◆−金と銀の女神36−神無月遊芽(6/16-12:57)No.15967
 ┗金と銀の女神エピローグ−神無月遊芽(6/16-12:57)No.15968
  ┗☆あとがき☆−神無月遊芽(6/16-12:58)No.15969
   ┣お疲れ様でした!−あごん(6/18-22:01)No.16008
   ┃┗ありがとうございます。−神無月遊芽(6/19-18:48)No.16024
   ┗遅くなりましたが、お疲れ様でした。−みてい(6/20-14:41)No.16033
    ┗いえ、ありがとうございます!−神無月遊芽(6/22-00:09)No.16049


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15967金と銀の女神36神無月遊芽 E-mail URL6/16-12:57


 ああ…なんだか今ちょっと感動中。
 金と銀の女神最終話、どうぞお楽しみください。

****************************************

                         金と銀の女神
                       〜世界が始まるとき〜


   36章 終末と光の先に

 silver 貴方が勝ち取った未来 貴方が望んだ道
    ほら 一歩進めばそこに希望の光があるわ


「たぁぁぁぁっ!!」
セリオスが雲の上を駆けた。
ミカエルはそれを冷めた瞳で見つめながら、静かに口の中で呪文を紡いだ。
『ジャッジメント』
「サンダーアグマ!」
セリオスの頭の上から大きな轟音を響かせながら雷が落ちてくるが、同時に放たれたルシェルの魔法で相殺される。
相殺された雷の魔法が大きな火花を散らして、一瞬ながらミカエルの瞳を欺いた。
その隙を見て大きくジャンプををすると、ミカエルの頭を目掛けて剣を力いっぱいに振り下ろす。
『その程度っ!』
だが剣が命中する寸前にミカエルが防御魔法を張り、セリオスはその衝撃によって吹き飛ばされた。
空中で何度か回転をして態勢を整え着地すると、雲がセリオスを中心として丸く輪を描いて散っていく。
「くっ…さすがに当たらないか…」
最初の一撃が当たらず、思わず弱気になる。
次はどう攻撃しようか迷っていると、ミカエルが動いた。
その翼をいっぱいに広げて、急降下をしてくる。
「っ!」

        ギインッ

いつのまにかミカエルの手に握られていた剣が、セリオスの剣と正面衝突した。
剣が重なった時の衝撃でセリオスはそのまま後ろに後ずさる。
降下の勢いを利用された上、魔力で作られた剣で攻撃されては、さすがに受け止めるので精一杯だった。
普通の剣ならまず粉々に砕け散っていただろう程の力の強さに、思わず唇を噛み締める。
「セリオスっ…オーバーオーラ!!」
ルシェルの魔法がセリオスへ飛んだ。
アイセラがルシファーと戦ったときに使った、戦闘能力をあげる呪文の上位版だ。
魔法によって極限まで高められた肉体が、セリオスの意志を問わず暴れ始める。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『!』
人間では立ち向かうことすら出来ぬほどの力を持ったミカエルの剣が、力任せに弾かれた。
そして驚きと、剣を弾かれたせいで態勢を崩したミカエルの懐にセリオスが入り込む。
「だぁぁぁ!!」
一閃。
すると、ミカエルの表情が苦痛にうめいた。
ミカエルの腹部は大きく切り裂かれ、緑色の血で溢れていた。

   初めて、この空間に沈黙が訪れた。
   永遠とも一瞬ともつかぬ時間の狭間の中。
   だがそれは確かに刻を紡いでいた。

 呆然とした表情を一変させて、ミカエルが激怒する。
『おのれ…おのれ人間めぇぇぇぇ!!』
「リ・フォース!」
怒りにまかせて手を振り上げ、魔力の塊をセリオスに飛ばす。
だが感情が高ぶっているせいか威力は上がっていても命中力は弱く、ルシェルの魔法で簡単に軌道を反らされ、魔法が自分に跳ね返ってきた。
『な…』
ミカエルに魔力弾が当たった途端、大きな爆発音が響いた。
辺りは爆煙に包まれ、発生した風によって動く事すらままならない。
そのあまりの爆発の凄さに、一瞬自滅したかとも思ったが、すぐにそれが甘い考えであることを知る。
『…そこまで抗うか。混沌なる者達よ』
煙が左右にわかれて、ミカエルの姿が露になっていく。
その瞳は、まるで燃え盛るような怒りを抱えていた。
『何故、秩序に従わぬ!?私を倒せばこの世は混沌と化すのみ!
 混沌に従うは悪!何故それが解らない!?』
激情にかられているミカエルに、セリオスは冷静に自らの答えを述べた。
「ミカエル。君の言い分が解らない訳じゃない。
 だけど、それは僕にとって全てじゃないんだ。
 僕は僕の信じていることを成しているだけ」
自分の本心を、包み隠さず言った言葉。
だがミカエルにとっては、自分を否定している言葉でしかなかった。
『黙れ、黙れ!!愚かな人間めえぇ!!』
ミカエルの闘気が膨れ上がった。
『深淵の星々よ。流れる大気よ』
呪文を詠唱し始めると同時に、圧倒的な魔力の流れが空間を蝕んだ。
その闘気は、魔力は、世界を揺るがしていた。
 はっとして雲の隙間から地上を見ると、まるで大規模な地震が起きているかのように地面が揺れ、力に吸い込まれるかのように大地が盛り上がり、砕けた岩が空に、この場所に向かって浮かんできていた。
地上は遠すぎて、人も見えないし声も聞こえない。
だけど、皆の悲鳴がすぐ傍で聞こえるようで、セリオスは思わず悲壮な顔になる。
『虚空に浮かびし数多の大地よ、我が命に従いて、滅びと再生の糸を紡がん』
空気が震動している。
何かが、近づいている。
『闇を切り裂いて現れよ。空を切り裂いて現れよ。
 虚栄の真実は今白紙に戻されん』
耳鳴りがする。どこからか空気の塊が、この空間に圧力をかけているような。
そのせいで、立っているのがやっとだった。
「ルシェル…」
「そんな…こんな魔法を受けたら…っ!!」
ルシェルの顔に、絶望が浮かんだ。
『愚かしき者達よ。消え去れ。
 メテオウォール』


 空を切り裂いて、それは現れた。
 宇宙に浮かぶ数多の星々が、セリオスとルシェル目掛けて一斉に落ちてきた。



                       ドガァァァァァァァァ!!


幾つもの隕石が、二人に直撃して消えていった。
時々、二人には当たらずに雲を消し飛ばし、地上にまで及んだものもあった。
どちらにしても凄まじい爆音と爆煙に包まれて、全てを破壊していった。

 砂埃のような煙が視界を遮り、ミカエルから二人の様子は見えない。
間違いなく死んだだろうという予測はついたが、その場を動く事が出来なかった。
砂煙が薄くなっていくにつれ、影のようなものが浮かび上がってきたから。
「ミカエル…!まだ、終わってないぞ!!」
『…生きていたのか。しぶといことだ』
ルシェルが咄嗟に防御魔法を放ったらしい。それに先程かけてもらった魔法もまだ消えていなかったから、大分ダメージを抑える事が出来た。
それでも二人は、体のあちこちから血を流し、打撲の痣を浮かび上がらせ、服をぼろぼろにしていて、当たり所が悪かったところは骨折までしており、正に半死半生という言葉がふさわしかった。
内出血もしたのだろうか血を吐きながら立ち上がるセリオスに、ミカエルは冷たい言葉を浴びせかける。
『愚か…いや、ここまで来ると愚かという言葉すらあてはまらない…。
 半死人が一体何が出来るというのだ?』
「なんだって出来る…。そう思えばなんだって出来るんだ!
 そうじゃなければ、僕は今ここにいない!死に物狂いでなんだってやってみせるさ!!」
血を吐きながら必死にそう言うセリオスに、ミカエルは不意を打たれたかのような顔をした。
ルシェルも、血塗れの身体ながら優しく微笑む。
 その時、予想もしなかった声が響いてきた。
『それでこそお兄ちゃんだよ』
「レイラ!!」
目の前にいたのは、確かにレイラだった。
あまりに突然な出現に驚く者。そして、その人物自体に驚く者…。
『女神…ファリカ様……』
戸惑いと、怒りと、歓喜と、憂い。
複雑すぎる表情が、女神に向けられた。
『ミカエル…どうか、どうか勇者の言う事を聞いてください…。
 彼の判断は、私の判断でもあるのです…。
 貴方の秩序は絶対過ぎる…どうか、世界を、束縛しないで…―!』
女神の登場により、ミカエルも説得されるかと思ったが、そうではなかった。
顔を俯けて、静かに口を開く。
『女神よ…貴方は言ったはずだ。
 私に、貴方の作った秩序を護ってくれと。
 最初に産まれた生命に…私に…そう命じられたではありませんか…!!』
『ミカエル…っ!』

             従順すぎる者は
                純粋すぎる者は

                  それ故に 己を止める術を知らない

『いやだ!私は、私は絶対なんだ!秩序が全てなんだ!
 私はこの世界を、貴方達がいなくなった後も見守ってきたんだ!!
 それを否定するなら、貴方だって許さない!!』
子供のように叫び、逆上したミカエルは、女神に刃を向けた。
レイラは思わず目を瞑るが、高い金属音が響いたと同時に瞼を開く。
「くっ…レイラ……無事…か?」
『お兄ちゃんっ…』
傷の痛みを堪えながら、ミカエルと剣を合わせ続けるセリオスに、レイラが思わず叫んだ。
傷の治療のために祈りを捧げようとした瞬間、ミカエルがセリオスを剣ごと薙ぎ払った。

 ギィンッ…

「うわっ」
『邪魔だ!メギド!!』
ルシファーをも葬った呪文が、ミカエルからセリオスへ向けて放たれた。
セリオスの目の前が真っ白になり、あっと言う暇もなく光が全てを覆い尽くす。
だが、消滅してしまうかと思った自分の身体は変わりなく、恐る恐る瞼を開けば。

「レイ…ラ…?」

目の前でその小さな身体を一杯に広げて、光を全て受け止め、焼け焦げてしまった少女の姿。
 どこかで見た、死のデジャヴ。

「あ…」
少女はふっと後ろに倒れ、その小さな身体を、感触の無い雲の上へ預けた。
「レイラぁっ!!」
『…お兄ちゃん…こんなの、確か前にもあったよね』
レイラの微笑みに、セリオスはただその小さな身体を抱えてやるばかり。
『自分の作った世界で…自分の撒いた種…。
 なのに何もできないなんて、いやだったから。
 役にたててよかった』
「いやだ…いやだよレイラ…!
 せっかく会えたのに、どうしてまた…!!」
体ががくがくと震えた。
いつまでたっても慣れない。大切な人を失う恐怖。
『…ごめんね。隠してたけど、どうせ、お兄ちゃんがミカエルを倒して帰ってくるまで、もたない体だったの』
その言葉に、セリオスの動きが止まった。
そう、レイラは無理をしていた。一度滅びた体が、急激な動きや力に耐え切れる道理はなかったのだ。
それは”女神の記憶が戻るずっと前”から、解っていた事。
レイラはまた軽く笑みを作ると、ルシェルに顔を向けた。
『ルシェル…わずかだけど私の最後の力、受け取って』
「……解りました」
ルシェルがレイラの手を握ると、今までとは全く異質な、だが不思議と身体に馴染む力が流れ込んできた。
それと同時に光の粒子が3人を取り巻いて、傷を癒していく。
だが、傷が塞がってもレイラの衰弱振りは増すばかりだった。
『悲しんでないで、ちゃんと、戦ってね…。
 世界を…平和に……』
レイラの体が、淡く薄れた。
『平和に、導いて―』


 ばさあっ!!
レイラが死んだと同時に、セリオスの背中から、服や鎧を突き破って翼が現れ、大きくはばたいた。
ルシェルもセリオスも、身体が白い燐光に包まれて、神の降臨かとも思うような神秘的な姿に、ミカエルは言葉を失った。
『くっ…メギド!』
今一度、レイラの命を奪った魔法が放たれた。
だが、それは無造作に前に差し出されたルシェルの手によって、かき消される。
『っ!?』
「…ウィング」
驚愕するミカエルを前に、短く紡がれた呪文。
すると空が白く輝き、無数の羽が舞い降りてきた。
その羽は風に遊ばれながら舞い上がり舞い降りて、次第にミカエルの身体を包んでいく。
『なっ…なんだ、これは…っ!!』
見た事も無い魔法に、ミカエルは冷静な判断を下せずただ恐れるばかり。
 羽はミカエルの身体を包みきると一対の翼となり、彼の人の身体を抱擁して弾け飛んだ。
きらきらと光の粒子が舞い、地上にまで降り注ぐ。
それと同時に、彼の翼は光を失い、全く機能しなくなった。
今まで空中に浮いていたのがいきなり雲の上に落とされる。
『あ…あぁ…ぁ』
その呪文は、翼どころか彼の心をも壊したかのようだった。
 そしてその光景を虚ろな瞳に映していたセリオスが、静かに動いた。
「…ジャッジフール」
手にしていた愚者の剣が、その光を次第に鎮めていく…。
 そしてゆっくりと、横に剣を薙いだ。
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
ミカエルの絶叫が響く。
「滅びと再生を…」
誰が呟いたのか、その言葉と同時に、彼の人の身体は胴で真っ二つに裂け、傷口から真っ白な光が辺りに広がっていった。


   そして
   世界が、光に包まれた。

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15968金と銀の女神エピローグ神無月遊芽 E-mail URL6/16-12:57
記事番号15967へのコメント

 エピローグ


白い光に包まれて、セリオスは現れた。
翼もあの後すぐに抜け落ち、服はぼろぼろであるものの見慣れたセリオスの姿を見て、皆ただ涙する。
「セリオス!お帰り!」
「セリオスさんっ!」
「遅かったな」
「待ちくたびれたぜ」
「セリオス…よかった…っ」

皆の言葉に、少しだけ照れくさそうに頭をかきながら、彼は笑う。


「ただいま」

                    皆、自分の信じるもののために戦った。
                   皆、自分の信じるものを護るために戦った。


喜びの余り抱きついてきたルナの頭を撫でながら、セリオスは愛しそうに息を吐いた。
「皆、無事でよかった…」
「…セリオス、あのね…私達が生きてるのは、レイラちゃんのおかげなの…」
「え…?」
戸惑うセリオスに、ルナが言葉を続けた。
「女神様、一度姿を消しちゃったんだけど、また戻ってきて…。
 『速くここを離れて』って行って、また消えちゃったんだ…」
「慌ててエルア国まで逃げたら、地面が盛り上がったり巨大な隕石がいくつも降ってきやがったんだ。あれは驚いたぜ」
「恐らく、女神が力を駆使して、自分の神殿がある場所にバリアのようなものを張ったのだろう。エルア国も、神殿に置いてある女神像を中心にして結界が張られていた」
「多分、他の街や国も、無事だと思います…。先程、ナーサ国とも連絡がとれて、同じようなことがあったと…」
「レイラ…」

                    誰がためでもなく自分のために生き抜いた。


「ああもう!そんなに暗い顔しないの!」
「そうよセリオス。早くお城に行って、勇者の帰りを祝ってもらいましょう」
「…そうだな。でも、皆が生きていてくれただけで、僕は頑張ってよかったって思うよ」
「へへっ。やめろよ恥ずかしいじゃねえか」
「お前が恥ずかしがる必要などなかろう?」
「ふふっ、相変わらずですね」
仲間達の微笑が、とても心地よかった。


                    それが正しい事かなんて解らない。
                      ただ一つ 言えるとすれば


「それなら、私がナーサ国まで送るわ。皆、空間転移で送れるから」
「えっ?こんな人数を?だって騎士さん達とかいるのに…」
「大丈夫よ。心配しないで」
優しい力に包まれて、荒野から祝宴へと移動する。



                       絶対的なものなんてない


『勇者よ、よくやってくれたな。全ての人々を代表して礼を言おう』
「そんな、恐れ多いです。それに、この勝利は仲間達のおかげ…僕一人の働きではありません」
『謙遜することはない。早速宴を開こう!』


                      皆一生懸命生きているだけ
                     否定される事に脅えているだけ
                    自分の信じる道を突き進んでいるだけ


「でも…これからどうすればいいのかしら」
世界が元の安らぎを取り戻すには、まだまだ時間がかかりすぎる。
それを一日でも早くするにはどうすればいいのか。
 セリオスはサリラの言葉に、ふとルシェルを見つめた。
「セリオス、なに?」
「ルシェル、頼みがあるんだ」
『………』
「随分と簡単に言ってくれるわね」
「君にしか出来ないから、頼むよ。”女神様”」
「ふう…しょうがないわね。勇者様の頼みだもの」


                   ただ 傷つきながら自分の強さを見つけて
                     ただ 絶望しながら希望を見つけて


「そっか…ルシェルとセリオスは勇者だもんね…。
 これからも忙しいか…」
二人のこれからの予定を聞いたルナが、つまらなそうに呟いた。
「私は、これからもソードと一緒に旅していくつもり。
 運が良かったら、セリオスにも会えるよね?」
「もちろんだよ」
「俺達は華やかな席は苦手だから、すぐにでも出かけようと思っている」
「そうか…」
「俺は騎士としてやることがたくさんあるからな、この城でばりばり働くぜ」
「私は…暫くこのお城に滞在してから、ターツの村に帰るつもりよ」
「私も暫くこの城に留まって、騎士の方々のサポートをしようと思います。まだ魔物は多いですし、一人も死者を出したくありませんから」
「ああ、頑張ってくれ」


                自分の輝きを見つけることがその人の価値になるならば
                  誰もが宝石のような輝きと価値を持っている


ふと、セリオスの顔が曇った。
それを見て、ルシェルが心配そうに声をかける。
「どうしたの?」
「いや…ミカエルもただ、自分の信じることをしていただけだったんだなって」
それが女神のために、世界のためになると信じて、たった独りでこの世界の秩序を支えていたんだ。
少しばかりやりすぎたけれど、彼もまた、セリオスと同じだったのだ。
ルシファーだって、自分の居場所を探していただけだったのかもしれない。
その結果、一人の少女が使命に縛られてしまったけれど。


       生きる事は辛くて
                                       死ぬ事は怖くて


「…皆、一年後か何かに、こうして一緒に会えないかな?」


                脅えてばかりの一生だけど それでも笑っていけるのは


「ええ、いいわよ」
「おう、まかせとけ!」
「オッケーだよっ!」
「気が向いたらな…」
「もちろんです」
「解ったわ」


                       人は独りじゃないから
                   助け合い 喜びも苦しみもわけあえるから

「じゃあ、一年後に会う約束として…乾杯ねっ☆」
ルナがグラスを掲げると、皆がそれに自分のグラスを合わせた。

「「乾杯」」


                     皆がいれば涙も喜びに変わるから





そして一年が過ぎ、勇者達は再びこの地に集う。


                       愛しているもののために


「サラ、もうすぐ約束した場所だぜっ!」
「解ってるわよ」
「つれねえなあ。姉さん女房だからって突っ張らなくても…」
「う、うるさいわね!バカなこと言わないのこのバカ!」
「……俺の甘い生活はどこへ?」


                      愛してくれるもののために


「ソードっ!早く早く!」
「そんなに急がなくてもいいだろう?」
「だって大好きな皆に会いたいじゃないっ!」
「じゃあ、俺はどうでもいいのか?」
「はいはい☆ソードも大好きだよっ」


                        今日も人は生き続ける


「クロスさん、そんなに落ち込まないで…」
「うう、アイセラさん…解ってくれるか?」
「は、はぁ…」
「クロス!アイセラさんに逃げないの!大体、まだただの騎士のくせに、大司祭のアイセラさんにそうやって失礼な態度で…」
「そんな、サリラさん、気にしないでください。私達、同じセリオスさんの仲間なんですから」


                        今日も人は笑い続ける


「皆、お久しぶり」
「お久しぶり、セリオス」
「よお、相変わらず勇者様してるのか?」
「久しぶり☆元気だった?」
「皆元気そうで何よりだ」
「お久しぶりです」
「皆、相変わらずのようね」


                        勇者と凡人の違いは
                  少しの力と、心の強さなんだと誰かが言っていた
                  それさえあれば誰だって 大切な人を護れるんだ


「ルシェル、やっぱり女神様は大変?」
「まあね。でもルナ達も忙しそうじゃない」
「…まあ、顔が知られてしまっているから、旅先での歓迎が疲れるな」
「あはは、しょうがないよ」
「あっ、なんかセリオス他人事ー!」
「セリオスも、世界中を廻って大変なのに、本当に他人事ね」
「僕はそんなに大変じゃないよ」
「無理してらっしゃいませんか?」
「そうだなー…お前昔からいやなことを我慢するタイプだったしなー」
「クロスと違ってね」
「なっ、そりゃないぜサリラ」
「あはははっ」

                          ただ信じて

「…あれ?」
「どうしたのセリオス?」
「なんか、風が…」


                        大嫌いな自分でも


不思議な風を感じて、思わず辺りをみまわす。
地平線まで続く草原に、花びらが吹雪いた。


                         少しだけ信じて


 太陽の下に誰かいた。
海のように蒼い髪をなびかせて、空と同じ色の瞳で真っ直ぐに僕を見つめて歩いてくる。

 セリオスは、瞳を見開いた。


                         そうしたらきっと

「…」
小さく名前を呼ぶと、その人物が微笑んだ気がした。


                        違う世界に出会える


目が霞んで、何も見えない。
何か熱いものが頬を伝う、懐かしい感触。
「アリア…」
少女が、駆けてきた。
 セリオスもよろめきながら走っていく。
「アリア!!」
強く抱きしめると、アリアの体温が服越しに伝わってきた。
アリアは弱々しく抱き返した後、笑んだ。
「ただいま」
「おかえり」





 世界を創生した、金と銀の女神。
 女神からその力を継ぎ、世界を導いていった光の、金の女神ルシェル。
 一生涯、勇者を影から支えた影の、銀の女神アリア。

 この女神達に護られた世界は、今、歩き出そうとしている。


「不完全なる夢の地。邪なる聖なる者達。
 今正に闇へ還りし時、蒼き光は風と共に旅に出ん。
 風の気紛れに付き合いし時、
 金と銀に祝福されし、勇者に近しく遠き者。
 紅きを空に舞い上がらせ、蒼き光に力と悲しみもたらさん。
 蒼き光、今一度愛と悲しみを植え付けられし時、
 紅き炎呼び覚まさん。
 蒼き光、慈しむべき悲しき白銀の導きにて今を壊し、
 人為らざる人に全ての夢を託す―。」

 ”いないはずの女神”より告げられた神託から始まった勇者物語。
 この神託は成就され長い長い物語は終わりを告げようとしている。
 だが



 彼らの物語は、そして世界は、今、はじまったばかりなのだ―。




                         金と銀の女神
                       〜世界が始まるとき〜


                           ED



















                               『勇者に、女神の加護があらんことを…』

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15969☆あとがき☆神無月遊芽 E-mail URL6/16-12:58
記事番号15968へのコメント

あとがき☆

えー…本日はお日柄もよく、晴れ晴れとした曇り空に恵まれまして。
このような狭苦しい部屋の中で祝宴をあげられますことをなんたらかんたら…。

と、いうわけで、金と銀の女神、やっと完結しましたv
長かったですねえ…途中で嫌になったこともありましたけど、無事完結できてほっとしました。
初のオリジナル小説。出来はとても悪いですが、自分では満足しております。
元々、自分の思っていることを詰めた作品ですので、文章の不甲斐なさは承知の上で、何かを感じていただければと思います。
天使の傲慢さ。魔族の孤独。セリオスの甲斐性のなさ。
貴方は何を感じましたか?

さて、このようなことをお願いするのは心苦しいのですが、よろしければ今後の参考のために。

1 好きなキャラ よければその理由も
2 印象の薄かったキャラ
3 好きなシーン よければその理由も
4 いらなかったと思うシーン
5 文章の指摘、その他諸々

などを教えていただければ幸いです。
ちなみに自分ツッコミ。

22〜24章アイセラ編の『ソードの怪我』
全治一週間はあきらかにおかしいです(汗)
私のHPにのせるときは変更しておきます。


ではでは、皆様、こんなくそ長い作品に最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。
もしまたオリジナル小説を書くことがあったときには、おつきあいくださいませ。
今度は書きやすいギャグにします(笑)


 それでは。
    神無月遊芽

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16008お疲れ様でした!あごん E-mail 6/18-22:01
記事番号15969へのコメント

こんばんわ、お久しぶりです、のあごんです。
金と銀の女神、連載終了おめでとうございます〜〜!
そしてお疲れ様でしたvv

ほとんどレスできなくて申し訳なかったんですが(滝汗)。
こちらももー仕事が矢鱈目鱈に忙しくて(とほほ)。
でもちゃんと読んでましたよvv

最後はちゃんとハッピーエンドで良かったですv

え〜と、私は何に対してもそうなのですが、批評するという行為が好きではありません。
ですから、この物語はどうだったか、どこがいけないか、そしてどこが良いのか、といわれても書けませんし、書きません。

でも神無月様の文章はとても好きですv

キャラもみんな好きですよv
まぁ、あえて言えばセリオスはあまり、でしたが(笑)。

とにかく、長期に渡っての連載、お疲れ様でした!
ではでは!あごんでしたv

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16024ありがとうございます。神無月遊芽 E-mail URL6/19-18:48
記事番号16008へのコメント

>こんばんわ、お久しぶりです、のあごんです。
>金と銀の女神、連載終了おめでとうございます〜〜!
>そしてお疲れ様でしたvv
 こんばんは、あごん様。
 ここまでつきあってくださってありがとうございましたv

>ほとんどレスできなくて申し訳なかったんですが(滝汗)。
>こちらももー仕事が矢鱈目鱈に忙しくて(とほほ)。
>でもちゃんと読んでましたよvv
 いえ、ありがとうございます。

>最後はちゃんとハッピーエンドで良かったですv
 最初の方から、エピローグはありがちすぎて涙が出るくらいのハッピーエンドにしようと決めていたので(笑)

>え〜と、私は何に対してもそうなのですが、批評するという行為が好きではありません。
>ですから、この物語はどうだったか、どこがいけないか、そしてどこが良いのか、といわれても書けませんし、書きません。
 そうですか。
 まだまだ文章が未熟ですので、指摘していただけたらもうちょっと見れるようになるかと思って頼んだのですが、強制ではありませんのでそれで構いません。

>でも神無月様の文章はとても好きですv
 ありがとうございます。

>キャラもみんな好きですよv
>まぁ、あえて言えばセリオスはあまり、でしたが(笑)。
 あはは、やっぱりですか(笑)

>とにかく、長期に渡っての連載、お疲れ様でした!
>ではでは!あごんでしたv
 はい、こんなくそながい文章に最後までおつきあいいただいて、本当にありがとうございましたv

 それでは。
   神無月遊芽

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16033遅くなりましたが、お疲れ様でした。みてい 6/20-14:41
記事番号15969へのコメント

みていにございます。
半年振り(本当に)車の運転しました。ふひぃ。


>えー…本日はお日柄もよく、晴れ晴れとした曇り空に恵まれまして。
>このような狭苦しい部屋の中で祝宴をあげられますことをなんたらかんたら…。
みていが今いるのは全部とっぱらっても1畳の空間v

>と、いうわけで、金と銀の女神、やっと完結しましたv
>長かったですねえ…途中で嫌になったこともありましたけど、無事完結できてほっとしました。
>初のオリジナル小説。出来はとても悪いですが、自分では満足しております。
>元々、自分の思っていることを詰めた作品ですので、文章の不甲斐なさは承知の上で、何かを感じていただければと思います。
お疲れ様でした。長いお話でしたね。
>天使の傲慢さ。魔族の孤独。セリオスの甲斐性のなさ。
>貴方は何を感じましたか?
ん〜、どう表現しましょうね〜。
…やっぱ、大団円はいいっ!でしょうか(笑)

>さて、このようなことをお願いするのは心苦しいのですが、よろしければ今後の参考のために。
皆様書かれるクセとか表現とかありますから、それはそれとしていい個性だと思うのですが。
……私自身、かぁなりクセありますけど、「いーじゃんよ」と。
神無月さんの行間の取り方は見習いたいなぁと思ってます。
34話かその前後で、「ほえ〜っ」っと思ってましたので。

>ではでは、皆様、こんなくそ長い作品に最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。
>もしまたオリジナル小説を書くことがあったときには、おつきあいくださいませ。
>今度は書きやすいギャグにします(笑)
お疲れさまでした。
書きやすいと言われる(笑)ギャグを楽しみにしておりますv
>
>
> それでは。
>    神無月遊芽
>
ではでは、みていでございました。

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16049いえ、ありがとうございます!神無月遊芽 E-mail URL6/22-00:09
記事番号16033へのコメント

>みていにございます。
>半年振り(本当に)車の運転しました。ふひぃ。
 こんばんは、神無月です。
 車の運転…大丈夫でしたか?

>>えー…本日はお日柄もよく、晴れ晴れとした曇り空に恵まれまして。
>>このような狭苦しい部屋の中で祝宴をあげられますことをなんたらかんたら…。
>みていが今いるのは全部とっぱらっても1畳の空間v
 あらあら、そうなのですか(笑)

>>と、いうわけで、金と銀の女神、やっと完結しましたv
>>長かったですねえ…途中で嫌になったこともありましたけど、無事完結できてほっとしました。
>>初のオリジナル小説。出来はとても悪いですが、自分では満足しております。
>>元々、自分の思っていることを詰めた作品ですので、文章の不甲斐なさは承知の上で、何かを感じていただければと思います。
>お疲れ様でした。長いお話でしたね。
 ええ…長かったですねえ…(遠い目)

>>天使の傲慢さ。魔族の孤独。セリオスの甲斐性のなさ。
>>貴方は何を感じましたか?
>ん〜、どう表現しましょうね〜。
>…やっぱ、大団円はいいっ!でしょうか(笑)
 ありがとうございますv

>>さて、このようなことをお願いするのは心苦しいのですが、よろしければ今後の参考のために。
>皆様書かれるクセとか表現とかありますから、それはそれとしていい個性だと思うのですが。
>……私自身、かぁなりクセありますけど、「いーじゃんよ」と。
>神無月さんの行間の取り方は見習いたいなぁと思ってます。
>34話かその前後で、「ほえ〜っ」っと思ってましたので。
 そうですか?ありがとうございます(*^^*)

>>ではでは、皆様、こんなくそ長い作品に最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。
>>もしまたオリジナル小説を書くことがあったときには、おつきあいくださいませ。
>>今度は書きやすいギャグにします(笑)
>お疲れさまでした。
>書きやすいと言われる(笑)ギャグを楽しみにしておりますv
 みてい様、楽しみにはしないほうが(笑)

>ではでは、みていでございました。
 感想ありがとうございました。

 それでは。
   神無月遊芽

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