◆−――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:13話:魔狼の毒牙−颪月夜ハイドラント (2003/3/21 17:36:25) No.25285
 ┣――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:14話:魔狼の時間−颪月夜ハイドラント (2003/3/22 22:14:06) No.25304
 ┃┣飲み物はやっぱり日本茶がおいしいかなvとか思う今日この頃−氷月椋佳 (2003/3/24 20:26:59) No.25330
 ┃┃┗Re:飲み物はやっぱり日本茶がおいしいかなvとか思う今日この頃−颪月夜ハイドラント (2003/3/25 11:31:49) No.25338
 ┃┗こっちのアルティアさん、本気でまともね(涙)−ユア・ファンティン (2003/3/24 21:46:05) No.25331
 ┃ ┗Re:こっちのアルティアさん、本気でまともね(涙)−颪月夜ハイドラント (2003/3/25 11:50:34) No.25339
 ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:15話:闇を照らす闇−颪月夜ハイドラント (2003/3/25 17:07:40) No.25342
  ┣ガーヴ様強い〜!!−エモーション (2003/3/26 22:26:20) No.25355
  ┃┗Re:ガーヴ様強い〜!!−颪月夜ハイドラント (2003/3/26 22:44:42) No.25356
  ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:16話:凱歌は魔力を乗せて−颪月夜ハイドラント (2003/3/27 18:10:34) No.25362
   ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:17話:絶望に彩られし滅びへの道−颪月夜ハイドラント (2003/3/29 20:44:54) No.25385
    ┣Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:17話:絶望に彩られし滅びへの道−ユア・ファンティン (2003/3/29 21:06:32) No.25386
    ┃┗Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:17話:絶望に彩られし滅びへの道−颪月夜ハイドラント (2003/3/31 14:53:01) No.25409
    ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:18話:裏切りの花園−颪月夜ハイドラント (2003/3/31 14:48:12) No.25408
     ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:19話:最初の審判−颪月夜ハイドラント (2003/4/1 14:27:52) No.25417
      ┣一瞬、メルカトル鮎を連想しました。−エモーション (2003/4/2 21:58:48) No.25431
      ┃┗Re:一瞬、メルカトル鮎を連想しました。−颪月夜ハイドラント (2003/4/3 17:10:16) No.25437
      ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:20話:その迷宮に咲いた花−颪月夜ハイドラント (2003/4/3 15:31:19) No.25435
       ┣意中の人の恋路(?)をライバルの方向へ舗装したのね(笑)−エモーション (2003/4/3 23:55:43) No.25444
       ┃┗Re:・・・恋愛要素もギャグも終わりそう。−颪月夜ハイドラント (2003/4/4 15:42:48) No.25450
       ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:21話:愚かなる死の宴−颪月夜ハイドラント (2003/4/4 18:38:36) No.25455
        ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:邪神が歌う嘆きの歌−颪月夜ハイドラント (2003/4/4 19:09:41) No.25457
         ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:22話:開かれし災禍の門−颪月夜ハイドラント (2003/4/5 15:14:43) No.25463
          ┣そろそろ山場ですか?−エモーション (2003/4/6 22:38:44) No.25486
          ┃┗Re:30数話で完結出来そうです。−颪月夜ハイドラント (2003/4/7 13:18:38) No.25490
          ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:23話:黒の狂詩曲−颪月夜ハイドラント (2003/4/7 17:53:00) No.25494
           ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:24話:轟け敗走の大河よ−颪月夜ハイドラント (2003/4/8 19:27:37) No.25504
            ┣エロイムエッサイム♪ エロイムエッサイム♪−エモーション (2003/4/8 22:10:24) No.25509
            ┃┗Re:格闘ゲーム的から某迷宮探索ゲーム風に・・・−颪月夜ハイドラント (2003/4/9 16:24:59) No.25513
            ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:25話:この世界に生きること−颪月夜ハイドラント (2003/4/9 20:34:45) No.25518
             ┣――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:闇の海に焼かれし御霊は−颪月夜ハイドラント (2003/4/11 15:07:35) No.25525
             ┃┗上記事について−颪月夜ハイドラント (2003/4/11 15:11:40) No.25526
             ┣各個撃破されつつある……という状況ですね。−エモーション (2003/4/11 22:24:56) No.25532
             ┃┗Re:各個撃破されつつある……という状況ですね。−颪月夜ハイドラント (2003/4/12 13:26:55) No.25537
             ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:26話:骸の呼吸−颪月夜ハイドラント (2003/4/12 18:07:21) NEW No.25545
              ┗ガーヴ様……手みやげ持参ですね(汗)−エモーション (2003/4/13 22:32:03) NEW No.25560
               ┗Re:ガーヴ様……手みやげ持参ですね(汗)−颪月夜ハイドラント (2003/4/14 13:34:09) NEW No.25565


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25285――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:13話:魔狼の毒牙颪月夜ハイドラント 2003/3/21 17:36:25


宴があった。
熱に浸かっている。心地良い。
「・・・良いのですか?」
だがそれが逆流して消えてゆくのも刹那の出来ごとであった。
「・・・・・・。」
沈黙した。それが重く苦しい。
静寂が鮮明に感じ取れるようになった。夢からは醒めている。部屋という背景を心のどこかで見ていたのだから・・・。
「命令違反はいけませんよ。」
優しく漏れる声すら鬱陶しい。
(あなたは・・・あたしを癒してくれればそれで良いのよ!!)
そして心で叫んだ言葉をディスティアは自らでも嫌悪した。
同時に、心底哀しげな表情を、声の主カルボナードが露にして、電撃を受けたが如く心が驚愕した。
「・・・誰か訪れたようです。」
そして彼は彼女を抱き締め、幽鬼の如く消え去った。
寂しさの中に言いようのない怒りとそれを拒む感情。
扉が鳴ったのはその時だった。
規則的に響く。ひどく恐ろしい。
だが逃れられぬこと確かで、追い詰められ、静かに顎門へと向かっていった。

風が入る。闇が差す。
静かに開いた扉の向こう。
「・・・魔竜王様。」
赤毛の巨漢。最強の戦士の激しき息遣いが聴こえる。それのみで彼女の魂を奮わせるほど。
「・・・よう。」
息を整え魔竜王は笑顔を浮かべた。
それにディスティアはなお曇る。
「・・・どうした?」
後退りしつつ、部屋へガーヴを迎えた彼女は、
「・・・おはようございます。」
冷たき声を漏らした後、
「・・・失礼ですがお引取りください。」
なお冷気を交え、ガーヴへと放った。
沈黙が続く。
ガーヴはけして退くことはない。
ただ彼女の瞳を覗き込む。
震えるディスティア。
凍れる世界。極寒の中に晒されている。
絶望にも近き時間。我が身を呪うほど・・・。
ただ待った次なる一言を・・・。
長く待って、
「どうしてもか?」
そして唐突に出でた声に、
「どうしてもです。」
答えた瞬間に、
「きゃっ!!」
衝撃が彼女を襲った。
その巨大な右手、手の平が虚空で震えている。
「・・・あほか、てめえは!」
ディスティアの燃えるように腫れた頬に涙が滴る。
それを堪え、ガーヴを睨んだ。だが声は出ぬ。
「てめえがハーフだとか何だとか、んなこたどうでも良いんだよ。だがてめえは魔族だろうが、魔族なら魔族の頭に従うもんだろうが!」
虚ろの刃を受けた心から流れる涙の奔流が彼女を撃つが、言葉は止まらず、
「従わねえのなら、反逆者としてここで滅ぼす。従うなら、てめえの素性なんざ関係ねえ。1人の魔族として、1人前の扱いをしてやるよ。さあ選べ!」
だがそれでもディスティアは心の核では笑っていた。
冷酷な少年と重なり、激しく砕ける。
「・・・少し、時間をください。」
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
黄昏の世界は冷たく暗い。
ガーヴが駆け出してすでにどれだけ経っただろうか。
「遅いね。」
フィブリゾが呟けば、
「ああ遅い・・・」
ゼラスが返す。
他の皆と同じく虚ろと化していた。
「・・・冥王様。僕達だけでも先にいかせてくれませんか?」
ゼラスの脇よりも声が出でた。
「・・・だめ、待つんだよ。」
フィブリゾの声にゼロスは舌打ち1つして、そして沈黙した。
再び凍り付く。
長き時が・・・。
それでも暁は唐突に・・・
「あっ来た・・・。」
昏き光を浴びて、歩む2つの人影。
それは徐々に鮮明となってゆく。
露になったディスティアとガーヴ。
2人強き表情を浮かべていた。
「おい連れて来たぜ。」
そしてガーヴは表情を崩し、フィブリゾへ笑顔を浴びせる。
「どうも。」
フィブリゾも返した。
だが他は沈黙だ。ただ皆、希望を浮かべている。訪れた暁に・・・。
1人の例外を除いては・・・。
「・・・困りますね。」
沈黙の中に不意に届いた。
「ゼロス!」
慌てて、ゼラスが怒鳴り放つが、
「・・・そうやって魔族の足を引っ張るのが、半神魔族のやることですか・・・。」
邪悪な笑みを浮かべるゼロスに微かな脅えすら返された。
そしてディスティアはそれに対し、
「・・・その正体を見抜けずにあの時まで魔族として扱っていた俗物に言われたくない。」
激しき痛みと激怒をぶつけ言い返す。
だがゼロスは笑みを崩さず、
「それについては腹心の方々でも見抜けなかったことです。魔族全体への冒涜と見なして良いでしょうか?」
言葉の吹雪にて猛炎を消し去った。
「やる気か・・・」
すでに冥王すら沈黙を保つのみ。
その中でゼロスは邪悪に、
「やりませんよ。」
そして軽々と返した。
「あなたを傷付けてしまうと邪神狩りに支障が出ますのでそれだけは避けたい。」
嘲るように、罵るように・・・半神魔族を笑っていた。
「それより冥王様。そろそろ始めましょう。」
冥王は震えつつも、
「そうだね。・・・じゃあ全員出発!」
そして始まる戦い。
だが最後までディスティアとゼロスは睨み続けていた。
(絶対に許さない。)
(これで滅びてくだされば良いんですけどね)

後書き
ゼロスが邪悪だ編。
ゼロスファンの方はご注意ください。特にこれから滅茶苦茶拍車掛かっていきます。
後、ディスティアはこれから滅茶苦茶ひどい目にあっていきそうです。ユアさんすみません。
他にもひどい目に遭いそうなキャラって結構多いです。皆様すみませんとあらかじめ言っておきます。

それにしても久しぶりに書いたなこれ。
プロットは随分出来上がってるし、後は根性出して書けば良いんだけどなあ。
あの意味不明な神魔弁当を越えた方じゃないと全然分かんない話を必死で書き書きするのも疲れるだけな感じでしたので休載したんですけど、書いてて結構面白くもあるしまだ続けようと思います。
まあ別の長編に力入れてるし、HPもそろそろ本気でって感じなので遅れます恐らく。

今日、手に入りました孤児最新刊。
チキのわも欲しかったなあ。
「風龍」みたいな読後感が良さげなものも読んでみようかな・・・指輪とか。

それとこれってこのモラトリアムで終わらせる予定でしたけど、終わんないかも・・・。
天魔戦争:金色の魔王と最強兵器『天使』を手にしたイクシオムの戦いの話。
聖魔戦争:2つにわけられ、さらに2つに精神分裂した金色の魔王同士の戦い。
神魔戦争:完結
邪神編:現在
降魔戦争:水竜王と赤眼の魔王の戦い
最終戦争:そして赤の世界の崩壊
最終哀愁天魔戦禄:金色の魔王の復活を恐れたイクシオムがエルネウスらに、『天使』を作る材料の残る世界へ派遣する。
終魔戦争:すべてを失ってもなお生きるために戦うもの達と金色の魔王との最終決戦。
実はまだ続いたり(言うと別のところのネタバレになりかねないし・・・)

これだけあるんだよなあ。
戦いだけでも・・・。
まるで真・魔導物語1巻の最後に付いてる年表を思わせてしまう。
まあ魔族が出るのは、神魔、邪神編、降魔、最終だけですけど・・・。
これだけ書く時間ありそうにない。
天魔や聖魔はそんなに大したことないでしょうけど最終哀愁天魔戦禄は長そうだし終魔も・・・。最終はどうやって世界を滅ぼすか大変そうだし・・・。そして降魔書く気ないし・・・。
まあ適当なところで切ります。
恐らく、邪神編終わってその次くらいで終わらせる予定です。
それでは・・・(まだしつこく御神当てはめクイズ実施中)

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25304――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:14話:魔狼の時間颪月夜ハイドラント 2003/3/22 22:14:06
記事番号25285へのコメント

静かであった。
恐ろしきほどに・・・。
心を戦慄かす魔性の顎門。
絶望を具現するように聳える深緑。
巨大な森がそこにあった。
瘴気に満たされた大樹海が・・・。
「ここが白魔の森か。」
1人の男が声を上げた。
「ええその見ての通りですねオリオン殿。」
波紋となって返るのも男の声、だがなお美しき声であった。
「そうだな・・・ノースト。」
視線は棘を含んでいた。
返す視線も冷ややかだが同質。
「ここは広い。4人個別でも良いのですが、もしも私達を越える強敵がいたとなれば危険に晒すこととなる。充分ありえることです。」
「そうなの?」
入ったのは幼さを持った女の声、
「おいウシャナ、あんなやつとは口利くな!」
だがそれに覆い被さって強き声が放たれた。
それに対し美しき声の男は、
「オリオン殿・・・作戦上質問というのも大事でしょう。あまり情に翻弄されないでいただきたい。」
そして冷ややかな刃で抉り掛ける。
「黙れ、いくぞウシャナ!」
憤慨した海王将軍は脇の少女の手を引いて、闇に消え去った。
その男はしばらく森を見ていたが、やがて・・・
「仕方ありませんね。ルビー殿。いきましょう。」
「あっああ。」
覇王将軍もまた後を追う。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
暗闇。
無明の世界がそこにあった。
その漆黒の鏡面より絶えず響く気配。
「どうした?ゼロス。」
そしてその闇を覗き込み続ける青年がいた。
黄金色の煉瓦を組んで造られた魔族3人が並んで通れるほどの横幅の回廊。照度は高い。
邪の神殿の一画にて立ち止まるのはまさしく名高き高位魔族たる獣神官であった。
「獣王様・・・先にいってください。」
「危険なのか?」
憂い気な女の声に、
「大丈夫ですよ。ただ・・・少々時間を取りそうな気がして・・・」
静かに振り向き、金髪の美女に微笑みを掛けた。
「そうか・・・無理するなよ。」
「ええ分かっております。」
その笑みに含まれた邪気を獣王ゼラスは果たして察知していたであろうか・・・。

足音が遠ざかる。
ゼロスは溜息を吐いた。
それが安堵を生み出し彼を癒す。
そして笑った。
ひどく邪悪に悪辣に・・・。
隠し包まず露にした全貌は、闇が走り、狂ったように歪んでいた。
そのまましばし沈黙を保った後、
「邪魔者は消えました。早く出て来てください。」
そして含んだ瘴気をすべて解き放つ。
闇に波紋が生じた。
生まれたのは腕、そして顔。
美しく儚く脆さを思わせる彫像。
白さを持った中性的な存在。
白衣を身に纏い、髪は銀。
双眸は透明。神秘たる虚ろの瞳。
「現れましたね。」
「・・・狩りに来たのか?」
だがその存在はひどく思い詰めた情を持っていた。
「なるほど・・・覚悟は出来ているのですね。」
凄まじき視線を浴びせ、さらにせせら笑った。
「・・・そうだ。早く殺せ。」
「分を弁えている方は好きですが、生憎それでも僕の神族嫌いは根からのようででしてね。」
だが無邪気な笑み。
ゼロスは最も残虐な表情を浮かべる。
「楽に殺してもつまらないですしね。僕と少し遊びましょうか・・・邪魔者もいませんし・・・。」
それが頂点に達した時には、その存在は、
「やっ止めてくれ・・・それは・・・」
震えていた。
脅えていた。
後悔していた。
それを見てゼロスは笑う。
「そうですねえ。隠れている皆さんも出て来てくださいよ。」
そして彼は言うと同時に杖を天に掲げた。
それが赤く輝き狭き地上に、虚空より3人の影が生まれ、そして落下した。
2人は男――ともに銀髪で美しき。
そしてもう1人は、蒼く輝く長髪、白き肌、太陽の色の双眸。そしてその全貌は、
「・・・あなたが良いですねえ。僕の嫌いな人によく似ている。」
地に繋ぎ止められ、もがくもの達、恐るべき狂気に脅え、竦むもの。
絶対者ゼロスに視線を浴びせられ、その女はひどく震えていた。
「邪神は特に大嫌いなんですよ。僕達の名を騙って悪事を働く邪神はね。」
笑顔に殺気を足してゆく。
「・・・達・・・は・・・・様に・・・えない・・・だ。」
そしてそのうめきに、
「わけの分からないことをほざかないでください。あなたの様な汚れたものに発言権はありません。」
冷たき声を放った瞬間。
「きゃあああああああああ」
その女より悲鳴が上がった。
そしてそれに連なって、
「うわあああああああああ」
「あああああああああああ」
男2人も叫び出した。
「これは連帯責任ってやつです。分かりましたら以後気を付けてください。」
快き笑顔をそしてゼロスは浮かべた。
「さてと・・・あまり時間がありませんね。そこのあなたはお持ち帰りとしましょう。尋問という意味も含めましてね。」
そして近づいてゆき杖を翳すと、嗚咽するままに女は消え去った。
「さてと・・・次はあなた方の始末ですね。」
そして倒れた男2人と、微動だにせぬ中性の存在をそれぞれ一瞥した。
指が鳴る。
その音が死神を呼び出した。
姿も見えぬそれを・・・。
男2人はその機能を停止した。
それを目の当たりにした存在は、
「きっ貴様は・・・いっ一体?」
驚愕に震える声を出した。
「あれ?覚悟してお出ででなかったのですか。」
ゼロスはその存在の首元を掴み。
「それは秘密です。」
静かに答えた。
「後、あなたは楽に死ねませんよ。あの2人を殺したのはあなたに恐怖を植え付けるためですから・・・。」
そして付け加えた声に、その存在は恐怖感を一層増した。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
枯れた大地が無限に思えるほどに連なる。
天空より見下ろす世界は荒廃していた。
だがその中で唯一の例外、それは・・・。
暗黒に包まれし一画。
マナサイト・・・マナディール神聖帝国の帝都であった場所。
凄まじき闇に覆われている。
「まずいな。」
「そうですね。」
それでも2人は闇に近づいてゆく。
心は戦慄に満たされていた。
それでも退けぬ。
距離は刻々と縮まってゆく。
時が永遠であって欲しいと勇猛な魔竜王ですらそう思った。
暗鬼が纏わり付いて来る。
振り払おうとしても振り払えぬ。
そしてそれが消え去るよりも早く・・・それは具現した。
「っ!!」
そしてその瞬間に察知した。
「ディスティア!?」
唐突に辺りを見回した。
だが、気配の察知は信用出来ていた。
つまり、そこにディスティアはいない。
「どこいった!?」
そして空中で立ち止まり、辺りを見回す。
確かな焦りに囚われていた。
「どこだ!?どこにいる!?」
恐怖にも近かったかも知れない。
同じ方向を無駄と思いつつも見回し返した。
そこへ不意に気配が生まれた。」
「っ!?」
背後だろう。
それに安堵半分、絶望半分。それでも収まらぬ心の器を持って、彼は振り向いた。
だが驚愕した。
その姿は・・・。
「ディスティアはいない。彼女がいると厄介なので異空に送らせてもらった。」
冷たき声。
そして強き声だ。
像が重なる。
「貴様は!?」
叫べば、その存在はなお冷たく、
「久しぶりかな・・・魔竜王ガーヴ。」
邪神王アルティア――。
その姿は邪を放つものの、変わらぬ強さを誇っていた。
ガーヴに屈辱の過去が蘇る。

後書き
こんばんはラントです。
だからゼロス邪悪だって言ったでしょ編?
こっちのゼロス結構好きだ。
ちなみに『風よ。龍に届いているか』のザザを微妙に参考にしました。悪魔が大嫌いな彼を・・・。
ウィザードリィやったことある方には絶対お薦めですねこれ。

次回はアルVSガーヴになりそうです。
どれだけガーヴは健闘出来るのでしょうか。
恐らく同じ堕神の秘法使ってた邪竜エルダーより強いですし(アプロスよりは絶対強い。現在版フィブリゾよりも強いかも)
ナイトローズが出るのでしょうか。

指輪物語買いました。高かったです。お金が尽き掛け?
後オーフェンを読んでます。なかなか面白いですこれが・・・。

それでは・・・。

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25330飲み物はやっぱり日本茶がおいしいかなvとか思う今日この頃氷月椋佳 2003/3/24 20:26:59
記事番号25304へのコメント

ふぁーい!こんちは、ラント師匠。

>後書き
>こんばんはラントです。
>だからゼロス邪悪だって言ったでしょ編?
>こっちのゼロス結構好きだ。
・・・・なんかすっごい展開になってますな、この話・・・・
まさにっゼロスは邪悪化してますねぇ
まー邪神&死神さん方はお気の毒に・・・・
あたしも魔族っぽいっゼロスさんが最高に好きv(一応ゼロスファン)
>ちなみに『風よ。龍に届いているか』のザザを微妙に参考にしました。悪魔が大嫌いな彼を・・・。
何処出版ですか?見てみたいですvその本

>邪神王アルティア――。
わぁお!なんかめちゃくちゃ強そうなキャラ登場だよ!奥さん、(←?)
次回はアルVSガーヴになりそうです。
>どれだけガーヴは健闘出来るのでしょうか。
>恐らく同じ堕神の秘法使ってた邪竜エルダーより強いですし(アプロスよりは絶対強い。現在版フィブリゾよりも強いかも)
>ナイトローズが出るのでしょうか。
どうなんでしょうか?わくわくv

>指輪物語買いました。高かったです。お金が尽き掛け?
>後オーフェンを読んでます。なかなか面白いですこれが・・・。
映画でいう『ロード・オブ・ザ・リング』?だっけ?
見ましたかぁ?楽しいですぅ〜v

>それでは・・・。
それでは〜♪しゃばしゃばらんらんるらるらる〜(←何の呪文)

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25338Re:飲み物はやっぱり日本茶がおいしいかなvとか思う今日この頃颪月夜ハイドラント 2003/3/25 11:31:49
記事番号25330へのコメント


>ふぁーい!こんちは、ラント師匠。
こんばんは、氷月副師匠(何それ)。
>
>>後書き
>>こんばんはラントです。
>>だからゼロス邪悪だって言ったでしょ編?
>>こっちのゼロス結構好きだ。
>・・・・なんかすっごい展開になってますな、この話・・・・
まあ凄いかも知れないです。
>まさにっゼロスは邪悪化してますねぇ
>まー邪神&死神さん方はお気の毒に・・・・
あれ?死神って出てきたっけ・・・。
多分、『○○の命を握っている○○の敵役』というのを『○○の死神』と表現した覚えはあるのですが・・・。
ややこしくてすみません。
>あたしも魔族っぽいっゼロスさんが最高に好きv(一応ゼロスファン)
ギャップが良いですねえ。
>>ちなみに『風よ。龍に届いているか』のザザを微妙に参考にしました。悪魔が大嫌いな彼を・・・。
>何処出版ですか?見てみたいですvその本
創土社です。
アマゾン(ヤフー検索で『アマゾン』って入れれば即出るでしょう)には密かに私のレビューが載ってたりします。(もちろん評価最高で)
前作の『隣り合わせの灰と青春』と併せて読むと良いです。(アマゾンのトップでベニー松山で検索すれば両方出て便利)
ウィザードリィというゲームの小説ですが、知らなくても十二分に楽しめる物語だと私としては思います。(知ってりゃ十五分に楽しめるでしょうけど)


>
>>邪神王アルティア――。
>わぁお!なんかめちゃくちゃ強そうなキャラ登場だよ!奥さん、(←?)
異種族のバランス崩壊的に強いやつを抜かせば滅茶苦茶強い範囲に入るでしょう。
>次回はアルVSガーヴになりそうです。
>>どれだけガーヴは健闘出来るのでしょうか。
>>恐らく同じ堕神の秘法使ってた邪竜エルダーより強いですし(アプロスよりは絶対強い。現在版フィブリゾよりも強いかも)
>>ナイトローズが出るのでしょうか。
>どうなんでしょうか?わくわくv
今日か明日には続き出したいです。
>
>>指輪物語買いました。高かったです。お金が尽き掛け?
>>後オーフェンを読んでます。なかなか面白いですこれが・・・。
>映画でいう『ロード・オブ・ザ・リング』?だっけ?
>見ましたかぁ?楽しいですぅ〜v
見ました。
ホビットの冒険読んでたのでなお良かったです。
>
>>それでは・・・。
>それでは〜♪しゃばしゃばらんらんるらるらる〜(←何の呪文)
それでは、どうもありがとうございます。
>

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25331こっちのアルティアさん、本気でまともね(涙)ユア・ファンティン 2003/3/24 21:46:05
記事番号25304へのコメント


>「そうなの?」
>入ったのは幼さを持った女の声、
>「おいウシャナ、あんなやつとは口利くな!」
>だがそれに覆い被さって強き声が放たれた。
>それに対し美しき声の男は、
>「オリオン殿・・・作戦上質問というのも大事でしょう。あまり情に翻弄されないでいただきたい。」

ユ:至極ごもっとも

>そして冷ややかな刃で抉り掛ける。
>「黙れ、いくぞウシャナ!」
>憤慨した海王将軍は脇の少女の手を引いて、闇に消え去った。

ユ:本気で、妹かわいいんですねえ
  家のは、ちゃんとした出番の時から、シリアスで、こういうシ−ンかけないからなあ

>暗闇。
>無明の世界がそこにあった。
>その漆黒の鏡面より絶えず響く気配。
>「どうした?ゼロス。」
>そしてその闇を覗き込み続ける青年がいた。
>黄金色の煉瓦を組んで造られた魔族3人が並んで通れるほどの横幅の回廊。照度は高い。
>邪の神殿の一画にて立ち止まるのはまさしく名高き高位魔族たる獣神官であった。
>「獣王様・・・先にいってください。」
>「危険なのか?」
>憂い気な女の声に、
>「大丈夫ですよ。ただ・・・少々時間を取りそうな気がして・・・」
>静かに振り向き、金髪の美女に微笑みを掛けた。
>「そうか・・・無理するなよ。」
>「ええ分かっております。」
>その笑みに含まれた邪気を獣王ゼラスは果たして察知していたであろうか・・・。

ユ:ないだろうね
火:クスクス、楽しい事始まりそうだねえ
ユ:こいつが、火野アルティア・・・・・・
  性格は、上の詩を参考に(滝汗)

>
>足音が遠ざかる。
>ゼロスは溜息を吐いた。
>それが安堵を生み出し彼を癒す。
>そして笑った。
>ひどく邪悪に悪辣に・・・。
>隠し包まず露にした全貌は、闇が走り、狂ったように歪んでいた。
>そのまましばし沈黙を保った後、
>「邪魔者は消えました。早く出て来てください。」
>そして含んだ瘴気をすべて解き放つ。
>闇に波紋が生じた。
>生まれたのは腕、そして顔。
>美しく儚く脆さを思わせる彫像。
>白さを持った中性的な存在。
>白衣を身に纏い、髪は銀。
>双眸は透明。神秘たる虚ろの瞳。
>「現れましたね。」
>「・・・狩りに来たのか?」
>だがその存在はひどく思い詰めた情を持っていた。
>「なるほど・・・覚悟は出来ているのですね。」
>凄まじき視線を浴びせ、さらにせせら笑った。

火:闘って見たい
  本気のこいつと・・・・・

>そしてもう1人は、蒼く輝く長髪、白き肌、太陽の色の双眸。そしてその全貌は、
>「・・・あなたが良いですねえ。僕の嫌いな人によく似ている。」

ユ:ディスティアか・・・
火:妹が嫌いだと・・・・?
  創られた事を後悔させてやろうか?
ユ:(鈍器で殴る)はいはい、そこまでね
  一つ質問にいいですか?
  ゼロスって、不感症?
  聖書か・・・・それ関連の・・・悪魔だとか、天使だとかが書かれてる本曰く
  七十二クラス・・・・サタンのしたの4大実力者の下の人達は、
  どんなに下っ端でも、天界の血が入っていれば、気配つ−かオ−ラ見たいなもんで
  ハ―フかどうかがわかるって在りましたけど・・・・・。
  それが、事実ならば、わからないゼロスってなんでしょう?

>地に繋ぎ止められ、もがくもの達、恐るべき狂気に脅え、竦むもの。
>絶対者ゼロスに視線を浴びせられ、その女はひどく震えていた。
>「邪神は特に大嫌いなんですよ。僕達の名を騙って悪事を働く邪神はね。」
>笑顔に殺気を足してゆく。
>「・・・達・・・は・・・・様に・・・えない・・・だ。」

ユ:僕(私)達は○○様に逆らえない?

>「それは秘密です。」

ユ:やっと出て来たけど
  逆に怖い

>「ディスティアはいない。彼女がいると厄介なので異空に送らせてもらった。」
>冷たき声。
>そして強き声だ。

ユ:妹が心配なんでしょうか?

>像が重なる。
>「貴様は!?」
>叫べば、その存在はなお冷たく、
>「久しぶりかな・・・魔竜王ガーヴ。」
>邪神王アルティア――。
>その姿は邪を放つものの、変わらぬ強さを誇っていた。
>ガーヴに屈辱の過去が蘇る。
>
>後書き
>こんばんはラントです。
>だからゼロス邪悪だって言ったでしょ編?
>こっちのゼロス結構好きだ。

火:むしろ闘ってみたいね。

>ちなみに『風よ。龍に届いているか』のザザを微妙に参考にしました。悪魔が大嫌いな彼を・・・。
>ウィザードリィやったことある方には絶対お薦めですねこれ。
>
>次回はアルVSガーヴになりそうです。
>どれだけガーヴは健闘出来るのでしょうか。
>恐らく同じ堕神の秘法使ってた邪竜エルダーより強いですし(アプロスよりは絶対強い。現在版フィブリゾよりも強いかも)
>ナイトローズが出るのでしょうか。

ユ:でて欲しいっすねえ。

>
>
>それでは・・・。
>
ユ:兄と妹入れましたけど、ス−ちゃん壊れました。
  それと、上に、アルティア(元祖・風華版)の詩入れましたが、
  こちらのノ―スト君並に、シスコンかもしれません。
  それでは・・・・・・

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25339Re:こっちのアルティアさん、本気でまともね(涙)颪月夜ハイドラント 2003/3/25 11:50:34
記事番号25331へのコメント

こんばんは
>
>>「そうなの?」
>>入ったのは幼さを持った女の声、
>>「おいウシャナ、あんなやつとは口利くな!」
>>だがそれに覆い被さって強き声が放たれた。
>>それに対し美しき声の男は、
>>「オリオン殿・・・作戦上質問というのも大事でしょう。あまり情に翻弄されないでいただきたい。」
>
>ユ:至極ごもっとも
一応仲悪くなってるこの2人。
>
>>そして冷ややかな刃で抉り掛ける。
>>「黙れ、いくぞウシャナ!」
>>憤慨した海王将軍は脇の少女の手を引いて、闇に消え去った。
>
>ユ:本気で、妹かわいいんですねえ
まあ。
>  家のは、ちゃんとした出番の時から、シリアスで、こういうシ−ンかけないからなあ
まあそれが個性なのでしょう多分。
>
>>暗闇。
>>無明の世界がそこにあった。
>>その漆黒の鏡面より絶えず響く気配。
>>「どうした?ゼロス。」
>>そしてその闇を覗き込み続ける青年がいた。
>>黄金色の煉瓦を組んで造られた魔族3人が並んで通れるほどの横幅の回廊。照度は高い。
>>邪の神殿の一画にて立ち止まるのはまさしく名高き高位魔族たる獣神官であった。
>>「獣王様・・・先にいってください。」
>>「危険なのか?」
>>憂い気な女の声に、
>>「大丈夫ですよ。ただ・・・少々時間を取りそうな気がして・・・」
>>静かに振り向き、金髪の美女に微笑みを掛けた。
>>「そうか・・・無理するなよ。」
>>「ええ分かっております。」
>>その笑みに含まれた邪気を獣王ゼラスは果たして察知していたであろうか・・・。
>
>ユ:ないだろうね
そう思うとゼラスって結構母親的かも・・・子を理解しているようでしてないようなところが・・・。
ダルフィンよりもよっぽど・・・。
>火:クスクス、楽しい事始まりそうだねえ
>ユ:こいつが、火野アルティア・・・・・・
>  性格は、上の詩を参考に(滝汗)
ううむ歪んだ方なのですね。

>
>>
>>足音が遠ざかる。
>>ゼロスは溜息を吐いた。
>>それが安堵を生み出し彼を癒す。
>>そして笑った。
>>ひどく邪悪に悪辣に・・・。
>>隠し包まず露にした全貌は、闇が走り、狂ったように歪んでいた。
>>そのまましばし沈黙を保った後、
>>「邪魔者は消えました。早く出て来てください。」
>>そして含んだ瘴気をすべて解き放つ。
>>闇に波紋が生じた。
>>生まれたのは腕、そして顔。
>>美しく儚く脆さを思わせる彫像。
>>白さを持った中性的な存在。
>>白衣を身に纏い、髪は銀。
>>双眸は透明。神秘たる虚ろの瞳。
>>「現れましたね。」
>>「・・・狩りに来たのか?」
>>だがその存在はひどく思い詰めた情を持っていた。
>>「なるほど・・・覚悟は出来ているのですね。」
>>凄まじき視線を浴びせ、さらにせせら笑った。
>
>火:闘って見たい
>  本気のこいつと・・・・・
腹心に次ぐ力を持つ超高位魔族なのに、竜神を余裕で滅ぼした敵とか出て来るせいで雑魚にしか見えなかったゼロス。
これからが本領発揮です多分。
>
>>そしてもう1人は、蒼く輝く長髪、白き肌、太陽の色の双眸。そしてその全貌は、
>>「・・・あなたが良いですねえ。僕の嫌いな人によく似ている。」
>
>ユ:ディスティアか・・・
そうらしいですねえ。
>火:妹が嫌いだと・・・・?
>  創られた事を後悔させてやろうか?
凄い人っすなあアルさん。
>ユ:(鈍器で殴る)はいはい、そこまでね
>  一つ質問にいいですか?
>  ゼロスって、不感症?
>  聖書か・・・・それ関連の・・・悪魔だとか、天使だとかが書かれてる本曰く
>  七十二クラス・・・・サタンのしたの4大実力者の下の人達は、
>  どんなに下っ端でも、天界の血が入っていれば、気配つ−かオ−ラ見たいなもんで
>  ハ―フかどうかがわかるって在りましたけど・・・・・。
>  それが、事実ならば、わからないゼロスってなんでしょう?
まあこの話での天界(いや名称は天空だけど)は凄まじいほど大昔の、L様と争った種族の住処でそこで天使やら悪魔やらの名称が出てますし、神と魔族はそれとは関係ないらしいです。
ともに同じ精神体で、親が違って思考が違って、精神体であることの制約が異なるくらいの同種族に近いものです。
ゼロスどころか魔王以外誰も気付いてないです。
>
>>地に繋ぎ止められ、もがくもの達、恐るべき狂気に脅え、竦むもの。
>>絶対者ゼロスに視線を浴びせられ、その女はひどく震えていた。
>>「邪神は特に大嫌いなんですよ。僕達の名を騙って悪事を働く邪神はね。」
>>笑顔に殺気を足してゆく。
>>「・・・達・・・は・・・・様に・・・えない・・・だ。」
>
>ユ:僕(私)達は○○様に逆らえない?
まあそうなんですねえ。○○様は実はすでに出ている・・・と多分思う。
>
>>「それは秘密です。」
>
>ユ:やっと出て来たけど
>  逆に怖い
同じセリフでも状況が違えば意味も変わるでしょう多分恐らく
>
>>「ディスティアはいない。彼女がいると厄介なので異空に送らせてもらった。」
>>冷たき声。
>>そして強き声だ。
>
>ユ:妹が心配なんでしょうか?
というかアルティアの最大の弱点はディスティア。
フィブリゾはそのために他の腹心を防衛用にしてディスを送り込んだというわけです。
>
>>像が重なる。
>>「貴様は!?」
>>叫べば、その存在はなお冷たく、
>>「久しぶりかな・・・魔竜王ガーヴ。」
>>邪神王アルティア――。
>>その姿は邪を放つものの、変わらぬ強さを誇っていた。
>>ガーヴに屈辱の過去が蘇る。
>>
>>後書き
>>こんばんはラントです。
>>だからゼロス邪悪だって言ったでしょ編?
>>こっちのゼロス結構好きだ。
>
>火:むしろ闘ってみたいね。
まあ強さは変わんないけど多分。
>
>>ちなみに『風よ。龍に届いているか』のザザを微妙に参考にしました。悪魔が大嫌いな彼を・・・。
>>ウィザードリィやったことある方には絶対お薦めですねこれ。
>>
>>次回はアルVSガーヴになりそうです。
>>どれだけガーヴは健闘出来るのでしょうか。
>>恐らく同じ堕神の秘法使ってた邪竜エルダーより強いですし(アプロスよりは絶対強い。現在版フィブリゾよりも強いかも)
>>ナイトローズが出るのでしょうか。
>
>ユ:でて欲しいっすねえ。
必殺技考えねば・・・。
>
>>
>>
>>それでは・・・。
>>
>ユ:兄と妹入れましたけど、ス−ちゃん壊れました。
>  それと、上に、アルティア(元祖・風華版)の詩入れましたが、
>  こちらのノ―スト君並に、シスコンかもしれません。
>  それでは・・・・・・
一応読みました、レスできてなくてすみませんので、今日中入れれれば入れておきます。
それではどうもありがとうございます。
>

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25342――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:15話:闇を照らす闇颪月夜ハイドラント 2003/3/25 17:07:40
記事番号25285へのコメント

――闇に堕とされて焔に焼かれる。

――光に貶められて焔に身を焼く。

「出て来たか・・・邪神王よ。」
だがガーヴはそれでも笑みを取り戻した。
「・・・呼称は気に入らないが、まあ良いだろう・・・魔竜王。」
だがアルティアに変化は見られぬ。
「にしても嫌えな邪神の親玉とムカツクてめえが一致しててホントに幸いなことだぜ。」
「それは逆だろう。憎む相手に絶対に勝てないのだからな。」
焔と氷が睨み合う。
「俺は負けねえよ。絶対にな。」
「虚勢は見苦しい。私が貴様如きに負けることはけしてありえない。」
猛焔と吹雪が混ざり合い、激しき沈黙をそこにもたらす。
だがそれも瞬間には、具現した焔の中に消え去った。
だが消えぬ気配。そして疾風の予感に、ガーヴは左へ移動した。
そして同時に、風は生まれた。それは弧を描きガーヴへ接近してゆく。
「ドラゴンスレイヤー!」
言った途端に右腕に剣が生まれ出で、疾風を容易く引き裂いた。
だがそれと同時にさらなる風が、虚ろの颶風がガーヴを天へと吹き飛ばす。
「ぐっ!」
抵抗したが、それでも流されるまま。そして背後に殺意を感じた瞬間に、
「ぐおおおおおおおおおおおお」
魔竜は吠えた。背の激痛に、アルティアの手刀に引き裂かれた傷に・・・。
怒れるままに降り向き、ドラゴンスレイヤーを振り下ろす。
それはアルティアが消え去るよりも早く、その頭部を捕らえた。
「竜殺しの剣では力不足だ。」
だが消え掛けたアルティアが両腕を突き上げれば、ガーヴの剣の勢いが止まる。
奮起の音がアルティアから聴こえた時にはガーヴはただ宙を舞っていた。
そしてそこをアルティアの両腕より生まれた風が狙い撃つ。
「ぐっ!!!」
凄まじき鮮血が荒廃した大地へ墜ちてゆき、等しく皆砕け散った。
「これが力の差だ。今度こそ分かったな。」
そしてさらに左腕よりガーヴの身体へ数多の光弾を撃ち込む。
「ああ・・・分かったぜ・・・てめえが油断し過ぎだってことがな・・・」
だが傷付いたガーヴは、滅ぶほどの傷を受けたそれでもガーヴは笑っていた。
そして笑みを浮かべるまま消え去った。
「愚かだ・・・愚か過ぎる。」
呟き勝利の余韻に浸った。
「魔竜王よ・・・貴様はこの程度だったのか?」
だがそれは届かぬ。
儚く消え去った。
「・・・この程度だったのか?」
そして再び発する。
だが今度の声は重く沈んでいた。
「・・・この程度だったのか?」
湧き上がった光も今はそれが沈む黄昏。
ただ虚空を見詰め続ける。
不変だった。
(あいつは・・・上手くやっているだろう。)
心の呟きは意味を持たず、そのまま時が過ぎた。
そしてアルティアはやがて薄れる。
その世界からは消えてゆき、そして映ったのは混沌的な空間だった。
溜息を吐く。
その間も道を進んでいる。
そして終わる。
だがそう思い、複雑に澱んだ吐息を流したと同時に、
「星々を渡る悪霊の声!!!」
巻き起こった。
すべての闇を打ち消して、そして届く凄まじき轟音。止んでなおアルティアを蝕む。
「・・・ぐっ・・・どういう・・・ぐっ・・・ことだ・・・ぐっ・・・」
うめきつつ、必死で背後を見ようとした。
「てめえは油断してた。だから忘れてた。」
そして振り向いた先には、紛れもない魔竜王の姿。先ほど付けた傷などけして見られない。
「いや知らなかったのかも知れねえな。あっちの世界の戦い方をな。」
「ぐっ・・・何だ・・・ぐっ・・・と・・・」
笑うガーヴと苦しむアルティア。氷は今にも解けて消えよう。
「わざと過剰にやられた振りして精神世界に逃げ込んで、てめえが来るまで呪文唱えてた・・・ナイトローズのな。」
黒き剣がそして映る。
「アウナスを滅ぼしたのはこの剣だ。そしててめえも同じく滅びろ。」
そして振り下ろされる。
闇の剣はアルティアへと至った・・・。
だがそれよりも早く空間の流れが彼を掻き消した。
「逃げられちまったか。」
ガーヴは苦笑した。
そして消え去る。
次の瞬間に映ったのは先ほどまでの枯れた世界。
闇に包まれたマナサイトが見える。
ガーヴは天を翔け邪悪な地に向かっていった。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
暗い世界。
そこは現実感に満ちていて、それでいて諸処に夢の扉が開いている。
幻想的な月に等しき、黄金の明かりが零れる空間。
静寂は甘美な調べを奏で、喧騒は幻のように追憶を掻き立てる。
「お疲れ様。」
華が咲いた。
「何が・・・ですか。」
高揚した心が現実に戻されたが、急速すぎて熱に浸かってしまう。
「毎日仕事で大変でしょう。」
声の主は美女。相反する魅力を兼ねた究極系の一体。
「俺よりもねえさんの方が大変じゃないですか?」
男は返した。美しい男だった。
「あなたにそう呼ばれたくわないわ。私の弟は1人だけ・・・」
それが半ば恍惚に近かったのは、2人の前方に置かれている血の色をした魔性の液のせいだろう。
「ですが、アルも俺も2人ともねえさんに育てられたと思ってます。」
悪魔の蜜にも平静を保つ彼の口調は硬く、内よりも差は感じ取れぬ。
「そう・・・でもアルは私を護れるくらい強いけどあなたは違う。」
酒に侵された彼女の声は、流れるように、さも歌うようなそんな声。互いを見合う2人には美貌の変化はなくともそれは対称的だ。
「俺はアルに勝ったこともあります!」
そして彼には波紋が沸き立った。それがなお現実へと引き戻す。
「それは知ってるけど・・・アルは強い。私だけじゃない神々を護ってくれるわ。あなたじゃ無理。」
甘い声に潜んだ棘が彼を撃てば、沈黙が生じた。
「・・・それより大変でしょ。死神のお仕事って・・・」
間は開くが状況は不変のままで、再び時が流れ出す時には、
「・・・俺はやつらに指示出すだけですよ。それに死神って別に大規模殺戮するわけではないですし・・・。」
彼は言葉を取り戻していた。笑みを含んだ落ち着いた声だ。
「でも汚れ役でしょ。」
「ですが、ねえ・・・フィーンさんの指示通りに殺すわけですから、罪悪感だって少しは捨てられますよ。」
その棘は小さすぎた。透明すぎた。
「まあそうだけど・・・私の指示より仕事が多いような気がするのよ。死神だけじゃない、邪神も守護神も・・・」
そこで彼は気付く。彼女も平静を取り戻していた。憂いと苦悩の現実感が痛いほどに伝わってきた。さながら大河の如く。
「・・・俺は全然知りませんでしたよ。運命神王のフィーンさんが全部の命令を出してるかと・・・」
「まあ私も竜神様の指示に従ってるだけ何だけど・・・確かに竜神様からもたまに不穏当な命令が下る。だけどそれだけじゃない。私の知らない命令が出てるわ。マナディール崩壊とかも・・・」
重さを感じた。燃える焔を感じた。
闇に堕ちたかのような錯覚。
「・・・でもフィーンさんの責任じゃないですよ。」
不意に生まれていた。
静かに輝いている。
「ハクア・・・君。」
彼女は重圧から解き放たれたよう。
「そんなのおかしいじゃないですか。いくら運命神だからってフィーンさんは完璧じゃないんですよ。」
彼の右腕が伸びる。彼女の腕が連携して退くがそれも一瞬。静かに熱が連結した。
そして左腕も彼女を捕らえ、
「少なくとも俺が護りますよ。アルみたいに強くないのかも知れないですけど・・・。」
「ちょっ・・・ちょっと・・・」
引き寄せられてゆく。
熱を感じ合う。
そして2人は蕩けるような異なる世界へと急接近を始め出した。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
2人の熱が伝わった。沈黙なまま混沌の中へ堕ちてゆく。
燃え上がる焔。
天へ運ぶ風。
そして極限に唇が接近した瞬間。
「ここからはダメ。」
彼女から声が上がる。それが彼の身も心も震わせた。そんな距離だ。
「どうしてです?」
欲望に掻き消されんほどの弱き声だった。
それでもフィーンは優しく、
「・・・私達、姉弟でしょ。」
そして甘い声で告げた。
「・・・そうでしたね。」
彼から笑顔が滲み出る。
暗い世界。
そこは現実感に満ちていて、それでいて諸処に夢の扉が開いている。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「はあはあはあ・・・」
ディスティアは見上げた。
赤く濡れた我が身を見ることなど恐ろしすぎる。
しかし映るものはさらに恐怖を誘った。
銀の長髪、赤き瞳、そして背に持つ黒き翼。
その青年は笑っていた。そして怒ってもいたし嘆いてもいた。
彼の指が静かに動く。
傷付いたディスティアはそれでも逃げられない。
視界に何かが飛び込んで来る。
だが避けられず受けた。
世界から切り離されそうになっているのが分かる。
だが抵抗する術も知らない。

後書き
久しぶりのまともな戦闘シーン・・・のはずだったのに、一方的な虐殺と逆転になってしまった編。
に、ハクア×フィーン編。
に、ディスティアピンチっぽいよ編。
を収録したお得な1話。

って今日日掛け持ち3つもあるのに、これに時間割き過ぎだぞ今日。
まあ仕方ないです。レスのお陰でエネルギーが温泉のように湧き出ましたから・・・。
レスは地球を救いますね。ホントホントに・・・。
というわけで私もこれからは皆様にどんどんレスしていこうかと・・・。
まああんまり数読めないですけど私。
それにメッキー外伝のストーリーに醒めましたからすでに・・・。
こっちのプロットは自分では気に入ってますけど・・・。

ちなみに
運命神:他の神に指示を出す神。王=フィーン
死神:危険人物や不利益となる人物を暗殺する。王=ハクア
邪神:悪いことして世界に適度な絶望を与えつつ、魔族を陥れる。王=アルティア
守護神:秩序を乱すものの独自的判断による始末、世界の監視などをおこない、緊急用の兵力となる。王=ドルノース
産業神:工業や商業を司る。王=シルバース
となっております。

それにしてもどれだけ続くのか・・・
一応、これ終わったら天魔(13話後書き参照)→降魔→最終(天魔に同じく)→最終哀愁天魔戦禄(天魔に同じく)→終魔(天魔に同じく)となる予定。
プロット通りにいけば次は天魔になる。(ネタバレ?)
でも全部書いたら本気でやばい量になるのでどこで終わらせるか悩み中。
とりあえずがんばってみます。

それでは・・・。

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25355ガーヴ様強い〜!!エモーション E-mail 2003/3/26 22:26:20
記事番号25342へのコメント

こんばんは。

神魔弁当からの関連シリーズツリーにレスをつけるのは久々です。
すみませんm(__)m

ガーヴ様……強い……(汗)ひたすらお強いですね、この方は。
アルティア君、ぼろぼろです。大丈夫でしょうか?
ハクア君とフィーン……何やら妖しい関係ですか?(笑)
アルティア君とハクア君、2人を育てたようなものであるフィーン……。
一瞬、「銀英伝」のラインハルトとキルヒアイスとアンネローゼを連想しました。
(おハルとアンネローゼは本当に姉弟だけれど、関係は何となく似ているかも)
そしてアルティア君と同様にボロボロ状態のディスティアちゃん。
兄妹揃って絶体絶命ですね。どうなってしまうのでしょう?

ところで神魔戦争の後、神族って何かあったのでしょうか?
別にわざわざ陥れなくても、放っておいても、魔族は勝手に色々すると
思うのですが。本来そういう方向性の存在なのですから。
♪なんでだろ〜?♪とちょっと疑問に思いました。

では、久々のわりに短くて申し訳ないですがこの辺で失礼します。

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25356Re:ガーヴ様強い〜!!颪月夜ハイドラント 2003/3/26 22:44:42
記事番号25355へのコメント


>こんばんは。
こんばんは。
>
>神魔弁当からの関連シリーズツリーにレスをつけるのは久々です。
>すみませんm(__)m
いえむしろ滅茶苦茶嬉しいです。
>
>ガーヴ様……強い……(汗)ひたすらお強いですね、この方は。
『最強を目指す』類の男?
>アルティア君、ぼろぼろです。大丈夫でしょうか?
大丈夫ですプロット上では(おい)
>ハクア君とフィーン……何やら妖しい関係ですか?(笑)
妖しくなったような感じですけど・・・
>アルティア君とハクア君、2人を育てたようなものであるフィーン……。
>一瞬、「銀英伝」のラインハルトとキルヒアイスとアンネローゼを連想しました。
ううむ銀英伝は読んだことないですなあ。
古本屋に売ってないかな?
>(おハルとアンネローゼは本当に姉弟だけれど、関係は何となく似ているかも)
>そしてアルティア君と同様にボロボロ状態のディスティアちゃん。
>兄妹揃って絶体絶命ですね。どうなってしまうのでしょう?
本当にどうなってしまうのでしょう(おい)
>
>ところで神魔戦争の後、神族って何かあったのでしょうか?
ありました。その辺はわざと隠してたんですけど・・・。
>別にわざわざ陥れなくても、放っておいても、魔族は勝手に色々すると
>思うのですが。本来そういう方向性の存在なのですから。
まあそうですね。
上部は疲弊してるけど下が勝手にやりそうだし・・・
>♪なんでだろ〜?♪とちょっと疑問に思いました。
一応理由はあります。
それを理由と呼べるかは分からないんですけど私には・・・
>
>では、久々のわりに短くて申し訳ないですがこの辺で失礼します。
いえ短くないと思いますよ多分恐らく。
久々のレス本当にどうもありがとうございます。

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25362――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:16話:凱歌は魔力を乗せて颪月夜ハイドラント 2003/3/27 18:10:34
記事番号25342へのコメント

形容するならばそれは闇であった。
漆黒に塗り潰された空間だ。
垣間見えるその実体は絶望に包まれている。
「ああ面倒くせえな。」
荒廃した大地を踏み締めつつ、彼の眼差しはそれを捉えていた。
神聖都市は闇に満たされている。
巨体がそれだけ絶望感を増している。
ガーヴはそれを見て、
「・・・全部燃やすか。」
そう呟くと、億劫そうに剣を左持たぬ左手を翳し、
「地獄の龍よ!」
萎んでゆく力を振り絞り、激しく言葉を放った。
それが響くと同時に右手が煌き、風とともに焔の球が生まれ出でた。
「燃やし尽くせ、貴様のその叫びと焔にて!!」
風はなお激しくなりそして、それがやがて焔の球を攫ってゆく。
凄まじき速さに乗った球はそして、暗黒の都市へと至った。
轟音が響く。そして光が熱風が彼に届いた。
ガーヴは嘲笑った。
焔はすべてを蹂躙する。命ある獣の如く迅速な殺戮をおこなう。
「はははははははは消え去れ、消え去れ。」
笑い続けた。
その中でも時は流れ、やがて宴は終わる。
崩壊した大都市。
たった1つの焔に焼き尽くされた都市には残り香としての虚像など見えない。
ただ焼け爛れた土と・・・そして、
「何だありゃ?」
・・・一角に蟠る闇。
ガーヴの瞳には確かに映っていた。
そしてそれは驚く間もなく変貌を始める。
視界が闇の閃光に覆われた。
それは一瞬で終わったものの、眩んだ隙にその闇は消え去っており、代わりにそこには・・・魔人がいた。
だがガーヴは・・・笑った。
美しき魔人だ。悠久に流れる大河の如き金髪に、究極的な男性像とも言える美貌。
夜色の衣を纏ったその男は、口元より牙を覗かせ、両手には鋭利な爪を持っていた。
「・・・ヴァンパイア・ロード・・・か。」
ヴァンパイア・ロード――ヴァンパイアとは完全に別格の存在。
完全なる不死性と、絶対的なる魔力を持ち、別世界では国1つを一夜で我がものとしたとも言われる恐ろしき魔人。噂では高位魔族すら退ける地獄の悪魔(ネザーデーモン)に匹敵するほどの力を持つというほど・・・。
「・・・えれえ化けもん召喚してやがるな。」
だがガーヴはなお笑顔だった。
そして駆け出す。
「だが俺は・・・魔竜王だ。絶対に負けはしねえ。」
そして跳躍し風を感じつつ、ナイトローズを振り下ろした。
響き渡る金属音。
ガーヴの剣は魔人の爪に受け止められていた。
そして気流が魔人からガーヴへと至る。
それは凄まじき衝撃波となり魔竜王を宙へ舞い上げた。
闇の弾丸がさらに襲い掛かる。
「ふざけんじゃねえ!」
なお風に翻弄されつつも、ガーヴは吠えた。
それにより彼の顎門より火焔が吐き出される。
闇と焔がぶつかり合い、ともに霧散した。
(互角ってところか・・・)
だがそれが彼を歓喜に震わせる。
空中で体勢を立て直すと、
「喰らえ!」
左手を突き出し、火焔球を解き放った。
魔人もまた無言で右手を突き出し、そこから闇の弾丸を放つ。
再びぶつかり合ってそれらは同じく消え去る。
だが、ガーヴはすでにその位置にはいなかった。
魔人の視線が揺れる。それはやがて気配を1つ察知した。
しかし遅すぎる。
「野に咲く一輪の悪魔(デモン・シード)!!」
ナイトローズより放たれし闇の一撃は魔人へと直撃した。
だが悲鳴など1つも聞こえない。
それでもガーヴは勝利の笑みを浮かべていた。
そして闇が消え去るのを待った。
だが悠然と立つ不死の王。
魔竜王は驚愕した。焦りと脅えが生まれて来る。
必死でそれらを断ち切って、
「この不死身野郎が!」
強く吐き捨てて、そして斬りかかった。
距離が近づいてゆく。
彼に残っていたのは怒りであった。
そう怒りだ。
竜は吠えた。
不死の力などけして恐れず、
「物理的にも精神的にもおかしいだろうがてめえは!」
魔人が闇の弾丸を放つ。
だがガーヴは叫びを込めて剣を振りかぶる。
闇は容易く霧散した。
なお放つ。だが結果は同じだ。
そして魔人はそこで気付いていた。
不死であるはずの彼は脅えていた。
そうその魔竜王を・・・そして彼の放つ一撃を・・・。

――暗き王よ

――常闇の王よ

――貴様の道理に反するものに

――裁きの光を与えやがれ

ガーヴの呟きに生まれたのは、それは浄化の光であった。
時間とともにそれは力を増して・・・刃に宿り、不死王を切り裂いた。
その一撃に無敵の魔人はその一撃に崩れ落ちて消え去った。
ヴァンパイア・ロードの最期は唐突に起きていた。

「ふう・・・終わったか。」
ガーヴは踵を返す。
「って・・・ん?」
そして見た。
いつしか枯れた大地に横たわっていた。
1人の女が倒れていた。
「何で・・・こんなとこにいやがるんだ?」
疑問を浮かべつつも走り、近寄る。
自らの先ほどまでの立ち位置に近き場所であった。
(ひでえ傷だ。)
ただ倒れている。先ほどまではいなかった少女。
「大丈夫か!」
そして両手で肩に触れて揺らす。
だがなお不動だ。
「おい大丈夫か。」
形容は保っている。
滅びには遠く至っていないだろう。
だがそれでも不安に足る傷。
辺り一帯が偽りの血で濡れている。
「おいだいじょ・・・」
さらに揺らした。
だがそこで変化。
闇が・・・不意に飛び込んで来た。
「ん?」
少女からディスティアから、突然放たれたのは闇だった。
そしてそれは無明ながらも彼に1つの像を与える。

――明日魔族時間正午、メギド山跡にて待っている。
                    サーティアス――

それはそんな文字であった。
(こいつをここまでボコボコに出来るとはな。)
だが怒りとともに感嘆もまたあった。
(俺と同格くれえになってるかも知れねえな。)
そしてそう呟いた瞬間。
「うっ・・・」
うめき声。
視線を戻せば、身を捩るディスティアの姿。
「気付いたか・・・。」
彼は即座に優しげな声を掛けた。
「・・・魔竜王・・・様。」
「大丈夫だ。終わったぜ。・・・お前は寝てろ。」
そこで風を平穏と初めて思えた。

◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆

「また結界か。」
ノーストは静かに手を伸ばした。
虚空が震える。
だが彼の腕に込められた魔力が、その幕を打ち破る。
「オリオン殿達は気付いていないようだ。私達で手柄が立てられますね・・・ルビー殿。」
「あっ・・・ああ。」
掛かった声に女は答える。
そして2人踏み出した。

天すらも暗く、木々に覆われた空間は、さながら地下迷宮のよう。
静寂がどこまでも浸透しており、恐怖だけが風に乗って来る。
だが彼女が感じたのは、そんな恐怖ではない。
微かな熱が浮かんでいた。
心が熱く焼けるようだ。
「どうしました?」
冷たい容貌のノースト。
彼は紛れもなく美しい。
「あっ・・・何でもない。」
だが今は彼が焔を放っている。
彼女の心は苦しんでいた。
そのまま歩みが進む。
そして・・・
「ルビー殿。」
声が再び掛かった。
「えっあっ・・・何だ?」
慌てつつ、答える。
期待が浮かび、光輝いた。
「・・・来ますよ。」
だが即座に現実に引き戻される。
森がざわめく。気付けば区画は広い。
「私よりもルビー殿の方が戦闘には長けている。私は後方援護に回りましょう。」
それに複雑な思いが生まれたが、
「あっああ」
覇気に欠ける声とともに前方に飛び出した。
瞬間、眼前に飛び込んで来たのは・・・焔。
素早く飛び退る。
「消え去れ!」
ノーストが言葉を放った。
同時に蠢く猛焔は音もなく消え去る。
ルビーはその隙に剣を呼び出し、それを一閃した。
凄まじき風が迸り虚空を撃つ。
歪んだ空間より生まれ出でたのは――頭部に布を巻き、そこより黄金の角を2本生やした存在。容貌は中性的で蒼白くそして美しい。そして布を全身に纏ったそれは宙に浮かんでいた。
「アークデーモンか。」
ノーストが呟く。
「知っているのか?」
ルビーは剣を構えつつ、背後の男へ尋ねた。
「ええ、悪魔族の高位種です。とはいえルビー殿1人充分に勝てる相手だ。」
「お前は戦わないのか?」
すでに彼女は研ぎ澄まされて、先ほどまでの熱など持っていない。
「いえ・・・私は、召喚者の方を叩くので・・・」
その瞬間にノーストは消え去った。
それと同時に正面へと視線を戻す。
アークデーモンを強く睨んだ。
途端に焔が生まれる。
だが恐れずに、剣を翳した。
響いたのは金属音だ。
そして焔は鞭の形容を成していた。
一歩退く、蛇のようにうねる鞭をかわし、焔を放った。
アークデーモンは素早く横へかわす。
その隙にルビーは飛び掛かっていた。
だがその姿は消え去る。
「きゃっ!」
同時に背中に熱が走った。
風の力を借りて即座に振り向く。
そこには飄々と立つ悪魔の姿。
背の痛みに怒りを覚え、込み上げて来るそれに任せて再び焔を放った。
同時にそれよりも高く飛翔しアークデーモンに迫ってゆく。
彼女の焔を引き裂いていた鞭は的確に彼女を狙ったが、転移しかわす。
そしてルビーは相手の背後に具現化した。
剣を突き出す。
だがそれよりも速く、アークデーモンが焔に覆われた。
凄まじき魔の熱に跳び退り、それでも火焔球を撃ち出した。
相殺して一部消えた焔。
続けて焔を放つ。
だがアークデーモンは転移してかわした。
殺気を感じてルビーは跳ぶ。
焦りが生まれた。
空中で振り向いた彼女に映ったのは凄まじき焔の群れ。
それを安堵と転化し、アークデーモンへ向けて焔を放った。
それでも焔を相殺させるのみで、傷つけることは出来ない。
(どうやったら私1人で勝てるというのだ?)
焔は焔を相殺するのみで、剣は焔のバリアに阻まれる。
そしてそんな思考を打ち破り、焔の鞭は彼女に向かって来た。
反射的にそれをかわす。
そしてこちらも反射で焔を放った。
バリアを打ち消したが、それは再び生まれる。
修復する結界。
(待て・・・まさか。)
焔の鞭はなお襲って来る。
次なる一撃は、彼女を中心に渦を巻くように、つまり彼女を締め上げるように・・・。
だがそれを天まで飛翔し、上手くかわした。
そして焔をなお放つ。
その一撃に出来る限りの魔力を込めて・・・。
「燃え尽きろ!」
巨大な火焔球が焔の魔人へと向かう。
焔の鞭には当たることはなく。
だがその姿が掻き消える。
「甘い。」
だが瞬間に火焔球は反転を始めた。
それはアークデーモンの位置。
一瞬前までルビーの死角となっていた位置へと疾走する。
そしてぶつかり合う瞬間、アークデーモンのバリアが広がった。
爆音と凄まじき閃光を放ち、それらはともに消え去った。
そしてなお焔を放つ。
それでもバリアは衰えずに、それを相殺した。
(やはり・・・魔力か・・・。)
なお避ける間を与えずに放った。
バリアは彼女の焔を弾く。
鞭を避けて素早く斬りかかった。
アークデーモンは転移した。
生まれた位置にルビーは焔を放った。
バリアが相殺した。
それを繰り返す。
アークデーモンは傷を受けていない。
だがその魔力はやがて枯渇し・・・ルビーの火焔球が邪悪な悪魔を焼いた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおお」
アークデーモンは絶叫する。
焔が四方八方へ飛び散ってゆく。
それをルビーはかわしつつ呪文を紡ぐ。

――空と大地の狭間に生まれし

――風を飲み込む赤き龍よ

――流れとなり、渦となり

――死神となりて愚者を滅ぼせ

凄まじき焔が生まれ出で悪魔をただ焼き尽くした。

静寂が戻る。
彼女もまた疲弊しきっていた。
絶望的な緑もまた、柔らかな寝台に思えるほど・・・。
「終わったか・・・。」
1人心地る。
「さすがだ。・・・やはりあなたは素晴らしい。」
感嘆の声が不意に背後に聞こえた。
「そっちは終わったのか?」
ルビーは振り向きノーストを見やる。
「ええ、少々手間取りました。」
「そうか・・・。」
緑の中にただ2人。
静かな中に見詰め合っている。
2人はともに微動だにしない。
そのまま時間が流れてゆく。
停滞した世界の中で、心だけが焦っている。
「ルビー殿。」
声が掛かった。
「何だ?」
2人の距離が縮まるのをルビーは確かに感じていた。
「早く帰りましょう。」
「えっあっ・・・そうだな。」
夢から覚めてしまったが、それでも想いは残っていた。
(ノースト・・・。)
美しき男。魔族に反旗を翻したことあれど、魔に生まれしものに変わりはない。
彼女に灯った焔を彼女自身が認めようとした。
だがその瞬間、
「こんなところで男2人見詰め合っているのもいささか気持ちが悪い。」
ノーストはそう呟いた。
「・・・お・と・こ・だ・と・・・」
今、運命の歯車が廻り出す。
闇と焔とに彩られたどす黒き歯車が・・・

後書き
ガーヴ、ディスティア&ノースト、ルビーのバトル編。
ちなみにゼラス達は余裕でボス倒してるでしょうし、オリオンとウシャナは森で迷ってるだけでしょうし、書かないです。

にしてもウィザードリィの敵さんが2人も・・・しかも強すぎだし(強い方の敵だけど、怪物じみた冒険者には余裕で屠られるような感じでしょうし)
まあ結構影響されてると思います。最近は疲労のためやってないですけど・・・。
あれはまさしく「想像のRPG」なのでゲームで作成したキャラを使って小説を書くという手も可能でしょうし・・・。

それにウィザードリィ小説は結構素晴らしいものがありますし・・・。
ベニー松山さんの「隣り合わせの灰と青春」「風よ。龍に届いているか」「不死王」はどれも素晴らしく文章力その世界に引き込んでくれますし、「風龍」は某所でレビューも書きましたし・・・。「司星者セイン」もあのグロさに耐えれれば面白くて素晴らしいですし・・・。
古川日出男さんの「砂の王」は狂気のままに生きるキャラが魅力的(ヴァル&アシュエル最高)で、そしてウィザードリィ的でありつつ、元のゲームを知らなくてもどんどん読ませてくれます。
「砂の王」はすでにログアウト冒険文庫の廃刊のせいでほとんど手に入らない状態ですけど・・・。
後、手塚一郎さんのウィザードリィが読みたい。こちらは手に入ってないんですよねえ。この方の話素晴らしいけど(1個だけ読めた)、出版社に報われてないようですし・・・。
うわっ長くなりました。

まあヴァンパイア・ロード戦はともかく、アークデーモン戦はまあそこそこまともに書けたのではないかと・・・。
にしても戦闘シーンって書いてると長いけど、読むと一瞬なんですよねえ。

それではこれで・・・。

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25385――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:17話:絶望に彩られし滅びへの道颪月夜ハイドラント 2003/3/29 20:44:54
記事番号25362へのコメント

 少年の声が掛かる。
 「お帰り。」
 魔竜王ガーヴに映った空間には、すでに魔族達は集まっていた。
 彼の腕にはディスティアが抱えられている。
 それを見て冥王フィブリゾは、
 「あれ・・・ディスティアどうしたの?」
 何かを恐れつつもガーヴへ言った。
 「ああ、邪神にやられたそうだ。」
 面倒そうにガーヴは返す。
 「邪神ね・・・。」
 そして少年は頭を沈めた。
 空間中に沈黙が走る。
 「・・・ところで君のところには誰がいた?」
 時間を置いてフィブリゾは尋ねた。
 するとガーヴは天を一度見上げる。やはり黄昏の琥珀色の空だ。
 一瞬後には飽きて見終え、
 「そうだな、邪神王に・・・そしてヴァンパイア・ロードっていう化けもんがいたな。」
 暗い口調で答える。
 フィブリゾもそれに反映されたが、
 「・・・まあ良いや。疲れただろ。皆解散だよ。」
 光に満ちた声を張り上げる。
 「あっでもガーヴはディスティアを次宮に運んで。それにゼラス・・・君は残ってくれるかな。」
 疾風の如く付け加えた。
 「分かったぜ。」
 「ああ。」
 ともに快く返事をする。
 静けさが増していった。

 やがて沈黙が始まった。
 それは長く続いている。
 黄昏の薄闇に拍車を掛けて、寂しさを惹き立てる沈黙だ。
 だがそれも打ち切られる。
 「ねえ・・・ゼラス。」
 少年は静かに声を上げた。何かを崩していまわないような控えめな口調だ。
 「・・・何?」
 2人は向かい合っていた。ともにその表情を探り合える。
 今はともに静かだ。特にゼラスは無表情に限りなく近い。
 沈黙が続く。
 静かに、それでも重く・・・。
 影響されてフィブリゾの唇は微かに震えていた。
 だが言葉を紡いでゆく。
 「・・・僕達は神々に勝てると思う?」
 そして出でた言葉にゼラスは一度身震いした。
 憂いと恐れと絶望が混ざり合い暗い表情を映し出す。
 だがそれでも闇を振り払い、
 「魔王様の欠片を全部覚醒させ私達と力を合わせて四竜王を倒した後、神の世界を襲撃すれば勝てるんじゃないか?」
 そして答える。
 それでもフィブリゾは暗いまま、しばし沈黙した後に、
 「難しいだろうね・・・神々は僕達より事実強い。」
 「まあそうかも知れない。」
 沈んでゆく。
 天よりもこの2人が遥かに昏い。
 「・・・あの時の剣士を魔王様が今でも呼び出せれば四竜王には負けないだろうけど、でもルナも召喚に長けているはずだ。それにそれ以外の力を持ってると僕は思う。」
 それにゼラスは驚愕した後、間を置いて、
 「・・・まさか人間の持つ可能性をか・・・。」
 浮かべた言葉に再び驚いた。
 だがフィブリゾは平然と、
 「違うよ・・・。人間の可能性についてはまだ僕達も神々も分かってない。ただそんなものがあるとしたら神々に多分取られるだろうね。これは部下を使ってアンケートを取らせた結果なんだけど下級魔族は人間を惑わせたり襲ったりしたい欲求を持ってるみたいだ。干渉の禁止令を続けるのもそろそろ限界だよ。人間は多分神々のものになるだろうね。そしてやつらはさらに違う力も持ってるし、いずれ負けるねこのままじゃ。」
 長く言葉を連ねた。
 ゼラスは沈む心を支えつつ、
 「それで違う力っていうのは結局何なんだ?」
 やや強き口調で訊ねた。
 するとフィブリゾは澄まし顔で、
 「マナサイトが狙われた理由知ってる?」
 訊ね返す。
 ゼラスは呆れを微かに孕んだ顔で、
 「・・・世界の核があの街の地下にあるのだろ。」
 さも当然そうに答えた。
 「そうだよ。・・・世界の核の力・・・つまりこの世界の精霊の力だね。まあ『始まりの人』の生まれ変わりがいたりもしてたんだけど・・・」
 フィブリゾはそっと笑みを浮かべた。
 『始まりの人』とはつまり魔王の欠片を持つものである。その生まれ変わりにもその欠片のみは反映される。
 だがゼラスは重い表情で、
 「だがそれは下級の輩でもなければそれほど効果は出ないんじゃないか?」
 返した。視線は冷たい。
 だがフィブリゾは翻弄されることはなく、
 「まあそうだけど・・・核から出るエネルギーをそのまま精霊族の召喚に使ったらどうなるかな。ルナならそんなことしそうじゃない。」
 「まさか・・・」
 衝撃を受ける。
 「あの時の娘――僕が見るには高位の精霊族だね――をあの時よりも簡単に呼び出せる。ルナが他に強力なやつを呼び出せるとしたら・・・いやすでにヴァンパイア・ロードやアークデーモン・・・それに君が戦ったフラックみたいなやつが世界中に・・・」
 重さに満ちた沈黙が訪れる。
 2人はただ震えていた。
 絶望に包まれる。
 逃れることは出来ぬ運命。
 脅えを必死で振り払う。
 だが闇は無限に浸食して来る。
 その循環は恐ろしい。
 風が吹き抜けた。
 再び震え出す。
 だがやがて時が流れていって、やがて時の重さが勝り、言葉を吐き出された。
 「ごめん・・・こんなこと言っちゃって・・・」
 「・・・いや良い。」
 返す言葉は冷たかった。
 だが、
 「とにかく僕は出来る限りのことをやってみるから・・・。」
 明るく温かく笑みを浴びせれば、ゼラスの表情はやがて氷解してゆき・・・
 「・・・そうか・・・」
 熱を持った声を出した。
 「じゃあ・・・僕は帰るね。」
 「ああ。」
 ゼラスの眼前でフィブリゾは消え去る。
 そして瞬く間に黄昏の隠り世には誰もいなくなった。
 (・・・でも自体はもっと大変かも知れない)
 (・・・ただの馬鹿だと思っていたが違うようだな。)
 転移の直前の心の言葉はそれぞれ自らの心に強く浸透していた。
 その影響は激しく違えど・・・。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
 「君はどう思う?」
 遥かな天空に風はない。
 暗くも明るくもなくただ虚空が無限に広がっている。
 「何のことですか?」
 ただその空虚を否定するのは宙に浮かぶ2つの存在。
 銀髪碧眼の中性的な存在と、漆黒の男の2人だ。
 「決まってるだろここの神族だよ。」
 せわしなさを感じさせる口調だ。だが瞳は平静を示している。
 「・・・あいつのことですか?」
 返す声は優美で冷たい美貌も吸い込むような魅力に包まれている。
 「そうだよ。あの子がいるみたいさ。」
 返す側には笑顔が1つあったが、その碧眼は曇りきっていた。
 「姉上でも呼びますか?」
 漆黒の男の声はそこにて研ぎ澄まされていた。刃の煌きを思わせる。
 「でもアダマス来るかな?」
 「ポルテ様の命令なら必ず来るでしょう。」
 さらに次は無情なほどに冷たい返し言葉だ。
 「カルボナード、僕を呼ぶ時はお母様って呼んでっていつも言ってるだろ。それに僕は命令は大嫌い何だよ。押し付けはよくない。」
 「あいつにはあんなことをしたのにですか?」
 さらに冷気が篭ってゆく。
 「まあ・・・あれは・・・もう過ぎたことだし・・・」
 男の言葉は対峙する相手を動揺させるのには足りていた。
 「過ぎてはいませんよ。・・・あいつは・・・生きているのですから・・・。」
 さらに続く。
 「まっまあそんな考え方も出来るけどね・・・ぼっ僕はちょっと用事思い出したよ・・・あっでもあの件は絶対にね。・・・じゃじゃあもう消えるよ・・・じゃあね。」
 そしてローザリア・ラ・トゥール・ポルテは消え去った。
 カルボナードは、美貌の男は、
 「全く困ったものだ。」
 1人溜息を吐く。
 「・・・私に力があればな・・・。」
 さらに呟いた。
 哀しさが出でたが涙は生まれない。
 彼の瞳が渇いていた。
 だが重さに変わりはない。
 かぶりを振った。激しく強く。
 そして放つ。
 「そうだ・・・私は虚無。ただ保つことを続ければ良い。」
 
後書き
ついに邪神狩り編が終了。
次は衝撃の展開が待っていることでしょう。
ちなみにゼラスが戦ったフラックというのは道化師の姿をした妖魔でやはりウィザードリィのモンスターです。ドラゴン顔負けのブレス吐きます。想像したくないけど・・・。
それと気付いたのはウィザードリィではヴァンパイア・ロードではなくバンパイアロードらしい。
まあ良いですけど別にこれはウィザードリィノベルじゃけしてないし・・・。

そしてHPが結構形になってきてます。
でもエラーが起こりやすいのはなぜ?
ともかく基本的に複雑なHPではないので、結構完成も遠くないのでは・・・。
それとエル様探偵ものを最後まで書き終えることが出来ました。
明日は休憩を取って、明後日から修正しつつ別話とともにこれを書き続けていこうと思います。
にしても10枚しか書いてないのにもう限界とは・・・。

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25386Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:17話:絶望に彩られし滅びへの道ユア・ファンティン 2003/3/29 21:06:32
記事番号25385へのコメント


>◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
> 「君はどう思う?」
> 遥かな天空に風はない。
> 暗くも明るくもなくただ虚空が無限に広がっている。
> 「何のことですか?」
> ただその空虚を否定するのは宙に浮かぶ2つの存在。
> 銀髪碧眼の中性的な存在と、漆黒の男の2人だ。

ユ:片方、カルボちゃん
風:弟の中にも似たようなやついたな・・・(げんなりとした顔で)

> 返す側には笑顔が1つあったが、その碧眼は曇りきっていた。

ユ:盲目?

> 「カルボナード、僕を呼ぶ時はお母様って呼んでっていつも言ってるだろ。それに僕は命令は大嫌い何だよ。押し付けはよくない。」

ユ;でも外見男だよね?
セ:そうですよね。
  薔薇の君はそうのはずですが。

> そしてローザリア・ラ・トゥール・ポルテは消え去った。
> カルボナードは、美貌の男は、
> 「全く困ったものだ。」
> 1人溜息を吐く。
> 「・・・私に力があればな・・・。」
> さらに呟いた。
> 哀しさが出でたが涙は生まれない。
> 彼の瞳が渇いていた。
> だが重さに変わりはない。
> かぶりを振った。激しく強く。
> そして放つ。
> 「そうだ・・・私は虚無。ただ保つことを続ければ良い。」

ユ:なんか、無理にそう思う事で、今の状況にいるようなひとだねえ

> 
>後書き
>ついに邪神狩り編が終了。
>次は衝撃の展開が待っていることでしょう。

ユ:心よりお待ちしています。

>にしても10枚しか書いてないのにもう限界とは・・・。

ユ:人ぞれぞれだしね。
  風華最新号に募集あり
  兄と妹入れました。
  結構、ラブラブです。

  ではでは

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25409Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:17話:絶望に彩られし滅びへの道颪月夜ハイドラント 2003/3/31 14:53:01
記事番号25386へのコメント


>
>>◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
>> 「君はどう思う?」
>> 遥かな天空に風はない。
>> 暗くも明るくもなくただ虚空が無限に広がっている。
>> 「何のことですか?」
>> ただその空虚を否定するのは宙に浮かぶ2つの存在。
>> 銀髪碧眼の中性的な存在と、漆黒の男の2人だ。
>
>ユ:片方、カルボちゃん
>風:弟の中にも似たようなやついたな・・・(げんなりとした顔で)
みゅみゅみゅ(意味不明)
>
>> 返す側には笑顔が1つあったが、その碧眼は曇りきっていた。
>
>ユ:盲目?
そーいう表現です。盲目ではないです。
>
>> 「カルボナード、僕を呼ぶ時はお母様って呼んでっていつも言ってるだろ。それに僕は命令は大嫌い何だよ。押し付けはよくない。」
>
>ユ;でも外見男だよね?
>セ:そうですよね。
>  薔薇の君はそうのはずですが。
心も男。
>
>> そしてローザリア・ラ・トゥール・ポルテは消え去った。
>> カルボナードは、美貌の男は、
>> 「全く困ったものだ。」
>> 1人溜息を吐く。
>> 「・・・私に力があればな・・・。」
>> さらに呟いた。
>> 哀しさが出でたが涙は生まれない。
>> 彼の瞳が渇いていた。
>> だが重さに変わりはない。
>> かぶりを振った。激しく強く。
>> そして放つ。
>> 「そうだ・・・私は虚無。ただ保つことを続ければ良い。」
>
>ユ:なんか、無理にそう思う事で、今の状況にいるようなひとだねえ
そんな感じっす。
>
>> 
>>後書き
>>ついに邪神狩り編が終了。
>>次は衝撃の展開が待っていることでしょう。
>
>ユ:心よりお待ちしています。
ようやくプロローグが終わったというかそんなような感じです。
まあそんなに長くないですけど・・・。
>
>>にしても10枚しか書いてないのにもう限界とは・・・。
>
>ユ:人ぞれぞれだしね。
・・・いつもは20枚書いて余裕状態。
>  風華最新号に募集あり
>  兄と妹入れました。
>  結構、ラブラブです。
時間見計らって読んでおきます。
>
>  ではでは
それでは・・・。
>
どうもありがとうございます。

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25408――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:18話:裏切りの花園颪月夜ハイドラント 2003/3/31 14:48:12
記事番号25385へのコメント

静かな部屋だ。
気配は彼の他には感じられない。
そんな空虚な世界に白き息吹は舞い上がった。
(竜神様は・・・何をお考えになっている?)
呟きつつ、卓に置かれた茶を手に取る。
そこに幻の世界が映った。
マナサイトの地下に存在する世界の核のエネルギー・・・それを彼女はすべて奪い取った。
そしてそれを彼には知らさなかった。
そしてそんな力が必要だろうか・・・。
(一体何を企んでおられる?)
空いた片手で胸部をなぞる。
背中より全身にいき届いたダメージがなお強く刻まれている。
(そして・・・本当にあの方は竜神様なのか・・・)
さらに浮かんだ言葉に、彼はひどく震撼した。
そして扉が鳴ったのはその時だ。
「アルティア様・・・」
障壁を挟んで女の声が響く。
「何だ?」
茶を口に含みつつ返す。だが絶えず両腕は震え続けていた。
「・・・竜神様の使者が訪れております。」
そして衝撃に尖端的な破壊音を呼び起こした。
大地が濡れている。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
照明は希薄。
闇に包囲された空間。
静かだ。
空気の愛撫がただ慰める。
だが焔は一層強まるのみで、虚空を見上げつつ心を沈めていた。
「・・・・・・・・。」
言葉は出ない。出でるのは吐息のみ。
「・・・カルボナード。」
静かに呟いた。全身に熱が駆け巡った。
不意に扉が鳴る。
光が彼女に満ちて来た。
だがそれも一瞬で凍り付いた。
・・・理解したのだ。
指を鳴らす。
同時に等しく扉が開いて、それと同時に溜息が吐かれた。
「・・・やあ・・・。」
照明の如き声だ。だがやはりどこか沈んでいる。
「・・・冥王様。」
その声には確かに嫌悪が混じっていたが、それでも自らで抑えたのも鮮明だ。
「・・・傷大丈夫?」
寝台に座った女。真紅の薄い夜着を身に着けているのみ。
部屋に入って来た少年の瞳にはそれが確かに捉えられていた。だが呼び掛けたが、
「・・・帰ってください。」
返されたのは刃。
「・・・そう。」
それでも痛みを感ずることはない。ただ心が闇に沈んだ。
「・・・でも、これからは僕の命令に従ってもらうよ。」
しかしそれでも強き声を発する。
衝撃が至ったのは女の方。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
だが沈黙だった。
言葉は出ではしなかった。
「・・・それだけ・・・分かったね。」
それでもフィブリゾは優しく笑った。
そしてその途端に姿が消え去る。
その途端に暴風が扉付近に荒れ狂い。それが扉を強く弾いた。
不思議なことに無音。扉は閉まっていた。
静かだ。
空気の愛撫がただ焦らす。
そんな中、ディスティアは密かに俯いた。
焼けるような熱さだったが不思議に受け入れられた。
――その肯定を・・・。
だが顔は上げない。地上を観るのみであった。
ほぼ虚無に等しい世界だ。
だが眺め続けた。
数多の空想が続く。
心はそれでもなお昏き。
「どうしました?」
だがそれもその時まで、声が届いたと同時に、顔は昏くも心は明かりを取り戻した。
「・・・分からないの。」
「分からない?」
聞き返す男の声。ディスティアの視線はそちらへ這ってゆく。
「あたしは冥王フィブリゾが嫌い。そしてあたしを半神魔族と言って罵るやつも嫌い。」
強くそして弱々しく叫んだ。瞳はそれでも渇いている。
やがて彼女に捉えられたカルボナードは、
「憎いですか?滅ぼしたいですか?」
静を守っていた表情を邪悪へと歪ませていた。
「・・・え?」
惑い、震える。
それが止まらない。
「冥王フィブリゾを嫌悪するのは当然のこと。好くか嫌うかその2つしかありませんよ。」
それでも彼は冷静であった。
笑みもない。顔は整っている。
ただその双眸が吸い込まれるほど暗黒的だ。
沈黙した。選択肢はそれのみ。
だが震えていた。恐れていた。
その言葉を・・・
「それに半神魔族であることも事実。罵られて当然ですよ。」
焔が静かに燃え上がった。
赤黒き灼熱の業火が彼女を焼く。
「・・・だが私はあなたに最適の抜け道を知っています。」
そして初めて男は踏み出した。
その瞳は邪悪に澱んでいる。
「いや・・・」
彼女は寝台へと昇る。
「おや・・・拒むつもりですか・・・私の救いを・・・」
歩みは近づいてゆく。
獲物を追い詰める獣の如く。そしてそれ以上に邪悪で、それでいて表情は無邪気で・・・。
「いやぁあああああああああああああああ」
絶叫したディスティアは恐怖とともに屈辱と凄まじき喪失感を具現させていた。
心が砕けてゆくのが鮮明。そして男が近づいて来るのがなお明らか・・・。
(・・・あたしは・・・一体?)
深き闇が襲って来る。
だが焔がそれを阻止した。
「逃げてはいけません。・・・逃げては・・・。」
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
暁の世界に静かに風が吹き抜けてゆく。
深淵の世界も例外なく明るい。
すべて擬似的なものであるが・・・。
≪ブルルルホホーン≫
音が響き渡った。
静寂がそれに壊されてゆく。
≪ブルルルホホーン≫
再び鳴った。無気味なほどに前者と酷似。
だが違ったのは風、眼前の扉が開いた。
「全く・・・こんな朝っぱらから・・・一体何ですの・・・ってお姉様!!!」
眠たげな声は一瞬にして驚愕に転化した。
「お前こそ私の鼓膜を破るつもりか!」
「あっお姉様・・・一人称『わたし』に変えたんですね。」
「そうだ。だがそんなことはどうでも良いっ!!」
衝撃波を打ち返す。
対峙するのは2人の男女。否、両者女性である。
赤髪赤眼の男性的な女と金髪金目の美少女だ。
ルビーとガーネットである。
「でも魔族に鼓膜はありませんわよ。」
「ぐっ・・・。」
ルビーは心に浅い傷を受けたが、
「そんなことより大変だっ!」
素早く切り出す。その表情は確かな焦燥。
「へえ・・・そうですか?」
だがガーネットはそれに邪悪に笑っていた。
「とにかく冥王様を呼べ。」
だが気にせずに激しく叫ぶ。
「・・・呼んで来てくださいガーネット様、の間違いじゃないですの?」
無邪気に見えて限りなく邪。戦慄がルビーを襲ったが、
「うるさい、どけっ!!」
素早く眼前の少女を跳ね除け飛び出していった。
「全く・・・乱暴ですわねえ。」
地に伏しつつガーネットは1人呟いた。
それは風に流れて風に消える。

「冥王様!!」
光が差し込む。
開け放たれた扉の向こうには、椅子に座りカップを手にした少年の姿。
「・・・何の用だい?」
沈黙の後、軽く返した。
それに一瞬流され掛けた焦りも即座に戻り、
「ディスティア様・・・いえディスティアが・・・」
そして必死で続きを紡ぐ。だがそれ以上は吐息が空を切るのみ。
それに気付いたフィブリゾは、
「ルビーの手料理をまずいと言ったの?」
「違います。」
穏やかに訊く。素早く否定される。
「じゃあ愛の告白をされたとか?」
「それも違います?」
「じゃあいきなり襲われたとか?」
「全然違います。」
「じゃあ・・・首吊ってたとか?」
「それは似てます。」
言葉に拍車が掛かっていったがそれも終わり、
「じゃあ、誰かに滅ぼされた?」
「正解です。」
沈黙が走った。
そして数瞬後・・・。
「えっえええええええええええええええええええええええ!!」
フィブリゾの驚愕は天を突き破った。

後書き
ごめんなさい・・・やっちゃいました。
すみません・・・すみません。
しかも犠牲予定者まだいます。
すみません。

後、微妙に矛盾し掛けてた。無理矢理直せたか?ってところですけど・・・。後隠し設定が変更され掛けてる。ピンチです。
それと世界の核のエネルギーは、核エネルギーとは違いますし。それになければ世界が滅びるわけでもないです。
世界を造った精霊の余った力とでも言いましょうか・・・。

ここで何となくクイズ。
織音
雨死夜納
獲烈贄吾
堕流不院
我愛武
螺流田悪
羅愛使徒
絶羅主
絶狼主
愚螺雨死獲羅
能棄人
堕威
愚螺雨
死獲羅
不武裏憎
吾不老守
瑠火
我熱人
鎖不愛夜
御春
鬼還
大夜門奴
辺裏流
死栄納
雷獲
弟守呈愛
吾流呈愛
不陰
怒流能主
知破吾主
白亜
遭成
虎陰主
獲堕
羅増多
法流手
狩暴納愛人
水賦威怒
瑠納
其竜
鎖武羅弐愚導
我雨裏威我武裏獲
鎖吾帝明日
泥愛暴狼主
音斬愛弟門
吾悪弟門
烈鎖弟門
武羅守弟門
万灰吾弄土
凝巣
愛隠
恵瑠
逝死御無
獲値薄
壁鎖磨主
要手薄
不英遊滓
数捻流
仇益
不羅紅


これらの漢字を読みましょう。
すべてキャラクターの名前ですが、1人まだ未登場のキャラ。
それと出てこないかも知れないキャラ(?)も・・・(スレイヤーズ知ってれば大丈夫ですけど)
そして数人、別話に出ているキャラがいます。
また普通に読めないキャラがたくさんいます。
60点満点。賞品は後に考えます。

それでは・・・。

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25417――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:19話:最初の審判颪月夜ハイドラント 2003/4/1 14:27:52
記事番号25408へのコメント

静かな森の中、濡れた大地を踏み締め歩く。
だが前方より不意靄が溢れ出した。
それでも彼は平然と歩く。
だがやがて世界は白く染め上げられた。
「・・・おはようございます。」
そして届いた声は美しい。だがそれに酔い痴れることもなく、
「何の用だ。」
重く強き声を放った。
「『先日』の件は礼を言います。」
だが怯まずに返って来る声に、確かに怒りが込み上げて来る。
「・・・分かった貴様は特別に見逃してやる。消えろ。」
だが靄に隠れた存在は、
「それでは困ります。『やつら』の襲撃のタイミングなどを教えていただかないと・・・。」
それでも平然と返した。彼は驚愕に囚われた。
「・・・なぜそれを知っている!」
焦り混じりで小さく怒鳴る。
「竜神の記憶からですよ。」
ノーストは笑った。
「侮れんやつだ。・・・下等種族(魔族)のくせに・・・。」
彼に怒りが増してゆく。それをノーストは嘲笑った。
「まああなた様から見れば私など下等種族に過ぎないでしょうね。」
「ここで貴様を滅ぼしても良いのだぞ。」
怜悧な男に向けて彼は殺意を放った・・・が、
「確かに私ではあなた様に絶対に敵うはずがない。シャブラニグドゥすら足元に及ばないほどの力を持つあなた様には・・・。」
それも凍り付く。彼の見えぬ眼光により。
「だが絶対に負けない。『ステルス』を掛けた状態のあなた様では私を捕らえることは出来ないでしょう。そしていくらあなた様でも今は母には敵うまい。」
優位が崩れゆくのが明白だった。
「・・・私をしばらく安全な場所に置いてくれませんか・・・スピネルさん。」
「貴様・・・」
彼は歯噛みした。怒りを必死で打ち消してゆく。
「・・・その代わりとして1つ良い提案がありますよ。それでどうですか?」
獅子を眼前とした鼠。
だが獅子はけして鼠を狩ることはなき。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「・・・開けます。」
「・・・うん。」
緊張感が膨れ上がる。
恐怖を孕んだ焦りが生まれ、そして後悔の激流が襲う。
そしてその眼に映るのは・・・
「・・・・・・。」
普遍の部屋。安堵が込み上げて来る。
フィブリゾはそれでも脅えつつ、足を踏み入れた。
だがそれと同時に戦慄は形を成して降り掛かる。
「・・・・・・。」
沈黙は先ほどよりも重い。
部屋の一角、寝台の付近に真紅の海が形成されている。
そして溺れ苦しくものの顔。それには胴体が存在しえなかった。
「・・・ディスティア!!」
恐怖と苦悶に満たされた表情のディスティアの首がそこに置かれていた。
身体はどこにも見当たらぬ。
「どうですか・・・冥王様。」
背後より震えたルビーの声が届く。
「どうですかって・・・滅茶苦茶グロいじゃない。」
冥王には悪寒が走り抜けていた。
「いえ・・・哀しくはないんですか?」
ルビーが返す。
それにフィブリゾは焦りつつ、
「・・・魔族が他人の滅びを哀しんでて良いの?僕は犯人を探すことが大事だと思うけど・・・。」
「・・・ですが冥王様はシェイナ殿の滅びを哀しんでいたようですけど・・・。」
光が昇り即座に沈む。それは明暗。速すぎし輪廻だ。
「・・・それはこの前までの僕、今の僕は哀しみには負けないよ。」
(ディスティア・・・)
だが心は暗かった。雨が降っている。
思い出は冷たい。だがけして虚ろではない。
(・・・僕を嫌っていた。だけど僕は・・・・・・好きだったさ。)
打ちつけられる心。衝撃波が胸を震撼させる。
だが同じくして光は生まれ、
「そうだね・・・まず同族の犯行と見て良いかな。神族とかならすぐに警備が気付くだろうからね。そして相手は形を残して滅ぼしている。これが出来るのは魔力の量から見て恐らくダルフィンかグラウシェラー・・・ということはこのどちらか・・・。」
そしてそれは輝いてゆく。
(ディスティア・・・君を滅ぼしたやつは許さないよ。)
だが心は昏い。燃え上がっていてもやはり昏い。
その明暗の中で彼は生きている。
「ルビー・・・グラウシェラーとダルフィンを呼んで来てよ。」
フィブリゾは昏く言葉を紡ぎ、そして明るく言った。
「・・・はい。」
ルビーも沈んでいた。フィブリゾと・・・同じ。
同じく振り向いた。ルビーは歩き出す。
だがその瞬間に、
「その必要はありませんわ。」
届く声、そして部屋の外より生まれし影。
ガーネットとサファイヤがそこにいた。
「どうしたんだい?・・・サファイヤ、ガーネット。」
ルビーは立ち止まり、フィブリゾは訊く。
それにガーネットは笑みを浮かべ、
「・・・覇王様や海王様は犯人ではありませんわ。」
そして虚空より出でしもの、それは銀の光。
「まさか・・・」
焦り、脅え、後悔、喪失、怒り、恨み、憎しみ、惑い、破滅。
「・・・冥王フィブリゾ様・・・あなたを逮捕します。」
そして衝撃が彼の心を貫いた。
「えっ・・・・・・。」
思考は混沌と化し、ただ言葉が空回りする。
「・・・昨日、ディスティアの部屋にいきましわね・・・フィブリゾ様♪」
無邪気な笑顔。
それに焼けるような後悔と恐怖を覚えた。
「おとなしく捕まってくださりませんとこちらも強硬手段に出なければなりません。」
ガーネットは笑っていた。
最も邪悪で最も無邪気な笑顔にて・・・。
(違う・・・僕じゃない・・・違うんだ。)
だが言葉は出でない。
(僕はただ・・・)
だが過ぎてゆくのは時間のみ。
(・・・チガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウガウチガウチガウチガウチガウチガウ。)
だが変わらない。
すでに哀しみなどなかった。
冥王は堕ちてゆく。
闇の底へ・・・。
鍵が掛かった。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
そこは闇の中だ。
果てしなく暗く。限りなく絶望的。
「・・・起きてください。」
声が届く。
ひどく邪気に満たされていて、笑っている。
だがその笑顔は無邪気。
罪を覚えぬものの如く。
「・・・起きてください。」
薄目でそれを見やる。
変わらぬ表情はやはり恐ろしき。
震えた、そして時間に安堵した。
だが・・・
「・・・起きてくださいと言っているでしょう。」
不意に衝撃が走った。
「きゃああああああああああああ」
凄まじき電撃が連なる。そして絶叫する。
そして最後に恐怖が残った。
「やっと起きましたね・・・ディスティアさん。」
男が1人いた。笑顔を湛えた男だ。
「違う・・・私は・・・」
声を絞り上げる。
だが・・・
「きゃあああああああああああ」
電撃が走った。
「良いですか・・・今のあなたはディスティアさんです。それだけはご理解しておいてください。」
その笑顔の恐ろしさに彼女は思わず頷いた。
「さて・・・あなたからはいろいろ知りたいことがあるんですよ。」
闇の中。互いだけが鮮明に見える。
だがその境界は絶対であり、そして彼も絶対者だ。
「神族の様子が少々おかしいですしね。とりあえず知っていることを教えていただきましょうか・・・。」
「誰が・・・貴様・・・きゃああああああああああああああああああ。」
さらに電撃が走った。
「ディスティアさん・・・今のあなたは僕には絶対に逆らえないように出来ているんですよ。諦めて本当のことを話してください。竜神は何を考えているのですか?」
そしてなお笑った。それによって恐怖がさらに強まり、
「竜神など・・・すでにあの方の・・・」
彼女はうめき声を出した。
だが、
「きゃああああああああああああああ」
それでも走る電撃。
「・・・ふっふっ、興味深いですね。・・・ではもう少し詳しく話していただけないでしょうか?」
ゼロスは笑う。だがそこには凄まじき嫌悪感。
彼女は脅えていた。
深淵の闇に光は訪れぬ。













先に書いた後書き。
ちょっと荒いかな編。
詰め込みすぎたか?
すみません。早く終わらせたいのでこのシリーズ。

現在ちょっと悩み中。
いや邪神編終わったら天魔戦争(オリジ)いくんだけど、どうしよう。
世界観もキャラも大まかなストーリーも大体の順序も出来てるのに構成が全然出来ない。
すぐ終わるか途方もなく長くて短調になっちゃいそう。
一応タイトルは『ハイドラント的創世記――天魔戦争――』と仮決定されてたりするけど・・・。
降魔は書きたくないなあ。他のも全部ヤだ。天魔で終わらせると思います。最終とか終魔とかストーリーとしては面白くても、小説にし辛いような気がしますし、まずスレイヤーズキャラ何てL様くらいしか出て来ないし(天魔にも言えるが・・・)

現在の進行状況。

闇龍王(メッキー外伝):順調とは言えない。本当にスローペース。ちなみにメッキーとの関連性はほぼ皆無。でも昨日プロット完成させたからこれからは・・・。

めぇ☆探偵エル(タイトル変更):まだ未修正。見直しは嫌だなあ。ちなみにほとんどオリジナル。

風神の迷宮(HP):基本は完成かな。後は小説をアップしつつコンテンツを増やしてゆくのみ。

それではこれで・・・

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25431一瞬、メルカトル鮎を連想しました。エモーション E-mail 2003/4/2 21:58:48
記事番号25417へのコメント

こんばんは。
自分の方が一段落ついて、やっとレスが書けます♪

いきなり襲われたディスティアちゃん。
しかも首が残っている……。
すみません、真っ先にメルカトル鮎(摩耶雄嵩.作のシリーズに出てくる
絶対友人どころか知り合いにもなりたくない、性格言動が最悪最低、極悪非道な
銘(名ではないと本人が言っている)探偵)の殺され方を連想しました。
テーブルの上に乗っていれば完璧♪
そしてあっさりと犯人にされてしまうフィブリゾ君……。
何だかフィブリゾ君、言い様に踊らされている、というよりも
やたらと嵌められやすいんですね。何だか不憫です。
濡れ衣はちゃんと晴らせるのでしょうか。

さて、ディスティアちゃんは……どうなったのでしょうか?
魂だけ他人の身体に入れられたのか、誰かが恐山のイタコ状態(笑)になって
ディスティアちゃんを呼びだしているのか……。
さらに行動が不可解なゼロス。魔族モード100%(さらに倍率ドン!)の
彼は、何をしようとしているのでしょう。

ハイドラントさんのフィブリゾ君は、どこか繊細な感じがしますね。
何だか応援したくなります。(私が書くフィブリゾ君は本当に極悪ですし(汗))

どうなるのか、続きが楽しみです。

☆「銀河英雄伝説(略して銀英伝)」について(注意:長くなります)

古本屋には全巻揃っているかどうかはともかく、あると思います。
でも通常の図書館なら、まず確実にあります。学校図書館は司書及び
司書教諭次第ですが。
完結してすでに13〜14年近く経ってますが、最近徳間デュアル文庫版で
刊行されていました。ノベルズ版での誤植と明らかなミス等が修正してありますし、
これまで未収録だった短編も収録されているので、読まれるのでしたら、
そちらの方をお薦めします。
また、道原かつみさんによるマンガ版は、原作の2巻まで(徳間デュアルだと
4巻まで)ですが、おハル・キルヒアイス・アンネローゼの関係はこちら
だけ見てもよく分かります。こちらの最大の長所は原作者の苦手な女性心理の
描写が、上手にフォローされていることでしょうか(笑)
ついでにアニメにもなってます(既に完結済み)
かなり原作に忠実なことと、俗に「銀河声優伝説(ただし、男性声優のみ)」
と言われるほどキャストが多いこと、完全にキャラクターのイメージで選んだ
キャスティングなのでキャストがベテランばかりで豪華なことで有名です。
(当時でも「銀英伝」だから出来たと言われるキャストです……絶対キャスト予算
度外視していると思う)
どれほどイメージを優先したのかは、作品中の台詞がたった一言「チェックメイト」
しかない(無口という設定なので)キャラに津嘉山正種氏(主に洋画中心の
大御所。俳優としても活躍)を起用したことでもよく分かります(汗)
……普通しないよ……こんな使い方……。

と、思わずエキサイトしてしまいました(滝汗)
最後に、原作を読む時のアドバイスとして、「1巻の序章は飛ばしても良い」
と言っておきます。序章は「歴史書」のノリなので、ビギナーは大抵1巻の
序章で挫折するんです……(汗)
文章に慣れてから読んでも問題ありませんので、駄目だと思ったら、1章から
読むのをお薦めします。

無意味に「銀英伝」でエキサイトしていてすみません m(__)m

では、続きを楽しみしつつこの辺りで失礼いたします。

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25437Re:一瞬、メルカトル鮎を連想しました。颪月夜ハイドラント 2003/4/3 17:10:16
記事番号25431へのコメント


>こんばんは。
>自分の方が一段落ついて、やっとレスが書けます♪
お疲れ様です。
私も落ち着かせたいが次から次と・・・逆に時を経て忙しくなってる。(世間から見れば超絶暇人)
>
>いきなり襲われたディスティアちゃん。
>しかも首が残っている……。
>すみません、真っ先にメルカトル鮎(摩耶雄嵩.作のシリーズに出てくる
>絶対友人どころか知り合いにもなりたくない、性格言動が最悪最低、極悪非道な
>銘(名ではないと本人が言っている)探偵)の殺され方を連想しました。
一体どんな方なのだろうか?
>テーブルの上に乗っていれば完璧♪
何か滅茶苦茶嫌な光景・・・。
>そしてあっさりと犯人にされてしまうフィブリゾ君……。
魔族だと証拠不充分でもそーいうこと出来るようです。
『疑わしきは罰せよ』の世界なんでしょう多分。
>何だかフィブリゾ君、言い様に踊らされている、というよりも
>やたらと嵌められやすいんですね。何だか不憫です。
昔は馬鹿王子(アプロスとディスティアの子という噂があったので王子)と呼ばれてましたし冷酷非情で悪辣で狡猾な反面、そういう部分も残っているわけです。
>濡れ衣はちゃんと晴らせるのでしょうか。
どうなるのでしょう。
まあプロットは立ってますけど・・・珍しく。
>
>さて、ディスティアちゃんは……どうなったのでしょうか?
>魂だけ他人の身体に入れられたのか、誰かが恐山のイタコ状態(笑)になって
>ディスティアちゃんを呼びだしているのか……。
滅びてもその一部を具現し続けるような術を掛けられてるようです。
ちなみに、これは腹心では特性値の内で魔力の高いグラウシェラーとダルフィンと万能派のフィブリゾのみが使えるという設定がなされてます。
まあ実際その誰でもないわけですけど・・・。

>さらに行動が不可解なゼロス。魔族モード100%(さらに倍率ドン!)の
>彼は、何をしようとしているのでしょう。
ゼロスの行動はそれほど意味を持っていない(頭は良くても、本能というかそういう面で動くことがしばしばあるノーストと同質な性質があるので)ので大物が絡む中でのストーリーには大きく影響しないでしょうけど、キャラの印象だけは付けようと思いまして・・・。
>
>ハイドラントさんのフィブリゾ君は、どこか繊細な感じがしますね。
>何だか応援したくなります。(私が書くフィブリゾ君は本当に極悪ですし(汗))
まあ主人公というものを書くとどうしても繊細になるものだと最近は・・・。
私自身も繊細な面ありますし・・・。
>
>どうなるのか、続きが楽しみです。
どんどん本来のスレイヤーズから離れていく・・・。
魔族知識をちょっと齧っただけくらいの方の方がまだ楽しめそうなストーリーかも知れないです。
それにどんどん拍車掛かっていくと思います。
>
>☆「銀河英雄伝説(略して銀英伝)」について(注意:長くなります)
>
>古本屋には全巻揃っているかどうかはともかく、あると思います。
>でも通常の図書館なら、まず確実にあります。学校図書館は司書及び
>司書教諭次第ですが。
>完結してすでに13〜14年近く経ってますが、最近徳間デュアル文庫版で
>刊行されていました。ノベルズ版での誤植と明らかなミス等が修正してありますし、
>これまで未収録だった短編も収録されているので、読まれるのでしたら、
>そちらの方をお薦めします。
>また、道原かつみさんによるマンガ版は、原作の2巻まで(徳間デュアルだと
>4巻まで)ですが、おハル・キルヒアイス・アンネローゼの関係はこちら
>だけ見てもよく分かります。こちらの最大の長所は原作者の苦手な女性心理の
>描写が、上手にフォローされていることでしょうか(笑)
>ついでにアニメにもなってます(既に完結済み)
>かなり原作に忠実なことと、俗に「銀河声優伝説(ただし、男性声優のみ)」
>と言われるほどキャストが多いこと、完全にキャラクターのイメージで選んだ
>キャスティングなのでキャストがベテランばかりで豪華なことで有名です。
>(当時でも「銀英伝」だから出来たと言われるキャストです……絶対キャスト予算
>度外視していると思う)
>どれほどイメージを優先したのかは、作品中の台詞がたった一言「チェックメイト」
>しかない(無口という設定なので)キャラに津嘉山正種氏(主に洋画中心の
>大御所。俳優としても活躍)を起用したことでもよく分かります(汗)
>……普通しないよ……こんな使い方……。
>
>と、思わずエキサイトしてしまいました(滝汗)
わざわざありがとうございます。
これだけ書いてくださって嬉しいです。
携帯で覗いてて思わず笑みが・・・
>最後に、原作を読む時のアドバイスとして、「1巻の序章は飛ばしても良い」
>と言っておきます。序章は「歴史書」のノリなので、ビギナーは大抵1巻の
>序章で挫折するんです……(汗)
なるほど・・・。
>文章に慣れてから読んでも問題ありませんので、駄目だと思ったら、1章から
>読むのをお薦めします。
>
>無意味に「銀英伝」でエキサイトしていてすみません m(__)m
いえむしろありがとうございます。
>
>では、続きを楽しみしつつこの辺りで失礼いたします。
ご感想に加えご紹介まで・・・本当にどうもありがとうございます。

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25435――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:20話:その迷宮に咲いた花颪月夜ハイドラント 2003/4/3 15:31:19
記事番号25417へのコメント

どれだけ時間が経ったであろうか。
こだまする静寂の音。
闇が微かに揺れている。
すべての大気は重さを持って、すべての響きは絶望を持って、心を凍らせ、また燃やす。
久遠にも等しき時は変わらず緩慢な速度で流れている。
不変が絶えず続き意識を苛む。
そんな中、彼は微動だにしない。
静かだ。変わらない。
そんな世界、覚悟はすでに果て、苦しみはすでにその壁を破っていた。
浸食して来る負の感情。
それにより氾濫する大河の水を溢すまいと耐えていた。
堕ちぬよう。狂わぬよう。
それを糧に時を流し続ける。
だが変化の兆しは訪れぬのが事実だ。
だがそれのみならば容易くもあろう。
閉鎖に苦しむ反面、思考の半ばは現実より切り離されて違う焔を浴び続けている。
(ディスティア・・・)
喪失、すべての曇りが輝いて見える。
1つは後悔。1つは絶望。
もどかしさには変わりはない。
すべての曇りが拒絶されて来た過去がだ。
闇はそれを知らせた。
無限の苦を味わいつつ、さらに精神は蹂躙されているのだ。
そしてその地獄はさらなる悪魔を呼び覚ます。
(・・・シェイナ・・・ライエル・・・)
喪失感が溢れ出した。
滅び、そして罪。それらがすべてを消し去った。
哀れな罪人はやがて感情を具現化させる。
雨が降った。
誰にも知れることはない。
静かに雨が降った。
だがそれが焔を鎮火することはなき。
切り離された心は病んで朽ち果てる寸前をただ保つ。
堕ちぬよう。狂わぬよう。滅びぬよう。
どれだけ時間が経ったであろうか。

1000年牢獄。
時すら惑わす闇の箱。
刹那の時すら形を持ち、長き時は悠久と化ける恐ろしき牢獄。
魔族は忠誠を重んじる。
だがそれでも破るものも存在する。
罪には罰が必要である。
そのために造られし罰こそが1000年牢獄。
凄まじき苦しみを一夜にして味わす究極の罰である。
冥王フィブリゾは証拠不充分にしてこの刑に処された。
高位魔族として力を持つために容疑の段階にして放置など許されることではあるまい。
遥か過去よりそれの掟は変わらぬ。

どれだけ時間が経ったであろうか。
意識はなお苦しみ続ける。
生気はない。
ただ存在するのみ。そしてそれも否定させられんほど。
暗黒の中でフィブリゾはただ待った。
石造りの冷たい部屋の中。闇が、光が、牙を剥く中、遥か遠き救いの訪れを・・・。
その宝石の如き瞳は涙の膜に歪んだ世界を映す。
その先の真の光を待った。
儚き希望と無限の絶望は相対する。だが結果は見えた。
やはり変わらぬ闇。
溜息が昇った。それすら彼を痛め付ける。
(・・・だめだ・・・僕は・・・)
すでに過去すら混濁する。
女を滅びに導く少年の姿が見えたりもした。
その度に彼は重い首を振るが、やがて時が経てば再度生まれる。
単調な輪廻だ。
だが冥すぎる環だ。
(・・・違う・・・のに・・・違う・・・のに・・・)
そしてそう呟けば、過去の光が生まれ出でる。
やはりはその循環であった。
時は刻々と刻まれる。
あまりに緩やかなスピードで・・・。
感情の迷宮・・・そうも呼べた。

過ぎたのは10年か。
それとも100年か1000年か。
すでに刻むことなど忘却し、焔も薄れ意識も潰えかけし終りの刻。
彼は紛れもない光を見た。
偽りでなき確かな光を・・・。
音が鳴った。
明白な音だ。
それは希望を誘う音。
高揚する心。
すべての雲が晴れていた。
凍てついた表情が溶け始めようとする。
墜落を・・・さらなる絶望を恐れ、必死で笑顔を隠し絶望を促がしたが、それでも心は輝いてゆく。
1000年の苦しみより今解き放たれ、世界中で歓喜の協奏曲が鳴響いていた。
顔を前方へ伸ばす。そして光の先を見た。
影が微かに見取れる。
それはやがて当然のように形を成す。
映ったのは、捉えたのは・・・。
その瞬間に音を立てて、光が逃げる。
闇が覆い尽くし、再び空間が閉ざされた。
だがそれでも絶望でなく彼は希望に至っていた。
「・・・シェーラ。」
闇の中を1人歩いて来る少女の姿。
それはまさしく覇王将軍シェーラの姿。
どこか彼女は笑っているように見えた。
それも一瞬。その笑顔が実体であることに素早く気付く。
「・・・フィブリゾ・・・様・・・。」
壁にもたれ掛かる少年に向けて、少女は返した。
「・・・どうしてこんなところに?」
すでにその声は普遍のものを取り戻していた。
「・・・ガーネットさんに・・・お願いしたんです。・・・私も・・・一緒に・・・入れて欲しいって・・・」
彼女は少年の脇に座り込み、熱を帯びた声で答えた。
「・・・何で・・・そんなことを?」
強い口調であったものの、内より優しさが漏れ出している。
「・・・ごめんなさい。」
だがシェーラの顔は曇る呼吸の音――当然、魔族としての演出――もどこか陰気だ。
それを見たフィブリゾは、
「・・・いや、僕は嬉しいよ。」
そしてシェーラの腕を握り締める。
「・・・ありがとうございます。」
するとシェーラに熱が昇ってゆく。
「・・・でも良いのかい。まだまだ刑は終わらないんだろ。」
反面、フィブリゾは優しげだがむしろ冷静だ。
だがシェーラは、
「良いんです。フィブリゾ様と一緒なら・・・」
熱気の占める世界に堕ちていた。
そんな彼女もフィブリゾは正確に捉え、美貌を闇に這わせてゆく。
それは1つの膨らみにて止まった。
そこで押し付けられた唇が淡く鳴った。
「・・・これはお礼だよ。」
そして顔を離しシェーラに告げた。
だが口付けを受けたシェーラは焼けるように凍るのみ。
そのまま時が流れていった。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「う〜ん。・・・これは失敗かな?」
虚空にて出でる1つの声。
「・・・せっかくフィブリゾ君を僕のものに出来るチャンスだったのに・・・。」
そして次には舌打ちが響いた。

後書き
フィブリゾ様投獄戦記(?)編。
内容は全然全く違うんですけど、かのJ・R・R ・トールキン氏の短編『ニグルの木の葉』の一部をイメージして書きました。まずもうほとんど大まかなストーリーしか覚えてないし、もっとこの話に近いものはあるんでしょうけど・・・。
今回少し時間が掛かりましたけど、まあ無事完成良かったです。
本当はもう1エピソード入れようと思ったけど次回にします。
大体この話は30数話で完結するはずです。(プロット作成時は30話だったが、やはり狂うものです。)

それと最近ウィザードリィに再びはまり。
難しいけど面白いっす。
今度スレイヤーズキャラで出かけてみるかな。(人間は信仰心低くて良い僧侶が作れなさそうだけど・・・)
ああそれにしてもウィズノベルが欲しい。
特にウィズ4のやつとアンソロジーが・・・。
ともに大好評絶版中ですけど・・・。

それでは・・・。

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25444意中の人の恋路(?)をライバルの方向へ舗装したのね(笑)エモーション E-mail 2003/4/3 23:55:43
記事番号25435へのコメント

こんばんは。

1000年牢獄……凄すぎです。証拠不十分で確証も無しに判決ですか(汗)
これで無実が判明したら、ちゃんと後からフォローされるのでしょうか。
それにしても1000年……魔族としても短いとは言いがたいですね。

こちらでも何気にフィブシェラですね♪
シェーラちゃん、とても健気です。フィブリゾ君のためにここまで……。
1人では辛いけれど2人ならがんばれる……ああ、純愛です。

……でも、シェーラちゃん、覇王様の許可はいただいているのでしょうか。

>「う〜ん。・・・これは失敗かな?」
>虚空にて出でる1つの声。
>「・・・せっかくフィブリゾ君を僕のものに出来るチャンスだったのに・・・。」
>そして次には舌打ちが響いた。

えーっと、これはポルテ君ですよね?
思いっきり失敗ですね(笑)
恋路をライバルの方向へ舗装してしまいましたよ(笑)

トールキン……実は中学時代に読もうとして挫折したんですよね……(汗)
そして読もう読もうと思って忘れている……。
DVDで「指輪」の第一部は見たのですが。

☆メルカトル鮎
人1人殺した犯人を捕まえるために人1人を平気で犠牲にしたり、
犯人を追いつめるための囮にするために、何も知らない友人を殴って気絶させ、
山の中に放置して遭難一歩手前状態にしたりと、数え上げたらキリないです。(滝汗)
彼の性格などの悪さは、短編集でシリーズ中、一番読みやすい「メルカトルと
美袋のための殺人」だけで充分すぎるほど理解できます。
端で見ているだけならともかく、友人にも知り合いにも欲しくないです。(汗)
私が最初に読んだのは「夏と冬の奏鳴曲」(これは実は2作目。「翼ある闇」が
1作目です)で、こちらにはラスト2ページ程度しか出なかったのですが、
バラの花を持っての登場時の台詞、「月の光は愛のメッセージ」で私の思考を
完璧に麻痺させてくれました。(ただでさえ、難解すぎな話だったのに……)

さて、フィブリゾ君とシェーラちゃんの状況は、とりあえずこのままなの
でしょうけれど、このことは他の魔族達にはどう影響をあたえているのでしょうか。
続きを楽しみにしています。
では、この辺で失礼いたします。

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25450Re:・・・恋愛要素もギャグも終わりそう。颪月夜ハイドラント 2003/4/4 15:42:48
記事番号25444へのコメント


>こんばんは。
こんばんは
>
>1000年牢獄……凄すぎです。証拠不十分で確証も無しに判決ですか(汗)
・・・私の魔族社会では普通らしい。
>これで無実が判明したら、ちゃんと後からフォローされるのでしょうか。
「疑われる方が悪い」じゃないでしょうかねえ。非情な社会。
>それにしても1000年……魔族としても短いとは言いがたいですね。
降魔戦争からスレイヤーズの現在まで・・・しかも座ってるだけだし地獄。
>
>こちらでも何気にフィブシェラですね♪
フィブシェラらしいです。
>シェーラちゃん、とても健気です。フィブリゾ君のためにここまで……。
でもフィブリゾ君はガーネットとくっ付けたい(鬼)
>1人では辛いけれど2人ならがんばれる……ああ、純愛です。
でも魔族だし精神崩壊しかねないかも・・・。
>
>……でも、シェーラちゃん、覇王様の許可はいただいているのでしょうか。
ううん恐らく無許可でしょうね。
>
>>「う〜ん。・・・これは失敗かな?」
>>虚空にて出でる1つの声。
>>「・・・せっかくフィブリゾ君を僕のものに出来るチャンスだったのに・・・。」
>>そして次には舌打ちが響いた。
>
>えーっと、これはポルテ君ですよね?
紛れもなく。
>思いっきり失敗ですね(笑)
>恋路をライバルの方向へ舗装してしまいましたよ(笑)
失敗理由:緊張して会いにいけなかった。
つまりポルテ君のフィブ君好き度が異様に高かった、と
次点がルビーちゃんのようです。
>
>トールキン……実は中学時代に読もうとして挫折したんですよね……(汗)
>そして読もう読もうと思って忘れている……。
>DVDで「指輪」の第一部は見たのですが。
私も観ました。
本の方は未読ですが・・・。
ちなみに「ニグルの木の葉」は図書館で借りた小作品集に入ってました。
頭の悪い私は読んでて意味全然分からなかったですけど、解説読んで滅茶苦茶凄いと思えました。
この話は私が小説を書くようになった理由のかなり大きな一欠片だと思います。
>
>☆メルカトル鮎
>人1人殺した犯人を捕まえるために人1人を平気で犠牲にしたり、
>犯人を追いつめるための囮にするために、何も知らない友人を殴って気絶させ、
>山の中に放置して遭難一歩手前状態にしたりと、数え上げたらキリないです。(滝汗)
うわっ。
いやだなあそんな人。
>彼の性格などの悪さは、短編集でシリーズ中、一番読みやすい「メルカトルと
>美袋のための殺人」だけで充分すぎるほど理解できます。
>端で見ているだけならともかく、友人にも知り合いにも欲しくないです。(汗)
確かに絶対出会いたくない。
>私が最初に読んだのは「夏と冬の奏鳴曲」(これは実は2作目。「翼ある闇」が
>1作目です)で、こちらにはラスト2ページ程度しか出なかったのですが、
>バラの花を持っての登場時の台詞、「月の光は愛のメッセージ」で私の思考を
>完璧に麻痺させてくれました。(ただでさえ、難解すぎな話だったのに……)
何か凄そうですね。
一回読んでみようかな・・・。(雨で今日は探せないけど)
>
>さて、フィブリゾ君とシェーラちゃんの状況は、とりあえずこのままなの
>でしょうけれど、このことは他の魔族達にはどう影響をあたえているのでしょうか。
正直それどころじゃなくなる展開になりそうです。(ってここからかなりシリアス続きそう)
>続きを楽しみにしています。
どうもです。
>では、この辺で失礼いたします。
ご感想どうもありがとうございます。
本の解説までしてくださって本当に感謝しております。

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25455――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:21話:愚かなる死の宴颪月夜ハイドラント 2003/4/4 18:38:36
記事番号25435へのコメント

蒼き天地に風が駆け抜ける。荒涼とした色彩のそれが頬を撫でる度に彼に生まれるのは歓喜と恐怖。
それを払い、進むとやがて見えて来たのは巨大な浮遊石。
飛行していたガーヴは素早くその岩の大地へと着地した。
かつて最接近領領主ポルテの住んでいた土地。そこに残された新しきメギド山。それはそれほど広い空間ではなかった。
ただ風が打つ。緊張感がなお増した。
震える手を握り締め、燃え上がる視線にて左右を見回す。
だが光ある世界はあまりに虚無的であった。
風の喧騒だけが感じ取れる。
吐息を漏らした。
そこで生まれたのは不安。
それでもかぶりを振ると、
(・・・いやあいつは絶対に来る。)
心に言い聞かせそして不敵に笑い掛けた。
すると向けられた虚空が突如歪み出す。
それは空間を浸食してゆき、やがてそこより現れしは闇の翼を持つ青年。
「来たか・・・。」
歓びが歌うように、または湧き出すように彼に満ち溢れた。
だが、対峙するサーティアスの表情は明らかに曇りを見せている。
「どうした?」
すかさずガーヴが声を掛けた。どこか優しさを含んでまでもいる。
それにサーティアスは、
「・・・何でもない。」
強き声で受け答えた。拒絶だろうか。
そしてそれと同時に、姿が消え去る。
察知しガーヴは辺りを見回す。
それをよそ目に背後に気配。
だがそれでもガーヴの腕はサーティアスへ至っていた。
「ぐっ!」
拳は風の速さを持ち裏拳にして男を吹き飛ばす。
だが途端に風を感じ、完全に振り向くと同時に跳び退った。
「・・・この程度か?」
間合いを取ったガーヴは笑う。
サーティアスの表情はなお闇を見せたが、それでも消え去り、ガーヴの眼前に出現した。続けて放った拳の一撃は烈風の如し。
しかしガーヴは飛び退き、焔を打ち出した。
サーティアスはそれを横へかわす。そして風の刃で反撃した。
それに対し、ガーヴは即座にドラゴンスレイヤーを抜き放つと、風の軌跡を斬りつけた。
そのままサーティアスへ走ってゆく。
そして剣の一撃は的確に青年の肩を捕らえた。
だが刹那、その姿は掻き消える。
それでもガーヴは転移先を素早く見取ると、
「弱いぜ、サーティアスちゃんよ。」
振り向き様に笑いつつ、上段より斬りつけた。
背後に回っていたサーティアスの拳よりもなお速き斬撃に驚愕が浮かぶ。
赤き雨が降り、大地を汚した。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお」
そして絶叫を放つサーティアスに向けてガーヴは巨大な火焔球を撃ち込む。
凄まじき光と風が、赤き龍の勢力に拍車を掛けて大地を焼き尽くした。
その場より離れたガーヴは冷めた顔で闇を見詰める。
それはやがて晴れてゆき、満身創痍のサーティアスを映し出した。
「・・・本気で戦えっ!!」
だが苦しむ敵に対して掛けたのは叱責。
それによりサーティアスはなお曇る。
そして苦しみうめきつつ、
「・・・これが・・・本気・・・だ・・・」
言葉を紡ぎ。それと同時に地に伏した。
むなしい勝利の凱歌が響く。
不快な行進曲を浴びて死神は獲物へ向かってゆく。
追い詰めるように、絶望を誘うように・・・。
だが最接近したその瞬間に、
「・・・さすが魔竜王サン。」
不意にどこよりか声が響く。
「誰だ!」
素早くガーヴは怒りの叫びを上げる。
それは大地に轟き、虚空を引き裂き、遥か彼方までも伝わってゆく。
「でも、脅えをごまかすために怒るなんて、獣同然じゃない?」
再び響く。
気配はまるでなく、声だけが鮮明。
「うるせえ、とっとと出て来い!」
なお放たれる世界を揺るがす声。
それにより不意に笑い声が浮かぶと、
「・・・仕方ないね。」
遅れて正面に光が生まれる。
それはガーヴの瞳を焼き、激しく眩ませた。
その発光はすぐに終わり、ガーヴも眼を見開くと、そこには1つの気配と姿。
煌びやかな黄金の短髪に汚れのない白き肌。象牙色のマントを全身に羽織り、色を宿さぬ瞳にてガーヴを見詰める15歳ほどの少年がそこにいた。
だが無邪気な笑顔の反面、そこより感じるのは凄まじき力と威圧。
「何ものだ・・・てめえ。」
見えたに関わらずガーヴの戦慄は勢いを増していた。
その言葉には震えが混じっている。
そしてそれすらも虚ろの瞳は見透かしているようでなお恐ろしき。
少年は笑みを強めて、
「僕はマラカイト・・・特A級守護神マラカイトというものさ。」
それでも冷ややかに答えた。
ガーヴは恐怖を跳ね除けて笑い、
「へん、守護神サマが何の用だ?」
視線を浴びせた。
すると透明な瞳は笑みを湛えたまま凍り、
「・・・独断で勝機の薄い相手に一騎打ちを申し込んだA級邪神サーティアスから、スピネル様の力を返還させた後に、始末。ちなみに前者はすでに果たしているし、サーティアスが弱く感じられたのも力を奪われているからさ。」
そして口からは冷たき声を淡々と紡ぎ出される
しかしガーヴはそれを受けて、次には真に笑っていた。
「・・・俺は・・・絶対に勝てる相手と戦ってたって・・・わけか・・・。」
だがそれも引き攣ってゆき、
「つまり・・・てめえは俺の楽しみを奪ったってわけか!!」
威圧感を吹き飛ばし怒りを噴出した。
激しき力が彼より湧き出る。
それを見た少年は、
「怒るの?・・・そう。」
それでも笑っていた。
「ああ当然だ!」
だがその意味も恐れずに、跳躍とともにドラゴンスレイヤーを振り払う。
風を喰らい、凄まじき勢いを持って銀の獣は獲物へ迫っていった。
「・・・でも、あなたでは僕には絶対に勝てないということも考慮しないと。」
だが瞬間、驚愕。
ガーヴの天地が反転し、大地へと落下していった。
そして衝撃が彼の背を激しく苛み、屈辱が焦りに拍車を掛ける。
見上げる空には少年がいた。無垢ながら悪辣な笑みを湛えている。
「・・・僕は指一本触れていない。これが僕とあなたの実力差さ。」
そして少年は指を鳴らす。
轟音が鳴るとガーヴが竦む。
だが悪戯に笑われるのみでガーヴには何も起こっていなかった。
ただ横に光が見えた。
それに不思議がってか起き上がる。
だがその途端に飛び込んだ光景は、焔に包まれるサーティアスの一角。
その焔はすぐに止んだが、後には大地のみが残っていた。
「てめえ!」
ガーヴは叫ぶ。意味も分からず。
「ゴミ掃除完了、と。・・・僕はこれで失礼する。」
だがガーヴの怒声を聞くこともなく少年の姿は消え去った。
ガーヴはそれと同時に衝撃波を放っていた。
そして突き出した腕をずっと眺めている。
疑問を持って眺めている。
その腕は微かに震えていた。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
同じ雨が何度も地を打つ。
その単調なリズムに加えて、凄まじき雷鳴の音が鳴る。
そしてそれらの旋律に合わさって、弾けるような音が響いていた。
世界は暗い。だが喧騒の渦だ。
安堵でなく絶望の歌だが・・・。
背後より迫るのは光。
殺意を持ちしそれは焔。
それ以上に恐ろしき気配を後続させ、凄まじき速さで迫っている。
何度も自分の呼吸を聴いた。
それがメロディに最後の彩りを加えている。
闇へと逃げる。希望を求めて・・・。
だが不意にそれも終わぅた。
焦りとともに浮遊感が身体を占めて、心へ至る。
恐怖のままに叫んだが、それはどこにも響かず、蟠りただ絶望に転化した。
倒れこむと衝撃が走る。そして苦痛が圧し掛かる。
だがそれを払い、傷付いた腕に力を込めた。
だが背後より熱気が伝わる。
そして焔が昇って来る。
それにより力尽き死神を受け入れた。
だがその瞬間・・・彼女より熱気が退いていった。
疑問を持って立ち上がる。痛みが先ほどよりも増していた。
振り向く。
だがそこは静かな森であった。
ただ樹木が焼け爛れているものの。
次に見下ろした。
そこで変化する。
邪な骸がそこに横たわっていた。
それが彼女の心を突き刺す。
だが張り詰めた心を和らげるように、
「・・・大丈夫ですよ。お嬢さん。」
背後より声が掛かった。
「・・・誰?」
彼女は脅えつつ振り向く。
そこには、先ほどまで彼女が向かっていた方向には、1人の男が立っていた。
彼女と同じ黒髪。だがその美貌は明らかに異なる。
「・・・汚らわしい『魔族』は退治しましたよ。」
彼は優しく笑った。
「・・・あなたが・・・ですか?」
それに緊張を解されてゆき、彼女も言葉を紡いだ。
それに彼はなお笑顔を強めて、
「ああ・・・実は私、神族なのですよ。」
そう言った。その瞬間に、彼女が震え出す。
そして言葉を失った。
だが彼は気にせずに、
「祈る気持ちを忘れずに・・・では私はこれで・・・」
その姿を消し去った。
彼女は――セイラ・ルーンは虚空を見詰め続けていた。
『魔族』に蹂躙され滅びた故郷の村と、そして彼女を救った美しき神を赤き瞳に宿して・・・。
雨が降っている。
雷鳴は聴こえない。
焔もすべて消えている。
呼吸も幾分穏やかだ。
ただ背後に哀れな『邪神』の骸が転がっている。

後書き
こんばんは最近、廊下歩きつつ歌ったり、調理中に呪文詠唱してたりするラントです。
今回は新キャラ登場編。バトルもあるけどちょっと今1つかな。
マラカイト君・・・口調が微妙です。
ゼロスにもフィブリゾにもかぶらせないように作りたかった。
にしても今回結構時間掛かった気が・・・序盤は順調に進んでたけど、途中から難しくなって、いい加減なものになっているかも知れないです。

それでは・・・。

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25457――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:邪神が歌う嘆きの歌颪月夜ハイドラント 2003/4/4 19:09:41
記事番号25455へのコメント

主はある日言った。
人は無限の力を持つと、
その力を彼女は得ると、

主はある日告げた。
僕に人を狩れと次げた。
そして僕を彼らが狩ると、

僕はある日死んだ。
彼は僕を殺した。
その彼は守護神と言った。

僕らの名は邪神。
人の信仰を得るだけの道具。
僕はその日魔族を名乗った。

魔族はすべて知っている。
彼らは僕らを嫌ってる。
彼らも人を狙ってる。

ああ竜神様
あなたはいつから病んでいる?
その尖晶石はあなたを喰らう。
そしてあなたを支配する。
なのにいつまでそれを手放さない?

ああ守護神よ
なぜ僕らは汚れているの?
僕らの魂を地獄へ送る。
そして悪魔の餌にする。
汚れているのは君らじゃないのか?

ああ精霊達よ
なぜ貴様らもやつに従う?
僕らを生み出したのに
あの方を病ましたのに
なぜあの石に従うのだ?

だが僕らも逆らえない。
混沌を撒くだけのやつに、
誰もけして逆らえない。

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25463――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:22話:開かれし災禍の門颪月夜ハイドラント 2003/4/5 15:14:43
記事番号25457へのコメント

「面白くなって来たわね。」
すべてが黒く染まっている。
虚無は絶えず移ろい続け、変化を求め続けている。
「・・・さすが『あの子』ね。」
その呟きさえも平定とは言えない。
「・・・誰のことだ?」
そしてそれに訊き返す声があった。
それは蠢く闇を震わせて、彼女へ届く。
間を置いて、
「ほら、あたしの跡を継いだ・・・」
美しき声が戻った。
「ああ、あいつか?」
彼の暗雲も晴れる。
「いつから気付いてた?」
「『あのお方』を見た時かしら。」
「そうか・・・」
だが拍車の掛かり出した会話も不意に途切れ、
「・・・あの世界もやばいかもな。」
重い溜息が昇った。
それに対し彼女も昏く、
「・・・シャブ・・・結構気に入ってたのに・・・」
そして儚げに漏らす。
「・・・絶対にあの世界が『あの子』に滅ぼされるのは許さない。あたしが許さないわ。」
だがそれも急速に力を持ち出した。
「さすがだぜ・・・ルーちゃんよ。」
「何よ。その呼び名!!」
しかし小さな怒りに転化したが・・・。
「・・・エルのルを伸ばしたんだよ。結構可愛いだろうが。」
「ちょっとアイン・・・あなた、あたしを呼ぶ時はお姉様って呼びなさいって言ってるでしょうが。」
戦火が灯る。
「俺はてめえの弟じゃねえよ。」
「似たようなものよ!」
混沌の海は荒れていた。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
平静な蒼天。
風は優しき。
「どうしたの・・・オリオンちゃん。」
遥か天を見続ける海王将軍。その平穏な心に波紋は波打った。
だが彼はそれでも平常をすぐさま取り戻し、
「海王様・・・来てたんですか?」
澄んだ空を見詰めつつ、言葉を漏らした。
「ええ。・・・お空が好きなの?」
疑問げな声は麗しき。
オリオンは虚空に視線を合わせつつ、
「・・・はい。平和というものが感じられて・・・」
言ったが、不意に沈黙を感じて、
「・・・そんな俺は魔族失格でしょうか?」
言葉は昏くなった。
だがダルフィンは落陽の如く優しげに、
「・・・そんなことないわよ。私も平和が好きだわ。」
返す。
そこにてオリオンは突然、柔らかな感触を味わった。
「・・・海王・・・様?」
やがてそれは強まり、締め付けられるよう。だがそれでも慈愛に満たされていた。
「そして、平和が好きなオリオンちゃんはもっと好きよ♪」
その腕に抱き締められた海王将軍は自らの熱が強まるのを見た。
「元々・・・私がおかしかったのよ。」
だがダルフィンは同じ温度を感じていようも、哀しげで寂しげとなっている。
オリオンは沈黙した。
「・・・魔王様に創られた時、私だけが平和好きに生まれてしまったのよ。」
紡ぎ出される黄昏を思わせし声。
「つまり・・・私は失敗作なのよ。」
そして衝撃が晴れた空に響き渡った。
「・・・海王様。」
言葉は自然に生まれていた。
そして果てしなく優しかった。
「・・・誰だって弱点くらいありますよ。」

魔竜王は好戦的過ぎる。結果的には良くもいつ滅びるか分からない。
覇王は自信過剰過ぎる。自軍の力を過信し、邪竜エルダーに大敗した上、反逆者を2名も出していたことに全く気付かなかった。
獣王は責任感が強過ぎる。防衛の最前線とはいえ、信仰による配下集めは過剰とも思える。魔族の尊厳を傷つけかねない。
冥王は2つに分かれた。長所の揃ったアプロス、失敗点の集合体フィブリゾ。
そしてそれらを創造した魔王シャブラニグドゥも失敗作でなかろうか。
そしてすべての魔を生み出したあのお方さえも・・・。

「創造は完全じゃない。どんなに力があったって完全なものは創れないですよ。」
そして強まった。
ただ優しさのみは変わらない。
それがダルフィンの心に響き、
「そうね・・・ありがとう。」
輝いた声が宙に満ちた。
だが緩慢な情景はそこにて崩れる。
「あら冷たい。」
不意に冷気を肌が感じた。
そして突如に飛沫が連続して地に落ちて来る。
気付いた時には雲が生まれて来た。
「雨・・・おかしいわね。今日の天気は快晴のはずなのに・・・」
ダルフィンは即座に腕を解く。
「とにかくお家・・・入りましょ。」
だが、駆け出そうとしたダルフィンに向けて、
「ちょっと待ってください!」
オリオンは獅子に似た声を上げた。
「何?」
オリオンは空を見上げている。
それは徐々に闇に塗り潰されてゆく。
「・・・どうしたのよ?」
「・・・来ますよ。」
オリオンはひどく冷静だった。
遥か彼方の天。
まさしく彼は凝視している。
雨の体温など気にしていない。
疑問が浮かぶダルフィンだが、それはすぐに氷解した。
「まさか・・・」
闇に染まらんとする空を翔けるもの。
闇の翼を持ちて、すべてを惑わし欺くもの。
「もしかして邪神がマナディールを崩壊させた本当の理由は・・・」
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「大変です・・・冥王様。」
扉が音を立てて開く。
だが彼、ゼロスの見たものは、
「・・・あら、どうしましたゼロスさん?」
1人の少女の姿であった。
「おや・・・お部屋を間違えたようで・・・」
冥王フィブリゾの部屋にて冥神官ガーネットを見たゼロスはそのまま退かんとしたが、
「ああ、間違ってませんわ。」
ガーネットは美声を持って、
「本日から私が冥王を務めさせて頂くことになっておりますし・・・。」
そう言う。ゼロスは疑問を具現させた。
「・・・はあ?どういうことでしょう。」

「なるほど・・・そう言うことですか?」
訊き終えゼロスは感嘆した、内に明らかな歓喜を秘めている。
(ふふふっ無念ですね。・・・ディスティアさん。)
その笑みは半ば漏れ出していたが、ガーネットは平常であった。
「それで何か御用があったようですけど?」
冷静に訊ねる。
まさしく冥王軍のエリートと呼べるその顔付きであった。
「実は・・・とある邪神を捕縛し、尋問をしていたのですが・・・」
「なるほど・・・」
ガーネットの表情は研ぎ澄まされている。
ゼロスも及ばぬながら真剣であった。
「それで・・・格が高かったのか、上が自慢好きな性質だったのか、その邪神はいろいろ詳しいことを知ってしましてね。」
そして邪悪になってゆく。
それでもガーネットは見詰め続けた。
「その中に、赤の竜神さえ知らない、という情報がありまして・・・」
だが、そこに亀裂が走り、
「どういうことですか?」
ガーネットは声を張り上げた。
だがゼロスは冷静に、
「・・・それも聞き出した情報ですが、表向きでの神族頂点は赤の竜神ですが、実質は違うらしいですよ。」
そして昏い声で嗜める。
「ならば誰ですの?」
「それは・・・」
さらに表情が曇っていったが、
「秘密ですと言ったら許しませんわよ。」
その言葉に驚愕させられ、
「・・・いやあ、ばれましたか。」
笑顔に変わった。
だがそれもガーネットの溜息の間にて終わり、
「・・・スピネルという謎の人物です。赤の竜神を支配し、自らのために神族達を動かしているらしいですよ。・・・恐らく、例の邪神は竜神ではなくスピネル、直属の配下だったと思われます。」
淡々と言葉を繰り出す。
ガーネットは沈黙。
それを見てゼロスは焦りを思い出し、
「それでその情報ですけど・・・」
激しき沈黙を生み出した。
そして・・・
「世界の核エネルギーはそのまま、この地獄の門にぶつけられ・・・」
真の絶望を孕んだ声にて、
「・・・悪魔どもが蘇りました。」
告げた。

後書き
ついに大イベントの2つ目が開始されました。
すぐに終わる予定ですけど大きいです。
にしても恋愛もギャグもなくなるって言った途端こんな回になりました。言葉とは逆の言葉が起こるのはよくあることですよね。
まあ面白いかつまらないかは別としてですけど・・・。

邪神について。
邪神は人の信仰を得るための存在です。
ちなみに人間には凄い可能性が眠っていると、この当時の魔族と神族は信じてました。(これがなくなるのは降魔戦争のちょっと前、この話から数百年か数千年後。)
人間が大昔に自然に霊が宿っているとか何とか信じたような感じと思えば良いんじゃないでしょうか・・・多分。
それでどこからか信仰を得ておこうという考え方が生まれました。噂とかそんな感じに近いかも・・・。
それで神を信仰させるための悪魔として邪神を創り出したわけです。
魔族も信仰得ること考えてたりもしたわけですけど、何せ彼らはプライドが高いわけです。あれこれ言ってる間に神は布教勝負に余裕の勝利。
邪神のお陰なのですよ。
でも嫌われものですけど・・・。
ちなみに邪神は、「悪魔城ドラキュラ」の小説版に『神を信仰させるための悪魔』とか『悪が良い方向に働く場合もある』とかそんな文章があって、それから思いついたわけです。意味そのままではないですけど・・・。
ちなみにこの話、素晴らしいですよ。
何と、ゲームとほとんど関連なし。
いやそういう意味じゃなくても素晴らしいですけど・・・。

それでは長々となってしまいましたのでこれで失礼させていただきます。
読んでくださった方、どうもありがとうございます。

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25486そろそろ山場ですか?エモーション E-mail 2003/4/6 22:38:44
記事番号25463へのコメント

こんばんは。

姉弟ゲンカ(?)で混沌の海を荒れさせるL様とアイン君……。
さすがに最強の姉弟ですね。

自分を含め魔族達の欠点を的確に認識しているダルフィン。
魔族である以上、平和とはある意味相反したものを糧としているだけに、
かなり複雑な精神状態かもしれないですね。
彼女はいったいどのような位置づけに来るのだろうかと思いました。
今度の冥王はガーネットさん。
それにしても「冥王」はころころ変わりますね(汗)
魔族の下の方でも混乱してそうです。

甦った「悪魔」。これがどう展開していくのでしょうか。

>ちなみに邪神は、「悪魔城ドラキュラ」の小説版に『神を信仰させるための悪魔』とか『悪が良い方向に働く場合もある』とかそんな文章があって、それから思いついたわけです。意味そのままではないですけど・・・。
>ちなみにこの話、素晴らしいですよ。

「神を信仰させるための存在としての悪魔」なら、京極夏彦さんの「女郎蜘蛛の理」でも、
そういう話が出てきますよ。
「悪魔」を唯一「神」に対抗できる同格の存在だと思っている少女に、謎解き役の
京極堂(副業が拝み屋の古本屋)がキリスト教……「唯一神教」について
説明するのですが、「唯一神教」では「神」と対等・同格の存在はいない。
(だから「唯一神」なのですが。スレイヤーズ世界は「相反する対等の二大巨頭」
が存在する世界なので、ゾロアスター教等と同じ、二元神の世界ですね)
「悪魔」は「神」の強さ・偉大さを「相対的に」見せつけるための役割でしかない存在。
どうがんばっても、けして神には勝てない「強力な力を持つやられ役」。
所詮「どこまでいっても神より格下の存在」だと、まあ事細かに詳しく詳しく
説明しています。(ほんと、作者の京極夏彦氏の知識量の凄さは半端じゃないです)
このお話での「邪神」はそういう役回りなんだな、とは思っていましたが、
調子こいてそんな事をやっていたら、外から面倒なものを引き寄せちゃった、
ということでしょうか?

どうやら山場になりつつあるようなこのお話、続きを楽しみにしています。
では、この辺で失礼します。

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25490Re:30数話で完結出来そうです。颪月夜ハイドラント 2003/4/7 13:18:38
記事番号25486へのコメント

でもまだ続くけど・・・。

>こんばんは。
こんばんはラントです。
>
>姉弟ゲンカ(?)で混沌の海を荒れさせるL様とアイン君……。
>さすがに最強の姉弟ですね。
まあ分身体なので能力は本来の100分の1もなく、竜神と魔王の合計能力には敵わないですけど・・・。
>
>自分を含め魔族達の欠点を的確に認識しているダルフィン。
知力パラメータは冥王と互角かそれ以上ですので・・・。(前にも書いた部分もありですけどガーヴが力、ゼラスが素早さ、グラウシェラーが魔力、アプロスが万能で、フィブリゾがすべて並以下だったけどアプロス倒して全能力上昇)
>魔族である以上、平和とはある意味相反したものを糧としているだけに、
>かなり複雑な精神状態かもしれないですね。
まあでも、この時点の魔族は結構おとなしいです。
滅びは意識してますけど負の感情の欲求は現在より少ないです。
無論、スレイヤーズ世界での現代に至る頃までには変化させます。
>彼女はいったいどのような位置づけに来るのだろうかと思いました。
正直、この話ではもうほとんど活躍ないです。
平和主義者(?)なので、それほど表立ったことはしないようです。
>今度の冥王はガーネットさん。
>それにしても「冥王」はころころ変わりますね(汗)
・・・ちなみにアプロス、ディスティアと滅びて、ガーネットは降魔で、フィブリゾは現代で滅びますので・・・呪われた役職(?)
>魔族の下の方でも混乱してそうです。
アプ→フィブ→ディス→フィブ→ガーネットと変化しすぎですし。
>
>甦った「悪魔」。これがどう展開していくのでしょうか。
一応「悪魔」に関しても、伏線モドキか何かあるような・・・。
>
>>ちなみに邪神は、「悪魔城ドラキュラ」の小説版に『神を信仰させるための悪魔』とか『悪が良い方向に働く場合もある』とかそんな文章があって、それから思いついたわけです。意味そのままではないですけど・・・。
>>ちなみにこの話、素晴らしいですよ。
>
>「神を信仰させるための存在としての悪魔」なら、京極夏彦さんの「女郎蜘蛛の理」でも、
>そういう話が出てきますよ。
確かミステリーかホラーの作家さんでしたっけ?
>「悪魔」を唯一「神」に対抗できる同格の存在だと思っている少女に、謎解き役の
>京極堂(副業が拝み屋の古本屋)がキリスト教……「唯一神教」について
>説明するのですが、「唯一神教」では「神」と対等・同格の存在はいない。
>(だから「唯一神」なのですが。スレイヤーズ世界は「相反する対等の二大巨頭」
>が存在する世界なので、ゾロアスター教等と同じ、二元神の世界ですね)
>「悪魔」は「神」の強さ・偉大さを「相対的に」見せつけるための役割でしかない存在。
>どうがんばっても、けして神には勝てない「強力な力を持つやられ役」。
>所詮「どこまでいっても神より格下の存在」だと、まあ事細かに詳しく詳しく
>説明しています。(ほんと、作者の京極夏彦氏の知識量の凄さは半端じゃないです)
悪魔城〜では布教者がそう言ってるだけで、実際「悪魔」は格下などではなかったとなってたような・・・まあ未完の作品なので詳しいことまで分からないですけど(残念)・・・。(この本は私の文体に影響を与えてくれました。)
>このお話での「邪神」はそういう役回りなんだな、とは思っていましたが、
お見事正解でございます。
>調子こいてそんな事をやっていたら、外から面倒なものを引き寄せちゃった、
>ということでしょうか?
まあそうなりますかねえ。スピネルが邪神を造らせたのかも知れないですけど・・・。(ちなみに邪神を含む下級の神はすべて竜から出来ているので『死んだ』を使う。』
>
>どうやら山場になりつつあるようなこのお話、続きを楽しみにしています。
特に障害がなければ本日中に書けるかと(最近ペースダウンしてる)
>では、この辺で失礼します。
ご感想どうもありがとうございます。
それでは・・・

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25494――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:23話:黒の狂詩曲颪月夜ハイドラント 2003/4/7 17:53:00
記事番号25463へのコメント
「ガーネット・・・これで良いね?」
ゼロスとガーネットの向かい合う卓に親衛隊員ダイヤモンドは資料を降ろした。
悪魔の復活を知り、衝撃を受けたも、ガーネットは冷静に、資料の捜索を命令したのだった。
「・・・ダイヤさん。私のことはガーネット様と呼びなさい。」
だが薄笑みを湛えたダイヤモンドに対して、ガーネットは高圧的な言葉を返した。
彼女は呆れ顔で、
「はいはい。・・・冥王ガーネットサマ。」
そう言った後、反転して立ち去った。
「とりあえず調べましょうか。」
静寂が室内を包むと、ガーネットは急に笑顔を取り戻し、高台の如く聳え立つ資料達の頂点を手に取った。
『「悪魔」の国の料理全集』
だがその瞬間に表情は露骨に不快げとなり、資料を卓へと叩き付けた。
そして即、平静となり次の頂点を手に取る。
『コミック版:無垢な少女と地獄の「悪魔」』
『病気に良く効く「悪魔」草』
「リヴァイヤサン混沌大戦記外伝4――「悪魔」王の愛の物語――』
『冥王の騎士完全版、「悪魔」スィーフィードのカード付き』
ちなみに「悪魔」で検索させたものすべてである。
ガーネットは資料を次々と取っては放り、新たな塔を築いてゆく。その表情はどこか昏い。
だがそのサイクルは急速に停止した。
『悪魔大辞典』
即座に歓喜が湧き上がる。
「これですわ。」
ガーネットは、ただ沈黙していたゼロスに笑顔を放った。すでに焦りなどどこにもあらず。
「なるほど・・・大辞典ですか?」
ゼロスが小さく感嘆する中、ガーネットは資料の世界へ引き込まれていった。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
悪魔。
元は太古の昔、生を望む『天使』と戦い破れた滅びを望むものの意であるが、その時代以降に勢力を持った邪悪な存在も同じくそう言う。両者には関連性はあるものと思われる。本書では後者の説明をおこなう。
私と竜神、そして世界を管理する精霊が手を組んだことにより彼ら『悪魔』族を『地獄』へ封じ込めることには成功している。だがいつ復活するかは知れない。そのために悪魔の実体を知らない息子、娘達にも伝えておこうと私は思う。
まず彼らは平穏な世界や虚無の秩序を好まない種族であり、破壊と支配の欲望に憑かれた恐ろしい存在である。私にとっても竜神にとっても紛れもなく敵対者だった。
また彼らは『悪魔王』と呼ばれる1つの存在のみに従い、その外では自らの欲求のままに活動する。それでも知能は高いと思われている。
私達が戦った『悪魔王』はマイルフィック(混乱を巻き起こすもの)と呼ばれる存在であった。それが2つ名であるか本名であるかは分からない。
だが『悪魔王』は私達を遥かに凌ぐ存在であり、神、魔、精霊の力の合成でなければダメージを与えることはけして出来なかった。
さらに驚くべきことにあの『悪魔王』は実体ではなく幻影体であったようだ。そうならば『悪魔王』はあのお方にも届くほどの力量を持つのではなかろうか。
『悪魔王』以下には、地獄の悪魔(ネザー・デーモン)、大いなる悪魔(グレーター・デビル)、輝きの悪魔(カルキドリ)、悪魔騎士(フィーンド)などの他、下級の悪魔達が大量に存在する。
本書はそれらすべてを出来る限り詳しく解説してある。
――シャブラニグドゥ――
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「どうやら魔王様の書かれた本のようですわ。」
前文を読み終え、ガーネットは溜息混じりに発した。
「なるほど・・・それは興味深い内容ですね。」
ゼロスにも光が灯る。
「でも、ゼロスさんは前線で戦った方が良いんじゃないですの?この資料は私が調べておきますし・・・。」
だが微かに薄れたようにも見えた。
「そうですね。・・・では僕はこれで・・・。」
するとたちまちゼロスは消え去る。
「ではまた♪」
ガーネットの声は静寂に掻き消された。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「海王様・・・どうします?」
オリオンには違いなく焦り。
雨など忘れ、闇を見続ける。
「・・・どうするって・・・私は悪魔なんてあんまり知らないわよ。」
ダルフィンの感情も等しいが彼女の視線は虚空を彷徨っていた。
その間にも闇の軍勢は徐々に接近を続ける。
それが焦りに拍車を掛け続けたが、それでもオリオンはその感情を打ち切り、
「海王様は中央に避難してください。後、中級魔族数名とウシャナに手配をお願いします。」
鋭い声を主に向けた。
ダルフィンは戸惑いを隠せなかったが、それでも震えを抑え、
「エナちゃんはどうするの?」
素早く発する。
オリオンは一瞬の惑いの後、
「エレニアに悪魔と戦わせるのは危険です。海王様とともに冥王宮か黄昏の隠り世に逃げ込むのが一番安全だと思います。」
なお研ぎ澄まされた声を放った。
だがダルフィンはそれでも、
「あの子は悪魔を召喚出来るわ。しかも私達より強い高位の悪魔よ。それにまず私は逃げない。オリオンちゃんもウシャナちゃんも絶対に私が滅ぼさせないわ。」
強く反論する。
オリオンは心で舌打ちを聴いた。
だが世界は無情だ。
「・・・出でよ。我が愛する闇戴く子らよ。」
構わずダルフィンは、光を生む。それを闇が包み、そして成された混沌の扉は2人の少女を呼び出していた。
「海王・・・様?」
「・・・オリオン?」
彼女らはともに疑問を浮かべていたが、
「大変よ。ウシャナちゃん、エナちゃん。悪魔が現れたわ!!」
ダルフィンの声と、そして時間がそれを弾き飛ばす。
闇を孕んだ空になお冥き存在。
それは先ほどよりも確実に姿を鮮明としていた。
幾重にも叫びが聴こえる。この世のものとはけして思えぬ邪悪な多重音。
漆黒の翼と広げ、真紅の眼にて獲物を睨む魔獣の群れ。
それらが4人を取り囲んでいた。おぞましき黒に空は塗り潰されている。
だが、
「消え去れ!」
それに臆さずオリオンの放った衝撃波は悪しき万軍を吹き飛ばした。
「凍り付け!!♪」
さらにウシャナの持つ杖より吹雪が迸る。
それに遅れて、凄まじき雷鳴の音が響いた。
光が世界を覆い尽くし、悪魔の悲鳴が無数に耳を打つ。
しかしそれらが止み、視界が広がった瞬間、闇が風となり4人を襲う。
「きゃああ!」
海王の悲鳴が上がる。エレニアもまた叫んでいるが、ウシャナとオリオンは無言のまま、纏わり付く下級の悪魔(レッサー・デビル)達を撃退していた。
オリオンの剣、アルファ・ベテルギウスにて1匹の悪魔を袈裟斬りにし、飛び退り、追撃する悪魔をなお斬り裂いた。その斬撃の余波が他の連中も巻き添えにする。
ウシャナもまた杖を乱雑に振り回し、悪魔を滅ぼしていく。
ダルフィンは、オリオン達の隙間を掻い潜って、奥方向へ魔力を解き放った。
大爆発とともに、悪魔の断末魔が幾重にも響く。
さらに跳躍し、素手で悪魔を引き裂きつつ、エレニアに纏う闇をすべて消し去った。
オリオン達は再度の接近する悪魔を逃がさず魔力放射で焼き払っている。
(大したこと・・・なさそうね。)
脅えるエレニアを宥め、そして背後にかばいつつ、2人がことごとく悪魔を退けてゆく様を傍観していた・・・が、
「きゃあっ!」
突如、焼け付くような激痛を感じた。
正面を睨む。すると漆黒の中に垣間見える異質に黒い血の眼、それが捉えられた。
「気を付けて!」
ダルフィンが獅子奮迅の活躍をする2人に呼び掛けた瞬間にはすでに、
「きゃああああああああああああああああ」
凄まじき悲鳴をウシャナは上げて、海王達の方へと吹き飛んでいった。
「ウシャナちゃん!!」
海王は叫ぶ。だが続いて響きを必死で殺させ、
「エナちゃん、召喚よ。」
同瞬、海王とオリオンの衝撃波が悪魔達を吹き飛ばして、
「煉獄に笑うもの 暗黒を統べるもの 天空を恨むもの 混沌に従わぬもの・・・」
エレニアの声が響く。
安らかな旋律にも思えたが、それでも絶え間なく攻撃を続けた。
「・・・ねざあでえもんさん、出て来てください。」
そして言葉はやがて闇を生み出す。
しかし・・・
「断る。」
衝撃がエレニアを襲った。それは残酷なほどにリアルな声。
同じくして3人に世界が広がった。
そしてさらに衝撃が貫く。
空にはすでに忘れ掛けていた雨。その雫を浴びるものはすでに少なし。
海王軍を襲っている下級悪魔はわずか数匹。
だが、その数匹を従えるように悠然と立つ存在がいた。
漆黒と真紅の交ざり合う甲冑を身に付けし悪魔。
「王の命だ。貴様ら下等種族にはもう従わない。」
そして地獄の悪魔(ネザー・デーモン)の放つ闇の刃は、召喚者である海王女エレニアを貫いた。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
緩慢に流れる時の中、互いの熱のみが耐えし糧となる。
「冥王様・・・」
「どうしたんだい・・・シェーラ。」
声は熱を含み、甘い波紋を生んでいる。
それは身体を火照らせ、震わせた。
「・・・いつまでここにいなきゃならないんですか?」
だが透き通った口調に、世界は冷気を取り戻す。
それでもフィブリゾは順応し、
「・・・えっと全部1000年だけど・・・僕の計算では後700年か800年、てところじゃないかな。」
平然と答える。だがそれにシェーラの容貌は昏く染まっていった。
「でも・・・僕がいれば大丈夫なんだろ?」
それでもフィブリゾの口調は悪戯げだ。
「・・・そうは言いましたけど・・・」
「じゃあ我慢して」
無邪気に微笑み掛ける。それにシェーラはむなしく笑った。
絶望が満ち溢れている。
だは、
「我慢の必要はありませんよ。」
不意に声。
「今のシェーラ?」
隣の少女に尋ねた。
だがシェーラは露骨に不快な表情を見せ、
「私、あんな低い声出しません!」
強く否定した。
「じゃあ・・・誰?」
恐怖が突如生まれ出した。
だが、それは一瞬にして弾け飛ぶ。
「私ですよ。」
声のした方向――つまりは正面を見やれば、そこには黒衣の男がいた。
「君誰?」
素早くフィブリゾの発した言葉へ、その男は慇懃に、
「私は・・・紳士です。」
そう告げた。

後書き
また苦戦。
いろんな場所に時間喰いました。(本のタイトルとか、魔王の前文とか剣の名前決めとか魚喰いながらだったとか)
しかも戦闘シーン、今1つな気が・・・これは集団戦はほとんど経験ないもので・・・。
これでは別話書く体力の余裕がないではないか。(まあ最近あちらさん不調ですけど・・・)
HPもしなきゃならないし・・・もぉ大変。

ちなみにマイルフィックというのはまたまたしつこくウィザードリィからで、シナリオ1で最強クラスの敵として出ていて、小説の不死王で猛威を振るっていた悪魔の王で、バビロニア神話のパズズと同一視されているらしいやつです。
ちなみにこの話でのマイルフィックの正体は・・・

それではこれで・・・。

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25504――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:24話:轟け敗走の大河よ颪月夜ハイドラント 2003/4/8 19:27:37
記事番号25494へのコメント

大地より虹が昇る。
だが無数の色彩を飾るは闇に包まれし冥き空。
不吉な雨を抜けて進む。
その中央には金色の輝き。
そう、この虹の如き軍勢を率いる獣王ゼラスの姿であった。
彼女の元へ無数の悪魔が迫って来る。
だがゼラスはベルセルク・ハートを静かに一閃。
風を引き裂く音はやがて魔物の断末魔と変わり凄まじき死の協奏曲を奏で出した。
後続の軍よりも光弾が発射され、それらも悪魔を屠ってゆく。
明らかに相対する悪しきものとは思えぬ悲鳴もあったものの、気にせずゼラスは切り裂き、返す刀で吹き飛ばして、数多の敵を退けていた。
さらに向かって来る黒翼の下級悪魔を串刺しにし、その姿が消えた瞬間に剣を旋回させ辺りに鮮血を散らす。
さらに下方より突き上げて逆袈裟。その刃の至らぬ方に、空いた腕で光弾を放つ。
さらに死角を侵す悪魔の毒爪を紙一重でかわし、足元をすくうものの脳天を引き裂く。
背後に回ったものも容易く素手で打ち滅ぼした。
圧倒的な戦闘力だ。
獣王ゼラスの強みはその卓越した技術と敏捷性による魔竜王ガーヴとは違った能力での接近戦での戦闘能力にある。
純粋な剣技戦闘に置いては彼のものに一歩譲るが、冷静な判断力と身のこなしを生かした突破力に集中力・・・それらの能力が集団戦での脅威となる後方援護の魔術師役を迅速に屠ることを可としている。
そして彼女は捉えた。
金色に輝く巨大な悪魔を、輝く悪魔(カルキドリ)を見据えていた。
ベルセルク・ハートが唸る。
颶風を戴いた刀身は魔術師悪魔へ至らんとしていた。
だが、遅すぎたようだ。
カルキドリの咆哮が彼女へ響く。
瞬間にすべての慢心が弾け飛んでいた。
焦燥、戦慄、思考の錯綜。
視界が消える。陽光が敵意を持った。
どこかで味方の断末魔。だが冷静さが残っていた。
それでも光は必ず届く。転移はけして間に合わぬ。
だが前方に黒点。
そしてそれは・・・
「レジスト!」
声を発し、魔力を発した。
瞬間に彼女を脅かす光は消えた。
カルキドリと自らを挟む位置。
そこに立っていたのは・・・
「ゼロス!」
ゼラスは歓喜の声を上げた。
「遅れました・・・獣王様。」
それに振り向き青年は笑う。
そして終わってゼロスは宙を蹴った。
そして光の魔物へ向かってゆく。
カルキドリは再び光を吐き出したが、予測していたゼロスはかわす。
そんな光景を見ていたゼラスも、不意に悪魔達の接近に気付き、剣を構えた。
そして疾風の如くそれらを滅ぼした。
正面のゼロスはカルキドリの巨体より、その首を掻き切っていた。
そして突進して来る悪魔をかわし、翻弄した後、笑顔で屠る。
ゼラスはそれに安堵を覚えた。
溜息が漏れる。後方の軍勢も悪魔相手になお優位だ。
そんな間にも2、3匹倒した。
悪魔は迅速に排除されてゆく。
軍隊としては覇王軍と対なす最強軍。
だが疑問を芽生えさせた。
悪魔であれば過去に魔王と竜神を苦しめた種族だ。事情は知れぬが、やつらには魔族を滅ぼす戦力はあろう。
力が微弱すぎる。
「獣王様・・・敵勢はあらかた片付きましたよ。魔術師もあの化け物1人だったようですし・・・。」
ゼロスの声は勝利を確信。
だがゼラスは昏き顔で、
「いや・・・これは小手調べにすぎない。」
そう答えた。その波がゼロスまで届く。
そして恐れは具現した。
それはまず瘴気の匂い。恐るべき気流が吹き付けて来た。
瘴気はやがて巨大化し、存在感を鮮烈に現した。
誰もが沈黙。黙り雨に打たれている。
雷鳴が鳴った。開始の合図。
背けることの恐れに耐えて、後方を確認した瞬間に二度目だ鳴る。
同時に、獣王軍の魔族達は、皆曇り顔となり――虚空へと落下していった。
無気味な光景。恐怖が胎動する。
正面へ戻った。横目には硬直するゼロスが見える。
声は出ない。腕は動かして見れば動く。
恐れていた。脅えていた。だがそれに囚われるつもりはあらぬ。
彼女の軍隊を指1つ、魔力1つ使わずに壊滅させたであろう敵を睨む。
それは異形の悪魔であった。
薄い金色の肉体。それは肥大し、球体の如き線を形成している。頭部は反して小さく、だがそれでも邪悪な笑みは逃さず見取れた。
手足も細く全体的に不恰好だが、感じ取れる力は凄まじく彼女を凌ぐほどであろう。
ベルセルク・ハートを握る腕に激しき震えが明白にあった。上級悪魔は魔王に届いたものまでもいたらしい。
だが彼女は笑みを浮かべた。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
ディアヴォロス
『悪魔』の存在する時代、やつらの貴族階級の1人が使用した鎧。肉体に溶け込み内部より力を送る。そしてその力は世界を破壊するほどであり、さらに生命体を取り込むことでその力を増幅出来た。・・・詳しいことは不明だが・・・。
大戦に置いても最も私達を苦戦させたものの1つだ。だが私達はそれを封印することに成功した。
神族の持つ秘法、精霊の4つのクリスタルと、魔族の1つの闇のクリスタル。その拮抗した3種の力により、1つの別空間へ閉じ込めた。
これは悪魔達を封印することとなった『地獄』とは別世界で、その世界を『三軸界』と呼び、別空間への門を『三軸の門』と呼んだ。
クリスタルや秘法は破壊出来ずに残っており、これはディアヴォロスの召喚を可としていることとなる。再び世界に現れないことを祈りたい。

「ふう・・・なるほど・・・。」
ガーネットは大辞典より視線を外し、虚空を見上げた。
「今頃、他の軍はどうなってますかねえ。」
表情は穏やかでしかもどこか嬉々としている。
「私としては、この戦いで他の軍が適度に弱ってくださると良いんですけど・・・」
そして変化した形相は悪魔以上に悪魔的。
「獣王さんも魔竜王さんも覇王さんも海王さんもゼロスさんもお姉様も潰れてくだされば、私の天下ですのに・・・。」
だが空間は静寂が満たされており、その笑顔はどこかむなしい。
溜息が昇る。
・・・。
「・・・あっ気晴らしにフィブリゾを拷問するのは楽しいかも知れませんわ。」
間を置いて声が上がった。
何かを思考していたようだ。
「へえ、君が誰を拷問するって?」
だが、不意に届いた刃が突き刺さる。
緩慢に視線を正面に移した。
「・・・ふぃぶ・・・りぞ・・・?」
驚愕が浮かぶ。露骨なほどに・・・。
その金色の瞳には確かにその少年が捉えられている。
そして彼は無邪気に笑っていた。
「冥王様でしょ」
そして答える。
ガーネットは一瞬詰まったが、
「いえ、冥王は私・・・」
「それおしまい。」
言葉を繰り出す。遮られたものの。
「君の時間は終了、僕は緊急事態で釈放。」
「そんな話が・・・」
さらに抵抗を試みるガーネット。しかし、フィブリゾは残酷に笑い、
「理由説明するより身体で分からせた方が早いや。」
右腕を突き出した。
そこより電撃の球体が走り、
「きゃああああああああああ」
ガーネットは絶叫する。
「ご、め、ん、な、さ、い、め、い、お、う・・・さ、ま・・・」
そしてそのまま悶絶し倒れる。
「よし・・・良い子だね。」
言って同時に指を鳴らす。
そして即座に次を繰り出す。
「ああ・・・ダイヤ。」
「何?・・・犯罪者さん。」
魔力により現れた美女は挑発的な声を上げた。
「えっと・・・ガーネットみたいになりたくなかったら良いんだけど、五軍全員に撤退命令を出してくれない?次宮のサファイヤ辺りに連絡取ってさ。」
だがフィブリゾは冷静に切り返す。
そしてそれにより、
「畏まりました・・・冥王フィブリゾ様。」
彼女は跪きそう答えた。
「じゃあ、場所は黄昏の隠り世。『ある人』が結界張って待ってるらしいから・・・。」
訊き終えてダイヤモンドは去った。
「さて・・・僕は一足先に安全な場所に、と」
倒れ伏すガーネットを抱え、――『ある人』の手助けにて脱獄していた――冥王フィブリゾは虚空に消えた。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「魔竜王様〜」
叫ぶ。
その大地をカルキドリの光線が蹂躙してゆく。
「魔竜王様〜」
竜神官ラルタークは、竜将軍ラーシャートは悪魔を蹴散らしつつ、それでも逃げ惑っていた。
軍としては微弱ではない上、さほど敵数も多くはないが、彼らに足らぬのは士気。
魔竜王いなくば戦況は不利。
撤退命令はしばし後となる。


後書き
こんばんはラントです。
サブタイトルは某私のお気に入りたまに家で叫ぶ呪文詠唱の一部をパロったものです。関係ないけど・・・。
修正入れて2時間掛かった。
それほど掛かってない気が・・・。
獣王様の華麗な戦闘劇(?)が今回の目玉かな。
『三軸の門』はウィザードリィ5の用語だったものですが、正直私にもよく分からないし、関連は全くないです。あっ使えるかもって思ったくらい。
後、『ある人』は丸分かりですよね。

ちなみにここ数日か、このシリーズ、別話、HPなどの作成ペースが低下するかと・・・。
他にも理由はあるのですが、ハードカバー650ページの大長編『アラビアの夜の種族』(古川日出男著)を読むことに・・・。
図書館からなので2週間以内に読まねばならぬ。現在初日で70ページほど、これからというところですかね。
読み終わったら『アビシニアン』も読むかな。
その次が『銀英伝』かな?(未読のライトノベル100冊以上あるくせに・・・)
後、エモーションさん、メルカトル鮎系・・・古本なかったです。やはり注文でしょうか、こうなれば・・・。

それではこれで・・・。
さようなら

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25509エロイムエッサイム♪ エロイムエッサイム♪エモーション E-mail 2003/4/8 22:10:24
記事番号25504へのコメント

さあ、バランガバランガ呪文を唱えよう♪ 熱い夢が僕らの魔法だぜ!
……と思わず昔懐かしの「悪魔くん」を歌ってみたり(笑)
こんばんは。

とうとう悪魔が現れましたね。
今のところ魔族サイドだけが相手をしているように見えますが、
神族サイドの方はどうなっているのでしょう。何事もないとは思えないのですが。
それにしても……本当に凄い力ですね、悪魔……。
腹心とゼロスレベルの高位魔族はともかく、それ以外はあっさりと
倒してしまうなんて。

そして自力で「冥王」位を取り戻し……いえ、奪い取った(?)フィブリゾ君。
でもフィブリゾ君を助けた「ある人」の目的は何なのでしょう。
単純に「悪魔」がいるのは厄介だと言うだけなら良いのですが。

また、「クリスタル」でつい初期のFFを連想しました。

ハードカバー650ページ……どんな内容で文体なのかにもよりますが、
確かに読むのは大変ですね。
慣れちゃうと「鉄鼠の檻」や「女郎蜘蛛の理」みたいな850ページ+α(ノベルズ版)
でも平気になるのですが。(この場合は手に持って読む方が辛いのですが……重くて(笑))
メルカトル鮎は別に買わなくても……通常の(学校図書館は例のごとく司書、
および司書教諭次第)図書館にはありますし。

では、少々変なコメントになりましたがこの辺で失礼します。
……ああ、「悪魔くん」のOPが脳内で木霊している(汗)

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25513Re:格闘ゲーム的から某迷宮探索ゲーム風に・・・颪月夜ハイドラント 2003/4/9 16:24:59
記事番号25509へのコメント


>さあ、バランガバランガ呪文を唱えよう♪ 熱い夢が僕らの魔法だぜ!
>……と思わず昔懐かしの「悪魔くん」を歌ってみたり(笑)
ううむ名前くらいならば聞いたことあるような・・・。
>こんばんは。
こんばんはラントです。
>
>とうとう悪魔が現れましたね。
大量出現しました。まあ下級は群れるだけですけど、上級は本気で強いし、
>今のところ魔族サイドだけが相手をしているように見えますが、
>神族サイドの方はどうなっているのでしょう。何事もないとは思えないのですが。
どうなのでしょう(邪悪な笑み)
>それにしても……本当に凄い力ですね、悪魔……。
>腹心とゼロスレベルの高位魔族はともかく、それ以外はあっさりと
>倒してしまうなんて。
ウィザードリィのマカニト(レベル8以下のものを問答無用で滅殺する魔法)みたいな感じかも・・・。
ここで出て来る悪魔(グレーター・デビル)は使えませんけど(そもそも攻略本でしか見たことない敵だけど)
全然、関係ないですがゼラスを襲ったカルキドリはウィザードリィでは下級の悪魔であちらのレッサーデーモンより遥かに弱いのです。
>
>そして自力で「冥王」位を取り戻し……いえ、奪い取った(?)フィブリゾ君。
>でもフィブリゾ君を助けた「ある人」の目的は何なのでしょう。
>単純に「悪魔」がいるのは厄介だと言うだけなら良いのですが。
このシリーズ中に明かせると思います。
>
>また、「クリスタル」でつい初期のFFを連想しました。
大丈夫です。私も連想してますし(待て)
>
>ハードカバー650ページ……どんな内容で文体なのかにもよりますが、
>確かに読むのは大変ですね。
最初の方は読み辛かったけどそろそろ拍車掛かってます。
>慣れちゃうと「鉄鼠の檻」や「女郎蜘蛛の理」みたいな850ページ+α(ノベルズ版)
・・・850って・・・
>でも平気になるのですが。(この場合は手に持って読む方が辛いのですが……重くて(笑))
>メルカトル鮎は別に買わなくても……通常の(学校図書館は例のごとく司書、
>および司書教諭次第)図書館にはありますし。
ううむなるほど。
>
>では、少々変なコメントになりましたがこの辺で失礼します。
いえ、そんなことけしてないです。
>……ああ、「悪魔くん」のOPが脳内で木霊している(汗)
流しておきましょう(おい)

それではご感想ありがとうございます。

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25518――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:25話:この世界に生きること颪月夜ハイドラント 2003/4/9 20:34:45
記事番号25504へのコメント

――汚されるなら消えてしまいたいと
偽りでなく思ったあの日――

――だがそれは迫られて初めて
叶う思い――

――そんな神は無情であるかと
問うことなかれ生きるもの達よ――

豪雨が大地を打つ響き。
それに包まれた世界の中で、
「暇だ。ああ我は暇だ。」
覇王グラウシェラーは、欠伸混じりの声を上げた。
怠惰の空気が空間を満たす。
「ダイ、ノースト・・・貴様ら何か芸をやれ。」
謁見の間の警護をしていたダイは言葉を受けて、
「義務を果たしておりますから。」
冷たき声を返した。
グラウシェラーの表情には疲れが表れ始める。
「全く、なぜこんな時に限ってグラウもシェーラもノーストもおらぬのだ。」
他の3軍と彼は違った苦を強いられている。
生憎の雨、その薫りは活力を奪う。
グラウはなお療養中、シェーラは知る通りである。
「ああ、何かないのか?」
だが懇願の如く天に漏らした瞬間、
「ええ、魔族全軍に退却命令。すぐさま黄昏の隠り世に向かってください。」
どこよりかそんな声。
沈黙の間がしばし続き、そして、
「よし、何だか知れぬが、ゆくぞダイ。」
重き腰を上げた。
「はあ?」
だがダイの声は呆れ混じり、
「黙れ。我がゆくというならば、貴様はそれに従わんか。」
覇王の叱責を受け、ようやく眠気より解放された。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
永遠の黄昏。
日没を滅びと見立て、その手前にあることを常に意識させた世界。
だが今、その地は暗き。焔の色の灯は消えていた。
不吉――そんな言葉がよぎる。
ただ時を待つシェーラの表情は闇を吸っていた。
雨はすべて得体の知れぬ男の、張りし結界に弾かれている。
全体は安堵感。傍らに不安といったところ。
その男はただ立ち虚空を見上げている。
シェーラは地に座していた。
会話はない。・・・さほど時は経っていまいが。
「あの・・・」
だがシェーラは切り出した。やや上気した顔は愛らしき。
すると、それを逃さぬその男は、
「何でしょうか?」
素早く跪き、視線を合わす。その黒目は彼女を吸収されていかんほど魅力的。
それに思考は混沌と化し、
「・・・あなたの・・・お名前は・・・」
思わぬ声をふと発した。
彼はその言葉もまた受け止め、
「私は・・・カルボナードと申すものです。」
慇懃に頭を下げた。
「・・・カルボナーラ・・・さん?」
丁重に返していくと、
「カルボナードです。」
迅速に彼は間違いを正した。
「ええ、魔族全軍に退却命令。すぐさま黄昏の隠り世に向かってください。」
同時のその言葉が鳴った。
その後、沈黙が続く。
そしてそれは即座に終わった。
「あの・・・さっきは・・・」
シェーラが再びそれを破ったのだ。
そしてそれにより再度、眼が合う。
シェーラの心は高鳴りしていた。明白に確実に鼓動が急速化している。
そんな中、彼の唇が接近している。薄い恍惚を浮かべ、妖しく美しくそして雄々しい顔をい近づけていた。
そして華が咲く。蜜は至悦の音を鳴らし、その甘みを全身に伝える。
「・・・お客様のようですよ。」
だが赤く染め上げられたシェーラに対し、カルボナードは平静と立ち上がり、
「ようこそいらっしゃいました。」
虚空に向けて一礼する。
シェーラは慌ててそちらを見やった。
すると彼の視線の先に結界の穴が生まれていた。
そしてそこより、いくつかの人影が接近して来る。
「覇王様・・・ダイ!」
シェーラは即座に歓喜を飛ばしていた。
また担架で運ばれるグラウの姿もある。あまりに迅速と言える撤退だ。
そして始めの2人はカルボナードを横目に、シェーラへ近寄った。
「シェーラ・・・我に無断でどこへいっておった。」
そして覇王の叱責を喰らう。
だがシェーラは昏く、
「・・・すみません。」
俯いた。
「まあ、シェーラ。殴られなかっただけ良かったよ。これを機に覇王様に度々折檻されるようになったら僕は・・・」
その傍らでダイがシェーラに接近する。
覇王に怒りの線が浮かんだが、彼は拳を震わすのみだった。
「・・・ダイ。」
「・・・シェーラ。」
そして兄妹は優しく抱き合う。
部下達は妬ましく、カルボナードは平静とそれを見守っていたが、
「・・・いらっしゃいませ。」
その彼は再び遠くを見詰める。
そして、そこには竜将軍ラーシャート、竜神官ラルタークの姿があった。
彼らもまた接近して来る。
だが2人のみ。そしてその浮遊もどこか不安定。
些細なことと切り捨てようとしたが、突如シェーラにダイに覇王にその部下達に、衝撃が走った。
嵐、それが隠り世を蹂躙し、共々吹き飛ばされ、弄ばれて、大地に墜ちた。
それでも離さぬ視線には、1つの異形が映されていた。
金色の輝き。4本の腕に巨大な剣と、斧と盾を持つ。黄金の兜は中央の直線と、左右の曲線の角を持っている。
神々しさは凄まじき。シェーラ達は皆震えつつも見取れていた。
「わっわしらは、・・・あれに・・・」
「軍はあやつ・・・1人に・・・」
そしてラルタークとラーシャートは脅えの色でカルボナードへ泣き付いている。
だがカルボナードのみは他と違い、平静と浸入して来たその悪魔を見詰め、
「・・・悪魔大公(デーモン・ロード)ですか?」
赤き瞳に訊ねた。
言葉は返らぬが、彼は首を後方に向けて、
「デーモン・ロードは、悪魔族の中では悪魔王に次ぐ最高位の1人。魔王シャブラニグドゥすら凌ぐ恐ろしい悪魔です。」
淡々と語る。彼ら皆に戦慄が降りた。
「だが・・・私にすれば雑魚同然。」
カルボナードはそう言い、正面を向く。
デーモン・ロードが震えた。
「最期に悪魔王に伝えなさい。私と・・・そして神皇はすでに気付いていると・・・。」
カルボナードは指を鳴らす。
するとその悪魔は・・・大地に墜ちて、塵と化した。
「・・・皆様に紹介します。・・・私はカルボナード、虚無の御子にして永遠の紳士、そしてこのあなた方を救うもの。」
言葉は返り得なかった。
その刻、冥王軍が現れた。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
戦慄の視線。
赤き輝きは魂までも震わせる。
エレニアは滅びた。あまりに容易く。だが、この悪魔の前ではそれも忘れさせる。
すでに退却命令よりどれだけ経ったか。すでに部下達に命令は下した。遅れるが彼らの退却は可能であろう。だが何の救いにもなりえぬ。
それでも未だに誰も自らの切り出せずにいた。
――海王様・・・逃げてくださいよ。
――だめよ・・・隙見せたらやられちゃうから・・・
オリオンとダルフィンが心の会話を交差させるが事態は変わらぬ。
ネザー・デーモンはただ悠然とそれを見る。
快楽の色はまるでない。
ただ慈愛と言わんばかりに彼らの焦りを観察している。
オリオンには恐怖があった。当然、他の3人も同じだろう。
それでも違った。
覚悟の焔。恐怖の風に掻き消されかけしその焔。
勇気を火種に強めてゆく。
だが疾風は無情に消す。
繰り返す。その葛藤を、その愚行を・・・。
だが永遠に思えんほど続き、ネザー・デーモンはそれを観察している。
だがいつ狩られるかも分からぬ。
それも恐怖であった。
硬直は続く。一瞬一瞬が悠久に思えた。
4人とも震えている。
雷鳴が鳴った。全員が警戒した。
爆音が轟き、雷光が迸る。
世界になお雨は降る。
気付けば大地が蹂躙されていた。
だがそにより亀裂が走る。
オリオンは自然と空を見ていた。
恐怖は変わらぬが、それでも視線が外せた。
ネザー・デーモンはそれを気にした様子はない。冷静に獲物を値踏みしている。
オリオンに映るは冥き空。
そして見えたのは背後より来る悪魔の第二軍。
ネザー・デーモンに吸われるもの達には見えはしない。
絶望的。先ほどよりもなお黒いと告げられていた。
(荒らされる・・・こんな輩に、この世界が・・・)
そして思う言葉はそれなり。
(そして・・・こんな輩に・・・俺は無力。)
そこで怒りが込み上げた。激しき怒気が・・・。
――海王様!今すぐ逃げてください。
そして言葉を飛ばした。主人へ・・・。
――えっでも・・・。
そして戸惑うダルフィンに、
――俺が囮になります。俺が熱衝撃波を放った瞬間に、ウシャナを・・・連れて・・・
声は途切れかけたがそれでも強い。
――でも・・・オリオンちゃんは・・・
海王からは悲痛な声。
それでもオリオンは哀しみを堪え、
――いえ・・・俺は良いんです。だから・・・
涙を堪え、
――だから・・・絶対に世界を平和にしてください。
そう言った。そして終えた途端に奔流が始める。それでも少し・・・笑っていた。
ダルフィンはしばし沈黙を続けたが、やがてすべての迷いを打ち切り、
――分かったわ。
そして決断した。
遅れて光が世界を包む。
同時に海王は彼の妹を強く抱き締め、そして飛び立った。







後書き
こんばんはラントです。
前文に意味はありません。何となく書きました。
今回はカルボとオリオンの活躍が中心?
カルボはバランス崩壊級に強くて困ってます。
いつから壊れたのだろうか・・・。
後、サブタイトルはオリオン系にしてみました。
>――だから・・・絶対に世界を平和にしてください。
辺りは名ゼリフ?
魔族なのに・・・。
滅びてしまいそうです・・・オリオン。
陽月様、大変すみません。

ちなみに神魔、降魔(じゃないけど)と続いたシリーズ、全体のタイトルがようやく付きました。
『サーガ・オブ・ナイトメア』
これがタイトルです。著者別にあります。
滅びを望むものと、それを拒むものとの織り成す壮大な悪夢の如き歴史物語。
だが、その辺に触れてない気がするのは気のせいでしょうか?
まあ正直、当初は軽くいこうと思ってましたから・・・。そして設定もいい加減で、矛盾してる部分あって・・・。
最後のネタ浮かんで、書きたくなりましたけど、そうじゃなきゃ、一区切りしたら終了してます。あのお方の御本名、アレよりアッチが良いかも知んない。私の話で考えるとあのお方は傲慢よりも・・・(これ書くと分かる方にはすぐに分かられそうな気がする。アッチの名前も・・・。)

それでは、次回とその次で新展開に至ると思います。
最近ペースがやや落ちて来て少々不安なラントでした。

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25525――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:闇の海に焼かれし御霊は颪月夜ハイドラント 2003/4/11 15:07:35
記事番号25518へのコメント

魂はどこへゆく。
我が命は、彼の御霊は・・・。
魂はどこへゆく。
誰もそれは知りえぬこと。
魂はどこへゆく。
ただ我知るは天空の果て、異なるば渾沌の底。
魂は廻るのだ。
清き、もしくば冥き、焔に焼かれすべて失いて、廻るのだ。
そして今も、小さき光が闇を這う。
その迅さ持ちて・・・。
だが御霊は天に還らず、地へ墜ちゆきし。
つまりは渾沌。
闇の底。
冥き焔に焼かれ、すべて失いて、廻るのだ。
やがて新たな御名を刻まれよう。
それは定め。
変えられぬ先天にして絶対の御名。
すでに変えられぬ。
母ですら、神ですら・・・。
記されしそれは――フィリア。
すべて失い新たな道へ・・・。
輝く闇に包まれ、汚れし闇の底で非業の死遂げしものの御霊は・・・。

こんばんはラントです。
昨日お休みしてました。(『アラビアの夜の種族』、やっと半分まで読めた。『砂の王』でのエルフが白人になってて驚き)
輪廻転生みたいな感じです魔族、神族の・・・。
でもまあ言っちゃえば、エネルギーのリサイクルでしかないんですけど。
忘れる前に挿入しておこうと思いまして・・・。
隠しても良かったかも知れませんけど、どこまで続くか分かんない話ですし・・・。
だがら言っておきました。ディスティアの来世、フィリアだと・・・。
別に、現世と来世で因果とかあるわけじゃないです。宗教的なアレでも何でもなくただのリサイクルですから。
ちなみにアニメ版のフィリアではなく、公式小説版に未登場だが生活している(設定の)フィリア・ウル・コプトであります。(初めは別キャラがフィリアの祖先だったのですが)
いずれ(天魔、降魔が無事終わって)さらに続きいくとしたら、小説版TRY(?)に入ります。
当然アニメとは別物。ガーヴもラルタークとラーシャート持ってるし、ゴルンノヴァも取り上げで、アメリアとゼルガディスもいませんし、魔族の絡み度が激増したり、ヴァル(
うわっ本編より長いのでは?
ええまあ、それでは・・・。(今日はいけるか疑問)

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25526上記事について颪月夜ハイドラント 2003/4/11 15:11:40
記事番号25525へのコメント

>ヴァル(
は無視してください。
以降続けるつもりだったのを忘れて投稿したのですが、やっぱりこれ以降書くのを止めようと即座に思いまして・・・。

後、25話で
>グラウはなお療養中、シェーラは知る通りである。
の後にノーストの説明がないのですが、これはミスでした。
ですが、これはこういう手法だと思ってください。
そう後で、思いつきました。


それでは言い訳完了。
さようなら・・・。

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25532各個撃破されつつある……という状況ですね。エモーション E-mail 2003/4/11 22:24:56
記事番号25518へのコメント

まあ、相手の戦力が集中するまえに……というのは基本と言えば基本ですが。

こんばんは。

暇だから芸をしろって……(汗)覇王さまってば……(苦笑い)
どうしても冥王の騎士が尾を引いていて、思わずサイコロ君と呼びたくなりますが、
ダイくんとシェーラちゃんはこちらでも仲良しさんですね。
こちらでは兄妹として、なのでしょうけれど。
ついでにカルボナードさん……ひよっとして女性を手玉にするのがお得意なのでは……?
ポルテ君とは違う意味で危ない人ですね。
彼の行動の後にはポルテ君がいるのでしょうけれど、何を目的にしているのか、
まだちょっと見えませんね。
ディスティアちゃんの事もありますし。

海王さまと妹を逃がすために残ったオリオンくん。
勝手に「今回の主役で賞」を授けます。

もしかしてこのシリーズは今後の展開が、原作のスレイヤーズと微妙に違う
パラレル系を基盤にした物語になるのでしょうか。
詩の方をを読んでちょっとそう思いました。
それにしてもディスティアちゃんがフィリア……。
アニメ版とは違うということですが……思わず、生まれ変わってもゼロスに
苛められるのかと、彼女が不憫になりました。
ヴァルがアルティア君の来世だったら面白いかなと、ふと思いました。

では、今日はこの辺で失礼します。
続きを楽しみにしていますね。

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25537Re:各個撃破されつつある……という状況ですね。颪月夜ハイドラント 2003/4/12 13:26:55
記事番号25532へのコメント


>まあ、相手の戦力が集中するまえに……というのは基本と言えば基本ですが。
そうでありますね。
>
>こんばんは。
こんばんはラントです。
>
>暇だから芸をしろって……(汗)覇王さまってば……(苦笑い)
何かよく言いそうな言葉?
>どうしても冥王の騎士が尾を引いていて、思わずサイコロ君と呼びたくなりますが、
まあサイコロには変わりないでしょう名前的に・・・。
>ダイくんとシェーラちゃんはこちらでも仲良しさんですね。
>こちらでは兄妹として、なのでしょうけれど。
あちらとは別物になりました。
>ついでにカルボナードさん……ひよっとして女性を手玉にするのがお得意なのでは……?
硬くて不透明の工業用の石だそうですけどカルボナード(黒ダイヤ)って・・・。
名が体を表わさない場合もあるのですね、はい(・・・?)
>ポルテ君とは違う意味で危ない人ですね。
・・・実質的な危険性はポルテ君を凌ぎかねない。
>彼の行動の後にはポルテ君がいるのでしょうけれど、何を目的にしているのか、
>まだちょっと見えませんね。
すぐに解けると思います。
>ディスティアちゃんの事もありますし。
あれは今件とは事実別問題ですけど本気の本気で・・・。
>
>海王さまと妹を逃がすために残ったオリオンくん。
>勝手に「今回の主役で賞」を授けます。
主役ですまさに・・・。
思えばアルティア逃がしたトラインスに似てるかも・・・。
>
>もしかしてこのシリーズは今後の展開が、原作のスレイヤーズと微妙に違う
>パラレル系を基盤にした物語になるのでしょうか。
いえ基本的には、小説版の軸で、異説の物語(原作で語られたことを覆すような)を書こうと思っております。
原作での『真実』を『誤り』や『偽り』と表わしてしまうような無茶苦茶な話です。
>詩の方をを読んでちょっとそう思いました。
元よりアニメは原作のパラレルのような存在ですし、アニメと原作を混ぜ合わせるのは矛盾を生じさせますので、アニメでのTRYを原作に、いやこの話として引っ繰り返した原作に、合うように変化させた後に、オリジナルの要素を加えたものですので、パラレル(正直、この単語について極限的な理解には達してはしませんが)化は成されてないかと思っています。
>それにしてもディスティアちゃんがフィリア……。
>アニメ版とは違うということですが……思わず、生まれ変わってもゼロスに
>苛められるのかと、彼女が不憫になりました。
まあリサイクル紙以上の別物ですし、ゼロスは感じられても、フィリア自身は全く分からないでしょう。
でもそれについてはまさしくすでに定められたことですね。
>ヴァルがアルティア君の来世だったら面白いかなと、ふと思いました。
ううむ、・・・アルティア君が滅びに晒される予定は現在ないですし(暴露)
>
>では、今日はこの辺で失礼します。
それではお足元にお気をつけて(何?)
>続きを楽しみにしていますね。
ありがたいご感想どうもありがとうございます。

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25545――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:26話:骸の呼吸颪月夜ハイドラント 2003/4/12 18:07:21
記事番号25518へのコメント

――希望は沈められる。
   だが光の中で、
    果たして絶望出来ようか――


混沌が逆巻いてゆく。
覚醒する自分が明白に見取れた。
眼を開く。
光が注ぎ込んだ。

「・・・・・・。」
薄暗い空。
初めて見入ったのはそんな悪景。
錆びた鉄のように美を欠いた闇色。
絶望すら孕ませる。雨は激しく不快で、だが届かなければ、音すらしない。
奇妙な静寂は雨天の虜囚を思わせた。
「・・・ここは?」
言った途端に背に硬い大地を感じる。
だがその不快を断ち切った。
「・・・黄昏の隠り世ですよ。」
返事はすぐに返る。
そして視界にも即座に存在を感じた。
孤独ではない。静寂でもない。
獣王ゼラスはそこに目覚めた。

「負けた・・・?」
「はい。あの忌まわしい悪魔(シャイターン)に・・・。」
そこに世界は形成されていた。
自然に干渉するものはなき。
数多の魔族のある空間で、空白を1つ形成していた。
それは自然的なもの。無意思的なもの。
それは2人の世界だった。
「・・・そう?」
発した声は麗しきもの。
戦場の雄々しき声でなく美女のそれ。
「・・・負けた。」
だが昏い。
凶悪な悪魔。
一瞬の敗戦。
長くも短くもある対峙の後、彼女は不意に空を切り、強大な魔物に突進していた。
それも半ば笑顔にて・・・。
だが悪魔はその巨体を持っても、素早く剣を見かわし、そして反して細き腕より魔力弾を解き放っていた。
壊滅の魔術(軍を滅ぼしたものである)すら凌ぐ魔力が凝縮されて彼女を撃ったのだ。
それにより一瞬の敗戦はなされた。
そう大いなる悪魔(グレーター・デビル)1匹に、実質、獣王軍は全滅させられたのだ。
「でも・・・傷は?」
現実に還った獣王が呟く。
少女の如く儚げな声。
それにゼロスは、
「フィブリゾ様と覇王様が癒してくださいました。」
そう答えたのみ。優しさは薄い。
それは何かの隔たりあってか・・・。
だがゼラスは問うこともない。
(私は・・・敗者。)
そう言い、反芻していた。
あからさまな1人の死に損ないとして・・・。
(私は・・・守れなかった。)
そして言葉はそう連なる。

(獣王様・・・すみません。・・・この僕が・・・)
ゼロスもまた心で呟き。
子は親に似るというのか?
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
激しき混沌。烈しき混雑。
だがその中で空白は1つだけでない。
その区画もまた闇の中。
1人の美女と、1人の少女。
等しく降らぬ雨に濡れている。
瞳は氾濫し、常夜を帯び、哀しみに苛まれている。
行方不明者。
魔竜王ガーヴ、覇王将軍ノースト、そして海王将軍オリオン。
重要なものはこの3人であった。
魔竜王軍は疲弊しきり、案じる間もない。
覇王軍はそのものを憂う心持たぬ。
そして海王軍。
(・・・オリオンちゃん。)
静かな嘆きであったやも知れぬ。
だがそれは内にて反響するのみ。
谺(こだま)した声が心を撃つ。
それが平穏の水面を揺らすのだ。
迷宮に等しい。干渉を拒む。
だが延々と迷い続ける。
それは時に、さらなる深みへ引きずられ、時に魔性に出会い。乗り越えて輝きを得るがすべて脱出に至らせない。
苦しむものがための遊戯。
けして救われず一瞬の安堵のみを求めさせる。
(大丈夫よ・・・きっと・・・)
と、滲み出る希望が、
(いや・・・オリオンちゃんは・・・)
、と闇に堕ちる繰り返し。
出口のあらぬ迷路。致死を孕まぬことのみが幸いか・・・。
ウシャナもまた彼女に似て昏い。
(オリオン・・・。)
言葉が途切れた。
浮かぶのは情景。
『・・・俺は・・・魔族失格なのか?』
蘇る声。
繰り返される。痛いほどに響く。
そして反射的に彼女は、
(・・・違う。)
心で叫んだ。痛みに耐えられず・・・。
(違う。違うよ。)
強まる。悲哀の情を含んで・・・。
(違う。失格じゃない。)
それは無情にもいくつもの光景をさらに宿した。
明るき輝かしき過去。
彼女の手料理を彼は食した。そして倒れた彼を彼女は救おうとした。
それだけでない。
邪竜と覇王将軍の暗躍した時代、満身創痍で発見されたオリオンを彼女はどれだけ思っただろうか。
計り知れぬ。混沌の海よりも深く、全世界よりも壮大で、天空よりも遥かに高く?――『世界』は、最深層に位置する混沌の海の海上に四界を持ち、さらに上層に四界と同質である数多の独立した世界を持って、最上部に天空を置く巨大迷宮である。――
だが過去とは残酷なもの。
輝けば輝くほどに、心の樹は光合成にて希望を奪い、絶望を造る。有機的な絶望を・・・。
還らない。その一言が水をなし、絶望という酸素を造る。
悪魔が求む負の感情であり、彼女ら魔族にも美味とされる(現時点ではやや禁制されてはいるが)絶望(酸素)を・・・。
だが彼女がそれを求むはずがない。
無機な希望に縋りたいのが常である。
だが植物の性は止められない。
(もう・・・会えないのね。)
強さは儚さと転化され、痛みは諦めへ、哀しみだけが増殖した。
(・・・もう終わった。一緒に遊ぶことも、声を聞くことも、何も・・・)
だが、それが逆に寄せる激情。
哀しみが儚さと諦めを突き破るのもまた理。
(お願い、生きてて、オリオン、嘘でしょ、帰って来て、今すぐ、笑って、オリオン、嘘でしょ、ねえ嘘でしょ、そんなわけない、生きてる、そうよね、きっとそうよね、だからオリオン、戻って来て、気付いて、あたし、哀しいのよ、だから、すぐに、戻りなさい。)
言葉の羅列。だが意味はなく哀しみを深めるのみ・・・に思えたが・・・。
突如、気配が1つ増えた。
接近ではない。感覚が異なる。
隣接でも発言でもない。
風を切る音と強き気配。転じてそれを希望と読み取る。
呼吸。そう骸の呼吸。
無機的なそれでなく、絶望よりもなお有機的な希望(彼女の酸素)。
だが俯いたまま。訪れを待った。
見るのは大地。彼女は座っていた。
俯いたまま。救いを待った。
一瞬、一瞬が鮮明で、それでいて急速。
過ぎゆくほどに不安の増す行為だが、続けた。
それでも膨張はある。
期待があまりに膨れすぎた。
絶望など感じずに、後悔など切り離して、ウシャナはそっと空を見上げた。
だが・・・出でたのは溜息、落胆。
世の常、法則。訪れと待ち人は一致せぬ。
それが法則。理を超越した。
大気を切り裂き、風を纏い、それらのあらぬ地へと降臨を望みしもの。
「てめえら、カオス・ドラゴン様のお帰りだぜ!!!」
豪快な叫び。待とうとも理解可能であった未来。行動は正解か?
そう宙に浮かび、大地を見下ろし、叫ぶものの正体はガーヴ。
落胆は彼女の枷となる。
海王ダルフィンもまた同じ。
喧騒はあったが、周囲は明らかに控え目であった。
それが拍車を掛けたでなかろうか。
ウシャナは一瞬に奈落に堕ちた。
還らない。その思いがなお強まる。
それは重石に似ていたか・・・。
劇的な変貌はやはり痛い。
そうだが、それは逆を意味した。
無理な重圧とは反抗を意味させる。
そうだ。光が湧き上がる。
「魔竜王様。」
上天に叫んだ。
音量は高くも、強くはあらず。
涙に孕み、弱く、醜い。
「オリオンを・・・海王将軍オリオンを見ませんでしたか?」
続けた。やはり・・・醜い。
だがそれでも魔竜王は、笑顔を浮かべ、
「残念だ。そいつは知らねえ。」
答えた。
ウシャナが沈む。
「だが仇討ちくれえなら出来るかもな。」
だが続けられた。連ねられた。
そしてそれの対象はウシャナではない。
魔族全土、とりわけ、冥王と覇王とカルボナードの区画へ向けて・・・。
「冥王ちゃんよ。良い拾いもんしたぜ。」
そして彼は指を弾いた。
快い音が小さく響き、空を切り、宙を超え、風を追って、その区画へ飛んでいった1つの影。
(・・・アルティア。)
(・・・邪神王。)
フィブリゾとグラウシェラーは心で驚愕した。
落下を続けるまさしく満身創痍の半魔神族に・・・。

後書き
こんばんはラントです。
心配していたけど無事完成。
果たして重く出来たかな編。
混雑を予想してたけどどうにかなりました。
何と、次回からクライマックス編に入ります。
思うより遥かに掛かってますけど悪魔編。(プロット上では今回が23話。)
邪心狩り、悪魔襲来とやっとここまで来れた。
フィブリゾに濡れ衣を着せてみたい一心(鬼)でシリアスにしたモラトリアム(猶予でも何でもなく大事件に巻き込まれてるけど)。

アラビアの夜の種族。
ついに残すところ100ページほど。
1日100ページ強って遅いですか?
でも結構はまる。
もう眠たくて疲れてもそれでも無理して読みたくなっちゃう。蝕み系ですね。
話の途中で、眠いと言いながら眠り続ける。とかそんな部分がありましたけど、疲れて横になっていた私はそんな感じでした。(いや物語の方は1年半以上眠らなかった人なので、私のそれは遠く及ばないですが・・・)
それにしても壮大な物語ですわ。ページ数だけじゃなしに・・・。
かなり影響されてます。文中の(悪魔(シャイターン)もイスラムですし・・・。)
もうこれとおパソで暮らす毎日です。

あのお方の名前
この話の中でのそれを理解すると、推測によっては心情が読めるかも・・・。(ヒントは『傲慢ではない。』)
個人的には面白い名前だと思ってますのでこいつでいきます。
あの名前は本文中で載せられているわけではないですし・・・。
まあ正解しても賞品は出ませぬ。(体力、気力、時間などの問題により)

それでは・・・。(ああ全然HP進んでない)

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25560ガーヴ様……手みやげ持参ですね(汗)エモーション E-mail 2003/4/13 22:32:03
記事番号25545へのコメント

こんばんは。

さすがにそれぞれが深刻なダメージを受けたためか、
魔族の皆様……落ち込んでますね……。
一気に儚げな感じになってしまっているゼラス様がツボでした。(←おいっ!)
普段の武人風もとても好きなんですけれど。
普通を装いつつ、しっかりと一緒に落ち込んでいるゼロスもいいです。
オリオンのことを思う海王様が、恋人でも待っているみたいでとっても健気でした。

そんな中で、ガーヴ様……さすがというべきでしょうか……。
登場と当時に一気に雰囲気を変えましたね。
手みやげになっているアルティア君……。大丈夫なのでしょうか?(滝汗)
なんだか滅んでしまいそうにも見えるのですが。

>一日100ページのペース
それは本を読む猶予がどれだけあるかと、書かれている文章によります。
ちなみに私の場合「銀英伝」ノベルズ版(だいたい二百数十ページ)で
時間に余裕があって、集中して読んで2時間です。
でも、まあ普通に本を読む人なら、通常のペースではないかと思います。
文庫ですと「十二国記」もだいたいそのくらいですね。「スレイヤーズ」や
「オーフェン」辺りで1時間〜1時間半でしょうか。
一番時間がかかったといえば、やはり京極夏彦氏ですね。一番薄い「姑獲鳥の夏」
(確かノベルズ版で約400〜500ページくらい)や「狂骨の夢」(同じく約580ページくらい)で、確かトータルで5〜6時間(多分)でした。
……京極夏彦氏もある意味蝕み系ですから「姑獲鳥の夏」を読んでいた当時、
「もうAM2:00だよ〜。明日も仕事なのに……。でも続きが〜」とのたうち
回った覚えがあります。

では、妙なコメントを残しつつ、これで失礼いたします。
アルティア君がこの後どうなるのか、気にしつつ続きを楽しみにしています。

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25565Re:ガーヴ様……手みやげ持参ですね(汗)颪月夜ハイドラント 2003/4/14 13:34:09
記事番号25560へのコメント


>こんばんは。
こんばんはラントです。
>
>さすがにそれぞれが深刻なダメージを受けたためか、
>魔族の皆様……落ち込んでますね……。
まあ、現実逃避して狂ってるやつもいるかも知れないですけど・・・。
>一気に儚げな感じになってしまっているゼラス様がツボでした。(←おいっ!)
>普段の武人風もとても好きなんですけれど。
感情が急下降しました。
>普通を装いつつ、しっかりと一緒に落ち込んでいるゼロスもいいです。
この対称な感じは似なかった部分ですかねえ。まあ太陽の対として月という感じで、ゼロスは生まれたのかも知れませんけど(ルビー&ガーネット、ダイ&ノースト、(以下は一応)オリオン&ウシャナ、ラルターク&ラーシャート、などもどこかで対っぽいですし)
>オリオンのことを思う海王様が、恋人でも待っているみたいでとっても健気でした。
まあ彼女にとって息子は恋人と同義語でしょう。
>
>そんな中で、ガーヴ様……さすがというべきでしょうか……。
>登場と当時に一気に雰囲気を変えましたね。
まさしく破壊屋。
>手みやげになっているアルティア君……。大丈夫なのでしょうか?(滝汗)
>なんだか滅んでしまいそうにも見えるのですが。
プロットの都合で(おい)無事です。(『な(い)』と読む『無』と『こと』と読む『事』を意識的に使わないようにしている私。だが無事は大丈夫だろう。恐らく。)
>
>>一日100ページのペース
>それは本を読む猶予がどれだけあるかと、書かれている文章によります。
>ちなみに私の場合「銀英伝」ノベルズ版(だいたい二百数十ページ)で
>時間に余裕があって、集中して読んで2時間です。
はっ早いですね。
>でも、まあ普通に本を読む人なら、通常のペースではないかと思います。
>文庫ですと「十二国記」もだいたいそのくらいですね。「スレイヤーズ」や
>「オーフェン」辺りで1時間〜1時間半でしょうか。
うわっオーフェン1時間半なんて絶対無理です。
>一番時間がかかったといえば、やはり京極夏彦氏ですね。一番薄い「姑獲鳥の夏」
>(確かノベルズ版で約400〜500ページくらい)や「狂骨の夢」(同じく約580ページくらい)で、確かトータルで5〜6時間(多分)でした。
ううむ。
私はアラビアの夜の種族に余裕で10時間は掛かってるはずです。(1日2時間は読んだと思う)
風よ。龍に届いているか(アラビアの夜の種族の元となった古川氏のデビュー作で前文を書いていた方の長編小説)も同じくらいあったけど、あれははまって楽に読めた。
文章の雰囲気としては、アラビア〜が沼なら風龍は山・・・かな?
>……京極夏彦氏もある意味蝕み系ですから「姑獲鳥の夏」を読んでいた当時、
>「もうAM2:00だよ〜。明日も仕事なのに……。でも続きが〜」とのたうち
>回った覚えがあります。
武官弁護士エル・ウィンや伝説の勇者の伝説(長編)は夜更かしして読んでましたけど、スラスラと読んでいけた。
だがアラビア〜は心身が疲労訴えてるのに、それでも読むのを止められず、止めるのは限界となってそのまま寝る時か、用事の時くらい。
まさしく物語に登場する『災厄の書』そのもの。
>
>では、妙なコメントを残しつつ、これで失礼いたします。
大丈夫です。私の頭の中の方が妙です(待て)
>アルティア君がこの後どうなるのか、気にしつつ続きを楽しみにしています。
それではご感想どうもありがとうございます。

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