◆−異邦の彼方より (10)−棒太郎 (2004/1/27 20:41:33) No.29200
 ┣異邦の彼方より (11)−棒太郎 (2004/1/28 11:46:03) No.29204
 ┃┗振り回されてますね、ゼル(笑)−エモーション (2004/1/28 22:27:41) No.29214
 ┃ ┗これが彼の運命かも(笑)−棒太郎 (2004/1/31 23:15:21) No.29233
 ┣異邦の彼方より (12)−棒太郎 (2004/2/2 21:51:36) No.29252
 ┃┗苦労がオートリバースですね、ゼル……(^_^;)−エモーション (2004/2/3 23:23:31) No.29260
 ┃ ┗まだまだ続きます−棒太郎 (2004/2/4 23:05:31) No.29274
 ┣異邦の彼方より (13)−棒太郎 (2004/2/5 01:08:06) No.29275
 ┃┗何をしたんでしょう。ジゴマさん……(^_^;)−エモーション (2004/2/5 23:04:22) No.29281
 ┃ ┗いろいろやってます。奴は。−棒太郎 (2004/2/8 22:56:43) No.29303
 ┣異邦の彼方より (14)−棒太郎 (2004/2/9 11:17:08) No.29306
 ┃┣Re:異邦の彼方より (14)−オロシ・ハイドラント (2004/2/9 21:48:46) No.29309
 ┃┃┗まだ波乱は続きます−棒太郎 (2004/2/10 09:45:51) No.29311
 ┃┗Go West!(要日本語訳)……(笑)−エモーション (2004/2/9 22:12:26) No.29310
 ┃ ┗ありがたくもないお釈迦様ですね、彼(笑)−棒太郎 (2004/2/10 10:04:39) No.29312
 ┣異邦の彼方より (15)−棒太郎 (2004/2/12 10:38:00) No.29320
 ┣異邦の彼方より (16)−棒太郎 (2004/2/12 18:35:20) No.29321
 ┃┗エルマさんが……(滂沱)−エモーション (2004/2/12 23:41:09) No.29324
 ┃ ┗ここまでドラマするとは思ってませんでした。(当初の予定では)−棒太郎 (2004/2/13 21:55:18) No.29329
 ┗異邦の彼方より (17)−棒太郎 (2004/2/15 22:50:57) No.29357
  ┗逆に代々のアーデンハイル家の方々の必死さが見えますね−エモーション (2004/2/16 21:55:03) No.29366
   ┗ずっと確執があるわけですからね−棒太郎 (2004/2/17 22:53:41) No.29372


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29200異邦の彼方より (10)棒太郎 2004/1/27 20:41:33


こんばんは、棒太郎です。
早いもので、もう10話目です。
これは、ますます長くなってしまいそうです。
それでは続きをどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (10)



 ―――最後に笑う者が大いに笑うでしょう―――

  ディドロ 『ラモーの甥』




静かに、しかし風格のある佇まいを見せる領主の館、アーデンハイル邸はいつものように1日を迎えていた。
その庭先で、ひとりのメイドが洗濯物を手に物思いに耽っていた。
(ゴットフリード様・・・・・・・・)
彼女の脳裏に、この館の主の顔が思い浮かぶ。
サナ自身、この館でメイドとして働くようになったのは、ほんの最近のことだ。
ゴットフリードの口添えがなければ、今頃はどこかの娼館へでも売られていたことだろう。
サナは、ゴットフリードに恩義以上のものを感じている。
だからこそ、ここ最近、時折見せるどこか思いつめたような表情が気になって仕方がなかった。
(わたしじゃ・・・・・・なんのお力にもなれないのかな・・・・・・・・)
沈むような心持で、ひとつ溜息を吐いたとき―――

「スキあり。」

突然、膝がカクンと抜けて、体が崩れそうになった。
「きゃっ!?」
「ははは♪見事に決まったね〜。」
振り返ると、すぐ後ろに執事見習いのタイタスがにこやかに笑いながら立っていた。
「タ、タイタスさん!なにするんですか!?」
「いや〜〜、あまりにもオイシイ体勢だったからつい♪」
悪びれる風もなく、タイタスは爽やかな笑みを浮かべて言った。
「サナちゃんがなんかボ〜ッとしてるから、どうしたのかな〜、と思ってね。」
「だったらヒザカックンなんてしないでください!」
サナが顔を赤らめながら、抗議の声をあげる。
「ごめんよ、ごめんよ。でも青春だね〜。寝ては夢、起きては現に恋する人を思う―――嗚呼、これぞまさに青春・・・・・・・・」
周りから見れば、アホかと言われそうなキザな台詞を口にするタイタスであるが、何故か不思議と馴染んでいた。
「そ、そんなんじゃないですっ!!」
ますます顔を赤らめ、抗議の声をあげるサナ。しかし、説得力がなかった。
「わ、わたしのことはどうでもいいんです!タイタスさんこそ、自分の心配してください!!」
「うっ!ソ、ソレハキツイオコトバ・・・・・・」
ぐはっと大げさに仰け反り、「は〜る〜よ〜〜、とおいは〜るよ〜♪(泣)」と明後日の方向に向かって歌いだした。
サナはハアッとひとつ溜息をついて、その場を後にした。
「・・・・・・・・・・・彼女、か・・・・・・」
サナが立ち去った後、タイタスは先程までとは打って変わり、懐かしい想い出に思いを馳せるような目を向けた。
そして右手首の細い腕輪をしばし見つめていた。
やがて、顔を上げ、山の向こうの空に視線を向けた。
「・・・・・・・もうすぐ”嵐”がやってくるか・・・・・」
その瞬間のタイタスの表情を見た館の者ならば、驚きの色を浮かべたかも知れなかった――――射抜くような鋭い視線に、年齢に合わぬ重厚ともいえる威圧感に。




「さて、普通の旅路ならこの街道に沿って行けばいいのですが――――」
街道の辻で、二人連れの旅人のうちのひとり――黒子衣装に身を包み、背に大きな櫃を背負った男が、遠くを見渡していた。
「今回のような急ぎ旅ならば、少し外れた横道を行ったほうが早く着きますですよ。ちょいと路は険しいですがね。」
そう言って、男――ジゴマは隣の少女に問いかけた。
「少しでも早くゴットフリードさんの所へ行きたいんです。どんなに険しくても大丈夫です。」
「アメリア様ならそう仰ると思っていましたよ。」
予想通りという色を浮かべ、ジゴマは笑った。
「それでは参りましょうかね。」
街道の脇へと入っていくジゴマとアメリアであったが、ふとジゴマが空へ目を向けた。
空にはただ雲が流れているだけだったが、笑みの形を作るジゴマの唇が十分に物語っていた。

「ちっ!あの二人、どこまで先に行った。」
街道をひた走りながら、ゼルガディスは呟いた。
いつ、城を出たのかは知らないが、1日という時間差は大きい。
「ジゴマの奴め。ふざけるのも大概にしろ。」
1日経ってから手紙を寄越してきたからくり師に、ゼルガディスは思いっきり毒づいた。
あの手紙を持ってきた者も、必要最低限の用件しか言わず、ゼルガディスが何か質問しようとするのも無視して、そのまま部屋を立ち去った。
「くそっ!間に合えよ!」


ジゴマとアメリアは、糸のように細い小路を黙々と歩いていた。
獣道というほどでもないが、余り人の通りはないらしく、楽に行けるというものでもなかった。
辺りには、木々のざわめきが時折聞こえるくらいだった。
しばらくして、前を歩くジゴマが足を止めた。
「どうしたんですか?ジゴマさん?」
アメリアが訊ねると、ジゴマは人差し指を唇にあてた。そのとき―――

「ルガァァァーーーーーッ!!」

上の方から、奇怪な鳴き声が聞こえるとともに何かが襲い掛かった。
咄嗟に飛び退くと、それは弧を描き、大きな翼を羽ばたかせながら空中に停止した。
「やっと追いついたわよ。さ、残りのプレート、渡してもらいましょうか。」
その声に目を向けると、バスケットケースを腕に掲げた少女が立っていた。
「あ、貴女はっ?」
「彼女は、”トップブリーダー”のエルマと申しましてね。雇われた刺客の一人でございますよ。」
そう言ってジゴマが横を向くと、先程までいたはずのアメリアの姿がなかった。
「おやま?」
ジゴマが間の抜けた声を上げると、頭上のほうから声が振ってきた。
「貴女のような人がそのような悪の道に走るなど、言語道断!この私が悔い改めさせ、正しい道へと導いてあげます!」
一番高い樹の上にアメリアの姿があった。
「とうっ!」と叫ぶや、そこから飛び降り、くるくると宙を回転する。そして見事に――――――――――――――





 地面と激しくキスをした。







「うう〜〜〜、失敗です〜〜〜〜。」
あれほどの衝撃にもかかわらず、アメリアはむっくりと起き上がった。
「なっ―――!?いくらなんでも、ちょっと非常識よ!」
大怪我ひとつ負っていないアメリアの姿に、エルマが驚きの声を上げる。
(まあ、姉妹揃って頑丈な御人たちさね)
ジゴマはジゴマで、妙に感心したように心の中で呟いた。
「というわけで、このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが貴女を更生させてみせます!!」
ビシッと力強く指を差す。
「アメリアッ!?う、嘘・・・・・・・まぢ?」
呆然としたエルマの声に、ジゴマは「まぢですよ」と面白そうに答える。
「しかし、プレートは王宮のほうに渡した後なんですがね?」
「それを100%信じると思う?それにあなたはどーも胡散臭そうだしね。直接確かめたほうが、より確実ってものよ。」
「なるほど。」
ジゴマが納得の声を上げる。
「という訳で、行くわよっ!!」
言うや、エルマはヒュィィッ!と高く口笛を吹いた。
ィィィィ〜〜〜〜〜、と奇妙な鳴き声が響きながら、ズルリとバスケットケースから人の胴ほどの太さはあろうかという足が姿を現した。
「えぇっ!?」
流石のアメリアも驚きの声を上げる。
バスケットケースから、鋭い牙を幾つも持つ蜘蛛状の生物が現れた。
キシィッ、と牙の奥から鳴き声が響く。
「エルメキアランス!!」
アメリアの声とともに、光の槍が襲い掛かるが、大蜘蛛は鋭い爪のついた足を振り上げた。
「きゃっ!」
なんとかそれを避けるが、体格に似合わぬ速さで大蜘蛛は次々と足を振り上げる。
そして―――

 フィシュゥッ!

大蜘蛛の口から白い糸が吐き出され、アメリアの足を捕らえた。
「!?」
次々と降りかかる糸に、アメリアは蜘蛛の巣に捕らえられた蝶のように、拘束された。
しかしそのとき、銀光が閃き、アメリアを拘束する糸を断ち切った。
「危のうございましたね、アメリア様。」
いつの間にか傍らに立つジゴマの、背中の櫃からは、細身の片刃の剣がそれを握る手とともに姿を見せていた。
「ジゴマさんっ!!」
一瞬アメリアの脳裏にあの黒笠の剣士の姿が思い浮かび、知らず叫んでいた。
ジゴマはひとつ笑うと、こちらに向かってくる大蜘蛛に向かって、胸を反らし、背中のものを放リ投げるように、上半身を前へ投げ出した。
すると、背の櫃から大きな影が飛び出し、大蜘蛛に体当たりするようにぶつかった。
「なっ!?」
今度はエルマが驚きの声をあげた。
大蜘蛛を睨みつけるように、同じくらいの巨体の、首長の生物が立っていた。
姿はディモス・ドラゴンに似たような、大きく外に生えた2本の牙を持った生物だった。
「さぁて、怪獣大決戦と参りましょうか?」




街道を、人目を避けるように密かに進む一団があった。
見たところ普通の商隊のようにも見えるが、かなりデキるものが見れば、全員かなりの使い手だと見て取れる。
そして、それぞれの荷物の中に、得物を隠していることも察することができるかもしれない。
隊は一路、ゴットフリードの領地を目指していた。
「?」
先頭を行く者が、前方に何かを発見した。
道に立ち塞がるように立っていたのは、一人の男だった。その両の目は固く閉じられている。
「ちょっとどいてくれないか?」
だが、男はその言葉に不敵な笑みを浮かべた。
「手の早いことだ・・・・・・・・・上の許可を取ろうとしながら、その裏で既に秘密裏に第一陣を派遣か・・・・・・」
男――カーライルの呟きに、隊の者は皆、ピクリと反応した。
「お勤め、ご苦労様。だが、お前達の道行きはここまでだ。」
そう言うと、カーライルは手に持っている杖を構え、仕込みを抜いた。
「!?」
全員が得物に手を掛けた。

『ふぉふぉ、面白そうじゃの。』

そう声がしたかと思うと、男の背後からもうひとつ人影が現れた。
「ちょいと遊ばしてもらっても構わんかの?」
その言葉に、カーライルは頷いた。
それを合図のように、二つの影は地を蹴った。



*************************************

アメリアとジゴマの珍道中でした。ってそんなに進んでないですな・・・・・・・
とりあえず、エルマの護衛獣VSジゴマの傀儡の戦い。もう怪獣大決戦になっちゃいました。
そしてラストの人影―――――彼が最後の刺客です。
それではまた次回。

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29204異邦の彼方より (11)棒太郎 2004/1/28 11:46:03
記事番号29200へのコメント

こんにちは、棒太郎です。
本日は仕事が休みなのをいいことに、続けて投稿を。
それでは続きをどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (11)


キシィッ!キシャァッ!と声を上げて、2匹の怪物が睨みあい、ぶつかり合おうとしていた。
その脇では、ジゴマが愉しそうにその様子を見ていた。
アメリアは呆気に取られたように、その光景を見つめていた。
それゆえ、いくら人通りがあまりないといっても、これだけの騒ぎに対して、何の反応もないことに気が回らなかった。
大蜘蛛は動きを封じようというのか、竜もどきに向かって大量の糸を吐き出す。
だが、竜もどきはそれに意も介さぬように、真っ直ぐに大蜘蛛に突進して行った。
2本の牙が大蜘蛛の体に食い込み、両の腕が体を押さえつける。
「くっ!」
大蜘蛛が不利と見たか、エルマは指を咥え、ピュィィッ!と指笛を鳴らした。
再びバスケットケースから、新たな護衛獣が姿を現した。
巨大な猪を思わせるようなずんぐりとした体に、背中にはトゲが縦に走り、大きな牙がせりだしていた。
「お行きっ!」
エルマの掛け声に、獣はジゴマとアメリアに向かって突進していく。
その巨躯に似合わぬ、信じがたい速さであった。
だが、ジゴマはアメリアを側へ寄せると、ひょいと横へ動いた。
まるで、軌道がわかっているかのように、のいたというような落ち着きぶりだった。
そのとき、間髪いれずあの怪鳥が頭上から襲い掛かった。
「おおっと。」
これは流石に飛び退いて避けたが、顔に浮かぶ笑みは相変わらずだった。
「しかし、キリがねぇな。」
ジゴマがぽつりと呟いた。
「大本を絶たねぇと、堂々巡りだな。悪いがリュウゼンさん、もう一番出張ってもらいますよ。」
そう言って、櫃の蓋が開こうとしたとき、
「ダメですっ!!」
アメリアの声がそれを遮った。
「どんな理由があろうとも、人の生命を奪っていい道理があるはずありません!」
「しかし、状況が状況でございますよ。自分がやられちゃぁ、意味ありませんが。」
「それでもです!」
キッとした瞳をジゴマに向けるアメリア。
「・・・・・やれやれ、どこまでも真っ直ぐな御人だ。甘いと言えば甘いが、それもまあいいか・・・・・」
ジゴマは仕様がねぇな、というように笑みを浮かべた。
「無駄話してる暇はないわよ!」
エルマの声が間に割って入る。
「ん?ちょうどいい。一旦大人しくしてもらいましょうかね。」
何かを見つけたように、視線を向けたジゴマは、
「クロックワーク!」
と叫んだ。
「えっ?」
その途端、エルマは自分の感覚が妙にグニャリとするような感触に襲われた。
気が付くと自分の側に懐中時計を手にした、シルクハットの男が立っていた。
「マスター。ただ今戻りました。」
「おう、ご苦労さん。少し遅かったが、まあ結果オーライだ。」
その声を聞きながら、エルマの精神は深淵に落ちていった。



「グアァッ!」
叫び声とともに、血飛沫と腕が宙を飛んだ。
辺り一面、血臭にまみれ、屍が累々と転がっていた。
「つ・・・・強い・・・・・・グハッ!」
呟いた男の胸に刃が深く突き刺さり、男は絶命した。
「終わりか・・・・・・他愛もない。」
ヒュッと刃を振り、カーライルは仕込みを納めた。
辺りに転がる屍を見下ろす瞳には、何の感慨もなかった。
周りを見るが、もうひとりいたあの影は、どこにもその姿がなかった。
「やれやれ・・・・・味方でよかったな・・・・・・・流石にあのからくり師とともに相手になったら堪らないからな。」
ふぅっとひとつ息をつく。
「もうすぐアルベルトの奴もやってくるかな。懐かしの対面といきたいところだが―――――」
呟き、カーライルは街道の脇を奥へと歩き出した。
「その前にやっておかねばならないことができたか・・・・・・」



「これはこれは。お早いお着きで。」
感心したように言うジゴマの前に、大きく肩で息をするゼルガディスが立っていた。
「途中でクロックワークが道案内しましたが、それでもこれほど早くとは。」
だが、ゼルガディスはジゴマを睨みつけたまま言葉を発しなかった。
「ゼルガディスさん!」
アメリアも驚きの声をあげる。
「どうしてここに――「それはこっちの台詞だっ!!」
凄まじい怒号が響いた。
アメリアもビクリと身を竦ませてしまうほどだった。
「アメリアッ!いい加減にしろ!今がどういう時なのかわかってるのか!!下手なことをしたらまたあの時のような大騒動になるかも知れないんだぞ!!!」
「で、でも・・・わたしは・・・・」
「でももストライキもあるかっ!!」
ゼルガディス自身も怒りのあまり、言葉の出るままに口に出している。
その光景を見ながら、ジゴマはやっぱり愉しそうに笑っていた。
「とにかくっ!!城へ帰るぞ!これ以上、フィルさんたちに余計な心配をかけるな!」
そう言い、アメリアを引っ張ろうとしたゼルガディスだが、
「イヤです!」
アメリアは断固として拒否した。
「父さん達には悪いと思いますけど・・・・・・わたし、自分の目で確かめたいんです!ゴットフリードさんは謀反を企むような人じゃ――――」
ギャイギャイと言いあいが続く。


そして数時間後――――




街道を行くアメリアのすぐ後ろを、憮然とした表情のゼルガディスが歩いていた。
眉間に思いっきり皺を寄せ、ぶすっと不機嫌そうに腕組みをしていた。
意地の張り合いのような口論が続いたが、それとなくジゴマがアメリアのほうへと付き、変に丸め込まれてしまったような形となった。
心の中で思いっきりジゴマに悪態をついていた。
そのジゴマは、しばらく別行動を取るとのことで、先の街で合流することとなっている。
『あの御仁とはちょいと縁がありますからね。』
あの盲目の男のことを差しているとわかった。
この道行きならいずれまた対峙するかもしれない、とゼルガディスは思った。
「ゼルガディスさん・・・・・まだ怒ってます?」
アメリアが顔色を覗うように訊ねてきた。
「これがいい顔に見えるか?」
「うう・・・すいません。」
ゼルガディスのぶすっとした返事に、アメリアはシュンと項垂れた。
どこか捨てられた仔犬のように見えて仕方がない。
自分のアホらしい考えに、溜息をついてしまった。
「あの〜〜・・・・・・」
そのとき、前方から声がした。
「!お前はっ!」
「先日はどうも。」
ゼルガディスは剣の柄を握った。
彼らの前には、”図書館司書”のカシミールが立っていた。
「ゼルガディスさん、この人は・・・・・?」
「気をつけろ。こいつも刺客の一人だ。」
剣を抜いて、構えた。
「わっ、わっ!だからもうちょっと穏やかにいきましょうよ〜〜。」
なんとも情けない声が響く。本当に刺客なのかと疑ってしまう。
「僕はあれさえこちらにいただければそれでいいんですよ〜。抵抗する分、苦しむのはそちらなんですから。」
「ふん。お前の目当てのものはここにはないぞ。」
「そうですか?確かに本物が王宮に渡されたと聞きましたが、それもまたニセモノでしたよ〜。」
「なにっ!?」
そのとき、ゼルガディスの脳裏にジゴマの顔が浮かんだ。
(あいつ・・・・・またおかしな真似を・・・・・・)
「ですから、こうして本物の在り処を聞きに来たのですが。」
カシミールの手に一冊の本が握られた。
「ちっ!」
「素直に教えてくだされば、楽に死ねますよ〜〜。」
「そんな非道なこと、許せません!正義の裁きが下りますよ!」
ビシィッとアメリアが吠えた。
「なら、その前にそちらが死んでください〜。」
そう言うと、バラリと本のページが開いた。
「『黙示録』第7章12節――――」
カシミールの声が不気味に響いた。
「”第六の封印を解くと大地震が襲い、太陽は喪服のように黒くなり、月は血の色となった―――――”」
辺りの空気が不気味に震えだした。
「”――――この日こそ、この世に審判の下る日である。”」
凄まじい衝撃がゼルガディスたちを襲った。



*************************************

続きでした。
ゼルガディス、なんとかアメリアたちに追いつきました。
しかし、結局は旅に同行する羽目に。
そしてまだまだ刺客たちは襲ってきます。
それではまた次回。

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29214振り回されてますね、ゼル(笑)エモーション E-mail 2004/1/28 22:27:41
記事番号29204へのコメント

棒太郎さま、こんばんは。

続けてのご投稿ですね。アメリアとジゴマさんの珍道中。
そして、タイタスさんの膝カックンに笑いました。
相変わらず苦労の多いゼル。何だかんだ言いつつ、アメリアの言い分を
聞いてしまう辺りには、「惚れた弱み」という単語が浮かびます(笑)
どうしても目が離せなくなってしまうのでしょうね。


>「なっ―――!?いくらなんでも、ちょっと非常識よ!」
>大怪我ひとつ負っていないアメリアの姿に、エルマが驚きの声を上げる。
>(まあ、姉妹揃って頑丈な御人たちさね)
>ジゴマはジゴマで、妙に感心したように心の中で呟いた。
>「というわけで、このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが貴女を更生させてみせます!!」
>ビシッと力強く指を差す。
>「アメリアッ!?う、嘘・・・・・・・まぢ?」
>呆然としたエルマの声に、ジゴマは「まぢですよ」と面白そうに答える。

ここの場面に爆笑しました。ああ、アメリアです(笑)
やたら頑丈な上に、それがお姫さまとは……普通思いませんよね。
ジゴマさんは面白がってますし。でも姉妹どころか、父親も頑丈だと知ったら、
納得しそうです。

>キシィッ!キシャァッ!と声を上げて、2匹の怪物が睨みあい、ぶつかり合おうとしていた。
>その脇では、ジゴマが愉しそうにその様子を見ていた。
>アメリアは呆気に取られたように、その光景を見つめていた。
>それゆえ、いくら人通りがあまりないといっても、これだけの騒ぎに対して、何の反応もないことに気が回らなかった。

怪獣大決戦(笑)でも、私は蜘蛛が嫌いなので、見たら多分固まります(汗)
ギャラリーが集まらない……ということは、ここはジゴマさんの作った
空間なのでしょうか。「ダイダロスの迷宮」とは違うのかもしれませんが。

>「どんな理由があろうとも、人の生命を奪っていい道理があるはずありません!」
>「しかし、状況が状況でございますよ。自分がやられちゃぁ、意味ありませんが。」
>「それでもです!」
>キッとした瞳をジゴマに向けるアメリア。
>「・・・・・やれやれ、どこまでも真っ直ぐな御人だ。甘いと言えば甘いが、それもまあいいか・・・・・」
>ジゴマは仕様がねぇな、というように笑みを浮かべた。

アメリア……真っ直ぐですよね。手を汚さなきゃならないこともある、というのは
分かっていても、本能的に拒否してしまうのでしょうね。
ジゴマさんも苦笑するしかないですね。

>その途端、エルマは自分の感覚が妙にグニャリとするような感触に襲われた。
>気が付くと自分の側に懐中時計を手にした、シルクハットの男が立っていた。
>「マスター。ただ今戻りました。」
>「おう、ご苦労さん。少し遅かったが、まあ結果オーライだ。」
>その声を聞きながら、エルマの精神は深淵に落ちていった。

クロックワークさん、丁度良いタイミングでしたね。エルマさんを死なせては
いないようですので、意識、というか、時間をストップさせたのでしょうか。
ある意味、情報源ゲットですね。

>呟いた男の胸に刃が深く突き刺さり、男は絶命した。
>「終わりか・・・・・・他愛もない。」
>ヒュッと刃を振り、カーライルは仕込みを納めた。
>辺りに転がる屍を見下ろす瞳には、何の感慨もなかった。
>周りを見るが、もうひとりいたあの影は、どこにもその姿がなかった。
>「やれやれ・・・・・味方でよかったな・・・・・・・流石にあのからくり師とともに相手になったら堪らないからな。」

カーライルさん。ケガを意識させない強さですね。もう一人の方は、倒した途端、
もう別行動開始ですか。カーライルさんにすら、気づかせずに、というのが
凄さを物語ってますね。

>アメリアも驚きの声をあげる。
>「どうしてここに――「それはこっちの台詞だっ!!」
>凄まじい怒号が響いた。
>アメリアもビクリと身を竦ませてしまうほどだった。

……肩で息をして、ジゴマさんの予想よりも早く追いつく……。
余程急いだのが分かります、ゼル……。ああ苦労人。
そして心配の度合いが大きいだけに、怒りの度合いも大きいのですね。

>「で、でも・・・わたしは・・・・」
>「でももストライキもあるかっ!!」
>ゼルガディス自身も怒りのあまり、言葉の出るままに口に出している。
>その光景を見ながら、ジゴマはやっぱり愉しそうに笑っていた。

ゼルはかなり感情的になってますね。そしてやはり楽しんでいるジゴマさん。
ゼルは普段、努めて感情を抑えているタイプだけに、端で見ている分には
面白いのでしょうね。
……もっとも、端で見ていても、ゼルの剣幕に耐えられる人は、そういないとも思いますが。

>街道を行くアメリアのすぐ後ろを、憮然とした表情のゼルガディスが歩いていた。
>眉間に思いっきり皺を寄せ、ぶすっと不機嫌そうに腕組みをしていた。
>意地の張り合いのような口論が続いたが、それとなくジゴマがアメリアのほうへと付き、変に丸め込まれてしまったような形となった。
>心の中で思いっきりジゴマに悪態をついていた。

そして結局こうなる(笑)さすがジゴマさん。手八丁口八丁で、ゼルが感情的にはともかく、
理屈では思わず納得してしまうような口添えをしたのですね。
これはもう、相手が悪いとしか言えませんね(笑)

>「ゼルガディスさん・・・・・まだ怒ってます?」
>アメリアが顔色を覗うように訊ねてきた。
>「これがいい顔に見えるか?」
>「うう・・・すいません。」
>ゼルガディスのぶすっとした返事に、アメリアはシュンと項垂れた。
>どこか捨てられた仔犬のように見えて仕方がない。

おしい! アメリア。あとは上目遣いうるうる攻撃で、落ちるのにっ(笑)

>「ふん。お前の目当てのものはここにはないぞ。」
>「そうですか?確かに本物が王宮に渡されたと聞きましたが、それもまたニセモノでしたよ〜。」
>「なにっ!?」
>そのとき、ゼルガディスの脳裏にジゴマの顔が浮かんだ。
>(あいつ・・・・・またおかしな真似を・・・・・・)

……ジゴマさんってば……(汗)ギリギリまで、本物を渡す気はないようですね(汗)
……って、もしかして囮にされてませんか……? ゼル……(^_^;)

>「『黙示録』第7章12節――――」
>カシミールの声が不気味に響いた。
>「”第六の封印を解くと大地震が襲い、太陽は喪服のように黒くなり、月は血の色となった―――――”」
>辺りの空気が不気味に震えだした。
>「”――――この日こそ、この世に審判の下る日である。”」
>凄まじい衝撃がゼルガディスたちを襲った。

カシミールさんの技は、天変地異まで引き起こすのでしょうか……?(汗)
そうれとも、当人達のみが「そう」感じるような暗示なのか。
何にせよ、ゼルとアメリア、ピンチですね。

>続きでした。
>ゼルガディス、なんとかアメリアたちに追いつきました。
>しかし、結局は旅に同行する羽目に。
>そしてまだまだ刺客たちは襲ってきます。
>それではまた次回。

楽しませていただきました。
とにかくアメリアの行動に、感情的になってしまうゼルが。
ゼルはもう、アメリアにはどうしようもなく、振り回されてしまうのですね。
困ったなと思いつつ、振り回されつつもしっかり取るべき行動は取るのが、
ゼルの偉いところですが。……さすが天性の巻き込まれ体質♪
さて、次々に刺客が現れるとしても、とりあえずカシミールさんの攻撃から、
どう逃れるのでしょうか。続きを楽しみにしています。

それでは、今日はこの辺で失礼いたします。

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29233これが彼の運命かも(笑)棒太郎 2004/1/31 23:15:21
記事番号29214へのコメント


>棒太郎さま、こんばんは。
>
>続けてのご投稿ですね。アメリアとジゴマさんの珍道中。
>そして、タイタスさんの膝カックンに笑いました。
>相変わらず苦労の多いゼル。何だかんだ言いつつ、アメリアの言い分を
>聞いてしまう辺りには、「惚れた弱み」という単語が浮かびます(笑)
>どうしても目が離せなくなってしまうのでしょうね。

こんばんは、エモーションさん。
アメリアとジゴマの珍道中、すぐにゼルが追いついてきますが。
あと、久しぶりに登場のサナとタイタス。タイタスがなんか弾けてます。


>>「というわけで、このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが貴女を更生させてみせます!!」
>>ビシッと力強く指を差す。
>>「アメリアッ!?う、嘘・・・・・・・まぢ?」
>>呆然としたエルマの声に、ジゴマは「まぢですよ」と面白そうに答える。
>
>ここの場面に爆笑しました。ああ、アメリアです(笑)
>やたら頑丈な上に、それがお姫さまとは……普通思いませんよね。
>ジゴマさんは面白がってますし。でも姉妹どころか、父親も頑丈だと知ったら、
>納得しそうです。

アメリア節炸裂です。やっぱりこの王道がないと(笑)
一般のプリンセスというイメージとは違いますしね。

>>アメリアは呆気に取られたように、その光景を見つめていた。
>>それゆえ、いくら人通りがあまりないといっても、これだけの騒ぎに対して、何の反応もないことに気が回らなかった。
>
>怪獣大決戦(笑)でも、私は蜘蛛が嫌いなので、見たら多分固まります(汗)
>ギャラリーが集まらない……ということは、ここはジゴマさんの作った
>空間なのでしょうか。「ダイダロスの迷宮」とは違うのかもしれませんが。

「ダイダロスの迷宮」ではないですが、ジゴマがちょいと細工してます。
当初、怪獣大決戦は予定してなかったのですが、書き進めてるうちに大決戦になりました。

>>キッとした瞳をジゴマに向けるアメリア。
>>「・・・・・やれやれ、どこまでも真っ直ぐな御人だ。甘いと言えば甘いが、それもまあいいか・・・・・」
>>ジゴマは仕様がねぇな、というように笑みを浮かべた。
>
>アメリア……真っ直ぐですよね。手を汚さなきゃならないこともある、というのは
>分かっていても、本能的に拒否してしまうのでしょうね。
>ジゴマさんも苦笑するしかないですね。

世の中、奇麗事だけじゃない、ということは分かっていても、それでも自分の信念を貫こうとすると思います。
ジゴマからしてみれば、アマチャンな考えですけど、その強い意志を見て、やれやとれといった感じなんですね。

>>「マスター。ただ今戻りました。」
>>「おう、ご苦労さん。少し遅かったが、まあ結果オーライだ。」
>>その声を聞きながら、エルマの精神は深淵に落ちていった。
>
>クロックワークさん、丁度良いタイミングでしたね。エルマさんを死なせては
>いないようですので、意識、というか、時間をストップさせたのでしょうか。
>ある意味、情報源ゲットですね。

エルマの精神を捕らえて、生け捕りにしました。

>>周りを見るが、もうひとりいたあの影は、どこにもその姿がなかった。
>>「やれやれ・・・・・味方でよかったな・・・・・・・流石にあのからくり師とともに相手になったら堪らないからな。」
>
>カーライルさん。ケガを意識させない強さですね。もう一人の方は、倒した途端、
>もう別行動開始ですか。カーライルさんにすら、気づかせずに、というのが
>凄さを物語ってますね。

ぶっちゃけカーライルより、凄腕です。
もうすぐゼルたちの前にもご登場します。

>>「どうしてここに――「それはこっちの台詞だっ!!」
>>凄まじい怒号が響いた。
>>アメリアもビクリと身を竦ませてしまうほどだった。
>
>……肩で息をして、ジゴマさんの予想よりも早く追いつく……。
>余程急いだのが分かります、ゼル……。ああ苦労人。
>そして心配の度合いが大きいだけに、怒りの度合いも大きいのですね。

道の途中で、さりげなくクロックワークが案内してますので、行き違うことなく追いつくことができました。
もう、ゼルガディス母さん、怒り頂点ですから(笑)

>>「で、でも・・・わたしは・・・・」
>>「でももストライキもあるかっ!!」
>>ゼルガディス自身も怒りのあまり、言葉の出るままに口に出している。
>>その光景を見ながら、ジゴマはやっぱり愉しそうに笑っていた。
>
>ゼルはかなり感情的になってますね。そしてやはり楽しんでいるジゴマさん。
>ゼルは普段、努めて感情を抑えているタイプだけに、端で見ている分には
>面白いのでしょうね。
>……もっとも、端で見ていても、ゼルの剣幕に耐えられる人は、そういないとも思いますが。

愉快犯ですから、ジゴマは。

>>意地の張り合いのような口論が続いたが、それとなくジゴマがアメリアのほうへと付き、変に丸め込まれてしまったような形となった。
>>心の中で思いっきりジゴマに悪態をついていた。
>
>そして結局こうなる(笑)さすがジゴマさん。手八丁口八丁で、ゼルが感情的にはともかく、
>理屈では思わず納得してしまうような口添えをしたのですね。
>これはもう、相手が悪いとしか言えませんね(笑)

ゼルガディスもどちらかといえば、直情型でしょうから。
策士タイプなジゴマ相手では、どうにも分が悪いでしょう。

>>ゼルガディスのぶすっとした返事に、アメリアはシュンと項垂れた。
>>どこか捨てられた仔犬のように見えて仕方がない。
>
>おしい! アメリア。あとは上目遣いうるうる攻撃で、落ちるのにっ(笑)

防御がかなり難しい攻撃です。
よほど精神が強くないと、コロッとやられます。

>>「なにっ!?」
>>そのとき、ゼルガディスの脳裏にジゴマの顔が浮かんだ。
>>(あいつ・・・・・またおかしな真似を・・・・・・)
>
>……ジゴマさんってば……(汗)ギリギリまで、本物を渡す気はないようですね(汗)
>……って、もしかして囮にされてませんか……? ゼル……(^_^;)

ここら辺は後にも書きますが、確かに囮にもされてますゼル。
ジゴマも本物は今、持ってません。別の人物が持ってます。

>>「”――――この日こそ、この世に審判の下る日である。”」
>>凄まじい衝撃がゼルガディスたちを襲った。
>
>カシミールさんの技は、天変地異まで引き起こすのでしょうか……?(汗)
>そうれとも、当人達のみが「そう」感じるような暗示なのか。
>何にせよ、ゼルとアメリア、ピンチですね。

限定で局地的に、本の内容を具現することができます。
今、出してる本も内容が内容なので、厄介ですね。


>>続きでした。
>>ゼルガディス、なんとかアメリアたちに追いつきました。
>>しかし、結局は旅に同行する羽目に。
>>そしてまだまだ刺客たちは襲ってきます。
>>それではまた次回。
>
>楽しませていただきました。
>とにかくアメリアの行動に、感情的になってしまうゼルが。
>ゼルはもう、アメリアにはどうしようもなく、振り回されてしまうのですね。
>困ったなと思いつつ、振り回されつつもしっかり取るべき行動は取るのが、
>ゼルの偉いところですが。……さすが天性の巻き込まれ体質♪
>さて、次々に刺客が現れるとしても、とりあえずカシミールさんの攻撃から、
>どう逃れるのでしょうか。続きを楽しみにしています。
>
>それでは、今日はこの辺で失礼いたします。

ある意味、アメリアも天然はいってるでしょうから。
あとはやっぱり「惚れた弱み」でしょうかね。
刺客のほうも、また次々と襲ってきますので、本当にゼル、強度の巻き込まれ体質です。
それでは、どうもありがとうございました。

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29252異邦の彼方より (12)棒太郎 2004/2/2 21:51:36
記事番号29200へのコメント

こんばんは、棒太郎です。
まだまだ道中編が続きますが、お付き合いください。
それでは続きどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (12)


まるで、天変地異と見紛うような衝撃が、二人に襲い掛かった。
天から幾条もの雷撃が降り注ぎ、地は砕け、幾つもの亀裂を走らせた。
「くっ!」
「きゃっ!?」
ゼルガディスはアメリアの腕を掴み、側へ引き寄せ、襲い来る天災を避けていく。
「大人しくしてくださいよ〜〜。苦しむのはそちらですよ〜?」
カシミールが、困ったような声を上げる。
それに応えるように、ゼルガディスはキッと睨みつけた。
(前もそうだったが・・・・・・・奴は本を媒介にして力を具現するのか?)
なんにせよ、厄介な相手には違いない。
「『第1の天使がラッパを吹くと、空から血の混じった雹と火が降ってきた』」
すると、空から無数の火に包まれた雹が降り注いできた。
「くそっ!!」
剣を振るい、降り注ぐ雹を次々と落としていくが、
「ああっ!?」
突如、アメリアが太もも近くを押さえ、倒れた。
「アメリア!?」
ゼルガディスが叫んだ。雹の1つが彼女の足の肉を抉ったのだった。
アメリアの側に駆け寄ろうとしたゼルガディスだが、それより早くカシミールが目をきらりと光らせた。
「『―――見ると、青白き馬が出てきた。それに乗っている者を”死”と言い、それに”黄泉”が従っていた。』」
その一文が読まれるや、ゼルガディスの前に立ち塞がるように、青白い馬に乗った髑髏の白騎士が現れた。
「残念ですが、大人しくしてください。でないと、この娘の身の保障はできませんよ〜。」
カシミールの言葉に、ゼルガディスの動きが止まった。
「くっ・・・・!」
アメリアは倒れたままピクリとも動かない。
やがて、ゼルガディスは構えていた剣を降ろした。
それを見たカシミールは、ひとつ笑みを浮かべ、アメリアの元へ近寄った。
「それほど深い傷ではないんですがね〜〜――――っ!?」
アメリアの右手を取った瞬間、右手は見事にスッポリと外れたのだった。
カシミールの顔に驚きの色が浮かんだのと同時に、胸に鈍い衝撃が走った。
「え―――?」
見ると、アメリアの、右手の抜けたそこから一本の刃が生え、カシミールの胸に突き刺さっていた。
「な―――!?」
ゼルガディスも絶句した。
「そんな・・・・・・・・」
カシミールの体が、ドッと後ろに倒れると、先程の髑髏の白騎士の姿も消えた。
「噂に聞く”図書館司書”のカシミールさんも、この程度ですか?」
いつもと変わらない無邪気ともいえる口調でそう言った。
「ア、アメリア・・・・お前―――――」
その時、ゼルガディスの脳裏に二つの事柄が一本の糸で結びついた。
「ジゴマの仕業か!」
ゼルガディスの言葉に、”アメリア”はニッコリと笑った。
「はい、ゼルガディスさん。私はアメリア様の身代わり人形です。」
本物と寸分変わらぬ仕草だった。
対するゼルガディスは、複雑な表情を浮かべていた。
「本物のアメリアはどこにいる!?」
「別の道を進んでます。ところでゼルガディスさん―――」
アメリアが右腕の刃を閃かせながら訊ねた。
「この人、どうします?」
そう言って、虫の息のカシミールに視線を向けた。
アメリアの言葉は止めをさすのかどうか、ということを聞いているのだということが分かった。
「放っておけ。もう、俺たちを襲う力もないだろう。」
しかめるような顔でそう言うと、ゼルガディスは歩き出した。
その後ろをアメリアが付いて行く。
「ゼルガディスさん・・・・・・そんなにわたしが気に触りますか?」
背後からアメリアがそう訊ねた。
「わたしはなにひとつ本物のアメリア様と変わりはありません。ゼルガディスさんへの気持ちだって――――」
その時、ビュッと空を切ってアメリアの首筋ギリギリのところに刃が当てられた。
「それ以上喋るな!」
そう一喝すると、剣を納め、ゼルガディスは再び歩き出した。


どのくらい時間が経ったか――――
致命傷ではないが、それでも重傷を負ったカシミールは、誰かが近づいてくるのを感じた。
「ふむ、これで半分はやられたか・・・・・・連中もなかなかやるものだ。」
コツコツと杖を突く音が響く。どうやら盲人のようだった。
「だが、間に合ってよかった。」
カシミールを見下ろして、男――カーライルは笑った。
それを見たカシミールは戦慄が走ったのを感じた。
「――――!?」
虫の息の体を――それでも必死で動かそうとしたカシミールの喉元に、ぐさりと刃が突き刺さった。
「ひゅ――」と声を上げ、もがく様に天に向かって両手を挙げたが、やがてパッタリと倒れ、白目を向いて絶命した。
「悪いが君の命、我が力の目覚めのために貰う。」
仕込みを納め、カシミールの死体を一瞥するや、また道の向こうへ歩き去っていった。




ゼルガディスとアメリアは相変わらず、街道を歩いていた。
ただし先程までとは違い、いやに重い空気が包み込んでいた。
ゼルガディスは後ろのアメリアを見ることなく、歩を進め、アメリアもそれに黙って付いて行くというのだった。
ゼルガディスは後ろの”アメリア”に複雑な心境だった。
本物のアメリアとどこをとっても代わり映えはしない。しかし、無茶はすれどあのように躊躇なく人を刺すようなことはアメリアはしない。まして、相手の止めをどうするかを尋ねるなど―――――
陰のアメリアを見ているようで、ゼルガディスの心はどこか落ち着かなかった。
「ん?」
その時、前方からやってくる人影に気が付いた。
やがて、その姿がはっきりとわかるところまで来ると、ゼルガディスの体を戦慄が貫いた。
小柄な―――顔中皺にまみれた、猿を思わせるような老人だった。
だが、その身なり、歩き方、そして近づいてくるたびに、こちらに強烈に吹き付けてくるプレッシャー。
(このジイさん・・・・・・デキる)
ゼルガディスは、自分が剣の柄に手を掛けて構えていることに気が付いた。
「ひょ、ひょ。お前さんらじゃの。例のプレートに関わりあるというのは。」
かかかと老人が笑った。
「あんたも刺客のひとりか?」
「そうじゃ。わしゃ、フー・マンチューというモンじゃ。」
老人の言葉に、ゼルガディスは雷が落ちたような衝撃を受けた。
「フ、フー・マンチューだとっ!?」
「ゼルガディスさん・・・・・知ってるんですか?」
「あ、ああ。裏世界でも伝説となっている男だ。。だが、すでに何年も前に死んだとされてるはずだ。」
ゼルガディスは剣を抜き、正眼に構えていた。
「よう言われるわい。そんな話、もう何回も流されとるよ。勝手に殺さんで欲しいもんじゃ。」
やれやれとフー・マンチューは息をついた。
「ま、いちいち否定するのも面倒なんで、なんも言っとらんがの。」
そう言うや、まるで無造作ともいうように、ゼルガディスの前へ足を進めていった。
間合いを詰める――というものではない。散歩するように軽い足取りで歩いていた。
「くっ!」
ゼルガディスが剣を振るった。
刃が老人の体に届いた、と思った瞬間、ゼルガディスの視界が反転した。そして次の瞬間には体に凄まじい衝撃がぶつかった。
「なっ!?」
いつの間にかゼルガディスは地面に叩きつけられていた。
(な・・・・なんだ!?何が起こった!?)
ゼルガディスには分からなかった。
ゼルガディスの剣がフー・マンチューに届こうとした瞬間、フー・マンチューの体は瞬時にゼルガディスの懐に入り込み、片手がゼルガディスの腕に触れたと思うと、ゼルガディスの体は、まるで自分から飛んだように宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられたのだった。
「終わりかな?若いの?」
ニヤリとフー・マンチューが笑った。


*************************************

続きでした。
最後に出てきたご老人――フー・マンチュー、彼が7人の刺客の最後の一人です。
そして、ゼルと一緒にいるアメリアはジゴマの人形。
いろいろと波乱になってきました。
それではまた次回。

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29260苦労がオートリバースですね、ゼル……(^_^;)エモーション E-mail 2004/2/3 23:23:31
記事番号29252へのコメント

棒太郎様、こんばんは。

ああっ! 久々に引っ張り出したプリメ(笑)をしている間に続きがっ!(爆)
意外だった〃アメリア〃の正体……。ゼルと一緒に驚きました。
ゼルとしてはかなり複雑ですね、これは。……ほんとにジゴマさんてば……(^_^;)


>ゼルガディスが叫んだ。雹の1つが彼女の足の肉を抉ったのだった。
>アメリアの側に駆け寄ろうとしたゼルガディスだが、それより早くカシミールが目をきらりと光らせた。
>「『―――見ると、青白き馬が出てきた。それに乗っている者を”死”と言い、それに”黄泉”が従っていた。』」
>その一文が読まれるや、ゼルガディスの前に立ち塞がるように、青白い馬に乗った髑髏の白騎士が現れた。
>「残念ですが、大人しくしてください。でないと、この娘の身の保障はできませんよ〜。」
>カシミールの言葉に、ゼルガディスの動きが止まった。

さすがに、のほほんとしていてもカシミールさん、チャンスを見逃さないですね。
そしてアメリアを盾にされては、ゼルは動けませんし。

>アメリアの右手を取った瞬間、右手は見事にスッポリと外れたのだった。
>カシミールの顔に驚きの色が浮かんだのと同時に、胸に鈍い衝撃が走った。
>「え―――?」
>見ると、アメリアの、右手の抜けたそこから一本の刃が生え、カシミールの胸に突き刺さっていた。
>「な―――!?」
>ゼルガディスも絶句した。
>「そんな・・・・・・・・」
>カシミールの体が、ドッと後ろに倒れると、先程の髑髏の白騎士の姿も消えた。
>「噂に聞く”図書館司書”のカシミールさんも、この程度ですか?」
>いつもと変わらない無邪気ともいえる口調でそう言った。
>「ア、アメリア・・・・お前―――――」
>その時、ゼルガディスの脳裏に二つの事柄が一本の糸で結びついた。
>「ジゴマの仕業か!」
>ゼルガディスの言葉に、”アメリア”はニッコリと笑った。
>「はい、ゼルガディスさん。私はアメリア様の身代わり人形です。」
>本物と寸分変わらぬ仕草だった。

これは、もう驚くしかないですね。
右腕が取れた瞬間「はい?」って感じになりますし、さらに躊躇もなく攻撃……。
実物を知っていれば知っているほど、混乱しますね。

>「ゼルガディスさん・・・・・・そんなにわたしが気に触りますか?」
>背後からアメリアがそう訊ねた。
>「わたしはなにひとつ本物のアメリア様と変わりはありません。ゼルガディスさんへの気持ちだって――――」
>その時、ビュッと空を切ってアメリアの首筋ギリギリのところに刃が当てられた。
>「それ以上喋るな!」
>そう一喝すると、剣を納め、ゼルガディスは再び歩き出した。

この人形が悪いわけじゃない、と頭で分かっていても、嫌ですよね。
そして、本物のアメリアと変わらないと言っても、「アメリアの気持ち」を
本物以外からは、聞いて良いものではないでしょう。
……ゼルも聞きたくないでしょうし。

>「だが、間に合ってよかった。」
>カシミールを見下ろして、男――カーライルは笑った。
>それを見たカシミールは戦慄が走ったのを感じた。
>「――――!?」
>虫の息の体を――それでも必死で動かそうとしたカシミールの喉元に、ぐさりと刃が突き刺さった。
>「ひゅ――」と声を上げ、もがく様に天に向かって両手を挙げたが、やがてパッタリと倒れ、白目を向いて絶命した。
>「悪いが君の命、我が力の目覚めのために貰う。」
>仕込みを納め、カシミールの死体を一瞥するや、また道の向こうへ歩き去っていった。

……カーライルさん。何だか凄まじいことを……(汗)
カーライルさんの力……。何だかとても禍々しい感じがしますね。

>ゼルガディスは後ろの”アメリア”に複雑な心境だった。
>本物のアメリアとどこをとっても代わり映えはしない。しかし、無茶はすれどあのように躊躇なく人を刺すようなことはアメリアはしない。まして、相手の止めをどうするかを尋ねるなど―――――
>陰のアメリアを見ているようで、ゼルガディスの心はどこか落ち着かなかった。

これは本当に……複雑ですね、ゼルとしては。人形の言っていることは、
まず間違いなく事実でしょうし、ゼルが思ったようにアメリアが性格的にしろ何にしろ、
あえて取らない、おそらく深層心理の奥底で爆睡しているような行動を、
人形は躊躇無く取れるだけのことでしょうから、見たくないものを見せられている
気分が強いのでしょうし。
何だかんだ言っても、ゼルはアメリアに「明るくて、綺麗で正しい」イメージを
持っていて、それを壊されたみたいで嫌なのでしょうね。

>小柄な―――顔中皺にまみれた、猿を思わせるような老人だった。
>だが、その身なり、歩き方、そして近づいてくるたびに、こちらに強烈に吹き付けてくるプレッシャー。
>(このジイさん・・・・・・デキる)
>ゼルガディスは、自分が剣の柄に手を掛けて構えていることに気が付いた。

はっきり分からないうちに、瞬時にゼルが構えてしまうのですから、
敵だというプレッシャーがビシバシきているのですね。凄すぎです。

>「そうじゃ。わしゃ、フー・マンチューというモンじゃ。」
>老人の言葉に、ゼルガディスは雷が落ちたような衝撃を受けた。
>「フ、フー・マンチューだとっ!?」
>「ゼルガディスさん・・・・・知ってるんですか?」
>「あ、ああ。裏世界でも伝説となっている男だ。。だが、すでに何年も前に死んだとされてるはずだ。」
>ゼルガディスは剣を抜き、正眼に構えていた。

伝説になっている……(汗)無茶苦茶強いのですね、フー・マンチューさん。

>ゼルガディスには分からなかった。
>ゼルガディスの剣がフー・マンチューに届こうとした瞬間、フー・マンチューの体は瞬時にゼルガディスの懐に入り込み、片手がゼルガディスの腕に触れたと思うと、ゼルガディスの体は、まるで自分から飛んだように宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられたのだった。
>「終わりかな?若いの?」
>ニヤリとフー・マンチューが笑った。

うわあ……(^_^;) ゼルがもう完璧に手玉に取られて、遊ばれてますね。
力押しで敵う相手じゃなさそうですし、どう相手をしたらいいのやら。
ゼル本当に大変です。

>続きでした。
>最後に出てきたご老人――フー・マンチュー、彼が7人の刺客の最後の一人です。
>そして、ゼルと一緒にいるアメリアはジゴマの人形。
>いろいろと波乱になってきました。
>それではまた次回。

本物のアメリアはジゴマさんと一緒でしょうか。
それとも「再会」する前から、すでにジゴマさんとは別行動だったのでしょうか。
何にせよ、ゼルの苦労は続きますね。
そして出ましたね。最強のじーちゃん……。
ベルベインさんとどっちが強いのか、ある意味興味ありますが……何故でしょう。
二大妖怪大決戦と言う文字が頭に……。
「ほっほっほ。お主なかなかやるのう」「心おきなく戦える相手は久々だなあ」とか
お互いに言いながら、にこにことじゃれ合うように戦う姿が脳裏に……(^_^;)
さて、こんな相手とどう戦うのでしょうか。続きが楽しみです。
それでは、今日はこの辺で失礼します。

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29274まだまだ続きます棒太郎 2004/2/4 23:05:31
記事番号29260へのコメント


>棒太郎様、こんばんは。
>
>ああっ! 久々に引っ張り出したプリメ(笑)をしている間に続きがっ!(爆)
>意外だった〃アメリア〃の正体……。ゼルと一緒に驚きました。
>ゼルとしてはかなり複雑ですね、これは。……ほんとにジゴマさんてば……(^_^;)

こんばんは、エモーションさん。
”アメリア”の正体――これは、前々から考えていましたので、ここで使いました。
今回もジゴマは好き勝手してくれそうです。


>>その一文が読まれるや、ゼルガディスの前に立ち塞がるように、青白い馬に乗った髑髏の白騎士が現れた。
>>「残念ですが、大人しくしてください。でないと、この娘の身の保障はできませんよ〜。」
>>カシミールの言葉に、ゼルガディスの動きが止まった。
>
>さすがに、のほほんとしていてもカシミールさん、チャンスを見逃さないですね。
>そしてアメリアを盾にされては、ゼルは動けませんし。

仮にも、裏世界有数の刺客ですからね。
そこら辺は、頼りなげに見えても油断はしてません。

>>その時、ゼルガディスの脳裏に二つの事柄が一本の糸で結びついた。
>>「ジゴマの仕業か!」
>>ゼルガディスの言葉に、”アメリア”はニッコリと笑った。
>>「はい、ゼルガディスさん。私はアメリア様の身代わり人形です。」
>>本物と寸分変わらぬ仕草だった。
>
>これは、もう驚くしかないですね。
>右腕が取れた瞬間「はい?」って感じになりますし、さらに躊躇もなく攻撃……。
>実物を知っていれば知っているほど、混乱しますね。

生身の人間とほとんど変わりませんから。いきなり、右手が抜けたら誰でも驚きますよね。

>>「わたしはなにひとつ本物のアメリア様と変わりはありません。ゼルガディスさんへの気持ちだって――――」
>>その時、ビュッと空を切ってアメリアの首筋ギリギリのところに刃が当てられた。
>>「それ以上喋るな!」
>>そう一喝すると、剣を納め、ゼルガディスは再び歩き出した。
>
>この人形が悪いわけじゃない、と頭で分かっていても、嫌ですよね。
>そして、本物のアメリアと変わらないと言っても、「アメリアの気持ち」を
>本物以外からは、聞いて良いものではないでしょう。
>……ゼルも聞きたくないでしょうし。

複雑な心境です。
本物そっくりでも本物ではないわけですから。

>>虫の息の体を――それでも必死で動かそうとしたカシミールの喉元に、ぐさりと刃が突き刺さった。
>>「ひゅ――」と声を上げ、もがく様に天に向かって両手を挙げたが、やがてパッタリと倒れ、白目を向いて絶命した。
>>「悪いが君の命、我が力の目覚めのために貰う。」
>>仕込みを納め、カシミールの死体を一瞥するや、また道の向こうへ歩き去っていった。
>
>……カーライルさん。何だか凄まじいことを……(汗)
>カーライルさんの力……。何だかとても禍々しい感じがしますね。

彼の力は、ジゴマへ依頼したことと関わりがあります。
彼の過去は次の話以降に。

>>ゼルガディスは後ろの”アメリア”に複雑な心境だった。
>>本物のアメリアとどこをとっても代わり映えはしない。しかし、無茶はすれどあのように躊躇なく人を刺すようなことはアメリアはしない。まして、相手の止めをどうするかを尋ねるなど―――――
>>陰のアメリアを見ているようで、ゼルガディスの心はどこか落ち着かなかった。
>
>これは本当に……複雑ですね、ゼルとしては。人形の言っていることは、
>まず間違いなく事実でしょうし、ゼルが思ったようにアメリアが性格的にしろ何にしろ、
>あえて取らない、おそらく深層心理の奥底で爆睡しているような行動を、
>人形は躊躇無く取れるだけのことでしょうから、見たくないものを見せられている
>気分が強いのでしょうし。
>何だかんだ言っても、ゼルはアメリアに「明るくて、綺麗で正しい」イメージを
>持っていて、それを壊されたみたいで嫌なのでしょうね。

オリジナルが秘めている心の奥底のものまで、表に出してしまいますので、やはり見たくないものまで見せられてしまいます。
やはりアメリアのイメージってそんなのだと思うので、それと少しでも異なるような行動は、とても違和感あるものに写るでしょうね。

>>小柄な―――顔中皺にまみれた、猿を思わせるような老人だった。
>>だが、その身なり、歩き方、そして近づいてくるたびに、こちらに強烈に吹き付けてくるプレッシャー。
>>(このジイさん・・・・・・デキる)
>>ゼルガディスは、自分が剣の柄に手を掛けて構えていることに気が付いた。
>
>はっきり分からないうちに、瞬時にゼルが構えてしまうのですから、
>敵だというプレッシャーがビシバシきているのですね。凄すぎです。

この人もそういう”気”を努めて抑えようとはしてませんし。

>>「フ、フー・マンチューだとっ!?」
>>「ゼルガディスさん・・・・・知ってるんですか?」
>>「あ、ああ。裏世界でも伝説となっている男だ。。だが、すでに何年も前に死んだとされてるはずだ。」
>>ゼルガディスは剣を抜き、正眼に構えていた。
>
>伝説になっている……(汗)無茶苦茶強いのですね、フー・マンチューさん。

カーライルも信じられないと驚いていたぐらいですので。凄まじい腕前です。

>>ゼルガディスには分からなかった。
>>ゼルガディスの剣がフー・マンチューに届こうとした瞬間、フー・マンチューの体は瞬時にゼルガディスの懐に入り込み、片手がゼルガディスの腕に触れたと思うと、ゼルガディスの体は、まるで自分から飛んだように宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられたのだった。
>>「終わりかな?若いの?」
>>ニヤリとフー・マンチューが笑った。
>
>うわあ……(^_^;) ゼルがもう完璧に手玉に取られて、遊ばれてますね。
>力押しで敵う相手じゃなさそうですし、どう相手をしたらいいのやら。
>ゼル本当に大変です。

一応イメージとしては、武術の達人と謡われるような人たちです。
フーじいさんの使う技も古流柔術や合気道といったような感じのものです。


>>続きでした。
>>最後に出てきたご老人――フー・マンチュー、彼が7人の刺客の最後の一人です。
>>そして、ゼルと一緒にいるアメリアはジゴマの人形。
>>いろいろと波乱になってきました。
>>それではまた次回。
>
>本物のアメリアはジゴマさんと一緒でしょうか。
>それとも「再会」する前から、すでにジゴマさんとは別行動だったのでしょうか。
>何にせよ、ゼルの苦労は続きますね。
>そして出ましたね。最強のじーちゃん……。
>ベルベインさんとどっちが強いのか、ある意味興味ありますが……何故でしょう。
>二大妖怪大決戦と言う文字が頭に……。
>「ほっほっほ。お主なかなかやるのう」「心おきなく戦える相手は久々だなあ」とか
>お互いに言いながら、にこにことじゃれ合うように戦う姿が脳裏に……(^_^;)
>さて、こんな相手とどう戦うのでしょうか。続きが楽しみです。
>それでは、今日はこの辺で失礼します。

鋭いですね(笑)
後ほど書きますが、ゼルガディスの再会の前から、本物のアメリアは先に行ってます。
そして、フー・マンチュー。
妖怪というのなら、フー・マンチューのほうがそんなような感じです。
強いといっても、ベルベインはまだ人間の範疇ですから。
単純な実力的には、フーじいさんのほうが上ですかね。でも、戦うとなったら確かにそんな感じかもしれません(笑)
それでは、どうもありがとうございました。

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29275異邦の彼方より (13)棒太郎 2004/2/5 01:08:06
記事番号29200へのコメント

こんばんは、棒太郎です。
刺客の人たち、割とあっさりとやられていく予定だったのですが、少し狂いが生じてます。(恐らくエルマが原因、そしてフーじいさんは別)
それでは続きをどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (13)


ゼルガディスは、久しく味わったことのなかった逼迫感を味合わされていた。
目の前にちょこんと立つ小柄な老人。その正体は、裏世界でも伝説として語られる男――フー・マンチューだというのだった。
騙りか?―――とも思ったが、先程の一撃は、老人が真物であるということを十分に物語った。
(このジイサンは嘘偽りのないフー・マンチューその人だ―――)
フー・マンチューがまた無造作とも言える足取りで前に出た。
「ウオォォッ!!」
裂帛の気合と共にゼルガディスの剣が閃いたが、
「っ!?」
フー・マンチューの手が、ゼルガディスの剣の柄を掴んだと見るや、ゼルガディスの体はそのまま、フー・マンチューの手が捻る方向に投げ落とされた。
「ぐっ!?」
またも激しい衝撃がゼルガディスを襲う。
「お前さん、少々変わった体をしとるが―――」
地面にうつ伏せに倒れたゼルガディスの右の肩甲骨辺りを踏みつけて押さえ、右腕を後ろに捻り上げた。
「岩石の肌身を持っておっても、間接という奴は否応なく存在するのでな。」
少し手を捻っただけなのに、凄まじい圧力が間接に掛かった。
恐らくあと数ミリグラム力を入れるだけで、ゼルガディスの間接は砕かれるだろう。体の自由も完全に殺されていた。
(なんて―――手練れだ!)
全身にイヤな汗をかきながら、ゼルガディスは呻いた。そのとき―――
「ゼルガディスさん!!」
フー・マンチューの背後から、アメリアが襲い掛かった。
右手に仕込まれた刃が届く寸前、フー・マンチューの体はスルリと離れた。
「ゼルガディスさんを殺らせはしません!」
確固たる決意の色を見せながら、アメリアは疾風の如くフー・マンチューに襲い掛かった。
「よせっ!!アメリアッ!!」
ゼルガディスの必死の叫びが響いた。
「ほっ。木偶人形といえども、無駄に命を散らすこともあるまいに。」
嘆息気味にそう呟くと、フー・マンチューも真っ直ぐアメリアに向かっていった。
二つの影がぶつかった瞬間、鈍い音が響いた。
アメリアの刺突を入り身で躱したフー・マンチューが、伸びきったアメリアの肘に当身を食らわし、折ったのだった。
折れた、と意識する間もなく、フー・マンチューの体が蛇のように絡みついたかと思うと、アメリアの体はぐるりと宙を回転し、激しく地面に叩きつけられた。
ゴキャリ、とイヤな音が響いた。
「アメリアッ!!」
ゼルガディスが駆け寄った。
背中の骨が奇妙に曲がっていた。脊椎が凄まじい衝撃で捻り壊されていたのだった。
「ゼ・・・・・ル・・・・・・・・・」
アメリアが弱々しく手を伸ばした。
「だ・・い・・・・じょ・う・・・・・・・か・・・・・・・?」
自分の体を心配していると、ゼルガディスは分かった。
「ああ・・・・・なんとか大丈夫だ。」
そう言ってその手を取った。アメリアは安堵の色を浮かべ、小さく微笑んだ。
その瞬間、急速にアメリアの暖かみが凍結した。そこにはただの人形が静かに横たわっていた。
「―――――――」
ゼルガディスは声ならぬうめきを上げた。
「哀しいもんじゃのう。」
フー・マンチューがしみじみと言った。
「慕う男への想いゆえか・・・・・いつの時代もその想いのために我が身を呈するというのは、美しくも哀しいものじゃ。」
「きさまぁっ!!」
怒りと憎しみに漲った剣が、フー・マンチューへ襲い掛かった。
だが、その剣が届く寸前、フー・マンチューの掌打がゼルガディスの体に当たった。
「ガハッ!!」
その瞬間、体を貫くような重い衝撃が走った。
倒れそうになる体をなんとか奮い起こし、剣を地に立て踏ん張った。
「ほほう、加減したとはいえ、わしの通し打ちを喰らって倒れなんだか。今日びの若いモンにしては根性あるの。」
フー・マンチューの姿は消え、どこからともなく声だけが響いてきた。
「どうやらお前さんはプレートを持ってはおらんようじゃな。ならば用はないので引き上げるわい。まあ、また会うかも知れんのぅ。」
ひょ、ひょ、ひょ、と笑い声を残して、フー・マンチューは去っていった。
「クソッ!!」
下唇を噛み締めながら、ゼルガディスはやり場のない怒りを込めて、剣を地面に突き刺した。



人気のない街道のわき道に、一人の男がじっと佇んでいた。
黒い櫃を背負い、立っているその姿は、もう100年くらい前からじっとそこにいるようにも見える。
「お、ようやくのご到着か。」
唇を動かしたとも思えぬのに、男――ジゴマはポツリと呟いた。
やがて、彼の側に馬に乗った数人の男達がやって来た。
「これはこれは、アルベルト様。お早い御着きで。」
ジゴマは先頭のアルベルトに向かって、そう挨拶した。
「いささか慌てていなさるようですが、何か?」
「ああ・・・・・先立って派遣した先遣隊が何者かにやられた。それにアメリア様も―――」
言いかけて、アルベルトはハッと口を噤んだ。
アルベルトの言葉に、ジゴマは微かに笑みを浮かべた。
「しかし、気の早いといえば、気の早い。もうちょい待てませんかねぇ。」
「バルトロメオ様のご命令だ。」
「やつがれに依頼しておいてなんですねぇ。念入りな御方といいますか―――」
「遅かれ早かれ我らも派遣されるのだ。」
アルベルトがそう言ったとき、ジゴマは右方向を向いていた。
「ほう、やはり王家の連中も動き出したか。」
ゆっくりと人影が現れた。
「何者だ!?」
「何者だ、とはつれないな、アルベルト。かつての友に向かって。」
「なに?」
アルベルトは現れた男の姿を凝視した。
「もう忘れてしまったか?まあ、無理もないか。私の顔も以前とは少し違うからな。」
盲目の男はそう言って、笑った。
「それともお前達にとっては駒のひとつに過ぎなかったかな?”黒のアサシン”は―――」
その言葉に、アルベルトの身に動揺が走った。
「ま、まさか・・・・カーライル・・・・?」
カーライルはニヤリと笑った。
「バカな・・・・・確かにあの時・・・・・君の死体は検分したはず・・・・・・」
「フェイクだよ。あの直前、私はある人物に依頼していたのさ。そこのからくり師にな。」
アルベルトは驚きの色を浮かべながら、ジゴマのほうを見た。ジゴマはいつものように愉快げな笑みを浮かべていた。
「ジゴマ殿。どうやら正式に王家から依頼を受けたようですね。」
「そのようで。」
人を食ったような返答だった。
「ならば、私もそれ相応の用意をしなければなりませんな。」
「カーライル様。どうやら、大分その用意は整っているようでございますね。」
ジゴマは相変わらず笑みを浮かべたまま、言った。
「今でも十分人間離れしているが、このうえ更なる魔人になるおつもりで?」
「私の大義のためには。」
「ふぅむ、こいつはどうやらどえらいものをこしらえちまったようだ。」
とジゴマが小首をかしげた。
「貴方には感謝していますよ、ジゴマ殿。だが、今とそれとは別だ。」
「しかしできますかな。こういっちゃなんだが、貴方様はやつがれのこさえたからくりと言えますがね。」
「ふっ。貴方の目に私を操る糸が見えますか。何人であろうとも、この身と精神は自由にさせませんよ。」
その瞬間、ジゴマは大きく跳躍した。
グハッと声をあげて、その後ろにいたアルベルトの部下が数人、いつの間にか横一文字に真っ二つにされ、倒れた。
「アルベルト。いづれ近いうちに否応もなく会える。積もる話はその時にしようか。」
そう声を残し、カーライルの姿は消えた。
「ふむ、あと一人か。」
大木の幹に垂直に――まるでそこが地面であるかのように立ちながらジゴマが謎の呟きを放った。
「奴さん、俺の予想以上の魔人となりそうだ。こいつぁ、早めに始末しといたほうがよさそうだな。」
ジゴマのその言葉は、驚愕のあまり、半ば呆然としたアルベルトの耳には届かなかった。



静かな街並みを、一人の男が落ち着きなく歩いていた。
その身から立ち上るオーラに、道行く人も係わり合いにならないよう、サッと道を開けて行く。
男は気にする風もなく、いやそんなことすらも見ていないのだろう。ただただ目的の場所に突き進んでいた。
街の一角にある、寂れたようなボロ酒場の扉を乱暴に開け、男は中へと入った。
この無礼な振る舞いにも、酒場の主の老人はチラリと一度視線を向けただけで、興味なしといった風にまたグラスを磨きだした。
「ジゴマッ!!!」
男の強烈な怒鳴り声が酒場内に響いた。
「どこだ!!ジゴマッ!!」
再び男が怒鳴る。
「そう大きな声を出さなくともここに居りますよ。ゼルガディス様。」
背後から声が聞こえてきた。
振り向くと、入り口近くの席に最初からそこにいたかのように、ジゴマが座っていた。
ゼルガディスはそれを認めるとツカツカと歩み寄っていった。
「ジゴマ――――」
「分かっておりますよ。アメリア様の居場所でございましょう。」
先手を制するように、ゼルガディスの言葉を遮った。
「まあ、ご心配なさるのも無理はありませんやね。ましてやアレに情けをかけちまっては、本物のほうもより気に掛かるもの――――」
瞬間、キラリと銀光が空を薙いだ。
「これは失言でございました。」
スタリと入り口の扉の前に着地したジゴマが、両手を挙げて謝罪した。
ゼルガディスは忌々しげにジゴマを睨むと、剣を納めた。
「アメリアはいまどこだ?」
「アメリア様なら、この街からもうちょい先のほうに行っておりますよ。」
言うが早いか、ゼルガディスは酒場を飛び出していった。
「やれやれ、せっかちな御仁だ。」
ジゴマはそう言うと、金貨を数枚老人に向かって放り投げ、酒場をあとにした。


*************************************

続きでした。
フー・マンチュー戦、筆が乗ります。おかげでまた話が長くなる・・・・・・・
もうそろそろ、本物のアメリアと再会です。
波乱必至ですね。
それではまた次回。

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29281何をしたんでしょう。ジゴマさん……(^_^;)エモーション E-mail 2004/2/5 23:04:22
記事番号29275へのコメント

棒太郎様、こんばんは。

フー・マンチューさん……強いです、さすがに(汗)
そしてカーライルさんは、かつて王室の陰の部分の仕事をしていた方だったのですね。
様々な因縁が絡んでいて、どうなるのか楽しみです。


>「お前さん、少々変わった体をしとるが―――」
>地面にうつ伏せに倒れたゼルガディスの右の肩甲骨辺りを踏みつけて押さえ、右腕を後ろに捻り上げた。
>「岩石の肌身を持っておっても、間接という奴は否応なく存在するのでな。」
>少し手を捻っただけなのに、凄まじい圧力が間接に掛かった。
>恐らくあと数ミリグラム力を入れるだけで、ゼルガディスの間接は砕かれるだろう。体の自由も完全に殺されていた。

さすがに……伝説になるだけあって、ゼルの身体がどうだろうと、確実に倒す術や、
どうすれば無力化できるかなどが分かるんですね……(汗)
さらに分かっても、それはゼルに反撃されずに実行出来るレベルの体術を、
持っていなくては不可能でしょうから……強すぎです、本当に……(汗)

>「ゼルガディスさんを殺らせはしません!」
>確固たる決意の色を見せながら、アメリアは疾風の如くフー・マンチューに襲い掛かった。
>「よせっ!!アメリアッ!!」
>ゼルガディスの必死の叫びが響いた。
>「ほっ。木偶人形といえども、無駄に命を散らすこともあるまいに。」
>嘆息気味にそう呟くと、フー・マンチューも真っ直ぐアメリアに向かっていった。

無茶といえば無茶ですが、アメリアと同じだけに、ゼルのためには必死になるのですね。
人形であったとしても、見ていると切ないものがあります。
そしてこのアメリアが人形だと気づいているフー・マンチューさん。
〃気〃のようなもので分かるのでしょうか。何にせよ、やはりさすがですね。

>「アメリアッ!!」
>ゼルガディスが駆け寄った。
>背中の骨が奇妙に曲がっていた。脊椎が凄まじい衝撃で捻り壊されていたのだった。
>「ゼ・・・・・ル・・・・・・・・・」
>アメリアが弱々しく手を伸ばした。
>「だ・・い・・・・じょ・う・・・・・・・か・・・・・・・?」
>自分の体を心配していると、ゼルガディスは分かった。
>「ああ・・・・・なんとか大丈夫だ。」
>そう言ってその手を取った。アメリアは安堵の色を浮かべ、小さく微笑んだ。
>その瞬間、急速にアメリアの暖かみが凍結した。そこにはただの人形が静かに横たわっていた。
>「―――――――」
>ゼルガディスは声ならぬうめきを上げた。

人形、と分かっていても、ゼルにとっては一番見たくない光景ですね。
ましてアメリアが取る可能性が高い行動の結果で、しかも自分を庇ってですから尚更に。
この時、ゼルにとってはこの〃アメリア〃が、人形だろうが本物だろうが関係なく、
護れなかった無力感と辛い気持ちしかないのですね。

>「どうやらお前さんはプレートを持ってはおらんようじゃな。ならば用はないので引き上げるわい。まあ、また会うかも知れんのぅ。」
>ひょ、ひょ、ひょ、と笑い声を残して、フー・マンチューは去っていった。
>「クソッ!!」
>下唇を噛み締めながら、ゼルガディスはやり場のない怒りを込めて、剣を地面に突き刺した。

目的のものを持っていない以上、別に倒す必要がないので立ち去る……。余裕ですね……。
目の前で〃アメリア〃を倒されたゼルとしては、それがさらに腹が立つ理由に
なっているのでしょうね。

>「ああ・・・・・先立って派遣した先遣隊が何者かにやられた。それにアメリア様も―――」
>言いかけて、アルベルトはハッと口を噤んだ。
>アルベルトの言葉に、ジゴマは微かに笑みを浮かべた。
>「しかし、気の早いといえば、気の早い。もうちょい待てませんかねぇ。」
>「バルトロメオ様のご命令だ。」
>「やつがれに依頼しておいてなんですねぇ。念入りな御方といいますか―――」

ジゴマさんはバルトロメオさんの依頼を受けたのですね。
確かに、得体は知れないし予想外な言動をするけれど、味方にすれば
まだ安心できますからね。

>「もう忘れてしまったか?まあ、無理もないか。私の顔も以前とは少し違うからな。」
>盲目の男はそう言って、笑った。
>「それともお前達にとっては駒のひとつに過ぎなかったかな?”黒のアサシン”は―――」
>その言葉に、アルベルトの身に動揺が走った。
>「ま、まさか・・・・カーライル・・・・?」
>カーライルはニヤリと笑った。
>「バカな・・・・・確かにあの時・・・・・君の死体は検分したはず・・・・・・」
>「フェイクだよ。あの直前、私はある人物に依頼していたのさ。そこのからくり師にな。」
>アルベルトは驚きの色を浮かべながら、ジゴマのほうを見た。ジゴマはいつものように愉快げな笑みを浮かべていた。

カーライルさん個人も、王家と因縁を持っていたわけですね。この口振りからですと、
どうやら王家の仕事から抜けるために、「カーライルは死んだ」と周囲に思わせる細工を
ジゴマさんに依頼したようですね。

>「アルベルト。いづれ近いうちに否応もなく会える。積もる話はその時にしようか。」
>そう声を残し、カーライルの姿は消えた。
>「ふむ、あと一人か。」
>大木の幹に垂直に――まるでそこが地面であるかのように立ちながらジゴマが謎の呟きを放った。
>「奴さん、俺の予想以上の魔人となりそうだ。こいつぁ、早めに始末しといたほうがよさそうだな。」
>ジゴマのその言葉は、驚愕のあまり、半ば呆然としたアルベルトの耳には届かなかった。

カーライルさんのこの行動は、王家側──アルベルトさんへの挨拶代わりと、
ジゴマさんの動きの確認、さらに前回の台詞にあったような、「力を目覚めさせるための
命(?)の補充」を行った、というところでしょうか。
それにしても……ジゴマさん……。カーライルさんに一体何を……(汗)
身体はジゴマさんの人形で、魂は本物なんて代物とか……(^_^;)

>街の一角にある、寂れたようなボロ酒場の扉を乱暴に開け、男は中へと入った。
>この無礼な振る舞いにも、酒場の主の老人はチラリと一度視線を向けただけで、興味なしといった風にまたグラスを磨きだした。

キレまくってますね、ゼル……。そして酒場の主……こういうのに慣れているのですね(笑)

>「まあ、ご心配なさるのも無理はありませんやね。ましてやアレに情けをかけちまっては、本物のほうもより気に掛かるもの――――」
>瞬間、キラリと銀光が空を薙いだ。
>「これは失言でございました。」
>スタリと入り口の扉の前に着地したジゴマが、両手を挙げて謝罪した。
>ゼルガディスは忌々しげにジゴマを睨むと、剣を納めた。
>「アメリアはいまどこだ?」
>「アメリア様なら、この街からもうちょい先のほうに行っておりますよ。」
>言うが早いか、ゼルガディスは酒場を飛び出していった。
>「やれやれ、せっかちな御仁だ。」
>ジゴマはそう言うと、金貨を数枚老人に向かって放り投げ、酒場をあとにした。

すべてお見通しなジゴマさん……(汗)普段以上に感情的になっているゼルは
もう手玉に取られるだけですね。
でも、おそらくフー・マンチューさんが、本物のアメリアに攻撃を仕掛けることを
危惧しているだろうゼルは、今はジゴマさんなんかどーでも良いようですね。
……あとで一発殴らせろとは思っているでしょうが。

>続きでした。
>フー・マンチュー戦、筆が乗ります。おかげでまた話が長くなる・・・・・・・
>もうそろそろ、本物のアメリアと再会です。
>波乱必至ですね。
>それではまた次回。

フー・マンチューさん……本当に強すぎです。そして筆が乗るのも分かります。
読んでいても楽しいですから。……ああ、ゼルってば受難(笑)
また、本物のアメリアとの再会が楽しみです。……やっぱり大噴火なのでしょうね。
それともラブラブモード?!……でもゼルでは、それはなりにくそう(笑)

それでは、続きを楽しみにしつつ、この辺で失礼します。

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29303いろいろやってます。奴は。棒太郎 2004/2/8 22:56:43
記事番号29281へのコメント


>棒太郎様、こんばんは。
>
>フー・マンチューさん……強いです、さすがに(汗)
>そしてカーライルさんは、かつて王室の陰の部分の仕事をしていた方だったのですね。
>様々な因縁が絡んでいて、どうなるのか楽しみです。

こんばんは、エモーションさん。
フー・マンチュー、ジゴマと同じくなんか自分勝手に動いてくれそうなキャラです。
そして前作以上にいろいろと因縁が絡んでくると思います。まとめが大変です。


>>少し手を捻っただけなのに、凄まじい圧力が間接に掛かった。
>>恐らくあと数ミリグラム力を入れるだけで、ゼルガディスの間接は砕かれるだろう。体の自由も完全に殺されていた。
>
>さすがに……伝説になるだけあって、ゼルの身体がどうだろうと、確実に倒す術や、
>どうすれば無力化できるかなどが分かるんですね……(汗)
>さらに分かっても、それはゼルに反撃されずに実行出来るレベルの体術を、
>持っていなくては不可能でしょうから……強すぎです、本当に……(汗)

様々に人体を壊す術を知っています。このじーさん。
圧倒的な力量を誇ってます。

>>「ほっ。木偶人形といえども、無駄に命を散らすこともあるまいに。」
>>嘆息気味にそう呟くと、フー・マンチューも真っ直ぐアメリアに向かっていった。
>
>無茶といえば無茶ですが、アメリアと同じだけに、ゼルのためには必死になるのですね。
>人形であったとしても、見ていると切ないものがあります。
>そしてこのアメリアが人形だと気づいているフー・マンチューさん。
>〃気〃のようなもので分かるのでしょうか。何にせよ、やはりさすがですね。

本物と変わりませんから。ゼルガディスのピンチには、我が身を省みず向かっていきます。
フー・マンチューも鋭い洞察力の持ち主ですので。

>>「ああ・・・・・なんとか大丈夫だ。」
>>そう言ってその手を取った。アメリアは安堵の色を浮かべ、小さく微笑んだ。
>>その瞬間、急速にアメリアの暖かみが凍結した。そこにはただの人形が静かに横たわっていた。
>>「―――――――」
>>ゼルガディスは声ならぬうめきを上げた。
>
>人形、と分かっていても、ゼルにとっては一番見たくない光景ですね。
>ましてアメリアが取る可能性が高い行動の結果で、しかも自分を庇ってですから尚更に。
>この時、ゼルにとってはこの〃アメリア〃が、人形だろうが本物だろうが関係なく、
>護れなかった無力感と辛い気持ちしかないのですね。

そうですね。ゼルにとっては、一番見たくない光景のひとつでしょうね。
更に、絶望と無力感が相乗効果で圧し掛かってきますし。

>>「どうやらお前さんはプレートを持ってはおらんようじゃな。ならば用はないので引き上げるわい。まあ、また会うかも知れんのぅ。」
>>ひょ、ひょ、ひょ、と笑い声を残して、フー・マンチューは去っていった。
>>「クソッ!!」
>>下唇を噛み締めながら、ゼルガディスはやり場のない怒りを込めて、剣を地面に突き刺した。
>
>目的のものを持っていない以上、別に倒す必要がないので立ち去る……。余裕ですね……。
>目の前で〃アメリア〃を倒されたゼルとしては、それがさらに腹が立つ理由に
>なっているのでしょうね。

まさにいいように遊ばれたようにしか思えませんからね。
屈辱と悔しさが渦巻いているでしょう。

>>「バルトロメオ様のご命令だ。」
>>「やつがれに依頼しておいてなんですねぇ。念入りな御方といいますか―――」
>
>ジゴマさんはバルトロメオさんの依頼を受けたのですね。
>確かに、得体は知れないし予想外な言動をするけれど、味方にすれば
>まだ安心できますからね。

得体は知れないけれど、その腕の確かさを見て、ジゴマに依頼をかけました。

>>「バカな・・・・・確かにあの時・・・・・君の死体は検分したはず・・・・・・」
>>「フェイクだよ。あの直前、私はある人物に依頼していたのさ。そこのからくり師にな。」
>>アルベルトは驚きの色を浮かべながら、ジゴマのほうを見た。ジゴマはいつものように愉快げな笑みを浮かべていた。
>
>カーライルさん個人も、王家と因縁を持っていたわけですね。この口振りからですと、
>どうやら王家の仕事から抜けるために、「カーライルは死んだ」と周囲に思わせる細工を
>ジゴマさんに依頼したようですね。

後ほど、カーライルの過去も書きますが、彼は王家の裏の仕事に携わっていました。

>>「奴さん、俺の予想以上の魔人となりそうだ。こいつぁ、早めに始末しといたほうがよさそうだな。」
>>ジゴマのその言葉は、驚愕のあまり、半ば呆然としたアルベルトの耳には届かなかった。
>
>カーライルさんのこの行動は、王家側──アルベルトさんへの挨拶代わりと、
>ジゴマさんの動きの確認、さらに前回の台詞にあったような、「力を目覚めさせるための
>命(?)の補充」を行った、というところでしょうか。
>それにしても……ジゴマさん……。カーライルさんに一体何を……(汗)
>身体はジゴマさんの人形で、魂は本物なんて代物とか……(^_^;)

鋭いですね(笑)カーライルはジゴマの施術を受けて、新たに生まれ変わったのですが、以前と同じというわけではなくなってしまった、というところです。

>>街の一角にある、寂れたようなボロ酒場の扉を乱暴に開け、男は中へと入った。
>>この無礼な振る舞いにも、酒場の主の老人はチラリと一度視線を向けただけで、興味なしといった風にまたグラスを磨きだした。
>
>キレまくってますね、ゼル……。そして酒場の主……こういうのに慣れているのですね(笑)

ジゴマのような人物が指定する酒場ですから(笑)

>>「アメリアはいまどこだ?」
>>「アメリア様なら、この街からもうちょい先のほうに行っておりますよ。」
>>言うが早いか、ゼルガディスは酒場を飛び出していった。
>>「やれやれ、せっかちな御仁だ。」
>>ジゴマはそう言うと、金貨を数枚老人に向かって放り投げ、酒場をあとにした。
>
>すべてお見通しなジゴマさん……(汗)普段以上に感情的になっているゼルは
>もう手玉に取られるだけですね。
>でも、おそらくフー・マンチューさんが、本物のアメリアに攻撃を仕掛けることを
>危惧しているだろうゼルは、今はジゴマさんなんかどーでも良いようですね。
>……あとで一発殴らせろとは思っているでしょうが。

あの光景を見せられてしまった以上、ゼルとしては気が気でない状態です。
もうジゴマのいいお手玉ですね。
ゼルにしてもとりあえず、アメリア優先というところで。

>>続きでした。
>>フー・マンチュー戦、筆が乗ります。おかげでまた話が長くなる・・・・・・・
>>もうそろそろ、本物のアメリアと再会です。
>>波乱必至ですね。
>>それではまた次回。
>
>フー・マンチューさん……本当に強すぎです。そして筆が乗るのも分かります。
>読んでいても楽しいですから。……ああ、ゼルってば受難(笑)
>また、本物のアメリアとの再会が楽しみです。……やっぱり大噴火なのでしょうね。
>それともラブラブモード?!……でもゼルでは、それはなりにくそう(笑)
>
>それでは、続きを楽しみにしつつ、この辺で失礼します。

やっぱり、どこか飄々としたキャラを書くのは楽しいみたいです。筆のノリが普通より軽いですから。
本物との再会は、ラブな展開にはなりにくいでしょうね。
お母さん、怒り大頂点ですから・・・・・(笑)
それでは、どうもありがとうございました。

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29306異邦の彼方より (14)棒太郎 2004/2/9 11:17:08
記事番号29200へのコメント

こんにちは、棒太郎です。
まだまだ道中篇が続きますが、よろしければお付き合いください。
それでは続きどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (14)


  ――ほとんど虫の息ながら、よくもここまで生命を保っていたもんでございますねぇ――


  ――貴方様のお望みどおり、もう一度生命を与えましょう――


  ――ただし、こいつぁ無理に与える生命だ。前とは少し違った人間に仕上がっちまうのはご勘弁くださいよ――


  ――なら結構。そうでなきゃ、やつがれも腕を揮う甲斐がありませんや――



シュオッと銀光が閃いた。
「ふむ・・・・・・あとひとつか。」
仕込みを納めたカーライルは、ポツリと呟き、道の向こうへと姿を消した。
それから少し遅れて、周囲の木々が見事な切り口を見せながら、ゆっくりと倒れていった。



街道の横の小路を二つの影が駆けて行った。
そのうちのひとつは、背に大きな櫃を背負いながら、平然とした顔つきで走っている。
「!ジゴマ―――」
ゼルガディスが思い出したように、ジゴマに問いかけた。
「お前があの時、渡したプレートも偽物だったのか?」
「おや、お気づきで?」
「何故、そんなことをする?事態をこれ以上ややこしくする気か?」
その言葉に、ジゴマはニヤリと笑いながらかぶりをふった。
「いえいえ。確かに最初は刺客をおびき寄せるという意味で、偽物をお渡ししましたが、今度のほうはあちら側からのご依頼でございますよ。」
「!王室からの依頼か!?」
「まぁ、そこらへんはご想像におまかせします。」
王室も思い切った賭けをしたものだ、とゼルは思った。得体は知れないが、腕は確かである。
「刺客の目を欺き、気付いてもこちらにおびき出せる、か。本物はずっとお前のところか?」
「いえ、今は持っておりませんよ。」
「なにっ!?」
そのとき、ゼルの頭にいやな結論が浮かんだ。
「まさか本物は―――!?」
「ええ、アメリア様にお持ち頂いてます。」
「キサマッ!!何故―――」
怒るゼルを静かに制する。
「まあまあ、落ち着いてくださいな。敵を欺くにはまず味方から、と申しますでしょう。向こうもまさかアメリア様が出張っているとは思っていないでしょうし、まずはやつがれたちのところへやって来ます。いい露払いにもなるでしょう。」
「ふざけるな!アメリアひとりに7そんなもの――」
「ご安心ください。きちんと案内をつけておりますよ。」



ゼルガディスとジゴマのいるところから、少し先に行ったところ。二つの影が、小路を歩いていた。
ひとりはアメリアであった。そしてアメリアの前を歩く影―――それはブスッとした表情の”トップブリーダー”エルマであった。
(なんでわたしがこんなことしなくちゃならないのよ・・・・・)
心の中で愚痴を呟いた。
あのとき、不可思議な技をかけられ、捕らえられたエルマは、ジゴマに首と腰にベルトのよなものを取り付けられた。

『さて、お前さんにはアメリア様の道案内役をしてもらおう』

ジゴマはエルマにそう言った。

『アメリア様をアーデンハイル卿の領地まで案内して差し上げるんだ。ただし、アメリア様を捨てていったり、危害を加えようとしたりするんじゃねぇぞ。でないと、その首と腰に付けた物が、お前さんを締め上げ、ふたつに千切っちまうぜ』

事実、アメリアを捨てていこうとしたら、凄まじい力で締め上げられた。
どうにもならないと堪忍して、不承不承案内役をすることとなったのだった。
「エルマさん。」
アメリアがエルマを呼んだ。
「どうして、あんな悪の道に走ったりしたのですか?今からでも遅くはありませんから改心して―――」
そのアメリアの言葉に、エルマは嘲笑めいた、また自虐めいたような笑いを浮かべた。
「わたしだって好きでこんな仕事してるわけじゃないわよ。ただ、職業選択の余地がなかっただけ。」
そう言い、アメリアを振り返った。
「貴女のような奇麗事を言う偽善者に何人も会ったわ。でもみんな、結局はわたしを異端者扱いして追い払った・・・・・・・わたしを受け入れてくれたのは、一切の経歴を問わない、その能力・腕前のみを問う裏の世界だけだったわ。」
エルマはシニカルな笑みを浮かべた。
「・・・・・・・・・」
「わかった?お姫様?」
しかし、アメリアは確固とした瞳をエルマに向けた。
「じゃあ、今からは更生して表の世界に生きましょう!」
「はっ?」
「大丈夫です!わたしはどんなときでもエルマさんの味方です!だから、今回のことが終わったらセイルーン・シティへ来てください!」
「ちょ、ちょっと―――」
半ば呆気に取られた顔で、エルマはアメリアを見た。
(あちゃ〜〜〜・・・・・・マジだわ、この子・・・・・・・)
だが、エルマはそんなアメリアを見て、小さく困ったような、嬉しいような笑みを浮かべた。
(真っ直ぐねぇ・・・・・この子。わたしはこの輝きをいつ失くしてしまったんだろう・・・・・・・・)



「あの女に道案内を?」
「ええ、やつがれたちはいわば陽動――囮でございますよ。」
ゼルガディスの脳裏に”アメリア”が浮かんだ。
「ちっ。すべてお前の策通りに踊らされたわけか。」
「そうお気を悪くしないで下さい。アメリア様の思いはアレが口にしたのと同じでございますよ。」
「何故お前はそうアメリアの肩を持つんだ?」
ジロリとジゴマを睨みつけた。
「へへ、どうにもあの真ぁっ直ぐな瞳――多少、偏っておりますが――を見ますとね、なんだか手を貸したくなっちまうんですよ。世の中の清濁を知りながらも、絶望することなく、真っ直ぐ行こうとしなさる。ゼルガディス様がお気に掛けるのも分かりますな。」
最後の言葉に、ゼルガディスは一瞬言葉を詰まらせてしまった。
そのとき――

「なんじゃい、またハズレか。」

聞こえてきた声に振り返ると、そこにあの小柄な老人が立っていた。
「わしも耄碌したかのぅ。歳は取りたくないもんじゃて。」
「フー・マンチュー!」
ゼルガディスは叫び、剣を抜いた。
「へえ、あのご老人が。」
ジゴマが感嘆の声を上げた。
「本物にお目にかかれるとは僥倖でございますよ。”怪人”フー・マンチュー様。」
「ひょ、ひょ、ひょ。年寄りをおだてるでないわ。で、お前さんは?」
「やつがれはからくり師のジゴマと申します。」
「ほほう、お前さんが。名は聞いとるよ。」
どうやらこの二人も、お互いに初対面らしい。それはそれで驚きのような気がする。
「まさか、貴方様のような御人まで刺客に呼ばれてますとはねぇ。」
「左様、わしも7人の刺客の一人じゃ。」
ジゴマはひぃ、ふぅ、みぃと指折り数え始めた。
「すると、貴方様とプレートを奪った者とでちょうど7人でございますね。」
「そうじゃな。既に半数は倒されとるがの。しかし、プレートがここにないとすると、あのお嬢ちゃんがアタリじゃったか。」
フー・マンチューのその言葉に、ゼルガディスがピクリと反応した。
「直接は関係ないと思って放っておいたが。やれやれ、とんだ回り道じゃて。」
フー・マンチューがくるりと背を向けた瞬間、ゼルガディスは大上段に斬りかかった。
その刃が、フー・マンチューの体を切り裂いた――――思ったが、その姿が消えていた。
「なっ!?」
そのとき、後ろから「あ〜」と声がした。
振り向いた瞬間、目の前に掌があった。思わずその手首を掴んだ。
「あ〜〜、こりゃいけねぇ。」
ジゴマの呟きがした瞬間、フー・マンチューが手首を返し、ゼルガディスの体は大きく投げ落とされた。
「くっ!」
立ち上がったときには、フー・マンチューの姿はどこにも見えなくなっていた。
「くそっ!」
ゼルガディスは急いで走り出した。



「くっ!」
エルマが顔をしかめた。
その体には、いくつもの切り傷が刻まれていた。
「エルマさん!!」
「お姫様!早く逃げなさい!こいつはヤバイわ!」
「でも、エルマさんがっ!」
「わたしはコイツがあるから貴女を放って逃げられないの!早く行きなさい!!」
エルマが叫んだ。
その目の前には、血のりをつけた鉄の爪を鳴らすスケアクロウの姿があった。
「ふ・・ふふ・・・・・・裏切り者・・・始末する・・・・・・・」


*************************************

続きでした。
今回あんまり進んでませんが・・・・・・・
フー・マンチューに続いて、久々にスケアクロウの登場です。
フー・マンチューもやって来るだろうから、激戦必死です。
それではまた次回。

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29309Re:異邦の彼方より (14)オロシ・ハイドラント 2004/2/9 21:48:46
記事番号29306へのコメント

こんばんは、お久しぶりのハイドラントです。


次々と色んなことが起こってますね。
最後の刺客は登場したし、ジゴマ氏がカーライルさんに謎の「からくり」発言。魔人という言葉も気になりますし。
>「そうじゃな。既に半数は倒されとるがの。しかし、プレートがここにないとすると、あのお嬢ちゃんがアタリじゃったか。」
囮作戦失敗のようですね。
本当に手強い相手のようですね。
前回でも途轍もない強さを見せましたし。
>「わたしはコイツがあるから貴女を放って逃げられないの!早く行きなさい!!」
>エルマが叫んだ。
>その目の前には、血のりをつけた鉄の爪を鳴らすスケアクロウの姿があった。
>「ふ・・ふふ・・・・・・裏切り者・・・始末する・・・・・・・」
……悲劇のエルマ。
捕えられ無理矢理案内役にさせられた上、元の味方側に裏切り者とされ、命を狙われる。
彼女は今、どんな心境なのでしょう。

それにアメリアもピンチ。
さて次回にはゼルの活躍はあるのでしょうか。


それでは、かなり短いですが、今日はこの辺りで失礼致します。

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29311まだ波乱は続きます棒太郎 2004/2/10 09:45:51
記事番号29309へのコメント


>こんばんは、お久しぶりのハイドラントです。

こんにちは、ハイドラントさん。
感想どうもありがとうございます。


>次々と色んなことが起こってますね。
>最後の刺客は登場したし、ジゴマ氏がカーライルさんに謎の「からくり」発言。魔人という言葉も気になりますし。

まだしばらくは、波乱が続くと思います。
ジゴマもなんか前回以上に出張ってきているし。

>>「そうじゃな。既に半数は倒されとるがの。しかし、プレートがここにないとすると、あのお嬢ちゃんがアタリじゃったか。」
>囮作戦失敗のようですね。
>本当に手強い相手のようですね。
>前回でも途轍もない強さを見せましたし。

カシミールやエルマは、かかってくれましたが、このじーさんの場合は一筋縄ではいきません。

>>「わたしはコイツがあるから貴女を放って逃げられないの!早く行きなさい!!」
>>エルマが叫んだ。
>>その目の前には、血のりをつけた鉄の爪を鳴らすスケアクロウの姿があった。
>>「ふ・・ふふ・・・・・・裏切り者・・・始末する・・・・・・・」
>……悲劇のエルマ。
>捕えられ無理矢理案内役にさせられた上、元の味方側に裏切り者とされ、命を狙われる。
>彼女は今、どんな心境なのでしょう。

よくよく考えると酷い話ですね。捕虜の扱いの国際条約に違反してそうです。
ただスケアクロウも正常な人とはいえないので・・・・・

>それにアメリアもピンチ。
>さて次回にはゼルの活躍はあるのでしょうか。
>
>
>それでは、かなり短いですが、今日はこの辺りで失礼致します。

フー・マンチューもやってくるでしょうから、雪崩式にピンチが続きます。
主役なので、ゼルの活躍はあると思いますが、ジゴマやフーじいさんがいろいろと出張っちゃうかもしれません。
それでは、どうもありがとうございました。

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29310Go West!(要日本語訳)……(笑)エモーション E-mail 2004/2/9 22:12:26
記事番号29306へのコメント

棒太郎様、こんばんは。

何故かアメリアとエルマさんの会話を読んで、頭に浮かんだのはタイトルの作品でした(笑)
でも金髪タレ目の鬼畜生臭坊主の方じゃないです(笑)
本物を持っていたのがアメリア……。ああ、ゼルの心配度数UPですね。
今のゼルはゼロス辺りが大喜びしそうな、負の感情を撒き散らしているかもしれないです。
それにしてもジゴマさんってば……(^_^;)


>「いえいえ。確かに最初は刺客をおびき寄せるという意味で、偽物をお渡ししましたが、今度のほうはあちら側からのご依頼でございますよ。」
>「!王室からの依頼か!?」
>「まぁ、そこらへんはご想像におまかせします。」
>王室も思い切った賭けをしたものだ、とゼルは思った。得体は知れないが、腕は確かである。

二度目のプレートすり替えは、王家の依頼だったのですね。
それではゼルも文句言えない……と思いきや(汗)
ジゴマさんってば、本当に……理にかなってるけど腑に落ちない事を(苦笑)
そして何故でしょう……?(^_^;)
ゼルの反応をひたすら楽しむために行ったように見えるのは……(滝汗)

>『アメリア様をアーデンハイル卿の領地まで案内して差し上げるんだ。ただし、アメリア様を捨てていったり、危害を加えようとしたりするんじゃねぇぞ。でないと、その首と腰に付けた物が、お前さんを締め上げ、ふたつに千切っちまうぜ』
>
>事実、アメリアを捨てていこうとしたら、凄まじい力で締め上げられた。
>どうにもならないと堪忍して、不承不承案内役をすることとなったのだった。

懲らしめに頭を締め付けるか、確実に殺すかの差はあれど……孫悟空状態なエルマさん……。
ってことは、ジゴマさんがお釈迦様……?(爆)
……嫌なお釈迦様だなあ(^_^;)

>「貴女のような奇麗事を言う偽善者に何人も会ったわ。でもみんな、結局はわたしを異端者扱いして追い払った・・・・・・・わたしを受け入れてくれたのは、一切の経歴を問わない、その能力・腕前のみを問う裏の世界だけだったわ。」
>エルマはシニカルな笑みを浮かべた。
>「・・・・・・・・・」
>「わかった?お姫様?」
>しかし、アメリアは確固とした瞳をエルマに向けた。
>「じゃあ、今からは更生して表の世界に生きましょう!」
>「はっ?」
>「大丈夫です!わたしはどんなときでもエルマさんの味方です!だから、今回のことが終わったらセイルーン・シティへ来てください!」
>「ちょ、ちょっと―――」
>半ば呆気に取られた顔で、エルマはアメリアを見た。
>(あちゃ〜〜〜・・・・・・マジだわ、この子・・・・・・・)
>だが、エルマはそんなアメリアを見て、小さく困ったような、嬉しいような笑みを浮かべた。
>(真っ直ぐねぇ・・・・・この子。わたしはこの輝きをいつ失くしてしまったんだろう・・・・・・・・)

こういう言動を素でやるのがアメリアなんですよねぇ……。
本当に真っ直ぐで、眩しいくらいに強い。
だから徹底的にそういうものを受け付けなくなってしまった人は、嫌がるでしょうけれど、
そこまでいってなくて、でも本物の眩しさに慣れてないだけの人は、今までと違うと
本能的に分かって戸惑いながら、本当に自分がそちらへ伸ばした手を握ってくれるの? 
と思うのでしょう。エルマさんは後者の人なのでしょうね。さすがにまだ様子見でしょうけれど。
それにしても……この辺り、三蔵様に反発しつつ惹かれている悟空を、
どーしても連想してしまいました。すみません。

>「へへ、どうにもあの真ぁっ直ぐな瞳――多少、偏っておりますが――を見ますとね、なんだか手を貸したくなっちまうんですよ。世の中の清濁を知りながらも、絶望することなく、真っ直ぐ行こうとしなさる。ゼルガディス様がお気に掛けるのも分かりますな。」
>最後の言葉に、ゼルガディスは一瞬言葉を詰まらせてしまった。

ジゴマさんにとっても、アメリアはとても興味深いのでしょうね。
そしてゼルの図星をきっちりついていますね。

>「そうじゃな。既に半数は倒されとるがの。しかし、プレートがここにないとすると、あのお嬢ちゃんがアタリじゃったか。」
>フー・マンチューのその言葉に、ゼルガディスがピクリと反応した。
>「直接は関係ないと思って放っておいたが。やれやれ、とんだ回り道じゃて。」
>フー・マンチューがくるりと背を向けた瞬間、ゼルガディスは大上段に斬りかかった。
>その刃が、フー・マンチューの体を切り裂いた――――思ったが、その姿が消えていた。
>「なっ!?」
>そのとき、後ろから「あ〜」と声がした。
>振り向いた瞬間、目の前に掌があった。思わずその手首を掴んだ。
>「あ〜〜、こりゃいけねぇ。」
>ジゴマの呟きがした瞬間、フー・マンチューが手首を返し、ゼルガディスの体は大きく投げ落とされた。
>「くっ!」
>立ち上がったときには、フー・マンチューの姿はどこにも見えなくなっていた。
>「くそっ!」
>ゼルガディスは急いで走り出した。

きっちり陰で会話を聞きながら、確認を取っていたのですね、フー・マンチューさん……。
確かに、ジゴマさんとフー・マンチューさんが初対面というのは、不思議な感じがしますね。
たまたま、なのでしょうけれど。
フー・マンチューさんの言葉を聞いた途端に、速攻で仕掛けるゼル。
〃アメリア〃のことが頭に浮かんで、アメリアがこれから危なくなると思うと、
もう冷静ではいられなかったのですね。

>「お姫様!早く逃げなさい!こいつはヤバイわ!」
>「でも、エルマさんがっ!」
>「わたしはコイツがあるから貴女を放って逃げられないの!早く行きなさい!!」
>エルマが叫んだ。
>その目の前には、血のりをつけた鉄の爪を鳴らすスケアクロウの姿があった。
>「ふ・・ふふ・・・・・・裏切り者・・・始末する・・・・・・・」

あああ、そしてこちらはこちらで、フー・マンチューさんとは激しく違う意味で
アブナイ人が(汗)
そしてあのように言っていても、エルマさんはアメリアが気に入りつつあるのですね。
どうでもいいなら「逃げろ」とは言わないでしょうから。
でも……放っていく、見捨てていくはずがないのが、アメリアなんですよね……。
大ピンチです(汗)ゼルは間に合うのでしょうか。
そしてこの状況を見た場合、フー・マンチューさんがどう行動するのかも、
気になります。

>続きでした。
>今回あんまり進んでませんが・・・・・・・
>フー・マンチューに続いて、久々にスケアクロウの登場です。
>フー・マンチューもやって来るだろうから、激戦必死です。
>それではまた次回。

今回はエルマさんが受難の道を歩んでいるのかも、と思いました。
またある意味、ゼルと同じ穴の狢になりつつあるような気がしました。
何にせよ、アメリアもエルマさんも、無事にゼル達と合流出来ると良いのですが……。

とても大ピンチな場面で、次回への引きですね。続きが気になります〜!!
気にしつつ、今日はこの辺で失礼します。
続きを楽しみにお待ちしています。

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29312ありがたくもないお釈迦様ですね、彼(笑)棒太郎 2004/2/10 10:04:39
記事番号29310へのコメント


>棒太郎様、こんばんは。
>
>何故かアメリアとエルマさんの会話を読んで、頭に浮かんだのはタイトルの作品でした(笑)
>でも金髪タレ目の鬼畜生臭坊主の方じゃないです(笑)
>本物を持っていたのがアメリア……。ああ、ゼルの心配度数UPですね。
>今のゼルはゼロス辺りが大喜びしそうな、負の感情を撒き散らしているかもしれないです。
>それにしてもジゴマさんってば……(^_^;)

こんにちは、エモーションさん。
確かにエルマのアレ、西遊記っぽいですね。言われて初めて、気が付きました(笑)
ゼルはここ最近、ジゴマに振り回されっぱなしですね。
心労が絶えません。まだまだ続きますが(笑)


>>王室も思い切った賭けをしたものだ、とゼルは思った。得体は知れないが、腕は確かである。
>
>二度目のプレートすり替えは、王家の依頼だったのですね。
>それではゼルも文句言えない……と思いきや(汗)
>ジゴマさんってば、本当に……理にかなってるけど腑に落ちない事を(苦笑)
>そして何故でしょう……?(^_^;)
>ゼルの反応をひたすら楽しむために行ったように見えるのは……(滝汗)

まあ、この人は愉快犯・確信犯ですからねぇ。
周りに知らせず、舞台の演出を行うので、付き合わされるほうはたまったもんじゃないでしょう。

>>『アメリア様をアーデンハイル卿の領地まで案内して差し上げるんだ。ただし、アメリア様を捨てていったり、危害を加えようとしたりするんじゃねぇぞ。でないと、その首と腰に付けた物が、お前さんを締め上げ、ふたつに千切っちまうぜ』
>>
>>事実、アメリアを捨てていこうとしたら、凄まじい力で締め上げられた。
>>どうにもならないと堪忍して、不承不承案内役をすることとなったのだった。
>
>懲らしめに頭を締め付けるか、確実に殺すかの差はあれど……孫悟空状態なエルマさん……。
>ってことは、ジゴマさんがお釈迦様……?(爆)
>……嫌なお釈迦様だなあ(^_^;)

こんな怪しげな、胡散臭いお釈迦様は、確かにイヤですね。

>>半ば呆気に取られた顔で、エルマはアメリアを見た。
>>(あちゃ〜〜〜・・・・・・マジだわ、この子・・・・・・・)
>>だが、エルマはそんなアメリアを見て、小さく困ったような、嬉しいような笑みを浮かべた。
>>(真っ直ぐねぇ・・・・・この子。わたしはこの輝きをいつ失くしてしまったんだろう・・・・・・・・)
>
>こういう言動を素でやるのがアメリアなんですよねぇ……。
>本当に真っ直ぐで、眩しいくらいに強い。
>だから徹底的にそういうものを受け付けなくなってしまった人は、嫌がるでしょうけれど、
>そこまでいってなくて、でも本物の眩しさに慣れてないだけの人は、今までと違うと
>本能的に分かって戸惑いながら、本当に自分がそちらへ伸ばした手を握ってくれるの? 
>と思うのでしょう。エルマさんは後者の人なのでしょうね。さすがにまだ様子見でしょうけれど。
>それにしても……この辺り、三蔵様に反発しつつ惹かれている悟空を、
>どーしても連想してしまいました。すみません。

エルマとしても、仕方なく裏世界に身を置いてるだけなので、表の世界に帰れることを心の奥では思ってます。
エルマもさっくり倒されるはずのキャラだったんですが・・・・・・少しでも感情移入すると、非情になれませんね。

>>「へへ、どうにもあの真ぁっ直ぐな瞳――多少、偏っておりますが――を見ますとね、なんだか手を貸したくなっちまうんですよ。世の中の清濁を知りながらも、絶望することなく、真っ直ぐ行こうとしなさる。ゼルガディス様がお気に掛けるのも分かりますな。」
>>最後の言葉に、ゼルガディスは一瞬言葉を詰まらせてしまった。
>
>ジゴマさんにとっても、アメリアはとても興味深いのでしょうね。
>そしてゼルの図星をきっちりついていますね。

彼にしても滅多に見ないタイプの人間なので、興味を持っています。

>>その刃が、フー・マンチューの体を切り裂いた――――思ったが、その姿が消えていた。
>>「なっ!?」
>>そのとき、後ろから「あ〜」と声がした。
>>振り向いた瞬間、目の前に掌があった。思わずその手首を掴んだ。
>>「あ〜〜、こりゃいけねぇ。」
>>ジゴマの呟きがした瞬間、フー・マンチューが手首を返し、ゼルガディスの体は大きく投げ落とされた。
>>「くっ!」
>>立ち上がったときには、フー・マンチューの姿はどこにも見えなくなっていた。
>>「くそっ!」
>>ゼルガディスは急いで走り出した。
>
>きっちり陰で会話を聞きながら、確認を取っていたのですね、フー・マンチューさん……。
>確かに、ジゴマさんとフー・マンチューさんが初対面というのは、不思議な感じがしますね。
>たまたま、なのでしょうけれど。
>フー・マンチューさんの言葉を聞いた途端に、速攻で仕掛けるゼル。
>〃アメリア〃のことが頭に浮かんで、アメリアがこれから危なくなると思うと、
>もう冷静ではいられなかったのですね。

このじーさんは油断なりませんからね。アメリアもきっちり見つけてますし。
ゼルにしても、あの光景が本物のアメリアに降りかかる危険性が物凄く大ですから、突っかかっていきます。

>>「お姫様!早く逃げなさい!こいつはヤバイわ!」
>>「でも、エルマさんがっ!」
>>「わたしはコイツがあるから貴女を放って逃げられないの!早く行きなさい!!」
>>エルマが叫んだ。
>>その目の前には、血のりをつけた鉄の爪を鳴らすスケアクロウの姿があった。
>>「ふ・・ふふ・・・・・・裏切り者・・・始末する・・・・・・・」
>
>あああ、そしてこちらはこちらで、フー・マンチューさんとは激しく違う意味で
>アブナイ人が(汗)
>そしてあのように言っていても、エルマさんはアメリアが気に入りつつあるのですね。
>どうでもいいなら「逃げろ」とは言わないでしょうから。
>でも……放っていく、見捨てていくはずがないのが、アメリアなんですよね……。
>大ピンチです(汗)ゼルは間に合うのでしょうか。
>そしてこの状況を見た場合、フー・マンチューさんがどう行動するのかも、
>気になります。

完全に裏世界に漬かったわけじゃないですからね。アメリアを信じてみようという心が芽生えてます。
ここに更にフー・マンチューが来るわけですから、大波乱です。


>今回はエルマさんが受難の道を歩んでいるのかも、と思いました。
>またある意味、ゼルと同じ穴の狢になりつつあるような気がしました。
>何にせよ、アメリアもエルマさんも、無事にゼル達と合流出来ると良いのですが……。

確かにエルマ、受難です。強制的に案内役させられるわ、襲われるわで。

>とても大ピンチな場面で、次回への引きですね。続きが気になります〜!!
>気にしつつ、今日はこの辺で失礼します。
>続きを楽しみにお待ちしています。

刺客編(←勝手に命名)もそろそろクライマックスです。残りは、エルマにスケアクロウ、フー・マンチューですので。
次回は大激戦になるやも・・・・・・
それでは、どうもありがとうございました。

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29320異邦の彼方より (15)棒太郎 2004/2/12 10:38:00
記事番号29200へのコメント

こんにちは、棒太郎です。
道中刺客編もクライマックスとなります。
長かったなぁ・・・・・・・
それでは続きをどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (15)


「そもそもさぁ―――」
前を行くエルマが、後ろのアメリアに問いかけた。
「なんでお姫様が出てきてるの?自分が言うのもなんだけど、裏世界でも名の知れた奴らが出てきてるのよ。そこらのお使いとはワケが違うのよ?」
エルマの問いにアメリアは少し辛そうな表情を見せた。
「自分の目で・・・・・今回のことを確かめたいんです。ゴットフリードさんが謀反を企むような人じゃありません・・・・・・だから、それを確かめたいんです・・・・・」
「何だ・・・・・依頼主の正体は、もう分かってるんだ。私は直接会ったわけじゃないからなんともいえないわね――――――っ!?」
突如、エルマはアメリアを庇うように後ろに跳んだ。
「くっ!」
エルマの右腕に数本の切り傷が走った。
「エルマさん!」
「!?あ、貴女は――――」
エルマが驚きの声を上げ、前方を睨みつけた。
そこには、右手に手甲のような鉄の爪をつけた一人の女性が立っていた。
「スケアクロウ・・・・・・・・」
エルマが声を絞り出すように呟いた。
アメリアも、禍々しい空気を発するこの女性に思わず身構えた。
「お姫様!逃げなさい!こいつはヤバイわ!!」
そう叫んだ瞬間、エルマの胸から鮮血が飛んだ。
「エルマさん!!」
「ふ・・ふふ・・・・・・邪魔者は・・・・・殺す・・・・」
瞳を狂気に光らせて、スケアクロウは笑った。
「エルマさん!今、傷を―――」
アメリアが治癒の呪文を唱えようとすると、その手をエルマが掴んだ。
「お姫様。私のことはいいから逃げなさい。あいつは”虐殺者”の異名を持つヤバイやつよ。」
エルマは立ち上がり、指を唇に押し当てた。
だが、指笛を吹こうとした瞬間、また血が飛び散った。
「きゃあっ!!」
「ふふ・・ふふふふふ・・・・・・」
不気味に笑うスケアクロウに、アメリアが呪文を放った。
「ファイヤーボール!」
だが、その火球はスケアクロウに届く寸前、グニャリと軌道を曲げ、スケアクロウを避けるように後ろの樹にぶつかった。
「なっ!?」
二人は驚いた。
スッとスケアクロウが手をかざし、ギッと眼光が疾ったと思うと、アメリアの体は何かにぶつかったかのように吹き飛ばされた。
「お姫様!!」
エルマが駆け寄る。幸い、大事には至っていなかった。
「依頼とは関係ないでしょ!!なんで襲ってくるのよ!!」
「ふ・・ふふ・・・・・邪魔者は・・・殺しても・・構わないと・・・ある・・・・・・・それに・・何故・・敵を・・・・案内している・・・・?」
「敵じゃないわよ!あなたは依頼に託けて、血を見たいだけなんでしょ!」
その瞬間、エルマの体が後ろに吹き飛んだ。
樹に叩きつけられ、思わず息が詰まった。
「エルマさん!――――あなたはどうしてこんなことをするんですか!?」
アメリアの言葉に、スケアクロウは唇の端を吊り上げた。
「私は・・・・・悪魔・・だからだ・・・・・・」
「えっ?」
「私は・・・悪魔だ・・・・悪魔だと・・・・・言われた・・・・・だからだ・・・・・」
「そんな・・・・!?貴女は悪魔なんかじゃありません!人間です!」
アメリアがそう言った瞬間、スケアクロウは凄まじい憎悪の視線を向けた。
「私が・・・人間・・・・?なら何故、人は私を忌み、獣のように追い払った!何故、弓もて殺そうとした!」
スケアクロウが叫んだ。
「何故・・・・・アルは・・・・死んだ・・・・・・・」
その瞳から一筋の涙が零れた。
「お前のような奇麗事を言う奴が・・・・真っ先に私の力を忌み、悪魔と呼んで追い払った・・・・・・小さい頃から・・・・・何処へ流れても同じだった・・・・・・・皆・・・私を悪魔と呼んだ・・・・・・・」
「スケアクロウさん・・・・・・・」
「けど、アルは違った・・・・・・私の力を知っても・・・・・・構わないと・・言ってくれた・・・・・・・嬉しかった・・・・・・・」
スケアクロウの瞳から、狂気が消えていた。
「数ヶ月ほどだったけど・・・・・幸せだった・・・・・・・けど―――!」
再び、憎悪と狂気が宿った。
「また、私の力を知った人々は、私を悪魔として忌み、恐れ、そして殺そうとした!アルは・・・・・アルは・・・・・・私を逃がして・・・・・・そして異端審問の惨い拷問の末・・・・・殺された。そう・・・・私が殺したようなものよ・・・・・」
狂気の笑みを浮かべ、笑った。
「だから私は悪魔となった・・・・・そして連中を皆殺しにしたわ・・・・・・・だって私は悪魔なんだから・・・・・・・」
呆然と、しかし悲しみの色を浮かべてスケアクロウを見ていたアメリアの肩に、エルマが手を置いた。
「お姫様・・・・・・あいつは私と同じよ・・・・・けど、もうどうしようもないわ。闇にどっぷりと浸ってしまった。お姫様の声も・・・・もううざったいものとしか聞こえないわ・・・・・・もう、あいつの目には血の色しか見えてないわ。」
エルマがアメリアの前に立った。
「お姫様、行って。私はコレがあるからあなたを置いては逃げられない。」
「わたしもエルマさんを置いてはいけません!」
「お姫様――――!?」
そのとき、エルマの体がまた吹き飛んだ。何か見えない怪物に捕まれたように、宙に浮いた体が、そこかしこの樹にぶつけられ、そして遠くに投げ飛ばされた。
「エルマさん!!」
アメリアが駆け出そうとしたとき、
「ふ・・ふふ・・・・・・さあ、死ね・・・・・・」
スケアクロウの鉄の爪が迫った。
だがそれは、アメリアの届く前に弾き飛ばされた。
「やれやれ、”虐殺者”スケアクロウも刺客の一人とはねぇ。」
緊張感の無い声を上げて、奥から一人の男が現れた。
「ジゴマさん!!」
「どうやら間に合ったようですな、アメリア様。」
現れたジゴマに、スケアクロウは凄まじい視線を投げかけた。
「お前・・も・・・・・殺す・・・・・・・」
「さて・・・・できますか?」
ゆっくりと櫃の蓋が開こうとした。
「待って下さい!ジゴマさん!」
アメリアが割って入った。
「アメリア様・・・・・・こんなイカレた奴まで情けをお掛けになりますか?」
ジッとアメリアはジゴマを見つめていた。
「・・・・・・・やれやれ。わかりました。命まではとりはしませんよ。さ、早いとこ、エルマをお探しに行きなさいな。」
トンとアメリアの背を押して、ジゴマは送り出した。
アメリアの背中を見送っていたジゴマに、スケアクロウの爪が襲い掛かった。
大きく飛んで、それを避けるが、間髪いれず凄まじい圧力の衝撃がジゴマの体を襲った。
「へぇ、”サイコキネシス”を使うのかい。ここまで強烈なのは、そうはいねぇなぁ。」
そう言い、平然と立ち上がったジゴマの姿に、さすがのスケアクロウも驚いた。
「馬鹿な・・・・・なんの加減もしなかったのに・・・・・・・そんな・・・・・」
「それじゃ、次はこちらの幕さね。」
キリリと繰り糸が、手に握られていた。

「からくりショー”ノスタルジア”、とく御覧あれ。」

カッと閃光が走ったかと思うと、辺りを薄ぼんやりとした靄が包んでいた。
「くっ!」
消えたジゴマの姿を求め、スケアクロウは身構えた。
その彼女の前に、ひとつの影が現れた。
爪を振りかざそうとしたが、その姿を見て驚愕した。
「ミ・・・ア・・・・・・」
血にまみれた男が名を呼んだ。
「ア、アル―――!?」
スケアクロウに驚きと動揺が走った。
「な・・ぜ・・・・・おれは・・・・死んだ・・・・・・な・・ぜ・・・・」
「い・・・・いや・・・・・・・・」
救いを求めるように手を伸ばす男に、スケアクロウの体は震えていた。
「どう・・・し・・・て・・・・・・殺・・さ・・・・れた・・・・・」
「・・・・や・・やめて・・・・・・・」
「お前が・・・・・・・悪魔・・・・だ・・・か・・・・らか・・・・・」
「やめて・・・・・・・」

『そうだ!悪魔め!』

周りの木々の間に、いつの間にか無数の人が立っていた。
「悪魔だ」
「悪魔だ」
「悪魔だ」
口々にそう言った。
「いや、いや!やめてっ!」
『悪魔め!!』
「いやぁぁぁぁぁっ!!」
スケアクロウは両耳を塞ぎ、赤ん坊のように丸まって地面に臥した。
「ちがう・・・・・・・私は悪魔じゃない・・・・・・悪魔なんかじゃない・・・・・・・」
怯えた呟き声が響く。
「悪魔じゃない・・・・・・・・悪魔じゃない・・・・・・・」
そのとき、前方に光が差し込んだ。
その光に顔を上げると、木々の向こう――確かに森が続いていたはずだが、それがなく開かれた台地になっていた。
小さな畑が幾つかあり、その向こうにぽつんと小さな家が立っていた。
見覚えのある家だった。
「あ・・・・あ・・・・・・・・」
失われた想い出が心をよぎり、彼女の瞳から涙が溢れる。
「ミア!」
その向こうにいる男が、声を掛けた。
「アル・・・・・・・・」
「何してるんだよ、早く来てくれよ。大収穫なんだからな。」
農具を手に、笑いながらそう言った。
「うん・・・・・・・」
その言葉につられるように、スケアクロウは静かに歩き出した。
やがてスケアクロウは男に抱きつき、その胸に顔を埋めた。男も静かに、スケアクロウを抱きしめた。
そして二人はその景色の向こうへと、ともに歩き出した。

  キィィィィ  パタン

櫃の蓋が閉まる音がし、すべての景色が消えた。
「やれやれ、俺も甘いねぇ。」
櫃の蓋をコンコンと叩きながら、ジゴマが笑った。
「ま、いい夢をみな。」
櫃の向こうへ消えていったスケアクロウにそう声をかけ、ジゴマは櫃を背負い上げた。

 からくり からくり 浮世の糸は

 天下を舞わして 人舞わす

ジゴマの歌声が静かに響いた。


*************************************

続きでした。
スケアクロウの過去、重かったですね。
とりあえず、彼女は強力なサイコキネシスが使えて、それゆえに迫害されました。
この”ノスタルジア”のシーンも最初から考えていましたが、ここまで持ってくるのが大変でした。
刺客編は次でラストになると思います。
それではまた次回。

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29321異邦の彼方より (16)棒太郎 2004/2/12 18:35:20
記事番号29200へのコメント

こんばんは。棒太郎です。
朝にも1話投稿しといて、もう1話投稿です。
なんつーヒマ人なんでしょ。
昼はギリギリながら『ラストサムライ』観てきました。
わたしも彼らのような生き様を見せたい、と思いました。
それでは、続きをどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (16)


森の小路をアメリアはひた走っていた。
スケアクロウのサイコキネシスによって、エルマはこの方角に投げ飛ばされたはずだった。
周りをきょろきょろと見回し、その姿を探す。
そのとき、がさりと奥から何かが現れた。
「ほい、こんにちは。お嬢ちゃん。」
小柄な猿のような老人だった。
「こ、こんにちは・・・・・」
老人の好々爺然とした姿に、思わず挨拶を返した。
「ひょ、ひょ。礼儀を弁えたお嬢ちゃんじゃのぅ。で――早速ですまんがの―――」
スッと老人が指を差した。
「お嬢ちゃんの持っとるプレート、渡してくれんかの?」
アメリアの顔に緊張が走った。
別れる前、ジゴマから何があっても出してはいけないと言われた。
でないと、王室に対してゴットフリードが不利になると言われたのだった。
「あ、貴方も刺客なんですか?」
「そうじゃよ。わしゃ、フー・マンチューというモンじゃ。」
フー・マンチューが愉快そうに笑った。
「こ、これは渡せないんです。」
「じゃ、仕方ないのぅ。ちょいと手荒になるが勘弁しとくれよ。」
フー・マンチューが無造作ともいえる足取りで前に出た。
「ライトニング!!」
カァッと閃光が閃いた。
「おっ?」
「ごめんなさい!お爺さん!」
瞬間、動きを止めたフー・マンチューにアメリアが「スリーピング」をかけようとした。だが―――
「っ!?」
突如、グイッと何かが首を締め上げた。
「ひょ、ひょ、ひょ。なかなか優しいお嬢ちゃんじゃのぅ。しかし―――」
フー・マンチューがいつの間にかアメリアの後ろに立ち、アメリアのマントを捻り上げ、首に巻きつけていた。
「このわしに、敬老精神はいらんお世話というもんじゃよ。」
手をクイッと捻ると、マントは一層アメリアの首に喰いこんだ。



「う・・・・・・・」
小さく呻き声を上げて、エルマは倒れた体を起こし上げた。
ズキンと脇腹に鈍い痛みが走った。
(肋骨が・・・・何本かやられちゃったみたいね・・・・・・・)
立っているだけでも痛みが響いていくる。
「早くお姫様のところへ・・・・・・・・・・」
バスケットケースを拾い上げてそう言うと、フフッと笑みを浮かべた。
「なんだってあの子のこと、こう心配してるのかしらね?」
何となく分かっている。
あのお姫様は、裏表無く、純真で、真っ直ぐな人間である。しかし、世の中の清濁を知りながらも、それを曇らせることなく在り続けている。
あの子なら、もう一度光の下に立たせてくれるのではないか――――そんな想いがごくごく短い間ながらも、エルマの心の中に芽生えていた。
例え、それが夢物語になったとしても、恨む気など無い。あの子は精一杯やってくれる―――そんな気がしている。
「ほんと、おかしなお姫様よね―――――」
そう呟いた時、ザッと地面を踏む靴音が聞こえた。
スケアクロウか?――――そう思い、エルマは身構えた。
だが、そこにいたのは、あのときセイルーンシティでエルマを助けた盲目の男だった。
確か、カーライル―――と言ったか・・・・・・・エルマはとりあえず構えを解いた。
「どうした?傷を負ったか?」
カーライルが尋ねた。
「ええ、まぁね。ご同業に襲われたのよ。」
「ほう・・・・・それは災難だったな。それになにやら厄介なものを着けられているな。」
首と腰のもののことを言っているのだとわかった。
「見えるの?」
エルマの問いかけに答えず、カーライルは正面に来ると仕込み杖に手を掛けた。
「動くな。」
そう言うと、ヒュッと空を切る音がした。
トサッと首と腰に着けられたものが地面に落ちた。
「あ、ありがと・・・・・・」
あまりの技に驚きで呆然としながらも礼を述べた。
「・・・・ところで、恩着せがましいようですまないが、ひとつ礼を貰いたいのだが・・・・・」
カーライルの言葉になにそれ?とエルマはしかめっ面をした。
「まあいいわ。借りを作りっ放しっていうのも、私のプライドに関わるし。」
フゥッとひとつ息をついた。
「あ、でも体で払うってのはいやよ―――――っ!?」
言いかけたとき、鈍い衝撃が胸に走った。

「君の命を貰いたい。」

エルマの胸に、カーライルの仕込が深々と突き刺さっていた。
何が起こったか理解できないように、呆然と見下ろすエルマに、カーライルは刃を捻りそして引き抜いた。
そのまま力無く後ろの樹に背中を預けると、ずるずると崩れ落ちていった。
ペタンと地面に腰掛けるような形になっエルマは、目線をわずかに見上げた。
「お・・ひ・・・・・め・・・・さ・・・・・・」
ぼんやりとしていく風景の向こうで、アメリアの顔と、そしてアメリアがもたらしてくれるであろう光景が見えたような気がした。
やがてエルマの意識は白い闇の中に沈んでいった。
「すまんな。」
ポツリと一言呟くと、カーライルは仕込みを納めた。
「力を目覚めさせるには・・・・・常人以上の力を持った者の命がいるのでな・・・・・・」
そう言うと、カーライルはエルマの瞳を閉じさせ、その場をあとにした。




「う・・あ・・・・・・・」
ままならぬ呼吸にアメリアは呻き声を上げた。
「ちょいと辛抱しとくれよ。お嬢ちゃん。」
そう言い、フー・マンチューは懐を探る。
「ほっ、これかい。」
布に包まれた小さな包みが掴れていた。
器用に片手でその包みを取り外した。
「ほう!こいつは―――」
フー・マンチューが意外そうな声を上げた。
「まさかこいつじゃったとはのぅ。こりゃ、面白い因縁じゃ。」
カラカラと笑い、懐にしまったとき、
「アメリアッ!!」
剣を振りかざし、ゼルガディスが襲い掛かってきた。
「ほっ。」
するりとアメリアから離れ、大きく後方に跳躍した。
「フー・マンチュー!貴様っ!!」
「そう熱くなるな、若いの。」
怒りを漲らせるゼルガディスに、フー・マンチューは愉しげに笑った。
「確かに怒りは普段以上の力を与えてくれるが、その分眼も曇りやすくなる。ま、相手してやってもよいが、そこのお嬢ちゃんは連れを探しとる最中じゃろ?」
苦しげに息をしながらアメリアはハッと我に返った。
「そうだ!エルマさん!」
「早いとこ、行ってやったほうがいいかもしれんのぅ。」
そう言いつつ、フーー・マンチューの姿は木々の向こうに消えていこうとした。
「待てっ!!」
ゼルガディスが叫んだ時、何かが凄まじい勢いでゼルガディスの体に当たった。
それは小さな石礫だった。
まるで弾丸のように飛んできたそれは、普通の体であったなら、間違いなく肉の奥深くにめり込んでいただろう。石礫は正確に額・胸に命中していた。
またゼルガディスの体にイヤな汗が流れた。
目を戻すと、フー・マンチューの姿はもう消えていた。

そして少し後、森の中をアメリアの悲痛な叫びが木霊した。













月の光が、静かに夜の森に降り注いでいた。
闇の静寂に包まれた森の一画。そこに立てられた塚の前に、闇と同じ黒々とした影が膝をついていた。
ザッザッと土を掘り起こす音が、小さく響いていた。
やがて影は体を起こした。
その下の地面からは、エルマの青白い顔が、月明かりに照らし出されていた。
「しかしまあ、あのお姫様のことになるとどうしてこうも甘くなっちまうんだか。」
影――ジゴマが苦笑を浮かべた。
「このまま放って置いてもいいんだが、どうにも寝覚めが悪いやな。ま、俺にも責任がないこともないしな。」
櫃の中からいろいろと包みを取り出した。
「さて。後はどうなるかはお前さん次第だぜ。」
ニヤッと笑みを浮かべながら、再びジゴマは膝をつき、屈みこんだ。


*************************************

続きでした。
今回で、道中刺客編は終了です。
舞台はゴットフリードの領地へと移ります。
かなり長く予感が、確信に変わっております。
よろしければ、お付き合いください。
それではまた次回。

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29324エルマさんが……(滂沱)エモーション E-mail 2004/2/12 23:41:09
記事番号29321へのコメント

棒太郎様、こんばんは。

今日は2話なのですね♪
刺客の皆さん……さすがに厄介なのばかりが残りましたね。
スケアクロウさんはかなり不幸な過去でしたが……とりあえず幸せな状態に
いるのでしょうから、まだ良かったのかな……。
ああエルマさんが……(TT)
再会したゼルとアメリア。でもあの状況での再会で、悲しんでいるアメリアを
見ていたら……怒れませんね、ゼル。
さて、甲斐性なし返上できるような行動を取れたのかな(笑)←野次馬


>前を行くエルマが、後ろのアメリアに問いかけた。
>「なんでお姫様が出てきてるの?自分が言うのもなんだけど、裏世界でも名の知れた奴らが出てきてるのよ。そこらのお使いとはワケが違うのよ?」

エルマさんじゃなくても、確かに疑問に思いますよね。まず通常お姫さまが
ほいほい出てくるわけないですし。……アメリアやエヴァは例外中の例外でしょうからね(^_^;)

>「ファイヤーボール!」
>だが、その火球はスケアクロウに届く寸前、グニャリと軌道を曲げ、スケアクロウを避けるように後ろの樹にぶつかった。
>「なっ!?」
>二人は驚いた。
>スッとスケアクロウが手をかざし、ギッと眼光が疾ったと思うと、アメリアの体は何かにぶつかったかのように吹き飛ばされた。

どう軽く見積もっても、40Kgは絶対ある人間をあっさりと吹き飛ばす……。
この手の〃力〃としても、充分すぎるくらい、かなり桁外れな〃力〃ですね。
〃力〃を使ったスケアクロウさん自体には、反動や負担はこないのでしょうか。

>「敵じゃないわよ!あなたは依頼に託けて、血を見たいだけなんでしょ!」
>その瞬間、エルマの体が後ろに吹き飛んだ。

「敵じゃない」が自分にかかっているのか、アメリアにかかっているのか、
なんとなく、エルマさんヴィジョンでアメリアにかかっていると解釈しましたが、
後半はスケアクロウさんにとっても図星なのでしょうね。もうどっぷりと
落ちるとこまで落ちていても、指摘されるのは嫌なんだなと思いました。

>「お前のような奇麗事を言う奴が・・・・真っ先に私の力を忌み、悪魔と呼んで追い払った・・・・・・小さい頃から・・・・・何処へ流れても同じだった・・・・・・・皆・・・私を悪魔と呼んだ・・・・・・・」

スケアクロウさんは、力のコントロールがあまり上手く出来なかったようですね。
周囲にすぐにばれてしまうくらい、ちょっとした感情の波で、簡単に力を
発揮していたのかなと予想しました。
そうでなければ、相当念入りに力をコントロールして、ばれないようにするはずですから。

>「また、私の力を知った人々は、私を悪魔として忌み、恐れ、そして殺そうとした!アルは・・・・・アルは・・・・・・私を逃がして・・・・・・そして異端審問の惨い拷問の末・・・・・殺された。そう・・・・私が殺したようなものよ・・・・・」
>狂気の笑みを浮かべ、笑った。
>「だから私は悪魔となった・・・・・そして連中を皆殺しにしたわ・・・・・・・だって私は悪魔なんだから・・・・・・・」

スケアクロウさんにとっては、「アル」以外はすべて敵でしかなくなってしまったのですね。
自分を悪魔だと自分に言い聞かせ、必要以上に残酷な殺し方をすることで、
「悪魔」としての自分を作った……。
同じような状況にいても、彼女とは違う道を辿る者もいる。けれど、彼女のように
なってしまう者がいるのも事実で、そしてそちらの方が多いのでしょう。
過去はどうあれ、行っていることは肯定も養護もできないですが、やりきれないですね。

>「やれやれ、”虐殺者”スケアクロウも刺客の一人とはねぇ。」
>緊張感の無い声を上げて、奥から一人の男が現れた。
>「ジゴマさん!!」
>「どうやら間に合ったようですな、アメリア様。」

危機一髪。美味しいところで登場のジゴマさん。
ゼルより早くアメリアを見つけましたか。
……また出し抜かれたのかな、ゼル……(^_^;)

>「待って下さい!ジゴマさん!」
>アメリアが割って入った。
>「アメリア様・・・・・・こんなイカレた奴まで情けをお掛けになりますか?」
>ジッとアメリアはジゴマを見つめていた。

過去を聞いてしまったら、アメリアは絶対死なせたくはないでしょうね。
野放しにはできないけれど、少なくともわざと自分を「悪魔」にするために人を殺す、
ひたすら自分を傷つけるだけの悪循環は、止めさせたいと思うのでしょうから。

>大きく飛んで、それを避けるが、間髪いれず凄まじい圧力の衝撃がジゴマの体を襲った。
>「へぇ、”サイコキネシス”を使うのかい。ここまで強烈なのは、そうはいねぇなぁ。」
>そう言い、平然と立ち上がったジゴマの姿に、さすがのスケアクロウも驚いた。

さすがジゴマさん……。この程度で何とかなるような人ではないですが、
ほとんど最強ですね(^_^;)

>スケアクロウは両耳を塞ぎ、赤ん坊のように丸まって地面に臥した。
>「ちがう・・・・・・・私は悪魔じゃない・・・・・・悪魔なんかじゃない・・・・・・・」
>怯えた呟き声が響く。
>「悪魔じゃない・・・・・・・・悪魔じゃない・・・・・・・」
>そのとき、前方に光が差し込んだ。
>その光に顔を上げると、木々の向こう――確かに森が続いていたはずだが、それがなく開かれた台地になっていた。
>小さな畑が幾つかあり、その向こうにぽつんと小さな家が立っていた。
>見覚えのある家だった。
>「あ・・・・あ・・・・・・・・」
>失われた想い出が心をよぎり、彼女の瞳から涙が溢れる。
>「ミア!」
>その向こうにいる男が、声を掛けた。
>「アル・・・・・・・・」
>「何してるんだよ、早く来てくれよ。大収穫なんだからな。」
>農具を手に、笑いながらそう言った。
>「うん・・・・・・・」
>その言葉につられるように、スケアクロウは静かに歩き出した。
>やがてスケアクロウは男に抱きつき、その胸に顔を埋めた。男も静かに、スケアクロウを抱きしめた。
>そして二人はその景色の向こうへと、ともに歩き出した。
>
>  キィィィィ  パタン
>
>櫃の蓋が閉まる音がし、すべての景色が消えた。
>「やれやれ、俺も甘いねぇ。」
>櫃の蓋をコンコンと叩きながら、ジゴマが笑った。
>「ま、いい夢をみな。」

最初にスケアクロウさんにとって一番大切な「アル」の無惨な姿と問いかけを見せて追いつめ、
彼女自身が必死で言い聞かせ、作ってきた「悪魔」の自分を否定させる。
そうして最後は幸せだった「アル」との暮らしが永遠に続く……。
リナやダルフィン様をめちゃくちゃ追いつめた厄介な“ノスタルジア”も、
唯一、スケアクロウさんを心底「救う」手段になったのですね。
ジゴマさんは本当に……怖いくらい残酷な真似もすると思えば、泣きたくなるくらい
優しいこともする、相手と関わり方次第で、だいぶん印象が違ってしまう、
本当に謎な方ですね。……とりあえずアメリアには「いい人」認定されそうですが。

>「ほい、こんにちは。お嬢ちゃん。」
>小柄な猿のような老人だった。
>「こ、こんにちは・・・・・」
>老人の好々爺然とした姿に、思わず挨拶を返した。

出た……フー・マンチューさん。
まあ、アメリアは……こう反応しますよね、この場合……。

>「お嬢ちゃんの持っとるプレート、渡してくれんかの?」
>アメリアの顔に緊張が走った。
>別れる前、ジゴマから何があっても出してはいけないと言われた。
>でないと、王室に対してゴットフリードが不利になると言われたのだった。

ジゴマさん……。上手い言い方しますね。下手に「ゴットフリードさんの謀反の証拠」
というよりは、こう言った方がアメリアは他人に見せたり、渡したりしようとは
思わないでしょう。

>「ひょ、ひょ、ひょ。なかなか優しいお嬢ちゃんじゃのぅ。しかし―――」
>フー・マンチューがいつの間にかアメリアの後ろに立ち、アメリアのマントを捻り上げ、首に巻きつけていた。
>「このわしに、敬老精神はいらんお世話というもんじゃよ。」
>手をクイッと捻ると、マントは一層アメリアの首に喰いこんだ。

一筋縄じゃいかないですね〜(^_^;)
そしてやはり手加減なし。依頼の遂行のために取るべき行動は取るのですね。

>あのお姫様は、裏表無く、純真で、真っ直ぐな人間である。しかし、世の中の清濁を知りながらも、それを曇らせることなく在り続けている。
>あの子なら、もう一度光の下に立たせてくれるのではないか――――そんな想いがごくごく短い間ながらも、エルマの心の中に芽生えていた。
>例え、それが夢物語になったとしても、恨む気など無い。あの子は精一杯やってくれる―――そんな気がしている。

アメリアの人徳ですよね、本当に。少なくとも何の見返りがなくても、必死で
出来る限りのことを行ってくれるだろうと、分かりやすいくらい分かる。
そしてそこまでする人はそそういないから、見ている方も手を貸したくなるんですから。
また実際のところ、「きちんと見てくれる人がいる。本気で心配して気に
かけてくれる人がいる」それだけのことが一番重要なのかもしれないです。
それが分かっていたら、とても悪いことはできませんから。
そうしてくれる人をやっと見つけたら、なくしたくはないと思います。

>エルマの胸に、カーライルの仕込が深々と突き刺さっていた。
>何が起こったか理解できないように、呆然と見下ろすエルマに、カーライルは刃を捻りそして引き抜いた。

カーライルさん……(滝汗)
突然現れて何が起きるのかと思ったら……。エルマさんにとっても、本当に唐突で、
何が起きたのかとしか思えませんね。

>そのまま力無く後ろの樹に背中を預けると、ずるずると崩れ落ちていった。
>ペタンと地面に腰掛けるような形になっエルマは、目線をわずかに見上げた。
>「お・・ひ・・・・・め・・・・さ・・・・・・」
>ぼんやりとしていく風景の向こうで、アメリアの顔と、そしてアメリアがもたらしてくれるであろう光景が見えたような気がした。

エルマさん……(TT)
エルマさんにとって、アメリアは「光」の象徴なのですね。

>「すまんな。」
>ポツリと一言呟くと、カーライルは仕込みを納めた。
>「力を目覚めさせるには・・・・・常人以上の力を持った者の命がいるのでな・・・・・・」
>そう言うと、カーライルはエルマの瞳を閉じさせ、その場をあとにした。

カーライルさん……(滝汗)
前々回辺りで「あと一人」等と言っていたので、これでチャ−ジ完了、なのでしょうか。
何にせよ、下手をすれば刺客の皆様は、カーライルさんに殺されてた可能性も
あったのかなと思いました。

>「ほう!こいつは―――」
>フー・マンチューが意外そうな声を上げた。
>「まさかこいつじゃったとはのぅ。こりゃ、面白い因縁じゃ。」

フー・マンチューさんはプレートの意味が分かっているのですね。
因縁、と言っているところをみますと、前にも関わったことがあるのでしょうか。
それにしても……一体、何歳なのでしょう……?(^_^;)

>「アメリアッ!!」
>剣を振りかざし、ゼルガディスが襲い掛かってきた。
>「ほっ。」
>するりとアメリアから離れ、大きく後方に跳躍した。
>「フー・マンチュー!貴様っ!!」
>「そう熱くなるな、若いの。」
>怒りを漲らせるゼルガディスに、フー・マンチューは愉しげに笑った。

フー・マンチューさんからすれば、特にアメリアを殺す気はなかったのでしょうから、
怒りで突進してくるゼルが「若いのお。ほっほっほ」という気分なのかもしれないですね。
ゼルとしては、あれでも十分攻撃の理由になりますが。

>ゼルガディスが叫んだ時、何かが凄まじい勢いでゼルガディスの体に当たった。
>それは小さな石礫だった。
>まるで弾丸のように飛んできたそれは、普通の体であったなら、間違いなく肉の奥深くにめり込んでいただろう。石礫は正確に額・胸に命中していた。
>またゼルガディスの体にイヤな汗が流れた。
>目を戻すと、フー・マンチューの姿はもう消えていた。

何やら……フー・マンチューさんはゼルが気に入っているんじゃないかという
気がしてきました。何か、すっかり遊ばれていると言いますか、からかわれているような。
ゼルはゼルで、伝説になるほどの暗殺者の実力を見せつけられて、悔しい反面、
どうしても感嘆してしまう部分があるのかもしれないですね。
でも現在は敵である以上、対抗策を必死で考えるしかない、と。

>そして少し後、森の中をアメリアの悲痛な叫びが木霊した。

エルマさんの遺体をみつけたのですね……(TT)
アメリア、号泣していますね。ゼルも何も言えないでしょう。

>「しかしまあ、あのお姫様のことになるとどうしてこうも甘くなっちまうんだか。」
>影――ジゴマが苦笑を浮かべた。
>「このまま放って置いてもいいんだが、どうにも寝覚めが悪いやな。ま、俺にも責任がないこともないしな。」
>櫃の中からいろいろと包みを取り出した。
>「さて。後はどうなるかはお前さん次第だぜ。」
>ニヤッと笑みを浮かべながら、再びジゴマは膝をつき、屈みこんだ。

アメリアとゼルが埋葬したエルマさんの遺体を掘り返すジゴマさん。
「お前さん次第」……これはやはりエルマさん次第、ということなのでしょう……ね……。
一体、何をする気なのでしょう……。

>続きでした。
>今回で、道中刺客編は終了です。
>舞台はゴットフリードの領地へと移ります。
>かなり長く予感が、確信に変わっております。
>よろしければ、お付き合いください。
>それではまた次回。

怒濤の展開とエルマさんの不運な死(としか言い様がない)に、ひたすら
驚きました。そしてラストでのジゴマさんの行動も、どんな展開をもたらすのか
とても気になります。
次回からゴットフリードさんの領地。
奪われたプレートは、一体どんなものなのか。そしてどんな事実が判明するのでしょうか。
そして……やはりゼルは苦労するのでしょうねぇ……(苦笑)
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。
続きを楽しみにしていますー!

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29329ここまでドラマするとは思ってませんでした。(当初の予定では)棒太郎 2004/2/13 21:55:18
記事番号29324へのコメント


>棒太郎様、こんばんは。
>
>今日は2話なのですね♪
>刺客の皆さん……さすがに厄介なのばかりが残りましたね。
>スケアクロウさんはかなり不幸な過去でしたが……とりあえず幸せな状態に
>いるのでしょうから、まだ良かったのかな……。
>ああエルマさんが……(TT)
>再会したゼルとアメリア。でもあの状況での再会で、悲しんでいるアメリアを
>見ていたら……怒れませんね、ゼル。
>さて、甲斐性なし返上できるような行動を取れたのかな(笑)←野次馬

こんばんは、エモーションさん。
時間を空けて2話投稿しました暇人です。
今回でフー・マンチューを除いて、刺客は全員倒れました。
ただ予想外は、エルマがここまで引っ張るとは思わなかったです。


>>「なんでお姫様が出てきてるの?自分が言うのもなんだけど、裏世界でも名の知れた奴らが出てきてるのよ。そこらのお使いとはワケが違うのよ?」
>
>エルマさんじゃなくても、確かに疑問に思いますよね。まず通常お姫さまが
>ほいほい出てくるわけないですし。……アメリアやエヴァは例外中の例外でしょうからね(^_^;)

こんな超行動派なお姫様はいませんよね(笑)

>>二人は驚いた。
>>スッとスケアクロウが手をかざし、ギッと眼光が疾ったと思うと、アメリアの体は何かにぶつかったかのように吹き飛ばされた。
>
>どう軽く見積もっても、40Kgは絶対ある人間をあっさりと吹き飛ばす……。
>この手の〃力〃としても、充分すぎるくらい、かなり桁外れな〃力〃ですね。
>〃力〃を使ったスケアクロウさん自体には、反動や負担はこないのでしょうか。

かなりの高レベルのサイコキネシスの使い手です。
反動はないですが、その分制御がなかなか難しいと思います。

>>「敵じゃないわよ!あなたは依頼に託けて、血を見たいだけなんでしょ!」
>>その瞬間、エルマの体が後ろに吹き飛んだ。
>
>「敵じゃない」が自分にかかっているのか、アメリアにかかっているのか、
>なんとなく、エルマさんヴィジョンでアメリアにかかっていると解釈しましたが、
>後半はスケアクロウさんにとっても図星なのでしょうね。もうどっぷりと
>落ちるとこまで落ちていても、指摘されるのは嫌なんだなと思いました。

仰るとおり、アメリアにかかってます。
この短い間で、かなり感化されたみたいです。

>>「お前のような奇麗事を言う奴が・・・・真っ先に私の力を忌み、悪魔と呼んで追い払った・・・・・・小さい頃から・・・・・何処へ流れても同じだった・・・・・・・皆・・・私を悪魔と呼んだ・・・・・・・」
>
>スケアクロウさんは、力のコントロールがあまり上手く出来なかったようですね。
>周囲にすぐにばれてしまうくらい、ちょっとした感情の波で、簡単に力を
>発揮していたのかなと予想しました。
>そうでなければ、相当念入りに力をコントロールして、ばれないようにするはずですから。

抑えようとしても、何らかの弾みでちょっと出てしまいます。
ここまで強力だと、完全なコントロールはなかなか難しいですので。

>>「また、私の力を知った人々は、私を悪魔として忌み、恐れ、そして殺そうとした!アルは・・・・・アルは・・・・・・私を逃がして・・・・・・そして異端審問の惨い拷問の末・・・・・殺された。そう・・・・私が殺したようなものよ・・・・・」
>>狂気の笑みを浮かべ、笑った。
>>「だから私は悪魔となった・・・・・そして連中を皆殺しにしたわ・・・・・・・だって私は悪魔なんだから・・・・・・・」
>
>スケアクロウさんにとっては、「アル」以外はすべて敵でしかなくなってしまったのですね。
>自分を悪魔だと自分に言い聞かせ、必要以上に残酷な殺し方をすることで、
>「悪魔」としての自分を作った……。
>同じような状況にいても、彼女とは違う道を辿る者もいる。けれど、彼女のように
>なってしまう者がいるのも事実で、そしてそちらの方が多いのでしょう。
>過去はどうあれ、行っていることは肯定も養護もできないですが、やりきれないですね。

アルが死んだ時に、絶望と共に、狂気が宿ってしまいました。
そして人々がそう言うならば「悪魔」になろう、となり、”虐殺者”スケアクロウとなりました。

>>「ジゴマさん!!」
>>「どうやら間に合ったようですな、アメリア様。」
>
>危機一髪。美味しいところで登場のジゴマさん。
>ゼルより早くアメリアを見つけましたか。
>……また出し抜かれたのかな、ゼル……(^_^;)

彼ならば、アメリアの正確な場所もわかるでしょう。
ただ、ゼルにはキチンと教えないだけで(笑)

>>「アメリア様・・・・・・こんなイカレた奴まで情けをお掛けになりますか?」
>>ジッとアメリアはジゴマを見つめていた。
>
>過去を聞いてしまったら、アメリアは絶対死なせたくはないでしょうね。
>野放しにはできないけれど、少なくともわざと自分を「悪魔」にするために人を殺す、
>ひたすら自分を傷つけるだけの悪循環は、止めさせたいと思うのでしょうから。

もはやどっぷりと闇に浸かってますが、それでも彼女の辛い過去に感じ、どうにかしたいと思うでしょう。

>>「へぇ、”サイコキネシス”を使うのかい。ここまで強烈なのは、そうはいねぇなぁ。」
>>そう言い、平然と立ち上がったジゴマの姿に、さすがのスケアクロウも驚いた。
>
>さすがジゴマさん……。この程度で何とかなるような人ではないですが、
>ほとんど最強ですね(^_^;)

まあ、からくり師ですからね。
それになんだかんだと煙に巻くのは十八番ですし。

>>やがてスケアクロウは男に抱きつき、その胸に顔を埋めた。男も静かに、スケアクロウを抱きしめた。
>>そして二人はその景色の向こうへと、ともに歩き出した。
>>
>>  キィィィィ  パタン
>>
>>櫃の蓋が閉まる音がし、すべての景色が消えた。
>>「やれやれ、俺も甘いねぇ。」
>>櫃の蓋をコンコンと叩きながら、ジゴマが笑った。
>>「ま、いい夢をみな。」
>
>最初にスケアクロウさんにとって一番大切な「アル」の無惨な姿と問いかけを見せて追いつめ、
>彼女自身が必死で言い聞かせ、作ってきた「悪魔」の自分を否定させる。
>そうして最後は幸せだった「アル」との暮らしが永遠に続く……。
>リナやダルフィン様をめちゃくちゃ追いつめた厄介な“ノスタルジア”も、
>唯一、スケアクロウさんを心底「救う」手段になったのですね。
>ジゴマさんは本当に……怖いくらい残酷な真似もすると思えば、泣きたくなるくらい
>優しいこともする、相手と関わり方次第で、だいぶん印象が違ってしまう、
>本当に謎な方ですね。……とりあえずアメリアには「いい人」認定されそうですが。

彼の場合、善悪という物差しはないです。ただただ、己の興味と愉しみで動いてるような人物ですから。
行った結果が善に見えたり、悪に見えたり、主観によって変わってきます。
この場合、アメリアの頼みがあるから、こういう結果になりました。

>>「ほい、こんにちは。お嬢ちゃん。」
>>小柄な猿のような老人だった。
>>「こ、こんにちは・・・・・」
>>老人の好々爺然とした姿に、思わず挨拶を返した。
>
>出た……フー・マンチューさん。
>まあ、アメリアは……こう反応しますよね、この場合……。

出ました、ご老人。
この人も何も構えていないようで、その実スキのない人ですから。

>>別れる前、ジゴマから何があっても出してはいけないと言われた。
>>でないと、王室に対してゴットフリードが不利になると言われたのだった。
>
>ジゴマさん……。上手い言い方しますね。下手に「ゴットフリードさんの謀反の証拠」
>というよりは、こう言った方がアメリアは他人に見せたり、渡したりしようとは
>思わないでしょう。

ちゃっかりとアメリアの手綱も握ってます。ジゴマ。

>>フー・マンチューがいつの間にかアメリアの後ろに立ち、アメリアのマントを捻り上げ、首に巻きつけていた。
>>「このわしに、敬老精神はいらんお世話というもんじゃよ。」
>>手をクイッと捻ると、マントは一層アメリアの首に喰いこんだ。
>
>一筋縄じゃいかないですね〜(^_^;)
>そしてやはり手加減なし。依頼の遂行のために取るべき行動は取るのですね。

一筋どころか、百筋もいきません。
相手が相手でも、それなりの行動は取ります。

>>あのお姫様は、裏表無く、純真で、真っ直ぐな人間である。しかし、世の中の清濁を知りながらも、それを曇らせることなく在り続けている。
>>あの子なら、もう一度光の下に立たせてくれるのではないか――――そんな想いがごくごく短い間ながらも、エルマの心の中に芽生えていた。
>>例え、それが夢物語になったとしても、恨む気など無い。あの子は精一杯やってくれる―――そんな気がしている。
>
>アメリアの人徳ですよね、本当に。少なくとも何の見返りがなくても、必死で
>出来る限りのことを行ってくれるだろうと、分かりやすいくらい分かる。
>そしてそこまでする人はそそういないから、見ている方も手を貸したくなるんですから。
>また実際のところ、「きちんと見てくれる人がいる。本気で心配して気に
>かけてくれる人がいる」それだけのことが一番重要なのかもしれないです。
>それが分かっていたら、とても悪いことはできませんから。
>そうしてくれる人をやっと見つけたら、なくしたくはないと思います。

こういう人徳を持った人ってなかなかいませんよね。
器用な生き方ではありませんが、多くの人の心を惹きつけるものだと思います。

>>何が起こったか理解できないように、呆然と見下ろすエルマに、カーライルは刃を捻りそして引き抜いた。
>
>カーライルさん……(滝汗)
>突然現れて何が起きるのかと思ったら……。エルマさんにとっても、本当に唐突で、
>何が起きたのかとしか思えませんね。

そうと意識させないほどの、早業です。

>>「お・・ひ・・・・・め・・・・さ・・・・・・」
>>ぼんやりとしていく風景の向こうで、アメリアの顔と、そしてアメリアがもたらしてくれるであろう光景が見えたような気がした。
>
>エルマさん……(TT)
>エルマさんにとって、アメリアは「光」の象徴なのですね。

そうですね。アメリアを通して、「光」を見たのでしょうね。

>>「すまんな。」
>>ポツリと一言呟くと、カーライルは仕込みを納めた。
>>「力を目覚めさせるには・・・・・常人以上の力を持った者の命がいるのでな・・・・・・」
>>そう言うと、カーライルはエルマの瞳を閉じさせ、その場をあとにした。
>
>カーライルさん……(滝汗)
>前々回辺りで「あと一人」等と言っていたので、これでチャ−ジ完了、なのでしょうか。
>何にせよ、下手をすれば刺客の皆様は、カーライルさんに殺されてた可能性も
>あったのかなと思いました。

はい、これで完了です。
ジゴマが出張らなければ彼もこんなことはしませんでしたが、ジゴマが出てくるというので、非常手段を取りました。
「常人以上の力の持ち主」とあるので、刺客の何人かも可能性はあったと思います(ただしフー・マンチューは別)

>>「まさかこいつじゃったとはのぅ。こりゃ、面白い因縁じゃ。」
>
>フー・マンチューさんはプレートの意味が分かっているのですね。
>因縁、と言っているところをみますと、前にも関わったことがあるのでしょうか。
>それにしても……一体、何歳なのでしょう……?(^_^;)

フーじいさんはプレートのことを知ってます。
これは後々判明します。

>>「フー・マンチュー!貴様っ!!」
>>「そう熱くなるな、若いの。」
>>怒りを漲らせるゼルガディスに、フー・マンチューは愉しげに笑った。
>
>フー・マンチューさんからすれば、特にアメリアを殺す気はなかったのでしょうから、
>怒りで突進してくるゼルが「若いのお。ほっほっほ」という気分なのかもしれないですね。
>ゼルとしては、あれでも十分攻撃の理由になりますが。

そんな感じです。
ゼルの「若さゆえ」の行動を、愉しく見ています。

>>まるで弾丸のように飛んできたそれは、普通の体であったなら、間違いなく肉の奥深くにめり込んでいただろう。石礫は正確に額・胸に命中していた。
>>またゼルガディスの体にイヤな汗が流れた。
>>目を戻すと、フー・マンチューの姿はもう消えていた。
>
>何やら……フー・マンチューさんはゼルが気に入っているんじゃないかという
>気がしてきました。何か、すっかり遊ばれていると言いますか、からかわれているような。
>ゼルはゼルで、伝説になるほどの暗殺者の実力を見せつけられて、悔しい反面、
>どうしても感嘆してしまう部分があるのかもしれないですね。
>でも現在は敵である以上、対抗策を必死で考えるしかない、と。

圧倒的なレベル差がありますので、どう見ても遊ばれているようにしか見えません。
善悪抜きにして、抜きん出た技術というのは誰しも大なり小なり驚嘆しますし。

>>そして少し後、森の中をアメリアの悲痛な叫びが木霊した。
>
>エルマさんの遺体をみつけたのですね……(TT)
>アメリア、号泣していますね。ゼルも何も言えないでしょう。

はい、号泣してます。
さすがのゼルも何と言っていいかわからないと思います。

>>櫃の中からいろいろと包みを取り出した。
>>「さて。後はどうなるかはお前さん次第だぜ。」
>>ニヤッと笑みを浮かべながら、再びジゴマは膝をつき、屈みこんだ。
>
>アメリアとゼルが埋葬したエルマさんの遺体を掘り返すジゴマさん。
>「お前さん次第」……これはやはりエルマさん次第、ということなのでしょう……ね……。
>一体、何をする気なのでしょう……。

ジゴマのこの行動の意味は、かなり後のほうになってしまいます。
お楽しみということでお待ちください。

>>続きでした。
>>今回で、道中刺客編は終了です。
>>舞台はゴットフリードの領地へと移ります。
>>かなり長く予感が、確信に変わっております。
>>よろしければ、お付き合いください。
>>それではまた次回。
>
>怒濤の展開とエルマさんの不運な死(としか言い様がない)に、ひたすら
>驚きました。そしてラストでのジゴマさんの行動も、どんな展開をもたらすのか
>とても気になります。
>次回からゴットフリードさんの領地。
>奪われたプレートは、一体どんなものなのか。そしてどんな事実が判明するのでしょうか。
>そして……やはりゼルは苦労するのでしょうねぇ……(苦笑)
>それでは、今日はこの辺で失礼いたします。
>続きを楽しみにしていますー!

ようやく、刺客編は終了です。
やっと中盤に差し掛かってきた、という感じです。
刺客も一番厄介なのが残ってるし、からくり師は相変わらず妖しいわで、まだまだゼルの苦労は続きます(笑)
それではどうもありがとうございました。

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29357異邦の彼方より (17)棒太郎 2004/2/15 22:50:57
記事番号29200へのコメント

こんばんは、棒太郎です。
舞台はまた移り、いよいよ目的地です。
またキャラも入り乱れてくると思いますが、お付き合いください。
それではどうぞ。


*************************************

『異邦の彼方より』 (17)


朝日がそろそろ姿を現そうとする夜明けごろ―――
中庭で、一人の男が剣を振るっている。
シャツとズボンという軽装に身を包んでいるが、彼こそがこの地方を治める若き領主、ゴットフリード=ヴァン=アーデンハイルであった。
常に鍛錬を怠らぬのか、見事に鍛えられた肉体であった。
一通り剣を振り終え、残心する。
そのゴットフリードのところに、ひとつの影が現れた。
「ひょ、ひょ。朝も早ようから熱心じゃの。いや、見事な心構えよ。」
いつの間にか、そこには小柄な老人の姿があった。
確か、フー・マンチューと言ったか――――彼の雇った7人の刺客のうちの一人であった。
「あ、ああ。御老人、どうかされましたか?」
この老人、カーライルでさえ驚きの目をむく、裏世界の伝説の人物であると言う。ついつい畏まってしまう。
「どうしたもあるかいな。わしがここにおるということは、ほれ。」
そう言い、フー・マンチューは懐からあの包みを取り出し、投げ渡した。
「おお、まさしく・・・・・・」
ゴットフリードは感嘆の声を上げた。
「他の者は?」
「皆、やられたわい。」
あっけらかんとそう言うフー・マンチューに、ゴットフリードも咄嗟に言葉が出なかった。
「さて、もうしばらくわしゃ、ここにおるわい。掛かった仕事の手に比べて、あの報酬はちと貰いすぎじゃからのぅ。」
金額分の仕事には満たぬわい―――ひょ、ひょ、ひょ、と笑いながらフー・マンチューは中庭を後にした。
「ゴットフリード、安心していい。向こうもプロ中のプロだ。」
不意にカーライルの声が聞こえた。
「この場は味方となる駒が一人でも多いほうがいい。」
「・・・・・・そうだな・・・・・まだこれからだ・・・・・・」



アメリアたち一行がアーデンハイル領に着いたのは、太陽が中天に高く上りきって、少し経った頃だった。
一行の雰囲気はどこか重かった。
と言っても、重いのはアメリアと傍らにいるゼルガディスの周りであって、もう一人の同行人――ジゴマは相変わらずの笑みを浮かべていた。
あの森の中で、エルマの変わり果てた姿を見つけたときの、アメリアの落ち込みようは大変なものだった。
普段があの明るい性格であるので、その反動とでもいうものはゼルガディスにとって、想像を絶した。
これが男であったら、宥めるなり諌めるなりなにか言葉を掛けたであろうが、相手は女性―――しかも憎からず思っている人物である。
女性の扱いなど慣れていないゼルガディスには、どう言葉を掛けていいかなど、まるでわからなかった。
アメリアに追いつくまでは、その無茶な行動にきつく灸を据えねばと思っていたが、そんなことなどできるはずも無かった。
だが、ゼルガディスの表情は、憮然というかどこか面白くないといった風であった。
その原因は横にいるからくり師であった。
憔悴したように落ち込み、この旅すらも続けられるかどうかわからなかったアメリアを、四方八方から宥め賺して腰を上げさせたのはジゴマであった。
このからくり師は、どういう訳かアメリアの肩を持つのである。また、アメリアもスケアクロウの経緯もあるが、どことなくジゴマを信頼しているようであった。少なくともゼルガディスにはそう見えて仕方がなかった。
しかしゼルガディスは、ジゴマを殊勝なタマとは思っていない。この男に事の善悪という定義はない――と思っている。自分の興味、愉しみで動き、その行動の結果が見るものにとって善に見えたり、悪に見えたりするに過ぎない――――そう、アメリアに言いたくなる。
(くだらん――――俺はこいつに嫉妬しているとでもいうのか!)
自分の頭に湧いてくる考えを振り払いながら、ゼルガディスはアメリアの傍に付いていた。
「さて、アーデンハイル卿の御領地に入ったわけですが、これから如何なさいますか?」
ジゴマが訊ねてきた。
「プレートもフー・マンチューが持っていってしまったからな・・・・・・・」
ゼルガディスも顎に手をあて考え込む。そのとき――
「―――――いきます。」
アメリアが呟いた。
「ゴットフリードさんのところへ、このまま行きます。」
「おい・・・・アメリア―――」
ゼルガディスは声をかけたが、
「まあ、下手な小細工をするよりは、正面から行ったほうがいい場合もございますからねぇ。」
「ジゴマ――――」
「それにアーデンハイル卿はやつがれのことは知っていても、まさかアメリア様まで来ておられるとは思いませんでしょう。それに、聞く限りアーデンハイル卿は公明正大、実直なお方であると覗っております。まさかセイルーンの王女様に無礼はいたしませんでしょう。」
ニヤッと笑みを浮かべながらジゴマはそう言った。
確かに理屈では納得できそうな話だが、それを言っている相手が相手なので、心まではどうにも納得いかないもやもやしたものがあった。
しかし、相手は海千、山千の得体の知れぬからくり師。反論してもいつのまにか向こうの思うように丸め込まれてしまっている姿は容易に想像できた。
「すいませんがやつがれはまたちょいと、離れさせていただきますよ。なぁに、向こうにはやつがれを警戒なさっている御方がいらっしゃるでしょう。」
そう言うと、ジゴマはではごめんなすって、と言ってアメリアとゼルガディスと別れた。
「ゼルガディスさん・・・・・・」
アメリアがゼルガディスに目を向ける。
「・・・・・・・とりあえず、行くか。」
下手の考え、休むに似たり―――そう思い、ゼルガディスはゴットフリードの館に向けて歩き出した。


街中を歩いていたゼルガディスは、街の様子を見て感心した。
小さい街であったが活気があった。
アメリアの話では、この地は昔、あまり実りの良くないところであったそうなのだが、この地に赴任してきたゴットフリードの先祖の努力によって、今のような活気を得るまでになったのだと言う。
領主も代々高潔で、各戸の経済状態を綿密に調査し、その上で租税量を算出していた。そのため、領地内で飢えた家族が出ることはない。
納められた租税も農道の建設や整備、学校の運営等に当てられ、民衆に還元されていた。
領主自身もそこいらの貴族のように、衣装や邸宅を華美に飾ることも無く、必要最小限に留め、質素に暮らしていた。
聞けば聞くほど、何処へ行ってもなかなか見ることのできないできた領主様であった。
(いるもんだな・・・・・そういう人物が・・・・・・)
全部が全部、そうではないが、やはり特権階級という権限を振り回す輩が多いのも事実である。ゼルガディスも旅の中でそういう馬鹿者を何人も見てきた。
だからこのアーデンハイルの一族は、なかなかの傑物といえるだろう。
事実、領民は領主を敬愛していた。誉める・讃える言葉は聞いても悪口は聞かなかった。
(しかし、そんな人物が何故謀反を・・・・・・・?)
考えてみれば、この地方もセイルーンの端の端―――見ようによっては中央からできる限り遠ざけているようにも見える。
(やはり過去に中央となにかあったか・・・・・・・?)
そうこう考えているうちに、アーデンハイルの館が見えてきた。
こじんまりとしてるが、歴史を感じさせる佇まいであった。
「あれがそうか・・・・・・・」
ゼルガディスが呟いた時、
「きゃっ!」
アメリアの声がし、目を向けると一人のメイドが荷物を地面に散らばらせ、尻餅をついていた。
「あ、す、すいません!よそ見しちゃってて――――」
メイドは慌ててアメリアに謝った。
「いえ、こっちは大丈夫です。あなたのほうも大丈夫ですか?」
「は、はい―――」
そう言い、メイドは散らばった荷物を集め始める。
アメリアも手伝おうと氏と解き、
「あらら。派手にやったね、サナちゃん。」
「あ、タイタスさん。」
両手に荷物を抱えて、執事然とした格好の青年がやって来た。
サナと呼ばれたメイドは、タイタスと呼んだ青年のほうを向くと羞恥に頬を染めた。
「やっぱり僕が持ったほうが良かったでしょ?無理しなくてもいいのに。」
「で、でも・・・・・これはゴットフリード様に―――」
サナの言葉に、アメリアとゼルガディスはピクリと反応した。
「あんたたちは・・・・・・領主の所に勤めているのか?」
「え、と・・・・貴方達は?」
「ああ、すまない・・・・・・俺たちはその・・・なんというか・・・・・」
ゼルガディスが、さてどう言おうものかと言葉を選んでいると―――
「私たちはゴットフリードさんに会いに来たんです。」
アメリアがストレートに言った。
「ゴットフリード様に?」
「はい。あ、遅れましたけど私はアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンと言います。」
アメリアの物言いに、ゼルガディスはビミョーな表情をして、眉間を押さえた。
「アメリア・・・・?アメリア・・・・・・・アメリア・・・・・って、ええ!?」
アメリアの名を反芻しながら、ようやく記憶の糸と結びついたサナとタイタスは驚きの声を上げた。




「おや、アルベルト様。準備のほうは整いましたようで。」
ジゴマは笑みを浮かべながらアルベルトに言った。
「ジゴマ・・・・・アメリア様がいらっしゃるというのは本当か?」
「はい、本当でございますよ。」
「何故、教えなかった!?」
アルベルトが怒りの声を上げる。
「そうは申しましてもねぇ・・・・・もうこの地にいらっしゃってたものですから。」
とぼけた言葉を返す。
「まあ、ご安心なさいな。アーデンハイル卿も馬鹿じゃございませんでしょう?そうそう下手な真似はいたしませんて。」
「しかし――――」
「そこまでの外道だったなら、とうに何か事を起こしておりますよ。それにアメリア様が出奔に関しては貴方様方の落ち度ではありませんか?」
ジゴマの物言いに、アルベルトは忌々しげに睨みつけた。
ジゴマは何処吹く風と言ったように受け流していた。
「さて・・・・・次なる幕の開幕さね。」



*************************************

続きでした。
ダラダラと長く書いた割には、あまり進んでませんが・・・・・・・
カーライルにフー・マンチューと手練が控えております。
またバトルバトルしていきたいと思います。
それではまた次回。

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29366逆に代々のアーデンハイル家の方々の必死さが見えますねエモーション E-mail 2004/2/16 21:55:03
記事番号29357へのコメント

棒太郎様、こんばんは。

領地編、開始ですね。
どっぷりと落ち込んでいる状態のアメリア。そして扱いが分からなくて
困っているゼルと、違う意味でゼルが苦労している回ですね。
そしてまた何やら動き出しているジゴマさん。どんな演出を考えているのでしょうねー(^_^;)


>シャツとズボンという軽装に身を包んでいるが、彼こそがこの地方を治める若き領主、ゴットフリード=ヴァン=アーデンハイルであった。
>常に鍛錬を怠らぬのか、見事に鍛えられた肉体であった。
>一通り剣を振り終え、残心する。
>そのゴットフリードのところに、ひとつの影が現れた。
>「ひょ、ひょ。朝も早ようから熱心じゃの。いや、見事な心構えよ。」

確かに努力は怠らないし、ちゃんとしている人なんだなあとは思いますが……
それだけに、そうさせてしまう執念と言いますか、理由が別にあるんだろうなと思うと、
ちょっと怖いですね。

>「さて、もうしばらくわしゃ、ここにおるわい。掛かった仕事の手に比べて、あの報酬はちと貰いすぎじゃからのぅ。」
>金額分の仕事には満たぬわい―――ひょ、ひょ、ひょ、と笑いながらフー・マンチューは中庭を後にした。
>「ゴットフリード、安心していい。向こうもプロ中のプロだ。」
>不意にカーライルの声が聞こえた。
>「この場は味方となる駒が一人でも多いほうがいい。」
>「・・・・・・そうだな・・・・・まだこれからだ・・・・・・」

……フー・マンチューさんの感覚にそう金額分の仕事って、無茶苦茶とんでも
なさそうなんですが……(^_^;) 
また、プレートを見たことで、この後どうなるのか見たいと思っているのかなとも思いました。

>あの森の中で、エルマの変わり果てた姿を見つけたときの、アメリアの落ち込みようは大変なものだった。
>普段があの明るい性格であるので、その反動とでもいうものはゼルガディスにとって、想像を絶した。
>これが男であったら、宥めるなり諌めるなりなにか言葉を掛けたであろうが、相手は女性―――しかも憎からず思っている人物である。
>女性の扱いなど慣れていないゼルガディスには、どう言葉を掛けていいかなど、まるでわからなかった。

ゼルはすっかり調子が狂っていますね。これまで経験したことない、違う意味での苦労!
これがガウリイなら、案外女性の扱いが(変な意味でなく)上手なんですけれど、
ゼルは本当にこういうのは苦手そうですよね。
一応、ゼルなりに気を遣ってはいるのでしょうけれど……ストレートには
分かりづらいのだろうなあと、予測(妄想)してしまいます。
ガンバレ、ゼル。上手くすればフラグが立つから(笑)

>このからくり師は、どういう訳かアメリアの肩を持つのである。また、アメリアもスケアクロウの経緯もあるが、どことなくジゴマを信頼しているようであった。少なくともゼルガディスにはそう見えて仕方がなかった。
>しかしゼルガディスは、ジゴマを殊勝なタマとは思っていない。この男に事の善悪という定義はない――と思っている。自分の興味、愉しみで動き、その行動の結果が見るものにとって善に見えたり、悪に見えたりするに過ぎない――――そう、アメリアに言いたくなる。
>(くだらん――――俺はこいつに嫉妬しているとでもいうのか!)
>自分の頭に湧いてくる考えを振り払いながら、ゼルガディスはアメリアの傍に付いていた。

さすがにしっかりと、ジゴマさんについては見抜いてますね、ゼル。
そして見事にやきもち焼いてますね(笑)自覚はしていないようですが。
また、きっちりアメリアの傍についている辺りは、端から見ていると
分かりやすいというか、素直ですよね。本当に。

>「まあ、下手な小細工をするよりは、正面から行ったほうがいい場合もございますからねぇ。」
>「ジゴマ――――」
>「それにアーデンハイル卿はやつがれのことは知っていても、まさかアメリア様まで来ておられるとは思いませんでしょう。それに、聞く限りアーデンハイル卿は公明正大、実直なお方であると覗っております。まさかセイルーンの王女様に無礼はいたしませんでしょう。」
>ニヤッと笑みを浮かべながらジゴマはそう言った。
>確かに理屈では納得できそうな話だが、それを言っている相手が相手なので、心まではどうにも納得いかないもやもやしたものがあった。

確かに「どこから攻めても同じなら正面から」とは言いますが……。
正面から堂々と行けば、少なくとも相手はこちらに露骨に何かを仕掛けられない、
という利点がありますが、相手がもうそんなこと考慮しなくなっている場合、
自ら相手に掴まりに行くようなものですから、警戒は必要でしょうね。
それにしても、ゼルのジゴマさんへの警戒っぷりが、無理もないと思いつつも、
苦笑してしまいますね。

>領主も代々高潔で、各戸の経済状態を綿密に調査し、その上で租税量を算出していた。そのため、領地内で飢えた家族が出ることはない。
>納められた租税も農道の建設や整備、学校の運営等に当てられ、民衆に還元されていた。
>領主自身もそこいらの貴族のように、衣装や邸宅を華美に飾ることも無く、必要最小限に留め、質素に暮らしていた。
>聞けば聞くほど、何処へ行ってもなかなか見ることのできないできた領主様であった。

まさに非の打ち所がない、見事な領主様ですね。
領民としてもここまできちんと治められていたら、あとは基本的に自分の
甲斐性の問題だと思うでしょうし。
努めてそうしようと思わなければ出来ないことですから、代々そうだということは、
相当きちんと、次の代に対する教育がしっかりしているのですね。
ただ、現王室との裏の経緯を知っていると、「王室から失政をつけ込まれて、
処罰される口実を与えないように、隙を作らないようにしてきたんだな」というのが
分かりますね。……仙台伊達藩もそうだったと聞きますし(苦笑)

>「あらら。派手にやったね、サナちゃん。」
>「あ、タイタスさん。」
>両手に荷物を抱えて、執事然とした格好の青年がやって来た。
>サナと呼ばれたメイドは、タイタスと呼んだ青年のほうを向くと羞恥に頬を染めた。

恋愛にはならなくても、何か仲が良いのですね。サナさんとタイタスさん。
基本的に気が合うのでしょうか。

>ゼルガディスが、さてどう言おうものかと言葉を選んでいると―――
>「私たちはゴットフリードさんに会いに来たんです。」
>アメリアがストレートに言った。
>「ゴットフリード様に?」
>「はい。あ、遅れましたけど私はアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンと言います。」
>アメリアの物言いに、ゼルガディスはビミョーな表情をして、眉間を押さえた。
>「アメリア・・・・?アメリア・・・・・・・アメリア・・・・・って、ええ!?」
>アメリアの名を反芻しながら、ようやく記憶の糸と結びついたサナとタイタスは驚きの声を上げた。

ああ、本当に……。素直です、アメリア。
でも下手な小細工してもすぐにばれるだけですし、ばれたときに何も事情を
知らない人から不審を抱かれるだけ、と考えれば、正面から向かう以上、
まあ、これでいいのかも……。
ゼル。がんばってナイト役&交渉その他をしましょう♪

>「まあ、ご安心なさいな。アーデンハイル卿も馬鹿じゃございませんでしょう?そうそう下手な真似はいたしませんて。」
>「しかし――――」
>「そこまでの外道だったなら、とうに何か事を起こしておりますよ。それにアメリア様が出奔に関しては貴方様方の落ち度ではありませんか?」
>ジゴマの物言いに、アルベルトは忌々しげに睨みつけた。
>ジゴマは何処吹く風と言ったように受け流していた。
>「さて・・・・・次なる幕の開幕さね。」

うーん、ジゴマさん。本当に遊んでますね(汗)
アルベルトさんも、ゼルとは違う意味でやきもきしますね。
ジゴマさん……。今のところはひとまず舞台の流れを見ている、というところでしょうか。

>続きでした。
>ダラダラと長く書いた割には、あまり進んでませんが・・・・・・・
>カーライルにフー・マンチューと手練が控えております。
>またバトルバトルしていきたいと思います。
>それではまた次回。

真正面からゴットフリードさんに向かっていく、ゼルとアメリア。
正面から飛び込んできた二人に、ゴットフリードさんはどう対応するのでしょうか。
……いきなり攻撃はしないでしょうけれど、もしかしたら当たり障りのない程度に、
ちょっとした因縁くらいは話すのかな、と勝手に予想(妄想)しています。
それでは、続きを楽しみにしつつ、今日はこの辺で失礼いたします。

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29372ずっと確執があるわけですからね棒太郎 2004/2/17 22:53:41
記事番号29366へのコメント


>棒太郎様、こんばんは。
>
>領地編、開始ですね。
>どっぷりと落ち込んでいる状態のアメリア。そして扱いが分からなくて
>困っているゼルと、違う意味でゼルが苦労している回ですね。
>そしてまた何やら動き出しているジゴマさん。どんな演出を考えているのでしょうねー(^_^;)

こんばんは、エモーションさん。
今までで最長を記録しそうですが、まだまだ続いていきそうです。
落ち込んでいるアメリアをどうやって向かわせようか迷いましたが、困った時にはジゴマで解決です。
彼も前回以上に暴れてくれそうです。


>>常に鍛錬を怠らぬのか、見事に鍛えられた肉体であった。
>>一通り剣を振り終え、残心する。
>>そのゴットフリードのところに、ひとつの影が現れた。
>>「ひょ、ひょ。朝も早ようから熱心じゃの。いや、見事な心構えよ。」
>
>確かに努力は怠らないし、ちゃんとしている人なんだなあとは思いますが……
>それだけに、そうさせてしまう執念と言いますか、理由が別にあるんだろうなと思うと、
>ちょっと怖いですね。

基本的には実直で、常に自分を律する人です。
ただ、頑固な気質もありますので。

>>金額分の仕事には満たぬわい―――ひょ、ひょ、ひょ、と笑いながらフー・マンチューは中庭を後にした。

>……フー・マンチューさんの感覚にそう金額分の仕事って、無茶苦茶とんでも
>なさそうなんですが……(^_^;) 
>また、プレートを見たことで、この後どうなるのか見たいと思っているのかなとも思いました。

プレートのこともありますが、なんにせよフーじいさんにしてみれば赤子の手を捻るようなほど簡単な仕事だったので。

>>普段があの明るい性格であるので、その反動とでもいうものはゼルガディスにとって、想像を絶した。
>>これが男であったら、宥めるなり諌めるなりなにか言葉を掛けたであろうが、相手は女性―――しかも憎からず思っている人物である。
>>女性の扱いなど慣れていないゼルガディスには、どう言葉を掛けていいかなど、まるでわからなかった。
>
>ゼルはすっかり調子が狂っていますね。これまで経験したことない、違う意味での苦労!
>これがガウリイなら、案外女性の扱いが(変な意味でなく)上手なんですけれど、
>ゼルは本当にこういうのは苦手そうですよね。
>一応、ゼルなりに気を遣ってはいるのでしょうけれど……ストレートには
>分かりづらいのだろうなあと、予測(妄想)してしまいます。
>ガンバレ、ゼル。上手くすればフラグが立つから(笑)

普段でも、なかなかストレートに伝わってないところがありますから、余計でしょうね。
これも修行だ。頑張れ、ゼル。

>>しかしゼルガディスは、ジゴマを殊勝なタマとは思っていない。この男に事の善悪という定義はない――と思っている。自分の興味、愉しみで動き、その行動の結果が見るものにとって善に見えたり、悪に見えたりするに過ぎない――――そう、アメリアに言いたくなる。
>>(くだらん――――俺はこいつに嫉妬しているとでもいうのか!)
>>自分の頭に湧いてくる考えを振り払いながら、ゼルガディスはアメリアの傍に付いていた。
>
>さすがにしっかりと、ジゴマさんについては見抜いてますね、ゼル。
>そして見事にやきもち焼いてますね(笑)自覚はしていないようですが。
>また、きっちりアメリアの傍についている辺りは、端から見ていると
>分かりやすいというか、素直ですよね。本当に。

まだ短い付き合いですが、ジゴマのことが分かってきたようです。

>>ニヤッと笑みを浮かべながらジゴマはそう言った。
>>確かに理屈では納得できそうな話だが、それを言っている相手が相手なので、心まではどうにも納得いかないもやもやしたものがあった。
>
>確かに「どこから攻めても同じなら正面から」とは言いますが……。
>正面から堂々と行けば、少なくとも相手はこちらに露骨に何かを仕掛けられない、
>という利点がありますが、相手がもうそんなこと考慮しなくなっている場合、
>自ら相手に掴まりに行くようなものですから、警戒は必要でしょうね。
>それにしても、ゼルのジゴマさんへの警戒っぷりが、無理もないと思いつつも、
>苦笑してしまいますね。

思い切ってぶつかったほうが、かえっていい場合もありますからね。
ただ、提案している人物がアレなので、警戒してしまいます。

>>領主も代々高潔で、各戸の経済状態を綿密に調査し、その上で租税量を算出していた。そのため、領地内で飢えた家族が出ることはない。
>>納められた租税も農道の建設や整備、学校の運営等に当てられ、民衆に還元されていた。
>>領主自身もそこいらの貴族のように、衣装や邸宅を華美に飾ることも無く、必要最小限に留め、質素に暮らしていた。
>>聞けば聞くほど、何処へ行ってもなかなか見ることのできないできた領主様であった。
>
>まさに非の打ち所がない、見事な領主様ですね。
>領民としてもここまできちんと治められていたら、あとは基本的に自分の
>甲斐性の問題だと思うでしょうし。
>努めてそうしようと思わなければ出来ないことですから、代々そうだということは、
>相当きちんと、次の代に対する教育がしっかりしているのですね。
>ただ、現王室との裏の経緯を知っていると、「王室から失政をつけ込まれて、
>処罰される口実を与えないように、隙を作らないようにしてきたんだな」というのが
>分かりますね。……仙台伊達藩もそうだったと聞きますし(苦笑)

隙を作らないようにしてきた部分もありますし、もともとの気質の部分もあります。
まあ、いい領主たる性質は持っていたので、後は環境によってそれが更に開花した、と言う感じです。

>>両手に荷物を抱えて、執事然とした格好の青年がやって来た。
>>サナと呼ばれたメイドは、タイタスと呼んだ青年のほうを向くと羞恥に頬を染めた。
>
>恋愛にはならなくても、何か仲が良いのですね。サナさんとタイタスさん。
>基本的に気が合うのでしょうか。

サナはゴットフリードに思いを寄せてますし、タイタスも想い人はいますので、二人は恋愛関係にはなりませんね。ただ、タイタスが妹のように可愛がってるようなもんです。

>>「はい。あ、遅れましたけど私はアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンと言います。」
>>アメリアの物言いに、ゼルガディスはビミョーな表情をして、眉間を押さえた。
>>「アメリア・・・・?アメリア・・・・・・・アメリア・・・・・って、ええ!?」
>>アメリアの名を反芻しながら、ようやく記憶の糸と結びついたサナとタイタスは驚きの声を上げた。
>
>ああ、本当に……。素直です、アメリア。
>でも下手な小細工してもすぐにばれるだけですし、ばれたときに何も事情を
>知らない人から不審を抱かれるだけ、と考えれば、正面から向かう以上、
>まあ、これでいいのかも……。
>ゼル。がんばってナイト役&交渉その他をしましょう♪

ほんとにアメリア、正面から突っ込んでます。
まあ、後のフォローはゼルに皺寄せてくるわけですが(笑)

>>「そこまでの外道だったなら、とうに何か事を起こしておりますよ。それにアメリア様が出奔に関しては貴方様方の落ち度ではありませんか?」
>>ジゴマの物言いに、アルベルトは忌々しげに睨みつけた。
>>ジゴマは何処吹く風と言ったように受け流していた。
>>「さて・・・・・次なる幕の開幕さね。」
>
>うーん、ジゴマさん。本当に遊んでますね(汗)
>アルベルトさんも、ゼルとは違う意味でやきもきしますね。
>ジゴマさん……。今のところはひとまず舞台の流れを見ている、というところでしょうか。

ここらへんは愉快犯ですから。
向こうにはカーライルにフー・マンチューと並ならぬ者がいますので、様子見といったところです。

>>続きでした。
>>ダラダラと長く書いた割には、あまり進んでませんが・・・・・・・
>>カーライルにフー・マンチューと手練が控えております。
>>またバトルバトルしていきたいと思います。
>>それではまた次回。
>
>真正面からゴットフリードさんに向かっていく、ゼルとアメリア。
>正面から飛び込んできた二人に、ゴットフリードさんはどう対応するのでしょうか。
>……いきなり攻撃はしないでしょうけれど、もしかしたら当たり障りのない程度に、
>ちょっとした因縁くらいは話すのかな、と勝手に予想(妄想)しています。
>それでは、続きを楽しみにしつつ、今日はこの辺で失礼いたします。

ある意味、ゴットフリードも予測できなかった展開ですが・・・・・・
とりあえず、狐と狸の化かし合いみたいになるかも知れません。
ジゴマの言うとおり、いきなり攻撃するようなことはしませんが。
それでは、どうもありがとうございました。

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