◆−金と銀の女神25−神無月遊芽(5/4-13:18)No.15259
 ┗金と銀の女神26−神無月遊芽(5/5-12:08)No.15277
  ┗金と銀の女神27−神無月遊芽(5/13-13:40)No.15378
   ┗金と銀の女神28−神無月遊芽(5/19-18:52)NEWNo.15487
    ┗間に合うかな−みてい(5/19-22:17)NEWNo.15495


トップに戻る
15259金と銀の女神25神無月遊芽 E-mail URL5/4-13:18


 こんにちはー。神無月ですー。
 金銀の第3部をお届けに参りましたー。
 えー?受け取り拒否ー?意地でも置いていきます…なんてバカなことやってる場合じゃなくて。
 むう、今変なテンションだなあ。
 本当はあんまり進まなくて苦しんでるんですけど、GW中にちょっとは進めたいなと思いまして。
 あー前書きが長くなってきましたのでこのへんで。

****************************************

              金と銀の女神
            〜世界が始まるとき〜


  何も知らなかった
  何も解ろうとしなかった
  ただ与えられた平和にすがり
  ただ与えられた使命を目指していた

  世界なんてどうでもいいと思ったこともあったけど
  自分を自虐的に見たこともあったけど

  まだ 僕のことを信じてあげられないけど

  精霊は僕に教えてくれる
  優しい大地の潤い

  剣は僕に教えてくれる
  護るべき人の大切さ


  僕はただ 自分の道を進むだけ



  第3部 金と銀の女神
  25章 破滅を産む堕落

 gold 人の中で最も許されざる者
   堕落した人間は ここまでひどくなってしまうの?

 そこには、凄惨な景色が広がっていた。
枯れ果てた大地。泥の混じった水溜りような湖。育たぬ草木。暗雲の果てぬ暗い空…。
まるで、世界の終わりとも言うべき、悲惨な光景。
「何…なの……?」
ルナの口から言葉が漏れた。
だが、それだけを言うのが精一杯だったらしく、後は空気を漏らすだけだった。
 言葉が出ないほどに、信じられない光景だった。
確かに最近は魔物も増えて、平和とはいえない状況になっていたけれど、ここまでひどくはなかった。
精霊達さえ住めないような大陸。
それが、エルア大陸…。
 セリオスはぎゅっと口を噤むと、ゆっくりと歩き出した。
エルア大陸で最も大きい国、エルア大陸の中心部。
エルア国へ。



『何のようだぁ?』
彼の第一声は、そんな言葉だった。
 今セリオス達はエルア国の王城にいた。
荒野を抜けて辿り付いた所は、周りの自然に負けず劣らず荒れ荒んでいた。
  半壊した城壁。
  昼間から出没する盗人。
  食べる事すらままならぬ人々。
  崩れかけた家々。
しかも、城下町とは対照的な、城の圧倒的な美しさ。
いや、美しいと言うにはあまりに趣味の悪い、飾り立てられた廊下や壁。
城門に兵士一人いなかったことさえ、この国の荒廃様を物語っていた。
 そして城の王の間へ行ってみれば、美しく着飾った女達に囲まれた、酔っ払いが一人。
そう、彼が、この国の王だった。
「一体、この国はどうしたのですか?
 これほどまでに荒れ果てているなんて…」
セリオスが疑問をぶつけた。
 だが、大体の予想はついた。
 一つは、魔物達の攻撃によるものだろう。
何故だかはしらないが、エルア国は最も魔物の数が多く、また魔物達が最も強いからだ。
幾度か襲われるうちに兵達がいなくなり、家は壊れていったのだろう。
 もう一つは、王の交代。
 前任の王は、しっかりとした政治を行っていたそうだが、王が”目の前の男”に交代してからは他の国に連絡さえなかったと言う。
酒と女に溺れ、堕落した人間に政治など務まるはずも無い。
『知らねえよ。俺にそんなこと関係ないだろう?』
特に、こいつのように性根の腐った野郎には。
「貴方ねえ…!王としての自覚はあるわけ!?」
ルナが叫んだ。
『ああ、あるさぁ。俺が王だ。俺が絶対だ。
 貴様ら平民は俺に跪いて、金を捧げてればいいんだよぉ』
「狂っているわ…」
アイセラが思わず呟いた。
 そこには確かに、怠惰に堕落した人間がいた。
許されざる、存在が。
『ああん?何か言ったかア?』
「…いえ、お会いしていただき、ありがとうございました」
「セリオスっ…」
セリオスがすっと頭を下げたのを見て、ルナが文句を言いたそうに口を開いた。
セリオスは無言で王に背を向けると、ルナの耳に顔を寄せた。
(とりあえず、ここを出よう)
そんあ小声の合図に、皆早々にその場を立ち去った。



「神殿が残ってて良かったね」
「ああ…所々崩れているが、ひどくはない」
4人は街の神殿へ来ていた。
 城にいるのも、街にいるのも安心は出来ないため、この場所が破壊されていないのを見てひとまずここに非難する事にしたのだ。
「…それでセリオス。どうしてあそこで引いちゃったの?
 何か理由があるんでしょ?」
ルナが壁にもたれながら話し掛ける。
セリオスは少し沈黙した後、口を開いた。
「多分…あの人には何を言っても無駄だよ」
狂った目。
怠惰に堕落してしまった人間は、もう誰にも耳を貸そうとしない。
自分しかこの世にいなくて、自分の言葉しか聞こえない。
そんな人間に何を言っても、何にもならない。
「なんとなく解る。あの人の精神は、多分、もう僕達の世界にはないよ」
「………」
自分の世界に閉じこもって、好きなことだけやっている。
だからこの国は滅びたんだ。
「……それより、これからどうします?
 この国は、もう救えない…」
アイセラの言葉に、皆が沈痛に顔を俯かせる。
 来るのが、遅すぎたのだろうか?

 最近、空は以前の明るさを一度も見せていない。
 いつも暗雲が覆い隠し、雷が鳴る。
 大地は枯れてひび割れて。
 魔物達が、我が物顔で歩き回る。

「……ルシェルを呼ぼう」
セリオスが、顔を上げた。
「ルシェル…?」
「堕天使だよ。そして、僕らの仲間」
返ってきた言葉に、アイセラが驚きを隠せずに手で口を覆う。
セリオスはそっと指輪を外すと、祈りをこめた。
(ルシェル、出てきてくれ…!)
指輪が鈍く輝いた。
 だが、次の瞬間輝きは消え去る。
「!?」
「せ、セリオスっ。ルシェルを呼ぶんじゃなかったのっ?」
ルナが事態に気付き、慌てた様子で話し掛ける。
「もしかして…もうこの神殿は神聖さを失っているのかもしれない…」
「!?」
ルシェルから貰った指輪で、ルシェルを呼び出せる条件は
”神聖な場所””満月の夜”
このどちらかを満たさねばならない。
だが、女神が奉られた神殿ならば間違いなく条件に当てはまっているのに、呼び出せないとなると…。
「きっと魔物に荒らされて…」
神殿ですら、その神聖を保てないのか。
それほどまでに、この大陸は魔が強いのか?
「…セリオス、今日はとりあえずここで休もう。
 どうするかは、明日考えよう」
まだ陽は沈んでいなかったが、今出来る事はそれくらいしかなさそうだった。
セリオスがゆっくりと頷くと共に、少女達は、この埃まみれの中で寝ることに眉をひそめていた。



 ゆっくりと、夕焼けの空が紺色へ成っていく。
淡い雲は闇に散っていき、星は瞬く事すら忘れる。
そんな、暗い夜の中、無数の影が蠢きだした。
その影はゆっくりと、群れをなしながら廃墟の街へと向かう。
 ゆっくりと、ゆっくりと…―。
 まるで月の女神とも見紛うような、美しき銀色の少女に付き従って。

                        荒野を徘徊する。


「……やはり、来ているようだな」
ソードが外門から顔を覗かせて、辺りを窺いながらそう言った。
「まったく、人が寝てる隙に来るなんて、迷惑にも程があるわ」
同じく顔を覗かせたルナが、不機嫌そうにそう言った。
 アイセラはルナの後ろで、思案顔で答えた。
「でも、おかしいと思いませんか?
 せっかく夜に襲撃しようと言うのに、隠れようともしないなんて…」
「…きっと、僕達を呼んでるんだ。だから、姿を表している」
戦争の時などでも、城に攻め込むのは夜の場合が多い。
なぜかと言うと、夜は闇に紛れて襲撃に気付かれない事が多いので、奇襲しやすいからだ。
奇襲をすれば、相手の士気も落ちるし、断然有利になる。
 だが、彼らはその目的ではないようだった。
おぞましい魔物達を何千匹と連れていれば、例え月の光が無くても辺りの闇と違う事に気付くだろう。
それだけならまだしも、先頭にたつ魔族は明かりの魔法を使ってわざわざこちらに位置を教えているのだ。
まるで、気付いてくださいとでも言うように。
「罠、か。だが、行かないわけにはいかないだろうな」
「決戦ってやつね。受けて立とうじゃないの!」

                           ―違う

セリオスは心の中で呟いた。

  今回の戦いは、まだ決戦じゃない。ただの、一つの区切りである戦いなだけだ。
  僕は信じる道を行くだけ。
  その信じる道が、どんなに無謀で過酷なものであっても。
  そう…僕のやろうとしていることが、実現可能なことならば、これは決戦じゃない。
  魔族を全て倒しても、まだ、最後の戦いではない。
  だって…―。

 セリオスが、唇をきゅっと噛み締めた。
「行こう」
「そんな…死にに行くようなものです!」
アイセラの叫びに、セリオスが首を振る。
「決めたんだ」

              世界を救う。ただそれだけのためじゃないけど。だからこそ。

「……アイセラ、死ぬのを、進むのを恐れるばかりでは何も変わらない。
 生きていられる可能井が1%でもあるならば、勇気を出して進むべきだ」
ソードの言葉に、ルナが苦笑する。
「あはは。私はそこまでは言わないけどね。
 勝つか負けるかなんて、やってみなきゃ解らないじゃない」
「…そうですね、そうかもしれません」
アイセラが一歩、前に踏み出た。
 皆が皆、ルナ達みたいな人だったら良かったのに。
そうしたら、永遠と繰り返された天使と魔族による殺戮も、無かったはずなのに。
だけど、それは決してありえない。
天使でさえ、完璧ではないのだから。
「……行くよ」
セリオスは、光に導かれるままに歩いていった。


『来たわね』
銀の少女が、妖艶な笑みを浮かべた。
少女の手の上にある光の球体が、彼らの姿を照らし出す。
「アリア……」
銀色の瞳が、少しだけ陰りを見せた。
『わざわざ罠にはまってくれて感謝するわ。
 …アマルズ』
『……ここに』
アリアが呼ぶと同時に、背後に魔族が現れた。
その魔族を見て、セリオスとソードが狼狽する。
「アマルズ…!」
『セリオスか。やはりまだ完全には覚醒していないようだな。
 それにそっちは……』
銀の瞳がすっと細められた。
 瞳の先に、あるものは。
『ソード、か』
セリオスの背後で、ソードの殺気が恐ろしいほどに膨れ上がった。
ルナが脅えの表情を見せる。
「アマルズ……」
歯をぎりりと食い縛って、目の前の魔族を睨みつける。
『そんなに興奮するな。魔法が解けるぞ。
 …まあ、今まで一度も解けなかったがな』
「貴様にそんなことを言われる筋合いはない!!」
普段は冷静沈着なソードが、これほどまでに感情を露にしている。
そのせいか、セリオスはいくらか自分が冷静でいるのを感じていた。
「ソード、アマルズと一体どんな関係が…?
 魔法って…?」
「……」
ソードの口が、閉ざされる。

 風が、吹いた。

「………だ」
「え?」
風にかき消された言葉に、ルナが問い返す。
ソードが、今一度ゆっくりと口を開いた。
「俺の、父親だ」

 後書
 *セ=セリオス。ル=ルナ。ソ=ソード。ア=アイセラ
ソ「…これが俺の過去か?」
*「うん」
ソ「なんだか既に聞いたような話なんだが」
*「気にしないで」
ル「ということはソードは魔族なんだね…」
ア「知りませんでした…」
セ「まあまあ、このパーティーはすねに傷を持った人ばかりだから」
ル「それはそうだけどね。どうせ作者の趣味なんだし」
*「いいじゃん。ほっといてよ」
ア「それより、もう最後は決まってるんですか?」
*「最後は決まってるけど…途中が決まってない」
セ「……早く考えなよ」
*「あっ、セリオスに言われるとなんか悔しいわ!」
セ「何故!?」

トップに戻る
15277金と銀の女神26神無月遊芽 E-mail URL5/5-12:08
記事番号15259へのコメント

 こんにちは。今日も投稿するなんて、雪でも降るんですかねえ(笑)
 26話ですわv

****************************************
                        金と銀の女神
                      〜世界が始まるとき〜


   26章 悟りとも言えぬ程の小さな真実

 silver 知は決して幸せではない
    それでも貴方は真実を求め 手にしたのね


「父親…?」
ソードの言葉に、ルナが信じられないように呟いた。
アリアは面白そうに笑い、アマルズは悲しそうに笑んだ。
『ああ。ソードは、私の血を引いている』
「何故です…?だってソードさんは、魔力なんて持っていませんし…」
魔族は強い魔力を持っており、魔族から産まれた子供もまたしかりである。
例え片親が人間であれ天使であれ、魔力なくして産まれることはない。
 そして魔力を持っている者は、魔力を感じ取る事が出来る。
アイセラには、ソードからは魔力の欠片さえないように思えた。
『それはそうだろう、母親が命をかけて封じたのだからな』
「っ!」
ソードが憎々しげにアマルズを睨んだ。
冷ややかな翡翠の瞳が、怒りに満ちた瞳が、それ以上の言葉を拒んでいるかのように見えた。
「ソード…」
複雑な思いが絡まった声が、ルナの口から発せられた。
ソードはルナと目もあわせずに、ただ、目の前の魔族を瞳の中に捕えている。
「………」
『…何も言わぬのか?ならば、戦闘をはじめるぞ』
アマルズがすっと構えた。
セリオス達も、ゆっくりと姿勢を戦闘態勢へと変える。
『…アリア様の御心のままに、邪魔者を排除する』
言うや否やアマルズの手に、黒く輝く槍があらわれた。
そしてそれを大きく振り下ろすと、空気圧のようなもので地面がへこみ、爆発が起こった。
土埃が爆風に煽られ、視界を遮る。
「っしまった…!」
土埃のせいでアマルズの姿が見えない。
慌てて姿を探すものの、夜の闇も手伝って目では確認できなかった。
だがその途端、恐ろしいほどの殺気が満ちて、セリオスは咄嗟にその方向に剣を突き出した。

  ギィンッ!!

金属同士がぶつかりあう音がしたかと思うと、土埃は風にさらわれて視界が晴れていった。
目の前に、大きな槍があった。
『なるほど…この程度ならさすがに反応できるのか…。
 伊達に勇者をやっているだけのことはある…。
 だが、そのような力を持っていたところで、人一人守れまい…?』
アマルズの不敵な笑みに、セリオスはカッと頭に血がのぼった。
セリオスの感情に反応したかのように、愚者の剣が鈍く輝く。
「黙れ!!」
セリオスが剣を横に一閃した。
槍は大きくはじかれるが、アマルズは危うい様子もなく平然と槍を自分の元まで引く。
『この程度で冷静さを欠けるとは…やはりまだ未熟だな』
そしてアマルズはセリオスがしたのと同じように、槍を横に薙いだ。
慌てて剣で受け止めるが、衝撃によって態勢を崩す。
「セリオスさんっ!」
アイセラの悲鳴が飛ぶ。
「…セリオス、しっかりしろ!」
「もうっ!どうせ挑発なんだから気にしちゃダメだってば!!」
ソードとルナが叱咤を言いながらセリオスの前に出た。
「たあっ!」
ルナが、槍に向かって蹴りを繰り出す。
本来なら相手の武器を蹴り落とす動作なのだが、さすがにアマルズには通じない。ほんの一瞬態勢を崩しただけだった。
だが、その一瞬の隙をついてソードが剣を振り下ろす。
「はっ!」
『くぅっ…』
何度も体験した、嫌な感触がソードに伝わる。
アマルズの腕には、ソードの剣が深く突き刺さっていた。
蒼い血が、アマルズの腕を伝って地へと落ちていく。
 その時、苦痛に顔をゆがめていたアマルズが、ふっと笑った。
『……愚かな』
ソードの眉がぴくりと動く。
「愚か、だと?」
『私は、所詮捨て駒に過ぎぬ。貴様らは本当に、貴様らを倒すためだけにあの魔物達が用意されたと思っているのか?』
歪んだ笑みに、嫌な予感が頭をよぎる。
よく見れば、先程まではいたアリアや魔物達が、忽然と消えていた。
「っまさか!?」
アイセラが後ろを振り返った。

  炎上する建物。
  聞き逃してしまいそうなほど微かな人々の悲鳴。
  はびこる魔物達に埋め尽くされた地面。
  崩れ行く、城。

「エルア国が…!」
「そんな…そんな…っ」
アイセラが、目の前の出来事にただ呆然と立ち尽くす。
ルナは口を抑えて今にも泣き出しそうだった。
「貴様等…っ!最初からそれが目的で俺達をおびき寄せたのか…!?」
ソードの言葉に、魔族は静かに頷いた。
『魔族の拠点である大陸に、人間などがいると困るのでな。
 エルア国の前王を殺して今の王にあとを継がせ、国を衰退させたのも私だ』
「拠点…?」
セリオスは一つの言葉に反応した。
『正確に言えば、魔界へ通じる扉のある大陸…だがな』
「そうか…だから今の、王とは言えぬに王に変わり、エルア国との連絡は途絶え、大陸を魔物が埋め尽くしていたのか…!!」
魔界へと通じる扉のある大陸。だから他の大陸よりも強く凶悪な魔物達が沸きあがるように出現していたのだ。
そして魔物達はその場所を拠点として、各地を恐怖で脅かしていた。
だが、エルア大陸にはエルア国という、世界でも名のある軍事国家がある。
しかも他の大陸と違ってこの大陸は広い。大きな国がいくつもある。
そのためすぐに王を交代し衰退させ、一気に殲滅という作戦をたてたのだろう。
『勇者よ、また、人々を守る事など出来なかった。
 それでも、まだ戦いつづけるというのか?』
痛い質問に、セリオスが驚愕する。
「セリオスっ!心理作戦だ、耳を塞げ!」
「セリオスさん、耳を傾けないでください!」
「セリオスは世界を救うために頑張ってきたんじゃない!
 皆を守れないなんてことないよ!!!」
セリオスの頭の中に、ふと、レイラの顔が浮かんだ。
目の前で殺された妹。力及ばなくて死なせてしまった。
守りたい人すら守れなかった。
そして…

                           ―アリア

「……確かに、僕は皆を守る事が出来なかった」
セリオスが剣をおろした。
「セリオス!?」
「黙って」
振り向きもせずに、簡潔な言葉でみんなの口を塞ぐ。
 両腕を地に向け、だらんとした姿勢で、一歩一歩、アマルズへ向かって歩いていく。
アマルズは、いぶかしげにセリオスを見つめていた。
「だけど、いつも同じ結果が待ってるわけじゃない。
 例えどんなに複雑に絡み合った運命の糸だって、頑張れば解く事も出来るし断ち切ることも出来る。
 新たな運命の糸を紡ぐ事だって…」
セリオスが足を止めた。
『では、今までのことはどうなのだ?』
「今までだって頑張ったさ。確かに僕は誰も守れなかった」

   ―そんなことない、私、セリオスに出会って強くなれた―

                        ―以前より強い絆を手に入れることが出来た―

                       ―勇気をくれました―

「だけど、その結果が僕をここへと導いている。
 今までの道のりがなければ、何か一つでも欠けていれば、僕はこの地に立つ事すら出来なかった」
   苦しい事も嬉しい事も全部受け止めよう。
   嫌な自分も全部認めよう。
   それが、強くなるということ―。
「やっと、そのことに気が付いた。
 …いや、辛くて目を反らしていただけかもしれない。
 だけど今は真っ直ぐに自分を見つめる事が出来る」
アマルズがたじろいだ。
「もう絶対に、誰も死なせない!!」
髪が真紅に燃え上がる。
穏やかな蒼い瞳が、金へと変わる。
愚者の剣が勇者に反応して、大きく輝いた。
『くっ…ここで負けるものか!!』
セリオスの変身を見て慌てたアマルズが突進してきた。
「危ない!ホーリーライトっ!」
『ぐわっ!』
真っ白な閃光が辺りを包む。
咄嗟にアイセラの放った魔法で、アマルズが一時的に視力を失い、ダメージを負う。
 それを見たセリオスははっとして、自分の手を見つめた。
「ホーリー…?神聖な……」
セリオスが何を気にしているか気付いたのか、ルナが叫んだ。
「セリオス!やってみなきゃ解んないよ!やっちゃえ!!」
「…うん」
ルナの言葉に、セリオスがゆっくりと頷いた。
 自分の指から指輪を抜き、天にかざす。
「…指輪よ。精霊界への道を作りたまえ。
 ルシェルよ、現れてくれ…!!」
指輪が強く輝き、空間に歪みが生じる。
だが、アイセラの魔法で一時的に浄化されたとは言え、先程まで無数の魔物達がいたし、今もアマルズがこの場に鎮座している。
邪悪に対抗しながら開いていく異界への扉が開いていくのは、とてもゆっくりだった。
ゆっくり…ゆっくり…。
「くっ…まだか!?」
アマルズは既に視力を取り戻し、槍を構え始めた。
だが、まだ扉は開かない。
『ふっ…何をする気かは知らんが、遅いっ!』
「セリオスさん!」
アマルズの突進と共に、アイセラの悲鳴が響き渡る。
ルナとソードは叫びもせずに、前へ飛び出していた。
『はっ!!』
アマルズが、ソードに槍を振り下ろそうとした時。
「ムーンクロス!!」
突然空が晴れわたり、月が顔を出したかと思うと、途端、白い光が十字となってアマルズに降り注いだ。
『ぐわあああああああ!?』
アマルズが絶叫し、がくりを膝をつく。
そしてセリオスの背後から、その声は聞こえた。
「全く…戦闘中に呼ぶのはやめてくれないかしら?」
優しいアメジストの瞳がふっと微笑んだ。
「ルシェル!」

 後書
 *セ=セリオス。ル=ルナ。ソ=ソード。ア=アイセラ
セ「今回は決め台詞が多かったね」
ル「うん、珍しくかっこよかったよ!」
ソ「少しは見直したな」
ア「いつもこうだといいですね」
セ「うわーん!(ダッシュ!)」
*「あー…行っちゃった。誉めたのにねえ?」
ル「そうだよねえ」
ア「ところで作者さん。そろそろ大詰めですか?」
*「そうだね、ルシェルも出てきたし」
ソ「それにしても…戦闘シーンが下手な事だ」
*「うるさい!私戦闘なんかしたことないし、護身術も習ってないんだからしょうがないじゃん!」
ア「…護身術はともかく、戦闘をしたことがある人はあまりいないと思いますけど…」

トップに戻る
15378金と銀の女神27神無月遊芽 E-mail URL5/13-13:40
記事番号15277へのコメント

 神無月ですー。
 はっはっはっ……太りました(涙)
 というわけでダイエット中…これ投稿したらDDRでもしてきます…。

****************************************

                    金と銀の女神
                  〜世界が始まるとき〜


  27章 きっといつだって誰かが貴方を愛してる

 gold 忘れることの出来ない過去の記憶
   それが偽りのものでも 貴方は受け入れられる?


「ルシェル!」
セリオスの顔がぱっと明るくなり、ソードのルナの表情が安らぐ。
アイセラは少し不安そうにしながらも、安堵の溜息を吐いていた。
「……再開の挨拶がしたいところだけど、そうはいかないようよ」
「!?」
ルシェルの言葉に、セリオスが慌てて振り返った。
 そこには、光に焼かれながらも、なお立っているアマルズの姿…。
じゅうじゅうと肌の焼ける音を立てながら、アマルズは一歩、前に進んだ。
『…ルシェルか…まさか勇者の仲間入りをしていたとはな…』
「そろそろ会う頃だと思っていたわ。
 地上の邪魔者を消し去ることを任されている魔族…アマルズ」
ルシェルの瞳がすっと細められる。
 彼女も一時は魔界にいた身。アマルズともその時に面識があったのだろう。
『魔力を封じる鎖に繋がれてもなおそのような力が出せるとは…。
 アリア様もお前の事を残念がっていたぞ』
「あいにく、もう誰の言いなりも沢山なのよ。
 貴方を倒させてもらうわ!」
その強い決意の表れる言葉と共に、ルシェルが前方へ両手を突き出し、光弾を放つ。
幾つもの白い光弾が、円を描くように丸く軌道を変えて、そしてアマルズの元へ収束していく。
アマルズは慌てて槍でそれを薙ぎ払うと、その姿勢のまま前に飛び出してきた。
だがそれより一瞬早く、セリオスがアマルズの懐に飛び込み、槍の柄を切り落とした。槍の先端にある金属の部分が、弧を描くように空へ舞い、音を立てて地に落ちた。
アマルズの顔が、驚愕に包まれる。
「伊達に勇者はやっていない…君が言った言葉だよ」
金の瞳で睨みつけられながらそう言われ、体が脅えて動かなくなってしまいそうな感覚に襲われた。
初めて、死の恐怖というものを感じた気がした。
自分の持っていた槍は、既にただの棒きれに変わってしまっている。
そのことに、脅えを感じた。
『…仕方が無い。負けを認めよう。半覚醒とは言え確かに勇者の力量がある。勝てる気がしない』
魔法も使えないわけではない。だが、相手の、しかも高位の魔族である自分の隙を見て武器を破壊するような技量のある戦士と、しかも傷を負ったままで戦う気など起こらなかった。
「その言葉、嘘じゃないでしょうね?」
『偽りは言わない。意味がないからな』
ルシェルもその言葉で信用したのだろうか、臨戦態勢を崩した。
セリオスも、戦う意志を無くしてか、元の蒼い髪と瞳に戻った。
「アマルズ、聞きたいことがある。さっき言っていた、この大陸が拠点だと言うのは本当か?」
『ああ、南東の山に、その入り口がある』
やけにあっさりと答えたために、嘘を言ったのかとも思ったが、先程の台詞を吐いたすぐ後にそんなことはしないだろうと、セリオスはそれを信じる事にした。
「そうか…ありがとう」

『……不思議なものだな』
「?」
アマルズの言葉に、思わず首を傾げるセリオス。
『…大切な者を護る事など、例えどれほどの想いと力があってもかなわぬと思っていた…。
 だが、お前は護れなかったという悲しみをバネにして、護る力を手に入れたのだな』
「………」
アマルズの言葉に、セリオスはただ沈黙していた。
ソードは、すまないような、悔しいような、複雑な表情でアマルズを見つめていたが、ゆっくりと、口を開いた。
「…昔、一人の男がいた。魔族でありながら人間の娘に恋をした罪深き男が」
ルナとアイセラは、お伽噺に耳を傾けながら、じっとそれを見守る。
セリオスとルシェルはただソードを見つめ、アマルズは目を伏せて俯いていた。
「2人は愛し合い、子を成した。それが俺だ」
『だが、私がレイラを言う少女を葬ったように、私と母親、ソードにも、魔の手が忍び寄った』
「母親は、せめて俺だけは助かるようにと俺の髪の色を銀から黒へと変え、そして、自分の体が耐え切れなくなるほどの魔力を全身全霊で扱い、俺の魔力を封じた」
『母はそれで死に、ソードは魔力を封じたが故危険視されぬようになり、私は命を約束される代わりに、私と同じ立場の者を倒す役割を与えられた』
「そして俺は孤独の身となり、独りで生きた」
皆、一様に押し黙った。
短く語られたそれは、簡単には思い起こせぬほどの悲劇であった。
 レイラと同じ。種族の違う者同士が愛し合っただけで、殺されようとしなければならないなんて。
自分を護るために母親が死んで、父親は、自分の命の為に子供を捨てて。
どれほどの苦しみを味わったのだろう?ルナよりもアイセラよりも、ずっとずっと早く、この青年は悲しみという文字を知って。
『…ソード、私はお前も母親も護る事が出来なかった。
 だから絶望故にこの道を選んだ。それは間違いだったのかもしれないな』
「……だが、今更だ。母はお前が自分達を護れないということを知っていたために禁忌なる封印の術を持ち出した。お前が母よりも自分の事を選ぶと解っていたから!」
剣の柄をきつく握り締める。
それは悔しさと怒りの入り混じる言葉だった。
「どれだけ貴様の顔が血に染まる事を夢見て血塗れになって生きてきたことか!ルナと会うまで、俺は本当に独りだった…」
「ソード…」
ルナの瞳が揺れる。
涙が今にも溢れそうに。
『……私を殺しても、文句は言わない。それだけのことをしたと思っている。
 だが、これだけは信じてくれ。私は…っ』

              ドサッ

   その言葉が終わる前に。
   アマルズの身体は崩れ落ちた。
   身体を、自らの血で染めて。

「「「!?」」」
『全く…これだから裏切り者は困るわ。負けた上に魔界の入り口を教えてしまうなんて…。
 まあ、親子の別れの挨拶も済んだようだし、感謝して欲しいくらいだわ』
アマルズの返り血を浴びた顔で、妖艶に微笑むアリア。
「アリア…一体…何…を……」
半ば放心気味に、やっとそれだけを言ったセリオスに向かって、くすりと笑んだ。
『邪魔者の始末よ。この人の命を救うという契約内容は”絶対忠実”であること。それを破ったから、エルア国の後始末は魔物達に任せて、倒しに来たのよ』
くすくすと、まるで悪戯を成功させた少女のような笑みを浮かべているアリア。
『まあ、教えてしまったものはしょうがないわね。
 そろそろ決着をつけましょう?
 魔界まで来て、道を塞ぐ魔物達を倒し、私とお父様の場所まで辿り付き、倒したら…。
 魔族は負けを認めて速やかに撤退するわ。
 …それが出来なかった時は、貴方達の死と、地上の破滅が待っている。
 解っているわよね?』
アリアの言葉に、セリオスは首を振る。
「アリア、僕は、君とは戦いたくないんだ!何故、行わなくてもいい戦いをしなくてはいけない?」
『何を言うの?私達と勇者は争いあうべき者。戦いなくして真の勝利などありえないわ!』
「そんなことない!!」
セリオスの怒声に、アリアの体がびくりと竦みあがった。
「どうして…どうして僕に君を倒せるというんだ!?君のことが好きなのに…どうして戦えというんだ!?」
『何を…』
「アリア!戻ってきてくれ!」

     アリアの瞳が大きく揺らいだ。
     唇が乾いて何かを求める。
     手が震える。何かを求めて。目の前の彼の人を求めて…。

『…違う!私は魔界の王女!勇者を倒すことが私の望み…』
そうして一呼吸置くと、落ち着いた瞳と声で、セリオスに語りかけた。
『魔界で待っているわ。勇者よ…』
そうしてアリアの姿は、闇に溶けていった。
セリオスががくりと膝をついた。

 彼女をこの手に抱く事が出来なかった。戦いの運命はまだ紡がれていく…。

 そんなセリオスのそばで、ソードが、アマルズに視線を注いでいた。
「…アマルズ」
『……なんとか生きているようだな…だが…時間の問題のようだ』
アイセラが思わず駆け寄り、回復呪文を唱えようと目を閉じるが…。
『…いい。私は、死ぬ運命にある…生は苦しみを引き伸ばすだけだ…』
そう言われたら、回復するわけにもいかない。アイセラは手を胸のところで握り締めると、悔しそうな顔をした。
アマルズはそれを見てふっと微笑むと、ソードに視線を流した。
『ソード、近くに、来てくれないか』
「……」
ソードが無言でアマルズに歩み寄り、傍らに座ると、アマルズはすっと目を閉じた。
『こうしていると、あの日が蘇るようだな…。
 あの日…どうあがいても迫り来る追っ手によって殺されると確信した私とお前の母親は、お前だけでも生き延びて欲しいと思い、私が母親の村から盗んできた封印の魔法で、母親が命をかけてお前の魔力を封じた。
 私も死ぬつもりだったが、母が死ぬ直前に言われてしまったよ。
 死なないで、と。そして出来れば、ソードに会わずに生きろと。
 きっと、お前が私を憎む事も、私が魔族の言いなりになってしまうことも、知っていたのだろうな…』
「!?」
ソードの顔に、大きな戸惑いの表情が浮かんだ。
ソードの中の真実は、あれでおしまいだったのだ。
アマルズを母と自分を捨てた、決して許せない奴だと思っていたのに、その母の願いによって、苦しみでしかない生に縛られ、魔族の言うままに生きてきただなんて。
「何故…今更…っ!」
『…本当に、今更だな。すまない…』
ソードの瞳に、涙が溢れていた。
ルナさえも見たこと無い、彼の、涙が。
『私は極悪非道の大悪人だ。自分の妻も子供も捨てた。
 …だが、これだけは聞いてくれ…。
 我が妻ルナと、息子のソード…この命より、大切にし、また、愛していた…』
ルナ、という名前にルナがぴくりと反応した。
ソードは涙を抑えきれずに、アマルズの服を濡らしていく。
 アマルズはその涙を拭ってやると、ふっと微笑んだ。
『…本当に、私は極悪人だな…死ぬ間際に調子のいいことを言って息子を泣かせるとは…』
ソードの涙を拭っていた手が、ゆっくりと落ちていった。

『勇者達よ、ソードを、頼む…』

「!?」
首ががくりと落ちた。
 飽きるほど見た”人の死”が、まるで初めてみた”死”だとでも言うかのように鮮明に瞳に映る。
手がカタカタと震える。呼吸が苦しい。
「ソード…大丈夫だよ…大丈夫……」
ルナがそっと後ろから、ソードを抱き締めた。
「…ルナすまない」
「何が?」
しらばっくれると、ソードが苦々しく苦笑した。
「……母の名前を付けたりして」
「…どうして、お母さんの名前を私にくれたの?」
「……母は聡明で強い人だった。俺が母と一緒にいられたのはやっと6つになる頃までだったが、月のように淡い優しさを持っていた。ルナと出会った時、それと同じものを感じたんだ」
ルナは押し黙った。
 互いの顔は見えないが、どんな表情をしているかくらいすぐに読み取れる。
だからルナは、本音を言った。
「…今度から隠し事はなしね。今度同じことをしたら殴るわよ」
「……ルナに殴られたら死にかけるんだが…」
ソードの言葉に、ルナがくすくすと笑った。
「何故、許してくれた?」
「…今更よ。この名前は貴方がくれた名前。それだけで充分だわ」
ルナの顔がふっと大人びる。
ソードは自分を抱き締めているルナの手をそっと抱き締め返すと、その手を振りほどいてすっと立ち上がった。
「…お話は終わりましたか?」
アイセラが話し掛けてくる。どうやら、気をつかって話が聞こえないように遠くにいっていたらしい。
ルナはこくりと頷くと、微かではあるが微笑んだ。
「…セリオスは?」
「あちらに…」
アイセラの指差す場所に、ただ呆然と立ちすくむセリオスの姿があった。
その瞳は意志を保っているとはいえ、どこか遠くを見つめている気がした。
「…セリオス」
「……慰めたのだけど、ダメだったわ。アリアと戦う運命が、曲げられなかったんだもの。
 少しだけ、時間がいるわね…」
ルシェルが独り言のような言葉をルナ達に向けた。
「「「………」」」
皆が言う言葉もなく沈黙したその時。

      ドドドドド…

「な、何!?」
砂埃をあげて近づいてくる何かに、ルナが脅えの表情を見せた。
「また敵かしら?」
「…こちらの都合などお構いなしと言ったところか・・・」
「皆さん、気をつけてください」
だが、臨戦態勢を取ったのも束の間。
『おーい!!』
聞きなれた声。
「この声は…確か……」
ルナが首を傾げる。
だがセリオスにははっきり解ったようで、放心状態から回復してルナ達のところまで駆けてくる。
「この声は…っ!」
砂埃が晴れ、地響きが止まった。
月明かりが、照らしているそこには…
何千とも思われる騎士と、それを乗せている馬。
そして…。
「よお」
「セリオス、無事みたいね」
「クロス、サラ!!」
懐かしい笑顔が、そこにあった。

 後書
 *セ=セリオス。ル=ルナ。ソ=ソード。ア=アイセラ
ソ「…なんだか今回はキャラが変わっていなかったか?」
*「だって、小さい頃からひねくれてた奴がいきなり親子愛に目覚めたんだよ?涙くらい流すって」
ソ「目覚めてない!」
ル「…っていうかソード。マザコン?」
ソ「ぐさっ」
ア「ルナさん、そんな本当のことを言っちゃいけませんよ」
ソ「ぐささっ!」
セ「そ、それより、今回はクロスとサラが登場したね?」
ア「どなたですか?」
ル「セリオスの友達よ。幼馴染なんだって」
*「いやあ、クロスとサリラを好きだと言って下さる方がいたので、再登場させてみました」
セ「だけど、再登場で人気が下がる場合もあると思うけど…」
*「ぐさあ!」

トップに戻る
15487金と銀の女神28神無月遊芽 E-mail URL5/19-18:52
記事番号15378へのコメント

 神無月です。
 激疲れ中…私はヴァンパイア族なので(!?)太陽の光にあたると溶けてしまうのです(本当)
 ほら、このへんとけてるー(笑)おていれしなきゃー(爆)

 …すいません。とけてるのは私の頭ですね(苦笑)
 でも明日運動会なんですよねー。灰になってしまいそう。
 あ、こんな今にも沈みそうなツリーで長話するなと思っておられますね?
 大丈夫です。どうせ私の小説なんかにコメントをくださる方なんておられませんわ☆
 というわけで(どんなわけだ?)どうぞ☆

****************************************

                      金と銀の女神
                    〜世界が始まるとき〜


   28章 再会は一時の安らぎをもたらして

 silver 圧倒的な力に何故そこまでして抗うのか
    私は知らない だって それはあまりに遠い答え


 クロスとサリラはさっと馬から降りて地を踏んだ。
「お久しぶり、しばらく見ない間に随分たくましくなったわね…とその前に」
サリラは一瞬目を瞑り、手を上へかかげた。
「ウィル・オ・ウィスプ!」
するとサリラの手から幾重もの光の層が出来て、そのまま空へ伸びていった。
そして雲にぶつかるのではと思うほどに伸びた時にばっと弾けて、夜の闇が拡散される。
「これでよしっと…やっぱり暗いと話しにくいものね」
サリラの微笑みに、セリオスが戸惑う様子を見せる。
「クロス、サラ、なんでここに?」
「何言ってんだよ、そんなの魔物退治に決まってるじゃねえか」
クロスが拳をぐっと握り締めながら答えた。
 よく見るとクロスが着ているのは鎧だった。
白を基調とした部分鎧―パーツパーツに分かれている鎧。全身鎧(身体全体を覆う鎧)よりも軽いのでよく使われているが、部分ごとに別々に買わなくてはいけないので少々面倒―で、その左胸には騎士の証である紋章が刻まれていた。腰に携えた剣も、相当立派なものである。
 サリラはというと、いつもの軽装ではなくて地面にまで届く長いローブを着ていた。
手には、先端に宝石のついた杖を持っており、以前よりも魔法使い―精霊使いもこれに含まれるため―らしくなったようだ。
「ナーサ国の王に頼まれたのよ。セリオスの魔物退治を手伝ってやってくれって。
 だから騎士隊を2、3借りて追ってきたわけ。
 私は…そのことがクレスト王にも伝わってたみたいで、セリオスの以前の仲間ってことで呼ばれてきたの。クロスが騎士になったって聞いたときは、さすがに驚いたけど…」
「おいサラ、騎士隊のうち一つは俺のだってことを言い忘れるなよな!」
「ええ!?クロスってもう隊長になっちゃったの!?」
ルナが多少大げさに驚いた。
 セリオスも同じ心境だったが…
「何言ってるのよ、クロスは”副”隊長で、しかも”見習”でしょ」
サリラの言葉でがくりと肩を落とす。
「う、うるせえっ!すぐ隊長になってやらあ!!」
『元気のいい事だな、クロス』

クロスの後ろから、馬に乗った男性が近づいてきた。
年齢は30過ぎ…といったところだろうか。クロスよりもっと立派な鎧を着て、そして落ち着いた風格のある男性だった。
「おわっ!隊長っ!」
『私がいる以上、貴様は当分副隊長だからな』
「とほほ〜…」
クロス言うところの隊長という人は、クッと笑った後に、馬から降りてセリオスに一礼した。
『初めまして。今回の討伐隊の総指揮官をしております、ディルトと申します』
「初めまして…」
セリオスが緊張気味に挨拶すると、ディルトはまたクッと笑った。
『そのように緊張なさらなくても結構ですよ。私どもは貴方方の手足。お好きなようにお使いください』
ディルトに、ルシェルは少しだけ脅えたような表情を見せたが、クロスの「事情は説明してあるから安心しろ」という言葉で、なんとか安堵したようだった。
 そして、今まで静かに傍観していたソードが、ふと笑った。
「……なるほど。セリオス、魔界に行けるかもしれんぞ」
「え?」
ソードの言葉に、セリオスが驚いたような声をあげた。
ソードがにやりと笑う。
「アリアが言っていただろう。『魔界に来て、道を塞ぐ魔物達を倒したら―』と。
 つまり…」
「雑魚はクロスとディルトさん達が倒して、その隙に一気にボスのところまで行っちゃう…てわけね」
「確かに、それならこちらの体力の消費を抑えて、魔界王と対峙することが出来ますね」
ソードの案に、ルナとアイセラが頷いた。
だが、その会話に驚いたのが1人2人大勢…。
「お、おいセリオス、魔界ってなんだよ!?」
『さすがセリオスさんですね、既に魔界への入り口の場所を見つけてらっしゃったとは』
驚くクロス、感激の声をあげるディルト、ざわめく兵士達。
ただ一人サリラだけはそのような反応はせず、微笑んでいた。
「それなら任せておいて。私達が命にかけてもセリオスを…あなた達を護ってあげる」
「ああ、俺達が魔物を足止めしてやるから、その間にしっかり黒幕を倒してくれよ!」
力強いその言葉に、セリオスはゆっくりと頷いた。
『ではセリオス様、作戦をおたてください。我々はそのように動きます。
 地形などを教えていただければ幸いです』
「あ、はい。ええと、魔界の入り口は、南東の山にあるそうです」
セリオスの言葉に、ディルトがすっと目を細めた。
『南東の山…死の山ですね』
「死の…山?」
ディルトの言葉に、ルナがオウム返しに聞く。
『はい。あそこは火山なのですよ。
 一歩踏み入れば、そこは灼熱地獄。
 しかも、内部の構造も複雑で、以前内部を見に行った者達は、命からがらで出てきています。
 岩盤も緩く、天井の岩や土が崩れてくる事も少なくないとか…』
「そ、そんなところに行くのお!?」
「そんな…危険です」
ルナとアイセラが悲鳴をあげた。
だがセリオスは、何も言わずにディルトと向き合う。

「ディルトさん、そこの地形についてどう思われますか?」
『そうですね…死の山までは、他の山にぐるりと囲まれているせいで一本道、敵にはさみうちでもされたらおしまいですね。
 ただ、その一本道の途中で、死の山に直行する抜け道があったはずです』
ディルトの説明を聞いて、セリオスは頷いた。
「解りました。
 とりあえず一塊になってその一本道を進み、僕達は途中で抜け道の方へ行きます。
 一本道の途中のどこかで、きっと敵はやって来るはずです。
 その時は、敵に僕達のことを気付かれないようにしながら戦ってください。
 もし敵の現れた場所が抜け道に近いなら、うまく誘導して抜け道に気付かれないように。
 もちろん、騎士隊の方々が主戦力であるように思わせるため、全力を尽くしてください。
 僕達はその間に死の山へ赴き、魔界へ行きたいと思います」
『かしこまりました』
ディルトが一礼する。
 サリラは、そんなセリオスを見て感動すら覚えていた。
「(昔は頼りないくらいだったのに、今はもうこんなに立派になってしまっている…。
  なんだか、寂しいような、嬉しいような…そんな気持ちだわ…)」

   戦いなんて嫌だけれど、戦わなくて済むならそれを選びたいけれど。
   彼のためなら…それすらも厭わない!

「とりあえず今日はもう寝よう。日の出と共に、死の山へ向かいます」
『かしこまりました』
セリオスの言葉に、騎士達は軽く敬礼をした。




 炎が闇の中で揺れる。
サリラは毛布に包まりながら、目の前の焚き火を、そして、横目で、隣りで眠っているセリオスを、じっと見つめていた。
「…アリアのこと、聞かないのか?」
横になったままのセリオスの口から、突然に言葉が漏れた。
起きている事は解っていたので、驚く事もなく答えを返す。
「ターツの村の壊れた神殿がやっと直った…ううん…新しく建ったの。
 神殿は聖なる場所でしょ?指輪はもう無かったけれど、ルシェルに呼びかけてみたの。
 そうしたら…本当に現れてくれて……。
 アリアのことは、その時に聞いたの…」
「…クロスは?」
「……知らないと思うわ。でも、口にしないと言う事は薄々気付いてるのかもしれないわね。あのバカ、頭使わない分、勘はいいから…」
その言葉に、セリオスははあと溜息を吐いた。
 セリオスの隣りで、ルシェルがすやすやと眠っている。
「…セリオス。私、言う言葉が見つからないけれど、アリアと貴方は想いは通じ合ってると思うの。ただ、それが宿命の道によって邪魔されているだけ。だけど…だから…」
「……」
セリオスは何も言わない。
サリラは炎を、セリオスは横を向いているせいで顔も見えない。
 だから、彼がどんな表情をしているのか、解らないけれど―。
「……やめたわ。こんな言葉今更だもの。もう寝ましょ」
サリラも毛布をかぶりなおしながら横になった。
そして、心の中だけで言葉を放つ。
『幸せになれる道を、探してね―』
それは、まるでこれからおこる戦いを予想しているかのような、そんな響きのある言葉だった。

 後書
 *セ=セリオス。ル=ルナ。ソ=ソード。ア=アイセラ。サ=サリラ。ク=クロス。
サ・ク「後書にふっか〜つ!!」
セ「ををう!?何故!?」
サ「恋する乙女をなめないでね☆」
ク「(ぼそっ)恋する乙女っていうより、失恋の…」
サ「キィィィック!!」
ク「はううっ!」
ル「な、なんだかテンションが違う…(汗)」
ア「ま、まあ賑やかでいいですよね」
ソ「…そうか?」
*「大丈夫、サリラもクロスもすぐにいなくなるから☆」
サ・ク「えええ!?」

トップに戻る
15495間に合うかなみてい 5/19-22:17
記事番号15487へのコメント

> 神無月です。
みていです。この後新規ツリーを作る予定なので己でこのツリーを叩き落してしまったりして…。
> 激疲れ中…私はヴァンパイア族なので(!?)太陽の光にあたると溶けてしまうのです(本当)
> ほら、このへんとけてるー(笑)おていれしなきゃー(爆)
どんなお手入れを…。肌○かなぁ…。
> …すいません。とけてるのは私の頭ですね(苦笑)
> でも明日運動会なんですよねー。灰になってしまいそう。
なつかし〜い。運動家って響きが。冷凍みかん〜v
> あ、こんな今にも沈みそうなツリーで長話するなと思っておられますね?
> 大丈夫です。どうせ私の小説なんかにコメントをくださる方なんておられませんわ☆
ここにいまぁす。

…といいますかどういいますか、今、4つまとめて読んだのですが。
急転直下の展開…。みていの頭がヒートしそうです。
どうなるのやらまったく先が見当つきませんっ。
>*「大丈夫、サリラもクロスもすぐにいなくなるから☆」
>サ・ク「えええ!?」
えええっ!?
…書き殴り大事典見て予想してみよ…。

ではでは、運動会で灰になってしまわれないことを祈りつつ。
そしてみていが本当にツリー落としてしまわないよう祈りつつ(余計)
失礼しました。
今度はもちょっとマシなレスつけられるようにします…。

inserted by FC2 system