◆−魔が降る時−夜宵 吹雪 (2003/10/22 19:28:00) No.27553
 ┗Re:魔が降る時−雪月 (2003/10/24 13:39:48) No.27590
  ┗ありがとですvv−夜宵 吹雪 (2003/10/24 17:42:05) No.27598


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27553魔が降る時夜宵 吹雪 E-mail 2003/10/22 19:28:00





   魔が降る時  ――赤い闇に呑まれて



運命とか、使命とか、宿命とか。
そんな物には流されず、生きてきたと信じていた。
今までも、これからも。

――――自由を望んだ賢者




そこには、ただ荒野が広がるばかりだった。
佇むのは一つの影。
いや、佇んでいたモノなら文字通り腐るほどあった。


―――――血の気のない屍


鉄にも似た血の匂いが立ちこめ、腐敗臭の漂う遺体。
地面に突き刺さった錆び付いた剣が、ここが激戦区ということを物語っていた。
その中を一人の男がいた。
この場にいるのが場違いとすら思える、美しい顔立ち。流れるような金の髪に、薄いブルーの瞳。
白く細い指に、豪奢なマントを羽織っている。
服装だけを見れば、魔道師。しかし、存在感が常人とは違いはるかに上回っていた。
その場に人がいれば、目を向けずにはいられない―――――
そんな存在だった。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
彼は、戦場を彷徨っていた。
何を求めるのでなく、戦うのでもなく。
ただ、彷徨っていた。
まるで、迷子の子供のように。

―――来たね

頭に幼いあどけなさを残した子供の声が響く。思念波【テレパシー】にも似たそれを、彼は驚いた様子を見せず、後ろへと振り返った。
予想通り、そこには先程まではいない人物がいた。
少年だ。聞こえた声と同じ、女の子に見まごうかの少年。
「ハジメマシテ、と言うべきかな。」
「・・・・初めまして、ですよ。私が君と会うのは一応始めてですからね。」
少年の言葉に、彼は苦笑交じりに言う。
「ふぅん、貴方が僕の探しモノなのかな。わかる?」
純粋とすら思える素振りで、少年は愛らしく聞いた。
それに彼は苦笑を浮かべて答えた。
「私は君じゃないです。だから、君の考えはわからない。でも、推測はいくらでも出来る。」
まるで、幼い子供を諭すような口調だ。いや、実際に諭しているつもりなのかもしれない。
「じゃあ、僕の望みはわかるの?」
その言葉に、彼は一瞬躊躇する。だがすぐに、困ったような笑みを浮かべた。
「・・・・多分。でも、その望みが叶えられるのかは・・・・わかりません。」
「ならば、僕はあなたの名前を呼ぼう。」
少年はじっと彼に目を見た。真っ直ぐな、突き刺すような視線で。


「目を覚ましてください。赤眼の魔王【ルビーアイ】様。」


「その名前は本人にどうぞ。私の名前は・・・・・。」
「レイ=マグナス。
 竜破斬【ドラグ・スレイブ】と暴爆呪【ブラスト・ボム】を編み出した・・・・
 ・・・・現存する魔道師の中で最も強大な魔法許容量【キャパソティ】を誇る。
 それが僕の知ってるあなたのウワサだよ。」
その言葉に彼――――レイ=マグナスは苦笑を浮かべた。
「私も君を知っています。」
悪戯を思いついた子供のような笑顔で、レイは言う。
「冥王【ヘルマスター】フィブリゾ、五人の腹心の中で・・・・一番強いんでしたっけ?」
最後の疑問系にフィブリゾは苦笑を浮かべた。
「まあ、あなたにそう創られたからね。」
くすくすと、愛らしい年相応の笑みを浮かべるフィブリゾ。レイはどこか遠くを仰いだ。
「君が・・・・戦争を引き起こしたんですか?」
「そうだよ。」
何のにべもなく、フィブリゾは答えた。
この殺意と悪意の塊のような戦争の舞台を、彼が生み出したと言うのだろうか。
「全部、あなたのために用意したんだ。この血の染み入った舞台も。欺瞞と悪意に満ちた空間も。全部。」
フィブリゾの言葉にレイは答えない。
ただ、淋しげに顔をひそめる。
「目覚めてよ。そして見せてよ。黄昏よりも深い闇を。」
ゆっくりと。フィブリゾはレイの瞳へと目をやった。
青い、瞳。まるで空のような。
でも、見たいのはそんなんじゃない。
「世界を、消し去ってよ。」

見たいのは滅びる瞬間の、その生命の輝き。

「・・・・出来ません。」
「・・・・じゃあ、出来るようにさせるまでだよ。」
レイの答えに、冷淡な感情のない声で返す。しかしレイの顔に恐怖はない。
「無理です、君じゃ。君はあくまで私の覚醒が目的であって、殺すのが目的じゃない。君に私は殺せない。
 そして、私も君は倒せない。人間を捨てない限り、ね。」
「・・・・さすが魔王様だ。」
感嘆の意を隠せない、と言いたげにフィブリゾはわざとらしく肩をすくめた。
「そうまでして、人であり続けたいの?こんな醜く汚い穢れた世界でしか生きれない、ひ弱な命に。」
フィブリゾの挑発とも取れる言葉に、レイは静かに返す。
「ええ、そうです。人は汚い。そして醜い。そして愛しいんです。」
「・・・・愛しい?」
その単語に、フィブリゾは眉をひそめた。彼の口から、そんな単語が出るのは心外だったと言わんばかりに。
「私は世界を愛している。」
もう一度、はっきりと言う。
「理由なんか、ありませんよ。私は世界が愛しい、そして人も。」
「虚言だね。」
「その通りですね。否定しません。私は勝手な男です。だから、世界をとても」

「愛している。」
「憎んでいる。」

それはレイの口から発せられた言葉だった。同時に同じ口から相反する二つの単語。
それが何を意味するのか。フィブリゾはすぐに察知した。
「・・・・っ!?」
「私の中に魔がある事。それは薄々感づいていましたよ。」
遠くを眺めるような、静かな物言い。だがそれには逆らいがたい何かがあった。
「魔は私の裏。私が表なら、彼は裏。私は光なら、彼は闇。常に離れず、共に道を歩む存在。」
「気が・・付いていたと言うのか・・・・?それなのに、感づかせなかった・・・・・?」
信じられない。魔王の魂の欠片が目覚めながら、彼の意識は取り込まれていないというのか。
「勘違いをしているようなので言っておきますけど。この欠片は、私の魂、心そのもの。常に私と共にある。
 この欠片がなければ私は私になり得れないし、なければそれは私ではないんです。」
そう言って、レイはうつむいた。
「君の言う魔王は・・・・いないんです。強いて言うなら、私はその残り香。
 記憶はあります。受け入れました。彼の存在を知ったあの時から。」
「・・・・じゃあ、あなたはどうしたいの?」
フィブリゾの問いに、レイは、いや魔王は答える。
「私は世界を愛している。けれど、同時に」
「憎んでいる。」
レイの口から、また言葉が紡がれる。
「世界に行き続け、生を謳歌する事。それが人としての願い。」
「世界を滅ぼし、混沌の海に沈む。それが魔族の最大の願い。」
そして、二人は同じ口から同じ言葉を発する。

「それは平行線。決して交じり合う事は無く、決して離れる事も無い。」

だから、水竜王は人の心に魂の欠片を封印したのだろうと思う。
いつか、人の心と魔の心が交じり合う事はないから。呑み込まれる事はないと信じていたから。
けれど、それは。
「ははは・・・・っ、ははははっ!!」
耐え切れない笑みをこぼし、フィブリゾは哄笑する。
「いいね、今まで会った人間の中で僕は一番あなたが好きだよ。魔王の器にふさわしい。」
「・・・私は人らしい、けれどそれはもっとも神にも魔にも近い存在でもある。」
そして、言葉をさらに紡ぎだす。
「うつろい逝く時の流れ。その中で生き続ける人は、硝子細工よりも脆く、儚い。」
「永久の時の流れに、存在続ける我らは流される事はない。」
人は脆く、儚い。
だから。
「私は、弱い。だから」


「世界を滅ぼします。」


魔王がいた。
その瞳は血よりも赤く、美しかった。
魔王は、人の心に中に封印され、取り込まれた。

魔道師がいた。
その眼差しは、誰よりも優しかった。
魔道師は、魔王の心を宿し、世界を滅ぼすことを決意した。


そして、魔王は神に戦いを挑む。



冷たい氷に閉ざされた魔王は、静かに夢を見る
遠い過去の物語

世界を愛していた頃の自分
世界を憎んでいた頃の自分

静かに今は、夢を見よう

朽ち果てた世界、そこにも花は咲くのだろう



あとがき
突発的小説。あとがきは今回単独で私が。
えーっと、シリアスっぽくキめたいなぁ、とレイ=マグナスとフィブリゾ!
S様の復活瞬間、彼は始めから魔・・・もとい魔王の魂を持っていたことを自覚していたとゆーことで。
だったら色々と楽しいと思うんですよ(オイ)
まあ、個人的にレイ=マグナスの私のイメージは「優しいデスクワーク派の美形のあんちゃん。」
つーかいじめられキャラが好きなんです。だからS様ファンなのです(笑)
しかし、魔王。私はなれるものならなりたい職業ランクで堂々のベスト3入りしております(待て)
何かね、魔に惹かれるんです。何ででしょうねー?



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27590Re:魔が降る時雪月 URL2003/10/24 13:39:48
記事番号27553へのコメント

初めまして!!
すごいです!!素晴らしいです!!(感動
原作のレイ様がとってもかっこよくって優しい方のような気がしてきました!!(ぉぃ
フィブリゾくんの冷たい微笑とかも良いのですが・・
やはり「世界を愛しい」あたりからなんかもう・・きゃぁーー///って感じでしたvv
ほんとにすごくよかったです!(言葉は足りませんが)

これからも頑張ってください!!次の作品も楽しみにしてます!!

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27598ありがとですvv夜宵 吹雪 E-mail 2003/10/24 17:42:05
記事番号27590へのコメント


はい、初めましてvv
このような作品を見てくださって感謝感激雨霰ですvv(←古い)

あううっ!良かった!喜んでもらえた!やったよ、お母さん!(オイ)
私のレイ=マグナスさんに対するイメージはこんなんです。
基本的にいい人。それゆえに魔に逆らわなかった、流れに身を任せたとゆー人。
うー、レイさんのイメージが壊れた!という苦情を覚悟してたのですが、喜んでいただけて幸いです。
フィブリゾはひたすら子供らしくできない鬼畜な子供を(どんな子供だ)
私の書いてる作品では名前すら出てないので、せめて出してあげよう、と(笑)
台詞は・・・くっさいのが好きなモノで。
得意です。意味深台詞は(笑)

では、また書くかもしれない短編と長編でお会いで来る事を祈ってますv
それでは!


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