◆−ダークシシリアス三本立て(笑)です−じょぜ (2003/6/25 19:57:37) No.26341
 ┣ゆーとぴあ───フィリア−じょぜ (2003/6/25 19:59:52) No.26342
 ┣ゆーとぴあ───ヴァルガーヴ−じょぜ (2003/6/25 20:02:03) No.26343
 ┣ゆーとぴあ───リナ−じょぜ (2003/6/25 20:04:26) No.26344
 ┃┗Re:ゆーとぴあ───リナ−イヌひこ (2003/6/26 18:46:22) No.26352
 ┃ ┗こないだはどーも!(笑)−じょぜ (2003/6/26 20:48:54) No.26356
 ┣あとがきのようなもの−じょぜ (2003/6/25 20:11:09) No.26345
 ┃┣Re:ゆ〜とぴあ−祭 蛍詩 (2003/6/25 22:31:04) No.26347
 ┃┃┗お初です!−じょぜ (2003/6/26 20:38:28) No.26354
 ┃┗Re:あとがきのようなもの−R.オーナーシェフ (2003/6/27 15:09:09) No.26362
 ┃ ┗汝は神!−じょぜ (2003/6/27 18:16:16) No.26364
 ┣これぞ二次創作!−オロシ・ハイドラント (2003/6/27 18:15:13) No.26363
 ┃┗ありがとおおおおお!−じょぜ (2003/6/27 19:40:47) No.26369
 ┗おまけ・ゼロスのイヤミ(笑)−じょぜ (2003/7/4 01:17:54) No.26452


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26341ダークシシリアス三本立て(笑)ですじょぜ 2003/6/25 19:57:37


こんばんわ,じょぜです。
一坪さま,調子はどうですか? 早く回復されることをお祈りします。
最近は蒸し暑いですね。投稿される皆さんもお変わりないでしょうか。

またヴァルフィリです。+リナです。
しかもこないだギャグを書いといてなんなんですが(笑),タイトルどおりシリアスです。(>_<)
最初は,ヴァルとフィリアで対になる話として書いてたのですが,リナも出したほうがバランスいいようなので,そうしてみました。
全体のイメージとしてはTRYのオープニングのようになりました。

苦手な方はご注意ください。読んでいただける方,ありがとうございます。m(__)m

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26342ゆーとぴあ───フィリアじょぜ 2003/6/25 19:59:52
記事番号26341へのコメント

 ゆーとぴあ───フィリア







 そこは、彼女が彼と初めて正面から相対した場所。
 フィリアは長い長い夢から覚めたような顔で、あたりを見まわした。
 こめかみを押さえて立ち上がると、ずきずきと痛むのは頭だけでなく、身体中であることに気がついた。
(ここは───!)
 薄みどりに輝く空間。頭上には幾本もの円柱が浮かび、不思議な魔力に満ちる場所。ここはどこだろう、と思い、なんの疑問もなくするりと記憶が戻ってきた。 
 ヴァルガーヴが異界の魔王を歓迎した場所だ。それなのになぜ、私はここに、たったひとりで立ちすくんでいるのだろう。
(あれは夢だったの?)
 夢でよかったと、目覚めて胸をなでおろしたのはいつのことだったろう。あれからそんなに経っていないはずなのに、もう千年も昔のことのような気がする。フィリアは腰を落としてうずくまった。夢とうつつのあわいでみた、あれはきっと、ひとときの幻。




 ラグド・メゼギスとゴルン・ノヴァ。二つの武器をもってゲートを開かせ、ヴァルガーヴは荒れ狂う暗黒の渦の中にのみこまれていった。みずからを喜んで明け渡し、笑いながら消えていったのだ。それをただフィリアは黙って見ているしかなかった。ただヴァルガーヴの名を呼びつづけ、誰も彼を止めることはできなかった。
 ───やがてリナが、ゆっくりと、押し寄せる突風に向かって歩き出して行った。じゃあちょっとためしてみましょうか、と異界の魔王の降臨を目のあたりにしているとは思えない、落ち着いた声音で。
 すべてがまるで夢をみているようだった。アメリアは、あれは人間では制御できないってわかってるのに、と悲鳴を上げた。ゼルガディスは、世界を滅ぼそうとするものを世界を滅ぼしかねないギガ・スレイブで撃つというのか、とリナの背に向かって絶叫した。アルメイスは何も言わない。ゼロスも無言でリナのやることを見つめ、その瞳には踊るような狂気の色があった。ガウリイただひとりが、リナの名を呼びつづけ、そして───。




 それからのことはよく覚えていない。開きかけたゲートは、間一髪のところで閉じられ、その衝撃波が光の洪水となってあふれ出し──────気がつくとここ、光の柱の中、そのまさに中央にいたのだ。
 フィリアは自分がじっとりと汗をかいているのに、いまさらながら気づいた。まだ動揺から立ち直っていないからだろうか、それともここの死のような静けさの中で、なにかの音を懸命に聞き取ろうとしているからだろうか。フィリアはもう一度、顔を上げて周囲を見渡した。
 眼を疑って、思わず立ち上がった。
 ヴァルガーヴが背を向けて───その背には黒く輝く翼があった───うずくまっていた。
「あなた───」
 ヴァルガーヴはゆっくりと顔をフィリアに向けた。
 思わずフィリアは後ずさりした。恐ろしかった。
 一族のあやまちをもう一度聞かせられると思ったからではなかった。
 あのすべてを射殺しかねない剣呑な色はそこにはなかった。フィリアはおそるおそる問いかけた。
「ヴァルガーヴ、あなた、どうしてここに」
「さあな、俺にもわからん。どうやら失敗したらしい」
「失敗って───それじゃ」
 フィリアは思わず駆け寄った。ヴァルガーヴは虚ろな顔をフィリアに向けてはいたが、その瞳は彼女を見てはいなかった。
「ダークスターに取り込まれたんじゃないのね。あなたは無事だったのね? よかった。もう死んでしまったのかと───」
 フィリアは安堵のため息をついた。するとヴァルガーヴは言った。
「違う。俺は死んだ。死んでダークスターと融合した。この世界を終わらせるために。
 だが、俺自身の憎しみは異界の魔王のそれを超えてしまった。そして今の俺にはこの世界を滅ぼすためのなにかが足りない。だから待っていた、ここで」
 静かな低い声でヴァルガーヴが語りつづけるのを、フィリアは息をのんで聞いた。フィリアではなく虚空をみつめて、誰に話すともなくヴァルガーヴは話していた。
「───ここ?」
「おまえが来るのを」
「わた、し?」
 初めてヴァルガーヴはフィリアの眼を見た。フィリアはふっと微笑みかえした。信じられないことに、ヴァルガーヴも彼女に微笑みかけた。フィリアはそれが泣きたいほど、嬉しかった。
「そう、生贄を」
 ヴァルガーヴはますます優しく微笑みながら彼女の頭を引き寄せた。フィリアは自分のくちびるに彼のくちびるが触れてくるのを、夢のような心地で感じていた。夢みたい、と思った瞬間、冷水を浴びせかけられるように心は凍りついた。いいえ、これはきっと現実。これこそが、間違いなく。
「あとひとつが足りないんだ。だから協力してくれるか、お嬢さん」
 彼女の肩に顔をうずめてヴァルガーヴはささやいた。耳元がすこしくすぐったく、フィリアはそうっと彼の背中に腕をまわした。
「愛してくれと頼んだら、おまえはそうしてくれるか」
 胸が早鐘のように打つのをフィリアは抑えることができなかった。
(なんと言ったの?)
「愛するって───あなたを?」
「俺はおまえを愛してる。そう言ったらどうする?」
「そ、それは」
 心を見透かされたとフィリアは思った。ヴァルガーヴが顔を伏せているので、赤く火照る自分の顔を見られずにすんでいるのが幸いだった。
「じゃあ言い方を変えよう。俺を───救いたいと思ってるか」
「ええ───それなら、それならわかるわ。あなたの心を救いたいと思ったの、あのとき」
 リナにドラグ・スレイブを体内に撃ち込まれ、苦しみにのたうちまわるヴァルガーヴを見たとき、フィリアは初めて彼を助けたいと思った。傷口がいつまでも癒えないまま、痛みをかかえて永い時を生きてきたヴァルガーヴを抱きしめたいと。
「あなたのために何かができればと思ったの」
「なら」
 ヴァルガーヴは顔をあげてフィリアを見た。
「俺のためにおまえをくれと頼んだら?」
 懇願するような瞳にフィリアは拒むことができない。この異界の門で彼と初めて向き合ったときから、この瞳に捕らえられていたのだ。
「いいわ」
 ヴァルガーヴは満足げに笑い、右手を振りかざした。
 鈍く光る黒いドラゴンの、牙のように鋭い爪が、眼前に迫ってくる。次に起こることをフィリアは予想できなかった。無邪気な眼でそれを見つめる彼女の背中に右腕をまわして、ヴァルガーヴはひと息につらぬいた。ドラゴンの右手はフィリアの心臓を突き破り、ヴァルガーヴ自身のみぞおちのあたりに届き、軽くえぐった。
 ヴァルガーヴは、何が起こったのかわからないといったフィリアの顔を見つめた。震える手で彼女は視線を落とし、自分の身体を貫通したものに触れた。ほどなくして、ごふりと口から血があふれでてくる。
 いつもの鋭い眼が彼女を傲然とみおろしていた。あわれむようなまなざしだった。
 ───最後のひとつが足りない。
「あなたの───望みは───なに」
 フィリアは自分の身体がヴァルガーヴに抱き寄せられるのを感じた。こわれものを扱うように、ヴァルガーヴは静かに彼女をつつみこんだ。
「俺たち一族を滅ぼしたゴールド・ドラゴンの、俺が手にかける最初の生贄だ。光栄だろう?。俺のためになにかしたい? だったら俺に殺されろ。巫女の償いはおのれを犠牲として捧げること−−−そうなんだろう? おまえにふさわしい償い、ふさわしい最期、これ以上はないほどおまえに似合いの死に方だと思わねえか」
 フィリアは呟こうとしたがだめだった。くちびるを噛んで、ぶるぶると震える腕をゆっくりと伸ばしてヴァルガーヴの髪に触れようとした。その手は血に濡れていた。彼女の眼から涙がすべり落ちた。そう、私はこのために生まれた。このために巫女としてこの人のまえに現れた。やがて意識はゆっくりと遠のいていき、周りが急に暗くなる。フィリアは眼を閉じて、その優しくあたたかな暗闇に身をゆだねた──────。






「フィリア───フィリア───ほらっ起きなさいよフィリア!」
 それが合図のように、フィリアはばちっと眼を覚ました。今まで深い眠りに落ちていたとは思えないようなはっきりとした目覚めに、リナは、驚いたように黙りこんだ。
「あれ………私、寝てました?」
「ぐーすか眠ってたわよ」
「変ですね、あんまり眠ったような気がしないです……」
「赤ちゃんみたいな寝顔だったけど?」
 リナのからかいにフィリアはそうですかと答えて、のろのろと起き上がった。旅の途中、少し休憩をとろうと、大きな樹の木陰で思い思いに昼寝を始めたのだった。陽は照っていたが、もう昼下がりの陽射しになっている。
「ああ───もうこんな時間なんですね」
「ちょっと久しぶりじゃない? こんなふうにのんびり過ごすの」
 風が吹いて枝を揺らした。葉のざわめく音に、二人は空を見上げた。
「夢、みてたの?」
 リナは隣に腰を降ろした。
「ええ───そう、みたいです」
「なんか悪い夢だった?」
「いい夢───でした。少なくとも私には」
「他人がのぞいたら、ひどい夢なわけ?」
「たぶん、卒倒しますよ」
 フィリアはリナの顔をみてちょっと笑った。リナはあいまいな笑顔でそれに応えた。なんて顔してるのよ、と言いかけて、言葉をのみこんだ。
「ねえリナさん───ある人のせいで世界が滅びかけてるのに、その人に生きてて欲しいと思うのは私のわがままでしょうか」
「───誰のこと言ってんのかバレバレだっつーの」
「たぶんもう、生きてるとは思えないのに───もう一度会いたいと思うのは、きっとわがままなんですね」
 リナはごろんと寝ころんだ。木漏れ日がきらきらと眩しかったので手をかざしてみた。
「そんなことないわよ。世界と引き換えても、自分のために誰かが生きてて欲しい思うのは当たり前じゃない? まあ少なくともあたしにはそれを責める資格はないわね。誰だって一生に一度、わがままになるときってあるんじゃないの」
「───恋をしたら?」
 二人は顔をみあわせてくすりと笑った。
「説得力ありますね」
「経験者は語るってね」
「でもリナさんて、一生が何度もありません?」
「いーのよ! それが乙女の特権!」
「リナさんの、でしょ」
「あたしたちの、よ」
「私は入ってませんよね」
「なーに言ってるかなー、甘いわねェ、天才美少女魔道士のあたしと! 正義オタクで高い所大好きなアメリアと! 紅茶と鈍器集めが趣味のあんた! に決まってんでしょ」
 フィリアはリナを見おろして、あらまあ、と苦笑した。
「私は竜族ですよ」
「それがなに?」
「リナさんたちとは生きる時間が違いすぎますもの」
「竜族だっていつか死ぬ日が来るでしょ」
「それはまあ」
「あたしたちより先に死ぬってことだってあり得るわよ? 今日かもしれないし、百年先のことなのかもしれない。生きてる時間が長い短いってのは問題じゃないわ。そのときそのときのタイミングを逃したらだめってことよ。それは竜族も人間もきっと同じ」
「───じゃあ、私はきっと逃しちゃったんだと思います。だって彼はもう───」
 まあね、とリナは呟き、寝ころがったまま、でもね、と続けた。
「わかってるのは、まだ終わりが来てはいないってことだけ」
 その声は低く、そして強かった。思わず振り向くと、眩しさをふせぐように両目を手で隠したリナを見て、フィリアはため息をついた。
「あきらめるってことを知らないんですね、リナさんは」
「でなきゃ滅びを救う神託なんか、引き受けないわよ」
「言っときますけど補欠ですよ、一応ね」
「わーるかったわねっ」
「ま、スィーフィード・ナイトの選択に間違いはないって信じてますけど?」
「こっちだってねーちゃんの命令じゃなきゃ誰が承知すると思ってんの?」
 ふたたび顔をみあわせて、今度はぷっと吹き出した。
「もうすぐなんでしょ?」
 フィリアはうなずいた。リナは身体を起こし、よっと立ち上がった。
「じゃあ行きましょう。そうぐずぐずもしてらんないわ。最後の武器が本当にそこにあるなら、すぐにあいつらも嗅ぎつけるだろうし」
「そうですね」
 フィリアも立ち上がった。ガウリイたちが支度をととのえてやってくる。ぼんやりとその光景を眺めた。
 あの夢、あれはきっと私の願望。いまだに自分がどちらにいるのか区別がつかなくて、身体がやけにふわふわしている。それにしてもなんという夢だったのだろう。彼に愛される夢。彼の手で殺される夢。どちらも私の望みで、どちらもきっとヴァルガーヴは鼻で笑って拒絶するだろう夢。ゴールド・ドラゴンの私を愛することなど絶対にありえず、彼がその手で私を殺すこともありえない。けがらわしいと、ただ嫌悪するに違いないのに。


 はなっから間違った世界だった。

 間違いは正さなきゃなんねえ───そうだろう?

 おまえの手でこの世界を終わらせるんだ。

 それがおまえに出来る唯一の罪滅ぼし。


 ヴァルガーヴの言葉がひとつひとつよみがえるたびに、フィリアは耳を塞ぎたいほどの苦しさに襲われた。その言葉ひとつひとつに、容易にぬぐい去ることのできない恨みがこもっていた。
(いいえそうじゃない、私が恐れているのは)
 ゴールド・ドラゴンであることを、死ぬまでゆるさないだろうその憎悪。同族が犯した殺戮の事実ではなく、あの人が私を憎むそのまなざし。
 彼は嘘は言っていないとわかればわかるほど、その恐れは増してくる……。
 しかも───フィリアはすでに悟っていた。五つの武器の最後のひとつ、ガルヴェイラのある場所に、そのことを確信させるものが待っているのだと。今の私はきっと、ぞっとするような笑みを浮かべているに違いない。
 このうえどんな事実が待ち受けていようともう怖くはない。彼に憎まれる以上に耐えられないことなどあるはずがない。あるとしたらその憎しみを増すようなさらなる真実だけ。
 憎まれることにはそのうち慣れる。
 だから平気。私はまだ立っていられる。
 ───軽く頬を叩かれて、フィリアははっと現実に引き戻された。
 リナが苦笑を浮かべて、自分を見つめていた。
「ほら行くわよ。いつまでもぼーっとしてんじゃないわ。それに」
 リナは親指で、フィリアの目尻をぬぐった。
「ちゃんと拭きなさいよ。そんな顔ガウリイたちがみたらびっくりするわよ」
 肩をすくめてリナは励ますように笑った。
 そのとき初めて、自分が泣いていたことに、フィリアは気づいた。


 もうこれで泣くのはおしまい、いまのうちに、涙はすべて流してしまえばいい。けれどこの想い、この痛みだけは手放さない。卵のようにあたためて、私は墓まで抱いていく。茨の海を裸足で歩き、その先の永遠に至るまで。

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26343ゆーとぴあ───ヴァルガーヴじょぜ 2003/6/25 20:02:03
記事番号26341へのコメント

 ゆーとぴあ───ヴァルガーヴ






 そこは、彼が初めて不倶戴天の敵と正面から相対した場所。
 ヴァルガーヴは、長い長い夢から覚めたような顔で、あたりを見まわした。
 五つの武器を収め、その力を解放する五芒星の真ん中に彼はうずくまるようにして身体を横たえていた。
(───ここは)
 振り出しに戻るってやつか、とヴァルガーヴは力なく身体を起こした。ここがゲートで、すぐそばにラグド・メゼギスが転がっていることをなんの疑問もなく受け入れた。
 この世に闇を召喚しようとしたのはいつだったろう、ほんの一瞬前のことのようにも、もう千年も昔のような気もする。長く短いひとときのまどろみだったのだろうか。幻と現実のはざまで見たゆえなのか、この世と異界をつなぐ「門」での夢は。




 ───皮肉な話だと思わねえか?
 不気味な緑の光を放ちつづけるゲートと呼ばれる場所で、ヴァルガーヴはきっと生まれて初めてに違いないと苦く笑った。その姿にひたすら怯え、逃げまどうだけだったゴールド・ドラゴンと、こうしてただ二人きりで対峙するときがくる、などとは。
 皮肉とはまさにこれだ、とヴァルガーヴは自分の言葉にさらに冷笑を浮かべた。フィリアはその表情に身体を強張らせた。なお皮肉なことには、とヴァルガーヴは一歩を踏み出した。あの虐殺の事実などこれっぽっちも知らない子どもが相手で、今度は彼の存在が彼女を絶望の淵に叩き落とすということ。
 おまえに俺は裁けねえよ。ヴァルガーヴの言葉にフィリアはうろたえていた。血塗られたおまえらゴールド・ドラゴンの手じゃなァ?。神に仕えるものの青ざめていく顔。ヴァルガーヴは見せ物を見るように眺めた。泣き叫ぶ彼女の手をねじりあげ、もっともふさわしい償いをさせてやった。そして出現した闇を撒く者の名に恥じない凶暴な悪夢のごとき姿。
 哀れな魔王、おまえが来るのを俺はずっと待っていた。すべてを食らい尽くそうと猛り狂う飢えた獣。待ち望んだとき、闇が光を凌駕するときがついに来たのだと──────。




 ヴァルガーヴは重たげな自分の右腕を見つめた。やけに静かだった。ゲートの不安定さを示す、磁場がじりじりと火花を散らす音も、なにも聞こえない。あのときとすべてが同じなのに、静寂だけがそこにあった。
 記憶もすこしおぼろげになっていた。いくら思い返そうとしてもフィリア以外の姿を思い浮かべることができない。ガーヴの仇のリナ=インバース、魔族を代表して憎んだゼロスの姿さえも───。仇というならこれ以上の仇はいないゴールド・ドラゴンの娘の姿だけがなぜ思い浮かぶのだろう。
(どうしてあのときに俺はあの女を殺さなかった?)
 痛む腕を押さえて、ヴァルガーヴは眼を閉じた。どうしてなのか自分に問いかけても、答えは出てこない。敵のほうからのこのこと自分の前に姿を現した絶好の機会、しかも向こうから攻撃を仕掛けてきたあのときに、ゴールド・ドラゴンの小娘ひとり殺すことなど、いともたやすいはずだったのに。
(疲れていたからか)
 あのときはもう、ゴールド・ドラゴン全員を血祭りに上げようとか、リナ=インバースを必ず抹殺しようとか、もうそんなことはどうでもよくなっていた。世界もろとも滅ぼそうとしたとき、すべてはちっぽけな矮小なものにみえる。おかしくなってヴァルガーヴは笑いだした。
 自分以外の生けるものの気配がない、死のような静寂。つまり俺以外はみんな死に絶えたということか。そして世界は滅んだはずなのに、この俺ひとり生き残ったというわけなのか。
 なるほど、こういう運命の皮肉がまだ残っていたというわけか。俺から何もかも奪っておいて、今度は世界から取り残され
るがいいと。「あれ」の望みはこういうことだと。
 鋭い竜の爪先をゆっくりと 目の前のかざしてみた。
 その爪と爪の間から、ふいに人の姿をとってなにかが現れるのが見えた。敵か、と、いつものように身構えて、その無意味さに気づいて力なく笑った。自分の前に現れる者は敵以外にないというのに。
(味方なんて呼べる奴がいたか)
 そんなことを考えていると、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。ひとごとのように無視していたヴァルガーヴは、しばらくしてはっと顔を上げた。
 あの娘がいた。
「───ここにいたの」
「───なんだって?」
 かすかに呟く声は、彼女の耳にも届いたらしく、嬉しそうに駆け寄ってくる。だが彼が問い返したのは別のことだった。
「探していたのよずっと。何度も名前を呼んだのに、どうして返事をしてくれなかったの」
 フィリアが眼をうるませてひざまずいた。長い金髪の先が床にじかに触れるのを、ヴァルガーヴはぼんやりと眺めた。
「おまえ生きてたのか」
 信じられないといった顔で自分を眺めるヴァルガーヴにフィリアは、なんとも言えず、すべてを洗い流したような笑顔で応えた。
「なにがおかしい、え?」
「嬉しいのよ」
「俺のほうは最悪だがな」
 皮肉な顔をむけたつもりなのに、いっこうにこたえた様子のない彼女に苛立ちを覚えた。とっさにラグド・メゼギスを握りしめようとする。
「ここはどこだ」
「ここは世界の中心。赤の竜神と赤眼の魔王が争った、いにしえの戦場」
「で───おまえが神で俺は魔か」
「あなたを裁きに来たのではないわ」
「じゃあなにしに来た」
「あなたを迎えに」
 さあ帰りましょう、とフィリアは両手を差し出した。眼を大きくみひらいてにっこりと笑っていた。
「帰りましょう。みんな待っているわ。ヴァル」
「ふざけるな!」
 ラグド・メゼギスの両端の部分がかすかなうなりをあげて、光の刃を生みだした。
「なんの権利があっておまえ、その名で俺を呼ぶ。おまえが口にすることなど俺は絶対許しはしねえ。その名を呼んでいいのは───俺の一族と、ガーヴ様だけだ!!」
「ヴァル、いらっしゃい、帰りましょう」
「───この!」
「さあ来るのよ」
 穏やかだが命令口調のその言葉に、ヴァルガーヴは顔を引きつらせた。
「この偽善者が! 誰にむかって口をきいている!!」
 フィリアは何も言わず、両腕を前に伸ばしたまま、じっとヴァルガーヴをみていた。そのまっすぐな視線は彼の怒りをますます燃え上がらせた。畜生、とヴァルガーヴは呟いて、ラグド・メゼギスを振り上げた。フィリアはそれを少しも恐れず、少しずつ近づいてきた。
(なんなんだこの女───!!)
 武器を持ち、この女に比べれば、魔力も力もはるかに俺のほうが上のはずだ。それなのに、どうして、こんなにも、この女のまなざしを恐れなければならないんだ。どうして右腕が凍りついたように動かないんだ。
 脂汗がにじみでてくるのを感じた。フィリアの長い金髪が、どこからともなく吹いてくる風に右に左にゆれた。身体がこわばったように動かず、眼はこの女から離せない。また、ヴァル、と呼ぶ声が聞こえた。その声は遠い昔−−−記憶はあやふやで自分にそんなころがあったなどとはもはや信じられないほど遠い昔−−−自分を残して逝ってしまった父と母の声のようにも聞こえ、初めて会ったときのなんとなく面白そうなガーヴの声にも聞こえた。それとも異界の魔王のそれだろうか。どっちにしろ、もう自分の名前はそれじゃない。
 それでも、その言葉の魔力に支配されたかのようにヴァルガーヴの眼から涙がにじみでてきた。
 あのときに死んでしまえばよかったと、ときどき思った。どうしてたったひとりで生き残り、生き延びてしまったのだろう。死が恐ろしかったからではない。恨みと憎しみがそうさせなかった。ガーヴに拾われて、もう孤独を感じることがないのだと思ったとたん、彼も逝ってしまった。
 ───あのときに、ガーヴ様が死んだときに、俺も死ねばよかった。復讐とか一矢むくいるとか、そんな馬鹿げたことにこだわらずに。
「──────違う──────!!」
 涙に濡れた眼をぎゅっとつぶり、ラグド・メゼギスにすがりつくように、それを両手で握りしめた。違う、そんなことを思ったらだめだ、俺がいままでやってきたことが無駄になる、俺は、一族とガーヴ様の復讐のためここまで来た、それでいいのだ、それ以外に俺の生きる道はなかった──────!
 それなのに───それしかなかったと断言できるのに、どうしてこんなに悲しい───? どうして───。
 そのとき、フィリアが両腕をひろげて、ヴァルガーヴの首すじにすがりついた。突然、身体をぶつけるようにして抱きついてきたフィリアを、とっさに振り払おうとして───できなかった。
「あなたに会いたかった」
 言うなり、ますます強くフィリアはヴァルガーヴを抱きしめた。
「みんなあなたを待っているわ。だから帰りましょう」
 同じことをくり返すフィリアの首に、ヴァルガーヴは震える指をかけた。右腕のラグド・メゼギスが軽い音をたてて落ちた。 そんな言葉は聞きたくない。そんな言葉にはきっと武器も効かず、俺はなすすべもなく魂を撃ち抜かれる。存在を根底から揺るがす、それは恐ろしい言葉だ。
 心臓がどくどくと脈打つのを感じ、頭をかきむしって叫びたい衝動がこみあげた。はやく、はやくこの女から離れなければ、赤子のようにしがみついてくるこの女をどうにかしなければ。どんな刃物よりも鋭く俺を切り裂く言葉を吐くこの口を黙らせなければ。
「やめろ、触るな!!」
 渾身の力をこめて、フィリアの身体を引き離し、突き飛ばした。フィリアは少しも驚いた顔をみせず、ふたたび両腕を伸ばし、まわしてきた。今度は離れまいするかのように、強く、しっかりと。
「会いたかった」
「嘘だ」
「あなたに、会いたかった」
「嘘、だ」
「会いたかった」
「俺は信じねえ」
「本当に会いたかった」
 絶対に信じねえ、とヴァルガーヴは呟いた。それでも飽きもせずフィリアは同じことを繰り返した。だらりと下げた両腕に力をこめた。絶対にこの女を抱きしめたりしない、この女に助けを求めたりなどしない、絶対に!
 どんなに優しく髪をなでられても、どんなに心に染みるようななつかしい言葉をささやかれても、決して!
 フィリアは微笑みを浮かべて、白い指をヴァルガーヴの頬に伸ばした。ヴァルガーヴはぎくりとその手を見つめた。
「帰りましょう、あなたが望むところに」
「───まだ言うか!」
「何度でも言うわ、帰りましょう、私と一緒に」
 フィリアは彼の黒く光る竜の爪のひとつをふわりと両手に包み込んだ。
「帰るのよ───あなたが生まれたときに───すべての母なるものの海に───金色の光に包まれてあなたはもう一度やりなおせるのよ───」
 嘘だ、とヴァルガーヴは涙を降りこぼした。
 いいえ、とフィリアは自分の胸に竜の爪を押し当てた。
 ヴァルガーヴはうつむいて肩を震わせた。その間も何度もフィリアは同じことをくり返した。もう一度生まれ変わるのよ。
 やめろ、と叫んでヴァルガーヴは右腕を横なぎに振り払った。勢いあまって身体はぐらりと傾ぎ、思わず膝をついた。歯を食いしばっても涙はあとからあとから流れ出た。フィリアの胸のあたりが切り裂かれ、かすかに血がにじみでた。そこをかばおうともせず、フィリアはふたたび竜の爪を握りしめ、ひざまずいた。
「俺が望むところだと?」
「そう」
「どうやって」
「あなたが望むように」
「そこで俺はなにをすればいい」
「一緒に暮らしましょう、私と一緒に。朝起きて一緒にごはんを食べるの。本を読んであげるわ。字も教えてあげる。昼も夜も、一日中そばにいてあげる。あなたがひとりきりにならないように一緒に眠るの。
 それがあなたの望み、そうでしょう?」
 フィリアが自分の顔をのぞきこんできても、もはや嫌悪はなかった。心を読まれても少しも驚かなかった。
 一生に一度くらい、こんな風変わりな奇跡があってもいい。
 ゴールド・ドラゴンに慰めてもらうなどという、途方もなく女々しい奇跡。
「おまえはなにも知らない。なにも知らないくせになんでそんなことが言えるんだ」
「あなたがそれを望むから」
「俺はそんなこと望んじゃいない」
「あなたは自分の心に気づいていないだけだわ」
「−−−どう気づいていないんだ? 言ってみろ」
 教えてほしい、とヴァルガーヴは思わず口にしかけた。
 この世界を滅ぼすこと、ゴールド・ドラゴンを皆殺しにすること。ガーヴ様の復讐をなし遂げること、それ以上に、俺は、この女が口にした、子どもじみたことを望んでいたのか。
 フィリアはじっと彼を見つめた。
「あなたの最大の望みは、私を殺すこと」
 そうでしょう? とフィリアは優しく微笑んだ。
「だから、あなたの望みをかなえに来たの。
 一族の罪はぜんぶ私が引き受けるから。
 もうこれ以上なにかを憎んで心を縛りつけないで」
 ヴァルガーヴは震える声で問い返した。
「どうして俺の気持ちがわかるんだ?
 なにも知らないはずのおまえが、どうして」
 フィリアはさらに微笑んだ。
 それが答えであるかのように、ヴァルガーヴの右腕を少し持ち上げ、一気に自分の胸に突き立てた。


「もう苦しまないで。ぜんぶ私に預けていいから。私が引き受けるから。
 だから帰ってきて」


 フィリアの眼に涙がもり上がり、まばたきとともに頬に流れ落ち、彼女はそのままのけぞり、静かに眼を閉じた。
 フィリアが倒れるのに引きずられるように、ヴァルガーヴは腰を浮かせた。右腕は彼女の胸に−−心臓に−−入り込んだままだ。
 左腕で身体を支えるようにして、ヴァルガーヴはフィリアのそばへいざり寄り、かがみこんだ。
「もう一度生まれ変わる、だって?」
 喉の奥から絞り出すようにヴァルガーヴは呟いた。
 この女は俺を救うつもりなのか。ガーヴ様とは違うやり方で俺に命を与えるつもりなのか。それもおのれの死をもって。
「───馬鹿な」
 そんなことができるはずがと思って、また涙がつたい、雫はフィリアの頬へと落ちた。そっとその顔に左手を添えた。瞼は閉じられ、くちびるはなにかを言いかけているかのように、小さく開かれ、細く血の糸が引いていた。この女を初めてみるわけでもないのに、なぜか眼が離せない。もはや死んでいるはずなのに、そうではないと頭のどこかで否定してしまうのは、いったい。


 ───一緒に暮らしましょう、私と一緒に。
 ───一日中そばにいてあげる。昼も夜もあなたがひとりきりにならないように、一緒に眠るの。
 ───それがあなたの望み、そうでしょう?−−−


 そうだこれは夢だ、夢だからきっと覚める。
 いつもそうだった。夢がひどければひどいほど、そこから飛び起きて目覚めたときの安堵感は心地よかった。そして、悪夢より少しはましな現実に立ち向かうことができた。もう変えようのない過去に比べれば、現実はまだ生きやすい。
 おい、とヴァルガーヴはかすれた声をあげた。
「起きろ」
 ふたたび、心臓がどくんと脈打つのを感じた。ゆっくりとフィリアの身体を揺さぶった。眼をあけてくれ、と口の中で呟いた。
 起きて、もう一度あの言葉を言ってくれ。
 二度と拒んだりしないから。
 息をとめて、右腕を引き抜いた。フィリアの胸深くざくりと入り込んでいたその爪はべっとりと赤く染まっている。フィリアの身体を抱き起こすと血だまりができつつあった。ぴくりとも動かない腕、のけぞる白い首をみつめ、ヴァルガーヴは悟った。死んでしまったのだ、また俺は置いていかれたのだと。
 ───どうして今になってわかるんだ。
 夢の中の自分を殺してしまえば、もう悪夢をみることもないのだと、いまさらながら気づいた俺の愚かさ。


 血を吐くような叫びが耳を突き破る。
 悪夢から目覚めるときの悲鳴によく似ている。





 砂の盾が崩れさるとき、手のひらの永遠へと落ちていく。おまえの手で俺を握り潰してくれていい。今度こそ心など残らないほど粉々に。醒めることのない眠りへと導いてくれるなら。おまえがすべてを断ち切ってくれるのを俺はずっと待っていた。

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26344ゆーとぴあ───リナじょぜ 2003/6/25 20:04:26
記事番号26341へのコメント

 ゆーとぴあ───リナ




 そこは初めてみる、伝説の魔王と竜神の古戦場。
 息をのんで天をみあげ、ここが光の柱の内部だと知ったときの驚きはいまでも覚えている。
 眼を閉じれば、はっきりと思い浮かぶほどに。
 二度と使わないと心に決め、封印したはずの混沌の力を、ふたたび出現させようとした。いかにもふさわしい場所かも知れないと、あのとき自嘲的に笑ってみた。。
 衝撃波に飛ばされ、海に投げ出されて意識を失い、ガウリイやアメリアと合流する途中、ときどき夢にもみた。
(これは夢。必ず覚める夢)
 だから大丈夫、ギガ・スレイブは発動しない。
 世界を滅ぼすか、異界の魔王を滅ぼすかなんて、いちかばちかの賭けは成立しない。
 あのときみたいに、世界かガウリイかなんて、最悪の二者択一には決してならない。
 だから大丈夫、夢は決して現実にはならない。




 ガウリイを閉じ込めた水晶の柩にぴしりと亀裂が入る。弾かれたように彼の名を叫んでも、フィブリゾはただ面白そうに笑っているだけだ。ガウリイを中心にずらりと並ぶ仲間たちの姿。
タリスマンが赤く光り、禁じられた呪文の詠唱に入る。唱えながらリナは祈っている、もはや生きているかも定かでないガウリイに。あたし自身どうなったっていい、力を貸して、と。
 ダークスターを撃つため、もう二度と使わないと誓ったあの呪文を唱えながら、リナはふと、ヴァルガーヴはあのときのあたしと同じことを考えたのだろうか、と思った。この世界を微塵に打ち砕く代わりに、俺の命を引き換えにしてやると、そう祈ったのだろうか。だとしたら、あたしとヴァルガーヴは同じだ。自分のためにギガ・スレイブを唱えたあたしが、今度は世界を救うためにヴァルガーヴを討とうとしてる、しかもこの呪文で。なんて皮肉。なんて運命。




 ゲートでばらばらになってから、ようやく合流できたリナたちは、一路、最後の武器がある場所をめざしている。
 頼りはフィリアの占いだけ。
 水不足に悩むゴーストタウン寸前の村を後にして、リナは、フィリアがときどき、蒼白な顔でぼんやりしているのを眼にしていた。
 どうしたのと聞いても、なんでもないの一点張りで、無理に微笑んでみせる。そのたびにリナもうなずいて引っ込むが、信じてはいなかった。
 フィリアの様子がおかしくなったのは、あの村で奇妙な模様を刻まれた紋をみてからだ。
 フィリアは言葉少なに、それが竜族の───ゴールド・ドラゴンの───紋様であると話した。それがあるとはとても思えない場所でそんなものをみたからだ、と後でぎこちない態度で、自分が気を失いかけたわけを説明した。それ以来、フィリアが気絶するようなことはなかったので、四人は一応納得した。
 それでも口数が少なくなったのは事実で、行く途中、何とも言えないつらそうな顔で眉間に皺をよせているのをリナはみた。アメリアもゼルガディスも、ガウリイでさえもなにかあると気づいてるようだった。こういうとき、男たちはあえて尋ねるようなことはしない。アメリアだけはよほど心配らしく、何度か口を開こうとするのだが、フィリアの顔をみると何も言えなくなってしまう。
 それ以上、リナたちがなにも行動を起こそうとしないのが、ひそかにアメリアには不満だった。
 フィリアが全身で拒否しているのだから、確かにこれ以上探りようがないけれど、なにも言わないでいるのはあんまり冷たいんじゃないか、とアメリアが詰め寄ると、
「そういうときは、俺はほっといてほしいと思うがな」
「こう、他人にあれこれ知られたくないことってあるんじゃないのか?」
 ゼルガディスにきっぱりと、ガウリイに困ったような顔で言われ、
「そんなの仲間じゃないです!」
 と、アメリアはしばらくへそを曲げていた。


 リナはそんなアメリアの愚痴を聞きながら、やっぱり苦笑いするしかなかった。リナさんまで! と頬をふくらませるアメリアに、リナは肩をすくめたが、それ以上なにも言わなかった。
 人間てのは───フィリアはドラゴンだけど───しょせんひとりなのよ、と言っても、今のアメリアにはわからないだろう。
 たとえ仲間でも、どうしようもできないことがある。
(仲間───ねえ)
 いつのまにやら、どうして四人で旅をするはめになったのだろう。
(一匹狼でよかったのにな)
 それなりに楽しい一人旅に、いつのまにかガウリイがくっついて、ゼルガディスと知り合って、どういうわけかセイルーンなんてけっこうな国のお姫さまと一緒に行動することになってしまって。
 てくてく歩きながら、リナはちらりと後ろをみた。アメリアはまだ少し機嫌が直らないらしく、ひとり離れて歩いている。ガウリイはそんなアメリアを気にしながらもゼルガディスと肩を並べ、ゼルガディスは相変わらずフードで顔を隠しているので表情はわからない。それでもリナにはゼルガディスのアメリアを気にするしぐさがわかる。
 フィリアはと言えば硬い表情で、リナの半歩先を進んでいく。
 どんよりと曇っていた空が、少しずつ晴れてきた。
 なんとなく重苦しい雰囲気だったが、太陽が照ってきたので、リナはほっと息をついてフィリアに追いついた。
「どっかで休んでかない?」
「でも、宿場どころか村だってないですよ、このへん」
「ほら、あそこに丘があるじゃない。あそこの木蔭でひと休みしましょうよ」
 リナが指さした方をみて、フィリアは、
「じゃあちょっとだけ」
 とうなずいた。硬かった表情がゆるんだのをみて、リナはつとめて明るい声を出した。
「そうそう。ほらみんな、ひと息入れるわよ」




 ガウリイが座って三秒で眠ってしまい、ゼルガディスとアメリアも思い思いに休憩を取り始めると、フィリアはひとり離れた場所で横になった。
 アメリアはまだ納得してないらしく、返事はするものの、自分から話しかけようとはしない。
 ゼルガディスはそのことを気にしながらも、自分の意見を撤回する気はないし、ケンカが苦手なガウリイは、交互にゼルガディスとアメリアに話しかけながらも、どう仲裁していいのかわからず、逃げるように寝てしまった。
 フィリアはフィリアで、自分の悩みで頭がいっぱいで、ぎくしゃくしているリナたちには気がつかない。
 リナは、てんでばらばらな自分たちを眺めて、
(そうよねー意見が合わないのがあたりまえなのに、なんでこんなに長いこと一緒に行動してこれたんだろ)
 と頭をかきむしりながら、そのへんをそぞろ歩いていた。
 どんなに仲がよくてもうまくいかないこともあるし、ケンカなんて別に珍しいことでもない。
 ゼルガディスとアメリアがパーティから抜けるのはいつものことだけれど、二人きりになったときに感じる寂しさは、一瞬とはいえ、いつも慣れるのに時間がかかった、ガウリイがいてくれる安心感はあっても。
(いつのまに、どうして頼ってたんだろう───このあたしが)
 ねーちゃんが聞いたらどう思うかな、と枯れ枝をぱきぱきと踏みしめながらリナは苦笑した。
(仲間とか相棒とか、そういうのとは無縁だったもんね)
 ひとりが寂しいなんて思ったこと一度もなかったし、むしろひとりのほうが身軽でよかった。手を組んだとしても一時的で、すぐに解消するのがあたりまえだったし、ひとりで世の中を渡っていくことは苦痛でもなんでもなく、むしろ誇らしかった。魔道と剣の腕だけでちゃんと自分を食べさせてやってる、それは何にも代えがたい、生きてることのあかしでもあった。
 そもそもあの言葉から、おかしな旅が始まったのだ。


 いや、オレにはわかる。君には友だちが必要なんだ。


 言ってることの意味が、果たしてガウリイにはわかっていたのか、今でもリナには謎である。
 心の中で舌を出し、なにがオトモダチよ、人に頼るぐらいなら、自分でなんとかできるだけの腕を持てばいいじゃないの、他人にしがみつくなんてまっぴらごめんよ、と毒づいていた。
 それなのに、ずうっと後になって、いつだったか、ガウリイは同じようなことを口にしたとき、リナは素直にうんとうなずいていた。
(なあリナ、旅って面白いよな)
(はあ? なによ急に)
(いやあ、いろんな奴に会えるしさ)
(ああ……ゼルとアメリアのこと?)
(ゼルみたいな凄い剣の腕を持つ奴もいるんだなあ)
(王女さまのくせにやたら元気なアメリアみたいな子もね)
(また会えるといいよな)
(また会ったら、またやっかいなことに巻き込まれるわよ)
(うーん、それはどっちかってゆーとリナのせいじゃないか?)
 ああ、そうだ、あれはコピーレゾとの一件のあとだ、と思い出し、リナはふうっと息をついた。あのころはまだ無邪気だった。
 ───フィブリゾとのことがなければ、きっと、ガウリイたちと旅をすることになんの疑問もなかったとリナは思う。けれどあの一件以来、子どもが火をもてあそぶような軽々しさで、かの存在の力を借りた、いや、かの存在そのものの呪文を扱える自分の存在がたまらなく恐ろしくなった。
 自分と一緒にいるだけで誰かを傷つけるのなら、やっぱり元の一匹狼に戻ったほうがいいのではないかと。
 そう思う矢先に、いつもいつもガウリイがまるでリナの心を読んだかのように先回りする。
 ───リナの保護者だからな、俺は。
 そう言って、ガウリイがそばにいてくれることは、もう空気みたいにあたりまえになっている。
 だからその空気がなくなったらきっとあたしは−−−。
 そういえば、ゼルガディスが言ったことにも驚かされた。
 ───俺はそいつの仲間だ。
 ゼルガディスにそう言われることはとても面はゆかった。自分と同じ種類の人間に、そう認めてもらうことは、どんな勲章よりも嬉しいものだったけれど。
 ───みんなでガウリイさんを助けに行く、それで充分。
 リナを励ますようなアメリアの笑顔で、あたしたちは仲間、とリナはそのとき初めて思えた。ゼルガディスに言われたときはなんだか信じられなかったのが、アメリアの口から出たとたん、なんの葛藤もなく、すとんと胸の中にその言葉がすべり落ちた。
 フィリアがときどき、なんとなくうらやましそうに、リナさんたちは仲がいいですね、と笑っていた。
 ───なんだか兄妹みたいで。
 そうお? とそっけなく返したけれど、その瞬間、それはとてもたいせつな、かけがえのないものだという考えがひらめき、ちょっと涙がでた。
(あたしなんかの周りに集まってくれてありがとう)
 そう言ったらきっと、熱でもあるんじゃないのか、そんなのリナの台詞じゃないというに決まってるだろうけど−−−そしたら間違いなくこっちも呪文で応酬するけど−−−きっと照れながらも笑顔を返してくれるに違いない。


 なーに言ってんですか。
 あんまりらしくないセリフを言うな。
 そーだよ、別に礼を言われるほどのことじゃないぜ。


(本当に?───あたしのせいでみんな殺されかけたのに───それでも本当に───?)
 雲がちぎれて流れていくのをみあげ、リナは眼を閉じた。やっぱり笑いながら答える声がしたから。


 だってオレたちこうして生きてるじゃないか。
 正義はそんな簡単に負けないんですっ!
 どうせこっちも好きでおまえさんにくっついていってるんだしな。


 くすくすとリナは笑って、切り株に腰をおろした。ふいにやってきた風がとても気持ちよかった。
 ケンカして別れても、ばったり出くわして、くされ縁みたいになっちゃって、でも時がくればじゃあねと手を振って背を向けて別れて。そしてまたあたしたちは出会う。どこかの曲がり角で、分かれ道のその先で。
 人間はしょせんひとりだけど、仲間と呼べる連中がいるのはなかなか悪くない。
 いつかあたしは誰も───ガウリイさえも───たどりつけない、遠いところへひとりで行くのかもしれない。そしてそこで息をひきとるとき、こう思えたらいい。 
 あんたたちに会えてよかった。
 できることならもう一度、何度でも会いたい、と。
 その歌こそがあたしの遺言。




 白い小鳥が一羽、すうっとリナの目の前を横切った。
 ───ヴァルガーヴさんの言ってたことって本当でしょうか、
ここに来る途中、アメリアがためらいながら口にしたことを思い出す。。
 ───フィリアさんの一族がエンシェント・ドラゴンを皆殺しにしたって───。
 リナはたぶん本当だろうと答えた。ゼルガディスも、あの最長老ならやりかねないとうなずき、彼女の考えもそのとおりだった。
 かわいそうなヴァルガーヴさん、とアメリアはため息をついたが、リナはかわいそうなのは果たしてどちらだろうと、そのとき、そっとフィリアのほうを盗み見た。知らないということは、確かに無邪気な罪だとは思うけれど。
 残されたフィリアはこれから長い長い時間を、たったひとりであんたへの想いをかかえて生きていかなきゃならない。
(生きて償うほうが、死ぬよりも、きっと)
 フィリアの心を打ちのめしただけでは足りないほどの憎悪。
 あふれだすその想いが、憎しみが、世界を滅ぼしかねない、そんなこと、あたしはもうとっくに知ってる。
 なにもかもをぶち壊すのは、五つの武器とか魔王ではなく。
(本当は人の心、その意志)
 きっかけさえあれば、子どもにだって出来るのだと、リナは眼を閉じた。追いつめられれば人はなんだって承諾する。
 それでも、ガウリイを盾に取られたあたしは、ある意味幸せだったのかも知れない。究極の二択だったけど、もしかしたら暴走させずにすむという希望はあったから。
 ねえヴァルガーヴ、とリナは呟いた。
 あんたとあたしの違いは守りたいものがあったかどうかってことだけよ。守るものを持たないのは寂しいことよ。命をかけても守りたいと思うものがないのは、この世で二番めに不幸なことだわ。
「だから」
 栗色の瞳が、ガウリイの眼と同じ色の空へと向けられる。
「あたしは、あんたのためには泣かない。あんたに同情はしない。二番めに不幸なあんたのためには」
 涙はまだ、流すべきじゃない。
 低く呟いて、リナは立ち上がった。
「悔しかったら、戻ってきなさいよ」
 眼下に広がるゆるやかな斜面をみおろし、くるりと背をむけた。戻ってきなさいよ、フィリアのために。
 リナは伸びをすると、もう空には一瞥もくれずに、さくさくと歩きだした。林の中へ戻っていくと、太陽を木々が隠し、リナの顔を緑に染める。


 ───最高の不幸は、愛する人に死におくれること。


 だからあたしはフィリアのところへ行く。
 あんたに逝かれてしまったフィリアのところへ。
 あたしの言葉に慰められるはずもないだろう、あの子のところへ。
 そして、歌を教えよう。
 フィリアがいつかあんたのために口ずさむ。
 それはヒトが歌う途切れない永遠の祈り、あたしたちの希望の調べ。

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26352Re:ゆーとぴあ───リナイヌひこ 2003/6/26 18:46:22
記事番号26344へのコメント

こんにちは、イヌひこです。
NGでは笑わしていただきましたが、今回は感動させてもらいました。
じょぜさんって、上手いですよねー。
何ていうか、文章が自然に入ってきて、それでいてぐっと心をつかむ、みたいな。
(うーん、我ながらよくわからん文章・・・。)
私的にはリナのエピソードが好きでした。
ゼル、ガウ、アメの名場面っぽいシーンの描き方もすてきでしたし。
私は読みながら、ふわあー、すごい!って、ただただ感心するばかりでした。
なんか自分が書いてるのが恥ずかしくなっちゃうくらいで。
うう、精進せねばいかんなあ・・・。
では、これ以上わけわからんことを書いてしまわないうちに!失礼します!
これからもがんばってください!

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26356こないだはどーも!(笑)じょぜ 2003/6/26 20:48:54
記事番号26352へのコメント

わあイヌひこさんだ! NGネタではお世話になりました。
さっそく感想をありがとうございます。

感動してもらえましたか……嬉しいです(しみじみ)。
リナの話は,もともと書くつもりなかったんですけど,フィリアの話のラストに出したら,なんか最後はリナで締めないといけないかな,という気になってしまったのでした(笑)。
リナの話がなかったら,実際,くらーいままで終わってたし書いてよかったです。スレイヤーズらしさが少しは残ったかと。
リナはりりしくかっこよく! が私も好きです。

イヌひこさんのお話も楽しみにしてます。ゼルアメ読むのは好きなのに,どうも書くのがうまくいかないので,見習いたいです。

では,ありがとうございました。m(__)m

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26345あとがきのようなものじょぜ 2003/6/25 20:11:09
記事番号26341へのコメント

はい、終わりです。
読んでくださった方,お疲れさまでした。

NGネタよりも先に仕上がっていたのですが,なかなか発表する勇気がなくてぐずぐずしてまして。
それぞれのイメージを鬼束ちひろさんの曲からいただきました。

フィリアの話は「茨の海」
ヴァルガーヴの話は「砂の盾」
リナの話は「Our Song」という曲です。

で,それをそのままタイトルにもらっちゃおうかとも思ったのですが,一応,物書きのはしくれとして(笑),人様の言葉をまんま拝借するのはちょっと悔しかったので(笑),最後のモノローグのところに,ちりばめてみました。
機会があったら,ぜひ聞いてみてください(私のお気に入りは茨の海です)。

ではお読みいただきありがとうございました。m(__)m

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26347Re:ゆ〜とぴあ祭 蛍詩 2003/6/25 22:31:04
記事番号26345へのコメント

 こんにちは、はじめまして!! めっちゃ初心者の、祭 蛍詩、というものです。
 あの、えっと、読ませていただいて、すごく感動しました!! 3人のお話全部、すっごく素敵です! 
 ヴァルガーヴさんの夢にでてくるフィリアさんが、暖かくて、悲しくて、ものすごく好きです! かっこいいリナちゃんも素敵だと思いました! ヴァルガーヴさん、とても悲しい人ですね。

 こんな変な感想書いちゃってすみません; ……まともな感想一つ書けないのか、私はぁ!!(涙) でも、ほんとにじーんときたんです! うまく表現できませんが……;;
 では、こんな感想で本当に申し訳ないのですが、素敵なお話を読ませていただき、ありがとうございました。

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26354お初です!じょぜ 2003/6/26 20:38:28
記事番号26347へのコメント

初めまして。感想ありがとうございます!
えーっと,なんだかとっても感動していただいたみたいで,こっちとしてもすっごく感激してます。ヽ(^o^)〃

夢オチだとわかってくれてよかった……(笑)。
ヴァルとフィリアの話は夢=願望なんですが,リナだけは現実を見すえてるというふうに書きました。
リナをかっこいいと言ってくれたのもうれしい……。
スレイヤーズの話としては暗すぎて,ちょーっと違うかなあと思ったんですけど……^^;
楽しんでもらえたので,書いてよかったです。

では,ありがとうございました! m(__)m

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26362Re:あとがきのようなものR.オーナーシェフ 2003/6/27 15:09:09
記事番号26345へのコメント

とてもよかったです。
読んでみて、ああ、やっぱりTRYってちゃんと第二部へ続く話になっているんだなあと、改めて思いましたね。ヴァルガーヴって、やってることがルークです。ただ、第二部の場合はすぐ身近にいた仲間が世界を恨み、魔王化してしまう。そこが最初っからワルのTRYと違いますね。ちょうど、じょぜさんが、
なにもかもをぶち壊すのは、五つの武器とか魔王ではなく。
(本当は人の心、その意志)
と書いたようにね。あの「セレンティアの憎悪」から「デモン・スレイヤーズ!」へという流れは怖ええよ。そこまでの間を、ちょうどつなぐようになってるテーマですね。TRYって。
こういう、ヴァルガーヴやルークみたいな人間って、現実の世界にも結構いますよね。ニュースに出てくる奴でも何人か、○サマ・ビン・○ー○ィンとかね。そうなる可能性って、人は皆心の中に持っているのでしょう。じょぜさんが書いた、こういうのって。

はなっから間違った世界だった。

間違いは正さなきゃなんねえ───そうだろう?

おまえの手でこの世界を終わらせるんだ。

それがおまえに出来る唯一の罪滅ぼし。

ヴァルがよく出ています。俺は、このヴァルの心は偽善だと思うんですよね。あるいは弱さか。人間が罪を犯さずに生きていけるものか。生きようとすれば、やっぱり手は汚します。責任逃れはしちゃいけない。しかし、それでも、ガウリイが「デモン・スレイヤーズ!」で言ったように「いろんな重いものを背負いながら、それでも人間ってのは、前に進まなきゃならない」。ガウリナな俺にはそのすぐ後(!)と合わせて、たまんないシーンなんだけどね。きっとリナはガウリイの胸で泣いたんだと、勝手に決めてます。ま、それはいいとして。世界は間違いながら少しずつ作っていくものです。確か、リナもそう言ってたかな。TRYのクライマックスだったかどこだったか。
また、祭 蛍詩さんも書いてますが、ほんと、ヴァルガーヴって悲しい人ですね。人じゃないけど・・。リナは8巻・NEXTで、沈みゆく船を守るため浸水している区画を閉めなきゃいけないところを(本当の話。人が残っていてもね。タイタニックでも描かれます)、その区画に残されたガウリイを助けちゃいました。ヴァルガーヴやルークに対しても考えてないわけじゃなかったと思います。でも困ったことに、この一匹と一人は、本人自身が滅びを望んでいた。だからフィリアもTRYの最後まで迷いますよね。リナに決断を先送りしているだけだと叱られるまで。「デモン・スレイヤーズ!」は「答えは。最初から、そこにあったのだ。」と決断してルークの望みのままに竜破斬を放ちます。両方とも、つらかろう。悲しすぎです。ヴァルフィリって、悲劇ですね。いつもガウリナの甘い世界に浸ってるんですが、こういう世界もあるんだなと思いました。
こういうテーマって、普遍的なものだと思います。ちょっと前テレ東でやってたサイボーグ009も近いテーマだなと見てて思いました。それを昔描いた石ノ森先生、それをあんなとんでもないキャラで描いた神坂先生は凄い。そのとんでもないキャラたちの心の内面を描ききったじょぜさんも凄い!っくう!やりやがるぜい!と、読んでいて感じました。多分、見ているだけでなく、書くにはセンスが入ると思うんですよね。芸術・美的な感覚というか。じょぜさんの、自分で感動して、イメージして、というような部分が伝わってきたような気がしました。ああ、そうとうハマってるな、って。

それから、ヴァルフィリ、お好きなようで。俺はガウリナ書く時、どこまで書いてよいものやら迷いながら、これくらいが限度かなと考えつつ書いてるんですが(ギョーカイ用語で“生殺し”と言うらしい。今回は“本殺し”か。意味ちょっと違うけど)、やっぱり同じなんでしょうか?気をつけましょうね。お互い。
ヴァルとフィリアが抱き合い、フィリアが刺される、悲しく残酷でラブラブなシーンはよかったです。

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26364汝は神!じょぜ 2003/6/27 18:16:16
記事番号26362へのコメント

初めまして! 感想ありがとうございます!
タイトルにも書きましたが………す,すごい! なんかちゃんと私の言いたいことを読み取ってくれてありがとうと思いました。

>読んでみて、ああ、やっぱりTRYってちゃんと第二部へ続く話になっているんだなあと、改めて思いましたね。
 ここ,すごいです。リナの話のラストで書いた「最高の不幸は〜」ってのが,この後ルークの悲劇にリナが遭遇しなくちゃならなくて,涙を流す,そのことにつながってるんだよ〜というのを,誰がわかってくれるだろうと,ちょっとどきどきしてました(笑)。

 ただ,好きな人に置いてかれることが,この世の一番の不幸かどうかは,私は正直疑問です。そういう意味では,ガーヴに置いてかれたヴァルも充分不幸だし。ただリナの視点で書いた話なのであえて「同情はしない」と言わせたのですが。

 ヴァルガーヴとルークが似てるってのは,いろんなサイトでお目にかかるんですけど,これを書こうと思ったときは,別にルークを彷彿とさせるような話にしようとはまったく思ってませんでした。ヴァルガーヴとフィリアを対比させようと。

 リナがガウリイを助けにいって「あんたとあたしは同じ」っていうセリフは,とあるサイトの二次小説を読んで、「なるほど!」と思い,それに触発されたのです(笑)。それでヴァルリナを書く人の気持ちがまったくわからなかったのが,今回の話ですげーわかるようになっちゃいまして(笑)。

>ヴァルがよく出ています。俺は、このヴァルの心は偽善だと思うんですよね。あるいは弱さか。人間が罪を犯さずに生きていけるものか。生きようとすれば、やっぱり手は汚します。責任逃れはしちゃいけない。しかし、それでも、ガウリイが「デモン・スレイヤーズ!」で言ったように「いろんな重いものを背負いながら、それでも人間ってのは、前に進まなきゃならない」。ガウリナな俺にはそのすぐ後(!)と合わせて、たまんないシーンなんだけどね。きっとリナはガウリイの胸で泣いたんだと、勝手に決めてます。ま、それはいいとして。世界は間違いながら少しずつ作っていくものです。確か、リナもそう言ってたかな。TRYのクライマックスだったかどこだったか。
 はい言ってましたね。「間違いはひとつひとつ正せばいい」。ここんとこのリナとヴァルガーヴのやりとりは,まっぷたつに意見が別れるところだと思います。
 昔は(若かりし頃は),全部をきれいに清算してやり直すことのほうが潔いと思ってたのですが,やっぱ年取ってくると,リナの言ってることのほうに傾きます(笑)。間違いを犯さないで生きてる人がいないように,間違い「しか」犯さないで生きてる人だっていないだろうし。
 あーそれにしても,すごい洞察力ですよ,オーナーシェフさん。

>じょぜさんの、自分で感動して、イメージして、というような部分が伝わってきたような気がしました。ああ、そうとうハマってるな、って。
 ありがとうございますうううう(号泣)。前にも書いたとおり,とあるサイトに影響を受けた部分がけっこうあるのであんまり似てる部分ができないようにと注意して書いてました(笑)。
 ヴァルフィリはねえ……こんなにハマるとは思わなかったですよ。もともと悲劇的な話が好きではあるのですが。

>俺はガウリナ書く時、どこまで書いてよいものやら迷いながら、これくらいが限度かなと考えつつ書いてるんですが(ギョーカイ用語で“生殺し”と言うらしい。今回は“本殺し”か。意味ちょっと違うけど)、やっぱり同じなんでしょうか?気をつけましょうね。お互い。
>ヴァルとフィリアが抱き合い、フィリアが刺される、悲しく残酷でラブラブなシーンはよかったです。
 ははは,生殺しってのはいいですね。意識してなかったんですけど,まあ悲劇を書いてるんだから,でもラブラブなシーンも入れてやれ,と(笑)。
 書きあがって読み直しながら「なんちゅーメロメロドラマやねん!」(注・私は千葉県民)と,恥ずかしくなって,これは投稿するのやめようと思ったんです。書いてるうちは楽しいけど,純粋に読み手にまわると、読んでられっかこんな甘々な話! と思い,せめてメロドラマ的な部分を払拭しようと書いたのが,リナの話……。
 でもいいんです,メロドラマ好きですから(笑)。

 オーナーシェフさんのお話,読ませていただきました。元ネタになった話は正直知らないのが多いのですが,私も考えたことあります。四人組で別の漫画とか小説にあてはめるというやつ。
 たとえばスレイヤーズinこち亀とか。スレイヤーズin風と共に去りぬとか(笑)。もちろんギャグで。

お読みいただきありがとうございました。またお会いできる日を楽しみに。m(__)m







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26363これぞ二次創作!オロシ・ハイドラント 2003/6/27 18:15:13
記事番号26341へのコメント

こんばんはラントです。
全部読みました。
素晴らしかったです。
あの文章力、構成力、そしてその能力が可能にしたこの作品。
リナ編を読んでいて思わず、スレイヤーズの物語を思い起こしてしまいました。
それは大変素晴らしい作用だと思います。
ガウリイとの出会いや、その後の生死を賭けた冒険が頭で再生され、深い感慨を得ました。
これぞ二次創作!
フィリア編、ヴァルガーヴ編も、あの台詞と文章の数々が、私の心を撃ちました。
今作で、じょぜさんの才能に本当に驚かされました。
そして、じょぜさんのスレイヤーズに対する想いの断片を知りました。
これぞスレイヤーズ!

ところで、今度は長編に挑戦するのはいかがでしょう?
じょぜさんならば、素晴らしいものが書けると思うのですが……。
まあ、無理にとは言いませんが……。

それにしても、これこそ、私が求めていたものです。
最高の賛辞を今、この作品へ送りたいと思います。
以上、ラントでした。

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26369ありがとおおおおお!じょぜ 2003/6/27 19:40:47
記事番号26363へのコメント

 いつもいつもありがとうございます。m(__)m
 大変ほめてくださって本当に嬉しいです。

 ラントさんはまだまだお若い方なので,これからですよ!
 いっぱい読んで,いっぱい書いて,どんどん作品を完成させていってください。
 まだ学生さんなのですよね?
 私はそういう年齢の頃は,読むばっかりで,書いても途中で投げてたんで,きちんと最後まで完成させることのできるラントさんは,すごいと思いますよ。

>リナ編を読んでいて思わず、スレイヤーズの物語を思い起こしてしまいました。
 うーんなんかリナの話が好評なので,ちょっと驚いてます。よかった、最後をリナで締めて(笑)。スレイヤーズ「らしさ」がなくなるのは私も嫌だったので……。

 連載はですね,ひとつあたためてるのがあるんですが,完成がいつになるやらわかりません。ベストCDの「SLAYERS 4 THE FUTURE」が好きで好きで,これをネタにできないかなあと考えてたんですが。

>それにしても、これこそ、私が求めていたものです。
>最高の賛辞を今、この作品へ送りたいと思います。
 誰でしたか(スピルバーグだったかな?),
「誰も自分の見たい映画をつくってくれないので,自分が撮った」
 みたいなことを言ってたと思うんですが,自分が読みたいのを書くってのが,結局,書く理由なのでは,と思います(もちろんそれ以外にもいろいろとありますけどね)。
「書きたいこと」があるのは,ありがたいことです。
 書いたものを読んでもらって,感想をいただけるのは、ありがたいことです。
 
 ラントさんがこれから書くものを,こちらも楽しみに待っています。
 頑張りましょう!(またまたえらそ〜)^^;

 感想ありがとうございました。

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26452おまけ・ゼロスのイヤミ(笑)じょぜ 2003/7/4 01:17:54
記事番号26341へのコメント

 ふっと思いついたおまけです。
 ゼロス→フィリアではありません,念のため(笑)。
 時間的にはTRYのその後。
 きっとゼロスがフィリアんちにふらふらやって来たらフィリアが泣いてたので,ここぞとばかりに,さらにねちねち苛めたんでしょう。
 魔族然としたゼロスがけっこう好きです。
 短くて問わず語りのような詩です。ではどうぞ。 m(__)m






 ゆーとぴあに、雪───ゼロス 


 これはこれは彼のご帰還ですか。
 魔族ではなく竜族として。
 たなごころの小さな命。
 そのままひねり潰すのはきっと簡単でしょうに。


 罪悪感にさいなまれるのはいいものでしょう?
 自己満足に浸れることができて。
 嘆くのが得意ですねあなたは。
 では命を投げ出せと言われたらどうします。
 ほらそんなことできはしない。


 そうしてまた同じ轍を踏むんですよ。
 今度は彼にどの面下げて逢うつもりですか。
 新しい命を祝う前に彼に言うべきことがあるでしょう?
 私があなたにとどめを刺したのですと。


 あなたが殺したんですよ。
 今度はあなたが殺したんですよ。
 そこのところをお忘れなく。


 彼になら殺されてもいい?
 ともに生きたいとそのときは望むくせに。
 嘘をつくのはおやめなさい。


 嘘をつきつづけるんですかこのまま。
 都合の悪いことはすべて封印して。
 いつか真実を話すなんて言わないほうがいいですよ。
 実現したためしがありませんから。


 そうそう隠蔽工作はあなたの一族の得意技でしたっけ。
 それとも懐柔策ですか。
 仇の手で育てることで、憎しみをやわらげようとはあまりに陳腐な。
「本当のこと」はいつも鋭い針のひと刺しとはいえ。


 ああもうそんな泣きわめきは聞きたくないですよ。
 泣けば同情してくれると思ってるんですか。
 そばにいたかっただけ?。
 ゆるしを乞いたかったから?。
 僕にはどうでもいいことですよ。
 あなたの同胞は何のために死んだんでしたっけ。


 せっかく忘却の彼方へと記憶を追いやったのに。
 あなたはまたそれを彼に与えたいと。
 自分のことだけは覚えていて欲しいと。
 他はすべてきれいに忘れ去っていて欲しいと。


 そんな都合のいいことを望むんですか竜族は。
 さてさてそれが神につかえるものの本心だとはね。
 でもまあ暇つぶしの種にはなりますよ獣王さまの。


 忘れないでください大事なことを。
 あなたが彼に懺悔しなければならないこと。
 あなたの一族のことではなく。
 あなた自身が彼に対して犯した罪。
 これこそ忘れてはならない事実。
 あなたが彼を殺したということ。


 それなのに。
 どうして彼はあのとき微笑んでいたのでしょうね。
 ちっとも苦しそうではなかった。


 彼があなたをゆるしていたかどうかはわかりませんね。
 僕には実際どうでもいいことですし。
 もういちど生を繰りかえすなんて酔狂ですよ。
 僕には理解できない。


 そうしてまた同じ轍を踏むんですよ。
 今度は彼にどの面下げて逢うつもりですか。
 あなたが殺したんですよ。
 今度こそ、あなたが殺したんですよ。
 そこのところをお忘れなく。


 永遠に自分を責めて苦しんでください。
 簡単に狂わないでくださいよ面白くありませんから。


 わからないことはもうひとつ。
 どうして彼はあのときあんなことを言ったのでしょう。
 僕には聞こえましたよ彼があなたに語りかけたことばが。
 殺されるにしてはずいぶんと……。


 なんと言ったのかなんてそれは秘密。
 魔族である僕が言うにはあまりに不似合いなこと。

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