◆−天空歌集 13−ゆえ(11/23-03:23)No.12441
 ┣うわーん素敵すぎます!−桐生あきや(11/23-05:19)No.12442
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12441天空歌集 13ゆえ 11/23-03:23


おおっ落ちてる(笑)
今回は12から続いてる話ですので、よかったらそちらもご覧下さいませ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

天空歌集  13


       懐かしいものに 出会うその度に 涙あふれだすのは 
       胸の奥深く 閉じこめた記憶 よみがえる痛みから  






「・・・・・・・お前は・・・・・・・・・・・・・・・あの時のハーフエルフの娘!!!」

その男は確かにセフィルを指さしてそう叫んだ。
降り始めた雨の中で彼女の瞳が鈍い光を放つ。

―――― コノオトコダ コノオトコダ 
「あああ、あの時は仕方がなかったんだぁっ!!」
狂った様に叫ぶ男にゆっくりと呪文を唱え手をかざす。
――― ナニヲ イマサラ
「すまん!許してくれっっ!」
―――― ダメ
黒い蟠りの力が呪文と共に両手に凝縮していく。

「「セフィル!!」」
「おとうさんっっ!!」

重なった声が叫ぶと同時にセフィルは両手の魔力を解き放った。

「ブラスト・アッシュ!!」

ばしゅっ!

彼女が初めて完成させた黒魔術の力は、後方から現れていた最後のレッサーデーモンを消滅させた。



だんだんと強くなる雨の中、セフィルはその場に立ちつくしていた。
・・・・・あの男は硬直したまま地面にへたり込み、その側には私ぐらいの男の子が必死にしがみついている。
「セフィル・・・・・お前・・・・・」
ガウリイが後ろからゆっくりと肩に触れようとした瞬間、セフィルは弾かれるようにその場から走り出した。振り返りもせずに。
「ガウリイ!セフィルを追いかけて!!・・・・・・あの子をひとりにしたらダメっ!」
とっさにあたしはそう叫んだ。
「わかってる。」
ガウリイは降りしきる雨の中、彼女が消えた方へと駆け出した。
おそらく『呪歌』の力であろうこの雨は乾いた大地を潤し街の火の手を消し去っていく。
「・・・・・・・リナさん、こっちはあらかた終わりました・・・・・」
アメリアが歩み寄りながら静かに話す。
その横にはゼルもいる。街にはもうレッサーデーモンは残ってはいない。
あたしは足下に転がるようにしている、その男を見下ろしながら、
「あんたに聞きたいことがある。」
そう告げ、近くの民家に子供と一緒に連れていった。


*************************************************************


ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・


降り注ぐ雨はフラッシュバックの様にあの日あの時あの場所をわたしに見せつける。
逃げ出した所で行く宛などある訳なくて、最初いた噴水の前で膝を抱えて俯いていた。
わたしにあんな感情があったなんて・・・・・・闇が迫って抑えきれないことが。
呼んだ雨は激しさを増し、どうせならこのまま全てを洗い流して欲しいと思った。

「帰ろう。」

いつの間にか目の前にはガウリイが立っていた。

「・・・・・・・・・どこに・・・・・?」

顔を上げ見上げたわたしを見たガウリイは差し出した手をぴくりっと一瞬止め、切なげな顔をしてわたしを抱き上げた。
どうしてあの時一瞬差し延べた手を止めたのか。
それは、その時のわたしの瞳の色が辛かったからと後から教えてくれた。




ごしごしごし。
連れられて来た宿代わりにあてがわれた家で濡れた髪をガウリイは黙って拭いてくれていた。
ごしごしごし。
わたしも黙ったまま拭いてもらっていた。
ごしごしごし。
・・・・・・・・・・・・・
ごしごしごし。
・・・・・・・ぽつ、ぽつ、ぽつ
膝の上に雫がこぼれ落ちる。


「・・・・・・・・殺そうと思った・・・・本気で・・・・・・」
「でもやってない。」
「・・・・・・・けどっ・・・あの時声がしなかったら、わたしは本当に殺していたのよ!!」
どうしようもない叫び――――ココロが悲鳴をあげる。

「あの時もそうっ!怒りに任せて『封呪』の唄を紡いだから・・・・だから・・・・・母さんを巻き込んで死なせたのよっ!!
自分のコトばっかりで肝心なことから逃げて!それでも母さんは何も言わなくて!・・・・・ダメだって言われたのに宝珠持ち出して・・・・・・・・唄って・・・・・ただ外のコトが知りたいだけで・・・・・・あいつらがやって来て・・・・雪が降っていて・・・・・・動けなくて・・・・・・・母さんが倒れて・・・・・・・体から白い光が昇っていくのをただ眺めているだけで・・・・・・何にも言えなくて・・・・・・・何も教えてくれないままで・・・・雪は降りてくるのにその光だけは天を目指した・・・・・・・だから・・・・・・・・わたしはやっぱり『忌み子』なのよっっ!!」

吐くように言ったわたしをガウリイはぎゅうっと抱きしめた。

「違う!!違う・・・・・・・もういいんだ・・・・もう。」
「・・・・・・けどっ・・・・・・」
「みんな何かしらの罪を背負ってそれでも生きて行くんだ。それは俺やリナも同じだし・・・・・セフィルもだ。
 けどその罪から逃げなかったからお前さんはここにいるんだろう?それにお前さんの唄のおかげでこの街は助かったんだぞ。
 殺そうとさえ思った親子もちゃんと助けたじゃないか。・・・・・だから、もういいんだ。」


         自由がまだつかめない 夢と罪を抱いて
         They call the star of the dream shining somewhere in the space 
          闇に輝くもの


「・・・・・・・・・・・う・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!・・・・・・」
溢れてくる涙が止まらなかった。
あの時に止まったままの時間が動き出す―――― 一粒の涙も流せなかったあの時から。
ガウリイの暖かい胸の中でわたしはひたすら泣き続けた。





ぱたんっとドアが開いて閉じた。
暗い部屋にはあたしとゼル、そしてあの男がいる。
「アメリアは?」
「向こうでけが人の面倒を見てるわ・・・・・・あの子もね。」
入ってきたガウリイはそれだけ聞くと、黙って近くの椅子に座った。
「それで、あんた達は金をもらって、その家を襲ったのね。」
後悔と自責の念で男の表情はこわばっていた。
「襲った理由は?」
無表情のままゼルが低い声で問う
「詳しくは知らんが・・・・・ただ言われたのは、エルフの女を殺すのとそれらしき物を片っ端から持ち帰ることだけだ。」
「それらしいって『鍵』のこと?」
「・・・・・・・ああ、あの連中はそんな事言っていたな・・・・『鍵』が見つかれば全てが巧くいくとかなんとか・・・・・・」
小さい声だが、こちらの質問に対してはしっかりと答えてくる。
あれだけの事があったのに彼女の取った行動がよほどこたえたらしいと見える。
まあ・・・・・そうじゃなかったらこんな甘い尋問などはしないが。
「お前らを雇った奴らは誰なんだ?」
ゼルの質問にこれは首を横に降りながら、
「それはわからん・・・・・・えらく気前はよかったがな。役人風の男と気色悪い剣士風の奴がいたな。・・・・そーいや役人風の男の服に塔と紐みたいな縫い取りがしてあったなぁ・・・・・俺が知っているのはこれぐらいだ。」
一頃話し終えると男は大きくため息を吐いた。
「こんな所であの嬢ちゃんと出会うとはな・・・今更だが申し訳無いことをしたと思うよ・・・いくらてめえの子供の為だとよ。」
どうやらこの男、子供の病気を直すために金が必要となり傭兵になったとか。
「・・・あのエルフの嬢ちゃんはどうしたい。」
「今は眠っている。」
男の問いにガウリイが静かな口調で答えた。
「・・・・そうかい・・・・・あのこにはすまねぇと・・・・・いえた義理じゃないな。」
がりっと頭をかく。
「そう思うのなら彼女の前には顔ださないで。あんたがやったことに対してはもうどうこう言う気もする気もない。とっとと消えて。」
あたしに言い捨てられ、男は頭を下げると子供共々、雨の街に消えていった。


「やれやれっと・・・・・・・・」
あたしはマントをはずし、真ん中のテーブルにある椅子に腰掛ける。
ゼルと治療を終えて戻ってきたアメリア、ガウリイも席につく。
「セフィルの様子はどう?」
となりのガウリイに尋ねた。
「暫くは興奮して泣いたりしていたが、今は落ち着いて向こうの部屋で眠っている。」
「・・・・・・そっか。あの子何か言ってた?」
「母親が死んだのは自分のせいだと言っていた。あと『封呪の唄』がどーのこーのとか・・・・『忌み子』なんても言ったな。」
「そんな『忌み子』なんて嫌な言葉・・・・・・」
アメリアが眉をひそめて苦々しい口調で言う。
「以前はハーフエルフに対してよく言われていたらしいな。しかし、それは今回の件とは関係無いだろう。」
ゼルの言葉にあたしは頷く。
「話を整理すると、セフィルの済んでいた所にあの連中が『鍵』を探して現れて、母親を殺害した。セフィルはたまたまあの『ルーンオーブ』を持ち出していて事なきを得た。しかし、戻ってくれば母親は既に息絶えていたと。その後彼女は旅に出て偶然あたし達と出会った。」
「そしてリナ達はその連中の一人とおぼしき奴に襲撃されたんだろう。」
「そう、あいつらの目的は間違いなくセフィルのもつ『ルーンオーブ』。それが連中の言う『鍵』だと思うわ。そうまで欲しがる理由が今ひとつわからないけど。」
「わかりますよ。」
「何で?」
「人を殺めてまで欲する物なんて、いいことに使うはずがありません。」
アメリアがきっぱりと真っ直ぐみて言い切る。
「たしかに。」
くすっと笑うとあたしはひょいっと肩をあげた。


ガウリイはやおら立ち上がるとドアの方へと歩き出した。
「旦那、どこにいくんだ。」
ゼルに呼び止められ振り向き、
「セフィルの側にいてやりたいんだ。」
そう言ってドアを開ける。
「・・・・・・・・・・目、放さないでなるだけ一人にしないで。」
あたしのセリフに背を向けたまま、ひらひらと手を振り出ていった。
「どうしてセフィルさん一人にしちゃいけないんです?」
アメリアも席を立ちながら、思いついたように聞いてくる。
「どうって、ただ漠然とそう思うのよ。・・・・・あの子をほっとくとまずい事になりそうな気がするのよ。」
ふーんと相槌をうつとアメリアは笑って
「そうですね。理由なんていらないですよね。彼女はもう仲間なんだし。」
とんとんと食料を調達に1階へ降りていった。

「で、これからどうするんだ。」
ひとり残ったゼルは腕を組んだまま未だに座っている。
「決まってるじゃない。」
あたしは腰に手をあて、ぴっぴっと指を降ると、すぱーんと椅子の足を払い飛ばした。
「なっ、なにするんだっ!」
「着替えてお風呂に入のよ♪」
あたしのセリフにゼルはあきれ果てたと言った感じで部屋を出ていった。

やっと一人なった部屋であたしは思っていた。
どうするのか、決めるのはセフィル自身だと。


         

           限り無く 出会いと別れ 遙かな空に刻んで・・・・・・

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はあっ、やっと話が本格的に進み出してます。
うーん、やはり今回の話の主役はセフィルになりそうです。最初はリナだったような気が・・・・・・
今回セフィルの過去が出てきましたが、おわかりいただけたでしょうか?
といってもこれはまだ一部。ふふふふ、伏線すきなゆえです。
ガウリイもセフィルといい雰囲気と言いますか保護者になりかけてるっ。これはまずいです。
もうちょっと違う関係に持っていきたいです。
さて、今回の歌詞は某漫画のイメージアルバムで「SERAZUMAWA」と言います。わかる方はわかるかも。
曲と歌詞が一番好きなTM関連のお二人だったので凄い好きな歌です。

すでにもう13・・・明日はどっちだ(笑)





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12442うわーん素敵すぎます!桐生あきや 11/23-05:19
記事番号12441へのコメント


 どうも、桐生です。

>おおっ落ちてる(笑)
>今回は12から続いてる話ですので、よかったらそちらもご覧下さいませ。
 なにも知らずに読んでみたら話がわからなくてびっくり(笑)。
 慌てて12に行きましたとさ(^^;

 12の話になりますが、くううう、ゼルの殺し文句が最高です!
 うわ、顔がにやけて戻らない。 
 と言いいますか、名前が出てきてびっくり(笑)
 実はゼルアメって、いま連載しているヤツでまだ二本目なんですよ。
 一本目は悲恋なので封印してありますが。
 そんな私なんか見習うと道を踏み外しますよ〜!(笑)。
 余談ですが、私の心のなかでのゼルアメの師匠は水晶さなサマです(勝手に決めてゴメンナサイだな)。

 12の呪歌は、一瞬アディエマスを聞き書きしたのかと本気で思いそうになりました(あれに歌詞はないですけどね)。
 日本語訳も良いですね。神秘的で。

>といってもこれはまだ一部。ふふふふ、伏線すきなゆえです。
>ガウリイもセフィルといい雰囲気と言いますか保護者になりかけてるっ。これはまずいです。
>もうちょっと違う関係に持っていきたいです。
 ガウリイとセフィルの関係がかなりイイ感じですね。
 ゆえさんの書くガウリイ好きです。
 さてこれからどうなるんでしょう?
 もし発覚しても、リナって嫉妬の段階を通り越しちゃって落ち着いてそうなんですけど。

>すでにもう13・・・明日はどっちだ(笑)
 ここだけの話、2にアップしているアレ(笑)
 まだ書き終わっていないにもかかわらず、すでに20章を越えてしまいました。
 まずい………。
 一緒に明日を探しましょう!

 それでは。

 桐生あきや 拝。

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12464ごじごじ・・・・ゆえ 11/25-00:24
記事番号12442へのコメント

感想ありがとうございます。
これがあるからやめられないんですよっっ(感涙)

> 12の話になりますが、くううう、ゼルの殺し文句が最高です!
> うわ、顔がにやけて戻らない。 

いやーあきやさんにそう言っていただけてよかったです。
寡黙なゼルにあんな甘甘なセリフが言えるのかどうかかなり疑問でしたが、いわせちゃいました(笑)



> と言いいますか、名前が出てきてびっくり(笑)
> 実はゼルアメって、いま連載しているヤツでまだ二本目なんですよ。

うほ、1本でも2本でも凄いですよ〜。毎回目が離せないです。
私もまだ完成させたのは2本ぐらいで、こんな長編は初めてで。ただまとめられないから無駄に長いだけなんですが(^^;


> 一本目は悲恋なので封印してありますが。

ええっ、私的には読みたいです〜。
というか、ラブラブも好きなのですか、シリアスダーク系とか悲恋物が好きなんですよ・・・・・・
たまにバソの前でぐたぐた泣いて足りします(笑)はたから見たら恐い光景かもしれませんが・・・・
「封印」といちゃいません?



> そんな私なんか見習うと道を踏み外しますよ〜!(笑)。
> 余談ですが、私の心のなかでのゼルアメの師匠は水晶さなサマです(勝手に決めてゴメンナサイだな)。

水晶さなさんの小説も大好きです。
この方の話の展開とかつなぎ方とか、ただただ関心するばかりです。
あきやさんの小説といい、どうやったらあんな風にかけるのかあこがれです。



> 12の呪歌は、一瞬アディエマスを聞き書きしたのかと本気で思いそうになりました(あれに歌詞はないですけどね)。
> 日本語訳も良いですね。神秘的で。


アディエマスの唄は聞いてなんとか文にしてみようかと無謀な挑戦をしましたが、やはり出来ませんでした。あの独特の造語は聞かなきゃだめですね。やっぱり。
12の呪歌はマクロスプラスの曲なんですが、あの訳詞も前から気に入っていたので。原曲も呪文みたいでいいですよ。


> ガウリイとセフィルの関係がかなりイイ感じですね。
> ゆえさんの書くガウリイ好きです。

ありがとうございます。これもガウリイに対する私の愛の深さ故・・・・ってわけではないですが、どうもガウリイをかっこよくしすぎる傾向が。


> さてこれからどうなるんでしょう?
> もし発覚しても、リナって嫉妬の段階を通り越しちゃって落ち着いてそうなんですけど。


最初、考えていた展開からすでに大きく軌道修正してます。
セフィルとリナとガウリイの3角関係になるとは思いますが、セフィルはもうガウリイとリナが付き合ってるの知ってますしねぇ・・・前の設定でよけいに苦しむ結果に。
という前に、全体を煮詰めから書けばいいんですけでもね・・・・


> 一緒に明日を探しましょう!
すでに見失ってます(笑)

ここで訂正なのですが、13に使った曲名、とんでもない嘘のつづりでした。
後から呼んで赤面しました・・・ちゃんと校正してだせよ、私。
正しくは「SELEZNEWA」セレツネワといいます。清水玲子さんの「竜の眠る星」のイメージアルバムの1曲です。

さあ、こんどは14だっっ。

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12467天空歌集 14ゆえ 11/25-02:17
記事番号12441へのコメント

ううっ今回はさらにまとまってないかもです・・・・
どうしよぅ・・・
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天空歌集 14

 Teenage Walk
    ココロしばる 全て消せずにいても
    強く抱きしめたい 自分だけの真実



雨は次の日も降り続けていた。
突然の干ばつに魔族の襲撃、そして雨とめぐるましく状況が展開していった街グリムスラーデ。
そんな街を窓越しに眺めて、あたし達は遅い朝食を取っていた。
ここは街の有力者が宿がわりに使って欲しいと申し出た屋敷。
アメリアの存在もあるだろうが、どうやら街の危機を救った英雄みたいに思ってるらしい。
ぱくぱくと用意されたとりさんを口に運んでいると、ぽつんとひとつだけ開いた空席を見ていたアメリア。
「セフィルさん、起きて来ませんね・・・・・・・」
「色々あったんだし、いいんじゃないの?」
「ですけど・・・・・・・」
さくっと切り分けたとりさんをフォークに刺しながらあたしは、
「本人が動かないとどうしようもないでしょ。周りが勝手に動いてもあの子は喜ばないと思うわよ。」
あたし自身そういう目に何度かあって心底嫌だったし。
どんな理由や結果であれ、自分に関わることなら全てを知りたいし、そこに自分の意志を持っていたい。
そう思うのはあたしだけでは無いはずだ。


      些細なつまずきに いつまで うつむいて
      自分も愛せず 本気で誰かを愛せるの


「その通りだよ。」
食堂のドアが開いた向こうにはいつも被ったいた帽子を手にしたセフィルの姿だった。
「おはよ。」
彼女は小さく笑うと開いていた席に座り、出された食事に手をつけた。
何も言わずぱくぱくと食べているセフィルにゼルとアメリアは以外と言いたげな顔をして、あたしはそんな彼女に少しほっとしていた。
そしてガウリイはふっと笑うとぽんぽんっとセフィルの頭を軽く叩き、自分も残りを平らげていった。

    
       きみに話せば 気持ちは安らぐけど 
       声にならずに 涙が落ちそうで


暫しの沈黙に耐えかねたアメリアが口を開いた。
「セフィルさん、あの・・・・・大丈夫です・・・・・・・?」
「大丈夫じゃないって言ったらどうする?」
くるっとした赤い瞳をアメリアに向ける。
「ええっ?!いえっ、あの、そのっ、そんなつもりじゃなくて・・・・」
「ごめん、ごめん、冗談、冗談。」
にこっといたずらっぽく笑うセフィルのにアメリアはかああっと赤くなって、
「ひっ人が心配してるの茶化さないで下さいっっ!」
「だって自分が死んじゃいそうな顔してるんだもん。・・・・・まあ、正直いって全然って訳にもいかないけど・・・・・・・・・・・うん、大丈夫だよ。・・・・・・・心配してくれて、ありがとうアメリアさん。」
言うセフィルからは悲壮感とか絶望感みたいな、あの時の瞳にあった光は消えていつもの笑顔だった。
「それでこれからどうするんだ。」
コーヒーを片手にゼルが事務的に話す。
全員の視線がセフィルへと注がれる。
「どうするも、こうするも。」
セフィルはかちゃりとナイフとフォークを皿に置き、ナプキンで口を拭きながら、
「まずはこの雨止めないと、今度は地滑りおこすわよ。」
窓の外の降りしきる雨を指さしす。
「なに、この雨勝手に止まないの?!」
おもわずテーブルから乗り出して窓の方を指さすあたし。
「うん。」
「うんって、そんな事も無げに・・・・・」
アメリアが疲れた様にぐったりとテーブルにうっつぶれた。
「どういう意味だ?この雨はお前が呼んだんじゃないのか。」
ゼルが言う。
「ここで唄って気が付いたんだけど、リナさんと前にいた街と同様、どうもこの辺りの精霊のバランスが悪いみたいなの。」
「バランスって、どういうこと?」
あたしが聞く。
「うーん、なんて言えばいいのかな。天候とか自然の力みたいなのは、四大元素の象徴というか司っているそれぞれの精霊の力がバランスよく関わっているの。雨が降るのも大地に守られた水が火の精霊の力で空へと登り風の精霊によって集められて、風が運びまた大地へと帰ってくる。こんな微妙なバランスの輪の繰り返しが雨や雪を降らせてるの。」
さも当たり前のことを話すように語るセフィルだが、こんな話や考え方初めて聞いた。
「それってエルフの中じゃ、常識的な考えかたなわけ?」
「・・・・さあ?他のエルフに聞いたことないから。」
「じゃあその考えはあなた個人のもの?」
「そーゆー訳でもないと思う。・・・・・・・・・・・・現に母さんにこの話したら納得してたし。」
一瞬、瞳が揺らいたみたいだかセフィルは苦笑すると話を続けた。
「それに『呪歌』を紡ぐときにはこのイメージを基本にしてるから、実感としてそう思うよ。これが真実かどうかは別として。」
突拍子もない話だが、セフィルが言うと妙に説得力がある。
「それなら、エルフの人たちはみんな『呪歌』が歌えるんです?」
と、アメリア。
「どうかな・・・・・・・・同じ歌を母さんが唄っても何も起こらなかったし。・・・・・たぶん知ってる限りじゃわたしだけじゃ無いのかな。」
言いながら嫌な事を思い出したのか一瞬表情が曇ったが、すぐにいつもの顔に戻った。
「・・・・・・・・なあ。」
と、話に着いてきているわけないガウリイがのんびりと声をかけてきた。
「話はさっぱり解らんが、ここは変だから雨が降らなかったり、止まなかったりするんだろ。」
「おおっ!ガウリイがもっともな事を言っている!!」
「そう言えばガウリイさんもこの街に来たとき、変だって言ってましたね。」
「そんなこと言ったか?」
「言ったの。はいはい、それでなんなの。」
ぽんっと手を叩くとガウリイは、
「おおっ、そうだった。雨止めなくていいのか?」
「「「「・・・・・・・・・・・・あ゛」」」」
思わぬ人からの、思ってもない痛い指摘に残りの全員はジト汗流すのだった。




「じゃあ唄うから、みんなはそこにいて。」
降りしきる雨の中、濡れるのを気にしないかのように広場の真ん中に立ち、セフィルは『呪歌』を唄う。
「しかし、あいつのあれだけの知識はどこから来て居るんだ。」
ゼルは初めて目の当たりで聞くセフィルの唄に耳を傾けながら呟いた。
「ああ、それあたしも気になってさっき聞いたんだけど、母親から教わったのと、あとはどうやらこの本に書かれていた事らしいわ。」
少し放れた軒下で雨を避けていたあたしはちょいちょいと持っていた本を指さした。
「その本か・・・・・これはカンなんだが、俺はその本は『異界黙示録』の写本じゃ無いかと思ってる。」
ゼルの言葉にあたしとアメリアは目を見開いた。
「「くっクレアバイブルの写本?!」」
アメリアとあたしの言葉にゼルはゆっくりと頷いた。
「・・・・・しゃぼんがどうしたって?」
めぎょ!
とんちんかんな事をいうガウリイをしばき倒して、あたしは改めて手にした本を眺めた。
「でもこの本、盗賊からぶんどって来たのよ?」
「どこかの神殿からの盗品という可能性もあるだろう。大体その本はエルフの古代文字で書かれてるんだ。だとすればエルフが写本を持っていたとしてもおかしい話じゃないだろう。」
「たしかに・・・・・・」
エルフにしか読めない古代エルヴァン文字、そして今までに解読して手に入れた『ルーンリング』の存在と唄。依然出会ったエルフや竜族は『異界黙示録』その物に触れていたのだ。エルフに写本が伝わっていてもおかしくない。
「手掛かりがいきなり出てきたわね。」
あたしの『増幅器』を探すという手掛かりが。
そしてこの本には少なからずもセフィルが関わっているということ。読めるんだから。と、いうことは・・・・・
「あのレッサーデーモンも無関係ってわけじゃなさそうね。」
否応なく魔族が関わっている。
奇しくもあの時のセフィルとの約束が現実の物となるとは・・・・ぎりっとあたしは奥歯をかみしめた。



雨が止み、低く棚引いていた雲の間から太陽の光が漏れてきた。
一日中降り続いた雨はすっかりこの街の井戸や小川を元の姿へ戻していた。
「終わったよー」
びちょんっと濡れた髪の毛を手で絞りながらセフィルがこちらへ戻ってきた。
「ご苦労さん。」
ガウリイは何時の間に用意していたのか、タオルをぽんっとセフィルに投げた。タオルを受け取るとセフィルは頭にかぶり、ガウリイににこっと笑い掛けた。
「ありがとうガウリイ。」
その笑顔はとても穏やかで、すこし大人っぽく見えた。


      子供の頃は 鼻歌まじりの tight rope
      今はかすかな風にも ゆらめくよ
      闇の深さに おびえて 迷う夜は


「私たちは、経緯を説明と後処理に行きます。リナさん達はどうしますか?」
アメリアとゼルはこの街にいる唯一の役人の所に行くという。
「そうね、あたしもいこっかな。」
「リナさん、謝礼は出ませんよ。」
「うっ・・・・・わかってるわよっっ!」
ち、読まれてたか。
「旦那はどうする?」
と、横でタオルを持ったセフィルがガウリイの顔を見上げてじっと見ている。
「俺は宿で待ってる。セフィルがずぶぬれだしな。」
ぽふぽふとセフィルの頭に手をおく。
見つめるセフィルは・・・・・・嬉しそうに微笑んでいる。
何故かちくんっと痛い気がした―――――まさか。
一瞬あたしの頭に浮かんだ考えに自分で笑いが出た。
セフィルがガウリイに恋してるなんて、そんな馬鹿な。
「んじゃ、行ってくるわ。」
でもこの何とも言えない不安感は一体なんなんだろう・・・・・・・・・?



「わたし一人でもよかったのに。」
セフィルがくすくすと笑ってぴょんっと水たまりを飛び越す。
昨日の様子とは一転して、明るい笑顔。
やっぱり女の子は泣いてるより笑っている方がいい。
「俺がいっても役にはたたんさ。それよりお前さんの方が気になるからな。」
不意に自分がいった言葉に疑問を持った。
何故、こんなにも彼女が気になるんだ?小さいからとか女の子だからとか・・・そんな保護者的な感覚じゃない。これは・・・・リナに対して思う感覚に近いんじゃないのか?
守りたい―――ただ漠然とした感情に突き動かされるように。
何か・・・・・・ずいぶんと昔から彼女を知っているような妙な感覚もするし・・・・
「ガウリイ。」
――――呼ぶ声がする。
最近妙な夢をよく見る。覚えているのは、呼ぶ声と琥珀色の瞳と赤い瞳、そして巨木。
「ガウリイ。」
――――呼ぶ声がする。遙か彼方から呼ぶ声がする。
「ガウリイ!?」
ばっと目の前に現れたのは、真紅の瞳を真っ直ぐに向けるセフィルの顔。
「どうしたの?ぼーっと考えこんで?」
気が付けば屋敷は目の前だった。何時の間についたんだか。
しかしあれは一体・・・・・・・?・・・・・・・・・いや、俺が考えたところで答えがでるはずもないか。
いいじゃないか、このリナによく似たハーフエルフの娘を守りたいと思っても。何も悩んだり、悔やんだりすることじゃない・・・って悔やむ?


      きみがいるから 歩いてゆけるのさ


「変なガウリイ。まあいつもの事なんだろうけどね。」
くすくすと笑う。
「いつもの事はないだろう。」
苦笑しながらドアをあけ部屋へとはいる。
セフィルは自分の荷物から着替えを取り出し、となりの部屋で着替えにいった。
その途中、ぽんっといつも被っている帽子をテーブルの上に置く。
歩く後ろ姿から長い金色の髪が揺れ、その間からちょこんととがった耳がみえた。彼女がハーフエルフである証明であり、証拠だ。

――――ふわり

白銀の輝く髪が風と踊るよう舞う。

―――え?なんだ今は?・・・・・・・・気のせいか?首を降って浮かんだ光景ごとかき消す。

「セフィル、これからどうするんだ?」
それ以上深く考えたく無い一心でセフィルに声をかける。

 
粗雑に生きてたら 出会いも気づかない
        誰かに言われたよ
        『ホントの自由は 真実求めるココロにあるはず』と


ドアをあけ着替えたセフィルは、陽の光が差し込む窓をみて静かに、そして自分に言い聞かせるように言う。
「事実を自分の目でみる・・・・わたしの周りで何が起こったのか起こっているのか。その全てを自分で確かめる。
 ・・・・・・・・じゃないと何も始まらないし、本当の自由なんてつかめないと思うから・・・・」

 
      Teenage Walk
      あきらめない たとえ時間(とき)が過ぎても
      いつか 見えるはずさ 自分らしい生き方


強さと儚さと――リナとセフィルが似ていると感じるのはそんな理由だろうか。
「いいさ、それで。オレも付き合うよ。」


      Teenage Walk
      あふれる夢 信じ続けてるために
      いつも みつめたいよ 今を埋める現実


「ありがとうガウリイ!」
ぱあっと笑顔がはじけると、ふわりっと俺に抱きついてきた。
「・・・・・・一人だとちょっと恐かったんだ。」

囁くように呟くとするりと体を放し、花が咲くような笑顔のセフィルは真っ直ぐオレをみて言った。

「わたしガウリイのこと、大好きだよ。」

どこからともなく風が拭いたような気がした。


       Teenage Walk
       鳥が空へ 遠く羽ばたくように
       いつか 飛び立てるさ 自分だけの翼で


=========================================

ごめんなさい。
書いてる本人もまとめられなくなりました。飲酒投稿はこれっきりにしますぅ(自爆)

話しも説明っぽくなっちゃいました。

今回の歌は渡辺美里さんの名曲「Teenage Walk」です。

ああ、セフィルが暴走して告白はしてるわ、ガウリイは考えてるわ・・・
でもこれで関係にさざ波がたてられたかなぁと。

ううっ、以下次回ですっっ。

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12468飲むと書けないタイプ(笑)桐生あきや 11/25-03:11
記事番号12467へのコメント


 おおおおうっ、ガウリイが!(笑)。
 何なんだろう。白銀と琥珀と真紅って。
 真紅以外は思い当たるイメージがないわ(^^;
 案外それも間違ってそうですし。メリルーンちゃんとか??←絶対あり得ない。
 いえ、タワゴトですので気にしないでください。
 クレアバイブルの写本ですか〜。今度はなにやら某獣神官が出てきそうですね〜。

>ごめんなさい。
>書いてる本人もまとめられなくなりました。飲酒投稿はこれっきりにしますぅ(自爆)
 飲酒購読はやったことがあります(笑)。
 私はお酒飲むと書けなくなるほうなんで、飲むときはひたすら読んでます(笑)。

>話しも説明っぽくなっちゃいました。
 そんなことないですよ。
 そんな事言ったら、私なんかこの後の話が全て説明くさくなる可能性が……。

>ああ、セフィルが暴走して告白はしてるわ、ガウリイは考えてるわ・・・
 今回頭良さそうですね(酷い言葉だ)。
 私、ガウリイ視点では書けそうにありません。
 おかげでガウリナ派なのに、ガウリナはあまり書けません(笑)。

 来てみると、いつも続きがアップされているので嬉しいです♪
 それではまた。

 桐生あきや 拝

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12483天空歌集 15ゆえ 11/28-03:05
記事番号12441へのコメント

今回はなんだかほのぼのしてます・・・・・

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天空歌集 15



    夕焼けのむこうには
    やさしさが見える
    きみがとてもすき
    だいすき みつめたい Breand new day



朝からやたらとセフィルははしゃいでいた。
「ねえねえねえねえねえ、ここの街今日はお祭りなんだって、見に行ってきてもいい?」
瞳をきらきらさせて、しっぽが生えてたらぶちきれんばかりに振ってるであろうセフィルがテーブルに着くなり飛んできた。
「お祭りって、そーいや賑やかだわね。」
「うんうん♪ここのおばさんが教えてくれたの。ちょっとだけなら覗いてきてもいいかなーって。」
いや、この場合良いも悪いもないだろーに。
「決めるのはあんたでしょ。別にあたしに聞かなくてもいいじゃないの。」
「あ、いや、そうなんだけど・・・・・・さ。」
やれやれと食後のお茶をテーブルに置くと、。
「とはいえ、お祭りなんてもの見逃す手はないわよね。」
少しシュンとしたセフィルを見てニヤリっと笑うと彼女はこくこくと頷いた。
「うんうんうんうん。ないないない。」
「ということで、いいわよねみんなも。」
同じテーブルに座っている他の3人に振る。
「・・・・・・・・自分も始めからそのつもりだったくせに・・・・・」
「だな。」
いらん事を言うアメリアとゼルに正義の制裁を加えると、のんびりとした口調でガウリイが、
「んじゃ、さっさと朝飯たべて行こうぜ。」
あわてて朝食を食べ始めたセフィルを楽しそうに眺めていた。





「すっこ゜ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!」
「うまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

街中に溢れる音楽と踊りに感動しまくるセフィル。
屋台に並ぶ食べ物の美味さに感激しているあたし。
「実にらしいといいますか・・・・・・」
道の両端で屋台で食べまくってるあたしと広場の踊りを見ているセフィルとを見比べて呟くアメリア。
「でも一人例外がいるぞ。」
そんな二人を同じく眺めていたゼルがくいっと顎をしゃくった。
「ん?ふぁひは?」
口一倍にイカさんを補奪ったままゼルの言う方向をみると、そこにはセフィルを後ろから見てるガウリイがいた。
「ホントだ。ガウリイさんが食べ物につられてない?!」
「じゃあたしは食べ物に釣られてるってこと?んっ?」
「え、そうじゃ・・・・・・いや、はっはははははははははは。」
冷や汗流しながら乾いた笑いをするアメリア。
けど、たしかにあのガウリイが食べ物に興味を示さないなんて、珍しいこともあるもんだ。
なんとなくそのまま二人を見ていると、セフィルがその場でぴょんぴょんと跳ね出した。
どうやら人垣に阻まれて広場の踊りが見えないらしい。
〈レビテーション〉を使えばいいのにと思っていると、後ろにいたガウリイがひょいっとセフィルを抱えて左肩の上へ座らせた。
なにかセフィルがガウリイに言っていたが周りの喧噪にかき消されて聞こえなかった。
ただ、その時の二人の笑顔があたしの胸をちくんっとまた刺した。




日も傾き、祭りも終わりを告げた。
夕焼け空の下、ガウリイとセフィルは満足した様子で歩いていた。
その後ろをあたし達3人がとことこと歩いてる。
「なんだか最近あの二人、仲いいですね。」
「そう?」
「そう思わないんですか、リナさん。」
「今更なにいってんのよ。呑気なおにーさんになついた子供って感じは前からじゃないの。」
「・・・・・・・・・・・そうですか?私にはそんな風には見えないですけど・・・・・・・」
それ以外どんな見方があるんだとアメリアに突っ込もうとしたとき、ふわりっと何かが頭にかかった。
「なによこれ?」
頭の上にかけられたのは真っ赤なリボン。
かけたのはいつの間にか正面にいたガウリイ。
「きれいなスカーレットのリボンですねー。」
関心するようにアメリアがあたしが手に持ったリボンを眺めていた。
「セフィルと出店に行った時に目についてな。ま、気にせずとっといてくれよ。」
にぱっと笑うガウリイ。
「なんでまた?」
「その色見たときリナだなと思ったから、思わず。」
手にしたリボンの色はスカーレット、鮮やかな黄色みの赤、炎の色、緋色。
いつもならあたしにリボンなんて子供っぽいものと言うのだが、あんまりガウリイが嬉しそうに渡すので何とも言えず・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・どうも。」
と言うのが精一杯だった。
「どういたしまして。」
リボンと同じ夕焼け空を背負ったガウリイがさらに嬉しそうにあたしの髪をわしわしと撫でた。




「セフィルさんも何か買ってもらったんです?」
ひょいっとアメリアさんがわたしをのぞき込んできた。
たぶんガウリイがリナさんにあの緋色のリボンを渡したからだろう。
「これだよ。」
「へー、琥珀じゃないですか。」
手の中にすっぽりと包みこめるほどの小さな琥珀の固まり。
「中にさ、何か入ってるからそんなに高い物じゃないらしんだけども・・・・・・・・いいよね。」
真ん中に黒い石の様なものが入ってるのが透けて見える。
「うれしそうですね、セフィルさん。」
「ん・・・だって、お祭り見たのも生まれて初めてだしさ、こうやって誰かから買ってもらったのも初めてだから、かな。」
「お祭り初めてだったんてですか?」
「・・・・・・・・ん、あの村から外には出たこと無かったから。」
そういって苦笑する。
「アノールでしたっけ、セフィルさんの村の名前。」
「わたしの村じゃないよ。その近くに住んでいただけ。・・・・・・・・・村にはたまにしか行かなかったから。」
琥珀を一緒にもらった巾着の袋に入れながら答えた。
「しかし、オレ達が向かっているのはそのアノールの村だろう。」
ゼルがこちらを見ずに屋台の方を見ながら言う。
「それが一番の目印だからね。」
と言うと、私はひょいっとゼルの前に立ち、
「アメリアさんと先に帰ってるから、ね。」
パチンっとウインクするとアメリアさんの腕をひっぱって宿へと走った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ったく。」
がしがしと頭をかきながらゼルはまた屋台の方を見渡していた。



その夜、ゼルはアメリアさんに何か渡していた。
「何ですか、これ?」
「何でもない。後で部屋で見ろ・・・・・・・って、おいっ、ここで開けるなっ。」
「だって気になるじゃ・・・・・・・・・・・・あれ、これ―――」
「・・・・・・・・・・・・・・・欲しかったんだろ、それが。」
「もしかして聞こえたんですかっ!。」
かあああああっ
「あんな大きな声で呟かれたら嫌でも耳に入る。」
「リナさんいいなって思って・・・・・・・・・・・・・嬉しいです!」
「ああ、気に言ったのならそれでいい。」
「でもどうして黄色のリボンなんですか?」
「・・・・・・・・・・・・別に意味は無い。」
「あー、そんなぁ。教えて下さいよぉ〜。」
逃げるゼルを追いかけていくアメリアさんの手には明るい黄色のリボンが揺れていた。
明るい黄色の名前はダンティライアン――――タンポポの花の色。
ゼルは知っててアメリアさんにあげたのかな。
黄色は幸福を希求するって意味がある色だってこと。





祭りから3日後、あたし達は鬱蒼とした森の入り口にいた。
はっきり言って普段なら通るのはご遠慮願いたいほどの深い森。
天然の迷路の様だ。

「この森の奥にアノールの村がある。そこから暫く離れた所が私の家があった場所だよ。」

真っ直ぐに森の奥を指さしながら説明するセフィル。
グリムスラーデの事件の後、今後どう動くか話したときにセフィルが住んでいた家に行ってみようということになったのだ。
絡み合った謎を解き明かした時、解決の糸口さえ見えないときどうするか。
その元となる、一番最初の部分からたどって行けばいいのだ。
そうあたしが話した時、迷わずセフィルが提示したのがかつて自分が住んでいた家の存在だ。
彼女が呪歌を覚え、そして母親と過ごした家。
雪の振る日に襲撃され、旅に出るきっかけとなった家。
その家がこの森の奥にあるというのだ。

「ここはモルグルの森っていって、人の言葉では《呪魔の森》。天然の魔法迷路(マジック・メイズ)になっているからはぐれないように気をつけてね。」

そう言うとセフィルは森へと入っていく。
あたし達もセフィルを見失わないように森へと踏みはいる。
ざくざくと落ち葉と下草を踏みしめる足音だけがしていた。
「・・・・・・なあ、さっきセフィルの言ってた(マジック・メイズ)ってなんだぁ。」
横にいたガウリイがのほほんと聞いてくる。
「森に空間をひん曲げる魔術と幻覚を見せる魔術との組み合わせで目的地にたどり着けないようになってるのよ。極まれにそれが自然に出来ちゃってる場所あるらしんだけど、ここはおそらくエルフが作り出した物かもしれないわね。」
「だろうな、現にハーフエルフのセフィルには関係ないみたいだからな。」
後ろを来るゼルが続ける。
「そこまでして外部との接触を絶ってるなんて、なんだか寂しいですよね。」
ぽつりとアメリアが呟いた。
「しかた無いでしょ、そのアノールはエルフの村なんだから。」
「なんでエルフはそこまでして、人を入れたがらないんだ?」
「・・・・・・・・・・・・それって説明したと思うんだけと。」
「いやあ。」
おい、また忘れたんかい。
「エルフは人間を嫌っているんだ。過去に虐待された歴史があるからな。」
無機質な声でゼルがフォローを入れた。
「でも私たちば行くのはいいんでしょうか?」

アメリアの言葉にセフィルは、

「――――村には行かない。真っ直ぐ家にいくよ。」

固い表情でそう答えた。


森を右に左に歩くこと1時間。
真っ直ぐ来たというにはかなりぐるぐると回った気がするが、これが魔法迷路の罠ということか。


「――――それがわたしの家。」


木が立ち並ぶ森にぽっかりとあいた空間が目の前に広がった。
セフィルは空間の中心を見たまま動こうとはしない。

その空間の中心に焼け焦げ、崩れかけた家が一軒建っていた。




    誰かを傷つけても
    はなれられないよ
    きみがとてもすき
    だいすき みつめたい Breand new day


========================================

今回のは渡辺美里の「すき」です。
まぁたラブラブ話になってますねぇ。
ゼルもまあ、甘いこと甘いこと。(笑)
ちなみに色の方は全作「いろいろないろ」とまたバッティング・・・・
けど琥珀は結構値段高そうなんですが、よくかえたなガウリイ。
リナも妙におとなしいし。


>桐生あきや様

 ガウリイのイメージは近々説明します。出来るようにまとめます(おい)

 クレアバイブルを出した時点で、次に出てくる人物ばればれでしたね(笑)
 そのご指摘に座布団5枚差し上げます。

 ガウリイも頭よくなりすぎなので、程良くクラゲをミックスさせてます。
 でも私のイメージのガウリイは結構食わせ物だと思ってる物で(笑)
 

さあさあ、話も本題にかからないと。



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12491Re:天空歌集 15あごん E-mail 11/28-23:46
記事番号12483へのコメント

こんばんは!あごんとゆー物(間違ってはいない)です!!
なんだかほのぼのですねぇ(ラヴ)。

リナとガウリイ。
セフィルとガウリイ。
気になります、ホント。

今回がほのぼのしている分、次回が少しばかりコワイ気もしますが(笑)。
これが橋田寿賀子ドラマだったら、絶対次回は不幸になってる(笑)。

ではでは、支離滅裂な文章ですが、頑張ってくださいね!
現実逃避(笑)なあごんでした!
↑いえ、単に自分の小説が進まないだけです(苦笑)。

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12496渡る世間は・・・・ゆえ 11/30-01:03
記事番号12491へのコメント

あごんさんこんにちは。
感想ありがとうございます♪


>リナとガウリイ。
>セフィルとガウリイ。
>気になります、ホント。

私も気になります(これっ)
トライアングルの構図をうまく書き切れればいいんですが・・・


>今回がほのぼのしている分、次回が少しばかりコワイ気もしますが(笑)。
>これが橋田寿賀子ドラマだったら、絶対次回は不幸になってる(笑)。

言えてます(爆笑)それじゃぁ思いっきり次回は不幸にしましょーか(笑)
ここから話が展開していくからですね〜。
こーなるとラストもすこし変更しようかなぁ・・・(流されやすい奴なんで・・・・)


>ではでは、支離滅裂な文章ですが、頑張ってくださいね!

こうやって呼んでコメントをいただけるのが何よりの楽しみでございます。
これが在るから生きて・・・じゃない書いていけます。
がんばりますっっ。

>現実逃避(笑)なあごんでした!
>↑いえ、単に自分の小説が進まないだけです(苦笑)。

続き楽しみにしてます〜〜。
はやく逃避生活から帰ってきて下さいね♪(私も近いものがあるりますが)

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