◆−生誕祭(18)−あごん (2001/9/12 01:11:44) No.17076
 ┣まってました♪とはじめまして♪−かお (2001/9/12 10:02:07) No.17080
 ┃┗お待たせしましたvvと初めましてv−あごん (2001/9/14 23:56:58) No.17138
 ┗おっv−みてい (2001/9/12 16:58:41) No.17087
  ┗ひょっv−あごん (2001/9/15 00:25:27) No.17140


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17076生誕祭(18)あごん E-mail 2001/9/12 01:11:44


「リナ!ガウリイさん!殺さないように気を付けて!」
 アメリアの声が一瞬リナとガウリイの動きを止める。
 二人はアメリアに視線を送り、力強く頷いた。
 確かにゼルガディス達の相手が騎士であるのは一目瞭然であるし、騎士であるということは誰かある程度の権力を持った人間がその背後にいるということ。事情を知ってからでも殺せるが、殺してから後悔するのは愚か者のすることである。それはすぐにリナも納得した。 
 そして始まる戦闘は苦戦には程遠いものであった。
 陽の光をきらりと跳ね返しながら細身の剣が空を疾り、その一瞬後には血飛沫が緑の葉に降り注いだ。春の陽光に育てられたまだ淡い緑の葉々が朱の斑を描いた。
 黄金の甲冑を着込んだ騎士の姿をした者達の最後の一人が地に倒れ伏したのと、刀身を紅く染め上げた細身の剣をゼルガディスが鞘に収めたのは同時だった。
 短く激しい戦闘が終わりを告げたのもこの時だったのだが。
 ゼルガディスは目深に被ったそのフードを上げると、後方に佇む抜き身の剣を提げたガウリイへと目をくれた。その硬質そうな口元が緩いカーヴを描き、それを見たガウリイもまた口の端だけに笑みを作ると、左手を軽く上げた。それだけで男同士の挨拶は済んだようだった。
「久しぶり。ゼル」
 リナが不敵な笑みを湛えながらゆっくりとゼルガディスの元へと歩み寄る。その後にアメリアが続きにっこりと笑う。
「お久しぶりです。ゼルガディスさん」
 身体ごとそちらへ向くと、ゼルガディスは不慣れな笑みを作り右手を上げた。
「ああ。久しぶりだな。まさかあんたらにこんな場所で会うとは思わなかったが」
「そりゃこっちの科白よ」
 約一年半ぶりに出会う四人が小さな輪を描いた時、
「ゼルガディスーーーー!!オレっオレにも紹介しておくれよ!!ってゆーかオレを紹介してくれよ!!」
 なんとも気の抜けるような声が場にいた者の耳に届いた。
 ゼルガディスは苦虫を噛み潰すような渋面を作り、やれやれと肩を竦めたのだった。その視線の先には十五・六歳の少年が両手を上げて小走りにこちらへ駆けてくる姿があった。
 
「こいつはチェードだ。俺の依頼人でね」
 厭そうな顔でゼルガディスが少年――チェードを紹介すると、チェードは満面の笑みを浮かべた。人懐こっそうなその表情はまるで子犬のような印象を人に与える。
 チェードは健康そうな伸び伸びとした肢体を大袈裟に前方へと折り曲げる。陽によく灼けた浅黒い肌は好ましい。髪は少しくすんだ金髪だが、どういう意味があるのだろうか。付け毛なのか本物なのかは判断できないが、黒髪のおさげを一本自らの髪に編みこんである。
「ご紹介に預かりまして。オレはチェード。綺麗なお姉さま方のお名前なんて教えてもらえたら恐悦至極だったりするんだけど」
 どうやら人懐こいと云うようりも馴れ馴れしいとでも云った方が的確であるようだが、リナとアメリアは綺麗と言われ、悪い気はしないようだ。
 二人は視線を交わしてから、苦笑すると、
「あたしはリナよ。リナ=インバース」
「アメリアです。アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン」
 簡潔にそう自己紹介をした。
「リナさんにアメリアさんかぁ。こう口の中でしっとりと溶け込むような、なんだか懐かしい子供の頃に食べた甘いお菓子みたいな印象だな。きっとお二人もそういう感じの女性なんだろうなぁ」
 うっとりと瞳を潤ませながら歯の浮く科白を吐く少年を、二人は眉をしかめて見た。そしてゼルガディスへと視線を転じる。その目は微量の困惑と大量の疑念を孕んでいたのだった。つまり。
 何なのだ、この少年は、と。
「あ〜、気にするな。チェードはちょっとした病気だとでも思ってくれ」
「はぁ?病気ぃ?」
「病気とは失敬な!これはオレの生きる上でのポリシーだいっ!」
 ゼルガディスの声に、リナとチェードの声が同時に応じる。
「こいつはな。女を見たらとにかく声をかける性質らしい」
「ナンパ君ってことですか?」
「ちがうよ!アメリアさん!それは誤解っ!この広い世界で出会えた偶然をオレはただ通り過ぎたくないだけ!大事にしたいんだ、出会いってとっても限られたモノだから!!ただし女性限定なんだけどっ!」
 必死でアメリアに弁明するチェードにゼルガディスは肩を竦める。
「と、まぁこういう言い分らしいんだがな」
「出会いねぇ。ま、言いたいことはわからんでもないけどね」
 リナが短く苦笑してゼルガディスを見上げた。
「俺はガウリイ、ガウリイ=ガブリエフ。よろしく、え〜〜っと………」
 最初は無駄に明るい声で自己紹介をしたが、やはりというか、チェードの名前がわからないらしくガウリイは隣に佇むリナに助けを求める視線を送った。
「短い名前くらい一度で覚えなさいよっ!チェードよ、チェード!」
「ををっ!そうだった!チェードね、チェード。うん、チェードよろしくな!」
 半ば本気で怒った口調のリナに、ガウリイはのほほんと応え、チェードに向かって右手を差し出した。その大きな手を不思議そうに見つめてから、
「オレ、男とは手を繋ぎたくないんだけど」
 申し訳なさそうに声を低くして、ガウリイを見上げた。
 その声に、一同は軽く笑いあった。戦闘の後のぎこちない空気を一掃するのに、チェードはひどく活躍したようだ。
「で、そっちの連れでかなり怪しいのがいる理由を俺は聞いた方がいいか?」
 不機嫌なゼルガディスの声はゼロスの厚そうなそのにこやかな顔肌に当たって散った。リナはガウリイを見上げてから、小さく息を吐いた。
「ご自由に。それでゼルに被害が及ぶよーなモンじゃないのだけは言っとくけど」
「ふん。じゃあ聞かないでおこうか。聞けば後悔するような気がする」
 淡々と言ったその言葉に、リナは意味ありげな笑みを浮かべた、が、すぐさまその顔はアリーンへと向けられた。
「んで、ゼル、チェード。この子はあたし達の依頼人で………」
 ゼルガディスとチェードの視線が、ガウリイの後方の木にもたれかかったなりの黒髪の子供へと注がれた。
「アリーンだ」
 簡潔に、というよりも素っ気ないその自己紹介に、二人はやや眉を顰めた、が、チェードはすぐに表情をくるりと変えた。
 まだまだ少年である為そうとは感じ取れないが、見るものが見れば「スケベ面」と評するかもしれない種の表情であった。
「アリーンちゃんかぁ。十年後が楽しみだねぇv」
 チェードが膝を土に付けてアリーンと正面から視線を合わせる。
 その言葉にリナとアメリアの眉が微かに動きを見せた。
「………ね、ちょっと。あなたその子が女の子に見えるの?」
「………男の子なのかい? てっきり女の子かと思ってた………」
 リナの言葉にチェードは戸惑いながら返答した。ゼルガディスもまたそれを受けて意外そうな顔をした。
「ほう。俺もてっきり女かと思っていたが」
 ゼルガディスの反応に、リナとアメリアは顔を合わせ、アメリアが小声で呟いた。
「三対二。形勢は不利なのかしら?」
「あ、そうか。ガウリイもアリーンは女の子だ、って言ってたっけ」
 言いながら見上げたガウリイは少し困った顔だった。
「ん〜〜、ぱっと見はそう思ってたんだけどなぁ。最近はなんだかわからん」
「ふぅん。そーなんだ」
 傍で聞いている方にとってはかなり意味不明な言葉の応酬だったのだろう。ゼルガディスとチェードはますます眉を顰めてリナ達を見た。
「なんだ? その会話は」
「あぁ、アリーンはね、性別不明の年齢不詳の謎が謎呼ぶ無敵の依頼人なのよ」
 あっけらかんと言ったリナに、ゼルガディスは疑わしげな視線を送った。
 つまり。
 ―――そんなあからさまに怪しい依頼を受けるなよ、と。
「三対二ってことは?」
「わたしとリナは男の子に見えたの」
 首を傾げるチェードにアメリアが短く答えた。
「? でもここには今、本人以外で六人いるんだけど」
 素朴だがもっともな疑問はしかし、チェード以外にとっては答える時間も勿体ないような代物である。
「あそこにいるいかにも怪しい神官風味のエセ物体は何事に措いても全物象の対象にはなりえないんです」
「密かに意味がわからないんだけど………」
「要するに、極力関わりを避けたい相手、ということです」
 さばさばとした物言いのアメリアに、チェードは僅かに目を見開いた。可愛らしい外見からは想像できない毒舌の為であろうか。
「でもそーいやそうだよな。ゼロスに訊いてなかったなぁ」
 ガウリイがのんびりとゼロスへと振り返る。
「ゼロスはどっちに見えるんだ? 男か女か」
 突然投げられた質問に、ゼロスは迷う様子も見せず、
「人間に見えます」
 短くそう答えた。
「それはわかってるよ。男か女かを訊いてるんだけどな」
 不服そうなガウリイにゼロスは肩を竦めた。
「そんな人間の性別なんて僕にわかるわけないじゃないですか」
「わかんないの?」
 驚きを隠さないままでリナは声を上げた。その言葉はその場にいる全員を代表しているのか、アメリアもガウリイもゼルガディスも驚きの表情を持っていた。
「当たり前ですよ。リナさん達だってそうだと思うんですが、昆虫の性別を一瞥しただけで判別がつきますか? それも幼虫だったらどうです? それと同じですよ。僕たちにとっては人間の性別なんて興味のキの字もないものなんです。それでもまだ成年でしたら区別もつきますけどね、幼児ともなるとわかりませんよ」
「あたしらは昆虫かい………」
 あっけらかんとしたゼロスの言いようにリナは脱力したように小さく呟く。
「わたしはこう見えても結構昆虫好きですから、違いが判るほうですけど」
「それはこの際、話に間接的にも直接的にも関係ないだろうな」
 どこか憮然としたアメリアに、ゼルガディスは意外なほど優しい声でそう答えた。彼にとってはアメリアはひどく無邪気な妹めいたものなのかもしれない。
「あの〜〜………」
 おずおずと挙手するチェードに全員の視線が集中した。
「話が驚くホド見えてないんですが………」
 その声にガウリイが笑顔で応えた。
「このゼロスは魔族なんだよ。だから性別の区別がつかないって話だな!」
「………………………ま、ぞ………く?」
 ぎこちないチェードの態度にも、ガウリイは満面の笑顔である。
「そう。魔族」
 沈黙。
 否、静寂。
 その後には、
「まぁぁあぁぁぞぉぉおぉぉぉおくぅぅぅぅぅぅうぅっっ!!??」
 大袈裟といえば余りにも大袈裟なチェードの悲鳴が響き渡った。
「あのねー、ガウリイ。ふつーの人達にとっちゃ魔族なんて一生に一度見れるかどーか、ってモンなのよ?」
 こめかみに指をあてがい、疲れたようなリナに、
「ほへ? そーなのか?」
 いまいち判っていない表情でガウリイがリナを見返したのだった。
「………ひとつ、思ったことがある」
 ぽつりと呟く声の主は石の肌を鈍く光らせた。
「はい?」
 隣に佇むゼルガディスをアメリアは上目遣いに見た。
「あの子の性別、というのかな」
 その科白にリナもガウリイも動きを止めてゼルガディスに意識を集中した。チェードは未だにぶつぶつと独白を続けている。内容はというと、魔族がなぜこんな所に、とか、魔族がそんな簡単に人間の前に姿を現すなんて、等、ゼロスに――正確に言えば魔族に――関することのようだった。
 それを誰一人とて気にせず、ゼルガディスの声が風に乗った。

「ひょっとしたら男には女に見え、女には男に見えるんじゃあないか?」

 その言葉に。
 アリーンは目を僅かに細めたのだった。 

「こちらも訊いた方がいいのかしら?ゼルガディスさん」
 リナの言葉を継ぐように、アメリアがゼルガディスを見据える。
「なぜ、薔薇騎士団(ローゼナイツ)に襲われていたのか、を」
 アメリアの深く青い目が、騎士達の甲冑にある薔薇と剣の紋章を見詰めていた。
「それは訊かない方がいいだろうな。でないと巻き込まれる」
 ゼルガディスの淡い青がアメリアを正面から捉えた。
 ガウリイは、薔薇騎士団(ローゼナイツ)という言葉に。
 少し厭な予感を覚えた。
 それは脳内で形を造る前に霞のように朧げとなり、煙のように消え失せた。
 アリーンは瞑目した状態で木に背を預けたままで。
 ―――小さく微笑した。


 少し血の匂いがきつい、とアリーンが訴えた為、一同はやや離れた場所に移動した。本当に気分が悪いのか、アリーンは「血に酔ってしまう」と呟くと木陰で横になった。
「オレ、あいつらが気を失ってる間に縛り付けに行ってくるよ、ゼルガディス」
 チェードがゼルガディスの袖を数回引っ張りそう口を開いた。
「………油断するなよ」
「わかってる。いざとなればオレにはこれがあるさ」
 にやりと笑うと、チェードが腰にある十本程あるナイフをちらつかせた。それを見てゼルガディスは小さく頷く。
 じゃ、と軽く手を上げながらチェードは小走りに倒れた騎士達のいる方向へと消えた。どうやら話が込み入りそうな気配を読んで、気を使って席を離れたらしい。
 全員の視線がチェードを見送ってから再び戻った。
「で、薔薇騎士団って何よ?」
 リナが小首を傾げてゼルガディスとアメリアを交互に見遣る。
「訊かない方がいいと言っただろうが。これはこっちの問題だ」
「………ややこしい話、ですか?」
 アメリアがゼルガディスの顔を覗き込むようにしてこちらもまた首を傾げた。
「やっかい事、だな」
「儲け話ってこと?」
 人の良いとは決して表現できない種類の笑みを顔に乗せるリナにゼルガディスは嘆息した。
「君子、危うきに近寄らずという格言を贈ろう」
「儲け話を見逃す商売人は失格だわ」
 間髪入れないリナの返答をゼルガディスは無視することにしたらしい。視線をアメリアに転じる。
「正義の使者の連れが単細胞生物以下のその理由は?」
「た………単細胞って………。そりゃあ細胞なんてありませんが………。もう少し言い様ってものがあるとか思うんですが、誰も聞いてませんねぇ。いいですけど」
 ゼルガディスの言葉にぶつぶつと反応したゼロスの言う通り、誰もがそれを聞き流し、アメリアが大きな瞳をリナとガウリイへと向ける。
 わたしから話してもいいのか、とその瞳が語っていた。
 その視線をガウリイが受け、ん〜〜、と低く唸ってぽりぽりと頭を掻いた。
 刹那。
「うわああああああああああああああああああっっ!?」
 変声期を迎えていない少年の叫びが緑の森に木霊した。
「チェードっっ!!?」
 咄嗟に剣を抜いたガウリイとゼルガディスが身を翻し、叫び声の方向へと足を踏み出した。
 だが、踏み出した足がぴたりと止まる。
 そこには何時目を覚ましたのか、黄金の甲冑の騎士――薔薇騎士団の一人が立ち上がり、がっしりとチェードを後ろから羽交い絞めにして、その喉元に剣を当てがっていたのだ。チェードの顔は完全に血の気を失っている。
「この餓鬼の生命が惜しいのならば、近付くな」 
 静かで低い声であったが、迫力が充分に伝わる声音だ。
「この場は大人しく退こう。だが貴様らの顔は――覚えた」
 ゼルガディスの肩が顕わに震えた。
 それはとりもなおさずリナ達をこの件に巻き込んだという事実になる。短い舌打ちが漏れた。
 リナもそれに倣うかのように舌打ちをする。
 他の騎士達は距離を置いたこの位置からでも既に絶命しているのが知れた。
「………この餓鬼の生命もとりあえず預けておこう。後ほど奪りに来るがな」
 血走ったその目が、チェードをぎとりと睨みつけている。かちかちと震えるチェードの歯が音を立てるのが聞こえる。
 じりじりと退りながら、騎士はリナ達との距離を大きくしていった。やがて安全圏に入ったことを認識したのか強い力でチェードを突き放し、おまけとばかりにその背に剣を走らせた。
「うぐぁっ!」
 チェードの短い苦鳴が全員の鼓膜を震わせた時、一斉に足が動き駆け出した。

 幸い、というべきか。チェードの傷は浅いものだった。
 アメリアが呪文を紡ぐと、その白い手が優しく暖かい癒しの光を生み出し、その傷を治療した。
「治癒の呪文で治るくらいで良かったですね」 
 安堵に胸を撫でながらアメリアがチェードに微笑みかける。実際、騎士の凶刃は皮一枚を斬っただけにすぎなかったのだ。
「ありがとう、アメリアさん」
 チェードがアメリアの手を固く握りながら謝礼を述べるが、アメリアは微苦笑ひとつしてそれを優しく振り払った。
「さて、なんとか落ち着いた所で事情を聞かせてもらいましょーか? ゼル?」
 リナがその射抜くような視線をゼルガディスへと向けた。ゼルガディスは大きなため息をひとつ落としたのだった。
 これは事情を話さないわけにはいかなくなった。
 完全にリナ達を巻き込んでしまったのだから。


「この話は国家レヴェルに匹敵するかもしれない。それでもいいか?」
 重々しく口を開くゼルガディスにリナ達は暫く沈黙した。
「………ズイブンと穏やかじゃないこと言うわねぇ。あたしはあんたを信じてるけどさ、その話では勿論ゼルは………、アメリア風に言うと正義になってるわけ?」
 半眼になってリナがゼルガディスを見据える。ゼルガディスは口の端を皮肉げに曲げてみせた。
「あんたらしくないこと言うんだな、リナ。正義かどうかなんて当事者に判断が下せるワケないだろう。そんな判断は後日、どこかの誰かが下すモンさ」
「正論だわ」
 リナは左右の眉を対称に上下させながら短くゼルガディスの論を認めた。
「オレから話そうか?ゼルガディス」
 おずおずとチェードが右手を挙げながら隣に座るゼルガディスを見上げた。
「そうですね。チェードさんがゼルガディスさんの依頼人ならばそうしたほうが良いかも。照れ屋なゼルガディスさんのコトですから上手に表現できないこともあるんじゃないですか?」
「………どーゆー意味だ、それは」
「解釈は個々それぞれですけど」
 呻くようなゼルガディスにしれっとアメリアは視線を合わせる事なく淡々と答えた。
「………違いないな」
 苦笑してからガウリイがアメリアの頭をぽんぽんと叩き、続いてゼルガディスの肩に手を置いた。
「お前のことだから美談めいた話はできないんじゃあねぇの?」
「相変わらずだな、あんたらも」
 疲れた口調でそれだけ言ってゼルガディスは黙り込んでしまった。これは機嫌を損ねたというよりも寧ろ彼が照れてしまっただけだろう。
 それだけに彼らの言うことが的を射ているのかもしれないが。 
 普通、未成年の依頼とは請けないことがまま多い。理由は簡単だ。
 金銭的な問題と、依頼内容の濃淡の差、或いは倫理的な問題である。
 金銭的な問題はこれは単純に、未成年が自由に使える金銭などたかがしれている、ということ。はした金では動かないし動けないものだ。
 そして依頼内容についての問題としては。
 未成年という人生を半ばまでも歩いていない人間にとっての問題とは、成人した人間にとっては実にくだらない問題という症例が多い。極端に言えば、隣の子供に獲られたお菓子を取り返して欲しい、と同レヴェルの問題が多い多いのだ。依頼する子供にとっては真剣な悩みであっても、それに取り合わない大人の方が圧倒的に世界には多い。ゆえ、未成年の依頼など聞く前から断るのが通常である。
 それをゼルガディスは請けた。
 そこになにがしかの情状を汲み取ったであろうことは容易く想像できることである。
「えぇっと、オレはここから一月程歩いたトーヤの村に住んでいたんだ。と、言っても5年も住んじゃいなかったけどね」
 チェードのくすんだ金髪に編みこまれた黒髪のおさげが揺れる。
「オレは元々中央神殿都市(セントラル)の住人だったんだ。オレの依頼内容ってのはセントラルまで無事に連れて行ってくれること。これがゼルガディスに頼んだ依頼だよ」
「………セントラルまで………連れて行く………?」
「そうだよ。………それが何か?」
 眉根を寄せて呟くリナにチェードが首を傾げた。
「ん?あぁ、なんでもないわ。続けて。なんでセントラル行きたかったの?」
「兄さんが殺されたからだよ。しかも身体を薔薇にされて、ね」
 チェードは半笑いの表情で淡々とそう言った。

「身体を薔薇にぃっ!?」
 リナが素っ頓狂な声を上げた、が、これは仕方ないことであろう。それほどにチェードの言は突拍子もないことなのだ。
「それって合成獣術の一端とかだったりするわけ?」
 ちらりと視線をゼルガディスに送りながらリナがチェードにそう問うた。チェードは何でもないことのようにこくりと頷く。
「ちょっと待って下さいっ!いくら昨今の合成獣技術の進歩がめざましいからといっても、それは理論上不可能ですよ!動物が植物になるなんてありえないわっ!」
 アメリアが戸惑いと興奮を隠せずに声を荒げた。チェードは律儀に身体ごとアメリアに向き直り、
「一見不可能な技術でも、可能にする方法が世の中にはあるんだ。アメリアさん。俺も一応魔術をちょっと齧ってる身なんだけど、勿論アメリアさんも知ってるよね?異界黙示録の名を………」
 その言葉にリナとアメリアの身体が強張った。ゼルガディスはチェードから既に話を聞いていたのだろう。ふん、と小さく鼻で息を吐いた。ガウリイに至ってはそれが何なのか理解していないし、理解する気もないようだった。

 ゼロスの紫の瞳に妖しい光が灯る。
 ほぅ、とゼロスは声にならない声で感嘆とも取れる類の表情を作った。
「………成る程。これは面白いコトになるかもしれないですねぇ。ガウリイさんの運の強さを試してみましょうかねぇ」
 小さすぎる呟きは一同の耳には届かなかったようだ。 

 アリーンは離れた場所で肩を小さく震わせていた。小刻みに震える肩が語るものは。
「くくっ。なるほどな。面白いコトを考えるものだ………」
 堪えきれないほどの嘲笑であった。

 
    運命の路
    満ちたる未知よ




こんばんはvv大変お久しぶりですvvあごんですvv
いやーー何ヶ月ぶりの投稿だろー・・・(汗)。
とにかく!!これからはちゃんとマメに投稿していこうかと思ってたりしたりしなかったりします(どっちだ)!!
今回は・・・・結構辛かったです(涙)。
難産の南山で・・・・(どこや)。
今回はチェードの性格とか・・・・を上げてみましたvv
まだまだセントラルには着かないぞ(笑)!!

ではではvv頑張って書きますのでお見捨て無きようお願いしますvv

あごんでしたvv

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17080まってました♪とはじめまして♪かお E-mail 2001/9/12 10:02:07
記事番号17076へのコメント

こんにちわ♪はじめまして♪・・だよな?レス・・つけたこと・・なかったよな?
・・多分・・・。読んではいたけど・・・・。(汗)
一の方で下手くそ、小説投稿してます、かおといーます。
相変わらず・・・上手ですねー(笑)
あと、ゼロス!!人間の性別・・分からなかったの!?
いやもー、びっくり!!
クレアバイブルも出てきたことだし・・・続きが楽しみです♪
では、短いですが、感想にもなってませんけど、感想なのです♪
それでは♪かおでした♪

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17138お待たせしましたvvと初めましてvあごん E-mail 2001/9/14 23:56:58
記事番号17080へのコメント


>こんにちわ♪はじめまして♪・・だよな?レス・・つけたこと・・なかったよな?

こんばんはvv初めましてですvv
わざわざレスありがとうございますvv
めっきり久しぶりなんで、もう誰も覚えてはいないだろーなぁと思っていたので、待っていただいたなんてvv
光栄ですvv

>・・多分・・・。読んではいたけど・・・・。(汗)

ありがとうございますvv

>一の方で下手くそ、小説投稿してます、かおといーます。

はいvv存じ上げておりますvv
私でよければレスさせてくださいvv
ビビリなのでレスするのに勇気がいるんです(苦笑)。

>相変わらず・・・上手ですねー(笑)

ううっ!まだまだですよ!
この話も何度書き直したことかっ(苦悩)!!

>あと、ゼロス!!人間の性別・・分からなかったの!?
>いやもー、びっくり!!

あくまでもあごんの考えですが(汗)。
私は魔族ってもっとずっと人間を小さく見てると思うんですよね。
そして性別に興味が無いんじゃないかな、とも。
このことについては後々語る時が来るかと思いますvv

>クレアバイブルも出てきたことだし・・・続きが楽しみです♪
>では、短いですが、感想にもなってませんけど、感想なのです♪
>それでは♪かおでした♪

ありがとうございました!!
本当に励みになります!!
次回はできるだけ早くアップできればな、と思っております(汗)。
こういう類のことは毎回言っている気がするけど、ま、いーかvv
とゆーわけで、あごんでした!!
また近いうちにお目にかかれることを祈りつつ!!

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17087おっvみてい 2001/9/12 16:58:41
記事番号17076へのコメント

待ってました!のみていでございます。

チェード、ライト(軽)な性格のようですね。
某所の某息子一号を連想するのは気のせいでしょうか(苦笑)

> ゼルガディスは目深に被ったそのフードを上げると、後方に佇む抜き身の剣を提げたガウリイへと目をくれた。その硬質そうな口元が緩いカーヴを描き、それを見たガウリイもまた口の端だけに笑みを作ると、左手を軽く上げた。それだけで男同士の挨拶は済んだようだった。
…かっこいっ。
>「久しぶり。ゼル」
> リナが不敵な笑みを湛えながらゆっくりとゼルガディスの元へと歩み寄る。その後にアメリアが続きにっこりと笑う。
>「お久しぶりです。ゼルガディスさん」
> 身体ごとそちらへ向くと、ゼルガディスは不慣れな笑みを作り右手を上げた。
微妙な心の機微があるやうですv

>「ゼルガディスーーーー!!オレっオレにも紹介しておくれよ!!ってゆーかオレを紹介してくれよ!!」
> 人懐こっそうなその表情はまるで子犬のような印象を人に与える。
子犬…たしかにそうかも(笑)
>「リナさんにアメリアさんかぁ。こう口の中でしっとりと溶け込むような、なんだか懐かしい子供の頃に食べた甘いお菓子みたいな印象だな。きっとお二人もそういう感じの女性なんだろうなぁ」
うあ(汗)誰の指導だこれは…(笑)
>「あ〜、気にするな。チェードはちょっとした病気だとでも思ってくれ」
ゼル一刀両断v

>「で、そっちの連れでかなり怪しいのがいる理由を俺は聞いた方がいいか?」
>「あそこにいるいかにも怪しい神官風味のエセ物体は何事に措いても全物象の対象にはなりえないんです」
毒舌勝負は姫様の勝ちっ★←違うって

>「ひょっとしたら男には女に見え、女には男に見えるんじゃあないか?」
これは今後のキーワードでしょうか?めもめも。

>「で、薔薇騎士団って何よ?」
とっても雅な名前の騎士団v(殴)

>「そうですね。チェードさんがゼルガディスさんの依頼人ならばそうしたほうが良いかも。照れ屋なゼルガディスさんのコトですから上手に表現できないこともあるんじゃないですか?」
絶好調アメリア。核心を突いてるような貫いちゃったのか微妙な表現すね。

>「………セントラルまで………連れて行く………?」
おや?
>「兄さんが殺されたからだよ。しかも身体を薔薇にされて、ね」
> チェードは半笑いの表情で淡々とそう言った。
…をう。
>「一見不可能な技術でも、可能にする方法が世の中にはあるんだ。アメリアさん。俺も一応魔術をちょっと齧ってる身なんだけど、勿論アメリアさんも知ってるよね?異界黙示録の名を………」
出た(汗)

>「………成る程。これは面白いコトになるかもしれないですねぇ。ガウリイさんの運の強さを試してみましょうかねぇ」
魔族ってるゼロス。

>「くくっ。なるほどな。面白いコトを考えるものだ………」
謎振り撒きまくりのアリーン…



>とにかく!!これからはちゃんとマメに投稿していこうかと思ってたりしたりしなかったりします(どっちだ)!!
わーい。
>今回は・・・・結構辛かったです(涙)。
>難産の南山で・・・・(どこや)。
北ではないようです(爆)
>ではではvv頑張って書きますのでお見捨て無きようお願いしますvv
ついてきますっ!

あごんさんの話は一つ一つのエピソードが深いですね〜。
謎を残しつつどうしてそう判断したかってのがしっかりありますから(羨)

ではでは、話の雰囲気ぶち壊しまくってるレスを残しつつ。
みていでございました。

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17140ひょっvあごん E-mail 2001/9/15 00:25:27
記事番号17087へのコメント


>待ってました!のみていでございます。

待たせすぎです!のあごんです(爆)。

>チェード、ライト(軽)な性格のようですね。

ライトです、しかも熟女好みだったりします(笑)

>某所の某息子一号を連想するのは気のせいでしょうか(苦笑)

(笑)。
そーですか?私はうる☆やつらの彼を想定したんですが(笑)

>> ゼルガディスは目深に被ったそのフードを上げると、後方に佇む抜き身の剣を提げたガウリイへと目をくれた。その硬質そうな口元が緩いカーヴを描き、それを見たガウリイもまた口の端だけに笑みを作ると、左手を軽く上げた。それだけで男同士の挨拶は済んだようだった。
>…かっこいっ。

そうですか?
うれしいです(照れ照れ)v

>>「久しぶり。ゼル」
>> リナが不敵な笑みを湛えながらゆっくりとゼルガディスの元へと歩み寄る。その後にアメリアが続きにっこりと笑う。
>>「お久しぶりです。ゼルガディスさん」
>> 身体ごとそちらへ向くと、ゼルガディスは不慣れな笑みを作り右手を上げた。
>微妙な心の機微があるやうですv

なんだかんだで彼は女の扱いがヘタそーですからねぇ(笑)

>> 人懐こっそうなその表情はまるで子犬のような印象を人に与える。
>子犬…たしかにそうかも(笑)

犬耳と尻尾は必需品ですな(笑)。

>>「リナさんにアメリアさんかぁ。こう口の中でしっとりと溶け込むような、なんだか懐かしい子供の頃に食べた甘いお菓子みたいな印象だな。きっとお二人もそういう感じの女性なんだろうなぁ」
>うあ(汗)誰の指導だこれは…(笑)

誰でせう(笑)?

>>「あ〜、気にするな。チェードはちょっとした病気だとでも思ってくれ」
>ゼル一刀両断v

容赦無しv

>>「で、そっちの連れでかなり怪しいのがいる理由を俺は聞いた方がいいか?」
>>「あそこにいるいかにも怪しい神官風味のエセ物体は何事に措いても全物象の対象にはなりえないんです」
>毒舌勝負は姫様の勝ちっ★←違うって

うちのアメりんはけっこー言うタイプですからね(笑)。

>>「ひょっとしたら男には女に見え、女には男に見えるんじゃあないか?」
>これは今後のキーワードでしょうか?めもめも。

はい。次の中間テストで出ますから(笑)。

>>「で、薔薇騎士団って何よ?」
>とっても雅な名前の騎士団v(殴)

はいvもう皆でフリルの甲冑つけてますから(嫌)。

>>「そうですね。チェードさんがゼルガディスさんの依頼人ならばそうしたほうが良いかも。照れ屋なゼルガディスさんのコトですから上手に表現できないこともあるんじゃないですか?」
>絶好調アメリア。核心を突いてるような貫いちゃったのか微妙な表現すね。

どうでしょうねぇ(汗)。私はやっぱしゼルアメって書けないみたいです(苦笑)

>>「………セントラルまで………連れて行く………?」
>おや?

こどん・・・・って親子丼とかけてありますからねっ(笑)!!

>>「兄さんが殺されたからだよ。しかも身体を薔薇にされて、ね」
>> チェードは半笑いの表情で淡々とそう言った。
>…をう。

くすっvv(謎)

>>「一見不可能な技術でも、可能にする方法が世の中にはあるんだ。アメリアさん。俺も一応魔術をちょっと齧ってる身なんだけど、勿論アメリアさんも知ってるよね?異界黙示録の名を………」
>出た(汗)

出ました(笑)。私、コレが好きみたいですv

>>「………成る程。これは面白いコトになるかもしれないですねぇ。ガウリイさんの運の強さを試してみましょうかねぇ」
>魔族ってるゼロス。

魔族してるゼロスが好きなんですvv
逆に魔族してない彼はちょっと苦手だったり(笑)。

>>「くくっ。なるほどな。面白いコトを考えるものだ………」
>謎振り撒きまくりのアリーン…

いーかげんにしてほしいですねぇ(笑)・
ちゃんと解明してくれよ、と願いつつ(をい)。

>>とにかく!!これからはちゃんとマメに投稿していこうかと思ってたりしたりしなかったりします(どっちだ)!!
>わーい。

てへっvv

>>今回は・・・・結構辛かったです(涙)。
>>難産の南山で・・・・(どこや)。
>北ではないようです(爆)

北北東でもないかと(笑)。
おそらく南西の風、一時強く、曇り時々雨。ところにより羽ウサギです(いやん)

>>ではではvv頑張って書きますのでお見捨て無きようお願いしますvv
>ついてきますっ!

あわわわわわわっ!
ありがとうございます!!!

>あごんさんの話は一つ一つのエピソードが深いですね〜。
>謎を残しつつどうしてそう判断したかってのがしっかりありますから(羨)

ありがとうです(><)!!
みていさんの書かれる文章が大好きで!
なんとか近付きたいと努力中です!!

>ではでは、話の雰囲気ぶち壊しまくってるレスを残しつつ。
>みていでございました。

わざわざどうもです!!
みていさんのお話の続きも気になります!!
ではでぇは!あごんでしたvvv

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