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16317 | 希少価値の希少価値たる所以・1 | 白河綜 E-mail | 7/27-12:57 |
「ねぇリナちゃん。この村に、マナの病気を治してくれる人がいるのね?」 「そう……よっ。 よー……やくついたわっ、アヤナフ村……」 リナはかたを大きく上下させながら、前方約三メートル先ではしゃいでいる少女に言葉を返した。 「だっ……大丈夫ですか、リナさん……」 引きつった声で問いかけてくるのは、リナのすぐ後を歩いていてアメリアだ。 一年ほど前……ダーク・スターとの戦い以来、とんと見かけなくなった、あらゆる意味で疲労しきったリナに、少なからず彼女は面食らっていた。 それは男二人――ゼルガディスとゼロス――も同じだった。 つい先ほど目の当たりにした『アレ』は、一体……? という顔をしている。 ただ一人、ガウリイだけが『仕方ない』と言いたげに嘆息した。 心配しているのか何なのだか、声をかけてきたアメリアの方を見ないまま、ぐっと拳に力を入れ、リナは嗤った。 「んっふっふっ。 まさかこんなところでナメクジの団体さんに遭うとは思わなかったわ。 なんなのよ、この山道は……」 彼らがたった今登ってきた山道は、背の高い木・低い木が道に覆い被さるような格好でアーチ状になっている。日の光は葉と葉の隙間を縫うようにしか入ってこれず、暗くジメジメしている。なるほど、ナメクジが生息するのには最適な環境といっていいだろう。 ――リナが苦手なもの―― それはズバリ、郷里のねえちゃんとナメクジだ。 前者のことについては全員が知っていたが、後者についてはリナが取り乱した時、その場に居合わせたガウリイしか知らなかった。 「……リナちゃん、ナメクジ嫌いなの?」 「キライ。」 と、まさしく即答。 「……カワイイのに……」 「かわいくない。」 きっぱり。 「…………」 「…………」 「何やってんだか……」 ゼルガディスははぁ、と盛大にため息をついた。あまりのレベルの低さに、もはや止める気も起きないようである。 不毛な口喧嘩が始まろうとしていたまさにその時、見るに耐えかねたのかアメリアが、 「もうっ、リナさんもマナリートさんも止めて下さいよ! やっと目的地に着いたんですからっ!!」 「そうだぞ。やっとアヤ……、ア……」 「『アヤナフ村』か?」 「そう、それだ。 アヤナフ村に着いたんだからな」 「……あんた、いい加減地名くらい覚えなさいよ……」 先ほどまでのどこか情けなく感じる一触即発な空気はどこえやら、パーティーは和やかな雰囲気に包まれた。 何にしても、着いたのだ。 アヤナフ村。 聖王都セイルーンの最南に位置する小さな山、その山頂に在るこの村には、昔から不思議な噂が絶えない。 夕刻になると、村の外れの野原に妖精が現れるとか、実は死んだ人間の住まう村だとか、村人は全員人間の姿をした魔族だとか―― そんなどーしようもない噂が立つ原因の一つを、まさに今、彼らは体験していた。 「……しっかし、まさか本当に魔法が使えないとはな」 「フーリックさんの言ってたことは、本当だったんですね…… 明り(ライティング)!」 右手をかざして唱えた呪文は発動することなく、アメリアの声だけが空しく響く。 「……やっぱダメですぅ……」 と、泣きそうな声を上げてゼルガディスに振り返った。 魔法が使えない――そのことに気付いたのは、先ほどのナメクジに出くわした時だった。 パニック状態に陥ったリナが、周囲が必死で、そう、本当にそりゃあもう必死で止めるのも聞かず、竜破斬(ドラグ・スレイブ)を使おうとしたときだった。 呪文が完成してしまったのにもかかわらず、いっこうに何も起きない事に首を傾げ、そしてリナは―― 己の天敵を抹殺できないと理解した瞬間、禁断症状に陥り、さらなるパニックを起こしていたが、まぁ、それは余談である。 ゼルガディスは片手を腰にあて、 「こんなヘンテコな場所じゃ、妙な噂も立つわな…… 魔法が使えない……か」 「魔法だけじゃないみたいですよ」 珍しくげんなりした様子のゼロスが、 「どうやら、精神世界(アストラル・サイド)との繋がりが薄いみたいですよ、この村。 僕、さっきから『本体』を出そうとしてるんですけど……」 「ダメなわけ?」 「……それどころか、空間を渡ることすら出来ません…… おそらく、何か特別な力が働いて、この村に入った瞬間から精神世界(アストラル・サイド)との狭間に、何か薄い膜の様なものが張られ、力の行き来を邪魔しているのかと」 「でも、だったら何でゼロスは実体化できてるわけ?」 「ある程度は繋がってるんでしょう。 ああ、しかし……目的地も分かっているのに、一足飛びでそこに行けない……っていうか、延々歩き続けなきゃいけないっていうのは不便ですね」 憎々しげに辺りを見渡す。 普段はにこにこ笑って謎の美青年よろしくしている彼が、ここまで露骨に不機嫌全開なのも珍しい。 アメリアは、そんなゼロスを気遣うように優しく微笑みかけた。 「大丈夫ですよ、ゼロスさん。 確かに、普段当たり前に使っている力が使えないというのは不便かもしれません。でも、わたし達人間は、いつもこんなもんなんですよっ。この機会をきっかけに、人間についてもっと深く知り、そしてっ! やがてはその身に巣くう悪を消滅させるのですっ!! さァ、ゼロスさんっ!! 正義があなたを待っていますよ!!」 「っ、何でそうなるんですかっ!?」 ゼロスは力一杯跳ね返した。が、瞳にお星様を浮かべたアメリアは、実にあっさりと彼の絶叫を無視する。 ぼそりっとガウリイが、 「……何で人間を深く知ることが、悪を消滅させるって繋がるんだ?」 その問に、答える気力があるものはいなかった…… そもそも、何故今回リナ一行がこんな辺鄙な場所にいるのか。それは当然仕事でだ。 約一年前、ダーク・スターを倒した後、せっかくだからもう少し外の世界を見てから帰ろう、ということになった。そして現在、ようやくセイルーンまで戻ってきているというわけである。 とりあえず、一年前の『アレ』を謝らなくては、ということで、首都セイルーン・シティへと向かっていたのだが、その途中で仕事を依頼されたのだ。 依頼主はアヤナフ村の西に位置するハウロ・シティの領主フーリック=キャンソン。 依頼内容は、娘マナリート=キャンソンをアヤナフ村まで護衛すること。 別段、急いでセイルーン・シティに行く必要も無かったので引き受けたわけなのだが―― 『リナ=インバース殿。実は娘のマナリートは生まれつき病魔に冒されていましてな…… 今まで、私が知りうる限りの魔法医にみてもらったのですが……』 つい三日前、リナたちに見せたフーリックの、あの顔。絶望に幾度も襲われたように、疲れ果てた顔だった。 『しかし最近、このハウロ・シティから東へ三日歩いたところに在るアヤナフ村に、万病を治す薬師がいると噂で聞きまして。 それに賭けてみようと思うんです』 『……でもフーリックさん。本当にその人がマナリートさんのやまいを治せるかはわかりませんよ』 『……わかっています』 あの時のフーリックさんの哀しい笑顔を、きっと忘れられはしないだろう。 あの、自分の子を本当に慈しんでいるのだと、はっきり分かる笑顔を。 『わかっているんです。私だって半信半疑ですよ、魔法で治らなかったのに……と。 でも、たとえわずかでも娘が、マナリートが助かる可能性があるのなら……』 それに賭けたみたい、と。そう言って笑っていた。 何でも、医者には15になるまでもたないと言われているらしい。 マナリートは現在13歳。 今何とかしないと、少女に未来はない。 「……リナちゃん? どーしたの?」 黙り込んでいたリナの顔の前で、マナリートはてを左右に振った。 はっ、と我に返る。 「へっ? ああ、ごめんごめん」 「おいおいリナ、大丈夫か?」 心配そうに声をかけてくるガウリイに、平気平気、ちょっと考え事してただけ、とかえして、リナはよく冷えたクランベリー・ジュースをすすった。 とりあえず一休みしよう、ということになり店を探したのだが――無い。 この村には、宿屋その他諸々の、いわゆる旅人相手に商売する店が一軒も無かったのだ。 まぁ、こんな辺鄙な場所にわざわざ訪れる旅人も、そういないだろうが…… そんなわけで、今、リナたちは八百屋で売っていた飲み物を、その店先に並べられた椅子に座って飲んでいる。 「――あっ」 「どーかしましたか? リナさん」 果汁100パーセントのストロベリー・ジュースを飲みながら、アメリア。その隣では、ゼルガディスがよく冷えたアイスティーで喉を潤していた。 リナは、相変わらずホット・ミルクに口を付けているゼロスへと顔を向け、 「ゼロス。 あんた一体今回は何を企んでるわけ?」 と、ハウロ・シティを出た翌日に、ひょっこり姿を現した獣神官を睨め付けた。 ゼロスはいつもの笑みを浮かべ、飄々と、 「何の事ですか?」 「あのねぇゼロス。あんたさっきイラ立ちまぎれにこう言ったわよね? 『目的地も分かってるのに』って」 「言いましたかね、そんなこと」 「言った」 「言ってました」 「確かにな」 「……よくわからん」 リナ、アメリア、ゼルガディス、ガウリイと。 一番最後はともかく、この三人に冷たい目で見られるのは、あまりぞっとしない。 トドメと言わんばかりに、オレンジ・ジュースを飲んでいたマナリートが、ゼロスのマントを引っ張って、 「ゼロスくんも、マナとおなじところに行くの?」 「…………」 「……? どうしたの?」 「……いや、その…… ……わかりましたっ、言いますから全員で僕を見るの止めて下さいよっ!!」 ゼロスは、本日二度目の絶叫を上げた。 「ま、ようするにヴァルガーヴさんの時と同じですね」 「同じ……って、まっ、まさかっ!!」 飲みかけのジュースを押しつけるようにゼルガディスに持ってもらい、アメリアはゼロスの胸ぐらを掴むと、ブンブンと振り回しながら言葉を続けた。 「また誰かの命を奪うつもりですねっ! そんなこと、この正義の申し子アメリアが絶対にさせませんよっ!!」 「あっ……アメリアさん〜! 勝手に決めつけないで下さいよぅ〜!!」 「……違うの?」 てっきりそうだと思ってた、という顔で、リナはジュースをもう一口。 「違いますっ」 やや乱暴にアメリアのてを振り払って、ゼロスは否定した。 「僕が今回受けた命令は、とある人物を魔族サイドに付くよう、説得することだけです。もしも断られたら――」 「やっぱり殺すのか?」 「だから違いますってば!! ……っとにガウリイさんは聞いてないようで聞いてますねぇ…… とにかく、説得できなかったらクギをさしてこいとだけ言われました」 「? 何それ」 実に魔族らしからぬやり方だ。 最も、精神世界(アストラル・サイド)との繋がりが薄いこの土地で、ゼロスがその人物を始末できるのかは知らないが―― 「……とにかく。 ゼロス、あたし達の邪魔はしないわね?」 「多分」 と、いつもの顔で。 ハナっからこんな奴信用するつもりは欠片もないが、イチイチカンに障る奴である。 「……まぁ、何にしてもその薬師を探した方がいいんじゃないか?」 と、コレはゼルガディスだ。 「っと。そうね。 あっ……ねぇ、おばちゃーん!!」 「なんだい? ジュースのお代わりなら、お前さん達可愛いから、好きなだけ飲んでくれてかまわないよ」 「えっ、本当!? ありがとー!! ……って、そうじゃなくって! あのさ、この辺に万病を治す薬師がいるって、聞いてきたんだけど……」 「ああ、ナーシャさんのことだね。居るよ」 「本当ですかっ!?」 二杯目のジュースを飲みながら、アメリアが声を上げた。 リナも二杯目をコップに注ぎながら、 「その人……ナーシャさん? 本当にどんな病気でも治せちゃうわけ?」 「そうだねぇ……」 おばちゃんは野菜の皮をむく手を休め、何かを考えるように虚空を見つめた。 「……何でも……かどうかは分からないけど、優しくて腕のいい薬師様だよ。 ああ、ほら。あそこに背の高い男が立ってるだろう? あの人はナーシャさんとこに数日前からいるみたいだから、聞いてみたらどうだい?」 と、おばちゃんは店の奥で野菜を物色している青年を眼で指した。 と。 不意に、その青年がリナ達の方へと顔を向ける―― 『あぁぁぁあぁぁあぁっ!?』 マナリートと八百屋のおばちゃんを除く6人の声が見事に唱和した。 青年の顔は、リナ達の知ったものだった―― ************************************* ううっ…… あまりのへぼさに思わず涙がっ…… ご指摘等ありましたら是非下さい。 |
16323 | 希少価値の希少価値たる所以・2 | 白河綜 E-mail | 7/28-16:11 |
記事番号16317へのコメント その青年には、見覚えがあった。ガウリイが覚えていたのだから、絶対だ。 ゆるくウエーブのかかった長い髪。猛禽類を思わせる、鋭い瞳。端整な顔に刻まれた、爪痕のような傷跡。 「あんた……ヴァルガーヴ!?」 そう、未だ記憶に新しい、あの一年前の事件の、元凶とも言える存在、ヴァルガーヴだ。 確か、あの事件の後、卵の状態で転生した彼を、フィリアが預かる……もとい育てる事になったハズなのだが…… 「あんた、のう卵から孵ったの!?」 「孵った言うなっ! リナ=インバース!! 何故貴様がここに!?」 「おやぁ、記憶も残っているみたいですねぇ」 のほほん、とゼロス。彼もまた、八百屋のおばちゃんのご好意に甘えて、ホットミルクの二杯目を、美味しくいただいている。 さらにその向かいでは、オレンジ・ジュースに氷を足しながら、マナリートが不思議な顔で、隣に座るアメリアに、 「……ねぇ、アメリアちゃん…… あの、ピンクのエプロンを着てるお兄ちゃんも、みんなのお友達なの?」 「おっ、お友達…… いえ、お知り合いと言った方が正確ですか……ねぇ……」 「ふーん…… ねけ、あの胸元の、熊さんのアップリケは、あのお兄ちゃんが縫いつけたのかなぁ……」 「……どうでしょう…… 気になりますね……」 「うん……」 ああ、空が高いなぁ…… かくして、リナ達は村の中央を走る道をあるいていた。 彼らの前方で、マナリートをあやしながら歩いているのは、当然ながらヴァルガーヴだ。 リナは、かつて刃を交えた、この古代竜(エンシェント・ドラゴン)に、ためらいがちに声をかけた。 「……ねえ、ヴァルガーヴ……」 「今の名はヴァル、だ。ヴァルガーヴじゃない」 つっけんどんに返されるかと思っていた言葉は、意外にも普通だった。何でも、前世のことは、あくまで『記憶』としてしか残っていないらしく、その時に彼が何をどう感じたとか、そういった過去の『感情』までは、覚えていないらしい。 まぁ、覚えていたら、また同じ事を繰り返される可能性があるわけで、それはそれで困るのだが…… 「じゃあ、ヴァル。 一体全体、何であんたがこんなところにいるわけ?」 ピンクのエプロンに、買い物かごを提げた姿が、妙に似合っていて、思わず笑いが漏れそうになるのを、リナは必死で耐えた。 「……そんなこと、俺が知りたい」 そう言うものの、言葉とは裏腹に、あまり気にしてはなさそうだ。 ぼそぼそっ、とアメリアが、 「何か、随分角がとれましたよね、ヴァルさん。 ……フィリアさんの力ですかねぇ」 と、ゼルガディスに耳打ちした。 心なしか、憮然とした面持ちのヴァルが、言葉を続ける。 「俺はフィリアに付いてきただけだ」 「フィリア!? フィリアも来てるの!?」 「ああ。 今、ナーシャの家で、薬草の……」 「ええぇぇえぇええぇぇっっ!! フィリアさんもいらっしゃるんですかぁ!!?」 大袈裟な声を上げているのは、当然、一番後から付いてきているゼロスだ。 「…………っ、遅かったみたいですね…………」 「は? 何がよ?」 「ああっ、いいぇ、何でも……」 ぽろっとこぼれてしまった言葉をリナの耳は聞き逃さなかった。詰め寄ると、ゼロスらしくもなく、慌てて首を振る。 「……にしても……」 道ばたで摘んだ珍しい花を冠状に編みながら、アメリアが、 「何だか、良くないことばっかり起きてますね」、ゼロスさん。 厄日ですか?」 自分が一番イヤなめに遭わせているのだと、自覚が無いのか、けろんっ、とした表情で言う。隣で歩くゼルガディスは、もはやあきれて声もない。 ゼロスは胸中で、今回の仕事を押しつけてくれた『あの方』を恨んだ。 「ほら、あそこがナーシャの家だ」 じゃれあってるうちに、いつの間にか目的地についていた。 万病を治すと噂の薬師の家は、村の外れ、切り立った崖のすぐそばに、ひっそりと建っていた。 辺り一面に広がる、甘い花の香り。おそらく、みんな薬草なのだろう。 と。 マナリートが、ヴァルのそばを離れて、リナのもとへと寄ってきて、ぎゅ、としがみつく。 怯えた瞳で家を見つめている少女の頭に、リナは優しく手を置いた。柔らかい亜麻色の髪を梳いてやりながら、 「だいじょーぶだって。 きっと、ここに住んでる薬師様が、マナリートの病気を治してくれるよ」 「そうだぞ、まなりーと。 あとはお前が、勇気を出して、ドアをノックするだけだ」 珍しくまともなことを言うガウリイ。 彼とリナの二人に、優しく励まされて、マナリートは笑った。 さて。 心機一転、ドアをノックしようとしたその時、聞き知った声が、庭の裏手から聞こえてきた。 裏にいるようだな、とヴァルがそちらに回る。 一行も、ヴァルに従う。 声が、大きくなる。 そこでは、二人の美女が地べたに直接腰を下ろし、お茶を飲んでいた。 「フィリア、頼まれたもの、買ってきたぞ」 「ああ、ヴァル。ありがとうございます…………って…… えっ、嘘、リナさん!?」 「やっほー。お久しぶり、フィリア」 「……それに、生ゴミゼロスまで……!?」 「生ゴミは余計ですっ。 ……にしても、巫女を止めたはずのフィリアさんが、なぁぁんでこんな所にいるんですかねぇ?」 「ふっふっふ。言う義務はありません。 そんなことより、今度こそ、あなた方魔族の素行の悪さには、あきれてしまいますわ」 「…………っ」 「何というか、あまりの節操の無さに、目を覆いたくなります」 はぁ、と、わざとらしく盛大なため息をつく。 「あのさぁ、二人だけで話し進めないでよ」 まなじりを寄せて、リナ。 まったくもって、さっぱり話が分からない。 それに…… 「それより、例の薬師のナーシャさん……って……」 「私だが……」 フィリアの後でお茶を飲んでいた女性が、控えめに手を挙げる。 赤銅の瞳に、肩まで伸ばした狐色の髪が印象的な、母性を感じさせる女性だ。年令は、見ただけでは解らない。ものすごく若くも見えるし、年老いても見える。 リナは、右手を軽く挙げ、 「あたしはリナ=インバース。ハウロ・シティの領主、フーリック=キャンソンさんから、娘のマナリート=キャンソンさんを、ここまで連れて行くよう依頼を受けたの。 この子がマナリート」 と言って、マナリートを自分の前に立たせた。 ナーシャは、じっ……とマナリートを見つめる。 「…………どう?」 「……闘病生活が、随分と長いであろう。 ……持病か?」 「らしいけど」 「ふむ…………」 マナリートの顔色、喉元、眼、そして脈まではかって、彼女は微笑んだ。 リナの顔も明るくなる。 ただ一人、マナリートだけが不安げにナーシャを見つめている。 ナーシャは、ポンッ、とマナリートの頭に手を置いて、 「薬師は魔法医と違い、薬草などの大地の恵みで、病を癒す。貴女が、薬を飲むのを怠らなければ、貴女の病は癒えるよ」 「本当っ!?」 「無論。 ただし、これも魔法とは違い、直ぐに癒えるわけではない。しばらくお父上とは離れて、ここで治療に専念せねばならぬが……」 「うんっ。 ありがとう、薬師様っ!!」 よっぽど嬉しいのだろう。今まであまり近づかなかったゼルガディスのそばに行き、飛びついている。 「……無邪気だのぅ」 「ほんとね」 リナが、軽く相づちを打つ。 「ところで……ナーシャさん」 「何だ? リナ殿。 まさか貴女も病なのか?」 「違うわよ」 リナは、未だに低レベルな口喧嘩を続けている、フィリアとゼロスを指さして、 「アレ。一体何のことで言い争ってるか、知ってる? 今まで、フィリアから何か聞いてない?」 「聞いておる」 短く言い切った後、彼女は客人とヴァルの分のお茶を入れた。 順々に手渡しながら、 「彼らは、私のことで言い争っているのだ」 最後に、フィリアと言い争っているゼロスのお茶だけが残った。 「? どういう事だ?」 ゼルガディスが、お茶に手を付けずに問う。 「まぁ、原因は、なんだ、その……つまり」 彼女は、まだ湯気が立ち上るカップに口をつける。 「私が、神と魔の両方の力を継いでるからなんだが……」 ………… かしゃんっ。 誰かが、カップを落とした音がした。 ************************************* ああ、またもやこんな話…… ごめんなさい…… |
16325 | Re:希少価値の希少価値たる所以 | ねじばな E-mail | 7/29-09:44 |
記事番号16323へのコメント はじめまして♪ねじばなといーます。 おもしろいですよっ!これっ! ヴァルがくまさんのアップリケつけて買い物してたり、フィリアとゼロスはけんかしてるし、ナーシャさんはどうやら神と魔と、両方の力を受け継いでるらしいし!もしやこれはあの方がらみっ!? ・・・まあ・・・私も自作の小説で思いっきりあの方だしちゃってるから人のことはいえるのかどうか・・・・ まあ、そうゆうわけで(どういうわけだか)、続きを期待してます♪ 頑張って下さいね♪ |
16332 | はじめまして(^▽^) | 白河綜 E-mail | 7/30-12:24 |
記事番号16325へのコメント ねじばなさんは No.16325「Re:希少価値の希少価値たる所以」で書きました。 > > はじめまして♪ねじばなといーます。 こちらこそ初めまして!! レスありがとうございます☆ > おもしろいですよっ!これっ! そっ、そんな…! 恐縮です……! > ヴァルがくまさんのアップリケつけて買い物してたり、フィリアとゼロスはけんかしてるし、ナーシャさんはどうやら神と魔と、両方の力を受け継いでるらしいし!もしやこれはあの方がらみっ!? > ・・・まあ・・・私も自作の小説で思いっきりあの方だしちゃってるから人のことはいえるのかどうか・・・・ ねじばなさんの小説も読ませていただきましたっ!! あの方、最高です!!なんか、ゼロス君が苦労してて、とっても親しみやすかったですし♪ > まあ、そうゆうわけで(どういうわけだか)、続きを期待してます♪ うれしいです♪ > 頑張って下さいね♪ ありがとうございます。最近は受験勉強の合間にネットするのが、唯一の楽しみとなってます。昨日もオープンキャンパスに行ってみたりして。ああ、今日は昨日の分も勉強せな…… |
16335 | 初めてだったりするんですが。 | はるさぼてん E-mail | 7/30-14:53 |
記事番号16323へのコメント こんにちは。 こちらにおじゃまするのも書き込むのも初めてなのです。(どきどき。) 白河さんの小説読ませていただきました。 いや〜おもしろかったですよ! 生ごみゼロスとヴァルさんの登場にはおもわずほくそ笑んでしまいました。 がんばってくださいね。 まさかこんな所で小学校からの親友の才能に驚嘆するとは・・・ いやいや本当です。(両方。) |
16342 | Re:初めてだったりするんですが。 | 白河綜 E-mail | 7/31-14:06 |
記事番号16335へのコメント はるさぼてんさんは No.16335「初めてだったりするんですが。」で書きました。 > >こんにちは。 >こちらにおじゃまするのも書き込むのも初めてなのです。(どきどき。) はい、予告通り書き込んでくれてありがとうvv >白河さんの小説読ませていただきました。 >いや〜おもしろかったですよ! >生ごみゼロスとヴァルさんの登場にはおもわずほくそ笑んでしまいました。 >がんばってくださいね。 せんきゅう! でも、私なんかより、他の方々のほうがおもしろいっす!絶対っす!! >まさかこんな所で小学校からの親友の才能に驚嘆するとは・・・ >いやいや本当です。(両方。) はっ! なにばらしてんの(汗) なにはともあれありがとうvv |
16389 | 希少価値の希少価値たる所以・3 | 白河綜 E-mail | 8/2-15:46 |
記事番号16317へのコメント あまりといえばあまりなナーシャの言葉に、一番最初に我に返ったのはアメリアだった。 びしぃっ! とナーシャを指さして、 「ナーシャさん!! アナタ、悪?」 「……は?」 「だって、神の力を持っているのに、魔の力も持っているのでしょう? だめよ、そんな恐ろしいこと!! 人道に反するわ」 と、なんだかメチャメチャな事を言う。 ナーシャは困ったような顔をして、 「……と、言われてものう」 「いーえ、即刻改めて、正義に生きるべきですっ! そうでないと、あっちでフィリアさんに生ゴミ生ゴミ連呼されている、ゼロスさんと同レベルになっちゃいますよ」 「……それは…… 遠慮したいのう」 流石に引きつった笑いを浮かべるナーシャ。 まぁ、生ゴミはさすがに『くる』ものがある。 我が意得たりと彼女の両手をぎゅ、と握りしめアメリアは、 「さぁナーシャさん、わたし達と一緒に、正義に向かって走るんです!! 今すぐ魔の力を捨てて!!」 完全にイッちゃった眼で訴える。 一方のナーシャは冷静に、しかし疲れた様子で嘆息した。 「捨てることなどできぬよ。 魔は、私という人間を形作る重要な要素なのだから。無論、神もだがな」 「? どういうことよ、それ」 気持ちを落ち着けようと、ナーシャに入れて貰ったお茶をすすりながらリナ。隣では、ガウリイが同じようにお茶をすすっている。ゼルガディスは、まだショックから抜け出せていない。ヴァルは我関せず、と言ったところだろうか。ちなみに、フィリアとゼロスは未だにレベルの低い口喧嘩を繰り広げている。 ナーシャは、お茶のカップをおいた。 リナに向き直り、 「リナ殿、貴女の姉上は、スィーフィード・ナイトの称号を持っておられるだろう」 「……姉ちゃんを知ってんの?」 「いや、面識はないし、こんな小さな村では噂も聞かぬ」 「じゃあなんで……」 リナが言いかけたところで、ひたすらゼロスと言い争っていたフィリアが、少し離れたところから叫ぶようにして、台詞をさえぎった。 「ナーシャさんは、尊い赤の竜神(スィーフィード)様の記憶を継いでらっしゃるんです!!」 「え、それじゃ、姉ちゃんと同じ……」 「ルナ殿ほど継いではおらぬがな。各地に散らばる赤の竜神(スィーフィード)の記憶を継ぎし者と念話出来る他は、四人の分身とコンタクトが取れるくらいだ」 「……それって、十分すごいんじゃないか?」 本当に解っているのかわからないガウリイが、リナに尋ねかける。 こくこくと、首を上下に振り、 「すごいなんてもんじゃないわ。直接戦力にはならなくても、恐ろしいくらい情報の伝達がはやくなるもの」 「そうなんですっ!!」 と、興奮気味のフィリア。 「ナーシャさんに御協力いただければ、いまや五人から三人に減った魔王の腹心なんて、地を這い回るミミズのごとし!! ついでにルナさんもお呼びして参戦していただければ、ゼロスなんか理科の実験で使われるミジンコ同然!!」 何故かは解らないが、精神世界(アストラル・サイド)との繋がりが薄いこの土地。ここでなら竜であるフィリアの方が強いということもあって、普段虐められている分を3倍にして返すフィリアだ。 ゼロスもそれを承知しているのか、いつもほど返す言葉に覇気が無い。 が、その彼がにぃ、と口元をあげる。 「そうは言いますが、フィリアさん。何か忘れては居ませんか? ナーシャさんは、僕たちの同士でもあるんですよ」 「…………!」 ……どうやら、忘れていたようである。 ショックから平素に戻ったゼルガディスが、もう冷めてしまったお茶に口を付けつつ、 「『神の力』は今ので解ったが、『魔の力』というのは?」 「私のお祖父上が、五人の腹心の一人、覇王(ダイナスト)なのだ」 …………………… 沈黙。 『はい?』 人間一行の声が重なる。 さっきから何となく蚊帳の外だったマナリートだけが、呑気にお茶菓子を頬張っていた。フィリアは手で顔を覆い、ゼロスは満面の笑み。ヴァルは肩をすくめている。 新たにお茶を入れながら、ナーシャは平然とした態度で、 「……そんな、絶句するほどの事か?」 「…………するほどの事です」 「そうか。しかし、こればかりは生まれた瞬間に決められているもの。いまさらそういう反応をされても、ちと困るのう」 と、あくまで冷静だった。 大きなビンから苺のジャムをスプーンに一杯とり、紅茶に入れてロシアン・ティーにする。 甘い香りが、立ちこめた。 「……なんというか……」 「魔族でも、男女間で子を成すことがあるのだな……」 妙なところで感心するゼルガディスに、ゼロスは「ああ」と言って手を振る。 「普通はそんなことしませんよ。それは覇王(ダイナスト)様が、ご自分の力を分け与えずに、優秀な部下が作れないかという実験の一環でなさったことです。 もっとも、お相手の女性がお産みになった赤子は、人間の器に膨大な魔力を封じてたワケですから、病がちでとても戦力になりそうもないと、覇王(ダイナスト)様はおっしゃってましたけど」 「そう、母上は病がちだった。私を産むと同時に、他界したと聞いておる。 今私がこうして生きているのは、私の中で神の力と、魔の力とがお互いに干渉しつつも、バランスをとっているからだろう」 「う゛う゛……なんかわたし、頭が痛くなってきました」 頭を抱えてうめくアメリア。 ふと。 ナーシャが口元を緩ませ、意地悪げな笑みを浮かべた。 「? 何?」 「いや、もっと痛くさせてやろうかと思ってな」 表情がくるくる変わるアメリアを見て、いたずら心が芽生えたらしい。 視線をずらすと、フィリアにゼロス、ヴァルまでが同じ表情をしてきょとんとしている。 くすくすと上品に笑いながら、 「こんなややこしい身なのに、それに頓着しない私が面白いと言ってくださった方がおってなぁ。この土地の、このワケの解らぬ理から外れた場所を、私のために用意してくださった方がおるのだ。 すなわち―― 金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)」 ぴしぃっ! 瞬間、固まってしまった音がした。 ************************************* こんにちは、白河です。 ああ、またも話が進んでいない…… あ、補足説明です。 精神世界(アストラル・サイド)との繋がりが薄いこの村では、ゼロス君を始め、もちろんリナちゃん達も魔法は一切使えません。ゼロス君に至っては、お得意の精神世界(アストラル・サイド)からの攻撃も出来ないという…… ですが、竜であるフィリアさんは、自分の力でやっているブレス攻撃とかは出来るわけでして…… ああ! いいわけじみてる!! すみませ〜ん!! |
16407 | あああああっ! | ねじばな E-mail | 8/3-16:40 |
記事番号16389へのコメント こんにちは♪ ああああああああああああああっ! L様だっ!?L様だあああああああああああああっ! ・・・・・・・・・・・・・お・・・落ち着け私! はふ。・・・最近L様がバンバン出てきてるなー・・・ いや・・・多分その元凶だろう、しかもエル様にリナと旅させてる私に言えたことじゃないけど・・・ 度胸あるねぇ・・・・下手するととげつきハンマーが飛んでくる・・(笑) この先が楽しみです♪ ではでは、ねじばなでした♪ |
16410 | すいません、私もそのひとりです・・ | かお | 8/3-21:11 |
記事番号16407へのコメント ねじばなさんは No.16407「あああああっ!」で書きました。 > > こんにちは♪ > > ああああああああああああああっ! > > L様だっ!?L様だあああああああああああああっ! > > ・・・・・・・・・・・・・お・・・落ち着け私! > > > はふ。・・・最近L様がバンバン出てきてるなー・・・ > > いや・・・多分その元凶だろう、しかもエル様にリナと旅させてる私に言えたことじゃないけど・・・ そんなことないですよ。おもしろいし・・ いや、じつは、私エル様が、でてくる話ばっかかいてるんです。 で、ねじばなさんの小説みて、投稿してみよーかなーと思いきりが ついたんですから・・・。 以上かおでした! > |
16417 | Re:あああああっ! | 白河綜 E-mail | 8/4-15:03 |
記事番号16407へのコメント ねじばなさんは No.16407「あああああっ!」で書きました。 > > こんにちは♪ こんにちはです。感想ありがとうございます♪ > ああああああああああああああっ! > > L様だっ!?L様だあああああああああああああっ! はい、一応。名前だけなんですが…… > ・・・・・・・・・・・・・お・・・落ち着け私! はい、息を吸ってー、吐いてー。(オイ) > > はふ。・・・最近L様がバンバン出てきてるなー・・・ > > いや・・・多分その元凶だろう、しかもエル様にリナと旅させてる私に言えたことじゃないけど・・・ 実は、ねじばなさんの影響を受けた一人であります。ゼラス様とのからみが好きvvv > 度胸あるねぇ・・・・下手するととげつきハンマーが飛んでくる・・(笑) 私はフレイルを食らいました。 > この先が楽しみです♪ ありがとうございますv 明後日から部活の合宿で三日間もネットお預けなんですが、その間に続きを…… > ではでは、ねじばなでした♪ 白河でしたv |