◆−セレナーデ story6 〜第六楽章〜−春祭あられ (2001/12/10 15:00:19) No.18759
 ┣セレナーデ story7 〜第七楽章〜−春祭あられ (2001/12/12 22:45:34) No.18821
 ┃┗七楽章の訂正!−春祭あられ (2001/12/15 22:17:49) NEW No.18899
 ┗セレナーデ story8 〜第八楽章〜−春祭あられ (2001/12/15 23:53:16) NEW No.18906


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18759セレナーデ story6 〜第六楽章〜春祭あられ 2001/12/10 15:00:19


なんだか第五楽章までは過去ログに入ってしまいそうなので、第六楽章はここにうつさせてもらいました。
そして、毎回読んでくださっている方々(もしいたら)大変遅れてすみません。
とある避けたくても避けられない事情によりまして、しばらく何もしておりませんでした。
こんな私ですが、もしこれからも読んでくださるのならよろしくお願いします。
それでは、本編へ・・・・・・

           ◇◆◇◆◇◆◇

  一つの命に必ず意味があるのだとしたら
  この世に存在することに意味があるのだとしたら
  あたしが生れ落ちた意味は何であろう。
  ―――それはきっと
  ぬくもりを知らない貴方に、あたしを教えてあげるため

           ◇◆◇◆◇◆◇

 「ずいぶんとすっきりとした顔だな」
 ゼラスはゼロスの顔を見るなり呟いた。
「そおですか?いつもと違いはないと思うんですけど」
 本当に不思議そうにするゼロスの頬をむぎゅっとつかむと、彼女はそこをしげしげと見つめた。
「あ、涙のあと」
「うそっ?!」
 まるで乙女の反応のように隠すように頬に手をやるゼロスを見て、ゼラスはにやりと笑う。
「う・そ。反応見せたってことはおまえったらまじ泣いたの?うわー見てみてーその姿」
「僕で遊んで楽しいですか?!」
「うん。楽しい」
 即答。
これのゼロスは言葉を詰まらせてしまう。
「で?また小娘のところに行ってたんだろ?どうしたんだ?」
「・・・・・・」
 今までからかわれていたのに、急に核心に触れられてしまうと困ってしまう。
しばらく黙っているゼロスに、再びゼラスは聞いた。
「どうしたんだ?」
 彼は、一つため息をつくと、にっこりと笑って素直に自分の気持ちをはいた。
「僕は、リナさんと共にいようと思います。リナさんは人間ですし、魔族になる気もないらしいので、先に死ぬのは多分リナさんです。それでも、やっぱり、せめてそれまででも一緒にいたいと思いました。ゼラス様が僕に彼女に近づくなといった意味がいまだに分かりませんが、例えどんな事があろうと、僕はもうこの気持ちを変えるつもりはありません。決めたんです」
 その長い科白を黙って聞いていたゼラスだが、聞き終わると、ゼロスを押しのいて自分の部屋に帰っていく。やはり怒らせてしまったか?
「あの、獣王様・・・・・・」
「おまえの気持ちは分かったよ。もう好きにするがいいさ。だが、しばらくのうちは逢瀬を禁ずる」
「そんなっ」
「“北の魔王”の一つがまた復活された。しばらく慌ただしくなる。それまでは、私の部下として、力を貸してもらうぞ。神官ゼロス」
 初めて聞く情報に、わが耳を疑う。
ああ、そうか。だから先ほど、あんなに同胞の様子が変だったのか。いやに騒がしかったな・・・
「わかりました」

            ◇◆◇◆◇◆◇

 ゼロスが泣いたあの夜から約一月がたった。あれ以来、ゼロスはリナの前に現れない。そのことが、彼女にとって無償に悲しかった。
だからといって、皆がいるときに現れても、のろけることができないので、会えて嬉しいがそちらもちょっと悲しい。
気持ちの波に揺られながら、今日もリナは旅をしている。
冬の町と自分らの名前を知る魔族とであったのはついこの間のこと。
今はミルガズィアさんやメフィも共に旅をしている。
今、ゼロスに現れてもらうのも、さすがに気まずいものがあった。
目の前にはすでにアトラス・シティ。
「待ってなさい、私の夕食ちゃん♪」
 最近魔族の動きがおかしくまともな食事を取っていない分、この町にリナの期待が高まる。
なにせ、一度来たことのある町だ。うまい食堂など確認済み。
「ふっふっふ。伊達に旅なんかしてなくてよ!」
「何一人で叫んでんですか?やはり人間ってわかりませんわ。理解不能の低級動物ですわね、まったく」
 いちいち怒っていては仕方ないとこのときだけは悟ったのか、リナはとりあえず無視して町に向かっていく。
足早に進んでいくリナにガウリィだけが追いつくと、小声で話し掛けてきた。
「やっぱ俺たちって魔族に狙われてんのかなぁ」
「?何で?・・・まぁ、そうだけど」
「この間のゼロスといい、最近の魔族といい、狙われすぎてねぇ?」
「だーかーらー、ゼロスは違うんだって言ってるでしょ?あいつは絶対あたしを殺さないから大丈夫よ。殺されそうになったら逆に殺してやるわ」
「・・・・・・だといいんだけどよ」
 いつも以上に真剣そうなガウリィを背に、リナは内心舌打ちをしていた。
(なんたってそんな前の事ことまだ覚えてんのよ。いつもは三日も前のことになると忘れるくせに・・・・・・)
 早く忘れてもらわないと困ってしまう。万が一またゼロスが彼の前に現れたとき、その対応に困ってしまうから。
切り付けようなんてしてくれた日には、リナはゼロスをかばいかねない。
(うはぁぁぁ・・・・・・気苦労多いわ、なんかあたし)
 内心、今度はため息をついて、リナはガウリィの背中を見つめた。

             ◇◆◇◆◇◆◇

今回はこれで終わり。
すみません、すみません、まだ避けたいけど避けられない用事が続いているのです。
それが終わったら大量に出せたら出していこうと思ってますんでお許しください!
このシリーズもやっと中間が過ぎました。
あとは落ちるだけです。
なるべく早くアップできるように頑張ります。
それでは、また読んでくださる方に会えることを祈って。
 春祭あられ

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18821セレナーデ story7 〜第七楽章〜春祭あられ 2001/12/12 22:45:34
記事番号18759へのコメント

 第七楽章です。
これは、ちょうどスレイヤーズ本編最終巻「デモン・スレイヤーズ」のアトラス・シティ事件その夜、です。
ガラス事件その後、といったほうが分かりやすいでしょうか?
一応、この話しは最終巻に重ねていくつもりなんで、よろしくお願いします。


            ◇◆◇◆◇◆◇


  貴方の中に融けてしまえたらいいのに
  貴方と共に融けてしまえたらいいのに
  貴方と一つの存在になれたらいいのに

  そうしたらもしかして ねぇ 幸せになれるかも
  そうしたらもしかして ねぇ 淋しくなるかも

  一つの存在になったらもう話せないんだよね
  笑い合って 見つめあって お互いに
  それって淋しいことかもね

  嗚呼 あたしは貴方と共にいたい
  嗚呼 あたしは貴方の傍にいたい
  ずっと幸せの中で話していたい

  ねぇ お願い
  一つになることを望んだあたしだけど
  決してあたしの前から消えないでいて
  絶対にあたしの前から消えないでいて
  ねぇ お願い
  あたしの中に 貴方の中に
  二人で一つの存在として残らないように・・・・・・
  思い出だけで       残らないように・・・・・・


             ◇◆◇◆◇◆◇


 「リナさん」
窓の外で聞きなれた声がする。何ヶ月も待っていた声がする。
「リナさん」
再び呼ばれて、彼女は部屋の端についている窓を開けた。清々しい空気と共に、もう一回相手の声が聞こえてくる。
「リナさん」
「三度も呼んでくれなくたって、分かってるわよ」
下に目をやればゼロスの姿。月が出ておらず、その姿が良く見えない。
やっと二人だけで会えたというのに、それが悲しい。
「何で入ってこないの?そこじゃ寒いでしょ?」
冬の風邪が、寝巻き姿のリナには少しきつい。
ゼロスが首を振るのが、気配でわかった。
「今日は、ここで。今は貴女との逢瀬が禁止されていていまして」
「なんでまた」
「とりあえず、中立の立場ですから」
 何でかは、秘密です―――――そういって、ゼロスは窓に近寄ってきた。宙に浮かんできて、窓に近づけば近づくほどゼロスの顔がはっきりと見えてくるようになる。
彼の顔は、いつものにっこりではなく、悲しげな笑いだった。
「どうしたの・・・・・・中立だとか。禁止だとか、よく分からないことばかり。魔族たちは、一体何をしようとしているの?って言っても、秘密なんだよね。教えてくれないんだよね」
「・・・・・・すみません」
 リナは手を伸ばすが、まだゼロスには届かなかった。ゼロスも、それをとろうとしなかった。
「貴女の様子だけでも、昼間と今、見れて良かった。昼は・・・・・・ごめんなさい。立場上、ああするしかないんです」
「分かってる。それぐらい。・・・・・・分かってる」
「でも、まさか・・・・・・あなたが銅貨二枚のこと覚えていたとは思いませんでしたよ」
「お金にはうるさいわよ?もう分かりきったことでしょ?」
 お互いの目が今夜初めて合う。
自然と、リナは笑った。声はあまり大きく出せないため、肩を大きく震わせている。
ゼロスも、なんだか笑いたくなり、リナと同じように笑い始める。
くっくっくっくという妙な音が辺りに響き渡った。冬の夜は音が響きやすい。
「ねぇ、リナさん。なんかこういうのって、あれみたいですよねぇ」
「・・・・・・あれ?」
「確か“セレナーデ”って言うんですよ。夜、恋人の窓下で歌う曲」
「セレナーデ、ねぇ。・・・・・・あんたまだ何も歌ってないわよ」
「・・・・・・僕、歌なんて何も知りませんよ。雰囲気です。雰囲気だけ似てますよねぇって言いたかっただけなんですよぉ」
「夜、恋人の窓下で?ま、確かにね」
「でしょう?あ・・・もう行かなくては。・・・・・・・・・それじゃあ」
 もう一度、悲しそうに笑って、ゼロスはリナの言葉を聞かずに消えた。
言う言葉もなく、突然の現われと突然の消失に唖然としてしまう。―――なんだったんだ、あいつは。・・・・・・そのような感じで。
「・・・・・・バーカ」
 ぽりぽりと頬をかいて、リナは呟いた。


            ◇◆◇◆◇◆◇


もう、どうなるんだろう、このお話し。シリアスを書きつづけてると、頭が変になりそうです。
誰か私を助けてください・・・・・・
最近ネタ詰まりがおきやすく、ちょっとやば気味。
もしかしたら次はセレナーデ以外の違うものが出るかもしれません。
嗚呼、本気で誰か私を助けて・・・・・・



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18899七楽章の訂正!春祭あられ 2001/12/15 22:17:49
記事番号18821へのコメント

ごめんなさい。訂正があります。後になって季節感がまったく違うことに気づきまして。
あれれ?と思った方もいますでしょうが、まぁ、許してください。お願いします。


> 「リナさん」
>窓の外で聞きなれた声がする。何ヶ月も待っていた声がする。
>「リナさん」
>再び呼ばれて、彼女は部屋の端についている窓を開けた。清々しい空気と共に、もう一回相手の声が聞こえてくる。
>「リナさん」
>「三度も呼んでくれなくたって、分かってるわよ」
>下に目をやればゼロスの姿。月が出ておらず、その姿が良く見えない。
>やっと二人だけで会えたというのに、それが悲しい。
>「何で入ってこないの?そこじゃ寒いでしょ?」
>冬の風邪が、寝巻き姿のリナには少しきつい。
ここ。ここです!「冬の風」なんてとんでもないです。このときの季節は夏あたりみたいです。
冬の町を見てびっくりしてるぐらいだし。
って言うことは六楽章でも違うのか。
ここが前回と一ヶ月間の空いた時・・・ということでしたけど、冬から夏までが一ヶ月なんてことはまずありません。せめて四ヶ月。普通で約五ヶ月ぐらいでしょう。
と、言うわけで、第六楽章での「一ヶ月」発言にも訂正で、四から五ヶ月ということにしておいてください。すみません。

>ゼロスが首を振るのが、気配でわかった。
>「今日は、ここで。今は貴女との逢瀬が禁止されていていまして」
>「なんでまた」
>「とりあえず、中立の立場ですから」
> 何でかは、秘密です―――――そういって、ゼロスは窓に近寄ってきた。宙に浮かんできて、窓に近づけば近づくほどゼロスの顔がはっきりと見えてくるようになる。
>彼の顔は、いつものにっこりではなく、悲しげな笑いだった。
>「どうしたの・・・・・・中立だとか。禁止だとか、よく分からないことばかり。魔族たちは、一体何をしようとしているの?って言っても、秘密なんだよね。教えてくれないんだよね」
>「・・・・・・すみません」
> リナは手を伸ばすが、まだゼロスには届かなかった。ゼロスも、それをとろうとしなかった。
>「貴女の様子だけでも、昼間と今、見れて良かった。昼は・・・・・・ごめんなさい。立場上、ああするしかないんです」
>「分かってる。それぐらい。・・・・・・分かってる」
>「でも、まさか・・・・・・あなたが銅貨二枚のこと覚えていたとは思いませんでしたよ」
>「お金にはうるさいわよ?もう分かりきったことでしょ?」
> お互いの目が今夜初めて合う。
>自然と、リナは笑った。声はあまり大きく出せないため、肩を大きく震わせている。
>ゼロスも、なんだか笑いたくなり、リナと同じように笑い始める。
>くっくっくっくという妙な音が辺りに響き渡った。冬の夜は音が響きやすい。
ここもだよね。冬という単語は取り消し。

>「ねぇ、リナさん。なんかこういうのって、あれみたいですよねぇ」
>「・・・・・・あれ?」
>「確か“セレナーデ”って言うんですよ。夜、恋人の窓下で歌う曲」
>「セレナーデ、ねぇ。・・・・・・あんたまだ何も歌ってないわよ」
>「・・・・・・僕、歌なんて何も知りませんよ。雰囲気です。雰囲気だけ似てますよねぇって言いたかっただけなんですよぉ」
>「夜、恋人の窓下で?ま、確かにね」
>「でしょう?あ・・・もう行かなくては。・・・・・・・・・それじゃあ」
> もう一度、悲しそうに笑って、ゼロスはリナの言葉を聞かずに消えた。
>言う言葉もなく、突然の現われと突然の消失に唖然としてしまう。―――なんだったんだ、あいつは。・・・・・・そのような感じで。
>「・・・・・・バーカ」
> ぽりぽりと頬をかいて、リナは呟いた。
>
>
>            ◇◆◇◆◇◆◇
>
>
こんな大きな間違いして本当にすみませんでした。ここで、お詫び申し上げます。
こんな私の物語ですけど、最後まで見てくれると嬉しいです。
では、また次回にお会いしましょう。
 春祭あられ

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18906セレナーデ story8 〜第八楽章〜春祭あられ 2001/12/15 23:53:16
記事番号18759へのコメント

こんにちは。やっと第八楽章が出来上がりました。
もう、あと2,3楽章で終わりですね、このシリーズも。
よろしければ最後まで見てください♪


             ◇◆◇◆◇◆◇


―――――――――すべてが、終わった――――――――――
いや、これはすべてではないかもしれない。彼女・・・・・・リナと、ガウリィにとっては、すべて終わったと思いたい今回の出来事。
戦友―――ルークの死。しかも、赤眼の魔王シャブラニグドゥであったこと。
その事実が、肉体的にも、精神的にも大きな疲労を彼女らに負担させていた。
そしてもう一つ。リナだけの疲労。
今回のことが確実にかかわって、ゼロスと会えなかったこと。
これまでなら、少ないときでも一ヶ月に一回、多いときでは、一週間に一回は会っていたのに、めっきり減り、ここ数ヶ月会っていない。数ヶ月であるのにもかかわらず、何年も会っていないように感じる。淋しさが積もる。
泣きたかった。でも、誰かに弱みを見せるのは気が引けていた。
こんなときに、こんなときにこそゼロスが傍にいてくれたらとどんなに思ったことだろう。
しかし実際にその心を和らげてくれたのはガウリィだった。必要なときに傍にいてくれたのはガウリィだった。
いつも共に旅をしているのだからしょうがないとは思う。これだけ共にいるのに、よく心がなびかないなぁ・・・なんて良く思ったものだ。
いつもは冷静なときに思うこのことが、今は冷静ではないときに思っている。
(ああ、これは本当にやばいかもしれない)
早くしないとこの心はガウリィのほうになびいてしまうかもしれない。そんなことあってはほしくないが、可能性はずいぶんと高くなってきている。
(ああ、どうして来ないの。ゼロス。もう事は終わったでしょうに)
もう中立の立場としての謹慎は解けたでしょうに。手遅れになる前に、早く。早く・・・・・・
「ずいぶんと物騒なこと考えてますね、リナさん」
 ふと近くで声がした。リナは目を開け、自分の寝ているベットの隣を見やる。
そこにはなんとゼロスがいた。なんて間の悪いやつなんだろう。いてほしいときにいないで、ワンテンポ遅れてくるなんて。
「しばらく会えなくてごめんなさい、リナさん。もう、多分そんなことはありませんから」
 ゼロスが、やさしく笑ってくれる。
「本当・・・・・・本当に?」
 リナが手を伸ばせば、その手を取ってくれる。
「ええ。だからお願いです。ガウリィさんなんかになびかないで。僕はやっと、リナさんを誰にも渡したくないほど好きだと自覚できたのですから」
 その言葉を行動で表すように、ゼロスは自らリナに口付けた。リナの暖かさが、体温が冷たい自分に染みてくる。その場所からじわじわとまるで体温が生まれてくるようだ。そんなことはないのに。
「ゼロス、泣いてもいい?」
 リナは、ゼロスの胸に顔をうずめるとか細い声で呟いた。
「ガウリィの前でちょっと泣いちゃったの。それよりもっと、もっと泣いていい?弱みは、他の人にあまり見せたくないのよ」
「ええ、かまいませんよ。僕だけに見せてください。貴女の弱みを。僕も、貴女に見せるから」
 ゼロスは多少震えているリナを強く抱きしめると、そのとたん、小さな声を上げて彼女は泣いた。無言ではない泣き方は、リナがまだ20にも満たない少女なのだということを改めて認識させた。年相応に見えた。
なんて、なんて愛しいんだろう。この想いは絶対にずいぶんと前からあったのに、どうして今まで気がつかなかったのだろう。
気づかなかった自分を、彼は静かに泣きながら呪った。彼女の悲しみを共に感じて、共に泣きながら呪った。
そしてもう一つ。リナの悲しみを今まで感じたことのないほど心地好く感じていることも呪った。
 しばらくして泣き止んだリナに口付けると、ゼロスはそのままベットに寝かせる。
「リナさん、貴女をこのまま僕のものにしてもかまいませんか?同時に、僕も貴女の物にする」
「・・・・・・・・・・・・いい、よ」
 恥ずかしげに、顔を赤くしながら肯くリナににっこりと笑いかけると、ゼロスはお互いをお互いのものにすべく、行動を開始した。
 つまり、彼は彼女をその夜、抱いた。


 朝。リナが目を覚ますとすでにゼロスは隣にいなかった。まだ寝起きの頭をぐるぐると遅く回転させながら、
「何でまたいないのよ」
と、ぶーたれてみた。隣のぬくもりを確かめるが、そこにぬくもりは皆無。ずいぶんと前にいなくなったということになる。
否、魔族のゼロスにぬくもりはない。確かめるだけ野暮というものである。
「う〜ん」といいながら大きな伸びをして、窓を開け、今日一番の風を部屋に入れる。
振り返った先に、“彼女”がいた。ついさっきまでなかった存在。いつの間に部屋に入ってきたのか。
「あんたは・・・・・・受付係のおねーさん!」
そう、そこにいたのは、瘴気の森で受付係をやっていた獣王ゼラス=メタリオムだった。
「リナ=インバース・・・・・・会うのは二度目だな」
ゆっくりと近づいてくる彼女に、多少警戒心を感じて構える。
「私の名はゼラス=メタリオム。ああ、怖がる必要はない。おまえに危害を加えることは一切しない」
「そんなこといったって、信じられるわけないでしょーが。一応あたし、魔王のカケラ二つも倒しちゃってるみたいだし」
「・・・・・・心外だな。私はただ、おまえとゼロスのことについてはなしに来ただけなのだが」
リナの身体がぴくっと反応する。
それでは、ゼロスが今いないのはこのゼラス関係ということだろうか。
「よく聞くがいい。おまえはもうゼロスと会う事はできない。そして私もまた然り。あいつに会うことはできない」
「なっ?!何それ!!」
「ゼロスは・・・・・・獣神官ゼロスは、昨日をもって、消滅した」
消滅した・・・・・・・・・ショウメツ
目の前が暗くなる。身体が震えてくる。どうして?何があった?
あれほど力を持った彼が、何故消滅した?

「もう、悲しまないで・・・・・・僕はあなたに会えたこと、後悔なんてしてませんから」

眠る前に、ゼロスが言った言葉が脳裏によみがえる。夢うつつに聞いた言葉。
それは、今考えてみれば、かなり苦しげに言っていた言葉だった。
もう、そのときに何かあったのだろうか。彼の身に、何か。
「おし、えて。どうして、そんなことが・・・・・・?」


            ◇◆◇◆◇◆◇


 何があったのでしょう。ゼロス消滅させちゃいました。つまり死んじまったわけですが。どうしましょう。
まあ、それは次回のお楽しみということで。
それではまたこれを読んでくれてる方に会えることを祈って。
 春祭あられ

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