◆−闇の残り香 6−白河綜 (2001/10/12 14:59:59) No.17499
 ┣遅くなりました。かおさんへお返事です。−白河綜 (2001/10/12 15:08:13) No.17500
 ┣Re:リナがきづいたかな(笑)−かお (2001/10/12 16:43:57) No.17503
 ┃┗ふふふ、どうでしょう・・・?−白河綜 (2001/10/16 13:26:21) No.17593
 ┗闇の残り香 7−白河綜 (2001/10/16 19:51:16) No.17598
  ┗もしもし?(笑)−かお (2001/10/16 20:13:44) No.17600
   ┗はいはい?(待て。)−白河綜 (2001/10/18 13:22:45) No.17633


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17499闇の残り香 6白河綜 E-mail 2001/10/12 14:59:59



 くっはー!! お久しぶりです!!
 地獄の中間テストも今日で終わり!! 二週間ぶり……くらいでしょうか。……覚えていらっしゃる方、おられますか……?(不安)
 何にしても続きです。
 ここまでの話は、『過去のツリー』に載ってます。もしよろしければ探してみてくださ〜い!!
 さぁ、黒服のおにーさん、お仕事ですよ〜〜!!(笑)


######################################################



  ――――もしも、わたしがわたしじゃなくなったら、あなた……怒るかしら?


 *     *     *     *     *     *     *


 潮風が頬に触れる。
 カモメがすぐ近くを飛び、時折イタズラに目の前を横切っていく。
 何とはなしに、望郷の念を抱かせる景色だ。
 薄雲がたなびく空。耳が痛くなるほどに、良い天気だ。
 だが、全ては意味のないことである。
「…………爆煙舞(バースト・ロンド)」
  シュボボボボッ!!
 瞬間、空へと立ち上った黒い雲――煙。
 うっかりリナの前を横切ってしまったカモメが、全ての羽根を焼かれ、ひょろひょろと、桃色の表皮をさらしながら、頼りなさげに飛んでいく。
 …………嗚呼、哀れなり…………
 不規則に揺れる船上で、リナはその船縁に身を預け、海原を見つめたまま、はぁ、とため息をついた。
「……………………暇ねぇ…………」
 両手で握っている釣り竿は、ピクリともしない。
「…………本当ですね…………」
「これじゃあ、今日の昼飯なしだぜ……」
 それぞれ違う場所で、釣り糸を垂らしているガウリイとアメリアが、少し疲れた声で交互に言う。二人の竿にも、これといった反応はきていないらしい。
 波の音だけが、満ちる…………
  …………ぷちむ。
「だー!! なんでこんなに釣れないのよっ!! こーなったら入れ食いの呪文唱えちゃるっ!!」
「だっ……駄目ですよ、リナさん!! 海でそんな呪文使ったら、どんなお魚さんが来るかわからないじゃないですかっ!!」
「だぁってぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 竿を放り出して駄々をこねるリナ。
 余談であるが、筆者の家族は海釣りを趣味としている。はっきり言って、慣れないと、獲物のかからない釣りは恐ろしくつまらない(個人談)。
 さて。
 暴れるリナを必至でなだめているアメリアの反対側の縁で、ガウリイは竿を垂らしたまま、ぼんやりと空を見上げていた。
 穏やかな昼下がり。
 碧落には薄い雲が浮かび、ゆっくりと時間をかけて形を変えていく。
 昼間は半袖でも寒くはないが、夜は冷え込む季節になってきた。それを実感したのは昨日の夜中。少し風にあたろうと思い、船室から出てきたときだった。
 ……なんで俺はこんな事をしてるんだろう?
 普段、あまり物事に頓着しないガウリイは、釣り糸が波に揺れるのを見下ろしながら、なんとはなしにボーっと考えていた。だが、この自問はすでに答えが出ている。諦めと、少しの情けなさから浮かんだ思いだ。
 …………ナーシャ達と再会して、早十日。
 ナーシャの家で一泊し、マナリートと、何故か付いてくるナーシャも連れて、ハウロ・シティに付くまで三日、そこから港まで四日…………
 そのまま船に乗り込んで――――船上生活三日目の今日、食料が尽きたのである。
「そもそもぉ!! 食料はフーリックさんが十日分用意しておいてくれたんでしょ!? なぁんでもう無いのよ!!」
「リナさんがそれをいいますかぁ!!?」
 アメリアは、呆れとも諦めとつかない様子で脱力し、
「…………リナさんが食べちゃったじゃないですか……お約束な理由ですが…………」
「う゛っ!!?」
 身に覚えがあるため、言葉に詰まるリナ。
 無意識に視線を泳がせる。
 深い深いため息をつき、
「……わたしやゼルガディスさんが、もっと考えて食べないと……っていったのに、リナさんは『いざとなったらお魚さんを捕まえればいいのよv』なんて…………」
 それが、まさしく今の状態である。
 ちなみに現在、お魚さん0匹。
「…………」
 反対側でおこなわれている会話を、聞くともなしに聞きながら、ガウリイは視線を動かし、飽きることなく空を――――……いや、正確には、その青さの中を舞う白……カモメを見つめ続けていた。
 ポツリ、と一言。
「……………………焼き鳥……………………」
  ぴくぅ!!
 一瞬、わめくリナの肩が止まった。


「…………で、コレなわけか?」
「…………はい…………」
 調理された鶏肉をつつきながら、ゼルガディスは軽く嘆息した。
 船室はぬるくて気持ち悪いとの意見から、甲板に出て食事をしている。メニューは、焼き鳥。それだけである。
「…………栄養面から言っても……問題ありの食事だな……」
 リナが、魔法で出した水で入れたお茶を飲みながら、ナーシャは呆れ声を出した。
「こんな食事を続けていては、そのうち体調を崩すぞ。できれば買い出しに行った方がいいのだが……」
「そうだな。このまま真っ直ぐ空竜王(エア・ロード)の神殿に行くには、後七日間船に揺られてねーとだが、陸から行くってテもあるし…… そっちのほうが食事の心配はなくなるしな」
 仲良く寄り添って……いや、ファレスが一方的にナーシャにベタベタしながら、夫婦はかわるがわる口を開いた。ナーシャは、それを嫌がるでもなく、彼の好きにさせている。
 ……はっきり言って、眼を覆いたくなるほど仲むつまじい夫婦である。
 リナは二人のその姿を直視しないようにして、
「…………そのほうがいいわね。
 アメリア、地図ある?」
「はい?」
 言われて、ポケットから小さく折りたたまれた地図を取り出し、広げる。
「今どの辺?」
「…………この辺りだな」
「陸地も近いですね。確か、この辺りの街に、フィリアさんとヴァルさんが暮らしているはずです」
 ゼルガディスが指した場所をみて、思い出したようにアメリアが付け加える。
 リナは、ふむ……と少し考えてから、
「…………そうねぇ……ご飯が無いのはつらいしね」
『お前(リナさん)のせいだろ(でしょ)っ!!』
 ガウリイ・ゼルガディス・アメリアの声が、見事に唱和した。


 その夜。
「…………リナ」
「…………?」
 船室のベットで眠っていたリナは、聞き慣れた者の声に目を覚ました。重い瞼をこすり、顔を上げる。
「…………ガウリイ……?」
 肩を軽く揺さぶって彼女を起こしたのは、案の定ガウリイだ。
 普段からは考えられない真剣な様子で、辺りを窺っている。常とは違うガウリイの様子に、リナも一瞬で覚醒し、枕元にたたんで置いてあった、マントとショルダー・ガードを身につけつつ、布団からでる。
 努めて低い声で、
「…………敵?」
「ああ、多分な」
 ガウリイが言うのである。間違いないのであろう。
「他のみんなは?」
「アメリアはゼルが起しに行ってる。ナーシャとファレスは、先に甲板にでてる」
 ガウリイは、ゆっくりと斬妖剣(ブラスト・ソード)を抜いた。


「…………ファレス……リナ殿達は?」
「すぐ来るさ。それより、ナーシャ。防御魔法、いつでも発動できるようにしとけよ」
「わかっておる」
 軽く肩を竦めてから、すぐさま防御魔法を唱え出す。
 と。
『…………あれ? 今回は二人しかいないの?』
 声が不自然に響いた。
 聞き覚えのある――……
「……あの時の魔族か」
『ご名答』
 くすくすと笑う気配がするのと同時。音もなく姿を現す魔族・グロウ。
 彼は宙に浮いたまま、駆け寄ってくるリナ達に眼をやった。
 嬉しげに微笑んでみせる。
「なんだ、いるんじゃない。僕の知らない人が二人ほどいるみたいだけど……」
 深海の色を纏った魔族は、興味深そうにゼルガディスを見、ナーシャを…………
「…………あれ? あなたは…………」
 怪訝そうな顔をして、じ……とナーシャを見つめる。
 何かを思い出そうとしている顔だ。
 しばらくそのまま悩んでいたが、やがてポンッ、と手を打つ。
 うんうん、と頷きながら、
「そっか。あなたが覇王(ダイナスト)様のお孫さんだね」
 ふわりと、音も立てずに甲板に降り立った。
 極めて友好的な笑みをその端整な顔に張り付け、一歩一歩リナ達に近づいてくる。
「…………魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)」
 低い声で、ファレスが剣に魔力を込めた。
 同じように、隣でゼルガディスが剣を抜くのを確認しながら、
「……で? あんた今回は一体何しに来たのよ?」
「うわっ、なんかあからさまに邪険な言い方だねぇ」
 おかしげに喉を震わせながら、グロウはリナに冷たい視線を向けた。その全身を覆うのは、やはり寒気がするような障気。そこに含まれるものは、圧倒的な力と、それに劣らぬ殺気。
 人の良さげな笑みが消え、弱い者を嬲ることに快楽をみいだす、冷徹な魔族の笑みが浮き出る。
 彼は嗤った。
「『何しに』……って、そんなの決まってるじゃない。
 …………ねぇ、リナ=インバース…… あなたは少し前に、僕の大切な玩具(おもちゃ)を壊したよね」
「……? 玩具……?」
「そう、大切な大切な玩具だった……
 この上もなく純粋で、言われたことを真に受け……落胆・絶望し、まるでゴミみたいな人間のように、甘い負の感情をまき散らす…………そんな玩具だった」
 グロウの眼に、陶然とした色が宿る。
 瞬間、リナは理解した。
 こいつはヤバイ。
 力云々の前に、心が。人間で言えば、十二分に変質者のたぐいに当てはまる。
 恐怖心よりも嫌悪感が勝った瞬間――リナは動いた。
 口早に呪文を唱え、解き放つ!
「覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス)!!」
「崩霊裂(ラ・ティルト)!!」
 すでに唱えてあったのだろうアメリアの呪文と一緒に、氷塊はグロウを直撃した!
 覇王(ダイナスト)グラウシェラーの力を借りた呪文と、精霊魔法中最強の呪文。これは利いただろうと、誰もが思った瞬間――――
  …………ぱ……きん……っ…………
 静かな音を立て、氷塊が真っ二つに割れ、やがて氷の粒子となって消えた。
 ――――ダイヤモンド・ダスト――……
 今までにも、この術がきかなかった敵は、少なからずいた。しかし、こんなにも静かに、また視覚的に美しく破ったのは、彼が初めてだ。
「…………それで?」
 余裕の笑みで言われた言葉に、リナはハッ、とする。
「……こないなら、こっちから行くよ?」
 グロウの両手に力がこもる。
 マズイと思った瞬間――
「虚霊障界(ヴーム・エオン)!」
 ナーシャの声が響く。
 唱えてあった呪文が発動し、一同を包み込んだ!
「……へぇ? あなたはあくまで『人間』でいるつもりなんだね?」
「…………」
 くすくすとからかいを帯びた声に、ナーシャの肩がピクリと揺れる。前方に突き出された細い腕が、小刻みに震えた。
「ねぇ、いつまで猫を被っているつもりなの? どんなに人間のふりをしても――――あなたは化け物でしかないんだよ?」
「…………五月蠅い。……黙れ」
 ぴしゃり、とナーシャがグロウの言葉を止めた。
 防御結界に、さらに力を込める。
 魔族はつまらなそうに眼を細めた。
「…………ま、いいんだけどね……
 さぁ。気を取り直して、ほんの少しだけ、本気になろうかな」
「!!」
 グロウの両手から出る力の奔流が、一際輝いた。同時に、ナーシャの作る結界が軋んだよう。
 ――――マズイっ!!
「アメリア・ゼル・ファレスっ! 防御結界っ!!」
 叫んですぐさまリナも詠唱に入る。が、
(――間に合わない――!!)
 光が、視界いっぱいに広がった。


 …………光に、飲み込まれるかと思った瞬間。
 奇妙な後ろ姿を見た。
 見覚えのある――――

「…………なっ…………」
 耳に入ってきたのは、驚愕の声。
 それと。
「今回の件……この世界の魔族が関わっていると聞いたときは、耳を疑いましたが……
 こんなところで何をなさってるんですか? 覇王神官(プリースト)グロウ」



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17500遅くなりました。かおさんへお返事です。白河綜 E-mail 2001/10/12 15:08:13
記事番号17499へのコメント


 うにぃ。遅くなってしまいました……
 感想ありがとうございますvv
 「彼女」の正体は……もう少しで出てくる予定っす。
 そしてL様……今回もばっちり出しますよv 後半は特にvv
 一応私の中のL様像は、お茶目さんだけど…………?? みたいな感じなので、多分、そんなお方になられると思いますv(文になってないし)

 では。
 毎回毎回短くて申し訳ないのですが。

 白河綜でした。
 …………模試の勉強しなきゃ…………

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17503Re:リナがきづいたかな(笑)かお E-mail 2001/10/12 16:43:57
記事番号17499へのコメント

こんにちわ♪わざわざ、前回のレス返し、どうもなのです!!
始めの人物は、未だに分からない・・しくしく・・。
おとなしく、答えをまつのです・・。
しかし、グロウ君♪エル様の『お友達(笑)』に対して、そんな口、きいて(笑)
お仕置き決定でしょう(爆!)
ゼロスも大変ですねー(笑)ナーシャがエル様のお友達と知ってる身にとっては(笑)
・・しかし、以前から、どんだけ、ゼロス・・エル様に遊ばれたんだろーか?
よく、滅びんかったなー・・。(なぜか、感心・・笑)
あと。リナちゃん!!後先考えずに、どんどん食べるのは、やめましょう(爆!)
ま、いざとなったら、ドラ・スレでも、海にぶちかましたら、魚・・
浮いてくるのではないでしょーか(笑)
それか、入れ食いの呪文唱えたら、引っかかるのは、さめとかだったりして(笑)
はては、半漁人とか(爆!)
・・はっ!!話がだっせんしてる!!(汗)
ではでは、短いですが、感想なのです。
追伸・エル様登場♪楽しみにしてるのです〜♪

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17593ふふふ、どうでしょう・・・?白河綜 2001/10/16 13:26:21
記事番号17503へのコメント

かおさんは No.17503「Re:リナがきづいたかな(笑)」で書きました。
>
>こんにちわ♪わざわざ、前回のレス返し、どうもなのです!!

 いえいえそんな・・・。
 遅くなってしまってすみませんでした。毎回ありがとうございますvv

>始めの人物は、未だに分からない・・しくしく・・。
>おとなしく、答えをまつのです・・。

 泣かないで(汗)
 次の話ですこおぉぉぉしだけですが、彼女には触れています。何だか、作者の知らないところで話が大きくなってまして・・・こんな大物扱っていいんかい! でも、エル様出しちゃってるし、いいか・・・

>しかし、グロウ君♪エル様の『お友達(笑)』に対して、そんな口、きいて(笑)
>お仕置き決定でしょう(爆!)

 もちです!! 彼には地獄を見ていただきましょう(笑)

>ゼロスも大変ですねー(笑)ナーシャがエル様のお友達と知ってる身にとっては(笑)
>・・しかし、以前から、どんだけ、ゼロス・・エル様に遊ばれたんだろーか?
>よく、滅びんかったなー・・。(なぜか、感心・・笑)
>あと。リナちゃん!!後先考えずに、どんどん食べるのは、やめましょう(爆!)
>ま、いざとなったら、ドラ・スレでも、海にぶちかましたら、魚・・
>浮いてくるのではないでしょーか(笑)

 うおおっ! だぁいったぁんっ!!
 でも・・・いいかもしれない・・・

>それか、入れ食いの呪文唱えたら、引っかかるのは、さめとかだったりして(笑)
>はては、半漁人とか(爆!)

 ヌンサですか?

>・・はっ!!話がだっせんしてる!!(汗)
>ではでは、短いですが、感想なのです。
>追伸・エル様登場♪楽しみにしてるのです〜♪

 今夜アップする予定の話で出てきます。

 そりでは! 白河綜でした!
 はっ!! チャイムが・・・(実は学校だったりして・・・)

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17598闇の残り香 7白河綜 E-mail 2001/10/16 19:51:16
記事番号17499へのコメント


 こんばんは。『闇の残り香 7』をお送りします。
 前回同様、時の流れはとっても緩やか(爆)。おそいっちゅーん。
 まだまだ話の元が出てきませんが、今回はすこおぉぉしだけ(本当に・笑)でてきてます。皆様、毎回冒頭を飾っている『彼女』を推理してみてください。
 すっごく意外な……っていうか、こんな大物だしていいんか…………(汗)

 それでは。

#######################################################


「流石だな。空竜(エア・ドラゴン)の精鋭部隊を一瞬にして壊滅させた……か」

  ――――わたしに力を貸してくれたヒトが言う。でも、それはとるに足らない事。

「次は何処を狙うのだ?」

  ――――馴れ馴れしく問い掛けてくる、声。

「ΠδεφЖёцжяэюЫбадлФ…………ΣβηνΥζαμΨги」

「…………ほぅ…………。徹底的に、か。
 好きにするがよい。お前は我の部下であって、そうではない存在。お前の『望み』は、そのまま我の望みへと繋がる」

  ――――わたしよりも、弱いくせに――――

「さぁ、そろそろ行った方がいいだろう。…………武運を。フィー」


*   *   *   *   *   *   *   *   *   *  *


 光が失せた後、リナ達の眼に入ってきたのは、呆然とした顔のグロウ。それと、見覚えのある後ろ姿。
「…………ゼロス?」
 おかっぱの髪に漆黒の神官服の、言わずと知れた中間管理職・ゼロス。
 どうやら、彼がグロウの攻撃から、一同を守ってくれたようである。
 後ろを振り向いたゼロスは、いつもの笑みを浮かべて、
「いや〜皆さん。お久しぶりですね。御元気そうでなによりです」
 この状況お構いなしにいつもの挨拶。
「御元気ぢゃな〜〜〜〜いっ!!」

  すぱーんっ!!

リナの十八番(オハコ)、スリッパ攻撃が、眼にも止まらぬ早業で鮮やかに決まった!
 突然のことに、錫杖を持っていない手で頭を抱えるゼロス。
「〜〜〜〜っ! 痛いじゃないですかぁ!! せっかく助けてあげたのにっ!!」
「じゃかしいっ!!
 第一、あんたが守ったのは『あたし達』じゃなくて、『ナーシャとその他大勢』でしょっ!! 大方、ナーシャに何かあったら、またエルに何か言われるんで守ったんでしょーがっ!!?」
 荒い息づかいで一気に捲し立てるリナ。肩を上下させながら、どこぞの宿屋ですくねてきたと思われるピンクのスリッパを、ごそごそと懐にしまう。
 相変わらずのニコ眼で、ゼロスはいけしゃあしゃあと、
「決まってるじゃないですかv
 …………なんたって、ナーシャさんのバックにはエル様が付いてますからねっ。万が一にも彼女に何かあったら、僕達魔族は本懐を遂げる前に、あのお方に滅ぼされちゃいますっ!!」
「滅ンどけ!! いっそっ!!」
 後半、まぢな顔をしてアップで迫ってくるゼロスの顔に、拳をぶつけつつリナは叫んだ。当然のごとく避けられたが。
 …………ゼロスのこの様子。
 一年前の一件の後、相当絞られたとみえる…………
「……エル……」
 ファレスに守られるようにして、彼の影にしゃがみ込んでいたナーシャが、虚空に向かって声をかけた。
 グロウの魔力を防いでいたために痺れる腕をさする。
 知的な光の宿る赤銅の瞳を半眼にして、
「…………貴女(きじょ)はそのように目下の者をいたぶって…………楽しいのか?」
『だいじょーぶよ。ゼロスだし』
 呆れたような声に反応したのは、何とも形容しがたい声だ。
 ――――涼やかな…………違う。こういう声を涼やかとは言わない。
 ――――細い…………いや、決して細くはない。
 ――――凛とした…………。…………近いとは思うが、やはり違う。
 あらゆる女性の声をごちゃ混ぜにしたら、こんな声になるだろうか。
 全ての者の母は、姿の実体化はせずに、意識だけを―――元が、意識と力そのものの存在なのだから、こんな言い方はおかしいが―――飛ばして、事の成り行きを見守って…………否、見物していた。
 今も、声だけを飛ばし、ナーシャとの会話を成立させている。
 ナーシャは、形の良い弓形の眉を顰めた。
「…………なんだか、ゼロス殿が酷く哀れに思えてならぬよ」
『いいじゃない、別に』
 気配でエルが笑ったことがわかる。
『……なんにしても、人間も魔族も神々も、あたしにとってはただの玩具(おもちゃ)。あたしを楽しませる物でなければ、そんな存在要らないし』
 あっさりと、当然のように紡がれる言葉。
 ファレスはピクリっ、と肩を震わせた。妻と同じように虚空に眼をやり、
「…………そういうこと言うと、あんたが『絶対者』なんだって実感がわくな」
『……何? ファレスは今まであたしをどういう眼で見てたわけ?』
 どうやら眉をひそめたらしいエルに、恐れも遠慮もなく、きっぱりと、
「人ン家の奥さんを睡眠不足に追い込んでる元凶。」
 自らが『絶対者』と認めた存在(モノ)に対して、事も無げに言う。
「…………まぁ……間違ってはおらぬぞ、ファレス」
「だろ」
『…………あんた達…………』
 エルは、どうやら嘆息したようだった。
 姿は見えないが、多分苦笑しているのだろう。笑いを含んだ声で、
『やっぱりあんた達はおもしろいわ。初対面から今まで……二人して、あたしを恐れる様子が全く無いんだもの。
 …………まぁ、あたしを恐れるようなら、結婚なんてさせなかったけどね』
 フフフっ、と笑う気配。
『懐かしいわねー。確か最初はファレスが一方的に口説いてたんだっけ?』
「うっせー」
 ファレスは頬を赤くして、そっぽを向いた。
 ナーシャも顔を桃色にして、困ったように視線を彷徨わせている。
(――――こいつら…………)
 ゼルガディスは、ため息がこぼれるのを禁じ得なかった。
(よくもまぁ、敵と戦ってるって時に、漫才したりいちゃついたりできるもんだ)
 軽い頭痛が襲ってきそうだ。
 ゼルガディスは2・3度軽く頭を振り、呆然としているグロウを睨みつけた。
 ――――呆けている今がチャンスだ。
 彼は口の中で小さく呪文を唱え――――
「…………くっ…………あ……は……っ…………」
 不意に、グロウが腹を折って笑い始めた。思わずゼルガディスは唱えていた呪文――――精霊魔法系最大の呪文・崩霊裂(ラ・ティルト)を中断した。
 一同の意識が、再びグロウに集中する。
「…………何を笑っているのですか?」
 錫杖を構えたゼロス、が油断無くグロウを見据える。閉じられていた眼が開かれ、紫暗の冷酷な瞳が顔を出した。
 グロウは、なおも嗤っている。
 深海の瞳には、剣呑な光が差していた。
「……だって、あなたはおかしいと思わないの?
 獣神官(プリースト)ゼロス…………あなたほどの魔族が人間なんかを守るの? これをおかしいと言わずに何と言うんだい?」
 くすくすと、優しく冷徹な魔族の顔で。
「そんなこと、魔族のすべきことじゃないよね? あなたも憶えているだろう? 冥王(ヘルマスター)フィブリゾ様の一件……確か直接関与してたもんね。
 …………あの御方がいい見本さ。『人間なんかを利用しようとしたから、聞くに堪えない愚かしい最期を迎えたんだ』…………ってね」
「…………」
 ゼロスは、何も言わない。
 …………元々、ゼロスは冥王(ヘルマスター)に、あまり良い感情を抱いていなかった。
 仮にグロウもそうだったとしても、リナはこの魔族が発した言動には耳を疑った。
 …………魔族は元来、上のものには絶対服従である。ゼロスも、フィブリゾをを快く思ってはいなかったが、悪口を言ったことは無い。
 それが、こいつは。
「…………相変わらずですね…………」
 ゼロスがいつになく低い声で呟く。
「ありがたい教訓を残してお亡くなりになってしまったフィブリゾ様に、敬意を表したんだけど?」
 おかしそうに喉を震わせながらグロウ。
 ゼロスは不愉快だ、とでも言うように、
「……僕は、今回の覇王(ダイナスト)様の暴走を止めるよう、獣王(グレーター・ビースト)様、そして海王(ディープシー)様から仰せつかって来ました。
 確認の意味を込めて、一応、聞いておきましょう。
 今回の一件、覇王(ダイナスト)様は御自分が何をやっているか理解して実行していらっしゃるのですか?」
 ゼロスの瞳の光が、いっそう輝きを増した。
 相手を威圧する輝き。並みの人間なら、この視線だけで精神が崩壊してしまうだろう。
 グロウは微笑んだまま、ゼロスの攻撃的な眼光を軽くいなして、
「何を聞くかと思えば……。当たり前じゃないか。我が君の策は完璧だよ」
「嘘ですね。あなた方はわかっていない。『アレ』は僕らの手には負えません。今すぐ『アレ』を元に戻し、滅ぼすべきですっ」
「ちょ……ちょっと、…………ゼロス…………?」
 いつになく強い調子で語るゼロスに、一同は混乱する。
 ――――『アレ』って言うのは、多分空竜(エア・ドラゴン)を滅ぼした奴の事よね?
 ――――……話の内容からいって、裏で糸を引いているのは覇王(ダイナスト)……
 ――――でも、獣王(グレーター・ビースト)と海王(ディープシー)は関係ないの?
 ――――それに…………。手に負えない…………って?
「…………一体何がどう…………」
「あなたが知る必要はないよ、リナ=インバース。
 あなたは我が主覇王(ダイナスト)様を辱め、僕の大切な玩具(おもちゃ)を壊した。『アレ』は真っ先にあなたを狙う」
「!!?」
「我が君が、あなたのことを『あなたが目的を達成するための最大の障害』とふきこんでいたから」
 にっこりと微笑む。楽しくて楽しくて仕方ない、という笑みだ。
 ――――と。
 不意にその姿がかき消える。
 逃げたのだ。
『魔を滅する者(デモン・スレイヤー)リナ=インバースだけならともかく、獣神官(プリースト)ゼロスにまで出てこられちゃ、僕に勝ち目はないからね』
「逃げるとは卑怯なっ!!」
 びしっ、と虚空を指さし、声を張り上げるアメリア。
「前回も今回も、あなたは一撃放っただけですぐに帰っちゃって、わたし達がやり返す暇が無いじゃないですかっ!!」
 と、何だか無茶苦茶言っている。
 …………今までさんざ無視をされて、イライラしているようである。
 ここぞとばかりに『悪』の糾弾にかかろうと意気込んだよう。
 しかし。
『……………………この前も思ったんだけど……あなたは可愛らしいよね…………いじめやすそう…………』
 その言葉を残して、覇王神官(プリースト)グロウの気配は完全に消え失せた。
  ぞわわわわわっ!!
 全身を硬直させ、倒れかけるアメリア。
 素早く隣にいたゼルガディスがそれを支える。
「しっかりしろ、アメリア!」
「う゛う゛う゛う゛う゛…………気持ち悪いですぅ…………」
 涙声で訴えてくるアメリア。怯えまくっている彼女を、ゼルガディスが何とか立ち直らせようと慰める。
 その横では。
「…………なぁ、リナ…………」
「……何……」
 アメリア同様に、全身にサブイボを走らせながら答える。
 ポリポリと頬をかくガウリイが、普段と全く同じ様子で、
「…………ああいうの、何ていうんだっけ?」

 ――――Answer/サド。

  

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17600もしもし?(笑)かお E-mail 2001/10/16 20:13:44
記事番号17598へのコメント

こんにちわ。エル様、出ましたね(はあと)
しかし・・グロウ(笑)エル様の声が聞こえてて、・・気づいてないんかい(笑)
エル様がバックにいる(爆!)とゆーことに。(笑)
覇王や、グロウなんか、一瞬で消滅させられる存在なのに(笑)
それとも、あの『台詞』をきいても、金色の魔王と気が付いてないのだろーか(笑)
しかし、まだ前の女性・・分かりません(涙)
・・誰だろ?フィーって・・?(思いつかない・・)
ま、エル様には、勝てないのは当たり前だけど(爆!)
・・・ついでに、エル様直々に降臨して、(もちろん、エル様の姿で・笑)
・・覇王をいじめないかなー♪←鬼畜。
ではでは。短いですが、感想(になってないけど)でした。

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17633はいはい?(待て。)白河綜 2001/10/18 13:22:45
記事番号17600へのコメント

かおさんは No.17600「もしもし?(笑)」で書きました。
>
>こんにちわ。エル様、出ましたね(はあと)

 声だけv(笑)

>しかし・・グロウ(笑)エル様の声が聞こえてて、・・気づいてないんかい(笑)
>エル様がバックにいる(爆!)とゆーことに。(笑)
>覇王や、グロウなんか、一瞬で消滅させられる存在なのに(笑)
>それとも、あの『台詞』をきいても、金色の魔王と気が付いてないのだろーか(笑)

 はい、一応気づいてますが、彼はチャレンジャーなので(オイ)。それと、フォローするようですが、彼は魔族の中でも異端者です。彼にとっての「絶対者」は何をどう言われようと、覇王ただ一人なのです。しかし、ここまで変態にするつもりはなかったのに・・・(汗)

>しかし、まだ前の女性・・分かりません(涙)
>・・誰だろ?フィーって・・?(思いつかない・・)

 ヒント。
 頭文字じゃないんですよ〜。

>ま、エル様には、勝てないのは当たり前だけど(爆!)
>・・・ついでに、エル様直々に降臨して、(もちろん、エル様の姿で・笑)
>・・覇王をいじめないかなー♪←鬼畜。

 ふふふ。魔族危うし!! ですねvv

>ではでは。短いですが、感想(になってないけど)でした。

 毎回ありがとうございます。
 白河綜でした。


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