◆−スレイヤーズTRYノベル:三話:昼の輝き、宵の影−オロシ・ハイドラント (2004/1/8 20:29:33) No.28956
 ┣オリジナルの世界情景が出来てますね♪−エモーション (2004/1/10 23:00:37) No.28970
 ┃┗Re:アニメとは似て非なる物語にするのが目標……かな?−オロシ・ハイドラント (2004/1/11 21:02:39) No.28976
 ┣スレイヤーズTRYノベル:四話:ヴァルガーヴ−オロシ・ハイドラント (2004/1/11 21:40:04) No.28977
 ┃┗微妙にカラーリングが違う……のかな。−エモーション (2004/1/12 13:13:02) No.28989
 ┃ ┗Re:微妙にカラーリングが違う……と思います−オロシ・ハイドラント (2004/1/13 18:32:09) No.28997
 ┣スレイヤーズTRYノベル:五話:紅蓮の朝−オロシ・ハイドラント (2004/1/13 19:24:55) No.28999
 ┗スレイヤーズTRYノベル:六話:ゼルガディスの手記1(再会、旅立ち)−オロシ・ハイドラント (2004/1/13 20:22:51) No.29000
  ┗ゼルサイドも始動ですね。−エモーション (2004/1/14 22:18:12) No.29010
   ┗Re:ゼルサイドも始動ですね。−オロシ・ハイドラント (2004/1/15 17:28:51) No.29018


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28956スレイヤーズTRYノベル:三話:昼の輝き、宵の影オロシ・ハイドラント URL2004/1/8 20:29:33


 3:昼の輝き、宵の影


 火竜王の病のことは誰にも言わないよう強く言い聞かされた。
 それほど秘密にしなければならない話を喫茶店で堂々とするなと思うが、人前で話すのと誰かに語るのとでは全然違うと言って効かない。
 ……単に自分の失敗を認めたくないだけなのかも知れないが。
 とにかく、まあ過ぎたことは仕方がないだろう。
 さて、
「何で観光するんですか?」
 この街をもう少し見ていこうという意見に、フィリアは反対らしい。
 しかし世の中、集団の中での個人の意見とはそう簡単通るものではない。
「だってこんなに良い街じゃない。見て回らなきゃ損よ。損!」
 あたし達はまず、徒歩でフェンリル馬車乗り場へ向かうことにした。
 フェンリルとはこの辺りの平原に住む狼の一種で、巨大な肉体と精悍な風貌を持ちながらも気質はおとなしいため、馬と同じように扱うことが出来るという。
 ちなみに正式名称はコウヤオオカミというのだが、この狼を馬代わりに使うというアイディアを思いついた人間が、そんな安直な名前じゃつまらないと言って、フェンリル――伝説の魔獣の名前だとか――と名付けられたらしい。
 ちなみに全部ラファエルの言ったことだ。
 最寄の乗り場はそう遠くないらしい。
 何でもこの街には、乗り場が数十箇所もあるのだという。
「まずは、どこから見るの?」
 あたしはラファエルに問い掛けた。
「ええと、まず中央美術館。それから中央博物館。その後、聖樹付近のレストランで遅めのお昼ご飯を食べて……それから後はまた考えましょう」
「ちょっと」
 フィリアが口を挟んで来る。
「そんなことしている暇は本当にないんですよ」
「良いじゃないの。その分急ぐからさ」
「でも……」
「しつこいわよ。ちょっと一日観光するくらい良いじゃないのよ」
「インバースさんの言う通りですよ。ちょっとくらい遊ばせて差し上げても、良いじゃないですか?」
 ラファエルはあたしの味方に加わったようだ。
 フィリアは劣勢を悟ると、感情を思い切り抑えた声で、
「し、仕方ありません。一日だけですよ」
 どうやらあたし達の勝利のようだ。
 ああ、女神は我らに微笑んだ。
 というわけで、今日一日は思い切りこの街を見回ることに決定。
 こうして、あたしが笑顔を取り戻した瞬間、
「きゃあああああああああああ!」
 突然、フィリアが悲鳴を上げた。
 周りの人達は反応して、皆一斉にこちらを振り向く。
 何ごとだろうか。
 あたしはフィリアの方を見た。
 そこに広がっていた光景は、衝撃的とも言えるものであった。
「……ガウリイ」
 フィリアの背後に回っていたガウリイは、ロングスカートのドレスを捲り上げていた。
 フィリアは振り返り様にガウリイを蹴り飛ばし、さらにスカートの中に手を入れると、そこから鋼鉄製のメイスを取り出して、ガウリイの胸元に叩き付けた。
「ぐっ……」
 素早く、そして凄まじい一撃であった。
 胸部に重い一撃をもらったガウリイは激しく吹き飛んで、地面に頭部から激突した。
「いきましょうリナさん」
 怒気を全身から噴出されているフィリアは、そう言って一人で先に進んでいた。
 あたしは完全に気絶しているガウリイの元に歩み寄り、その図体を蹴飛ばした。
「何やってんのよ!」
 次は屈み込んで両手で胸倉を掴み、力強く揺する。
「全く仕方ないわね」
 反応がないのを見ると、あたしはガウリイを担ぎ上げようとした。
 だが、これがなかなか重い。
「わたくしがやりますよ」
 そこへ傍観していたラファエルの、救いの手が差し伸べられた。
「じゃあよろしくね」
 あたしはガウリイを地面におき、フィリアの後を追って先に進んだ。
 白い眼で見る周りの人々は、極力無視して。


 専用の通路を、二匹の狼が風の如く疾駆する。
 フェンリル馬車は、想像以上に爽快な走りを見せてくれた。
 風がもの凄く気持ち良い。
 あたしは思わず、空に向かって叫んでしまった。
 ラファエルとフィリアは、すでに体験したことがあるのだろう。
 興奮はあたしほどではなさそうだった。
 ガウリイといえば未だ気絶している。
 自業自得なので哀れみはしないが。
 フェンリル馬車を使って街の中心部に辿り着いたあたし達は、ラファエルの言った通りに、中央美術館に向かった。
 美術館は大きな建物で、壁一面に美しい細工が施されていた。
 屋根の上には、黄金製の女神像があり、慈愛の眼差しでこの白い街を眺めている。
 中には様々な展示物があった。
 絵画は上質な風景画から意味不明の抽象画、彫像も色々なものがあった。
 ちなみにこの美術館へは、あたしとラファエルのみで入った。
 フィリアはすでに一度入ったことがあるため、ガウリイの番をすることになったのだ。
 美術館から帰って来ると、近くのベンチでガウリイとフィリアが仲良く果実ジュースを飲んでいる光景が見られた。
「おっリナ。もう観終わったのか?」
 あたし達が帰って来るのを見たガウリイの言葉に対し、あたしは拳一発で返事をしてやった。
「いてっ、何するんだよ」
「自分の胸に聞いてみなさい」
「まあまあ、リナさん」
 憤慨するあたしに対して声を掛けたのは、ラファエルではなくフィリアであった。
「どうして?」
 どういうことだろう。フィリアとガウリイは仲直りをしているようだ。
これについては、フィリアは小声で説明してくれた。
 ガウリイがあんなことをしたのは、フィリアに尻尾が生えているのを見たからだという。
 火竜王の巫女であるフィリアは、黄金竜の一族なのである。
 魔法によってずっと人間の姿を取っていたのだが、魔法が切れ掛かっているのに気付かなかったようだ。
「たまに掛け直さないとだめなんです」
 それを知ったフィリアは、仕方がないと言ってガウリイを許したのだという。
 治療も施してやったらしい。
 次にあたし達は中央博物館へと向かった。
 外観は美術館に比べると地味だが、内部はなかなか良い展示物が揃っていた。
 一番派手なのは竜の化石だったが、あたしとガウリイは一つの剣に興味を示した。
 大昔に凶暴な魔獣を仕留めたと言われている伝説の剣らしい。
 その伝説の真偽はともかく、剣として本物であることは確かだ。
 多分かなりの価値を持っているはず。
「これ欲しいな。どうにかして手に入らないかな」
 ガウリイはそうまで言った。
「だめよ。あんたには妖斬剣(ブラスト・ソード)があるでしょ」
 そう。剣士であるガウリイの手には、凶暴な竜や邪悪な魔族さえ切り裂く、伝説級の剣があるのだ。
 それに、こんなところで泥棒して捕まって欲しくはない。
「冗談だって」
 他にも魔法のアイテムもいくつかあって、あたし達は随分とここに入り浸ることとなった。
 やがて空腹を感じると、全員を呼び集めて博物館を後にした。
 そして、街の中心に聳える聖樹のすぐ近くに建っていた食堂にあたし達は入った。
 そこで生命力溢れる大樹に、旺盛な食欲を見せつけたあたし達であった。


 街の中心部であるにも関わらず、フェンリル牧場は自然が豊富であった。
 広大な敷地内で飼われたフェンリルは、ここで馬車を引けるように訓練されるのだ。
 太陽の尖塔と呼ばれる建造物は、それ自体が芸術作品である。
 火焔模様の細工が丹念に施されていた。
 帰り際あたし達は名物フェンリルクッキー、聖樹プディング、香茶の詰め合わせなどを買った。
 さらにあたし個人としては――フィリアが買ってくれなかったため――、残り少ない財布の中身を使い果たす勢いで、書物類を買い漁った。
 ショッピングを終えたあたし達は今晩の宿を探すことにした。
「高級ホテルみたな場所が良いわねえ」
「この街には、アルフォディーネ国王も絶賛した超高級ホテルもありますよ」
「良いわね。そこ泊まろう」
 あたしとラファエルが楽しく話していると、不意に割り込んで来たフィリアが、
「だめです」
「そんなきっぱり言わなくても……」
「支払いは誰がすると思っているんですか。だめだったらだめです」
「けち」
 そこまでの我侭が通るとは思っていないが、一応そう言っておいた。
 それにしても空が赤い。
 太陽が訪れる闇に対して、精一杯の抵抗をしているかのようだ。
 綺麗だ。
 普段以上に美しく見える。
 それは気のせいだろうか。
 人通りはめっきり少なくなった。
 風さえも寂しげである。
 裏ぶれた道を歩んでいるせいもあるのだろうが。
 そんな中、前方から黒い影がやって来た。
 夕闇に包まれて黒いわけではない。
 夜よりもなお黒きローブを身に着けているのだ。
 その怪しい人物は、あたし達に何をするわけでもなかったが、強烈な存在感を放っていた。
 そういえば、黒ローブといえば今日の昼間にもそんな格好の人物と出会っていた。
 あれは昼食を終え、フェンリル牧場へと向かう途中のことであった。
 単身トイレを探しにいったあたしの元に、黒ローブの人物が現れ、一つの紙切れを渡して去っていったのだ。
 その紙切れにはこう書かれていた。


『明日の夜明けの刻、聖樹の広場に来い。
 お前一人でだ。
 誰にも知らせるなよ。
 お前一人で来るんだ。
 来なかったり、このことを誰かに知らせたりした場合には、この街の人間を皆殺しにする。
 脅しではない。
 俺にはそれだけのことが可能だ。
 もう一度言う。
 誰にも知らせるな。
 俺はお前を見ている。
 すぐに分かるぞ。
      復讐者』


 また面倒なことになったと思った。
 この辺りで誰かに恨みを買った覚えはないのに。
 こんなストーカー野郎に何が出来るかと思ったが、念のため、皆には伏せておくことにした。


 *


 彼は彼女を見ていた。
 彼は彼女を監視せねばならない。
 彼女のすぐ近くにやつがいるのだと、彼の主は言った。
 彼の主はすべてを見通しているかのようだ。
 実際はそうでもないのだろうが、そのように思えてしまう。
 やつの正体も、やつの目的と思しき者も、それに彼女の居所も、彼の主が教えてくれた。
 主の言葉は信用できる。
 そのために彼はここへ来た。
 もう少し。
 もう少しだ。
 やつは姿を見せるであろう。


 *


 普段着に着替えたあたしは、マントとショルダー・ガードを身に着ける。
 夕食が終わり、部屋に戻って最近興味を持ち始めた心理学の本を読んでいる内に就寝の時間が訪れ、一度眠りについた。
 後数刻もせぬ内に夜は明けるであろう頃、目を覚ましたあたしは、出発の準備を整えていた。
 危険は覚悟の上だ。
 竜の穴に入らねば、財宝の山を見ることはない。
 短剣や護符の類も忘れず身に着け、最初の扉をいざ開く。
 あたしは窓を開けた。
 光を失い、冷え切った空気が頬を撫でる。
 火照った身体を癒してゆく。
 灯した部屋の明かりを消すと、あたしは飛行呪文を小声で唱え、光なき世界へ飛び出した。
 あたしは歩む。
 一歩ずつ。
 悠然と、堂々と進む。
 その瞳に映るは、すぐ未来に至るその地。
 巨大なる聖樹。
 その樹は眠りについた様子を見せない。
 聖樹の生命力を改めて感じながら、あたしは目的の場所をただ目指した。


 <@><@><@><@><@><@><@><@><@><@>


 遅れてしまいました。
 これは正月に怠けていたせいです。
 でも次回は結構早く投稿出来るかと。
 明日というのは無理だと思いますけど。
 それでは、これで……

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28970オリジナルの世界情景が出来てますね♪エモーション E-mail 2004/1/10 23:00:37
記事番号28956へのコメント

こんばんは。

アニメ版をなぞりつつ、違う展開をちらほらと繰り広げていて……
でも、しっかりガウリイのスカート捲り(笑)はあるんですね。
アニメの時も思いましたが……何故尻尾が見えたからと言って、
いきなりスカート捲る、ガウリイ……。

> あたし達はまず、徒歩でフェンリル馬車乗り場へ向かうことにした。
> フェンリルとはこの辺りの平原に住む狼の一種で、巨大な肉体と精悍な風貌を持ちながらも気質はおとなしいため、馬と同じように扱うことが出来るという。
> ちなみに正式名称はコウヤオオカミというのだが、この狼を馬代わりに使うというアイディアを思いついた人間が、そんな安直な名前じゃつまらないと言って、フェンリル――伝説の魔獣の名前だとか――と名付けられたらしい。

こういう描写って、実はとても好きです。違う場所、違う土地、違う世界なんだな、と
思わせてくれますし、ある種の生活感があります。

美術館や博物館を見学するリナたち。違う土地をある程度知ろうと思ったら、
やはりこう言うところは、必須ですよね。基本的な感覚や認識、考え方などが
垣間見えますから。

> 帰り際あたし達は名物フェンリルクッキー、聖樹プディング、香茶の詰め合わせなどを買った。
> さらにあたし個人としては――フィリアが買ってくれなかったため――、残り少ない財布の中身を使い果たす勢いで、書物類を買い漁った。

何となく、自分の好きなものは、しっかり買っているフィリアが(笑)
リナの書物類って、内容によっては経費で落ちないのでしょうか?
火竜王さまの病気の原因探しが、どこにヒントが転がっているか、分からない以上、
外の世界の伝説や魔道知識が、多少なりとも必要かもしれないですし。

さて、早々に謎の復讐者から、挑戦状を貰ってしまったリナ。
相手の実力が分からない以上、油断は出来ないし、一人で大丈夫でしょうか。

それでは、この辺で失礼いたします。

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28976Re:アニメとは似て非なる物語にするのが目標……かな?オロシ・ハイドラント URL2004/1/11 21:02:39
記事番号28970へのコメント


>こんばんは。
どうも、こんばんは。
>
>アニメ版をなぞりつつ、違う展開をちらほらと繰り広げていて……
>でも、しっかりガウリイのスカート捲り(笑)はあるんですね。
やはりこれはやっとこうと思いまして。なぜか印象に残っていましたし。
>アニメの時も思いましたが……何故尻尾が見えたからと言って、
>いきなりスカート捲る、ガウリイ……。
確かにそうですね。
たとえガウリイでも、その後にどうなるかは分かると思いますし。
>
>> あたし達はまず、徒歩でフェンリル馬車乗り場へ向かうことにした。
>> フェンリルとはこの辺りの平原に住む狼の一種で、巨大な肉体と精悍な風貌を持ちながらも気質はおとなしいため、馬と同じように扱うことが出来るという。
>> ちなみに正式名称はコウヤオオカミというのだが、この狼を馬代わりに使うというアイディアを思いついた人間が、そんな安直な名前じゃつまらないと言って、フェンリル――伝説の魔獣の名前だとか――と名付けられたらしい。
>
>こういう描写って、実はとても好きです。違う場所、違う土地、違う世界なんだな、と
>思わせてくれますし、ある種の生活感があります。
私も結構好きだったりします。
スレイヤーズ原作はギャグやアクションに重点をおいているため、こういう描写が少ないと感じていましたため、入れてみることにしました。
>
>美術館や博物館を見学するリナたち。違う土地をある程度知ろうと思ったら、
>やはりこう言うところは、必須ですよね。基本的な感覚や認識、考え方などが
>垣間見えますから。
所変われば品変わると言いますからね。
最近ギャグ書くのが苦手になって来ていますので、代わりとなるかは分かりませんけど、こういったシーンを大切にしていきたいです。
>
>> 帰り際あたし達は名物フェンリルクッキー、聖樹プディング、香茶の詰め合わせなどを買った。
>> さらにあたし個人としては――フィリアが買ってくれなかったため――、残り少ない財布の中身を使い果たす勢いで、書物類を買い漁った。
>
>何となく、自分の好きなものは、しっかり買っているフィリアが(笑)
>リナの書物類って、内容によっては経費で落ちないのでしょうか?
>火竜王さまの病気の原因探しが、どこにヒントが転がっているか、分からない以上、
>外の世界の伝説や魔道知識が、多少なりとも必要かもしれないですし。
やはり経済的な理由でしょうか。
神殿にはいくらでもお金があるとしても、フィリアの手元にある額はそんなに多くはないと思いますし。
単に買った本の内容に問題があっただけかも知れませんが。
>
>さて、早々に謎の復讐者から、挑戦状を貰ってしまったリナ。
>相手の実力が分からない以上、油断は出来ないし、一人で大丈夫でしょうか。
>
>それでは、この辺で失礼いたします。
ご感想どうもありがとうございます。
それでは、これで……

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28977スレイヤーズTRYノベル:四話:ヴァルガーヴオロシ・ハイドラント URL2004/1/11 21:40:04
記事番号28956へのコメント

 4:ヴァルガーヴ


 聖樹を囲む広場は、緑に包まれており、ところどころに花が咲いていた。
 薄い闇のヴェールに覆われていたが、それが美しい花であることくらいは見て取れた。
 ここにやつがいる。
 あたしを呼び出したやつが。
「早かったな」
 どこからともなく男の声が聞こえた。
 あたしは辺りを見回す。
 しかし誰もいない。
「ここだぜ」
 もう一度、声が放たれた。
 それと同時に大樹の比較的低い位置にある葉が揺れ、そこから一つの影が産み落とされた。
 未だ闇が消えぬため、その男の細部までは分からなかったが、声からして多分年齢は若い。
 あたしの同程度の歳かも知れない。
 無論、見た目通りの年齢とは限らないが。
「待っていたぜ。リナ・インバース」
 男は薄い笑みを浮かべながら、声を発す。
「あんた何者?」
 あたしは睨みを利かせつつ、強い口調で訊いた。
「そうだな。死にゆくものに対して名を名乗らねえのは非礼に値するな」
 彼はそう言って、大きく笑う。
「俺の名はヴァルガーヴ。……今は亡き魔竜王ガーヴ様の意志を継ぐ者だ」
 まるでその名前を見せつけるかのように、彼は言った。
「ふうん。ガーヴの元部下か弟子か隠し子ってところね。それで何? 仇討ちとかしたいわけ?」
「リナ・インバース。貴様を生かしておくわけにはいかねえ。お前は死ぬ定めにあるんだ。このの俺の手に掛かってな」
 その言葉と同時に、ヴァルガーヴは激しくあたしを睨み返した。
 笑みが消え、真剣な表情に変わっている、。
 凄まじい眼光だ。
 まるで嵐に襲われているかのようだ。
「お前はここで殺されろ!」
 叫びとともに、ヴァルガーヴは駆け出した。
 まずい。
 あたしは素早く跳躍する。
 ヴァルガーヴの突進を横へかわし、
「火炎球(ファイアー・ボール)!」
 素早く呪文を浴びせた。
 紅蓮の焔と煙幕が、ヴァルガーヴに襲い掛かる。
 だが彼はそのすべてを振り払い、草花に引火した部分も含めて消し去った。
 さらに反撃として、右手から生み出した異常に黒い球体をあたしに向けて投げつけて来る。
 あたしがそれをかわすと、球体は草萌ゆる大地に着弾し、その地点を完全なる死の大地と変えた。
 恐ろしい攻撃だ。
 もしもあたしに当たっていたら、一体どうなっていたことであろうか。
「ふはははははは、今度は外さんぞ。……リナ・インバース!」
 ヴァルガーヴは笑った。
 最初に見たものとは違う、狂気じみた愉悦の笑み。
 どうやらガーヴ同様、戦いを楽しむ性質らしい。
 恐らく今の攻撃は、威力を見せつけるためのものであったのだろう。
 今度は両手を翳す。
 二つの手から、今の攻撃が放たれようとしているのだ。
「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
 一か八か。
 球体の迎撃か、ヴァルガーヴへの攻撃になってくれれば良いという理由で、あたしは咄嗟に選んだその術を解き放った。
 だがあたしの術は、ヴァルガーヴの暗黒球に吸い込まれ、消え去った。
 まずい。
 当たる。
 それでもうまく跳んでかわしたあたしの元に、さらなる攻撃が襲い掛かった。
 連続して放たれる球体によって、広場の自然はどんどん破壊されていった。
 それでも辛うじて生き残っているあたし。
 すでに大技どころか、小技を使う余裕さえない。
 踊るように攻撃をかわし続けるあたしを、ヴァルガーヴは嘲笑っていた。
 こんな無茶が長く続くわけはない。
「……チェック・メイトだ」
 左手の球体であたしの足を止めたヴァルガーヴは、右手の球体をあたしに向けて撃ち放った。
 もうだめだ。
 あたしが目を瞑ろうとしたその時、眼前に一つの影が立ち塞がった。
「いけませんね」
 その声には聞き覚えがある。
「リナさんはここで死ぬような器じゃないんですよ。本当ならまだ手出しはしたくなかったんですけど、彼女を失ったしまうのは僕にとって不都合でしてね。あっ、リナさんお久しぶりです」
 漆黒のマントを身に着けた、どこか害虫を思わせる後ろ姿。
「ヴァルガーヴ。僕はここであなたを倒すことにします」
 その穏やかそうな風貌から、いと暗い本性を見抜くのは、極めて困難なことであろう。
 だが、ヴァルガーヴは知っているのだ。
「ほう。あんたが噂に聞く、獣神官ゼロスか」
「よくご存知ですね。どのようにして僕がゼロスだと気付いたのですか」
 そう。
 彼こそがゼロス。
 降魔戦争の時、一人で圧倒的な数の竜族を打ち負かした高位の魔族であり、あたしの便利な道具でもある。
「端からあんたが来るだろうと見当つけてたし、第一笑顔で登場する魔族はあんたくれえしかいねえと、ガーヴ様が言ってたぜ」
「なるほど」
 ゼロスは納得したように頷いた。
「油断のならねえやつだとも言ってたな」
 対峙した二人の間に流れる空気は一見平穏にも見えるが、そこには激しい嵐が吹き荒れていることがあたしには分かる。
 あたしは言葉を発することが出来なかった。
「正直、お前と今拳を交える気になれねえな」
「ほう。逃げるのですか?」
「あんたから見れば、そうも思えるかもな」
 言って、ヴァルガーヴは宙に舞い上がった。
「土産はちゃんと置いてってやる。……来やがれ剣よ!」
 右手を宙に翳す。
 するとそこから生まれたのは……
 眩い光。
 蒼白く輝く。
 その形状は刃に似ており、すべてのものを等しく断ち切る。
「光の剣!?」
 あたしは思わず声を上げた。
 否、上げていた。
 それはまさしく、ガウリイが持っていた光の剣ではないか。
 光の剣。古の魔獣ザナッファーを滅ぼした伝説の剣である。
 その正体は異世界の武器であるらしく、一度冥王フィブリゾの手によって、元の世界に還されたはずだが、なぜここにあるのだろうか。
「ほう。こいつを知っているか」
 輝く剣を手にしたヴァルガーヴは、全貌をあたしに晒していた。
 胸元を露出させた黒いジャケットに、白のロングパンツ。
 逞しい肉体を見せつけている。
 刃の如く鋭い顔立ち。
 黒い眼差し。
 黒い髪。
 真紅のバンダナを巻いている。
 ヴァルガーヴは剣先を天空に翳した。
「切り裂きしものゴルン・ノヴァよ。古の闇を解き放ち、その力を今ここに」
 呟いた言葉に反応し、光の剣が輝きを増した。
 光が膨れ上がってゆく。
 世界が白一色に染め上げられた。
「っ!?」
 そして大地が揺れ始める。断続的に続く振動。
 一体何が起こるのだろうか。
 だが何が起こるにしても、それを止める手立てはなさそうだ。
 光が止んだ。
 世界が元に戻った。
 ヴァルガーヴがいる。
 ゼロスもいる。
 何も変わってないように思えた。
 ……しかし、
「これは……」
 ゼロスが発す驚きの声。
 あたしは辺りを見回した。
 何も異変はないように見える……と思ったその時、大樹が傾いた。
 聖樹と呼ばれた生命力に満ちた樹は、倒れてゆく。
 それだけではない。
 倒れつつ、解け始めているのだ。
 溶解のスピードは途轍もなく速い。
 みるみる内に、大樹は跡形もなく消え去ってしまった。
「この程度のやつで満足してくれるかは分からねえがな。せいぜい楽しんでくれよ」
 ヴァルガーヴは台詞を残して消え去った。
 それと同時に、再び光が世界を覆った。
 

 ギシャアアアアアアアアアアアア


 激しい咆哮が轟く。
 身も凍るほどおぞましい叫びであった。
 そして恐るべき者が姿を見せた。
 巨大な銀の狼とでも形容すれば良いのだろうか。
 大きさは聖樹ほどあった。
 脚は六本ある。
 四足で大地を踏み締め、鋭く長い鉤爪を持った前方の二足は宙を切り裂くように動いている。
 眼は血のように紅い。
 威圧感に満たされている。
 その他は普通の狼と変わらないが、サイズがあまりに大きいため、迫力が断然違う。
「どうやらこの樹は怪物を封じ込めていたようですね。ゴルン・ノヴァの力に反応したことによって復活したという線が妥当ですかねえ」
 あたしの方に向き直ったゼロスが、場違いなほど冷静に感想を述べる。
 まあ、彼は高位の魔族だから恐くも何ともないのかも知れないけど。
 ちなみにゴルン・ノヴァというのは光の剣の正式な呼び名である。
「で、どうやって倒せば良いっていうの?」
 あたしはゼロスにきつく尋ねた。
「それはお任せします」
 ゼロスはそう言うと、微かに笑った。
「僕はヴァルガーヴを追い掛けることにしますよ」
 一瞬にして姿が掻き消える。
「こら! 待ちなさいよ」
 あたしがすでにいない相手に対し、怒鳴った時、巨狼は唸り声を上げた。
「何よ。やるっての?」
 あたしは巨狼に向き直った。
 化け物相手の戦いには慣れている。
 泣き叫ぶだけのガキとは違うのだ。
 やるしかない。


 

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28989微妙にカラーリングが違う……のかな。エモーション E-mail 2004/1/12 13:13:02
記事番号28977へのコメント

こんにちは。

ついにヴァルガーヴの登場ですね。
さすがに圧倒的と言いますか、強いですね。場所的にもそうですが、
リナとしては、やはり戦いづらいと思います。
この時点では、「多分魔族なんだろうーな」と思っているでしょうし、
そうなるといくらリナが強いといっても、人間である以上、一人では
対抗しづらいわけですから。

そして、同様にご登場のゼロス。
> 漆黒のマントを身に着けた、どこか害虫を思わせる後ろ姿。
ドラゴン・スレイヤーだろうが、腹心に次ぐ最強の魔族だろうが、
リナにかかると、こう言われてしまう辺りが(笑)
ゼロスってば、不幸(笑)でも、それがゼロスの生きる道♪

光の剣こと、ゴルン・ノヴァの復帰(?)は、確かに、ふと、アニメも
ゼロスがお届けしてくるよりは、この方が自然だったかもしれないと思いました。
ガウリイが剣なしなので少しフォローが要りますが、あっちの世界(何かやな言い方(苦笑))に
戻されたものが、きちんと理由があって再び持ち込まれるわけですし。

そして巨狼……。さしづめ、外の世界に置けるザナッファーのようなもの、でしょうか。
ザナッファーよりは、多分呪文が通じるでしょうから、倒しやすいとは思いますが、
それでも大変ですね。あまり大技も使えないでしょうし。
早くガウリイたちが気づいて、合流できると良いのですが。

それでは、続きを楽しみにしつつ、この辺で失礼します。

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28997Re:微妙にカラーリングが違う……と思いますオロシ・ハイドラント URL2004/1/13 18:32:09
記事番号28989へのコメント


>こんにちは。
こんにちは。
>
>ついにヴァルガーヴの登場ですね。
>さすがに圧倒的と言いますか、強いですね。場所的にもそうですが、
>リナとしては、やはり戦いづらいと思います。
>この時点では、「多分魔族なんだろうーな」と思っているでしょうし、
>そうなるといくらリナが強いといっても、人間である以上、一人では
>対抗しづらいわけですから。
多分アニメよりは弱くなっていると思いますけど、それでも相当強いです。
少なくとも中級魔族以上のレベルですから、リナ単独では勝てる相手ではないでしょう。
>
>そして、同様にご登場のゼロス。
>> 漆黒のマントを身に着けた、どこか害虫を思わせる後ろ姿。
>ドラゴン・スレイヤーだろうが、腹心に次ぐ最強の魔族だろうが、
>リナにかかると、こう言われてしまう辺りが(笑)
>ゼロスってば、不幸(笑)でも、それがゼロスの生きる道♪
……アニメや原作の続きとして読むと、何か忠犬って感じが……。
>
>光の剣こと、ゴルン・ノヴァの復帰(?)は、確かに、ふと、アニメも
>ゼロスがお届けしてくるよりは、この方が自然だったかもしれないと思いました。
>ガウリイが剣なしなので少しフォローが要りますが、あっちの世界(何かやな言い方(苦笑))に
>戻されたものが、きちんと理由があって再び持ち込まれるわけですし。
光の剣呼び戻しは、原作の続きとしてTRY書こうと思った時に真っ先に思いついていたりします。
他にも五つの武器に関しての所在地や設定などはアニメと大分変わっています(単にプロットの都合上変更を余儀なくされただけですけど)。

>
>そして巨狼……。さしづめ、外の世界に置けるザナッファーのようなもの、でしょうか。
>ザナッファーよりは、多分呪文が通じるでしょうから、倒しやすいとは思いますが、
>それでも大変ですね。あまり大技も使えないでしょうし。
>早くガウリイたちが気づいて、合流できると良いのですが。
確かにザナッファーのような存在です。次回五話では、実際にリナがこの怪物とザナッファーと比較していますし。
巨狼との戦いは、結構派手なものになったと思っています。……作品全体で一番派手なシーンだったらどうしようと危惧さえしていますし。
>
>それでは、続きを楽しみにしつつ、この辺で失礼します。
では、ご感想どうもありがとうございました。

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28999スレイヤーズTRYノベル:五話:紅蓮の朝オロシ・ハイドラント URL2004/1/13 19:24:55
記事番号28956へのコメント

 5:紅蓮の朝


 巨狼の顎門が開く。
 激しい熱気が伝わって来る。
「氷の槍(アイシクル・ランス)!」
 あたしの放った呪文と、巨狼の吐いた紅蓮の焔とはぶつかり合い、相殺した……はずだった。
 だが実際、あたしの術は焔と二方向に分断したのみであり、あたしは助かったものの、辺りの地面が燃え上がった。
 熱気が辺りを包む。
 このままではあたしはもちろん、街の人々も危ない。
 竜破斬のような強烈な破壊呪文を使えば倒せると思うのだが、街中で使えるような術ではない。
 ならば、強烈な単体攻撃呪文で倒すのみ。
 あたしは呪文を唱え始めた。
 巨狼は続けて焔を吐くことが出来ないらしく、あたしを見定めて、前足での直接攻撃を仕掛けて来た。
 鋭い爪はあたしに向かって襲い掛かるが、呪文を終える方が早い。
「黒妖斬(ブラスト・アッシュ)!」
 命あるもの、意志あるものを攻撃する強力な呪文である。
 また発動場所を自由に定めることが出来る。
 場所は当然、あたしを襲う前足に向けて。
 それと同時にあたしは背後へ跳び、続けて呪文を唱え始める。
 黒妖斬が発動し、黒い闇が現出する。
 それは巨狼の前足の一方を包み込んだ。
 しかしダメージは全くなく、巨狼は多少驚いたのみであった。
「翔封界(レイ・ウィング)!」
 それでも黒妖斬のお陰で攻撃が停止し、風の結界を纏ったあたしはいったん空中に、避難することが出来た。
 爪が再び襲い掛かるが、難なくかわした。
 あたしは中央美術館の屋根まで逃げる。
 金色の女神像がある場所だ。
 巨狼は再び焔を吐いたようだ。
 熱気がここまで伝わって来る。
「覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)!」
 あたしは遠方から、強力な攻撃呪文を解き放つ。
 蒼白い雷撃が降り注いだ。
 巨狼が叫びを上げる。
 しかしダメージ自体はそれほどでもなさそうで、怒気を膨らませ、かえって活動を活発にしてしまったようだった。
 夜明けの街は今、激しい混乱に包まれている。
 この事態に気付いた人々は、完全にパニックを起こしている。
 そういえばガウリイ達は無事だろうか。
 あたしがそんな心配をしていた時、巨狼があたしの姿を捉えたことに気が付いた。
 真紅の眼があたしを威圧している。
 すでに焔の息が吐かれていた。
 あたしは慌てて呪文を放とうとするが、そのための僅かな時間さえ与えてくれない。
 まずいと思ったその瞬間に、
「氷の槍(アイシクル・ランス)」
 氷の槍が焔を貫いた。
 驚きが思考を占め、安堵はそれからゆっくりとやって来る。
 巨狼はあたしの方へと向かって来る。
 街は以前パニック状態だ。
「大丈夫ですか。インバースさん」
「ラファエル!」
 あたしの危機を救ったのは、黒衣の魔道士であった。
 振り向いたあたしの眼には、ラファエル、フィリア、ガウリイの三人が映った。
 彼らはちょうど屋根に着地するところだったので、つまりラファエルは空中で呪文を唱えたということになる。
「一体、あいつは何なんだ?」
 ガウリイが訊いて来る。
 恐らく寝起きだというのに、随分冷静な質問だ。
 クラゲ頭のくせに……。
「さあね。ただ簡単に倒せる相手じゃないわ」
「そうですか?」
 それに対し、異議を申し出たのはラファエルであった。
「ら、ラファエルさんの言う通りです。こ、この程度の相手、簡単に倒してくれなければ困ります」
 フィリアもラファエルに加勢したようだ。
 ただし、身体は震えていたが。
「でも、どうやって倒しゃあ良いのよ」
「簡単です。竜破斬で吹き飛ばすのです。何なら、わたくしが囮になっても構いませんし」
 ラファエルは平然とそう言った。
「冗談は止めてよね。それじゃあ街に犠牲が出るじゃない。それにあんたも巻き添え喰らう可能性だってあるのよ」
「大丈夫です。前者については多少の犠牲は止む終えないという言葉がありますし、後者については問題外、わたくしは簡単にはやられません。もっとも冗談であることには変わりありませんけど」
「あのねえ!」
「あの……そんな争いをしている場合ではないと思いますが」
 フィリアにそう言われた瞬間、あたしは気付いた。
 巨狼の爪が今、この美術館を破壊せんとしていることを。
「翔封界(レイ・ウィング)!」「翔封界(レイ・ウィング)」
 あたしとラファエルは、同時にその呪文を唱えた。
 あたしの生み出した風の結界はガウリイを包み、ラファエルが生み出したものはフィリアを包んだ。
 この呪文、頑丈な風の結界を作り出すと同時に、その結界を中身ごと高速移動させることの出来る呪文なのだが、その中身が一人ではなく二人である場合、速度は半減する。
 それでも宙に足場を確保することだけは出来た。
 巨狼はさらに攻撃を仕掛けてくるが、あたし達は巧みな空中運動でそれをかわした。
 あたし達は何度も巨狼の爪と焔をかわしていった。
 だがこれからどうすれば良い。
 逃げてばかりでは疲れる一方だし、ダメージを与えることも出来ない。
 あたしが思考を巡らせている時、ラファエルが、
「しばらくあれを惹きつけていてください。お願いします」
 とあたしに向けて言った。
 彼には何かの策があるのかも知れない。
 竜破斬級の呪文であたしもろともぶっとばすというものでないことを信じながらも、あたしは彼の言葉に従うことにした。
 ラファエルとフィリアは、少し離れた位置まで飛んでいった。
 速度は半減すると言っても、普通に走るくらいのスピードは充分に出る。
 あたしは巨狼の方へ突っ込んだ。
 それには少し驚いたみたいで、巨狼は一瞬怯んだ。
 それでもすぐに焔を吐いて来たので、あたしは下へ逃げた。
 この呪文、高度を下げれば速度が上がるシステムになっている。
 当然その逆も然りだ。
 熱気が伝わって来る。
 風の結界もあったため、それだけで終わったが、もしも直撃していたら命はなかっただろう。
 巨狼はまた爪の一撃を放って来た。
 あたしがそのワンパターンな攻撃をかわしたその時、巨狼が跳んだ。
 六本足の凶獣は、激しい突進を始めたのだ。
 あたしは紙一重でそれを避けることが出来たが、巨狼は猪突猛進といかず、素早く引き返して再び襲い掛かって来た。
 まさかこんな動きが出来たとは。
 激しい爪の一撃が、加速をつけて襲い掛かって来る。
 どうにか直撃は避けたのだが、風の結界の一部に爪が掠り、結界は砕け散った。
 風の結界の喪失は、すなわち浮遊手段の喪失に繋がる。
 あたしとガウリイは自由落下を始めた。
「浮遊(レビテーション)!」
 咄嗟に浮遊呪文を唱えつつ、ラファエルのいる方をちらりと覗く。
 離れた位置にいるラファエルは、何かの呪文を唱えているようだ。
 その隅で、フィリアが心配そうにあたし達を見詰めている。
 何か言葉を発しているのかも知れないが、それを聞き取る余裕はなかった。
 あたし達は一度使った浮遊の呪文を解除し、地上に無事降り立った。
 降りた場所は低い建物の屋根の上である。
 しかし安堵も束の間、上空から爪が降って来る。
 戦い慣れたあたし達でも、それをかわす時には、体勢を崩してしまった。
 屋根の一部が陥没し、建物が瓦解する。
 爪の攻撃によって不安定になった足場から飛び降りたあたし達に迫ろうとするのは、パニックに陥った人々である。
 さらに上空には巨狼の顎門が見える。
 まずい、焔を吐かれてしまう。
 もう終わりだ。
 巨狼の口から熱気が伝わり、今、紅蓮の焔が放たれようとしている。
 その時、立ち上がったのはガウリイであった。
 妖斬剣を鞘から抜き放ち、怪物へと立ち向かおうと人込みを掻き分け、駆け出してゆく。
 ガウリイの剣ならば、この狼を倒せるかも知れない。
 これには気付いていなかったわけではないが、試す暇もあまりなかったし、第一かなり危険なので、この方法は避けようと考えていたのだ。
 だが、焔が放たれる方がずっと早い。
 ガウリイが鞘から剣を抜いた時点で、すでに放たれていたのだ。
 このままではガウリイもあたしも黒焦げだ。
 灼熱の光が世界を包む。
 人々が絶叫を上げ、あたしは唇を噛んだ。
 だが、ガウリイは諦めなかった。
「どりゃあああああっ!」
 彼は叫ぶ。焔に向かって剣を繰り出した。
 だがだめだ。
 確かに、すべてのものを切り裂くこの剣ならば、あの焔も切り裂くことが出来るかも知れないが、そうすれば焔は分離し、結局あたしと街の人々は焼け死ぬだろう。それに、焔を切り裂いている隙に爪の一撃を受ければ、あのガウリイとて充分に危ない。
 別にこのあたしも黙って見ていたわけではない。
「氷の矢(フリーズ・アロー)!」
 冷気呪文を正面に向けて放っていた。
 あたしと少しでも多くの街の人々を守るため。
 正直、間に合うかどうか微妙だったが、まだ生きていることから推測すると無事放たれたらしい。
 街の一角は炎上し、犠牲も多数出たが、あたしとガウリイは助かったようだ。
 さて、一時の窮地からは逃れたようだと安堵し、あたしは次なる呪文を唱え始めた。
「大地の底に眠り在る 凍える魂持ちたる覇王……」
 魔力の氷で相手を凍結させる呪文である。
「我 汝に誓う 世の最果てへの扉を開き 狂える冷気を開放させよ」
 しつこく爪があたしを襲って来たが、ガウリイがうまく応戦してくれている。
 とはいえ、巨狼はガウリイの攻撃により傷つく様子は全くない。
 あの妖斬剣の一撃を受けて無傷とは……。
 遥か北方のカタート山脈に棲息する最強の竜族、魔王竜(ディモス・ドラゴン)の鱗を遥かに凌駕する硬度を持っているようだ。
「下がって、ガウリイ!」
 呪文が完成する寸前に、あたしはガウリイに向けて叫んだ。
 そしてガウリイが後ろへ下がったその瞬間に、あたしは魔術を解放した。
「覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス)!」
 激しい冷気が巨狼に纏わりつく。
 すぐに怪物は凍結した。
 しかしその一瞬後には氷が砕け、解放された巨狼が憤怒の叫びをあたしに浴びせた。
 効いてない。
 黒妖斬、覇王雷撃陣、覇王氷河烈……精神世界に属する魔族の力を借りた強力な黒魔術の数々を持ってさえも倒すどころか、ほとんどダメージを与えられない相手。
 これでは最強呪文である竜破斬を使っても倒せないかも知れない。
 そういえば、この街は三度の危機に見舞われたらしい。
 街の入り口でそのようなことを言っている人がいたはずだ。
 その三度の危機の内、二度目が確か怪物に襲われたためだったはず。
 もしやその怪物こそが、この巨狼のことではないだろうか。
 そうなると街一つ壊滅させかけた相手である。
 対抗した戦力がどれほどのものであるかは分からないが、あのサイラーグ・シティを一度壊滅に追い込んだ魔獣ザナッファークラスの強さを持っているのではないだろうか。
 あたしは以前にザナッファーを倒したことがあるが、その時に使用した術は、現在は使えない状態となっている。
 もしかしたら使えるかも知れないが、試している余裕はない。
 それにしても、ラファエルの呪文詠唱はまだ終わらないのだろうか。 あれから随分と長い時間が経っているのだが。
 巨狼はまた焔を吐こうとして来る。
 それに対してあたしは、氷系精霊魔術の最強呪文で迎え撃つことにした。
「……氷魔轟(ヴァイス・フリーズ)!」
 灼熱の火焔と凍てつく冷気とがぶつかり合う。
 二つの力が互いを相殺し合ったその時、その時にこそ、念願の時が訪れた。
「ラグナ・ブレス!」
 その声は強く響いた。
 強く、美しく、澄んだ一声であった。
 その声とともに、巨狼が狼狽し出す。
 その巨体が徐々に消えようとしているのだ。
 やがて魔獣は跡形もなく消え去った。
 同時に燃え盛る火柱もすべて消火された。
 そして、夜が完全に明ける。


 巨狼は文字通り、消え去った。
 ラファエルの唱えた呪文がそれをおこなったのだ。
 全く知らない呪文であった。
 相当長い詠唱を必要とする――あるいは何度も失敗するほど難しい――呪文であったのだろうが、効果は恐ろしいほど強力。
 しばらくして、ラファエルは領主を名乗る男の館に招かれることとなった。
 その領主サマも避難しようとしていた者の一人であったため、寝間着姿をしており、威厳は全くなかったが、まさか偽物ではあるまい。
 ラファエルを介して、あたし達も招待されることとなった。
 道中あたしはラファエルに尋ねた。
「さっきのあの術、何だったの?」
 するとラファエルは笑みを浮かべつつ、
「まあ精霊魔術の一種とだけ言っておきましょうか」
 精霊魔術とは、火水土風や精神属性の精霊に干渉し力を引き出すことによって使う魔術である。
 ラファエルはあの呪文がその精霊魔術だと言ったが、精霊魔術の中にあのような効果を生み出すものが存在するとは思えない。
 ともあれ、あたし達は領主の館に辿り着いた。
 館への道は街の人が教えてくれたし、目立つ建物でもあったので、迷うこともなく到着出来た。
 対面した領主は、悪い人物には見えなかった。
 白髪混じりの長髪を持つ、猛禽のような顔立ちの男は、あたし達を見るなり、迎えを送れなかったことを詫びた。
 そして、ラファエルの武勇を讃えた後、今回のことの原因について何か知らないかと訊ねて来た。
 これに対して、あたしは正直に起こったことを伝えた。
 つまりヴァルガーヴのことである。
 ヴァルガーヴの行動動機や、光の剣の存在、ゼロスの登場などの詳しい部分は省いたが、領主は信じてくれたようだ。
 驚きは、むしろあたし達の側の方が大きく、フィリアとラファエルにはこっ酷く叱られた。
 領主はあの巨狼のことについても教えてくれた。
 あれはフェンリルという魔獣であり、フェンリル馬車のフェンリルの名前の由来でもあるのだという。
 あたしの予想通り、二度目にこの街を壊滅の危機に追い込んだやつであった。
 フェンリルはとある勇者の力によって聖樹に封印させられていたのだという。
 そして封印には、現在博物館に飾られている剣――あのガウリイが欲しがっていた――を用いたと言われているらしい。
 このことは一般人には知られていないため、これからも混乱や動揺は続くと思うが、それでもどうにかやっていきたいと思うと領主は言い、別れ際、あたし達に僅かだが謝礼を支払ってくれた。
 やはり良い人だ。
 結局、被害は中心部のみであり、あたし達の馬車は無事なようだ。
 あたし達の泊まっていた宿も微妙なところでどうにか被害を免れていた。
 街の人達は、あたし達のこと――というよりもラファエルのこと――を英雄視し始めているようで、街を出る途中には「英雄万歳」との声があちこちから聞こえて来た。
 ああ、本当に良い街である。
 彼らはこれから苦労せねばならないというのに。
「ところで……あの戦いの時、全く役立たずだったフィリアさん。ちょっと良いかしら?」
 賞賛と歓迎の嵐が吹く中、あたしはフィリアに声を掛ける。
「何ですの? 逃げてばっかりの弱虫リナさん」
「役立たずフィリアさんは、今回のことをどのようにお考えですの?」
「それはどういう意味でしょうか。弱虫リナさん?」
「つまり、あの怪物やヴァルガーヴと名乗る謎の男が、火竜王の病と果たして関係があるのかということですよね。ね、インバースさん」
「なあ、そんなことより腹減らないか」
「……そうですね。わたくしも少々疲れてしまいましたから」
「あっ、良いわね。ねえラファエルでもフィリアでも良いから、どっかに良いお店知らない? 朝から開いてて、高くて美味しいとこ」
「財布の事情も考えてください!」
 ともあれ、あたし達の旅は続く。

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29000スレイヤーズTRYノベル:六話:ゼルガディスの手記1(再会、旅立ち)オロシ・ハイドラント URL2004/1/13 20:22:51
記事番号28956へのコメント

 「(前略)なかには<アフリカノ果テ>と書いてあるのさえあります。あるとき、この記号のついている書物を貸し出してくれと言うと何という書物であったのか題名は忘れましたが、とにかくその名前に惹かれたのです。すると、文書館長のマラキーアが私に言いました。その記号がついている本は散逸してしまった、と(後略)」
 引用:ウンベルト・エーコ「薔薇の名前(上)」(181項)


 「落盤がなくても、元来、≪文書庫≫へは誰も入れません。あの部屋には、聖ヴリュコラカス師が定めた厳しい規則によって、文書庫長の手で厳重に管理され、修道院長以下、誰であろうと五十年に一度しか立ち入れないことになっているのです」
 引用:二階堂黎人「聖アウスラ修道院の惨劇」(44〜45項)


(引用の誤りは、すべて私の責任です)


 6:ゼルガディスの手記1(再会、旅立ち)


 俺がこの旅に出ることになったのは、偶然の仕業だと言っても嘘にはならないはずだ。
 かつて赤法師レゾという邪悪な僧侶の手によって、石人形(ロック・ゴーレム)や邪妖精(ブロウ・デーモン)と無理矢理合成させられ、異形の身体となってしまった俺は、元の人間の姿を取り戻すための旅に出ていた。
 それは当てのない旅だった。
 変形した肉体を元に戻す方法など、もしや世界のどこにも存在しないのかも知れないのだ。
 それでも俺は、どんな微かな情報も逃さず、あらゆる噂を信じ、どれほど薄い可能性にも望みを託した。
 旅には当然危険がつき纏う。
 それでも俺は乗り越えていった。
 そろそろ本題に入ろう。
 俺は一つの情報を得て、セイルーンに向かった時のことであった。
 その情報とは、遥か昔にとある魔道士が記した魔道書についてのものである。
 その書には、もしや合成生物(キメラ)の融合を解く術が書かれているかも知れない。
 魔道書はセイルーン辺境の、深い森の中にある洞窟に隠されているらしい。
 その地へ俺は向かったのだが、見事情報は虚偽のものであった。
 隠されていたのは魔道書ではなく、惨劇や殺人などという物騒な単語が含まれた題名の小説の山であった。
 いい加減疲労も極地に達した。
 俺はセイルーンの聖王都セイルーン・シティへいき、うらぶれた酒場で飲み明かすことに決めた。
 なぜセイルーン・シティまでいったのかを、ここで説明する気はない。
 何となくとしておく。
 田舎と違って大都会は、この異形の身体も多少は受け入れてくれる。
 飲み続けている内に、親しい話し相手が何人か出来た。
 その中に一人、王宮騎士を名乗る三十ほどの男がいたのだが、その男に出会った十日ほど後、俺は運命の再会を果たすこととなった。
 あの騎士が宮廷に噂を流したのだろうか。
 おかしな姿の男を見掛けたとでも。
 その辺りの事実はどうでも良かったので聞いていないが、あいつは俺の元へやって来た。
 数年前に別れた旅の仲間、セイルーン第二王女であるアメリア・ウィル・テスラ・セイルーンは。
「ゼルガディスさん。お久しぶりです」
 その言葉は、過去の光景を鮮明に蘇らせた。
 俺とアメリア、さらに他の仲間二人との命賭けの冒険。
 恐ろしい魔族や怪物達との激戦も、今では良き思い出だ。
 思えば最近の冒険は、あの時ほど無茶なものではない。
 ともかくアメリアと再会を果たしたわけだが、彼女は大きく変わっていたように思える。
 外見にも充分な変化が起こっている――当然のことだが――が、内から感じさせるものは、あの時の面影を残しながらも、全く違っている。
 何もかもが同じであるはずなのに、細かい部分にどうしても王女としての気品を見出してしまう。
 以前はそうではなかったのだが。
 さらにそれだけではない。
 どこか神聖なる雰囲気を感じてしまった。
 気のせいだろうか。
 いや、彼女は巫女でもあるのだから、その霊性が表面に現われるようになったためであろう。
 アメリアは俺の姿が元に戻っていないことに多少失望を覚えたようだが、それを必死で隠そうとしていた。
 また俺の旅についての話題は避けていた。
 結果的にあまり会話ははかどらなかったが、会えただけでも良しとしよう。
 そういえばこの時、少し俺の中にある気力の泉が再び湧き出して来た。
 もう少ししたら旅を再会しようと俺は決意した。
 それから数日後の話になる。
 この日がその旅の始まりの日であった。
 黄昏時、アメリアが再び顔を見せた。
 その時のアメリアはいつもと多少違って見えたのだが、それが夕闇のせいではないことはすぐに分かった。
「護衛の依頼を引き受けてもらえないでしょうか」
 アメリアは俺に向かって頭を下げた。
 その真摯たる態度には驚きを禁じえなかったが、俺はすぐに引き受けることにした。
 依頼内容も、引き受けた後に聞くと言った。
 どれほど危険なものでも、決して断りはしないと。
 依頼内容は以下のようなものであった。
 アメリアを大陸南部、つまり結界の外の世界にある火竜王の神殿まで送ることである。
 内容の割に、報酬はかなり高い。
 これは極めて条件の良い仕事である。
 また、俺は火竜王の神殿までいく理由を聞いてみたのだが、その返答は奇妙なものであった。
 いかなければならない。
 分からないけど、どうしてもいけなければならないと、そのように言っていた。
 まあ良いだろう。
 俺は出発に備えることにした。


 外の世界へゆくには、陸路と海路の二つの方法がある。
 陸路が断然速いのだが、金儲け目当ての権力者が建てた関所があり、多額の通行料を払わねばならない。
 セイルーンやエルメキアなどの国は、関所をなくすよう積極的に行動しているようだが、後数年はこのままだろう。
 迂回するにしても、西側は海、東側は絶望的な広さを誇る滅びの砂漠があるため普通の人間にはこの関所を通過するしか南下する手立てがないのだ。
 セイルーンの王族にとっては、この関所を簡単に通過するために必要な金額などはした金に過ぎないのだが、それでもアメリアは海路を選んだ。
 理由は単純、海から海を見たいからだそうだ。
 俺達は馬車も積み込める船を借りた。
 豪勢なものである。
 なるほど、そういえばそうだ。
 同じ海路にしても、船を借用した場合は陸路以上の金額あ必要になる。
 アメリアの護衛は俺の他にも二人いた。
 その二人は王宮騎士で、その片方が俺の飲み仲間だった男であった。
 ちなみにグルーガという名前をしており、豪快な顔立ちで、強靭な肉体と口周りの髭が印象的な男である。
 もう一人の騎士は、オルテウスという二十半ばほどの美青年だ。
 海のような瞳や亜麻色の長髪は同姓の俺にとっても魅力的に思えたほどだ。
 中身は少々風変わりだったが。
 この二人は、王宮騎士でも最も腕の立つもの達で、仲も良いらしい。
 グルーガはもちろん、オルテウスも好感の持てる男であった。
 俺の異形の姿を、実はコスプレではないかと言った時は怒りを覚えたものだが、グルーガに注意されて以来は、そんな言葉は一切発していない。
 結局、航海は無事に終わることとなる。
 拍子抜けするほど何の事件もなく、非常に退屈な日々であった。
 船は十日掛けて、アウスベリー王国領に到着した。
 火竜王の神殿へはまず東へゆき、さらに南へいったところにあるという。
 直接、南東に進めないのは、その場所に巨大な山脈が存在するからだ。
 ともあれ、俺達の旅はこれからが真の始まりだ。


 <@><@><@><@><@><@><@><@><@><@>


 風神通信第二号


今日のあとがき

 音楽は素晴らしいと思う。
 メロディから様々なことが想像出来てしまう。
 言葉では伝え難いことをうまく伝えているような気がする。
 音楽から伝わって来るものを文章にして書きたい。
 それによって音楽を表現出来るように書けたらもっと良い。
 そんなことは無理かも知れないが、失敗しても死ぬわけじゃないから挑戦したい。
 努力が足りないなら努力すれば良い。
 文才がないなんて言葉は多分言い訳だ。才能の有無なんて、書いて書いて書きまくった人にしか分からないのだと思う。……多分だけど。
 だからやってみたい。
 ……でもどうやれば良いのだろう(おい)。
 そういえば最近、作曲にも挑戦してます。楽譜さえ書けない癖に。


浮かんで来たフレーズ


 自分の強さなんてものは
 戦った後に決まるもの
 翼を捨てた鳥なんて
 そもそも空には似合わない


 頭の中ではメロディも出来ているけど、伝えられない……。


今日のキャラクタ


 リナ
 無茶苦茶な性格をしているように見えますが、結構人間的なんですよね。
 自分に正直で、金に弱く、得にならないことはやらないような印象なんですが、正義感も結構強くて、私としては、ゴクドー君のようなキャラより人間的に見えます。
 当作では、その私から見た人間らしさを強調してみたいと思いました。
 でもうまく書けているかは全く分かりません。これはもう、読者側に判断してもらうしかないです。
 ちなみに当作では原作同様、記述者の立場にある彼女ですが、探偵のような働きもしてくれるかと思います。


 次回は「フィリア」の予定。マイベストキャラクタ!


これで第一期終了どぁうわあああああああああああ!!!


 というわけで、次回の投稿までには間を開けると思います。
 その間に書き進めたり、セコセコと推敲作業したりします。
 ちなみに第一期から八期については以下のようになっています。

 第一期:「旅の始まり」編:アニメコミック一巻(1話から4話)現在終了!
 第二期:「闇の襲来」編:アニメコミック二巻前半(5話から6話):短め
 第三期:「白の聖域」編:アニメコミック二巻後半(7話から8話):意外と長い
 第四期:「地獄の法廷」編:アニメコミック三巻前半(9話から12話)かなり長い
 第五期:「終焉の誕生」編:アニメコミック三巻後半(13話から14話):かなり短め
 第六期:「聖者の迷宮」編:オリジナル:現在はこの途中。かなり長くなりそうな上に筆が止まってる
 第七期:「破滅への刻み」編:アニメコミック五巻前半(21話から23話):短い予定だけど、書いてみると長くなりそうな気が
 第八期:「最後の祈り」編:アニメコミック五巻後半(24話から26話):どれだけのサイズになるか全く不明


 元々不注意な性質のため、色々と間違いを犯すかも知れませんが、これからも「スレイヤーズTRYノベル」をよろしくお願いします。
 

 風神通信第二号(終)

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29010ゼルサイドも始動ですね。エモーション E-mail 2004/1/14 22:18:12
記事番号29000へのコメント

こんばんは。

とりあえず、一期終了なのですね。ゼルサイドはプロローグ開始、という感じですが。

巨狼との戦いは、相手が相手だけに、本当に派手ですね。
リナの呪文があまり効かない相手、というのも驚きです。タリスマンを失って、
かなり強力なものは使えなくなったこともありますが。
それにしても、この辺りのラファエルさんの言葉は、さりげなく、
でも、とんでもないですね。

>「簡単です。竜破斬で吹き飛ばすのです。何なら、わたくしが囮になっても構いませんし」
> ラファエルは平然とそう言った。
>「冗談は止めてよね。それじゃあ街に犠牲が出るじゃない。それにあんたも巻き添え喰らう可能性だってあるのよ」
>「大丈夫です。前者については多少の犠牲は止む終えないという言葉がありますし、後者については問題外、わたくしは簡単にはやられません。もっとも冗談であることには変わりありませんけど」

本当に冗談でこの手の発言をしたのかどうかはともかく、さらりと「多少の犠牲は
仕方がない」と言えてしまう辺り、フレンドリーではあっても、気を許しては、
いけない相手のような気がします。
巨狼ことフェンリル。ふと、あれは自然のものなのか、誰かがつくったものなのか、
どちらなのだろうと思いました。どちらにしても、人の手には余る存在のようですが。
また、ラストで何気に嫌味合戦しているリナとフィリアが、面白かったです。

6話はゼルの手記。ゼルが書いたら、本当にこんな感じだろうなと思う文章でした。
ふとしたことから知り合った相手を通じて、再会したゼルとアメリア。
成長したアメリアの変化に、微妙に戸惑っているゼルが、らしくていいです。
アメリアの依頼で、火竜王の神殿を目指す事になったゼル。
ここでリナたちと合流するんですね。
火竜王の事が、アメリアに神託で降りたのですね。でも、内容が内容だけに、
迂闊に話せないので、アメリアもちょっと辛いかもしれないですね。
また、新たにご登場の王宮騎士のグルーガさんとオルテウスさんも、
どのような方々か楽しみです。

二期は、アニメ版の5〜6話をベースにするのですね。
ゼロスはまだフィリアと会っていませんし、どのような展開になっていくのでしょうか。
楽しみにお待ちしています。

こちらでは今日思いっきり雪が降りました。暖冬とは言うものの、これからは
普段どおりになるのかもしれないですね。風邪などにご注意して下さいませ。
それでは、この辺で失礼いたします。

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29018Re:ゼルサイドも始動ですね。オロシ・ハイドラント URL2004/1/15 17:28:51
記事番号29010へのコメント


>こんばんは。
こんばんは。
>
>とりあえず、一期終了なのですね。ゼルサイドはプロローグ開始、という感じですが。
ゼル編の進行はかなり遅いです。
内容も短い上に、序盤に書くことがないせいで……。
でもリナ編より好きだったりするんですが……。
>
>巨狼との戦いは、相手が相手だけに、本当に派手ですね。
ありがとうございます。
こういう大きな戦いは、あまり書いたことがないため拙いかも知れませんが、派手さだけはあると思っていましたから。
今後に待つヴァルガーヴ戦より多分派手です。
でも、ダーク・スター戦なら越えられるかも(内容白紙ですが)。
>リナの呪文があまり効かない相手、というのも驚きです。タリスマンを失って、
>かなり強力なものは使えなくなったこともありますが。
序盤の敵とはいえ、やはり雑魚では格好がつきませんから。
それにしてもタリスマンの存在って結構大きいと思います。
戦闘シーンなどを書いてる時に「ああ、タリスマンがあれば……」とか思ったこともあったと思いますし。
>それにしても、この辺りのラファエルさんの言葉は、さりげなく、
>でも、とんでもないですね。
>
>>「簡単です。竜破斬で吹き飛ばすのです。何なら、わたくしが囮になっても構いませんし」
>> ラファエルは平然とそう言った。
>>「冗談は止めてよね。それじゃあ街に犠牲が出るじゃない。それにあんたも巻き添え喰らう可能性だってあるのよ」
>>「大丈夫です。前者については多少の犠牲は止む終えないという言葉がありますし、後者については問題外、わたくしは簡単にはやられません。もっとも冗談であることには変わりありませんけど」
>
>本当に冗談でこの手の発言をしたのかどうかはともかく、さらりと「多少の犠牲は
>仕方がない」と言えてしまう辺り、フレンドリーではあっても、気を許しては、
>いけない相手のような気がします。
確かにそうですね。
「地道に戦うのが面倒臭い」という考えで言ったならモロ危険人物ですし。
「どうせ竜破斬でぶっ飛ばしても、時間掛けて殺しても犠牲者の数はあんまり変わらないだろう」という考えで言ったのだとしても、危ない人か相当の冷血漢ということになるでしょうし。

……でも、リナもそういうことを言ったことあるような気が。
>巨狼ことフェンリル。ふと、あれは自然のものなのか、誰かがつくったものなのか、
>どちらなのだろうと思いました。どちらにしても、人の手には余る存在のようですが。
ザナッファーも自然種ではなかったですしね。
どういう存在なのか明かされるかは、それを説明するスペースがあれば作中することになると思います。
>また、ラストで何気に嫌味合戦しているリナとフィリアが、面白かったです。
……ここは笑いながら書いていたシーンだったりします。私も気に入っています。
>
>6話はゼルの手記。ゼルが書いたら、本当にこんな感じだろうなと思う文章でした。
何か風になったような気持ち(謎)で書きました。
ゼル書くのに慣れているせいもあって、結構雰囲気出せたかなあと思っています。
>ふとしたことから知り合った相手を通じて、再会したゼルとアメリア。
>成長したアメリアの変化に、微妙に戸惑っているゼルが、らしくていいです。
戸惑い方もゼルらしい?
いつもは暗いゼルばかり書いていた私ですが、今度は結構(色んな意味で)明るいゼルを出すことが出来ると思います。
>アメリアの依頼で、火竜王の神殿を目指す事になったゼル。
>ここでリナたちと合流するんですね。
そうですが、合流はかなり後になるかと思います。
ゼルサイド用のオリジナルストーリーも結構長いですし
>火竜王の事が、アメリアに神託で降りたのですね。でも、内容が内容だけに、
>迂闊に話せないので、アメリアもちょっと辛いかもしれないですね。
いえ、アメリアも病については知らされていないです。
神殿に辿り着いて初めて知ることになり、驚かされるという風になっています。
>また、新たにご登場の王宮騎士のグルーガさんとオルテウスさんも、
>どのような方々か楽しみです。
グルーガはともかく、オルテウスの方はこの話全体でも一二を争うくらいの変わり者です。
さすがに某銀髪若執事(笑)ほどではありませんけど……。
>
>二期は、アニメ版の5〜6話をベースにするのですね。
>ゼロスはまだフィリアと会っていませんし、どのような展開になっていくのでしょうか。
>楽しみにお待ちしています。
すみません。ゼロスとフィリアは会えないかも知れません。どうもプロットを複雑に造り過ぎたせいで、思い通りにキャラを動かすことが出来なくなりまして……。
また5〜6話とは全然違った話になります。ある意味ベースにしていると言えばそうですが。

>
>こちらでは今日思いっきり雪が降りました。暖冬とは言うものの、これからは
>普段どおりになるのかもしれないですね。風邪などにご注意して下さいませ。
私のところでも雪が降っていました。今日も降っていますし。
そちらこそ、お気をつけくださいまし。
>それでは、この辺で失礼いたします。
ご感想本当にどうもありがとうございました。

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