◆−異邦の彼方より (29)−棒太郎 (2004/4/13 10:45:45) No.29815
 ┗異邦の彼方より (30)−棒太郎 (2004/4/13 18:47:27) No.29816
  ┗完結おめでとうございます&お疲れさまでした−エモーション (2004/4/14 00:11:37) No.29820
   ┗今回も長い道のりでした−棒太郎 (2004/4/14 23:16:36) No.29825


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29815異邦の彼方より (29)棒太郎 2004/4/13 10:45:45


こんにちは、棒太郎です。
ツリーが下のほうまで来てるので、新たに立てます。
一応予定では今回を入れて、後2回で完結です(あくまで予定)
それでは続きをどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (29)


旧王家の無念の叫び、怨念を受け継いだゴットフリード。
その力によるものか、現れた思念体”イドの怪物”を断つためにジゴマの櫃から3つの影が飛び出でた。
カラミティ、ベル=ベージュ、クロックワーク―――――
いずれもかつてリナたちを苦しめた手練れであった。
しかし、魔鳥の如くゴットフリードへ向かう3人の前にひとつの影が立ち塞がった。
「”契約”により力を貸すことになってますからね」
そう言って影――タイタスはニッと笑った。
そのタイタスへ向かってカラミティが指を突き出した。
あらゆるものを弾き、また抉るカラミティの”死指”―――だが、
「これはこれは。芸が細かいですね」
感心したように声をかけるタイタスが、いつの間にかその手に剣を握り刃の腹を正眼に見せていた。
カラミティの”死指”はそれに防がれた。
その剣は刃渡りが悠に2メートルは越える異様な長さの剣だった。
だが、間髪入れずベル=ベージュのレイピアがタイタスに襲い掛かった。
神速とも言える脅威的な疾さの刺突――”死の閃光”
それが違わずタイタスの眉間・喉・心臓とほぼ同時に3ヶ所を貫いた。
「!?」
しかし貫いた瞬間、タイタスの姿が掻き消すように消えた。残像であった。
「なかなかよく出来てますね」
ベル=ベージュの背後からタイタスの声が聞こえた。
ベル=ベージュが振り返り、刺突を放とうとしたときには、タイタスの姿はまたその後ろに立っていた。
そして動こうとしたベル=ベージュの両腕がゴトリと地面に落ちた。
それを確認する間もなく、今度は首と胴が崩れるように地面に落ちた。
「な―――」
ゼルガディス達は絶句していた。
再びカラミティが襲い掛かるが、”死指”を繰り出したと同時に、タイタスの姿はその背後にあった。
振り向いたときには、タイタスは別のところに立っていた。
そこへクロックワークが攻撃を仕掛けるが、そのときにはタイタスは大きく間合いの離れたところにいた。
そしてパチンと指を鳴らすや、カラミティとクロックワークの身体は真っ二つに割れた。
(疾い―――なんてものじゃない・・・・・なんて奴だ・・・・・・)
リュウゼンの剣技とはまた別の、恐るべき超加速剣法にゼルガディスは戦慄した。
「おやま、あの3人がこうも簡単にあしらわれちまうなんて。なかなかの御方でございますね」
ジゴマが感心したように言った。
「それにその剣。ただの剣じゃございませんね。伝説の剣と言われる類のものに負けず劣らずの逸品ですな」
「これが僕の愛剣”グレンキャリバー”――――天空より落ち来たる星の欠片を鍛えて打ち出した剣です」
そう言ってタイタスはグレンキャリバーをかざした。かつてガウリイが所持していた光の剣に劣らぬ、もしかしたらそれ以上の力のオーラがあった。
このグレンキャリバーとタイタスの超加速剣法―――ゼルガディスには攻め込む糸口すら見出せないでいた。
そのとき、ゴットフリードの近くでキィンと高い音がした。
「ふむ、やっぱり駄目だったか」
やれやれと呟くジゴマの視線の先には、対峙するリュウゼンとフー・マンチューの姿があった。
「あの3人は陽動だと思ってましたよ。今の手持ちのカードの中では彼が最強なんじゃないですか?」
「まあ、最初に戦力不足と言ってますからねぇ。リュウゼンさんはあの御老人に取られちまうとは思ってましたから」
ジゴマがお手上げと言うように肩を竦めた。どうやら今のところ出せる有効なカードはすべて出してしまったようだ。
「けど、それでもやらなくちゃならないんでな」
「タイタス殿・・・・・我々もここで諦めるわけにはいかんのだ」
「そうです!私たちは諦めません」
ゼルガディス、フィリオネル、アメリアはきっぱりと言った。
ジゴマは「ほぅ」と呟きながら愉しげに3人を見つめ、タイタスも3人に微笑ましい、満足げな笑みを浮かべていた。
「やはり貴方がたはそう仰ると思ってましたよ」
そのとき―――

「ゴットフリード様!!」

入り口近くに陶器の人形のような白い肌のメイドに連れられたサナの姿があった。
「サナさん・・・・・・」
「ゴットフリード様!もうやめてください!わたしは詳しいことは分かりませんけど、でもこんなことはやっぱり――――」
叫ぶサナの前にいくつかの影が向かおうとしていたが、その影に向かってタイタスが鋭い叱責を放った。
「わたし、バカだから上手く言えませんけど・・・・・・・あのとき、ゴットフリード様の御恩に報いようと思ってプレートを取りました。でも、やっぱり何か違うと思います。なにより復讐を成し遂げたところで、ゴットフリード様自身が報われるとは思えません!!」
サナの悲痛ともいえる叫びが響いた。
「そうです!ゴットフリードさん!復讐と言ってましたけど、でもずっと――今でも迷っているんじゃないですか!?」
アメリアも叫んだ。
その言葉にゴットフリードの身体がピクリと揺れた。
「サナ・・・・・アメリア様・・・・・・・」
「アーデンハイル卿・・・・・・アルティシアを護ってやれなかったワシが言えた義理ではないが・・・・・・・それでもあれの想いは護ってやりたい。同じ志としてもう一度歩めぬか?」
「フィリオネル王子・・・・・・・・・しかし・・・私は――――」
そのとき、幾つもの”イドの怪物”が現れた。
『黙れ!』
『黙れ!』
『貴様ら如きが永きに渡る我らの悲憤―――』
『蔑するかっ!外道!!』
空気を震わすような、地の底から響くような『声』が響き渡った。
凄まじいまでの殺気が吹き荒れ、ぶつかってきた。
「もはや!何もかもが遅すぎたのです!!我が身が煉獄の業火で灼かれることなど覚悟の上!!私はホーエンハルムの、旧王家の末裔として!今ここに先人達の思いを成し遂げるっ!!!」
振り切るようなゴットフリードの叫びが響き渡った。
それを聞き、タイタスはひとつ小さく息をついた。
「アーデンハイル卿っ!!」
「ゴットフリードさん!!」
フィリオネルとアメリアの声が響く中、ゼルガディスも”イドの怪物”に向かって剣を構える。
しかし、ここは異世界である。魔法を使おうにも法則の異なる此処では使うことができない。
絶体絶命か―――そう思ったとき、
「ふむ・・・・・ひとつ手がねぇこともねぇな」
なにやら考え込んでいたらしいジゴマがポツリと呟いた。
「しかしまあ、あのお姫様のことになると甘くなっちまうなぁ」
苦笑しながら、ジゴマはフィリオネルに近づいていった。
「フィリオネル王子――――」
「ん?ジゴマ殿――――」
「ごめんなすって」
そう言うと、ジゴマは飛び上がり脳天から真っ逆さまに落ちてきた。そのまま蓋の開いた櫃がフィリオネルをスッポリと呑みこんだ。
「ジゴマ―――っ!?」
「ちょいとデータが足りませんのでね」
そう言うや、くるりと廻り櫃の陰に姿が隠れた―――と思いきや入れ替わりにフィリオネルが姿を現した。
「む―――これは・・・・・一体・・?」
フィリオネルにしても何が起こったのか分からなかった。
そのとき、”イドの怪物”の咆哮が響き渡った。
ゼルガディス達がそれに構え、”イドの怪物”も襲い掛かろうとしたとき―――

「おやめください」

凛とした声が清流のように響いた。
皆が―――特にアメリア、フィリオネル、ゴットフリードがハッとなった。
記憶と想い出にある懐かしい声。
そちらのほうに目を向けると、想い出を揺さぶるように、そこに確かにその声の主が立っていた。
「あ・・・貴女様は―――――」
「ア、アルティシア――――?」
それは今は亡きフィリオネルの妻、そしてアメリアの母でもあるアルティシアその人であった。


*************************************

続きでした。
予定通り次で完結できそうです。
でも「予定は未定」ということばもあるのでどうなるかはわかりませんが・・・
それではまた次回。

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29816異邦の彼方より (30)棒太郎 2004/4/13 18:47:27
記事番号29815へのコメント

棒太郎です。
ここまで来たら一気に行きます。


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『異邦の彼方より』 (30)



  ――――人間は努力する限り迷うものだ――――

  ――――よい人間はたとえ暗い衝動に促されても、正しい道を忘れることはない――――
  
         ゲーテ 『ファウスト』




「おやめください」

凛とした声が静かに、だがはっきりと響き渡った。
そこには今は亡きフィリオネルの妻、そしてアメリアの母でもあるアルティシアが、生前と変わらぬ姿で立っていた。
「ア・・・・アルティシア様・・・・・・・」
その姿を認めたゴットフリードが呆然と呟いた。
「もう・・・・おやめください。アーデンハイル卿。憎しみは・・・・憎しみしか呼びません・・・・・・・」
アルティシアが静かに言葉を紡いだ。
「口先だけの奇麗事とお思いになるでしょう。しかし、憎しみに駆られ、それに縛られ道を失うのは・・・・・・哀しいではありませんか・・・・・・」
「し、しかし・・・・・・・・・」
アルティシアの言葉のひとつひとつが染み渡るように響いてくる。ゴットフリードだけでなく、アメリアも、フィリオネルも、ゼルガディスも皆心を揺さぶられた。
「ましてや私の所為で、貴方が自分の人生を縛り付けるなど―――」

『黙れっ!!』

突如、烈風の如き殺気が吹き荒れた。
『おのれ!貴様は我らを裏切るか!!』
『我らが悲憤――蔑するか!!』
またもや『声』が響き渡った。
『我らを愚弄するか!!』
「タ、タイタスッ!!」
先程以上に懊悩の色を浮かべながらも、苦痛の声をあげてゴットフリードはタイタスの名を呼んだ。
ひとつ溜息をつくと、タイタスはグレンキャリバーを構えた。
「そこか」
一瞬にしてタイタスの姿が消えたかと思うと、皆から離れた場所でドサリと何かが地面に落ちる音が聞こえた。
見ると、そこに人の両腕が落ちていた。
その腕から少し離れたところに、ジゴマがすたりと降り立った。もちろん彼の両腕はなかった。
それと同時にアルティシアの人形は糸が切れたように崩れ落ちた。
「流石、見事なものですね。第三者の僕ですら心揺さぶられましたよ」
「そいつぁどうも」
両腕が斬り落とされたにも関わらず、ジゴマは変わらぬ笑みを浮かべていた。
「しかし・・・・・・これで本当に手詰まりですかね」
「左様で―――」
別段困惑した風もなく淡々とジゴマは言った。
「これで―――これですべてを終わらせます!!」
「やめよ!!アーデンハイル卿!!」
フィリオネルが叫んだ。
「おぬしがそうなれば!アルティシアの想いは報われぬ!!それではあまりにも――――」
「―――っ!問答無用!!」
「むう――――」
苦渋の色を浮かべてひとつ唸ると、フィリオネルはマントを脱ぎ捨てた。
「ゼルガディス殿。後は頼みましたぞ。」
「と、父さんっ!?」
「フィル王子!?あんたまさか―――」
アメリアとゼルガディスの声を振り切り、フィリオネルはゴットフリードに向かっていった。
「我が命に換えて、おぬしを止めてみせる!!」
そのフィリオネルへ向かって、”イドの怪物”たちの牙が襲い掛かった。
「父さんっ!!」
そのとき―――

 ガッ!

”イドの怪物”の牙は、フィリオネルの前に立った影に食い込んだ。
「な―――――!?」
一同が驚きに包まれた。
フィリオネルの前に立っていたのは、あのアルティシアの人形であった。
その瞳には先程と同じく優しい光が宿っていた。
ゼルガディスはジゴマのほうを振り向いた。それに気付いたジゴマは首を軽く横に振った。
今目の前に起こっていることはジゴマのからくりではない。
「我ら旧王家の永きに渡る悲憤―――確かに容易に解かせるものでありません・・・・・・・・でももう終わりにしましょう。忘れろ―――とは言いません。しかし残された子孫を縛り付けるのではなく、新たな道を行かせることをしなくてはなりません。彼らの人生は彼らのものなのですから」
アルティシアはそう言うと、懐に受け入れるかのように両腕を広げた。
「さあ、共に行きましょう。安らかな眠りへ」
周りに吹き荒れていた殺気がアルティシアに向かって吸い込まれていった。
『う、うおおおぉおぉぉ――――』
”イドの怪物”たちの思念も次々とアルティシアの中に吸い込まれている。
「穢れの祓いか―――」
ジゴマが呟いた。
「なるほど・・・・・古来より人を模った形代にその者の身代わりに穢れを集め、祓い清めた。それが人形を祭る原点だということでしたね。今、あの人は自身の身にそれを行っているわけですか」
ジゴマの言葉を受け、タイタスも今の事態を理解した。
抗うかのように思念は暴れ狂い、石舞台が次々と崩れだす。その下は地の果ての見えぬ奈落のような闇が広がっていた。
だが、アルティシアの身に思念・殺気が吸い込まれていった。それに呼応するかのようにアルティシアの身体にも次々に細かなひびが入っていった。
「アルティシア!!」
叫ぶフィリオネルのほうを、アルティシアが振り向いた。
「あなた・・・・・・私は幸せでしたよ・・・・・・あなたと一緒で・・・・・」
「ア、アルティシア・・・・・」
「御自分を責めないで下さい・・・・・・私は、何一つ後悔していません・・・」
そう言い、アルティシアは優しく微笑んだ。
「母さんっ!」
アメリアも側へやって来た。
「アメリア・・・・・強い子に育ちましたね・・・・・・・これから先も厳しいことや辛いことはたくさんあるでしょうけど・・・・・・・貴女なら決して挫けることはないでしょう・・・・・・・アメリア・・・・グレイシアとともに・・・・幸せに・・なりなさい・・・・・・」
そのとき、アルティシアの足元の床が崩れ落ちた。
アルティシアはそのまま、果ての見えぬ闇の向こうへと落ちていった。
「母さーーーんっ!!」
アメリアが叫びよった時、
『ウ・オオオ・オオオオオオ』
最後の足掻きといわんばかりに、思念の一部が襲い掛かった。
「アメリアッ!!」
ゼルガディスがアメリアを庇う。その爪がゼルガディスの身体を傷つけた。
「くっ!」ゼルガディスが剣を構えようとした時、ジゴマがその前に立った。
思念の爪はジゴマの身体を貫き、そのまま地の底へとともに落ちていった。
「ジゴマッ!?」
「ジゴマさん!?」
崩れた先から覗き込んだとき、小さくなったジゴマの姿が見えた。いつものような変わらぬ笑みを浮かべていた。だが、それも次の瞬間には闇の向こうへと消えた。
すべてが終わり、また辺りは静寂に包まれた。
ゴットフリードは力なく膝をついていた。が、やがて―――
「タイタス・・・・・・」
「なんでしょう?」
「すまないが、この契約・・・・・無効にしてくれないか」
その言葉に、アメリアやサナは喜びの表情を見せた。
「私とて・・・・・・これ以上死者の想いを冒涜することはできない・・・・・」
その言葉にタイタスは満足そうな笑みを浮かべた。


その後、ゼルガディスたちは案内人によって自分達の世界へと戻っていた。
ゴットフリードはいかな処分も受けると言って、中央に重要参考人として召喚されることを望んだ。フィリオネルもその意思を汲み取り、合意した。
「タイタス・・・・・・お主、策士よの」
フー・マンチューがニヤリと笑いながら言った。
「何がです?」
「惚けるな。ゴーメンガーストの当主としては干渉できぬから、あのお嬢ちゃんやサナという女子を介したんじゃろ。でなくばあそこへ連れて行くものかよ」
「そこらへんはご想像におまかせしますよ――――どうしました?」
「いや、旧王家と契約を結んだ当時の当主もお主と同じような小憎たらしい奴だったんじゃろうなと思うてな」
ひょ、ひょ、ひょとフー・マンチューが笑った。


街道を少人数の隊列が進んでいた。
中央にはゴットフリードとアルベルトの姿があった。
セイルーンの王宮へ向かう護送の途中であった。
その護送隊の前に人影が立ち塞がった。あの”黒狩人”であった。
だが、黒狩人は力なく地面に倒れこんだ。
「はい、これでお終い、と」
そう声がし、フレアスカートをたなびかせ、バスケットケースをもった少女が現れた。
「こ、これは・・・・・君が・・・・・?」
警戒しながらもアルベルトが少女に問いかけた。
「そ♪貴方達を待ち伏せしてたみたいだからね。ちょっと露払いさせてもらったわ」
「君は・・・・生きていたのか・・・・・・?」
ゴットフリードも呆然とした声を上げる。そのとき―――
「エ・・・・エルマさん・・・・・?」
後方から、驚きに包まれた呆然とした声が聞こえてきた。
「やっほ♪お姫様」
少女――エルマはアメリアに無邪気に挨拶した。
「エルマさーーーん!!」
アメリアがエルマに飛びついた。胸の中で喜びに泣きじゃくるアメリアの頭を、よしよしと撫でる。
「しかし・・・・どうして・・・・・」
ゼルガディスも驚きの色を隠せない。
「ん〜〜〜〜〜、ま、よく分からないんだけどさ。あの怪しげな黒子がさ、私をいじくったみたいなのよね。おかげで前とは違う人間になっちゃったけどさ―――」
そう言い、優しくアメリアを見つめた。
「前より少ぅし、人の心・人の道ってものが分かるようになったわ」
ニッコリと笑みを浮かべた。
久方ぶりにアメリアに大輪のような笑顔が戻った。
それを見たゼルガディスも、小さくだが微笑ましく笑った。










セイルーン王宮の執務室―――
そこにバルトロメオが書類を手にしながら椅子に腰掛けていた。
「どうあっても、アーデンハイルは排除しておかねば。この好機を逃す手はない」
ゴットフリードに関する書類を投げ出し、呟いた。
「フィリオネル王子は納得なさらぬだろうが、我らは国家治安のための必要悪よ」
「ご大層な大義名分ですね」
突如、別の声が部屋に響いた。
「なっ!?だ、誰だ!?」
見るといつの間にか部屋の扉の前に、豪奢な礼服を着た一人の青年が立っていた。
「旧王家のものに代わり、やって来た怨念の使者ですよ」
バルトロメオは兵を呼ぼうとしたが、呼び鈴を鳴らす前にいつの間にか目の前に立っている青年にその手を捕まれた。
「かつて現王家が旧王家を滅ぼした折、一部に裏切り者がいたそうですが。それが貴方の先祖だと言う話ですねぇ。バルトロメオさん?」
青年がニィッと笑うや、ゴキリと手首が折られた。
「があぁっ!!」
「ゴットフリードさんに対する早急すぎる処断。国家治安を司る者としてもいささか強引過ぎやしませんか?貴方は恐れていたんでしょう。もし、プレートを手にされたら真っ先にその復讐の刃を向けられるのは自分だ、と―――」
青年がジッとバルトロメオを見据えた。
「これ以上、彼らに手出しはさせませんよ。鎖を解かれ、新たな道を行く彼らのね」


「ん?終わったか、タイタス」
王宮の中庭で煙管を吹かしていたフー・マンチューがやって来たタイタスに訊ねた。
「ええ、始末しておきました。まあ、アルティシアさんは望まないことでしょうが」
執務室では、何らかの手段によって発狂させられたバルトロメオが虚ろな瞳を宙に向けていた。
「なに、これであそこに居った旧王家の者達の想いも少しは報われるじゃろうて」
「これで取り敢えずは一件落着ですか。ゴットフリードさんもまたもとの領地に帰るし」
「一番情報を持った奴がああなってしまってはの。まだ極僅かしか知らなんだのが幸いしたの」
「フィリオネル王子も寛大な処置を下してくれると思いますしね」
「ま、結果的には元の鞘に納まった、ということかの」
ただ、憑き物が落ちたので前より少しマシかの――フー・マンチューは呟いた。
「僕達も神じゃありませんからね。これからのことはあの人たちが創っていくものですよ」
では帰りますか―――タイタスがひとつ伸びをしてそう言った。
「わしゃ、もうしばらくうろついてから帰るわい。おぬしもそうしたらどうじゃ?確かゼフィーリアはここからいけん距離でもあるまい?」
「いえ、それはいいですよ。いきなり押しかけてはあの人の迷惑になります」
「そんなこと言って、新しい男ができとったらというのが怖いんじゃろ?」
「フー大人、いくら僕でもしまいにゃ怒りますよ」
明るい星空の下、フー・マンチューの愉しげな笑い声が響いた。




  ――――どうして今までこの高い空が目に入らなかったのだろう?でも、やっと気付いて、おれは実に幸福だ。そうとも!この果てしない空のほかはすべてが虚しく、すべてが欺瞞なのだ。この空意外には何一つ、何一つ存在しないのだ・・・・・・――――

        トルストイ 『戦争と平和』


*************************************

ようやく完結です。
長かった・・・・・・・・・・
色々あるでしょうが、ひとまずは万々歳です。
ジゴマのことは誰も心配してません。またどこかでひょっこりと変わらぬ笑みを浮かべながら現れると思ってます。
あと、タイタスの想い人はご想像にお任せします。
それではここまで読んでくださった方々、どうもありがとうございました。

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29820完結おめでとうございます&お疲れさまでしたエモーション E-mail 2004/4/14 00:11:37
記事番号29816へのコメント

棒太郎様、こんばんは。

タイトルにも書きましたが、完結、おめでとうございます&お疲れさまでした。

ゴットフリードさんの身に宿った怨念を鎮めたのは、アルティシアさんの同胞としての言葉と、
呪縛を断ち切ろうとする強い意志。そして夫や子どもに対する愛情……。
尚かつ、〃人形〃が大きなポイントになっているのに、感嘆しました。
ジゴマさんのからくりは本当に……使い方次第なのですね。


>ベル=ベージュが振り返り、刺突を放とうとしたときには、タイタスの姿はまたその後ろに立っていた。
>そして動こうとしたベル=ベージュの両腕がゴトリと地面に落ちた。
>それを確認する間もなく、今度は首と胴が崩れるように地面に落ちた。
>「な―――」
>ゼルガディス達は絶句していた。
>再びカラミティが襲い掛かるが、”死指”を繰り出したと同時に、タイタスの姿はその背後にあった。
>振り向いたときには、タイタスは別のところに立っていた。
>そこへクロックワークが攻撃を仕掛けるが、そのときにはタイタスは大きく間合いの離れたところにいた。
>そしてパチンと指を鳴らすや、カラミティとクロックワークの身体は真っ二つに割れた。

リナ達が苦戦した、あのカラミティさんたち三人があっさりと……(汗)
さすがに総大将だけあって、タイタスさんも無茶苦茶強いですね。
ゴットフリードさんのお屋敷で戦っていたときは、あれでもかなり手加減していたのですね(汗)

>「それにその剣。ただの剣じゃございませんね。伝説の剣と言われる類のものに負けず劣らずの逸品ですな」
>「これが僕の愛剣”グレンキャリバー”――――天空より落ち来たる星の欠片を鍛えて打ち出した剣です」

斬鉄剣……すみません。一瞬、そんな代物を連想してしまいました(^_^;)
確か、あれもそんな設定だったような記憶があったので、つい。

>やれやれと呟くジゴマの視線の先には、対峙するリュウゼンとフー・マンチューの姿があった。
>「あの3人は陽動だと思ってましたよ。今の手持ちのカードの中では彼が最強なんじゃないですか?」
>「まあ、最初に戦力不足と言ってますからねぇ。リュウゼンさんはあの御老人に取られちまうとは思ってましたから」

やはりリュウゼンさんが出てくると、フー・マンチューさんが相手をするのですね。
ロペティさんたちはグレイシア様の護衛になってましたから、確かに戦えるのは
限られますよね。……ここで、リナやガウリイの人形を出してたら、ゼルやアメリアの目が
点になっていたのかも、と思いました。……でも倒されるのは見たくないでしょうね。

>「ゴットフリード様!もうやめてください!わたしは詳しいことは分かりませんけど、でもこんなことはやっぱり――――」
>叫ぶサナの前にいくつかの影が向かおうとしていたが、その影に向かってタイタスが鋭い叱責を放った。
>「わたし、バカだから上手く言えませんけど・・・・・・・あのとき、ゴットフリード様の御恩に報いようと思ってプレートを取りました。でも、やっぱり何か違うと思います。なにより復讐を成し遂げたところで、ゴットフリード様自身が報われるとは思えません!!」
>サナの悲痛ともいえる叫びが響いた。

ゴットフリードさんのために、と思った行動が、ゴットフリードさんを結果的に
追いつめて苦しめる事にしかなっていないのでは、サナさんとしては辛いだけですよね。
大好きな人には幸せになって貰いたい、そんなサナさんの気持ちが分かります。

>凛とした声が清流のように響いた。
>皆が―――特にアメリア、フィリオネル、ゴットフリードがハッとなった。
>記憶と想い出にある懐かしい声。
>そちらのほうに目を向けると、想い出を揺さぶるように、そこに確かにその声の主が立っていた。
>「あ・・・貴女様は―――――」
>「ア、アルティシア――――?」
>それは今は亡きフィリオネルの妻、そしてアメリアの母でもあるアルティシアその人であった。

手段が手探り状態の中でも、アメリアとフィルさんを助けようと構えるゼルと、
何やら方法を思いついたジゴマさん。
フィルさんを櫃に入れて何をするのか、と思いきや……。
何やら真打ち登場という感じです。

>突如、烈風の如き殺気が吹き荒れた。
>『おのれ!貴様は我らを裏切るか!!』
>『我らが悲憤――蔑するか!!』
>またもや『声』が響き渡った。
>『我らを愚弄するか!!』

さすがに、アルティシアさんが主家筋の者だとは分かるのですね。
止める言葉に反発はしていますが……それでもこれ以上ないくらい〃彼ら〃は
ダメージを受けているように思えます。
まるで動じていないのなら、何も言わないでしょうから。

>その腕から少し離れたところに、ジゴマがすたりと降り立った。もちろん彼の両腕はなかった。
>それと同時にアルティシアの人形は糸が切れたように崩れ落ちた。
>「流石、見事なものですね。第三者の僕ですら心揺さぶられましたよ」
>「そいつぁどうも」
>両腕が斬り落とされたにも関わらず、ジゴマは変わらぬ笑みを浮かべていた。

さすがと言いますか……。ジゴマさん。手を切られても平然としていますね。
ちょっと困ったな、くらいにしか思っていなさそうです。

>「むう――――」
>苦渋の色を浮かべてひとつ唸ると、フィリオネルはマントを脱ぎ捨てた。
>「ゼルガディス殿。後は頼みましたぞ。」
>「と、父さんっ!?」
>「フィル王子!?あんたまさか―――」
>アメリアとゼルガディスの声を振り切り、フィリオネルはゴットフリードに向かっていった。
>「我が命に換えて、おぬしを止めてみせる!!」

本当に、立派な方ですフィルさん……。
〃彼ら〃の恨み憎しみの対象である自分がすべてを引き受けて、ゴットフリードさんを
解放しようとしているのですね。
そして一番気がかりなアメリアのことは、ゼルに頼むと。
はっ! これはもしや伝説の「娘を頼む」攻撃←勝手に解釈(笑)
何にせよ、ゼルをとても信頼しているのですね。

>”イドの怪物”の牙は、フィリオネルの前に立った影に食い込んだ。
>「な―――――!?」
>一同が驚きに包まれた。
>フィリオネルの前に立っていたのは、あのアルティシアの人形であった。
>その瞳には先程と同じく優しい光が宿っていた。
>ゼルガディスはジゴマのほうを振り向いた。それに気付いたジゴマは首を軽く横に振った。
>今目の前に起こっていることはジゴマのからくりではない。

ジゴマさんの人形が、からくりと関係なく見せる〃想い〃故の行動……。
それが表に出るのは、いつもギリギリの状態だからというのもあるのでしょうけれど、
本当に切なくて、強い想いを感じさせます。

>「さあ、共に行きましょう。安らかな眠りへ」
>周りに吹き荒れていた殺気がアルティシアに向かって吸い込まれていった。
>『う、うおおおぉおぉぉ――――』
>”イドの怪物”たちの思念も次々とアルティシアの中に吸い込まれている。
>「穢れの祓いか―――」
>ジゴマが呟いた。
>「なるほど・・・・・古来より人を模った形代にその者の身代わりに穢れを集め、祓い清めた。それが人形を祭る原点だということでしたね。今、あの人は自身の身にそれを行っているわけですか」
>ジゴマの言葉を受け、タイタスも今の事態を理解した。

もしかしたら〃アルティシアさん〃は、作られたと同時に、最終的には
こうするつもりだったのかな、と思いました。
ジゴマさんに作られた〃人形〃であっても、アルティシアさん本人と同じ思考、
行動をするのですから。〃人形〃である自分を、最大限に有効に使うつもりだったのかも、と。
文字通り、捨て身で呪縛を断ち切り、大切な人達を護ったのですね。

>「アルティシア!!」
>叫ぶフィリオネルのほうを、アルティシアが振り向いた。
>「あなた・・・・・・私は幸せでしたよ・・・・・・あなたと一緒で・・・・・」
>「ア、アルティシア・・・・・」
>「御自分を責めないで下さい・・・・・・私は、何一つ後悔していません・・・」
>そう言い、アルティシアは優しく微笑んだ。
>「母さんっ!」
>アメリアも側へやって来た。
>「アメリア・・・・・強い子に育ちましたね・・・・・・・これから先も厳しいことや辛いことはたくさんあるでしょうけど・・・・・・・貴女なら決して挫けることはないでしょう・・・・・・・アメリア・・・・グレイシアとともに・・・・幸せに・・なりなさい・・・・・・」

妻として、そして母としての、この言葉……。アルティシアさんが何よりも、
伝えたかった言葉が、やっと伝えられたのでしょうね。

>『ウ・オオオ・オオオオオオ』
>最後の足掻きといわんばかりに、思念の一部が襲い掛かった。
>「アメリアッ!!」
>ゼルガディスがアメリアを庇う。その爪がゼルガディスの身体を傷つけた。
>「くっ!」ゼルガディスが剣を構えようとした時、ジゴマがその前に立った。
>思念の爪はジゴマの身体を貫き、そのまま地の底へとともに落ちていった。
>「ジゴマッ!?」
>「ジゴマさん!?」
>崩れた先から覗き込んだとき、小さくなったジゴマの姿が見えた。いつものような変わらぬ笑みを浮かべていた。だが、それも次の瞬間には闇の向こうへと消えた。

実は一番意外に思えたジゴマさんの行動……。←酷い(笑)
ゼルというより、アメリアとアメリアにとって大切な者を、とっさに護ってしまったのでしょうか。
ジゴマさん。自分でも気づかずに、かなりアメリアが気に入っていたのかもしれませんね。
作者が特定のキャラを特に気に入った、という感じなのでしょうけれど。

>「惚けるな。ゴーメンガーストの当主としては干渉できぬから、あのお嬢ちゃんやサナという女子を介したんじゃろ。でなくばあそこへ連れて行くものかよ」
>「そこらへんはご想像におまかせしますよ――――どうしました?」
>「いや、旧王家と契約を結んだ当時の当主もお主と同じような小憎たらしい奴だったんじゃろうなと思うてな」
>ひょ、ひょ、ひょとフー・マンチューが笑った。

連れてきたのは案内人でも、選別は何気にタイタスさんの無意識の人選に、
沿っていたのかもしれませんね。
また、当時の当主は確かに同じような方だったのかも、とフー・マンチューさんの意見に
同意します。きっと、その方も放浪癖(笑)があったのでしょう! ←勝手に断言。

>アメリアがエルマに飛びついた。胸の中で喜びに泣きじゃくるアメリアの頭を、よしよしと撫でる。
>「しかし・・・・どうして・・・・・」
>ゼルガディスも驚きの色を隠せない。
>「ん〜〜〜〜〜、ま、よく分からないんだけどさ。あの怪しげな黒子がさ、私をいじくったみたいなのよね。おかげで前とは違う人間になっちゃったけどさ―――」
>そう言い、優しくアメリアを見つめた。
>「前より少ぅし、人の心・人の道ってものが分かるようになったわ」
>ニッコリと笑みを浮かべた。
>久方ぶりにアメリアに大輪のような笑顔が戻った。
>それを見たゼルガディスも、小さくだが微笑ましく笑った。

エルマさん、復活。
違う人間……って、ジゴマさんが一体何をしたのか、少々不安はありますが、
アメリアと一緒にいる限り、「いじくった」部分が表面に出ることは、そうない気がします。
久しぶりのアメリアの笑顔に、ゼルもほっとしていますね。

>「かつて現王家が旧王家を滅ぼした折、一部に裏切り者がいたそうですが。それが貴方の先祖だと言う話ですねぇ。バルトロメオさん?」
>青年がニィッと笑うや、ゴキリと手首が折られた。
>「があぁっ!!」
>「ゴットフリードさんに対する早急すぎる処断。国家治安を司る者としてもいささか強引過ぎやしませんか?貴方は恐れていたんでしょう。もし、プレートを手にされたら真っ先にその復讐の刃を向けられるのは自分だ、と―――」
>青年がジッとバルトロメオを見据えた。
>「これ以上、彼らに手出しはさせませんよ。鎖を解かれ、新たな道を行く彼らのね」

国の影の部分担当とは言っても、王家の決定よりも先に、どんどん行動するなど、
変に独断専行な部分が気になっていたら……しっかり関係者だったのですね、バルトロメオさん……。
国のためというのは、まったく嘘でもないけれど、実質的にはそれを隠れ蓑にして、
自分のために行動していたわけですね。
そしてさらに邪魔にしかならないことをしようとする……。
タイタスさんじゃなくても、確かに手出しさせたくないですね。
その後のバルトロメオさんの状態には……まあ、因果応報というところでしょうか。
一体何があったのだろうとは思いますが(汗)

>「わしゃ、もうしばらくうろついてから帰るわい。おぬしもそうしたらどうじゃ?確かゼフィーリアはここからいけん距離でもあるまい?」
>「いえ、それはいいですよ。いきなり押しかけてはあの人の迷惑になります」
>「そんなこと言って、新しい男ができとったらというのが怖いんじゃろ?」
>「フー大人、いくら僕でもしまいにゃ怒りますよ」
>明るい星空の下、フー・マンチューの愉しげな笑い声が響いた。

当主だろうが何だろうが、フー・マンチューさんには、さすがのタイタスさんも、
からかわれるだけなのですね。
想い人……「オーダーをとる第七艦隊」の異名を持つ、あのお方を連想してしまいましたが……。
でも、ゼフィーリアの人間となると、相手が誰でも不思議なさそう……。

>ようやく完結です。
>長かった・・・・・・・・・・
>色々あるでしょうが、ひとまずは万々歳です。
>ジゴマのことは誰も心配してません。またどこかでひょっこりと変わらぬ笑みを浮かべながら現れると思ってます。
>あと、タイタスの想い人はご想像にお任せします。
>それではここまで読んでくださった方々、どうもありがとうございました。

本当にお疲れさまでした。
きっちりと報いを受けるべき所には報いが行く、大団円♪
この先、まだまだ大変でしょうけれど、フィルさんとアメリア、そしてゴットフリードさんは、
力を合わせていくのでしょうし、エルマさんもまた、アメリアの傍で彼女の力に
なっていくのでしょうね。
ゼルは……きちんと物事が落ちつくのを見届けて、また旅立つのですね。
……アメリアに盛大に再会の約束させられてから(笑)
ジゴマさんは今度はどんな時に現れるでしょうか。その時は敵になるのか
味方になるのか、楽しみです。

セイルーンの闇の部分と、それに伴って人が生み出してしまう様々な〃想い〃。
簡単に割り切れるものではない故のややこしさを、読みながら考えさせられました。
難しいけれど、少しでもマイナスなだけの感情に囚われないようにしたいものです。
それでは、楽しんで読ませていただきました。
次に書かれる作品を楽しみにお待ちしています。
では、この辺で失礼します。

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29825今回も長い道のりでした棒太郎 2004/4/14 23:16:36
記事番号29820へのコメント


>棒太郎様、こんばんは。
>
>タイトルにも書きましたが、完結、おめでとうございます&お疲れさまでした。
>
>ゴットフリードさんの身に宿った怨念を鎮めたのは、アルティシアさんの同胞としての言葉と、
>呪縛を断ち切ろうとする強い意志。そして夫や子どもに対する愛情……。
>尚かつ、〃人形〃が大きなポイントになっているのに、感嘆しました。
>ジゴマさんのからくりは本当に……使い方次第なのですね。

こんばんは、エモーションさん。
ようやく完結いたしました。
最初の段階では、人形による祓いはなかったんですが、途中でひな祭りの原点を思い出し、そうしようと思いました。


>>そこへクロックワークが攻撃を仕掛けるが、そのときにはタイタスは大きく間合いの離れたところにいた。
>>そしてパチンと指を鳴らすや、カラミティとクロックワークの身体は真っ二つに割れた。
>
>リナ達が苦戦した、あのカラミティさんたち三人があっさりと……(汗)
>さすがに総大将だけあって、タイタスさんも無茶苦茶強いですね。
>ゴットフリードさんのお屋敷で戦っていたときは、あれでもかなり手加減していたのですね(汗)

グレンキャリバーと超加速剣法の双璧ですから、かなりの腕前です。

>>「それにその剣。ただの剣じゃございませんね。伝説の剣と言われる類のものに負けず劣らずの逸品ですな」
>>「これが僕の愛剣”グレンキャリバー”――――天空より落ち来たる星の欠片を鍛えて打ち出した剣です」
>
>斬鉄剣……すみません。一瞬、そんな代物を連想してしまいました(^_^;)
>確か、あれもそんな設定だったような記憶があったので、つい。

アニメ版はどうだったか覚えてませんが、原作のほうの刀、「流星」は隕石を鍛えた刀です。

>>「まあ、最初に戦力不足と言ってますからねぇ。リュウゼンさんはあの御老人に取られちまうとは思ってましたから」
>
>やはりリュウゼンさんが出てくると、フー・マンチューさんが相手をするのですね。
>ロペティさんたちはグレイシア様の護衛になってましたから、確かに戦えるのは
>限られますよね。……ここで、リナやガウリイの人形を出してたら、ゼルやアメリアの目が
>点になっていたのかも、と思いました。……でも倒されるのは見たくないでしょうね。

タイタスにリュウゼンはこっちに譲るように言ってますので。
流石にタイタスほどの者になると、対抗できそうな人形も限られてきます。

>>「わたし、バカだから上手く言えませんけど・・・・・・・あのとき、ゴットフリード様の御恩に報いようと思ってプレートを取りました。でも、やっぱり何か違うと思います。なにより復讐を成し遂げたところで、ゴットフリード様自身が報われるとは思えません!!」
>>サナの悲痛ともいえる叫びが響いた。
>
>ゴットフリードさんのために、と思った行動が、ゴットフリードさんを結果的に
>追いつめて苦しめる事にしかなっていないのでは、サナさんとしては辛いだけですよね。
>大好きな人には幸せになって貰いたい、そんなサナさんの気持ちが分かります。

盲目的ではないところが偉いところです。
何が大切なのかきちんと考えています。

>>「あ・・・貴女様は―――――」
>>「ア、アルティシア――――?」
>>それは今は亡きフィリオネルの妻、そしてアメリアの母でもあるアルティシアその人であった。
>
>手段が手探り状態の中でも、アメリアとフィルさんを助けようと構えるゼルと、
>何やら方法を思いついたジゴマさん。
>フィルさんを櫃に入れて何をするのか、と思いきや……。
>何やら真打ち登場という感じです。

ジゴマ、最後の一手――という感じです。
以前のアメリアと今回のフィルさんから得たのを元に繰り出しました。

>>突如、烈風の如き殺気が吹き荒れた。
>>『おのれ!貴様は我らを裏切るか!!』
>>『我らが悲憤――蔑するか!!』
>>またもや『声』が響き渡った。
>>『我らを愚弄するか!!』
>
>さすがに、アルティシアさんが主家筋の者だとは分かるのですね。
>止める言葉に反発はしていますが……それでもこれ以上ないくらい〃彼ら〃は
>ダメージを受けているように思えます。
>まるで動じていないのなら、何も言わないでしょうから。

彼らにとって、意外な言葉ですから。
なんでそんなこと言うねん―――と。

>>「流石、見事なものですね。第三者の僕ですら心揺さぶられましたよ」
>>「そいつぁどうも」
>>両腕が斬り落とされたにも関わらず、ジゴマは変わらぬ笑みを浮かべていた。
>
>さすがと言いますか……。ジゴマさん。手を切られても平然としていますね。
>ちょっと困ったな、くらいにしか思っていなさそうです。

前にガウリイたちに片腕を斬り落とされても、笑ってたくらいですから。

>>「ゼルガディス殿。後は頼みましたぞ。」
>>「と、父さんっ!?」
>>「フィル王子!?あんたまさか―――」
>>アメリアとゼルガディスの声を振り切り、フィリオネルはゴットフリードに向かっていった。
>>「我が命に換えて、おぬしを止めてみせる!!」
>
>本当に、立派な方ですフィルさん……。
>〃彼ら〃の恨み憎しみの対象である自分がすべてを引き受けて、ゴットフリードさんを
>解放しようとしているのですね。
>そして一番気がかりなアメリアのことは、ゼルに頼むと。
>はっ! これはもしや伝説の「娘を頼む」攻撃←勝手に解釈(笑)
>何にせよ、ゼルをとても信頼しているのですね。

フィルさん、真に人の上に立つ人ですね。
そして人を見る目は確かなものだと思います。

>>ゼルガディスはジゴマのほうを振り向いた。それに気付いたジゴマは首を軽く横に振った。
>>今目の前に起こっていることはジゴマのからくりではない。
>
>ジゴマさんの人形が、からくりと関係なく見せる〃想い〃故の行動……。
>それが表に出るのは、いつもギリギリの状態だからというのもあるのでしょうけれど、
>本当に切なくて、強い想いを感じさせます。

精巧すぎるほど精巧なだけに、その分想いも宿ることができるのだろうと。
形を似せたものにはその魂が宿る、とよく言いますし。

>>「穢れの祓いか―――」
>>ジゴマが呟いた。
>>「なるほど・・・・・古来より人を模った形代にその者の身代わりに穢れを集め、祓い清めた。それが人形を祭る原点だということでしたね。今、あの人は自身の身にそれを行っているわけですか」
>>ジゴマの言葉を受け、タイタスも今の事態を理解した。
>
>もしかしたら〃アルティシアさん〃は、作られたと同時に、最終的には
>こうするつもりだったのかな、と思いました。
>ジゴマさんに作られた〃人形〃であっても、アルティシアさん本人と同じ思考、
>行動をするのですから。〃人形〃である自分を、最大限に有効に使うつもりだったのかも、と。
>文字通り、捨て身で呪縛を断ち切り、大切な人達を護ったのですね。

ジゴマの人形繰りの”アルティシア”は、単にゴットフリードの心を突いて止めさせようとしただけですので、これはアルティシア本人が行っていることです。

>>「あなた・・・・・・私は幸せでしたよ・・・・・・あなたと一緒で・・・・・」
>>「ア、アルティシア・・・・・」
>>「御自分を責めないで下さい・・・・・・私は、何一つ後悔していません・・・」
>>そう言い、アルティシアは優しく微笑んだ。
>>「母さんっ!」
>>アメリアも側へやって来た。
>>「アメリア・・・・・強い子に育ちましたね・・・・・・・これから先も厳しいことや辛いことはたくさんあるでしょうけど・・・・・・・貴女なら決して挫けることはないでしょう・・・・・・・アメリア・・・・グレイシアとともに・・・・幸せに・・なりなさい・・・・・・」
>
>妻として、そして母としての、この言葉……。アルティシアさんが何よりも、
>伝えたかった言葉が、やっと伝えられたのでしょうね。

ほんのわずか、再び逢えたこのときに、想いが溢れ出てきました。
確かに彼女が伝えたかった言葉でしょう。

>>「くっ!」ゼルガディスが剣を構えようとした時、ジゴマがその前に立った。
>>思念の爪はジゴマの身体を貫き、そのまま地の底へとともに落ちていった。
>>「ジゴマッ!?」
>>「ジゴマさん!?」
>>崩れた先から覗き込んだとき、小さくなったジゴマの姿が見えた。いつものような変わらぬ笑みを浮かべていた。だが、それも次の瞬間には闇の向こうへと消えた。
>
>実は一番意外に思えたジゴマさんの行動……。←酷い(笑)
>ゼルというより、アメリアとアメリアにとって大切な者を、とっさに護ってしまったのでしょうか。
>ジゴマさん。自分でも気づかずに、かなりアメリアが気に入っていたのかもしれませんね。
>作者が特定のキャラを特に気に入った、という感じなのでしょうけれど。

確かにそんな殊勝な奴じゃないですからね(笑)
けどアメリアのことを、結構気に入っていたようですので、つい行動してしまったのでしょうね。こんなことでくたばる奴でもbないでしょうが(笑)

>>「いや、旧王家と契約を結んだ当時の当主もお主と同じような小憎たらしい奴だったんじゃろうなと思うてな」
>>ひょ、ひょ、ひょとフー・マンチューが笑った。
>
>連れてきたのは案内人でも、選別は何気にタイタスさんの無意識の人選に、
>沿っていたのかもしれませんね。
>また、当時の当主は確かに同じような方だったのかも、とフー・マンチューさんの意見に
>同意します。きっと、その方も放浪癖(笑)があったのでしょう! ←勝手に断言。

当時の当主もタイタスと似たような人間だったと思います。
行動パターンまで似てると(笑)

>>「ん〜〜〜〜〜、ま、よく分からないんだけどさ。あの怪しげな黒子がさ、私をいじくったみたいなのよね。おかげで前とは違う人間になっちゃったけどさ―――」
>>そう言い、優しくアメリアを見つめた。
>>「前より少ぅし、人の心・人の道ってものが分かるようになったわ」
>>ニッコリと笑みを浮かべた。
>>久方ぶりにアメリアに大輪のような笑顔が戻った。
>>それを見たゼルガディスも、小さくだが微笑ましく笑った。
>
>エルマさん、復活。
>違う人間……って、ジゴマさんが一体何をしたのか、少々不安はありますが、
>アメリアと一緒にいる限り、「いじくった」部分が表面に出ることは、そうない気がします。
>久しぶりのアメリアの笑顔に、ゼルもほっとしていますね。

あのときジゴマが行ったことがエルマの蘇生(再生?)です。
「お前さん次第」と言っていたように、再生してどんな人間になるかはその人次第ということですが、エルマの場合はそんなにヤバイことにはなってません。

>>「ゴットフリードさんに対する早急すぎる処断。国家治安を司る者としてもいささか強引過ぎやしませんか?貴方は恐れていたんでしょう。もし、プレートを手にされたら真っ先にその復讐の刃を向けられるのは自分だ、と―――」
>>青年がジッとバルトロメオを見据えた。
>>「これ以上、彼らに手出しはさせませんよ。鎖を解かれ、新たな道を行く彼らのね」
>
>国の影の部分担当とは言っても、王家の決定よりも先に、どんどん行動するなど、
>変に独断専行な部分が気になっていたら……しっかり関係者だったのですね、バルトロメオさん……。
>国のためというのは、まったく嘘でもないけれど、実質的にはそれを隠れ蓑にして、
>自分のために行動していたわけですね。
>そしてさらに邪魔にしかならないことをしようとする……。
>タイタスさんじゃなくても、確かに手出しさせたくないですね。
>その後のバルトロメオさんの状態には……まあ、因果応報というところでしょうか。
>一体何があったのだろうとは思いますが(汗)

国のためと言うなかに、私的な部分も混じっていた訳です。
昔からなにかと押さえつけようとしていましたから。
まさしく因果応報ですね。

>>「そんなこと言って、新しい男ができとったらというのが怖いんじゃろ?」
>>「フー大人、いくら僕でもしまいにゃ怒りますよ」
>>明るい星空の下、フー・マンチューの愉しげな笑い声が響いた。
>
>当主だろうが何だろうが、フー・マンチューさんには、さすがのタイタスさんも、
>からかわれるだけなのですね。
>想い人……「オーダーをとる第七艦隊」の異名を持つ、あのお方を連想してしまいましたが……。
>でも、ゼフィーリアの人間となると、相手が誰でも不思議なさそう……。

伊達に長く生きてませんから、フー・マンチュー。
タイタスの想い人は、あのお方だったりします。
いずれその話が語られる時が来るかもしれません。

>>ようやく完結です。
>>長かった・・・・・・・・・・
>>色々あるでしょうが、ひとまずは万々歳です。
>>ジゴマのことは誰も心配してません。またどこかでひょっこりと変わらぬ笑みを浮かべながら現れると思ってます。
>>あと、タイタスの想い人はご想像にお任せします。
>>それではここまで読んでくださった方々、どうもありがとうございました。
>
>本当にお疲れさまでした。
>きっちりと報いを受けるべき所には報いが行く、大団円♪
>この先、まだまだ大変でしょうけれど、フィルさんとアメリア、そしてゴットフリードさんは、
>力を合わせていくのでしょうし、エルマさんもまた、アメリアの傍で彼女の力に
>なっていくのでしょうね。
>ゼルは……きちんと物事が落ちつくのを見届けて、また旅立つのですね。
>……アメリアに盛大に再会の約束させられてから(笑)
>ジゴマさんは今度はどんな時に現れるでしょうか。その時は敵になるのか
>味方になるのか、楽しみです。

まだまだ困難は続くでしょうが、ゴットフリードも前よりはまだマシでしょうし、フィルさんやアメリアも新たに頑張っていくことでしょう。
アメリアの側にはエルマもいるし、いざとなれば護衛獣を使って無理矢理ゼルを引っ張ってくるでしょう。
ジゴマはまたどこかでひょっこりと出てくるでしょうね。

>セイルーンの闇の部分と、それに伴って人が生み出してしまう様々な〃想い〃。
>簡単に割り切れるものではない故のややこしさを、読みながら考えさせられました。
>難しいけれど、少しでもマイナスなだけの感情に囚われないようにしたいものです。
>それでは、楽しんで読ませていただきました。
>次に書かれる作品を楽しみにお待ちしています。
>では、この辺で失礼します。

頭で理解してても、心までそうはいきませんからね。
なかなか難しい問題だと思います。
今でもそういった問題や遺恨が様々にありますし。
それでは、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
またよろしければ、次が出たときも読んでやってください。
どうもありがとうございました。

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