◆−存在する意味 その22−雫 (2003/10/2 18:42:19) No.27228
 ┗存在する意味 その23−雫 (2003/10/3 21:38:48) No.27251


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27228存在する意味 その222003/10/2 18:42:19



   存在する意味 その22

 風が吹き荒れ二人の髪が揺れた。佇む冥王・・・睨みつける火竜王。二人の間にはもうすでに戦いの空気さえ混じっていた。
                しかし・・・・・
「ふぅ・・・。」
 冥王は溜息をついて火竜王に背を向けた。火竜王は冥王を睨んだまま澄んだ声で言い放った。
「どう言うつもりだ?冥王・・・。」
「いったでしょ?・・・・・僕の勝ちだって。もうあいつ倒したから君は用無しだしね。」
 フィブリゾが楽しそうに笑う。火竜王は一歩踏み出した。

               ばちぃっ

 突然、弾かれ火竜王は驚いた。その反応に気をよくしたのか冥王は声を出して笑った。火竜王は血の流れる腕を押さえながら言った。
「勝ったとはどう言う意味だ?」
「わからないの?僕一人の勝利も大事だけど・・・、僕の勝利は魔族の勝利だからさ・・・。」
 火竜王は異変に気付いた。冥王の姿が霞んで見えるのだ。冥王は言った。
「火竜王殿、これは僕達魔族が張った結界だよ。ここから先には誰も入れないしこの中の人も外に出るのは魔族じゃないと無理かな・・・。」
「・・・・・何の為に・・・?」
 冥王は火竜王のその問いかけに答えた。
「水竜王を倒すためだよ。火竜王殿みたいな強い応援にこられると困るからね。」
 火竜王はカタートの方向を見た。ここからでも火が燃え上がるのがはっきりと見えた。あれは間違いなく赤眼の魔王の炎に違いないと火竜王は確信した。
「じゃぁね・・・。僕は手伝いに行くんだ。赤眼の魔王様のところに・・・。」
「待てっ!」
 冥王の姿が消えた。火竜王はその場に座り込んだ。








「早く・・・・早く行かないと・・・。」
――最後の部下も失ってしまう・・・!
「待ってて・・・スカイ・・・。」
 冥王はカタートに急いでいたあの場所から見えてもかなり遠いのだ。


                  「‘^U’W_っ!」


 人間では聞き取れない言葉が冥王の耳に入った。それは間違いなく魔族のものだった。そこは戦場だった・・・。戦っていたのは腹心とその部下達だけではない。
 たくさんの竜と戦う魔族たち・・・。魔族は殆どのものがこんな団体で戦うのは初めてだったのか隊形が崩れていた。神の側につく竜達が勝つのは時間の問題だろう。冥王は迷った。このままでは間に合わなくなるかもしれないが魔族の勝利も大事なのだ。
――でもいつかは滅びる奴らだから良いのかなぁ・・・。
 冥王はその場に・・・・空に立ち尽くした・・・。








 カタートに気まずい空気が流れていた。ナステイスはカルスの方を見たがカルスは俯いている。サイはナステイスに言った。
「ナステイス・・・。お前・・・そこまで言わないでも・・・。」
「サイ・・・・・こいつは嘘つきなんだ。信じろなんていわれても、大丈夫って言われてもコイツの事は信じちゃいけないんだ。」
 その三人の様子を見てスカイは黙り込んだ。カルスは言った。
「ごめん・・・・。やっぱナステイスは俺のこと嫌いになったんだ・・・。」
 顔を上げずに漏れたその声は小さくて少しかすれていた。サイはスカイの方を見て言った。
「暫く俺の相手だけしてくれないか?こいつらには時間が必要なんだ。」
「構いません。」
 スカイが承諾する。サイは服の上を脱いだ。サイがカルスに言った。
「持ってろ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「持ってろっつってんだろーがっ!」
「・・・・・・・・は・・・・・・はぃ・・・。」
 カルスがそう言って服を持つ。ナステイスは黙り込んだ。あんなに怒鳴るサイを見たことが無かった。サイは二人に背を向けため息をついた。
――あの二人には自分の弟のように後悔の無い生き方をしてもらいたい。
「行くぞ・・・。」
 サイはスカイを睨みつけた。黄金竜の蒼い瞳で・・・。





         決意をしたの その瞳で

         迷っているの 自分の為に

         戦いたいの  あの人の為に

         祈っているの 叶うかわからない夢の為に


           さぁ・・・何をしたいの?


           誰の何のために・・・・・・・



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 こんばんは、とりあえず詩が解らないですね。
 それではこんな短いのですみません。それでは・・・・

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27251存在する意味 その232003/10/3 21:38:48
記事番号27228へのコメント


   存在する意味 その23





        いつ出会った?

                   伸ばした手

            最初はとても冷たくて

     暖かくなってきたら笑みがこぼれていた。



 それは冬の事だった。ドラゴンピークにもその時は珍しく雪が積もっていた。ナステイスは一人で久々に見る雪を眺めていた。
「何百年ぶりだろう?」
 ナステイスはそう呟いた。息が少し白くなる。ナステイスは地面に降り立ち竜の姿から人の姿になった。足が雪の中に少しだけ沈む。ナステイスは歩いた。木々に雪が積もりたまに落ちる音が聞こえる。ナステイスは暫くそこに立っていた。すると声が聞こえた。
「何やってるんだ?」
 ナステイスは声のした方・・・気の上に目を向けた。少年がいた。見た目的に自分と同じ位の年頃だろう。自分と同じ黄金竜らしく、金色の髪に蒼い瞳を持っていた。ナステイスは言った。
「雪を見に来た。」
「そっか・・・。」
 ナステイスは少年を暫く見た。黄金竜の数が多いといえども自分と同じ位の年頃の奴の名前は覚えているはずである。しかし、全く見覚えが無い。
――後でサイに聞いてみるか・・・。
               どさっ
                         「ん?」
 雪の上に何かが落ちる音がした。ナステイスが見るとそれは木の上にいたはずの少年だった。ナステイスは暫く固まっていたが言った。
「おいっ!大丈夫か!?」
「うん・・。全然ヘーキ・・・大丈夫・・・。」
 少年の顔は少しだけ赤い。ナステイスは少年の額に手を当てた。少し熱い。熱があるようだ。
――黄金竜が熱出すなんて聞いたことねぇよ・・・・。
 ナステイスは一度竜になり翼を広げた。空から見るが家からはかなり遠い。ナステイスは地面に降りた。人の姿になり少年のほうを見る。少年は大分弱っているのか人の姿なのに翼が生えてきている。ナステイスは辺りを見回した。しかし特に何も見当たらない。ナステイスは少しだけ遠くを探そうとその場を離れようとした。しかし・・・・
        ぐいっ       べしゃっ
 少年にズボンのすそを握られ雪の上に倒れ込むナステイス。
「て・・・・・・・てめぇぇぇ。(てめぇの為にやってんだぞ、コラッ!)」
          「雪、見に来たんだろ?」
「ん・・・・・まぁ・・・な・・・・。」
「だったら・・・・ここで見てたら駄目なのか?」
 あまりにも場違いな問いかけに頭をかきむしるナステイス。少年に向かってナステイスは言った。
「お前の為に温かくなれる場所探しに行こうとしてんだよ!」
「俺は大丈夫だって!」
――嘘だ・・・。
 ナステイスは断定した。口調こそ健康そうだが苦しそうだし起き上がろうとはしないのだ。少年は言った。
「俺はカルス。火竜王の神殿から来たんだ。」
「そうかよ。俺はナステイス。とにかく洞窟かなんか・・・・」
「ここで行き見てたいんだ。」
 少年・・・カルスがそう言った。ナステイスが驚いた表情でカルスの方を見た。カルスは言った。
「それにさ・・・、熱あるんだったら身体、温かいから大丈夫かも・・・。」
「アホか!死ぬぞ!」
「黄金竜が熱で死ぬなんて聞いたこと無いよ。」
 ナステイスはカルスの手を握った。その手はとても冷たく白くなっていた。ナステイスは言った。
「そうだよな。黄金竜が熱出すなんて話も無いんだからな。」
 ナステイスはカルスの手に息を吹きかけた。白い息が吹きかかる。少し暖かい。カルスは少しだけ微笑んで瞳を閉じた。寝てしまったのだろうか・・・。ナステイスはカルスの笑顔を見つめた。ナステイスは溜息と共に笑みをこぼした。


           「ごめん」

                「は?」

 突然の出来事・・・。ナステイスは驚いた。カルスは完全に竜の姿になってしまったのだ。ナステイスは暫くその場に呆然と立ち尽くした。とりあえず、潰されるのは免れたらしい。
 その後・・・、二人は無事救助された。









「これが俺たちの出会いだったよな?」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
 弱々しく答えるカルス。戦いは今も終わってはいない。ナステイスは続けてカルスに言った。
「で、その後から俺たちは同じ仕事をするようになってたわけだ。でも、何回目の仕事の時だったかな・・・?俺はお前の言う『大丈夫』を信じられなくなった。」









        いつ間違えた?

            君に逢いたい

                 大丈夫?

     泣いたらいけない

               嘘つきうそつき嘘吐きウソツキ

        秋の空がそこにあったから・・・






「こんな時期に仕事かよ!?」
 怒り狂うナステイス。カルスはナステイスに向かって言った。
「初の魔族退治だしね。でも秋でよかったよ寒くないからね。」
 ナステイスはカルスの顔を見て言った。
「一つ質問。お前・・・・とっても良い竜?」
「・・・・・他の竜にはそういわれるけど・・・・・」
「虫とかとにかく何か殺した事あるか?」
 ナステイスの言葉にカルスの動きが止まる。ナステイスはカルスの顔をじっと見つめた。カルスはナステイスに言った。
「ナステイスはあるのか?」
「とりあえず前に魔族は退治したけど・・・。」
                 「俺はそう言う事無いな一度も。」
 カルスの言葉にナステイスは暫く口を閉じたがカルスの頭をクシャリと撫でた。ナステイスはカルスの顔を真正面から見据えて言った。
「だったら・・・・泣くな・・・。」
 カルスは驚いた表情をした。ナステイスはカルスのその表情を見つめた。
 沈黙の後・・・、カルスは言った。
「うん。大丈夫。」
 ナステイスはカルスから目を離さない。魔族を滅ぼす事が色んなものの醜い部分を知らないものにどれほど精神にダメージを与えるのかカルスは知らないだろう。











          信じられる?

          信じられない

          欲しいものがある?

          欲しい物は無い

          泣いて良い?

          泣いてはいけない


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 今回、カルス君とナステイスさんだけです。
 少し疲れました。それではみなさま、また後ほど(?)お会いできれば嬉しいです。

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