随分前のことだからなあ」

「どんなことでも良いんです」

なおも食い下がるマリルさんに、親父さんはため息をついた。

「まあ、これはおれの勝手な独断なんだがな」

声を潜めて手招きする。

「アレンさんが雇った魔道士なんだが、食事をしている間もフードを深くかぶっていてなんだか怪しかったよ」

「魔道士?」

と、これはあたし。

「その魔道士の特徴って、おぼえていますか?」

「特徴といわれても・・・・・・あまり印象に残っていないから、そういわれても困るんだが」

まあ。

たしかに、宿を営んでいる人なら多くの客を相手にしなければならないし、そうそう覚えていられないだろう。



















宿で一泊した翌日の朝。

マリルさんとシーゲルは、既に一階にある食堂に顔を出していた。

「お早うございます。リナさん」

「・・・・・・おはよう」

「あ、おはよう」

マリルさんとシーゲルに挨拶を返し、空いていた席に着く。

「あら?ガウリイさんは、まだいらっしゃっていませんの?」

「・・・・・・直に来ると思います」

「おおリナ、おはよう」

あたしがいった矢先に、ガウリイの声が響いた。

「・・・・・・おはよう」

返事を返し、視線をテーブルに向ける。

彼は近づいてきて、当然のようにあたしの隣の席に腰をかけた。



















食事がひと段落付き、食後の春のたっぷりイチゴパフェを五人前平らげているのを見計らってから、マリルさんはこう切り出した。

「あとこの森を抜ければレイスン=シティまであと一息ですけど、
アレン兄さまがレイスン=シティにきているのなら、申し訳ありませんがもう少しだけお付き合い頂けませんでしょうか?」

「・・・・・・ふむ」

あたしは考え込む振りをして、こういった。

「まあ、乗りかかった船だし・・・・・・引き続き引き受けますよ」

「ありがとうございます!」

「ただし!」

声を張り上げ、注意をこちらにひきつける。

「依頼料を上乗せするという形になりますけど」

「ええっ!?」

驚愕の声を上げるマリルさん。

見ればシーゲルもぎょっとしている。

「なんでですか?レイスン=シティまでの護衛ですよね!?」

「そう。たしかにマリルさんを『レイスン=シティまで無事に護衛する』のが、依頼の内容です」

「だったらなんで」

言い積もろうとする彼女に、ひたっと視線を向ける。

「レイスン=シティにある『マリルさんの家まで無事に護衛する』とは、いわれていませんから」

「・・・・・・あ」

あたしの台詞に絶句する彼女。

「そういうわけで、依頼内容の上乗せという形になるわけです」

あたしの故郷では、こうゆうのを『平和な民主主義の交渉』と呼んでいる。

・・・・・・他の地方では『恫喝』とも呼ばれているらしいが。

「・・・・・・流石、噂にたがわぬ人ですね」

「そりゃどうも」

「アレン兄さまが一目置いているのも納得しましたわ」

「・・・・・・いや、兄貴はそういう意味で一目置いているわけではないと思うぞ・・・・・・多分」

どこかずれたマリルさんの台詞に、シーゲルは手をパタパタ振りながら言ったのだった。

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33506蒼の記憶7フィーナ 2008/4/11 23:22:51
記事番号33480へのコメント

表街道にある森の中、あたしたちは歩いていた。

小鳥のさえずりと、木々の揺れる柔らかな日の光。

春の涼やかな風が心地よい。

あたしはその中にいて、今している護衛とは別なことをかんがえていた。








長居するつもりはなかったといえば、嘘になるかもしれない。

ガウリイの提案で故郷に里帰りして、そして今にいたり旅に出た。

故郷にとどまっているあいだ、あたしは新しい術の開発にいそしんだ。

デモン・ブラッドを失い、切り札ともいえる呪文を使えなくなった今、もしもまたあたしたちが高位魔族に再びあいまみえたときに、彼らの力に翻弄されないように。

・・・・・・そして、あの時のようなやるせない無力感に、打ちひしがれることのないように。








思考はそこで中断された。

「ストップ」

歩みを進める彼らに待ったをかける。

ガウリイは既に、剣の柄にてをかけている。

「どうしたんです?」

「敵よ」

マリルさんの台詞に、端的に答える。

少し開けた森の中。

先ほどまでの鳥のさえずりは途切れ、静かな敵意がそこにあった。

「出てきたらどう?」

気配がする茂みの一角に声をかける。







沈黙が流れるが、あたしはさらに声をかける。

「それとも、たかが人間ごときに自分の姿を晒すのは出来ないのかしらね!?」

「挑発してどうする!?」

シーゲルの台詞は無視して、呪文を唱える。

油断する気はさらさらない。

何しろ相手は、普通の人間ではないのだから。






『くっくっくっ。我の存在を察するとはな』

茂みの中から姿を現したのは、全身を黒に覆われた異形の存在だった。

「「なっ!?」

その姿を見て、同時に驚愕の声を上げるシーゲルとマリルさん。

「なんなの!?この人?」

「・・・・・・こいつは、人でもキメラでもない」

マリルさんにそう応えたのはシーゲルだった。

心なしかその顔が青ざめている。

シーゲルの声が震えているのは、あたしの気のせいではないだろう。

マリルさんが、彼らのことを知らないのも無理はない。

魔道士のなかでも、彼らの存在は眉唾物として扱われることが多い。

かくいうあたしですら、三年ほど前までは彼らの伝説や伝承など知ってはいたが、単なる作り話としてしか認識していなかったのである。

・・・・・・すなわち、魔族。








魔族といっても、二つの種類がある。

よく魔道士が召喚するレッサー・デーモンや、ブラス・デーモンと呼ばれる存在(俗に亜魔族と呼称している)は、下級の魔族が自我のうすい小動物などを媒体に具現した存在を指している。

元がこの世の存在から具現したため、地水火風の精霊魔術や、銀を張り合わせた剣でレッサー・デーモンに多少だが傷をつけることが出来るのはそのためである。







一方、純魔族と呼ばれている存在は、レッサー・デーモンと違い、この世と表裏一体にあるアストラル・サイドから自分の力のみで具現している。

そのため、普通の剣では彼らを傷つけることなど不可能で、呪文もアストラル系統に属する精霊魔術や、かれら魔族の力を借りた黒魔術でしか倒すことは出来ない。








そいつは人の形に似せてはいるが、腕の部分は大蛇のごとく常にうごめき続け、その背にはつぼみのようなふくらみが全身の半分を占めている。

『我が名はタミヅ』

そいつは、白々しくうごめく腕をお辞儀の形に持って言った。

『我が与えられた命は、そちらの人間を渡してもらうことだ』

その視線をむけられて、彼女は、当惑の表情を浮かべた。

「・・・・・・えっ?わた・・・し?」









「ふざけるなっ!」

その視線から守るように、シーゲルがタミヅの前に立ち塞がる。

彼の額から、一筋の汗が流れる。

どうやら、こいつの正体が『何なのか』知っているみたいである。

『・・・・・・邪魔をするというのか。弱き人間よ』

「当たりまえだっ!」

『ならばお前たちにはこいつで遊んでもらおうか』








ぼこっ!

ぼこぼこぼごっ!








地面から音を立て、現れたのはレッサー・デーモンっ!

その数はやく十匹程度。

あたしとガウリイにとっては雑魚に等しいが、並みの剣士や魔道士にとっては十分な脅威である。

「ガウリイはマリルさんを守りつつ、レッサー・デーモンの迎撃!」

「わかった!」

あたしの指示に、ガウリイは応える。

「お前みたいな得体の知れないやつなんかに・・・・・・・マリーはわたさないっ!」

「・・・・・・シーゲル。
私のことを、またマリーって呼んでくれるの?」

マリルさんの台詞に、シーゲルはぴくりと肩を震わせた。

「私・・・・・・嬉しい」

「マリー・・・・・・今はそんなことを言っている場合では」

動揺しているのか、困り果てた視線をこちらに向けるシーゲル。

ああっ!?

情けないぞ、あんたっ!

『貴様らっ!この我を無視するなっ!』

魔族のタミヅが尤もな事をほざく。

術は既に、唱え終わっている。

『・・・・・・まあ良い。それでもお前たちの末路は変わらんのだからな』

ゆっくりとこちら、マリルさんに近づくタミヅ。

それにあわせるように、後退するマリルさん。

「こ・・・・・・来ないで」

『お前の返答は受理できんがな』

あたしはそれに応えるように『力ある言葉』を解き放った!




















「ダイナスト・ブラスっ!!」



















ばりばりバチイィっ!!








あたしの放った魔力のいかずちが、タミヅを中心にして五紡星を象り、襲い掛かった!

『ちいっ!?』

慌てて姿をかき消すタミヅ。

セオリー無視の大技で、油断しまくっている所を一発で仕留めたかったが、流石に無理だったかっ!?

だが、いまの一撃でデーモンのうち三匹を巻き添えにすることが出来た。







ぐおうっ!








怒りの咆哮を上げ、レッサー・デーモンたちは数十本ちかくの炎の矢を向けた。

いうまでもなくここは、森の中である。

炎が木に引火すると、どうなるか。

「バルス・ウォールっ!」

シーゲルの耐火呪文が完成し、こちらに向かってきた炎の矢は霧散した。

ナイスだ、シーゲル!

『ばか者どもがっ!』

タミヅの叱責に、デーモンたちが竦みあがった。

『その娘まで巻き込むつもりか!』

雷撃の嵐が収まる間もなく、空間からタミヅが姿を現す。

『この人間ごときがあっ!』

背にあったつぼみもどきは、いつのまにか腹の部分に移動していた。

その目標は・・・・・・あたしっ!

『死ねえっ!』

「させるかっ!」

つぼみから放たれた濁った紫色の物体は、思ったよりも速いスピードでこちらにやってくる!

「はあっ!!」

間に入り込んできたガウリイは、素早い剣戟で幾重にも切り刻んでいく。

ぼっ!

ぼひゅっ!

その度に、何かが破裂するような音が続けて響き渡る。

『ばかなっ!?』

驚愕の声を上げるタミヅ。

ガウリイが剣を振るうたびに、破裂音が聞こえなくなってくる。

その視線の先には、何事もなかったかのように佇むガウリイの姿。

『衝撃を全て切り裂くとはっ!』

タミヅの台詞から推測するとすれば、先ほどタミヅが放った紫の物体は、ダム・ブラスのように高圧な衝撃を凝縮したエネルギーだったのだろう。

なんだかの術で打ち払おうとしても、四散したあの物体は威力を落としても対象者に突き進み、触れた時点で炸裂する代物のようだ。

それをガウリイは、見えない軌跡さえも見切って打ち落としたらしい。

・・・・・・なんか、ガウリイの反射神経が達人の域をぶっちぎって、獣並みを通り越してきてないか?








無論のこと。

こんなもんをわが身で受けて、確かめてみようとはこれっぽっちも思ってもいないが。








「ヴ・ヴライマっ!」

シーゲルの声が響き渡り、地面から一体のゴーレムがうみだされた。

そのゴーレムは、レッサー・デーモンの頭ひとつ分大きい。

・・・・・・それで、いったいどうするつもりだ?

マリルさんがいる以上、レッサー・デーモンたちは炎の矢をうつことはできない。

しかし、その腕から繰り出される一撃は、人間の体など簡単につぶせる破壊力を秘めている。

その辺のことを、シーゲルは心得ているのか。

むかってくるデーモンの一撃をかいくぐり、つくりだしたゴーレムに手を添える。

「アストラル・ヴァインっ!」








うおんっ








ゴーレムを赤い光が包み込む。

そして、シーゲルはゴーレムに指示を出す。

「ゴーレム!前進してレッサー・デーモンにあたったらぶん殴れっ!」

・・・・・・なるほど!

普通の打撃だけならレッサー・デーモンに傷をつけることは出来ない。

しかし、武器強化の術をかけてやることで、魔族にダメージを与えることが出来るというわけである。

このあんちゃんけっこー応用力あるな〜

今度あたしも試してみよう。








ごがっ!








やがて、デーモンにぶつかったゴーレムは景気のいい音を立て、レッサー・デーモンの一匹をぶん殴ったのだった。







あたしもただ観戦しているわけではない。

「エルメキア・ランスっ!」

近づいてくるデーモンを呪文で倒し、タミヅと距離を置く。

「エルメキア・フレイムっ!」

畳み掛けるように、シーゲルはレッサー・デーモンなら一撃で屠る術をタミヅに解き放つ。

『小賢しいわっ!』

タミヅは、つぼみをむけ紫色の衝撃波を放った。








ぼぼぼしゅっ!








衝撃波と光の柱が相殺しあい、爆音が土煙とともに巻き起こる。

どうやらあの紫の衝撃波は、攻撃兼防御の役割を果たしているようだ。

土煙をおしきった、紫色の物体がシーゲルにむかったっ!

「くっ!」

それを済んでのところでかわす。








どむっ




ざああぁっ!








かわした先にあった木々が、衝撃波と接触した瞬間ど派手な音を立てて倒れたっ!

その木の下敷きになって、もがくレッサー・デーモン。

シーゲルは、そいつにとどめをさし、あたしはタミヅと向き合う。

威力が多少落ちたというのにこの威力なのかっ!?

つぎは、あたしっ!

「ダルフ・ストラッシュっ!!」

達人が繰り出す槍の一撃のごとく、超高速の衝撃波が、対象を粉々に粉砕する術である。

海王ダルフィンの力を借りた黒魔術で、同じ海王の力を借りたダルフ・ゾークと違い、周囲に大量の水がなくても発動させることが出来る。

『・・・・・・があっ!?』

苦痛の声を上げるタミヅ。

腹部の半身をえぐりとられても、まだ滅びないかっ!

「エルメキア・ランスっ!」

シーゲルの放った術は、虚空を貫いたのみ。








ぞむっ








ガウリイの剣が、最後のレッサー・デーモンを倒したのはその時だった。

また、空間を渡ったかっ!?








ぞわりっ








全身が総毛だつ。

振り向く間も惜しみ、とっさに左によけるっ!








ひゅんっ








風を切る音を間近で聞き取る。

「リナっ!」

ガウリイの切羽詰った声。








どんっ!








近くの木の幹に、あたしはしたたかに叩きつけられた。

「かはっ!」

衝撃に襲われ、一瞬呼吸が出来なくなる。

「リナっ!」

あたしを庇うように、ガウリイはタミヅとの距離を一気に詰めた。








おそらく、あたしを襲った衝撃は、タミヅのあの蠢いていた腕だったのだろう。

あたしは視線をガウリイとタミヅにむける。

タミヅのうでは、不規則に動き続けており、時々その腕が鞭のように細くしなる。

「はあっ!」

裂帛の気合と共に、ガウリイは腕の根元ともいえるタミヅの肩を貫いたっ!

『ぎゃあぁっ!?』

重なるタミヅの絶叫。








さあぁぁ・・・・・・








しなっていた腕は、その力を失い砂が零れ落ちるような音を立て、ゆらりと霞のように消えた。

「まだ立ってるっ!?」

マリルさんの声に、視線をやると

彼女の言うとおり、魔族タミヅはそこにいた。

人型に近い姿を取れる魔族ほど、存在の隠し方もうまくなり、それが魔族の強さのパーセンテージになっている。

以前であった高位の魔族も、気配も姿も完全に人のそれだった。

目の前にいるタミヅ、人の形に似てはいるがその強さはおそらく中の下といったところだろう。

『・・・・・・まだ、滅びるわけにはいかん』

魔族は気迫のみで持ちこたえているようだ。

半身を失って力を削がれていたとはいえ、あの一撃はかなり堪えた。

リカバリィの術を腹部に押し当て、回転をめぐらせる。

手負いの獣ほど油断は禁物である。

下手なことをされる前に、たたく!

しかし、魔族はその姿を闇に溶かせ、きえたのだった。

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33507はじめまして! レスします!のこもこ 2008/4/12 22:38:43
記事番号33506へのコメント

はじめましてフィーナさん!とおりすがりののこもこといいます!
んっきゃあああああああっっ!!!!!!!!?
なんなんですかこれわ!スレイヤーズの雰囲気そのものじゃないですか!!!
・・・・・・・・・・・・は!??すみません。暴走してしまって・・・・・・・・・・
アニメ化決定してうれしいですね!こちらにふらりとよってはじめてスレのアニメが決定したことを知りました!
十年ぶりにリナたちの暴れっぷりを拝めるなんてゆめのようですね!!!!!

アニメ話は話し出したら霧がなさそうなのでもどしますよ!!!
フィーナさんのこの話、もしかしてもしかしなくても原作ベースにしてませんか!!?????
タイトル名が「蒼の記憶」!!!!かっちょいい!!!!!!!!!!!
ちらりと出てきたフードの男はもしや愛しの(笑)ゼルさま!!??????
ぎゃあああああああああああ!!!!!!!!!!????
展開がよめませんしきになっちゃいますう!!!!
お返事まってまーす!!!!!!!!!!!

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33530Re:はじめまして! レスします! のこもこさんへフィーナ 2008/4/16 22:56:21
記事番号33507へのコメント

はじめましてですね、のこもこさん。
お返事が遅くなってしまい申し訳ございません。
>はじめましてフィーナさん!とおりすがりののこもこといいます!
>んっきゃあああああああっっ!!!!!!!!?
>なんなんですかこれわ!スレイヤーズの雰囲気そのものじゃないですか!!!
>・・・・・・・・・・・・は!??すみません。暴走してしまって・・・・・・・・・・
いえいえ、まさかこんなにも熱烈な歓迎をうけるとはおもっていませんでした。
>アニメ化決定してうれしいですね!こちらにふらりとよってはじめてスレのアニメが決定したことを知りました!
わたしもこちらのサイトで知りましたよ。
>十年ぶりにリナたちの暴れっぷりを拝めるなんてゆめのようですね!!!!!
10年ですか。長く待ち続けた甲斐があったものです。
>
>アニメ話は話し出したら霧がなさそうなのでもどしますよ!!!
>フィーナさんのこの話、もしかしてもしかしなくても原作ベースにしてませんか!!?????
はい。原作をベースに、里帰りしたその後のリナとガウリイの関係を(できれば)かいていきたいと思っています。
>タイトル名が「蒼の記憶」!!!!かっちょいい!!!!!!!!!!!
そ、そんなに褒められたら照れてしまいますよ!
>ちらりと出てきたフードの男はもしや愛しの(笑)ゼルさま!!??????
>ぎゃあああああああああああ!!!!!!!!!!????
・・・・・・いや、私フードの色の指定してないのでゼルガディスとは関係ない別の人物かもしれませんよ。(あわわっ!?)
詳しい設定はのちのちということで。
>展開がよめませんしきになっちゃいますう!!!!
>お返事まってまーす!!!!!!!!!!!
のこもこさんへ、レス本当にありがとうございました!!!

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33532蒼の記憶8フィーナ 2008/4/17 22:29:08
記事番号33480へのコメント

タミヅをなんとかしりぞけ、あたしはマリルさんのほうをちらりとみる。

先ほどの戦いのショックが大きかったのか、地面にへたりこんだままである。

「たてるか?」

そんな彼女に手を差し伸べたのはシーゲルだった。

「え・・・ええ、ありがとう」

おずおずと、マリルさんは差し出されたその手をとった。

・・・・・・それにしても、あの魔族はなんで結界を張らずに待ち構えていたのだろうか。

いくらあたしたちを甘く見ていたとはいえ、森の中でレッサー・デーモンを呼び出し、マリルさんを危険に晒した。

彼女を攫おうとしたのなら、魔族お得意の空間を渡るなりすればよかったはずなのだ。

「こら、リナ」








ぴしゃ








「ひゃうっ!?」

いきなし額を叩かれて、われながら変な声をだしてしまう。

「ちょ・・・・・・ちょっと、いきなしなにすんのよ!?」

「怪我してるだろ」

有無を言わせぬ断定の言葉に、一瞬言葉に詰まる。

「・・・・・・してないわよ」

「みせてみろ」

「・・・・・・いいってば」

「いいから」

いうなりこいつは、あたしの返答を待たずに逃がさないように抱え込み腕をまくった。じたばたと抵抗してみるが、その効果は空振りに終わった。

「・・・・・・リナ」

「なによ」

抱え込まれているので表情は見えない。

なおも抵抗しようと試みるが、力の差は歴然であり、あたしはしかたなく抵抗をやめた。しかし、彼の口調はいつもののほほ〜んとした声ではなく、微かな怒気が含まれていた。

「あまり一人で背負い込もうとするな」

「・・・・・・別に背負い込んでいるわけじゃないわ」

「怪我まで隠そうとするな」

「ただのかすり傷だからリカバリィですぐに直るわよ」

ガウリイの指摘どおり、あたしはタミヅとの戦いで背を木の幹にしこたま叩きつけられて、そのさいに腕を負傷した。

ひりつくような痛みが残っているが、今のあたしのじょうたいならリカバリイをかけておけば、痛みや傷跡も直に消えるだろう。

「そうじゃなくてっ!」

なにか口を開こうとするが、言葉が出てこないのか、もどかしそうに頭をかしかしと掻きむしる。

「・・・・・・おい、あんたら」

声に振り向くと、ばつの悪そうな顔の反面、興味津々といった風情のマリルさんと、呆れたようなぶっちょう面のシーゲルがあたしたちをみていた。

「いちゃつくのは構わないが、せめて時と場所を考えろ」

・・・・・・いちゃつく?

今一度確認してみる。




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!?



















あたしは事態の深刻さに気がついた!!

考えてみるとあたしはというと、ガウリイに抱え込まれており、見方によっては熱々バカップル以外の何者でもないではないか!!?

「は・・・・・・はなせ〜!!」

「おいおい、いきなり暴れてどうしたんだリナ」

「う〜うるさいうるさい!いい加減離れんか〜い!!!」

「てれちゃって、可愛い方ですね。リナさんって」

そんなあたしたちをみていたマリルさんが、ぽつりと呟いた。








ぷちり








あたしのなかの『何か』が、そんな音をたててきれた。

「ガウリイさんがリナさんを甘やかしたくなる気持ち、なんだかわかりますよね?シーゲル」

「・・・・・・マリー、俺にその話を振るのか」

「あなたも小さいときには、アレンにいさまに構ってほしくて色々いたずらとかやんちゃしてましたのにね」

「リナはまだ小さいぞ?特に胸とか」

「じゃかましい!!!みんな吹っ飛べメガ・ブランド〜!!!!!」

あたしの放った怒りの一撃は、ガウリイもマリルさんもシーゲルも、なんもかんもみんなふっ飛ばしたのだった。



















「ここがレイスン=シティです」

紆余曲折の道中はあったが、久しぶりの故郷にマリルさんの表情もおもわずほころんだ。

レイスン=シティの広場には、露店や観光客がにぎわっていた。

時刻は昼を回っており、屋台から漂う濃厚なソースの香りや、家からの肉や魚を焼く香ばしいかほりが風に運ばれて鼻腔をくすぐった。

・・・・・・おなかすいたな〜



















「家には数日したら帰ると、伝言を残しておきましたけど・・・」

マリルさんは、多少困った表情を見せた。

「なにか問題でも?」

と、これはあたし。

「以前も言いましたけど、私の父は商人で家を空けることが多いんです。だから家に帰っても使用人さんしかいないと思いますよ」

「なるほどね、それじゃお昼は近くの食堂でとりましょう」

「おお!めしめし!」

あたしのあとをついてきたガウリイは、とたんはりきる。

「・・・・・・まだくうのかよ、あんたら」

げんなりとした表情でうめくシーゲル。

「なにいってんのよシーゲル!あんなの食べた数にははいんないわよ」

「あれでか!?」

なぜか驚愕の声を上げる。

まったく、いったいなにをそんなに驚いているのやら。

ちょっと小腹がすいたので、軽くあぶったイカに自家製のソースをたっぷりつけたイカ焼きに、
串に一口だいにさばいたチキンを串で刺した照り焼きチキン、
くせになりそうな甘辛いソースとさっぱり醤油と塩をまぶしただけの選べる焼きモロコシを三本、かりかりの食感が楽しい小魚のフライとパノン・ジュースを頼んだだけだというのに。

「まあ、たしかに味はそこそこだったけど、量はいまひとつ物足りなかったわね」








・・・・・・はあ








なぜか盛大なため息をつき、かれはきびすを返した。

「つきあいきれん」



















「ただいまかえりました」

マリルさんの声が、ロビーに響き渡った。








ややあって。








がちゃりとドアが開かれ、使用人さんが顔を出した。

「お帰りなさいませ。マリルお嬢様」

中年を過ぎた小太りの男性は、深々とマリルさんに頭をたれた。

そして彼は、マリルさんの横にいるシーゲルに気づき、一瞬ぴくりと眉をはねた。

「・・・・・・これはこれは、アレン様もまた来られましたか」

「俺はシーゲルだ」

うんざりとした表情をつくりながらいった。

どうやらシーゲルとアレンさんは、よく間違われているようである。

「そうでしたか、それは失礼いたしました。シーゲル様」

「それはそうと、お父様はいつ戻られるのかきいていますか?ガンボさん」

ガンボと呼ばれた男は、柔和な笑みを浮かべた。

「只今だんなさまは旅から帰られて、ご自分の部屋におられますよ」

「本当に!?ありがとうございます」

続いて彼の視線は、あたしとガウリイに向けられた。

「・・・・・・ところで、こちらの方々は?」

・・・・・・この人、言葉遣いこそ丁寧だが、あたしたちを値踏みするような視線でマリルさんに問い掛ける。

「あ!この人たちは私が雇った護衛の方です」

「護衛ならそこのシーゲル様だけでも十分だと思うのですが」

「それはそうなんですけど、最近は色々と危険なご時世ですからね。それにこの人たちには助けられてばかりで」

ガンボはこちらと向き合う。

「・・・・・・どうやら、腕は立つようですな」

「まあ、人並みには」

あたしは言葉を濁す。








違和感があった。








それがなんであるかを探り始めたとき、第三者の声がその場に満ちた。

「随分にぎやかだな」

あたしたちは声がしたとおぼしき場所、すなわち階段の上に注目する。

「懐かしい顔だ、ひさしいなマリー」

手すりにあごを乗せ、面白そうにこちらを眺めている。遠めだが、彼から受ける雰囲気というか印象は、目の前のマリルさんと酷似していた。

その視線がマリルさんとあった瞬間、彼女は歌うようにさけんでいた。

「只今帰りました!そして、お久しぶりです!お父様!!」

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33548蒼の記憶9フィーナ 2008/4/26 01:47:50
記事番号33480へのコメント

立ち話もなんだからといわれ、あたしたちは彼に促されるまま、椅子に腰掛けた。








目の前にいる男性はオリヴァー=ラーズ。年の頃は四十の半ば、さえるような金髪に野性味あふれる挑戦的な目つきをしているなかなかハンサムなおじさまである。

その自信に満ちた勝気な顔は、商人というよりもどこぞの貴族を連想させる。









いわずとしれたマリルさんの父親である。








「僕の娘がいろいろと世話になった。礼をいわせてもらう」

あたしたちが席に着くなり、オリヴァーさんは開口一発そういった。

「いえ、あたしたちは護衛をつとめていただけですから」

まさか、いきなしそういわれるとは思わなかったので、謙虚にそう返した。

ちなみに、マリルさんは長旅で疲れているであろうという、オリヴァーさんの配慮で席をはずしている。

使用人のガンボさんは、買出しに行っており、いま、この席にいるのはあたし、ガウリイ、オリヴァーさん、シーゲルの四人である。








「それも含めてだ。君たちはマリーを無事に送り届けてくれた。
・・・・・・随分昔のはなしになるが、以前僕が雇った連中なんだがこの娘を誘拐して僕に身代金を払えといってきたことがあってね。
まあ、それはアレン君がそいつらとそいつらの親組織を完膚なきにぼろっぼろに壊滅させてくれたんだけどね」

「は・・・・・・はあ」

・・・・・・親組織を壊滅って・・・・・・

随分無茶なことをする人だな・・・・・・アレンさんって。

「そいつらを雇った僕にも責任はあるんだけど、マリーを危険な目に合わせた手前
僕はアレン君と一緒に慰謝料や迷惑料、彼らへの雇用量を壊滅させた組織から拝借してね」

「をいをいをい。あんた、そんなリナみたいなことしたのか!?」

「こらまて、ガウリイ!あんたなんでそんな、どうでもいいようなことは覚えてんのよ!?」

「いや・・・・・・どうでもよくはないだろ?それ・・・・・・っていうか、兄貴のやつそんなことしてたのかよ。
・・・・・・教えてくれたら俺も一緒にいってたのに」

シーゲルはそういって、はっ、とした。

「い・・・・・・いや、べつにマリーに危険な目に合わせたやつらが許せないだけで、
兄貴がマリーのために動いたのが悔しいわけじゃないからな!」

マリルさんが絡むと、わかりやすい反応をするやつ。

おもいっきしマリルさんを助けた、おにいちゃんに嫉妬していますと告白しているようなもんである。

「若いな〜。シーゲル君は」

目を細めて笑うオリヴァーさん。

それまでただ楽しそうに笑っていたその顔が、とたん食えない笑みにかわったことにあたしは気がついた。

狡猾な表情に、甘さや優しさなどは一切感じられない。

それは、彼がただのぼんくら商人とは潜り抜けてきた場数が違うのだろう。








「その組織ってのがちょっと名の知れた奴等らしかったみたいでね、
当時の領主リチャード=ランスロットがてをこまねいていたところを壊滅させたおかげで、僕は領主とのコネができたんだよ。
・・・・・・まあ、二年と少し前に彼は家族とサイラーグ・シティに、仕事に出かけ、原因不明の事故で消息がつかめなくなっちゃってさ。
いまはこの町に残っていた、リチャードの息子のマクベス=ランスロットが領主を務めているんだけどね」

「・・・・・・へ、へえ〜。そうなんですか」

心当たりのありすぎるはなしに、なんとかあいづちをうつあたし。

多少良心がいたまないでもないが、えせ賢者に狙われたあたしはあくまでも被害者なのである!!








くどいようだが、本当に!








「それで、浅からぬ縁をもった僕とマクベス君は親睦を深めようと、マリーとマクベス君の婚約を約束した」

「・・・・・・なんだって・・・・・・いま、なんていった」

シーゲルのかすれたこえ。

「マリーからはなしはきいたんだろう?シーゲル君。
・・・・・・マリーの相手はここの領主、マクベス=ランスロットということさ」

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33558蒼の記憶10フィーナ 2008/4/29 00:09:40
記事番号33480へのコメント

がたんっ!

けたたましい音を立てて、シーゲルは立ち上がった。

「・・・・・・どこへいくんだい?」

そのまま部屋から飛び出そうとする彼に、オリヴァーさんは声をかけた。

「あんたには関係ない!」

「君が抗っても、もう後戻りできないんだよ。領主との縁談は僕にとって都合のいい展開だからね」

ぎりっと、歯を食いしばる音がきこえた。

「都合・・・・・・だと!?それはあんた個人の都合でしかないじゃないか!」

「そうだよ。これは僕個人の都合でしかない。
・・・・・・だけどね、シーゲル君。こちらもビジネスなんだ、いつまでも昔のままではいられないことも理解できているはずだ」

握り締められた拳は、彼の激昂を現すかのようにふるえていた。



















ばたんっ!!!



















何もいうことも出来ず、荒々しい音と共にシーゲルは部屋を飛び出していった。








ふう








オリヴァーさんは軽いため息をついてから、こちらに向き直った。

「・・・・・・すまないね、我ながら見苦しいものを見せてしまって」

「いえ、それよりいいんですか?追いかけなくて」

「いいんだよ。シーゲル君も頭に血が上っているから、僕が追いかけていってもかえって逆効果だろうし」

苦笑交じりのその表情は、手のかかる息子を案じている『父親』の顔をしていた。

・・・・・・この人って

「さて、あんまり長居させたら申し訳ないな。君たちはしばらくこの町に滞在するのかい?」

あたしの表情を読んだのか、彼は苦笑したままいった。

「ええ、一応そのつもりですけど」

「なら滞在している間、うちにもちょくちょく顔を出してくれ。君も魔道士だから、マジック・アイテムには興味があるだろう?」

「もちろん」

あたしの即答に、オリヴァーさんは満足そうに笑った。

「・・・なら話が早い。
単刀直入に言うと、まだ試作品なんだが実験の意味合いも込めて、リナ=インバース君。きみに協力を仰ぎたいと思っているんだが」

「あたしに・・・・・・ですか?」

やや怪訝そうな声のあたしに、オリヴァーさんは頷く。

「君のような一流の魔道士にあえるのは滅多にないからね。
魔力のポテンシャルや反射神経などは、魔道士協会の協力の下行っているんだけどその出来はどうもいまひとつでね。
・・・・・・でも、リナ=インバースといえば噂の善し悪しは別にしても、その実力は一般の魔道士をぶっちぎっており、剣士としても優秀だと伺っている」

「それはどうも」

そういう風にいわれると悪い気はしない。

・・・・・・噂の善し悪し云々と、いう話はおいとくとして。

「けど、それってなんか危なくないか?」

「ををっ!?ガウリイあんた今の話覚えてるの!
ちょっと、あんた大丈夫!?熱でもあるんじゃないの!?」

あたしの至極当然の反応に、何故かガウリイはジト目になった。

「・・・・・・お前さんなあ」

「それはそうと、引き受けるかどうかは別にしても、協力といっても色々あると思うんですけど」

無視して、オリヴァーさんに話しを促す。

「魔道の実験も兼ねているから多少リスクもあるが、その分危険手当は十分手配するよ。内容は技術盗難防止のため一部の関係者にしか話していない」

・・・・・・ふうん。

「折角のお誘いなんですが、お断りさせていただきます」

「そうか。残念だけど仕方ないね」

あっさりと引き下がられ、思わず眉をひそめた。

「別にこれは、強制させてやるものでもないからね。
・・・・・・でもまあ。マリーを無事に送り届けてくれたんだから、ゆっくりしていくといいよ」








とんっとん








「なんだ」

部屋をノックする音で、オリヴァーさんはドアに振り向く。

「旦那さま。お客人がお見えになっております」

「わかった」

買出しから戻ってきたのだろう。ガンボさんのこえにそう応えてから、こちらを振り向いた。








日は既に傾きかけており、夕焼けの朱が部屋をオレンジに染めた。








「結局長居させてしまったな。
・・・・・・そういえば、宿泊する場所はもう決まっているのかい?」

「いえ。まだですけど」

「なら僕が一筆書かせていただこう」

紙にさらさらとかいていき、それをあたしに渡した。

「これは?」

「僕が経営している宿なんだが、魔道士教会からも近いし治安もそれなりにいい場所だ。僕の名義を入れておいたからいくらか割引してくれるだろう」

「いいんですか?そこまでしていただいて」

「かまわないよ。マリーとシーゲル君をつれてきてくれた礼だと思ってくれたらいい。では、僕はそろそろいくよ」

言い残し、オリヴァーさんは部屋を出て行ったのだった。

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33562蒼の記憶11フィーナ 2008/4/29 23:41:22
記事番号33480へのコメント

オリヴァーさんの屋敷を出て、あたしたちは彼に紹介された宿屋に向かった。

「・・・・・・なるほど。こりゃ確かに近いわ」








宿屋と向かい合う形で、魔道士協会の建物が点在している。

そのため、宿屋のカウンターには魔道士姿の客がちらほらとめにつき、それなりに賑わっていた。

オリヴァーさんの名義を見せたら、オリヴァーさんの言ったとおり、宿屋の主人は宿泊費を少し割引してくれた。








「それでリナ、これからどうするんだ?」

レイスン=シティの魔道士協会の近くにある宿屋は、それなりに大きく小奇麗な雰囲気を漂わせていた。

帳簿に名前を記載したあと、ガウリイはあたしに問い掛けた。

「う〜ん。とりあえず部屋は取ったから、あたしはこれから魔道士協会にあいさつにいってくる」








まだ協会は開いており、あいさつがてら閲覧室で調べたいこともある。

夜になったら閉館してしまうが、目と鼻の先に宿屋をとってあるのだから、迷う問題はまずないだろう。








「けっこう日が暮れてきてるから、俺も一緒についていこうか?」

ガウリイの台詞に、あたしははたはた手を振りながら応える。

「そんなに心配しなくても、こんな時間だから顔見せ程度にただ挨拶に向かうだけだし」

「それでもお前さんは女の子なんだ。万が一という場合もある」

「いいってば、本当に」








故郷に里帰りしてからというもの、彼は何かと過保護に拍車がかかってきた。

やれ盗賊いぢめはするな、夜歩きは危険だのあんたはあたしの母ちゃんか!?

・・・・・・いや、ガウリイのことだから・・・・・・

「・・・・・・本当に大丈夫なのか?」

なおも心配そうな彼に、先ほど考えた説が浮上する。

その考えをすぐさま打ち消し、あたしは努めて明るい口調で

「だいじょうぶだいじょうぶ!そんじゃあ、近くに食堂があったからそこで落ち合いましょ!?」

「・・・・・・あ?・・・ああ」

くるりとガウリイに背を向けて、彼の返事を聞きあたしは魔道士協会に向かったのだった。



















閉館した魔道士協会をでて、あたしは明りの灯った街頭を眺めた。

夜の闇に身をゆだねる。








はふ








・・・・・・もう、こんな時間か。

里帰りしてからというもの、母ちゃんを筆頭にして近所の幼馴染の子やおばちゃん連中にガウリイとの関係をあれこれ勘ぐられて、さすがなあたしも野次馬根性に辟易した。

葡萄を食べたいという、ガウリイらしい意見に呆れながら、じぶんでも彼の珍しい押しの強さをそういう意味でなく、食い気を原因だと思い込んでいた。








人から見たら滑稽で、笑い話で済ませることも出来る。

なまじ気がつかなかった。

否、気がついていない振りをしているこの現状を、どう打破すればいいのか。

あたしには、皆目見当がつかない。








「リナ」








びく








聞きなれた声と気配が、あたしを現実へと引き戻した。

振り返らずともわかる。

「・・・・・・待ち合わせ場所は、食堂だったはずでしょ?」

彼に背を向けたまま、あたしはいった。

「そうだったっけ?」

「そうなの」

「・・・・・・けど、おれひとりだったらその場所までつけるかどうか怪しいかな〜っと思うぞ?そもそも俺がその場所を覚えているわけないじゃないか」

いつもの、のほほ〜んとした口調ではっきりと断言する。

「・・・・・・いや、そうはっきり断言されても困るんだけど」

「それより、早く飯食いに行こうぜ!」








・・・・・・・・・・・・はあ








あたしは深いため息をついてから、彼と向き合った。

「そんじゃ、パアっと豪勢にいきますか!」

「おう!」

後ろから近すぎづ遠すぎない距離を保って、あたしの歩調に合わせてゆっくりと歩くガウリイ。



















あたしは思う。

この関係は、非常に危ういところと隣り合わせになっている。

そして、転機が訪れるまでは、今しばらくこの微妙な間柄を壊したくない。








しかし、あたしの願いはこの後起こる事件で、ゆっくりと崩れていくことになる。








翌日の早朝早くに、裏通りで発見されたならずものの変死が発見された事が、この町を揺るがす事件の序章の始まりに過ぎなかったのだった。

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