◆−スレイヤーズTRYノベル:十八話:ゼルガディスの手記2(砂漠の塔、アシュエル・ギーという男)−ハイドラント (2004/3/30 19:35:03) No.29726
 ┣トラベルの語源はトラブル−エモーション (2004/3/30 22:58:02) No.29727
 ┃┗Re:それは知らなかったです。−ハイドラント (2004/3/31 15:39:08) No.29732
 ┣スレイヤーズTRYノベル:十九話:月下の死神−ハイドラント (2004/4/3 16:02:51) No.29755
 ┃┗Re:スレイヤーズTRYノベル:十九話:月下の死神−エモーション (2004/4/4 20:59:05) No.29773
 ┣スレイヤーズTRYノベル:二十話:古の都へ−ハイドラント (2004/4/4 20:41:58) No.29772
 ┃┗コメント投稿がタッチの差でした。−エモーション (2004/4/4 21:25:26) No.29774
 ┃ ┗Re:というわけでまとめてお返しします−ハイドラント (2004/4/5 19:00:48) No.29780
 ┣スレイヤーズTRYノベル:二十一話:千年都市(初代市長邸跡)−ハイドラント (2004/4/6 22:49:03) No.29783
 ┣スレイヤーズTRYノベル:二十二話:千年都市(三賢者の塔)−ハイドラント (2004/4/6 23:16:12) No.29784
 ┃┗戻ったら旅行記を書かされそうですね。−エモーション (2004/4/7 23:28:36) No.29792
 ┃ ┗Re:そして文章関連の方でも一躍有名となったり(?)−ハイドラント (2004/4/8 01:10:18) No.29793
 ┣スレイヤーズTRYノベル:二十三話:鎮魂の雪−ハイドラント (2004/4/10 20:34:04) No.29804
 ┃┗フィリア……(笑)−エモーション (2004/4/10 23:20:33) No.29807
 ┃ ┗Re:迷言集に入るかも(作るとしたら)。−ハイドラント (2004/4/12 19:10:19) No.29814
 ┣スレイヤーズTRYノベル:二十四話:白地の布−ハイドラント (2004/4/19 21:58:10) No.29851
 ┣スレイヤーズTRYノベル:二十五話:古の扉を開き−ハイドラント (2004/4/19 22:02:32) No.29852
 ┗スレイヤーズTRYノベル:二十六話:血塗られた遺跡−ハイドラント (2004/4/20 20:32:01) No.29859
  ┗Re:スレイヤーズTRYノベル:二十六話:血塗られた遺跡−エモーション (2004/4/20 22:47:28) No.29861
   ┗Re:スレイヤーズTRYノベル:二十六話:血塗られた遺跡−ハイドラント (2004/4/22 18:33:25) No.29867


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29726スレイヤーズTRYノベル:十八話:ゼルガディスの手記2(砂漠の塔、アシュエル・ギーという男)ハイドラント 2004/3/30 19:35:03


 こんばんは。
 オロシは取りました。
 ハイドラントです。
 ついに第四期です。
 四期はヴァルガーヴとの決戦に加え、古都観光や遺跡探険などの要素もあって、作者自身が勝手に楽しんでる場所です。
 ちなみに今回長いのは前回までのあらすじがあるのと、あとがきが長いからです。
 本編はそんなに大したことないです。
 多分、半分よりちょっと多いか少ないかくらい?
 それではどうぞ。


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 第一期:担当者ラファエル
 物語は、わたくしとインバースさんが出会ったところから始まります。
 わたくしは彼女に仕事の依頼をしましたが、
断られてしまいました。
 そこでわたくしは言いました。
 わたくしとの決闘に負けたら依頼を引き受けてもらうと。そして勝てたなら依頼料を全額支払って立ち去ると。
 彼女も乗り気になったため、わたくし達は決闘することになりました。
 結果はわたくしの勝ち。
 多分、彼女は疲れていたんでしょう。だから体調万全のわたくしに負けた。それだけのことです。
 さてそれから、わたくしと、インバースさん、それにインバースさんに連れであるガウリイ・ガブリエフさんは、芸術都市ムッサボリーナに向かいました。
実はわたくしは依頼の代理人でしかなく、本当の依頼人はこの街に滞在しているのです。
 わたくし達は無事に真の依頼人である黄金竜の巫女フィリア・ウル・コプトさんに出会うことが出来ました。
 コプトさんは語りました。
 この世界で最も強い力を持つ四人の神の内の一人である火竜王ヴラバザードが、原因不明の病に掛かり、眠り続けていることを。
 実はインバースさんへの依頼は他でもない、火竜王の病を治療することです。
 こうしてわたくし達一向は火竜王の神殿に向かうことになりましたが、その日の夜、インバースさんがヴァルガーヴという男に襲われましたらしいです。
この日、この街のシンボルである巨大な樹木に封印されていた怪物が復活したのですが、これもヴァルガーヴの仕業だそうです。
 わたくし達は協力してこの怪物を倒しましたが、街に出た被害は多大。
 ヴァルガーヴ……本当に許せない男です。
 翌朝、わたくし達はムッサボリーナを発ちました。第一期のお話はここまでです。


 第二期:担当者フィリア
 ムッサボリーナを発った私達は、国境を越えて北のアウスベリー王国に入国しました。
 アウスベリー大平原は自然が豊富で素敵なところだったんですが、その平原の真ん中で路銀が尽きてしまい、働かなければならない状況に追い込まれました。
 私はリナさんと一緒にある食堂で仕事をしていたんですが、大変なことに、よく来るお客さんの一人に恋をしてしまいました。
 私は彼に想いを告げ、晴れて恋仲になったのですが、彼は実は盗賊の手先でして、私は見事に罠にはまったというわけです。盗賊達に取り囲まれ、抵抗する間もなく誘拐されてしまいました。
 リナさんが助けに来てくれたのですが、実は盗賊達の標的は私だけではなく、私とリナさんだったのです。エイデンバングルという謎の人物が現われ、リナさんを 捕えようとしました。
 絶体絶命のピンチです。
 でもそこに助けが入りました。
 セフィクスという方らしく、女性なのに大きな剣を持っていました。
 彼女はエイデンバングルと良い勝負をしましたが、倒すことは出来ませんでした。エイデンバングルが私を連れて逃げたからです。
 こうして私は誘拐されることになりましたが、リナさんが助かっただけでも良かったと思います。
 セフィクスという方には感謝しなければなりません。


第三期:担当者ミュヘン
 第三期のあらすじはこの僕――愛するフィリアと引き離され、単身地竜王様の神殿に向かうことになったミュヘンがやらせてもらうよ。
 何でお前がそんなこと知ってるんだ、って突っ込みは勘弁してね。
 フィリアが誘拐されてしまった後、リナちゃん達は、その時は僕もいた火竜王の神殿に到着した。
 その後、最長老様に会って、それからご病気になられた火竜王様を拝謁しにいったんだけど、病を治す方法が見つからず、途方にくれてしまった。
 そしてリナちゃんは自分にこの依頼が来たこと自体がおかしいと思うようになってしまった。
 それで話は変わるんだけど、フィリアをさらった謎の男エイデンバングルは、その身柄と引き換えに、神殿の秘宝――五つすべて集めると異界の魔王ダーク・スター(闇を撒く者)デュグラディグドゥを呼び寄せられるダーク・スターの武器ボーディガーを要求して来た。
 リナちゃん達は僕達とともにエイデンバングルを何とか撃退することになったんだけど、エイデンバングルという男は卑怯でね、フィリアを解放する前にボーディガーを奪って、その上、リナちゃんの命まで要求して来る。
 僕達にリナちゃんを殺せ、と言うんだよ。
 で正直に言うと、僕はリナちゃんを殺し掛けてしまった。
 ラファエル君が僕の魔法を防いでくれなかったら、僕は人殺しの罪を負っていたところだよ。
 で、その後どうなったかというと、パルス・タウンでもリナちゃんを助けたセフィクスという人がいきなり現われて、隠し持っていたダーク・スターの武器ネザードを使って、エイデンバングルをやっつけてくれた。
フィリアも無事だったし、これで大団円さ。
 依頼料を巡ってのトラブルはあったけど、それはさておき、その夜リナちゃんはフィリアに会いにいった。 
 そこでフィリアはリナちゃんにある事件のことを教えることになった。
 火竜王様のご病気とほぼ同時期に起こった老巫女アデイル様の密室殺人事件さ。
 いや密室自殺事件かも知れないけどさ。
 それについては、本編の十四話「彼女は閉ざされた部屋の中に」の後半部分を読んだ方が良い。
 ここで説明するのは難しいからね。
 そして翌朝、地竜王祭がおこなわれ、僕は地竜王様の神殿にいくことになったんだけど、その後リナちゃん達も新たなる旅に出ることになった。
 それは今回倒されたエイデンバングルの仲間ヴァルガーヴを倒すための旅さ。
 リナちゃん達にはボーディガーが渡されることになったんだけど、これはヴァルガーヴは五つあるダーク・スターの武器を集めて、世界を滅ぼそうとしているので、持っていると神殿が襲われてしまうかも知れないから、という理由で渡された。
 まあ何にせよ、リナちゃん達には役立つ武器だよね。
 さて旅に出たリナちゃん達が向かうのは、古の都ローズ・シティ。
 そこは大昔、北国の大賢者マーヴェン・ローズとその連れレイ・マグナスとバース・ブラウンが訪れた街で、ローズ・シティのローズは、マーヴェン・ローズのローズなんだよ。
 でもそこにいく途中、変な連中が襲って来た。
 無数の白ずくめと、仮面を被ったシャーマンのような男。
 リナちゃん達は彼らに囚われ、彼らの言う神の御使い(暫定)の生贄に捧げられそうになった。
 でもラファエル君がもの凄い呪文を使って連中を屈服させ、すべては解決した。
 実は彼らの言う神の御使い(暫定)というのも、単なる珍獣だったみたい。


 18:ゼルガディス・グレイワーズの手記2(砂漠の塔、アシュエル・ギーという男)


「本当に何も分からないのか?」
「ええ、本当に分かりません」
 旅の間、こんな会話が何度繰り返されたことだろう。
 アメリアは本当に、なぜ自分が火竜王の神殿に向かわねばならないのか分からないらしい。
 なぜなのだろうか。
 まあそれはさておき、俺達の旅は順調に進んでいった。
 アウスベリーの大平原を進み、ラドナ共和国を南下していくと砂漠地帯が待っていた。
 この砂漠の真ん中に火竜王の神殿はあるらしい。
 もう冬がすぐそこまで迫っているが、砂漠にいる俺達には何の関係もない。
 どこを見ても、秋らしさも冬らしさも全く感じられないのだ。
 熱気と寒気が交互に訪れる地。
 あの滅びの砂漠と違って規模も小さく、オアシスが豊富にあり、ラドナ共和国という国の一部となっているが、それでもけして暮らし易い土地ではないし、移動し易い土地でもない。
 車を引く馬を砂漠に適した駱駝に変えてみたのだが、いくら体力のある駱駝といっても、重い車を引いて砂漠を歩くは辛いに決まっている。
 そこで少しでも負担を軽くするため、四人の内一人ないし二人――この一人ないし二人は常に特定の誰かではなく、当番制で毎日変わる――は自分の足で歩むことにした。
 時々、街に辿り着くことがある。
 しかし宿代も料理の値段もすこぶる高い。
 宿の寝室を悪党どもに襲撃されたこともある。
撃退することは出来たが、過剰防衛の罪に加え、宿に被害を出してしまったことから、俺達は自警団から逃げなければならなくなってしまった。
 アメリアはその時の行動が「悪」であったと言い出し、それから丸三日は落ち込んで「私は悪人」と呟き続けていた。
 砂漠の真ん中でオルテウスが奇病に掛かった時も大変だった。
やっとのことで街まで辿り着くことが出来たが、そこで長く足止めされてしまった。
 その後も方位磁石が壊れて道に迷ったり、名物料理のある村でグルーガが食い過ぎのために腹を壊したりして、予定通りには進まなかった。
 このままでは本当に、火竜王の神殿辿り着く頃には季節は冬になっているのではないか、という意見や、いや来年に春になっているのではないかという意見も出た。


 ある日俺達は、地図にも載っていない建物に住んでいる奇妙な人物と会いまみえることとなった。
 これからもかなり重要な役目を持って来る人物でもある。
 「あれは何だ?」
 その人物の住む建物に初めに気付いたのは、外歩き当番をしていたグルーガだった。
「あれって何?」
 同じく当番だったアメリアが問う。
「塔だよ。でけぇ塔が建ってやがる」
 グルーガの口調は汚く、一国の姫に向けて使うものとは思えないが、元々私的な場ではこんな口の利き方をしているらしい。
 それで良いのかとは思うが、これは俺が口を挟むべき問題ではない。
「あっ、本当だわ!」
 アメリアもすぐ気付いたようで、感嘆の声を上げた。
 さらに馬車内にいた俺や、「働かざる者食って寝るべし」(*1)と言い出して、昼寝をしていたオルテウスも起き上がって、その塔を探し、そして三秒以内に見つけることに成功した。
「いってみねえか?」
 グルーガの問いには、どっちでも良いとの意見を出した俺以外、全員が頷いた。
 こうして俺達はその塔に向かうことになったのだが、砂漠には基本的には何もない。
 すぐ近くにあると思っていたが、かなり遠くに位置していたようで、塔に到着した時には日は沈み掛けていた。
 空は赤く燃えて熱そうだったが、大地は冷たい風になぶられていた。
 さて、一日掛かって辿り着いたその塔は、塔とはいえどもそれほど高いものではなかった。
 せいぜい四、五階程度の高さである。
 乾燥レンガで建てられたものだと思うが、いかにして建てられたのであろうか。
 塔の入り口の扉は、金属製だった。
 かなり重そうな扉だったが、俺とグルーガが協力すれば簡単に開いた。
 中は暖かかった。
 暖房器具があるわけでなく、空気そのものに暖かみがあるのだ。
 魔力の温もりだと直感した。
 中に入ってすぐ、俺達は昇り階段を見つけた。
 長い階段だった。
 昇り切った先は、恐らく最上階だったのだろう。
 階段の果てにあった空間は広かった。
 この部屋が、塔のメインの場所のようだ。
 本がたくさんあった。
 壁のほぼ全域を覆う本棚に、紙を紐で一まとめにしただけの簡素な作りの本が多数入れられていた。
 中心部には机が一つあり、文章では説明順が反対だが、最初に目がいったのはこちらの方だった。
 そこには何者かが座っていた。
 何者かといっても、姿形を見るには普通の人間だった。
 机の上に両手と顔を押しつけており、恐らくは眠っているのだと思われた。
 性別は男だろうと直感出来た。
 頭髪はかなり白髪の混じった黒で、白い衣を身に着けていた。
 悪臭もせず、腐敗や乾燥の様子はなかったため、まだ生きていることだけは確かだった。
「おい」
 俺は、そいつの肩を揺すった。
乱暴かも知れないが、これが一番手っ取り早いと思ったからだ。
 やがて男は気が付いたようで、ゆっくりと起き上がり、俺の方を見た。
冴えない顔つきの四十ほどの男で(*2)、両方の眼は珍しいことに黄金色だった。
「ふわぁあ、今は何年のいつだい」
 男は欠伸混じりに言いつつ、頭髪をボリボリと掻いた。
「994年(*3)の秋の終わり頃(*4)だ」
 俺が問いに答えてやると、その男は随分と驚いた表情を見せた。
 何とあの言葉は独り言だったのだ。
「う〜ん。もう百年以上経ってるとは……。ところで君らは何者かな?」
 しばし逡巡した後、俺は名を正直に名乗った。
「グルーガだ」
「私はアメリアです」
「オルテウスです。よろしく」
 他の三人は続けて挨拶をした。
「なるほど。僕はアシュエル・ギー」
 アシュエル・ギーという男は、ここに一人でずっと住んでいるらしいかった。
 先ほどの言葉で気になっていたのだが、何とこの男は長寿の種族なのだという。
「こう見えても、僕は黄金竜の一族なのさ。あんまり誇る気にはなれないけどね」
 俺はその言葉に驚いた。
 完全に信じたわけではないが、疑おうという気持ちもなかった。
 一応、黄金竜だということは認めることにした。
 なぜなら普通の人間ならこんな場所で生きれるはずがない。
 何せ水も食料も見当らないのだから。
「だが、黄金竜がなぜこんなところに……」
 俺が尋ねると、この男は即答した。
「僕は火竜王の神殿を追放された身なのさ。文書庫の「最奥」の場所を探していたせいで……」
「……文書庫?」
「……最奥?」
 俺とアメリアは同時に疑問符を繰り出した。
「火竜王の神殿にある文書庫だよ。図書館みたいなものだから、入り口付近の場所は誰でも入れるけど、重要な書物がある奥深くには一部の者しか入れないのさ。……誰も入れない場所もあるみたいだよ」
 そして「最奥」とは、現在この世に存在する者で、その正確な場所を知る者は皆無だと言われている区画なのだという。
 その「最奥」という場所は、本当に存在するかどうかも分からない。
 それでも、アシュエル・ギーは、噂を信じて夜な夜なこっそり文書庫内を探索する毎日を送っていたのだという。
「文書庫は本当に広い。さながら超巨大迷路さ。……「アリアドネの糸玉」作戦を使って何度か潜っていたんだけど、終いには見つかってしまってね。糸が仇になったんだよ」
 糸やロープを使って洞窟を探険する方法は、よく知っていたが、「アリアドネの糸玉」という言葉は初めて聞く。
 それがが何を意味するのかを訊ねると、古い英雄譚に出て来るものだとの答えが返って来た。
「テーセウスっていう人間の男が、迷路みたいな洞窟に住んでる怪物を退治に向かうことになったんだけど、出立の直前にアリアドネ姫っていう人が真っ赤な糸玉を手渡してくれたんだ。テーセウスはその糸玉を持って迷宮に入ったんだけどね、その糸の片端は最初から入り口にいるアリアドネ姫が握っていてね、だから帰り道で迷う心配がなかったんだ。怪物も無事に退治出来たしね。めでたしめでたしさ(*5)。……余談だけど、運命の赤い糸っていう言葉は、この「アリアドネの糸玉」の糸が元らしいよ。テーセウスとアリアドネ姫はその後、結婚したみたいだし(*6)」
 とにかく、彼もこの話に習って――かどうかは知らないが――、糸玉を使って文書庫を探険したが、その糸のせいで見つかってしまった。
 見つかった後、文書庫の無断探索は規則違反だとして、神殿追放の刑に処されたのだという。
「自分で写した写本は持っていくことを許可されたけど、それだけさ。追放された後すぐに僕は、砂漠のど真ん中に立っていた塔を住処にすることにした」
 それが大体百年近く前のことで、それからずっとここで暮らしていたらしい。
「それにしても、何でこんな場所に住もうと考えたんだろうねえ。やっぱり自暴自棄になってたのかなあ」
 住む場所を変えないのかと聞いたが、どうやらそれは出来ないらしい。
「ここからは出れない身体になってしまったのさ。ここにいる限り飲まず食わずでも寝てさえいれば、普通に生き続けられるけど、一歩でも外に出ると、空気に適応出来なくて死んでしまうようになる魔法を掛けたからね。……ちなみにこの魔法は文書庫で見つけた魔道書に書かれていたものなんだよ」
 そして、その文書庫に勝る知識はどこにもない、と続けた。
 異界黙示録ならばこれを越えるのではないかと訊ねたが、彼は異界黙示録のことは知らないらしい(*7)。
「その書物のことは分からないけれど、あの文書庫に秘められた知識は相当なものだと思うよ。今までに人間が書いたすべて書物を合わせても、太刀打ち出来ないんじゃないかなあ……」
 そして、その知識の大半を誰も知らないとしたら、それは大変悲しいことだと溜息混じりに漏らした。
「あ、長くなってしまったね」
 アシュエル・ギーは俺達に頭を下げた。
「そうだ。お詫びとしてこれをあげよう」
 彼は俺に一枚の紙切れを手渡した。
 その紙切れには意味不明の奇妙な文字が書かれている。
 古代の文字なのだろうか。
 それとも暗号か何かなのか。
 とにかくそれを受け取った俺は、一つ頼みがあると切り出した。
「今夜一晩、泊めて欲しいんだが……」
 アシュエル・ギーは快く承諾してくれた。
 俺達は寝具を持ち込み、塔の一階で雑魚寝をすることとなった。
 アシュエル・ギーも同じ場所で寝た。
 アメリアが上を使ったためだ。
 その夜は久しぶりに快適に眠ることが出来た。
 次の日の朝、俺達はアシュエル・ギーに別れを告げ、塔を後にした。
 駱駝車は少しずつ進んでいく。
 背後にあった塔は、いつの間にか消えていた。
 火竜王の神殿はそう遠くはない。
 俺達の旅は、終わるだろう。
 そういえば、アシュエル・ギーが最後にこう言い残していた。
「ところでアメリアさんだっけ? ……君からは不思議な力を感じるなあ」


 作者(わたし)による注釈


 「働かざる者食って寝るべし」(*1):稼ぎをもたらさない者は無駄に動いてもエネルギーの無駄にしかならないので、身体を休めておけという意味……らしいです。

 冴えない顔つきの四十ほどの男で(*2):彼は四十でかなり白髪が出来ているが、これはストレスのせいでしょう。

 994年(*3):新世界暦994年。旧世界暦は降魔戦争の18年後に5000年で廃止されました。

 秋の終わり頃(*4):ちなみにゼルガディス達は約一月遅れで火竜王の神殿に辿り着くことになってます。

 テーセウスっていう人間の男が、迷路みたいな洞窟に住んでる怪物を退治に向かうことになったんだけど、出立の直前にアリアドネ姫っていう人が真っ赤な糸玉を手渡してくれたんだ。テーセウスはその糸玉を持って迷宮に入ったんだけどね、その糸の片端は最初から入り口にいるアリアドネ姫が握っていてね、だから帰り道で迷う心配がなかったんだ。怪物も無事に退治出来たしね。めでたしめでたしさ(*5):これは実在するお話を使いました。細部は違っているかも知れませんが。

 ……余談だけど、運命の赤い糸っていう言葉は、この「アリアドネの糸玉」の糸が元らしいよ。テーセウスとアリアドネ姫はその後、結婚したみたいだし(*6):ここは勝手に考えたんですけど、この話に特別詳しいわけではないので、もしかしたら……

異界黙示録ならばこれを越えるのではないかと訊ねたが、彼は異界黙示録のことは知らないらしい(*7):彼は冥王フィブリゾが滅んで結界が解ける百年も前にこの塔に閉じこもっていたんですから、水竜王が滅びたことは推測出来ても、異界黙示録が存在することは推測出来ないでしょう。


 あとがき(今日は長めにしてみました)


 こんばんは、最近改名したいなあと思っているハイドラントです。
 新たな名前はいくつか案があるんですが、どうも「これだ!」というものがないんですよね。
 まあそれはさておき、随分と暖かくなって来ました。
 まだ寒いですが、二月頃とは比べものになりません。
 長い続く風邪は未だ身体を占拠していますが、それももうしばらくすれば去ってくれることでしょう。
 小説のペースも意外と悪くないです。
 すでにクライマックス寸前にまで辿り着いています(ここからが辛いんですが)。
 量としては原稿用紙で大体900枚にもうすぐ手に届くくらいかな(この十八話までが大体300枚ほど)。
 書くのは良いんですが、長いと見直すのが大変でかなり困ります。
 印刷して紙に直せば少しは楽になるんでしょうけど、一枚の用紙に2枚分入ると考えても……450枚。
 紙がもったいなさ過ぎです。
 やはり妥協しなければならない点も出て来るかと……
 
・本の話
 図書館から「ボルヘス怪奇譚集」というのを借りて来ました。
 ホルヘ・ルイス・ボルヘスという有名な幻想文学(?)の作家が、世界中の色んなお話を集めて本にしたものみたいです(九十二個だったかそれくらいありました。1ページにも満たないようなかなり短いものが多いですが)。
 なかなか頭を使わなければならず、最初は苦痛でしたが、我慢して読んでいくと、なかなかハマれます。
 同時に「幻獣辞典」というのも借りて来ました。
 これもボルヘスです。
 ちらっとしか読んでませんが、ファイナルファンタジーなどに出て来るバハムートが実は魚だとか(これはネットからの情報で前から知ってたんですが)、魔術士オーフェンに出て来た「バルトアンデルスの剣」のバルトアンデルスというのが変幻自在な怪物だったりとかが書いてあり、同じ魔術士オーフェンに出て来た「スウーェデンボリーの天使と悪魔」に関することも載っていました。
 かなり興味深いです。
 現代の小説としては、加々美雅之「双月城の惨劇」、佐藤哲也「妻の帝国」「異国伝」、篠田真由美「月蝕の窓」「綺羅の柩」(建築探偵桜井京介シリーズ)、高橋克彦「竜の柩」「新・竜の柩」、藤木稟「陀吉尼の紡ぐ糸」、舞城王太郎「熊の場所」などを一日から四日に一冊のペースで読みました。
 また大好きな古川日出男の「アビシニアン」を読み返し始めました。
 これで三度目になりますが、なぜか細部は全然記憶に残らないらしく、ところどころ新鮮な気がしました。
 この作品は非常に感性を刺激されますので、創作のエネルギー源になるかも知れません。
 それにしても「アビシニアン」、単行本で手に入れたいけど、絶版したのかな?
 低価で買う覚悟、出来たのに、アマゾン(ネット書店)にもない。
 文庫版があるけど、やはり表紙に猫の写真が使われてる単行本のやつが欲しい。

・音楽の話
 音楽はあんまり聴かない方ですが、携帯で音楽をダウンロードするなりはしています。
 曲名の検索をする時、曲名そのものではなく、この単語が入っていて欲しいという単語を入れて検索しています(例えば「月」や「雪」と入れるとか)。
 でも「これぞ!」という曲は以外に少ないかも。
 林原めぐみ「Breese」、ポルノグラフィティ「アゲハ蝶」、鬼束ちひろ「月光」、中島みゆき「銀の龍の背に乗って」の四つがお気に入りです。

・身体の話
 太り掛けているようです。
 元々は痩せ型なんですが、いずれは凄いことになるかも知れません。
 まあ今は、ダイエットが必要というほどのことでもないんですが、いずれ何とか対処しなきゃと思います。
 TRYノベル書き終えたらバイトでも探そうかな?


 今日のキャラクタ:ゼルガディス
 ゼルはワトソン役と言えなくもないのですが、ホームズが誰かというのは、今は内緒ということにしておきましょう。
 冷静な観察者だと思います。
 分析者でもあるかも知れません。たとえ名探偵の才能はないとしても(笑)。
 実はゼルのキャラにはゼル以外のモデルがいたんですが、しばらく書いてない内に忘れてしまいました。ゼル編絶対少ないですし(八旗の70枚目くらいまで書いた現在のところリナ7:ゼル3くらい?)。
 誰だったかな? ……私かな?
 それにしてもリナもゼルも似てるなあと思う。
 たとえこの四期開始時点では全然違ったとしても、後で結構似て来るはず。
 キャラ達にはそれぞれ違う価値観や考えを持っていて欲しいんですが、なかなかうまくいかないものです。

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29727トラベルの語源はトラブルエモーション E-mail 2004/3/30 22:58:02
記事番号29726へのコメント

こんばんは。

第4期開始ですね。
リナたちに比べれば、比較的平穏……とはいえ、旅につきもののトラブルに
(そういえば「トラベル」の語源は、「トラブル」だと聞いたことが……)
会いつつも、歩を進めるゼル・アメリア組。
一応お姫さまとその護衛一行なのに、「外歩き組」にきっちりアメリアも
加わっている辺りが、何となくアメリアだなあと思いました。

地図に載っていない塔に住む黄金竜、アシュエルさん。
好奇心旺盛なだけでなく、感覚的には殺害されたアデイル様と同じ認識を
持っているタイプなのかな、と思いました。
閲覧に制限がかかるものの当然あるでしょうけれど、それだけの知的財産が、
ほとんど公開されずにいるのでは、勿体ないですからね。
また、アシュエルさんから聞いたこの話、ゼルにとっては神殿での、一番の目的に
なりそうですね。
それにしても、その文書庫……。何となく毎年のようにうっかり迷子になる者がいそうですね(笑)
本棚の脇に「出口まで○○m→」とか、書かれた案内板がありそう……。

>アリアドネの糸玉
ギリシア・ローマ神話ですね。子どもの頃、何故かはまってて読みあさってました。
私の記憶にあるものですと、アリアドネは無事に戻れるように糸玉を渡しただけで、
端を握ってはいなかったのですが。
このお話。結末そのものはかなり救いようがない形なので、(一応、晴れて
ラブラブモードな二人がテセウスの国へ行くことになるけれど、実はアリアドネには、
すでに結婚の約束が交わされていて、その相手が神様(誰か忘れた)だったため、
約束違反に怒った神様のおかげで海は大荒れ。
このままアリアドネを連れて行くと、船が沈没させられる、ということで、
テセウスは泣く泣くアリアドネを、近くの島に下ろしました。
アリアドネは結婚相手の神様の元へ連れて行かれ、テセウスは落ち込んでいたため、
自分が生きていたら示す、と父王と約束していた旗の色を取り替え忘れてしまい、
その為、父親に自殺されるという……(汗))ミノタウロス退治までの部分で
話を終わらせてしまう本も多いです。
運命の赤い糸については、よく分からないですが、ほんとにありそうですね。

> それにしてもリナもゼルも似てるなあと思う。
> たとえこの四期開始時点では全然違ったとしても、後で結構似て来るはず。
> キャラ達にはそれぞれ違う価値観や考えを持っていて欲しいんですが、なかなかうまくいかないものです。

リナとゼルは確かに原作の方で見ても、思考パターンなどは、基本的に
似たタイプだと思いますよ。
あれだけクールに振る舞っていても、ゼルって結構感情が激しいですからね。
基本的な違いはおそらく、性別と人生経験の違いだと、私個人は勝手に推測してます。

私自身も、書いている各キャラに、どうしても自分の視点のようなものが入って、
「似たものになってる〜」と、慌てて直したりしてます。出来る範囲で
そのキャラの視点をトレースするようにしているのですが……。
……でも、真性電波は例外(笑)あれは思考を理解出来たら、人として最期です……(^_^;)

それでは、つらつらと拙い感想を綴ってしまいましたが、この辺で失礼します。
続きを楽しみにしていますね。

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29732Re:それは知らなかったです。ハイドラント 2004/3/31 15:39:08
記事番号29727へのコメント


>こんばんは。
こんばんは。
>
>第4期開始ですね。
>リナたちに比べれば、比較的平穏……とはいえ、旅につきもののトラブルに
>(そういえば「トラベル」の語源は、「トラブル」だと聞いたことが……)
それは知りませんでした。でも確かに頷けなくもないような……。
「(前略)ほんものの『旅』は常に、予見を半歩踏み出したところから始まってるんだ。それも決していい意味での出来事だけじゃなく、むしろ突然のトラブルといったかたちでな」(篠田真由美「桜闇」)
……こんな言葉もありましたし。

>会いつつも、歩を進めるゼル・アメリア組。
>一応お姫さまとその護衛一行なのに、「外歩き組」にきっちりアメリアも
>加わっている辺りが、何となくアメリアだなあと思いました。
アメリアらしいですよね。
>
>地図に載っていない塔に住む黄金竜、アシュエルさん。
>好奇心旺盛なだけでなく、感覚的には殺害されたアデイル様と同じ認識を
>持っているタイプなのかな、と思いました。
>閲覧に制限がかかるものの当然あるでしょうけれど、それだけの知的財産が、
>ほとんど公開されずにいるのでは、勿体ないですからね。
確かにどちらかといえば賛成派につきそうな人物だと思います。
>また、アシュエルさんから聞いたこの話、ゼルにとっては神殿での、一番の目的に
>なりそうですね。
確かに、身体を元に戻す方法もあるかも知れませんね。
>それにしても、その文書庫……。何となく毎年のようにうっかり迷子になる者がいそうですね(笑)
>本棚の脇に「出口まで○○m→」とか、書かれた案内板がありそう……。
後は捜索隊が常備待機しているとか……
>
>>アリアドネの糸玉
>ギリシア・ローマ神話ですね。子どもの頃、何故かはまってて読みあさってました。
>私の記憶にあるものですと、アリアドネは無事に戻れるように糸玉を渡しただけで、
>端を握ってはいなかったのですが。
これは運命の赤い糸のことを言わせる伏線(?)だったり(笑)。
>このお話。結末そのものはかなり救いようがない形なので、(一応、晴れて
>ラブラブモードな二人がテセウスの国へ行くことになるけれど、実はアリアドネには、
>すでに結婚の約束が交わされていて、その相手が神様(誰か忘れた)だったため、
>約束違反に怒った神様のおかげで海は大荒れ。
>このままアリアドネを連れて行くと、船が沈没させられる、ということで、
>テセウスは泣く泣くアリアドネを、近くの島に下ろしました。
>アリアドネは結婚相手の神様の元へ連れて行かれ、テセウスは落ち込んでいたため、
>自分が生きていたら示す、と父王と約束していた旗の色を取り替え忘れてしまい、
>その為、父親に自殺されるという……(汗))ミノタウロス退治までの部分で
>話を終わらせてしまう本も多いです。
そういえば、どことなく聞いたことある部分もあるような……
調べれば良かったかも(その部分を実際に語るかどうかは別にして)。
>運命の赤い糸については、よく分からないですが、ほんとにありそうですね。
実は最初書いた時、本当にあるんじゃないか、って心配でした。
注釈で「もしかして」と付け足したのはそのせいだったりします。
>
>> それにしてもリナもゼルも似てるなあと思う。
>> たとえこの四期開始時点では全然違ったとしても、後で結構似て来るはず。
>> キャラ達にはそれぞれ違う価値観や考えを持っていて欲しいんですが、なかなかうまくいかないものです。
>
>リナとゼルは確かに原作の方で見ても、思考パターンなどは、基本的に
>似たタイプだと思いますよ。
>あれだけクールに振る舞っていても、ゼルって結構感情が激しいですからね。
>基本的な違いはおそらく、性別と人生経験の違いだと、私個人は勝手に推測してます。
確かに、言われてみればそうかも知れません。

>
>私自身も、書いている各キャラに、どうしても自分の視点のようなものが入って、
>「似たものになってる〜」と、慌てて直したりしてます。出来る範囲で
>そのキャラの視点をトレースするようにしているのですが……。
確かに、難しいですよね。自然にそうなりますから。
>……でも、真性電波は例外(笑)あれは思考を理解出来たら、人として最期です……(^_^;)
ですね。シュワルツの思考とかもう完全にイッちゃってますし。
……ああはなりたくないものです。
>
>それでは、つらつらと拙い感想を綴ってしまいましたが、この辺で失礼します。
いえ、とても良い感想だと思いました。
鋭い推測といい、ミノタウロスの話のことといい……
>続きを楽しみにしていますね。
今回も本当にご感想どうもありがとうございました。

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29755スレイヤーズTRYノベル:十九話:月下の死神ハイドラント 2004/4/3 16:02:51
記事番号29726へのコメント


 19:月下の死神


 闇は意識を覚醒させる。
 太陽とともに眠らぬ夜の種族達はは、その闇にこそ世界を見出すらしい。
 寒気を乗せて風は走る。
 右から左へ。
 月が輝いていた。
 想像していたそれよりも小さい。
 だが真っ白で美しい。
 草の音がする。
 獣の鳴き声も聴こえた。
 だがすべての音は静寂と等価に過ぎず、あたしの歩く音だけが、この世界を乱している。
 あたしは異物。
 だが排除はされない。
 自然は、あるいは夜の闇は、すべてのものを受け入れる。
 光を除いたすべてのものを……。
 さて、闇となって夜を歩くあたしの目的は一つである。
 悪を狩りゆくのだ。
 無論、正義の味方気取りではない。
 第一、無闇やたらと悪を狩る人間が、正義であるかは考えものである。
 世界の影に潜む者達。
 金銀財宝を食べて太った盗賊達の人生を破壊するのである。
 そうだ。
 破壊するのだ。
 あたしは破壊者だ。
 そして金銀財宝を解放する。
 その瞬間から、それはあたしの所有物となる。
 正直に言ってしまえば、むしろこちらが重要だ。
 つまりあたしは、恒例の盗賊いじめをしにいくのである。
 悪人を傷つけることに躊躇はしないし、フィリアに気付かれずないことを済ます自信はある。
 何より今夜は不思議と気分が昂ぶっている。
 大丈夫だ。
 昼間に情報収集は済ませてある。
 今回狙う盗賊団は、随分とお宝を溜め込んでいる割に、勢力は脆弱なのだという。
 格好の獲物だ。
 あたしは安堵し切っていた。
 あるいは油断していたのかも知れない。
 緊張などしてやるものか、とまで思っていた。
 だが不意に気配を感じて、そんな心持ちではいられなくなる。
「誰!?」
 あたしは叫んだ。
 気配は単一。
 盗賊の一員か。
 いや、多分そうではない、と直感的に思った。
 だとすると……
 その時、声が生み落とされた。
 間違いなくあたしを呼ぶ声。
 声の主はよく知っている。
 あたしは急速に駆け出した。
 だが、それが命取りか。
 足音があたしに近付いて来て、
「見つけたぞ! リナ」
 とガウリイの声で言った。
 ガウリイ・ガブリエフ。
 あたしの保護者を名乗るその男がそこにいた。
「ガウリイ!?」
 あたしは思わず大声を出してしまった。
 まさか見つかってしまうとは。
「な、何でここに!?」
「……いや、何となくだが」
 ……ガウリイはそう言うが、果たしてそれを信じて良いのだろうか。
「とにかくだ。お前さんのこれからの行動は全部分かってるからな」
「な、何のことかしら……」
 無駄と分かっていても、それでも足掻くあたし。
「ばれるぞフィリアが怒るぞ。さっさと帰ることだな」
「……あんた、そんなことは覚えてんのね」
「当たり前だ!」
 このままでは綿密な情報収集が水泡に帰す。
 何かこの場を切り抜ける術はないものか。
 実力行使に出たり、隙をついて逃げたりすれば、明日の朝にはフィリアに報告されてしまう。
 具体的に何をされるのかは分からないが、間違いなく憤慨するだろう。
 ならば、どうすれば良いのだ。
 あたしは必至で考えた。
 だが何も浮かばない。
 やはり、おとなしく帰るしかないのか。
 と思ったその瞬間、第三者の気配と足音が生まれた。
 明かりが見える。
 誰かが松明か何かを持って歩いているのだろう。
 光があたし達を照らした。
 咄嗟に近くの茂みへと身を潜める。
 一瞬の緊張。
 光は遠ざかっていく。
 それも妙に速いペースで。
「……何なんだ?」
 より添って来たガウリイが、小声で訊いて来る。
「多分、見回りね」
 あたしは言った。
「気付かれたのか?」
 ガウリイの再度の問いに重く頷き、
「ただし、あたし達の力には気付かれていないわ」
 当たり前である。
 あたしの素性など知るはずのない盗賊達が、二人相手に臆するとは考えられない。
 あの見回りらしき男は、格好の獲物を見つけたと思っただろう。
「さて、どうする?」
 ガウリイは、不敵な笑みを零した。
 よし、このまま共犯関係が成立してしまえば……
「もちろん竜破斬で……」
 あたしは言った。
「こら!」
 予想通り突っ込まれた。
 冗談よ、と言って微笑む。
 無論、本気でやるはずはない。
 そんなことをすればフィリアに気付かれる可能性があるからだ。
「おや、来たようだぜ」
 ガウリイが言った。
 あたしの視線には、無数の松明の明かりが見えた。
 間違いなく盗賊団の者達だろう。
「出て来い。曲者!」
「隠れるな!」
「俺達のテリトリーに入り込みやがって」
 だが出て来る気など毛頭もない。
 あたしは呪文を唱え、撃ち放った。
「爆裂陣(メガ・ブランド)!」
 爆発。
 驚く盗賊達。
 ダメージを受けた者もたくさんいる。
 少々うるさかったかも知れないが、この程度なら、宿まではほとんど届かないだろう。
「火炎球(ファイアー・ボール)!」
 今度は殺傷能力を持った灼熱の塊を投げ込んで、さらなる混乱を誘った。
 盗賊など敵ではない。
 この時点で戦意喪失者は多数いただろう。
 さらに何度か攻撃をおこなった後には、松明の明かりなど見えなくなった。
 呆気ない勝利。
 ガウリイの出番など全くなかった。
 いや、彼に参戦する意志は初めからなかったのかも知れないが……。
「勝ったわ。さて、戦利品を……」
 あたしはにっこりと月に笑い掛ける。
「待て!」
「何でよ。お宝を全部頂く権利はあたしにあるわ」
 いきなり腕を掴んで引き止めようとして来るガウリイを、振り払い、強く宣言してやる。
「だからなあ……」
 ガウリイは溜息を吐くが、あたしは気にしない。
「何よ。今さら諦めるわけにはいかないわ」
 それからあたしは時間を掛けて、ガウリイを説き伏せ、いざ黄金郷へと歩き出した。
 だがその時、
「待ちな」
 声が掛かった。
 呼吸が聴こえた。
 誰かがいる。
 盗賊ではないと思う。
 ならば誰?
 思いながら、振り返った。
 ガウリイがいる。
 だがそれだけではない。
 闇に慣れたあたしの眼は、その姿を映し出していた。
 ガウリイもあたしに倣った。
 後ろに誰かがいることに気付いて。
「全く、探すのに骨が折れたぜ。こんなところにいたとはな」
 そこにはやつがいた。
「……ヴァルガーヴ」
 完全に姿が明らかになっているわけではないが、その影は以前出会った男のものと一致した。
 声も同じだ。
 彼は右手に何かを持っている。
 それこそが光の剣ゴルン・ノヴァなのだろう。
「何でこんなところにいるの?」
 あたしは質問を投げ掛けた。
 身体が軽く震えている。
 恐怖か、高揚かの判断はつき難いが、恐らく前者なのだと思った。
 ガウリイが身構える。
 ヴァルガーヴが口を開いた。
「お前がここに来るからだ」
「なるほど。名探偵は推理がお上手ですこと」
「全くだな」
 あたしの皮肉をヴァルガーヴは笑い飛ばす。
「でも、あたしはボーディガーを持っていないわ。フィリアの寝込みを襲うべきだったわね」
「フィリア? ……ああ、あの嬢ちゃんか。臆病者かと思えば、意外に気丈な女だったな。……だが、んなことはどうでも良い。今の俺の狙いはお前の命だ」
 舌打ちするあたし。
「ボーディガーは後日頂くことにする。まずお前から殺す」
 ヴァルガーヴは殺意を秘めた眼差しを、あたしへと向けた。
「……待って。その前に聞きたいことがあるわ」
「聞きたいことだと? まあ良いだろう」
 視線から殺意が消えた。
「あんたはダーク・スターの武器を探しているみたいだけど、本気で世界を滅ぼそうとか考えてるの? ガーヴはそんなことは望んでいなかったはずよ」
「俺はガーヴ様の複製品じゃあねえ。そうとだけ答えてやる」
「もう一つ。……なぜ今さらになってあたしを狙っているの? ガーヴが滅んだのは四年以上も前だけど、あんたはあたしを探し出すのに四年も掛かったっていうの?」
 もちろん四年という年月は人を探し出し、見つけ出すまでの時間として、けして長いものではない。
 むしろ短過ぎるのかも知れない。
 だがあたしが気になっているのは、ラファエルとヴァルガーヴがほぼ同時期にあたしを見つけたことなのだ。
 これは果たして偶然なのか。
 それとも……
「二年だ。俺がお前への復讐を考えたのはな。……それとな、見つけ出してえと思っていたのは俺だが、実際に探し回ったのは俺じゃねえ。不幸な事故で消えちまったエイデンバングルの方だ。……なあ、これで良いだろ」
 ヴァルガーヴは友人に対するような口調で言った。
 この場面だけを見ると、あたしを恨んでいる人物とは到底思えない。
「感謝するわ。ご丁寧に答えてくれたことに」
 だからあたしも笑顔で返してやったがその直後、眩い光が闇を裂いた。
 ほとんど同時に激しい音がした。
 光の剣と妖斬剣。
 ガウリイとヴァルガーヴの斬撃は、ほぼ同時におこなわれた。
 派手にぶつかり合って、戦闘開始の合図を鳴らす。
 精悍なヴァルガーヴの肉体が、素早く後ろへ退いたかと思えば、ガウリイの斬撃が飛んで来る。
「俺の剣を返せ!」
 ガウリイが叫んで強力な一撃を放つが、これは空を切ることになった。
 ヴァルガーヴは光の剣を、片手で力一杯振り被った。
 ガウリイは素早く受け止めたが、ヴァルガーヴのもう一方の手から放たれた何かが、ガウリイの身体を大きく吹き飛ばした。
 いや攻撃をかわすために、自分から吹き飛んだのかも知れない。
 だがどちらにせよ、長く起き上がって来ないことを見ると、ガウリイは今ので少なからぬダメージを受けたことになる。
 ヴァルガーヴは笑っていた。
 間違いなく笑っていた。
 ガウリイが負けた。
 まさか、あのガウリイが……。
「まず一勝だな。さてリナ・インバース、次はお前だ」
 光の剣が突きつけられる。
 素早かった。
 呪文を唱える暇などなかった。
「あの男はもう動けねえ。誰も助けには来ねえよ」
 あたしに肉薄している死神がいる。
 もう終わりかも知れない。
 光の剣はあたしを切り裂く。
 恐らく瞬き一回の内に。
 いや、そうではないかも知れない。
 彼はあたしを憎んでいるし、恨んでいる。
 じっくりいたぶってから殺そうと考えるかも知れない。
 そうなれば、助かるチャンスが生まれる可能性もある。
 そんなことを思った時、身体に何かが触れた。
 ヴァルガーヴの剣だ。
 多分、掠っただけだろうと思った。
 だが血が勢い良く噴き出した。
 遅れて痛みが全身を襲う。
 血はなおも流れ続ける。
 死に至るほどの傷ではなかったが、行動を縛るには充分過ぎた。
 ヴァルガーヴはさらに襲い掛かる。
 光の剣が身体に掠り、傷がまた増え、流れる血の量が増える。
 何度も攻撃は繰り返された。
 やがてあたしは倒れ込み、行動不能になるが、それでもヴァルガーヴからは目を離さない。
 傷はどんどん増えていく。
 やはりなぶり殺しか?
 徐々に生命力が失われていくのが分かった。
 案外持ち堪えてくれるものだが、このままでは死ぬ。
 あたしは歯噛みした。
 ヴァルガーヴが腹部を蹴る。
 身体は麻痺し、身を捩ることすら出来ない。
 徐々に意識が失われていく……


<@><@><@><@><@><@><@><@><@><@>


 こんばんは。ハイドラントです。
 今回は注釈をお休みさせて頂きます。
 それでは、これで失礼致します。

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29773Re:スレイヤーズTRYノベル:十九話:月下の死神エモーション E-mail 2004/4/4 20:59:05
記事番号29755へのコメント

こんばんは。

第4期リナ編開始ですね。
いつもの如くの乙女のたしなみ、「盗賊いぢめ」に出かけるリナと、
いつものことだし、分かってはいても止めたいガウリイ。
……まあ、ガウリイは正直、リナが自分の知らないところで、ピンチになって、
助けることも出来ない、というのが嫌なのだと思いますが。
特に厄介なのにつけ狙われているときですしね。……愛ですね(^.^)←勝手に決めつけ
そして、そうこうしているとご登場のヴァルガーヴ。
リナへの復讐を考えたのが2年前……何故ガーヴ様が滅んだのか、調べるのに
それくらいの時間がかかったのか、単に情報伝達が遅れたせいなのか。
ふと疑問でしたが、復讐を考えて探し始めた時間としては変でもないのかな。
ただ、これがエイデンバングルさん等と会ったのが2年前、だった場合、
やはり何か裏があるのかもと思っちゃいますね。
……まあ、単純に手を組むことになったから、復讐を実行することにした、
という事もありえますが。

あっさりとガウリイを倒したヴァルガーヴ。……さすがに強いですね。
傷つけられ、どんどん追いつめられ、意識がなくなるリナ。大ピンチです。
助けが入るのか、それとも何とか個人で切り抜けるのか。それとも愛のパワーで
ガウリイが復活して助けるのでしょうか。

続きが気になります〜。

それでは、短いですが続きを気にしつつ、この辺で失礼します。

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29772スレイヤーズTRYノベル:二十話:古の都へハイドラント 2004/4/4 20:41:58
記事番号29726へのコメント

 20:古の都へ


 ここはどこなのだろうか。
 あたしは生きているのか。
 それとも死んでしまったのか。
 死後の世界は存在するのか。
 輪廻転生は本当に起こるのか。
 暗闇が広がっている。
 否、目を瞑っているだけなのかも知れない。
 不安定な空間だ。
 前進? 
 後退? 
 上昇? 
 下降? 
 旋回? 
 静止? 
 ……全く動きが掴めない。
 肉体が本当に存在するのかも分からない。
 そんな中に光が差し込んだ。
 一瞬で差し込んだのか、あるいは限りなく永遠に近い時間が経過した後に差し込んだのか、それは分からない。
 何かが映し出された。
 だが見えたと思った一瞬後には、何もかもを忘れてしまっていた。
 またしても何かが映り、消えて、忘れてしまう。
 その繰り返しが終わった頃には、あたしはあたしを見失ってしまい……


 初めに無音があって、それから声が耳に入った。
「おはようございます」
 眩い光が両目を襲う。
 あたしは生きていたのだろう。
 身体の感覚はあまりない。
 それでも起き上がろうとするが、すると激痛が波のように押し寄せた。
「おっと、まだだめですよ。まだ起きないでください」
 声がまた聴こえる。
 世界は眩し過ぎるし、意識もはっきりしていないのだが、誰の声かは分かっている。
「傷は塞がりつつありますからね。数時間もすれば痛みも消えますよ」
 それにしても、とあたしは気付いた。
 寝台で寝ていたらしいあたしは、どうやら服を着ていないらしい。
 上半身に布団の感触がもろに伝わって来る。
 数分が経つと、あたしは目を見開くことが出来た。
 あたしの傍にいたのが、予想通りの人物であることを確認する。
「……ゼロスね」
 ゼロスは片方の手に杖を、もう片方に光の球を手にしていた。
その光の球こそが、部屋の光源となっているのだろう。
「ええ、お久しぶりです。リナさん」
 獣神官ゼロス。
 穏やかな顔つきをしているが、紛れもない闇に住まう者だ。
 彼があたしを助けたのだろう。
「来るのが遅いわよ」
 傷のせいか、弱々しい言葉となる。
 思い切り強く叱ってやりたい気持ちもあるが、そんな気力は出て来なかった。
「すみません。……でも結構、魔族も大変なんですよ。火竜王が病に倒れたのはチャンスでもありますが、魔王様の欠片が見つけなければ、逆にやられてしまう可能性だってあるんですよ。竜王達はこの世界と病床の火竜王を守護しなければならないから迂闊に動けないだけで、本気で攻めて来たら魔族は全滅します」
 それはそうだ。
 魔王が手元にない場合、魔族側は戦力として神の側に大きく劣るだろう。
「それで、あんたは魔王の欠片を探してたわけね」
 ゼロスは首を縦に振り、
「ええ、本当に大変ですよ。……残りの竜王の監視が厳しいせいで、あんまり大量動員は出来ませんし、僕より上の方々なんかは単独で出られても見つかっちゃうような状態なんです。だから僕と他何人かだけでやらなきゃならないんです。残りはほとんど篭城してるも同然ですよ」
 そう言ってゼロスは深い溜息を吐いた。
「それにしても危なかったですね。助からないかと思いましたよ」
 ゼロスはあたしが斬りつけられた直後に、ヴァルガーヴの元に現れたのだという。
 どうやら彼はいつでも居場所が分かる魔法をいつの間にかあたしに掛けていたようだ。
 ムッサボリーナで出会い別れた後に。
 本当はあたしが斬られる前に現れる予定だったが、少々遅れてしまったらしい。
「ヴァルガーヴは僕が来た途端に逃げ出しましたよ。意外と臆病な方みたいですね。……ガウリイさんも、なかなか深いダメージを負っていましたけど、命に別状はありませんでした」
 ところがあたしの方は、ほとんど死んでいてもおかしくない状態だったのだという。
 まあ、あれだけ斬りつけられたのだから、仕方がないのかも知れないが。
「……貸しが出来たわね」
「ちゃんと返済してくださいよ」
 あたしが弱い呟きを吐くと、ゼロスが冗談めかして言った。
「あっ、そろそろ僕は消えますね」
「そう?」
 あたしは短くそう言った後、こう言った。
「助けてくれてありがとう」
 一瞬という半永久的な時間の中で何度も躊躇った言葉だったが、言い出すとすんなりと言えた。
 ゼロスは、その言葉を無視するような、あるいはごまかすような感じで言った。
「後、これはヴァルガーヴからの伝言でガウリイさんに伝えたものなのですが、あの彼が覚えていられるかは分からないので、僕がリナさんに伝えることにします」
 伝言の内容は以下であった。
『俺と決着を着けるなら、ローズ・シティの「最も古き場所」に来い。待っているぞ』
 いかなければならない、と思った。
 何としてでも、そこでヴァルガーヴを倒さねばならない。
 ゼロスが去った後、あたしは自問した。
 ゼロスの助力を当てにせずとも、あのヴァルガーヴに勝てるだろうかと。
 ……それにしても忘れていた。
 なぜあたしを助けるのか?
 火竜王の病の原因が魔族にあるのかどうか?
 それにヴァルガーヴに関してどれくらいのことを知っているのか――少なくとも名前だけは知っていた――?
 ゼロスにこれらの質問をすることを。
 もっとも、真実をそう簡単に話してくれるとは限らないが。


 曇り切った空に反映されたかのように、馬車内は険悪な空気に包まれていた。
 重い沈黙が圧し掛かって来る。
 今朝の朝食時から同じ状態が続いていた。
 思えば、朝食の場は最悪だった。
 ヴァルガーヴから受けた傷も癒えて来たので宿の一階にあった食堂で皆と食事を取りにいったのだが、そこで傷がフィリアにばれてしまい、さらにガウリイが昨夜のことを言ってしまったのだ。
 当然フィリアは激怒した。
 彼女が言うあたしの罪状は、他人に無用な危害を加えた、汚い金を手にしようとした、大切な旅の途中で命を落とし掛けた、の三つで、彼女の観点ではどれも途轍もなく重い罪らしい。
 思い切り叱られてしまった。
 もちろんあたしは反論したのだが、それがかえって状況を悪化させてしまった。
 あたしとフィリアは激しい口論を繰り返した後に、互いに口を閉ざし合った。
 ガウリイは、自分の発言が喧嘩の原因の一端となったことに責任を感じるも、謝る気は全くないという状態であって、同じく沈黙。
 その結果ラファエルも声を掛ける相手を失うこととなった。
 そんな状態の中でも馬車は、着々と東へ進む。
 ラファエルもフィリアもまだ知らないだろうが、目的地にはヴァルガーヴがいる。
 進んでいく内に、気温はどんどん下がっていった。
 静かな動きで毛布を取り出し、それに包まる。
 ガウリイも真似をした。
 フィリアは自虐しているかのように、冷たい風を受け続けている。
「寒いですね」
 御者台で風を浴び続けているラファエルが発した声は、本日の馬車内で初めての、はっきりと聞き取れるものであった。
 確かにあたしも寒かったのだが、同感の意を示す気にはなれなかった。
フィリアとの喧嘩のせいで言葉を発す気にもなれなかったし、自分達だけ毛布を着ているために、後ろめたさが生じていたのだ。
 やがて日が暮れ始めたが、街の姿は全く見えなかった。
 昼間に一つ街を越えて以降、ただ道が続くのみである。
 風はどんどん冷たくなり、鋭さを増してゆく。
 灰色の雲は相変わらず天を覆っている。
 雨が降らないのが不思議なくらいだ。
 ラファエルは、厚着をし、毛布を身体に掛けて、暖房呪文を使用した。
 万が一暴走して馬車が焼けてしまっても怒らないでくれと、冗談混じりに言った後に。
 やがて世界は闇に閉ざされる。
 夜の風は凍てつくほどの冷たさを持って暴れ、フィリアをついに毛布へと誘った。
「これはまずいですね」
 暖房呪文と併用して照明呪文も使い出したラファエルが呟いた。
 深刻さを感じさせる声であった。
 二頭の馬は不屈の闘志を持って走り続けるが、このまま街に辿り着けねば非常にまずい。
「まだ着かないの?」
 あたしのこの言葉は、必要最低限のものを除いたとすれば、実に数時間振りの発言であっただろう。
「もうすぐだと思いますけど」
 正直、安堵して良いのかは分からなかったが、あたしは自分に希望を持たせた。
 馬車はさらに進む。
 街という希望の灯りをただ、求めて……。
 それからどれだけ後のことであっただろうか。
 ラファエルに言われて覗いた外の景色に、微かな白の煌きを見たのは。
「綺麗」
 そう言ったのは、沈黙を続けていたフィリアであった。
 雪が降っている。
 今年最初の冬の雪。
「……どれだけ振りのことでしょうか。雪を見るなんて……」
 そう言えば、と気付いたのだが、フィリアは砂漠に住んでいる。
 あの地に雪が降ることなどありえまい。
「こんな綺麗なものを見ていると、些細なことなんてどうでも良く思えてきますよね」
 そう言った後フィリアは、あたしに軽く頭を下げた。
「リナさん。……すみませんでした」
「良いの。あたしも悪かったわ」
 天空より来たる小さな妖精は、風とともにダンスを踊り、やがて地に落ち、儚く消える。
「……いや、そんな場合じゃないんですけどね」
 ラファエルは一人そう呟いた。
 馬車が小さな村に辿り着いたのは深夜になった頃であったが、ある宿の親切な店主はあたし達の寝床を用意してくれた。
 全員は早速眠り、朝起きて村を出た。
 雪は止んでいた。
 昼頃になるとあたしは、馬車内でヴァルガーヴの言葉のことを皆に話した。
 全員の意見は一致した。
 「最も古き場所」へいき、ヴァルガーヴを倒すことに反対する者はいなかった。


<@><@><@><@><@><@><@><@><@><@>

 
 あとがき

 やっと執筆が終了直前。
 後、一歩。後、一歩で終わる。
 でも終わったら、今度は900枚を越える原稿を読み返し、読み返して、色々と修正をしなければならない。
 ああ、毎日投稿してたあの頃が懐かしい……
 これを私の現時点での最高作にするために、とにかく精一杯やるつもりですので、投稿はしばし止まらざるをえないかも知れません。
 それではこれで失礼致します。

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29774コメント投稿がタッチの差でした。エモーション E-mail 2004/4/4 21:25:26
記事番号29772へのコメント

「続きが気になる〜」とコメントを投稿したら、続きが……(^_^;)
と言うことで、続けてコメント投稿です。

お助けマンはゼロスでしたか。
これは当然ともいうべき人選だったはず……なのに、ゼロスを綺麗に忘れてました。すみませんm(__)m
ラファエルさん辺りが、再び出てくるかな、と思っていましたので(^_^;)
ゼロスはリナにしっかりと、目印をつけてたんですか……。
そして他にも仕事が(写本探して焼く仕事も継続中でしょうし)山積みに……。
中間管理職も大変です。人間なら過労死しそうですね。
ヴァルガーヴはゼロスと直に戦いたくないのですね。
アニメ版では力を増幅させられて、そこそこ戦えるレベルになってましたが、
こちらではそうでもないのでしょうか。

そして決着をつけるのは「最も深き場所」。
ヴァルガーヴにとっては、何やら因縁のある場所なのでしょうか。
リナがどうやって対抗するつもりなのかも楽しみですが、そこで対峙したとき、
何が判明するのかも楽しみです。

それでは、続きをお待ちしつつ、この辺で失礼いたします。

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29780Re:というわけでまとめてお返ししますハイドラント 2004/4/5 19:00:48
記事番号29774へのコメント

>こんばんは。
こんばんは。
まとめてお返しすることにします。
>
>第4期リナ編開始ですね。
>いつもの如くの乙女のたしなみ、「盗賊いぢめ」に出かけるリナと、
>いつものことだし、分かってはいても止めたいガウリイ。
いつものことですね。本編12巻の冒頭にもこんなシーンがあったと思いますし。
>……まあ、ガウリイは正直、リナが自分の知らないところで、ピンチになって、
>助けることも出来ない、というのが嫌なのだと思いますが。
>特に厄介なのにつけ狙われているときですしね。……愛ですね(^.^)←勝手に決めつけ
そうですね。ラファエルというライバルが出て来て焦ってるのかも(かなり待て)。
>そして、そうこうしているとご登場のヴァルガーヴ。
思えばこれでまだ二回目なんですよね。意外と登場数少ないかも。
>リナへの復讐を考えたのが2年前……何故ガーヴ様が滅んだのか、調べるのに
>それくらいの時間がかかったのか、単に情報伝達が遅れたせいなのか。
>ふと疑問でしたが、復讐を考えて探し始めた時間としては変でもないのかな。
>ただ、これがエイデンバングルさん等と会ったのが2年前、だった場合、
>やはり何か裏があるのかもと思っちゃいますね。
>……まあ、単純に手を組むことになったから、復讐を実行することにした、
>という事もありえますが。
実は二年前なのは、15巻の話が終わるのが大体リナ(現時点で20)が17か18くらいの時だと思ったからその少し後にしておけば、9巻から15巻の間にヴァルガーヴが出て来なかった理由になるかなあ、とそれだけだったり(おい)。

>
>あっさりとガウリイを倒したヴァルガーヴ。……さすがに強いですね。
少なくともリナとガウリイで倒せるような相手ではないです。
ラファエル+セフィクスが参戦して来たら、分かりませんが。
>傷つけられ、どんどん追いつめられ、意識がなくなるリナ。大ピンチです。
>助けが入るのか、それとも何とか個人で切り抜けるのか。それとも愛のパワーで
>ガウリイが復活して助けるのでしょうか。
正解はゼロス参戦でした(何)。
>
>「続きが気になる〜」とコメントを投稿したら、続きが……(^_^;)
>と言うことで、続けてコメント投稿です。
本当にタイミング悪かったですね。
今日に回せば良かったかも(二十話の投稿)。

>
>お助けマンはゼロスでしたか。
>これは当然ともいうべき人選だったはず……なのに、ゼロスを綺麗に忘れてました。すみませんm(__)m
天災は忘れた頃にやって来る(かなり違う)。
確かに一期にちらっと出て来ただけで、全然目立ってませんでしたからね。それにアニメ同様、魔族がそれほど重要な役割を担っているわけではないということもありますから、忘れられて当然だったかも知れません。
>ラファエルさん辺りが、再び出てくるかな、と思っていましたので(^_^;)
ラファエルさんはぐっすり眠っていたみたいです(笑)。
>ゼロスはリナにしっかりと、目印をつけてたんですか……。
最初はこのことを知ったリナが、ゼロスを叱るか殴る予定でした。文脈か何かの問題で出来なくなりましたけど。
>そして他にも仕事が(写本探して焼く仕事も継続中でしょうし)山積みに……。
>中間管理職も大変です。人間なら過労死しそうですね。
ゼロスは実務向きなイメージがありますから、どんどん仕事押し付けちゃいたくなります(笑)。
>ヴァルガーヴはゼロスと直に戦いたくないのですね。
>アニメ版では力を増幅させられて、そこそこ戦えるレベルになってましたが、
>こちらではそうでもないのでしょうか。
あんまり明白には決めていませんが、高位魔族クラスの強さはあるけど、ゼロスには届かないというくらいだと思っています。
逃げたのは一期の時に重傷を負わされてゼロス恐怖症(?)になったからでしょう。
>
>そして決着をつけるのは「最も深き場所」。
「最も古き場所」です。まあ指摘するほどの間違いではないかも知れませんが、一応。
>ヴァルガーヴにとっては、何やら因縁のある場所なのでしょうか。
>リナがどうやって対抗するつもりなのかも楽しみですが、そこで対峙したとき、
>何が判明するのかも楽しみです。
その場所では、ヴァルガーヴに関する秘密の第一段階が明かされるはずです。
第一段階は実は、アニメとほとんど同じようなことだったりするんですが……。
>
>それでは、続きをお待ちしつつ、この辺で失礼いたします。
ご感想どうもありがとうございました。
しばし投稿なくなると言いましたが、やはり数日中にはもう一、二話くらい投稿してこうという気になりましたので、あまりお待たせすることはないかも知れません。

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29783スレイヤーズTRYノベル:二十一話:千年都市(初代市長邸跡)ハイドラント 2004/4/6 22:49:03
記事番号29726へのコメント

 21:千年都市(初代市長邸跡)


 いくらか西にいけば砂漠があるというのに、この辺りはよく雪が降るらしい。
 豪雪になる日も少なくないという。
 さすがに初冬の内はそれほど降るわけではないようだが、あたし達がローズ・シティに辿り着いた頃には、すでに本格的な冬が始まっていた。
 その日は晴れていたが、それでも気温は低かった。
 砂漠の夜だって寒かったし、あたし達のいた土地の冬はもっと低気温だったかも知れないが、だからといってここが寒くないはずがない。
 あたしは苦手なのだ。
 この冬の寒さというやつが。
 だが、ここで大切なのは気温のことなどではなく街の様子だ。
 時の流れはあらゆるものに深みを与える。
 これはローズ・シティを訪れて感じたことである。
 薄い雪を積もらせた石造りの街並みは、現在のものと大きく異なるわけではなかったが、どこか古めかしく威厳がある。
 空気が年月を吸い込んで、独特の香りを出しているかのようだ。
 人々も老若男女問わず、熟成した香りを発していた。
 とはいえ、すべての人がそうであるわけではない。
 明らかに外から来たと分かる商売人や観光客は、この街の古めかしさに溶け込んではいない。
 だが、それもまた一種の情緒に思えて来る。
 けして彼らは、街の雰囲気を壊しているわけではないのだ。
 さて、あたし達が街に辿り着いたのは、正午を少し過ぎたような頃であった。
 昼食を取っていなかったあたし達は、すぐさま食堂へと入った。
 変わった料理はなかったが、味はけして悪くなかったし、値段も手頃なものであった。
 食事を終えると、次は神殿に向かった。
 巨大なスィーフィード像を拝みにいったのだ。
 世界的にかなり有名らしいその像は想像以上に巨大だった。
 重厚な造りの神殿内部に一歩足を踏み入れると大広間があり、そこに像は立っていた。
 かつて魔王シャブラニグドゥと世界の覇権を掛けて戦った竜神の想像図は、すべてオリハルコンで出来ていると言われているらしいが、真偽の方は分からなかった。
 一目見た限りでは純オリハルコン製であっても不思議ではないと思うのだが、それに似せた合金か何かかも知れない。
 だが、たとえそうだとしても、構わないと思う。
 その像は途轍もなく腕の良い職人によって造られたに違いないのだから。
 像の周りは人込み状態で、押しつ押されつの窮屈状態だったが、そうやって苦しんだ価値は充分にあったと思う。
 像を見終えたあたし達は、一度神殿の外に出て、今度は左側へ回った。
 ここには別の入り口があるのだ。
 聖堂へ繋がる入り口が。
 とはいえ別に祈りを捧げたり、洗礼を受けたりしにいくわけではない。
 情報を集めにいくのだ。
 「最も古き場所」という言葉は、ラファエルにさえも聞き覚えのないものであった。
 となると、地元の人間に訊くしかない。
 それも出来る限り、街の歴史に詳しそうな人に……。
 神官長とは簡単に合うことが出来た。
 ローズ・シティ神官長のアレク司祭は、齢四十前の人の良さそうな男であった。
 彼は、フィリアの名前まではさすがに知らなかったが、火竜王の神殿の第一巫女という地位が極めて高いことくらいは分かっているようで、彼女がその地位にあることを知ると、ちゃんとした敬意を払った。
 こうして互いに挨拶を済ませた後、あたし達は、「最も古き場所」についての質問をした。
 すると、
「街で一番古い場所ですか? すみません。そういうのにはあんまり詳しくないんです。古い建物ならいくらでもありますけど、その中で一番古いと言われましても。……本当に申し訳ございません」
 彼はそう言って、礼儀正しく頭を下げた。
「いえ、こちらこそいきなり訪ねて来て。大変失礼致しました」
 それに対してラファエルが恐縮そうに言う。
 別れ際に土地の歴史に詳しい者がいないか訊くと、ある老人の名前が出た。
 さらにその老人の大体の住所も教えてくれた。
 神殿を出ると、すでに夕刻になっていた。
 朱に染まる空から居場所を失い掛けた太陽は、寂しげな古都を睨んでいる。
「もうそろそろ宿を探しましょうか。ご老人宅は明日訪れるということで」
 ラファエルの意見には全員が賛成の意を示した。


 条件の良い宿は探せばすぐ見つかった。
 無論、安くて綺麗な宿のことである。
 人通りの多い十字路の一角にある宿だった。
 その宿がある十字路の中心には、白い石碑がおかれていたが、わざわざ文字を読む気にはならなかったので素通りした。
 宿に食堂は付属していなかったが、すぐ近くに良い郷土料理店があった。
 あたし達はそこで食事をしたわけだが、郷土料理とはいっても、地方で取れる食材を使ったというくらいのもので、それほど奇抜なものはなかった。
 また味は値段の割にはそれほど良くなく、少し悔しい思いもした。
 これなら昼に入った食堂の方がずっと良かった。
 食事を終えると、あたし達は宿に戻り、自室に入った。
 あたしはフィリアと相部屋だ。
 小さなテーブルと椅子があり、寝台が二つ置かれているだけのかなり狭い部屋だが、良く掃除されているようで清潔感がある。
 窓からは十字路を見下ろすことが出来た。
 あたしは何となく外を眺めていた。
 人は今も通る。
 石碑を気にするものはいない。
 それにしても、思えば随分と遠くまで来たものだ。
 突然、感傷が沸き起こる。
 ノスタルジーが隙だらけの身体を切り刻んだ。
 故郷は遥か北西の彼方。
 姉ちゃん達は元気でやっているだろうか。
 ……まあ簡単に病気するようなタマではないが。
 その日は早く寝た。
 そういえば最近は早寝が続いている。
 結局この日は何ごともなかった。
 ずっと誰かに見張られているような感じもしたが、初めて訪れる街では、そんな錯覚はよくあることだろう。
 夢を見た。
 内容は忘れたが、壮大な夢だったと思う。

 
 翌日の午前に老人宅を訪問した。
 徒歩とシティ馬車を併用すると、宿から一時間ほどでいけた。
 この老人は、この街で最も古い建造物のことを教えてくれたが、そのことを教えるとすぐにあたし達を追い払った。
 どうやら気難しい性質らしい。
 まあそれはさておき、教えてもらった場所は、初代市長邸跡という場所であった。
 何でも千年近く前からあるらしい。
 ちなみに市長というのは街を治める人間のことで、領主に似ているが、領主と違い、支配者ではなくリーダー的な存在のことだ。
 これは移動中にラファエルが言ってくれたことだが、この街のあるルードレッド王国は、民主主義という思想を持っており、国王はいるが象徴的な存在に過ぎず、権限は民衆にあるのだという。
 議会制度があり、国民の代表者である議員達が集まって意見を交し合い、様々な案を出しながら国家を運営しているらしい。
 議会で出された案は、賛同者が議員全体の過半数に達すれば可決され、そうでなければ否決されるという風に、国家そのものがいわゆる多数決制に支配されており、悪く言えば数の暴力がものを言わす国ということになるが、一人の人間に全権力が任されているよりは、権力が分散している分安全と言えるだろう。
 無論、迅速な決断が出来ないなど、欠点もいくらかあるだろうが。


 初代市長邸跡はすぐに見つかったが、そこを見物するには、見物料が必要だった。
 安かったので払うことにしたが、少し悔しかった。
 建物は相当古びていたが、外からはまだ住めそうに見えた。
 石造りで造られていて、左右に離れがあった。
 前庭には花壇や噴水があり、今も手入れがいき届いていた。
 こんな建築物は今でもあるだろう。
 千年の時の洗礼に耐えて来た建物とは到底思えない。
 あたし達の地域では、ここ千年間での文明発展の速度は目覚しいものかも知れないが、前の千年のそれには大きく劣ると言われていた。
 これは外の世界も同じなのかも知れない。
 中にも入ってみたが、様式だけ見ると、それほど昔の建物には思えなかった。
 帰ろうとすると小冊子がもらえた。
 この街の大まかな歴史が綴られていた。
 小冊子の大体の内容について説明するとこうだ。
 約千百年前のその頃にも、このルードレット王国に似た国が存在していた。
 規模は小さく軍事力にも乏しかったが、治安の良い国であり、今のルードレット王国はこの国に倣って創られたらしい。
 この国が倣ったというのだから、その国も当然、民主主義という思想を持っていた。
 つまりその国も多数決の国であり、数の暴力が支配する国であったというわけだ。
 多数派は多数ゆえに常に勝利し、少数派は少数であるがゆえに常に敗北する。
 たとえ多数派と少数派の差が僅かなものであっても、その法則は適応されたのだから、勝利者は確かに多くいたが、敗北者もけして少なくはなかった。
 その敗北者達がこの街を築いたのだ。
 街を築いた敗北者達とは、ある街を囲うようにして点在していた村々の農民達の集まりだったとされている。
 長く続く不作に苦しめられていた彼らは徒党を組んで、定額所得者の税を減額する法を制定するという案を議会に提出した。
 だが議員達のほとんどが、それの案に関して反対意見を述べた。
 彼らはある日、住む土地に見切りをつけて旅立った。
 そしてこの場所に村を設立した。
 その村は、発展してこのローズ・シティとなる村であり(ちなみに街を出てから、この村が創られるまでの経緯はほとんど書かれていなかった。この地に辿り着いた――迷い込んだ、が正しいのかも知れない――のが、冬の初めの頃だった、程度の記述しかない)、設立当時はエルドラド・ヴィレッジという名前だった。
 この村は国有地に無断で創られたことになるのだが、どういうわけか国は敢えて無視する態度を取っていたため、村は少しずつ発展してゆき、移民する者も結構現れた。
 そして約千三十年ほど前、マーヴェン・ローズ一向が訪れ、ある厄介な事件を解決し、マジック・アイテムを寄贈した。
 それからローズ・シティに名前が変えられた。
 同時期、国がこの街を正式な街として認めることにした。
 そして初代市長が誕生し、初代市長邸が築かれた。
 アイル・コルトという名の初代市長は、街を創る上で指導者的存在となった人物の、血を継ぐ者であったという。
 ……以上だ。
 「最も古き場所」についての記述は全くない。
 ここも違うみたいだし……。
 どうやらここでは手掛かりを得ることは出来なかったようだ。

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29784スレイヤーズTRYノベル:二十二話:千年都市(三賢者の塔)ハイドラント 2004/4/6 23:16:12
記事番号29726へのコメント
 22:千年都市(三賢者の塔)


 昼食を挟んで、あたし達が次に向かったのは三賢者の塔という場所であった。
 無論三賢者というのは、マーヴェン・ローズ、レイ・マグナス、バース・ブラウンの三人のことである。
「当時、マーヴェン・ローズはともかく、レイ・マグナス、バース・ブラウンの二人はまだ賢者とは呼ばれていなかったと言われています。大陸の北の果てに住んでいたとされる二人が賢者となり、そのことがこの街に伝わったのは塔が建てられてから大分後のことですから、そうなると、最初は別の名前で呼ばれていたのだと思われるかも知れませんが、実は元からその名前だったそうですよ。マグナスも、ブラウンも、きっと賢者になるだろうということでつけられた名前だそうです」
 ラファエルのウンチク披露は、この時もまたおこなわれた。
 塔には入場料があり、意外と高いものであったが、ここには例のマジック・アイテムがおかれているらしい。
 ラファエルは絶対いくと言って聞かない。
 塔と言ってもそれほど高いものには見えなかった。
 せいぜい四、五階程度だろう。
 内部には螺旋階段があり、暗い空間を灯火が照らしていた。
 この灯火は魔法の灯火で、何と千年前からずっと燃え続けているのだという。
 その原理はラファエルすら知らなかったが。
 最上階へは本当にすぐに辿り着いた。
 丸い部屋で、それほど広くはない。
 観光客は数人程度。
 中央には硝子のケースがあった。
「あれですよ。インバースさん」
 ケースの中には台座があり、台座の上に指輪がおかれていた。
 真紅に輝く美しい宝石をあしらった指輪だ。
「これが例のマジック・アイテムですよ。どのような力があるのかは誰も知らないようですけど。でも不思議と人を呼び寄せる力を持っているそうで、この指輪が寄贈された後、街は今まで以上のペースで発展していったみたいです。……そうでもなければ、わざわざ塔を建てたり、街の名を変更したりしようとは考えなかったでしょう」
 千年間、この指輪はこの硝子ケースの中で眠り続けた。
 今も夢を見続ける。
 この前見たトモシビジシを連想してしまった。
「あんたはどう思う?」
「何のことですか?」
「この指輪の力がどんなものかよ」
 真実は分からなくても、予測することは出来る。
 意味はないかも知れないが、純粋に面白い。
 だから遊びとして、あたしはラファエルにそう訊ねてみた。
「そうですねえ。わたくしには分かりません。でも、指輪の宝石が赤いのはローズが火竜王信徒だったからかも知れませんよ」
「なるほど。でも名前がローズ(薔薇)だからの方が自然じゃない? 薔薇って基本的には赤いイメージでしょ」
「う〜ん。そうかも知れませんね」
 結局指輪は見るだけで、はめることなど出来なかった。
 この硝子ケースは簡単に壊せるものではないらしい。
 ちなみにガウリイとフィリアは、ここではもの凄く退屈していた。


 塔を出ると、すぐさまシティ馬車で宿に向かった。
 それから、あたし達はそれぞれ自由行動を取ることとなった。
 フィリアはまたあの老人に会ってみると言い、ラファエルは一人でどこかに消え、あたしとガウリイが残った。
 することも特になかったので、二人で散歩をすることにした。
 適当に歩いていると、露店が立ち並ぶ通りに出た(*1)。
 恐らく観光客相手の通りなのだろう。
 きつい色の香水を売る店、無気味な人形を売る店、立ち入り禁止と書かれたやけに大きな立て札を売る店、胡散臭いマジック・アイテムを売る店もあった。
 また何もおかれていない店もあった。
 その店の店主は、どこか挙動不審に見えた。
「なあ、リナ」
 突然ガウリイが話し掛けて来た。
「俺、あれ欲しいんだが……」
 青年剣士の指差す先を、あたしの視線が追った。
「…………」
 呆然となるあたし。
 視線の先には、恋愛成就祈願との文字。
「……ガウリイ?」
 身体が一気に沸騰する。
 心臓の鼓動が高鳴った。
 あたしは震える手で何枚かの硬貨を渡す。
「良いのか」
 少し躊躇ってから頷いた。
 ガウリイは歩いていく。
 あたしは後ろ姿を見つめたまま硬直していた。
 やがてガウリイが店の前に辿り着き、そしてそこを横切った。
「……え?」
 浮かび上がった感情は、果たして安堵だったのだろうか。
 ガウリイが向かったのは、すぐ真横にあるホットドッグ屋であった。
 ガウリイはあたしの食べる分も買って来た。
 ドリンクも一緒に買っていたので、食べ歩くことにした。
 その後も適当に歩き回っていると、やがて空が曇り出し、さらにしばらくして雪が降り始めた。
 帰り道は分からなくなってしまっていたが、あの十字路は結構有名な場所らしく、通りすがりの人に道を訊くとすぐに分かった。
 かなり遠くに来ていたようで、帰る途中で日が暮れて来た。
 あたし達は適当な場所で食事を取ることにした。
 宿のある十字路に入ったのは午後七時。
 空は暗闇に覆われていた。
 雪はまだ止みそうにない。
 その通りに足を踏み入れた時、呟くような声が聴こえた。
 何気なく石碑に目をやると、跪く子供の後ろ姿が見えた。
 黒髪で暖かそうな服を着ている。
 恐らく少女だろうと判断した。
 少女は何かを呟いている。
 内容は全く聴き取れなかったが。
 あたし達は少女の後ろを通り過ぎた。
 後ろを振り向くと、他にもたくさんの人々が、少女の後ろを素通りしていくのが見えた。
 部屋に戻るとフィリアがいた。
 ラファエルもすでに帰っているらしい。
 フィリアは、全く情報を得られなかったことをあたしに伝えた。
 窓の外を覗くと、あの少女はもういなかった。
「それにしても退屈ですね」
 確かに、今は何もすることがない。
 シュワルツに囚われた時のことを思い出して、苦笑した。
「寝る?」
「いえ、まだ眠くはありません」
「あたしもよ」
 外を眺めるのも退屈だし、良い話題も思いつかない。
 それに中途半端に疲れているため、何かをする気も起こらない。
「あっ」
 そんな中、フィリアが何かを思いついたかのように声を上げた。
「お風呂」
「……お風呂?」
「最近入ってませんよね」
「……確かに」
 水浴びの出来る季節でもないし、最近は香水を掛けるだけで済ますことが多かった。
シュワルツの住処で水に浸からされたのが、最後だったかも知れない。
「でも、お風呂屋さんの場所知ってんの?」
 こんな雪の中、必至に探し回るのは嫌だ。
「その点は安心してください。この辺のマップ買って来ましたし」
 そう言って荷物の中から、一枚の大きな羊皮紙を取り出した。
 小さくて見辛いマップだったが、確かに銭湯の場所も載っていた。
 比較的近い位置にあるみたいだ。
 凍てつく寒空の下、あたし達はお風呂を目指して走り出した。
 銭湯は普通の銭湯だった。
 普通の水を温めて石の湯船に入れただけ。
 温泉などではない。
 しかし久しぶりの入浴は非常に気持ちの良いものであった。
 火照る身体を冷やさぬように、あたし達は来た時以上の猛ダッシュで宿に戻った。
 その後しばらくベッドの上でゴロゴロしていると、いつしか睡魔が襲って来た。
 翌朝起きてみると、雪はまだ降り続いていた。
 フィリアはあたしより遅起きで、昼までずっと眠っていた。
 そのため午前中はガウリイとラファエルの部屋にいっていた。
 もっとも雑談をして、ラファエルのウンチクを聞いたくらいで、得るものは全くなかったが。
「リナさん。何をしてるんですか?」
 郷土料理店で昼食を取り戻って来た後のことである。
 目覚めてまだ二時間ほどしか経っていないフィリアが訊いて来た。
「小説書いてんのよ」
 曖昧に答えても追い払えそうになかったので、正直に答えた。
 今、あたしは持って来た羊皮紙を取り出して、そこに物語を綴っている。
「えっ、見せてくださいよ」
 紙面を覗き込もうとするフィリア。
 あたしはそれを遮り、強く言った。
「だめよ。書き終わってから」
「ちょっとくらい良いじゃないですか」
 だが諦めようとしないフィリア。
「だめ!」
「良いじゃないですか」
「だめったらだめ」
 延々と言い合いが展開され、筆が全然進まなかった。
 最初は長編に挑戦していたが、うまく進まず、短い話に切り替えた。
 心理学や魔道の知識を活かそうとも思ったが、今のあたしの知識や筆力ではどうせうまくいかないだろうと思ったので止めた。
 小説とも言えないほど短い掌編小説は何本か書いたが、傑作とは程遠いものばかりであった。
 それでもあたしは勇気を振り絞り、皆に一番まともな作品を公開した。
 それが夕食前のことである。
 どうせどこにも発表する気はないので、ここに記載することにする。


 *


 ――旅の終わり――


 男は思った。
 ここはどこなのだろうか。
 随分遠くまで来てしまった。
 それでも道は続いている。
 果てしない悪路を男は引き続き歩いた。
 やがて男は旅人に出会った。
「あんたは何年旅してる」と男は旅人に最初に尋ねた。
「かれこれ四年ですよ」と旅人が言った。
「四年か」男は溜息を吐いて空を見上げた。
 それから男は、「俺は十歳の時から旅してる」と自慢げに言った。
「凄いですね」と旅人。
「あんただって凄いさ」と男。
「ところでなぜ旅を」と今度は旅人が訪ねて来た。
 その問いに答えるためには、少し考える必要があった。
 考えに考えた後、男は言った。
「理由はないだろうな」そう言った。
「当てもなく旅をしているんですか」旅人は驚いていたのかも知れない。
「ああ」と男は頷いた。
 それから、「ところであんた良いな」と続けて言った。
「へ?」
 男は長い沈黙の末にこう言った。「俺はあんたに惚れちまった」
 旅人は驚き、狼狽し、そして俯いた。
 覗き込むと、顔が朱に染まっているのが分かった。
「俺はあんたを探してたのかも知れん」
「そんな……」
「俺と結婚してくれ」男は思い切って、その台詞を口にした。
「すみません」と旅人が言った。
「……そうか」
「本当にすみません」
 女の旅人が去っていく様を、男はただ見つめていた。
 もう旅をする理由は失われてしまったのではないかと、心に問い掛けた。


 (了)


 *


 自分でもあまり良い出来とは思えないこの小説に対し、フィリアは薄っぺらい賛辞を並べ立ててくれた。
 ラファエルは最後の一行が良いと言ってくれた。
 ガウリイはさっぱり分からんと言ってくれた。
 それからあたし達は、昼と同じ店に向かった。
 まだ雪は降り続けていた。
 石碑の前には昨日と同じ少女がいて、同じく何かを呟いていた。
 夕食を取り、すぐ宿に戻って来た。
 そしてすぐに寝た。
 無意味に過ぎた一日だった。



 リナちゃんの寂しいほど寡黙な注釈


 適当に歩いていると、露店が立ち並ぶ通りに出た(*1):後から知ったことだが、かなり人気のある通りらしい。また通りの名前は「千億の星通り」だとか。


<@><@><@><@><@><@><@><@><@><@>


 こんばんは、ハイドラントです。
 この話、気付けばかなり長かったので、前後編に区切ることにしました。
 セコセコな伏線を張りつつも、基本的に観光を中心にした回です。ちなみにローズ・シティは秋田禎信氏の「魔術士オーフェン」に出て来る古都アレンハタムをイメージして造りました。
 オプショナルツアーとしてリナの書いた(?)小説まで読めますので、ごゆっくり楽しんでください。……ってもう読み終えてるか。
 

 「キノの旅」(時雨沢恵一著作)読んでみました。
 一巻読了時点で思ったのは、この人(時雨沢氏)、現在の小説のあり方に疑問を感じていて、それを暗に訴えようとしているんじゃないかってことです。
 現代の小説らしい主人公を登場させつつも、小説というよりは「お話」的なストーリーを描いていることからそう思いました。
 まあ全部推測ですが。


 また「サマーアポカリプス」(笠井潔著作)が凄かったです。
 秘宝伝説、見立て殺人、密室殺人、過去の事件、どんでん返しなどなど、本格推理小説的な魅力に満ち溢れており、虜にされました。
 ただしかなり情報量が多くて、頭が疲れましたが……。
 それにしても、これだけのものをどうやって書いているのか、不思議で不思議でなりません。


 それではこれで失礼致します。

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29792戻ったら旅行記を書かされそうですね。エモーション E-mail 2004/4/7 23:28:36
記事番号29784へのコメント

こんばんは。

今日は2話ですね。
三賢者の塔や石碑、マジックアイテムな真紅の指輪など、伏線を張りつつ、街の歴史や
風景が書かれていて、ふと「実はこれはすべてが解決したあと、リナが書いている
回想文かも」と思いました。
また、出来事そのものは省いても、結界の外の国へ出かけた以上、無事に帰ったら、
魔道士協会や国王や国のお偉いさんから、旅行記や紀行文の提出を
要請されそうだなとは思いました。
もっとも、マルコ・ポーロの「東方見聞録」や、玄奘三蔵の「大唐西域記」みたいなのを、
自主的に書きそうな気もしますけど。

>「俺、あれ欲しいんだが……」
> 青年剣士の指差す先を、あたしの視線が追った。
>「…………」
> 呆然となるあたし。
> 視線の先には、恋愛成就祈願との文字。
>「……ガウリイ?」
> 身体が一気に沸騰する。
> 心臓の鼓動が高鳴った。

観光場面では個人的にこの場面がツボでした♪
思わずドキドキするリナと、しれっと……隣のホットドック屋へ行くガウリイが(笑)
実はガウリイ。わざとやってるんじゃないかとか、つっこみたくなります(^.^)

> ガウリイはあたしの食べる分も買って来た。
> ドリンクも一緒に買っていたので、食べ歩くことにした。

そしてさらにこの部分が、ガウリイの愛だなあと。
さりげなく「誰も入り込めません」みたいな、リナとガウリイの絆を
妄想しつつ(笑)読みとりました。

リナの書いた小説……。リナの心情も入っているのかな、と思いました。
旅をする理由等の辺りに。
それにしても「最も古き場所(前回間違えまてしまいまして、すみません。
頭の中がどうやら、ソードワールド辺りとごっちゃになっていたようです)」は
どこなのでしょうね。
石碑辺りが実は鍵かなとか思いつつ、ヴァルガーヴがしびれきらして
やって来たりして(笑)とか、勝手な妄想をしてたりもします。

「キノの旅」……実はざっと読んだ程度でしかないのですが、

> 一巻読了時点で思ったのは、この人(時雨沢氏)、現在の小説のあり方に疑問を感じていて、それを暗に訴えようとしているんじゃないかってことです。
> 現代の小説らしい主人公を登場させつつも、小説というよりは「お話」的なストーリーを描いていることからそう思いました。

これは私も同意します。
ある意味では「ブギーポップ」と似た系統ですが、少なくとも最近のファンタジー系と同じ路線を、
まったく狙っていないのは確かだと思います。
あえて「ライトノベル」の分野で、寓話・童話的な話を書いているような。
そう言う意味で、久しぶりに現れた面白い作家さんだと思っています。

それでは、続きを楽しみにしつつ、今日はこの辺で失礼します。

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29793Re:そして文章関連の方でも一躍有名となったり(?)ハイドラント 2004/4/8 01:10:18
記事番号29792へのコメント


>こんばんは。
こんばんは。
ネットで資料調べをしていたらいつの間にかレスがついてる、ということで眠る前に返させて頂きます。
>
>今日は2話ですね。
途中で区切りたくない話だけど、一記事では長過ぎるということで分けようと思ったけど、両方とも「千年都市」というタイトルで統一したい、でもこの二話だけでローズ・シティ編が終わるのではないから前後編というのはおかしい、と考えた結果こうなりました。
>三賢者の塔や石碑、マジックアイテムな真紅の指輪など、伏線を張りつつ、街の歴史や
>風景が書かれていて、ふと「実はこれはすべてが解決したあと、リナが書いている
>回想文かも」と思いました。
「現在進行的な文章を入れ混ぜて小説風にした回想録」というイメージで書いてたりします。横溝正史の作品なんかはこんな書き方だったような気が……。
作中の方でどのような扱いをされているかは、現在の原稿では八期終了後に明かされるという形になっています。
>また、出来事そのものは省いても、結界の外の国へ出かけた以上、無事に帰ったら、
>魔道士協会や国王や国のお偉いさんから、旅行記や紀行文の提出を
>要請されそうだなとは思いました。
ううむ、魔道士協会の存在、すっかり忘れていました(爆)。
スレイヤーズって世界に関する設定が多くて、盲点になる部分が多数出て来るんですよね。まあそれがスレイヤーズの魅力の一つなんですが。
>もっとも、マルコ・ポーロの「東方見聞録」や、玄奘三蔵の「大唐西域記」みたいなのを、
>自主的に書きそうな気もしますけど。
そして文章方面でも歴史に名を残すかも……。
>
>>「俺、あれ欲しいんだが……」
>> 青年剣士の指差す先を、あたしの視線が追った。
>>「…………」
>> 呆然となるあたし。
>> 視線の先には、恋愛成就祈願との文字。
>>「……ガウリイ?」
>> 身体が一気に沸騰する。
>> 心臓の鼓動が高鳴った。
>
>観光場面では個人的にこの場面がツボでした♪
>思わずドキドキするリナと、しれっと……隣のホットドック屋へ行くガウリイが(笑)
>実はガウリイ。わざとやってるんじゃないかとか、つっこみたくなります(^.^)
確かにわざとらしいですねえ。
ちなみにガウリイがクラゲな(あるいはクラゲを装っている)理由に関しては、独自のものかは分かりませんが、一つの説を持っていたりします(それはこの小説でその一部が明かされるかと)。

>
>> ガウリイはあたしの食べる分も買って来た。
>> ドリンクも一緒に買っていたので、食べ歩くことにした。
>
>そしてさらにこの部分が、ガウリイの愛だなあと。
>さりげなく「誰も入り込めません」みたいな、リナとガウリイの絆を
>妄想しつつ(笑)読みとりました。
イメージとしては、すぺしゃる15巻「スクランブル・グリル」の表紙にガウリイを足したような感じ(?)。
ガウリナは永久不滅ですね(オール肯定派が何を言うんじゃってハナシですが)。

>
>リナの書いた小説……。リナの心情も入っているのかな、と思いました。
>旅をする理由等の辺りに。
その通りかどうかは私にも判断が着きませんが、そう思って頂けて嬉しく思います。
>それにしても「最も古き場所(前回間違えまてしまいまして、すみません。
いえ気にしないでください。名前間違えられても、笑って済ませて、むしろ、なぜ間違えられたのかってことに好奇心働かすような男ですから。
>頭の中がどうやら、ソードワールド辺りとごっちゃになっていたようです)」は
>どこなのでしょうね。
>石碑辺りが実は鍵かなとか思いつつ、ヴァルガーヴがしびれきらして
>やって来たりして(笑)とか、勝手な妄想をしてたりもします。
意外な場所ではないです。というか意外な場所には出来ませんでした。多分、見つけてからの話の方がまだ面白いかと思われます。


>
>「キノの旅」……実はざっと読んだ程度でしかないのですが、
>
>> 一巻読了時点で思ったのは、この人(時雨沢氏)、現在の小説のあり方に疑問を感じていて、それを暗に訴えようとしているんじゃないかってことです。
>> 現代の小説らしい主人公を登場させつつも、小説というよりは「お話」的なストーリーを描いていることからそう思いました。
>
>これは私も同意します。
>ある意味では「ブギーポップ」と似た系統ですが、少なくとも最近のファンタジー系と同じ路線を、
>まったく狙っていないのは確かだと思います。
>あえて「ライトノベル」の分野で、寓話・童話的な話を書いているような。
>そう言う意味で、久しぶりに現れた面白い作家さんだと思っています。
ライトノベルをレーベルのメジャーマイナー問わず、結構雑読している私は、「ストーリーだけ取り出せば、そこそこは面白いかも知れないが、舞台雰囲気も登場人物も今一つで、小説として長々しく書かれているのが鬱陶しい」という話に結構出会ってたりするので、こういう話は嬉しいです。
新品で買いましたけど、損した気分にはなりませんでした(何か追記的な文章になってますが……)。


>
>それでは、続きを楽しみにしつつ、今日はこの辺で失礼します。
ご感想どうもありがとうございました。

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29804スレイヤーズTRYノベル:二十三話:鎮魂の雪ハイドラント 2004/4/10 20:34:04
記事番号29726へのコメント

 23:鎮魂の雪


 結局、「最も古き場所」の場所を特定出来たのは、それから三日後のことであった。
 その日の朝は晴れていたが、日が傾き始めると雪の群れは降り立った。
 全員で古い建物をめぐった後――この日を含め三日掛けてかなりの場所を探ったが、収穫は全くなかった――、早めの夕食を取るために入った食堂で、それを確認した。
 宿に着いた頃には陽の光は夜闇に沈んだ。
「やっぱりおかしいわね」
「どうしたんですか?」
 窓から外を眺めていると、フィリアが脇に寄って来た。
 黄金色の瞳であたしの見る場所を探している。
「あの子よ」
 あたしは硝子越しにその場所を指差して言った。
「あそこでしゃがんでいる女の子ですか?」
 「女の子って分かる?」
 フィリアはあっ、と声を上げた後、
「……いえ、そう感じただけです」
 あの少女は、またしてもそこにいた。
 白い石碑の前である。
 石碑に向かったまま動かない。
「あの石碑って何が書いてあるの?」
「さあ? ラファエルさんなら知ってるんじゃないでしょうか」
「そうかも知んないけど、見る方が早いわ」
 そう言い、あたしは駆け出す。
 フィリアは後を追い掛けて来た。
 部屋を出、廊下を抜け、入り口の扉を開けて外に出る。
 雪が降り、風が吹く中、あたしは走り去ろうとする少女を呼び止めた。
 振り返る少女。
 その容貌はまだ闇の中。
 辺りに人通りはない。
 彼女だけがそこにいる。
 あたしは彼女に近付いていく。
 おどかさないように、無気味でない程度にゆっくりと。
「ねえ」
 返事はない。
 少女は戸惑っているようだ。
 無理もない。
 いきなり知らない人に呼び止められたのだ。
「怪しい者じゃないわ。ちょっと良い?」
「あっ、は、はい」
 か細い声だったが、肯定の意を示すものであることは明白だった。
 すでにフィリアも後ろに来ている。
 あたしとフィリアと少女だけがここにいる。
「あの石碑……」
 あたしはゆっくりと、白い石碑へ指を動かす。
「あの石碑って何なの?」
「……街の設立記念碑です」
 黒髪の少女ははっきりと答えた。
 透明感のある綺麗な声だ。
 氷や硝子を思わせるが、冷たさや無機質さとは無縁である。
「設立記念碑?」
「……そうです。書いてありますよ」
 あたしは石碑に近付いて、明かりの呪文を使い、書かれている文字を目で追った。
 内容は少女の言う通りのものであった。
「でも、こんな石碑の前で何してたの?」
「お墓参りみたいなものです」
 少女はすぐに返答した。
 案外、人に慣れ易い性質の持ち主なのかも知れない。
 それにあたしが思っていたほど幼くはないのだろう。
「お墓参り?」
「誰か亡くなられたんですか?」
 フィリアが口を挟んだ。
「……ここに村が出来るまでには、たくさんの人が亡くなりました」
 暗いので詳しくは見えないのだが、少女は悲しげな表情を浮かべたのであろう。
 声は大きく震えていた。
「……そう」
 あたしまで気分が沈む。
「私、マリーカっていいます。マリーカ・コルト」
 自己紹介をする声がやけ明るかったのは痛々しくも感じられたが、お陰で少しは 明るい空気が戻った。
 それにしてもコルトって、どこかで聞いたことがあるような……。
「あたしはリナ・インバースよ」
「フィリアです」
 あたし達も自己紹介をする。
「さっきのお話の続きですが、それだけじゃないんです」
「え? 何のこと?」
「村を創るまでに犠牲になった人だけじゃないんです」
 どういうことだろうか。
 供養する対象が他にもいると言いたかったのだろうか。
「全部祖父に聞いたことなんですが……千百年ほど前のことです」
 彼女は語り出した。
 時の奔流に埋れた古代都市の話を、拙いながらも妙にリアリティのある語り口で。
 千百年前、街を抜け出した一向が、この地に迷い込んだ日は雪が降っていた。
 視界の悪い中、彼らはこの地にあるものを発見した。
 それは地下へ続く階段だった。
 地下への階段を彼らは降りた。
 だが、階段を降り切る前にあるものに気付いて戦慄した。
 壁や階段の随所が、血の跡で赤く染められていたのだ。
 そして、血塗れなのにも関わらず、生物の死骸は全く落ちていなかった。
 これには当然、恐怖を感じただろう。
 だが彼らはこの場所から一目散に逃げようとは考えなかった。
 彼らは道に迷っていたのだ。
 これ以上無闇に歩き回るより、ここで休んでいった方が良い。 
 彼らは寒さを凌ぐため、ここに滞在することにした。
 何と階段を降り切った先には、地下住居とも言うべき空間が広がっており、誰もいなかった上に食料が蓄えられていた。
 食料は充分過ぎるほどあり、春を過ぎても尽きることはなかった。
 そして雪解けの後の大地を見た彼らは、ここが裕福な土地であることに気が付いた。
 冬はともかく、春から秋までは農作が出来る。
 彼らは近くにあった村の世話になりつつも、ここに街を創った。
 あの場所は「墓」として、これ以上誰にも侵されることがないように封印した。
 上に石碑を立てたのだ。
 自分達が散々利用した場所に蓋をしてしまおう考えるのはどうかと思うが、千年以上前の人間のやり方に文句をつけても仕方がない。
「ここにお墓参りにいくという風習はもうとっくに消えたことなんですが、祖父から話を聞かされて、やらなくちゃなって思えて来たんです」
 お墓参りは冬の初め頃の雪が降る日には、必ずおこなう。
 大業の犠牲になった人々と、「墓」にてたくさんの血を流した者達に。
「でも、それって大変じゃない?」
 聞き終わってからあたしは訊いた。
「大丈夫です。アイル・コルトの末裔ですから」
 誇らしげに言うマリーカ。
 それにしてもアイル・コルトってどこかで……あっ!
「アイル・コルトってもしかして(*1)!?」
「あっ言い忘れてました。私、初代市長家の人間なんです。正確にはなくなった初代市長家に一番近い家らしいんですけど(*2)……」
 彼女の語った話は、今では初代市長家にのみ伝わるものであるのだという。
そのような話を他人に語って良いものなのだろうか。
「もしかして……ここが「最も古き場所」?」
「その可能性は高いですね」
「……どうかしたんですか?」
 少女が訊いて来るが、あたしは笑顔で何でもないと答え、お礼と詫びの言葉を掛けて、さよならをする。
 ついに答えが見つかった、と思った。


 実はマリーカのことが気になった理由は、単に何度も見掛けたからというものだけではない。
 この日の前夜、あたしは一つの夢を見ていた。
 その夢の内容は以下である。
 道を歩いているとマリーカとは違う茜色の少女が現われ、手招きをして、走り去っていった。
 あたしがその少女を追い掛けていくと、あたし達が現在宿泊している宿のある十字路にそっくりの場所に出た。
 そしてそこには追い掛けていた少女の姿はなく、代わりにマリーカらしき少女の姿があった。
 それほど不思議な夢というわけでもないが、とにかくリアルで印象的な夢だった。
 この夢を見たという記憶があったため、石碑の前にいるマリーカの姿を発見した時、その姿が今まで以上に気を引いたのだ。
 もしこの夢を見なければ、マリーカに出会うことはなかったかも知れない。
 なぜならマリーカのお墓参りは期間限定の行事らしいのだから。
 それにしても最初に出て来たあの少女は何者なのだろう。
 謎である。
 

「なるほど。こんな近くにあったとは……」
「その話が本当なら、だけどね」
 あの後あたし達は宿に戻り、ガウリイ達を呼んで来た。
そしてあの少女のことや、少女が語ったことを、掻い摘んで彼らに話した。
「でもこの下にあると言っても、どうやって入るんでしょうか?」
 ラファエルは本当に困っているようだ。
 まさか呪文で破壊するわけにもいかない。
 どこかを押すと石碑がスライドするとかいう仕掛けもあるわけないし。
「ガウリイ、何か案ない?」
「俺かっ!?」
「いや、良いわ。案外何か考えてるんじゃないかと思ったけど、やっぱりクラゲだったみたいね」
 溜息を吐くあたし。
「俺はクラゲじゃない!」
 大声を出すガウリイ。
「5693+3294は?」
「…………」
 ガウリイは沈黙した。
「8987ですね(*3)」
 なぜか横から答えるラファエル。
 答えはあたしも知らないから、正解かどうかは分かんないけど……。
「あの……」
 そこへフィリアが割って入った。
 彼女の視線はラファエルへ。
「あの、ラファエルさん」
「何でしょう?」
 フィリアはしばらく黙り込んで、彼を見つめ、やがて思い切ったように口を開いた。
「前から好きでした(*4)」
「…………」
「いえ、これは冗談で……」
 冗談かい!
「瞬間移動とか出来ません?」
「出来ません」
 フィリアの希望は即座に切り捨てられたが、今度はあたしがフィリアに同じ質問をしてみると、
「一応、出来なくもないと思いますけど……」
「じゃあ最初からやりゃあ良いじゃないのよ」
「でも……」
 嫌味なところはなくなっていったフィリアだが、こういうところは消えそうもない。
多分生まれ持った性質なのであろう。
「でもぉ〜、じゃないわよ。出来るんならやんなさいよ!」
「まあインバースさん。コプトさんにも言い分があるんですよ」
 そう言って、あたしの苛立ちを抑えたラファエルは、優しい口調でフィリアに訪ねた。
「何か、出来ないわけでもあるんですか?」
 フィリアは申し訳なさそうに言った。
「……成功と失敗の確率が半々なんです」
「失敗したらどうなるんです?」
 ラファエルが恐る恐る訊くと、フィリアは即答した。
「全員死にます」
 しかもはっきりと。
「しかも生きて帰ることを考えると、往復しなければいけませんから、生き延びられる可能性は四分の一です」
「う〜ん。それじゃあ……」
 あまりにも分の悪い賭けだ。
しかも瞬間移動に失敗して死ぬなんて、ヴァルガーヴに殺されるのの数百万倍恥ずかしい。
「……他に良い案ありませんか?」
 そのラファエルの言葉に答える者はいなかった。
 ラファエルはしばし全員を見回した後、微笑みを浮かべ、
「じゃあ破壊するしかありませんね」
 石碑の前に両手を翳した。
「止めいっ!」
 あたしが叫ぶ。
「なぜですか?」
「怒られるに決まってるでしょ」
「火竜王の神殿の財力でどうにか……」
「無理です」
 言ったのはフィリア。
「とにかく破壊するなら、市長とか何とかに許可取った方が良いんじゃない?」
「許可が取れない場合はどうするんです?」
「そん時は無断破壊よ」
「……それが最良の方法かも知れませんね」
 どうせだめで元々なのだ。
 やって見る価値はあるだろう。


 リナちゃんの微妙にうるさい注釈


 アイル・コルトってもしかして(*1):二十一話に名前が出たことを覚えている読者もいることだろう。


 初代市長家に一番近い家らしいんですけど(*2):ということは姓が同じだけで、実は赤の他人同然ということもありうる。そういえば、「その昔、インバース家の人間がゼフィーリアの有力貴族の元に嫁いだことがあった」と父ちゃんが言っていたが、あれは本当なのだろうか。


 8987ですね(*3):どうやら正解のようだ。簡単過ぎたか?


 前から好きでした(*4):一瞬、本気かと思ってしまった。何せフィリアには前科があるのだから。


 あとがき


 こんばんは、ハイドラントです。
 ついに「最も古き場所」――らしき場所――の正体が明かされました。
 といっても意外性ゼロの丸分かり状態でしたが。
 

 ついに本作、執筆終了しました。
 相当疲れてしまいました。
 さて見直し修正レッツゴーですが、私はミスが多いから、直す方が数倍大変なんですよね。
 しかも左脳が限界寸前。
 「ミスがあっても、矛盾があっても、作品成立しなくても良いじゃないか」という悪魔の囁き(笑)を跳ね除けるので精一杯です。
 久しぶりに「小さな国の物語」でも書こうかな。


 さて次回は市長との対決!?
 結構短めになると思います。
 タイトルは「白地の衣」の予定。
 それではこれで……

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29807フィリア……(笑)エモーション E-mail 2004/4/10 23:20:33
記事番号29804へのコメント

こんばんは。

夢のお告げ(多分違う)で「最も古き場所」が判明しましたね。
血塗れの階段を下りていくと、食料その他のある空間……。
よく考えなくても不気味です。それでも下りていったのですから、
その場所を見つけた人々は、精神的にも体力的にも、かなり限界ギリギリの
状態だったのでしょうね。
読んでいて、何となく避難用のシェルターみたいと思ってから、実際にそうだったのかも、
と思いました。
古代竜が使ってたのかな、と。
それならヴァルガーヴがこの場所を知っていても、おかしくないですし、
血塗れの意味も納得出来ますから。
ところで、ヴァルガーヴ……。もしかしてずっと、リナたちが来るまで、
下で待っているのでしょうか?
思わず、じっと待っている姿を想像してしまいました。

中に入る方法を考えるリナ一行。破壊はさすがに拙いでしょうね(^_^;)
普段、気に留める者がいないと言っても、街の大切なモニュメントなのですから。
お参りしているマリーカさんも、それは嫌がって、必死で止めるでしょうね。

>「……成功と失敗の確率が半々なんです」
>「失敗したらどうなるんです?」
> ラファエルが恐る恐る訊くと、フィリアは即答した。
>「全員死にます」
> しかもはっきりと。
>「しかも生きて帰ることを考えると、往復しなければいけませんから、生き延びられる可能性は四分の一です」

単に疑問に思っただけなので、質問しますが、これは全員を連れての場合で、
フィリア個人だけならまず問題ないのですね?

また、 

>「あの、ラファエルさん」
>「何でしょう?」
> フィリアはしばらく黙り込んで、彼を見つめ、やがて思い切ったように口を開いた。
>「前から好きでした(*4)」
>「…………」

今回、この部分に笑ってしまいました。本当に、フィリアが言うと冗談に聞こえません(笑)
いや、実は本気だけど、誤魔化したとか(笑)

次回は……現市長との口論バトルでしょうか。
なんとか、無事に石碑を破壊せずに入る方法が見つかると良いのですが……。

それでは、続きを楽しみにしつつ、今日はこの辺で失礼します。

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29814Re:迷言集に入るかも(作るとしたら)。ハイドラント 2004/4/12 19:10:19
記事番号29807へのコメント


>こんばんは。
こんばんは。
>
>夢のお告げ(多分違う)で「最も古き場所」が判明しましたね。
>血塗れの階段を下りていくと、食料その他のある空間……。
>よく考えなくても不気味です。それでも下りていったのですから、
>その場所を見つけた人々は、精神的にも体力的にも、かなり限界ギリギリの
>状態だったのでしょうね。
冬ですしね。
「寝るな! 寝たら死ぬぞ」状態だったのかも知れません。
>読んでいて、何となく避難用のシェルターみたいと思ってから、実際にそうだったのかも、
>と思いました。
>古代竜が使ってたのかな、と。
>それならヴァルガーヴがこの場所を知っていても、おかしくないですし、
>血塗れの意味も納得出来ますから。
>ところで、ヴァルガーヴ……。もしかしてずっと、リナたちが来るまで、
>下で待っているのでしょうか?
>思わず、じっと待っている姿を想像してしまいました。
……うっ、鋭い推理ですね。
どのくらい当たっているのかについては、連載小説の常として秘密ですが。
>
>中に入る方法を考えるリナ一行。破壊はさすがに拙いでしょうね(^_^;)
>普段、気に留める者がいないと言っても、街の大切なモニュメントなのですから。
>お参りしているマリーカさんも、それは嫌がって、必死で止めるでしょうね。
そうですねえ。早くも(?)前途多難?
>
>>「……成功と失敗の確率が半々なんです」
>>「失敗したらどうなるんです?」
>> ラファエルが恐る恐る訊くと、フィリアは即答した。
>>「全員死にます」
>> しかもはっきりと。
>>「しかも生きて帰ることを考えると、往復しなければいけませんから、生き延びられる可能性は四分の一です」
>
>単に疑問に思っただけなので、質問しますが、これは全員を連れての場合で、
>フィリア個人だけならまず問題ないのですね?
う〜ん、四人の時よりは成功率は上がるでしょうけど、空間を越える術ってやはり黄金竜でも難しいと思うんですよね、個人的見解ですが。
四人の時の失敗率50パーセント÷4で失敗率12、5パーセント(かなり安易な計算かも)。
従って成功率は87.5パーセント。
……といっても、自分を転移させるのと他人を転移させるのは難しさが違うでしょうし、それも自分と他人の転移を同時におこなうんですから、多少前後はするでしょうね。
後、フィリアの精神状態などにも影響されるはずですし。
>
>また、 
>
>>「あの、ラファエルさん」
>>「何でしょう?」
>> フィリアはしばらく黙り込んで、彼を見つめ、やがて思い切ったように口を開いた。
>>「前から好きでした(*4)」
>>「…………」
>
>今回、この部分に笑ってしまいました。本当に、フィリアが言うと冗談に聞こえません(笑)
実はこのシーンでは私自身、読み返すごとに吹き出していました。
笑いの少ないこの話では、貴重なシーンかも知れません。
>いや、実は本気だけど、誤魔化したとか(笑)
その可能性もありますね。
でもそうだとしたら、告白タイミング絶妙(笑)過ぎ。
>
>次回は……現市長との口論バトルでしょうか。
>なんとか、無事に石碑を破壊せずに入る方法が見つかると良いのですが……。
ううむ、どうなんでしょう。
あそこにしか入り口がないとしたら難しいかと……
>
>それでは、続きを楽しみにしつつ、今日はこの辺で失礼します。
ご感想どうもありがとうございました。
ダウンし掛けの状態ですが、何とかがんばっていこうと思います。

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29851スレイヤーズTRYノベル:二十四話:白地の布ハイドラント 2004/4/19 21:58:10
記事番号29726へのコメント

24:白地の衣


 ここで、市長について詳しく触れておくことにする。
 市長は領主に似ているが、領主ほどの権力を持ってはいない、という風なことは前にも言ったがそれにつけ加えることがある。
 市長は世襲制ではなく、市長が治める街の住人――つまり市民によって、立候補者内から選挙で選ばれる。
 市長の在任期間、つまり市長が市長でいられる期間は、六年間(*1)であり、その期間が終わると市長は自動的に市長の座から退かされ、再び市長を選ぶため選挙がおこなわれるが、前回市長の座についていた者も、新たな選挙に出馬することは可能である(*2)。
 またリコールという制度があり、これは在任期間にある市長が、悪事や不正をおこなうなどして、世間の評価を大きく落とすことがあった場合、市民の過半数が納得しさえすれば、問答無用で市長の座を剥奪することが出来るというものだ。
 ちなみにリコールされた市長は、次の選挙に出馬することが出来ないように定められている。
 以上である。
 ちなみにこれより詳しいことはあたしも知らない。


 さて作戦案が決まった日の翌日、あたし達は市長のいる市庁舎を訪れたが、市長は忙しいらしく会うことは出来なかった。
 そこでいつになれば会えるのかと係の者に訪ねると、二日後の昼前辺りだと答えた。
 あたし達はアポイントメント(会う約束)を取りつけ――この時にあたし達は、係の者に大体の素性を明かした――、おとなしく二日待つことにした。
 その日と次の日は晴れていたので、街を純粋に観光して回った(*3)。
 ラファエルだけは自由に観光したいといって、一人勝手にどこかにいったが。
 この街には有名どころから穴場まで、見るべきところは数多く、疲れはしたが退屈はしなかった。
 さて約束の日の前夜の話だが、フィリアがあたしの荷物を勝手に漁り、過去の冒険の記録を見つけ出すという出来ごとがあった。
 なぜ今になってあたしの荷物に興味を持ったのか疑問だが、もしかしたら前からずっと気になりつつも、内気な性格ところもあるがゆえに思い留まっていたのかも知れない。
「これ何ですか?」
 羊皮紙の束を見つけたフィリアは、目を輝かせて尋ねて来た。
 それに答えた後、読んで良いかとさらに訊かれたので頷くと、フィリアは嬉しそうな表情で記録に目を通していった。
「小説にしてみませんか? 面白いものになると思いますけど」
 しばらく経ってフィリアがまたもや質問を仕掛けて来た。
「小説ねえ。考えてもみなかったわ」
 本当に考えたことはなかった。
 いずれ自伝や回想録という形で発表するということは考えないでもなかったが、小説仕立てにするなんて、思いつきもしなかった。
「書いた方が良いですよ。それとも私が書きましょうか?」
「書けんの?」
「まあ、そこはどうにかして……」
 まあ小説というものは、巧く書こうとさえ思わなければ、基本的には誰でも書けるものだと思う。
 だがあたしの物語を、旅仲間とはいえ、実質的には赤の他人に過ぎないフィリアが書くというのはどうだろうか。
「まあ……考えとくわね」
 この話題は消滅し、数時間もせぬ内にあたし達は眠りに就いた。
 冒険の記録はしばらくフィリアに貸すことにした。


 そして夜が明け、ついに約束の日がやって来た。
 この日も空は快晴で、陽射しも風も心地良かった。
 こうして晴れた日々が続くのは、この辺りでは大雪の前触れと言われているらしいが、気象知識に乏しいあたしには真偽のほどは分からない。
 それにしても珍しいことに、この日、ラファエルは朝寝坊をした。
 ガウリイから聞いたのだが、彼は前日の夜、「撮れない、撮れない」とわけの分からないことを呟いていたらしい。
 まあ、それはさておき、場面を市庁舎に移すことにする。
 市庁舎は背の高い、真っ白な石の建物だった。


 市長と会う直前、あたし達は綿密な身体検査を受けた。
 領主ほどの権力はないにしても、事実上、一つの街の頂点にある人物に会うのだから、それくらいはされても当然だが、この執拗なまでの綿密さは、現市長に関する黒い噂を生んだ要因の一つと言っても良いかも知れない。
 実は現市長は、市長としての実力はそこそこ程度にはあり、市民の人気を勝ち得てもいるようだが、陰で色々とあくどいことをやっているという噂があるらしい。
 噂は真実だというのが政治社会関連の専門家達の大多数を占める意見らしいが、全く証拠がなく、市民もその意見に賛成してくれないため、ずっとリコールが出来ずにいるという状態のようだ。
 また、新たに市長の座を狙おうとする者達は、現市長を「彼の辞書では知恵と悪知恵は混同されているに違いない」とか「自国で養うにはあまりにも危険過ぎるが、他国へいってくれれば天才的な働きをしてくれるに違いない」(*3)とかいう風に、かなり悪し様に評しているという。
 だが、あたし達が間近で見た市長は、それほど悪賢そうな人物には見えなかった。
 縦長の直方体の綺麗に磨かれた石の部屋の奥に位置するデスクに両腕を預けたその男は、五十前の細身の男だったが、陰険そうなところはなく、第一印象はさほど悪くはなかった。
 入り口付近に直立しているあたし達は、挨拶を交わした直後、単刀直入に石碑のことについて訊ねた。
 例の石碑をどうにか出来ないか、あるいは破壊せずに石碑の下に隠されている場所にいけないか。
「無理だな」
 予想通りの返答であった。
「君達の国については知らないが、この国では公共物破壊は懲役刑に値する。後者の方は論外だ」
 冷たく突き放されるあたし達。
「お願いします。何とかしてください。詳しくは言えないんですが、世界が危ないんです」
 だが、フィリアはそれでも食い下がろうとする。
「無理だと言っている」
「そこを何とか!」
「不可能だ」
「お願いします!」
 延々と続くフィリアと市長の争いを、あたしとラファエルは呆然と見つめていた。
 ちなみにガウリイはというと、退屈そうに天井を眺めている。
 そんな時、不意に、
「だが、君達次第では何とかなるかも知れんな」
 市長の妙に静かな声。
 フィリアが黙り込む。
「君は火竜王の神殿では極めて重要な位にあるそうだね。多少の金額は動かせるのではないかな?(*4)」
 市長はフィリアを見つめ、無気味に笑った。
 市長は早くも豹変している。
 やはり黒い噂は本当だったようだ。
「破壊は君達がおこない、我々はそれを事故として処理する。これは不可能ではない。……どうだね」
 沈黙。
 空気が震え上がる。
 そんな中、ラファエルが何かを呟いた。
 だが聴こえない。
 市長は未だ笑い続けている。
 あたしは、ぶち切れた。
「あんた、それって汚職行為じゃない! そんな取り引きするとでも思ってんの? ここから表歩いてる皆さんにあんたの悪事を叫んでも良いのよ」
 時とともに拍車の掛かっていく怒りに身を任せ、思い切り言葉を吐き出す。
 そして指を市長に突きつけた。
 すると、市長は声を立てて笑い出す。
「甘いな、君がいくら叫んぼうと無駄なものは無駄だ。民衆も役人もすべて私も味方だ。ここでは私が一番強い。ついでに言えば、バックにも色々と強力なお方がいる。君達がどう証言しようと私に力がある限り、何とでもなる」
 こいつ……。
 こんなやつが市長で良いのか。
 大げさに言っているだけで、半分くらいは脅しでしかないのかも知れないが、それにしても性質が悪過ぎる。
 本気で一発殴ってやろうか、と思ったその時、
「撮りましたよ」
 ラファエルの声。
「何だと……」
 明らかにうろたえる市長。
「だから撮らせて頂きましたよ。あなたのお姿をその嫌らしい発言も含めて……」
 そう言ってラファエルは邪な笑みを浮かべた。
 市長へと歩み寄っていく。
「馬鹿な……記録装置などどこにも……」
 そう、あの身体検査はメモリー・オーブのように映像や音を記録する道具を持ち込ませないためにおこなわれたのだ。
「そんなものは必要ありません。実はわたくしは前から前から一つの呪文について研究していましてね、今回初めて実践することになったわけですよ。大成功でした」
「何の……ことだ?」
「映像と音声を記録する呪文です。さっき呟きが呪文発動のための詠唱でした。この呪文は、術者が目にしたもの、耳にしたものを脳のある部分に留め、自由に取り出することが出来る状態にするものです。取り出した映像と音声は、普通のメモリー・オーブに改めて記録することが可能です。……理屈については専門的な知識がないと説明出来ない上に、かなりややこしいので省きますが、私があなたの言動を公に晒すことが出来るというのは事実です」
 ラファエルの自慢げな声に、市長は歯噛みする。
「そ、それで、貴様は私を脅すつもりかね? 無駄だな。あの発言はただの冗談だった、そう言えば何の問題もない。後は金で何とかなる」
「そうですねえ。とりあえずあるお方のところまで持っていきましょうかね。あなたが今座っている椅子を狙っているお方にね。そのお方ならそういった小賢しい手を打ち破る術は持っておいででしょうからね」
 ラファエルは市長の目の前で急に踵を返した。
「き、貴様! そんなことをしてどうなるか……」
 遠ざかるラファエルに拳を握って、悔しそうに震える市長は、素早くデスクから鈴のようなものを取り出した。
 それは用心棒か何かを呼び出すためのアイテムなのかも知れない。
 鈴を取り出す音を聴いてか振り向いたラファエルは、それと同時にこのあたしに手を向けて、
「暴力ですか? それは止めておいた方が良いですよ。……このインバースさんは、本気になればあなたごと国を潰すくらいの実力があります。竜破斬(ドラグ・スレイブ)という言葉をどこかでお聞きになったことはありませんか?」
「竜破斬だと……」
 市長は脅えた目つきになった。
 身体が震えているのが、見て取れる。
 鈴はまだ鳴っていない。
「そうですよ。古の魔王シャブラニグドゥの力を借りた恐るべき呪文です。……この辺りではあまり有名ではないですが、北の方では彼女は、竜破斬を用いて一国を一夜にして滅ぼしたことで有名です。破壊の帝王、冥府の王、混沌の死者、滅びの申し子、終末の獣、降魔戦争の真の黒幕(*5)、ドラゴンも跨いで通る……他多数。どうです? 試してみても良いんですよ。命が惜しくないならばね」
 ラファエルは自分の実力の棚に上げて、怪談を語るよりも恐ろしい口調で、あたしを怪物呼ばわり。
 ちょっと腹が立つ気もするが、市長への効果は覿面のようだ。
 悪しき男は数分と経たぬ間に観念した。
 意外と度胸のない男のようだ。
 それにしても恐ろしきは、ラファエルの超級怪談口調(*6)。
「それにしても、こうも簡単に尻尾を出してくれるとは思いませんでしたよ。まあお陰で手間が省けましたがね。……それにしても全く、民主主義社会とは汚れ易いものです。白地の衣と同じでね」


六年間(*1):ちなみに市長制の存在する国での市長の在任期間は世界平均で四年らしい。ここは少し長い。


新たな選挙に出馬することは可能である(*2):現に現市長は、二回連続で市長を務めているらしい。

「彼の辞書では知恵と悪知恵は混同されているに違いない」とか「自国で養うにはあまりにも危険過ぎるが、他国へいってくれれば天才的な働きをしてくれるに違いない」(*3):そういうあんたらはどうなんだ、と言いたくなるのはあたしだけではあるまい。ついでに言うと、言葉がやたらと長々しくてセンスを感じない。


君は火竜王の神殿では極めて重要な位にあるそうだね。多少の金額は動かせるのではないかな?(*4):よく分かんないけど、普通はもっと回りくどい言葉を使うもののような気がするが……。まあどうだって良いが。


降魔戦争の真の黒幕(*5):水竜王と魔王シャブラニグドゥの欠片の一つが争って、水竜王が滅んだこの神と魔の戦いは、実を言うと様々な謎があり、神でも魔でもない第三者の介入があったという説があるが、その説が正しいとしても(ちなみにあたしはその説を信じない)あたしでないことは確かだ。無論、ラファエルも分かってはいるのだろうが。

恐ろしや、ラファエルの超級怪談口調(*6):これはちょっと言語に絶する凄さがある。あの顔の恐ろしさと言ったら。多分、他の誰にも真似出来まい。

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29852スレイヤーズTRYノベル:二十五話:古の扉を開きハイドラント 2004/4/19 22:02:32
記事番号29726へのコメント


 25:古の扉を開き


「迫真の演技だったわね」
 帰り道、あたしはラファエルに向けて言った。
 映像や音声を記録する呪文などあるはずがない。
 ラファエルは市長をペテンに掛けたのだ。
「いえ、そうではないんですよ。全部本当のことですから」
「……え?」
 呆然とするあたし。
「映像と音声を記録する呪文は本当に存在します。わたくしの言葉には嘘なんて一つも混じっていませんよ。何せ、正直だけが取り柄ですからね(*1)」
 まさか、本当に編み出したというのか(*2)。
 あたしは声が出なかった。
「ついでに言えば、あるお方に記録を渡すのも本当です。今からいくつもりですが、皆さんもご一緒しませんか。すぐそこですから」


 ラファエルはアポイントメントを取ってから、約束の日が来るまでの間に、コルト家、つまり初代市長家を訪れていたらしい。
 自主行動を取ったのは、そのためだった。
 マリーカと同じ初代市長家に属し、マリーカの叔父であるというランズマン・コルト氏は次期市長の座を狙っているらしく、彼はこのランズマン氏と話し合って、今回の計画を立てたのだという。
 何でもランズマン氏は、すでに後一年足らずで訪れるという新たな市長選挙で、現市長に打ち勝ってやろうと考えているらしい。
 とはいえ、人気のある現市長と正面切って戦っても、勝てるはずがない。
 初代市長家の財力はこの街でも有数のものであるらしく、従って財力に頼るという手(*3)はあるけれど、相手も貧乏人ではないため、それだけでは勝負を動かすことは出来そうにない。
 だから現市長が悪事や不正をおこなった証拠を手に入れることを望んでいるらしい。
 それを公開して世評を落としたり、リコールに追い込んだりすれば、勝利はこちらのものとなる。
 だが、簡単に尻尾を掴ませるとは思えない。
 そのためランズマン氏は旅人なら市長も少しは油断してくれると考え、ラファエルと組んだ。
 ラファエルが現市長の悪事や不正の証拠を手に入れランズマン氏に提供する代わりに、ランズマン氏はその証拠を利用し、一次的脅迫によって石碑の破壊を市長に認めさせ、自然現象か何かということで処理させると同時に、石碑の破壊に当然反対するであろう姪のマリーカを説得する。
 ラファエルの側――つまりあたし達の側の利益が少ないように見えるが、実はそうでもない。
まずマリーカの心を動かしてくれるのはありがたい。
 実はあまり考えないようにしていたのだが、あの石碑を壊せばマリーカが悲しむことは間違いない。
 説得されただけで本当に気持ちが変わるとは思えないが、説得により表面上だけでも破壊を許してくれれば、精神的にかなり助かる。
 さらに脅迫は、一介の旅人に過ぎないラファエルがおこなうより、市民である上に財力のある初代市長家の人間がおこなった方が成功率だけ見ても高い。
 それにランズマン氏は、ラファエルと協力するがために、危ない橋を渡らねばならなくなる。
 なぜなら石碑の破壊を認めさせるために、市長を脅迫する際、正体を悟られないようにしなければならない。
 それに匿名や別の誰かの名前などを使ったりして、手紙で脅迫するという手が考えられるが、それでも万全とは言えない。
 脅迫された市長は、何としてでも脅迫者の正体を突き止めようとするだろう。
 被脅迫者という立場のために力は制限されるかも知れないが、それでも侮りは出来ない。
 もしも脅迫者であることに気付かれてしまったら、脅迫は当然犯罪のため、まずいことになる。
 もしランズマン氏が証拠を公開するとなれば、市長は彼を脅迫の罪で告発するだろう。
 脅迫者の握る証拠は、被脅迫者だけでなく脅迫者自身をも傷つける諸刃の剣と化してしまう。
 二人の立場は対等同然ということになってしまうし、あの悪辣な市長のことだ、逆にランズマン氏を脅迫してしまうかも知れない。
 という風に、けしてランズマン氏だけに有利な取り引きではないのだ。
 それにしても、
「何であたし達に黙ってたの? 別に隠さなくても良かったじゃない」
 あたしは道中、思ったことをラファエルに訊ねた。
「すでに言い古されていますが、敵を欺くには味方からという言葉があります。……それにそういう卑怯な手はあんまり好まないんじゃないかと思いましたので」
 あたしは溜息を吐いた。


 コルト家は巨大で豪奢な邸宅だったが、悪趣味なところは全くなかった。
 呼び鈴を鳴らすと使用人が顔を出し、ラファエルの姿を確認すると、あたし達を中へ招き入れてくれた。
 連れていかれた場所は食堂で、そこにはマリーカを含むコルト家の住人と思しき面々が揃って食事をしていた。
 食卓は縦長の豪邸では最も一般的なタイプのもので、卓上の白いテーブルクロスの上には、昼にしては豪華過ぎるのではないかというほど、料理がたくさん並んでいた。
 どうやらあたし達の分まであるらしい。
 使用人に案内されて席に着くと、コルト家の一族の自己紹介が始まった。
 白髪の好々爺然としたコルト家の現当主ホフマン翁、その息子で、国内外で評判の武器開発会社を自ら興し大成功した四十前後の紳士ラムエル氏、その妻で異国的な浅黒い顔が魅力的なヤーナさん、それに三五、六の若き野心家ランズマン氏にマリーカ。
 彼らは皆陽気で、第一印象は暗めに感じたマリーカも例外ではなかった。
 ホフマン翁がコルト家の歴史について饒舌に語ったかと思えば、ラムエル氏が旅先でヤーナさんと出会った時の自慢話、会社設立の苦労談と現在開発中だという火薬を使った飛び道具(*4)についての話、ランズマン氏主催の現市長罵倒大会と政治についての愚痴、マリーカにしても日常の出来ごとを面白おかしく語ってくれた。
 あたし達の方も、旅についての色々な話――ヴァルガーヴやダーク・スター、火竜王の病などに関してはもちろん伏せたが――をし、そんな旅をしてみたい、とラムエル氏とマリーカに羨ましがられ、そんな旅をしてみたかった、とホフマン翁に悔しがられた。
 やがて話題は、石碑に関することに移ったが、それほど気まずくはならずに済んだ。
 マリーカが笑顔で以下のような発言をしたからだ。
「確かにあれがなくなるのは悲しいですし、街のものを破壊するのも良くないと思いますが、それで世界が救われるというなら、仕方ありません。死者達も喜んで迎えてくれるでしょう」
 ラファエルはどうやら、マリーカを説得する役のランズマン氏かマリーカ本人に、世界が危ないということを曖昧に伝え、それを信じてもらうことに成功したようだ。
「でも、もしリナさん達が単なる墓荒しだったら絶対に許しませんからね」
 そのままの口調でさらにそう言われたあたし達は、苦笑し、それがコルト家の人々の笑いを買った。
 この話が終わった後、ラファエルは自分の頭に収めた例の記録を、メモリー・オーブに転送する作業をおこない、見事成功させてみせた。
 夕食までご馳走になった後、あたし達は惜しまれつつも帰宅した。


 さて、その日の夜が明けぬ内に、作戦は決行されることとなった。
 誰にも見られるわけにはいかないので、人のいない時にやらなければならない。
 雪が降っていないため、多少暗くなっても十字路の人通りは多かった。
 あたし達はいったん眠ることにした。
 冷たい夜風が吹く。
 辺りは静まり返っている。
 あたし達は石碑の前に集まっていた。
 時刻は午前四時。
 夜は明けておらず、通りには誰もいない。
 まだ眠気は残っているが、すぐに消し飛んでくれるだろう。
 四人の中でガウリイのみが、大きなものを抱えていた。
この前ガウリイと二人の時に通った露店に売っていた、立ち入り禁止の立て札を帰り道に買っていたのだ。
「良いですね」
 ラファエルの声にあたしは、マリーカのことを、そしてマリーカが語った千百年前の話を思い浮かべながらも、思い切って頷いた。
 これで良いのかは分からないが、ヴァルガーヴと決着を着けるためにはこうするしかないだろう。
 フィリアもガウリイも同じ反応を示した。
「いきますよ」
 実はあたし達は破壊よりは少しましな方法を思いついていた(*5)。
 石人形(ゴーレム)作成呪文を利用し、石碑を動かすというものである。
 石人形作成呪文は、周りにある岩などを一つの場所に集め、結合させて一つの石人形を作り低級霊を憑依させて動かすというものですが、それをアレンジすれば、一つの岩だけを移動させるだけで、石人形は造らないということも不可能ではない。
 これなら少なくとも石碑を破壊することだけは避けられ、新たな石碑を作る手間が省ける。
 簡単そうに見えて意外と小手先の技術を要求される技で、下手をすると普通に石碑だけ破壊するよりわけの悪いことになりかねないが、ラファエルなら確実に成功させられるはず。
 静かなる呟き。
 聞き取れないほど小さな詠唱が終わると、石碑はもがくように揺れ始めた。
 少しずつ揺れは激しくなり、徐々に石碑の背は高くなっていく。
 やがて石碑は大地から解放され、完全に宙に浮き、今度は手前に向かって低速飛行。
 ゆっくりとこちら側に近付いて来る。
 誰もが成功したと思ったその時、急に石碑は落下し、石の地面にぶつかって見事に二つに割れた。
「…………」
「…………」
「…………」
「石が脆かったみたいですね」
 ラファエルは汗を拭きながら言った。
 まあ、それはさておき、石碑のあった場所には、地下への階段が姿を見せていた。
 地下の入り口に立ち入り禁止の立て札をおき、あたし達は「最も古き場所」――と思しき場所――へ向かった。
 ごめんなさい、結局破壊してしまいました。


正直だけが取り柄ですからね(*1):嘘を吐け、嘘を!

まさか、本当に編み出したというのか(*2):前日の夜「撮れない、撮れない」と言っていたのは、映像と音声が記録出来ないということだったようである。そうなるとラファエルは土壇場で呪文を完成させたということになる。
 

財力に頼るという手(*3):具体的にどんな手なのかは分からないし、分かりたくない。


火薬を使った飛び道具(*4):火薬を爆発させた勢いで鉄の弾を飛ばし、それによって相手を殺傷させるというものなのだという。開発に成功したという話は未だ聞かないが、もしかしたらルードレッド王国ではすでに実用化されているかも知れない。


実はあたし達は破壊よりは少しましな方法を思いついていた(*5):といっても、市長との対決は無駄だったわけではない。この方法をにしてもやはり無断で実行するわけにはいかないからだ。

<@><@><@><@><@><@><@><@><@><@>


 あとがき

 
 こんばんは。
 色んな意味で「これで良かったのか?」な二十四話&二十五話をお届け致します。
 この部分はずっと前から書いてありましたが、気に入らなかったので今になって大幅に書き直しました。
 構文力のなさと近代現代社会に関する知識の貧弱さが相まってかなりの苦戦を強いられましたが、多分どうにか形にはなったかと。
 書き直し前は考えずに書いたせいで、これ以上にひどかったからなあ。
 ちなみに最後のゴーレム呪文のアレンジは、えんさいくろぺでぃあとインターネットのスレイヤーズページのデータだけを元にして考えましたから、理論上おかしいところがあるかも知れませんし、石碑動かすだけならもっと簡単な方法もあるかも知れません。
 二次創作はそういう部分が難しいです。


 神坂先生の「クロスカディア」三巻まで読みました。
 タイプとしては「闇の運命を背負う者」に近いですかねえ。
 ライトノベルとしては、なかなか期待出来るシリーズです。
 それにしてもレゼルドが微妙にうちのラファエルと重なるような……


 それではこれで失礼致します。

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29859スレイヤーズTRYノベル:二十六話:血塗られた遺跡ハイドラント 2004/4/20 20:32:01
記事番号29726へのコメント

 26:血塗られた遺跡


 明かりの呪文で闇を切り裂きながら、あたし達は階段を降りていく。
 ひんやりとした空気が肌を撫でる。
 湿気や埃などの臭いが込み上げて来るが、思ったほどでもない。
 あたし達は二列に並んでいた。
 呪文が使えるあたしとラファエルが先頭を歩き、ガウリイとフィリア――まあ、彼女も使えるのだろうが――がそれに連なっている。
 壁も床も、灰色の石を組み上げて造ったものであろう。
 やけに硬質だ。
 試しに安いナイフで傷をつけてみたが、線が刻まれるよりも、ナイフが尖端から折れてしまう方が先だった。
 どうやらただの石ではないらしい。
「長い階段ですね」
 フィリアの言う通り、階段はかなり下まで続いている。
 このまま地の底まで伸びているのではないだろうかと思わせるほどだ。
 生ける者の気配はない。
 ここは命ある者の領域ではないのかも知れない。
 時折、血の跡が視界に映ることがあった。
 それも少量ではなく、地面や壁を埋め尽くさんほどの血が流れた跡が。
 古い血の痕跡は、奥へ進むほど増していった。
 百聞は一見にしかず。
 マリーカの話は真実だった。
「何なのよ。この血……」
 あたしは嫌悪感を露にした。
 いかに予測していたとはいえ、聞くと見るでは差があり過ぎる。
「やはり争いごとがあったと考えるのが自然ですかね。……となると、入り口で流血沙汰があったことになるのですから、外部からの侵入者と内部の者との戦いによるものであるという可能性が浮上して来ますね。まあ内乱かも知れませんが」
 ラファエルはあたしの独り言を聞いてか、そんなことを言い始めた。
 全く嫌悪感もなければ、緊張感さえもない。
 いつもとほとんど変わっていない態度だ。
 やがて階段を降り切ると、凄惨な光景を想像させる大広間に出た。
 壁と床の多くの部分が血の跡に染め上げられていたのだ。
 やはり血は乾き切って薄れているため、凄惨さはかなり軽減されていたが、覆う面積は半端ではない。
 入り口の階段で見たものは、単なる前座に過ぎなかったのだ。
「ひどいですね。よほどの惨事が……」
 ラファエルほど冷静な目でその場所を見ることは出来なかったが、確かにここが どのような場所で、どのようにして今のような状態になったのか非常に気になる。
 また広間にはもう一つ階段らしきものがあったが、こちらは途中で崩れていた。
 やけに縦横の幅が広く、段差も大きな階段で、大きな竜でも一匹くらいは通れそうに思えた。
「これはバリケードなのかも知れませんね。幅の広い入り口は敵が一度に大勢入って来るから塞いだ、と。……そうだとすると内乱の可能性は低くなって来ますね」
 なるほど。
 だがもう一つ考えられることがある。
 先ほど壁をナイフで傷つけてみた時、逆にナイフが折れてしまった。
 ラファエルの推測が正しいとすると、ここに住んでいた者は、この固い石の壁や天井――天井も固いだろう――を壊すだけの力を持っているということになる。
 いや、そもそもあの壁の硬度は尋常ではなかった。
 ここに住んでいた者が魔法か何かを使って強度を高めたのではないか。
 あの階段を埋める時は、その魔法を解除した。
 だが、そうだとしても、壁などの強度を高める呪文というものは簡単に使えるものでない。
 どちらにせよ、ここに住んでいた者は普通の人間ではなさそうだ。
「とにかく進みましょう」
 フィリアの声に、皆が肯定の意を示した。


「ところでリナ」
 広間を抜けようとする頃、ガウリイが後ろから話し掛けて来た。
「俺達ってここに何しに来たんだ?」
 その質問にあたしは答えなかった。
 ガウリイは現れる敵に剣を振るっていれば、それで良いのだ。
「ヴァルガーヴを倒してゴルン・ノヴァを取り戻すんですよ。ちなみにヴァルガーヴというのは大悪党でわたくし達の敵、ゴルン・ノヴァというのはガブリエフさんが昔持っていた光の剣のことです」
 あたしが答えないでいると、ラファエルが変わりに答えてくれた。
 しかも懇切丁寧に。
「そうか、それは大変だな」
「いや、他人ごとみたいに言われても困るんですが……」
 それにしてもガウリイとラファエル、結構仲良くなってるのかも知れない。
 広間を抜けると長い廊下が続いていた。
 この廊下も縦横の幅がかなり大きい。
 火竜王の神殿級と言っても良いだろう。
 血の跡はこの辺りにも見られた。
 ここまで来ると、もはや明かりの呪文は必要なくなった。
 壁のあちこちに掛けられた蜀台の上で、蝋燭が赤々と燃えていたからだ。
「三賢者の塔と同じですね。千年前からずっと燃えているらしい」
 そう言ったラファエルは、後に研究などで役に立つかも知れないからと、たくさんある蝋燭の内の一つを丹念に調べ始めたが、すぐに諦めた。
 どうやら何の成果も得られなかったらしい。
 先に進むと丁字路に出た。
 しばし迷ってから左に進むと、道が直角に右方向に折れ曲がっていた。
 折れ曲がった先は、入り口側のちょうど反対――つまり奥へと続いている。
 さらに進むと、いくつもの大きな扉が姿を見せた。
 扉はどれもスライド式のものであった。
 一つ扉を開けてみると――かなり重かった――、草の敷き詰められた部屋に出た。
 ここも廊下と同じように、蝋燭によって照らされている。
 蜀台のある付近の床に、金属性の筒が落ちていた。
 筒は片側にのみ穴が空いており、コップとしても使えそうだ。
 筒を拾い、これは何なのかとラファエルに問い掛けてみると、こんな返事が返って来た。
「恐らく、消えることのない蝋燭に被せて明かりを妨げるためのものでしょう。ここは寝室のようですし」
 他の扉を開けてみても、同じような光景が照らし出された。
 すべての寝室を調べ終えて先に進むと、また丁字路に遭遇した。
 左に進むと貯蔵室らしきやけに寒い部屋があったが、何も入っていなかった。
 引き返して今度は右の道へ進むと、左右に二枚の扉があった。
 今度は押して開くタイプの扉だ。
 右を開くと、長い石テーブルのおかれた部屋があり、左を開くとまた廊下が口を開いていた。
 あたし達は右の扉の部屋に入った。
「ここは食堂だったんでしょうかね」
 寝室らしき場所もそうだったが、ここにも血の跡は見られない。
 戦いがあったとすれば、戦場とはならなかったのだろう。
 特に気になるものはなかったため、すぐに部屋を後にした。
 それから向かいの扉――今は左ではなく正面にある――ではなく、まだいったことない右方向――先ほどは正面にあった――へと歩みを進めた。
「多分、左右対称かそれに近い構造になってると思うんですよ。あの二つの扉の位置が軸になっているに違いありません」
 ラファエルの予想は当たっていた。
 ただ冷凍室のあった場所――入り口から見て一つ目の丁字路を左に曲がり、二つ目の丁字路もまた左に曲がった先にある――には、天井から注ぐ白い魔法の明かりに照らされた細い樹木が、青々とした葉と紅い木の実を纏って立っていた。


 見取り図


 ■■■■■■■■↑■■■■■■■■
 ■参←□□□□□□□□□□□→伍■
 ■■■■□■■■↓■■■□■■■■
 ■■弐←□→弐■肆■弐←□→弐■■
 ■■弐←□→弐■■■弐←□→弐■■
 ■■弐←□→弐■■■弐←□→弐■■
 ■■弐←□→弐■■■弐←□→弐■■
 ■■弐←□→弐■■■弐←□→弐■■
 ■■弐←□→弐■■■弐←□→弐■■
 ■■弐←□→弐■■■弐←□→弐■■
 ■■■■□■■■■■■■□■■■■
 ■■■■□□□□□□□□□■■■■
 ■■■■■■■■□■■■■■■■■
 ■■■■■■■■□■■■■■■■■
 ■■■■■■■■□■■■■■■■■
 ■■■■■■■■□■■■■■■■■
 ■■■■■■■■□■■■■■■■■
 ■■■■■■■■□■■■■■■■■
 ■■■■■■□□□□□■■■■■■
 ■■■■■■□□□□□■■■■■■
 ■■■■■零□□□□□■■■■■■
 ■■■■■■■■壱■■■■■■■■

 □:空間
 ■:壁
 零:入り口
 壱:崩れた階段
 弐:寝室?
 参:貯蔵室?
 肆:食堂?
 伍:竜玉樹
 矢印:扉


「この木の実も食料になるかも知れません」
 木の実は結構大きい。
 ラファエルはそれを摘んで口へと運んだ。
「あっ、俺も」
 ガウリイやフィリアも、ラファエルを真似て食べ始めた。
 充分食べられるものと分かった後は、あたしや食べてみた。
 酸味がやや強いが甘味も充分にあり、水分が豊富でなかなか美味しい実であった。
「ところでラファエルさん。この樹の名前知ってますか?」
 その部屋を去ろうとした時、フィリアがラファエルに尋ねた。
「いえ。……知りませんが」
「竜玉樹っていうんですよ。魔力を宿した強い樹で、どんな場所でも生きられると言われています。………竜族だけに伝わっている樹なのですが……」
「竜族にだけ? となると……」
「ここは竜族の遺跡なのかも知れません。通路のサイズも大きいですし……」
 そう言ったフィリアの表情には、なぜか悲愴感が漂っていた。
 左右対称の造りであることを確認したあたし達は、先ほど通り過ぎた廊下へ続く扉に向かった。
 調べていないのは、この向こうだけである。
 蝋燭が照らす闇の道を歩み続ける。
 それにしても寒い。
 あたし時折振り向いて、フィリアの様子を確認した。
 ずっと俯いており、よく分からなかったが、明るい表情をしているとは思えない。
 やがてあたし達は、観音開きの扉に遭遇した。
 今までの扉以上に大きな造りをしている。
 重くて簡単に開く扉ではなかった。
「いきますよ」
 全員で力を合わせて押すと、どうにか扉を開けることが出来たが、かなり体力を消耗してしまった。


<@><@><@><@><@><@><@><@><@><@>


 あとがき


 二夜連続、三連続投稿になってしまいました。早い時は早いんですよね。
 今回は遺跡探険のみです。そして次回も……
 構造をより理解して頂くためにマップ(チープなものですが)を作成しました。アラビア数字だとうまくいかないみたいだったので、漢数字(なぜか大字)にしてみました。
 注釈はお休みです。
 
 
 今日のキャラクタ:ゼロス
 基本的には原作そのままだと思います。私が書いたということによって変化している部分はあれども。
 本作ではそんなに重要なキャラでもないかも知れませんが、それでも色んな部分で関わって来ます。
 

 それではこれで失礼致します。

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29861Re:スレイヤーズTRYノベル:二十六話:血塗られた遺跡エモーション E-mail 2004/4/20 22:47:28
記事番号29859へのコメント

こんばんは。

無事、石碑絡みのあれこれはクリアですね。
市長さんの露骨な袖の下請求が何とも(^_^;)
一応公の官庁内でする辺り、市長に限らず少なくとも側近レベルまでの腐敗度が、
かなり進行している&どれだけ今まで上手くやっていたのかが、窺えますね。
それにしてもラファエルさん……凄い呪文を。
また、色々動き回ったのですね。確かに空き時間の間に、コルト家及びマリーカに
説得&根回しする必要性を、リナ達はすっかり忘れ去っていましたしね……(^_^;)
ラファエルさんは卑怯な手段とか言ってましたが、まあ、この辺りは許容範囲内じゃないかな、
と思います。その辺の平凡な一般人相手ならともかく、権力者相手でしたから。

石碑をゴーレム化して動かすと言う手段には、「あ、その手が」と。
結構原作にも出てくるのに、すっかり忘れてました。
ゴーレムが、必ず人型でなくてはならない、という決まりはなかったですし。
……でも、壊れちゃったのは、まあ、スレイヤーズのお約束(笑)

入った遺跡内はやはり避難シェルター、という感じのものですね。
また、この遺跡がドラゴンのものだろうと推測を付けて……フィリアが
ちょっと微妙な状態になってますね。何か、嫌な予感を感じているのでしょうか。

さて、いよいよ次はずっとここでヒッキー(笑)をしつつ、待っていたと思われる
ヴァルガーヴと再会でしょうか。
展開の違いなどがどうでるのか、楽しみです。
それでは、今日はこの辺で失礼します。

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29867Re:スレイヤーズTRYノベル:二十六話:血塗られた遺跡ハイドラント 2004/4/22 18:33:25
記事番号29861へのコメント


>こんばんは。
こんばんは。
>
>無事、石碑絡みのあれこれはクリアですね。
何とかクリアです。石碑さえ壊さなければ百点満点でしたけど(笑)。
>市長さんの露骨な袖の下請求が何とも(^_^;)
>一応公の官庁内でする辺り、市長に限らず少なくとも側近レベルまでの腐敗度が、
>かなり進行している&どれだけ今まで上手くやっていたのかが、窺えますね。
そうですね。
あと露骨な請求も、今までうまくいっていたという実績があったからおこなったことでしょうし。
>それにしてもラファエルさん……凄い呪文を。
彼はどんどん怪物になっていくみたいです(笑)。
>また、色々動き回ったのですね。確かに空き時間の間に、コルト家及びマリーカに
>説得&根回しする必要性を、リナ達はすっかり忘れ去っていましたしね……(^_^;)
裏でコソコソ動き回ったり、ひっそりと計画練ったりするのが似合ってる(?)彼ですから、当然の行動でしょうね。
>ラファエルさんは卑怯な手段とか言ってましたが、まあ、この辺りは許容範囲内じゃないかな、
>と思います。その辺の平凡な一般人相手ならともかく、権力者相手でしたから。
確かに卑怯だ、と大声で言うほどの行為ではないと思います。結局、味方を欺きたかったんでしょうね(かなり待て)。

>
>石碑をゴーレム化して動かすと言う手段には、「あ、その手が」と。
>結構原作にも出てくるのに、すっかり忘れてました。
>ゴーレムが、必ず人型でなくてはならない、という決まりはなかったですし。
>……でも、壊れちゃったのは、まあ、スレイヤーズのお約束(笑)
ゴーレム関連には実は私もなかなか気付きませんでした。すぺしゃるの新刊を読んでいる時に思い出しまして、急いで修正しました。
最後の最後に壊れてしまうのは、もはや宿命と言っても良いでしょう。


>
>入った遺跡内はやはり避難シェルター、という感じのものですね。
>また、この遺跡がドラゴンのものだろうと推測を付けて……フィリアが
>ちょっと微妙な状態になってますね。何か、嫌な予感を感じているのでしょうか。

>
>さて、いよいよ次はずっとここでヒッキー(笑)をしつつ、待っていたと思われる
>ヴァルガーヴと再会でしょうか。
>展開の違いなどがどうでるのか、楽しみです。
遺跡の大体の正体や、ヴァルガーヴがここへリナ達を呼び出した理由などはいよいよ次回で明かされるかと思われます。
>それでは、今日はこの辺で失礼します。
>
ご感想どうもありがとうございました〜

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