◆−導かれちゃった者たち 冒険の書をつくる−Dirac (2002/11/10 18:52:41) No.23231
 ┣導かれちゃった者たち 第一話 勇者旅立つ−Dirac (2002/11/10 18:57:03) No.23232
 ┣導かれちゃった者たち 第二話 新勇者−Dirac (2002/11/10 19:00:28) No.23233
 ┃┣Re:導かれちゃった者たち 第二話 新勇者−エモーション (2002/11/10 20:50:14) No.23237
 ┃┃┗例のブツです−Dirac (2002/11/14 21:15:55) No.23305
 ┃┣Re:導かれちゃった者たち 第二話 新勇者−D・S・ハイドラント (2002/11/10 21:12:04) No.23238
 ┃┃┗初めまして−Dirac (2002/11/14 21:41:05) No.23306
 ┃┗D・・・DQ4だ!!−リナ&キャナ (2002/11/10 21:22:11) No.23240
 ┃ ┗「こんなのDQ4じゃない!」と言われても否定できませんが−Dirac (2002/11/14 22:13:42) No.23309
 ┣導かれちゃった者たち 第三話 太陽と月の姉妹−Dirac (2002/11/14 20:37:57) No.23304
 ┃┣はじめまして。−猫楽者 (2002/11/15 09:00:15) No.23311
 ┃┃┗Re:はじめまして。−Dirac (2002/11/19 21:21:21) No.23369
 ┃┣Re:導かれちゃった者たち 第三話 太陽と月の姉妹−エモーション (2002/11/15 21:20:04) No.23315
 ┃┃┗モンバーバラの姉妹万歳!!−Dirac (2002/11/19 22:23:15) No.23373
 ┃┗なぜマイルズ!!? 踊るから!?−リナ&キャナ (2002/11/16 15:47:31) No.23328
 ┃ ┗マーニャ好きの方々、まことに申し訳ございません−Dirac (2002/11/19 23:06:44) No.23376
 ┣導かれちゃった者たち 第四話 信じる心−Dirac (2002/11/19 20:50:09) No.23367
 ┃┣はーい、先生!借りたものは返さなきゃだめだと思いまーす!(学級委員風)−エモーション (2002/11/19 22:05:00) No.23372
 ┃┃┗悪人から借りたものは返さなくていいんだよ(教頭先生風)−Dirac (2002/11/20 00:59:51) No.23378
 ┃┣Re:導かれちゃった者たち 第四話 信じる心−D・S・ハイドラント (2002/11/19 22:46:31) No.23374
 ┃┃┗裏切りの洞窟はナーガ御用達−Dirac (2002/11/20 01:23:54) No.23379
 ┃┗馬・・・馬・・・(涙)−リナ&キャナ (2002/11/20 18:40:14) No.23383
 ┃ ┗そこのけそこのけお馬が通る−Dirac (2002/11/23 00:46:25) No.23427
 ┗導かれちゃった者たち 第五話 失われた光−Dirac (2002/11/23 00:22:34) No.23426
  ┣あ。今回一番だ〜〜−リナ&キャナ (2002/11/23 20:58:38) No.23444
  ┃┗あ。もうすぐ沈んじゃう〜〜−Dirac (2002/11/28 19:09:22) NEW No.23517
  ┗危うく見逃すとこでした−エモーション (2002/11/23 21:29:02) No.23446
   ┗危うくレス仕損じるところでした−Dirac (2002/11/28 19:32:47) NEW No.23519


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23231導かれちゃった者たち 冒険の書をつくるDirac E-mail URL2002/11/10 18:52:41


 皆さまお久しぶりです。(初めましての方もいるでしょう)
 わたくしDiracはついに長編小説を始めました。その名も『導かれちゃった者たち』!!
 タイトル通りドラクエ4のパロディなので、ドラクエ4をご存知ない方にはちょっと分からないかもしれません。また、スパークしているキャラも何名かいますので、心臓の弱い方は特にお気をつけ下さい。

 ちなみに、メインキャラの登場は比較的少ないです。

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23232導かれちゃった者たち 第一話 勇者旅立つDirac E-mail URL2002/11/10 18:57:03
記事番号23231へのコメント

 ブランカ王国より北には、まるで外界との交流を一切拒絶するかのように、険しい山脈がそびえ立ち、奥深い樹海が生い茂っている。
 一度森を侵したらもう戻ってはこれないであろう、その辺境に地に、好んで足を踏み入れるものなどあまりいない。入るとすれば、おおかた警戒心より好奇心が強い子供か、世の中に希望を見いだすことができなくなった悲しき自殺志願者くらいである。
 樹海の中はどうなっているのか、興味を持つものも少なくなかった。ある者は『森の奥にはエルフの隠れ里がある』と唱え、またある者は『恐ろしい竜が棲んでいる』と主張する。中には『千年前に封印された古代遺跡がある』という噂もあるが、無論、噂以上のものではない無責任な代物である。
 だが、この緑の果てに何があるのかを知った者がいた。
 その男の名はガウリイ=ガブリエル。魔族の頂点に君臨する若き王。
 彼はこの地に訪れた。
 ――この地に住まう伝説の勇者を抹殺するために。

 迷宮の奥にある、名もなき小さな集落。
 狩猟採集の文化で、生活用品は草木や石、動物の骨や皮、粘土といった、極めて原始的な原料を用いている。農耕技術も古代に比べてろくに発展しておらず、金属など今まで目にしたことすらない。それは、この集落が完全に世界から隔絶されていることを意味している。
「ここか! 勇者が生まれ育ったという村は!」
 そんなこの村の平和な空気を、ガウリイの声が切り裂いた。
 突然の来訪に驚き、村人たちが一斉にガウリイに視線を集める。
「……おめえさん……こんな村に何の用だべさ?」
 やはり外来者は珍しいらしく、通りすがりの農婦が不思議そうな顔で尋ねた。
「じらす意味もないから単刀直入に言おう。勇者を出せ」
「ユーシャ?」
 村人たちがお互いに顔を見合わせる。彼の目には、その態度が「何のことだ?」とごまかしているように映った。
 だが、ここで怒声を張り上げてしまったら威厳がない。ガウリイはテンションを維持して、余裕を見せようと試みた。
「とぼけても無駄だ。ここに勇者をかくまっていたことはわかっている」
 ……………
「確かにかくまうにはうってつけの場所だな。探すのにえらい骨が折れたぞ」
 …………………………
「だが、もう年貢の納め時だ。素直に差し出せば貴様らは生かしておいてやる」
 ……………………………………………………
「先の短い余生は静かにすごしたいだろう?」
 ……………………………………………………………………………………
 ガウリイが言いたいことを言い終えた後、齢八十はありそうな腰が曲がった農婦が、ふるふると震わせた手を添えながら耳をガウリイに向け、
「はぁぁっ?」
 どうやらご老体は耳が遠いらしく、ガウリイのセリフが聞こえなかったらしい。
『くううっ! これだから人間というヤツはっ!!』
 ガウリイのこめかみの血管がちょっと隆起したが、ここで怒りに任せては魔族の王としてカッコ悪いと思い、彼は腰に差した剣に手をかけるのを自らに制した。
「ええい、よく聞け!!」
 先ほどと同じセリフを、高齢者の方々にも意味を把握できるよう、極めてゆったりとしたリズムで、文節ごとに区切りながら、咽を嗄らして言うガウリイ。
 言い終えてから肩で息しているところがちょこっとぷりちー。
「ゆーしゃ? 何のこどだがさっぱわかんねべ」
 とりあえず、伝えたいことは伝えられたらしいが、農婦からは期待する返答は得られなかった。
「……そうか。そういう態度を取るなら仕方がない。ならばわたしが――」
「おーい! みんな!!」
 濃厚な殺意を纏いながら決めゼリフを言おうしたガウリイを尻目に、彼女はいつもの井戸端会議仲間を呼び寄せた。
 思わずオーソドックスにコケるガウリイ。魔族の王にふさわしく礼儀正しい。
「何だべ? ウメコさんよ?」
「このお若いの、わざわざこんなとこさやって来て、ゆーしゃとやらを探してるようなんだが、ゆーしゃって知ってっか?」
「ユーシャ? 何だべ? 食いもんか?」
「そげなもん知らね。聞いたこともね」
 いつの間にか二十人ほど集まった村人たちは、次々とその顔にハテナマークを浮かべる。
「貴様ら……いい加減に――」
 意外にあっけなくドス黒いものを湧き出したガウリイが、拳を固く握りしめた。その鼻息は荒く、目は血走っていて、美形が台無しだ。
「お若いの。怒ってばっかじゃすぐハゲっぞ」
「腹減ってんじゃろ。ホレ、食うか?」
 だが、亀の甲より年の功。心優しき村人たちは、怯えるどころか彼に梅のオニギリを差し出した。
 そこには、自分たちが魔族の王と対峙しているという緊張感は全くない。異なる身分の者とも分け隔てなく振舞うその純朴な姿は、汚れてしまった現在に何かを訴えているようである……わけがない。
「あー、そう言えば……」
 そんな中、たまたまついて来た村長があることを思い出した。
「三ヶ月ほど前にディオルさんが倒れた時、『わたしはユーシャ。わたしはユーシャ』って、うわ言の様に何度も言ってたっけ」
「何ぃっ!!」
 その言葉を聞いたとたん、ガウリイは村長の胸ぐらを掴む。
「そのディオルとやらはどこにいる?」
「んー! んー! 三つ目の角を右に曲がったところじゃ! じゃが――」
「そうか」
 村長の言葉を最後まで聞かず、ガウリイはコミカルにさえ思える猛ダッシュで、村長から教わった場所へと向かった。

「ディオルさん、いい人だったんだがねえ」
 ディオルの隣に住んでいたおキクが、手を合わせながら彼の生前に思いを馳せた。
「そうさなぁ。ディオルさん、初めで外から入っできた人だども、外の話を色々聞かしてくれで、楽すかった」
 ディオルから聞いた外の世界の話を反芻しながら、仲のよかったタロマツが墓標の石を磨いている。
 外の世界では、海というでっかくてしょっぱい水たまりがいっぱいあって、そこでは川や湖とは違う魚が獲れて、氷ばっかりある寒いところもあって、そこに住むベンギンという飛べない鳥がいて、暑いところでは砂漠という砂ばっかのところもあって、サボテンというトゲばっかの植物があって……。
 深い森に囲まれた山村で暮らしている村人たちは、彼の話を聞くたびに好奇心に胸を弾ませた。
「だども、おがげで若けぇ衆はみんな村を出て行っちめって……」
 ディオルから話を聞いた若者は、外の世界への興味が膨れ上がってしまい、ここに留まって骨を埋めることに我慢ができなくなってしまったのだ。そのため、村を支える若者は全員森の外へと出ていってしまい、村は一気に過疎化してしまったのだ。
 それに責任を感じたディオルは、しばらく村から姿を消したことがあったのだ。
「バカァ! ディオルさんの前でそげな話すんな!!」
「ああ、そうだった。……すまぬぇ、ディオルさん」
 思わず言ってはならないことを口走ってしまったモサクが、花といちご大福を添えてゴンに謝った。
『……………………………………………………………………………………………………』
 そんな光景を目の当たりにして、ガウリイはそれまで勇者抹殺に躍起になっていた自分自身に絡みついた、とてもやるせない何かと命を賭した戦いを繰り広げていた。
『オレは……一体何をしていたのだ……』
 相手は悔恨であろうか?
 今の彼にそれを知る術はない。
『何年だ! 何年かかった!?』
 村人たちが墓標に向かって手のひらを合わせた。おそらく帰らぬディオルに祈りを捧げているのだろう。閉鎖的な環境であるので、彼が知っている人間の死者の弔いと作法が違うのは当然だ。
『ヤツを探したところで、得るものなどなかったではないか!』
 ディオルがこの世を去っても、彼の知人の記憶が彼がこの世に生きていたことを後世に残すことはできる。だが、やがては時という人間が意味を見出した存在がそれを真っ白に洗い流してしまうだろう。
 迫り来る冬を前に散る真紅の花のように、なんとも儚い。
『無駄に費やした時間で、どれほどのことができた!?』
 死は永遠。
 一生は刹那。
 魔族も例外ではない。
『……まさか……老衰だったとは』
 ガウリイが八年間魔族総動員で血眼になって探していた勇者ディオルは、一ヶ月ほど前に 享年八十三歳の大往生。
 勇者は常世の国へと旅立っていた。

「世話になったな」
 魔族の王ガウリイ=ガブリエルは、村人に勧められるがまま、何故か勇者に線香を一本あげながら礼を言った。
「何言っちょる、ディオルさんの友人なら、けてぇごど言うぬぁ」
 いちいち説明するのが面倒なので、ガウリイは『ディオルの古い知り合い』ということにしている。
「しかし、こんなものをもらうわけには……」
「かまわねっぺ。ディオルさんの遺品は、オレたぢよりオメさんが持ってる方がええ」
 勇者縁の品、三つ目竜【ラージャ・ドラゴン】の肩当て。三つ目竜の骨を原料にした武具は丈夫なわりに軽く、かなりの評判があるが、そのため三つ目竜は乱獲され、とうとう絶滅危惧種となってしまった。そのせいか、三つ目竜系のアイテムの持ち主には必ず不幸が訪れるのだ。
 もしや、勇者もこれで?
 それとも、ガウリイへの捨て身の攻撃?
『……まあ、すぐ捨てりゃいいわけだし』
 やっぱり説明するのが面倒なので、おとなしく受け取っておくことにした。
「じゃあな」
 彼の中で様々なモノが萎えてしまい、もう帰りたくなったので、半ば強引に帰ろうとするガウリイ。
 だが、そうは問屋が卸さない。
「待つべ」
 去りゆくガウリイの背中を、ウメコさんが掴んだ。
「うごっ!」
 思わず後ろに引っ張られるガウリイ。その力は、とても老婆のそれとは思えない。
「何を……って何だ?」
 何かを言い出そうとしたところで、ガウリイは老婆たちに取り囲まれていることに気づいた。
「ちょっ……え?」
 ガウリイの文句が喉から外に出ることはなかった。
 彼女らは豹変していたのだ。
『はあああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………』
 焦点の合っていない瞳、獣のように荒い呼吸、滴り落ちる生ぬるい涎、音をかき消して這いずり回る足の運び。
 まさにそれは、生きた血肉を求めるゾンビ。
「あんた、エエ男だ」
「この村さ、若けぇモンがいねぇべ」
「久しぶりぬぃ、火が付いつぃまった」
 どうやら、彼女たちはイケメンのガウリイを見てムラムラきてしまったようである。
 春が訪れた彼女たちの果てしない欲望を前に、ガウリイは思わず後ずさりする。
「ちょっと待ってくれ! オレにはリ――」
 ガウリイが己の魂と存在意義をかけた抵抗を試みるが、巨象の大群にアリンコ一匹がどうあがいたところで勝機はない。
「観念すろ。もう年貢の納めどぎだ」
「先の短けオラたつに、いい夢見させけろ」
「別に減るもんじゃねっぺ。若けえから何度でもやり直しは聞くっぺ」
 三つ目竜の肩当ての呪いは、ガウリイが身構える前にいきなり襲い掛かってきた。
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 ガウリイは逃げ出した。
 しかし、回りに囲まれた。

 ――かくて一つの悪は滅びたのだった――。










 Dirac初の長編小説、スタートはいかがでしたでしょうか。
 え? 完結してる? 気のせいです。神に誓って続きがあります。
 気をつけていただきたいのは、今回出てきたのはガウリイ=ガブリエ『ル』であって、ガウリイ=ガブリエ『フ』ではないということです。何故かは後のお楽しみ。
 ちなみに、勇者をディオルした理由はSP8巻192ページを参照して下さい。
 しかし、読み返してみてなんだけど、村人の方言ムチャクチャ……。

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23233導かれちゃった者たち 第二話 新勇者Dirac E-mail URL2002/11/10 19:00:28
記事番号23231へのコメント

 天空城。
 そこは天空人の家である。
 太古より幾千年もの間、彼ら天空人は天上より下界を見守り、時にはその力でもって平和を守り続けてきた。
 言わば、悠久の歴史の証人である。
 そして、彼らはこれからも証人でありつづけるであろう。
 ――世界が終わらない限り――。

「な、何だと!!」
 部下のラグラディアから勇者が天寿を全うしたとの報告を聞いたとたん、天空城の主、第十五代マスタードラゴンのスィーフィードの悲鳴に近い声が、空気が薄いはずの王の間を揺るがした。
「間違いないのか? もう一度確かめてみろ」
 スィーフィードが確認を促す、そこには「実は間違でした」という返事をどこかで期待していた。
「間違いありません」
 そんなスィーフィードの意図とは裏腹に、ラグラディアの答えは変わらなかった。
「ファイナル・アンサー?」
 ……………………
「はい」
 往生際の悪いスィーフィードに、しかしラグラディアはご丁寧にもしっかりと間を溜めてから答えた。
「フィフティー・フィフティー!」
「選択肢は『はい』しか残りません」
「オーディエンス!」
「観客はの答えは全員『はい』です」
「テレフォン!」
「アドバイスは『はいが答え』です」
「ドロップ・アウト!」
「しないで下さい」
 ……………………
「ああ、何ということだ!」
 何度も何度も回り道を繰り返しながら、スィーフィードはようやく認めるべき真実へと辿り着いた。
 ――運命に導かれし者が集結し、この地は救われるであろう――
 歴代のマスタードラゴンに古くから伝わる伝説である。『導かれし』が『導かれちゃった』ではないか、という説もあるが、真実は定かではない。
 だが、もう勇者が逝ってしまったため、少なくとも勇者が転生しない限り、運命に導かれし者が集結することはありえない。
「こ、このまま、では……せ、世界はお、終わってし、……うっ! ゴブッ、ゲホゲホゲホッ!!」
 別に体が弱っているわけでもないのに、何故かスィーフィードは吐血した。危機的状況に対する心理的な防衛本能と思ってくれればいい。
 その証拠に、顔色がすこぶる良好である。
「ハア、ハア、ハア……」
「無理をなさらずに」
 スィーフィードの背中をさすりながら、ラグラディア。
 もう三百年近くスィーフィードに使えているラグラディアにとって、主の現実逃避は日常の出来事と等価である。彼はすでにあるがままを受け入れ、五十年ほど前には冷たい視線を浴びせることもなくなった。
 そんなこととは知ってか知らずか、スィーフィードよろよろと立ち上がった。その手の込みようたるや、立ち上がろうと必死で玉座に手をかけておいて、その手を滑らせて再び倒れるという小芝居まで入っている。
「スィーフィード様」
 ラグラディアは、立つことさえおぼつかないスィーフィードを抱きかかえた。まるで病気のおとっつぁんだ。
「す、すまんな」
 礼を言うスィーフィード。
 ただ、当のラグラディアは『もういい加減茶番劇には付き合いきれねぇ』からさっさと着席させたのだが。
「えぇい! こうなったら――」
 何かを決意したのか、スィーフィードは凛とした声で叫んだ。さっきの吐血はどこへやらだ。
「もう手段は選んではおれん! 勇者を墓場から甦らせてやる!!」
 スィーフィードは拳を血が出るほど固く握り締め、他力本願丸出しの決心をここに力強く宣言した。
 少しは自分で何とかしろオッサン。
「たとえ魔王に魂を売ってでもな!!」
「スィーフィード様……それって本末転倒……」

「というわけで、ご協力お願いします」
「えー? あたしがですかぁ?」
 勇者ディオルの墓を根こそぎ持ってきたラグラディアに事情を説明されるなり、現在僧侶で元筋金入りの腕利き死霊術士【ネクロマンサー】ウィニーは、いまいち緊張感が伝わらない驚きの声を上げた。
 そう。ラグラディアは彼女に勇者を復活させようとしているのだ。
 とはいえ、「彼女は死霊術士なんだから、勇者が復活してもゾンビだろ」と思われる方もいるであろう。だが、あのスィーフィードを舌先三寸でごまかすことなど至極容易なことである。
 どうでもいいことではあるが、そのスィーフィードは地上には降りなかった。「わたしが下界にいる間に、邪悪なる眷属たちが世界を滅ぼすための本格的な活動を始めたら、その時一体誰が指揮を執ると言うのだ!」と彼は言っていたが、来なかった本当の理由は彼が空を飛べないからである。
 ラグラディアはそれに対して何も言わなかったが、スィーフィードがついて来たところで、戦力にならないどころか足を引っ張るだけなので、まあ当然であろう。下手に抗議して「じゃあわしも行く」と言われても困る。
「でもぉ、それってゾンビになった勇者さんが痛い目にあうかもしれない、ってことですよねぇ? あたし、それはいやです」
「そこを何とか、ウィニー様」
 渋るウィニーに頭を下げ、何とか説得するラグラディア。
「あなたが勇者を生き返らせていただけなければ、やがては世界が滅びてしまうかもしれません」
 確かに、このままではスィーフィードは本気で魔王に魂を売りかねない。
「どうかこの通りです。あなたの望まれるものは何でも差し上げますから」
 それで「世界征服」なんて言われたら、それこそスィーフィードと同じく本末転倒じゃないのかという疑問もあるが、背に腹は返られないのである。
「……ホントですか?」
 やや躊躇いながらも、『望まれるものは何でも差し上げます』の言葉に、気持ちが引き受ける方に傾くウィニー。
「はい」
「……分かりました。やってみます」
「ご協力感謝します。それで、何をお望みで?」
 何故か腰を低くしながら、ラグラディア。
「えぇっとぉ」
 ウィニーが何を要求するのか、ラグラディアが生唾をごくりと飲み込む。
 だが、
「アンデッドが生きていける世界をお願いしますぅ」
「はっ?」
 全く予想外の願いに、思わずラグラディアが素っ頓狂な声を上げた。
「だからぁ、あたしたちとアンデッドのみなさんがぁ、仲良く楽しく暮らせる世界を創って下さい」
 …………………………………………
 一瞬、
『人間とアンデッドが手を取り合って共存する世界になるくらいなら、滅んだ方がマシかもしれない。いっそ我々の手で滅びを与えてやるか。いや、むしろそれ自体が滅亡した世界と定義されるべきものなのではないか』
 という、全人類が考えなければならない根源的な問いを己に問いかけたラグラディアであったが、
「分かりました。今すぐには無理ですが、世界が平和になった暁には必ずその願いをかなえて見せます。――天空人の誇りにかけて」
 最終的には、
『まあ、彼女をアンデッドだらけの孤島に住まわせておけば大丈夫だろう。そもそも、『世界』という短い言葉によって表現される対象の大きさや広さやに、厳然たる制限を強いる規則が存在しているわけではないのだから、よりグローバルかつフレキシブルな視点で理論を再構築していけば、このアンデッドの島を『世界』という言葉で叙述しても、文学的には決して間違えてはいないはずだ』
 という、極めて哲学的な終点を見いだすに至った。
 天空人ラグラディアも考える葦であり、死という虚無から気晴らしに逃げて目を背けようとするものの、無限大なる宇宙の偉大さと極微なる人間の卑小さを認識できるという偉大さがあるのだ。
「わーい、ありがとうございますぅ」
 ラグラディアの返事にウィニーの顔が喜びで輝いた。ラグラディアの深遠な熟慮など知る由もない。
「でもぉ、ここ何ヶ月か死霊術【ネクロマンシー】使ってなかったんでぇ、成功する自信はあんまりないですよ」
「大丈夫です。ウィニー様なら絶対勇者を復活させることができます。わたしの目に狂いはありません」
 と言ってはいるが、あの能なしスィーフィードを第十五代マスタードラゴンに推薦したのが、他ならぬこのラグラディアだったりするわけで、この世の中というのはやはり信用できない。
「ありがとうございますぅ。そう言っていただけると出来そうな気がしますぅ」
 しかし、都合よく勇気がふつふつと湧いてきたウィニーは、早速勇者再生を開始したのであった。

 ウィニーの死霊術によってディオルは再びこの世に生を授かるのに、大した時間はかからなかった。
 生前の面影はコレっぽっちもないのは仕方がないが。
『マスター。ご命令を』
 すっかり黄土色に酸化した前歯からぬめり気のある光を輝かせ、ディオルが営業スマイルを浮かべた。
「これこれこういうわけですからぁ、世界の平和を守って下さぃっ!」
 ウィニーが事情をかいつまんで説明する。
『イエス。マスター』
 ディオルの多大な不安を感じさせる返答。
「頑張って下さいねぇ〜」
 こうして奇跡の復活を遂げた勇者ディオルは、ウィニーの間延びした声援を背中で受けながら、『導かれちゃった者たち』を探す旅路を歩んだのだった。
『う〜ん、自分で頼んでおいてなんだが、これでいいのだろうか?』
 ラグラディアのつぶやきは、賢者たちの知を結集しても永遠に解くことはできない謎であろう。

 ――こうして。
 錆びついていた歯車はついに回り出した。
 辿り着くのは、果たして希望か? それとも絶望か?
 それは、神ですら知り得ない。
 世界の命運をかけた冒険が、ついに幕を上げたのだった。
「むっ、こんなところにゾンビが」
「待たれよ旅の者、わたしは伝説の勇者である」
「やかましい! 聞く耳持たんわ!! くらえ浄化炎【メギド・フレア】!!」
 ……………………………………………………………………………………
 ディオルは光の彼方に消え去った。
「ふぅ。……最近はゾンビがしゃべる時代になってしまったのか。しかも、こともあろうに勇者を騙りだす始末。やれやれ、物騒な世の中になったものだ」
 こうして、勇者ディオルの冒険に幕が下りたのだった。

 余談だが、現在ガウリイ=ガブリエルは消息不明である。










 約束通り、続きの第二話です。
 予定ではマスタードラゴン役はマトモにするはずだったのですが、結果はこの通りです。話はちっとも進んでいないし、勇者は浄化されちゃうし。
 いいのでしょうか?

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23237Re:導かれちゃった者たち 第二話 新勇者エモーション E-mail 2002/11/10 20:50:14
記事番号23233へのコメント

Dirac様、こんばんは。

某ろ○る様のとこで仰っていた、あれですねーー。
勇者、いきなり滅んでるし(笑)
でも……お婆さんたちが凄い怖いです。哀れなりガウリイ=ガブリエ「ル」(笑)

> 歴代のマスタードラゴンに古くから伝わる伝説である。『導かれし』が『導かれちゃった』ではないか、という説もあるが、真実は定かではない。
あちらの掲示板で書きそびれましたが、私は「利害の一致した者たち」だと
思ってました。……だって、あれ、どうみてもそうとしか……(笑)

>「ファイナル・アンサー?」
> ……………………
>「はい」
> 往生際の悪いスィーフィードに、しかしラグラディアはご丁寧にもしっかりと間を溜めてから答えた。
>「フィフティー・フィフティー!」
>「選択肢は『はい』しか残りません」
>「オーディエンス!」
>「観客はの答えは全員『はい』です」
>「テレフォン!」
>「アドバイスは『はいが答え』です」
>「ドロップ・アウト!」
>「しないで下さい」
スィーフィード様……(だばだばだば……号泣)
でも、何だかんだ言いつつノリが良すぎです、ラグラディアも……。

画面の前で吹き出して読んでました。続きを楽しみにしています。
では、これで。

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23305例のブツですDirac E-mail URL2002/11/14 21:15:55
記事番号23237へのコメント

 エモーションさん、感想ありがとうございます。

>某ろ○る様のとこで仰っていた、あれですねーー。

 はい。その通りです。
 ただし、配役に変更があります。

>勇者、いきなり滅んでるし(笑)

 浄化される勇者は世界広しといえどもそうはいません。
 でも、DQ4ではニフラム使えるのが勇者だけだった気が……。

>でも……お婆さんたちが凄い怖いです。哀れなりガウリイ=ガブリエ「ル」(笑)

 そのうち、彼はさらに壊れる予定です。

>あちらの掲示板で書きそびれましたが、私は「利害の一致した者たち」だと
>思ってました。……だって、あれ、どうみてもそうとしか……(笑)

 確かに、わたしの意図とキャラの性格が『利害の一致した者たち』になっているかも。

>スィーフィード様……(だばだばだば……号泣)
>でも、何だかんだ言いつつノリが良すぎです、ラグラディアも……。

 勇者が復活するところだけだとあまりに短くなってしまうので、ほとんど何も考えずに天空城の様子を書いたら、こんなになっちゃいました。(汗)
 最初は、天界から勇者たちの様子を見るたびに、『これでいいのか?』と思い悩むマトモな役のはずだったのですか、何故かあんなキャラになっちゃいました。

>画面の前で吹き出して読んでました。続きを楽しみにしています。
>では、これで。

 エモーションさんが書かれた『So What? 2』、楽しく拝見させていただきました。エビフライのクッキーがとても美味しそうでした。(笑)
 それと、『千年越しの賭』もちょっとづつ読ませていただいています。
 それでは。

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23238Re:導かれちゃった者たち 第二話 新勇者D・S・ハイドラント 2002/11/10 21:12:04
記事番号23233へのコメント

初めましてハイドラントです。

>「ファイナル・アンサー?」
その単語が出るとは・・・。

>「たとえ魔王に魂を売ってでもな!!」
地獄の帝王じゃないんですか

> 勇者ディオルの墓を根こそぎ持ってきたラグラディアに事情を説明されるなり、現在僧侶で元筋金入りの腕利き死霊術士【ネクロマンサー】ウィニーは、いまいち緊張感がが伝わらない驚きの声を上げた。
まさかすぺ7巻の・・・。

>『まあ、彼女をアンデッドだらけの孤島に住まわせておけば大丈夫だろう。そもそも、『世界』という短い言葉によって表現される対象の大きさや広さやに、厳然たる制限を強いる規則が存在しているわけではないのだから、よりグローバルかつフレキシブルな視点で理論を再構築していけば、このアンデッドの島を『世界』という言葉で叙述しても、文学的には決して間違えてはいないはずだ』
そんな島を創るのですね


>「やかましい! 聞く耳持たんわ!! くらえ浄化炎【メギド・フレア】!!」
ありゃありゃ

いろいろ大変かと思いますが、がんばってください。
それでは〜ハイドラントでした。


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23306初めましてDirac E-mail URL2002/11/14 21:41:05
記事番号23238へのコメント

 D・S・ハイドラントさん、初めまして。Diracと申します。

>>「ファイナル・アンサー?」
>その単語が出るとは・・・。

 何となく浮かびました。
 でも、この言葉って他でも使われていそうな気がしますが。

>>「たとえ魔王に魂を売ってでもな!!」
>地獄の帝王じゃないんですか

 この『魔王』というのは漠然とした魔王であって、別にエ○タークのことではありませんので、ご安心を。

>そんな島を創るのですね

 王家の墓とか。(笑)

>>「やかましい! 聞く耳持たんわ!! くらえ浄化炎【メギド・フレア】!!」
>ありゃありゃ

 これもファイナル・アンサーと同じく、その場のノリでちゃっちゃと書いてしまいました。(無計画)

>いろいろ大変かと思いますが、がんばってください。
>それでは〜ハイドラントでした。

 ハイドラントさんの小説『冥王の騎士』、読み終わり次第感想書かせていただきます。
 それでは。

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23240D・・・DQ4だ!!リナ&キャナ 2002/11/10 21:22:11
記事番号23233へのコメント

こんばんはです。おひさしぶりです。


DQ4・・・
実は、DQの中で一番好きなんですよ!!
特にピサロ&ロザリーが(勇者一向無視かい)(いえ、アリーナ&クリフトとかも好きなですが)
しかし!!
Dirac様にかかれば、このシリアスなゲームもギャグに・・・(笑いをこらえている)
特に『ガウリイ=ガブリエル』氏。名前を見た瞬間、
「闇撒きが出た!!」
とか思っちゃったのは内緒です(笑)
さらに、ディオルさんが初代『勇者』ですか・・・確かに神坂先生も認められていますが・・・

・・・笑いが止まりそうにないので、短いですがこの辺で失礼させていただきます。

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23309「こんなのDQ4じゃない!」と言われても否定できませんがDirac E-mail URL2002/11/14 22:13:42
記事番号23240へのコメント

 毎度わたしの拙作をご贔屓にしていただき、ありがとうございます。

>DQ4・・・
>実は、DQの中で一番好きなんですよ!!
>特にピサロ&ロザリーが(勇者一向無視かい)(いえ、アリーナ&クリフトとかも好きなですが)

 ピサロ&ロザリー好きですか。
 だとすると、この後の展開はちょっとショッキングかもしれません。ロザリー役がちょっと問題ありますから。
 って、問題なのはロザリー役だけじゃないですけど。

>特に『ガウリイ=ガブリエル』氏。名前を見た瞬間、
>「闇撒きが出た!!」
>とか思っちゃったのは内緒です(笑)

 何故ガブリエ『フ』なのかは。今後明らかになります。(でも、某所でバラしちゃったりしてます)

>さらに、ディオルさんが初代『勇者』ですか・・・確かに神坂先生も認められていますが・・・

 最初、勇者は『ゴン』というテキトーな名前だったんですが、彼のことを思い出して急遽変更しました。危うく大きな魚を逃すところでした。(笑)

>・・・笑いが止まりそうにないので、短いですがこの辺で失礼させていただきます。

 リナ&キャナさんが書かれた『BRAVE』、ちょっとずつ読ませていただいています。
 それでは。

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23304導かれちゃった者たち 第三話 太陽と月の姉妹Dirac E-mail URL2002/11/14 20:37:57
記事番号23231へのコメント

 世界でも一、二を争う巨大都市エンドール。
 商業が発展しているこの町は、今や世界経済の中心的な役目を担っており、古い伝統を持つ老舗から発展著しい新進気鋭の店舗までがずらりと店を構え、億万長者になって華を咲かせてやろうと意気込む者が必ずここに訪れる。
「うわぁ、すごぉい」
 生まれて初めて見るその光景に、ウィニーが圧倒される。
「うむ。前に何度か来たが、相変わらずだ」
 と、大きなキノコのぬいぐるみを着たディオル。
 最初はディオル一人で旅をする予定であったが、腕の立つ人間に出くわす度に浄化されてしまうので、ウィニーが同行することになったのだ。
 ディオルがキノコの姿をしているのは、自分の格好を人前にさらさないためであるのは言うまでもない。ディオルは居心地がよくて落ち着くのを理由に、カムフラージュに棺桶を要求したのだが、それでは怖がられるということで即刻却下となった。
 ……キノコの着ぐるみでも恐れられているが。
「でもぉ、こんなに人がいっぱいだと、踊り子さんや占い師さんを探すのも難しいですねぇ」
 ――お主に似た目をした踊り子と占い師が、三日ほど前にわしに会いに来た――。
 二日前、ブランカ城で謁見した王に告げられた言葉である。(謁見の際にディオルが浄化されかけたが)
 さらにブランカで聞き込みをしたところ、どうやらその二人はエンドールへと向かったらしいとのことで、ディオルたちもエンドールを訪れたのである。
「うむ。出来れば手分けして探したいのだが……」
 二人で一緒に探しても非効率的であるが、だからといって二手に分かれて、ディオルが一人になってしまえば、おそらく聖水の需要が飛躍的に増大し、エンドール経済学に一石を投じることになってしまうであろう。
「片っ端から探すしかないですな、マスター」
「そうですねぇ。じゃあ、まずはあっちに行きましょう」
 そう言って、ウィニーは共同墓地へ歩き出した。

「後悔しませんね……」
「…………はい?」
 どこまでも低く、どこまでも小さく、どこまでも暗く、それでいてよく耳に響く女性占い師の声に、運勢を占いに来た男が思わず質問を質問で返した。
「あなたが……やがて訪れる未来を知ってしまうことを……。後悔しませんね?」
 ひゅうぅぅぅぅ……
 閉め切られた部屋で、何故か蝋燭の火が風にゆらめく。
「あなたが後悔しないのなら……たぶん……構わないと思いますけど…………、よろしいのですか?」
「あ……あの、そ、それって、ど、ど、ど、どういう意味でしょうか?」
 判決を待つ被告人のようなどもり声で、男が恐る恐る尋ねる。
「……そのままの意味ですよ。本当に未来を知りたいですかと、尋ねているのです」
 バサバサバサバサバサ…………
 真っ黒な鴉が羽ばたいた音は、果たして空耳であろうか?
『な、何だよここは!? よく当たるって聞いたから来たのに!』
 男が骨の髄まで駆け巡る蒼白い悪寒に悲鳴を上げた。おそらくそれは背中から流れる汗のせいだけではないだろう。
 彼は軽い気持ちでここを訪ねたことを後悔した。占い師が警告する前にすでに後悔しているとは、なんとも皮肉なことである。
「時間はいくらでもあります。ごゆっくりお考え下さい」
『ど、どうする?』
 岐路に立たされた男が今までの人生で最も苦悩する。
『聞かない方が幸せな余生を送れそうだなぁ ……いや待て、聞いておけばその後の対処ができるかも。そもそも未来に備えるための占いじゃないか! でも、……オレは運命に逆らえるほど大層な男か!? 今だって、占いなどという至極胡散臭いものに人生を託しているじゃないか!! その上、そんな胡散臭いものにこんなに振り回されているんだぞ!! ……ん、そうか! 占いなんてどうせ胡散臭いんだから、何も気にしなければいいじゃないか!! だけど、……ここの占いってよく当たることで有名だからなぁ』
 不安と確信を交錯させながら、男は何とかして悟りを開こうと、絶え間ない禅問答にふけっていた。
 ………………………………………………………………………………………………
『――よし』
 蝋燭の長さも残り少なくなったところで、見違えるほど痩せこけた彼はついに決断した。
「聞きます」
 ドンガラガッシャアアアァァァァァーーーン
 彼が答えると同時に、青く晴れ渡っているはずの空に雷鳴が轟く。
「く…………くくくくく。そうですか…………勇気がありますね」
 ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ……
 そして、突然降り出した雨が静寂を冷たく彩った。
 気がつけば、占い師はいつの間にか全身ずぶ濡れになっている。それだけではない。美しい顔は土気色になり、艶やかな唇は青紫色に染まり、閉じかけた瞳孔は赤く血走っている。
「覚悟はいいですか?」
 占い師の口許が死神のそれになった瞬間、店内を凍てつく静寂と禍々しき暗黒が支配した。確かに蝋燭の火は消えているが、それが原因ではあるまい。
「ひいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
 自分の心臓を握る何かにとうとう耐え切れなくなり、男は絶叫した。
「や、やっぱりいいや! お、お代はこ、こ、こ、こ、こ、ここに置いとくよ! つ、つ、つ、釣りはいいや!」
 ずざざざっ!
 男は逃げ出した。
「ありがとうございました。またのご来店を。く……くくくく……」
 代金が足りていないのがそんなに嬉しいのか、含み笑いはしばらく途絶えることがなかった。
 ちなみに、占いの結果は『あなたは今夜悪夢にうなされるでしょう』。
 その夜、彼は悪夢にうなされた。

「すいませ〜ん」
 しばらくして、この占いの館にウィニーが呑気な声で来店した。
「はぁい、いらっしゃいませぇ」
 どう考えても光の反射具合を計算しているとしか思えない位置に蝋燭を保ちながら、彼女が客を出迎える。
 確かに、彼女は怪談が三度の飯より好きである。
「ようこそおいで――」
 しかし。
「ろげえええぇぇぇぇぇぇーーーーっ!!」
 ウィニーに続いて姿を現した本物の怪奇現象にはかなわなかった。
「な、な、な、何を占ってさしあげましょうか!?」
 失神寸前で何とか持ち堪えた彼女が、気を取りなおして接客する。
『この人ぉ、そうなんですかねぇ?』
『どれ、一つ腕試しでもしてみましょう』
 ディオルは彼女が本当に導かれ(ちゃっ)た者なのかどうか確かめることにした。
「そうですな。では、わたしの前世でも」
 彼女がディオルと運命で結ばれているのなら、彼の前世を探ることでその正体を悟るであろう。ただ、ディオルの前世というのは『ゾンビになる前のディオル』なのか、それとも『ゾンビになる前のディオルの前世』なのか、意見の分かれるところではある。
「わ、分かりました」
 占い師が青い水晶に手をかざす。
 すると、水晶から放たれる神秘的な光が部屋を淡い照らした。
 別にドッキリのための仕掛けではない。明かりがないと水晶に何が映っているか暗くてよく見えないのだ。
 しばらくして、水晶にディオルの前世が映し出された。
「はっ!」
 それを見て彼女が驚愕した。
「こ、これは!!」
 水晶が描いたのは、齢にして六十はありそうなジジイが『悪の女魔道士ルック』の衣装を十着もオーダーメイドで注文している姿であった。
「あ……あなたはもしや……わたしたちが探していた伝説の勇者!!」
「あぁ! すごいですぅ!」
「ほう、お察しになられたか」
 何でやねん!?
「あなたが現れるのをずっと待っていました。……あたしはラティーナと申します」
「うむ。共に平和のために戦っていきましょう。ラティーナ殿」
「ええ」
 ディオルが差し出した手を、ラティーナが固く握り返した。

「えええぇぇぇぇぇぇっ! なんでえええぇぇぇぇぇっ!!」
 クラウンのJ、Q、K、Aまで勢揃いしながら、クラウンの10が出るべき場面でスライムの9が出現し、マーティーという名の女性の叫びがカジノにこだました。
 赤が好きなのか、人工的に赤い髪、赤いビキニ、赤いブーツ、そして、左手にはめた金属鋲【メタル・リベット】を施した赤いグローブ。冷え込む季節には必ず風邪をこじらせるアレである。
「あと一歩のところで、なんでそれが出てくるのっ!!」
 ポーカー最高の役、ロイヤル・ストレートフラッシュを妨げたスライムの嘲笑に、マーティーの血圧がぐんぐんと上昇する。
「お客様?」
 ただならぬ異変を感じたか、従業員が彼女に声をかける。
 金銭が一瞬で右へ左へ流れていき、天国と地獄の人生ドラマが織り成されるカジノでは、暴力沙汰は珍しいことではない。そのため、従業員はトラブルを起こしそうな客を見つけ、迅速に対処して早期に乱闘騒ぎの芽を摘み取らなければならないのだ。
「けっ! さっきから『もう少しで、もう少しで』って、未練がましいったらありゃしねぇぜっ!」
 だが、そんな従業員の心中などお構いなしに、こちらも大負けしたのか、酒に酔った明らかにヅラの中年男が彼女にちょっかいを出した。
「なんですって! あんた、あたいにケンカ売ってんの!?」
 鼻をつく男の口臭も手伝って、マーティーはどこからか取り出したチェーンフックを片手に、敵意をむき出しにする。
「ほう、そう聞こえたか?」
 それに対し、男はせせら笑いながらゆっくりと席を立つ。
「別に頭の悪そうな姉ちゃんなんぞ相手にしたくもねぇが、どうしてもって言うならやってもいいぜ」
 男が酒の臭いと同時に殺気を放つ。
「お客様! 騒ぎを起こされちゃ困りますよ!」
 いよいよパンク寸前の不穏な空気に、従業員の顔も青くなる。
 その険悪なムードを察知したか、客たちの動揺も、そこを中心に水面に広がる波紋のように伝わっていく。
 だが、二人はそんなことなど眼中にない。
「上等じゃん! かかってきなさいよっ! このハゲ!!」
「何だとっ!! このアマ! 言ってはならんことを!!」
 マーティーの言ってはならない一言で、ついに争いの火ぶたは切って落とされた。
 と、思いきや。
「待てぇい」
 意外なところから助け舟がやってきた。

 颯爽と現れた男は、想像を軽く超える巨漢であった。
「きぃさぁまぁらぁぁ、こぉぉぉぉんなところでケンカとはぁぁぁ」
 眉の薄い顔を真っ黒な墨で塗りつぶし、何かの毛皮で作られたダーク・グリーンのマントを羽織ったその男は、血に飢えたグリズリーに似ていた。
『あわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわっ』
 正体不明のモンスターの到来に、二人は完全に腰を抜かす。
「こぉの不届き者めらぁぁ」
 人食い鬼は、手に持った山刀【ククリ】をねっとりと舐め回しながらさらに二人に迫る。
「このマイルズが、天に代わって成敗してくれるわ!」
 暴れ猿が宣言すると、己の心身を高揚させるための儀式なのか、『アオアオアオー』と奇声を上げながら、踊りを披露する。
 その踊りは、例えば、満月の夜に、いくつものトーテムポールが立つ神聖な場所で、霊的な意味が込められた仮面を被ったシャーマンが、原住民の太鼓を鳴り響かせ、燃え盛る炎を回りながら踊るのが相応しい踊りである。
『ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
 とうとう恐怖に耐えられなくなった二人は、他の客やカジノの従業員とともに、その場から一目散に逃げ出した。
 この日、カジノの売上が激減したのは言うまでもない。

「むうぅっ、もう終わりか。せっかく戦いの踊りまで踊ったのに」
 肩透かしを食らい、マイルズはややがっかりした。
 そこへ、
「あっ!」
 ラティーナがディオルとウィニーを連れてやって来た。
「兄さん」
「おお、ラティーナか」
 ……………………………………………………………………………………
 この二人は兄妹らしい。
 それ以上の言葉が見つからない。
「こちらの方々はディオルさんとウィニーさん。ディオルさんは、わたしたちが探していた勇者様よ」
 ラティーナに紹介された二人は、軽く会釈をして、
「初めまして。わたしはディオルと申します」
「ウィニーですぅ」
 規定量を超えた外見にやや困惑しながらも、二人はマイルズに手を差し伸べた。
「おお、そなたが勇者殿か! わたしはマイルズと申す。以後よろしくお願いいたす」
 ――こうして、彼らは(色々な意味で)人知を超えた出会いを果たしたのだった。

 ところで、ブランカ王の言っていた『踊り子』とは誰のことであろうか?
 それは、決して触れてはならない真実であろう。










 意外と苦戦した第三話です。本来はもうちょっ早く仕上げる予定だったのですが、そのわりには改善の余地を残しています。……この先どうなることやら。
 それにしても、ミネアはともかく、マーニャは男になっちゃいました。タイトルは太陽と月の『姉妹』のはずなのに。
 実は、マーニャ役は他にもロッドとガーヴが候補にありましたが、どっちに転んでも結局男……。

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23311はじめまして。猫楽者 E-mail 2002/11/15 09:00:15
記事番号23304へのコメント


はじめましして、Diracさん
猫楽者と申します、よろしくお願い致します。
『勇者』ディオールさん!、そして『魔王』ガウリイさん!!
さらに、赤の竜神様の、素晴らしい性格、すごいです。
とても楽しく読ませて頂いております。

> 最初はディオル一人で旅をする予定であったが、腕の立つ人間に出くわす度に浄化されてしまうので、ウィニーが同行することになったのだ。
> ディオルがキノコの姿をしているのは、自分の格好を人前にさらさないためであるのは言うまでもない。ディオルは居心地がよくて落ち着くのを理由に、カムフラージュに棺桶を要求したのだが、それでは怖がられるということで即刻却下となった。
> ……キノコの着ぐるみでも恐れられているが。

浄化され続ける『勇者』さま・・・・・旅をするのも大変ですね。
見た目のインパクトが強烈ですから、仕方ないのかもしれませんが・・・棺桶が良い♪、と言って
却下されて、しぶしぶキノコの着ぐるみを身に付けている姿を想像してしまいました(笑)

> 二日前、ブランカ城で謁見した王に告げられた言葉である。(謁見の際にディオルが浄化されかけたが)

情報を集めるのも、命がけですね(汗)

> 二人で一緒に探しても非効率的であるが、だからといって二手に分かれて、ディオルが一人になってしまえば、おそらく聖水の需要が飛躍的に増大し、エンドール経済学に一石を投じることになってしまうであろう。

町中を着ぐるみ脱いだ姿でウロウロしていたら、『勇者』さま、また浄化されちゃいそうですね。

>「ひいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
> 自分の心臓を握る何かにとうとう耐え切れなくなり、男は絶叫した。
>「や、やっぱりいいや! お、お代はこ、こ、こ、こ、こ、ここに置いとくよ! つ、つ、つ、釣りはいいや!」
> ずざざざっ!
> 男は逃げ出した。
>「ありがとうございました。またのご来店を。く……くくくく……」
> 代金が足りていないのがそんなに嬉しいのか、含み笑いはしばらく途絶えることがなかった。
> ちなみに、占いの結果は『あなたは今夜悪夢にうなされるでしょう』。
> その夜、彼は悪夢にうなされた。

お客様、軽い気持ちで『よく当たるっていうし、占いでもしてもらおう』、としたのでしょうが
何やら大変な目に・・・・・・あってますね(汗)
占い師さん、楽しんでますね。
いちげんさんばかりで、常連客・・・・出来ないのでは・・・・・。
ま・・・まあ、『あの雰囲気が良いんだよなあ♪』、みたいな常連さんも、ある意味怖いような気もしますね。

>「ろげえええぇぇぇぇぇぇーーーーっ!!」
> ウィニーに続いて姿を現した本物の怪奇現象にはかなわなかった。
>「な、な、な、何を占ってさしあげましょうか!?」
> 失神寸前で何とか持ち堪えた彼女が、気を取りなおして接客する。

おおおおおおおお、占い師の鏡ですね。
逃げ出したり、問答無用に攻撃♪、とかしないとは、流石です。

> しばらくして、水晶にディオルの前世が映し出された。
>「はっ!」
> それを見て彼女が驚愕した。
>「こ、これは!!」
> 水晶が描いたのは、齢にして六十はありそうなジジイが『悪の女魔道士ルック』の衣装を十着もオーダーメイドで注文している姿であった。
>「あ……あなたはもしや……わたしたちが探していた伝説の勇者!!」
>「あぁ! すごいですぅ!」
>「ほう、お察しになられたか」
> 何でやねん!?

う・・・・占い師さんの実力は本物なのですね。
あの・・・・・水晶に映し出された・・・映像をご覧になられて・・・『勇者』と認識なさいましたか(汗)

>「あなたが現れるのをずっと待っていました。……あたしはラティーナと申します」
>「うむ。共に平和のために戦っていきましょう。ラティーナ殿」
>「ええ」
> ディオルが差し出した手を、ラティーナが固く握り返した。

心強い・・・味方が増えましたね。
性格は、多少不安な部分が・・・・・有るような・・・い、いえ・・・何でもありません(汗)

>「あと一歩のところで、なんでそれが出てくるのっ!!」
> ポーカー最高の役、ロイヤル・ストレートフラッシュを妨げたスライムの嘲笑に、マーティーの血圧がぐんぐんと上昇する。

踊り子さん・・・・カジノで勝負をしている、登場シーンでしょうか。

> だが、二人はそんなことなど眼中にない。
>「上等じゃん! かかってきなさいよっ! このハゲ!!」
>「何だとっ!! このアマ! 言ってはならんことを!!」
> マーティーの言ってはならない一言で、ついに争いの火ぶたは切って落とされた。

なかなか元気の良い方ですね。
マーティさん、頼りになりそうな頼もしい方ですね。

>「こぉの不届き者めらぁぁ」
> 人食い鬼は、手に持った山刀【ククリ】をねっとりと舐め回しながらさらに二人に迫る。
>「このマイルズが、天に代わって成敗してくれるわ!」
> 暴れ猿が宣言すると、己の心身を高揚させるための儀式なのか、『アオアオアオー』と奇声を上げながら、踊りを披露する。
> その踊りは、例えば、満月の夜に、いくつものトーテムポールが立つ神聖な場所で、霊的な意味が込められた仮面を被ったシャーマンが、原住民の太鼓を鳴り響かせ、燃え盛る炎を回りながら踊るのが相応しい踊りである。
>『ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
> とうとう恐怖に耐えられなくなった二人は、他の客やカジノの従業員とともに、その場から一目散に逃げ出した。
> この日、カジノの売上が激減したのは言うまでもない。

マ・・・・マイルズさん♪(マイルズさん、けっこう好きだったりしまして)
なぜ・・・カジノに。
お客さん、逃げ出して、『とおぶん、あの店に近づくのはやめよう』、と心に誓いそうですね。

> ラティーナがディオルとウィニーを連れてやって来た。
>「兄さん」
>「おお、ラティーナか」
> ……………………………………………………………………………………
> この二人は兄妹らしい。
> それ以上の言葉が見つからない。
>「こちらの方々はディオルさんとウィニーさん。ディオルさんは、わたしたちが探していた勇者様よ」
> ラティーナに紹介された二人は、軽く会釈をして、
>「初めまして。わたしはディオルと申します」
>「ウィニーですぅ」
> 規定量を超えた外見にやや困惑しながらも、二人はマイルズに手を差し伸べた。
>「おお、そなたが勇者殿か! わたしはマイルズと申す。以後よろしくお願いいたす」
> ――こうして、彼らは(色々な意味で)人知を超えた出会いを果たしたのだった。
>
> ところで、ブランカ王の言っていた『踊り子』とは誰のことであろうか?
> それは、決して触れてはならない真実であろう。

あの・・・・・・ま・・ましゃか・・・『踊り子』さんの踊る・・・の・・・って・・・
戦いの・・・・(滝汗)
ブ・・・ブランカのおうさん・・・なかなかにお茶目な方・・ですね。
本当に・・・・人知を超えた・・・す・・素晴らしい出会いでしたね(遠い目)

> それにしても、ミネアはともかく、マーニャは男になっちゃいました。タイトルは太陽と月の『姉妹』のはずなのに。

はい、予想外の展開に、PCの画面の前で固まってしまいました(笑)
面白いです、ものすごく!面白いです。
ドラクエ、自分も大好きです。
続きを、とても楽しみにお待ちしております。

寒くなってまいりましたので、お体にお気を付けて、お元気で。
では、失礼します。

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23369Re:はじめまして。Dirac E-mail URL2002/11/19 21:21:21
記事番号23311へのコメント

>はじめましして、Diracさん
>猫楽者と申します、よろしくお願い致します。

 こちらこそよろしくお願いします。猫楽者さん。

>お客様、軽い気持ちで『よく当たるっていうし、占いでもしてもらおう』、としたのでしょうが
>何やら大変な目に・・・・・・あってますね(汗)

 奇妙な世界というのは、何気ない選択肢の決定で引きずり込んできます。

>占い師さん、楽しんでますね。
>いちげんさんばかりで、常連客・・・・出来ないのでは・・・・・。
>ま・・・まあ、『あの雰囲気が良いんだよなあ♪』、みたいな常連さんも、ある意味怖いような気もしますね。

 ラティーナと同じ種類の人間の評判が、何かの拍子で耳に入ったのでしょう。
 彼にラックの種でもプレゼントしましょう。

>う・・・・占い師さんの実力は本物なのですね。
>あの・・・・・水晶に映し出された・・・映像をご覧になられて・・・『勇者』と認識なさいましたか(汗)

 認識しちゃいました。
 あれもまた一つの勇気です。

>あの・・・・・・ま・・ましゃか・・・『踊り子』さんの踊る・・・の・・・って・・・
>戦いの・・・・(滝汗)
>ブ・・・ブランカのおうさん・・・なかなかにお茶目な方・・ですね。
>本当に・・・・人知を超えた・・・す・・素晴らしい出会いでしたね(遠い目)

 ある意味ドラクエ5です。
 モンスターばっか。

>はい、予想外の展開に、PCの画面の前で固まってしまいました(笑)
>面白いです、ものすごく!面白いです。
>ドラクエ、自分も大好きです。
>続きを、とても楽しみにお待ちしております。

 そう言っていただいて光栄です。
 先は長いですが、完結できるように精進しております。

>寒くなってまいりましたので、お体にお気を付けて、お元気で。
>では、失礼します。

 最近風邪ひきました(コラコラ)。ノドの調子が悪いです。
 つたない返事でしたが、それでは。

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23315Re:導かれちゃった者たち 第三話 太陽と月の姉妹エモーション E-mail 2002/11/15 21:20:04
記事番号23304へのコメント

こんばんは。
第3話……。
キノコのぬいぐるみを着たゾンビ……。ディオルさん……まさに勇者です、あなたは……!!

ラティーナ……怖すぎる、その占い。あの調子で客が逃げてたら「良く当たる」……
と評判が立ちそうもないのですが……。単に「ファイナルアンサー」のあとの
みのもんたの眼差し攻撃に耐えるようなものでしょうけど。

マーニャがまさか……マイルズさんとは……。本気でガーヴとかだったら
どうしようとは思っていたのですが……(汗)

ブランカ王の言う「踊り子」……マイルズさん、王の前で王を称える舞でもしたのでしょうか……。

面白かったです。続きを楽しみにしてます。

追伸
私の書いたあの妙に長い話を、お読みに……。今読み返すと、設定の妙な点
がちらほら目に付くのですが……。ありがとうございます。m(__)m

それにしても……人気あります、エビフライのクッキー(笑)
では、これで失礼します。

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23373モンバーバラの姉妹万歳!!Dirac E-mail URL2002/11/19 22:23:15
記事番号23315へのコメント

 こんばんわ。

>キノコのぬいぐるみを着たゾンビ……。ディオルさん……まさに勇者です、あなたは……!!

 わたしがマスタードラゴンだったら、天空の武具一式を揃えなくても天空への塔に入る資格を与えます。というか、こっちから出迎えます。

>ラティーナ……怖すぎる、その占い。あの調子で客が逃げてたら「良く当たる」……
>と評判が立ちそうもないのですが……。

 知り合いにだまされたりして……。
 ああ、今すぐ信じる心を取りに行かねばっ!!

>マーニャがまさか……マイルズさんとは……。本気でガーヴとかだったら
>どうしようとは思っていたのですが……(汗)

 ガーヴの踊り子姿より、踊りつながりでマーニャ→マイルズの方がインパクトがあると判断し、ガーヴは取りやめました。
 ……まあ、どちらでも似たようなものですが。(笑)

>ブランカ王の言う「踊り子」……マイルズさん、王の前で王を称える舞でもしたのでしょうか……。

 特にしていません。
 ブランカ王は外見に惑わされずに彼の本質を見抜いたのでしょう。さすがです。

>私の書いたあの妙に長い話を、お読みに……。今読み返すと、設定の妙な点
>がちらほら目に付くのですが……。ありがとうございます。m(__)m

 読み終えて心が暖まりました。ナンダカンダ言って人間やればできるじゃないかぁ! の○太に読ませてやりたいです。(プラチナの女神像は某ネ未来の世界のコ型ロボットか!?)
 いいお話、ご馳走さまでした。

 それでは。

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23328なぜマイルズ!!? 踊るから!?リナ&キャナ E-mail 2002/11/16 15:47:31
記事番号23304へのコメント

こんにちはですぅぅぅ〜〜〜



> ディオルがキノコの姿をしているのは、自分の格好を人前にさらさないためであるのは言うまでもない。ディオルは居心地がよくて落ち着くのを理由に、カムフラージュに棺桶を要求したのだが、それでは怖がられるということで即刻却下となった。
DQで死人と言えば棺桶ですね♪
でも、腐った死体化していないだけましかも・・・


> そう言って、ウィニーは共同墓地へ歩き出した。
で、何で墓地に行くかなぁ・・・この人は・・・



> ちなみに、占いの結果は『あなたは今夜悪夢にうなされるでしょう』。
> その夜、彼は悪夢にうなされた。
確かに当たったし・・・



> 確かに、彼女は怪談が三度の飯より好きである。
実はあたし、ミネア役ははじめ、ラティーナじゃなくてミシェールかと思ってたんですよね。
まあ・・・どっちにしろ、PS版で壊れたミネアさんはある意味素敵でしたが・・・そのノリで行けば、確かにラティーナかも・・・


> 彼女がディオルと運命で結ばれているのなら、彼の前世を探ることでその正体を悟るであろう。ただ、ディオルの前世というのは『ゾンビになる前のディオル』なのか、それとも『ゾンビになる前のディオルの前世』なのか、意見の分かれるところではある。
前世・・・
確かにどちらだろう・・・(滝汗)


> 水晶が描いたのは、齢にして六十はありそうなジジイが『悪の女魔道士ルック』の衣装を十着もオーダーメイドで注文している姿であった。
>「あ……あなたはもしや……わたしたちが探していた伝説の勇者!!」
あんた、んなジジイ探してたんかい!!
しかも望んで!!?


> クラウンのJ、Q、K、Aまで勢揃いしながら、クラウンの10が出るべき場面でスライムの9が出現し、マーティーという名の女性の叫びがカジノにこだました。
本気で思ってました。
『マーティーがマーニャかぁ・・・
 ある意味はまり役かもなぁ・・・』
考えが甘かったですね。


>「兄さん」
>「おお、ラティーナか」
> ……………………………………………………………………………………
> この二人は兄妹らしい。
ご両親はどんな人ですか!!?
って言うか、年齢差ありすぎ・・・


> 規定量を超えた外見にやや困惑しながらも、二人はマイルズに手を差し伸べた。
勇者の外見が、すでに規定量を超えている気が・・・


> 実は、マーニャ役は他にもロッドとガーヴが候補にありましたが、どっちに転んでも結局男……。
ロッドとガーヴ・・・なぜでしょう・・・?


分けわかんないレスですみません・・・
では、失礼させていただきます。

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23376マーニャ好きの方々、まことに申し訳ございませんDirac E-mail URL2002/11/19 23:06:44
記事番号23328へのコメント

 毎度どうもです。

>実はあたし、ミネア役ははじめ、ラティーナじゃなくてミシェールかと思ってたんですよね。

 ミシェールも候補の一人だったのですが、ミネア→占い師→オカルトということでラティーナになりました。

>> 彼女がディオルと運命で結ばれているのなら、彼の前世を探ることでその正体を悟るであろう。ただ、ディオルの前世というのは『ゾンビになる前のディオル』なのか、それとも『ゾンビになる前のディオルの前世』なのか、意見の分かれるところではある。
>前世・・・
>確かにどちらだろう・・・(滝汗)

 思い返してみれば、第二話のラストでディオルが浄化されたから、そのへんも考慮しないといけないですね。
 ますます深い謎になってしまった……。

>本気で思ってました。
>『マーティーがマーニャかぁ・・・
> ある意味はまり役かもなぁ・・・』
>考えが甘かったですね。

 ふっふっふ、罠にはまりましたね。
 フェイント役はメルディナーサでもよかったですが。

>> 実は、マーニャ役は他にもロッドとガーヴが候補にありましたが、どっちに転んでも結局男……。
>ロッドとガーヴ・・・なぜでしょう・・・?

 ロッドは実際に妹がいて親の敵がいるからです。
 ガーヴは、フィブリゾを勇者にした上で、裏切りの洞窟で裏切り小僧に会う前に裏切るという構想がありました。
 言いそびれましたが、ナーガも候補にありました。妹がいるし(正確にはそんな噂があって)、なおかつよく裏切るということで、これも裏切り小僧に会う前に勇者を裏切ろうかと考えていました。でも、マーニャ→ナーガはありがちだと思い、早い段階でボツにしました。

 それでは。

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23367導かれちゃった者たち 第四話 信じる心Dirac E-mail URL2002/11/19 20:50:09
記事番号23231へのコメント

「どういうことだよ!? 親父!!」
 次元の違ったヒゲを鼻の下に蓄えたとある町の歴史研究部の責任者が、調査が完了した遺跡の研究報告書をまとめているところに、二十歳を目前にした息子が激しい剣幕で詰め寄った。
「ノックもせずにいきなり何だ!?」
 突然の大声に驚いた拍子にインクをこぼしてしまい、やや憮然とした声の父親。
 だが、息子は一歩も引かない。
「親父! オレを欺いたな!!」
 父親の胸ぐらをつかむ息子の目は紅蓮に染まっていた。彼にも情緒不安定な時期はあったが、破壊的な衝動さえ感じられるほどの反抗は今までなかった。
「親父のことをずっと信じてきたのに!!」
 無意識に、自分がまだ三、四歳だったころの、理想となっていた父親の姿が一瞬脳裏に去来した。それが現実と交差して、彼の心に油を注ぐ。
「……聞いてくれ」
 我を忘れかかっている息子を諌めようと、父親はつとめて冷静な口調で訴えかける。
「息子よ、世の中は理想論がすべてではないのだ。現に――」
「うるせえ! そんな話は聞き飽きたよ!!」
 だが、息子は父親の優しいまなざしを拒否した。
 まだ幼いころは、父親は心が広いと感じていた。だが、成長した今では、父親のそういった態度の何もかもが懐柔的な行為に映ってしまう。
 このままでは、輝いていた思い出が次々と汚れていく。
「あんたを信用していたオレがバカだった!!」
 彼にとって、もう父親は無条件に手本となる存在ではない。一人の人間として、信じるに値する根拠とその想いが必要なのだ。
「オレはあんたのようなヨゴレた面にはならない!! 絶対にな!!」
 そう言って、息子はまだインクが残っていた容器を父親に投げつけた。
「……言いたいことはそれだけか」
 息子の血を吐く勢いの罵声にも、父親は涼しい顔を崩さない。
 ともすれば我を忘れそうになる自分と、眉をピクリとも動かさない父親。格の違いをまざまざと見せつけられて、彼はたまらなく悔しかったが、それを表に出すのだけは何とかこらえた。
「いや。もう一つある」
 自分と父親を比較したことで少し冷静さを取り戻した彼は、最後にこう言った。
「もうあんたと一緒にいるのはゴメンだ! こんな家、出てってやらぁ!!」

「確かに気になりますね。武術大会優勝のお姫様とその御一行に、どういうわけか棄権した武術大会の優勝候補、ブランカへのトンネルを開通させた商人、女神像を探し求めていた賢者、二人の腕に覚えのある傭兵」
 町で収集した情報を総合しながら、ラティーナが何故か喜悦に満ちた顔で言った。
 やはり特別な存在なのか、導かれ(ちゃっ)た者の居場所はラティーナの占いでも全く分からない。まだ見ぬ仲間の居場所は自力で探さなければならないのだ。
「えぇと、お姫様たちとぉ、優勝候補さん、賢者さん、傭兵さんたちの居場所は不明ですからぁ、とりあえず、商人さんから当たってみた方がいいと思いますぅ」
「わたしもマスターと同じ意見だ」
「しかし、その商人は船で南へ向かったそうじゃないか。我々はどうやって南へ行く?」
 マイルズが困り果てた口調で言った。
 ブランカの南へ行くには、途中にある広大な砂漠を越えなければならない。そんなところに徒歩で横断しようとすれば、行き倒れになるのは目に見えている。特にディオルはカラカラに乾涸びてミイラになってしまうだろう。
 ……って、そっちの方が除菌されて衛生的。
 砂漠を迂回するという手段に転じるなら、西側に回るルートと、東側に回るルートがあるが、これはどちらも無理な話である。
 西ルートは海路だが、最近はどこも海が大荒れで、どこの港も船を出していない。そのため、自分で船をこしらえて強行出航ということになるが、彼らに造船できるだけの資金も技術もないし、出航できたところで海のどこかで沈没するのは目に見えている。
 一方東ルートは、砂漠を渡る距離の二倍以上歩かなければならないほど遠回りである上に、険しい山脈と深い森林が待ち構えていて、かなりの時間と手間をロスするのは目に見えている。
 この先が思いやられ、一同が頭を悩ませていると、
「んっ!」
 自分の世界に没頭していた、もとい何かを占っていたラティーナが声を上げた。
「何だラティーナ? 何か見つかったのか?」
「馬車。……砂漠の近くに馬車があります。くっ……くっくっく。その馬車を引く馬はドラゴンホースですよ」
 ラティーナが喜びの笑顔を浮かべた。
 ドラゴンホースとは、その名の通り馬の一種であるが、伊達や酔狂で『ドラゴン』の文字が名前の最初に冠されているのではない。サイズこそ普通の馬より一回り大きいくらいだが、その力は馬三、四十頭分に相当する。ドラゴンホースをもってすれば、問題の砂漠を渡ることなど容易なことである。
「おおっ! これはちょうどいい」
「渡りに船とはこのことですな」
「ばんざ〜い」
 ラティーナが見つけた馬車の存在に。皆の表情が晴れ渡る。
「では、その馬車の持ち主に頼んでみるか。事情を話せば、砂漠を渡りきるまでは貸してくれるだろう」
 方針が決まり、ディオルたちは旅の支度を整えた。

「うわぁ〜っ、改めて見ると広いですねぇ」
 障害物となっている砂漠を横切りながら、ウィニーがつぶやいた。
 オアシスは見当たらず、草木も生えていない。砂漠の中心に立てば、おそらく四方八方どこを見渡しても同じような景色である。唯一違うとすれば、夜空を美しく彩る無数の星だけであろう。
「ふむ、……羅針盤も少し狂ってきたな」
 人間の叡智はある種の金属が北を向くことを発見した。しかし、この砂漠にはその機能が有効に働かない。羅針盤の針が北を向くのは地磁気が生み出す磁場が針にもたらす現象であるのだが、この砂漠には地磁気とは別に特有の磁場が発生しているらしく、羅針盤はその磁場の影響を受け、北の方角を示さなくなるのである。
 その証拠に、ディオルたちはラティーナの霊能力を頼りに東南東に向かって歩いてきたのだが、羅針盤は進行方向から見て右前方に向いている。本来なら左斜め前に向いていなければならないはずだ。
 故に、この砂漠を渡るならば、入り口と出口を一直線で結んだ経路を設定しない方がいい。少しでも方向が狂えば、夜にならない限り方向の修正ができないからである。最も堅実な方法は、砂漠の端に沿ったルートである。時間はかかってしまうが、道に迷うことはない。
「あそこよ」
 さらに歩いていると、ラティーナが指差した方向に一軒の宿が見えた。
「ドラゴンホースの馬主はあの宿屋にいるわ」
「やっと着いたか。しかし宿とは丁度いい」
 すでに日は地平線に交わりつつある。一行は宿泊も兼ねて宿の中へと入っていった。

「あーっ! いましたぁ!」
 厩舎を見てみると、一般の馬とは明らかに輝きの違うドラゴンホースがいた。
 その横では、二十歳前後の若者がドラゴンホースの毛繕いをしていた。おそらく彼がこのドラゴンホースの馬主であろう。
「すいません」
 ドラゴンホースを借りようと、ディオルが馬主に声をかけた。
「はっ――」
 呼びかけられて振り向いた馬主は、ディオルの姿を目に収めた瞬間に引きつらせた顔から脂汗を垂れ流す。
「な、何だよ!」
 意外にも早く動揺から脱出した馬主は、自分の思い通りに行かなくて不機嫌な子供のトーンでディオルに応答する。
「ご覧の通り、わたしたちは旅の身なのですが」
 果たして『ご覧の通り』という言葉は適切だろうか?
「ちょっと事情がありまして、あの砂漠を一刻も早く越えなければならないのですよ。ですから、砂漠を渡るために、しばらくの間、あなたの馬車をお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ダメだね!」
 ディオルたちの申し出を、馬車の持ち主はトゲトゲした声で拒否した。
「そこを何とかできませんか?」
 彼の態度に少々反感を覚えながらも、ディオルが頭を下げる。
「ヤダね! あんたらなんかに馬車を貸す気はこれっぽちもねぇよ!」
 見ず知らずの人間の頼みを断る時は、申し訳ないという気持ちを織り交ぜつつやんわりした口調で断り、相手に気を使うものである。だが、彼の口調は必要以上にこちらを刺激する。まるで、わざと憎まれているかのように。
「なんでですかぁ? 別によこせって言ってるわけじゃないですよぉ」
 馬主の言い草に、思わずしかめ面になるウィニー。
「何言ってんだよ! どうせフィリアをパクる気だろ!」
 そう言って、馬主はフィリアと言う名のドラゴンホースの頭を優しく撫でた。
「神に誓って――」
「へっ、そんなの信じないね」
 マイルズが『そんなつもりは断じてない』というより先に、馬主が誓いを否定する。
「それに、あんたらに少しの間だけでも馬車を貸しちまったら、オレの大事なフィリアが汚れちまうだろうが!!」
 今『一理ある』と思った人は正直に手を上げましょう。
「なっ――」
 馬主のあまりの言い草に、ディオルも腹に据えかねる。
「く、くっくっくっく……」
 そんな一触即発の状況で、ラティーナが底無しの笑みを浮かべた。
「な、何笑ってんだよ!?」
 ラティーナの笑みに少々逃げ腰になりながらも、意地で強気な姿勢を崩さない。
「そんなにお父さんが信じられないですか、ニード=ブランナーさん」
 その言葉が彼を射抜いた。

 ディオル、ウィニー、マイルズの三人は、「二人でじっくり話をしたい」というラティーナの要望でその場を立ち去った。
「だ……誰だよ!? そのニード何とかってのは!」
 彼女の虚ろな眼差しに心の奥を侵食された感覚を覚えた馬主は、喉の奥からとぼけたセリフを搾り出すのがやっとだった。
「くっくっく……。せっかく二人きりにさせてあげたのですから、もう少し正直になられてはいかがです? あたし以外、誰も聞いてはいませんよ」
 だが、ラティーナは追撃の手を緩めない。
「あなた、歴史研究部のお父さんに、地位を引き継ぐために研究部の伝統であるヒゲを強要されましたね。こんな感じの……くっくっく」
 地面にブーメランのようなヒゲを書きながら、ラティーナが言った。
「最初は拒否しましたが、『最近はこんなヒゲが流行っているんだ。お前も生やせば酒場のねーちゃんたちにモテモテだぞ』とお父さんに言われ、あなたは喜んでヒゲを生やしましたのではないですか」
『…………………………………………』
 父親のセリフを一字一句事細かにに再現され、今度こそニードは何も言えなくなる。
「でも、実際には彼女の評判は最悪。――それ以来、人が信じられなくなったのね」
 彼は最も信頼していた肉親に裏切られたのだ。人間不信になっても不思議ではない。
 力が抜ける理由だが……。
「な、何故それを……」
「わたしは占い師ですから」
 霊能力の強い彼女にとって、ニードのような一般人の過去を知ることなど容易なことである。
「て、てめぇ! 過去を無断で覗くなんて、どういう神経してんだよ!!」
「そんなことより」
 ニードの領域を土足で踏み込んだことを『そんなこと』で済ませるラティーナ。
「もし、あたしたちに馬車をあげれば、『えぇー!? 見ず知らずの人たちに馬車を丸ごと貸しちゃったの!? すごぉーい! ニードって気前がよくて素敵!! あたし、好きになっちゃうかもー!!』という具合で、酒場のねーちゃんにモテモテになるわ」
 ……………………………………………………………………………………
「どうぞお使い下さい!!」
 まるで『お手』をする犬のように、ニードは回れ右をしたのだった。
 分かった、分かった、分かったから舌出すな。

 こうして、ディオルたちは無事砂漠を渡ることができたのだった。

 ちなみに。
 ニードは確かに酒場のねーちゃんにモテモテだったが、財布の中身がカラになったら愛想つかされたらしい。
 世界を救うために綺麗事は通用しない。時として、目の前に築き上げられた屍の山を乗り越えなくてはならないのだ。
 ニード=プランナー、君のことはいつまでも忘れないよ。
 ……あれ、ブランナーだっけ?










 第四話です。
 砂漠の磁性は思いっきり怪しい理論です。思いつきなので気にしないで下さい。
 四話目にしてメジャーキャラがようやく出てきました。馬ですが、本家のパトリシアもメス(だったと思う)ので、まあいいでしょう。
 ところで『裏切りの洞窟』はどうしたのかとお困りの方、思いきり省略しました。ちなみに、この先もわたしの都合で本家のストーリーを省略したり一部改変したりします。ご了承下さい。(すでに冒涜しているという説あり)

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23372はーい、先生!借りたものは返さなきゃだめだと思いまーす!(学級委員風)エモーション E-mail 2002/11/19 22:05:00
記事番号23367へのコメント

マーニャ=フィリアが消えたので、どこで使うのだろうと思っていたのですが……。
馬……。フィリア……(だばだば)
やはり、「TRY」ラスト近くのあのせいっ?!

しかし、一瞬「馬がフィリア……飼い主はヴァルか?(爆)」と思った私です。
すみません……このときニードのことは、キレイに忘れてました。冒頭に出ていたのに……。

>「それに、あんたらに少しの間だけでも馬車を貸しちまったら、オレの大事なフィリアが汚れちまうだろうが!!」
> 今『一理ある』と思った人は正直に手を上げましょう。
はーい(笑)

それにしても信じる心って……。

今回も楽しませていただきました〜。
では、これで失礼します。

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23378悪人から借りたものは返さなくていいんだよ(教頭先生風)Dirac E-mail URL2002/11/20 00:59:51
記事番号23372へのコメント

 まさか返事を書いている最中に感想が来るとは思いませんでした。
 忙しいけれどうれしいです。

>馬……。フィリア……(だばだば)
>やはり、「TRY」ラスト近くのあのせいっ?!

 適任者が他にいませんでした。
 でも、猛スピード空を飛んでいるフィリアに乗り込むのはやめましょう。吹っ飛ばされます。

>>「それに、あんたらに少しの間だけでも馬車を貸しちまったら、オレの大事なフィリアが汚れちまうだろうが!!」
>> 今『一理ある』と思った人は正直に手を上げましょう。
>はーい(笑)

 箱の中のにある沢山の林檎のうち、一個の林檎が腐ると全部の林檎が腐ってしまう。……ディオルの腐敗は何を意味するのか!?
 細かいことですが、『上げる』ではなく『挙げる』でした。

>それにしても信じる心って……。

 間違ってはいないでしょう。

>今回も楽しませていただきました〜。
>では、これで失礼します。

 次回はトルネコの登場です。候補は三人いますが、やっぱり皆イッちゃってます。
 それでは。
 

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23374Re:導かれちゃった者たち 第四話 信じる心D・S・ハイドラント 2002/11/19 22:46:31
記事番号23367へのコメント

> ……って、そっちの方が除菌されて衛生的。
ミイラになっても大丈夫なのかな

> ドラゴンホースとは、その名の通り馬の一種であるが、伊達や酔狂で『ドラゴン』の文字が名前の最初に冠されているのではない。サイズこそ普通の馬より一回り大きいくらいだが、その力は馬三、四十頭分に相当する。ドラゴンホースをもってすれば、問題の砂漠を渡ることなど容易なことである。
まあ伊達や酔狂でそんな名前つけないでしょう

> 今『一理ある』と思った人は正直に手を上げましょう。
はーい(挙手)

>「あなた、歴史研究部のお父さんに、地位を引き継ぐために研究部の伝統であるヒゲを強要されましたね。こんな感じの……くっくっく」
ヒゲ・・・?
それにしてもこの人怖い

> ニード=プランナー、君のことはいつまでも忘れないよ。
> ……あれ、ブランナーだっけ?
さあ?
すぺしゃるのキャラですか・・・。

> 第四話です。
> 砂漠の磁性は思いっきり怪しい理論です。思いつきなので気にしないで下さい。
> 四話目にしてメジャーキャラがようやく出てきました。馬ですが、本家のパトリシアもメス(だったと思う)ので、まあいいでしょう。
> ところで『裏切りの洞窟』はどうしたのかとお困りの方、思いきり省略しました。ちなみに、この先もわたしの都合で本家のストーリーを省略したり一部改変したりします。ご了承下さい。(すでに冒涜しているという説あり)
まああのキャラ達で『裏切りの洞窟』は難しいでしょう。
ディオルさんなんてモロにモンスターですから

それでは〜失礼しました

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23379裏切りの洞窟はナーガ御用達Dirac E-mail URL2002/11/20 01:23:54
記事番号23374へのコメント

 再び感想、ありがとうございます。

>> ……って、そっちの方が除菌されて衛生的。
>ミイラになっても大丈夫なのかな

 ゾンビの腐肉が削げ落ちてもスケルトンになるらしいですから、大丈夫でしょう。
 ふと思ったのですが、このお話って食事中に不適……。

>> 今『一理ある』と思った人は正直に手を上げましょう。
>はーい(挙手)

 早くも二票入りました。

>>「あなた、歴史研究部のお父さんに、地位を引き継ぐために研究部の伝統であるヒゲを強要されましたね。こんな感じの……くっくっく」
>ヒゲ・・・?
>それにしてもこの人怖い

 もしかしたら、アリーナ役とキャラがかぶっちゃうかもしれません。

>まああのキャラ達で『裏切りの洞窟』は難しいでしょう。
>ディオルさんなんてモロにモンスターですから

 ある意味、彼らの存在自体が裏切り行為です。

>それでは〜失礼しました

 それでは。

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23383馬・・・馬・・・(涙)リナ&キャナ E-mail 2002/11/20 18:40:14
記事番号23367へのコメント

こんばんはです。
交通事故にあったので、警察署に言って帰ってきたばかりです。


>「どういうことだよ!? 親父!!」
> 次元の違ったヒゲを鼻の下に蓄えたとある町の歴史研究部の責任者が、調査が完了した遺跡の研究報告書をまとめているところに、二十歳を目前にした息子が激しい剣幕で詰め寄った。
『あ・・・そうなんだ・・・
 ホフマンって、ニードなんだ・・・
 あ・・・そう・・・』
これを見たときの、あたしの状態です。
なんだか、気が抜けたと言うか、もっととんでもないパターンを考えていただけに、安心してしまいました。
ちなみに、誰だと思っていたかは内緒です。


>「いや。もう一つある」
> 自分と父親を比較したことで少し冷静さを取り戻した彼は、最後にこう言った。
冷静になったほうがいいぞ・・・
あのヒゲは、はっきり言ってダサ・・・ごほごほ。


>「確かに気になりますね。武術大会優勝のお姫様とその御一行に、どういうわけか棄権した武術大会の優勝候補、ブランカへのトンネルを開通させた商人、女神像を探し求めていた賢者、二人の腕に覚えのある傭兵」
さりげなく人数増えてるんですが・・・
まあ、ウィニーがいる時点で、合計人数増えちゃってるんですが。


> ブランカの南へ行くには、途中にある広大な砂漠を越えなければならない。そんなところに徒歩で横断しようとすれば、行き倒れになるのは目に見えている。特にディオルはカラカラに乾涸びてミイラになってしまうだろう。
> ……って、そっちの方が除菌されて衛生的。
それなら、ぐるぐるに包帯巻いて・・・
って、ミイラ男そのものですね。それじゃあ。


>「ご覧の通り、わたしたちは旅の身なのですが」
> 果たして『ご覧の通り』という言葉は適切だろうか?
ゾンビ(正確に言えばきのこの着ぐるみ)はいるは、怪しい文様の書いた神官(踊り子?)はいるは・・・


>「何言ってんだよ! どうせフィリアをパクる気だろ!」
> そう言って、馬主はフィリアと言う名のドラゴンホースの頭を優しく撫でた。
・・・なるほど。ドラゴンホース。竜の馬。
しかし・・・
一瞬ニードのせりふが高木voice(ヴァルガーヴ)で聞こえてきて、PCの前で爆笑してしまいました・・・


>「それに、あんたらに少しの間だけでも馬車を貸しちまったら、オレの大事なフィリアが汚れちまうだろうが!!」
> 今『一理ある』と思った人は正直に手を上げましょう。
はーい(手を上げている)。


> ニード=プランナー、君のことはいつまでも忘れないよ。
> ……あれ、ブランナーだっけ?
あたしも知りません。


> 四話目にしてメジャーキャラがようやく出てきました。馬ですが、本家のパトリシアもメス(だったと思う)ので、まあいいでしょう。
フィリア・・・
確かにメジャーといえばメジャーですが・・・
でも馬・・・(涙)


なんだかわけのわからないレスになっていますが(半分錯乱中だったり)、これにて失礼いたします。

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23427そこのけそこのけお馬が通るDirac E-mail URL2002/11/23 00:46:25
記事番号23383へのコメント

>こんばんはです。
>交通事故にあったので、警察署に言って帰ってきたばかりです。

 お体の方は大丈夫でしょうか?
 感想を送ってくださっているので、大したお怪我はされていないようですが……。

>『あ・・・そうなんだ・・・
> ホフマンって、ニードなんだ・・・
> あ・・・そう・・・』
>これを見たときの、あたしの状態です。
>なんだか、気が抜けたと言うか、もっととんでもないパターンを考えていただけに、安心してしまいました。
>ちなみに、誰だと思っていたかは内緒です。

 ニードが誰だと思われたのか是非聞きたいです。
 もしかして、パトリシア→ジョンでホフマン→ラギアソーンとか。

>>「確かに気になりますね。武術大会優勝のお姫様とその御一行に、どういうわけか棄権した武術大会の優勝候補、ブランカへのトンネルを開通させた商人、女神像を探し求めていた賢者、二人の腕に覚えのある傭兵」
>さりげなく人数増えてるんですが・・・
>まあ、ウィニーがいる時点で、合計人数増えちゃってるんですが。

 得られた情報のすべてが導かれちゃった人たちに直結しているとは限らないので、いくつかダミーを仕込みました。
 それだけのことです。

>>「それに、あんたらに少しの間だけでも馬車を貸しちまったら、オレの大事なフィリアが汚れちまうだろうが!!」
>> 今『一理ある』と思った人は正直に手を上げましょう。
>はーい(手を上げている)。

 感想をくださる方は必ずこれに賛同します。
 この先もっと汚れるかも……。

>> 四話目にしてメジャーキャラがようやく出てきました。馬ですが、本家のパトリシアもメス(だったと思う)ので、まあいいでしょう。
>フィリア・・・
>確かにメジャーといえばメジャーですが・・・
>でも馬・・・(涙)

 DQ3だったら、しゃべる馬のエド(って名前だったと思う)にしたかも。
 こういうことを書くと、『DQ3もやるのか?』と思われそうなので言っておきますが、今のところそういう予定はありません。DQ4でいっぱいいっぱいです。

>なんだかわけのわからないレスになっていますが(半分錯乱中だったり)、これにて失礼いたします。

 今は落ち着かれたでしょうか?
 それでは。

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23426導かれちゃった者たち 第五話 失われた光Dirac E-mail URL2002/11/23 00:22:34
記事番号23231へのコメント

 漂流してかれこれ一ヶ月のガウリイ=ガブリエル(生きてた)は、手製の船の残骸にしがみつき、激しく上下する海面と格闘していた。
「ぬああぁぁぁっ! こんなことになると分かっていたら、海の守り神を潰すんじゃなかったああああぁぁぁ!!」
 山奥の村での農婦との忌まわしき死闘は熾烈を極め、生還したはいいが、何故か魔法が封じられ、アジトに瞬間移動できなくなってしまった。
 そこで、船でアジトに戻らなくてはならなくなったのだが、海の守り神を破壊しろと部下に命じたため、彼はすっかり荒れ果てた海に挑むハメになったのである。
「ん?」
 ふと訪れた予感に従って海面下に目をやると、不気味な四つの影が下からガウリイに近づいていた。
 影の形から判断して、こちらに近寄っているのは魚らしいが、尾びれであろう部分のシャープ加減がとても気がかりである。
「ま、まさか……」
 その影の主がどの程度の深さにいるのか分からないので大きさも分からないが、比較的浅いところを泳いでいる魚の群れが一斉に散っていく様子が、しきりにガウリイの脳にシグナルを鳴らす。
「もしか……しなくても」
 影は次第に大きくなるが、まだ、その全貌は見えない。おそらく体長はかなりのものであろう。
「や、やっぱり……」
 影の主が光が届くくらいまでの深さに達した時、ガウリイの目に飛び込んできたのは、どんな肉でも食いちぎってしまいそうな牙であった。
「サ、サメだああぁぁぁぁぁっ!」
 ガウリイの絶叫も、反響するものが何一つない大海原のド真ん中では、全く響くことはなかった。

 砂漠を越えたディオルたちはさらに南へ進み、港町のコナンベリーに到着していた。
「うぅむ、風がしみるな」
 海の香りを運ぶ汐風に、キノコからわずかに露出した皮膚……と言うより筋肉に塩をすりこまれ、ディオルが全身をかきむしる。
 かつては漁業の町であったコナンベリーは、時代の流れとともに造船技術が発達し、やがては通商の町としても栄えるようになった。この町の生活は海と密接につながっており、今では町の人口の約六割が海洋関係の仕事に従事している。
「しかし活気がないな」
 それとは裏腹に人影が見当たらない港を眺めながら、マイルズがつぶやいた。
「確かに寂しいですぅ」
 コナンベリーの人々は粋がいいと聞いていただけに、波の音しか聞こえないこの静けさでは、生まれて初めての海でも、ウィニーの顔は冴えない。
「でも、こんな状況では無理もありません」
 世界の破滅の前ぶれなのか、最近は嵐もないのに海が荒れていて、船を沖に出すことができずにいる。そのため、人々は全く収入を得ることができず、町の空気は暗い灰色に染まっている。
 漁師や船員たちは途方にくれ、昼間から酒を浴びて現実逃避する始末である。おかげで港は次第にさびれ、船もすっかり朽ち果ててしまった。
 しかし、
「あれぇ?」
 突然ウィニーの視界に飛び込んできたのは、光を失ったそんな港の中で、燦然【さんぜん】と輝く巨大な船であった。
 数人の船大工が甲板で作業をしているので、おそらく船は未完成か修理中かのどちらかであろう。だが、無気力な空気が充満した町の中で、唯一人々の健全な営みが見られる場所である。
「まさか、この海に挑もうというのか?」
「いくら何でもそれは無謀だ。蛮勇は誉められるものではない」
 ディオルが勇気について語った。お忘れの方もいるかもしれないので注釈しておきますが、彼は勇気のエキスパート、すなわち勇者です。
「希望のない町にしては威勢がいいが、人間は命あってのものだ」
 彼が言うと説得力があるのかないのか謎である。
「もしそのつもりなら、ここは止めねばなるまい」
 そう言うと、ディオルは船に向かって歩き出した。
『…………………………………………』
 この時、ラティーナは予感にも既視感にも近いが確実にそれとは異なった感覚をとらえていた。

「この船の持ち主は……マリウスって人だ」
 ディオルに船の持ち主を聞かれ、船大工はそう答えた。
 奇怪な物体を目の前にしても全く動じないとは恐れ入った。もしかしてマリウスという人物も同じ波長の人間なのだろうか?
「レイクナバ出身の商人とか言ってたけど、とてもそうは見えなかったなぁ」
 ふと、ディオルたちの脳裏に、エンドールとブランカへのトンネルを開通させた商人が頭をよぎる。
「そのマリウスさんは、今どちらに?」
「何でも、大灯台に行ったらしいな」
「大灯台?」
「ほら、あそこだよ」
 船大工が指差した方向には、確かに灯台がそびえていた。だが、
「あれは、魔物に乗っ取られていますね。くくくく……」
「実はそうなんだよ。よく分かったなぁ」
 船大工の話によると、大灯台が魔物に襲われたのは一月ほど前である。さらに、その日を境にコナンベリー周辺の海が荒れ始め、今では世界中どこの海も高波が巻き起こり、船が出せなくなっているらしい。
「魔物に襲われてから、あの大灯台の光が何か気味悪い色になってな。その光は海の異変と関係していて、その犯人は魔物に違いないって噂があったんだよ。その話を聞いて、一昨日、マリウスさん置手紙を残して一人で行っちまった」
 聞くところによると、マリウスは何も痕跡を残さずに行動するような人物だという。
「なるほど」
 それを聞いてディオルは少し安心した。常に他人に悟られないように行動するには、常に冷静でなければならない。そんな人間が勝算のない手段に出るはずがない。
「ところで」
 船の持ち主について知った彼らが、次に知るべきことはこれであった。
「大灯台へはどうやって行けばいいのか、教えていただきたい」

 日も暮れかかったころ、マリウスを助けるべく、ディオルたちはコナンベリー東方の海の守護神、大灯台へとやって来た。
 最上階より灯された、港の存在を知らせるための光は、今は毒々しい濃い紫の光になっている。
「あの光、なんか気持ち悪いですぅ」
 邪悪なる儀式のための炎としか思えないその色は、光を神々しい救いの象徴と考える者を激しく挑発する。
「なんという汚らわしい輝きだ!」
 偉大なる海の平穏を祈った先人の思いに対するこの上もない侮辱に、ディオルが怒りに燃える。
 …………アンタの体と同じ色ですが。
「ラティーナ、敵は?」
「くくくくっ……。動く鎧【リビング・メイル】六体、悪霊【ゴースト】二十三匹、骸骨戦士【スケルトン】八匹、獣人【ライカンスロープ】は虎系統が五匹と鳥系統が七匹です。この扉の向こうで待ち構えています」
 ラティーナが扉に手をあてて、大灯台の内部を透視する。
「合計四十九匹か。ちょっと数が多いな」
 戦闘要員の数の比は四対四十九。一人あたりおよそ十二体の敵を相手にしなければならない。
「しかも、動く鎧と悪霊は殴り応えがないし」
 これらの敵は構成成分が生体物質ではないので、拳を叩き込んでも生き生きとした感触を味わえないのである。……って、何故こんなことを解説している?
「じゃあ、まずはあたしが仕掛けますぅ」
「ウィニー殿、一体何を?」
「あたしの十八番ですぅ」
 マイルズに得意げにそう言うと、ウィニーは呪文を紡ぎ始めた。

「な、何だ!?」
 扉の近くで待ち構えていたベンガル虎の獣人は、突然襲いかかってくる骸骨戦士に驚愕した。
 ただ襲いかかってくるだけではない。巧みな剣技と連携でこちらを翻弄しようとさえするその動きは、意思を持っているようにさえ思える。
「これは一体どういうことだ?」
 まさか敵に死霊術士【ネクロマンサー】がいるとは思わなかったのだろう。骸骨戦士の予期せぬ豹変に、彼らは軽くパニックに陥っていた。
「くっ!」
 たまらず、七面鳥獣人が突然変異した骸骨戦士に向かって剣を振り上げた瞬間、
「ぬぐぉああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」
 ドガシャアアァァッ
 開いた扉からマイルズの一撃をまともに受け、部屋の隅まで吹っ飛ばされる。
 ズガアアアアァァァァァァァァァーーーン
 その勢いで壁をぶち破った七面鳥は、そのまま動かなくなる。
「ををっ!!」
 さらに、マイルズの雄叫びで足がすくんだところに、
「はあっ!」
 ディオルが剣を走らせ、虎男二匹をあっさりと斬り伏せる。
「ムルハレモンドンマカベイルラマラマソーレダルマ……」
 頭に二本の蝋燭を巻きつけてトランス状態のラティーナが、床に描いた紋様に杭を打ちつけながら、意味不明の呪詛を紡ぐ。
『キエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェーーーーーーーッ』
 ラティーナの術によって拠り所を失った動く鎧と悪霊の群れが、耳につんざく音を発しながら虚空に消え去った。
 太古に行われていた精霊による破邪である。現在これを知る者は数少ない。
 ……ちなみに、隣でディオルの肉がボトボト落ちている。
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 だが、それが逆に獣人の恐怖を生んだ。
「スキありっ!!」
 ザシュッ
「があああぁぁぁっ」
 獣人の動きが止まった瞬間を逃さなかったディオルが、がら空きのわき腹を見事にとらえた。
 だが、その勢いで、脆くなっていた腕の骨が千切れた。
「スキありはそっちだよ!」
 腕がなくなったディオルの顔面に、千載一遇のチャンスとばかりに、サーベルタイガーの獣人が棍棒を叩きつけた。
 グシャアァァァ……
 ディオルの頭から緑色の脳しょうが飛び散る。
 しかし、
「今、何かしたか?」
 それ以上期待されるようなことは起こらなかった、
「バ、バカな!!」
 常識はずれの生命力を持ったディオルの飛び出た眼球に視線を浴びせられ、サーベルタイガー男が恐怖の声を上げる。
 そこへ、
 ドゴオォォォォォォォォォン
 マイルズの上段回し蹴りがクリティカルヒットし、サーベルタイガーは自らの体で天井を貫いた。

 大灯台の最上階。
 中心に設けられた巨大な竈【かまど】には絶望の炎が静かに燃え上り、夜の帳が下りた空を照らして、いや、さらに漆黒に染め上げている。
「チッ、こざかしい奴らだ」
 全身を赤い甲冑で覆った男が、ディオルたちの戦いぶりを観戦して、面白くなさそうに言った。
「あまりそう熱くなるな」
 闇を想起させるダーク・ブルーの液体を喉の奥に流し込みながら、黒いマントの男がそう諭す。
「飲むか?」
「いや、いい。酒は苦手だ」
 甲冑の男が黒マントの男が差し出した杯を手で制する。
「だが、この調子だと、おそらくヤツらはここまで辿り着くだろう」
 先ほどまで所在なげに夜空を眺めていた白虎が、その巨体を二人の方へと向ける。
「そうだな」
「そして、そこまでだ」
 階段を早足で上るディオルたちを見ながら、三人は彼らをどうやって苦しめるかについて談笑していた。










 結構書き上げるのが早かった(内容が伴っているかどうかは別にして)第五話です。
 五回目にして初めて戦闘シーンを書きました。正義の味方なのに、ディオルたちの戦い方がそこはかとなく邪悪なのは何故でしょう? それにしても、一体ディオルはいつの間に剣を持っていたんだ?
 ちなみに、マリウスって何者?と疑問の方、SP2巻49ページを参照して下さい。

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23444あ。今回一番だ〜〜リナ&キャナ E-mail 2002/11/23 20:58:38
記事番号23426へのコメント

こんばんはです〜〜〜〜



>「ぬああぁぁぁっ! こんなことになると分かっていたら、海の守り神を潰すんじゃなかったああああぁぁぁ!!」
・・・をーい・・・
魔族の王・・・ですよね〜?


>「うぅむ、風がしみるな」
> 海の香りを運ぶ汐風に、キノコからわずかに露出した皮膚……と言うより筋肉に塩をすりこまれ、ディオルが全身をかきむしる。
・・・泳いで来たら〜?(なんか冷静です)


>「この船の持ち主は……マリウスって人だ」
なぜ!?
なぜこんなどマイナーなキャラなんですか!?
せめてラドック・・・はズーマだから除外として。
アベル・・・はいくらなんでもかわいそうだし・・・
・・・(考えている)
・・・ははは・・・スレの商人って、結構マイナーばっかりですね・・・


>「なんという汚らわしい輝きだ!」
> 偉大なる海の平穏を祈った先人の思いに対するこの上もない侮辱に、ディオルが怒りに燃える。
> …………アンタの体と同じ色ですが。
ナイスです!!!


>「ラティーナ、敵は?」
>「くくくくっ……。動く鎧【リビング・メイル】六体、悪霊【ゴースト】二十三匹、骸骨戦士【スケルトン】八匹、獣人【ライカンスロープ】は虎系統が五匹と鳥系統が七匹です。この扉の向こうで待ち構えています」
> ラティーナが扉に手をあてて、大灯台の内部を透視する。
・・・えっと・・・
原作の貴方は、オカルト好きな盗賊団の一員だったのでは・・・
この話での、一番の出世頭かも・・・


> ディオルが剣を走らせ、虎男二匹をあっさりと斬り伏せる。
ディオルは魔導師・・・合成獣クリエイター・・・(口から魂が出ている)


>「ムルハレモンドンマカベイルラマラマソーレダルマ……」
真剣に、これの解読をやりましたが・・・
あたしには出来ません・・・クイズ大好きなのに・・・


> ……ちなみに、隣でディオルの肉がボトボト落ちている。
をい・・・


> 五回目にして初めて戦闘シーンを書きました。正義の味方なのに、ディオルたちの戦い方がそこはかとなく邪悪なのは何故でしょう? それにしても、一体ディオルはいつの間に剣を持っていたんだ?
邪悪・・・確かに・・・


では、失礼いたします〜〜〜


P.S
珍しく、レスで一番が取れて喜んでたり。

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23517あ。もうすぐ沈んじゃう〜〜Dirac E-mail URL2002/11/28 19:09:22
記事番号23444へのコメント

 光速の感想、ありがとうございます。

>>「この船の持ち主は……マリウスって人だ」
>なぜ!?
>なぜこんなどマイナーなキャラなんですか!?
>せめてラドック・・・はズーマだから除外として。
>アベル・・・はいくらなんでもかわいそうだし・・・
>・・・(考えている)
>・・・ははは・・・スレの商人って、結構マイナーばっかりですね・・・

 実はマリウスという名前は仮名であって、この商人の正体は××なのです。
 ラドックというのは惜しいです。

>> ラティーナが扉に手をあてて、大灯台の内部を透視する。
>・・・えっと・・・
>原作の貴方は、オカルト好きな盗賊団の一員だったのでは・・・
>この話での、一番の出世頭かも・・・

 う〜ん。どーでしょうかね。
 予定では、アリーナ役もドえらい人ですし、ロザリー役も問題が多々ありますし、ルーシア役はもはや犯罪……。
 個人的には、デスピサロ最終形態役が最も飛躍したキャラになるのではと思います。(←先の長い話)

>>「ムルハレモンドンマカベイルラマラマソーレダルマ……」
>真剣に、これの解読をやりましたが・・・
>あたしには出来ません・・・クイズ大好きなのに・・・

 この文字の羅列には何の法則性もありません。
 なので、わたしにも解読不能です。

>> 五回目にして初めて戦闘シーンを書きました。正義の味方なのに、ディオルたちの戦い方がそこはかとなく邪悪なのは何故でしょう? それにしても、一体ディオルはいつの間に剣を持っていたんだ?
>邪悪・・・確かに・・・

 次回の戦闘もヤバイです。決して食前食後の服用はしないで下さい。
 そのうち、バイ○ハザードを超えるかも……。

>では、失礼いたします〜〜〜

 それでは。

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23446危うく見逃すとこでしたエモーション E-mail 2002/11/23 21:29:02
記事番号23426へのコメント

5話目に気づかず、プラウザ閉じるところでした。危ない、危ない。

> 山奥の村での農婦との忌まわしき死闘は熾烈を極め、生還したはいいが、何故か魔法が封じられ、アジトに瞬間移動できなくなってしまった。
……ショックが強かったんですね……恐るべし、お婆様集団!!

>「サ、サメだああぁぁぁぁぁっ!」
> ガウリイの絶叫も、反響するものが何一つない大海原のド真ん中では、全く響くことはなかった。
……魔族の王なのに……(TT)この程度でどうかなるとは思いませんが。

塔の中の戦い……勇者がゾンビだと、躍動感や危機感にドキドキバクバクするより、
敵が何だか哀れに見えてくる……(滝汗)飛び散るのが血じゃなくて、死体の
妙な汁だったり、脳しょうだったり、しかもダメージになってない。
某TRPGリプレイ5巻のアンフレッシュ・ゴーレムを連想しました。
戦うのやだなあ……こーゆーの……。
塔のボスキャラは誰か、楽しみです。

では、続きを楽しみにしてます。

追伸
長編への暖かい感想のお言葉、ありがとうございましたm(__)m

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23519危うくレス仕損じるところでしたDirac E-mail URL2002/11/28 19:32:47
記事番号23446へのコメント

 もうこのツリーが沈んでいるのでは思い、第六話をアップしないうちに来てみましたが、やはり沈殿しかかっていました。

>5話目に気づかず、プラウザ閉じるところでした。危ない、危ない。
                  ↓
>塔の中の戦い……勇者がゾンビだと、躍動感や危機感にドキドキバクバクするより、
>敵が何だか哀れに見えてくる……(滝汗)飛び散るのが血じゃなくて、死体の
>妙な汁だったり、脳しょうだったり、しかもダメージになってない。
>某TRPGリプレイ5巻のアンフレッシュ・ゴーレムを連想しました。
>戦うのやだなあ……こーゆーの……。

 見逃した方が幸せだったかもしれませんよ。こんな展開ですから……。
 このままどだと、ディオルの攻撃がモンスター化していきそうな気がします。毒の息、焼けつく息、舐め回し、猛毒の霧、酸液の唾……。(食後でしたらごめんなさい)
 
>塔のボスキャラは誰か、楽しみです。

 灯台タイガーは虎らしく、炎の戦士は炎らしくなっていて、わりと普通です。
 ちなみに、次回はなんとメインキャラが新たに二人も登場するという、とても豪華な(それが普通)話になっています。

>では、続きを楽しみにしてます。

 ただいま苦戦中です。主要部分は書き終わっているのですが、それらを接続するのに四苦八苦しております。
 それでは。

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