◆−ツリー変えです−とーる (2005/11/27 16:25:29) No.32088
 ┣紫煙の幻想 13−とーる (2005/11/27 16:34:23) No.32089
 ┃┗Re:紫煙の幻想 13−蝶塚未麗 (2005/12/1 12:02:47) No.32103
 ┃ ┗Re:ありがとうございます−とーる (2005/12/2 15:09:05) No.32104
 ┣紫煙の幻想 14−とーる (2005/12/3 13:32:35) No.32110
 ┣紫煙の幻想 15−とーる (2005/12/8 18:47:00) No.32121
 ┣紫煙の幻想 16−とーる (2005/12/16 17:52:16) No.32136
 ┣紫煙の幻想 17−とーる (2006/1/6 00:36:33) No.32194
 ┗紫煙の幻想 18−とーる (2006/2/1 21:59:27) NEW No.32226


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32088ツリー変えですとーる 2005/11/27 16:25:29



どうもこんにちは。とーるです。
もう少しでツリーが落ちてしまいそうなので
この辺で一度、ツリー変えをしておきます。

紫煙の幻想はもう少し続くと思うので
最後まで読んで下さると嬉しいかぎりです。
それでは。

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32089紫煙の幻想 13とーる 2005/11/27 16:34:23
記事番号32088へのコメント




―気配―










トントン



ルヴィリオは地面に軽く
杖を打ちつかせながらセルネルたちに問う。


「僕を探してこの村の人たちを殺したのかな?」

「別に命令したわけじゃないけど?
 あいつらが勝手についてきて勝手に暴れただけさ」


くるっと周りを見渡してラルトフがくすくすと笑う。

見るも無残な光景。

しかしそれが、辺りに未だ渦巻きつつある
負の感情がラルトフとセルネルの機嫌を浮つかせている。
もちろんアストラル・サイドにいるゼロスも
つい先ほどまでたっぷりと負の感情を喰らわせてもらった。

ふぅ・・・とルヴィリオは息を吐いて首を振った。
黒髪のおかっぱがさらりと揺れる。


「やはり魔族は私の許容範囲を軽く越えるね」

「あらあらぁ?
 もしかしてぇ怒っちゃったのぉ?こっわぁいわぁ」


笑いが零れる口元を押さえながら
セルネルが怖がる振りをするがルヴィリオは無視した。
さっきからずっと微笑んで、
杖を地面に打ちつかせ続けた状態でいる。


「何の未練もないけれどね」





―――・・・・・・!

ゼロスはその瞬間
素早く空間を移動して飛んでくる殺気を避けた。
意識を殺気の方向へ向けてみると
自分と似たような存在がそこにあった。

力の差は幾分違っているのだが。


『・・・何処の存在だ・・・
 貴様は冥王様に属する存在ではないな・・・?』


ゆらりと存在が揺れて警戒するような気配を持つ。
対してゼロスは静かな気配を持った。


『聞いてどうする』

『・・・早々に立ち去ってもらおう。
 セルネル様とラルトフ様の邪魔をするならば』

『邪魔をするならば・・・?
 貴様ごときに何が出来るというのだ』

『―――ふ・・・存在し始めて幾日も立たぬ貴様が・・・
 このユラルクスを愚弄するか・・・』


そんなゼロスの気配に警戒していた気配が
憎悪のような嘲りのようなものを帯びる。
その気配などに微塵にも臆せず、ゼロスはただ余裕の沈黙を返した。
ユラルクスがその態度をどう取ったのかは不明だ。
しかしもう一度殺気がゼロスに向かって飛ぶ!

ゼロスは先ほどと同じく空間を渡って
今度は自らの末端を鋭利な刃と化し、
一直線にユラルクスに向かって滑らせる。



ヴォンッ!!



空間が刃に呼応するように唸りを上げた。
素早い動きについていけなかったのか
ユラルクスは刃に末端を貫かれた。


『ぐ・・・ッ!・・・だが甘い!!』


うめくユラルクス。
だがその末端を切り離し、分裂させてゼロスを襲う!



ヴヴヴヴァァアアッ!



豪雨のように降り注ぐそれを
唸る空間の振動にわざと身を任せる事で、
空間がいくつかの末端を弾いた。
それに乗じて、ゼロスはその他の末端を弾き返して
瞬時にユラルクスの背後へと空間を渡った。

しかし。
それを読んでいたユラルクスが力を放―――





ドズンッ!!!




本体をユラルクスに貫かせながら
静かに静かにゼロスは言った。


『・・・我が名はゼロス。獣王様の直属の配下だ・・・』






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32103Re:紫煙の幻想 13蝶塚未麗 2005/12/1 12:02:47
記事番号32089へのコメント

こんばんは。
はじめまして、蝶塚未麗(チョウヅカ・ミレイ)と申します。
よろしくお願いします。




紫煙っていうくらいだからおタバコのお話かなあと思いましたけど、そういうわけではなさげなご様子?
そういやルヴィリオ氏の瞳は紫だったかな。
文体がとても簡潔で読みやすく、かつシャープでいいなあと思いました。
とても洗練された感じで、詩的ですらあると思います。
スペースの使い方が巧みでバトルシーンなんかはスピード感抜群。
読んでてとても気持ちがいいです。一気に読めました。
ストーリィは今のところごく普通といったところですが、読ませる力はあると思いますし、ゼロスがなぜ今の姿(ルヴィリオ氏の姿?)になったのかという興味深いテーマもありますから、今後の展開がとても気になります。




それでは、浅い感想になってしまいましたが、今回はこれで失礼します。

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32104Re:ありがとうございますとーる 2005/12/2 15:09:05
記事番号32103へのコメント


蝶塚さん、こちらこそ初めまして。
作者のとーると申す者です。

私は今まであまりシリアスの話を書く事が少なかったので
その路線を含んだ話を書きたいなぁと常々思ってました。
それで書くとすれば主体は誰がいいかと考えていた時に
シリアスならば、魔族の方が話が書きやすいのではないかと
思いましてゼロスが主体の話にする事になりました。
そしてすぐに「紫煙」という言葉が頭の中に浮かんできたので・・・。

小説を書き始める前に詩を書いていたので
確かに今でもそのなごりのような物はありますね。
本当はもう少し凝った書き方をしたいのですが
まだまだ文才が足りないようです・・・。

いえいえ。
このたびはコメントありがとうございました。
それでは。


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32110紫煙の幻想 14とーる 2005/12/3 13:32:35
記事番号32088へのコメント




―戸惑い―










―――思ったより時間をかけてしまったな・・・

滅びていくユラルクスをしばし見つめた後で
ゼロスは少しだけ眉をひそめる。

やられてしまっただろうか?
ルヴィリオは。
あんな幼い子供のようでも力ある冥神官と冥将軍だ。
ゼロスはさっさと意識を“外”へと向けた。





ドンッ!!

ドゴォン!!

チュドムッ!!

ダダダダダンッ!!





派手な音が立て続けに響いた。
それと比例するように村の中がみるみる破壊されていく。
ルヴィリオはそんな様子が気にならないのか、
攻撃をひらりひらりと避けつづけている。

その姿を追って攻撃を仕掛けていたセルネルは
きーっ!と癇癪を起こした。


「何で当たらないのよぅ!ちょっとぉ!
 少しは反撃してそんで早く死んじゃってよぉ!」

「・・・セルネル。言ってる事がめちゃくちゃなんだけど」

「だって苛立つぅうう!!」


言葉は落ち着いているが
どこかラルトフの雰囲気も苛立っているように見える。

ゼロスは分かる。

それくらいにルヴィリオの焦りのない姿が気に入らない。
だから魔族は考える。
あの姿をどうすれば恐怖に怯える姿に変えられるか。
苦痛に狂う姿に変えられるのかと。
ゆるぎないあの穏やかな表情を変えたい。
崩れる瞬間を見てみたい。

衝動が湧き上がる。
壊したいと。



トン



いつのまにか弾かれて空を舞っていた杖が、
ルヴィリオの手にすっと吸い付くように収まった。
そして地面に打ち付けられる。


「悪いけど残念な事に死に様を見せる事は出来ないよ。
 誰であろうと・・・・望まなければ・・・永久に」

「・・・何言ってるのぉ?」


言葉の意味が良く分からなくて首をかしげるセルネル。
眉を寄せラルトフは黙っている。

―――・・・望まなければ・・・?

それを聞いたゼロスも違和感を感じえる。


「別に分からなくてもいいんじゃないかな・・・?
 教える気は毛頭ないからね」


くす、と笑うルヴィリオは
ようやく反撃する意思を見出したのか片手で杖を構える。
その動きにセルネルとラルトフも油断なく構え―――





唐突にそれを解いた。





ぱっ!とセルネルが上げていた手を下ろす。
ラルトフは怪訝な表情で虚空を睨んでいる。
きょろきょろ、と無意味に辺りを見回すセルネルは
隣のラルトフにしどろもどろに困った顔で問いかけた。


「・・・ラルトフぅ・・・どうするのぉ?」

「どうするって言ったって・・・
 僕達にはどうせどうする事も出来ないけどね」

「それは。そう、だけどぉ」

「セルネル」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・どうしたんだい?」


黙り込むセルネルにラルトフは微妙な表情を見せる。
ルヴィリオは2人の変な戸惑いを感じたのか
構えた杖を下ろした。

先ほどまであれほど好戦的だったセルネルとラルトフには
今はもうそんな気配は残っていなかった。
ただただ驚きと戸惑いだけが支配されている。

ラルトフはふぅ、と息をつくとセルネルの腕を取る。


「仕方がないけど、行こう、セルネル?」

「・・・分かったぁ・・・」


ちらり、とラルトフを見たセルネルは1つ頷く。
そしてくるっとルヴィリオの方を向いた。


「ちょっとあんた。
 今日はここまでで勘弁してあげるぅ・・・」


力なく言いのけるセルネルを引っ張って
ラルトフはアストラル・サイドへと姿を消した。
後に残るは奇妙な沈黙。
最後の2人の行動にゼロスは少し首をかしげた。


―――何だ・・・?





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32121紫煙の幻想 15とーる 2005/12/8 18:47:00
記事番号32088へのコメント




―限定と決定―










突然ルヴィリオを殺す事を止めて
アストラル・サイドに消えたセルネルとラルトフ。
首をかしげて虚空を見ているルヴィリオを
眉をひそめながら、ゼロスはちらりと横目で見やった。
ややあって彼は村の惨状へと目を移す。


『・・・・・さて』


意識をアストラル・サイドの奥へと向けたゼロスは
不信に思ったセルネルとラルトフを追うかどうか迷った。
まだ、多少の気配は残っている。
追おうと思えばまだ追える。

どう考えてもあの去り方は何かがあるだろう。
だがもしそれが冥王の命令だとしたら?

―――ならば私が干渉するべきではない

自分は冥王ではなく獣王の配下。
行動を不信に感じたからと言ってどうするというのだ?
答えは単純。



どうもしない。



上司を敵だというのならば即座に存在を消すが。

―――・・・私の使命は他にある

“限定”はすぐにする事が出来たが
“決定”づける事が中々出来ない。
苛立ちはしないが長々と時間をかけていいものではないだろう。
ゼロスはルヴィリオからさっと目を離して
瞬時にアストラル・サイドを移動すると虚空に戻る。
ゆっくり地面へと足を下ろした。

しんとした空気が洞窟の中に行き渡っている。

その中心にあるのは
彼が村長に壊したと偽ったあの祭壇がある。
すっとその祭壇に近づいてゼロスはじっと祭壇を見下ろした。


「・・・これは・・・。」


驚いてゼロスは声を上げる。
剣に姿を変えていた魔族の瘴気を受けていた祭壇は
ものの見事に、綺麗に浄化されていた。
よほど強い瘴気でなければ浄化の力の方が強いかもしれない。
これほどに浄化させるには祭司クラス・・・
もしくは賢者と呼ばれてもおかしくはないだろう。


「何故だ・・・?」





呪文無しで使える力。

世界の法則に縛られる事なく

次々と繰り出されていく未知なる魔法。

それを行使するルヴィリオ






―――法則が違う・・・?・・・根本的に違う力・・・?
    だが、そんな物があるはずがない





この世界は“あの御方”に創り出された。
そして創られた法則の上に成り立っているのだ。

魔族が混沌を求めるように。
神族が闇に抗うように。
人間が生と死を繰り返すように。


「そんな物を使えるはずがない・・・」


―――あの人間は何なのだ?それが分かれば
    私に課せられた使命は、まっとうが出来る


「ゼロス」


先ほどからこちらに向かってくる気配はとうに感じていた。
どうせ先ほどの行動も言葉も聞かれていないだろうから
別に焦りなどはしない。
見られたならば結果は1つだ。

ゼロスは振り返った。


「・・・無事だったんですね」

「あぁ、ゼロスも無事で良かったよ。
 襲撃があってすぐにここに逃げ込んだんだね」


安心したようにルヴィリオは穏やかな顔で笑った。
そんな彼はゼロスは冷めた目線で見ていた。
事はもうすぐ動き出す。
そんな予感を抱いた。





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32136紫煙の幻想 16とーる 2005/12/16 17:52:16
記事番号32088へのコメント




―意外にも―










ここでゼロスは“意外”というものを
初めて覚えたと、そう言っても過言ではないだろう。
存在し始めてからまだ3日もたっていない。
しかし否応にも経験はされた。

だが驚きよりこうまでして“意外”に感じたのは
これが初めてだったのだ。





「やっほぉーv久しぶりぃv」

「さっきぶりの間違いだけどね・・・」

「おやおや・・・」




神殿を出た場所に立っていたのは
先ほど消えてしまったセルネルとラルトフ。

再開は早かった。

ラルトフは無表情でこっちを見ているが
セルネルが笑顔で手を振っているのは何故だろうか。
そしてゼロスの隣で手を振り返すルヴィリオも何なのだろう。
何だろうかこの雰囲気は。


「さっき“今日はここまで”って言っていたから
 また今度来るのかと思ったんだけれどね」

「事情が変わっただけだよ。
 別に不都合があるわけじゃないだろ?」

「それはそうだね」


ルヴィリオはあっさりその言葉に納得した。
何故かゼロスはこの場にいたくなかった。
こんなに、何故、と思うのもまた意外だったが。
3人から目を背けていたゼロス。
ふとセルネルがその姿に気がついた。


「・・・あらぁ?あんた誰なのぉ?
 さっき村にいなかったわよねぇ?」

「この子は私の弟だよ」


―――!?


いきなりといえばいきなりのルヴィリオの告白。
ゼロスは表情には出さず内心思い切り驚いてしまった。



「さっき村が変な様子だったから
 ここに隠れているよう言っておいたんだよ」


にこにことそう説明するルヴィリオに眉を寄せるゼロス。
するとラルトフがぽつりと言った。


「ぜんっぜん似てないけど・・・?」


当たり前だ。


「あぁ、この子と私は母親違いでね。
 母親が死んだから私が引き取ったんだよ」


―――よくもそんな嘘が次から次へと思いつくものだ

しかもしゃあしゃあと言ってのけるのだ。
余計に真実味を増している。
たまったものではない。

だが仮に本当であっても敵に安易に教える事ではない。

一瞬セルネルとラルトフは顔を見合わせる。
そして値踏みするかのような目でじっとゼロスを見る。
その後でルヴィリオに笑った。


「その子大事ぃ?」

「もちろん弟だからね」


―――・・・馬鹿な問いに答えたな・・・

ゼロスは瞬時にセルネル達の意思を察した。
笑っているルヴィリオに内心そう呟く。
魔族がそんな事を聞いた後にどんな展開が待っているか。
そんな事はこの男であれば分かるはずだろうに。





大事なもの



それがあるから人間は強いと聞く



だが同時に弱くある



弱点になる



弱みになるのだ





「そう・・・そんなに大事なんだ」


これ以上


「じゃあさぁ」


絶好の


「「壊してあげるよ」」


エサはない






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32194紫煙の幻想 17とーる 2006/1/6 00:36:33
記事番号32088へのコメント



―隙―










魔族は気配を隠していたとしても、
力のある“同類”にはすぐ見分けられてしまう。

なのであまり意味がない。

将軍・神官クラスになれば気配の中に潜む力の差から
中級クラスの魔族には普通に見分けられてしまうくらいなのだ。
だからゼロスは気配を消してはいなかった。

けれど猛然と向かってくるセルネルとラルトフは
ゼロスが何者であるかという事にまったく気がつかない。

―――・・・何故だ?

面識がないから。
ふと人間のような事を考えてしまった。
しかしすぐに考えを切り替える。
彼らとて上級魔族である。
ゼロスに気がつかないはずがないというのに。


「はっ!!」


ひとまず飛んできた波動球を避ける。



バシュッ!!



その波動球をくらった大木が、
まるで砂のように崩れてその場から消えた。

―――なるほど・・・冥王様の力を真似ているのか

おそらくあの波動球をくらったものは
全て虚無に返してしまう力を持っているらしい。
横目でルヴィリオを見やってみると、少しでも隙があれば
いつでも割って入れるように杖を構えなおしていた。
内心舌打ちをしたい気分になりながら
ゼロスは2人から飛んでくる波動球を交わしていく。

――――・・・使命はまだ終わってないが・・・
    あいつを気にせずに・・・力を使ってしまうか・・・?

ルヴィリオがいない時やアストラル・サイドなどで使っていたが
こんな現状では後々今はそうも言っていられなくなるだろう。
飛んできた波動球を、ゼロスはアストラルに干渉して
結界を張って防いで避けたように見せかけた。


「ほらほらぁ!!さっさと終わりにしちゃおうよぉ!!」

「案外すばしっこいんだね。悪あがきみたいだけど」

「じゃあ・・・これならどぉ!?」


ばっ!とセルネルが両腕を上げる。
今までよりとびきり大きな波動球を作り出すらしい。
それをかばうかのように
ラルトフが前に出てきてゼロスと交戦し始めた。



カッ!



直接波動球を叩き込もうというのか、
ラルトフは片手に力を集めてぶつけてくる!


「今度こそ死んでもらうよ!!」

「・・・・・・」

それを瞬時に理解したゼロス。
それをやすやすと喰らうほど彼は素直ではなかった。





「隙が大きすぎるよ。力を見誤ったね」





聞こえてきたのは凛とした声だった。





ゼロスは一瞬彼がいる事を忘れていた。
アストラル・サイドを移動してラルトフの背後に回り、
自分の力を叩き込もうとしていた時だった。





「あ、あああああああああっ!!!!!!!!!
 いやああああラルトフぅうううううううううっ!!!!!!」





両手に密集していた巨大な虚無の塊。
それはまるで暴走をするかのように暴れ狂っていた。
そして虚無は1番近くにいた少女―――
波動を生み出していたセルネルを蝕んでいく。

一瞬ラルトフの動きが止まる。
ルヴィリオが杖を力強く地に打ちつけて叫んだ。



ドン!!!



「太陽の道標!!」





こおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!





前に使った時よりも
鋭く眩い閃光が虚無に食われたセルネルを焼き尽くした。





「せ・・・セル・・・
 セルネルーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」






NEXT

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32226紫煙の幻想 18とーる 2006/2/1 21:59:27
記事番号32088へのコメント




―暴走―










「あ……あぁあ……セルネル―ーー!!!
 セルネルぅぅううううっ!!!!!!!!!!!!」


ラルトフはセルネルの元へ走り出す。
しかし、すでに少女の姿はそこになかった。

ただ暴走した虚無に
一部が喰われてしまった地面が残っているだけ。
その様子をゼロスは冷めた目で見やる。

呆然とその場所を見ていたラルトフ。
ふいにゆらりと体を動かした。


「……セルネル」


一瞬足元を見て―――
ギッ!とルヴィリオをきつく睨む。
“セルネルを滅ぼした”とラルトフがそう考えた一番の人物を。


「お前が……!!お前がぁああーっ!!!!」



ヴヴンッ!!!



黒い波動球が両手に溢れさせて
それをばっとラルトフが空に放り上げる。
その瞬間。

波動球は豪雨のようにルヴィリオに向かって突き刺さる!

けれどルヴィリオはその場を動こうとはせずに、
すばやく杖を地に打ち付けて叫んだ。


「雷の咆哮!」



バチバチバチバチバチバチ!!!



幾つかの雷撃が向かってくる波動球を
瞬く間に次々捕らえては次々と消し去っていく。
しかし波動球の全てを防ぎきれなかったようだ。
捕らえ切れなかった球はルヴィリオの立つ位置よりも
数メートルずれて大地を喰らった。

その中の波動球が1つだけゼロスに向かって落ちてきたが
ゼロスもルヴィリオと同じくその場を動かずに
すっと片手を静かに動かして波動球を消しさった。

ラルトフはルヴィリオを殺す事を最優先にしていて、
人間ではありえない事をしたゼロスは目に見えていないらしい。


「氷結の鋭利!」



ゴォオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!



ルヴィリオの周りに現れた氷柱の群れが
鋭くラルトフめがけて突進していく。
両手を広げたラルトフは虚無でそれを消し去ろうとする。

―――……ん?

ふとゼロスは眉をひそめた。

―――あいつから攻撃したのは初めて見るな……

これまでに何回かルヴィリオが呪文を唱えずに魔法を使う所を
見てきたゼロスだったが、ルヴィリオは今まで
“自分が攻撃をされてから”魔法を使っていたはずだ。
だがルヴィリオは今の攻撃は自分からしかけた。

―――別に深く気にする事でも、ない、か?

辺りはラルトフの怒りの気配が充満している。
それに比例するように瘴気がしだいに濃くなっていく。


「はああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」





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