◆−紫煙の幻想 番外編−とーる (2007/12/29 23:44:06) No.33476


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33476紫煙の幻想 番外編とーる 2007/12/29 23:44:06


※紫煙の幻想14:撤退したセルネルとラルトフ










「もぉっ!フィブリゾ様ったらぁ!!
 どぉしていきなり呼び戻すんですかぁ!?」

「うるさいよ、セルネル。
 でもどうして呼び戻されたかは僕も聞きたいのですが?
 とっても良い所だったのですけど」


不満をもらす2人の部下の様子に
黒髪の少年―――冥王フィブリゾはふぅ、と息をつく。
こんなにしゃべる部下を創った覚えはないのだが
今は仕方ないと思い込む。

確かにある人間を抹殺する仕事を与えたのは
まぎれもない自分自身であり、
それを一時中断させて呼び戻したのも自分なのだ。

ぱたぱたと手をふって2人を黙らせる。


「ごめん、ごめんよ。セルネル、ラルトフ。
 だけどちょっと聞きたい事が出来ちゃったんだよ!
 まぁ……その様子だと違うだろうけど……」

「どういう事ですかぁ?」


苦りきった表情でそう言うフィブリゾに、
未だ不満が残るセルネルが首を傾げる。


「いやね…さっきベクシェルから報告があってさ」

「ベクぅ?」

「まさかまたヘマしたんですか、ベクは」

「うーん……というか」


フィブリゾはどう言ったものかと腕を組む。
そして大きなため息をついた。
少し複雑そうに。


「ジョイロックが、人間に倒されたっていうんだよ」

「「え?」」

「その報告が曖昧でねぇ……」


カリカリと頭をかきながらフィブリゾは
机の上に無造作に置いておいた書類を1枚手に取る。
それを2人に見せる。
そこに書いてあるのはまるで古代文字。
ろくに字が書けないような小さい子供がペンを持って
紙の上にぐしゃぐしゃと線を引っ張ったかのよう。

思わずセルネルとラルトフは主を見やる。
しかしフィブリゾは肩をすくめるだけ。
少しだけ眉間にシワが寄り疲れているようだった。


「僕がようやく解読できたのは“ジョイロック”、
 “滅ぼされた”、“人間”、“魔道士”、“剣”、
 あとは“金髪”だけだからね」

「……ああ…だから僕達を呼び戻したんですか」

「そうだよ」


はぁああっと先程より深いため息をつくフィブリゾ。
本当に難解を極めたのだろう、文字の解読に。
一見しただけではフィブリゾが読めたという単語さえ
どこに書いてあるのかが分からない。
思わず2人は同情の瞳でフィブリゾを見上げた。


「でも違いますよぉ、フィブリゾ様ぁ?
 剣なんて持ってませんでしたよぉ」

「僕達のターゲットは黒髪のおかっぱ頭ですし、
 近くにジョイの気配もまったくありませんでした」

「やっぱり違うのか…そうか……。
 じゃあ、もう任務に戻っていいよ」

「「はい」」


シュン、と消える2人。
フィブリゾはちらりともう一度書類に目を通す。
だがさすがにもう解読する気力はないらしく、
パサリと机の上に放り出した。

だから彼は気づかなかった。

その書類の中に“女魔道士”“時空超え”“畏怖する力”という
絶対に見逃せす事は出来ない単語があった事実に。





END.

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