◆−大きな樹 第1話(学園長編です〜)−リナ&キャナ (2002/8/14 12:25:53) No.21408
 ┣大きな樹 第2話−リナ&キャナ (2002/8/15 11:23:10) No.21418
 ┣大きな樹 第3話−リナ&キャナ (2002/8/15 21:59:29) No.21431
 ┣大きな樹 第4話−リナ&キャナ (2002/8/16 17:10:31) No.21439
 ┣大きな樹 幕間1−リナ&キャナ (2002/8/16 17:11:21) No.21440
 ┗大きな樹 第5話−リナ&キャナ (2002/8/16 21:18:22) No.21441


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21408大きな樹 第1話(学園長編です〜)リナ&キャナ E-mail 2002/8/14 12:25:53


 1のほうではお久しぶりです。
 え〜、このたび、スレのえせ学園長編をやらせていただくことになりました。
 なぜ『えせ』なのかは、そのうち明らかになるでしょう(をい)。というか、すでに出来上がっていて、後は打ち込むだけなんですけど・・・長いのでめんどくさい・・・(待てい)
 ちなみに、『ぷれみあむあざーず』は・・・色々あってですね・・・はい・・・
 これが一段楽したら上げます。はい。
 
 では、一応設定紹介です。
 ちなみに、一応ガウリナ・ゼルアメ・ルクミリです。男性陣がかなり壊れ気味です(笑)


 澄雫高校・・・聖流雲(セイルーン)グループの設立した私立高校。生徒の8割が1人暮らしだったりするほど、全国色々なところから生徒が集まってくる。特に、ブラスラケッツ部の強さは有名。『国語』とか『数学』とか言うのと同じノリで『近接戦闘術』だの『精霊魔術』だのといった授業がある。ただし、そのあたりは選択性で、自分が受けたい授業を選んでいく。


 リナ:2年C組。
    普段の行動は原作どおりの明るく元気な彼女だが、シリアスパートになるとぜんぜん違いすぎ。ってか別人(笑)
    学年トップクラスの優等生だが、その裏には姉のプレッシャーがあったり・・・
    ブラスラケッツ部所属(ってか、メンバー全員そうだけど)

 ガウリイ:体育&剣術の新米教師。
      多分、くらげな部分は少ないと思います。それよりも、リナ一直線っぽい(男性陣みんな一直線?)
      新米なので、色々パシリにあったり・・・(涙)
      ブラスラケッツ部顧問。

 ゼル:3年D組。
    結構まじめなふりして、やっぱり壊れてます(所詮あたしだ・・・)
    性格正反対なのにルークと仲が良いのが謎(いや、この2人組んで書くの面白くって)
    ブラスラケッツ部部長。

 アメリア:1年A組。
      性格は原作のほうが好きなんだけど、どっちかって言うとアニメよりっぽいな・・・
      聖流雲グループのお嬢様けど、それを嫌っています。
      ブラスラケッツ部唯一の1年生。

 ゼロス:謎の多い化学教師(生物にしようかと思ったけど、あたしが生物取ってないんでやめた)
     とにかく謎な人です。しかも結構きついこと言います。
     数年前に転任してきて以来女子生徒から大人気ですが、それをニコニコとあしらっていたり。
     レギュラー陣で唯一ブラスラケッツ部の関係者じゃないです。

 ルーク:3年E組。
     ミリーナラブラブなのは相変わらず。リナとの口喧嘩も絶えませんが・・・実は・・・
     ギャグもシリアスも不幸です・・・(作者がルークファンだから♪)(をい)
     ブラスラケッツ部副部長。     

 ミリーナ:2年C組(平たく言えば、リナと同じ)。
      多分、メンバーで一番原作に近いです(とか言ってると壊れるんだよな)
      校内ではクールビューティーで通っており、男子生徒から大人気(で、ルークが不機嫌になる)
      やっぱりブラスラケッツ部。


 一応、分からない方にブラスラケッツの説明を。
 NEXTにでてきたスポーツ(というか格闘技)でして、テニスコートのように男女ペアで向き合い、魔力ラケットに気合を入れて打ち合います。んで、相手を倒したら勝ち、と。 
 ちなみに、高校生ルールは片方が気絶した時点で負けですが、大人になると両者気絶まで打ち合います。

 では、お暇でしたらどうぞお読みください〜
 ちなみに,1話はシリアスほとんど抜きの完全ギャグですが、2羽後半からほとんど違う話になります(をい)

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  大きな樹第1話   背水の陣!!?リナのテスト大作戦!!



 ここは、私立澄零高校。
 剣術や魔術の授業が存在することを除けば、ごく普通の学校であ・・・
「なーーーーーーーーーーーーーーーんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーなーーーーーーーーーーーーーーーーーーのーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????????」
 ・・・謎の奇声も聞こえるが、ひたすら無視するとして・・・
「あたしのお昼をよくも!!
 火炎球!!!!!」
 どっか〜〜ん
 ・・・爆発が聞こえたりするが、何も聞かなかったこととして、普通の高校なんである。
 信じてもらえないかもしれないが、これが日常茶飯事だなどというとことさら疑わしいとは思うが、とにかく普通だといったら普通なのである。
 衛星軌道上からの空爆とかがないだけ、姉妹校の霧透翔(ロスト)高校よりましなんである。
 たとえ、お昼のパンを買いに言ったらすでに売り切れていたからといって、火炎球投げる少女がいたとしても、それはここの基準で言えば普通なんである。
 ・・・信じてぷりーず。


「・・・で?
 一体、どうされるおつもりですか?」
 ここは反省室。
 火炎球騒ぎのあと、その犯人であるリナ=インバースはお説教を食らっていた。
 説教しているのは澄零高校切手の謎教師、一応化学矢のゼロス先生である。最もリナは、彼のことが苦手だったりする。裏で何を考えているか分からない・・・というかむしろ絶対何かやっている、と思っている体(おそらく、乙女の勘というやつだろう)
「そりゃあ、周りの人が巻き込まれるのは日常茶飯事ですし、いくらでも治癒の使い手ぐらいいますよ。売店の一部も、後で僕が特製治癒ブースター(物質に治癒をかけて壊れた物を直す謎の薬品らしい)で直しておきますが・・・
 さすがに、3年生の校外模試の用紙を灰にしたのは・・・
 そうなんである。
 たまたま、売店の近くを通っていた車の中に入っていたのである。さっきまで3年生が受けていた模試の解答用紙たちが。
 ちなみに、この澄零高校では、売店での争いが激しい。そのため、売店は他の後者とは少しはなれたところに立っている。さらに、職員室は反対側の端にあるため、本来はこーゆーことは起こらないはずなのだが。
「反省してます・・・」
 床に正座させられて、涙ながらにうつむいているリナ。
「まあ、きちんと反省しているみたいですし、今回のことは水に流してあげても良いですが・・・
 その代わりに、条件を2つ飲んでもらいましょう」
「条件?」
「1つ。
 今日から1週間、ラケットを握ってはいけません。球拾いです」
「冗談じゃないわよ!!
 再来週は大会なのよ!!」
 彼女はブラスラケッツ部である。
 だが、ゼロスは顔色一つ変えずに続ける。
「2つ。
 10日後に始まる中間テスト。全教科−50点です」
「ますます冗談じゃないわよ!!
 あたしがどんなにがんばって満点とっても、50点にしかならないってこと!!!??
 それに・・・それじゃあ、最悪でも20点しか間違えれないじゃない!!」
 説明しよう。
 澄零高校では、テストでも1強化でも30点をきると、部活停止を食らってしまうのである。
「本来ならば、停学処分など来てもおかしくないんですよ?
 それを、わざわざこの僕が処分を軽くしてあげているというのに」
「う・・・・・」
 リナの頭に、家(彼女は1人暮らし)で待っている姉の顔が浮かび・・・
「・・・わ・・・
 わかったわよ・・・」
 最も、−50点されたテスト結果がいえに送り届けられるのだから、末路は同じ気がするが。
「あ、後もう1つ。
 当然ですけど、3年生の皆さんに恨まれるのは覚悟してくださいね」


「おめえかよ犯人は!!!!」
「だから・・・さっきから謝ってるじゃないの・・・」
「謝って済む問題じゃねえ!!」
「そうですよ!!
 努力を無にしてしまったんですから、謝ったくらいじゃ許されませんよ!!」
 放課後。
 ブラスラケッツ部(男女合同)の皆が練習を始めたころになって、やっとリナは正直に白状した。
 んで、その言葉にキレたのがルーク。あっさり同調したのがアメリア。
 しかし、上下差のない、なかなかアットホームな部活である(そうか?)
「責任取れ責任!!
 魔術理論の問題でも解いてみろよ!!」
「できる訳ないでしょう!!学年が違うのに!!」
 それ以降周りには取り合わず、ぶちぶちと球拾いをはじめるリナ。
 まだ文句は良い足りないようではあるが、とりあえず戻って行く2人。
「まったく・・・
 ちゃんと反省して、こうしてまじめに球拾いやってるじゃないの・・・」
 独り言を言うリナ。
 と。その後ろから影が現れた。
「本当にまじめにやっているのか?」
 部長のゼルガディスである。
 彼は、後ろからリナの手にあるメモをひょいと奪い取る。
「あっ!それは!」
「古語単語帳・・・
 真面目にやる気があるのか!!」
「だって・・・
 勉強しないと、部活停止にさせられるし・・・」
「自業自得だ!!」
 そういい捨てると、彼は『没収だ』といって単語帳を持ったまま行ってしまった。普段は冷静な彼がここまで起こるのは、少なくともリナはみたことがない。
 さっきは黙っていたが、やはりテストのことに関してはかなり起こっているらしい。
「はあ・・・
 本当、どうしよう・・・」
 ため息をひとつ。しかし、そのため息で事態が解決するわけではなく。
 お日様はどんどこ山に沈んでいくのであった。


 で。練習も終わって。
 顧問のガウリイ先生がやってきた。
「えっと・・・
 本当なら、もうすぐテスト休みに入るはずなんだが。ブラスラケッツ部はきっちり前日まで練習するからな」
「何でですか!!?」
 入部間もないアメリアが、抗議の声を上げる。
「当然だろう?
 何しろ、今月の終わりは大会じゃないか。
 俺は知らないけど、去年までも毎年そうだったんだろう?」
「だからといって、生徒に勉強する機会を与えないんですか!!?
 いえ、教師という神聖な立場にあるからこそ・・・
 ごぢん。
 部長が、ラケットの角(結構痛い)(っ手かとがってる)でぶっ叩いた。アメリアは血をだくだく流しながら気絶。
「アメリア・・・生きてるか・・・?
 まあいいや。じゃあ、そういうことだから」
 そういうと、ガウリイは笑顔で帰っていった。
 ミリーナが無言のままアメリアを医務室(ちなみに担当はフィリア先生)に連れて行き、それ以外のものは片づけをはじめる。もっとも、連れて行くとは言っても、彼女の足を持って引きずっているだけだが。まあ、超合金娘はこのくらいじゃ死にはしない。
「は・・・
 ははは・・・
 お休みなし・・・
 ははははははは・・・」
 後には、謎の笑い声を上げるリナが1人残るのみだった。



 リナに訪れたのは、地獄の日々だった。
 毎日夜8時まで練習して、それから帰って勉強。1日の勉強時間は3時間。学校でも、授業中に寝るわけにも行かずに必死に勉強。
 その生気のなさは、ほとんどバイ○ハザー○(注:作者はやってない)のゾンビさんにタメを張れる。
 本来優等生の彼女は、特別な勉強をしなくても、学年10位以内には入れる実力はあるのだ。しかし、今回の場合は少しのミスも許されない。
 そのプレッシャーは、元来真面目な彼女を追い詰めていた。




 テスト前日。
 ブラスラケッツ部は、前日ぎりぎりまで練習がある。
「えっと・・・かそうかなまああてにすんな・・・だから、希硫酸がアルミニウムを溶かして・・・あ・・・濃硫酸はだめだから・・・
 コートの端っこで、球拾いをしながら1人念仏のように化学(おそらく、問題集の問題を思い出しながら解いているのだろう)なんぞつぶやき続けているのは、もちろんリナだった。
「だ・・・
 大丈夫ですか・・・?」
 とてとてと寄ってきたアメリアだが、すぐにゼルから怒られる。
「全部自分が悪いんだ。
 自分の練習に戻るんだな」
「はーい・・・・」


 日がほとんど沈んだころ。
 ガウリイがコートにやってきた。
「よう。ちゃんとやっているか?」
『そ・・・
 それが・・・』
 皆が言葉を濁す。
「どうしたんだ?」
 部員たちは、お互いに目で押し付け合いをする。結局根負けしたルークが親指で後ろをさした。
 それではじめて気がついたのか、ガウリイは奥で1人うずくまっているリナのほうに視線を向ける。
「ずっとあの調子なのか?」
 一応、深くうなづく。
 ガウリイは、しょうがない、とばかりにため息をついていった。
「わかった。
 今日はもう終わりにしよう。
 明日からのテスト、きっちりがんばって来いよ」
「あの・・・
 リナさんは・・・?」
「俺が説得してくるよ」
 コートの隅っこまで行ってリナの肩を叩いたガウリイが見たものは・・・
 あまりにおどろおどろしい、彼女の表情だった・・・
「あ・・・あのな・・・
 リナ・・・?」
「何であたしばっかりこんな目にあわなきゃいけないの?
 売店の爆破くらい、いつものことでしょう?
 なのに、なのにたまたま、あたしがやったときだけ・・・
 何であたしがやったときだけ、都合よく通ってたのよガウリイ!!」
 そう。
 実は、模試の養子を乗せた車の運転手はガウリイだったりした。
 いつもは業者が来るのだが、来る途中に交通事故にあってしまったので(をい)、とりあえず手の空いたガウリイが運送屋まで運んでいくことになったのだ(パシリとも言う)
「いや・・・
 それは、単なる偶然・・・」
 しかし、すでに精神状態がピークに達しているリナには、そういう理屈は通用しない。

  黄昏よりも昏きもの
  血の流れより紅きもの・・・

「うわわわわわ!!!!
 やめろ!!リナ!!竜破斬は!!!」
 あわてて口を押さえようとするガウリイ。だが、なぜか急に俊敏になったリナは、その攻撃(?)をひょいとかわす。

  時の流れに埋もれし
  偉大なる汝の名において
  我ここに 闇に誓わん

 2人の騒ぎは、コートの反対側までは聞こえては来なかったが。それでも、ガウリイの叫んだ『竜破斬』の一言は、全員(っつっても4人)(実は、部員はレギュラー人だけ。後は、幽霊マネージャーのシルフィールがいるだけ)の耳に届いていた。
「んなっ・・・
 こんなところでそんなもん使ったら、コートが吹っ飛ぶってわかんねえのかよ!!!??」
「下手したら、学校ごとですよ!!」
「騒ぐのは後だ。
 とりあえず今は、あいつを止めるぞ」
 そういって、ゼルが走り出す。
 それに続いてアメリア・ルーク・ラケットと続いて・・・
 ・・・
 ・・・・・・ラケット?
 ????????
 思わず3人が振り返ると、ミリーナが渾身の力でリナのどたまに向かってラケットを投げつけていた。

  我と汝が力持て
  等しく滅びを与えむぎゅ

 もちろん、むぎゅなんという呪文は存在しない。
 リナの顔面に、ラケットが直撃したのである。
 こうして、ブラスラケッツ部コートの平和(?)は守られた。


 だが、解決していない問題もある。
 もちろん、リナの中間テストである。
 リナが眼を覚ましたのは、アパートの自分の部屋でのことだった。
 後にアメリアが言っていたことには、ガウリイが運んでくれたらしい。
 ただし、朝。
「べ・・・
 勉強してなひ・・・」
 涙を流してももう遅い。
 とりあえず朝ごはんを食べて、学校へ行くしかない。
「逝ってきます・・・」
 誰もいない部屋に向かって、リナはそうとう精神壊れまくりのセリフをつぶやいた。


「おはよう」
「お・・・
 おはよう・・・」
 学校の下足場。
 ミリーナに声をかけられても、生返事しか返せないリナ。
 もっとも、ミリーナのほうも昨日、自分が気絶させたなど臆面も出さない。
 と。
 リナが何気なく空けた自分の下足箱に、何か小さなメモが入っている。
「ラブレターではなさそうね」
 横でポツリとミリーナ。
 それを聞き流し、リナはメモを読み上げる。
「えーっと、なになに・・・
 『リナ=インバース様え
  ご安必ください。テストの点教は、−50点にはなっていません。
  がんばってください。
  あなたのファンより』・・・だって」
「でも・・・
 最初の『え』は明らかに『へ』の間違えじゃないかしら」
「しかも、『心』が『必』、『数』が『教』になってるし・・・」
『・・・』
 2人で覗き込んで、頭を抱える。
「信用しないほうが良いわね・・・」
 そういうと、リナはふりゃふりゃと廊下を歩いていった。



 そして、運命の日。
 澄零高校では、テスト明けの3日間は休み(ブラスラケッツ部も、投稿禁止日なのでさすがに休み)で、その次の日に全員分の成績が廊下に張り出されるのである。
 リナは、正直言って学校に行きたくなかった。
 普段彼女は優等生なのである。それなのに、下位の方ではらはらしながら見なくてはならないなどということは、彼女にとってプライドの崩壊を意味する。
 それでも行かざるをえなかった。

 で、学校。
 無理やり自分の足を向かわせてたどり着いた学校でリナを待っていたのは、焦れた表情のアメリアだった。
「リナさん!!」
「アメリア・・・
 何で朝からそんなにテンション高いのよ・・・」
「そんなことより、こっちこっち!!」
「な・・・なに・・・?」
 アメリアに引っ張っていかれた先は、2年生の成績順位表。
 思わず眼をそらす。
 だが。
「ほら!!あそこ!!」
 そこには、リナを驚かせるものが2つ、並んで貼ってあった。
 1つは、『1位 リナ=インバース』の文字。
 そしてもう1つは、顔面に縦にあざの入ったりなの写真の引き伸ばしコピーであった。



「ガウリイの字だな」
 放課後。尋ねたいことは山ほどあったが、とりあえず先日のメモを皆に聞いてみる。
 すると、ゼルがあっさりとそう言い切ったのだ。
「なんでわかるんですか!?」
「この間、大会のメンバー表を受け取りに行ったときに見て覚えた。
 こんな癖字、1度見たら忘れようがない。
 何より、小学生でもやらないような誤字をやる人間は、この学校には1人しかいないさ」
「なるほど・・・」
 どちらかというと後者の理由に納得したのか、アメリアが深くうなづいた。
「でも・・・
 何でわざわざあたしの点数をマイナスにしないなんてことを・・・?」
「お前が落ち込んでるのを見てると、な」
 考え込むリナの後ろから、ガウリイが声をかけた。
「!!?」
「これでも大変だったんだぜ。
 ゼロスに必死に頼み込んで、結局その交換条件が人体実験だ。
 まったく、何でこんなことしたんだか」
「な・・・
 なんで・・・?
 なんでわざわざそんなことを・・・」
 だが、ガウリイが口を開く前にアメリアが制した。
「まあまあ。
 何はともあれ、良かったじゃないですか」
「そりゃそうだけど・・・」
 ごまかしながらも、顔が少々紅くなっているリナだったりした。


「それしても、許せないのはあの写真よ写真。
 一体、誰があんなことを・・・」
「さあな。
 さ、練習始めようぜ」
 疑問を口にするリナの横を、とっととルークが通っていく。
 と。
 彼のズボンのポケットから、何かが落ちた。
「あら・・・?」
 ミリーナが拾い上げたそれは。
 お約束どおりというかなんと言うか。引き伸ばす前の、リナの写真であった。
 どうやら、そのあざはテストの前日、ミリーナの投げたラケットでついたものらしい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ジト眼でリナににらまれ、ルークは数歩後ずさった。
「いや・・・
 その・・・・・・
 す・・・すまねえ・・・」
 だが。
「よくもやったわね!!!
 火炎球!!!!」
 どっこ〜〜〜ん
 夕方のコートに、花火が上がった。



 しばらくして。
 学校新聞にて、『生徒と教師の禁断の愛!!?』という見出しでリナとガウリイの写真が掲載された。
 リナが見た数分後、3年E組にてもう1度花火があがったことは言うまでもない。
 主犯がすぐ見つかったこともあり、いたずらということでガウリイも奇跡的にお咎め無しで住んだらしい。


 そんな楽しそうな(?)彼女たちを、『誰か』が見つめていた。
「まあ・・・
 今だけの、つかの間の休日を精一杯楽しんでおくことですね・・・」


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 何とか1話打ち込み完了しました〜〜〜
 うーん・・・この話、確か全部で10話くらいあったはず・・・どん位かかるんだろう・・・まあ、夏休み中には何とか上げるつもりですが。
 ちなみに・・・ラケットのところ、改めて打ち込みなおしてて自分でツッコミました。『呪文を使えよ・・・』
 今回は、Yは図書館に行っているので平和だし・・・
Y:甘〜い!!
  姉ちゃんが新作を投稿するとき、私は現れる!!
リ:勉強してこんかい!!
Y:やかましい!!
  受験生なのに投稿小説やってる姉ちゃんに言われたくないわ!!
リ:う・・・
  それを言われると痛い・・・
Y:で?
  このシリーズ、本当に夏休み中に終わるの?
リ:うーんと・・・
  夏休みの課外&山車の準備が再開するまでに、できるだけ準備はしておきたいけど・・・
Y:いつから?
リ:17日(きっぱり)
Y:をい!!
  本気で間に合うんかい・・・(頭を抱える)
リ:うーん・・・
  とりあえず、有言実行は行いたい・・・と、かすかに思ってる・・・
Y:かすかだし・・・
  まあいいや。
  とりあえず、こんな話を読んでくださってありがとうございました♪
  明日にでも、2・3話当たり投稿すると思います♪
  でわでわ〜

リ:あ!!
  Yにラストのまとめとられた!!
  ・・・まあ良いか。今回は無事だし。あたし。

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21418大きな樹 第2話リナ&キャナ E-mail 2002/8/15 11:23:10
記事番号21408へのコメント
 なんかやってきました。第2話です。
 結構、皆さんピンチっぽいです・・・
 ではでは。お暇でしたらどうぞお読みください。

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 ぽーん、ぽーん、ぽーん
 空に火炎球の花火が上がる。今日は、ブラスラケッツの地区予選大会。
 しかし・・・高校の大会でここまではしゃぐとは、よっぽど娯楽に飢えているのだろうか?
 そんな中、浮かない顔をしているのが1人。
 正義の使者ことアメリアである。
 彼女は、リナの大会出場停止のおかげで、繰上げでレギュラーに入ってしまったのである。だから、多少なりとも引け目を感じているのだ。
 ちなみにブラスラケッツの大会は、男女ペアで各校2組まで出場可。
 この大会が、3年最後の大会である。もっとも、男性部員は3年2人のみ。下手をすれば、2年であるリナ自身ですら最後のチャンスかもしれないのであった。
   でも・・・
   そのおかげで、ゼルガディスさんと一緒にプレイできるんですから・・・
   リナさんには悪いですが、ここは楽しませていただきます。
 ・・・結構喜んでいたりもするようである・・・


 部員が少ない以上、当然団体戦には出られない(最低10人は必要だからだ)。ついでに言えば、どんなに怪我をしても最終的には呪文で回復させられるため、控えも存在しない。
 だが、あんな環境で生活している面々。根性と気合だけは、どこにも負けないのである。ということで、澄零高校のブラスラケッツ部といえば、全国レベルの柔・剣道選手が10人がかりでもかなわない、といわれていたりする。
 まあ・・・あれだけ剣術&魔術の腕がすさまじいのだから、ラケットを使わなくても武闘家なんぞ、火炎球あたりを一発ぶちかませば片つく気もしないが・・・

『エイシス選手、戦闘続行不可能!!
 ルーク・ミリーナペアの勝利!!』
 わぁぁぁぁぁ!!!!
 脇腹にまともにボールが当たり、気絶した相手選手。
 審判の声が響き、澄零高校の応援団(意外に多い。血が騒ぐのだろうか?)が歓声を上げた。
「お疲れ」
 ガウリイが声をかける。彼の後ろから現れたマネージャーのシルフィールも、笑顔でタオルを渡す。
「お、サンキュー」
 青いヘルメット(さすがに顔面にぶつかると生死にかかわる、ということで、高校の大会では必着である。それでも死にかける人間は続出しているわけだが)をはずしながら、それを受け取るルーク。
「楽勝だったぜ。
 あんなの、俺とミリーナのラブラブペアの前じゃ・・・」
「誰と誰がラブラブなんですか?」
 いつもどおりの台詞。いつもどおり一蹴されていじける。
 どっちのパターンが分かりやすいんだか。
 ただ・・・何かが違う。
「でも、さすがにちょっとやりすぎたんじゃない?」
「何でだ?」
「だって・・・あれ・・・」
 リナが指をさした方向に、視線を向ける一同。
 その先には・・・先ほど倒れた相手選手が、大会専属の魔法医から復活をかけられているところで・・・
「まあ・・・
 本当に死んでしまうよりはましだと思うが・・・」
 やや乾いた声で、ゼルがぽつりと言う。
 だが、それを聞いたリナはきっぱりと否定した。
「甘いわよ。
 雷是炒(ライゼール)高校って言えば、ちょっと方が当たっただけで病院粋にさせられる、ってほど悪名高いところ。
 まして、復活が必要な程の怪我を負わせたって言えば・・・」
「何でそんなことに詳しいんだ・・・?」
 今度のゼルの言葉は、リナは無視を決め込んだ。
「まあまあ。過ぎたことはしょうがないさ」
「・・・そういう問題か?」
「まあ、なんにしろ・・・
 これですむとは思えんな・・・」



「みなさんひどいです・・・」
 アメリアは、一人愚痴りながら歩いていた。ブロック結晶(結局2組とも決勝へ。と大会進出も決定した)を前にして、飲み物の買出しである。
 いや・・・まあ・・・アメリアも、決勝に出るのだが・・・
『1年が買いに行くのが当たり前』
 と、(アメリア以外)全員一致で決まってしまったのだからしょうがない。
「リナさんかシルフィールさんが行けば良いのに・・・」
 両手に袋を持ってとぼとぼと歩いていく。
 その時。
 彼女の『正義ソナー(笑)』に反応があった。
 思わずあたりを見渡し・・・気が付く。
 数人の男子生徒が、女子生徒に対して殴る蹴るの暴行を与えているではないが。
「はっ!!
 あれはまさしく悪!!」
 思い込んだら一直線のアメリア。飲み物の入った袋を横において、近くの木によじ登り始める。
 ちなみに、どちらも雷是炒高校の制服を着ているのだが・・・彼女がそんなことに気が付くはずもなかった。

「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!
 悪を討てよと私を呼ぶ!!」
『だ!!
 誰だ!!!』
 木の上で口上を上げるアメリアの声を聞き、男子生徒たちはきょろきょろと辺りを見回す。
 その台詞と行動が演技がかっている事にも・・・やっぱり気づかない。
「あなたたちの悪事もここまでよ!!
 正義の使者、このアメリアが許しません!!
 とう!!」
 お約束通りの台詞を上げ。お約束どおり木から飛び降りて。
 ・・・お約束どおり、頭から墜落する。
 いつもなら、ここで何事もなかったかのように起き上がるのだが・・・
「眠り」
 いつの間にか起き上がっていた先ほどの女子生徒が、アメリアを眠りに落とした。
「ナイスだ、ウィレーネ」
「まあ、私に任せておけば、この通りよ」
 よーするに、みんな狂言だったのだが・・・
 こんなバレバレの演技に引っかかるアメリアもアメリアだ。



「大変です!!」
 アメリアが帰ってくるのが遅いので、心配して探しに行っていたシルフィールが駆け込んできた。
「どうしたんだ?」
「これを見て下さい!!」
 シルフィールが持ってきたのは、一枚のノートの切れ端。
 皆が頭を付き合わせて覗き込む。
 そこには、筆跡をごまかすためだろう、かなり角ばった字でこう書いてあった。

   今すぐ、『砂ねずみのあなぐら』の裏手に来い。
   じゃないと、あんたらのお仲間はどうなるか・・・

「飲み物の入った袋と一緒に、突然どこからか落とされたんです。
 とっさに炎の矢を放ったのですが・・・攻撃呪文は苦手で・・・」
「雷是炒高校のやつらめ・・・」
 メモを握り締め、破棄捨てるようにつぶやくゼル。
「『砂ねずみのあなぐら』ってどこだ?」
「ここから10kmくらい澄零高校のほうに行った所にある、小さなバーよ。
 かなりヤバい奴らの集会所になっているところ」
 硬い表情で言うリナ。
「なあ・・・
 なんで、そんなことを・・・?」
 ガウリイは恐る恐るたずねるが、その言葉は全員で聞き流された。
 そんな時、ミリーナはあることに気が付いた。
「!!!
 もうすぐ、ゼルガディスさんたちの決勝が!!」
 その言葉に、全員が時計を見る。そろそろ準備を始めないといけない時間だ。
「そんなことは関係ない!!
 俺はアメリアを助けに行く!!」
 きっぱりと言い切る。
 だが、それを制したのは意外なことにルークだった。
「そんなところまで行く手段があるのか?」
「そ・・・それは・・・」
「それに、せっかくの最後の大会なのに、それを不意にするってえのも、勿体ねーだろ」
「そ・・・それでも、ペアがいないと・・・」
 と。突然ガウリイが、とんでもないことを口にした。
「リナがいるじゃないか」
『!!?』
「あ、あたし!!?」
「だって、もともとはゼルとリナで組んで出る予定だっただろう?」
「そりゃそうだけど・・・
 いくらなんでも、ペアを変える訳には・・・」
「どうせヘルメットをかぶるんでしょう?」
「ミ・・・ミリーナまで・・・」
 確かに、ヘルメットをかぶれば誰が出ているのかはわからなくなるだろうが・・・
 だが、ふと何かに気が付いたかのようにガウリイが声を上げた。
「あ・・・でも・・・」
「どうしたの?」
「いや・・・
 リナとアメリアじゃ、胸の大きさが・・・」
「爆裂陣!!」
 お〜、盛大に吹っ飛んだ吹っ飛んだ。
「まあ、それは詰め物か何かで解決しますわ。
 とりあえず、ゼルガディスさんは決勝にいどんでください。
『シルフィール・・・』
 リナとゼル、異口同音だが、ニュアンスはずいぶん違う。ゼルは純粋に感謝の気持ちからの言葉だが、リナの場合は『あんたも吹っ飛ばされたいの?』というニュアンスがこもっている。
「まっ、そういうことだ。
 どうせ俺たちの試合はその後だしな。今から翔風界で飛んでいけば何とかなるさ」
「じゃあ、私も行くわ」
「ミリーナ!!
 俺を心配して・・・」
「あなた1人より、スピードが出るでしょう?」
「・・・」
 笑顔で振り返って、そのままの表情で硬直するルーク。
 その気まずい空気をシルフィールが打ち消した。
「じゃあ、そうと決まれば、早く変装を。
 多めに詰め物をしないと、アメリアさんの大きさには・・・」
「破弾撃!!」
 お〜、もう一発花火が上がった〜。



『サービスゲーム!!
 ゼルガディス、アメリアペア!!』
 試合はまさに接戦だった。
 両者、的確に相手の球を返している。無理な球をとりに行こうとせず、チャンスボールは逃がさない。
 だが、どうもゼルの調子が悪い。何か無理をしているように見える。
 そのせいかは分からないが、2人は少しずつだが打撃を受けていた。致命傷ではないが、痛みは集中力を削る最大の要因となる。
 次のサーバーはアメリア(リナ)。
 左手に球を、右手にラケットを持ったリナは、ゼルの横を通るときに囁いた。
「アメリアと一緒のほうが良かった?」
「!!?」
 電撃を受けたような表情になって振り返るゼル。
 だが、リナは彼に背を向け、黙ってサービスラインに立っていた。

 ばしゅ!!
 リナの打った球は、レミー(もう1人は彼女の兄のロッドだったりする)のあごのあたりに飛んでいく。
「甘いわね!!」
 レミーは体を半歩ほどずらすと、まるで抜刀術のような謎の動きでラケットを振りぬく。彼女の打球はなぜか、剣で切りつけたように鋭い切れ味を持っているのだが、その最大の理由はここにあるのではないだろうか。
「ゼル!!行ったわよ!!」
 リナが叫ぶ。
 体の正面にぶつかってくる球を、一歩下がって打ち返すが・・・
 ぼしゅるるるるるぅぅぅぅ・・・
 だが、残念ながらネットに当たってしまってしまった。


「ゼルガディスさん・・・
 今日は、動きが良くなっていると思ったんですが・・・」
 応援席でシルフィールがつぶやく。
 実際、今日のゼルは調子が良かった。だが、いまはいつもよりも・・・
 不安になって、隣のガウリイの顔を見る。
 彼は、かなり険しい表情をしていた。
「あの・・・」
「・・ん?」
「い・・・いえ・・・」
 ガウリイはいったんシルフィールの顔を見たがすぐに視線を戻した。
「なあ、シルフィール」
「は、はい」
「今日のリナ、いつもと違うな」
「それは、やっぱりしばらくラケットを握っていませんでしたから・・・」
「いや、そうじゃない。
 そうじゃないんだ・・・」
 その視線は、あくまでリナに固定されていた。

「どんまいどんまい」
 思わずため息をつくゼルの肩を、気楽そうにリナが叩いた。
「リナ・・・
 その・・・」
 ゼルが口を開く。
 リナは、明るい口調でこういった。
「あんたが、一番自分の力を発揮できる相手って、あたしじゃなくてアメリアでしょ?
 お見通しなのよ。
 あたしは、あくまで今回は代理。だから、『アメリアの戦い方』で戦わないとね。
 それが、パートナーの務めってものでしょ?」
「リナ・・・」
 ヘルメットのおかげで表情は見えないが、ゼルは少なからず喜んでいるようだった。
 だが。
 それを遠くから見ていたガウリイが、2人をどう見ていたかは、どちらも気づいていなかった。



 時間は少しさかのぼる。
 ルークとミリーナの2人は、まだ翔風界で空を飛んでいた。
「ところで、そのバーの場所は知っているの?」
「ああ、一応な」
「なら安心したわ」
 そのまましばらく沈黙が続き。
 ルークが遠慮がちに口を開いた。
「なあ・・・
 何で知ってるかとか、聞かないのか?
 んな柄の悪いやつらが集まってるなんてところ・・・」
「あら、自覚はあったのね」
「う・・・」
 一瞬硬直する。もとい、速度が落ちる。
「冗談よ。
 あなたが話した言って言うなら、聞いても良いわ」
「・・・」
「誰にでも言いたくないことがある、ってことくらい分かってるわ。
 あなただってそうでしょう?」
「・・・」
 ルークは、それきり何も言わずに速度を上げた。


「むふーー!!
 むぐむぐむぐ!!!」
 アメリアは、グルグルのすまき&猿ぐつわをかませられ、ほとんど芋虫状態で転がされていた。
 側には、見張りらしきガラの悪そうな(言い換えればいかにも雑魚っぽい)男が2人。
「しっかし・・・
 こんなおこちゃま、良くあんな危険なことやってられるよな・・・」
「まあ、所詮ブラスラケッツなんてスポーツやってるやつらだ。
 本場のストリートファイトってやつを知らねえよ。
 このガキも、多分今から来るやつらもな」
 ひとしきり笑った後、最初に口を開いたほうが突然言い出した。
「ところで・・・
 俺たちは、ここに来る奴らを追い払えって言われてたんだよな?」
「何言ってるんだ。当然だろう?」
「じゃあさ・・・
 この女に手を出すな、とかは言われてないんだよな・・・」
「なるほど・・・
 そういやあ、そんなことは言われてないな・・・」
「むぐーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
 さすがに身の危険を感じ、あわてだすアメリア。
『へっへっへ・・・』
 下品な笑い声を上げる雑魚×2。
 だが、その時。

 どっこーん。
「・・・さすがに、ちょっとやりすぎたんじゃねえか?
 一応、アメリア下にいるみたいだったし・・・」
「あら、ちゃんと手加減はしたわよ。
 それに、ここにいるのがリナさんだったら、何のためらいもなくやっていると思うわ」
「・・・
 否定はしねえけどよ・・・」
 さすがに汗ジトを流すルーク。
 そりゃあそうだろう。火炎球をいきなり路地の中に投げ込むなんて・・・
 ミリーナ。あんた、リナのキャラクターが感染ってないか?
「先に下りるわよ」
 いつもの淡々とした口調で、さっさと浮遊で降りていく。
 少し遅れて、ルークもついていった。

「もごもご・・・ぷはあ!!
 助かりました!!ありがとうございます!!」
 何とかアメリアの猿ぐつわ(なぜか燃えていない)をはずして。
「いきなり上から火炎球が降ってきたから、リナさんがやったのかと思ったんです。
 でも、ルークさんとミリーナさんだったんですね。ということは、お二人が戦っていたときの流れ弾・・・?」
「・・・」
 今回ばかりはジト目でミリーナを見つめルーク。思わず視線をそらす。
「これからどうするの?」
「決まっています!
 こんなことをした犯人を捕まえて、警察に届けるんです!!」
 燃え上がるアメリア。だが、ルークは珍しく冷静だった。
「そんなことをしたって、どーせ尻尾切をやられるだけだ。
 それより、さっさと帰って俺たちのしあの準備でもしよーぜ」
「なんてことを言うんですか!!」
 アメリアは、放っておけば一人でも突っ込んでいきそうな勢いだった。
 ミリーナは、『ルークらしくない』と思っていたが、黙っていた。
「私には、悪を見逃して帰るなんてできません!!」
「誰が悪だって?」
 アメリアの言葉に答えたのは、ルークでもミリーナでもなかった。
 路地の向こうから現れた、ひとつの黒い影。
「あなたですね!
 こんなことをした犯人は!!」
「おやおや、心外ですな。
 確かにあなたをここまで連れてきたのは、配下のものがそこの方々にやられたからですよ。
 ですが、命じたわけではありません。彼らの暴走です。
 もし恨みがあるのなら、それこそあなたの後ろの方々を恨んでください」
「それでも、あなたたちが悪の集団であることに変わりはないでしょう!!?」
「証拠は?
 もしなければ、逆にあなたたちが暴行罪で訴えられる、と」
「う・・・」
 さすがに言葉に詰まるアメリア。
「で?
 あんたらの要求はなんなんだ?」 
 アメリアにかわり、ルークが一歩前に出る。
「物分りの良い方ですね。
 でも・・・『あなた』ならわかってるでしょう?」
『!?』
 その場にいた者たちはいっせいに、ルークに注目した。
「・・・
 ・・・・・・
 ミリーナ。アメリアをつれて会場に戻っててくれ。
 俺も、これが終わったらすぐに行く」
「そんな!!
 ルークさん一人を残してなんて・・・」
「わかったわ」
「ミリーナさんまで!!」
 繰り返し叫ぶアメリア。
 だが、その叫びに耳を貸さず、ミリーナが言う。
「必ず戻ってきて」
「・・・約束する」
 それを聞いたミリーナは、黙ってアメリアの腕をつかむと翔風界で空を待った。



「アメリアさん!!ミリーナさん!!
 無事でしたのね!!」
「ルークはどうした!?」
 何とか戻ってきた2人は、真っ先にガウリイとシルフィールの元へと向かった。
 もちろん、戻る間アメリアはごね続けていた。だが、ミリーナは言った。
「『必ず戻る』
 彼は、そう約束したわ。
 彼が、私との約束を破れるような人だと思う?」
 と。
『それが・・・』
 ところが。2人が状況を説明しようと口を開いたその時。

「あ!!
 あそこにいるのって、澄零高校のアメリアじゃないのか!?
 相手工の応援席にいた一人が、『アメリア自身』を指差した。
「え!!?嘘だろ!?
 だって、今戦っているじゃないか・・・」
「ううん。あれはセイルーンさんよ。
 私、素顔で見たことあるもの」
「マジ?」
 ざわざわざわざわ・・・
 会場中がどよめきだす。
「うそ・・・」
 放心状態で辺りを見回すリナ。
「君、本当かね?
 ヘルメットを取りなさい」
 審判が言う。
「・・・」
 無言のまま、ヘルメットを取るリナ。
 もちろんそこから出てきたのは、栗色の髪をしたリナで。

 会場中のものが悟った。
 この勝負の勝敗が、たった今決まったことを。

 観客席のものは、誰も気が付かなかった。
 最初に声をあげた生徒に、見覚えがなかったことに。
 まさか、自分たちの学校の制服を着た、別の学校の生徒だなどとは、露ほども思っていなかった。



「遅すぎますよ・・・」
 もうすぐ、ルークとミリーナの試合が始まる。だが、ルークは帰ってこない。
 リナ・アメリア・ゼル、それから顧問であるガウリイの4人は、大会委員会のほうに呼び出されている。
 もっとも、真実は話していない。ミリーナがとめたのだ。
 結局、この場に残っているのはミリーナとシルフィール。
「本当に戻ってくるのでしょうか?」
「戻ってくるわ。
 絶対に」
 ミリーナはふと空を見上げ・・・
「ルーク!!!!」
 空から降りてきたのは、確かにルークの姿だった。
 だが・・・
 全身、見るも無残なほどの傷を負っていた。
 鉄パイプのようなもので殴られたらしいあざ。何かの刃物で切られた傷。呪文なのかスタンガンか何かなのか、電光で焦げたらしい皮膚。左の肩が一部消滅していて、腕はかろうじてつながっている状態。
 意識を保っていられること、ましてここまで戻ってこれたことが、奇跡のようなものだった。
「ミ・・・ミリー・・・ナ・・・
 やく・・・そくは・・・ま・・・もった・・・から・・・な・・・」
 そこまで言って、彼は気を失った。
「ルークさん!!!」
 あわててシルフィールが、治癒呪文を唱え始める。
 ミリーナは、急いで審判のところへと走って言って叫んだ。
「棄権します!!
 棄権させてください!!!」


 3年の短い、あまりにも短い夏は、こうして終わりを告げた。


 ミリーナは、彼の元へと戻りながらポツリとつぶやいた。
「あの倍の人数がいても、ルークがここまで重傷を負うことなんてないはず・・・」


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Y:姉ちゃん・・・
  これ、本当に学園もの?
リ:気にするな。
  この後、もっとダークサイトに入っていくんだから。
Y:待て・・・
  『えせ学園』にもほどがあるぞ。
リ:だってさ・・・
  『ルークを活躍させよう♪』って思って書いたら、いつの間にかこーゆーラストシーンになっちゃったもん。
Y:姉ちゃん、とことんルークファンなのね・・・(汗)
リ:いーじゃん。
Y:いや、悪いちゃ言わないけど・・・
  ってか、好きだったら不幸になるのか?
リ:うん。
  好きなキャラに活躍させる=不幸度上がる、じゃない。
Y:そうかなあ・・・?
  まあいいや。
リ&Y:(珍しく2人で)でわ、またできればお会いしましょう〜

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21431大きな樹 第3話リナ&キャナ E-mail 2002/8/15 21:59:29
記事番号21408へのコメント
 第3話です〜〜
 タイトルについては、深くは考えないでください。
 多分、書いた当時SWリプレイかアドベンチャーでも読んでいたんでしょう(持っている人しか分からないって)。


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    第3話  聞きたくない!! 地獄の旋律


 幸いルークの怪我は、アメリアとシルフィールの治癒呪文で、何とか回復した。
 だが、その理由に関しては、決して口を開こうとはしなかった。
 大会で起こった騒ぎに関しては、何とか学校側から厳重注意を受けただけですんだ。もちろん、今度何かあったら部活停止、いや、廃部も免れないかもしれないが。
 そんなこともあってか、次の日コートに来ていたのは、ゼルとアメリアの2人毛。ちなみに3年は、引退する前にコートの大掃除(血痕とか・・・)をするのが伝統なのだ。
 2人は、さすがに気まずいのか何も言わない。
 だが、それに耐えられなくなったらしいアメリアが、遠慮がちに口を開く。
「あの・・・
 私は、どうしても『悪』を見逃したくはないんです・・・
 だから、『仲間』を絶対信じたいんです・・・
 でも・・・
 私・・・どうしても・・・昨日のルークさんを・・・信じてあげられなかったんです・・・」
「・・・」
「私たち、仲間じゃないですか。
 何があったのかは分かりませんが、話してほしかったんです・・・
 自分だけで背負わないで・・・」
「・・・」
 ゼルは、何も言わなかった。・・・言えなかった。
 自分の周りに壁を作り、全てを自分の力だけで乗り越えよう、と意地を張っていた昔のことを思い出していたのだ。
 そんな彼にとって、今回のことは他人事ではなかった。
 さらに言えば、彼の代わりにアメリアを助けに行く、といってくれて。その結果あれほどの怪我を負った。
 彼は、自分に責任があるように思えてしまっていた。
「ゼルガディスさん・・・教えてください・・・
 『仲間』を信じられない私って・・・
 『悪』でしょうか・・・?」
 アメリアの言葉が、人のいないコートの上を通り過ぎて行った。



「ガウリイさん」
 コートへ行こうと準備をしていたガウリイを、謎教師ことゼロスが呼び止めた。
「つかぬ事をお伺いしますが・・・
 確か、2年C組のリナ=インバースさんの部活動は、あなたのところでしたよね?」
「ああ・・・そうだが・・・?」
「今日は活動しているはずですよね?」
「それがどうしたんだ?」
 ガウリイが不思議そうに聞き返すと、ゼロスはにっこりと笑って応えた。
「いえですね。
 先ほど、彼女が自転車で学校を出て行くのを目撃しちゃったんですよ。
 あんな不祥事を起こしたばかりなのに、何を考えてらっしゃるのでしょうね?
 ああ、それからついでに、今日の授業中ずっと眠ってらっしゃったので、顧問のほうからも注意して置いてください」

 話によれば彼女は、裏門から左へと曲がっていたらしい。
 とりあえず、車(さすがに車まではゼロスは直してくれなかったが、何とか保険が効いたので、中古ではあるが買い換えた)でそちらのほうへ探しに行って見る。
 10分ほど探していると、見慣れた栗色の長い髪の少女が自転車をこいでいるのが見えた。
 もっとも、まだ距離がある。あいにく信号につかまってしまったが、とりあえず呼んでみようと窓を開けた。
 すると・・・
「!!?」
 リナは自転車を止め、ぼろアパートへと入っていった。
 彼女が入ったのは、1回の一番奥の部屋。
 ガウリイは知っていた。
 その部屋はゼルが1人で住んでいる場所であることを・・・
「・・・」
 彼は悩んだ。声をかけるべきか、このまま帰るべきか・・・
 そもそも自分は部活をサボっている彼女を呼び戻すためにここまで来たのだ。だったら、声をかけるのが当然だろう。
 だが、彼女はなぜ、ゼルの部屋になど来ているのか。ガウリイの頭の中に、1つの可能性が浮かんでくる。
 それを肯定されるのがいやで・・・
 それでも学校に帰るわけにも行かず・・・
 とりあえず、彼女が出てくるのを待つことにした。



 見舞いに行ったミリーナは、少々呆れていた。
 確かに、アメリアやシルフィールの治癒呪文はよく効いていた。それは分かる。
 だが、起きているどころか出かけているとは思わなかった。
 それならば病院にでも行っているのかと思って待っていると、確かに5分ほどして帰ってきた。
 近くのスーパーから。
 ・・・なんでも、夕飯を作るのがおっくうだったので惣菜でも買いに行った、とのこと。というか、自炊をしていると聞いた時点で、少々驚きもしたのだが・・・
 もちろん、部屋の中にミリーナの姿を見つけるなり、お約束の夫婦漫才をするのも忘れないのだが。
「じゃあ、そのためにわざわざ来てくれたのか」
 ミリーナに、紅茶(ティーパックですらなく、午○の紅茶をグラスに注いでいるだけ)を出しながらルークは言った。
「大会の前に、4人で買いに行ったのよ」
 実は、引退する彼らへ贈り物として、ひそかに懐中時計を買っていたのだ。で、本人たちに渡すより、部屋に忍び込んで(笑)置いておいたほうが、帰ったときびっくりするだろう、という計画になっただけの話である。
 だが、当日あんなことになり・・・ルークに関しては、見舞いもかねて直接渡すことになった運びなのだ。
「今頃、リナさんもゼルガディスさんのところに行っているはずよ」
「ん?
 アメリアじゃなくてか?」
 口にグラスを運びかけた手が、ふと止まる。
「その間、2人っきりにさせてあげてるのよ。
 ・・・シルフィールさんも、『いつものように』来ていないし」
「へー、良いはからいってやつか。
 で、ミリーナも・・・」
「私は様子を見に来ただけです。
 あんまり調子に乗らないで」
 思わずいじけるルーク。
「ただ、ちょっといやな予感がするのよね・・・」
「?」
 部屋の隅っこ(笑)で、ルークが首をかしげる。
「私たち・・・
 何か、大きな事件に巻き込まれてるんじゃないかって・・・」
 ごとん。ばしゃっ。
 ルークが、飲みかけの紅茶のグラスを落とした。
 その顔色は、お世辞にも良いとは言えなかった・・・


「ゼルガディスさん・・・」
 長い沈黙の後、アメリアが恐る恐る口を開いた。
「その・・・志望校はどこなんですか?
 あっ!さっきの話は忘れてください!!」
 ゼルは、話を変えようとするアメリアなりの努力だろうと思い、苦笑しながら答えた。
「一応、北海道の梓襟扶(シェリフ)(強引な読み方だな・・・)大だが・・・」
「!!
 北海道!!?」
「ああ・・・
 俺の爺さんが、そこの教授でな・・・
 こっちに来いって言ってるんだよ・・・
 一応、両親のいない俺が私立に通ってられるのも、爺さんのおかげだし・・・
 逆らえないってわけさ」
「そんな・・・」
 彼の祖父であるレゾは、梓襟扶大学にて治癒系呪文の研究を行っている。彼自身は医術系に進むつもりはないのだが、せめて大学くらい底に言ってやるのが親孝行、もとい祖父孝行だろうか。
「周りのやつらは、みんな黒須霞(クロスカ)(こっちも強引)大学に行けって言ってるんだけどな。
 だが、エリートってやつが性にあわないって言って断ってる」
 澄零高校か露透翔高校から、黒須霞大学へと進学するのは、まさに有名なエリートコース。ただし、その3校とも聖流雲グループの傘下だったりする。
 聖流雲グループの社長令嬢であるアメリアにとって、ゼルが黒須霞大学に行くのなら、その気になればいつでも会いに行けるのだ。
 しかし、北海道ともなると・・・
「・・・
 がんばって・・・ください・・・」
 アメリアは、視線をそらしながら力なくつぶやいた。
「私・・・応援・・・してますから・・・」



「・・・ルーク」
「ん?」
「それ・・・服・・・」
「げっ!?」
 ルークは、こぼした紅茶を拭こうと、近くにあった布を手にしたは良いが、よく見るとそれは彼の私服。
 ちなみに、夏用の色の薄いもの。しみになったらそうとう目立つ。
「ったく・・・」
 とりあえずグラスと服を持って立ち上がる。服を近くの籠の中(コインランドリーにでも持っていくのだろう)に押し込んでから、もう一度紅茶を注ぎなおす。
 そんな彼の行動を黙ってみていたミリーナは、ふと『あるもの』を見つけた。
 とはいっても、特別たいしたものではない。単に、ゴミ箱に入れそこなったらしい紙屑である。
「何かしら・・・?」
 興味本位でその紙を広げてみた彼女は、まともに硬直した。

   裏切りと命とを、天秤にかけてみたほうが良いのではないか・・・

「ミリーナ・・・
 それは・・・」
 ゴミ箱の前に座り込んで固まっているミリーナを見て、ルークは硬い声でつぶやいた。
「・・・
 ・・・・・・
 あなたを責めたりするつもりはない・・・
 でも・・・話して・・・
 どういう意味なの・・・?
 昨日何があったの・・・?」
「・・・」
「ねえ・・・
 話して・・・」
 ルークに顔を見せないまま、一言ずつ言葉をつむぐミリーナ。
 涙に気づかれたくなかったから。
 なんだかんだ言いながらも結局一緒にいて、まったくそんなことにも気づかなかった、考えたこともなかった自分が、悔しかった・・・
「・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・わかった・・・」



 1時間ほどたってから、やっとリナは部屋から出てきた。
 そして、学校のほうへと自転車を走らせる。
 ガウリイは、車で尾行を始めた(ストーカーかよ・・・)

 少し時間がたって、ガウリイは目撃した。
 リナが数名の男から声をかけられ・・・共に、路地へと入っていくのを。
 彼らは、雷是炒高校の制服を着ていた・・・

 無我夢中で車から飛び出し、その男たちに殴りかかる。
「なにしやがんだ!?」
 男たちも反撃するが、ガウリイはまるでダメージを受けていないかのように賃貸なく、確実に男たちを沈めていった。
 ほんのわずかの時間で、立っているのはリナとガウリイだけになった。

「リナ・・・
 怪我はないか・・・?」
「ガ・・・
 ガウリイ・・・」
 ばしーん!
 リナは、自分よりずっと背の高いガウリイの頬を、強く叩いた。
 ここで、『私のために怪我しちゃって・・・心配させないでよ・・・』などという台詞が付けば、立派にラブコメなのだが・・・
「なにするのよ!バカ!!くらげ!!
 あんたのせいで、せっかくのチャンスがパーになっちゃったじゃないの!!
 これでアメリアに何かあったら、あんたのせいだからね!!!」
 そう言い放つと、リナは走り去ってしまった。
 後には、事態が分からずにただ頬を押さえるガウリイだけが残った・・・



 澄零高校化学教官室。
 一人の男が、どこから取り出したのかチェスの番を前に、淡々と語り続けていた。
「たとえ兵士を取ることが出来ても、それが最善の手とは限らないんですよ。
 時には、それを見逃すことが相手の霍乱にもつながるんですから。
 それに・・・
 危険を犯しても女王を狙うほうが最善の手だってこともあるんですよ・・・」



 幸せというのは、空で輝く太陽のようなものだ。
 だから、時には雲で隠れるし、雨が降ることもある。
 でも、たとえ空に雲がなくとも、夜に太陽は現れない。
 そのため、夜は不吉の象徴。
 悪夢の性質を持つもの。
 多くの人がそれを拒み・・・決して逃れられないもの。

 夕方の太陽は今、ゆっくりと、だが確実に傾こうとしていた・・・



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



Y:姉ちゃん・・・
  2話でも聞いたと思うけど、これ本当に学園もの?
リ:確か、そんな感じで始まったはず。
Y:ってか、すでにスレでもなんでもなくなってない?
リ:うーん・・・
  とりあえず、あたしがこれが『スレのえせ学園もの』って言ってるんだから、あんたはそれを信じてれば良いの。
  うん。そう。あたしがそう決めた。
Y:(黙ってカッターナイフを取り出す)
リ:・・・
  ・・・・・・あたしが悪かったです。
Y:分かればよろしい♪
リ:妹のくせに・・・
Y:なんか言った?
リ:なんでもないなんでもない!!
Y:んじゃあ、話を変えて。
  姉ちゃん、チェスなんてやるっけ?
リ:ああ、あのラストシーンね。
Y:うん。
  あんないい加減なこと書いて良いのかな〜とか思ってさ。
リ:いやね。
  この間、漫研の後輩たちと話してたのよ。『スレキャラをチェスの駒にたとえたら、誰がどれか』って。
  その影響。
Y:ふ〜ん。
  で?誰がどれだった?
リ:王→L様
  女王→リナ
  騎士→ガウリイ・ルーク
  僧侶→アメリア・ミリーナ
  城砦→ゼル
  兵士→ゼロス
Y:ゼロスの立場って一体・・・?
リ:・・・
  たまたま、うちの漫研にゼロスファンがいなかったもんだからねえ・・・
  ってか、王&女王のほうにツッコミが入ると思った。
Y:それもあるけど、やっぱり最後でオチが付いた感じかな。
  ってか、兵士って言えば『ダ○の大○険』のヒ○だし、実はL様除いて最強?
リ:そういう考え方もあるかも。

  まあ、そんなわけで。
  なんか、あとがき妙に長くなりましたが、これくらいで失礼いたします。



P.S 姉ちゃんがラストの挨拶してる・・・
   よし。次回は、弟Mに襲撃をさせよう。   by妹Y

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21439大きな樹 第4話リナ&キャナ E-mail 2002/8/16 17:10:31
記事番号21408へのコメント

 第4話です〜
 暑いし、この話長いし、弟M(現実モード)はキレ気味だし。
 なんか、とっても障害が多い計画です・・・

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「本当の・・・ことなの・・・?」
「ああ・・・
 俺が、お前に嘘なんてついたことがあるか?」
「ずっと・・・」
「・・・え?」
「私は知らなかった・・・
 みんな知らなかった・・・
 あなたが、仮面をかぶっていたことを、誰も・・・」



「ゼルガディスさん・・・」
 家に帰ったアメリアは一人、自分の部屋で薄い布団をかぶっていた。
 明度が夕食の時間であることを告げてきたのはもう何時間も前のことだが、ものを食べる気にもなれない。
 何も言えなかった自分が腹立たしくて。でも、ゼルをとめる事なんて出来ないのはわかってて。
 だから、余計に悔しくて。
「父さんや会社の人達が作ったレールを走るだけの、人形みたいな人生・・・
 そんなのは・・・
 そんなのは・・・正義じゃないって・・・分かってるのに・・・
 お金持ちじゃなくても・・・『仲間』と一緒なら・・・
 ゼルガディスさんと一緒なら・・・」
 思わず、独り言が出てしまう。
 それから、共に涙も一滴。

 彼女は・・・気が付かなかった。
 窓の外から音もなく、男が一人入ってきたことに・・・



「こんな俺だけどよ・・・
 お前を真剣に思ってるってのは、本気なんだぜ。
 ・・・
 嘘なんかじゃねえ・・・世界中に誓ってもいい」
「・・・」
「幻滅されちまっても・・・何にも言えねえけどよ・・・」
「・・・・・・わ」
「えっ?」
「・・・を・・・るって・・・のよ・・・」
「ミ・・・
 ミリーナ・・・」



 少しだけ時はさかのぼる。
 どん どんどん
 ゼルの部屋の扉が、誰かによって叩かれた。
「・・・鍵は開いている」
 シャーペンを走らせる手を止め、扉の向こうの人物に声をかける。
「ゼルガディス!!」
「・・・ガウリイか?」
 息を切らせて入ってきたのは、長い金髪を乱したガウリイの姿。
「ゼル!
 お前というやつは、よくもリナを・・・」
「?
 リナが一体どうしたんだ?」
「とぼけるな!!
 お前とリナが・・・付き合っているってことは分かっているんだ!!!」
「・・・はぁ?」
 思わず、らしくもない間抜けな声を出す。
「どこをどうやったらそういう結論に達するんだ?」
「大会の決勝で、やたらと仲よさそうに話してみたり・・・」
「アメリアの話をしていたんだよ」
「夕方、リナがこの部屋に入っていくのを・・・」
「『これ』のことか?」
 ゼルは、横に置いてあった例の懐中時計(デザインは同じやつ)を出す。
「!!
 お前ら、そんなものまで・・・」
「・・・」
 だんだん馬鹿馬鹿しくなってきたゼルは、時計と一緒についていたメッセージカードを投げて渡す。

  今までお疲れ様
  受験勉強もがんばって  女性部員一同

「・・・わかったか?」
「じゃあ・・・
 誤解ってやつか・・・?」
「だろうな」
 ぺたん・・・
 思わず、その場にへたり込むガウリイ。
「・・・写真の一件があっても、まだ懲りてないのか?(注:第1話ラストシーン参照)」
「この間のか?
 別に気にしてないぞ。俺は」
「下手すれば、懲戒免職ものなんだがな・・・」
 この男には、何を言っても無駄だ。
 思わずそう実感するゼル。
「そういえば・・・」
「どうしたんだ?」
「『何か』あったのか?」
 その言葉にガウリイは一瞬硬直するが、あきらめたような表情で言った。
「これじゃあ、教師と生徒の立場が逆だな」
「俺には、旦那が教師やってることが不思議だよ」
 あたしも不思議(待て)。
 ともかく、男たちはしょうがない、と苦笑しあった。



「俺のやっていたことは・・・・決して許されることじゃねえ・・・
 でも・・・
 そうやって従うことしか出来なかった俺自身が・・・
 今は、一番許せねえ・・・」



 アメリアの傍に、黒い姿の男が忍び寄り・・・
「列閃槍!!」
 瞬間。
 まだ開いたままだった窓の外から、一筋の光の槍が男の方へと向かい・・・
 間一髪で避ける男。光条はそのまま、向こうの壁に当たって消滅する。
 とっさに起き上がるアメリア。『力ある言葉』の声の主を知っていた彼女は、窓の外に向かって叫ぶ。
「リナさん!!?」
 カーテンが風でめくれ・・・
 その向こうに立っていたのは、月明かりに照らされたリナ・・・
「アメリア・・・
 あんた、まだ起きてたんだ・・・」
 目立たないように黒い服を着て窓枠にたたずむその姿は、友人であるアメリアにも、どことなく『死神』を連想させた。
 もっとも、たった今助けてくれた『天使』だったが・・・
 その様子を黙ってみていた男は、やがてぼそぼそとつぶやいた。くぐもった声だったが、その言葉は2人の耳にはっきりと届いていた。
「つかの間の別れを悲しむが良い・・・
 もっとも、今生の別れとなるやもしれんがな・・・」
「それはどういう・・・」
 アメリアが問い詰めようとしたとき。
 じゃっ!
 リナが立っていた窓枠を、鈍色の閃光(?)が貫いた。
 とっさに後ろに飛び、浮遊を唱える。
 閃光のあたった部分の窓枠は、まるで数百年のときが経過したのごとく、ぐずぐずに朽ちてしまう。
「純魔族!!?」
 そう。
 窓の外にはいつの間にやら、よく分からない姿をした生物(ではないだろうが)が数体。
 確かに、剣士/魔導師としての修行を受けるのは、この時代では常識ではあるが(やな時代だな・・・)、純魔族と戦うことなどまずない。
 澄零高校でも、レッサーデーモンと戦ったことのある生徒ですら、全校生徒の1割に達するかどうか、といったものである(しかも、勝率は・・・)
 まして純魔族・・・それも、大会社の社長の家(もっとも、この家に今住んでるのは家族ではアメリアだけで、他の家族たちは皆世界中を飛び回っているのだが)である。
「くっ・・・
 黒妖陣!!」
 精神生命体である純魔族には、精神系の精霊魔術か黒魔術しか効果がない。
 知識としては知っていても、実際にそれを実行するのはもちろん始めてである。
 鳥形のぼろ雑巾(の様な姿をした魔族)は、それをひょいとかわすと魔力球を放つ。
 移動速度の遅い浮遊ではさけられない。そう判断したり名は、術を解き地面に落下。着地直前にもう一度かけなおして、何とか地面に着地。
 しかしそこを狙って、ヴァイオリンをデフォルメしたような形の魔族が突進してくる。あわてて後ろに飛び、それを避けたリナだったが・・・
 着地点に、地面はなかった。
 そこは、たくさんの鯉の泳ぐ池だったのだ(和洋折衷の、中途半端な家だなあ・・・)
 ばしゃ!!
 幸い、そう深くはなかったのだが・・・
 バランスを崩したリナは、池の中で転んでしまう。
 そして、そんなリナは、魔族たちの一斉放火の良い的で・・・

『もうだめだ!』
 リナが、そう覚悟を決めたとき。
 数条の閃光が走った。



「・・・やべぇ!」
「どうしたの?」
「多分・・・今夜・・・
 俺だけで・・・いや、それじゃやつらの思う壺だ・・・」
「ちょっと、ルーク!
 どこへ行くの!?」
「ゼルのところだ!」
「・・・私も行くわ」
「こないでくれ!!頼む!!」
「私にも、たまにはわがまま言わせてくれても良いでしょう?
 あなただって・・・ずっと・・・」
「・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・一緒に行こう」

「ルーク!?ミリーナ!?」
「どうしたんだ!?」
「ゼル!!
 今すぐアメリアの家を教えろ!!」
「ど・・・
 どうしたんだ・・・?」
「いいから早く教えろっつってんだろうが!!!」
「そう言われても・・・」
「知らねえって言うんじゃねえだろうな!!?」
「いや、一応知ってはいるが・・・」
「ちょっと待てルーク。
 一体、何があったんだ」
「あんたには関係ねえよ!!」
「ガウリイさん。ゼルガディスさん。
 彼に・・・何も・・・何も聞かないでください・・・」
『ミリーナ・・・?』
「・・・
 ミリーナがそこまで言ってくれて、俺がそれを反故にするわけにはいかねえな・・・
 頼む。何も聞かないでくれ」
「・・・お前が、そこまで真剣に頼むなんて、よっぽどのわけがあるんだな。
 わかった。何も聞かないでおく。
 だが、1つだけ・・・
 1年前の『あれ』に関係があるのか?」
「何も聞かねえんじゃなかったのかよ!!」
「何も聞かない。教えられない。
 でも、これはここにいるみんなにとって大切なこと。
 だから、ここにいるみんなで一緒にいく。
 それでいいんじゃないかしら?
 ルーク。ゼルガディスさん。何か異論はある?」
『・・・』
「なあ・・・
 俺に反対権はないのか・・・?」
「なら、意見があるんですか?」
「いや・・・ないけど・・・」
「それならいいでしょう?」
「・・・
 ああ・・・」
「ガウリイもくるのか・・・?」
「あら、だめなの?」
「あんまり、『他人』を巻き込みたくねえ・・・」
「何言ってるんだ。
 自分の指導している部の部員のほとんどが関係者で、深刻な悩みがあって。
 それを見捨てられるほど、俺は冷酷じゃないぞ」
「・・・
 ・・・・・・ありがとな。
 俺みたいなやつのわがまま、聞いてもらっちまって・・・」
「気にするな。
 俺は、俺がやりたい事をやる、って言っているだけなんだからな」
「すまねえ・・・」



 リナに襲いかかろうとした魔力球は、半数が放たれる前に放とうとした本人(?)ごと消滅し、残り半数は、リナの傍らに現れた影によって撃墜された。
「ガウリイ!
 なんであんたここに・・・?」
「話は後だ!
 まだ敵は残っているんだぞ!!」

 ひかる刃が煌き。滅びの魔術が舞い。
 残りの魔族たちが全て倒れるまでは、そう時間はかからなかった。

「ガウリイ!!
 どうしてこんなところにいるのよ!!
 なんで・・・
 何で、あたしのこんなところまで見ちゃうのよ!!」
 リナの服装は、もちろんそのままだった。
 黒い・・・死神のような服装、そのまま・・・
「リナ・・・」
「あたしはねえ・・・
 他の誰よりも、あんたにだけは、あたしのこんな面を見られたくはなかったのよ・・・
 それを・・・それをあんたは・・・」
 思わずガウリイに背を向ける。
 そんなリナに、ガウリイは手をのばしかけ・・・
 がささっ。
「誰!?」
 条件反射でリナが振り返ると・・・
「お前が押すから・・・」
「俺のせいかよ!」
 一体どういう展開を期待していたのか、陰に潜んでいたゼルとルーク。
「あんたたちまでいたの!?
 一体、何があったって言うのよ!!?」
「さっき魔族たちを倒したときにいたじゃないか・・・」
 ガウリイのつぶやきは無視された。
「って!
 こんなことしてる場合じゃねえ!
 アメリアの部屋はどこだ!!?」
「一応知っているが・・・」
「どの窓だ!?」
「窓から入る気なのか・・・?
 それは不法侵入と・・・」
 こんなときでも律儀なゼル。でも、さすがにちょっと汗時ジト。

「ちょっとちょっと、そこ。
 あたしを無視して話を進めないの」
「いや・・・
 俺も話が分からん・・・」
「ガウリイはいつでもわかってないくせに・・・」
 思わず脱力するリナ。
「ところで、リナさんはどうしてここに?」 
 びくん。
 恐る恐る振り返るリナ。そこにいたのは、もちろんミリーナ。
「えっと・・・
 それは、その・・・」
「確かに変だよな。
 リナがそんな格好をして・・・
 はっ!まさか!!」
 ガウリイは、何かに気が付いたのかリナの両肩をがしっとつかんだ。
「ガ!ガウリイ!!?」
「リナ!!
 いくらアメリアの家が金持ちだからって、泥棒はやめろ!!」
「だれがやるか!
 このくらげ!!!」
 すぱ〜ん!
「・・・そのスリッパ、今どこから出てきたんですか・・・?」
「まあ、乙女には秘密がいっぱいあるものよ♪」
 そんなほのぼのムード(?)は、ゼルの叫び声によってかき消されることになる。



 ゼルが(半ば脅迫されて)、ルークとともにアメリアの部屋の窓をのぞいたとき、そこには彼女の姿はなかった。
 かわりに、1枚のメモが残されているのみ。
 そこには、印刷された小さな文字が記されていた。

  世界をも揺るがす『鍵』はいただいていく。
  返してほしくば、『本部』にて待つ。

「遅かったか・・・」
 膝をつき、うなだれるルーク。
「貴様!
 一体、何をどこまで知っている!!?」
 そのルークの胸倉をつかみ、食って掛かるゼル。
「『あの時』から、何か知っていたんだな!!
 だからこそお前は・・・」
「・・・
 言えねえよ・・・
 俺の口からは・・・」
「ふざけるな!!!」
「すまねえ・・・
 今の俺は、あんたに話せるような状態じゃねえんだよ・・・」
「・・・」
 黙って手を離す。ルークの体が床に落ちる。
「・・・
 今のお前は・・・
 『あの時』から、まったく変わってないな・・・」
「!!」
 瞬間。時が止まる。
「・・・
 そうかもな・・・」
 視線を下げるルーク。

 窓からミリーナと、彼女に連れられたガウリイが入ってきたのは、このときだった。
 だが、そこにはリナの姿はなかった・・・


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


M:やった!!!
  姉ちゃんたち勉強してるし、今日は僕があとがき占領成功!!
リ&Y:・・・ほう。
    誰があとがき占領だって?
M:はう!!
  何で生きてるんだ!?
リ:やっぱりあんただったのね・・・
  私たちの昼食の中に、ソラニン(注:ジャガイモの芽に含まれる毒)なんて混ぜたのは・・・
Y:あまつさえ、おっきなゴミ袋に詰めてゴミ捨て場に捨てたのは・・・
M:なんで無事なんだ!?
リ&:Y:バレバレだっつーの!!!

・・・しばしお待ちください。

リ:はあ、はあ・・・
Y:まったく・・・油断ならない男なんだから・・・
  どうせ完全犯罪狙うなら、姉ちゃんだけにしとけば良いのに。そうすれば、私があとがき占領できるのに・・・
リ:そんなことしたら、あたしが作品書かないから結局出番なくなるぞ。
Y:はう・・・

M:姉ちゃんたちがばかな話をしている間に、僕が最後の挨拶を・・・
  今回も読んでいただいて、まことにありがとうございました(ペコリ)。

リ&Y:おとなしく眠ってろ!!!!(どげし!!!)

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21440大きな樹 幕間1リナ&キャナ E-mail 2002/8/16 17:11:21
記事番号21408へのコメント

 いきなり番外編(?)をはさみます。
 とはいっても、ちゃんと本編に関係のある話ですけどね。4話で出てきた『あの時』です。
 ・・・ってわけで、最初ちょこっとを除けば、ほとんどゼルとルークしか出て来ないとゆー・・・(汗)
 いや・・・この2人を一緒に書くの、結構面白いんですよね。原作じゃあ、絶対一緒に出ることはないコンビですが・・・

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      幕間一  黄昏時にて


 それは、1年ほど前のこと。
 ブラスラケッツ部に、新入部員2名が入ったときの話。
 スポーツ(格闘技)としては、結構マイナーな部類に入るブラスラケッツ。彼女たちもまた他の上級生たちと同様、入部時にはまったくの初心者であった。
 それでもとりあえず実力を見よう(部員が少ないので、大会の関係もあるのだ)、ということになり、2人でシングルスで戦わせて見る。
「どうだ?
 あんたがダブルスが組めそうな奴はいるか?」
 審判をやらされていたゼルに、ルークが声をかける。
「特にえり好みはしないが・・・」
「そうは言っても、やっぱり相性ってもんがあるだろ。
 俺だったら、やっぱりパートナーは選びてえもんな。
 ・・・人数少ない以上、無理はいえねえけど」
「そこまで言うなら、審判を変わってくれ。
 そうすれば、観察する暇も出来るだろう」
「おお、ありがてえ」
 早速ゼルは審判台から下り、ルークに場所を譲る。
「俺は素振りでもやっている。
 終わったら、声をかけてくれ」
「へいへい」
 その間にも、試合は続いている。

 しばらくして、ルークは思った。
『暇だ・・・』
 バレーなどと同じように、初心者どうしてサーブ権が移ってばかりの試合は、はっきり言って見ていて面白くもなんともない。
 おもわずあくびをしている彼の顔面に・・・
 どばぶしゅるぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・
 球がまともに直撃。その回転で、顔から煙まで出ている。
 当然というかなんと言うか、審判台から落ちた。
「大丈夫ですか?」
 打った本人が、彼の元へとやってくる。
 銀色の長い髪、ミリーナである。
「痛ってえなあ・・・
 ちゃんと狙えよ!!相手を!!」
「ごめんなさい」
 彼女は彼の傍らへより、治癒を唱え始める。
 その時・・・
 彼は見た。彼女の瞳を。
 それは、彼にとってはあまりにも異質なものであった。
 少なくとも、彼が見たことのあるもののうち、最も美しいものであったであろう。
 暗い・・・あまりにも暗すぎる『モノ』を背負った自分とは違う、澄んだ瞳。
 しかし、それは刹那の出来事。
 ミリーナは呪文を唱え終わると、足元のボールを拾って彼に告げた。
「『先輩』。
 早く審判の続きをお願いします」
 言って、自分のコートへ戻っていく。
 本当に短い・・・儚い時間の出来事だった・・・



 その日の練習が終わって。
 珍しく、ゼルがルークに声をかけた。
「どうしたんだ?」
「・・・
 近くの公園のテニスコートで、最近ブラスラケッツをしても良いという許可が出たんだが・・・
 今から一試合しに行かないか」
「そりゃかまわねえけど・・・
 さっき一言いえば、中のコートを使えたじゃねーか」
「・・・」
 ゼルは黙って歩き出した。
 ルークも、それ以上は何も言わずに付き合うことにした。


「んで?
 何かあったんじゃねえのか?」
 ルークは、手にした球をゼルに向かって放り投げながらたずねた。
「・・・なんでだ?」
「何にもねえのに、わざわざこんなところに来る必要はねえだろーが」
「そうだな・・・」
 ゼルはヘルメットの下で苦笑しながら、サービスラインに立つ。
「ひとつ聞きたいことがあってな」
「俺に?」
「・・・」
 それから黙って球を上空に放り投げ、思いっきりそれを打ちながら言葉を放つ。
「何でそんなに『自分』を隠しているのか、ってことをな!!」
「!!!!」
 どぶしゅるるるぅぅぅぅ・・・
 バウンドした球は、言葉に動揺したルークの顎をまともに捉えていた。
 それでもヘルメットのおかげか、彼は多少ふらつきつつも立っていた。
 それを見ながらゼルは、ラケットを突きつける。
「本当は、周りの笑いを取るような性格じゃないんじゃないか?
 少なくとも、俺にはそれがわかる。
 俺だって、いつも周りから距離を置いているような人間だ。
 自分を偽ることの一つや二つやっているさ。
 だが・・・それとは違う。
 まるで、『自分がなんなのかを知られては困る』様だな・・・」
「・・・
 何を根拠に、そんなことを言うんだ?」
「さあな。
 それこそ勘ってやつさ」
 にやりと笑う。
 それを見たルークは、黙って足元の球を拾い、それを軽く放り投げるといきなりラケットで打ちつけ、ゼルの顔面を狙う。コートの中からだ。
 それを予測していたかのように打ち返すえゼル。またそれを返す。
 しばし無言で打ち合った後、ルークが口を開く。
「色々事情があってな。
 悪りぃが、あんたにゃそんなこと話せねえんだよ」
「自分を偽ってまでの事情なのか?」
 怪訝そうな表情になる。それでも、打ち合いはやめない。
「あんただって、自分を『隠して』いる人間の一人だろ。
 ってか、世の中誰だってそうじゃねえのか?
 そんなのに、説教なんかされたくねえな」
「別に俺はそんなつもりは・・・」
 その時。
 たまたまゼルが打った球は、低速度で相手コートの上空を飛んで行った。
 それを見たルークは数歩下がって跳躍し、スマッシュを打ち込みながら叫んだ。
「あんたにゃわかんねえよ!!
 たとえ『魔王』に魂売っても、叶えられねえ『モノ』がある俺のことなんかよ!!」
「・・・!!」
 今度は、ゼルが立ち尽くす番だった。
 ただし今度は、球は彼のすぐ横でバウンドし、後ろへと飛んで行った。
「・・・」
 ヘルメットに隠れていて表情は分からないが、ルークはしばらく目を伏せていたようだ。
「言っとくけどな。今のはわざとはずしたんだぜ。
 そこんとこ、よく覚えとけよ」
「・・・」
 しばらく二人は対峙していたが、やがてゼルが背を見せ、自分の後方に転がった球を拾ってくる。
「今度は、本気で行くぞ」
「ああ。
 俺もだ」
 言って、ゼルが再びサービスラインへと立った。



 男たちの戦いは、わずかな街頭の明かりの元、夜9時過ぎまで続いた。
 そのころには、2人とも文字通りぼろぼろの状態になっていた。
 あいにく、どちらも白魔術は得意ではない。おそらく、次の日野は体中あざだらけで登校することとなるだろう。
 疲れ果てながらも、いまだにラケットを放さずにいる2人。
 そして、一体何回目、いや何十回目になるのか、ルークがサービスラインに向かう。
 その背に向かって、ゼルがぽつりと言った。
「『魔王』に魂を売っても叶えられない『モノ』・・・
 だが、本当にお前が望んでいるのなら、『魔王』なんてやつじゃなくても・・・」
「そんな都合の良いもの・・・
 この世にゃ存在しねえよ・・・」
「・・・本当にか?」
「・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・」
 だが、ルークはやがてあきらめたかのように振り返って言った。
「あーあ。もう負けだ負けだ。
 俺の負けを認めるよ」
「やっとあきらめたか」
「だが・・・
 だけどな・・・」
「・・・
 ・・・負けを認めたんだろ」
「負けを認めたんだから、こればっかは見逃してくれよ」
 ルークは、ヘルメットを地面に投げ捨てながらつぶやく。
『・・・・・・』

 夜のテニスコートに、静寂が訪れた。
 ゼルの位置から見ると、ちょうどルークの顔は、街頭の逆光になって見えにくかった。
 だがそれ以上に、街頭の光では消すことすら出来なかった。
 彼の・・・ルークの後ろに潜んだ漆黒の闇は・・・


 その沈黙は、公園の管理人がそこに現れるまで続いた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


Y:結局、何が書きたかった訳?
リ:いや・・・
  その・・・男同士の友情?
Y:ってか、ぶっちゃけ聞いていい?
リ:何を?
Y:結局さ。
  ルーク書きたかっただけじゃない?
リ:ぴくぴくぴくぅ!
  そ・・・そんなわけじゃないぞ・・・
Y:へー。
  じゃあ、この文はどう説明するわけ?
  >ギャグもシリアスも不幸です・・・(作者がルークファンだから♪)(をい)
リ:う・・・
  だってさ・・・だってさ・・・
  これから、どんどん不幸度上がっていくし・・・
  後半○○だし・・・ラストにいたっちゃ××だし・・・
Y:うーん・・・
  とりあえず、ここに書けないようなヤバいネタを書くのはやめよーや。
リ:単にネタバレだから伏せてるだけだって!!


 あくまで幕間なので、今回は普通に。
 ここまで読んでくださってありがとうございました。

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21441大きな樹 第5話リナ&キャナ E-mail 2002/8/16 21:18:22
記事番号21408へのコメント

 第5話です〜
 ・・・どこが学園ものなんでしょう?
 『えせ』学園ものですね。最初を強調しなくては。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



「これは・・・」
 ミリーナがつぶやく。
「『鍵』・・・
 アメリアのことか・・・?」
「多分・・・な・・・」
 ガウリイのつぶやきに答えながら、ゼルは手元のメモを改めて握りつぶした。
「なぁ・・・ルーク・・・
 お前のことは、今は聞かない。
 だから・・・だから今は・・・」
「わかってる。
 『本部』の場所だろ。着いてきな」
 言って窓のほうへと歩いていくルーク。
 その腕をガウリイがつかむ。
「ちょっと待て!
 一体、どこへ行くつもりだ!」
「気にしねえでくれ。
 すぐに終わらせてくる・・・」
「気にしないわけがないだろう!
 アメリアがさらわれたんだぞ!!」
「ゼルと俺で、何とかしてくるさ。
 できればあんたは・・・帰ってくれねえか?
 俺のこういうところは・・・あんまり見せたくねえ・・・」
 ルークはガウリイの腕を軽く払い、代わりにゼルの腕を引っつかむと、翔風界で窓から出て行った。

「ミリーナ!
 なにか知ってるんじゃないのか!?」
 残されたガウリイは、まだ呆然としているミリーナに向かって叫んだ。
「私は・・・」
「ルークから、何か聞いているんじゃないのか!?」
「・・・ガウリイ」
 と。カーテンの外から声がした。
 無論、浮遊で飛んでいるリナである。
 先ほどまで身に着けていた黒い服ではなく、いつの間にかごく普通の私服に戻っている。
 彼女はふわりと室内に着地し、ゆっくりとガウリイのほうへと歩みながら言った。
「人ってね。
 たとえ信頼している相手にでも、絶対知られたくないことってあるのよ。
 あたしだってそうだし、ガウリイもそうでしょう?
 ルークにだって、何か事情があるのよ。もちろんミリーナにも。
 それをずかずかと裸足で入っちゃいけないわ。
 ・・・そう。
 太陽の当たるところを生きていても・・・そうじゃなくても・・・ね・・・」
「リナ・・・?」
 ガウリイには、とてもではないが信じられなかった。
 自分の目の前にいるのが、まだ17歳の少女であることが。
 その心の中は、とてもではないが読むことなど出来ない。
 ・・・少女らしからぬ、深い闇に拒まれて。
「ガウリイ『先生』にできることは、ここまで。
 後は、『あたしたち』の『仕事』よ・・・」
「・・・」
 『先生』という単語を強調するリナ。
 何も言えず、ただ立ち尽くすガウリイ。
 リナはもう一度浮遊を唱えて窓を出たが、ふと振り返るとミリーナに向かって一言つぶやいた。
「まあ・・・
 本当に想っている人を大切にしたい気持ちは分かるけどね。
 傷つけたくない、その気持ち。あたしにも」
「だったら・・・
 だったら、リナさんも・・・」
 ミリーナは言いかけるが、リナは少しだけ彼女に向かって微笑み、音もなく消えていった。

「ガウリイさん・・・」
 視線を窓からはずさないまま、ミリーナはポツリとつぶやいた。
「リナさんを傷つけたくないんですよね・・・
 私と・・・私と、同じですよね・・・」
「ミリーナ・・・?」
 はたと正気に戻ったような。でも、どこか何かがぽっかりと抜けているような、そんな表情でミリーナを見つめるガウリイ。
「私・・・
 一箇所だけ、心当たりがあります、この事件に関係のあるところが。
 ・・・私、ルークをこれ以上傷つけたくないんです。
 手伝ってもらえませんか?」
 振り返ったミリーナの表情は、今までガウリイが見たことのないもので。
 屈託のない、本心からの笑顔と。
 頬を濡らす、大粒の涙が。
 その両方が、ごく自然に一体となったもので。
 黙って頷くガウリイ。
(涙を流すのは・・・先を越されたみたいだな・・・
 一瞬でも心を押し殺したものにさらに我慢をしいらせるのは、自分の気持ちを素直に題した人間の特権、か)
 口には出さずに。
 でも、少しだけうらやましげな表情も浮かべて見る。
(このくらいの権利は、我慢した人間にも与えてくれても良いだろう?)




「なあ、ルーク」
夜の空を行きながら、ゼルが口を開いた。
「・・・なんだ?」
「俺を下ろせ」
「!!
 なぜだ!!?」
 突然のその言葉に、驚きを隠せないルーク。
「俺を連れていたら、速度は極端に落ちてしまう。
 それより、少しでも早くお前1人だけで行ってくれ。
 そして・・・そして、アメリアを助けてやってくれ。
「・・・」
 ルークは何も言わず、ゼルの腕を握る腕に力を込めた。
「おい!」
「・・・
 あんたが行かなかったとしたら、どうやって責任を取るって言うんだ?」
「なにっ!?」
「ここまであんたを連れてきたときの、余分な時間と俺の魔力」
 いったん空中で立ち止まる、だが、視線はあくまでも正面。
 一言ずつ力を込めて、ルークは続ける。
「多分俺と『同類』だろうに、何も干渉しないでいてくれたリナ。
 アメリアの家に置いてけぼりを食らわせちまったガウリイ。
 俺たちを止めずに、何も言わずに俺たちを行かせてくれたミリーナ。
 あんたが助けに来てくれるのを、何よりも待っているだろうアメリア。
 あんたを信用して、ここまで連れてきた俺。
 んで、アメリアのためだけにこんな俺についてきたあんた。
 たくさんのやつらの気持ちに対して、あんたはどうやって責任を取るつもりだ?」
「・・・」
「それなりの方法と覚悟があるって言うんなら、俺は無理してまで止めはしねえ。
 とっととそこら辺にあんたを下ろして、俺は一人で『本部』に行ってくる。
 だがな・・・
 それもないのに、そんなせりふ、軽々しく使うもんじゃねえな」
「・・・」
 ルークは決してゼルのほうを振り向かなかった。
「・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・俺も行く」



「ここが・・・
 『心当たり』、か・・・?
 ガウリイとミリーナが来ていたのは、なんと学校の中。
 澄零高校化学教官室。
 『ゼロス先生のアジト』という、微妙にふざけた通称をつけられたその部屋の中は、はっきり言って不気味である。
 無論、暗い夜の中ということもある。光源がミリーナの明り(無論、光量は抑えてある)だけでは、どうにも心細い。
 しかし、それは覚悟できていた。
 だが、その部屋の中で隠し棚を見つけ、それを開いたときには・・・
 2人の背中を、冷たい風が撫でて行った。
 そこには、大量のファイルが納められていた。
 ・・・それも、『普通ではない』。
 たとえばあるファイルには、学力・身体能力・人望などに特に優れた生徒たちについてのデータが収められていた。それも身長・体重などといったものだけならばまだしも、各教科の評定や、なんと遺伝子情報までが収められていた。
 また別のファイルには、学園の歴史が克明に刻まれていた。無論、いわゆる『年表』に載っているような公的情報だけではない。その年毎の学園の情報や雰囲気、どこの会社からどれほどの寄付金(という名の賄賂)があったかなども。
 それから・・・おそらく一番新しいであろうファイルは・・・
 表紙に『アメリア=ウィル=手すら=セイルーン調査書』と書かれたファイルには、アメリアの毎日の行動パターンや、仲の良い友達、ちょっとした癖、持病の有無・・・
「こんなことが、本当にあっていたなんて・・・」
「澄零高校は、どんなことがあっても平和な学園だと想っていたが・・・」
 大量のファイルの山を前に、呆然とする2人。
 そしてまた、ガウリイが1冊のファイルを手にした。表紙には、『調査報告』とだけ書いてある。
 中のページに目を通す。真ん中のリングで止めるタイプのそれは、頻繁に追加されているらしく、最初のほうのページのリングの側が劣化して折れ曲がっている。
「う・・・」
 『それ』を見たガウリイは、絶句した。
 その様子を見たミリーナが『それ』に目を通し・・・あわててファイルをひったくる。
 だが、ガウリイの目には『それ』が鮮明に残っていた。

  4月12日
   素直な生徒の振りをするのは楽ではない。
   特にこの時期は、自己紹介をさせられるのが困る。うそをつき続ければ、いつかぼろが出るのは自明の理だ。
   しかし、大きな収穫もあった。校内の生徒の成績に関するデータを記録した記憶球(メモリーオーブ)のコピーに成功。
   記録球の入った金庫の暗証番号は19640717。
   どうやら、管理をする代々の校長間では『誕生日』の暗号で呼ばれているらしいが、真意は不明。
   追って調査する。

 魔力文字入力機(今で言うワープロ。パソコンに当たるものは、まだ存在しない)の文字。文章内容からすると、おそらく内部スパイのもの。
 だが、ガウリイを、そしてミリーナを動揺させた『それ』は、その後に書かれていた。
 提出前に入れた、手書きのサイン。

  Luke

 その筆跡は、間違えなく本人のものだった・・・

 それは2人が、後ろに現れた人物に気づかないほどの衝撃を与えていた・・・




 アメリアは目を覚まし、そこが自分の部屋でない・・・どころでなく、まったく見覚えのないところであることに驚いた。
 しかも、その『見覚えのないところ』で自分は、両手・両足を拘束され、その上・・・
 彼女は、戦慄を覚えた。
 大会社の社長礼状ということで、いつかは『営利誘拐』に巻き込まれることは、うすうす警戒していたが・・・まさか2日連続、それも今日は魔族に連れ去られるとは、なかなかない経験である。まあ、あっても困るが。
(・・・
 ・・・・・・リナさん・・・)
 アメリアは、先ほどのリナのことを考えていた。
 黒衣に身を包み、自分の部屋の外で『何か』を見張っていたらしいリナのことを。
(考えてみたら・・・
 リナさんって、私の最初の『お友達』だったんですよね・・・)
 小・中学校のころは、彼女自身の希望もあって地元の公立高校に通っていた。ガ、周りに『友達』がいるとは、お世辞にもいえなかった。
 明るく行動的、成績も優秀で運動神経も良い彼女の周りには、いつもたくさんの人達が集まっていた。だが、彼らはアメリアを『アメリア』としてではなく、『聖流雲のお嬢様』としてしか見ていなかった。
 だから、彼女の周りに集まってくる人達というのは、彼女を利用価値があると判断して集まってきただけだったし、そんなことをしないものたちは影口を言ったり、嫌がらせ・・・いじめを繰り返していた。
 そして高校生になってからも、それは変わらなかった。
 入学式のときには、当然のように『新入生の言葉』を言うこととなった。本来ならトップで合格した人がやるはずのことを。
 教師たちは、アメリアを周りの生徒からは特別扱いした。下手なことをして、自分の悪いことをアメリアから上に報告されたくない、という心持ちでもしているのだろう。当然のごとく、周りの生徒たちからねたみにあい。
 彼女は孤独だった。

 だが、そんな彼女が入学してから2週間ほどたって、澄零高校名物『部活動勧誘』が始まったときだった。
 リナとであったのは。

  ねえ、ブラスラケッツ部に入らない?

 彼女はそういった。
 その時はたまたま、アメリアの虫の居所は悪かった。

  そんなものはやりません!
  どうせあなたも、私に部活動に入ってもらって、聖流雲グループの財力と権力を利用しようとでも思っているんでしょう!!

 それまでの勧誘はそうだった。

  『あの』セイルーンさんでしょう?

 周りは皆、アメリアを『社長令嬢』『お嬢様』としか見ていなかった。
 だからアメリアは、周りに壁を作るすべを見につけていた。
 部活動には入らないつもりだった。
 自分の心を・・・自分の『正義』を守るための、彼女なりの防衛本能だった。
 しかし、リナの答えは違った。

  そんなこと関係ないって。
  面白いよ。ブラスラケッツ。

 『そんなこと関係ない』
 彼女が、小さいころから何度となく言われてきて、そして裏切られてきた言葉だ。
 だが。
 アメリアは、信じてみたくなった。
 根拠はなかった。『彼女』は悪い人には見えない、というだけの、勘でしかない。
 気づいたときには、もうアメリアは答えていた。

  YES

(私・・・
 リナさんは、わたしのことを本当に心配してくれているんだって信じてます。
 『お友達』として心配してくれるから、あんなところにいたんですよね。
 信じさせて・・・ください・・・)


 リナは、とても良い人だった。
 先輩後輩ということは関係なく、彼女に親切に、親密にしてくれた。
 『妹が出来たみたい』とも言ってくれた。
 それから、ブラスラケッツ部のメンバーも、良い人達ばかりだった。
 誰一人として、彼女を『お嬢様』などとは見ない。口調も自然で、彼女を特別扱いなどは決してしない。
 だからこそ、彼女は思っていた。
 ブラスラケッツ部は、自分が一番落ち着ける、自分らしくいられる場だ、と。
 だが。昨日の一件があった。
 自分が不甲斐ないがために・・・あんなことが起こってしまった。
 そのことで、彼女は悩んでいた。
 自分は、結局お荷物でしかなかったのではないか、と。
 あのメンバーのことだ。今もまた、誰かが自分を助けるために必死になっているだろう。
 特にミリーナに聞いた話によれば、昨日、はじめゼルは自分を助けるために大会を捨てるといっていたらしい、
 今彼に手段があるならば、おそらく彼は何よりも優先して自分を助けに向かっているだろう。
 だが。
 自分がもし捕まったりしなければ、こんなことにはならなかったはずだ。
 皆を・・・ゼルを危険な目に合わせることはなかったはずなのに。


 そして今。
 皆がアメリアと同じように、自分の中に責任を押し込めていた。
 自分のために、他人を・・・特に、特定の誰かが傷つくのを見たくない、と心から願う者たちが。
 アメリアは知らなかった。
 そんな『彼ら』がいることに。
 自分の『仕事』、あるいは『生まれ』のために、回りを巻き込みたくないと思う者。
 特定の誰かが傷つくくらいならば、自分が傷つくだけですめば良い、と願う者。

 そして、『彼ら』の中にも、『それ』に気が付くものたちは少なくて。

 皆が皆を守りたいと思い、それを自分の中に閉じ込めていた・・・



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Y:姉ちゃん・・・
リ:ん?
Y:なに?
  この、全体の3分の1を占める、長ったらしいアメリアの一人語りは?
リ:ああ、これ?
  一度、こういう設定書いてみたかったのよ。
Y:って言うと、要するにお嬢様の孤独?
リ:そういうこと♪
Y:それだけのために・・・
  大体さ。リナの立場はどこに行ったの?
  今回もちょこっとしか出てないし、幕間1は完全に出番無しだったし。
  確か、次もほとんど出番ないんでしょ?
リ:うん。
Y:主人公をないがしろにするなよ・・・
リ:いや、一応後半は活躍するって(汗汗)
Y:ってか、こうやって見てるの主人公が誰だかわかんないな。
  姉ちゃんらしく、ルーク出番多いし・・・
リ:うみゅ。
  実は、裏の主人公は彼なのさ♪
Y:いや・・・裏って・・・
リ:まあ、どっちにしろ最終的には思いっきりリナになるけどね。
Y:ってことは・・・
  結局、ダークサイトなバックがあるキャラがメインだ、と。
リ:まあ、あたしは基本的にダーク書きだし。
Y:しかも開き直ってる・・・(汗)

リ:ん?
Y:どうしたの?姉ちゃん?
リ:いや、上からなんかこういうメモが・・・
Y:どれどれ・・・

  今回も、ばかな姉の書いた代物を読んでいただいてありがとうございます。
  面白くなかったら、コークスクリューパンチでもぶちかましてやってください。
  もれなく、メリケンサックをお1つお買い求めいただくと、もう1つ付いてきますので。  by弟M

リ&Y:・・・
    どこ行った!!あのくそ餓鬼!!  

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