◆−紫煙の幻想 26−とーる (2007/7/4 21:17:44) No.33180
 ┣はじめまして〜v−無記名て事で☆ (2007/7/13 09:42:56) No.33216
 ┃┗Re:こんばんは−とーる (2007/7/14 03:59:15) No.33223
 ┣紫煙の幻想 27−とーる (2007/7/15 20:33:43) No.33237
 ┃┗コメントれす−無記名て事で☆ (2007/7/19 14:38:06) No.33257
 ┃ ┗Re:お久しぶりです−とーる (2007/7/22 18:24:47) No.33266
 ┃  ┗負けたの?!−無記名て事で☆ (2007/7/24 13:24:38) No.33276
 ┃   ┗Re:負けてしまいました…−とーる (2007/7/29 23:18:59) No.33290
 ┗紫煙の幻想 28−とーる (2007/7/29 23:35:59) No.33291
  ┗Re:紫煙の幻想 28−無記名て事で☆ (2007/7/30 23:30:15) No.33295


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33180紫煙の幻想 26とーる 2007/7/4 21:17:44


 
 
 
 
 
―隠し事―










ひゅ、と息がかすれて喉が鳴った。
その事にルイの背筋にひやりと冷や汗が流れた。

宿屋でレイとルイが“約束”をしてから
もうすでに数日が経っている。
ルイは未だに拭えずにいる不安を抱えたまま、
兄達とともにカタートへの道のりを旅していた。



―――そしていつからか、身体に不調が現れ始めた。



気づいた時、ルイはただの風邪だと思い
兄や仲間には体の不調について何も言わなかった。
言ってしまえばすぐに町へ急いで宿屋に泊まり
自分の事を安静に寝かせようとするからだ。

仲間に対しては愚痴や呆れなどが多いが
ルイ対しては兄として過保護な部分がある。
急ぐ旅の途中に風邪気味だなどと言えるはずもない。

けれど。
風邪ではない事に気づいてしまった。
これは風邪ではないという事に。





「……ルイ」


ふいに隣を歩いていたルヴィリオに話しかけられて
一瞬聞こえてしまったかとルイの心臓が鳴る。


「何?ルヴィお兄ちゃん」

「……体の調子とかはおかしくないかい?」

「えっ?」


前を歩く兄達に聞こえないようにという配慮なのか
小さな声で問いかけてくるルヴィリオに、
ルイは一瞬感情のままに目を見開きそうになった。
眉をひそめ困ったようにしているルヴィリオへと
なるべく不自然に見えないように首をかしげてみせた。


「大丈夫だけど……どうして?」

「私の気のせいならいいんだけれど……
 最近、少しだけ様子が変に見えてたからね」

「そう?」

「大丈夫ならいいよ」


ルヴィリオは苦笑を浮かべてルイの頭を撫でる。
ありがとうと返しながらルイは内心安堵の溜息をつく。

仲間の中で1番こういう勘が鋭いのは
実はルヴィリオであるという事を忘れていた。

自分が何故ここの所不調であるのかを知った時、
仲間に気づかれないようにするとルイはかたく決心した。
気づいてしまったらもう後戻りは出来ない。
進むしか出来なくなってしまう。
自分が進みたくない道の方向へと。
だから、隠す。





「バースト・フレアーッ!!」





リオナの声に、はっと少し離れた前方を見やる。
すると大量のデーモンの群れが向かってきていた。
ルヴィリオは杖を構え直しながらルイを木陰に促すと
だっ!とレイ達の元へ駆け出した。


「はぁっ!!」


「デモナ・クリスタル!!」


ガウリスが剣を一閃させて翼を斬り、
デーモンが地面に落ちた所をルヴィリオが氷付けにする。
するとディグ・ヴォルトを放ったレイが
その場から離れた位置で、両手を大きく構える。

木陰でそれを見ていたルイは戦慄して声が引きつった。
レイが何をしようとしているかが分かってしまう。
どくりと心臓が暴れ始める。


「っ…ぁ…あ……」





「ルヴィ!リオナ!ガウリス!どいて下さい!!」


レイが唱え始めた呪文を耳にして
3人がデーモンの前から即座に飛びのく。


「ドラグ…」





駄目……。
使わないでお兄ちゃん……。
使わないで使わないで使わないで!!





「スレイブッ!!!!!」





チュドォォオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!





兄の中に揺らめいたくろいなにかと、
自分の中で暴れる痛みに耐え切れずに
レイはぷつりと意識を手放した。





NEXT.

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33216はじめまして〜v無記名て事で☆ 2007/7/13 09:42:56
記事番号33180へのコメント

新参者のコメント魔です♪
気に入った作品にどしどしと邪魔をしにきています♪
話が気になったので、過去へと遡ってみましたらば、ゼロスの過去話から、ルウ゛ィリオさんの過去へと移行。
そして、明らかになる降魔戦争への道のり。
、雰囲気ある文でのシリアスな話に、引き込まれました。
ルイの身に何が起こるのか、レイはどうなるのか、と佳境に入ってきてますます話に研きが掛った様に思えます。
ゼロスは、ルウ゛リオさんの行動の動機を知った後、複雑な心境になるのでしょうか?

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33223Re:こんばんはとーる 2007/7/14 03:59:15
記事番号33216へのコメント

 
初めましてこんばんは。とーると申す者です。

小説を始めから読んでいただけたのですか?
本当にありがとうございます。
作品を書き始めた後の時期がオフが忙しくなってきて
実際今もまだそうなので、話の更新はかなり遅めですね。
それでも全体としての佳境に食い込んできているので……
少しでもスピードを維持できればと思っています。

今までの作品は降魔戦争時の話などを書いてこなかったので
過去話は原作を何回も読み直しながら打ち込んでます。
それでもやはり間違いは出てきてしまうのですけど……。
過去話もそろそろ中盤になる頃ですね。

小説自体は、ほとんど全てがシリアスになるのですが
最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
コメ、ありがとうございました。
(下記の作品にはこれより先にコメントさせていただきました)
 

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33237紫煙の幻想 27とーる 2007/7/15 20:33:43
記事番号33180へのコメント

 
 
 
 
 
―気づいて―










『―――だろうね。最近ずっと調子が悪そうだったから』

『私がもっと早く気づいていれば……!』

『落ち着け、レイ。ルイが起きちまう』

『それに自分を責めても何にもならないわよ?』

『……それは……』

『ほらほら皆、静かにしないと駄目だよ』





周りで投げられている言葉にルイの意識が上昇する。
だが重い身体は瞼を開ける事を許さない。
思考はぼんやりとしたまま、回転し始める。
そのせいか遠くのように思えた声が比較的近くに感じた。
ふう、とため息をついたのはリオナだとも分かった。


「それにしてもこんな事態になるとは思わなかったわよ」

「きっと、ルイは精神的に人一倍繊細だからだね……。
 強く影響を受けやすいんだ」

「……戦闘の時とか辛そうにしてたからな」


ルヴィリオの言葉に背筋が凍る。

僕の事はいいんだ、とルイは焦りにも似た思いを願う。
どうかどうか、僕の事よりも。
僕の事よりも早く兄の事に気がついて。

けれど声にならない願いは仲間に届かない。
誰かがふわりのルイの頭を撫でる。
その優しさにすぐにレイだと分かった。
けれどその優しさは今のルイには悲しすぎた。


「……少し……外の空気を吸ってきます」

「分かったよ、レイ。起きたらすぐに知らせるよ」

「お願いします、ルヴィリオ」

「もちろん」





違う。





今のは、違う。

ルイはぎゅうと痛む胸を押さえようとしたが、
やはりだらんと力の抜けた手は動かない。
はっきりとレイが口にした『お願いします』の意味は
この場を……という意味じゃない。

僕を、という意味だ。

酷く情けないような苦しいような気持ちが
頭と心を襲ってきて、息がつまり嗚咽しそうになる。
むしろルイは出来るものならそうしたかった。
まだ身体はそれを許さない。

違う。違うんだ。
あの言葉は違うんだよ。
行かないで。行かないで。
お兄ちゃんをカタートに往かせないで。





「…か、せ……っ」

「ルイ?目が覚めたかい?まだゆっくり寝て……」

「……い、かせっ…ないで……っ!」

「ルイ?おい、どうした?ルイ」


碇のように重く動きを封じてくる石のような身体を
内側から必死になってあがいて抜け出す。
それでも瞼は数ミリしか開かず、腕はまったく上がらず
かすかに指先だけしか動かす事が出来ない。


「…お、にいちゃ…カタート……だめ…っ…
 も、どれ…っなく……な……っる」

「レイがどうし―――ちょっとガウリス!!外を見て!
 君が見える範囲でレイの姿はあるかいっ!?」

「……いや、いないぞ!!」

「あの馬鹿!1人でカタートに行く気ね!?」


力が入らない指でルヴィリオのマントを引く。


「あそこ…だ、め……お兄ちゃ…じゃ、なく…な……」

「うん、分かったよ。リオナ、ガウリス!
 すぐにレイを追って!まだ近くにいるはずだよ!
 私は宿の人にルイを頼んでから行くから!!」

「「分かった!!」」


バタバタと慌しく部屋から2人が出て行くのを
浅くかすむ目でルイは見やる。
呼吸がしにくく熱い汗が吹き出てくる。
しかしすぐに冷えて今度は身体の熱を奪っていく。

1秒、また1秒と時間が経つごとにルイはゆっくりと
自分の中のものが削られていく気がした。
きっと実際に、削られているのだろうと思う。


「ごめ…な…さ……ヴィ…ぃちゃ……」

「もう無理して喋らなくてもいいから、ルイ」

「っ…ぼ、く……前から、きづ…て…のにっ……
 お兄……行ったら…のみ、こ、まれ……!」





爆発音が聞こえた。





NEXT.

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33257コメントれす無記名て事で☆ 2007/7/19 14:38:06
記事番号33237へのコメント

益々、目が離せなくなってきましたね。
スレ世界の話ですが、オリジナル満載なのに、読んでいて世界に引き込まれそうです。
良く知っているゼロスから話が始まり、次にルウ゛ィリオが出てきて、暫くはその二人が主となる話で、読んでいたので、ルウ゛ィの過去話になって、オリジナル色が強くなってもとても読み易いです。
余り、オリジナルが強い話は読むのが得意じゃないですが、話の導入の仕方が上手で、読み易いです。
可愛い絵もお描きになってましたよね。
団長のリナに、応援して貰いたいです!!
世間の厳しさに、参りそうなんです(涙)

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33266Re:お久しぶりですとーる 2007/7/22 18:24:47
記事番号33257へのコメント

 
前のコメからお久しぶりです、こんばんは。

話の導入の仕方はある程度決めていたので
それが読み易くなっていたようで良かったです。
展開としては、もう少しオリジナル要素が続きますが
話の後半に入っているのでお付き合いただければと思います。

団長リナも見て下さったのですか。
残念な事に野球はライバル校に負けてしまったのですけど
世間の厳しさに負けないようにお互い頑張りましょう!

2度目のコメありがとうございました。


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33276負けたの?!無記名て事で☆ 2007/7/24 13:24:38
記事番号33266へのコメント

野球負けたのですか。リナの姉ちゃん仕込みの地獄の特訓が部員達に待ち受けている事でしょう。
野球で負けた事よりも、こちらの方がダメージ大の予感がヒシヒシとします★
そして、オリジナルが続く様ですが、OKです!話に置いていかれていないので!
というか、オリキャラの方が気になります。ルイの身に、これから何が起こるのか、ハラハラして、続きを楽しみにしています。

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33290Re:負けてしまいました…とーる 2007/7/29 23:18:59
記事番号33276へのコメント

 
 
青春の夏は終われど特訓の夏は終わらない……。
リナの作ったメニューにきっと部員は号泣するでしょうね。
それを背に来年はきっと勝ってくれるでしょう(無責任

展開上、雰囲気としてはかなりシリアスになりますが
ついてきて下されば頑張りがいがあります!
それではこれから続きを打ち込みに入ってきます。


 

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33291紫煙の幻想 28とーる 2007/7/29 23:35:59
記事番号33180へのコメント






―理由―










街のはずれに、ようやくぴくりとも動かなくなった
レッサーデーモンが何十体も伏している。

それを見やったレイは息を吐いた。


「ふぅ……」


街が大きいか小さいかなどもはや関係ない。
闇の者が求めるのは、己の欲求を満たす快楽。
恍惚と感じる恐怖を喰らいたいが為に
罪もない人の命を奪う。
数少ない純魔族達が唆して始まる大きな戦争も、
数多のデーモンの群れがただ暴走するのも同じ事。

多くの命を奪う行為に何ら変わりはない。



ドクリ。



脈打つ鼓動に眉を寄せる。
最近こうして起こるコレは―――。





「―――見つけたぞ、レイ!!」

「あんた1人で勝手に行くんじゃないわよっ!」





後ろから己の姿を見つけて走ってくる
仲間の2人に思わず肩を落とした。
きっとこの紅のローブが見つかった原因だろう。
この深い色はいつでも好奇や不信の視線を
捕らえて捕らえて離さないから。


「ガウリス、リオナ……止めないで下さいね。
 私は早くカタートに行かなくてはならないのです」

「知ってるわよ!!それが1人で行く事に何で繋がるのよ!!
 まさかルイが足手纏いだって言うんじゃないわよね!?」


ぎらりとリオナの目が剣呑に光る。
いつでも自身満々で堂々としているリオナの良い所は、
女子供にとても優しいという事だろう。
別にそれを悪くいうつもりはない。
逆にそれは長所なのだ。
けれど、それは戦場の上で決定的な弱点となり
相手に攻められる対象となる。


「……戦場にルイを連れて行くわけにはいきません」

「あんた…!」

「待てリオナ。なら聞くけどな、レイ。ここに置いていくなら
 どうしてここまで連れてきた?いつか置いていくなら
 ルイを助けた時にいくらでも方法はあっただろ」


ガウリスの言葉にまたため息をつきたくなる。
だから、表に出さずに内心でそうした。

もちろん知っている。
崖から飛び降りようとした子供を助けたのは悔いていない。
私がそれを悔いるはずがない。
もちろんどうするかもかなり考えた。
近隣の村に預ける事や、知り合いに頼む事など色々と。
けれど泣きもせずにただぽっかり魂が抜けたような子供を
私は“必要”だと強く思ってしまったのだ。

何故かは今でも分からない……。
けれど“私が必要とした”のだ。

だから己の名前に似させて“ルイ”と名付けて、
小さな手を引き、広大な世界を見せた。
次第に輝きを増してていく瞳や表情を見て
酷く安心している自分に気づいた時には驚いた。


「ルイは置いていきます。私は一足先にカタートに向かいます」

「……それで俺らにルイの面倒を見ろって?」

「里親を見つけてやって下さい」

「馬鹿な事言うんじゃないわよっ!!」





確信。
それは確かに確信だった。
いつだろうか?

このまま旅をしていればいつの日か
ルイが消えてしまうと気づいた。

私のそばにいるという
“当たり前”だと思っていた事が原因で。





「リオナの言う通り、ずいぶん馬鹿な事を言ってるね?」

「……ルヴィ」

「すぐに撤回しないとはまた良い度胸をしてるね」


いつも温和そうな顔で微笑んでいる顔からは
その表情が消えて、無が浮かんでいる。
冷え冷えとした瞳で真っ直ぐにこの紅の瞳を射抜き、
微塵にも動かず逸らされない。
だからこちらから視線を外す事を出来ない。


「“賢者”と呼ばれていようと人は人。
 1人でカタートに向かおうとする馬鹿はとてつもない馬鹿。
 レイが最大級の大馬鹿だと思っていなかったんだけど」


突き放すような声色で投げられる言葉に内心苦笑する。
怒るのならばもう少し感情を出せばいいのに、
と他愛もない事を思うが何も言わない。

ふとルヴィリオの後ろの木の陰に
汗をびっしょりとかいたルイの姿が見えた。

彼は連れていけない。
連れて行けばきっと消えてしまう。





殺されてしまうから。





NEXT.

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33295Re:紫煙の幻想 28無記名て事で☆ 2007/7/30 23:30:15
記事番号33291へのコメント

シリアス度が高くなったので、タイトルは触りませんでした。
レイとルイは兄弟じゃなかったんですね、衝撃の事実でした。
ルイを必要としたレイの心はこれから明らかになっていくのでしょう。
多分、レイを繋ぎ止めていたのはルイなんですよね?
ルイと出会ってなかったら、事態はもっと早くに動いていたのだろう、と思います。
血の繋がり以上の強い絆が二人にはあるのでしょう。
もろもろの謎が少しずつ明かされていくのを楽しみにしています。

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