◆−Cheers!12【掛け値無し ホンキの想い 今だけは(後編)】−みてい (2002/1/7 00:25:43) No.19390


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19390Cheers!12【掛け値無し ホンキの想い 今だけは(後編)】みてい 2002/1/7 00:25:43


お久しぶりです。みていでございます。
…どれだけ間が空いちゃったんかな(汗)

うーん、地雷がいくつもございます、が。
この話限りの登場予定ですので、好意的に受け止めてくださいませ。

では、おつきあいくださいませ。
**********************************************************************

 ――― 別名、磁力石
 ――― おもちゃに限り無く近いものから貴金属に堪えるものまでさまざま
 ――― 色だってさまざまなんだけど、オレンジは結構希少らしいわ
 ――― そう言えば、あれほど裏表の無いヤツってある意味貴重よね
 ――― そっこらへんにいそうなニーチャン
 ――― けど、妙なところで役立つのよね。いろいろと

****************


 さてさて、カーニャはどうにかなっちゃったらしーしクラヴロートルも引いたけど。
 まだまだ難敵、残ってるなぁ。

「どうぞ、お好きに」

 壁にもたれたその姿が何の手出しもする気が無いという意思表示をしていた。



【掛け値無し ホンキの想い 今だけは(後編)】



 びっびびび〜 びっびっびっびっ びっびびび〜☆

「…アレは何?」
「おっきな鳥さんです」
「そうじゃなくて」
「ビィです」
「そーでもなくてっ!
 どうしてあの鳥があんなに上機嫌なのかということをあたしは問うているのよっ!」
「わからないです」
「あっそ」
 本当に何が嬉しいのやら。
 朝からビィがぴーぴー…じゃない、ぴーぴー鳴いている。
 まぁ飼い主に会えないからってしょげ返ってるよりはマシだけど。
「ところでアメリア。
 うちのクラゲ知らない?」
「わ、リナさん。
 『うちの』だなんてスゴイですねっ☆」

 …………………。

「そぉぉぉぉぉぉぉんなことはどーでもいいのよ。
 で、知ってるの?知らないの??
 とっとと答えないと首絞めちゃうわよ★」
「じ、じらないでふぅ…」

 ったくっ。
 うーん。それにしてもガウリイどこ行ったんだろ。
 ……まさか城の中で迷子になったなんてこと………………ありうるかもしんない。
 それかどっかであたしに内緒でおやつタイムしてるのよっ。

「おー、リナ(むぐむぐ)」

  どんがらぴっしゃーんっ★

**************

「で、何の話してたの?」

 オープンテラスになってる一角で。
 ちょっぴしコゲてひっくり返ってる焼きくらげは無視して、あたしはランディさんに尋ねた。

「シャルレから聞きませんでしたか。『芝居を打つにも準備が要る』と」

「えーっと、
 …あ、そう言えば聞いたような」
 いや、聞いた。
 シャルレさんがここに来た日の晩。
 まだ怒ってる、かな?
「何か?」
「何でもないわ。
 それで準備って何だったの?」
 うーみゅ。
 たぶん怒ってないだろう。表情からは読みにくいけど…。
「まずは役者のメンタルケアというところかな。
 リナさん、吹っ切ってしまえば簡単なものだったでしょう?」
「…まぁね」
「あの方法もランディが考えたのか」
「いや。…しかしそういうことになるのやも知れぬな」

「謝んないでよ。
 あたしの立場が無くなるじゃない。
 おあいこってことにしといて」

 復活したガウリイに咎められたランディさんが視線を上げた瞬間、あたしは言葉をかぶせた。
 何がおあいこかは、…言わずもがな。
 方法はたしかに強烈だったけど、おかげであたしは踏み切ることができた。
「他には?」
「芽吹くかどうかは相手次第の種を少々」
 種?
「お話中すみません。果物とワインが届きました。
 ランディ、あなたにクラヴロートルから今回のお詫びを兼ねてだそうです」
「おおっ♪」
 受取状にサインをしたシャルレさんが持ってきたのは籠一杯の果物さんv
 ををっ!?ゼフィルスイカがあるじゃないっ!!
 ワインもなかなか高級品vv
 ――― ちょっと待って。
 タイミングよすぎない?
 ランディさん宛てってのも気になる。
 毒なんか入ってないでしょうね。
「うまいぞ♪リナ♪」
「てぇアンタいきなり食べてんじゃないわよっ!」
 すぱーんっ☆
「いって〜。
 そんな変なニオイしないから大丈夫だって。ホラ」
 にぱっと笑ったガウリイはあたしにリンゴを差し出す。
 あら真っ赤で大きくてツヤツヤなリンゴv
 …ん、まぁ果物さんには罪は無いし……。
 ランディさんも籠さばいてるし…。

「よろしければどうぞ食べてください。
 ただし、そのワインだけは手をつけないで」
「どうするの?」

 訊いたあたしにランディさんは答えた。
 送り返します、と。
 それからあたしの前に何かを置いた。

「…できすぎね」

 偽装工作。
 脳裏にその言葉が浮かんだ。

「じゃあ、誰がしかけてきたんだ?」

 スイカをパクつきながらガウリイが問う。

「さて、誰であろうと無駄なことですよ」

 再び取り上げたランディさんの手の中で紅い『宝石の護符(ジュエルズ・アミュレット)』が輝いていた。

********************

「で、ゼル。
 結局のところその今ある『記憶球(メモリー・オープ)』は使うわけ?」

 もう時間が無いのだ。
 近日中にはアメリアのウェディングドレスが仕上がってくる。
 ……………………ま、まぁあたしのもできるんだけど。
 それにともない、アメリアの『相手』を決めなくてはならない。
 エルトライゼもストライジェもクラヴロートルが降りたのを受けて動きが活発になっている。
 ゼルの後見人であるランディさんが到着したこともあり、これ以上延ばす必要は無いというのが共通の見解。
 そしてその前夜。
 あたしたちは集まった。
 ――― あたしが放ったのは避けることのできない問題。
 ゼルガディス=グレイワーズと赤法師レゾとの血のつながりを証明する『記憶球(メモリー・オープ)』を使うか否か。
 使えば間違い無く証明はできる。
 しかし使えば、間違い無く『赤法師レゾ』は聖人の座から陥落する。
 ………憐憫とも渇欲ともつかぬ科白を吐きながら力を欲したゼルを合成獣(キメラ)にしているレゾ自身の姿に。
 効果は絶大。
 しかし諸刃の剣。

「…それしか、無いんでしょ」

 砂を噛むような気分だ。
 わかっていても、キツい。
 
「それしか無いのなら賭ける…」
 び〜〜〜〜〜〜っ☆
「ちょぉっと待ったああああああああああっ!!」
 び〜〜〜〜〜〜っ☆びぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ☆

 …シリアスな空気ぶち壊し。
 突然騒ぎ出し、いつの間にやらクチバシで窓の鍵を開ける技術を習得したビィが窓を開ける。
「よいせっ。
 ん?
 ぃよっ☆
 タイミングよすぎてテレるねっ」

 びぃぃぃぃぃぃっv
 どーんっ★
「ぶぎゃっ」

 背中に背負いきれなかったらしい荷物をロープで吊り上げ、あらためてあたしたちを見回した夜の来訪者は、飼い鳥に感激のタックルをかまされた。
「あ〜あ」
 呆然とするガウリイ。
 しっかし、どうして二度も窓から来るかな…。
 一番最初に我に返ったのはやっぱりというべきかシャルレさんで。

「兄さん。
 ……………………騒々しいわ」
「その間がなんだか、いやんな感じだぞ」
「見つけられたか、イズ」
「おうよっ」

 ランディさんに訊かれ、イズは上機嫌に答える。
 ごそごそと麻袋を…
「ビィよぉ、袋に頭突っ込んだらおれ何も見えんって」
 甘えまくる飼い鳥にキャベツを一玉加えさせ、イズはあらためて麻袋をさぐるとさらに小さい袋を取り出した。
 いぶかしむあたしたちを横目に、イズはゼルガディスの前に立った。

「探し物がちと苦手なゼルガディスに、ほい」
「何だ」
「見りゃわかるって」

 手渡された袋を覗き込んだゼルは弾かれたように顔を上げた。
「何だったんですか?」
 ゼルは頷くと袋の中身を手のひらに乗せ、袋をひっくり返した。

「『記憶球(メモリーオーブ)』!?」

 異口同音に叫んだのは誰だったか。
 ゼルの手に乗っていたのは、手のひらに収まってしまうほど小さい水晶球だった。
 独特の鈍い色合いが、それが記憶を封じたものだということを表している。

「…どこに、あった?」
「ゼルガディスが最後に探した場所。
 燃えて崩れ落ちた本の山の中。
 まぁ、日の中で戻ってこなきゃわかんないやなあ」

 怒り、哀しみ、畏怖、期待。
 すべてが綯い交ぜになったようなゼルの表情は、見慣れないものだった。

「3回こすれば見れるぜ。
 ここで見るもよし、あとでアメリアちゃんとこっそり見るもよし。
 だけどこっそり選んだらおれがここで大声でしゃべっちゃうv」
「…をい」
「腹くくりなって、ゼルガディス。
 それっくらい、どってことねぇだろがよ」

 にっと後ろに文字が見えるような笑顔でイズはたたみかけた。
 視界の隅で、ランディさんがちょっと笑んだ気がした。

「投射型か?」
「いんや。内部映像型。ただし音声はハレーションなっしんぐの肉声」
 肩をすくめ。
 軽く首を振って苦笑したゼルガディスは手のひらの水晶球をこすった。
 あたしの位置からじゃうまく映像は見えなさそうだけど。

 1回。
 2回。
 3回。

 ――― そんなことを頼まれるとは、また奇特な方たちですね。

 レゾの声。
 でも何だろう。何か違う。

 ――― あら、心外。
 ――― それほどでも、あるかも。

 女の人の声。
 男の人の声。

 ――― きっと、数奇な運命を辿るのでしょうね、ゼルガディス。
     そのとき私はきみに、呪われている気がしますけれども。
     と、いうことで、『ゼルガディス』に決めました。

 ゼルの名付け親は。

 ――― 覚えにくそうね。
 ――― じゃ、採用。
――― 頼んでおいて『じゃ』てのは面白くないですね。
 ――― 心配されなくてもボケじゃないから。

 ここに封じられているレゾは、あたしが知っているよりもずっと人間っぽい。
 ここに封じられている男女は、たぶんゼルの両親。

「ゼルガディスさんって、可愛い〜v」
「「…待てヲラ」」

 今度はあんたが雰囲気クラッシャーかいっ!!
 位置的にゼル以外に映像が見えていたアメリアがほにゃほにゃと顔を緩ませ身悶えている。

「どうだ?
 そっちよりは断然いいっしょ」
 イズはゼルが前に持っていた水晶球を指差す。
「………………………リスクは小さい。
 それで?」
「お?」
「コレはお前も見たわけだな?」
「そりゃあ、見なきゃ確認できんし」
「…………………………………とてつもない弱みを握られた気がする」
 心底嫌そうにため息をつくゼル。

「しかし、感謝する。ありがとう」
「おーよ」

***************************

「おれ、よかったっしょ☆」
「あんな役、もうごめんだからね」
「……………………………おや。私何か頼みましたか」

 会がお開きになり、ゼルとガウリイ、シルフィールが引き上げた後。
 同じ相手にまったく逆の科白を投げたのは同時だった。

「よっく言うわ。
 あの場面じゃあたししかないじゃないのよ」

 ――― ゼルを問い詰めたあの場面。
 ランディさんが始めに「どうぞ、お好きに」と言って後はだんまりを決め込んでしまったから、あそこで決断を迫れる人間が限られてしまった。
 あの場面でああ言えるのは、事情を知っている第三者。
 さらに命令的な立場にならない者。
 加えて、言い負かされず、引かない者。
 ……対ゼルだったらあたししかない、のよね。
 こーいう場面だと任されること多いし。
 ………………でももし、あたしがまだ『迷って』たら。
 あたしは、あそこまでやれなかったかもしれない。

「リナさんのオリジナリティに賭けてみたのですよ。
 ただし、同じ賭けるのならば多少の手を打つことはしておきます」

 だからこその、『役者のメンタルケア』。
 自分に跳ね返ってくるかもしれない要素を、あえて選ぶのかどうか。
 これは同じような問題にぶつかり、突破したあたしじゃなきゃできない。

「おれもうまくやっただろっ」
「兄さんの場合はオリジナリティというよりも天然なのよ」
「ど、どいう意味だ?」
「素で十分。」
「……微妙だな、それ」


 あたしたち周りができるのはこれまで。
 あとは、ゼルガディス=グレイワーズ自身にかかっている。

******************

「きっちし見届けてあげるわ。
 一言もごまかさずに報告するから覚悟するのね」
「…フン」

 一際大きな扉の前。
 あたしは振り返ってゼルに言葉を投げる。
 ゼルはあたしの顔を見たまま鼻で笑った。
 ……ちびっとむかついたが、らしいと言えばらしいし、ここでもめるのは好ましくない。

(ぜったい、アメリアつれてこいよな)
(お待ちしてますわ)
(おれたち呆れさせんなよなっ)
(良い報告しかいりませんから)

 前回の教訓を生かし、今回は対策が打たれた。
 まず、アメリア王女およびフィリオネル国王は当日は関係者の誰とも会わず公平を期すこと。
 そして政治と関係無い第三者を参加させ、決議の証人とすること。
 最後に、主要な人物を列席させ、この決議を最終決定とすること。

「ゼルガディス殿」
「…何だ」

 この扉をくぐることができるのは、候補者とその後見人、そして証人。
 あたしを証人として指名したのはフィルさんだった。

「昨日、私が言った言葉を覚えているか」
「『どうぞお好きに』だろう」
「結構」

 扉が開けられる。
 部屋の真ん中にどんとでかいテーブル。
 テーブルにつく面々は、聖王都のおエライさん。
 片面に5人ずつ、計10人の視線があたしたちに向けられた。

「リナ=インバースさん、こちらに」

 あたしは言われるままにゼルやランディさんと離れた席に座る。
 ここは、見届ける席。
 口出し無用、手出し無用の、見ているだけの席。

「ど、ども…」

 あたしの隣に座っていたおじさんが居心地悪そうに挨拶をしてきた。
 この人も証人の役を頼まれたらしい。
 訊くと、厩係、衛兵、厨房係、侍女長と全然政治には関係無いけど無くてはならない人たちばかり。

「式典のときにお見かけしたかな?」
「可能性はありますね」

 なーんか、こんな会話ですら火花散ってるし。
 たぶん、ゼルたちから向かって右側に座ってるのがストライジェで、左側がエルトライゼ。
 右のが上座だし。

  かちゃ

 全員が立ち上がる。
 入ってきたのはこの会の主役アメリアとその父であるフィルさん。
 …やっぱ緊張してるなぁ、アメリア。

「始めよう」

 国王フィリオネルの低い声が部屋に響いた。


                                  /続/
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話が久し振りでわからないかもしれないんで、ちょっと補足をさせてください。
本文中に何度が登場する「どうぞお好きに」というのは、ランディがゼルの身元引受人(後見人)を受諾したときに伝えた言葉です。
『私は手を出しませんから、すべて自分の責任においてどうぞ』というような意味合いも含んでいます。

それから、ゼルガディスの両親について。
…深く追求しないでください(汗)
レゾについて。
みていの設定では、ゼルが生まれた頃はまだレゾは人間ぽいと言いますか、某魔王にそう侵食されてなかったんです。
ので、「この子に名前つけたってv」なんてのも、可だったのではないか、と。
もともとはゼルが信頼した人ですから、ねぇ(どっかに同意を求めている)

○今回の小ネタ:「今週の、ハイライト!」←古いって

ではでは、あと2話で終わるのか、それとも3話にするのかっ!?というみていでございました。
多謝♪

 

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