-学園物短編『勉強会』-山塚ユリ(5/2-01:24)No.2552
 ┗Re:学園物短編『勉強会』-松原ぼたん(5/2-02:25)No.2557


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2552学園物短編『勉強会』山塚ユリ 5/2-01:24

学園物『予感』の後日談です。
とはいえ、別に『予感』読まなくても不都合はないと思います。
では。


放課後の教室。
亜美ちゃんはとうに机につっぷしていた。あたしもガウリイしばき倒すのに疲れてぐったりしていた。
ガウリイに数学の公式を教え込もうとしている是屡先輩の声だけが辛抱強く続いて…やがてとぎれた。
「…りな…」
悲しい眼をしてあたしを見る是屡先輩。
「…ありがとう是屡先輩。もういいわ」
「最善はつくしたんだが…駄目だった。手のほどこしようがない」
「ここまでしてもらえたら、本人も思い残すことはないでしょう」
「あのなあ、人を瀕死の病人みたいに…」
とガウリイ。聞いてるこっちが病人になりそうだったわい。
「けっして頭が悪いわけではない。ただ、記憶力の欠如はいかんともしがたい。
暗記重視の現代の受験社会においては致命的だ」
暗い声で宣告する是屡先輩。
学年主任に呼び出されたガウリイが、今度の模擬試験の結果によっては退学もありえると言い渡されたのが2週間前のこと。
なにせもう何年も留年し続けているし、ワルやってたし。とっくに退学になっても不思議じゃなかったもんね〜。
それでも退学だけは避けたいと思って、成績優秀な是屡先輩に個人授業を頼んだのだが…
同じ会話の繰り返しが続く不毛な勉強会に、先生も生徒も、ギャラリーまでもが疲れ果てただけであった。
なにでできているんだ、こいつの頭は。
「今度お礼になんかおごるわね」
「ああ。亜美、帰るぞ」
「ふにゃ〜」
脱力しきった亜美ちゃんを引き連れて、是屡先輩は帰って行った。
ガウリイは椅子によりかかって放心してる。
「ガウリイ」
「脳が…煮える…」
あたしはためいきをつく。
…無駄な2週間を過ごしてしまった…
ほんとに退学になったらどうするの。学校でガウリイに会えなくなっちゃうじゃない。
あたしは机の上の問題集を取り上げる。
ぱらぱらめくると、白いページが続いている。…むなしい。
「えーと。次の文に下の語群から適切な言葉を選んで…」
「B」
椅子によりかかったままガウリイがなげやりに答える。
「…は?」
「1がたぶんBで2がきっとGで3が勘でDで4がめんどくさいからA」
「ヤケおこさないでよ。もう」
でたらめ言ってあってるものなら…
…あってる…
……………………………………………………………………………………
「…3年生の模試ってマークシートよね」
「ああ、そうだけど?」
あたしはガウリイに詰め寄る。
「いい、ガウリイ。よく聞いて。
明日からの模試、なにも考えなくていいから、今みたいに勘だけでやってみて」
「…ヤケになってるのはどっちだよ…」
駄目でもともと。考えたってできるわけないんだから。

そして。
模試の結果、ガウリイは学年で30位以内に入った。
怪しんだ先生達(そりゃそーだ)はガウリイ一人に追試を受けさせた。
10分で書き終えて帰ってしまったにもかかわらず、追試の結果は模試の結果を裏付けただけであった。
表向きは、是屡先輩の個人授業の賜物である…。
ちなみに、ご当人の是屡先輩はといえば、真相を聞いて寝込んでいる。
…当然だろうな…


終り

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2557Re:学園物短編『勉強会』松原ぼたん E-mail 5/2-02:25
記事番号2552へのコメント
 面白かったです。

>「けっして頭が悪いわけではない。ただ、記憶力の欠如はいかんともしがたい。
>暗記重視の現代の受験社会においては致命的だ」
 まったくだわ。
>ほんとに退学になったらどうするの。学校でガウリイに会えなくなっちゃうじゃない。
 結局そういう問題なのね(笑)。
>…あってる…
 ぶぶぶっ。
>「…ヤケになってるのはどっちだよ…」
 確かに。
>模試の結果、ガウリイは学年で30位以内に入った。
 そそ、そりは凄い。
>ちなみに、ご当人の是屡先輩はといえば、真相を聞いて寝込んでいる。
 ご愁傷様・・・・。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。

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