◆−冥王の騎士:虚像編?:勇者と美姫と大魔王−D・S・ハイドラント (2003/2/25 18:23:31) No.24939
 ┣後書き−D・S・ハイドラント (2003/2/25 18:55:47) No.24940
 ┣愛の逃避行♪−エモーション (2003/2/25 22:47:47) No.24944
 ┃┗Re:愛の逃避行♪−D・S・ハイドラント (2003/2/26 12:15:30) No.24948
 ┗冥王の騎士:虚像編:最終章?:風よ。竜とかに届いていたりしているか(待て)−D・S・ハイドラント (2003/3/5 22:32:02) No.25019
  ┣冥王の騎士:虚像編:深淵の果ての冥き底にて響き渡る呪詛、その名は『後書き』−D・S・ハイドラント (2003/3/7 15:06:11) No.25048
  ┗Re:冥王の騎士:虚像編:最終章?:風よ。竜とかに届いていたりしているか(待て)−エモーション (2003/3/7 23:16:13) No.25064
   ┗Re:冥王の騎士:虚像編:最終章?:風よ。竜とかに届いていたりしているか(待て)−D・S・ハイドラント (2003/3/8 17:54:34) No.25079


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24939冥王の騎士:虚像編?:勇者と美姫と大魔王D・S・ハイドラント 2003/2/25 18:23:31


 今は昔、遥かなる世界の果ての小さき国に、美しき姫ありた。
 それ名をシェーラという大層美しき姫でありたが、その美貌、やがて邪なるもの達に知れ渡りゆきし。
 そして邪なるものたる、大魔王フィブリゾ、月なき宵に彼女の寝床に忍び寄りて、
 「シェーラ・・・好きだ。」
 「私もです・・・大魔王フィブリゾ様。」
 甘き声にて、シェーラかどかわせし。
 
 シェーラ姫攫いた相手、恐らくは当てずっぽうだろうも、シャブラニグドゥ王、犯人大魔王フィブリゾと決め付け、ひどく憤慨とともに深く恐れ、そして哀しみ第一に激しく覚えし。
 「大魔王フィブリゾを倒したものに金貨5000と2枚を授けよう。」
 そのおまけたる2枚の魅力につられてか、大魔王退治を引き受けしもの大漁なりた。
 「シェーラ姫待っててね。君には大魔王なんて物騒な男より、この僕の方が相応しいだから・・・。」
 淡き金髪掻き揚げ、若き騎士戦場へ赴かん。
 
 「ぐふっ・・・」
 騎士は瘴気に侵され倒れゆく。血吹き、永遠に目覚めぬ深き眠り。
 「全く弱いなあ。」
 呟きしは幼き少年。見るは築かれし屍の山。
 「・・・もっと骨のあるやつが出て来てくれると暇潰しになるんだけどな。」
 そして視線向かう先より起き上がる屍、肉剥がれ白骨剥き出し。昏き天に妖しく輝くそれは・・・。
 「・・・でもカルシウムばっかりも当然却下。」
 左手より撃つ、闇の弾丸。容易くスケルトン砕せし。
 「・・・さてシェーラの調子はどうかな?」
 そして暗黒へと歩き出さん。
 
 「そこの御婦人、キャラメルソースをご存知ないか?」
 騎士シェイド、笑顔浮かべて、黄金の髪に赤き瞳たる、彼と同じでなお美しき美女へと呼び掛けん。
 「・・・☆3くらいね」
 「何か言われたか?」
 小さき呟き鋭く突かんば、
 「ああ何でもないわよ。・・・それよりキャラメルソースだったら、ここから真っ直ぐいって、3つ目の角を右に曲がって・・・」
 「何!もうすぐそこか。やはり運命の女神、君は僕を狙っているんだね。でも僕はシェーラ姫のもの。すまないけど君には捧げられない。」
 輝き満たされ陶酔に堕ちん。
 「そこにあるバナナプリンってお店のキャラメルソースカキ氷、美味しいわよ。」
 「なるほど・・・そうか。大変感謝する。」
 「・・・良いのよ。☆3つ以上の男に尽くすのは女の義務だし・・・。」
 そして駆け出さんシェイド。
 「なるほど・・・大魔王の住み処は市販されているのか。」
 意味不明なる勘違い抱きつつにシェイド駆けゆく街の中
 
 「大魔王フィブリゾ・・・現れろ!」
 鋭き叫び、強く美しき。
 「・・・何だよ。全く・・・。」
 眠気堪え歩き来る少年。
 「それがし、騎士ルビーが愚かなる貴様を成敗しに来た!」
 威勢良きて、魔王恐れし気配なき。
 「・・・嫌だな。こういう中途半端に強いやつって・・・無駄に魔力使っちゃうし・・・。」
 「問答無用!」
 鬼神の如き形相に変わりて、ルビー地蹴りフィブリゾへと・・・。
 (・・・出来る。)
 強き騎士なり。そう察知せし大魔王、満面の笑み浮かべ、
 「君に僕が斬れるかな?」
 「何だと!」
 言う間に近づきゆく2人。
 「だから、こんなに可愛い僕を斬れるかって聞いてるんだよ。」
 大魔王フィブリゾ、諸悪の根源ながらも姿、まさしく愛らしき少年。
 「うっ・・・」
 「・・・じゃあね♪」
 ルビー退場。男女と罵られずに世界去れたこと幸福なりかな。

 騎士すでに多数破れ、傭兵などもけしてかなわぬ。
 残されし希望――後1つ。
 「はあはあぜえぜえ・・・大魔王・・・僕は・・・ついに・・・着たぞ・・・キャラメル・・・ソース・・・ぐふっ。」
 そしてその根も今尽きし。
 「・・・真冬にカキ氷・・・十杯も喰うんじゃなかった・・・」
 キャラメルソースカキ氷、大魔王への道と勘違いせし愚かな勇者の生涯終わりし・・・。

 「ふふふ終わったね。シェーラ。」
 「そうですね・・・フィブリゾ様。」
 いつしか愛し合いた2人、キャラメルソースの冷たき地の底。
 だが2人愛の力あれば、それ何の苦もなく乗り切れるだろう。
 ・・・何とめでたき最後かな。
 「・・・ちょっと待って・・・僕が登場してないよ。」
 だが幕降りし世界、そこに現れし、銀髪碧眼、美しき姿。胸になだらかなる丘陵なくば完全なりし美少年。
 「僕には・・・最後は愛の力で僕がシェーラ姫と大魔王フィブリゾを僕の愛の虜にする話って聞かされたけど・・・」
 そんな中、観客席より飛ぶはポップコーン。
 「・・・痛い。痛いよ。でも・・・これがみんなの愛なんだね。」
 異世界よりの刺客、ローザリア・ラ・トゥール・ポルテの陰謀、今打ち砕かれし。

 これは客席の一画、少年、少女そこに座りし、
 「ねえシェーラ・・・凄い偶然だね。」
 「ええ、私達と同じ名前だなんて・・・」
 大衆と違う点にて瞳煌かせしこの2人。

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24940後書きD・S・ハイドラント 2003/2/25 18:55:47
記事番号24939へのコメント

こんばんはラントです。
・・・ネタ切れっす。
苦し紛れのネタ使い何とか今年の冬もしのいだ(?)のですが、もう限界かと・・・。
アイン君の旅編って手もあるけど・・・浮かばないしな。
・・・もしかしたら今回が最終回になるかも知れないです。
まあそろそろメッキー本編も完結しますが・・・。
新ネタとしては地道なことが滅茶苦茶嫌いなくせに探偵やってるL様が魔力と武力ですべて解決する話とか・・・。
冥王の騎士みたいなあれこれややこしくなく、もっと気楽なファンタジーものにしたいと思ってます。
タイトルとしては
『迷探偵L』・・・普通だ
『L様は迷探偵』・・・これも同じ
『証拠は隠滅♪』・・・意味が分からん。
『怒りの音速破壊神L』・・・これも意味不明
『浮気は絶対許せない』・・・ううむスケールが・・・事実こんなところだろうけど
『大魔王探偵L』とか『迷探偵は破壊神』とかこんな感じかな。
連載が作成予定のHPになるかも・・・。
・・・さる方との合作になるかも知れませんし。
というか没になる可能性も・・・。

何か変な話で随分長くなりましたが、この辺りで・・・明日か明後日にはメッキーの第2回公開をしたいかと思っております。

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24944愛の逃避行♪エモーション E-mail 2003/2/25 22:47:47
記事番号24939へのコメント

こんばんは。

一体何かと思いましたが、正統派ファンタジーですね!(ツッコミは強制的に却下)

一目会ったその日から、恋の花咲くこともある。出会った瞬間ラブラブ1000%
に陥ったシェーラ姫とフィブリゾ様は、父親の猛反対にめげず愛を貫くために、
手に手を取って駆け落ちをしていくのでありました。
しかし、2人の愛の逃避行はけして楽なものではありませんでした。
シェーラ姫の父王シャブラニグドゥの追っ手、そして美しい姫を狙う輩から、
フィブリゾ様は愛するシェーラ姫を守るため、果敢にも1人戦うのでした。
(はい。ここ、試験に出しまーす。ちゃんと板書しましょう!)
そして、唯一の強敵(ルビーさん)は自らの過ちを悟って去り、
粘着質の変な横恋慕男(シェイドさん)は自らの策によって自滅して果て、
ついに2人は安住の地を見つけたのです!!
こうして、フィブリゾ様とシェーラ姫は末永く幸せに暮らしました。 おしまい。

ああ、良いお話です……(ほろほろ)
え? 話が違う? 気にしないでください。多分、合っているところが
ひとつくらいはあります。

……と言うことで、楽しませていただきましたー!!
童話風かな、と思っていたら劇中映画でしたか。
シェーラちゃんとフィブリゾ君がデートで観ているんですね。
何故か(笑)同じ名前の主人公とヒロインに瞳輝かせて。
ポルテくんには爆笑しました。ここまで来ますか、彼は(笑)

つい、触発されまして、妙なお遊びをしてしまいましてすみません。
では、変すぎるコメントですが、これで失礼します。

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24948Re:愛の逃避行♪D・S・ハイドラント 2003/2/26 12:15:30
記事番号24944へのコメント


>こんばんは。
こんばんは。
>
>一体何かと思いましたが、正統派ファンタジーですね!(ツッコミは強制的に却下)
おーどーです。(後天的だけどボケ派)
>
>一目会ったその日から、恋の花咲くこともある。出会った瞬間ラブラブ1000%
>に陥ったシェーラ姫とフィブリゾ様は、父親の猛反対にめげず愛を貫くために、
>手に手を取って駆け落ちをしていくのでありました。
>しかし、2人の愛の逃避行はけして楽なものではありませんでした。
>シェーラ姫の父王シャブラニグドゥの追っ手、そして美しい姫を狙う輩から、
>フィブリゾ様は愛するシェーラ姫を守るため、果敢にも1人戦うのでした。
>(はい。ここ、試験に出しまーす。ちゃんと板書しましょう!)
・・・・・。(必死で写してる)
>そして、唯一の強敵(ルビーさん)は自らの過ちを悟って去り、
>粘着質の変な横恋慕男(シェイドさん)は自らの策によって自滅して果て、
>ついに2人は安住の地を見つけたのです!!
>こうして、フィブリゾ様とシェーラ姫は末永く幸せに暮らしました。 おしまい。
ああ良い話(感涙)
>
>ああ、良いお話です……(ほろほろ)
>え? 話が違う? 気にしないでください。多分、合っているところが
>ひとつくらいはあります。
まあ概ねそんな感じですね。
>
>……と言うことで、楽しませていただきましたー!!
それはどうもです。
>童話風かな、と思っていたら劇中映画でしたか。
最初は童話でいこうと思ったけれど、書き終わって劇か何かに・・・。
>シェーラちゃんとフィブリゾ君がデートで観ているんですね。
そうなりますね。前回企んでいた城脱出計画が成功した模様・・・。
>何故か(笑)同じ名前の主人公とヒロインに瞳輝かせて。
名前が同じなのは永久の謎・・・。
>ポルテくんには爆笑しました。ここまで来ますか、彼は(笑)
・・・ある意味最強キャラ。
>
>つい、触発されまして、妙なお遊びをしてしまいましてすみません。
いえこれ読んで楽しい気分になりましたし・・・
>では、変すぎるコメントですが、これで失礼します。
いえかなり良かったです。どうもありがとうございます。

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25019冥王の騎士:虚像編:最終章?:風よ。竜とかに届いていたりしているか(待て)D・S・ハイドラント 2003/3/5 22:32:02
記事番号24939へのコメント

 飛び掛って来る獣。
 彼女の瞳がそれを捉えた瞬間に、煌きは宙を舞った。
 衝撃音は激しい。
 力負けして、退歩する。
 激しき追撃が訪れた。
 瞬間に意識は混濁してくる。
 だが諦めずに踏み込んだ一撃は――
 風の如くに空を切り、そして響いた勝利の旋律。
 呆然とする中にて・・・
 ≪勝者、シェーラ・ジェネラル≫
 届いた音に感激の波が溢れ出した。
 喧騒の中、戸惑いつつに輝きは幕を閉じた。
 
 ――第67回カタート王国剣術大会一般部門優勝
 ――それも最年長の13歳で・・・。

 「3位、ルビー・コランダム
 同じく3位、セレナイト・フォール
 2位・・・カルサイト・ゴーネス
 そして1位は・・・シェーラ・ジェネラル。」
 栄光の歌が鳴響く。

 「よくがんばったぞシェーラ。」
 感嘆の笑顔、それのみで充分すぎたほど。
 「・・・ありがとう・・・父さん。」
 黒き髪の幼き少女シェーラは精一杯の微笑みを返した。
 「全く、父さんが鍛えた甲斐があったな。」
 幸せの構図に突如、
 「そちら、優勝者のシェーラ・ジェネラル殿ですな。」
 掛かる声、それにシェーラ振り向けば、
 厳しき面に隠された壮大な実力。それを匂わす1人の老人。
 「どちら様ですか?」
 父には多少なりとも不快感が出でていた。
 「失礼、私はツバン・ドラゴロッソと申すものです。」
 だが、その父に、そして生まれたのは驚愕の沈黙。
 「まさか・・・あの、竜騎士殿では・・・」
 「そんな2つ名もありますな。」
 老人は軽く微笑みを浮かべた。そして視線は半ば脅えたような少女。
 「で、竜騎士殿が何用で・・・」
 すると、笑みは強まり、
 「・・・この子を、シェーラ・ジェネラルを私の従者にしたいのですよ。」
 衝撃は走る。波紋は返らない。
 「どうしますか・・・。シェーラ殿、あなたが決めれば良いことですよ。」
 「ちょっ・・・」
 父が声を上げた頃には、シェーラは頷いていた。

 シェーラが従者となる前日。
 「馬鹿かお前は・・・」
 声は流れて消えたが、言葉は残った。
 だが沈黙だった。
 「・・・良いのか本当に・・・」
 不動だった。停滞だった。
 しかし涙を流した。
 曇りきった表情、虚ろな瞳。
 だが、どこかに隠れているのは・・・。
 「・・・分かった。」
 父は溜息を漏らした。
 これが最後の言葉となる。

 ――当日の見送りに父は来なかった。

 荘厳が漂う海。
 衝撃に惑う彼女の世界はそれであった。
 白亜の壁は美しく汚れなく、光を湛えている。
 表情は感嘆に、笑顔となった。
 数多の視線が、幾度と震えを起こす。
 それでも淡々と歩を進め、やがてたどり着いたのは開けた自然世界。
 ――中庭であった。
 「ここで待っていてください。」
 優しき老人の声にシェーラは頷き、適当な位置のベンチに座る。
 騎士達の剣術練習は近くにあって激しく遠い先でもあった。
 「ねえ君・・・」
 だが不意に声が掛かる。
 逆巻き、急速に現実感が露となった。
 「はっはい?」
 声を上げると同時に上気。戸惑うも視線は強張り動かず。
 「結構可愛いじゃないか。どこかの貴族の子か何か?」
 「あっいえ・・・」
 だが声は小さく、そしてこれ以上出でることもなかった。
 「僕はシェイド、・・・よろしくね。」
 接近した赤き瞳は妖しさに満ち、魅力的であった。
 「・・・・・・。」
 だが言葉は出ない。
 激しき焦燥、震え、自らをどこかで嫌悪した。
 だが彼は優しく、
 「大丈夫、無理しなくて良いよ。」
 焔がそして燃え盛る。激しく強く彼女を焼いた。
 「じゃあ、僕はいくから。」
 それが、天才魔道騎士シェイドとの初めての出会いであった。
 
 「ねえ君。」
 なお待つシェーラに掛かった声、
 「あっ・・・」
 声を上げ、世界を見れば、そこにはまだ10歳ほどの少年がいた。
 だがその美貌は絶大だった。
 「私?」
 独り言か、訊ねる言葉か、曖昧な口調で言葉を発すれば、
 「うん君のことだよ。」
 そう言って微笑む。
 幼い口調であったが、いくつか上の彼女よりも正確なものであった。
 「どうしたの?」
 それに心で焔が燃え、意識を鮮明とした。
 出でた言葉に、
 「いや君が可愛かったんで声掛けただけなんだけどね。」
 戸惑いと違う意味の焔が押し寄せ、シェーラは虚ろと化していった。
 「殿下!」
 突如に声、
 「全く、殿下、シェーラ殿に何をしておられるのですか!」
 声に縛めより解き放たれる。
 「ごめんツバン。」
 微笑みを騎士に浴びせれば、
 「いけませんよ。これからは気を付けてください。」
 「はぁい。」
 そこで驚愕が再び訪れる。
 「・・・殿下?」
 思わず漏らしたその声に、
 「そう、僕はフィブリゾ。カタート王国の王子だよ。」
 感情の波がシェーラの心に喰らい付く。
 「ごごごごごご、ごめんなさい!!!」
 思考は希薄で、混沌としていた。
 世界も見えずにただ言葉を放つ。
 沈黙――優しくもあり残酷でもあった。
 だが慈愛の笑顔がそこに見えれば、
 「いや別に君は何をしていないじゃないか。」
 「でも・・・」
 言葉を連ね、そして――
 「・・・分かったよ。」
 輝きがシェーラに戻ってくる。
 「・・・何でも許してあげるから、僕のことこれからフィブリゾって呼んで♪」
 沈黙が時を刻み、
 「でっ、ですが・・・」
 シェーラは再び俯く。
 「無理?」
 やはりは優しさ。
 「・・・分かった。様を付けて良いよ。」
 シェーラは少しずつだが、陰を消し去ってゆき、
 「・・・フィブリゾ様?」 
 「うん。ところで君の名前は・・・」
 「・・・シェーラです。」
 ここにフィブリゾとシェーラの出会いがあった。

 「シェーラ・ジェネラル、そなたを騎士ツバン・ドラゴロッソの従者として今ここに任命する。よいな。」
 「・・・はい。」
 沈黙が走る。
 目の前には、威厳を持つ男。
 カタート王シャブラニグドゥの姿。
 「それではゆけ、シェーラよ。」
 一間、遅れてシェーラは踵を返す。
 そこは至上の天国であり、それでいて恐るべき魔界に等しかった。
 
 「よろしく頼むよ・・・シェーラ。」
 「はい・・・ドラグロッソ卿。」
 すると老騎士は微笑み、
 「ツバンで良い。」
 「分かりました・・・ツバン殿。」

 ――ここに従者シェーラが誕生した。

 竜――強大な力との相対。
 普段の笑顔がなくそこより気迫が伝わって来る。
 気圧されつつも、負の気を退け、両腕の震えを必死で抑えて、立ち向かう。
 どんな風も荒涼だった。
 瞬間に感じたのは動き、地を蹴り竜は向かって来る。
 その爪が煌き、振り下ろされた。
 竜――竜騎士ツバンの速き一撃、剣を構え、素早く受ける。
 颶風が走り、思わず退いた。
 追撃を掛けるツバンの姿は、まさしく風の竜であった。
 剣で弾くもやはり力は強く、押し負けてシェーラはさらに退く。
 素早き一撃はなおも来る。
 だがシェーラも恐れず地を蹴り、天を駆けた。
 瞬間に剣撃の交差、そこにて焦燥が生まれ出でて・・・。
 剣の平が直撃する。
 それを確認しつつもシェーラは吹き飛ばされた・・・。
 
 「なかなか筋が良いじゃないか。」
 普段の微笑みはすでに戻っている。
 「・・・そう・・・ですか・・・?」
 強き竜――ツバンの実力は確かなるもの。 
 「ああ・・・いずれ、私を遥かに越える強い騎士になるだろう。」
 「・・・ありがとうございます。」
 それに老人は笑みを噴き出し、
 「本当のことだ。」
 
 「シェーラ、城下の散歩でもいかないか。」
 シェイドの誘い。

 「ねえシェーラ、剣教えてくれない?」
 フィブリゾの誘い。

 ――そんな中でもツバンを常に思っていた。
 
 ――だが・・・。

 ――あれから半年以上が経つ頃・・・。

 「君が従者のシェーラか。」
 回廊にて不意に掛かる声、
 「・・・あなたは・・・」
 黒き髪に黒き瞳、背の高い男。
 「私はレグルス、魔道騎士レグルス・アル・アサド。・・・黒獅子、と呼ばれることもあるがな。」
 すれ違うのみのそんな一瞬。
 だが向けられた視線の意味は――憐れみ。
 悪い予感を感じ、それを信じた時、シェーラは駆け出していた。

 ――その先で見つけた光景は・・・

 ――赤。

 「ツバン殿!!」
 数人の騎士達が戦慄に囚われている。
 中庭を染める異常な沈殿。
 赤黒き血、焼け焦げた大地。
 地に伏す老人――嘲笑う魔道騎士。
 その光景を目の当たりにして、
 「なぜですか!」
 声が出ていた。
 信じがたい強き声。
 シェーラはそれを発していた。
 脅えに負けず発していた。
 「戦いとは生死を賭けたものではないかな。」
 だが返る言葉は冷淡すぎた。
 強大な威圧。黒き騎士。
 惑い、脅え――すべてを断ち切り、
 怒りを露にしたシェーラは、
 「ならば、私があなたと戦います。・・・生死を賭けて・・・。」
 勇ましき声に、レグルスは笑い、
 「君のような騎士見習いが、魔道騎士で5本指に入るほどの私に勝てると思っているのか・・・。」
 「・・・私は負けません。」
 自らより出でる言葉すら信じられない。
 だが脅える反面、輝きに満ちていた。
 「魔道騎士でもなければ騎士でもない。だけど私は絶対にあなたに負けません。」
 すべての恐怖に打ち勝つ自分、それを見つつ、シェーラは表で怒りつつ、心で笑った。
 「面白い。ならば生死を賭けた戦いを始めようではないか。」
 だが相手の威圧も充分すぎた。
 だが不意にそれは止む。
 レグルスはツバンの骸へ歩み寄り、その白刃を手に取れば、
 「これを使え・・・。」
 煌きは天を駆けてシェーラへ渡る。
 剣を構えて本当の対峙。
 より伝わるその気迫。
 だがシェーラにも強さがあった。
 その狭間でなおシェーラは強く輝き、地を蹴った。
 飛燕の如く、一撃を放つ。
 13,4の少女と思えぬその一撃を、冷静な瞳はすでに捉えており、難なく受け止めっして不動。
 さらなるシェーラの一撃を背後へかわし、そして突進。
 歯を食い縛りシェーラは耐える。
 だが強烈な衝撃はシェーラを背後へ吹き飛ばす。
 体勢を整え、転倒は避けるものの、追撃はすでに近く、強烈な斬撃は放たれた。
 避けること許さず、受けたシェーラの剣へ凄まじき衝撃を伝えた。
 (強い・・・。)
 怒りは忘れて高揚が占める。
 戦慄も忘れて、向かって来る凶刃も恐れない。
 速くも鮮明な太刀筋を見切り、軌道を重ねる。
 全力を込めて衝撃との激突。
 その後斜めへ跳躍する。
 追撃は速い。
 ――だがここで決める。
 シェーラは笑みすら表に出していた。
 低く天を駆け、レグルスへ向かう。
 鮮明になる時、刻みは明白。
 自らが時の番人の如くに・・・。
 交差する瞬間、巨体を切り裂く、刃の一撃。
 「ぐあああああああああああああああ」
 戦いは幕を閉じた。

 ――レグルスは、王都の力を削ぐための、ダイナスト公爵より手先であった。

 ――だがそれが判明しようと、シェーラの行動は・・・変わらない。

 「・・・シェーラ・ジェネラルよ。」
 響く声は強かった。
 威厳に満ちた王の声だった。
 騎士達の視線は幼き彼女へと集中している。
 最強の魔道騎士を倒した彼女へと・・・。
 「そなたは、魔道騎士レグルスを――両者合意とはいえ非公式の決闘で殺害した。」
 震えるが視線のみは王を凝視。
 一対の紅玉に吸い込まれ。それを離すことも出来なかった。
 「・・・罪を認めるな。」
 シェーラは、惑いの後、緩慢に頷いた。
 「・・・そうか。」
 王は吐息を静かに吐き出し、吸った後、
 「そなたの主であるツバン・ドラゴロッソは死亡した。」
 淡々と言葉を進める。
 「・・・そなたは騎士の従者という地位を失ったことになる。分かるな。」
 再び頷く。先ほどよりも鮮明に・・・。
 「故郷へ帰るが良い・・・」
 衝撃・・・それが走る。
 早すぎた終焉。
 それに涙を浮かべようとしたが、虚ろだった。
 「・・・良いな。」 
 沈黙が張り詰めている。
 破れない。だが破らなければならない。
 「私は・・・」
 呟き掛けた瞬間に、
 「お待ちださい陛下!」
 突如に届く声・・・。
 光が満ちてゆく中、シェーラはその方向を一瞥した。
 「シェーラは、悪くない。悪くないんです。」
 訴える声――魔道騎士シェイド。
 「静粛にしろ!」
 王も怒りに思わず叫ぶ。
 「従者でも騎士でもないものを置いておくわけにはいかん。」
 だが王の威圧の沈黙の中、
 「じゃあ僕がもらうよ。」
 突如に響く声――それは、光。
 「フィブリゾ!」
 扉を開き、その間に入ってきたのは――カタート第一王子フィブリゾ。
 「お父様、シェーラを僕の剣の教師にしてください。」
 そしてフィブリゾは歩み寄り――土下座した。

 「フィブリゾ・・・様。」
 「・・・シェーラ。」
 晴れて剣術教師となったシェーラ。

 荒涼とした風の中、シェーラは独り直立不動。
 天は枯れたように明るく寂しい。
 「ツバン殿・・・。」
 だが心でもそれ以上の言葉は出でなかった。
 シェーラの心の風は、ツバンに届いたであろうか・・・。

 ――シェーラはジェネラル。
 
 ――その後、彼女はその天性の剣の才を持ち、14歳にて騎士となった。

 ――さらに15歳の時、魔道騎士の資格を得ることとなった。

 ――幸せな時は長く続く。

 ――18歳の冬の日までは・・・。

 ――完。

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25048冥王の騎士:虚像編:深淵の果ての冥き底にて響き渡る呪詛、その名は『後書き』D・S・ハイドラント 2003/3/7 15:06:11
記事番号25019へのコメント

後書き
こんばんはラントです。
冥王の騎士:虚像編:最終章?:風よ。竜とかに届いていたりしているか(待て)
をお送り致します。
――ってタイトル思いっきりパクリだし。
まあこれはどうしても出来心ってことで・・・。
『隣り合わせの灰と青春』も『星司者セイン』も面白かったし・・・。
まあその作品(私はまだ読んでない)の知名度の方がどうなのか分からないので、気付かなかった方はそのままの方向で・・・。

またキャラが増えた・・・他で全然出てないキャラが・・・。
これで良いのか不明。
ちなみに今度は、名前に宝石の他、星の名前を使ってみました。
ツバンはりゅう座のアルファ星、
レグルスはしし座のアルファ星、
から・・・。

ちなみに最終章?なのは、まだ本当に終わるか分からないからです。
まだ続くかも知れません。

それでは・・・

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25064Re:冥王の騎士:虚像編:最終章?:風よ。竜とかに届いていたりしているか(待て)エモーション E-mail 2003/3/7 23:16:13
記事番号25019へのコメント

こんばんは。

シェーラちゃんの始まりの物語ですね。
13歳で優勝……凄いです。何気なく3位にルビーさんもいるし(笑)
シェーラちゃんの父親は、シェーラちゃんの本当の素姓を知っていた
のでしょうか?
そして、従者になって早々にシェイドさんとフィブリゾくんに
ナンパされている辺りが(笑)
彼らのシェーラちゃん争奪戦はここからもう始まっていたのですね(笑)
また、今回のシェイドさんは比較的まともでしたね。

ツバンさんはシェーラちゃんにとって、とても大きな存在だったんですね。
騎士としての理想だったのでしょうか。

こうして、物語は始まったという感じに浸りつつ、読ませていただきました。
本編は終了で、虚像編も今回で終わりのようですが、もうちょっと
「冥王の騎士」のキャラ話は読んでみたいです。(←鬼)
また、機会がありましたら書いてほしいと思いつつ、これで失礼します。

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25079Re:冥王の騎士:虚像編:最終章?:風よ。竜とかに届いていたりしているか(待て)D・S・ハイドラント 2003/3/8 17:54:34
記事番号25064へのコメント

>こんばんは。
こんばんはラントです。

>シェーラちゃんの始まりの物語ですね。
これが本当のプロローグかも知れません。
>13歳で優勝……凄いです。何気なく3位にルビーさんもいるし(笑)
今まで戦闘シーン書いてきて、シェーラちゃんって先読みみたいなことと、土壇場に強いという2つの長所があるんじゃないかと思いました。
・・・ルビーさんはちょっとお遊びで・・・。
>シェーラちゃんの父親は、シェーラちゃんの本当の素姓を知っていた
のでしょうか?
どうでしょう?(ヲイ)
>そして、従者になって早々にシェイドさんとフィブリゾくんに
>ナンパされている辺りが(笑)
>彼らのシェーラちゃん争奪戦はここからもう始まっていたのですね(笑)
そうなりますね。
フィブリゾくんとは本編入ってからが本格的にでしょうけど
>また、今回のシェイドさんは比較的まともでしたね。
まあ初対面ですし・・・これからじわじわ・・・と

>ツバンさんはシェーラちゃんにとって、とても大きな存在だったんですね。
>騎士としての理想だったのでしょうか。
そうなりますね。
本編では名前1つ出てませんけど・・・。(結構いい加減かも知れない)


>こうして、物語は始まったという感じに浸りつつ、読ませていただきました。
最終回(かは分からない)が一番最初ってのも良いでしょ(激しく待て)
>本編は終了で、虚像編も今回で終わりのようですが、もうちょっと
>「冥王の騎士」のキャラ話は読んでみたいです。(←鬼)
不幸+超不幸のコンビアイネジュや、
元は敵だったのに・・・なガーシェラとかは書きたいですけど
・・・本編カップだし・・・全滅しちゃってるので・・・
今度メッキーキャラで新シリーズ書くかも知れません。
>また、機会がありましたら書いてほしいと思いつつ、これで失礼します。
はい、機会がありましたら・・・。
それでは、本当にどうもありがとうございました。

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