◆−金と銀の女神21−神無月遊芽(3/30-10:36)No.14728


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14728金と銀の女神21神無月遊芽 E-mail URL3/30-10:36


 こんにちは、神無月です。
 明日はサルティンバンコに行きます。今週は忙しい…。旅行にも行ってきたし。
 まあとりあえずどうぞ。

 ところで…過去の記事を読みにいこうとしてスクロールバーを下に下げる私はバカでしょうかね?(笑)癖が…。

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                       金と銀の女神
                     〜世界が始まるとき〜


   21章 愚かな人々

 gold 真実を話す時が来てしまった
   貴方は全てを受け止める 人が故に

    勇者。
    憧れてた。
    たくさんの力を持って。
    誰かを護れて。
    僕は、誰だか解らなかったから。
    不安なエネルギーを抱えていたから。
    だから憧れていたのに。
    僕自身が勇者の血を引いていただなんて。

『我が祖先は、天使達の目をかいくぐり生きてきた。
 だが、天使たちは必死に我々を探していたのだ。不安要素を潰すために』
自分達の行動を制御する勇者。確かに邪魔者以外の何者でもないだろう。
だが、神に仕える者が、そんなことをしていいのか?
それじゃ、魔族と同じじゃないか…。
『そして、この話を我が子にすることが、私達の使命。
 もう、お別れね……』
リリスがそう言うと同時に、2人の身体が薄れ始めた。
一度は鮮やかに色を持っていた体が、髪が、瞳が、どんどん空気に溶けていく。
「そ、そんな…せっかく、せっかく…」
会えたのに。父と呼べる人に。母と呼べる人に。
義父よりも厳しく、義母よりも優しい人に。
『…最後に、これを受け取ってくれ…』
薄れ行くアデクの手の中に、一振りの剣が現れた。
それは眩く光り輝いたかと思うと、いつのまにかセリオスの手中にあった。
「これは…?」
『”愚者の剣”。吟遊詩人は光の剣と唄っていたが、勇者には相応しくない名前だ。
 愚者の剣は、お前の血と心を選ぶ。
 大切にするがいい…』
セリオスがぎゅっと剣を握り締めた。
 温かい。まるで、お父さんの温もりが伝わってくるかのようだ。
”愚者の剣”だなんて、それこそ勇者には相応しくないのではないかと思ったが、手にして始めて解る。
 光も、闇も、金も、銀も。そして人も。
全てを切り裂き、全てを護るための剣。
『アレス…いや、セリオスよ。人は、皆愚かなものだ。
 罪を繰り返し、後悔をし、次の瞬間には笑っている』
人はそれの繰り返し。
愚か過ぎて、笑えてくるくらいに馬鹿な生命体。
だけど。
『それでもいいじゃない…。神でさえ完璧ではないのだから、人が愚かで当たり前なのよ。
 醜いくらいに生き抜いて、そして輝いて見せましょう?』
信念は愚かなのか。愚かと思うことこそ愚かなのか。
それとも全てのものが愚かなのか?
だけど。
『行け。迷う事など無い。己の心に従うのだ』
何も出来ない自分だけど。
誰かを護る事ができるなら。
護ることができるのなら。
「行って来ます」
悲しくもないのに、泣きたい。
でも、涙が出ないことが、悔しい。
「私も、後悔したくないから頑張ります。
 …ううん。後悔しても、次はもっといい結果になれるように!」
「生きる権利を与えられた以上は、何があっても生きてみせる」
ルナとソードが、セリオスを励ますかのように笑った。
ルシェルも、ふわりと微笑んでセリオスの肩を抱く。
 アデクとリリスは、満足そうだった。
『世界を、救ってね……。私の可愛い子よ…』
『勇者に、幸あれ…』


「セリオス、あんな形だったけど、ご両親に会えてよかったね」
「うん、そうだね」
ルナの言葉に、セリオスが微笑んだ。
まだ心の奥は霞がかっているけれど、少しだけ、元気になれた気がする。
「アデク様とリリス様はお優しい方だったわ。
 人間と天使という枠を越えて私に接してくれた。
 だから、心をもつことが出来た…。
 本当に…天使に心を与える事が出来るなんて…。
 誰よりも愚かで、誰よりも素晴らしい人だった…」
瞳を閉じて、胸に手をあててそう言うルシェルは、どこか誇らしそうだった。
いつか感じた冷たい感じも、今は全然感じない。
皆、成長してるんだ。傷も乗り越えて、強くなれたんだ。
僕は、まだ強くなれないけど…。
「…そういえばルシェル。神の真意って…?」
墓に壊れた十字架を立て直しながら、ルシェルにそう質問する。
お父さんが途中で言ってたことを、忘れていなかったのだ。
ルシェルはその綺麗な顔から感情というものを消し去ると、静かに口を開いた。
「金の神は、自らの秩序を護らせるために天使を産んだの。これは知ってるわね?」
「ああ。伝承で唄われていた。だが、魔族を産みだした理由は無かったな…」
ソードの言葉に、首を振るルシェル。
「無かったんじゃないの。知らなかったのよ。人間達では、魔族に対する先入観のせいで神の真意を測りかねたの」
「それで、どうしてなの?」
ルナがせかすように口を尖らす。
「魔族は混沌と自由を司る者。銀の神は金の神が秩序を生み出したと同時に、それだけではいけないことに気付き、世界を束縛から護るために魔族を遣わしたの」
もう、驚かない。
旅を始めたばかりの頃なら信じられずに笑い飛ばしてただろうけど、今なら解る。
 いい意味ばかり捉えられてきて、束縛の部分を見せなかった金。
 悪い方にばかり考えられて、心を大切にしているだけなことに気付かない銀。
 それは本当に表と裏。
 でも、単独では決して在りえなくて。
 司る力も、捉えかたも、まるで正反対[コイン]のよう。
「でも、天使と魔族じゃ正反対過ぎて、アンバランスだったの。
 だから、その中間に位置する存在、すなわち人を産みだした」
世界を、バランスよく存在させるために。
 でも。
「何故神は、その後消えてしまったんだ?」
ルシェルがぐっと声を飲み込んだ。
目を伏せ、でも強い意志を秘めた瞳をする。
「それは、セリオスに見つけて欲しいの」
一瞬頭が”?”で一杯になるが、少し考えて頷く。
「…解った。何の意味があるかはまだ解らないけど、僕の答えを見つけるよ」

   何故、そんなに真っ直ぐに受け止められるの?
   今まで、辛い事ばかりだったのに。
   受け止めたら、辛いと解っているのに。
   愚かに、純粋な…。

「…本当に、愚かね。貴方も私も」
苦笑いを浮かべながらそういう堕天使に、勇者は微笑んだ。
「皆、そうだよ」
愚かであるが故に人。人であるが故に愚か。
でも、それでもいいんじゃないかと思う。
ルナのように、全部抱き締められたなら。
ソードのように傷を冷静に見つめて。
ルシェルのように、乗り越えられたなら。
きっと、幸せも、そんなところに産まれるんだと思う。
「……さあ、城に戻ろうか」
セリオスの言葉に、皆が頷いた。
「行ってらっしゃい。私はついていけないけれど、いつでも呼んでね」
「ああ」
ルシェルはすぐに消え去ったが、精霊界へ帰ったのだと解るし、慣れてしまったから気にしない。
それに、指輪を持っているから、いつでもとはいかないが会えるのだから。
「次はいよいよ、船に乗ってエルア大陸に突入ね!」
「ふ…最後までついていってやるから安心しろ」
思わず笑みが浮かぶ。
 きっとクロスがいたら「バカばっかり」とでも言うだろう。
そう言う自分も、バカの一人のくせに。

 僕は何も言わず歩き出した。
後ろから、ルナとソードがついてくる。
たった少し前まで、この2人すら信じられないような心境だったのに。
何故か、2人が仲間である事を実感してる。
 僕も、愚かな人間だからかな。

 後書
 *セ=セリオス。ル=ルナ。ソ=ソード
セ「…作者、どうしたの?」
ル「この小説が…最後でもないのにこんなに明るいなんて…」
*「ん。良くわかんないけどいつのまにかこうなった(^^;)」
ソ「幸せ一杯な雰囲気だな…。珍しい…」
*「いいじゃない!単に機嫌が良かったんだと解釈して!」
セ「…そういえば葵楓 扇さんの小説(過去記事)を読みながら甘いものを食べながら書いてたからね…」
ル「……それじゃ幸せにもなるわね…。っていうか幸せそのものじゃない」
ソ「…それで、次回の話はどうするか決めてるのか?」
*「てへっ♪決めてない☆」
セ・ル・ソ「………」

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